渋谷凛「しゅわしゅわ」

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1 : ◆TOYOUsnVr. [saga]:2020/04/26(日) 17:59:01.24 ID:wquxKVH70


室外機が巻き上げる、むわりとした風を足で浴びる。
通常であれば心地良いとは言い難いそれも、今はなんだか特別な気がした。

車を回してくるから待っていて、と担当のプロデューサーが出て行ったのが数分前。
蚊にさされちゃうから中にいるように、とも言われていたが、私はそれを無視して夜空を眺めていた。

ふー、と息を吐いて、両手をめいっぱい伸ばす。
バンザイの恰好になって「んー」と声を漏らせば、全身に漂っている疲労をようやく自覚する。

「終わっちゃったな」

誰に宛てたわけでもない言葉は夜に溶けて消えていく。

今日は私の、アイドル渋谷凛の、初めての単独ライブだった。
イベントの出演者の一人でも、誰かの前座でもない、来てくれたお客さんは全部、私を見るために来ている、私だけのためのライブ。記念すべきその一回目が、ついさっき、終わった。
全力で歌って、踊って。
たどたどしくはあったかもしれないけれど、ステージの上からファンの人たちに声を投げて、ファンの人たちもそれに応えてくれて。

夢のような数時間だった。

あの瞬間をもう一度。
次はもっと上手く歌おう。
もっと上手く踊ろう。
もっと上手く話そう。
もっと、もっと。

気付けば、そんなことばかりを考えている私がいて、笑ってしまう。

ああ、私。
アイドルに夢中になっちゃったんだ。

こんなこと、私の担当のプロデューサーであるあの男に伝えようものなら「今更?」と小ばかにしたような笑みが飛んでくること請け合いだけれど、どうしてか今はあの顔が恋しかった。


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