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渋谷凛「最後はだいたい、いつもこんな感じ」
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◆TOYOUsnVr.
[saga]:2020/04/19(日) 22:02:02.59 ID:nO0X6WpI0
鳴り止まぬ歓声と万雷の拍手に背を向け、私はステージを後にする。
確かな熱さを感じるほどに眩しいスポットライトは太陽のようで、まだ体が熱を帯びていた。
当然ではあるが、舞台袖はステージの上と比して暗い。
その暗さに目が慣れるのを少し待って、段差に気を払いながら通路を進む。
やがて開けた場所に出れば、たくさんのスタッフの人が控えていてくれて、私の到着を見るや寄ってくる。
もう幾度となく見た光景ではあるが、いつもカーレースのピットインみたいだ、と思う。
流れるような手際でピンマイクが外れたと思えば、次の瞬間にはぎゅうぎゅうと私の足を締め付けていたブーツがするりと脱げる緩さになっている。
ぺたりと素足を下ろすと既に私の背後には椅子があって、第一陣のスタッフさんが去ったと思えば、そのすぐ後ろで待機していたメイクさんたちが今度は汗や時間経過で崩れてしまったお化粧の修正を始める。
自分で自分にお化粧をするのと、他人にするのとではかなり勝手も違うはずなのに、速さと正確さ、その両方を兼ね備えたメイクさんたちは瞬く間に私を綺麗にしてくれた。
スタッフさんたちは、私が「ありがとうございます」とお礼を言うと一様に花が咲いたように微笑んで、照れくさそうに会釈をして去っていく。
たくさんたくさん助けてもらっているのは私の方なのに、お礼を言ったことに対して何故かお礼を言われることもしばしばある。
やや誤解を招きそうな表現ではあるけれど、お礼の言い甲斐がすごくあった。
そんな、くすぐったいような気持ちを押し込めるべく頬の内側を甘く噛んで、立ち上がる。
そのまま、私の衣装替えのために用意されている一室へと入り、これまた驚きの速さで着替えが完了する。
普段も、これくらいで出かける準備が終わったらいいのに、なんて能天気なことを考えながら再び舞台袖へと戻る私だった。
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