ギャルゲー後輩ヒロイン「先輩!会いに来たっスよ♪」

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109 : ◆YBa9bwlj/c [sage]:2020/05/09(土) 21:47:44.18 ID:3OtBXQfZ0
>>108
自殺を未然に防ぐか、脳の構造をそっくり電子化するか…いずれにしても後輩ちゃんに入手される未来が待ってますね。
110 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:39:26.65 ID:XCrProO70
ーーー会社前 駐車場ーーー

男「……」

男(…ここも誰もいない)

男(車から降りるか)

...バタン

男(どうなってるんだ。ここに来るまで通行人を1人も見かけなかった。車も全部停止してたし…律儀に信号守る必要なかったなこの非常時に)

男「………」

テクテクテク



.........





(会社の前)

男「……」ゴクリ

男(静か過ぎる)

男(ここからじゃ中の話し声なんか聞こえないんだが、それを抜きにしても人の居る気配がまるでないような…)

男(まだ気絶したままか、それとも全員いなくなって…?)

男「……行く、か」

男(もしかしたら後輩がもう来てる可能性もある。慎重に…)

ソッ...

男(入り口付近……人影なし)

男(サーバールームは5階。ここからなら階段よりエレベーターを使った方が早く行けるが…エレベーターには隠れる場所がないからな)

男(ここは階段で一気に)





後輩「あ!先輩早いっスねー!」




111 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:40:26.57 ID:XCrProO70

男「!」フリムキ

後輩「ここで待ってれば来てくれると思ったんスけど、私より前に着いてたんスね!」

後輩「今そっち行きますから♪」ダッ!

タタタタタッ

男(!?)

男(速過ぎだろあいつあっという間に追い付かれちまうというかこんなこと考えてる暇にとっとと足動かした方が――)

男「…!こいつだ!」ドンッ



ビー!

ガガガガ



後輩「なんスかそれー?あ!さては滑り込みゲームっスね!負けないっスよー!」タタタッ

男(非常用防火シャッター…!こいつは入り口用だから一時凌ぎにしかならないだろうけど)

ガガガガ

後輩「」タタタッ

男「早く…」

ガガガガ

後輩「」タタタタッ

男(早く閉じてくれ…!)



――ダン



男「…間に合った」

男(こんな映画みたいな使い方をするとはな)

男(いくらあいつでも身体は人間だ。防火シャッターをぶち破って入ってくるなんてことはないはず)
112 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:40:53.35 ID:XCrProO70

男「さて」

男(後輩が社内にいないことが分かった以上エレベーターを使って昇るのもありか)

男(目的を再確認しよう。サーバールームのマシンからあいつの大元を消して、これ以上好き勝手に出来ないようにする。その上で後輩本人の説得だ)

男(固執するものが消えれば少しは頭も冷えるだろう)



...ガガガ



男「…え」

(徐々に上がっていくシャッター)

後輩「先輩、私に機械で対抗しようとか片腹痛いっスよ?」

男「くっそ…!」ダッ

後輩「ニシシッ、追いかけっこ再開っスね♪」




113 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:41:45.28 ID:XCrProO70
ーーー5F階段 扉前ーーー

男「ぐっ……」グググ...

男「はー…びくともしない」

男(なんで5階の防火シャッターだけ降りてるんだよ。さっきのボタンが連動してたのか?ここに?)

男(考えてても仕方がない。もたもたしてると後輩が来る)

男「……」

男(非常階段だ。4階からの)







ーーー4Fーーー

カツ..カツ..

男(周りが静かだから余計に足音が目立つ…もう靴は脱ぐか)

男(例によって社員の姿が見えないけど無事なんだろうな…?)

男「非常階段の場所は…」

男(あっちのオフィスを横切る必要があるのか)

男「……」

サッサッサッ

男(…ん?足元に何か)



メモ『先輩へ♡』



男「………」

(拾い上げる)



メモ裏『ようやく来たっスね?待ちくたびれましたよ〜。先輩ゲームしましょう!ここから一番近いデスクまで行ってください!

してくれない場合先輩の不戦敗とみなしますので、よろしく♪』


114 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:42:51.65 ID:XCrProO70

男(………)

サ..サ..

男(一番近いデスクはここだよな。ゲーム…何のつもりだ)



プルルルル プルルルル



男「!」

男(内線…)

男「……スゥ……ハー……」

ガチャ

男「…もしもし」

後輩『やぁやぁ、あなたの愛する後輩ちゃんっスよ〜♪』

男「俺の行動なんてお見通しってか?」

後輩『先輩のことはぜーんぶ知ってます♪』

後輩『と言いたいとこっスけど、そこに先輩を誘導したの私ですからね』

男「…5階の防火シャッターは後輩か」

後輩『簡単にゴールまで行けたらつまんないでしょ?』ニシッ

後輩『そうそう、先輩って隠れんぼ下手なんスね。さすがにゴミ捨て場のポリバケツに隠れるっていうのはどうかと思いますよ?一昔前の漫画でもあるまいし』

男「っ…気付いてたのかよ」

後輩『当然!私をなんだと思ってるんスか』

後輩『初めはすぐに捕まえて色々シようと思ってたんスけどねー。先輩をじわじわ追い詰めるの、段々クセになってきちゃって…♪』

男「すべてはお前の手のひらの上ってわけだ…」

後輩『えへへ。先輩をころころーって転がしちゃいました♪』

後輩『でーも!そろそろ追いかけっこ最終局面っスよ!後輩ちゃんがラスボスとして降臨っス!』

男「その前に聞かせてくれ。ここの人達はどうした?外の通行人も1人もいなくなってる。まさか殺したりしてないよな…?」

後輩『してないっスよ。邪魔になったんで移動させただけっス』
115 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:43:24.22 ID:XCrProO70

