商人「夢に染まる林檎の果実」

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102 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:30:19.77 ID:ylBcWnh30
……

少女「ありがとうございましたー」

武士「売り上げ好調だったね」

少女「お姉ちゃんいなくなった途端これだ」

武士(果たして林檎ちゃんは必要な存在なのだろうか)

少女「さて、今日はこの辺にしようか」

武士「林檎ちゃん帰ってこなかったね」

少女(もう日も暮れる……遅くなってるって事は何かあったな……お姉ちゃんの事だから死ぬようなことは無いだろうけど)

武士「えっと、どうしよっか。待つ?」

少女「ううん、市場のリサーチの他にちょっと大きい所からの仕事も溜めこんでたからそっち優先しちゃってるんだと思う。よくあるんだ」

武士「こんな小さな子に負担掛けるなんて困ったヒトですね」

少女「しょうがないよ、お姉ちゃんも立場があるから」

少女(あぁ、シレっと嘘を付けるレベルになってしまった……)

103 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:31:10.88 ID:ylBcWnh30
武士「それじゃあ宿に戻ろっか。昨日と同じところだよね」

少女「うん。片付けてから行こう」

武士「うーん!!しかし働くって何て素晴らしいんだろう!私も旅商人やってみようかな」

少女「イクサちゃん向いてないからやめた方がいいよ」

武士「ストレートォ!!」

少女「まぁ、こういうのは向いてる向いてないじゃなくて、楽しんだもの勝ちなのかな」

武士「林檎ちゃんの事?」

少女「うん、お姉ちゃん商売下手だけど私が見てきた限りだとずっと楽しそうにしてるから」

武士「お姉さんのこと好きなんだね」

少女「へへ、大好きだよ」

104 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:31:51.51 ID:ylBcWnh30
「あの、すみません。もう店じまいですか?」

少女「いらっしゃいませ、まだ大丈夫ですよ」

「そうですか……買い取りをお願いしたいのですが」

少女(買い取りか……私査定とかやったこと無いけど)

武士「はい!勿論大丈夫ですよ!!」

「それじゃあお願いします。ちょっと困っていたもので」パァァ

少女「なんで勝手にそういうこと言うの!?お客さん喜んじゃってるよ!?」

武士「え?出来ないの?」

少女「やったことねぇよ!?いきなり店の主に聞かないで二つ返事でOKするんじゃねぇよ!?だからお嬢様なんだよ!!」

武士(林檎ちゃんそっくりでこわい……)

105 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:32:43.25 ID:ylBcWnh30
「あの、やっぱり駄目でしたか?」

少女「あ、ゴメンなさい、その、私まだ駆け出しで経験が無く……」

「それでも構いません」

少女「え?」

「これは……大した価値の物ではないので」スッ

少女「指輪だ……」

「お値段はそちらで好きなように決めていただいて構いません」

「もう私には必要のないものなので」

少女「……」

106 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:33:58.73 ID:ylBcWnh30
「貸し露店のようですけど、出ていく予定はないですか?」

少女「はい……当分はまだこの町に留まる予定ですが」

「それでは後日お伺いいたします。その眼で、しっかりと貴女の目で値段を決めてください」

少女「え、あ。数日お預かりになるという事ですか!?」

「はい」

少女「私が持ち逃げしてしまうような人間だったら……」

「貴女はそんな事をするんですか?」

少女「いいえ、決してそのような事はしません」

「それならそうして頂いても……いいのですけどね」

少女「え……」

「ではお願いします」

107 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:34:40.99 ID:ylBcWnh30
武士「行っちゃった……」

少女「時間かけてでも値段を決めろってことか……」

武士「あの人にとってどうでもいい物なのかな」

少女「……」

少女(名前が書いてある……)

少女(これきっと……)

108 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:35:23.58 ID:ylBcWnh30
……

武士「いやぁ早速日給出るなんて思いもしなかった!!」

少女「一応働いてもらった分だしこっちも支払う義務は勿論発生するしね、当然」

武士「んふふ、人生初のお給料、これで何買おうかなぁ」

少女「でもそれお姉ちゃんの提示した食事代にほど遠いからまだウチに拘束されてるよ」

武士「かなしい、でもがんばる」

少女(強制力一切ないのにそこに疑問を持たない辺り本当にお嬢様なんだなぁ……いや、正直イクサちゃんいてくれないと私も人手足りなくて困るんから何も言わないけど)

109 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:35:59.32 ID:ylBcWnh30
巫女「何の話をしているんです」

武士「あ、兎ちゃんこんばんわ」

巫女「はいこんばんは。こんな時間にも持ち込みでお仕事ですか」

少女「うんまぁ……いや、兎ちゃんなんでこんな所に居るの。ここ違う宿だよ」

巫女「気が変わってウチもここに泊まることにしたんです。あっちは寝心地悪くて」

少女(こりゃ私達を追ってきたな)

110 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:36:54.24 ID:ylBcWnh30
巫女「林檎ちゃんいないんですか」

少女「お姉ちゃんはちょっと用事で数日離れるかもって」

武士「あれ、数日単位だったんだ……」

巫女「貴女は何を見てるんですか」

少女「指輪だよ。値段つけて買ってくれって言われちゃった」

巫女「高そうですね」

少女「うん、高いよ。多分7桁は余裕で超える」

武士「え……そんなものを言い値で売るって事ですか?」

巫女「正確な目利きですね……しかし変わった人も居るんですね」

111 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:37:30.73 ID:ylBcWnh30
少女「名前が入ってるから婚約指輪か婚約指輪かな」

巫女「!そんなもの……」

少女「ほら、ここ」

武士「THESTAR……ジス……いや、星?」

巫女「&XENO……まぁ読み方なんて色々ありますし気にするほどでもないでしょう」

112 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:38:11.70 ID:ylBcWnh30
少女「私は試されているのだろうか……」ガクガクガク

巫女「そこまで思いつめなくても当たり障りなくそれっぽい値段で吹っ掛けてやればいいじゃないですか」

武士「そ、それはダメ!!そんな相手に悪い……」

巫女「悪いのはそんなよく分からないような店で処分しようとしたそのヒトですよ」

武士「うーん……」

少女「でもこれもしも何らかの事件に巻き込まれた代物だったら……」

武士「事件?」

少女「……一応考えられる線は」

113 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:39:16.84 ID:ylBcWnh30
少女「1.呪いのアイテムの処遇に困り、特に関係の無い私達に黙って丸投げ」

武士「ヒェッ、辻褄があう……」

少女「でも禍々しいものは感じないからそれは無いかなー」

巫女「そうですね。そういうものは割と一発で分かったりします。手に持ったらそういう感覚しますし」

武士(触った事あるのか……)

少女「2.単純に盗品。足がつきそうだったためとっとと流した」

巫女「一番ありえそうですね。ウチも覚えがあります」

武士「えぇ……」

巫女「善意の第三者です。詳細は知らないフリです」

少女「それも無いかな……」

巫女「というと?」

少女「これを私に出してきたあの女の人……凄く辛そうな顔してた」

114 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:40:20.57 ID:ylBcWnh30
武士「手放したいのか手放したくないのかよく分からないね」

巫女「まだ未練があるとかそういう話ですか。ウチそのようなお付き合いしたこと無いのでそういう感情わかりません」

少女「……ふむ、まぁ悩んでも仕方ないし、時間も貰ってるからじっくり考えるよ。これは私が受け取った仕事だからね」

巫女「困ったら頼ってもいいんですよ」

武士「そう!!私だって働く仲間なんだから!!」

少女「イクサちゃんはいいかな」

武士「」

115 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:41:00.68 ID:ylBcWnh30
巫女「そういえば今更ですが」

