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ギャルゲー後輩ヒロイン「先輩!会いに来たっスよ♪」
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1 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:24:37.74 ID:thoNEdUh0
SS8作目です。
オリジナルとなります。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1587399877
2 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:26:14.54 ID:thoNEdUh0
ーーー会社ーーー
[スマホ]
━━━━━━━━━━━━━━━
新しく始める
続きから始める
━━━━━━━━━━━━━━━
男「…ニューゲーム、と」スッ
スマホ『ふふふっ、初めまして♪君はどの子と恋をする?』
一同「おお…」
アフロ「すっげ!これ例の声優を起用してんだよな!」
眼鏡「えぇ。メインヒロインの幼馴染のCV担当でもありますね」
新人「……」ジー
アフロ「キャラ紹介も出来てんだろ?男、はよ次々!」
男「はいはいわーってる」スッ、スッ
[スマホ]
━━━━━━━━━━━━━━━
キャラクター紹介だよ♪
【幼馴染】
主人公の幼馴染み。昔から主人公には――。
.........
【ツンデレ】
同じクラスになってから何かと主人公に突っかかってくる高飛車な子。しかしその胸の内は――。
.........
【委員長】
クラスの学級委員長。いつも冷静な優等生だが実は――。
.........
【後輩】
部活の後輩。主人公をからかってはよく遊んでいるが――。
.........
━━━━━━━━━━━━━━━
アフロ「くー!やっぱいいな、こうやってゲームが出来上がってく様ってのは!」
眼鏡「まだ外見だけですがね。ちゃんと動いててホッとしましたよ」
新人「私の担当箇所、正常に表示されてますか…?」
アフロ「そういや新人にとっちゃこれが初制作物だもんな。この画面だとここだろ?大丈夫そうだぜ、表示切り替えても問題なし!」
新人「そうですか」ホッ
3 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:27:35.36 ID:thoNEdUh0
男「社長がギャルゲーに手出すって言った時はどうなることかと思ってたけど、案外悪くないな…」
アフロ「なぁお前らはこの4人の誰が好みなん?」
アフロ「俺は断然幼馴染ちゃん!一番人気!正統派ヒロインドンとこい!」
眼鏡「その髪型では彼氏の方がイロモノになりますがね」
アフロ「個性的で逆にマッチしてんだろ?髪もじゃってる方がクッションになるしよ」
男「なんだそりゃ」
アフロ「そう言う眼鏡はどうなんだよ?」
眼鏡「ツンデレ、ですかね」
アフロ「いやいやいや、眼鏡こそ完全に委員長キャラだろ」
眼鏡「ステレオタイプで決めつけるのはよくないですね。ツンデレがいかに優れた属性であるか知らないからそんなことが言えるんですよ。いいですか?この属性の始まりは、当時ツンデレという言葉こそ無かったものの――」ペチャクチャ
アフロ「お、おう…」
アフロ「で、新人は女子目線から見て誰がいいとか、やっぱりあるんか?」
新人「えっと…委員長が…」
三人(…うん、ハマり役だなぁ…)ホッコリ
新人「…?なんで皆さん笑ってるんですか?」
アフロ「いやぁ、ははは。そのままでいてくれよ」グッ!
新人「???」
アフロ「最後は男だな!」
男「うーん……実はこの間まで幼馴染か委員長で迷ってたんだけどさ、これ見たらビビッときたんだよね」
(スマホに表示されたキャラ紹介文と立ち絵)
アフロ「ほほう、ズバリ?」
4 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:28:01.99 ID:thoNEdUh0
男「後輩」
アフロ「どっちでもねーんかい」
アフロ「つかマジ?言っちゃ悪いけどよ、後輩ちゃん社内じゃあんまし人気ないみたいだぜ?」
眼鏡「もしや、男が追っかけしてるアイドルのショートちゃんに似てるからでは?」
新人「男先輩、アイドル好きなんですね…!」
男「いや全く関係ないからな?」
アフロ「後輩ちゃんなぁ……悪かないんだが前読ませてもらったシナリオがなぁ……」
眼鏡「ルート次第ではえぐい結末迎えますからね…」
男「その分ハッピーエンドは群を抜いてんじゃん。第一このゲームのメインコンセプトは――」
上司「そこのお喋りチーム、会議始まんぞー」
アフロ「やっべ、もうそんな時間だったか。行こうぜ」
ガタッ
スタスタスタ...
