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【ミリオン】翼 & 昴 & 海美 「弟ができた!」
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51 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:25:22.59 ID:lHpmkO570
ピー「……なんでぼくだけ出来ないんだろう。
何回も何回も、練習してるのに、そのたんびに失敗…。
どうせ次だって失敗だし、意味ないよ…。
おんなじことばっかり繰り返すの、ぼく疲れちゃったよ…」
翼「……」
翼「ね、ねぇ…海美さん、昴くん。もうやめよう?弟くん、疲れて動けなくなってるよ!」
昴 & 海美「……」
昴「…いや、だめだ!」
海美「…うん、そうだね!」
52 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:26:04.72 ID:lHpmkO570
ピー「そんな…。逆上がりすることがそんなにだいじなの?将来、なにか意味がある事なの?」
昴「……ピー太!ほら、グローブ!(ポイッ)
さぁ、構えろ!」
ピー「……!」
昴「このボール、よく見とけ!
それっ!」シュッ
ピー「変化球だ……っ!(スカッ)あっ……」球コロコロ…
海美「ピーくん!私の体の動きも見てて!
はいっ!アン・ドゥ・トロワ!海美フェ〜ッテ!」スススー
ピー「わぁ……きれいなステップ!」
53 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:27:49.84 ID:lHpmkO570
昴「……オレの変化球もさ、はじめはTVで見てカッコいいからやってみたんだけどさ、これが何回やってもできなくてな」
海美「私もね、始めは基本的なステップができなくって、バレエの先生から何度も叱られたんだよ!
『もっと指先から頭のてっぺんまで、神経を行き届かせて〜』って!」
ピー「……そうなの?」
海美「うん!……できない自分が悔しくて、叱られるのがイヤで、いつもひとりでベソかいてたんだ」
海美「……でもそんな時ね、居残りで先生がステップ見てくれたり、お家でお姉ちゃんが一緒に練習してくれたんだよ!」
昴「オレも、チームメイトとか兄ちゃんが練習付き合ってくれるようになったんだ。何日も、何日もさ…!」
昴「……最初はカッコつけで始めたけどさ。
……でも。いつからか『こいつらのために投げたい』って思うようになったんだ」
54 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:28:49.60 ID:lHpmkO570
海美「……ねぇ、ピーくんが逆上がり出来るように、一緒に練習してくれた人たちはいたよね?」
ピー「……うん。先生とか、お父さんとか、近所の娘とか…」
昴「……確かに、逆上がりができたって何も役に立たないかもしれないけどさ。
でも、みんなピー太が出来るって信じてくれてるから、練習に付き合ってくれたんだぜ。何回も失敗してもさ!
そんな奴らにクルッと逆上がりしてるとこ、見せたくないか?」
翼「……」
ピー「そっか……。出来るかな?ぼくに」
55 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:30:53.92 ID:lHpmkO570
昴「できるさ!みんな、絶対喜んでくれるぜ!オレも、初めて変化球で打者討ち取ったときのチームメイトの嬉しそうな顔、まだ覚えてるんだ♪」
海美「私もできるようになった時、すっごく自信ついたもん!やればできるんだって、バレエすっごく楽しくなったんだ☆」
海美「……それにピーくんは、今も1人じゃないよ!」
翼「うん…そうだね。
おんなじ失敗の繰り返しに見えるけど、きっと一回一回は違ってて、少しずつ前に進んでる…って誰かが言ってた!