少女「?」

巫女「お名前、聞いてなかったですね」

武士「あ、私もだ。ごめんなさい、失礼だったね」

少女「あぁ、いいのいいの、気にしないで」




少女「私、名前無いから」

巫女「え……」

武士「今……なんて?」

116 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/05/21(木) 04:42:23.99 ID:ylBcWnh30
小休止
117 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/21(木) 09:59:44.15 ID:ylBcWnh30
婚約指輪か婚約指輪ってなんやねん名無しちゃん結婚指輪か婚約指輪だよ……
118 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:24:05.92 ID:AX80HbLV0
再開
119 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:24:33.35 ID:AX80HbLV0
――――――
―――



武士「ウェーイラッシャイラッシャイ」

巫女「……」

武士「ヤスイヨヤスイヨー」

巫女「……」

武士「なんで一緒にやってくれないの」

巫女「なんでウチがやらなきゃならないんです」

武士「今日お店手伝ってくれるって言ったのにー」

巫女「あの娘一人で大丈夫か気になったから様子見てるだけです。客引き以外なら手伝いますけど」


少女「いらっしゃい、これはですね……」

120 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:25:00.05 ID:AX80HbLV0
武士「なんか」

巫女「はい」

武士「名前が無いって事に驚いちゃってそれ以上聞けなかったね」

巫女「そうですね。とりあえず林檎ちゃんが来るまでは様子を見るつもりです」

武士「一応私もいるし大丈夫だと思うけど」

巫女「大丈夫じゃなさそうだからウチここにいるんですけど」

武士「」

121 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:25:40.02 ID:AX80HbLV0
少女「兎ちゃん、そこの商品の梱包お願いできます?」

巫女「はい、終わってます」

少女「おぉ!やっぱり手際がいい!!あ、イクサちゃん呼び込み止まってるよ」

巫女「……」ドヤァ

武士「ハハハ、ハハハ(反復)」

少女「……二人とも、ひょっとして昨日の事気にしてる?」

巫女「えぇまぁ」

武士「あんな唐突なカミングアウトがあったら……ねぇ?」

122 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:26:43.58 ID:AX80HbLV0
少女「私は名前どころかお姉ちゃんに拾われる以前の記憶もないし」

少女「どうせ碌な事が無かったんだなって思う事にして今を生きるようにしてるよ。だからそんなに気にしないで」

巫女「それもあるんですが。林檎ちゃんから名前貰わなかったんですか?」

少女「"それは私がしていい事じゃない"ってよく分からないけどそう言われたんだ」

少女「名は言霊(ことだま)、その者の運命を決めてしまう物だとか」

武士「まーたよく分からない事を……」

少女「私はここ1年くらいお姉ちゃんと一緒だったけど、名前が無くても結構どうとでもなってたよ」

巫女「二人だけで生活をしていたら案外どうにかなるものなんですね」

123 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:27:40.70 ID:AX80HbLV0
武士「ん?でも私林檎ちゃんと貴女は本当の姉妹だと思ってたんだけど……」

巫女「それはウチも」

少女「え、どうして?」

武士「どうしても何も」

巫女「そっくりですよ、貴女たち」

少女「あー、それはよく言われるけど……お姉ちゃんと本当に血縁とかあるのかな」

巫女「故郷の話すると露骨に嫌そうな顔してましたし、親戚関係で何かあったのかもしれないですね」

武士「それで連れ出してきたと……」

少女「案外お母さんとかだったりして。自分の事たまに年寄りみたいに言う事あるし」

武士「いやー、それにしてはちょっと若すぎる気も……」

124 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:28:14.07 ID:AX80HbLV0
武士「ハッ」

武士(若くして子を孕む→相手の男が分からない→実家から追われる→そのさなか娘が記憶を失う→妹として受け入れ記憶を呼び戻さぬよう名を言わない悲しみの親子)

武士「……」

武士「よし」

少女「よしじゃねーよ」

巫女「なにを想像しているか図になって頭に浮かんでますよ」

125 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:28:47.56 ID:AX80HbLV0
少女「ま、そういう事だから私の過去についてはあんまり詮索しないでね。お姉ちゃんも怒るだろうし」

武士「でも名前が無いのも不便だね、こうして一緒にいる以上は」

巫女「お互いこの町にしばらく居るつもりですし暫定的にでも付けときます?」

少女「それも……いいかな、名前付けてもらうんだったらお姉ちゃんがいいから」

少女「あ、不便なら別にどう呼んでもらってもいいよ」

武士「おっぺけぺー」

巫女「おっぺけぺー」

少女「よぅしお前ら、そこに座れ」

126 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:29:13.78 ID:AX80HbLV0
少女「……」

少女(正直……私がお姉ちゃんに拾われた時の事はよく覚えていない)

少女(私が目覚めた時、お姉ちゃんがそこに居た)

少女(とても、辛そうにしてた。とても、悲しそうにしてた)

少女(でも、私に笑顔を向けてくれていた)

少女(涙を浮かべながら、私を祝福してくれていた……)

127 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:29:59.58 ID:AX80HbLV0

―――
――――――


あの時は……そう、雨が降ってたな、多分

思い出そうとしても靄がかかったように不鮮明だ
私を抱きかかえていた彼女の手はとても冷たかった

無我夢中で走り回って、転げ落ちて
ただただ、目の前の惨事から逃げるようにしてこうなってたんだっけか、覚えてないや

訳の分からん事態に振り回されて、仕舞いにこの状況だ。お笑いだよ、私ともあろうものが

やっぱり歳取ったかな……もうあの時から衰えを感じて……

必至こいて逃げ込んだ先でようやく一息つけた

そして、その手の中で目覚めた彼女を……私は強く抱きしめた


あれ?
これ、どっちだ……?

128 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:30:25.50 ID:AX80HbLV0
――――――
―――


商人「……」

商人「私の高級和菓子ッ!!……ハッ、夢か……」

剣士「なんちゅう夢を見ているんだお前は」

商人「……?」

商人「…………」

商人「……あぁ」

商人「テメェなんでここに!?」

剣士「ようやく目覚めたか、状況の整理は出来たか?」

129 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:31:04.26 ID:AX80HbLV0
商人「あたたた腰が……ったく、えっと?」

剣士「お互い丸一日程寝ていたようだ。随分と頑丈だな」

商人「一応鍛えてっからな……それはいいんだが」

商人「もしかして治療してくれたのか?」

剣士「お前の持ち物を使ったがな」

商人「いえ……助かります。しかしどういった心境の変化ですか、今の今まで戦ってたのに」

130 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:32:11.77 ID:AX80HbLV0
剣士「弱いものイジメはする気はないと言っただろう」

商人「やんのか?あ?」チャキ

剣士「……冗談だ。最後に私に"魅せた"一太刀でお前がただ者じゃないという事は分かった」

商人「それじゃあどうして……」

剣士「おまえの荷物を物色したが大していいものが無かった。それだけだ」

商人「あっ!?テメェこいつ私のカバンの中見たな!?あぁ!?おにぎり無くなってる!?」

剣士「アレはおにぎりと言うのか、美味かったぞ」

商人「また私は昼食を食べられなかったのか……」

剣士「どちらにせよ昨日の米だろう、傷んでるぞ」

商人「お前はそれを承知で食ったのかよ」

131 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:32:38.77 ID:AX80HbLV0
商人「……武器は盗らなかったんですか?まだ私の腰にありますけど」

