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高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「今日も、私とあなたとの時間を」
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102 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:06:26.09 ID:WDIZ97tn0
「あ……」
加蓮ちゃんが、歯をぎゅっと食いしばります。謝ろうとするその口の動きを、手で制しました。
「……加蓮ちゃん。私は、加蓮ちゃんのことを知らなくて、分からなくて、加蓮ちゃんも、私のことを知らなくて、分からなくて……最初は、そうでしたよね」
「でもっ」
「うん。たくさんの時間を一緒に過ごして、分かることや知っていることが増えてきました。でも……それはきっと、全部じゃありません」
「っ……」
「そしてきっと、これからも、全部にはなりません。……もしも全部になった時は、その時はきっと、一緒にいたくなくなっちゃいますから」
私と加蓮ちゃんはよく同じことを考えたりします。メニューを選ぶ時に、同じものを指さすことだってよくあります。
同じところがあって、違うところもある。
だからこうして、喧嘩をして、ぶつかって……傷ついて。
傷つきたいとは思いません。けれど、傷つくことを拒んではいけないんだって思います。
だって、そうしたら。
「でも、違うからって、知らないからって気付くなって言うのなら、誰が加蓮ちゃんの本音に気付いてあげられるんですかっ!!」
私でなくてもいい。……ううん、それは嘘。私でいたい。
心が寂しがっているのなら私が包み込んであげたい。優しくしてあげたい。
お返しなんていらない。……ううん、それも嘘。同じだけ優しくしてほしい。
誰かに助けてもらったことを、覚えていてほしい。加蓮ちゃんがいつか、優しくしてあげられることになるから。
「……」
「……」
「……」
「……藍子」
「はい。何ですか?」
「1回だけ言わせて」
「どうぞ」
「ごめん」
「いいえ。私の方こそ、ごめんなさい」
「……ねえ、教えて。この不安は、どうすればなくなるの?」
103 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:06:57.18 ID:WDIZ97tn0
「そうですよね。そのお話でしたっ」
「……もう。忘れちゃってたの?」
「ふふ。つい」
いつの間にか、カフェに音が戻ってきていました。他のお客さんの話し声や、お皿の音。遠くから、じゅう、って音がして……いい匂いは、うぅ。お腹が鳴っちゃいそう。
あ……さっき、私が大声を出した時にみなさんがびっくりしてしまったようで、それについては謝り回りました。
いつもごめんなさい……。
「加蓮ちゃん」
「うん」
「いつも努力を続けている加蓮ちゃんに、これ以上頑張れ、なんて言ったら、プロデューサーさんやファンのみなさんに怒られてしまうかもしれませんけれど」
「みんなサボってても過保護でうるさいから大丈夫だよ」
「えぇ……。……どこに行けばいいか分からなくなった時。なんとなくで、不安になった時は、道を見つけましょ?」
「道――」
「新しいことをやってみたり、これまでのことを振り返ってみてもいいかもしれませんね。その中に、今度はこれをやってみたい、って思うことがあるかもしれませんよ」
「見落としてるもの、ってことかな……」
「はいっ」
加蓮ちゃんは、額に手を置いて何やらぶつぶつ言い始めました。これまで立ったステージや頑張ったレッスンのことを思い出しているのかな?
「それから、加蓮ちゃん?」
「うん。……え、なんか怒ってる?」
「はい。勢いで言ってしまうのはわかりますけれど、いきなり「違う」って叫んだら、びっくりしちゃいますっ」
「……ぁー」
104 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:07:26.17 ID:WDIZ97tn0
「加蓮ちゃんは……加蓮ちゃんのことを知らない人が、分かったようなことを言ったら、腹が立ってしまうかもしれませんね」
「いや、待って。あれホントに勢いっていうか藍子は知らない人じゃな、」
「加蓮ちゃん」
「ハイ」
「その時は、叫ぶ前に1度だけ落ち着きましょう。もし、それでも違うって思ったら、怒鳴るのではなくて、落ち着いて言いましょ? ほら、加蓮ちゃん。クールで、ミステリアスさんになるんですよね」
「あ……ははっ。そうだった。うん、そうそう。ミステリアスガール、まだ諦めてないんだっ」
こんな感じ? って言いながら、加蓮ちゃんは不敵に笑います。でもそれはちょっと違う気がして、じゃあ真似してみてよって言われました。
真似……クールな人の真似。ええと、凛ちゃんや蘭子ちゃんを真似すればいいのかな?