日暮れまであとちょっとだけど、がんばってみよう?」
ピー「わかった!ぼく、やってみるよ!今はおねぇちゃん達が見ててくれるからっ!」
56 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:31:39.06 ID:lHpmkO570
◇
ピー「アン・ドゥ・トロワっ! アン・ドゥ・トロワっ!」ピョンピョン
昴「んー、惜しい!あとちょっとなのに!」
翼「こう、足をズサッーて引いて、思いっきりえーーいっ!ってピョンってすれば……。
ふぇーん!教えるの難しい〜!未来みたいになっちゃう!」
海美「リズムはいいし、蹴り出しもいいし、足も上がってる。……きっと、あとちょっとなんだけど」
昴「ああっ!あと少しで日の入りだ!行けるか、ピー太!」
ピー「はぁ、はぁ……!大丈夫!おねぇちゃんたちが、応援してくれてるからっ!」
ピー「い、いくぞっ……」ギュッ
57 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:32:57.22 ID:lHpmkO570
海美「……っ! ちょっと待って!私、分かったかも!」
ピー「…え、なに?」
海美「ピーくん、飛ぶ時に目を瞑ってるんだよ!」
ピー「え…そう…なのかな」
海美「多分、ピーくんの苦手意識からじゃないかな」
翼「……でも、目を瞑ってることと関係あるの?」
海美「大アリだよ!目を瞑ってるってことは、頭が動いてないってこと!」
海美「頭ってね、体でも重たい部分なんだよ。確かに回るためにはおへその方を見るのは大事なんだけど、ずっと見てると…」
翼「体は回ろうとしてのに、頭が邪魔してるんだ!」
海美「そういうこと!逆上がりも、目線の移動が大事。
足が上がりきったとき、目線をおへそから足先に…ううん!首を上にぐわっと向くようにすれば!」
昴「頭の重さのぶん、勢いがついて回れるってわけか!」
58 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:33:36.07 ID:lHpmkO570
ピー「目をしっかりあけて……頭を……!分かった!やってみる…!」
ピー「ふぅ〜………よしっ!」キッ
ピー「……アン!」
海美& 昴 & 翼「ドゥ!」
ピー「トロワ……っ!」
バッ
59 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:34:05.66 ID:lHpmkO570
昴「足は上がってる!あとは!」
翼「頭を……」
海美「上げてーーっ!」
ピー「んーーっ!」
クルッ
海美「…」
昴「…」
翼「…」
ピー「……!」
ピー「おねぇちゃん!ぼく……っ!!」
60 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:34:50.61 ID:lHpmkO570
海美「……やった」
海美「やったやったー!逆上がり、できたよぉ〜!!頑張ったね、諦めなかったね!グスッ…おねぇちゃん、嬉しいよぉ〜!わ〜〜ん!!」抱キツキ
昴「スッゲーーっ!!代打満塁サヨナラホームランだぜ!!やれるって信じてたぜ、ピー太!!」背中バンバン
翼「やった〜!弟くん!すごーーい!!ちょっとカッコよかったかも!」頭ナデナデ
ピー「お、おねえちゃんたち、苦しいよ……!
えへへ、ありがと!
……でも、全然カッコよく出来なかったから、また練習しないと……!」
61 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:35:53.82 ID:lHpmkO570
???「ん〜なんだかすごくいいシーンねぇ〜!」
翼&昴&海美「だ、だれ!」
魂ちゃん「あら!この出会いの仲人の魂ちゃんじゃない!忘れないでよね♪」
ピー「あ、夢のおねぇさん!」
ピー「そっか、もう……」
魂ちゃん「ええ、そう。もう日暮れ。黄昏時。不思議で楽しい時間はおしまい。
約束の時間よ?」
62 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:36:47.15 ID:lHpmkO570
昴「そんな……まだオレたち、今日会ったばっかなのに。やっと、逆上がりできたばっかなのにさ!」
翼「もうお別れなんて、早すぎ!まだまだ、一緒に行きたいところ、いっぱいあるのにっ!」
海美「ピーくん……おねぇちゃん、寂しいよぅ…。もっとたくさんお料理作ったり、遊んだり、お喋りしたいよぅ……」
ピー「おねぇちゃんたち……」
魂ちゃん「気持ちはすごく分かるけど。でも、この子は元のところに帰してあげないと」
魂ちゃん「ほら、お別れよ。おねぇちゃんたちに、挨拶なさいな」
63 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:38:19.29 ID:lHpmkO570
ピー「……うん。翼おねぇちゃん、昴ねぇちゃん、うみみねぇちゃん。今日はたくさん遊んでくれて、ありがとう!」
ピー「ぼくね。ひとりっ子で、ずっときょうだいが欲しかったんだ。
だから、今日いきなり3人のおねぇちゃんが出来て、最初は驚いたけど、すっごくうれしかったんだ!」
ピー「昴ねぇちゃんは、変化球投げれるし、お裁縫もできて、カッコいいし!
