【ゲゲゲの鬼太郎 6期】「恐怖の異星獣 スペースビースト」【ウルトラマンネクサス】

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48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:27:21.25 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「!!!!」

目玉おやじ「どうした鬼太郎?」

「…………んな!?」


家に入った途端、息子の様子がおかしくなったので、
一旦髪の毛の中に引っ込んでいた目玉おやじは
再びひょっこり顔を出して、ひと部屋しかない自宅の中に目を向けると
そこには、明らかにこの家の者でもなければ、この森の住民でもない不気味な老人が
さも当然のように、ちゃぶ台の前で正座をして座っていたのだ。

その老人は、つい先程まなと薫がいる図書館の前で
何かを見ていた老人であり、鬼太郎親子がよく知る人物……否、妖怪であった。

それは…………
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:27:57.56 ID:QsocQsYy0


鬼太郎「ぬらりひょん…!」

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:30:02.77 ID:QsocQsYy0
妖怪の復権を狙う、日本妖怪の大物……
総大将とも呼べる男であり、気配を消して行動する天才。

妖怪でありながら、日本の政治家にも顔が利き、
彼らを利用しては数多くの妖怪を懐柔し、『同志』にしている策士だ。

その策士でもあり総大将でもある老人妖怪は、鬼太郎親子の方を振り返りながら
「これはこれは……またしてもお邪魔していますよ、鬼太郎君に目玉の親父さん」と
これまた、さも当然のように挨拶をした。


目玉おやじ「おまえ、また何の用じゃ!」

ぬらりひょん「おやおや……お客さんに向かって、随分と失礼な物言いですな」

目玉おやじ「人の家に勝手に上がり込んでおいて、失礼もへったくれもあるか!」

鬼太郎「父さんの言う通りだ。早く出て……」

ぬらりひょん「いいのですか?ここで私を追い出したら、昨日のネズミの怪物の正体が分からなくなりますよ?」

鬼太郎「!?」


昨晩の怪物の話題を振ってきたぬらりひょんに、鬼太郎は驚いた。

目玉おやじも同様だ。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:31:08.55 ID:QsocQsYy0
目玉おやじ「どうしてお前が、あの怪物の事を知っとるんじゃ!?」

鬼太郎「まさか、アレは貴様が……!」

ぬらりひょん「滅相もない。私の目的は、この間も申した通り妖怪の復権…」

「あんな『ケダモノ』を使っての殺戮ではありませんよ」


怪物との繋がりをきっぱり否定すると
正座をしていたぬらりひょんは、ゆっくり立ち上がって鬼太郎の方を向き直る。


ぬらりひょん「『いせいじゅう』」


鬼太郎「え…?」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:32:57.39 ID:QsocQsYy0
ぬらりひょん「異(い)なる星の獣と書いて『異星獣』。それがあの怪物の正体です」

「尤も『スペースビースト』と呼ぶのが一般的らしいですがね」

鬼太郎「異星獣…?スペース……ビースト………?」

目玉おやじ「異なる星と言う事は、あの怪物は宇宙から来たとでもいうのか!?」

ぬらりひょん「そんなところですよ。といっても、単に宇宙から来たのではありません」

「我々が住む、この世界……もといこの宇宙とは、別の次元の宇宙からやって来た存在なのです」


そう言ってぬらりひょんは、次のような事を語りだした。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:33:50.95 ID:QsocQsYy0
ぬらりひょん「話は、あのケダモノが元居た次元で始まりました」

「スペースビーストは、突如としてその次元に姿を現した。そして、その次元に住む知性ある者達…」

「即ち…人間をはじめとした、知的生命体に牙を向いたのです」

「自分達の餌である『恐怖』を食べる為に」

鬼太郎「恐怖を食べる?」

ぬらりひょん「人々が抱く感情エネルギー。その一種である『恐怖』……それが、ビーストのエネルギー源なのです」

「それ故ビーストは、醜い姿で人前に現れ、自身の姿と脅威を目の当たりし、恐怖した人々を感情エネルギーごと捕食する」

「今回現れた『ノスフェル』というビーストも、その為に人間どもを喰い殺して回っていたんですよ」

鬼太郎「ノスフェル。それが、昨日の怪物の名前か」

目玉おやじ「しかしそのスペースビーストのノスフェルとやらが、どうしてわしらの世界に?」


ぬらりひょん「…ざっくり言うと……」




「美味い餌が少なくなったからですかな?」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:35:09.53 ID:QsocQsYy0
目玉おやじ「餌が少なくなった?」