思い浮かべて試しにやってみたら、加蓮ちゃんから大笑いされちゃいました。そして、それはただの中二病だって言われちゃいました。
(さすがに何をやったのかは許してください! 凛ちゃんや蘭子ちゃんがやったら格好いいのにっ)
私と加蓮ちゃん、一緒に深呼吸して落ち着いた頃には、もう夜の8時。
外はいつの間にか真っ暗で、カフェには他のお客さんがいなくなっていました。
店員さんも、閉店時間は9時ですけれど、そろそろお店じまいムードです。
105 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:07:55.81 ID:WDIZ97tn0
藍子「…………っ。う、ぁ〜っ!」
加蓮「お疲れ様。……本当にありがとう、藍子」
藍子「なんだか疲れちゃいました……」
加蓮「あとは最後のところだけでしょ? ほら、パッと書いちゃお?」
藍子「うん……。でも、ちょっとだけ。……10分だけっ」
加蓮「はいはい。……にしても、……冷静になって考えると酷いなぁ、私」
藍子「こらっ」ペチ
加蓮「あたっ」
藍子「それは言わないお約束です♪ 不安になってしまうことなんて、自然なことです。それで怒ってしまうのも……」
加蓮「でもさ、……いや。ううん」
106 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:08:25.81 ID:WDIZ97tn0
加蓮「あのさ。もっかいだけ言っていい?」
加蓮「……ありがとう、藍子。いつも話を聞いてくれて、想いを受け止めてくれて」
藍子「どういたしまして。そして、私もっ。加蓮ちゃん、ありがとう。いつも一緒にいてくれて。お話を聞いてくれて♪」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……たははっ」
藍子「ふふっ」
加蓮「だからさ、そーいうのこっ恥ずかしいからやめよ?」
藍子「本当。加蓮ちゃん、顔が真っ赤ですよ」
加蓮「はー? ほら、さっさと続きを書けっ。持ち帰って夜遅くまでとか絶対ヤダだからね!」
藍子「きゃ〜っ。完成まで付き合ってくれるって言ってくれたのに〜っ」
107 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:08:55.80 ID:WDIZ97tn0
晩ご飯をここで食べようかな、とも思いましたけれど、今日はやめにします。
スマートフォンで、お母さんに連絡を……開いたら、たくさんのメールが来ています!
お母さん、ものすっごく怒ってるっ。
思わず助けを求めようとすると、加蓮ちゃんもげんなりとした顔をしていました。どうやら、お互い同じことが起きちゃってるみたい。
「今日は藍子の家に泊めてっ」
「加蓮ちゃん。今日お邪魔してもいいですか?」
私たちは同時に言いました。このままではキリがないので、お互いにお母さんからのメールを見せあって……。
まだ、あまり怒っていなさそうな加蓮ちゃんの家に私がお邪魔することにしました。
108 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:09:25.30 ID:WDIZ97tn0
加蓮「……ちなみに今も同じことが起きてたりするんだよね」
藍子「えっ? わ、7時! 外は、まだ明るいのに……」
加蓮「この時よりは夏に近付いたからかな。まっ、今日は遅くなるってあらかじめ言ってるからお母さんもうるさくは……」
加蓮「……」
藍子「メールが届いていたんですね……」
加蓮「何なの……。藍子ちゃんに迷惑かけてない? って。1時間おきに送ってくるとか何がしたいの……??」
藍子「あははは……。あっ、私の方にも届いてます。そろそろ迎えに行った方がいい? だそうですよ」
加蓮「藍子のお母さんが優しくてうらやましいよ……」
109 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:09:55.17 ID:WDIZ97tn0
連絡をすると、もうなんだか今日が終わってしまったように、そして、さっきまでお話していたのが別の日の出来事のように、私も加蓮ちゃんも、ほとんど話さなくなりました。
加蓮ちゃんのお母さんが迎えに来た時も、静かすぎて、「加蓮が何かしちゃったの?」と言われてしまうくらい。
でも、加蓮ちゃんの顔を見て、それは違うんだって分かってくれたみたい。
加蓮ちゃんの家にお邪魔して、晩ご飯をいただいて、お風呂をお借りして……その間も、何もお話することはありませんでした。
