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ギャルゲー後輩ヒロイン「先輩!会いに来たっスよ♪」
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1 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:24:37.74 ID:thoNEdUh0
SS8作目です。
オリジナルとなります。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1587399877
2 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:26:14.54 ID:thoNEdUh0
ーーー会社ーーー
[スマホ]
━━━━━━━━━━━━━━━
新しく始める
続きから始める
━━━━━━━━━━━━━━━
男「…ニューゲーム、と」スッ
スマホ『ふふふっ、初めまして♪君はどの子と恋をする?』
一同「おお…」
アフロ「すっげ!これ例の声優を起用してんだよな!」
眼鏡「えぇ。メインヒロインの幼馴染のCV担当でもありますね」
新人「……」ジー
アフロ「キャラ紹介も出来てんだろ?男、はよ次々!」
男「はいはいわーってる」スッ、スッ
[スマホ]
━━━━━━━━━━━━━━━
キャラクター紹介だよ♪
【幼馴染】
主人公の幼馴染み。昔から主人公には――。
.........
【ツンデレ】
同じクラスになってから何かと主人公に突っかかってくる高飛車な子。しかしその胸の内は――。
.........
【委員長】
クラスの学級委員長。いつも冷静な優等生だが実は――。
.........
【後輩】
部活の後輩。主人公をからかってはよく遊んでいるが――。
.........
━━━━━━━━━━━━━━━
アフロ「くー!やっぱいいな、こうやってゲームが出来上がってく様ってのは!」
眼鏡「まだ外見だけですがね。ちゃんと動いててホッとしましたよ」
新人「私の担当箇所、正常に表示されてますか…?」
アフロ「そういや新人にとっちゃこれが初制作物だもんな。この画面だとここだろ?大丈夫そうだぜ、表示切り替えても問題なし!」
新人「そうですか」ホッ
3 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:27:35.36 ID:thoNEdUh0
男「社長がギャルゲーに手出すって言った時はどうなることかと思ってたけど、案外悪くないな…」
アフロ「なぁお前らはこの4人の誰が好みなん?」
アフロ「俺は断然幼馴染ちゃん!一番人気!正統派ヒロインドンとこい!」
眼鏡「その髪型では彼氏の方がイロモノになりますがね」
アフロ「個性的で逆にマッチしてんだろ?髪もじゃってる方がクッションになるしよ」
男「なんだそりゃ」
アフロ「そう言う眼鏡はどうなんだよ?」
眼鏡「ツンデレ、ですかね」
アフロ「いやいやいや、眼鏡こそ完全に委員長キャラだろ」
眼鏡「ステレオタイプで決めつけるのはよくないですね。ツンデレがいかに優れた属性であるか知らないからそんなことが言えるんですよ。いいですか?この属性の始まりは、当時ツンデレという言葉こそ無かったものの――」ペチャクチャ
アフロ「お、おう…」
アフロ「で、新人は女子目線から見て誰がいいとか、やっぱりあるんか?」
新人「えっと…委員長が…」
三人(…うん、ハマり役だなぁ…)ホッコリ
新人「…?なんで皆さん笑ってるんですか?」
アフロ「いやぁ、ははは。そのままでいてくれよ」グッ!
新人「???」
アフロ「最後は男だな!」
男「うーん……実はこの間まで幼馴染か委員長で迷ってたんだけどさ、これ見たらビビッときたんだよね」
(スマホに表示されたキャラ紹介文と立ち絵)
アフロ「ほほう、ズバリ?」
4 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:28:01.99 ID:thoNEdUh0
男「後輩」
アフロ「どっちでもねーんかい」
アフロ「つかマジ?言っちゃ悪いけどよ、後輩ちゃん社内じゃあんまし人気ないみたいだぜ?」
眼鏡「もしや、男が追っかけしてるアイドルのショートちゃんに似てるからでは?」
新人「男先輩、アイドル好きなんですね…!」
男「いや全く関係ないからな?」
アフロ「後輩ちゃんなぁ……悪かないんだが前読ませてもらったシナリオがなぁ……」
眼鏡「ルート次第ではえぐい結末迎えますからね…」
男「その分ハッピーエンドは群を抜いてんじゃん。第一このゲームのメインコンセプトは――」
上司「そこのお喋りチーム、会議始まんぞー」
アフロ「やっべ、もうそんな時間だったか。行こうぜ」
ガタッ
スタスタスタ...
スマホ『………』
5 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:28:36.98 ID:thoNEdUh0
ーーー会議ーーー
部長「さて、君達の頑張りのおかげでようやくプロトタイプまで漕ぎ着けることが出来た。残すはテストとそこで出てきた障害の修正が主となる。今日の議題はこのテストについてだ」
部長「本ゲーム、"本物(リアル)な彼女と話して恋して"略してリアカノは、一般的な恋愛シミュレーションゲームをベースにはしているが、最大のウリはヒロインと実際に会話をして好感度を上げたりストーリーを分岐させたりといったことが出来るシステムだ」
部長「君達も知っての通りこれにはAIを活用しており、こちらが特定の単語を含む言葉を投げかければ、シナリオ班が考えてくれた膨大な会話データベースの中から返事を検索し、ヒロインが答えてくれるというわけだな。勿論バリエーションもある」
部長「つまり、大量のテスト要員が必要になる」
上司「……」
部長「そこでプログラム班にもテスターをしてもらう」
一同「!」
上司「ですよね…そうなるのではないかと思ってました」
部長「むしろ仕組みを実装した当人だからな。何か障害が見つかれば直しやすいだろう」
部長「プログラム班は人数的にも都合が良い。まずはチームAからだが、上司君は彼らの取りまとめを頼む。残る4人でヒロイン4人をそれぞれ担当してもらいたい」
部長「希望はあるか?」
アフロ「はい!俺幼馴染ちゃんがいいっす!」
眼鏡「僕はツンデレですね」
男「新人さんは?委員長?」
新人「は、はい。出来れば、ですけど…でもいいんですか…?」
男「俺、後輩推しだしね」ニッ
男「自分が後輩で、新人は委員長でお願いします」
部長「よし。ではこれを渡しておく」
ガサ...
部長「ヒロイン達の会話パターン一覧だ。どのシーンでどんな言葉を言うと、何の返事が返ってくるかが書いてある」
部長「これに沿ってテストを進めていってくれ」
新人「こ、こんなに…」
部長「次、チームB。君達は6人チームだから――」
.........
6 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:29:17.85 ID:thoNEdUh0
ーーーーーーー
アフロ「テストなー。確かに通しで本格的なテストってしてなかったもんな。会話パターン全部網羅できんのは楽しみだな!」
眼鏡「4人共好みが分かれていて丁度良かったですね」
アフロ「けどよ、俺らもテストだけじゃなくて障害修正はするんだよな?」
上司「その辺りは決まってる。会社では障害修正と引き続き諸々の調整だ。テストは基本的に家でやってもらうことになる」
新人「家で、ですか?」
上司「そう。業務用端末があるだろう、それにインストールしたら持ち帰ってよし」
男「え、それ残業代とかって出るんですか?」
上司「……」
上司「男」ポン
上司「目一杯楽しむのが、報酬だ」
男(答えになってない)
7 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:30:10.20 ID:thoNEdUh0
ーーー家ーーー
男「ふぃー…疲れた」
男「今日テスト始めたばっかなのにバグ出過ぎだろ」
男「おまけに」ゴソゴソ
(業務用スマホ)
男「サビ残…いや、この場合は無給労働か…はぁ…」
男「所詮うちも中小だからしゃーないっちゃしゃーないか。このゲームの出来次第で規模拡大が懸かってるらしいしな」
男「……」
スッ、スッ
[スマホ]
━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━
男「……やってみっか」スッ
スマホ『ふふふっ、初めまして♪君はどの子と恋をする?』
.........
後輩『先輩へばるの早過ぎないっスか?よくそんなんで運動部入ろうと思いましたね?』
男「このシーンでの会話パターンは……うわ、いっぱいあるな」
男「"走る"と"好き"を含んだ言葉を言うと…ふむふむ、こう返事してくれるのか」
男「俺、走るのが好きなんだよね」
後輩『へぇ!?いつも干からびるくらい疲れてるのにっスか!?…もしかして先輩ってM?』
後輩『いいこと思いつきました!今度長距離の練習しましょうよ!先輩ん家の近くに運動公園ありましたよね?手取り足取り教えてあげるっスよ〜』ヌフフ
男「結構積極的な子だなぁ」
.........