ぬらりひょん「以前ビーストが標的にしていた、とある星の人間どもが、ある巨大な戦士に感銘を受けて恐怖を越えた希望を抱き…」

「それらに対抗する勢力と組して、対ビースト抗体を開発したのです」

「結果、恐怖の感情エネルギーの質が落ち、抗体のせいで勢力も著しく衰えてしまった」

「だからいい餌を求め、他の星や宇宙に旅立つビーストも幾つか現れだしたのです」

「まるで、土地開発で餌が減少し、人里に降りてくるようになった動物の様に……」

「相変わらず人間という生き物は、余計なことばかりしてくれますなぁ」

鬼太郎「昨日のノスフェルは、その内の一匹だと言うのか?」

ぬらりひょん「まあそんなところです」

「この世界では、人々の憎悪と言った負の要素が蔓延する事が度々ありますよねえ」

「恐らく、それらに引っ張られて来てしまったのでしょう」

鬼太郎「…………」


これで、怪物の正体やこの世界に現れた経緯自体ははっきりとした。

だが、それでもまだ分からない事がある。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:36:07.96 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「どうして今更、そんな事を教える?」

「お前も、知ってるだろう?ノスフェルは、僕が倒した。もう奴は……」

ぬらりひょん「『現れない』。そんなに簡単に、断言してしまっていいのですか?」

「相手は、我々妖怪とも全く違う存在。あれしきの事でくたばる保証はありません」

「第一君は、奴の事を注意深く観察しましたか?『弱点』らしき部分を見付けたりしましたか?」

鬼太郎「そ、それは……」


返す言葉がなく、動揺する鬼太郎。

その反応を見て、ぬらりひょんはフッと笑みを浮かべた。


ぬらりひょん「話しは、ここまでです」

「後は『奴と会った事のある人』から、情報を引き出せばいいでしょう」

「では、これで……」


そう言い残して、ぬらりひょんは家を出ようと歩き出した。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:37:15.25 ID:QsocQsYy0
目玉おやじ「待て!お前さん、どうしてビーストとやらついて、そんなに詳しいんじゃ?」

「わしでも知らない情報を、一体何処から……」


そのさ中、目玉おやじはビーストの情報源を尋ねたが
ぬらりひょんは無視して、家を出ていった。


ねこ娘「鬼太郎、いる〜?みんなで遊びに来たんだけど……」


するとそれと入れ替わるように
ねこ娘が砂かけばばあ、子泣きじじい、一反もめんとぬりかべを連れてやって来た。


鬼太郎親子「「………」」

ねこ娘「あ、あれ?」

一反もめん「どしたとよ?二人して怖い顔して」


二人の並々ならぬ様子に、状況を呑み込めないファミリー一同。

それから、鬼太郎の家に上げてもらった
(と言ってもぬりかべは大きすぎて入れない為、窓からお邪魔だが)
四人は、先程のやり取りを彼らに話した。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:37:45.14 ID:QsocQsYy0
ねこ娘「まさか、ぬらりひょんがまた来ていたなんて……」

砂かけばばあ「しかも、昨日倒した怪物とやらの正体まで知っておるとは」

子泣きじじい「あまりにも詳しすぎて、逆に怪しいぞい!」

ぬりかべ「口から出まかせかもしれない」

目玉おやじ「確かに、何故あそこまで詳しいのかという疑問はある」

「だが、無意味な出まかせを言いに来たとも思えん」

「それに……悔しいが、わしもぬらりひょんの言う事には、一理あるんじゃ」

「あのノスフェルは、わしですら知らなかった怪物……」

「正体も分からんのに、完全に倒した事にしてしまっていいものかと、ずっと疑問だったんじゃ」

鬼太郎「だから、ずっと浮かない様子だったんですね」

一反もめん「だったら、もう一度そのノスフェルっちゅー奴倒した公園ば、行ってみた方がいいんじゃなかとね」

鬼太郎「言われないでもそうするつもりさ」


こうして、鬼太郎はねこ娘達を連れて昨日の公園に行ってみた。

すると………
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:38:42.31 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「これは……」

目玉おやじ「やはり、無くなっておる」


その公園には、昨日の夜まであったはずの、ノスフェルの残骸が跡形もなくなくなっていた。


子泣きじじい「人間の業者が、片付けてしまったんじゃないか?」

目玉おやじ「そうだといいが、ぬらりひょんがわざわざ教えに来るような相手じゃ。そうはいかないじゃろう」

砂かけばばあ「もしも奴が、やられた振りをしとったのだとしたら、一体何処へ行ったというんじゃ?」


ねずみ男「よう!オメェらどうした?そんな大勢で、こんなちっこい公園に集まってよぉ」


困惑しているファミリーの元に、ねずみ男がやって来た。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:39:23.52 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「ねずみ男」