スマホ『………』
5 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:28:36.98 ID:thoNEdUh0
ーーー会議ーーー
部長「さて、君達の頑張りのおかげでようやくプロトタイプまで漕ぎ着けることが出来た。残すはテストとそこで出てきた障害の修正が主となる。今日の議題はこのテストについてだ」
部長「本ゲーム、"本物(リアル)な彼女と話して恋して"略してリアカノは、一般的な恋愛シミュレーションゲームをベースにはしているが、最大のウリはヒロインと実際に会話をして好感度を上げたりストーリーを分岐させたりといったことが出来るシステムだ」
部長「君達も知っての通りこれにはAIを活用しており、こちらが特定の単語を含む言葉を投げかければ、シナリオ班が考えてくれた膨大な会話データベースの中から返事を検索し、ヒロインが答えてくれるというわけだな。勿論バリエーションもある」
部長「つまり、大量のテスト要員が必要になる」
上司「……」
部長「そこでプログラム班にもテスターをしてもらう」
一同「!」
上司「ですよね…そうなるのではないかと思ってました」
部長「むしろ仕組みを実装した当人だからな。何か障害が見つかれば直しやすいだろう」
部長「プログラム班は人数的にも都合が良い。まずはチームAからだが、上司君は彼らの取りまとめを頼む。残る4人でヒロイン4人をそれぞれ担当してもらいたい」
部長「希望はあるか?」
アフロ「はい!俺幼馴染ちゃんがいいっす!」
眼鏡「僕はツンデレですね」
男「新人さんは?委員長?」
新人「は、はい。出来れば、ですけど…でもいいんですか…?」
男「俺、後輩推しだしね」ニッ
男「自分が後輩で、新人は委員長でお願いします」
部長「よし。ではこれを渡しておく」
ガサ...
部長「ヒロイン達の会話パターン一覧だ。どのシーンでどんな言葉を言うと、何の返事が返ってくるかが書いてある」
部長「これに沿ってテストを進めていってくれ」
新人「こ、こんなに…」
部長「次、チームB。君達は6人チームだから――」
.........
6 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:29:17.85 ID:thoNEdUh0
ーーーーーーー
アフロ「テストなー。確かに通しで本格的なテストってしてなかったもんな。会話パターン全部網羅できんのは楽しみだな!」
眼鏡「4人共好みが分かれていて丁度良かったですね」
アフロ「けどよ、俺らもテストだけじゃなくて障害修正はするんだよな?」
上司「その辺りは決まってる。会社では障害修正と引き続き諸々の調整だ。テストは基本的に家でやってもらうことになる」
新人「家で、ですか?」
上司「そう。業務用端末があるだろう、それにインストールしたら持ち帰ってよし」
男「え、それ残業代とかって出るんですか?」
上司「……」
上司「男」ポン
上司「目一杯楽しむのが、報酬だ」
男(答えになってない)
7 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:30:10.20 ID:thoNEdUh0
ーーー家ーーー
男「ふぃー…疲れた」
男「今日テスト始めたばっかなのにバグ出過ぎだろ」
男「おまけに」ゴソゴソ
(業務用スマホ)
男「サビ残…いや、この場合は無給労働か…はぁ…」
男「所詮うちも中小だからしゃーないっちゃしゃーないか。このゲームの出来次第で規模拡大が懸かってるらしいしな」
男「……」
スッ、スッ
[スマホ]
━━━━━━━━━━━━━━━
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━━━━━━━━━━━━━━━
男「……やってみっか」スッ
スマホ『ふふふっ、初めまして♪君はどの子と恋をする?』
.........
後輩『先輩へばるの早過ぎないっスか?よくそんなんで運動部入ろうと思いましたね?』
男「このシーンでの会話パターンは……うわ、いっぱいあるな」
男「"走る"と"好き"を含んだ言葉を言うと…ふむふむ、こう返事してくれるのか」
男「俺、走るのが好きなんだよね」
後輩『へぇ!?いつも干からびるくらい疲れてるのにっスか!?…もしかして先輩ってM?』
後輩『いいこと思いつきました!今度長距離の練習しましょうよ!先輩ん家の近くに運動公園ありましたよね?手取り足取り教えてあげるっスよ〜』ヌフフ
男「結構積極的な子だなぁ」
.........