それは、カフェの中であった無音の世界とはぜんぜん違う、一緒にいるんだってことが分かる時間で、心地よかったですっ。
11時を回った頃、一緒にお布団に入って。
今日は、これにておしまい……。またカフェに行った時は、いっぱいお話しましょうね。加蓮ちゃん。
110 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:10:25.70 ID:WDIZ97tn0
藍子「お母さん、そろそろ迎えに来て。加蓮ちゃんが泊まりたいって言っているけれど、いい? ……はい、送信っ♪」
藍子「あとは、最後のあいさつを書いたら完成です!」
加蓮「ふふっ。……たった1日しか使ってないのに、なんだかすごく時間をかけた気分」
藍子「加蓮ちゃんも? 私もっ。……どうでしょうか。私の見ている世界、みなさんに伝わるかな?」
加蓮「えー、そこで不安になる?」
藍子「つい……」
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:10:55.67 ID:WDIZ97tn0
加蓮「伝わるよ。絶対に。だって藍子のファンだもん。きっとみんな優しくて、藍子の言葉を受け止めようって思ってくれるよ」
藍子「……加蓮ちゃん」
加蓮「んー?」
藍子「今日は、ありがとうっ。あとは……胸を張って、みなさんのもとにお届けします!」
加蓮「どう致しまして。……あははっ。もうっ。お礼を言うの、今日で何回目?」
藍子「何度だって確かめていいって言ったの、加蓮ちゃんじゃないですかっ」
加蓮「まぁね? ほら、藍子。締めの挨拶を書かなきゃ。藍子のお母さんを待たせることになっちゃうでしょ?」
藍子「ああっ、そうでした。え〜っと――」
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:11:26.13 ID:WDIZ97tn0
――これが、私のある1日のことです。
もちろん、別の日には違うことがありました。
1人でお散歩する日もあれば、みなさんと一緒にお仕事に行ったり、未央ちゃんや茜ちゃんと遊んだり、学校でクラスメイトとお話したり。
もしかしたらその時のことも、いつかこうしてみなさんにお話する時が来るかもしれません。
色々な出来事が起こる日々の中で、一番印象に残っている時間は……カフェで、加蓮ちゃんと過ごす時間。
これまで、たくさんの時間を過ごしてきました。この時みたいに、回りでのできごとに笑い合ったり、時には、大喧嘩もしてしまいます。
加蓮ちゃんに、やってほしいなって思ったり、なってほしいなって思うことは、今でもたくさんあります。
好きってたくさん言ってほしかったり、自分のことを悪く言う癖を直してほしいなって思ったり。
色んなことがあって、色々なことを考えますけれど……。
それを一言で表すなら、きっとこの言葉になると思います。
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:11:55.58 ID:WDIZ97tn0
『今日も、私とあなたとの時間を』
【おしまい】
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/05/10(日) 19:12:26.95 ID:WDIZ97tn0
【あとがき】
4年ほど前、第28.5話『北条加蓮と高森藍子が、静かなカフェテラスで』のあとがきで、
私は「加蓮と藍子が一緒にいるところを、ちょっとだけでも想像してほしいなって思います」と書きました。
あの時に比べて今、
加蓮と藍子の2人のことを好きだと言ってくださる方が、いっぱい増えました。
「蓮藍」という呼び方が主流にもなりました。
2人の映るスクリーンショットを見る機会が増えました。
ここが好きだというお話もたくさん見るようになりました。
すごく、嬉しいです。
この2人のことを好きになってくださったこと、心から感謝します。
ありがとう。
115 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/05/12(火) 00:31:31.34 ID:/jhXamT20
普段から拝見しています
元々藍子Pでしたが、このシリーズをきっかけに加蓮Pにもなりました
加蓮に出会えたこと、本当に感謝致します
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