うみみねぇちゃんは最初の格好にはビックリしたけど、すごく優しくて、たくさん褒めてくれて!
翼おねぇちゃんはちょっとイジワルだけど、オシャレでジャンケン強くて、いろんなところに連れてってくれた!」
ピー「ぼく、まだよわ虫だけど、おねぇちゃん達みたいにカッコよくなりたい!」
64 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:40:31.21 ID:lHpmkO570
昴「オレ達みたいにって……オレをお手本にすんのか!?
だ、ダメ!オレ、ホントは全然自信なんかなくて!カッコよくなんかほんと、全然ないんだ…」
翼「わたしも、レッスンサボっちゃったり。自分のことばっかりで、しっかりしてない…」
海美「うっ、私も…早とちりでドジばっかりで、全然おねぇちゃんらしくない」
ピー「……じゃあさ、約束しようよ!」
ピー「次に会うときまでにぼく、たくさん練習してもっと上手に逆上がりできるようにしておくからさ……」
ピー「だから、おねぇちゃんたちは、今よりもっとカッコよくなってよ!」
65 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:43:17.90 ID:lHpmkO570
翼「……っ!」
昴「ピー太、実はな…」
海美「……次は……その…」
ピー「うん。なんとなく分かる。次会うのはずっと、ずぅっと…」
ピー「…だからぼく、言うんだ。『またね!』って!
『またね!』はお別れじゃなくって、約束だから。
『またね!』はまた会える、おまじないだから!」
ピー「…次に会うぼくは……ううん!」
ピー「……おれ、もっと頼りがいのある弟になってるから!だから、おねぇちゃんたちも……っ!」
66 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:44:28.85 ID:lHpmkO570
昴「……分かった。約束、だな!」
翼「…うん、約束。わたし、もっと自分のことしっかりする!」
海美「グスン……ピーくん、分かった…。おねぇちゃん約束守れるように、お料理、頑張るからねっ!」
ピー「……よかった。ぜったい…ぜったいだよっ!」
ピー「じゃあ、おねぇちゃんたち……!もう、行くね?」
67 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:45:50.87 ID:lHpmkO570
翼「弟くん…」
昴「ピー太…」
海美「ピーくんっ…」
翼&昴&海美「またねっ!」
ピー「うんっ!また…ねっ!」
日の入り前、陽がひときわ眩しく光った瞬間、消えてしまった少年。
最後に、笑顔だけをその場に残して。
3人は何を言うでもなく、藍色に染まっていく空を身を寄せ合って眺め続けたーーー
68 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:46:23.29 ID:lHpmkO570
◆
ー それから ー
P「やれやれ……事務所で溜まった事務仕事をしようとおもってたら……」
P「朝から昴とキャッチボールなんて…なっ!」シュッ
昴「へへ♪別にいーじゃん!休みもどーせ1日ゴロゴロしてただけなんだ…ろっ!」シュッ
P「うっ、鋭い……球速も」シュッ
昴「…なぁ、プロデューサー」
P「ん〜?」
昴「Pはさ、いつから自分のこと『俺』っていうようになったっ?」シュッ
P「……ん〜?そんなの覚えてないな……ずいぶん前からってのはなんとなく……っ!」シュッ
昴「そっか……そうだよな」
69 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:47:09.47 ID:lHpmkO570
昴「……オレさ、やっぱ自分のこと、『オレ』って言うことにするよっ!」シュッ
P「……前の握手会のことか?別にそんなこと、言わなくたってっ!」シュッ
昴「ううん!これはピー…、プロデューサーに聞いてもらいたいんだ」
P「……」
70 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:47:52.73 ID:lHpmkO570
昴「オレってさ、女子なのにガサツだし、野球好きだし、格好だって無頓着だし…」
昴「でもさ」
昴「こんなオレを、カッコいいって…可愛いって言ってくれたやつがいたんだ!