ねこ娘「アンタこそ何やってんのよ!」

ねずみ男「別に何もしてねえよ。んまあ、強いて言うなら、金になるような話を探してたってことくらいだな」

砂かけばばあ「お前さんは、相変わらずじゃのう…」

子泣きじじい「こんな奴に付き合う時間なんかない。さっさと、ノスフェルとかいうのを探しに……」



鬼太郎「ねずみ男、丁度いいところに来てくれた。お前に聞きたい事がある」



無視してノスフェルを探そうと
子泣きじじいが言おうとするのを遮るかのように、鬼太郎がねずみ男に問いかける。

子泣きじじいをはじめとした一同は、少々驚いたが
問いかけられたねずみ男は気にせず「なんだ?」と返した。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:40:10.25 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「まながあの怪物に襲われたのは、お前があの怪物と遭遇して、ここまで逃げたからだったな?」

ねずみ男「何だよ…まなちゃんを危険に晒したの、まだ根に持ってんのかよ」

鬼太郎「そうじゃない。あの怪物に遭遇した時、何か変わった事はなかったか?」

ねずみ男「変わった事?う〜ん…そうねぇ…………」


顎に手を当てて、自分の記憶を探るねずみ男。

少しすると、「あ!そう言えば…」と声を上げる。


鬼太郎「やっぱり、何かあったんだな?」

ねずみ男「あぁ!」



「ネズミだよ!ネズミ!」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:41:14.71 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「ネズミ?」

ねこ娘「それってアンタでしょ」

ねずみ男「ちげーよ!あの借金取り皆殺しにしたバケモンが出てくる前に、ピンク色したネズミを見たんだよ」

ねこ娘「ピンクのネズミ?そんなの聞いた事ないわ」

鬼太郎「ピンク色のネズミ……」



鬼太郎は、昨日のノスフェルの姿を思い出した。

あのノスフェルというスペースビースト
皮をはいだネズミのような姿をしていて、それ故ピンク色の体色をしていた。

単なる偶然とは思えない。

ぬらりひょんの言うように、ビーストという存在は妖怪とも全く違う。

関連性は疑うべきだ。


少し悔しいが
「『奴と会った事のある人』から、情報を引き出せばいい」
というぬらりひょんの一言が役に立つとは、思わなかった。


しかし、ピンク色のネズミの話しは、これで終わりではなかった。
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:41:57.59 ID:QsocQsYy0
ねずみ男「そう言や、さっきもそれっぽいネズミ見たな」

鬼太郎「それは本当か!?何処で見た?」

ねずみ男「向こうにある市の図書館だよ」

ねこ娘「あっちにある図書館ね?」

鬼太郎「行くぞ!」

「…ねずみ男も来い!」

ねずみ男「え?何で…って、うわあー!」


こうして鬼太郎ファミリーは、ねずみ男を無理矢理連れて市の図書館に向かった。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:53:28.18 ID:QsocQsYy0
一方、まなと薫は市の図書館を出て、街中を歩いていた。


まな「あーあ、結局なんにも分からなかったなぁ……」

薫「そう言えば犬山さん、何を調べてたの?動物の本、集中的に読んでたけど」

まな「最近騒ぎになってた、例の連続殺人事件の犯人の怪物の正体。昨日、鬼太郎が倒してくれたんだけど……」

薫「え?あの事件の犯人って、妖怪だったの?」

まな「ううん…違うらしいの。だから、ちょっとだけ気になってね」

薫「へぇ……」

まな「……とにかく、今日はここでお別れだね」

薫「あ、うん……そうだね」

まな「じゃ、また明後日学校でね!」

薫「うん…学校で、ね……」


薫は寂しそうにしながら答えた。

実はこのまま、デートに持ち込もうと考えていたのだが
彼女のペースに流されてしまい、誘いを持ち出す事ができなかったのだ。

そんな彼の本心など露知らず、まなは家路につき、薫はその背中を見送った。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:54:16.53 ID:QsocQsYy0
薫「……………はぁ」


どうして自分は、肝心な時に強気に自分のペースに引き込むことが出来ないんだろう?