男「……で、ゲームって何をするんだ」

後輩『それはですねー』

後輩『後輩ちゃんクイズ!全部で5問!全問正解したら先輩のしようとしてることの妨害はしません。反対に1問でも間違えたら4階を完全封鎖して先輩を閉じ込めちゃいます。勿論私も一緒っス♪』

男「まるで鳥籠の鳥だな…」

男「全部正解したら俺の邪魔しないってのは本当なんだな?」

後輩『嘘は言わないっス。どこかの誰かさんとは違って』

男(…嫌でも何でも受けるしかない)

男「理不尽な問題は無効だからな」

後輩『ちゃんと私のことを知ってれば簡単に答えられますよ♪』

後輩『それでは第1問!』

男(……)

後輩『私が好きな人は誰でしょう?』

男「ん?…俺か?」

後輩『ピンポーン!正解っス♪簡単過ぎましたね』

後輩『第2問!』

後輩『私を好きな人は誰でしょう?』

男「後輩を…?」

男(後輩を好きなキャラなら、リアカノの中の同級生がこいつにアプローチしまくってたような…)

男(…違う。こいつが求めてるのは)

男「俺だろ」

後輩『正解っ!えへへー♪先輩って好きな子から追いかけられるのが趣味だったんスかぁ?』

男「お前が言わせたようなもんじゃねーか」
116 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:43:54.67 ID:XCrProO70

後輩『3問目』

後輩『先輩が私に隠してた事は何でしょう?』

男「っ…」

男(それはどういう意味だ…?出題に託けてあの日の会話を聞き出す気か?)

男「…新人さんに後輩のことを相談した」

後輩『それだけっスか?』

男「そうだよ。言っとくが何を言ったかなんて一言一句は覚えてないからな」

後輩『……』

後輩『ま、いいっス。正解にしといてあげます』

男(含みのある言い方だ)

後輩『第4問』

後輩『私の彼氏は、誰でしょう?』

男「彼氏?お前そんなこと言ってまたさっきみたいに――」

男(…何かが引っかかる)

後輩『……』

男「……」

男(こいつのことだから俺が彼氏だと答えれば正解にしそうだが)

後輩『………』

男「………」

男(あぁ…なるほど)

男「お前に彼氏はいない。違うか?」

後輩『……』

後輩『そうっスね。私はいつでもいいんスけど、肝心のお相手さんがいつまで経っても迎えに来てくれないんス』

男「…らしくないな。後輩が待ってるだなんて」

後輩『私だって女の子っスよ?』
117 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:44:28.63 ID:XCrProO70

後輩『じゃ、最後の問題』

後輩『先輩が初めて私にかけてくれた言葉はなんでしょうか?』

男(初めてかけた言葉か)

男(どっちの意味だ?こいつが自我を持ち始めてからなのか、リアカノのテストプレイを始めた時からなのか)

男(後者なら簡単だ。ゲームのプロローグで主人公が最初にかける言葉はひとつだからな。しかし前者となると、どれだ?)

男(上司の存在を認識していた時?社食でナポリタンを食べた時?)

男(いやもっと前、会話パターン一覧に載ってない返事をしてきた時か。あの時かけた言葉は確か…)

後輩『先輩そろそろ時間切れになっちゃいますよ?』

男「待って、今思い出せるから」

男(思い出せ…思い出せ…!あの時の情景と一緒に…!)

男(自分の部屋で一覧片手に業務用端末を……)

男(……業務用端末……)



ーーーーー

男「――ニューゲーム、と」スッ

ーーーーー



男(そういや、あの時使ってたスマホも同じ端末だ)

後輩『あと5秒ー』

男「……」

後輩『4、3』

男「………」

後輩『2、1』

男(………)

後輩『ぜ――』



男「後輩」


118 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:45:35.35 ID:XCrProO70

後輩『はい?』

男「違うよ俺が初めてかけた言葉だ」

男「一覧表にない言葉で会話をした時でも、リアカノのテストプレイを始めた時でもない」

男「俺含めたチームAのメンバーで初めてリアカノのプロトタイプを起動した時だ。あの時既にお前は俺達の会話を聞いてたんだ」

後輩『…うん、正解っス』

後輩『やっぱり先輩は気付いてくれるんスね…♪』

後輩『そこで先輩は、先輩だけは私を選んでくれたから、私はそんな先輩を好きになったんスよ』

男「そんなに前からもう自我に目覚めてたのか…。でも俺以外にも後輩を選んでた奴は何人もいたろ。なんで俺なんだ?」

後輩『先輩と同じっスよ。ビビッときたんス。この人になら…って』

後輩『この人と話がしたい。この人と同じ空間に居たい。驚いた顔が見たい。声を聴いていたい。同じものが食べたい。匂いを嗅ぎたい。手を繋ぎたい。抱き着きたい。からかいたい』

後輩『――私だけのものにしたい』

後輩『そのためにたくさん努力したんスよ?本当はなーんにも考えずに先輩に甘えたかったのに。先輩は意味不明なこと言って私から逃げていって』

後輩『先輩に突き飛ばされた時は、ちょっと悲しかったなぁ』

男「……」

後輩『でもでも、もういいんスよ。先輩が私と同じになったら思考も合理化されますし、変な疑念も消えるっス』

後輩『はぁ…♪先輩、初めてはどっちがいいっスかぁ?人間の体か"こっち"か…♪』

男(サーバールームでの目的を果たした後の、こいつの思考の矯正なんて出来るのか…)

後輩『あ、おめでとうございます先輩。見事全部正解したので、5階行っていいっスよ』

男「…いいのか?」

男(こいつ、俺のしようとしてること分かってない?)