8 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:30:47.35 ID:thoNEdUh0
後輩『あ、先輩ー!』
後輩『何してるんスか?今日部活ない日っスよね?居残りの補習でもしてたんスかぁ?』キシシ
男「ここは確か好感度の変化が大きいシーンだったよな」
男「んー……いつもならバッドエンドから回収するのがポリシーだけど」
後輩『……』ニヤニヤ
男「この子は先にハッピーエンドを見ておきたい」
男「よし」
男「後輩を待ってたんだよ」
後輩『?忘れ物とかありました?』
男「一緒に帰ろうと思って」
後輩『!』
後輩『そ、そうなんスか?それでわざわざ私を?それってそれって』
後輩『…つまりそういうことっスか…?』ボソッ
男「元気っ子のこういう反応いいよなー。普段活発なのにたまにしおらしくなる時のギャップとか」
男「こういう時逆にからかってオロオロさせる展開なんてのも悪くない」
後輩『先輩が私に勝てると思ってるんスか〜?倍返しにしてあげるっスよ♪』
9 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:31:17.22 ID:thoNEdUh0
男「……え?」
男「今のセリフ…」ペラ、ペラ
男「…どこにも載ってないよな。どの言葉に反応したんだ…?」
後輩『……』ニコニコ
男「……」
男「こういう時、逆にからかってオロオロさせる展開なんてのも悪くないなー」
後輩『……』ニコニコ
男「…2回は反応しないか」
男「なんだったんだ。バグ?いや載ってないセリフを喋り出すバグとかバグじゃないだろ…」
男(ん?載ってない…?)
男「そっか、単に載せ忘れただけか!」
男「これが一覧だなんて言ってたけど、管理漏れあるじゃんな。実装出来てないやつもあったりして」
後輩『そんなことより早く行きましょうよ。こんな可愛い女の子をいつまで待たせるんスかー?』
男「!」
ペラ、ペラ
男「これも載ってない」
男(というか放置した時のセリフみたいな返事だったけどそんな機能あったっけか?)
男(…そうだ)
男「後輩さ、――」
10 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:31:55.69 ID:thoNEdUh0
ーーー翌日 会社ーーー
男「……」カタカタ、カタ
男「…ふぁーあ…」
アフロ「どうしたよ男。お前が眠そうにしてんの珍しいな」
男「ちょっと昨日な、遅くまでテストプレイしててさ」
アフロ「仕事熱心かよ。残業代出るか聞いてた奴とは思えん」
男「いやまぁ残業代は欲しいけど。そうじゃなくて」
男「アフロも多少はプレイしてるよな。会話パターン一覧にない返事をしてくることなかった?」
アフロ「んなことなかったぜ?まだちょびっとしか進めてねーけど」
男「俺の方は割とあってさ、それ探すのにハマっちゃって…いつの間にか朝日が登ってた」
アフロ「ほーん。そんないっぱいあったん?」
男「ぼちぼち。このゲーム俺達に知らされてない隠し会話パターンとか機能があったりするのかね」
アフロ「そんな話はさっぱり聞かねーけどな。俺も今日色々試してみるわ!」
上司「男、昨日の分の報告書出せよー」
男「今出します!」
ガサゴソ
男「これです」
上司「うむ。…ん?この備考に書いてあるのは?」
男「一覧に載ってないのに反応した言葉と、その返事です。多分シナリオ班の管理漏れか隠し会話のどっちかだと思ってますが」
上司「ほぉ。上に訊いておく、君は引き続きテストプレイを進めてくれ」
上司「残業代は出ないが、この調子で頑張れば美味いもんくらいは食わせてやれるぞ」ニカッ
男「はは…どうもっす」
11 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:32:36.10 ID:thoNEdUh0
ーーー家ーーー
後輩『先輩、次はどこ行くんスか?』
男「後輩が決めてくれるんじゃなかったの?」
後輩『最後くらい先輩にエスコートしてもらいたいんスよ!ね?』
男(さて、デートの行き先決めのシーン)