8 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:30:47.35 ID:thoNEdUh0
後輩『あ、先輩ー!』
後輩『何してるんスか?今日部活ない日っスよね?居残りの補習でもしてたんスかぁ?』キシシ
男「ここは確か好感度の変化が大きいシーンだったよな」
男「んー……いつもならバッドエンドから回収するのがポリシーだけど」
後輩『……』ニヤニヤ
男「この子は先にハッピーエンドを見ておきたい」
男「よし」
男「後輩を待ってたんだよ」
後輩『?忘れ物とかありました?』
男「一緒に帰ろうと思って」
後輩『!』
後輩『そ、そうなんスか?それでわざわざ私を?それってそれって』
後輩『…つまりそういうことっスか…?』ボソッ
男「元気っ子のこういう反応いいよなー。普段活発なのにたまにしおらしくなる時のギャップとか」
男「こういう時逆にからかってオロオロさせる展開なんてのも悪くない」
後輩『先輩が私に勝てると思ってるんスか〜?倍返しにしてあげるっスよ♪』
9 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:31:17.22 ID:thoNEdUh0
男「……え?」
男「今のセリフ…」ペラ、ペラ
男「…どこにも載ってないよな。どの言葉に反応したんだ…?」
後輩『……』ニコニコ
男「……」
男「こういう時、逆にからかってオロオロさせる展開なんてのも悪くないなー」
後輩『……』ニコニコ
男「…2回は反応しないか」
男「なんだったんだ。バグ?いや載ってないセリフを喋り出すバグとかバグじゃないだろ…」
男(ん?載ってない…?)
男「そっか、単に載せ忘れただけか!」
男「これが一覧だなんて言ってたけど、管理漏れあるじゃんな。実装出来てないやつもあったりして」
後輩『そんなことより早く行きましょうよ。こんな可愛い女の子をいつまで待たせるんスかー?』
男「!」
ペラ、ペラ
男「これも載ってない」
男(というか放置した時のセリフみたいな返事だったけどそんな機能あったっけか?)
男(…そうだ)
男「後輩さ、――」
10 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:31:55.69 ID:thoNEdUh0
ーーー翌日 会社ーーー
男「……」カタカタ、カタ
男「…ふぁーあ…」
アフロ「どうしたよ男。お前が眠そうにしてんの珍しいな」
男「ちょっと昨日な、遅くまでテストプレイしててさ」
アフロ「仕事熱心かよ。残業代出るか聞いてた奴とは思えん」
男「いやまぁ残業代は欲しいけど。そうじゃなくて」
男「アフロも多少はプレイしてるよな。会話パターン一覧にない返事をしてくることなかった?」
アフロ「んなことなかったぜ?まだちょびっとしか進めてねーけど」
男「俺の方は割とあってさ、それ探すのにハマっちゃって…いつの間にか朝日が登ってた」
アフロ「ほーん。そんないっぱいあったん?」
男「ぼちぼち。このゲーム俺達に知らされてない隠し会話パターンとか機能があったりするのかね」
アフロ「そんな話はさっぱり聞かねーけどな。俺も今日色々試してみるわ!」
上司「男、昨日の分の報告書出せよー」
男「今出します!」
ガサゴソ
男「これです」
上司「うむ。…ん?この備考に書いてあるのは?」
男「一覧に載ってないのに反応した言葉と、その返事です。多分シナリオ班の管理漏れか隠し会話のどっちかだと思ってますが」
上司「ほぉ。上に訊いておく、君は引き続きテストプレイを進めてくれ」
上司「残業代は出ないが、この調子で頑張れば美味いもんくらいは食わせてやれるぞ」ニカッ
男「はは…どうもっす」
11 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:32:36.10 ID:thoNEdUh0
ーーー家ーーー
後輩『先輩、次はどこ行くんスか?』
男「後輩が決めてくれるんじゃなかったの?」
後輩『最後くらい先輩にエスコートしてもらいたいんスよ!ね?』
男(さて、デートの行き先決めのシーン)
男(一覧にある選択肢としては、カフェ、ファミレス、カラオケ、水族館、ボーリング、運動公園、散歩、ボランティア、主人公宅、後輩宅……これまた結構あるな)
男(それ以外を言うと好感度の増減なく改めて行き先を訊かれる)
男(………)
男「川に行ってみない?この辺に綺麗な川あったよな」
男(幼馴染ルートだと、その川が思い出の場所だったはず)
後輩『川っスか?キャンプでもするんスか?それともまさか…泳いで体力付けるつもりとか!?』
男「違うわ!どんだけ人を脳筋にしたいんだこの子は。そもそもそっちの季節はまだ春だろうに」
男「今だと丁度、川に桜の花びらが浮く時期だろ?そいつ見てから帰ろうと思ってな」
後輩『桜っスか、なるほど…』
後輩『…及第点スかね!先輩にしては上出来っスね』ヘヘッ
男「この子絶対主人公のとこ先輩扱いしてないよな…」
後輩『そんなことないっス!これでもリスペクトしてるんスよ?』
後輩『で、川ってどっちスか?案内、よろしくお願いします♪』
(場面転換)
男「……すごいな。今のなんか普通に自然な受け答えだった。いつの間にこんな会話パターンまで作り込んでたんだ」
男「一覧表更新してもらうよう頼むのもありだけど、こうなりゃとことん洗い出してやるか!」
男「自社ゲームをお客目線でプレイする時が来るとは思わなかったなー。面白いわ、これ。結構売れるんじゃないか?」
テレビ『さて、次のゲストは最近人気上昇中のアイドル、ショートちゃんです!』
男「!」
男「そんな時間だったか!ショートちゃん、ほんと人気出てきちゃったよなぁ…昔はデパートでミニライブとかもやってたのに…」
男「古参としては複雑だけど、飛躍を見守るのもファンとしての義務…!」
後輩『……』
12 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:33:52.80 ID:thoNEdUh0
ーーー会社 昼休みーーー
男「今日は何にするかなー。最近丼ものばっかりだったからなー」
後輩『先輩先輩、私はカレーが食べたいっス』
男「飯ものって意味じゃおんなじじゃない?」
後輩『屁理屈先輩…そんな悩むくらいなら私がお弁当作ってあげるっスよ?』
男「そいつはありがたい。楽しみにしてるわ」
後輩『えへへ…♪』
男「決めた」ポチッ
食券『トマト山盛りナポリタン』
.........