そいつのためにも、オレが胸張って自分のこと、『オレ』っていいたいんだ!」
P「……そうか。ファンの人がそう言ってくれたなら、期待に答えるのは大切なことだな」
P「でも、一番大事なのは……」
昴「……オレ自身の気持ち、だろ?分かってるよ、P!」
昴「オレ、もうブレない。だって、オレが迷ってたらナマイキなアイツに、また笑われちゃうからさ!」ニカッ
71 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:48:53.16 ID:lHpmkO570
昴「……だから。
次投げる一球は……
そんなオレの……決意の一球だぜっ!」
P「な、なに!?」
昴「さぁ構えろっ!ちゃんと受け取ってくれよプロデューサーっ!真っ直ぐな、オレのキモチっ!」
昴「……ふっ!!」シュッ
P「………っ!」
パシッ‼
昴「……あっ♪取れるようになったんだな!」
P「まぁな!野球は昔少し、な」
72 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:49:58.11 ID:lHpmkO570
P「……でもな、真っ直ぐな気持ちをスライダーで投げるやつがあるかっ!俺でなきゃ取り逃してたぞ!」
昴「へへ♪いーじゃん!ちゃんと取ってくれたんだし!」
昴「オレのキモチ……バッチリ受けとめてくれてサンキュな、プロデューサー!」
昴「それにしても……」
P「……?」
昴「Pの『俺』、なかなかサマになってるぜ?
……ま、『オレ』ほどじゃないけどさ♪」ウィンク
73 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:50:50.72 ID:lHpmkO570
ー 劇場 キッチン内 ー
海美「ふんふふーん♪はいきんっ♪ふっきん♪だいきょうきーん♪」トントン…
P「お、おい海美!土鍋、もう吹きこぼれそうじゃないか!?あぁ!あっちの出汁もっ!」
海美「焦らない、焦らない〜♪アイドルもお料理もね、焦ったらダメなんだよ!ほらほら、座って見ててよっ!」
P「だって急に『お昼ごはん作らせて!』って言ってきて……。その、いろいろ心配にもなるだろ!」
海美「確かにちょーっと失敗しちゃったけど、前あれだけたくさん食べてくれたのに」トントン…
P「……前?そんなことあったっけ?」
74 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:51:36.51 ID:lHpmkO570
海美「あ……そっか。覚えて、ないんだ……」
海美「ピーくん…」…ジワッ
P「お、玉ねぎ染みたか?」
海美「……グスン……うん!そうみたい。
でも、大丈夫!メソメソしてるなんて、カッコよくないもんね!えへへ!」
75 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:52:44.90 ID:lHpmkO570
…
……
P「焼き魚に、味噌汁、ほうれん草のおひたし、土鍋で炊いたごはんか…」
海美「うん!女子力はないかもだけど、しつじつごーけんなお料理のつもり。ど、どう?」
P「ズズ……うん。出汁もちゃんと取れてるし……ごはんもピカピカだな。これは大したもんだ!」
海美「えへへ…お料理本の通りに作ったんだ。何回も読んで、たくさん予習したんだ♪」
P「そりゃ大事なことだな」
海美「……うん。私、ピーく……ううん!」
海美「ある人と、約束したんだ。次会うときには、もっともっと美味しいお料理を食べさせてあげるって!」
海美「そのためには、まず基本から。女子力アレンジは、それからかなって!」
P「そ、そうか……察するにそのある人とやらは、海美の料理を食べたのか……。か、体は大丈夫なのか?」
海美「うん!私のお料理をね、いっぱい食べてくれたんだ!美味しい、美味しいってね☆」
海美「今はね……(まじまじ)…うん!私よりもうーーんとおっきくなってるよ、あはは♪」
P「そ、そうか。元気ならいいんだ…」
76 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:54:30.68 ID:lHpmkO570