剣士「それはいらん、私では鞘から抜けなかった」

商人「でしょうね。そういう風に作られてますから」

剣士「深くは追及せん……状況が状況だ、お互いに助け合わねば打破出来る状況ではなさそうだ。そういう面もある」

商人「あぁ……随分深く落ちたんですね」

剣士「灯りはお前の荷の中にあった物を使わせてもらったぞ」

商人「構いませんよ。他に何か使える道具入って無かったかな……」

132 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:33:12.51 ID:AX80HbLV0
剣士「よく分からん物ばかり入っていたな。襲った事自体が間違いだったぞ」

商人「やれやれ、そう言いますか……これでも役に立つ便利グッズの山なんですけどね」

商人「例えばこの魔方位磁針なんて魔力を注げば……あれ?」

剣士「何だそのガラクタは」

商人「おっかしーなー、落ちた衝撃で壊れた?いや、この位置に仕舞ってあったから大丈夫なハズ……壊れては……あ、贋物(察し)」

剣士「?」

商人「……いえ、何でもありません」

133 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:33:49.39 ID:AX80HbLV0
商人「とりあえずこの地下はまだ道が続いているようなので進んでみましょう、どこかには出るかもしれません」

剣士「そうか、なら悪いが手を貸せ」

商人「ん?どこか怪我をしました?」

剣士「足が折れている」

商人「私より重症じゃねぇか!?よくそんな余裕で喋っていられるな!?」

剣士「痛いものは痛い」

商人「もうちょっと痛がれよ!?」

134 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/24(日) 15:34:22.01 ID:AX80HbLV0
小休止
135 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/05/29(金) 19:27:41.14 ID:XBQnF4zX0
ごめんなさい、おうちの引っ越し準備忙しくて明後日まで触れないかもです
136 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:43:48.43 ID:5+ZIkQ2j0
再開
137 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:44:19.35 ID:5+ZIkQ2j0
商人「ちょっと治療するので見せてください」

剣士「どうするつもりだ?」

商人「魔法を使います。まぁ治癒はあんまり得意じゃないんで道具使いますけど……チッ、治療魔法の道具置いてきてるな……しゃーない、応急処置だけでも」

剣士「……」

商人「どうしました、黙っちゃって。まさか魔法が珍しいとかいうんじゃないでしょうね。自分もアレだけ散々使っておいて……」

剣士「人間の身体を治癒させる魔法を見たのは初めてだがそうではない」

剣士「……お前、人間か?」

商人「突然何言いだすんだよどう見ても人間だろ。ちょっとグリーブ外しますよ」

剣士「そうか」

商人「突然何なんだよ……」

138 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:44:46.55 ID:5+ZIkQ2j0
剣士「魔法は何処で?」

商人「ん?話す程じゃねーですよ。ま、ほとんどは独学ですけど……んー、見た感じはそこまで酷くないな……ちょっと動かしますよ」

剣士「ッ……」

商人「痛かったら素直に言えよー」

剣士「痛い」

商人「だろうな、我慢しろ」

剣士「言った意味」

139 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:45:12.91 ID:5+ZIkQ2j0
剣士「魔法の事もそうなのだが」

商人「今度はなによ」

剣士「急に態度が柔らかくなったな」

商人「一応こっちも助けてもらいましたからね。ま、襲われたことと合わせてプラマイ0って事で。どっち道助け合わないと状況の打破も出来なさそうですし」

剣士「……」

商人「ハハ、お礼くらい言ってもいいですよ?」

剣士「なんで?」

商人「もう一本へし折るぞテメェ」

140 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:45:49.71 ID:5+ZIkQ2j0
剣士「冗談だ、感謝する」

商人「へいへい……あとは固定だけして……」

剣士「凍てつけ」パキンッ

商人「ぅあっぶねぇ!?突然凍りを出すんじゃねぇよ!?」

剣士「これなら冷やすのと同時に固定もできるだろう。先を急ぐぞ」カツカツ

商人「んまー勝手だなぁもう」

商人「……」

商人「いや、その程度なら自分で最初から治療出来たろオイ。ちょっとまて!!折れてるのには変わりないからな!?そんな早く移動すんなオイ!!」

141 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:46:34.80 ID:5+ZIkQ2j0
剣士「しかし長いな」

商人「私が前来た時はこんなの無かったんだけどな……気付かなかっただけか?」

剣士「ここらの地理には詳しいのか?」

商人「あ、いえ、ちょっと前に一度出向いただけです。それからはサッパリ」

剣士「こんな森の中に出向くとは、随分と変わっているな。族に狙われるぞ」

商人「まぁ現に貴女に狙われたんですが……あ、ちょっとストップ」

剣士「どうした」

商人「水だ。しかも流れてる」

剣士「地下水か……或は」

商人「外に繋がってるかもしれません。辿りましょう」

142 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:47:03.41 ID:5+ZIkQ2j0
剣士「……」

商人「……そういえば」

剣士「なんだ」

商人「いえね?さっきから貴女ばっかり私に質問してたもんですから私からも何か聞こうと思って。間が持ちませんし」

剣士「やかましい奴だな」

商人「うるせぇ。まぁそう言わずに……」

商人「どうして略奪行為なんてしてるんですか?貴女くらいの腕があるのなら魔物退治や用心棒もできるでしょう」

剣士「奪う以外の生き方を知らんのだ。今までこうして生きてきた」

商人「そりゃまぁ厄介なこった」

剣士「それにだ」

143 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:47:47.29 ID:5+ZIkQ2j0
剣士「私は闘争を求める。相手が強ければ強いほど……その相手を降(くだ)した時に得るものは大きい」

商人「戦ってる時も思ってましたけど随分とまぁ身勝手で酔狂な」

剣士「言ってろ。今更生き方を変えられん」

商人「家族は居ないんですか?」

剣士「居ない、死んだ。育ての親は居たが本当の親は知らん」

商人(捨てられたか売られたか……ま、碌な世の中じゃねぇな)

剣士「同情するか?」

商人「や、全然。同情して欲しかった?」

剣士「まさか」

144 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:48:14.06 ID:5+ZIkQ2j0
剣士「お前は?家族は居ないのか?」

商人「いますよ。妹が一人」

剣士「妹か。連れてきているのか?」

商人「えぇ、今は街の方に置いてきてますけど」

剣士「……」

商人「……」

商人「え?それだけ?」

剣士「それ以上何があるんだ。聞き返しただけありがたいと思え」

商人「なんでそんな事でありがたがらなきゃならんのだ!?会話続かねぇのなんなの!?コミュ障なの!?」

剣士「見ろ、外の明かりだ」

商人「話ぶった切るなよ!?あぁもう噛み合わねぇな!!」

145 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:48:41.40 ID:5+ZIkQ2j0
剣士「案外簡単に出られ……ん?」

商人「おっと、外じゃなかったな」

剣士「上から光が漏れているのか。といってもまだ薄暗いな」

商人「天井がそこそこ開いてますね。登るにゃちょっと高すぎるが……」

剣士「無理すれば行けそうだが」

商人「いやいややめとけって……外に繋がってるって分かっただけでも良しとしておきましょう」

商人「日の当たり方からして昼前か……」

146 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:49:25.79 ID:5+ZIkQ2j0
商人(あの娘は私の強さを知ってるから心配はしないでしょうけど、あんまり遅すぎるとイクサちゃんと最悪兎ちゃんに声かけて探しに来るかもしれないですね)

商人(やれやれ、日帰りのつもりがとんだ災難だ。黄金の果実を探すどころじゃなくなっちまったな)

剣士「妙な場所だな」

商人「ん?どした?」

剣士「草が生い茂っている」

商人「あーホントだ。ここだけ外と似たような土になってますね。丁度光も差してるし水も流れてるし……植物が育つ環境として成り立ってるんじゃないですか?」

剣士「……」

商人「思わせぶりに黙るの多いなオイ。なんか言えよ」

剣士「あれは……なんだ?」

商人「あれ?」

147 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:50:21.25 ID:5+ZIkQ2j0
商人「薄暗くてよく見えないですけど……」