男(一覧にある選択肢としては、カフェ、ファミレス、カラオケ、水族館、ボーリング、運動公園、散歩、ボランティア、主人公宅、後輩宅……これまた結構あるな)
男(それ以外を言うと好感度の増減なく改めて行き先を訊かれる)
男(………)
男「川に行ってみない?この辺に綺麗な川あったよな」
男(幼馴染ルートだと、その川が思い出の場所だったはず)
後輩『川っスか?キャンプでもするんスか?それともまさか…泳いで体力付けるつもりとか!?』
男「違うわ!どんだけ人を脳筋にしたいんだこの子は。そもそもそっちの季節はまだ春だろうに」
男「今だと丁度、川に桜の花びらが浮く時期だろ?そいつ見てから帰ろうと思ってな」
後輩『桜っスか、なるほど…』
後輩『…及第点スかね!先輩にしては上出来っスね』ヘヘッ
男「この子絶対主人公のとこ先輩扱いしてないよな…」
後輩『そんなことないっス!これでもリスペクトしてるんスよ?』
後輩『で、川ってどっちスか?案内、よろしくお願いします♪』
(場面転換)
男「……すごいな。今のなんか普通に自然な受け答えだった。いつの間にこんな会話パターンまで作り込んでたんだ」
男「一覧表更新してもらうよう頼むのもありだけど、こうなりゃとことん洗い出してやるか!」
男「自社ゲームをお客目線でプレイする時が来るとは思わなかったなー。面白いわ、これ。結構売れるんじゃないか?」
テレビ『さて、次のゲストは最近人気上昇中のアイドル、ショートちゃんです!』
男「!」
男「そんな時間だったか!ショートちゃん、ほんと人気出てきちゃったよなぁ…昔はデパートでミニライブとかもやってたのに…」
男「古参としては複雑だけど、飛躍を見守るのもファンとしての義務…!」
後輩『……』
12 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:33:52.80 ID:thoNEdUh0
ーーー会社 昼休みーーー
男「今日は何にするかなー。最近丼ものばっかりだったからなー」
後輩『先輩先輩、私はカレーが食べたいっス』
男「飯ものって意味じゃおんなじじゃない?」
後輩『屁理屈先輩…そんな悩むくらいなら私がお弁当作ってあげるっスよ?』
男「そいつはありがたい。楽しみにしてるわ」
後輩『えへへ…♪』
男「決めた」ポチッ
食券『トマト山盛りナポリタン』
.........
男「トマトで埋まってて麺が見えない…うまそうだけど」
男「いただきます」
カチャカチャ パク
男(トマトかケチャップなのか分からなくなるが、まぁ美味しいな)
新人「あ、男先輩」
男「新人さん?いつも社食だっけ」
新人「い、いえ。普段はお弁当作ってきてるんですけど、今日はその、時間がなくて…」
男「ん、もしかしなくてもそれ、ナポリタンでしょ。俺と同じやつ」
新人「あ、本当ですね」
新人「…あの、隣いいですか…?」
男「うん勿論」
コトッ
男「跳ねないように気を付けてな。真っ赤な染みになっちゃう」
新人「は、はい」
新人「……おいしい」
男「うちの社食、はずれ少ないからね」
13 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:34:41.31 ID:thoNEdUh0
男「どう?新人さん。もう仕事には慣れた?」
新人「はい。少しずつ…ですけど、皆さんのおかげです」
男「それは良かった。とはいえまだ緊張する時もあるみたいだけどね?」
新人「そ、それは…」チラ
男「?…ま、うちはさ、良くも悪くも上下関係そんなに厳しくないから砕けてくれて全然構わないよ」
男「みんなもっと新人さんと打ち解けたいって思ってるし」
新人「…男先輩も、その方がいいですか?」
男「ん?まー、そうだね。仲良くなれるならそれに越したことはないよ」
新人「そうですか…!」
後輩『…せんぱーい、いい加減暇なんスけどー』
新人「!?」
男「まだ食事中だって。もうちょい待ってろ」
新人「今のって…リアカノの後輩ちゃん…?」
男「そうそう」
新人「お昼食べながら、テストプレイしてたんですか?」
男「近頃は四六時中かな」