海美「ところでプロデューサー?焼き魚…」
P「うっ!し、仕方ないだろ!魚は好きだけど、昔からうまく骨を取れなくて…」
海美「お母さんから叱られてたんでしょ?そういうところ、昔から変わらないんだね、あはは!」
海美「ほら、お皿貸して!チョチョイっと…はい、出来た!」
P「お!あっという間に白身だけになった!器用なもんだなぁ」
海美「はい、じゃあ…あーーーん♪」ズイッ
P「いやいや、あとは自分で食べるから。皿返してくれ!」
海美「むー、だめ!ほら、おねぇちゃん命令っ!お口開けて、はい、あーーん♪」
77 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:56:10.71 ID:lHpmkO570
P「だれがお姉ちゃんだ……。うーん、周りには誰もいないな?」キョロキョロ
P「しょうがないな…」
P「あ、あーーん」パクッ
海美「……ど、どう?美味しい?プロデューサー…」
P 「んぐ……うん!美味い!
海美、ありがとな!」ニコッ
海美「あ…」
78 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:56:39.56 ID:lHpmkO570
P「ん?どうした海美?」
海美「……その顔」
海美「いっしょ、だ……」ポロポロ…
P「ど、どうした!なんで泣いてるんだ海美っ!」
海美「だって……だってだってっ!ヘンなところ、変わらなさすぎるからっ…!」
海美「もう、ずっと会えないって……食べてもらえないって、思ってたから…!」ポロポロ…
79 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:57:35.08 ID:lHpmkO570
P「な、なんのことかはわからんが……。俺で良かったら、また料理食べてやるから、な?」
海美「……うん、うん!
私、もっともっと勉強するから!
待たせちゃった分、これからいっぱい作るから!たくさん食べてね?約束だよ?」
P「お、おう……!男に二言はない……っ」
海美「グスッ。えへへ……あとね、プロデューサーっ!」
海美「今度はお料理して欲しい!私と……うみみおねぇちゃんと、一緒にっ!」
80 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:58:39.17 ID:lHpmkO570
◆
ー 劇場 屋上 ー
翼「1・2・3! ターン!キメッ!」
翼「んー、もう少し速く?」
翼「1・2・3! ターン!キメッ!」
ガチャ
P「……翼。ここにいたか」
翼「あっ、Pさん!お疲れ様でーす!」
P「おつかれ。さっき、レッスン見てたぞ。なかなか見事なステップだったけど、そこのパートはもう覚えたんじゃなかったのか?」
翼「はい!もう動きは……覚えられたかな?」
81 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 12:59:18.44 ID:lHpmkO570
P「そうか……」まじまじ
翼「……な、なんですか?Pさん。わたしが自主練してるの、そんなにヘン?」
P「……はは、悪かった!ヘンじゃないさ。定期公演前だし、自主練自体はいいことだ」
P「ただ、さっきのレッスンも今練習してるときも、翼の顔がいつになく真剣に見えてな」
翼「……あはは♪なんかPさんに口説かれてるみたーい!」
P「こ、こら!茶化すんじゃない!」
翼「はーい!ごめんなさ〜い!」
82 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:02:07.28 ID:lHpmkO570
翼「……」
翼「……ねぇ、プロデューサーさん」
翼「わたし、遠くに行っちゃった男の子と約束したんです。次に会うときは、もっとしっかりしたおねぇちゃんになるって」
翼「あれから、昴くんはお裁縫、海美さんはお料理を頑張ってる。大変だって笑ってるけど、なんかふたりとも、キラキラしてる」
翼「じゃあ、わたしが今、頑張れることを考えたら、アイドル活動しか思い浮かばなかったんです。