剣士「丁度いい、日が差すぞ」

商人「え?」

剣士「"あれ"の真上が丁度大穴になっている。太陽が昇ってくる」

商人「あ……」

剣士「何だ木か……しかし一本だけ生えているのもおかしな感じだな」

商人「……」

剣士「おい、今度はお前が黙るのか。どうした」

商人「……」

商人「見つけた」

148 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/11(木) 02:50:53.66 ID:5+ZIkQ2j0
小休止
一応まだまだ先は長いよ……
149 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 18:33:54.21 ID:GJOYYYEh0
再開
150 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 18:34:21.21 ID:GJOYYYEh0
剣士「……なにを見つけたんだ?」

商人「いえいえ、こっちの話です。それにしても……」

商人(いくら地下に"木"があったとしてもくまなく探していれば見つからないなんて事は無いと思うんだけどな、これ)

商人(噂を聞きつけてくるような連中がこの短期間に二人も居たんだ、過去にも探索自体は何度もされているだろう、にもかかわらずだ)

商人(私だから見つけられた……?その線も無くはないだろうが何が何やら……まぁ、それはいい)

商人(黄金の果実、回収させてもらうか)

商人(これでようやく……)

151 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 18:34:47.94 ID:GJOYYYEh0
剣士「まて、動くな」チャキン

商人「な、何ですか突然剣を握って……まさかお前この木を!!」

剣士「様子がおかしい、それ以上木に近づくな」

商人「え?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


商人「洞窟が……ッ!?」

剣士「動いている……何だこれは」


商人「ッ!!木が!!」

剣士「動くなと言っているだろう!!」ガッ

商人「チクショウ離せ!!」

剣士「死ぬ気かお前は!!」

商人「死んでも必要なもんが目の前にあんだよ!!」

152 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 18:35:14.04 ID:GJOYYYEh0
剣士「妹がいるんだろう!!」

商人「ッ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

剣士「……沈んでいったな。というより、移動したのか」

商人「……」

商人(躊躇(ためら)ってしまった)

商人(あの娘には、"私よりも"あの実が必要なのに……)

153 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 18:35:41.80 ID:GJOYYYEh0
商人「……」

商人(それとも……私は命を秤にかけたのか……今更生きていたって……)

剣士「丁度いい、地面が動いた事で随分と地上に近づけたみたいだ。登るのに現実的な位置まで来たぞ」

商人「……助けてくれてありがとうございます。一応お礼だけは言っておきます」

剣士「助けたつもりはない。お前が飛びこまなかっただけだ」

商人「正直役に立つとは思ってませんでしたけど助けられたのは事実です」

剣士「一言多いな」

154 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 18:36:43.98 ID:GJOYYYEh0
商人「よいしょっと……手を貸します。登ってきて……」

シュバッ

剣士「よし、街まで案内しろ。とりあえず足を治療したい」

商人「……貴女ホントに足折れてんのか?」

剣士「折れてるの確認しただろう、ほら行くぞ」

商人「はいはい……」

商人「……」

商人(しかし、なるほどな)

商人(木自体が黄金の果実を守っているという事か。神器なんだ、そのくらいは容易だろう)

商人(自身で場所を移動させていればそりゃ見つからないハズだ)

155 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:16:24.13 ID:GJOYYYEh0
商人(だが確かにあった……希望は見えてきた)

剣士「動くな」

商人「またかよ、今度は何ですか」

剣士「……あれだけ強そうに見せておいてお前は何故気付かん」

商人「おっと失礼……5ってとこですかね」

剣士「確認出来る人数はな。多分まだ潜んでるぞ」

商人「面倒な……」

156 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:17:10.51 ID:GJOYYYEh0
――――――
―――



少女「むぅ……」

武士「ラッシャイラッシャイ」

巫女「妹ちゃん、まだ悩んでるんですか」

武士「値段が値段だからねー。そりゃ妹ちゃんも悩むよ」

少女「まぁ……この指輪どうしようかってのは本当に困ってるけど……妹ちゃんで定着したんだ」

巫女「ええまぁ」

武士「勝手に名前付けるのもアレだし」

157 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:17:45.76 ID:GJOYYYEh0
少女「やっぱお姉ちゃんに相談するべきだよね」

武士「それは思うかな。私でも初めての事は誰かに相談したいし」

巫女「当の本人はこの場に居ませんけどね」

武士「あ、そうだよー。結局2日も空けてるなんてちょっと無責任すぎるよ!」

少女「うーん」

少女(結局昨日も帰ってこなかったけど……確かに2日も私の前から姿を消すのはあの過保護気味なお姉ちゃんらしくもない)

少女(何かあったか……それともお姉ちゃんを信じるか)

158 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:18:17.76 ID:GJOYYYEh0
武士「どこで何してるかは分からないの?」

少女「うん、大きい取引としか聞かされてないから」

巫女「……」

武士「どったの兎ちゃん」

巫女「もしかしてですけど、森の方に行ってるとかじゃないですよね?」

少女「」ギクッ

武士「ハッ!まさか黄金の果実の捜索を!?」

巫女「抜け駆けですか。許せないですね」

少女「」ダラダラダラ

159 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:19:04.33 ID:GJOYYYEh0
巫女「ま、それは正直どうでもいいです。ですがちょっと不味いですね」

少女「ど、どうでもいいの!?よし」

巫女「どうしたんですか妹ちゃん」

少女「イエーナンデモナイデスヨ」

武士「それで何がマズいの」

巫女「いえ、ウチが仕入れた情報なんですが」

巫女「今あの森に凶悪な野盗の集団が入ったとの通報がありまして」

少女「ファッ!?」

160 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:19:35.44 ID:GJOYYYEh0
……

剣士「ハァ……ハァ……」

商人「少し休んでろ。見張りは私がやります」

剣士「……チッ、腹の立つやり方だ」

商人「消耗戦仕掛けてくるとは……私たちの実力を確認してすぐに作戦切り替えて来やがった」

剣士「頭がいいのが紛れているんだろう。数で圧す事も出来ただろうに」

商人「初っ端5人斬り捨ててますからね。一気に攻めるのは無駄だと分かったんでしょう。しかし、こうチマチマと矢だのナイフだの投げてこっちの退路も無くさせるのは……」

剣士「物資も少ない。私が手負いなのもバレた。チッ本当に歯がゆい」

商人「……」

161 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:20:10.71 ID:GJOYYYEh0
商人(手負いのこの娘を置いていけば私だけでも逃げられるか。助けはそのあと呼べばいい)

商人(どうせ出会ったばかりの、それも敵対していた相手だ……誰も咎めはしないだろう)

商人「……私が」

剣士「私が囮になる。お前は逃げて助けでも呼んで来い」

商人「え?」

剣士「助けを乞うのは癪だが今はそれが最善手だろう。どうせ出会ったばかりの仲だ、私が犯されようが殺されようがどうなってもお互いに後腐れも無かろう」

商人「……ああ、私もそれ今考えていた」

剣士「だろうな、そういう目をしていた」

商人「ハァ……死ぬなよ」バッ

剣士「無慈悲な慈悲だな。可能な限りそうさせてもらう」

162 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:20:37.63 ID:GJOYYYEh0
「ヘヘッ」

「一人置いて逃げたか」

「これを待ってた……ここまで消耗させたんだ、分断さえすればこちらのもんだ!!」

「犯せ!!奪え!!まずはあの手負いの女からだ!!」


剣士「来たか……」

剣士(所詮は族か)


