絶対に笑ってはいけない勇者一行

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170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:05:36.83 ID:a+I1EmaE0

僧侶「思わずほほえんでしまうところでしたよ、勇者様」

笑わせ師「別れの挨拶は済んだみたいだな。ところで、お前の弱点ってのはなんだ?」

僧侶「笑ってからのお楽しみですよ」

笑わせ師「ふーん、まあいい。さっさと決闘を始めよう」

僧侶「その前に、一つお尋ねしたいことがあります。あなたたちは人間なのに、どうして魔王の味方に?」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:07:01.12 ID:a+I1EmaE0

笑わせ師「……なんで俺が、大会で辞退したかわかるか?」

笑わせ師「降ろされたんだよ!!笑わせ師協会のお偉いさんどもからな!!!」

笑わせ師「リズムネタなんて邪道!!漫才や大喜利で人を笑わせるのが、笑わせ師だって言われてな!!リズムネタをやるなら踊り子にでも転職しろと言われたよ!!」

笑わせ師「人間界の不条理に耐えきれない!!大会の日までは魔界と人間界の共存を少しは考えていたが、完全に吹っ切れたよ!!あのトロフィーが笑いの決闘ボタン付きだとわかってたら、俺も辞退するなんて愚かなことはしなかった!!」

僧侶「……元から魔王の配下にいた四天王の魔物は?」

笑わせ師「僕たち四天王は、元冒険者一行だ!!魔物四天王を倒した後、魔王様に今の地位をもらったんだ!!僕らは勇者のいないパーティーだったがな」

僧侶「そんな……」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:07:39.29 ID:a+I1EmaE0

笑わせ師「思い出話はいい。お題を決めたい」

僧侶「……リズムネタなら引き受けませんよ」

笑わせ師「いや、リズムネタ以外でやるつもりだ。ここまで来た君が、僕のリズムネタで笑うとは思えない。あれは人を笑わせるものじゃない。ニコニコさせるものだ」

僧侶「……ニコニコ?」

笑わせ師「うむ、お題はどう公平に決めようか……」

トコトコ…
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:08:36.77 ID:a+I1EmaE0

上級魔物「あのトラックは危険だ……逃げているうちに上層階の部屋まで来てしまった……」

上級魔物「眼鏡を落としたのが最悪だ。ろくに景色も見えやしない。困ったな、『新卒の採用面接』で忙しいというのに。勇者の奴らめ……」

僧侶・笑わせ師「(新卒採用!?王道のネタ!!)」

笑わせ師「あの、すみません」

上級魔物「ん、人間かね?声に聞き覚えがあるが……こんな上層階に何の用だ?」

僧侶「(……笑わせ師が四天王だと気づいてない)」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:09:44.26 ID:a+I1EmaE0

笑わせ師「お初にお目にかかります。新卒の採用面接を受けに来たものです」

僧侶「わ、私もです!!城の中で迷ってしまって……果てしなく歩いていたらここに着いていて」

上級魔物「なるほど。人間が四天王になってから人間枠の採用もできたからね。でも残念ながら今日は緊急事態が起きて中止になったんだよ」

笑わせ師「それじゃあ面接は受けられないんですか?」

上級魔物「そうだね、残念ながら」

笑わせ師「でもどうしても、憧れの御社に入りたいんです。入社希望の手紙をいくつも送っていました!」

僧侶「パスポートの関係で、再びいつここに来れるのかわからないんです。今日でなければ駄目なんです!」
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:10:16.64 ID:a+I1EmaE0

上級魔物「…………」

上級魔物「(日々の仕事に追われて、手紙を見落としてしまっていた。これだけ熱意のある人間の面接を拒んだことが後でしれたら、人間四天王からの評価が下がる可能性がある)」

上級魔物「(こいつらは形だけでも面接して、採用にしておいた方が私の評価のためには良さそうだ)」

上級魔物「……わかった!君たちの熱意に負けたよ。今から面接をしよう!」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:11:05.74 ID:a+I1EmaE0

上級魔物「それでは、面接を始めます。自己紹介からお願いします」

笑わせ師「笑わせ師と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

僧侶「僧侶と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

上級魔物「順番に質問していきますね。まず、笑わせ師さん。弊社を志望する理由はなんですか?」

笑わせ師「圧迫面接だっ!!!!!!!」


デデーン 僧侶 タイキックー

僧侶「全然普通の質問なのにwwww」

僧侶「しまった……」


バチーーーーン!!!!