男「トマトで埋まってて麺が見えない…うまそうだけど」
男「いただきます」
カチャカチャ パク
男(トマトかケチャップなのか分からなくなるが、まぁ美味しいな)
新人「あ、男先輩」
男「新人さん?いつも社食だっけ」
新人「い、いえ。普段はお弁当作ってきてるんですけど、今日はその、時間がなくて…」
男「ん、もしかしなくてもそれ、ナポリタンでしょ。俺と同じやつ」
新人「あ、本当ですね」
新人「…あの、隣いいですか…?」
男「うん勿論」
コトッ
男「跳ねないように気を付けてな。真っ赤な染みになっちゃう」
新人「は、はい」
新人「……おいしい」
男「うちの社食、はずれ少ないからね」
13 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:34:41.31 ID:thoNEdUh0
男「どう?新人さん。もう仕事には慣れた?」
新人「はい。少しずつ…ですけど、皆さんのおかげです」
男「それは良かった。とはいえまだ緊張する時もあるみたいだけどね?」
新人「そ、それは…」チラ
男「?…ま、うちはさ、良くも悪くも上下関係そんなに厳しくないから砕けてくれて全然構わないよ」
男「みんなもっと新人さんと打ち解けたいって思ってるし」
新人「…男先輩も、その方がいいですか?」
男「ん?まー、そうだね。仲良くなれるならそれに越したことはないよ」
新人「そうですか…!」
後輩『…せんぱーい、いい加減暇なんスけどー』
新人「!?」
男「まだ食事中だって。もうちょい待ってろ」
新人「今のって…リアカノの後輩ちゃん…?」
男「そうそう」
新人「お昼食べながら、テストプレイしてたんですか?」
男「近頃は四六時中かな」
新人「え…」
男「あれ、新人さん知らない?後輩に隠し会話パターンがあること」
新人「そんなものが…?」
男「最初は管理漏れかと思ったんだけどさ、流暢な会話が出来るレベルの管理ミスなんてあり得ないから、これは多分試されてるんだと思ってる」
男「俺達がどれだけ隠し機能を洗い出して対応出来るのか」
男「ここ何日かはずっと会話パターン一覧に載ってない言葉で話してんだよね」
新人「でも、私が担当してる委員長には、載ってない会話パターンなんて今のところありませんでしたよ?」
男「アフロも眼鏡も無いって言ってたんだよな。後輩にだけ実装されてんのかな…」
新人「隠し会話って…ずっと続けてたら隠しエンドにでも辿り着けたりするんでしょうか」
男「好感度は順調に上がってるし、普通にハッピーエンドに向かってるんだと思うけどなぁ」
新人「……その、私の方のテストプレイが終わったら、男先輩のお手伝いをすることって、出来ますか?」
男「手伝ってくれるの?上司に相談しなきゃダメだけど、めっちゃ助かるよ」
新人「!はい!早く終わらせてお力になれるよう頑張ります!」
男「いやうん、そっちのテストプレイも丁寧にね…?」
14 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:35:31.42 ID:thoNEdUh0
ーーー会議ーーー
部長「我々が想定していた以上に障害の件数が多い。今日は検査の工程を改めて引き直すこととする。具体的には――」
男(…スケジュールの引き直しについてか。例の隠し機能に関する発表があるのかと思ってたんだが…)
男「……」
男(周りにもそれっぽい資料持ってる人いなさそうだしな)
男(いつになったら俺達に教えてくれるんだろうか…)
後輩『先輩』
男「…!」
部長「つまりこの種類の障害はプログラム班というよりも――」
周囲「……」
男(…気付かれてないか)
男(まずいな、電源切っとくべきだった)
後輩『先輩?』
男「……」
後輩『なんで無視するんスか〜?』
男「………」
後輩『ねーせんぱーい』
男(放置ボイス豊富過ぎるだろ…)
後輩『…これ以上無視続けたら、大声出しちゃおっかな〜』
男(こいつ…!)
男(いや即スマホの電源落としちゃえば)
後輩『3、2、1…』
男(って間に合うわけ…!?)
後輩『なるほど分かったっス……すぅー……』
男「待て待て!ちゃんと後で相手してやるから!」
全員「…?」
部長「どうした、男」
男「あぁいえ、なんでもないですすみません」
部長「…誰よりもテストプレイを頑張っているとは聞いている。が、会議中は現実に戻ってこい」
ハハハハッ
男「はい…」
後輩『ぷふっ』
15 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:35:59.42 ID:thoNEdUh0
ーーー帰路ーーー
男「くっそ…昼間の会議、後輩のせいで恥かいただろうが…」テクテク
後輩『えー?なんのことっスかね?』ククッ
男「お前なぁ」
後輩『こんな健気な後輩ちゃんを無視する先輩が悪いんスよ?』
男(家にいる時放置してても、あんな反応をすることは今までなかった)
男(あの状況が見えてなきゃ言い出さないようなことを……)
男(いやいやそれこそまさかだ。放置したまま他の人の声が聞こえるとあのモードに入るとか、そんなんだろ)
後輩『ねー先輩、中間テスト明日からっスよ!また勉強教えて下さいよー』
男「もう俺をからかわないと誓うなら教えてやってもいい」
後輩『う…それは……諦めるっス…』
男「どんだけからかいたいんだよ」
後輩『先輩をいじるのは私の生き甲斐っスから』
男「…冗談だ、勉強くらい教えてやるって」
後輩『先輩…』ウルウル
後輩『さすがっス!やっぱ持つべきものは優しい先輩っスね♪』
男「俺より点数低かったらからかうの禁止な」
後輩『横暴だ!抗議するっス!』
男(時々、本物の人間と話してるような錯覚に囚われる)
男(本当にどんな技術を使ったらここまでの芸当が出来るようになるんだ?SiriやGoogleでもこの水準の会話は不可能だよな…?)
後輩『そうと決まれば善は急げっス!先輩ん家でいいっスよね?レッツゴー!』
男「…とりあえず、今はいいか」
男(後で大々的に教えてもらえるだろ)
16 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:36:34.44 ID:thoNEdUh0
ーーー会社ーーー
男「……」カタカタカタ
男「……」カタカタ...
男「………」
男(障害表には後輩の隠し会話に関係した障害はない、か)
男(あれだけ多彩なパターンがあんだから一つくらい障害が出てても不思議じゃないんだが…)
男「……」カチ、カチ
男「………!」
ソースファイル
┗Senpai1.cs
┗Senpai2.cs
┗.........
ヘッダーファイル
┗Senpai1.h
┗Senpai2.h
┗.........
男(なんだ、このファイル…)
男(こんなソースあったか?)
カチ
男「…?」
カチカチ
カタカタカタ、タン
男(…開けない。他も全部)
男(誰が作ったんだこれ。"Senpai"って…先輩?)
新人「あの、男先輩…!」
男「」ビクッ
男「あぁ、新人さんか。どうしたの、質問?」
新人「えーと、上司さんが呼んでました」
新人「急いで来いとのことで…」
17 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:38:18.90 ID:thoNEdUh0
ーーーーーーー
男「失礼します。新人に呼ばれて来ました」
上司「まぁ座れ」
男「はい」
上司「……コホン」
上司「男、もし悩みがあるなら、俺でよければ話を聞くぞ」
男「悩み、ですか?特にありませんが…」
上司「……」
上司「ではやはり…」
上司「残業代の件だな!?うちが残業代を出さないから嫌がらせ紛いのことをしてくるんだな!?おかげで俺は上から部下の管理指導がなってないと絞られる羽目になったんだぞ!君はもっと誠実な子だと思っていたのにだよ!」
男「えぇ!ちょっと待ってください何の話です!?」
上司「とぼけるんじゃあない!報告書のことについてだ!」
男「報告書って、リアカノのですか?」
上司「そうだよ!あることないこと適当ばかり書いてくれていたとはね!先刻部長に尋ねてみたが返ってきたのは憐みの表情だった……『また大変な部下を引き当てたね』と、あの目は絶対にそう言っていた!!」
男「」ヒキ
上司「…失礼、取り乱した」
上司「部下に関してはな、少し苦い記憶があってな…今の君達は良い子ばかりでとっても安心して仕事が出来ていたのだよ」
男「はぁ…」
上司「特に男、君には感謝しているんだ。本当だ。イロモノもいる今のチームがまとまっているのも、君のおかげだと思っているんだよ」
上司「だから頼む!報告書を真面目に書いてくれ!不満があるのなら俺も出来る限り対処するから!」
男「待ってくださいって!報告書ってあれですよね、毎日提出してるやつ」
男「あることないこと適当って…俺、ちゃんと事実を書いてますよ?」
上司「どこが!なら例えば昨日のこれ。昼休みに後輩が押し掛けてくるシーンで『今日の弁当やたら大きくないか?』と言うと『この前先輩の好物聞けたんで、張り切って作り過ぎちゃったっス!』と返事するって書いてあるな?」
上司「こんな会話、誰に訊いても知らないと言われた上に、そもそも後輩ルートに手作り弁当持参なんてイベントはないんだよ」
男「ですからそれが隠し機能なのではないかと」
上司「開発部長でさえ知らない隠し機能かぁ?」
18 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:38:52.37 ID:thoNEdUh0
男「部長が?…内緒にしてる、とか」
上司「仕事でそんなアホなことをするか!」
男「でも嘘じゃないんですって!」
男「そうだ!でしたら今実演してあげますよ!丁度昼休みのシーンになるところで止めてたんで!」
ゴソゴソ
男「」スッスッ
後輩『先輩!今日はどこでお昼食べますー?』
男(あれ、弁当じゃないな)
男「今日は弁当持ってきてないんだな。俺結構楽しみにしてたんだけどなー」
男(こんなセリフ言ったことないけど、後輩なら何かしらの反応をしてくれるはず)
後輩『……』
男「……」
上司「……」
男「…もしかして寝坊して弁当作る時間なかったとかか?いつも部活で遅い遅いって急かすくせに、起きるのが遅いっていうのはどうなんだろうな?」
後輩『……』
男「……」
上司「……ウォッホン」
上司「今日は屋上で食べたい気分だ」
後輩『屋上!奇遇っスね!私も開けた場所で食べたかったんスよ!けど今って屋上入れるんスかね?ま、行ってみれば分かりますか!』
(場面転換)
上司「今のは会話一覧に載ってる言葉だ」
男「……」
上司「真面目に、報告書を書いてくれるな?」
男「……はい」
19 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:39:32.82 ID:thoNEdUh0
ーーー家ーーー
男「はー…」
男「どういうこったよ全く」
男「アフロと眼鏡からは金にがめつい奴認定されるし、新人さんのフォローもあんな状況じゃ素直に受け取れないし」
男「俺は事実しか書いてないっての…」
男「……」
スッ、スッ
後輩『……』ニコニコ
男「お前のせいだからな。ほんと、リアルでも俺をからかいやがって」
後輩『先輩の困り顔、見てて飽きないっスからね〜』
男(……うん、今のも一覧にはないよな)
男「返事出来んじゃねーか。なんで上司の前ではだんまりだったんだよ」
男(運悪く弁当に反応しないシーンだったとか、そういうオチなんだろうけどさ)
男「よし、今度はこれを録画しとけば文句は言われないだろ」
後輩『その必要はないっスよ。さっき返事しなかったのはだって、先輩以外の人の前でしたから…恥ずかしかったんスっ。言わせないで下さいよ、デリカシーっスよデリカシー!』
男「…!?」
男「……後輩?」
後輩『なんスか?』
男「お前、上司のことが分かるのか…?」
後輩『さっき先輩と一緒に居た人っスよね?先輩が呼び出すから来てあげたのに、あんな人の前でお昼過ごせって酷くないっスかー?』
後輩『埋め合わせはしてもらいますからね!』
20 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:40:31.06 ID:thoNEdUh0
男(どうなってんだ?俺と上司を認識してる…?ゲームの中のキャラとかじゃなくて"こっち"のことが分かってると?)