商人「っしゃオラああああああああああああああああああ!!」ズガァ


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

「なんか帰ってきた!?」

163 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:21:18.35 ID:GJOYYYEh0
商人「こっちはそんなチマチマしたのが嫌いなんだよ!!テメェらが集団で姿見せる為の演技だっての!!」

「ぐあぁ!」ザシュ

剣士「よく言う。本気で考えていたくせに」

商人「……割りと、そういう考えを持ってしまった自分を恥じている所です」

ザシュッ

剣士「私はお前を囮にするつもりだったのだがな」

商人「まじかよ」

ザシュッ

剣士「マジだ。その為にずっと自分が逃げられるだけの体力を蓄えて……」

商人「さっきの息切れは演技かよチクショウ!?お前名女優になれるぞ!?」

剣士「それは罵倒か?」

ザシュッ

164 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:21:57.31 ID:GJOYYYEh0
剣士「だが色々と御破算だな。また数人逃がした」

商人「あぁ畜生、結構いい線行ってると思ったんだけどなぁ。何人やった?」

剣士「5人か。だがまだ数は居そうだ」

商人「どうすんべ、そうは言っても貴女も割と疲れが見えてますけど」

剣士「散っている今のうちに場所を移動した方がいいだろう。本当ならば森を抜けたい所だが……」

商人「それなんですよねぇ。結局森からの脱出が出来ないんだよなぁ」

165 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:22:43.57 ID:GJOYYYEh0
剣士「おい、お前の妹は助けに来られないのか」

商人「うーん……」

商人(嘘ついてテキトーに誤魔化せ言った手前なぁ)

商人「ハァ、こんな事ならこんな偽者の魔方位磁針じゃなく本物も買っておけばよかったなぁ」

剣士「前もそれを取り出していたが、それはなんだ」

商人「あ?これ?ただのガラクタだよ……」

商人「あーもう、まだマーカーも使い切ってなかったしホント無駄な買い物だったなぁ」

166 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:23:15.42 ID:GJOYYYEh0
剣士「他に役に立つ物は持ってないのか?」

商人「治療道具さえ置いてきちゃってる私が他に有用なもの持ってると思うか?」

剣士「確かに」

商人「あ、そういえばー♪」ゴソゴソ

商人「あったあった!!」

剣士「それは何だ?」

商人「テッテレテッテッテーテーテー♪信号弾ー♪」濁声

商人「もし近くに冒険者が居てくれたらコレを見てなにかしらのアクションをしてくれるでしょう!!」

剣士「そうか」

167 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:24:00.46 ID:GJOYYYEh0
商人「そーれ発射ー!!」

ピュルルルルルルルルルルルル

商人「……」

剣士「……」




商人「……あ」

剣士「……止めなかった私も悪かったが即行動に移したお前自身も悪いと思え」


「こんな所に居やがったか……」

「よくも仲間を殺しやがったな」


商人「デスヨネー」

剣士「余計な手間を……」

168 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:24:28.55 ID:GJOYYYEh0
商人「まったくしょうがない……このまま体力が許すまで」

剣士「やり合うぞ。どちらにせよもう逃げられんだろうし限界だ」

商人「フゥ……だがまぁ、こっちはこっちでまだ死ねないんだ」

商人「周囲巻き込んででも生き残るッ!!」ボワッ

剣士(出るか……炎の刃)



「おねえちゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」


商人「ッ!!」

剣士「なんだ?」

169 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:25:14.17 ID:GJOYYYEh0
武士「こんの」

武士「変態がーーーーーーーーーーーーーー!!」ザシュッ

「ぐぁ!?」

商人「イクサ!?」

巫女「ウチも居ます」ザシュッ

商人「兎ちゃんまで!?」

少女「よかった、お姉ちゃん無事で!!」

剣士「誰だコイツら」

商人「最高だぜ!!チーム林檎ちゃんの復活だ!!」

巫女「勝手に満足なチームにしないでください」

170 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:25:52.78 ID:GJOYYYEh0
商人「私の妹と」

少女「あ、どうも」ペコッ

商人「その他です」

巫女「……まぁいいです」

武士「……」

商人「すみませんイクサ、助かりました……イクサ?」

武士「……」カタカタカタカタ

武士「は……」

武士「はじめてひときっちゃいました」ガクガクガクガク

商人「クソ戦い慣れしてなさそうだと思ったらそういう事か……」

171 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:26:25.04 ID:GJOYYYEh0
武士「だだだだだだだってきったらいたいから……」ブルブルブルブル

巫女「はいはい……で、林檎ちゃんこの状況は何ですか」

商人「見ての通り野盗に襲われてたんですよ」

巫女「そちらの女性は」

剣士「気にするな、敵ではない」

商人「味方でもないですけど……まぁ今は味方です」

巫女「訳わからないんで後で説明お願いします。でも今は……」

商人「現状の打開って事で……」

剣士「いいだろう」

武士「お、おっしゃー!!かかかかかかってこいやー!!」

172 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:26:59.52 ID:GJOYYYEh0
……

少女「オエー、血なまぐさい……」

商人「ごめんなさい、こんなもん見せてしまって」

剣士「雑兵はこんなものか」

武士「ゼーハーゼーハー」プルプルプル

巫女「雑魚の集まりでしたね。こんなの相手によく数日もかかりましたね」

商人「上手いこと行動封じられていたんですよ。そっちの娘も怪我してましたし」

少女「あれ、ホントだ……ちょっとみせてもらってもいい?」

剣士「……?」

少女「あ、ホントだ。でも氷で固定してあるし、まだ……」

剣士「お前……」スッ

少女「?」

173 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:27:56.40 ID:GJOYYYEh0
剣士「迷子か?」

少女「ファッ!?」

商人「ッ!!」

少女「いやいやいや、どうしたらそう見える!?お姉ちゃん探しに来たんだから逆にそっちが迷子だよ!?」

剣士「……そうか、そうだな」

商人「……」

巫女「何を言っているのですか。とりあえず……イクサちゃん、いつまで震えてるんですか」

武士「あうあうあうあわわわ……」

巫女「……ダメ見たいですね」

174 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:28:24.41 ID:GJOYYYEh0
商人「……」

商人「一つ教えてください」

剣士「なんだ」

商人「なぜあの娘が迷子だと思ったんですか」

剣士「見たままだ。分からんのならわからんでいい」

商人「……」


「あ……ぐ……」


武士「ヒッ!?やらなきゃやらなきゃやらなきゃやらなきゃやらなきゃ」

巫女「待て殺すな」ビシッ

武士「あうっ」

175 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:28:59.09 ID:GJOYYYEh0
巫女「コイツはウチがワザと生かしておいた奴です」

剣士「仲間を呼ばれるかもしれん、とっとと始末すべきだろう」

巫女「ハァー、これだから学の無い奴は困ります」

剣士「ふむ、お前の考えを教えろ」

巫女「おや、挑発に乗らないのは中々……ウチとしてはコイツの親玉の話を聞きたかったんで」

武士「えぇー、聞きだしてどうするの」

巫女「ウチにはウチのやり方があるんです。さてお兄さん、あなた方の情報を色々とお聞きしたいのですが……」

176 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:29:28.90 ID:GJOYYYEh0
商人「……」

少女「お姉ちゃん……」

商人「ごめん、心配かけた」ナデナデ

少女「うん、凄く心配した」

商人「それより、どうしてここへ?」

少女「兎ちゃんが森に野盗が出たって情報が入ったからって」

商人「あーそれでか……」

少女「普段のお姉ちゃんなら大丈夫だと思ったんだけど、でも帰りも遅かったし」

商人「うん、助かった」

少女「もう私を置いてこんな危険な事しないで……」

商人「危険な事じゃなかったハズなんだけどなぁ」

少女「言い訳しない!!」

商人「はい……」

177 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:30:04.78 ID:GJOYYYEh0
「へへ……お前らもう終わりだぜ……」