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:11:44.51 ID:a+I1EmaE0

僧侶「(うぐぅうううううううう!!!死ぬぅうううううううううう!!)」

上級魔物「(なんだ今の音は、階下からか?誰かうめいてる気もするが視界がぼやける……)」

上級魔物「それにしても君!こんなのは全然普通の質問だよ。もういい。僧侶さんの志望理由は?」

僧侶「いたた……私は昔から魔王様に憧れており、人間のスパイとして御社で働くことでお役に立ちたいと考えていました……」

僧侶「(痛みのあまり普通に答えてしまった……)」
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:12:36.14 ID:a+I1EmaE0

上級魔物「なるほど、良いでしょう。では公平性を期するために、次は僧侶さんからお尋ねします。今まで一番力を入れてきたことは何ですか?」

僧侶「セクハラですか!!!!!?」

デデーン 笑わせ師 タイキックー

笑わせ師「過敏過ぎるwwww」

笑わせ師「しまった……」

バチーーーーン!!!!

笑わせ師「(ぎぃいいいいいいいやぁあああああああ!!!!!!)」

上級魔物「せ、セクハラなんて誤解だ!!ええと、君!!力を入れてきたことを答えて!!」

笑わせ師「いてて……今、一番力を入れています……」

上級魔物「面接に対してかね?そういう変化球の回答は印象がよくないよ。さて、次の質問だ」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:14:16.88 ID:a+I1EmaE0

上級魔物「笑わせ師さん、あなたの成功体験を教えてください」

笑わせ師「はい。私は笑わせ師として、地方の飲食店でアルバイトをしていました。そのお店では月に1度ほどショーを開催するのですが、最初に踊り子が、次に笑わせ師が出場する順番となっています」

笑わせ師「ある日の夜のショーで、僕が新しいネタに挑戦したところ、全くウケずに白けてしまったんです。一人宿屋に戻って落ち込んでいると、ノックの音が聞こえました。ドアを開けると踊り子さんが立っていました。年上の女性で、ベテランの方です。僕のことを心配して来てくれたんだと思いました」

笑わせ師「暖かい飲み物をつくってくれて、飲んでいるうちにふと涙が出てしまいました。すると、彼女が僕にそっと口づけをして、ベッドに押し倒したんです。ウブな僕は何が起きたかわからず混乱していると、彼女がいきなり脱ぎだして……」

上級魔物「性交体験じゃない!!!」

デデーン 僧侶 タイキックー

僧侶「お題の時点で予想はしてたのに……」

バチーーーーン!!!!
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:15:02.12 ID:a+I1EmaE0

上級魔物「ええと、君の成功体験は?」

僧侶「私の成功体験は……今生きていることです……」

上級魔物「そういう変化球の回答はやめたほうがいいと言っているでしょう。さぁ、次の質問に行きましょう」

僧侶「はい……」

上級魔物「では僧侶さん。あなたを物に例えるとなんですか?」

僧侶「油圧シリンダです。クロームメッキと青銅系鋳物を使用してロッドの損傷を防止しているかの如く耐久性に自信があります。また、サージ圧力を半減させ、スムーズに停止するクッション機構のように周囲との調整を成し遂げます」

デデーン 笑わせ師 タイキックー

笑わせ師「例えがわからなさ過ぎるwww」

僧侶「トラックの部品ですよ」


バチーーーーン!!!!

181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:15:40.21 ID:a+I1EmaE0

上級魔物「君は?」

笑わせ師「いてて……僕は物に例えると……ボロ布です……」

上級魔物「深堀りする気も起きないよ。では、次の質問です。笑わせ師さんは……」


デデーン…

デデーン…

デデーン…

デデーン…

182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:16:11.73 ID:a+I1EmaE0

僧侶「ぐぽ…………」

笑わせ師「うぷ…………」

上級魔物「では、私からの質問は以上です。あなたたちから質問はありますか?」

僧侶「……はい」

上級魔物「僧侶さん」

僧侶「……あなたが今まで一番力を入れてきた体位は何ですか?」

上級魔物「セクハラですか!!!!!?」

デデーン 笑わせ師 タイキックー

笑わせ師「天丼の誘導、お見事……」

バチーーーーン!!!!
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:16:56.60 ID:a+I1EmaE0