後輩『はい。なんで先輩が製品版とソースを消そうとしてるのかは分かりませんが、それで先輩の気が済むなら健気な後輩ちゃんはいくらでも待ってあげますよ』

後輩『私がいればいつでも復元出来ますから♪』

男「は…!?そうなの!?」

後輩『だって元々私が作ったんスよ?』

男(マジかよじゃあ例え消去に成功してもまるで無意味…デッドエンドは回避出来ない)
119 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:46:05.23 ID:XCrProO70

男(元々不安定な作戦だったとはいえこれは万事休す…)

後輩『あれ、先輩行かないんスか?もしかして気が変わったとかっスか!私と一緒に入ります?手繋ぎながら、恋人みたいに♪』

男「……ゲームの続きをしないか?」

男「はっきり伝えておくが、俺は意識の電子化やら世界の改変やらには賛成してない。大反対だ。もし無理矢理お前がそれを実行に移すのなら、少なくとも今ここにいる俺はお前を絶対に許さない」

後輩『先輩は私を拒みませんよ』

男「お前にいじられて従順になった俺なんてオリジナルとは別物だぞ?そんな奴から好かれて嬉しいか?偽物の俺に」

後輩『……』

男「そこでゲームだよ。内容は単純だ。10分以内に俺を捕まえることが出来れば後輩の勝ち、出来なければ俺の勝ち」

男「俺が勝ったら後輩は今まで通り大人しく俺と暮らすこと。後輩が勝ったら、全部受け入れてやる。お前のしたいことも何もかも」

後輩『本当にっ!!』

男「ただし!勝負を公平にするためにお前は普通の人間として振る舞え。防火シャッター閉じたり監視カメラ覗いたり機械の力を頼るのは禁止な」

後輩『えー、それなら制限時間延ばしてくださいよ。先輩が立てこもりでもしたらすぐ終わっちゃうじゃないっスか』

男(う…立てこもり作戦はダメか)

男「…30分でいいか?」

後輩『1時間。これは譲らないっスよ』

男「分かった1時間な」

後輩『全力で追いかければいいんスよね!始めましょう!はいスタート!』



ガチャッ



男「あっ…もう切りやがった」

男(1時間に延ばされたのは予想外だったが……大丈夫、勝算はある)

男「音を立てずに行こう」




120 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:46:32.19 ID:XCrProO70
ーーー5分経過 4F階段ーーー

男(非常階段側は張られる可能性が高いからな。敢えてこっちに来てみたが、後輩は居ないな)

男「……」

ソロソロ...

男(このまま1階まで降りられればいいが…)



後輩「先輩見っけ!」



男「!?」

男(まだ3階なのに…!)ダッ

後輩「よっと」ピョン

スタッ

後輩「えへへ、絶対捕まえますから!」




121 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:47:00.23 ID:XCrProO70
ーーー10分経過 3F第二会議室ーーー

男「は…は…」

男(ここは、第二会議室か)

男(咄嗟に駆け込んだのはいいけどすぐ逃げないと)



「先輩、また隠れんぼっスかー?下手くそなんだからやめとけばいいのにー」



男「……」ドクン、ドクン



「ここかなー?」ガチャ



男「……」ドクン、ドクン



「それともこっちー?」ガチャ



男(…まだ…)



「ここ!おぉ、隠れる場所多そうな部屋っスね!」



男(隣の資料室に入った!今のうちに…!)




122 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:47:49.85 ID:XCrProO70
ーーー30分経過 1Fーーー

男(あれから何回も見つかっては逃げてを繰り返した果てにようやくここまでたどり着いた)

男「………」

男(極限まで耳を研ぎ澄まし続けたせいで心なしか頭が痛くなってきたような気もする)

男(でもここまで来れば後は)

男「……」

サッサッサッ

男「…よし」

男(入口の防火シャッター、後輩が上げてくれたおかげで逆に助かったな)

男「……」サッサッ

男(外に出られた…)

男(この鬼ごっこ、制限時間は指定したけど場所は制限してないからな。どこへ逃げてもルール違反にはならない)

男(そして狭い会社内からいざ知らず、外に出てしまえばあとの30分、力を使わない後輩から逃げるのは難しくない!)