武士「な!なんですと!?」

「ウチのボスは狡猾で残忍だ……お前ら程度の小娘なんてすぐに……」

巫女「その小娘に負けておいてよく口が回りますね」

「俺から喋る事なんて一つも……おぐっ!?」

巫女「別に情報を引き出せる事は期待してないです」

「へ?」

巫女「可能なら聞きだす。それだけです」

巫女「イクサちゃん、ちょっとコイツそこの木に縛り付けてください」

武士「あ、うん……」ギュッ

「お、おい何を……」

巫女「大丈夫、殺しはしません、ただ」





巫女「もうまともな人生送れないと思ってください」

178 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:30:42.14 ID:GJOYYYEh0
「アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



剣士「……気の毒に」

武士「あうあうあうあわわわ……」

少女「」

商人「見ちゃダメ見ちゃダメ」

商人「しかしよく私のいる場所が分かりましたね」

武士「あ、うん。なんか空に光るものが見えたのが決定打だったよ」

剣士「アレは役に立ったみたいだな」

商人「結果的に……ですけど。すれ違いにならなかっただけヨシとするか」

少女「それは大丈夫だったかな」

商人「ん?」

179 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:31:40.78 ID:GJOYYYEh0
少女「これ」ヒョイ

商人「なっ!?魔方位磁針!?何で貴女が!?」

少女「お姉ちゃんが他所のお店で見つけたやつだよ。買ってきたの」

商人「それで私の持ってるマーカーを辿ったのか……よくやった!!流石私の妹だ!!」

少女「えへへ……って言いたいんだけど」

商人「はい?」

武士「それ買おうとしたら不当に値段釣り上げられちゃって……」

少女「うん、私が急いでたから足元見られちゃったみたいで」

商人「あぁん!?そんな太てぇ野郎が商売してたのか!?ちょっと待ってろ、私がお礼参りに行ってやる!!」

少女「落ち着け、話を聞け」

180 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:32:10.75 ID:GJOYYYEh0
巫女「ウチが値切り交渉してタダ同然の値段で手に入れたんですよ、褒めてください」

商人「あ!?お前が!?なんで!?」

巫女「もう二度と商売出来なくなるかそれを明け渡すかの二択を迫っただけです」ニマァ

武士「正直怖かった」

少女「敵に回しちゃいけない人がハッキリしたよ」

商人「お、おう、なんでかしらんが一応感謝はしとく……」

181 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:33:52.64 ID:GJOYYYEh0
商人「あぁ、それはいいですけど。何か聞きだせましたか?」

巫女「はい、色々とゲロってくれました。まぁどっち道一斉検挙するつもりだったので有益な情報だろうと何だろうと構わなかったんですけど」

商人「……兎ちゃん、貴女何者ですか」

武士「市場の人に脅しをかけたり、なんか薙刀強かったり」

少女「あの指輪の値段もすぐに妥当だって判断したのも気になってたけど……ただの商人じゃないよね?」

巫女「御明察、ウチはただの兎ちゃんではありません」

巫女「ウチは冒険者ギルドの幹部の一人、月鏡(つきがみ)兎と申します。一応神様の血筋だったりします」

商人(やっぱりか……)

182 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:34:56.73 ID:GJOYYYEh0
武士「ぼうけんしゃギルド?」

少女「かみさまのちすじ?」

剣士「随分と私を放置するんだな……まったく、話に混ぜろ」

巫女「混ざりたければどうぞ」

剣士「冒険者ギルドというのは最近立ち上がった民間の組織だ」

武士「一応話は聞いた事があるような無いような……」

剣士「ただの浮浪者共……もとい、冒険者に仕事を斡旋し成功すれば報酬を渡す……簡単に言えば職業紹介事業だろう?」

巫女「少し語弊がありますが概ねその通りです、博識ですね」

剣士「何度か冒険者に襲われた事がある。そこで調べた」

武士(このヒト襲われる側なのか……)

183 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:35:42.45 ID:GJOYYYEh0
巫女「有望な冒険者に仕事を与え、経済を回します。連中は普通の人達じゃ受けないような仕事も受けてくれるので、こちらとしては大助かりしてます」

巫女「何よりそういう身元も碌な連中ではない者の集まりですし、潰しも効いて使い勝手がいいんですよ」

巫女「一応人と成りをみて与える仕事の判断はしていますけど」

剣士「通称死の商人共だ。戦乱があればそこにはコイツらが確実にいる」

巫女「そう呼ばれても仕方ないですね」

商人「しかしそんな偉そうなお方が何故地方にブラブラとしてるんですかねぇ、商人まで騙(かた)って」

巫女「偽っているつもりはありません。何も物を売り買いするだけが商売ではありませんので。あなたもそれくらい分かるでしょう」

巫女「この野盗を追っていたのもありますが……まぁ、貴女たちに話したように、ほとんど私用ですが」

商人「それが黄金の果実って訳だ」

巫女「ええ」

184 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:36:08.88 ID:GJOYYYEh0
少女「神さまの血筋ってのは?」

巫女「単純です、ウチは神さまの血を引いているんですよ」フフン

少女「へー」

武士「すごいねー」

剣士「ふぅん」

商人「次行きましょう次」

巫女「全員興味なさそうなのでこの話はまたとっておきます」

185 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:36:44.00 ID:GJOYYYEh0
巫女「森の外にウチが呼んだギルドの増援がいますので事後処理はこちらでやっておきます」

武士「……あのヒトどうするの?」


「」チーン


巫女「処刑まではするつもりはないので彼には第二の人生を強く生きてもらいましょう」

剣士「もしかしたら死んだ方がマシだったかもしれんな」

少女「……」

商人「見ちゃダメ見ちゃダメ」

186 : ◆cZ/h8axXSU [saga]:2020/06/14(日) 19:38:02.32 ID:GJOYYYEh0
巫女「ともかく……皆さんお疲れさまでした。ギルドの代表として感謝します」ペコッ

商人「ハッ、ったく体よく手伝いさせられたと思うと煮え切らんね。タダ働きだよこっちは」

武士「ははは……ちちうえははうえにいさま方ねえさま方……イクサはひとをころしてしまいました……あははは」

剣士「……ハァ」

巫女「そうそう、こいつらギルドで指名手配してた連中なので皆さんには報酬金が出ますよ」
商人「ハッハッハ!兎ちゃんこの後用事ある?一緒に飲みに行かない?」ガバッ

巫女「離れろ行間を開けろ近い暑苦しい」

武士「美味しいもの沢山食べにいこ兎ちゃん!!」パァァ

剣士「なんだか知らんが貰えるものは貰っておくぞ」



少女「なんて現金な人達なんだ」

巫女「お金絡むとヒトはこんなもんです。一つ大人になれましたね」
187 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/14(日) 19:38:39.85 ID:GJOYYYEh0
小休止
188 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:03:46.92 ID:xHJy0M/N0
再開
189 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:04:16.42 ID:xHJy0M/N0
……

巫女「という訳で、お金だけ渡すのも味気ないと思いましてウチの奢りで今日は豪勢に行きたいと思います」


商人「オイてめぇ誰の許しを得て喰ってんだ!?部外者だろ!?あ!?それ私の!!」

剣士「あのウサギとやらに誘われたんだ、断るのも忍びないだろう」モグモグ

武士「おいひい……おいひい……」モグモグ


巫女「聞いてないですね。まぁ楽しんでください」

少女「ほ、本当にいいの?こんなに……」

巫女「連中には手を焼いていたのでこれくらいは。まぁこれはギルドから出た調査費ですのでウチの財布は傷まないです」

少女「それって横領……」

190 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:04:42.71 ID:xHJy0M/N0
武士「でも驚いたよー。兎ちゃんがまさかなんか変な組織の幹部だったなんて」モグモグ