さっきのレッスンで、覚えたと思ってたステップを何度繰り返しても。今のじゃ足りない、もっと良くできるかも、って全然、納得できなくて」
翼「さっきレッスン終わったばっかりだけど、なんか……いても立ってもいられなくなって」
翼「それで、ここで…」
P「なるほど、な」
83 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:03:58.69 ID:lHpmkO570
翼「今まで、こんな事なかったから、戸惑い中……って感じ。あはは…」
P「……そう感じるのは、きっと翼の想いの強さの現れ、みたいなものじゃないか?」
翼「想い…?」
P「今までの翼だって、レッスンも仕事も、よくやっていたと思う。
でも、それに『誰かを想う気持ち』が宿ったから、今までのレベルに満足できなくなったんだろう」
P「……人はな、何かを強く想って行動すると、自分が勝手に決めてたハードルなんかラクラク飛び越えて、もっとずっと高く飛んでいける」
P「そんな、不思議な力があるんだぞ!」
P「今の翼にはわからないかもしれないけど、俺には翼にそういう力が宿り始めている気がしたんだ」
翼「Pさんも、そんな経験あるんですか?」
84 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:05:45.78 ID:lHpmkO570
P「……」
P「さぁ、な!そんなことも、あったかもな。随分昔のことだから、もう忘れちゃったけどな」
翼「そっか……なれるかな?わたし。しっかりした、おねぇちゃんに」
P「なれるさ!俺は翼の真剣な顔を見て、そう感じたよ」
P「きっと、その約束した男の子も、遠くで翼が頑張っているのを見てくれているさ!」
P「だって、約束は守るだけじゃなくて、守ってるのを確認するまでが約束だからな!」
翼「約束…」
翼「…うん。弟くんが……プロデューサーさんが見ていてくれるなら、わたしっ!」
P「ああ、俺はいつも後ろから見守ってるからなっ!」
85 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:06:43.26 ID:lHpmkO570
P「……それにな。翼は想うだけじゃなくて、想われてもいるみたいだぞ?」
翼「え?」
P「たとえば……さっきから扉の影からチラチラ覗いてるふたりとか!」
???「うわっ!やっべ、バレてるし!」
???「わわっ、待って!バランスが……」
???「わー、バカ!たおれ……っ!」
ドシーン
翼「あっ!昴くん、海美さん!」
86 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:08:16.62 ID:lHpmkO570
昴「てて……バレちゃってたかぁ。レッスン終わってから、3人で帰ろうとしたらさ」
海美「翼がいないから、探しに来たらふたりが話してて!…でも、ほとんど聞こえなかったけどね!えへへ」
翼「ふたりとも……」
昴「まったく、水くせーぞ翼!居残り特訓なら、言ってくれたら付き合ったのにさ。オレたち同じ釜の飯食った仲、だろ?」
海美「あのご飯レトルトだけど…。でもでも、特訓もひとりでやるより、みんなでやったほうが絶対楽しいよね♪」
P「…な?翼が誰かを想うのと同じくらい、翼は誰かに想われてるってことだ。まるで、家族みたいにな!」
87 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:09:36.56 ID:lHpmkO570
翼「…クスッ、そうみたい! でも、Pさんはなんで屋上に?」
P「お、俺はその…翼の珍しい姿を茶化しに来ただけだ!」
翼「はーい、そういうことにしておきますね♪」
翼「……」
翼「…ありがと。大きい弟くんと、ふたりのお姉ちゃん…♪」ポツリ
88 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:10:02.75 ID:lHpmkO570
P & 海美 & 昴「ん?なにか言った?」
翼「クスッ…何でもありませーん!」
翼「それより…ふたりとも、ちょっと耳貸して!」
ゴニョゴニョ…
海美&昴「……うん……うん。あー、確かに…」ニヤリ