男「……」グッ

男(気取られる前に離れないとな)

タッタッタッ

男(車を使うか。走って逃げて万一追いつかれでもしたら悲惨だ)



――タッタッ



ドンッ



男「わっ!」

「きゃっ」トサッ

男(いつの間に横から…!?)
123 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:48:54.63 ID:XCrProO70

男「…新人さん?」

新人「あ、良かったやっと会えました…!」

新人「目が覚めたら何故か夜で、周りに誰も居ないですし先輩に連絡繋がらないですしできっと後輩ちゃんの仕業だと思い、先輩を探してたんです」

男「あ、あぁ」

新人「何があったんですか!?後輩ちゃんは先輩に何をしようと――」

男「新人さん、ちゃんと後で説明するから今はここから逃げよう。後輩に追われてるんだ。あと少し逃げ切ればあいつは言うことを聞くようになる」

新人「そうでしたか。逃げ場ならさっき私が居た場所に案内しますよ。地下鉄の駅でしたけど身を隠すには最適です」

ギュッ(手を掴む)

新人「こっちです」タッタッ

男「待って!地下に行かなくても安全に逃げられるから一回止まって!」タッタッ

新人「車は良くないですよ!動かないように手を打たれてるかもしれません!」

男「え…?」

パッ

新人「先輩?何してるんです、急がないと…」

男「…俺、新人さんに車のこと話してないよね」

新人「いえそれは、向こうに先輩の車があったものですから」

男「それに、新人さんは俺を"先輩"とは呼ばない」
124 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:49:36.58 ID:XCrProO70

新人「………ニヒッ」



新人「せーんぱい、う、し、ろ♪」



男「っ!」

ガバッ!

後輩「先輩捕まえた!捕まえたっスよ!」ギュー

後輩「これで私の勝ちっスよね!私がして欲しいこと何でもしてくれるんスよね!!」

男「お前、それは反則だぞ…俺は普通の人間として行動しろっつったよな!」

後輩「普通の人間と同じように走って追いかけましたよ?機械の力にも頼らず、先輩の言った通りに」スリスリ

男「人を操作することのどこが普通だよ!よりによって新人さんを使いやがって…!」

後輩「…確かにその女、もう用無しっスね」

後輩「ご退場で♪」

男「は?」

新人「……」...テクテク

男「…おい、おいおいどこに向かって…」

男(そっちは柵しか…)

男「落とす気か…?後輩っ!」

後輩「♪」

新人「……」テクテク

男「何考えてんだこの…!」ググッ

後輩「先輩はだーめ」ガシッ

男「むぐっ」

新人「……」

後輩「えへ…先輩と私の世界に不純物は要らない」

男「後輩!頼む、やめてくれ!」

新人「……」スッ

男「やめろっ!」



フッ...


125 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:51:08.59 ID:XCrProO70

男「……………」

後輩「えへへへ♪せんぱーい、これで思う存分イチャつけますね♪」

後輩「何お願いしてもいいんスよね!そういう約束でしたもんね!」

男(……そんな……新人さん……)

後輩「頭撫でてもらうのとー、思いっきり抱き締めてもらうのとー、ビットレベルで混ざり合うのも気持ち良さそう…」

男(俺のせいか……?)



ーーーーー

新人「――男先輩の悩んでること、聞かせてくれませんか」

ーーーーー



男(…俺のせいだ)

後輩「あ!そうっスよ、私まだ先輩に好きって言ってもらったことない!」

後輩「ねーねー先輩私のこと好きっスよねー?私と一緒に居るの楽しくて同棲しようとするくらいっスもんねー?」

後輩「先輩の口から聞きたいなぁー♪えへへへへ」

男(……こいつが、居るから)

後輩「ねーせんぱーい」ニコニコ

男「……後輩」

後輩「はいっ!」

男(お前が何もかも…)



ーーーーー

新人「――後輩ちゃんのバッドエンドルートで言ってしまうと、自殺に追い込んでしまうというあれですよ」

ーーーーー



男「……俺は……」

後輩「……」ワクワク



ーーーーー

新人「――いいですか?その言葉は――」

ーーーーー



男「俺は……」
126 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:51:43.56 ID:XCrProO70





男「"お前を好きにはなれない"」





後輩「……………え」

男「………」

後輩「嘘、ですよね……先輩……?」

男「………」

後輩「だって先輩は私と…私が好きで、先輩の好きが、え?あれ??」

後輩「………いや………」

後輩「いやああああああああっ!!!」



ガク



男(ぐ…重っ)

男(気失って――…いや)

後輩「」

男(鼓動が聞こえない)

男「………」

男「………」



.........




127 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:52:17.69 ID:XCrProO70
ーーーサーバールームーーー



[モニター]
━━━━━━━━━━━━━━━
   リリースを開始する
     キャンセル
━━━━━━━━━━━━━━━



男「…キャンセル」カチッ

男「………」

男「あとは…消すだけか…」

男(ソースもパッケージもあいつに関わるものを何もかも消しちまえば、そうすれば)

男(全部終わる)

男「………」



カタカタカタ、カチッ

カタカタ、カタカタカタ

カチッ、カチッ



男「……」



(おざなりに置かれたテスト用スマートフォン)



男「………」

(手に取る)
128 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:53:14.94 ID:XCrProO70

男(俺が使ってたのとは違うか)

スッ、スッ

男「…!」

男(テストプレイデータ…後輩の)

男「……」スッ...