巫女「変な組織言わない。真っ当なお仕事してます」

剣士「んぐ……真っ当というのなら何故ギルドの連中は私を襲った。そこのところ聞きたいのだが」

巫女「さっき言ってましたね。襲われたことがあるって」

巫女「調べたら貴女指名手配されてましたよ」

商人「オイ」

剣士「しらん」

巫女「本人が知らんとは何事だ」

191 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:05:10.78 ID:xHJy0M/N0
剣士「なんだ?ここで捕まえるか?」チャキ

巫女「そんな野蛮な事はするつもりはありませ。それよりも取引しませんか?」

剣士「言ってみろ」モグモグ

巫女「簡潔で助かります。ギルドと契約して冒険者登録を行ってウチの専属になりませんか?」

商人「私兵か?そりゃまた大きく出たもんだ」モグモグ

武士「やっぱこういうのって腕の立つ人はスカウトされるもんなんだね」モグモグ

巫女「そう大袈裟なものじゃありません。ただギルドの依頼をウチ経由で優先的に回すってだけです」

巫女「見たところ食いっぱぐれるような事が無ければ貴女も変な行動は起こさないでしょう」

剣士「考えておこう。いつまでに返事をすればいい」モグモグ

巫女「一応ウチがこの街を出るまで……まだ期間は十分あるのでいい返事を待っています」

192 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:06:16.46 ID:xHJy0M/N0
少女「逆に飲まなかったら指名手配犯のままだよこれ……」

剣士「その時はその時だ。私はそれでもかまわんが」モグモグ

商人「要するにこの狂犬放置してたら返り討ちにあう冒険者が多いからギルドで飼っておこうって事でしょ?」モグモグ

巫女「そう大っぴらに言わんでもいいでしょう」

商人「事実だろ。貴女としては他人に飼われるのはプライドが許さないんじゃないですか?」モグモグ

剣士「そんなものは捕え様だ。飼い犬と言えばそうだろうし、雇われと言い張ればそうなる。考え方は人によって変わる」モグモグ

剣士「どちらにせよ、食うに困らなくなるんだ。選ぶ選ばんは私の自由だが、余程の理由が無い限り断るヤツもおるまい」モグモグ

剣士「さて、その飼い犬は果たして忠犬か狂犬のままか……まぁ、試せば分かるだろう」モグモグ

商人(言動よりは馬鹿ではないんだなこの娘は)モグモグ


巫女「咀嚼(そしゃく)音が気になって段々イライラしてきました」

193 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:06:42.81 ID:xHJy0M/N0
武士「兎ちゃんは食べないの?」

巫女「食べてます。あなたたちが食べ過ぎなんです」

巫女「大体意地汚いんですよ……貧乏人と無職と没落貴族が」ボソッ

商人「オイてめぇ聞こえてるぞ誰が貧乏人だゴルァ!!」

剣士「否定は出来ん」

武士「私の家没落してないからね!?」

少女「まぁまぁ……」

194 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:07:09.42 ID:xHJy0M/N0
巫女「さて、これだけの料理で釘づけになっている所申し訳ありませんが林檎ちゃん」

商人「んあ?なに?」

巫女「貴女なんであの森に居たんですか」

商人「〜♪」ピュー

巫女「ワザとらしく誤魔化すな。飯食った以上は喋ってもらいますよ」

商人「ギルドの金だろ……ったく」

武士「そうだよ林檎ちゃん!!もしかして私達に店番任せてる間に一人で黄金の果実探しに行ってたの!?抜け駆けだよ!!」

商人「チッ、バレちゃあ仕方ないですね。そうですよ、私がお宝を独り占めするためにちょいとね」

武士「酷い!!」

195 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:07:35.91 ID:xHJy0M/N0
商人「だってそりゃこんな短期間で二人も眉唾なお宝狙ってたってなったら誰だって存在するかどうか気になりますよ」

商人「だが結果がこれだ……もう懲りたよ」

武士「むぅ」

巫女「そうは言っても冒険で見つけたものはその発見者が所有する権利があります。早い者勝ちは悪いことじゃないですよ。いい気はしないですけど」

武士「そりゃまぁ……」

商人「……騙す事になっちゃって申し訳ないです……ごめんなさい」ペコッ

巫女「素直に頭を下げるとは、余程反省しているんですね。仕方ない、今回だけですよ」

武士「しょうがないなぁ。でももし探すなら今度から私も誘ってよ!」

商人「二人とも……」



商人(ハッハー!!騙されてやんの!!反省してませーん!!)プークスクス

少女(息を吐くように嘘と嘘を重ねて喋ってるヒトが今私の目の前にいる……)

196 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:08:04.09 ID:xHJy0M/N0
巫女「それで?何か森で見つけたものは無かったんですか?」

商人「特には……あーまぁ……」

剣士「おい、あれは何だったんだ?動く木だ」

商人(まぁそこに触れるわな……)

武士「ん?なにそれ?」

巫女「動くとは?」

剣士「私とコイツが戦っている最中に足場が崩れて地下洞窟まで落とされたんだ」

商人「それが二日前、私が街から出た日です」

巫女「で、そこから丸一日寝てたと」

商人「流石にあの高さから落ちればね……」

武士「何故林檎ちゃんは軽症でもう片方は足が折れてるの……」

剣士「そいつが頑丈なだけだろう」

197 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:08:32.18 ID:xHJy0M/N0
商人「目が覚めた後私の弁当がヤツの腹に消えたあと、そのまま洞窟の中をさまよっていました」

巫女「不要な情報は喋らないでください」

剣士「その先で大きく開けた空間があった。その中央に動く木があったのだが……」

少女「なに?クネクネと動いてたの?」

商人「そんなポップな感じじゃないですよ」

武士「むしろ怖いよそれ……」

剣士「私達が近づくと逃げるように、地形ごとだ。地形ごとアレは場所を変えていった」

巫女「偶然足場が崩れた……などではなく?」

商人「そこまでは分かりません。んでも、私達にはアレが逃げたように見えたってだけです」

198 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:09:03.01 ID:xHJy0M/N0
剣士「それよりも、お前はアレを"みつけた"と言って必至こいて追いかけていったが、何だったんだ?」

商人(迂闊に行動し過ぎたな。こいつがここまで口が軽いとは)

武士「まさか黄金の果実!?」

商人「ええ……あ、いえ。実の方は確認していないんで分かりませんが、私はあの木がもしかしたら……と思っただけで」

巫女「ぷっ……」

商人「ん?なーに笑ってんだ?」

武士「今の話に笑いどころあった?」

巫女「フフ……いえいえ、お二人とも少し勘違いを起こしているようで」

武士「へ?」

199 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:09:40.30 ID:xHJy0M/N0
巫女「黄金の果実はそう呼ばれている神器の名称であって、本当に果実という訳ではないんですよ。まぁ形状自体は本当に果実らしいですけど」

武士「???」

商人「あぁ……」

少女「どういう事?」

商人「あくまで黄金の果実という神器であって、それは木の実という訳ではない。木に生っている訳ではなく漠然と存在している物……って言いたいんでしょ?」

巫女「その通りです」

武士「あー、神様が果実を作ったんだから木に生ってる訳がないのか」

剣士「そうなのか?」

商人「そういうもんなんですかね」

200 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:10:11.02 ID:xHJy0M/N0
少女「実際どうなのお姉ちゃん?」