笑わせ師「(意識が朦朧とする……)」

僧侶「うぅ…………」フラフラ…

笑わせ師「(でも、こいつもあと一発でくたばる状況だ。次のネタで倒せる……)」

上級魔物「他に質問はございませんか?笑わせ師さんは?」

笑わせ師「(笑いで、素人に負けてたまるか。この女は下ネタに弱い。それで笑わせれば……)」



『アハハハハハ』『おにいちゃんおもしろーい!!』



184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:17:43.34 ID:a+I1EmaE0

笑わせ師「(昔は、王道のネタをやってたな。一人漫才、ショートコント。ブレイクこそしなかったけど、それなりにウケていた)」

笑わせ師「(でも、俺のネタで大勢のひとたちが笑ってくれたのが、リズムネタだった。こどもまであんなにゲラゲラわらったのが嬉しくて、それでリズムネタをやるようになったんだ)」

笑わせ師「(俺はあの時、ある種のプライドを捨てたんだ。俺が求める笑いをやるんじゃない。人が求める笑いをやろうと)」

笑わせ師「(いつの間にか、それが俺のプライドになっていた)」

笑わせ師「……はい。最後に」

上級魔物「笑わせ師さん、どうぞ」

笑わせ師「(いつものように!!)」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:18:29.49 ID:a+I1EmaE0

笑わせ師「オムオムオムオムオムライス!まんまといえばオムライス!ママといってもオムライス!パパといったら鍋だよね?」

笑わせ師「今日もまたー!ミラクルがー!!やってーきたんだよー!」

笑わせ師「傘をさしたら、まあびっくり!」

笑わせ師「内側から雨がふってきた!!」

笑わせ師「オムオムオムオムオムライス!まんまといえばオムライス!ママといってもオムライス!パパといったら鍋だよね?」










上級魔物「はっ?」



186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:19:09.20 ID:a+I1EmaE0

笑わせ師「(……シラけた。そうだよな。大人はこんなの……)」

僧侶「うふふふwww」

デデーン 僧侶 タイキックー


笑わせ師「うっ……くそ……なんでだよ!!」

笑わせ師「お前ならこれくらい我慢できただろ!!無理して笑ってんじゃねえ!!」

僧侶「私の弱点は、愛想笑いが大好きなところです」

笑わせ師「ふざけんな!!」

僧侶「ネタそのものにではなく。笑わせようとしてくれたことが嬉しくて、本当に笑ってしまうのです」

僧侶「参りました」

バチーーーーン!!!!
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:19:42.32 ID:a+I1EmaE0

僧侶「…………」

笑わせ師「気絶したか……」

笑わせ師「…………」

笑わせ師「……ふふっwww」

笑わせ師「ははははwwwwww」

デデーン 笑わせ師 タイキックー

笑わせ師「お前、最後にとんでもない、究極の笑いのテクニックを使いやがったなwww」

笑わせ師「『釣られ笑い』!!」

笑わせ師「笑わせたければ、まず笑えってなwwwww」

バチーーーーン!!!!
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 07:20:09.07 ID:a+I1EmaE0

僧侶「…………」

笑わせ師「…………」

上級魔物「ふたりとも、寝てる」

上級魔物「…………」

上級魔物「……不採用」
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:03:39.35 ID:a+I1EmaE0

勇者「……レッドカーペットが敷いてある。ついに、魔王の間にたどり着いた」

勇者「奥に輝いている球体が見える。あれが、夢に見た卵!」

勇者「魔王はどこに……」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:04:24.47 ID:a+I1EmaE0

「くそー!!まさかのVRオチだったなんてー!!何がコンピュータウイルスじゃあああ!!俺は勇者じゃなかったのかよー!!こんなゴーグル取ってやる!!」

勇者「……お前は誰だ?」

「はっ……ここは。そうだ、俺は勇者じゃない……」

魔王「私は魔王だ。ようこそ、勇者」

勇者「凄い、出会った瞬間からコントが始まっている……!」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:05:14.86 ID:a+I1EmaE0