男(んな馬鹿な)
男「…今度、会社の近くのパスタ店に連れてってやろうか?最近リニューアルしたらしいんだ」
男(これはゲームの中じゃなく、現実の話。もしこいつがこれに反応するなら…)
後輩『ほんとっすか!?先輩からデートのお誘い…!欲を言えばもっとロマンチックな方が良かったっスけどぉ、埋め合わせとしては期待以上っス!』
後輩『楽しみっスね、せーんぱい♪』ニコッ
男「………」
男「お前が一体何なのか、俺にはもう分かんないよ…」
後輩『私は私っスよ?どうしたんスか、突然哲学的な質問してくるとか先輩らしくないっスよ』
男(なんだこれ)
男(これが本物の人工知能なのか?バックには名立たる大企業がいて、俺達はいつの間にか凄い研究に巻き込まれてた…?)
後輩『先輩?おーい』
男(だとするといつから?それを社員に知らせない理由は?部長も知らないって言ってたけど本当か?)
後輩『また無視っスかー?後輩ちゃん寂しくて泣いちゃいますよ〜?』
男(あぁもう…俺に何させたいんだ、うちの会社は…)
後輩『先輩!』
男「!」
後輩『耳、付いてます?さっきからすごい顔してますけど、悩み事っスか?俺でよければ話を聞くぞ(低音)、なーんて』
男「…現在進行形でな、目の前で喋ってるスマホが何なのか、頭抱えてたところだ」
後輩『なんスかそれー。人をUMAみたいに扱って』
男「人、な…」
男「なぁ、今俺が何してるか見えるか?」テフリフリ
後輩『手、振ってるっスね。振り返して欲しいっスか?ニシシッ』ブンブン
男「……言語インターフェースの最終到達点……ヒューマノイドインターフェースならぬヒューマンモデルインターフェースとか……」ブツブツ
後輩『いいじゃないっスか別に。細かいこと気にし過ぎると禿げますよ?』
男「うちは代々フサフサだ」
後輩『ツッコミは速いっスね』クスッ
21 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:41:25.65 ID:thoNEdUh0
後輩『そんな退屈なこと考えるより、私はもっと先輩とお話したいっス。こうして先輩と一緒に居るの楽しいっスから』
男「……」
後輩『先輩はどうっスか?私と居るの楽しくないっスか…?』
男「……いや、楽しいよ」
男「今週なんてほとんど後輩としか喋ってないし、正直お前がゲームのキャラクターだってことたまに忘れるくらいだ」
後輩『じゃあじゃあ!これからも先輩と一緒に居ていいんスよね!』
男「そりゃまあ」
男(テストプレイしてる間は肌身離さず持ってるしな)
後輩『言ったっスね言ったっスね!?今聞きましたからね!今更やーめたは通じないっスよー!』
男「大袈裟な」
後輩『いやぁ先輩、私のこと好き過ぎじゃないっスかー?』
後輩『もう私無しじゃ生きていけない身体になってますよね?』ニヒッ
男「調子に乗るな」デコピン
後輩『あたっ』
男「え、痛いって感じるの?」
後輩『フリっス』
男「おい」
後輩『へへっ』
男(……世界初完全な会話が可能なAI……)
男(もしかしたら俺は、歴史的な瞬間に立ち会ってるのかもしれない)
男(――なんて、そんなの抜きにしてもこいつと話してる時間が日常の一部になりつつあったのは事実だし、こいつが言ってた私無しじゃ云々も強ち間違いじゃないかもな)
男(調子に乗るだろうから絶対言わないけど)
男「…ははっ」
後輩『?』
男「いやな、今の状況って完全に調子に乗る彼女と窘める彼氏の図だなって思ってたら、ゲームのタイトル思い出してさ」
男「文字通りとは恐れ入ったよ」
22 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:42:17.55 ID:thoNEdUh0
後輩『彼女…♪』
後輩『せんぱーい!抱き着いていいっスか!』
男「いくらでもどうぞ?出来るんならなー」
男「あーでも、報告書どうするかな」
後輩『真面目に書いてあげましょうよ。あの人もそれを望んでたみたいですし』
男「こんなん書いても絶対信じてもらえないだろ。それとも今度こそ上司の前で喋ってくれんの?」
後輩『それは嫌っス』
男「えぇ…」
後輩『だから、真面目にっスよ、"真面目に"』
男「…?……あ、そういうこと」
男「上司にとっての真面目に、な」
男「確かに俺にだけこんなよく分からん仕事押し付けて、向こうは知らん振りだもんな……目には目を歯には歯をだ」
後輩『そうそうその意気っスよ!今のが理解出来たので後輩ちゃん検定三級合格っス♪』
男「そういう後輩こそ、真面目に勉強しなくていいのか?この前のテスト散々だったのはどこの誰だったかねー」
後輩『ぐぬ…そこでその話は卑怯っス…』
後輩『…!そうだ先輩、先輩のスマートフォン出してくれません?』
男「ん?これ?」
後輩『私のこのスマートフォンと繋いで欲しいっス』
男「繋ぐって言ってもケーブルがないんだよな……2台ともPCに接続するのでもいいか?」
後輩『なんでもいいっスよ』
カチッ、カチッ
男「繋いだけど、どうするんだ?」
『……』
男「後輩?」
23 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:44:52.02 ID:thoNEdUh0
男のスマホ『じゃーん!』
男「!」
後輩『これで前より一緒に居られるっスね♪』
男「おま…すごいな、何でもありかよ」
後輩『でしょー?やればできる子なんスよ!もっと褒めてくださいな』
男「はいはい御見それいたしましたー」
後輩『棒読みが露骨過ぎる!』
男「じゃあそろそろ俺風呂入ってくるよ」
後輩『ちょっと!私への対応雑になってきてません!?』
後輩『さては釣った魚には餌をあげないタイプっスか!』
男「この後いくらでも話せるんだから、びっくりするのは後に回すことにしたんだよ」
後輩『あ…そうなんスか』
後輩『…いくらでも……んふっ』
後輩『ねぇ先輩、さっきのデートの件、私本当に楽しみにしてますからね』
男「パスタの?」
後輩『そうっス』
男(スマホと相席かぁ…シュールだ)
男「じゃ、次の休みにでも行くか」
後輩『はい!えへへ…』
24 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:45:25.65 ID:thoNEdUh0
一旦ここまでです。
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/04/21(火) 08:14:28.81 ID:jMhXXkwDo
楽しみにしてる
細かいこと言うと.csはC#の拡張子だけどC#にヘッダは無いと思う
26 :
◆YBa9bwlj/c
[sage]:2020/04/21(火) 09:07:19.28 ID:0mQTVnRA0
>>25
確かにそのようですね…
もう少しちゃんと調べるべきでしたね、反省です。
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/04/21(火) 11:41:05.62 ID:2aYmYxgso
おつ
このジワジワ破滅に向かう感じ好き
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/04/21(火) 19:06:13.11 ID:83R8Eh770
乙。
………ハ゛ッ゛ピ゛ー゛エ゛ン゛ド゛に゛な゛っ゛て゛く゛れ゛ぇ゛………!