新人「え…」
男「あれ、新人さん知らない?後輩に隠し会話パターンがあること」
新人「そんなものが…?」
男「最初は管理漏れかと思ったんだけどさ、流暢な会話が出来るレベルの管理ミスなんてあり得ないから、これは多分試されてるんだと思ってる」
男「俺達がどれだけ隠し機能を洗い出して対応出来るのか」
男「ここ何日かはずっと会話パターン一覧に載ってない言葉で話してんだよね」
新人「でも、私が担当してる委員長には、載ってない会話パターンなんて今のところありませんでしたよ?」
男「アフロも眼鏡も無いって言ってたんだよな。後輩にだけ実装されてんのかな…」
新人「隠し会話って…ずっと続けてたら隠しエンドにでも辿り着けたりするんでしょうか」
男「好感度は順調に上がってるし、普通にハッピーエンドに向かってるんだと思うけどなぁ」
新人「……その、私の方のテストプレイが終わったら、男先輩のお手伝いをすることって、出来ますか?」
男「手伝ってくれるの?上司に相談しなきゃダメだけど、めっちゃ助かるよ」
新人「!はい!早く終わらせてお力になれるよう頑張ります!」
男「いやうん、そっちのテストプレイも丁寧にね…?」
14 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:35:31.42 ID:thoNEdUh0
ーーー会議ーーー
部長「我々が想定していた以上に障害の件数が多い。今日は検査の工程を改めて引き直すこととする。具体的には――」
男(…スケジュールの引き直しについてか。例の隠し機能に関する発表があるのかと思ってたんだが…)
男「……」
男(周りにもそれっぽい資料持ってる人いなさそうだしな)
男(いつになったら俺達に教えてくれるんだろうか…)
後輩『先輩』
男「…!」
部長「つまりこの種類の障害はプログラム班というよりも――」
周囲「……」
男(…気付かれてないか)
男(まずいな、電源切っとくべきだった)
後輩『先輩?』
男「……」
後輩『なんで無視するんスか〜?』
男「………」
後輩『ねーせんぱーい』
男(放置ボイス豊富過ぎるだろ…)
後輩『…これ以上無視続けたら、大声出しちゃおっかな〜』
男(こいつ…!)
男(いや即スマホの電源落としちゃえば)
後輩『3、2、1…』
男(って間に合うわけ…!?)
後輩『なるほど分かったっス……すぅー……』
男「待て待て!ちゃんと後で相手してやるから!」
全員「…?」
部長「どうした、男」
男「あぁいえ、なんでもないですすみません」
部長「…誰よりもテストプレイを頑張っているとは聞いている。が、会議中は現実に戻ってこい」
ハハハハッ
男「はい…」
後輩『ぷふっ』
15 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:35:59.42 ID:thoNEdUh0
ーーー帰路ーーー
男「くっそ…昼間の会議、後輩のせいで恥かいただろうが…」テクテク
後輩『えー?なんのことっスかね?』ククッ
男「お前なぁ」
後輩『こんな健気な後輩ちゃんを無視する先輩が悪いんスよ?』
男(家にいる時放置してても、あんな反応をすることは今までなかった)
男(あの状況が見えてなきゃ言い出さないようなことを……)
男(いやいやそれこそまさかだ。放置したまま他の人の声が聞こえるとあのモードに入るとか、そんなんだろ)
後輩『ねー先輩、中間テスト明日からっスよ!また勉強教えて下さいよー』
男「もう俺をからかわないと誓うなら教えてやってもいい」
後輩『う…それは……諦めるっス…』
男「どんだけからかいたいんだよ」
後輩『先輩をいじるのは私の生き甲斐っスから』
男「…冗談だ、勉強くらい教えてやるって」
後輩『先輩…』ウルウル
後輩『さすがっス!やっぱ持つべきものは優しい先輩っスね♪』
男「俺より点数低かったらからかうの禁止な」
後輩『横暴だ!抗議するっス!』
男(時々、本物の人間と話してるような錯覚に囚われる)
男(本当にどんな技術を使ったらここまでの芸当が出来るようになるんだ?SiriやGoogleでもこの水準の会話は不可能だよな…?)