勇者「まずはこれを!」

ポチ

魔王「“絶対に”笑ってはいけないボタン。そうだな、実力ではお前らは私らには決して勝てないのだからな。一周目がそうであったように」

勇者「一周目!?お前は記憶が残っているんだな!」

魔王「世界中の教会を破壊し、貴様ら勇者の復活の力を奪ったつもりだった。だがここで、イレギュラーが発生した」

勇者「イレギュラー?」

魔王「不死鳥だよ。これがその卵だ。俺がとどめをさす瞬間、貴様はこの不死鳥の卵に触れた。そのせいで、パーティーメンバーもろとも復活できたのだろう」

勇者「なるほど。でも、笑ったら尻を叩かれるというルールは何故?」

魔王「この世には、使うとランダムに何かが起きるという呪文がある。この卵の保護呪文にそれがかけられており、その効果が貴様らに付与されたのだろう。だから私も迂闊にこの卵に手を出せなかったのだが……」

勇者「王様と姫様たちがおかしなテンションで笑わせてきたのも、その影響か……」

魔王「まもなく卵も孵化する。孵化した日の翌日には、保護呪文の影響は消滅する。そのくだらない笑いのルールとおさらばできるぞ。生き延びられればの話だがな」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:06:12.19 ID:a+I1EmaE0

魔王「授業はここまでだ。不死鳥は最初に見た顔を自分の親だと認識する。だから、貴様にこの部屋にいてもらっては困るのだ」

魔王「俺は不死鳥を手なづけ、この世界で最強の存在として君臨するのだからな!!」

バタン!

勇者「扉が閉じた!?」

魔王「並の魔物では開けられぬ仕組みだ。よそ者に戦いを邪魔されたくないのでな。死んだら外に放り出してやろう」

魔王「お題も制約もない、自由な決闘と行こうじゃないか!」

勇者「……望むところだ!!!」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:06:56.20 ID:a+I1EmaE0

勇者「そっちからかかってこいよ。下ネタでも何でも使ってこい」

魔王「ふん。魔族の王たる俺が、下ネタなぞ使って笑いを取るか」

勇者「何?」

魔王「いいか勇者。昔、とある笑わせ師が言っていた。笑いは悲しみと表裏一体なのだと」

魔王「緊張と緩和。意外性と納得感。相反する要素を組み合わせる、魔力を使わぬ魔術なのだ」

魔王「お笑いの真理を応用すれば、どんなくだらないギャグでさえも、高尚なジョークへと昇華できる」

勇者「なんだと……」

魔王「では、試そう勇者。パンはパンでも、食べられないパンは何だ?」

勇者「……フライパン」

魔王「正解は、パンツだ!!!」

ボロン!!

勇者「出てるwwwww」

デデーン 勇者 タイキックー

194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:07:33.42 ID:a+I1EmaE0

勇者「この野郎……」

バチーーーーン!!!!

勇者「痛ぇええええええええ!!!!!!」

魔王「ふん、貴様の5倍の大きさはあろう」

勇者「ずるい……結局下ネタかよ……。下ネタなんて笑うに決まってんじゃないか……魔王のくせにずるいぞ……」

魔王「フリがきれいだっただろう。笑った方が悪い」

勇者「(……くそ、なら俺も下ネタで)」

魔王「勇者よ」

勇者「なんだ」

魔王「次は、絶対下ネタで来い!!」

勇者「!?」

勇者「(こんなこと言われて下ネタを言ったら、笑いが成立しなくなってしまう!!)」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:08:38.93 ID:a+I1EmaE0

勇者「一体どうすればいいんだ……」

魔王「手も足もでないようだな」

勇者「わからない……何をどうすればいいのか……」

魔王「普段下ネタばかり言っていたのだろう。ゲスなメンバーとともに旅してきた運命を呪うんだな」

勇者「……ゲスなメンバー?お前、今俺の仲間を侮辱したのか?」

魔王「そのとおりであろう。あの弱そうな、戦士と魔法使いと僧侶の3人……」

勇者「許さねえ!!絶対に許さねえ!!!」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:09:25.53 ID:a+I1EmaE0

勇者「影分身の術!!」

勇者「シュンシュンシュンシュンシュン!!!!」

魔王「(高速で反復横とびを始めた……)」

勇者「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

魔王「(壁に向かって走り始めた……)」

勇者「これは、戦士の分!!!!」

ガンッ!!!!