翼「……プロデューサーさん♪」
昴「ちょっとオレたちに…」
海美「付き合ってほしいところがあるんだよねぇ〜?」
P「な、なんだ……? 」
89 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:10:28.75 ID:lHpmkO570
◆
ー 劇場近くの公園 ー
P「で、鉄棒の前に連れて来られたわけだけど…」
昴「決まってんだろ!アレだよ、アレ!」
海美「Pっ!私、信じてるからね!アレができるようになってるって!」
翼「Pさぁーん?約束のアレ、見せてくださーい!」
P「あ、アレとは……?」
海美 &昴 &翼「逆上がりっ!」
P「う、うわっ!3人からすごい圧が……!」
P「さ、逆上がりをすればいいんだな……」鉄棒ニギリ
P「うわぁ……すごい久々だ……何年ぶりだろうか…」
90 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:11:09.72 ID:lHpmkO570
海美 ウズウズ…ウズウズ…
昴 ハラハラ…ハラハラ…
翼 ドキドキ…ドキドキ…
P「うっ……し、視線が痛い…。い、いくぞっ」
P「……ン……ゥ………ロワッ!!!」 バッ
クルッ
海美&昴&翼「……っ!」
P「……ふぅ!こんなもん、かな?」
91 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:12:08.76 ID:lHpmkO570
海美「……すごいすごーーーい!!逆上がり、出来るようになったんだね!!約束、守ってくれたんだねっ!大好き〜!!!」抱キツキ〜
昴「すっげー!完璧な逆上がりだったぜっ!!男を見せたな、プロデューサーっ!」背中バンバン
翼「あはは!まぁ、当然だよね?だって、わたし達の弟くんだもん!」頭ナデナデ
P「うおっ……お前ら苦しい!それに逆上がりなんて、昔から出来るからし、そこまで喜ぶことでも…」
昴「いーや、これはめでたいことだ!ビールかけでもやってやりたい気分だぜっ!」
海美「そうそう!がんばったPに、なにかしてあげたいよぅ!うみみん特製女子力ドリンク、作ってあげようか!?」
翼「んー……あっ♪そうだ!じゃあ明日……っ!」
92 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:13:01.51 ID:lHpmkO570
◆
翌日
ー 繁華街近くの公園 ー
P「ジャ〜ンケ〜ン…」
翼「ポンッ!」
P「うっ!また、負けた……」
翼「はい、わたしの勝ちぃ〜!なんで負けたのか、また10年くらい考えてきてくださいね〜♪」
P「まさかジュースを買うのに30分も待つなんて…黒いプチプチ入りドリンクか……」
P「待ってる間の暇つぶしのジャンケンも10連敗…。しかも、俺の逆上がり成功記念なのに、なんで支払いが俺持ちなんだ…」ズーン
翼「えへへ〜、いいじゃないですか〜!これもちゃーんと約束、ですからね♪」
93 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:13:42.62 ID:lHpmkO570
P「……まぁ、いいけど。
しかし立派な桜並木だ…!繁華街からすこし離れた公園に、こんな花見スポットがあったなんてな」
翼「わたし達がジュースの買い出し行ってる間、ふたりが花見の場所取りしてくれてるらしいけど、どこだろう…」
P「ああ、そうだな…」キョロキョロ
P「…ん?」
翼「Pさん、見つかったんですかぁ」
P「いや、ちょっと、な…」
94 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:15:01.96 ID:lHpmkO570
少年「んーーっしょ!んーーっしょ!」ピョンピョン
少女「ほらほら、そんなんじゃ逆上がりできないよ! 足をこう、えいっと上げるんだよ!」
少年「そんなこと言ったって!無理だよ、姉ちゃん!」ピョンピョン
少女「これはまたおやつはいただきかな〜?」
少年「それはヤ!んーーっしょ!んーーっしょ!」ピョンピョン
翼「なんか、見た光景……」
P「これだけは、いつの時代も変わらないなぁ…ははは!