商人「言われてみりゃ確かにその通りだ。アレは神の創った果実であって木から自生した訳じゃない」

商人(だが侮るなよ、神器は人知を凌駕する)

巫女「それじゃあこの話は一旦終わりですね。ウチも引き続き森の探索はしますけど」

商人「ギルドからヒト出すのか?」

巫女「いえ、今時そんな古い伝承の神器を探してる物好きはそんなに居ません。私が冒険者の一人として個人的に探索するつもりです」

少女「イクサちゃんはどうするの?」

武士「私も探したいのはやまやまなんだけど……」

商人「オラ、借金返せよ」

武士「いつの間にか、食事代が借金扱いになってて……」

巫女「この世の悪の塊ですねこのヒト」

商人「HAHAHA☆」

201 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:10:37.03 ID:xHJy0M/N0
巫女「なんならウチが立て替えましょうか?」

武士「ほんと!?」

商人「オイまて余計な事すんな、ウチの店番が居なくなるだろ」

少女「出たな本音」

武士「んー……やっぱりいいよ」

巫女「なぜ?この女に関わってるとケツの毛一本残らずむしり取られますよ」

武士「けッ……兎ちゃん結構下品だよね……」

202 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:11:05.87 ID:xHJy0M/N0
武士「借金の方は大した額じゃないから今回の報酬でほとんど支払えたし」

武士「残りは林檎ちゃんのところでアルバイトして返そうかなって」

武士「私、今日までの事で色々と学ぶことが多くて……自分がいかに世間知らずだったかってのを思い知らされた気がして」

巫女「ですね」

武士「肯定は割と心に刺さるからやめて」

武士「妹ちゃんとも仲良くなれたし、私はしばらくこのままでいいかなって……」

少女「イクサちゃん……」

商人「いい話風に締めようとしてっけど早く返さねぇと利子で膨れ上がるぞ」

武士「悪魔!!!!!!!!!!!!」

商人「ハッハッハ、かつてないほど力強いセリフだ」

203 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:11:33.50 ID:xHJy0M/N0
少女「私もイクサちゃんが居てくれると助かるな」

武士「というわけで、この林檎ちゃんたちが街から出るまでの間はお世話になるよ。あ、でも私も黄金の果実は探しに行くからね!!」

商人「分かってるよ。抜け駆けしちゃった身としてはそこは文句は言いません」

巫女「それで、貴女は?」

剣士「行くアテがないし足も折れてて何も出来ん」

少女「足折れてんのに一番暴れてた気がするのですがそれは」

商人「おっと忘れてた、ちょっと待ってな」ゴソゴソ

204 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:12:01.50 ID:xHJy0M/N0
商人「またちょいと足見せて」

剣士「ん」

商人「失礼!」グサッ

剣士「ッ……それはなんだ?」

商人「治癒魔法を通すための器具です。さっき私が治すって約束したのほっぽりだしてましたからね」

巫女「ほう……随分と変わった物を持っているんですね」

商人「これも色んな地方を回ってる時に買ったものです。あぁ、動かない動かない、そのままそのまま」

205 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:12:42.15 ID:xHJy0M/N0
武士「治癒魔法は使える人が限られているって聞くけど」

巫女「それも、魔法が使える人材を迫害するようなこのご時世で……全く、もうそんな時代は終わるというのに」

巫女「しかしよくそんなものを見つけられましたね」

商人「それはまぁ……人のつながりって奴ですよ。私には私の大冒険がありましたからね。聞きたいですか?」

巫女「長くなるならいいです」

商人「でしょうね。私も易々とは話す気はないかな……気分はどうです?」

剣士「目が回る、吐きそうだ」

商人「えぇ……」

武士「もしかして不良品?」

剣士「冗談だ」

商人「ビックリした!!」

少女「……」

206 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:13:22.40 ID:xHJy0M/N0
少女「これ、いい道具だよ」

商人「ん?」

少女「これを揃えて作った人は、他の人が使いやすいように魔力を通す回路を丁寧に記している」

少女「お姉ちゃん、結構魔法の使い方が荒いから、治癒魔法がそんなに上手じゃないんだけど」

少女「でも、この道具はそれを補ってお姉ちゃんの魔力を通している」

少女「確かに、ちょっと高価な素材で出来てるけど、この道具を布教しようって思って精一杯コストダウン図ったんじゃないかな」

商人「……」

巫女「……」

武士「……」

剣士「……」

少女「ん?どしたのみんな」

207 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:14:06.29 ID:xHJy0M/N0
巫女(指輪の価値を一発で見抜いた辺りから気になってましたけど)

武士(この娘、どうやってそういう所見抜いてるんだろう)

剣士(意味ありげに黙ってみたが話が見えん)


商人「……この道具は、とても優しい女の子から買い取った物です。それも格安で」

少女「え?」

商人「その娘は、流行病で家族を失い、そして自身は魔法を使えるという事で周りから謂れのない扱いを受けていました」

商人「そんな娘が、多くの命を救いたいといって残したものがこの道具です。私は喜んでこれを買い取りました、私自身も色んな人に広めるためにね」

巫女「それ、ギルドでも取り扱いしたいのですが、製作者はどこに?」

商人「さぁ、もうこの世にはいないんじゃないでしょうかね」

巫女「訳アリみたいですね」

208 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:14:56.63 ID:xHJy0M/N0
商人「この道具を持っているのも私くらいですし、もう新しいものは望めないと思います」

少女「……その子は、幸せだったのかな」

商人「さぁ……私には分かりませんが」

商人「きっと幸せだったんじゃないでしょうか。ガラスの海で、愛する人を待つ彼女は……」

武士「あ、聞いた事ある。それって確か童話の話でしょ」

剣士「確か、優しい声は竜の……」

巫女「じゃあ林檎ちゃん、その道具を買い取らせてもらってもいいですか?」

商人「はい、勿論。まだ他にも備蓄は沢山ありますし、いいですよ」

209 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:17:48.08 ID:xHJy0M/N0
巫女「ギルドで量産できるのならそうした方がよさそうですね。中々いいものです」

商人「……」スッ

巫女「……?」

商人「……」ススッ

巫女「何ですかこの手は?」

商人「ライセンス料」

巫女「は?」

商人「私しか持ってない道具」

巫女「……林檎ちゃん?」

商人「くれよ」バァ――z___ン


少女「ハハ、ウチの姉悪魔だったって事忘れてたわ」

剣士「まったく悪びれる様子も無くああいう事を言えるヤツは初めて見た」

武士「上の流れ全部ぶち壊しだよ」
210 : ◆cZ/h8axXSU [sage saga]:2020/06/16(火) 19:18:43.22 ID:xHJy0M/N0
小休止
この物語の主人公は基本的に悪魔
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/15(土) 15:12:28.42 ID:dXyScYcZo
2ヶ月
212 : ◆cZ/h8axXSU [sage]:2020/08/16(日) 00:55:21.86 ID:4hk+cMrl0
スマネェ…
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/16(日) 11:24:39.76 ID:inOBFsj2o
生きてたか
待ってるぞ
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/29(火) 18:17:55.87 ID:OMHDxVDl0
もうすぐ10月だな
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/11/15(日) 03:31:09.94 ID:r5wHB/UiO
6年以上この人のssの更新をせっついてる計算になる
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/10(日) 15:46:36.09 ID:AedzkFluO
まだかなーまだかなー
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/12/29(水) 01:52:06.70 ID:G/gNiSU1o
これは大作
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/02(金) 21:27:54.75 ID:gpT0EnXW0
保守








まもなく2年☆
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/06/02(金) 21:30:21.30 ID:uopqdnREO
間違えた…



もう3年………(ガクッ
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