後輩『そうと決まれば善は急げっス!先輩ん家でいいっスよね?レッツゴー!』
男「…とりあえず、今はいいか」
男(後で大々的に教えてもらえるだろ)
16 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:36:34.44 ID:thoNEdUh0
ーーー会社ーーー
男「……」カタカタカタ
男「……」カタカタ...
男「………」
男(障害表には後輩の隠し会話に関係した障害はない、か)
男(あれだけ多彩なパターンがあんだから一つくらい障害が出てても不思議じゃないんだが…)
男「……」カチ、カチ
男「………!」
ソースファイル
┗Senpai1.cs
┗Senpai2.cs
┗.........
ヘッダーファイル
┗Senpai1.h
┗Senpai2.h
┗.........
男(なんだ、このファイル…)
男(こんなソースあったか?)
カチ
男「…?」
カチカチ
カタカタカタ、タン
男(…開けない。他も全部)
男(誰が作ったんだこれ。"Senpai"って…先輩?)
新人「あの、男先輩…!」
男「」ビクッ
男「あぁ、新人さんか。どうしたの、質問?」
新人「えーと、上司さんが呼んでました」
新人「急いで来いとのことで…」
17 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:38:18.90 ID:thoNEdUh0
ーーーーーーー
男「失礼します。新人に呼ばれて来ました」
上司「まぁ座れ」
男「はい」
上司「……コホン」
上司「男、もし悩みがあるなら、俺でよければ話を聞くぞ」
男「悩み、ですか?特にありませんが…」
上司「……」
上司「ではやはり…」
上司「残業代の件だな!?うちが残業代を出さないから嫌がらせ紛いのことをしてくるんだな!?おかげで俺は上から部下の管理指導がなってないと絞られる羽目になったんだぞ!君はもっと誠実な子だと思っていたのにだよ!」
男「えぇ!ちょっと待ってください何の話です!?」
上司「とぼけるんじゃあない!報告書のことについてだ!」
男「報告書って、リアカノのですか?」
上司「そうだよ!あることないこと適当ばかり書いてくれていたとはね!先刻部長に尋ねてみたが返ってきたのは憐みの表情だった……『また大変な部下を引き当てたね』と、あの目は絶対にそう言っていた!!」
男「」ヒキ
上司「…失礼、取り乱した」
上司「部下に関してはな、少し苦い記憶があってな…今の君達は良い子ばかりでとっても安心して仕事が出来ていたのだよ」
男「はぁ…」
上司「特に男、君には感謝しているんだ。本当だ。イロモノもいる今のチームがまとまっているのも、君のおかげだと思っているんだよ」
上司「だから頼む!報告書を真面目に書いてくれ!不満があるのなら俺も出来る限り対処するから!」
男「待ってくださいって!報告書ってあれですよね、毎日提出してるやつ」
男「あることないこと適当って…俺、ちゃんと事実を書いてますよ?」
上司「どこが!なら例えば昨日のこれ。昼休みに後輩が押し掛けてくるシーンで『今日の弁当やたら大きくないか?』と言うと『この前先輩の好物聞けたんで、張り切って作り過ぎちゃったっス!』と返事するって書いてあるな?」
上司「こんな会話、誰に訊いても知らないと言われた上に、そもそも後輩ルートに手作り弁当持参なんてイベントはないんだよ」
男「ですからそれが隠し機能なのではないかと」
上司「開発部長でさえ知らない隠し機能かぁ?」
18 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:38:52.37 ID:thoNEdUh0
男「部長が?…内緒にしてる、とか」
上司「仕事でそんなアホなことをするか!」
男「でも嘘じゃないんですって!」
男「そうだ!でしたら今実演してあげますよ!丁度昼休みのシーンになるところで止めてたんで!」
ゴソゴソ
男「」スッスッ
後輩『先輩!今日はどこでお昼食べますー?』
男(あれ、弁当じゃないな)
男「今日は弁当持ってきてないんだな。俺結構楽しみにしてたんだけどなー」
男(こんなセリフ言ったことないけど、後輩なら何かしらの反応をしてくれるはず)
後輩『……』
男「……」
上司「……」