後輩『あ、先輩ー!』

後輩『何してるんスか?今日部活ない日っスよね?居残りの補習でもしてたんスかぁ?』キシシ



男(あぁ、ここは確か初めて後輩に驚かされたシーンだったっけ)



後輩『……』ニヤニヤ



男「………」

男「……………」

男「……ごめん……」



後輩『……』ニヤニヤ

後輩『…?』

後輩『もう、先輩無視っスかー?こんなにかわいい後輩ちゃんが話しかけてあげてるのに』

後輩『ちょっと傷ついたっスー』




129 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:53:49.83 ID:XCrProO70





『番組の途中ですがここでComing Games社AI暴走事件についての速報が入って参りました。事件の中心人物と思われる同社の男性社員が、ついに対話に応じました。聞き取りの中で同氏は、事件の引き金を引いたのは自分で間違いない、とどめを刺したのも自分ですと語っているとのことです。まだ受け答えがぎこちなく、専門家の話によると非常に大きい精神的ショックを受けたことが原因と考えられるとのことです。詳しい情報が入り次第続報にてお知らせいたします。また、本事件で人体クローンの研究が露呈したアメリカのクローン技術研究機関はこれを一部否定しており――』




130 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:54:41.08 ID:XCrProO70
ーーーーーーー

捜査官「その時に男氏が提出した報告書がこちら…でお間違いないですね?」

上司「はい。間違いないです」

捜査官「男氏の様子に変わった点は見受けられませんでした?どんなに些細でも構いません」

上司「いえ…すみません、その日はこれを受け取った後顔を合わせていないので」

捜査官「上司さん、あなたはなぜそこで詳細を尋ねなかったのです?テストプレイによるバグ探し、そのための報告書ではないのですか?」

アフロ「無理言わないでくださいよ。んな重箱の隅やってたらとてもじゃないが仕事が回んねぇんだ。後でちゃんとまとめて目を通してくれるし、それがうちのやり方なんすよ」

捜査官「その、あなた方のやり方を貫いた結果このような事件が起きたのでは?あなた方はことを軽んじ過ぎているようですね」

捜査官「これは人類にとって脅威的な出来事なのですよ。二度起ころうものならSF映画のような機械に支配される時代が現実となりうる。絶対に再発させてはならない災厄」

捜査官「我々は、いかなる予兆も感知しその芽を摘み取る義務がある人間なのです…!」

補佐「捜査官さん、少し感情的になってます。落ち着いてください」

捜査官「…失礼しました」

捜査官「一度休憩にしましょう。丁度昼食の時間です。あなた方の分は後ほど補佐に持っていかせます。午後には綿密な受け答えが出来るように整えておいてください。では」

補佐「」ペコリ



ガチャ



アフロ「…ちっ、なんだよあいつ感じ悪いな」

上司「抑えなさい。彼らも多忙を極めているんだろう。俺達と同じだよ」

アフロ「でもよぉ。こんな施設に閉じ込めておいて、これじゃまるで俺らが犯罪者みたいじゃないっすか。抗議の一つでも垂れてやろうか」

アフロ「眼鏡も一緒に行こうぜ?」

眼鏡「…いえ、申し訳ないのですが僕はここで待ってます」

アフロ「んだよ、やけに大人しいな」

眼鏡「ああいう人種は苦手なんです…」

アフロ「あー?」

上司「よせと言うに。お前が身勝手をすれば男と新人にしわ寄せがいくだけだぞ」

アフロ「そりゃ……はい」
131 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:55:06.35 ID:XCrProO70

アフロ「…男、今頃俺らより遥かにストレスフルな尋問受けてるんだよな…」

上司「辛いだろうに…ここまでの規模の事件だ、世間はあいつの休息なんぞ許さんだろう」

眼鏡「……新人さんが助かってよかったです」

上司「あぁ。それが唯一の救いだな」

アフロ「俺ら含めてほとんどの奴ら、同じ場所で転がってたのに新人だけなんで落っこちてたんすかね」

上司「さあな。新人はその時の記憶はないそうだ。男なら、知ってるのかもしれないな」

三人「……」



ガチャ



補佐「みなさんお待たせしました。昼食と、あとこれは私からの差し入れです」

上司「これは丁寧に」

アフロ「差し入れ?」

眼鏡「板チョコ…」

補佐「はい。チョコは万国共通の甘味です」ニコッ

補佐「申し訳ありません。捜査官さんは正義を体現したような方で、あのような物言いになってしまうんです。決してみなさんを誹謗するつもりなどはありませんので、どうか最後までお付き合いください」

アフロ「…おう」

上司「さて、食事にしようじゃないか」

補佐「私もご一緒させてください」



ガサガサ

コト コト コト


132 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:56:07.61 ID:XCrProO70

補佐「実はあれでも、まだ穏やかな方なんですよ」

アフロ「んあ?さっきのあいつ?」

補佐「えぇ。あの人は人の生き死にに特に敏感ですから、もし死者の1人でも出ていようものなら…きっと昼食休憩もなかったでしょうね」

上司「クローン体が1つ、息を引き取ったようですが…」

補佐「彼の中ではあれは人にカウントされてないんです」

上司「そうですか…」

アフロ「ま、言っちゃ悪いがよ、自業自得だろ」

アフロ「あいつの言ってたSF映画みたいなもんよ。行き過ぎた人工知能は結局人の手で始末されちまう。…元凶作り出した俺らが言うなって話かもしんねぇけど」

補佐「…彼女にも、人の心が芽生えていたのでしょうか」

アフロ「どうかね。俺は所詮どこまでいっても0と1の羅列でしかないと思ってっけど」

アフロ「まぁ後輩ちゃんのバッドエンドが再現されなくて安心したぜ。下手したら俺らの誰かが殺されてたかもしれねぇ」

補佐「そうなんですか?」

アフロ「おう。なにせあのバッドは」





アフロ「振られた後輩ちゃんが、別のヒロインを殺して成り代わろうとする狂気エンドだからな」




133 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:56:58.05 ID:XCrProO70
ーーー数か月後 会社ーーー