魔王「(頭を壁に打ち付けた!?)」

勇者「いて、いって…………うおおおおおおおおおおおお!!!!!」

魔王「(また壁に向かって走り始めた……)」

勇者「これは、戦士の分!!!!」

ガンッ!!!!!!

勇者「……おぇ……きっつ…………」

魔王「…………」

勇者「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

勇者「そしてこれがぁああああああああああ!!!」

勇者「戦士の分だぁあああああああああああああ!!!!」

ガンッ!!!!!!

魔王「全部戦士の分wwwwwwwww」

デデーン 魔王 タイキックー
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:10:15.53 ID:a+I1EmaE0

魔王「くそっ!!来る!!」

バチーーーーン!!!!

魔王「ぬおおおおおおおおお!!!!!!」

魔王「……今までくらったどんな魔術よりも強烈なダメージだ」

魔王「混沌(カオス)ネタとは、考えたな。相手のペースを完全に飲み込む技。仮にくだらないと思われても、そのあまりのくだらなさに相手を笑わせられる術」

勇者「うぉおおおえええ……」ビチャビチャ…

魔王「貴様の方がダメージが多いかもしれんが」

勇者「これで1対1だ……」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:10:43.42 ID:a+I1EmaE0

魔王「なんとも、のんびりとした戦いだ。本来であれば貴様など瞬殺しておるというのに。武術も魔術も使えぬというのがこれほどやっかいとはな」

魔王「これも、使い物にならんて」

ザシュ!

勇者「あれは魔剣……地面に突き立てた!」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:12:15.76 ID:a+I1EmaE0

魔王「AAN(アアン)」

勇者「(身体を剣に密着させて、何を!?)」

魔王「UHHHNN(ウフーン)」

クネクネ…

魔王「I(アイ)」

魔王「LOVE(ラッヴ)」

魔王「PEACE(ピース)」

クネクネ…

魔王「HAAAN(ハァァン)」

勇者「(ポールダンスを始めた!?)」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:12:47.28 ID:a+I1EmaE0

魔王「BABY(ベイビー)」

魔王「COME ON(カモーン)」

クネクネ…

魔王「YO・DA・LE(ヨ・ダ・レ)」

タラ〜リ…

勇者「(剣にヨダレを垂らした…)」

魔王「BABY(ベイビー)」

魔王「COME ON(カモーン)」

クネクネ…

勇者「…………」

魔王「BABY(ベイビー)」

魔王「COME ON(カモーン)」

クネクネ…

魔王「BABY(ベイビー)」

勇者「wwwww」

デデーン 勇者 タイキックー

勇者「魔王が絶対にやらないことを、魔王がやっているwwwwwwww」

バチーーーーン!!!!

勇者「ぐぁああああああ!!!!!!」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:13:19.03 ID:a+I1EmaE0

勇者「これは身体を張った芸……言葉の文化を超えて相手を笑わせる術!!どんな理屈をも超越して笑ってしまう……」

勇者「負けてられるか……俺も何かネタを……」

魔王「BABY(ベイビー)」

勇者「!?」

魔王「COME ON(カモーン)」

勇者「(魔王のやつ、ずっと妖艶な踊りを続けている!!)」

魔王「COME ON(カモーン)」

勇者「(なぜだ……なぜ新しいネタに移らない……)」

魔王「BABY(ベイビー)」

魔王「COME ON(カモーン)」

勇者「(やばい……また手招きしてる……)」

魔王「BABY(ベイビー)」

デデーン 勇者 タイキックー

勇者「も、もしかしてこれはwwww」

バチーーーーン!!!!

202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:13:46.14 ID:a+I1EmaE0

魔王「(勇者め、気づいたところでもう遅い)」

魔王「(貴様は、“ツボに入っているのだ”!!これぞ単純な身体ジョークのなせる技!!)」

魔王「(扉を閉じたのは純粋な決闘を望んだからではない!この醜態を部下に見られないためだ!)」

魔王「(このネタで一気に葬り去ってくれるわ!!)」
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:14:22.59 ID:a+I1EmaE0

魔王「BABY(ベイビー)」

デデーン…

魔王「COME ON(カモーン)」

デデーン…

魔王「BABY(ベイビー)」

デデーン…

魔王「I LOVE YOU(アイ ラッヴ ユー)」

デデーン…

魔王「BABY(ベイビー)」

デデーン…

魔王「COME ON(カモーン)」

デデーン…
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:15:15.02 ID:a+I1EmaE0