溜め息を吐きながら、薫は心の中で嘆いた。


薫「……………」

「……行こうか」


トボトボと、その場を歩き去る薫。

謎の視線がその一部始終を見ていたと知らずに……
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:54:57.46 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「ここだな」

ねずみ男「たく、もお……何で俺まで連れてこられんだよ!」


まな達が去った後に、市の図書館に辿り着いた
鬼太郎ファミリーであったが到着して早々、ねずみ男が愚痴る。

そんな彼に対し鬼太郎は
「お前がいないと、どんな感じのネズミなのか分からないだろう」と返した。


ねずみ男「確かに、そのネズミ見たのは俺しかいないけどよぉ……」

鬼太郎「そのネズミは、どの辺りにいるんだ?」

ねずみ男「そこの木の上だけど……」

「あれ?いねぇなあ……さっきまでいたのに」


彼の言う通り、そのピンク色のネズミがいたとされる木の上には、何もいなかった。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:55:39.62 ID:QsocQsYy0
砂かけばばあ「お前さん、本当に見たのか?」

ねずみ男「本当だって!俺様の言う事が信用できないのか?」

砂かけばばあ「ああ!」

ねずみ男「……………」


予想以上に迷いなく答える砂かけばばあに、ねずみ男は絶句した。

一方、ねこ娘はピンク色のネズミがいたとされる
木の周りをじっくり観察すると、その木は丁度、図書館の窓の向かい側にあった事に気付く。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:56:29.90 ID:QsocQsYy0

ねこ娘(本当にそのピンクのネズミがいたのだとしたら、あの窓の中を覗いていた事になる……)

(となると、誰かを見ていた事になるわよね)

(一体、誰を……?)


ねこ娘は、昨日の出来事を思い返した。

昨日の戦いでノスフェルと会ったのは、自分と鬼太郎親子とここにいるねずみ男。

そして…………
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:57:29.78 ID:QsocQsYy0
ねこ娘「!」

鬼太郎「ねこ娘?」


何かに気付いたねこ娘は「みんな、ここで待ってて」と言って図書館に入っていく。

そして、少しするとすぐに戻ってきた。


ねずみ男「おいおいおい、一体どうしたんだよ?いきなり図書館に入ったりして」

ねこ娘「『彼女』が来てなかったか、聞いてきたの」


そう言ってねこ娘は、自分のスマホに保存していたまなの写真を一同に見せた。


鬼太郎「まな?」

ねこ娘「えぇ…」

「それで、聞いてみたら、やっぱり来てたって」

ねずみ男「でも、それがどうしたって………」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:58:26.56 ID:QsocQsYy0
目玉おやじ「なるほど!そういう事か!」

鬼太郎「父さん?」

目玉おやじ「もしもねずみ男が見た、ピンク色のネズミがノスフェルが化けた姿と仮定して…」

「それが、まなちゃんが来ていたこの図書館にいたのだとすれば、目的はひとつしかないのではないか?」

鬼太郎「…そうか!」

「ノスフェルからして見れば、まなは取り逃がした獲物!」

「小さくなって、彼女を食べる機会を窺っている……そうですね?父さん」

目玉おやじ「その通りじゃ!」

子泣きじじい「だ、だったらこうしちゃおられん!」

砂かけばばあ「あぁ!ねこ娘」

ねこ娘「そう言うと思って、今レインで何処にいるか聞いてみたわ。もうすぐ返事が来るはず……」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:59:03.17 ID:QsocQsYy0

まな「…あれ?ねこ姉さんからレイン来てる」


まなはスマホの画面に映る、ねこ娘のメッセージに目を通す。

それは、「まな、今どこにいるの?」とだけ書かれたシンプルなものであった。

唐突なメッセージの送信を不思議に思いつつも、まなは即座に返事を送った。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:00:07.93 ID:QsocQsYy0
ねこ娘「来たわ」

目玉おやじ「一体何処にいると?」

ねこ娘「今、家に帰ってるところで、もうじき着くって」

鬼太郎「とりあえず、無事みたいだな」

子泣きじじい「まずは一安心じゃ」

目玉おやじ「だが、油断はできん。今からみんなで、まなちゃん家で張り込みじゃ!」


ねずみ男「何か良く分かんねぇけど、頑張りな」


まなの周辺を見張る事で話が纏まる中
ねずみ男はそう言ってその場から離れようとしたが
鬼太郎は「待て、ねずみ男!」と言って引き止めた。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:00:49.64 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「お前も一緒に張り込むんだ」