がんばれ!少年っ!」
翼「ねぇ。Pさんも、あんなふうに出来るようになるまで練習したんですか?」
P「そう…だな。おれはクラスでもできるようになったのが、ずいぶん遅い方でさ」
P「でも、そんなとき……」
P「……」
P「ふっ。いや、なんでもない!ただの夢の話さ。それもかなり荒唐無稽な話だ」
翼「ふーん…」
95 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:15:37.30 ID:lHpmkO570
昴「おーーい!!P、翼っ!!こっちこっち!」
海美「もー!遅いよ、ふたりとも!」
P「お、ふたりとも悪かった。……わぁ、いいところに陣取ったなぁ!桜が満開だ!」
昴「さぁさぁ、さっさと飲み物回して……せーのっ!」
全員「カンパーーイ!」
翼「んぐ……うん♪ジュース、美味しいですね!Pさん♪」
P「ああ…もちもちしてて、面白い食感だな!」
海美「ほら!前失敗したパイ、作ってきたよ!この見た目の女子力……すごくない!?」
P「ひえっ……無数の魚の頭が……ゆ、夢に出そう……」
昴「このランチョンマットもオレが作ったんだぜ!順調に上達中だぜっ!」
96 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:16:12.47 ID:lHpmkO570
翼「んぐ……あ、ところで昴くん、海美さん!
Pさん、なにかわたし達に隠し事があるみたい〜!」
P「……え?いや、さっきの話は別に隠してるわけじゃなくて、人の夢の話なんかつまらんだろうと…」
昴「へー!Pの夢の話か!それは気になるなぁ」
海美「私もー!聞きたい聞きたーい!」
翼「……だ、そうですよ〜?」
97 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:17:06.20 ID:lHpmkO570
P「……といっても、もう10年以上前の話だからもう随分、記憶もおぼろげだけどな」
P「俺に、1日だけお姉ちゃんが3人できる夢だよ」
海美 & 昴 & 翼「……」(顔を見合わせる)
海美 & 昴 & 翼「……プッ、あははははっ!!」
P「なんだなんだ、3人して…」
98 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:18:45.48 ID:lHpmkO570
昴「……さぁ、プロデューサーっ♪ 話してくれよ、その夢の話!」
海美「私ね、聞きたいこととか、聞いてほしいことがね、いっーーーっぱいあるんだ♪」
翼「おねぇちゃんには隠し事は禁止っ!覚えてるだけ、ぜーんぶ話してもらいますねっ♪」
海美& 昴& 翼「これはおねぇちゃん命令だからねっ♪」
了
99 :
伊丹
[sage]:2020/04/19(日) 13:19:57.07 ID:lHpmkO570
全員末っ子グループのお話でした。
普段は妹なアイドル達がお姉ちゃんになったとき、どんな表情をするのかを考えてみました。
長くなってしまいましたが、お付き合いありがとうございました。
皆様のお暇つぶしになれれば、幸いです。
また、私の過去作のまとめです。
お暇でしたら、ぜひ。
https://www.pixiv.net/member.php?id=4208213
100 :
◆NdBxVzEDf6
[sage]:2020/04/19(日) 13:22:46.09 ID:7ONqOktY0
お姉ちゃんっていいね...
あと劇場の魂は便利、乙です
>>1
高坂海美(16) Da/An
http://i.imgur.com/xnXzR1B.png
http://i.imgur.com/10nAsBg.jpg
永吉昴(15) Da/Fa
http://i.imgur.com/t6a4aJ8.jpg
http://i.imgur.com/zjaRrbK.png
伊吹翼(14) Vi/An
http://i.imgur.com/jYD95ta.jpg
http://i.imgur.com/gA6ilqR.png
>>27
桜守歌織(23) An
http://i.imgur.com/ah2Judv.png
http://i.imgur.com/vGvqLjI.png
佐竹美奈子(18) Da/Pr
http://i.imgur.com/uKPOZmh.png
http://i.imgur.com/H8nI7OX.jpg
田中琴葉(18) Vo/Pr
http://i.imgur.com/Cy6VJVQ.png
http://i.imgur.com/xUswnEt.jpg
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