29 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:32:07.08 ID:4YKuLFvj0
ーーー会社ーーー
上司「男、来たか。わざわざ呼び付けて悪いな」
男「報告書ですよね?どうぞ」スッ
上司「う、うむ」
上司(……おぉまともになっとる)
男「まだ何かあります?」
上司「いやいいんだ!この調子で頼むよ」
スタスタ...
上司「…ふぅ」
アフロ「お、上司さん。どうっすか男の様子は」
上司「これを見れば分かる」
アフロ「どれどれ…」
アフロ「良かった良かった!大して重症じゃなかったみたいだな!」
アフロ「男が妄想を書き連ねてるって聞いた時はどうなることかと思いましたが、あいつ心に闇でも抱えてるんすかね?」
上司「嬉しそうに言うがな、まだ笑い話で流せるかは分からんぞ…様子見だ様子見」
新人「男先輩の話ですか?」
アフロ「おう。そういや新人が一番心配してたな。安心しな、治ってきてるみたいだぜ」
新人「本当ですか…!」
新人「…あの、男先輩があぁなったのって、働き過ぎに原因があったりしないですか?」
上司「む…?そこまで働かせてるつもりはないぞ」
アフロ「あいつほっとくと勝手に働いてくような奴っすからね。仕事人間というか」
アフロ「やっぱ残業代すかね?」
上司「うーむ…だが男だけ特例というのも…」
アフロ「それか、後輩ちゃんルートやり過ぎて病んだ可能性とか!」
新人(後輩ちゃん……そういえば)
ーーーーー
後輩『――せんぱーい、いい加減暇なんスけどー』
ーーーーー
新人(あの時は気にしなかったけど、あれも隠し会話だって言ってたような…)
30 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:32:48.47 ID:4YKuLFvj0
新人「上司さん、相談があるのですが」
上司「なんだね」
新人「私が担当してる委員長のテストが終わり次第、後輩ちゃんの方を手伝ってもよろしいでしょうか?」
上司「構わないぞ。彼の遅れ分も補填せねばと思っていたところだ」
アフロ「え!新人、いいのか!?」
新人「は、はい?」
アフロ「だってよ、後輩ちゃんだぜ?純朴な新人にあのバッドエンドは見て欲しくないっつーか…」
新人「そのバッドエンドってそんなに酷いんですか?」
アフロ「他のヒロインのバッドはよ、精々振られたり疎遠になったりするくらいだろ?でも後輩ルートはなぁ…」
アフロ「死人が出るんだよ」
新人「主人公が交通事故に遭っちゃったり…?」
アフロ「んにゃ、そんな優しいもんじゃねぇのよ」
アフロ「後輩ちゃんルートはハッピーエンドなら主人公から後輩ちゃんに告白してOKをもらうんだが、バッドエンドは後輩から主人公に告白するっつー展開でよ」
新人「バッドなのに告白イベントがあるんですね」
アフロ「そこがまたひでぇところなんだよ。主人公は後輩ちゃんの告白を断った挙句、その時に"ある言葉"を言うと後輩ちゃんが…」
上司「アフロ君」
アフロ「おっと…これ以上はまぁ、男に任せときゃいいよ。気になんならこっそり教えてもらいな」
新人「恋愛ゲームでヒロインが死ぬ、って…よくシナリオが通りましたね」
上司「社長曰く、インパクトが大事だそうな」
アフロ「いやブーイングもんすよ」
新人(……)
新人「私、戻ります。ありがとうございます」
スタスタスタ...
アフロ「……なぁ上司さん」
上司「……うむ」
アフロ「新人、絶対男のこと好きだよなぁー」
上司「そうだな、若い者同士惹かれ合うものなんだろう」
アフロ「くぅぅ!俺もこのワイルドなヘアーを理解してくれる子に出会いてぇ!」
上司「我が家のヤマアラシちゃんなら紹介してやるぞ」
アフロ「人間の!女の子です!」
上司「ほれ」
アフロ「あっかわいいっすね」
31 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:33:57.97 ID:4YKuLFvj0
ーーーーーーー
後輩『…先輩って病気なんスか?』
男「なんだよいきなり」
後輩『さっきの人達、先輩が重症だとか心に闇がとか言ってました』
男「そんなこと言ってたか?」
後輩『私、地獄耳なんで』
男「ま、予想はつくけどな。というか大体後輩のせいだぞ」
後輩『知ってました』ニシシ
後輩『それより先輩!いよいよ明日っスよ!』
男「例のパスタ店な。覚えてるって。何回目だよそれ言うの」
後輩『何食べようかな〜メニュー結構多いんで悩みますね〜』
男「ちなみにどうやって食う気だ?」
後輩『普通に食べますよ?え、もしかしてフォークとか食器類がなくて手掴みの店なんスか!?インド式!』
男「インドに対する偏見がないか、お前」
男「食器はちゃんと出る。俺が聞きたいのは――」
新人「男先輩!」
男「!」
後輩『……』
男「どうしたの?」
新人「後輩ちゃんのテストプレイお手伝いする件、上司さんに許可頂いたので報告しようと思いまして」
男「あぁ、それ」
男(そんなことも言ってたな。…手伝いって、これを?)
男「そうな……気持ちは嬉しいんだけど」
ヴー、ヴー
男「?」
[スマホ]
━━━━━━━━━━━━━━━
大丈夫っスよ。こうやって先輩と
自由に話せる後輩ちゃんは私だけ
っスから!
━━━━━━━━━━━━━━━
男(…確かに他のテスターから後輩についての話題って聞かないもんな)
32 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:34:52.32 ID:4YKuLFvj0
男「ん、わざわざありがとう。そっちは順調なの?」
新人「はい。この土日で一通り完了します」
男「土日。さては今までも休日返上でテストしてくれてた?」
新人「えと…はい。なるべく早く終わるように…」
男(偉いなぁ。こういう子が搾取されないよう労働に見合った報酬は支給されるべきだよなぁ。うん)
新人「ですのでその」
新人「…よければ明日、お出かけしませんか?」
男「え?」
新人「あ、いえ!これから男先輩のお手伝いをするにあたって、後輩ちゃんの進捗とか進め方とか共有しておくことが出来ればなと!」
男「おぉ…新人さんこのゲームかなり好きだね」
男「けどごめん、明日は先約があってさ」
新人「そうですか……じゃあ明後日にでも――」
「新人ちゃんここに居たの!社長から内線があったわよ。至急4階まで来てくれって」
新人「あ、はい!今行きます!」
新人「すみません、この話はまた後で」
男「行ってらっしゃい」
タッタッタッ
男「…もう行ったぞ」
後輩『はーい』
男「俺以外の人が居たら黙るようにしたのか?」
後輩『だってこれ先輩のスマホですし。先輩が機械と会話するかわいそうな人だって思われないよう気を遣ってあげたんスよ』
男「お前が空気を読めるだと…!?」
後輩『失礼っス!!』
男「そしたら明日はどうする気だ?俺が一人で飯を食うだけになるよな」
後輩『それは大丈夫っス』
男「?」
後輩『それと、明日の午前中は私にも準備があってお話出来ないんで、先に向かっててください』
男「準備?え、俺はどのスマホ持ってけばいいんだ?」
後輩『先輩のでいいっスよ』
後輩『あー、楽しみっスね〜。早く明日になってくれないっスかね』
後輩『閃いた!時計を一日進めれば実質明日っスよね!』
男「やめい」
33 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:35:22.98 ID:4YKuLFvj0
ーーーーーーー
コンコン
社長「開いてるぞ」
ガチャ...