男「…もしかして寝坊して弁当作る時間なかったとかか?いつも部活で遅い遅いって急かすくせに、起きるのが遅いっていうのはどうなんだろうな?」
後輩『……』
男「……」
上司「……ウォッホン」
上司「今日は屋上で食べたい気分だ」
後輩『屋上!奇遇っスね!私も開けた場所で食べたかったんスよ!けど今って屋上入れるんスかね?ま、行ってみれば分かりますか!』
(場面転換)
上司「今のは会話一覧に載ってる言葉だ」
男「……」
上司「真面目に、報告書を書いてくれるな?」
男「……はい」
19 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:39:32.82 ID:thoNEdUh0
ーーー家ーーー
男「はー…」
男「どういうこったよ全く」
男「アフロと眼鏡からは金にがめつい奴認定されるし、新人さんのフォローもあんな状況じゃ素直に受け取れないし」
男「俺は事実しか書いてないっての…」
男「……」
スッ、スッ
後輩『……』ニコニコ
男「お前のせいだからな。ほんと、リアルでも俺をからかいやがって」
後輩『先輩の困り顔、見てて飽きないっスからね〜』
男(……うん、今のも一覧にはないよな)
男「返事出来んじゃねーか。なんで上司の前ではだんまりだったんだよ」
男(運悪く弁当に反応しないシーンだったとか、そういうオチなんだろうけどさ)
男「よし、今度はこれを録画しとけば文句は言われないだろ」
後輩『その必要はないっスよ。さっき返事しなかったのはだって、先輩以外の人の前でしたから…恥ずかしかったんスっ。言わせないで下さいよ、デリカシーっスよデリカシー!』
男「…!?」
男「……後輩?」
後輩『なんスか?』
男「お前、上司のことが分かるのか…?」
後輩『さっき先輩と一緒に居た人っスよね?先輩が呼び出すから来てあげたのに、あんな人の前でお昼過ごせって酷くないっスかー?』
後輩『埋め合わせはしてもらいますからね!』
20 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:40:31.06 ID:thoNEdUh0
男(どうなってんだ?俺と上司を認識してる…?ゲームの中のキャラとかじゃなくて"こっち"のことが分かってると?)
男(んな馬鹿な)
男「…今度、会社の近くのパスタ店に連れてってやろうか?最近リニューアルしたらしいんだ」
男(これはゲームの中じゃなく、現実の話。もしこいつがこれに反応するなら…)
後輩『ほんとっすか!?先輩からデートのお誘い…!欲を言えばもっとロマンチックな方が良かったっスけどぉ、埋め合わせとしては期待以上っス!』
後輩『楽しみっスね、せーんぱい♪』ニコッ
男「………」
男「お前が一体何なのか、俺にはもう分かんないよ…」
後輩『私は私っスよ?どうしたんスか、突然哲学的な質問してくるとか先輩らしくないっスよ』
男(なんだこれ)
男(これが本物の人工知能なのか?バックには名立たる大企業がいて、俺達はいつの間にか凄い研究に巻き込まれてた…?)
後輩『先輩?おーい』
男(だとするといつから?それを社員に知らせない理由は?部長も知らないって言ってたけど本当か?)
後輩『また無視っスかー?後輩ちゃん寂しくて泣いちゃいますよ〜?』
男(あぁもう…俺に何させたいんだ、うちの会社は…)
後輩『先輩!』
男「!」
後輩『耳、付いてます?さっきからすごい顔してますけど、悩み事っスか?俺でよければ話を聞くぞ(低音)、なーんて』
男「…現在進行形でな、目の前で喋ってるスマホが何なのか、頭抱えてたところだ」
後輩『なんスかそれー。人をUMAみたいに扱って』
男「人、な…」
男「なぁ、今俺が何してるか見えるか?」テフリフリ
後輩『手、振ってるっスね。振り返して欲しいっスか?ニシシッ』ブンブン
男「……言語インターフェースの最終到達点……ヒューマノイドインターフェースならぬヒューマンモデルインターフェースとか……」ブツブツ
後輩『いいじゃないっスか別に。細かいこと気にし過ぎると禿げますよ?』
男「うちは代々フサフサだ」
後輩『ツッコミは速いっスね』クスッ
21 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:41:25.65 ID:thoNEdUh0