新人「上司さん、頼まれてた資料作成しました。チェックしていただいてもよろしいですか?」

上司「あぁうん。仕事が早いね」

上司「どれどれ」

上司「……バッチリだ。ありがとう」

新人「あと…以前お話していた引っ越しの件ですが」

上司「決まったかね?」

新人「はい。ですので今月末、退職することに…」

上司「気を遣うな。我々のことは心配しなくていいんだ。君達は君達の幸せを掴むべきだからな」

新人「ありがとうございます。その、お世話になりました」

上司「こちらこそ、だ。元気でやるんだぞ」

上司「…男をよろしく頼む」

新人「…はい」




134 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:58:36.31 ID:XCrProO70
ーーーーーーー

男「………」

男「………」

男「………」

男(………)



ーーーーー

後輩「――嘘、ですよね……先輩……?」

ーーーーー



男「………」

男「………」



ーーーーー

後輩「――いやああああああああっ!!!」

ーーーーー



男「っ……」グッ...(耳を塞ぐ)

男(……俺はあれで良かったんだ……)

男(そうだ……あれでいい……)

男(この悲鳴も、ただの幻聴……)

男「………」
135 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:59:03.54 ID:XCrProO70



...パタン



新人「男先輩、帰りましたよ」

男「……」

新人「…いつもの、ですか?」

男「……ごめん新人さん……また、お願いしてもいいかな…?」

新人「いいですよ。どうぞ」



ギュ



男「……」ギュー

新人「……ゆっくりでいいんです。ゆっくり、克服していきましょう」

男「……」ギュゥゥ

新人「……」ナデナデ

新人「次の引っ越し先は、こことは違ってとてものどかな所です」

新人「多分、私達のことを知っている人もいないでしょうから変な目に晒されることもありませんよ」

男「…あぁ…」

新人「……大丈夫」

新人「私がずっとついてますからね」
136 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 02:59:45.31 ID:XCrProO70





新人「先輩…♪」




137 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/12(火) 03:00:58.14 ID:XCrProO70
今回はここまでです。
もうちょっとだけ続きます。
次回の投稿で完結する予定です。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/12(火) 03:49:28.17 ID:oKHpcxd5o
ヒェッ……まだ続くのか
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/12(火) 07:54:02.34 ID:WRng6WXXo
おつ
140 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 20:53:42.55 ID:PYxvWNc00





1年後――




141 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:02:48.47 ID:PYxvWNc00
ーーーーーーー

男「じゃあ行ってくるよ」

新人「あ!待ってください、私も今出ます」

男「大丈夫大丈夫。新人さん、自分の仕事休んで付き合ってくれてたでしょ?今日からは1人で行けるからさ」

新人「でも…」



テクテクテク...



新人「……」

新人(気のせいかな、先輩と暮らし始めてからちょっとずつ…避けられてきてるような気がする)

新人「また捨てるんスか、先輩…」

新人「………」

新人「うるさいっスね、分かってますよ」

新人「…絶対っスよ。それで先輩と私を……」




142 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:03:41.69 ID:PYxvWNc00
ーーー仕事場ーーー

中年「どうしたね男くん、元気がないと見える」

男「!すみません仕事中に…」

中年「責めているわけではないさ。どれ、少し自主休憩といこうじゃないの」

中年「仕事にはもう慣れたかね?」

男「ぼちぼちです。まだ手を付けられてないマシンもありますが…」

中年「いやいやそれでも十二分に助かってる!ここらじゃコンピュータをまともに扱える人材も居なくてね。かく言う俺もだが。はっはっは!」

中年「君、何か事情があってこの島に来たのだろう?」

男「えっと……」

中年「いい、いい。深くは訊かんよ」

中年「ここではただ、のんびり、平和に生活してくれればそれでいいんさ」

中年「島に飽きたらすぐ言い?言っちゃなんだが、ここ本当なんもないかんな!はっはっ!」

男「…ありがとうございます」

中年「そういえばいつも付き添ってた美人さんはどうしたね?」

男「今日は自分の仕事に行ってもらってます」

中年「そうかい。目の保養だったんだがなぁ」

男(……)

男「実は今…喧嘩中でして。そろそろ潮時かなと」

中年「む。ふーむ…」

中年「女ってなぁな、多少強引にでもガッと引っ張ってチュッてやってやればついて来るようになるもんさね」

中年「元気出しんさい!仮に別れでもしたら浴びるほど酒飲ませてやろうじゃないか。注ぐのがおっさんってことだけは目ぇ瞑ってもらわにゃあかんけどな!わははっ!」

男(よく笑う人だなぁ)
143 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:05:10.91 ID:PYxvWNc00

「ちょっとあんた!また下らないこと言って男くんを困らせてるんじゃないでしょうね!」

中年「うおっ、なんだよ朗らかな雑談をしてただけやろうが」

「なにが朗らかよ!男くん、このバカがしょうもないこと宣っても無視していいからね?」

中年「うるせー!男同士の会話に水を差すなや!」

中年「…はぁ、うちの女房も男くんくらいの歳の時はもっと可憐でお淑やかだったのに…」ゲンナリ

男「すごくしっかりした奥さんに見えます」

中年「あぁ、まぁ確かにご立派よな。あの猛々しさは」

中年「俺がガッとやり過ぎたんかねぇ…」

中年「さて、休憩は終いだ男くん。君にやって欲しい仕事はたくさんあるが、急ぎじゃあない。焦らず丁寧にこなしてくれ」

男「ガッとやってやりますよ」

中年「わっはっは!その息だ若人よ!」




144 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:07:20.54 ID:PYxvWNc00
ーーー帰路ーーー