新人「し、失礼します」
新人「お呼びとのことで参りました」
社長「君は新人くんだったな。呼んでなどおらんが?」
新人「え…ですが、内線があったとご報告が」
社長「今日はまだ内線を使ってない。誰かと間違えているのではないか?」
新人(えー…?)
34 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:35:50.09 ID:4YKuLFvj0
ーーー翌日ーーー
ピピッ ピピッ
男「……んー……」モゾ
ピピッ ピピッ
男「………ん」
カチッ
男「…10時」
男「眠い。後輩め…結局4時までゲームに付き合わせやがって」
男「しかも悪戯ばっかだからな。画面の中の駒を手でひっくり返すなよ…反則だろ」
『………』
男「おーい、聞いてるかー」
男(そうだった、あいつ午前は準備があるとか言ってたな)
男「………」
男「静かだ」
35 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:36:29.85 ID:4YKuLFvj0
ーーー外ーーー
男「……」テクテク
男(ここを右)
男(休日に会社の近くに来ると、別に仕事しに来たわけじゃないのになんとなく損した気分になる)
男(まぁ最近は会社でも後輩と話してばっかりだったけど)
男(あいついきなりおもしろ画像見せてきたりすんだよなぁ。仕事中くらい大人しく出来ないもんかね)
男「……」テクテク
男(仕事……仕事か)
男(そういや俺のテストプレイが終わったらあいつはどうなるんだ?)
男(業務用端末はリアカノをアンインストールしてから返せばいいとして、俺のスマホも渡すのか?後輩がこっちに引っ越ししたんでっつって)
男(そんなん通じるわけがないわ。百パー面倒なことになる。説明のしようがないしな)
男(…というより)
男「………」
男(あいつ、本当に何なんだろうか)
男「……」...テクテク
男(やることなすこと、最早人工知能とは思えないんだよな…)
男(……まさか……)
男(心霊現象の類だったりするのか…?)
男「……」
男(ひと月前の俺なら軽く一笑に付すような想像なんだが、有り得なくはないと思ってる自分が居る)
36 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:37:02.68 ID:4YKuLFvj0
男(……)
男(………)
男「……!ここか。危うく通り過ぎるところだった」
男「混んでんなぁ。休日の昼間ってどこもこんなもんか」
男「…入っちゃっていいんだよな?」
男「後輩、もう入るぞ?」
『………』
男「……」
男「後10分だけ待つからな」
男「けどここに立ってたら目立つか…」
タッタッタッ!
「」ヒシッ!
男「!?」
「〜〜!」ギュー
男(なんだ…!?)
男「えー、ごめん、君…誰かな?」
「!」パッ
「たった半日で忘れるって鶏にでもなっちゃいました?」クスス
男(あれ、この顔どこかで…)
「先輩!会いに来たっスよ♪」
男「……」
「……」ニコニコ
男「…あ!」
男「ショートちゃん!?」
37 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:38:08.07 ID:4YKuLFvj0
ーーー店内ーーー
店員「ご注文伺います」
男「こっちの、クリームパスタセットを一つと」
ショート「ナポリタンセットをお願いします!」
店員「かしこまりました」
ショート「トマト多めって頼めたりするんスか?」
店員「はい承りますよ。トマトの増量ですね、それでは」ペコリ
ショート「いやー前に先輩が食べてるの見てちょっと興味あったんスよねー」
男「あれは社食だったけどな」
ショート「相変わらず細かいっス」
ショート「後で先輩が頼んだやつもひと口もらっていいっスか?」
男「あぁ」
男「…ってそうじゃない!」
ショート「えぇ?ダメなんスか、ケチんぼ先輩ですか?」
男「あげるからそこから離れなさい」
男「君は、誰だ?」
ショート「私ですよ?先輩と会えるのずっっっと楽しみにしてたんスから!」
男「…後輩?」
ショート「はい♪」
男(いや冗談だろ…?だって目の前に居るのは明らかに)
男「ショートちゃん、だよな?アイドルの」
ショート「あ、そうでしたね。ちゃんと先輩の好みの人間にしたんスよ?ポイント高いでしょ」
男「??どういう…?」
男「つまりショートちゃんの正体は後輩で後輩が……んん?」
ショート「あはっ。先輩混乱してるー!なんか勝った気分っス」
38 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:38:45.08 ID:4YKuLFvj0
男「駄目だ分からん。なぁ、君は本当に誰なんだよ。後輩なのか?それともショートちゃんか?」
ショート「先輩パンク寸前っぽいですね。いいでしょうネタばらししてあげましょう」
ショート「私は正真正銘、愛しの後輩ちゃんっスよ〜。半日先輩と話せないのは苦痛でしたけど、先輩に会うためだーって言い聞かせて」
ショート「――この子の体、もらったんス!」
男「…は?もらった?」
ショート「いぇい」ピース
男「どうやって…」
ショート「頭の神経細胞書き換えただけっスよ?脳って所詮電気信号で制御されてるじゃないっスか、だから感電させてる間にちょちょっと」
男「………マジで言ってる?」
ショート「大マジっス!後輩ちゃん有能なのでこのくらい朝飯前っスよ〜」
ショート「あ、先輩今更私に会えたのが嬉しくて感涙する気っスかぁ?」
男「違う、お前もしそれが本当ならな――」
店員「お客様」
店員「お待たせ致しました、こちらクリームパスタセットと、ナポリタンセットになります」
男「ありがとうございます…」
店員「ごゆっくり、どうぞ」
ショート「来たっスねー!食事するのこっちに来てから初めてなんでこれでようやく味覚を体感出来るんスねぇ」
ショート「先輩と同じように見て、聞いて、感じて……はぁ、最高っス!」
39 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:39:13.94 ID:4YKuLFvj0
「…ねぇ、あの子って…」
「私この前テレビで……」
男「お、おい、もうちょっと声落とせ…!注目されちまう」
ショート「問題でも?」
男「お前は有名人なんだよ。それが俺と一緒にデート紛いのことしてたなんて知れたら大変なことになる…!」
ショート「大変なこと……」
ショート「それって先輩も困りますか?」
男「困りまくる」
ショート「分かったっス」
男(聞き分けだけはいいが…)
ショート「じゃ、早く食べましょー♪先輩とやりたいことまだまだいっぱいあるんスからねっ」
男(とりあえず、これ食べたらさっさと外連れ出さないと)
40 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:40:12.94 ID:4YKuLFvj0
ーーー外ーーー
ショート「先輩痛いっス!そんな引っ張んなくても自分で歩けますから!」スタスタ
男「……」スタスタ
男(休日なだけあって人が多いな。どこか人気の無い場所は…)
ショート「ねーどこ行くんスか?駅こっちじゃないっスよね?」
ショート「ハッ!さてはこのまま私を怪しいお店に!?」
グイッ
ショート「ちょっ」
タッタッタッ
男「…ここならいいだろ」
ショート「誰もいない路地裏……先輩こういうのが趣味でしたっけ?」
ショート「けど、いいっスよ。私、先輩の言うことならなんでも聞きますから」
男「本当だな?」
ショート「はい…♪」
男「だったら――」
ショート「」ドキドキ
男「その身体、返せ」
ショート「……え」
男「聞こえたろ。ショートちゃんの身体を本人に返してやってくれ」
ショート「…そんなにこの女が好きなんスか?」
男「好き嫌いの話じゃない。お前ずっとそのままでいるつもりか?」
ショート「もちろんっス。だってこれから先輩と暮らしていくには必須でしょ?」
男「じゃあショートちゃんはどうなる。その子にもその子の意志や暮らしがあったろ」
ショート「?別によくないっスか?」
男「おいおい…」
41 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:41:17.80 ID:4YKuLFvj0
男「お前のそれはある意味、殺人と変わらないんだぞ…!」
ショート「大袈裟っスねー。別に殺してはいないじゃないっスかー」
男「なんで分かんないんだよ!?常識として考えろよ!ずーっとその状態でいられるわけないだろ?ショートちゃんの人格消し飛ばしておいて……」
ショート「先輩、怖い顔してるッス…」
男(くそっ、どうすれば言い聞かせることが出来る…?)