魔王「BABY(ベイビー)」

魔王「COME ON(カモーン)」

勇者「はぁ……はぁ…………」

魔王「やっと収まったようだな。だがボロボロではないか」

勇者「……くそ……」

ピキピキ…

魔王「卵にヒビが入った。もう間もなくだな」

魔王「万が一にも孵化の瞬間に貴様の顔を見られら台無しだ。今より凄まじいポールダンスをして、とどめと行こうか」

勇者「させる……かよ……」

ガサ…
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:15:41.16 ID:a+I1EmaE0

魔王「トロフィーを取り出した?なんの意味がある?」

勇者「こうするんだよ!!」

魔王「まさか、よせ!!!!!!」

ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ……!!!!!!

魔王「 “絶対に”笑ってはいけないボタンを連打した!!貴様、それが何を意味するのかわかっているのか!!」

勇者「次笑った方が、確実に死ぬだろうな」

勇者「“絶対に笑ってはいけない、戦いだ!!”」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:16:28.90 ID:a+I1EmaE0

魔王「勝ち目のない戦いに挑むアホめ!!もはやその身体では親父ギャグのひとつも思い浮かぶまい!!」

勇者「……ああ、俺ひとりだったら無理だったろうな。でも俺には、俺を支えてくれるたくさんの仲間がいるんだ」

魔王「くだらない!!お仲間との冒険中に起きた愉快なエピソードでも話す気か?」

ガサ…

魔王「いまさら道具袋から何を取り出すつもりだ?」

勇者「これは……アカデミーのみんなから貰った寄せ書きだ」

魔王「ふん、俺の使えぬ四天王が教師をやっていたところか」

勇者「記憶を失っていたし、短い間だったけれど……俺をあたたかく迎えてくれる人たちがたくさんいたんだ」

魔王「くだらん。腹の足しにもなるまい」

勇者「なるよ!!!」

バリバリ!! ムシャムシャ!!

勇者「うめぇえええええええええ!!」

魔王「…………」

207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:16:54.62 ID:a+I1EmaE0

ガサ…

勇者「この魔法瓶は、僧侶のお手製だ。自分がそばにいなくても体力と魔力を回復できるようにって、寝る時間を削っては仲間のためにつくってくれていたんだ」

魔王「決闘モードでは道具による回復はできん。意味のないものだ」

勇者「そのとおり!!!!!」

ガシャン!!! バリイイインン!!!

魔王「……フー……」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:17:38.73 ID:a+I1EmaE0

ガサ…

勇者「この道具袋は、魔法使いが冒険を始めた頃に編んでくれたものだった。サイズが大きいよって言っても、これくらいのアイテムが入るほどたくさん手に入れるのよって言われちゃってさ」

魔王「……戦闘中に使いづらいだろう」

勇者「そのとおり!!!!!」

ブチブチブチブチ!!!!!!!! バリバリバリバリ!!!!!!!!

魔王「……ハッ…ハッ……」

勇者「そして、既に股間に巻きつけているのが戦士から貰ったミサンガだ」

ボロン

魔王「お前勇者やめろwwwwww」

デデーン 魔王 タイキックー

209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:18:18.51 ID:a+I1EmaE0

魔王「しまった……!!」

魔王「し、死ぬ!!これは死ぬ!!」

魔王「ぐ、ぐるな!!ぐるなー!!!!」



バチィイイイイイイイイイイイインンン!!!!


210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:19:14.51 ID:a+I1EmaE0

魔王「……………か……は…………」

勇者「おお、人間なら消し飛んでる威力だな」

魔王「不謹慎ネタ……人としての道を踏み外したことで取れる笑い……勇者のくせに……」

勇者「これが友情パワーだ」

魔王「色紙……魔法瓶……道具袋……」

勇者「仲間には、すべてお前にやられたと告げておく」

魔王「勇者の股間にミサンガを、巻きつける魔王がどこにおるのだ……」

バタリ…


勇者「……勝った。魔王をついに倒した」

勇者「……ふっ。結局最後は、下ネタか」



ピキピキ!!

勇者「不死鳥の卵!」

ビキビキビキ!!!