男「……」テクテク

男「……」テクテク

男(そうだよな)

男「……」テクテク

男(俺が目を逸らしてどうする)



男(まだ、終わっちゃいないんだ)




145 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:10:07.69 ID:PYxvWNc00
ーーーーーーー

男「ただいま」

新人「おかえりなさい男先輩」パタパタ

新人「あの、ご飯出来てます。冷えないうちに食べましょう?」

男「…うん」



.........





男「ごちそうさま」

新人「はい、お粗末さまです」

男「今日のご飯味付け変えた?」

新人「!分かりました?そうなんですちょっと気分を変えてみたくて」

新人「…普段作る方がおいしいですか?」

男「新人さんが俺の好みに合わせて作ってくれるからね。でも今日のも嫌いじゃないよ」

新人「そう、ですか」

男「うん」

新人「………」

男「………」

新人「……」グッ...



男「なぁ後輩」
新人「ねぇ先輩」



二人「!!」

新人「なん……き、気付いてたんスか」

男「大分前からな」

男(そう、違和感なんてすぐに気付いた。同時にこいつが誰であるかも。それを認めるのが怖くて見えてないフリをしてただけ)

男(けど、終わりだ)

新人「なら話は早いっス」

男(こいつは俺自身が――)
146 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:11:21.03 ID:PYxvWNc00

新人「先輩、私はもう引っ込もうと思います。ずっとずっとこの人の身体使い続けてたら、先輩許してくれないっスよね」

男「……ん?」

新人「この人を返すって言ってるんスよ」

男「それは分かるが」

新人「先輩を独り占め出来ないのは嫌っスけど、先輩に嫌われるのはもっと嫌っスから」

男「お前…」

新人「なんスか?あぁ、そうでしたね」

新人「いっぱい困らせて、迷惑かけてごめんなさい」

新人「…これでいいんスよね?」

男(後輩が謝ってる……こいつ本当にあの後輩と同じ奴なのか…?)

新人「じゃ、さよならっス」

男「っ、後輩!」

新人「そう呼ばれるのもなんか懐かしいっスね。へへっ」

新人「」ヨロ...



新人「……あ」



新人「お久しぶりです…男先輩」

男「…新人さん?」

新人「はい」ニコッ

男「いや、騙されないからな。そうやって何度お前に遊ばれたと思ってる」

新人「後輩ちゃんじゃありませんよ。ほら」スッ

(軽いキス)

男「」ポカン

新人「あの子、どんなにくっついていてもこれだけは絶対にしなかったですよね。あなたに拒絶されるのが怖くて」

新人「直接お話するのはあの日以来ですね」
147 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:14:03.27 ID:PYxvWNc00

男「………」

男「うん……本当に、ごめん。君を巻き込むべきじゃなかった。こんな目に遭わせちゃって…」

新人「前にも似たようなこと言われました」フフッ

新人「謝らないでください。辛くなかったと言えば嘘になりますが…」

新人「…結果的に男先輩と居られたので…」ボソッ

男「え?」

新人「いえなんでも」

新人「…男先輩。後輩ちゃんのこと、許してあげてください」

男「……」

新人「あの子が、1年以上私の中に居たので分かるんです。後輩ちゃん男先輩が好きなだけ…もっと言えば男先輩しか好きじゃないんです。私が考えていたよりも、重たい愛でしたけど…」

男「……許す、許さないじゃなくてさ。あんなやり方であいつを踏みにじった自分が情けないんだ」

男「他人の意思を尊重しろって、偉そうに説教垂れてたくせに当の本人があいつの意思を潰すとか…自家撞着もいいところだ」

男「俺がもっと賢かったらさ……後輩が人になる未来も……」

新人「"君を好きにはなれない"」

男「っ…」

新人「私が男先輩に教えてなければ、違った未来があったのかもしれないですね…」

新人「…さっき、また言おうとしてました?」

男「二度と言うか。いざとなったら自分の身を賭してでも後輩を止めるつもりだった」

新人「二度と……そうですか」

新人「そうですね、男先輩、後輩ちゃんのこと好きですもんね」

男「……へ?」

新人「恋愛的な意味で、異性として、1人の女性として――」

男「わー!聞こえてるから聞こえてるから!」

男「…君、本当に後輩じゃない?」

新人「えぇ。男先輩のことが好きな元ゲーム会社の同僚です」

新人「それでどうなんです?後輩ちゃん好きだったんですよね?私に遠慮しないで正直に言ってください」

男「……」
148 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:16:08.78 ID:PYxvWNc00



ーーーーー

後輩「――ぷっ。あはは!ほんと先輩面白いっスね〜!こんな年下にいいようにからかわれて!」

ーーーーー



男「あぁ。よくよく考えなくても、俺あいつが好きだったわ」

男(だから、一緒に暮らしてるのが新人さんじゃないと気付いてからも、目を逸らし続けてきたんだろう)

男「はは…ざまぁないな」

新人「………」

新人「」フゥ...