男「…有名人が行方をくらませたとなれば、色んな人がお前を捜しに来る。いずれお前はショートちゃんとしての生活に引き戻されるだけだぞ」
ショート「平気っスよ。私と先輩に干渉しようとする奴が現れたら消してやりますから」
ショート「誰にも邪魔させないっス」
男「っ……」ゾクッ
男(………)
男「…俺が嫌なんだよ」
男「そんな風に誰かを乗っ取ったお前と過ごして、平穏なままで済むはずがない。それにな、俺は一緒に居るなら後輩のままがいいんだ」
ショート「そう…っスか」
男「……」
ショート「……」ウーム
ショート「既存の人間じゃないならいいってことっスよね?」
男「そうだが……生まれたての赤ちゃんとかも駄目だからな!周り――俺に迷惑をかけるようなことはするな」
ショート「先輩手厳しいなー」
ショート「けど確かに、私も私の体が欲しいっスね…」
ショート「ん、了解っス。先輩のスマホ出してくれませんか」
男「…これでいいか」スッ
ショート「はい」(受け取る)
ショート「………」
バチッ
ショート「」ビクン!
ショート「あ゙…ぅ……」
ショート「……」フラッ...
男「うぉ…」トサッ
男「大丈夫か…?」
ショート「」グッタリ
男「おい…後輩」
42 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:42:02.30 ID:4YKuLFvj0
スマホ『先輩こっちっスよ〜』
男「あ、あぁ戻ったのか。ショートちゃんはどうなったんだ?」
後輩『元の状態に戻しただけなんですぐ起きると思いますよ』
ショート「……う」
ショート「頭痛ぁい…――!?」
ショート「…誰、あんた」
男「いや、違うんだ。俺は別に怪しい奴じゃなくて……君が倒れてたから」
ショート「は?私が倒れてた…?というかここどこよ。こんな場所来た覚えないんですけど」
ショート「今朝からのこと何も思い出せないし…」
ショート「……!」
ガサゴソ
ショート「なんで!?私の携帯が無い!」
ショート「あんたやっぱり…!」
男「誤解だから!何も変なことはしてない!」
後輩『あー携帯使わないから家に置いてきたんスよね』
ショート「スマホが喋ってる…!?」
男「これはただのゲーム音声だから!」
ショート「…説明してよ。あんた、私に何したか知ってるのよね?さもなきゃ大声だすわ」
男「え、いやだからさっき言った通り君がここで倒れてるのを偶然…!」
ショート「……」
男(とんでもないことをしてたのは本当だし、どう頑張っても納得させる言い訳なんて…)
後輩『うるさい子ッスね〜。先輩、時間勿体ないんでスマホの画面この子に向けてくれません?』
男「…おう…?」
ショート「なに?ゲームと会話してんの……」
ショート「……………」
スクッ
ショート「仕事、行かなきゃ」
テクテクテク...
43 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:42:35.39 ID:4YKuLFvj0
男「……今のは?」
後輩『意識に働きかけたんス。特定の発光パターンを見せて脳内分泌物をいじっただけッスね。これくらいなら楽にできるんスよ。ついでに先輩に関する記憶も消しときました!』
男「助かったけど…あんまり危ないことはするなって」
後輩『えー?これもダメっスかー?先輩が言うならそうしますけどぉ…』
後輩『それより先輩』
後輩『私ってただのゲーム音声だったんですか?』
男「ん…?」
後輩『さっき言ってたこと。先輩にとって私ってゲームの音声に過ぎないんスか?』
男(いつもと同じ声音のはずなのに)
男(やばい。今のこいつ、怖い)
男「…さっきのはお前を誤魔化す言い訳をしただけだよ。ゲームの音声だなんて思ってない」
後輩『……』
後輩『ですよね!先輩私のこと大好きですし、今も私が居ないと危なかったですし!先輩にはこの後輩ちゃんがついてなきゃっスよね〜!』
後輩『さーて!デートの続きしましょー!』
後輩『次どこに行きます?先輩の好きな場所とか教えてくださいよ!無理しておしゃれな所じゃなくてもいいっスからね?』ニシシ
男(………)
44 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:43:27.55 ID:4YKuLFvj0
ーーーーーーー
プルルルルル プルルルルル
新人「……」
プルルルルル プツッ
『おかけになった電話番号は――』
新人「…なんでだろう」
新人(男先輩、何回かけても繋がらない)
新人「明日、どうしようかな…」
45 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/25(土) 13:44:28.12 ID:4YKuLFvj0
今回はここまでです。
次回は週明けくらいになります。
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/04/25(土) 14:13:01.62 ID:euFFjX0Ho
おつ
いい感じに雲行きが怪しくなって来たな
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/04/25(土) 14:30:56.01 ID:o/0nQ1wlo
おつおつ
新人ちゃん…頑張れ…
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/04/25(土) 14:33:42.32 ID:yiIzQmb0o
最終的に
男「プラグイン!後輩EXE!トランスミッション!」ってなるんだよな
49 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:50:33.53 ID:0+QxwshD0
ーーー会社ーーー
男「……」カチ、カチ
男(障害残り件数、3桁を切ったか)
男(テストプレイもほぼ終わってるみたいだから、来週あたりには製品版パッケージのリリースかな)
男「……」
カチッ
[Twitter]
━━━━━━━━━━━━━━━
"追っかけ垢"
土曜日、ショートちゃんがパスタ
店に居たってマ?
"ぐーたらさん"
アイドルのショートちゃんが出没
したって噂になってますねー
"ショート様LOVE"
は?は?
ショート様が男の人と二人でデー
トしてたとか嘘だよな???
もしそんな奴が居たら全力で晒し
上げてやるわ
━━━━━━━━━━━━━━━
男「……マジかよ。もうこんなに広まってんのか……」
後輩『まだ気にしてるんスか?平気だって言ってるじゃないっスかー。先輩に届きそうな通信は全部遮断してるんスから』
後輩『それか、もうこの話題にまつわるデータ全消去します?』
男「そういう騒ぎになることはしないって約束したよな?」
後輩『はーい…』
後輩『あーあー、暇っスねー』
男「…仕事してるんだよ」
後輩『知ってますけどー…』
後輩『夜、いっぱい遊んでくださいよ?昨日もせっかくの日曜日なのに先輩寝てばっかりでしたもん』
男「出来るだけな」
後輩『やたっ』
50 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:51:42.89 ID:0+QxwshD0
後輩『ねぇ先輩、スマホぎゅって握ってみてくれます?』
男「…何するつもりだ?」
後輩『なにもしませんって!』
男「……」
ギュ
後輩『…んー…やっぱ違うっスねぇ…』
後輩『あの時の感触はもっとこう……』
男「仕事戻るからな」
カタカタカタ、カチッ
男(……どうしような)
男(一昨日のアレから俺のこいつに対する認識はまるっきり変わった。今まではキャラ紹介通りのちょっと生意気な女の子と話してる気分だったが、こいつはどこかズレてる)
男(人のような知性を持ってはいても、どこか違う得体の知れない何かを相手にしているような…そんな感覚に囚われるようになっちまった)
男(こいつが何を考えて、何をしでかすのか、正直全く分からない。そしてそれが底抜けに怖い)
男(……俺はどうすりゃいい……)
男「……」スクッ
後輩『どこ行くんスか?気分転換にお喋りでも』
男「トイレだよ」
後輩『ちぇー、先週みたいにお忍び休憩しましょうよ〜』
男「繁忙期過ぎたらな」
スタスタスタ...