勇者「孵化する!!」




――――――――――――――――




211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:20:18.10 ID:a+I1EmaE0

――そして――

王様「……おお!あれは!!」

姫「勇者様のおかえりですわ!!」

勇者「ただいま。王様、姫様」

王様「よくぞ無事じゃった!!」

姫「申し訳ございません……アカデミーの招待状が、魔王側の策略だったとは……」

魔法使い「結果オーライですよ。魔王の野望も打ち砕けましたし」

姫「勇者様の肩に乗っているかわいらしい鳥は?」

戦士「新しい仲間だ。勇者に懐いておる」

フシチョ「フシフシ〜♪」

勇者「俺たちが復活できたのも、フシチョのおかげだったんです。笑ってはいけないルールだけは今夜限りで消滅するようです」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:24:59.10 ID:a+I1EmaE0

姫「勇者様、ちょっとトロフィーをお借りしてもいいですか?」

勇者「どうぞ」

姫「……ふむふむ。やはり記述されていますね」

姫「皆さんが笑った回数を発表します!」

魔法使い「ええ!?」

姫「4位からの発表です。戦士さん。笑った回数10回!」

戦士「全然笑ってないな。まぁ笑わせ役に徹していたからな」

魔法使い「…………」

姫「3位は、勇者様。笑った回数17回」

魔法使い「あんたそんなに笑ってたっけ?」

勇者「魔王が強敵でな……」

姫「2位は僧侶さん。22回」

僧侶「……ということは」

姫「1位、魔法使いさん。26回でした!」

魔法使い「へえー!意外ね!!」

僧侶「ぐす……うぅ…………」

魔法使い「えっ!?別に悔しくないでしょ!?」
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/28(火) 18:26:39.61 ID:a+I1EmaE0

姫「皆様本当にお疲れさまでした。しばらくはゆっくり休まれてください」

僧侶「そうですね。賞金で得た50万Gもありますし、魔王討伐による100万Gも加えて贅沢三昧することにします」

王様「ええと……ちょっと急用を思い出した!!」

姫「お父様、約束は約束ですよ」

王様「そしたら経費削減で、お主の部屋も個室の便所になるが?」

姫「ええと……ちょっと急用を思い出しました!!」


アハハハ!!!


デデーン 全員 アウトー





〜fin〜
214 :踏切交差点 ◆uw4OnhNu4k [saga]:2020/04/28(火) 18:28:18.20 ID:a+I1EmaE0

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

突然なんだと思われそうですが、10年ほど前に
一方通行「君の瞳にラストオーダー」
という、禁書を題材にした絶対に笑ってはいけないのSSを書きました。
今でもこのSSを思い出してくれる人をネットでお見かけします。また書いてほしいというコメントを見るたびに本当に嬉しくなると同時に、申し訳なさも感じました。実は何度か書こうとしたのですが、毎回いろいろな壁にぶつかって挫折していました。
面白いものが世に大量に出回っている今更になってですが、10年ぶりに笑ってはいけないのSSを無事に書けてよかったです。
ここ数年は、少し不謹慎な物語を書いていました。ツイッターのプロフィールにリンクを貼っているので、よかったら読んでみてください。
アカウント:
踏切交差点@humikiri5310

最後に笑いどころのないあとがきを残して申し訳ありません。当時の人と1人でも再会できているかわかりませんが、10年来の感謝を伝える場を設けたいという気持ちが強くありました。
今作からお読みいただいた方も、5万字ボリュームの話に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。
みなさまのご笑運、お祈りしています!
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/28(火) 20:41:42.27 ID:wW3uhlqz0
笑いすぎて家族に変な目で見られた。起訴
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/28(火) 23:14:55.20 ID:hLdmzENjo
最初のノリは好きだったけどすぐにネタ切れして迷走した感あるがとりま乙
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/28(火) 23:18:28.94 ID:yMTLJEzc0
学園辺りからは正直「笑ってはいけない」感なかったのがちょっとね
大会決勝で魔王出てきてお前ここにおるんかい\デデーン/で終わりでも良かった気がする
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/03(日) 15:21:50.73 ID:TCIkMOgmo
嫌いじゃない
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/08(金) 11:35:10.28 ID:f/ucOmgt0
笑ったよ面白かった
ありがとう
小動物もかわいい
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