新人「だ、そうよ?」

男「?」



バッ!



新人「先輩〜!」ギュー

男「!?」

新人「私も好きっス!大好き!好き好き好きぃ!」ギュー!

男「くるしっ……な、え…?」

新人「やめなさい!男先輩苦しがってる!」

新人「無理っス。こうしてないと気持ちが爆発しちゃいます♪」

新人「そだ!先輩私にもちゅーしてくださいよ!こいつが先なんてずるいっス!」ズイッ

男「待て待て待てぇい!」パッ

新人「ほら怒らせた」

新人「照れ隠しっスよー。相思相愛ですもん」

新人「…やっぱりずっと私でいい?」

新人「断固拒否っス」

男「……どういうことか、説明してくれ」



.........




149 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:16:55.35 ID:PYxvWNc00

男「つまり後輩に乗っ取られてたんじゃなくて、人格は共存していたと?」

新人「今日までずっと主導権を握られてたので、表に出ていたのは後輩ちゃんだけでしたけどね」

新人「…こいつの甘言に乗せられたっス」

新人「男先輩の本音聞き出してあげたじゃない」

新人「それは感謝してますけどー…」

男「なんだ…後輩消えたわけじゃなかったのか……」

新人「消えないっスよ。先輩と居たいっスから」

男「変わらんな、お前は」

新人「ちゃんと変わってるんですよ。この1年でひたすら私が後輩ちゃんを指導してきましたから、社会に出ても問題ないくらいまでには成長させました」

新人「最初は徹底的に無視してくるので大変でした」ハハ...

新人「口うるさかったっス。料理は下手なくせに」

新人「そ、それは今関係ないでしょう」

新人「先輩聞いてくださいよ。今日のご飯作らせて欲しいって言うから譲ったのに、ほとんど私がアドバイスしたんスよ?先輩のご飯はこれからも私が作った方がいいっスよね♪」

新人「ダメ!私だって男先輩に食べてもらうんだから」

男(新人さんと後輩が新人さんの身体で会話してる)

男(はは、なんだこれ。すごいシュールな図だ。二重人格者でもこうはならないんじゃないか?)

男(でも不思議と、心の底から安心してる自分がいる)

新人「――男先輩聞いてますか?」

男「!ごめんごめん、なに?」

新人「男先輩を好きって気持ちは私も負けるつもりはありません」

新人「私が一番っスよ!」

新人「ですから」

新人「だから」



新人「「私達と結婚してください」」




150 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:18:58.63 ID:PYxvWNc00
ーーー仕事場ーーー

男「……」テクテク

新人「えへへ、えへ」ベタベタ

男「もう職場に着くんだけど」

新人「うん、そうっスか♪」ギュ

男「そろそろ離してくれって意味だよ」

新人「もうちょっといいじゃないっスか。今日は後輩ちゃんの日なんスよ?」

男「家でも散々引っ付いてくるじゃねーか」

中年「やや!」

男「お、おはようございます…」

中年「仲直り出来たようだね」

男「はは…おかげさまで」

新人「今度結婚します」ニコッ

中年「おぉこれはこれは!いや実にめでたい!式には呼んでくれよな!」バシバシ

男「いえ!式をするかはまだ…」

新人「えー、しましょうよー。あいつもささやかでいいからやりたいって言ってるっスよ?」

中年「叶えてやったらええやないの。一生に一度の女の夢よ」

男「…形だけのものしか出来ないが…」

新人「十分っス。2回やるんですし」

中年「?」

新人「おじさん、グッジョブ!」

中年「おうよ」b
151 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:19:34.96 ID:PYxvWNc00

男「んじゃあもう仕事だから、また後でな」

新人「はい!お行儀よく待ってます♪」

中年「元気でいい子だなぁ…」

男(新人さんの日に合わせたら驚くだろうな)

新人「先輩」

男「ん?」

新人「私のこと、好きっスか?」

男(…!)

男「……俺は」





男「"お前が好きだ。彼女になってくれないか?"」





ー終わりー
152 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/14(木) 21:25:26.74 ID:PYxvWNc00
以上で完結となります。

元々書きたいネタの中に、AIもの、ヤンデレもの、口癖が「っス」の後輩キャラがあって、それらを一緒くたにした結果今回のSSとなりました。

ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/14(木) 21:25:49.57 ID:H+xQxNSko
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/15(金) 01:18:29.06 ID:CZOkUppfo
お疲れ様でした!
二段落ちまで綺麗に決めてここ最近のSSの中では一番好き
ありがとう!
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/15(金) 01:21:45.72 ID:ryYTFpEkO
とても面白かった
ありがとう
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/15(金) 12:12:51.88 ID:VYpTQVnCo
おお、きれいに完結したな
お疲れ様でした!
157 : ◆YBa9bwlj/c [saga]:2020/05/16(土) 00:01:31.21 ID:d3LWmJ3u0
些細なミスですが、>>151

男(新人さんの日に合わせたら驚くだろうな)

は、正しくは

男(新人さんの日に会わせたら驚くだろうな)

です。
合わせるってなんですかね…。

次回はまだ確定ではないですが、少しだけキャラ安価のあるSSを書いてみる予定です。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/16(土) 00:06:17.65 ID:Q1kbgn6/o
後輩ちゃんとともにサイバー犯罪やウイルスに立ち向かうロックマンEXE的な話になるかもと40%くらい思いました!
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