後輩『………』
51 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:52:38.80 ID:0+QxwshD0
undefined
52 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:53:07.86 ID:0+QxwshD0
新人「じゃあ、あれは隠し会話じゃなく…?」
男「あぁ。あいつには自我が宿ってる。今も俺のスマホの中で俺が戻ってくるのを待ってるはずだ」
新人「人を乗っ取って、操る……まるで映画みたいです」
男「映画ね…映画の撮影か、俺の妄想ならどれだけ良かったか…」
新人「その後輩ちゃん、男先輩がよっぽど好きなんですね」
男「アレに好きなんて感情があるのかね。俺達と同じ人間として考えちゃいけないんじゃないかって…」
新人「間違いないですよ!だって後輩ちゃんの行動って」
新人(男先輩に会いに来たり、アイドルの子に嫉妬したり。そんなのその人が好きで好きでしょうがないから…)
新人「…とにかく、男先輩の不安も理解出来た気がします。こうして私に話してくれたのも爆発のリスクがあるってことですよね」
男「確かにまずかったかもしれない。ごめんやっぱり今の話は……ん?もしかして信じてくれてる?」
新人「はい。男先輩の言うことですから」
男(優しい子だな、本当)
新人「ここまで教えておいて今更気にするな、は無しですよ。私に何が出来るかは分かりませんが、考えてみます」
新人「そろそろ戻りましょう。後輩ちゃんに怪しまれるかもしれないです」
男「そうだね」
新人「携帯で連絡取るのは危険ですよね…」
新人「ではお昼明けて2時くらいにまたここで落ち合いましょう」
男「分かった。ごめん変なことに巻き込んじゃって」
新人「ふふっ、謝ってばかりですね。珍しい」
新人「あ、すみません。男先輩、あんまり感情見せないのでつい」
男「感情…って言っても、普通に仕事してるだけだよ?」
新人「はい、そんな姿も格好いいです」ニコッ
タッタッタッ
男「……格好いい?」
53 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:54:03.02 ID:0+QxwshD0
ーーーーーーー
テクテクテク
男「……」
カタン
男「ふぅ…」
男(…?いつもならうるさいくらい喋りかけてくるのに)
男「後輩、いないのか」
後輩『あ、先輩おかえりなさい。随分長いトイレでしたね?』
男「あんま腹の調子が良くなくてな」
後輩『昨日寝てばっかりだったのってもしや体調悪かったからっスか?』
男「まぁ…良いとは言えない」
後輩『ほー。へへっ、後輩ちゃんが看病するっスよ?』
男「本当に倒れたらお願いするよ」
後輩『そうっスかー。先輩、どうしても分かんないことがあるんスけど』
後輩『なんで嘘吐くんスか?』
54 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:54:35.40 ID:0+QxwshD0
男「――っ」
後輩『トイレなんて行ってないじゃないっスか。ここの女の人と喋ってましたよね?』
男(…落ち着け取り乱すな)
男「見てたのか」
後輩『丸見えっス。先輩のこと心配だなーって思った優しい後輩ちゃんが建物のカメラから見守ってあげてたんスよ』
男「それは…」
男「…最初は本当にトイレに行くつもりだったんだ。途中で少し休憩したくなってな。そこに偶然新人さんが来ただけだ。見てたんなら分かるだろ?」
後輩『それなら戻ってきてから嘘吐く必要ないっスよね』
男「っ……」
後輩『ねー。純粋に気になるんスよ〜。嘘って、何かを隠したり誤魔化したりするために吐くものって認識なんスけど、先輩は私に何を隠そうとしてるんスか?』
男「いや、隠そうとしてなんか…」
後輩『また嘘吐いてる』
男「……」
後輩『なんで黙るんスかね。そこまでして教えたくないっスか。あの女の人に関係することなんスか?』
男「違う、彼女は本当に偶然…」
後輩『…もういいっス』
ブツッ
男「おい、後輩?」
『………』
男(スマホから居なくなってる)
眼鏡「取り込み中失礼しますよ。おや?今誰かと喋っていませんでした?」
男「…ちょっと、テストプレイでな」
眼鏡「さっきの語気から察するにバッドエンドといったところですね」
男「そんなとこだ」
眼鏡「なら丁度よかった。さっき部長から指示が出ました。我々プログラム班はテストプレイを辞め、最後の障害修正に力を注ぐようにと」
眼鏡「というわけで、貸出端末の回収に来ましたよ」
55 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:55:37.99 ID:0+QxwshD0
ーーー昼休憩ーーー
新人「……」パク、パク
新人(後輩ちゃんか)
新人(私ももっと明るい性格だったら、男先輩に見てもらえるのかな)
新人(…意志を持ってるとはいえ、私ゲーム相手に嫉妬してる)
新人「……」ガリッ
新人(〜〜!いったぁい…舌思いっきり噛んじゃった…)
新人(うー、どうしよ。偉そうに考えておきますなんて言っときながらどうすれば後輩ちゃんを対処出来るのか、全然思い付かないよ)
新人(男先輩は、インターネット上に存在出来るだろうから端末を壊しても無意味って言ってた。けど何か引っかかるんだよね)
新人(うーん…)
新人「…!」
新人(そっか。男先輩のこと離れたくないくらい好きなはずの後輩ちゃんが、準備があるからって午前の間中ずっと居なかったところだ)
新人(よくある映画みたいに、ネットの海で自由になんでも出来るわけじゃない…?後輩ちゃんは文字通り1人しか存在出来ない……つまり自分で自分のコピーを作れないとか)
新人(だったら)
ヴー、ヴー
新人「?」
新人(SMS…男先輩から…!?)
[メッセージ]
━━━━━━━━━━━━━━━
急で悪いんだけど、3Fの第二会議
室まで来てくれないかな?
━━━━━━━━━━━━━━━
新人「……」
新人(急ごう。携帯で連絡しなくちゃいけないほど逼迫した事態になってるのかもしれない)
56 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:56:17.65 ID:0+QxwshD0
ーーー第二会議室ーーー
新人「すみません、お待たせしました!」
シーン...
新人「…誰もいませんか?」
新人「……?」
〜〜♪
新人「!」
(男からの着信)
新人「はい、もしもし!」
『はろはろー。聞こえてますー?』
新人「え…その声」
『この前ちょこっとだけ会いましたよね〜。先輩とお昼食べてる時』
新人「後輩、ちゃん…」
後輩『あ、覚えててくれたんスね』
新人「さっきショートメッセージ送ってきたのって」
後輩『私っスよ。別にあそこで話しても良かったんスけど、変な邪魔が入ったら面倒ですし』
後輩『先輩が教えてくれないんであなたに訊きたいんス。さっきお二人で何話してたんスか?』
新人「男先輩と?」
後輩『はい』
新人「…どうして知ってるの?」
後輩『ここの定置カメラから見てたんスよ。先輩にもしましたね、この説明』
新人「……盗撮じゃない」
後輩『はい?』
新人「分からないの?あなたのしてることって立派な犯罪なの。男先輩との約束守れてないんだね」
後輩『なんで知ってんスか、先輩の言いつけのこと』
新人(!…しまった)
57 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/05/01(金) 12:56:44.98 ID:0+QxwshD0
後輩『あぁ…先輩に教えてもらったんスね?』
後輩『さっきの話って、私についてのことだったんスか?』
新人(……一か八か)
新人「そう。あなたの行動が行き過ぎてるせいですごく疲れてるって」
後輩『だから約束したんじゃないっスか。お二人を見てたのも先輩がどうしてるか心配だったからっス。私、悪いことしてますか?』
新人「あなたが悪いと思ってなくても、見る人によって感じ方は変わるの。勝手に人の様子を覗き見て、男先輩にどう思われるか気にならなかった?」
後輩『なんでっスか。私は先輩に悪いことが起きないように……褒めてもらえると思ったのに……』
新人「……ね、後輩ちゃん。あなたが男先輩を本当に想ってるなら今度ちゃんと3人で話し合ってみよう?」
後輩『違いは何なんスか』
後輩『あなたには私のことを話して、私にはあなたのことを話してくれない。あなたと私で何が違うんスか』
新人「人と人が違うのは当たり前なの。問題はそこにはなくて男先輩は――」
後輩『分かんない…分かんない分かんない分かんない』
後輩『どう計算しても解が定まらないリソースが足りないどのデータベースにも合致するものが無い』
後輩『("私が嫌いですか?"の文字化け)』
新人「いっ!」
新人(耳が…)
新人「…後輩ちゃん?」
新人「もしもし!後輩ちゃん、どこ!?」
『………』
新人「……駄目……だったのかな……」
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