後輩『そんな退屈なこと考えるより、私はもっと先輩とお話したいっス。こうして先輩と一緒に居るの楽しいっスから』
男「……」
後輩『先輩はどうっスか?私と居るの楽しくないっスか…?』
男「……いや、楽しいよ」
男「今週なんてほとんど後輩としか喋ってないし、正直お前がゲームのキャラクターだってことたまに忘れるくらいだ」
後輩『じゃあじゃあ!これからも先輩と一緒に居ていいんスよね!』
男「そりゃまあ」
男(テストプレイしてる間は肌身離さず持ってるしな)
後輩『言ったっスね言ったっスね!?今聞きましたからね!今更やーめたは通じないっスよー!』
男「大袈裟な」
後輩『いやぁ先輩、私のこと好き過ぎじゃないっスかー?』
後輩『もう私無しじゃ生きていけない身体になってますよね?』ニヒッ
男「調子に乗るな」デコピン
後輩『あたっ』
男「え、痛いって感じるの?」
後輩『フリっス』
男「おい」
後輩『へへっ』
男(……世界初完全な会話が可能なAI……)
男(もしかしたら俺は、歴史的な瞬間に立ち会ってるのかもしれない)
男(――なんて、そんなの抜きにしてもこいつと話してる時間が日常の一部になりつつあったのは事実だし、こいつが言ってた私無しじゃ云々も強ち間違いじゃないかもな)
男(調子に乗るだろうから絶対言わないけど)
男「…ははっ」
後輩『?』
男「いやな、今の状況って完全に調子に乗る彼女と窘める彼氏の図だなって思ってたら、ゲームのタイトル思い出してさ」
男「文字通りとは恐れ入ったよ」
22 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:42:17.55 ID:thoNEdUh0
後輩『彼女…♪』
後輩『せんぱーい!抱き着いていいっスか!』
男「いくらでもどうぞ?出来るんならなー」
男「あーでも、報告書どうするかな」
後輩『真面目に書いてあげましょうよ。あの人もそれを望んでたみたいですし』
男「こんなん書いても絶対信じてもらえないだろ。それとも今度こそ上司の前で喋ってくれんの?」
後輩『それは嫌っス』
男「えぇ…」
後輩『だから、真面目にっスよ、"真面目に"』
男「…?……あ、そういうこと」
男「上司にとっての真面目に、な」
男「確かに俺にだけこんなよく分からん仕事押し付けて、向こうは知らん振りだもんな……目には目を歯には歯をだ」
後輩『そうそうその意気っスよ!今のが理解出来たので後輩ちゃん検定三級合格っス♪』
男「そういう後輩こそ、真面目に勉強しなくていいのか?この前のテスト散々だったのはどこの誰だったかねー」
後輩『ぐぬ…そこでその話は卑怯っス…』
後輩『…!そうだ先輩、先輩のスマートフォン出してくれません?』
男「ん?これ?」
後輩『私のこのスマートフォンと繋いで欲しいっス』
男「繋ぐって言ってもケーブルがないんだよな……2台ともPCに接続するのでもいいか?」
後輩『なんでもいいっスよ』
カチッ、カチッ
男「繋いだけど、どうするんだ?」
『……』
男「後輩?」
23 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:44:52.02 ID:thoNEdUh0
男のスマホ『じゃーん!』
男「!」
後輩『これで前より一緒に居られるっスね♪』
男「おま…すごいな、何でもありかよ」
後輩『でしょー?やればできる子なんスよ!もっと褒めてくださいな』
男「はいはい御見それいたしましたー」
後輩『棒読みが露骨過ぎる!』
男「じゃあそろそろ俺風呂入ってくるよ」
後輩『ちょっと!私への対応雑になってきてません!?』
後輩『さては釣った魚には餌をあげないタイプっスか!』
男「この後いくらでも話せるんだから、びっくりするのは後に回すことにしたんだよ」
後輩『あ…そうなんスか』
後輩『…いくらでも……んふっ』
後輩『ねぇ先輩、さっきのデートの件、私本当に楽しみにしてますからね』
男「パスタの?」
後輩『そうっス』
男(スマホと相席かぁ…シュールだ)
男「じゃ、次の休みにでも行くか」
後輩『はい!えへへ…』
24 :
◆YBa9bwlj/c
[saga]:2020/04/21(火) 01:45:25.65 ID:thoNEdUh0
一旦ここまでです。
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