ねずみ男「何でだよ!もう十分協力してやったじゃねぇか!」

鬼太郎「お前もあの怪物と接触しているし、ピンク色のネズミまで見ているんだ。お前も狙われない可能性はない」

「それに、お前ならそのネズミが普通のネズミかどうか、区別できるだろう。だから一緒に来るんだ」

目玉おやじ「鬼太郎の言う通りじゃ」

「どうせお前さんは碌な事しかせんのじゃ。今回は黙って、わしらの言う通りにしてもらうぞ?」

ねずみ男「チッ!こんな時に限って、調子のいい奴らだぜ…」


愚痴りながら、ねずみ男も渋々同行する事になったのであった。

こうして、犬山家を見張るようになったのだが、
この判断が大きな誤りであったとは、この時まだ誰も知らなかった……
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:03:00.40 ID:QsocQsYy0
薫「ただいま」


あれから数時間経った夕方……

薫は、予定通り昼食を済ませ、動物園の動物を見て回った末に帰宅した。

家に帰れば、父親の『斎田 博(さいだ ひろし)』と
母親の『斎田 涼子(さいだ りょうこ)』が待っていた。

犬山家同様、彼らも夫婦共働きしているが、
彼らの職場は、珍しい事に土日は決まって休みである。


博「お帰り薫」

涼子「薫ちゃん、もうご飯できてるわよ」

薫「分かったよ。でも、その前にお姉ちゃんに挨拶してくるね」


そう言って薫は、手洗いうがいを済ますと
高校生くらいの少女の遺影が置かれ、その前に一万円と
招き猫のポーズで胡坐をかいたネズミの格好をした3期ねずみ男に酷似した貯金箱が供えられた
仏壇のある和室に向かい、その仏壇の前に正座して、おりんを鳴らして手を合わせる。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:04:17.24 ID:QsocQsYy0

この遺影の少女の名は『斎田 理子(さいだ りこ)』。

斎田家の長女で、薫の姉だ。

薫同様、動物が大好きで動物の絵を描くのが趣味だったのだが
1年前の修学旅行の際、とある県にある
眞也山(しんやさん)山中の溝呂木トンネルの崩落事故に巻き込まれ
若くしてこの世を去ってしまった。

姉が大好きだった彼は、家に帰ると必ず仏壇にお参りするのが日課となっていた。

そして、今日の出来事を報告するのも……
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:04:46.44 ID:QsocQsYy0
薫「お姉ちゃん、今日犬山さんに会ったんだ」

「だから、ついでにデートに誘おうと思ったんだけど…」

「向こうから、先に帰るって言い出されて結局できなかった」

「お昼を食べた後、改めて動物園一緒に行こうって誘えたはずなのにね」

「ほんと駄目だよね僕……」

「彼女を好きになってもう三ヶ月なのに、振り向いてもらう努力すらしてないんだよ?」

「なんかこう……いざ目の前にすると、どうにも踏ん切り突かなくってねぇ…………」



黙々と仏壇の姉に話しかける薫。

だが、姉からの返事が返ってくるはずはない。


薫「…………」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:05:13.37 ID:QsocQsYy0
薫(死んだお姉ちゃんに話したところで、答えなんか出る訳ない)

(……ご飯、食べよ)


こうして、日課を済ませてリビングに向かう薫。

その姿を窓の外から見つめている、不気味な視線が合った。

その視線の正体は、ねずみ男が見たという……
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:07:15.57 ID:QsocQsYy0




ピンク色のネズミのものであった。




78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:08:12.97 ID:QsocQsYy0

アイキャッチ:フィンディッシュタイプビースト ノスフェル
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:09:41.62 ID:QsocQsYy0
今パートはここまでです。

当初は、前回投稿した4期の続きのようなものを投稿する予定でしたが
去年のクリスマスが近付いているさなかに、パッと思いついた後、年越し後に執筆を開始。
そして、色々とあった末に、6期本編が終わったこのタイミングになってしまいました。

何はともあれ、以下は補足や裏設定などとなります。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:15:01.18 ID:QsocQsYy0
デュナミスト・バンド・・・6期鬼太郎の世界に存在するバンド。
名前の元ネタは言うまでもなく『ウルトラマンネクサス』に登場する
ウルトラマンに選ばれた人間を指す単語、適応者(デュナミスト)。
メンバーの一人である孤門さんの元ネタも、言うまでもなく同作の主人公。
こちらの世界でも、ノスフェルによって恋人を奪われる運命から逃れられなかったようです。

裏設定として、メンバーは孤門さんを含め
真木さん、姫矢さん、千樹さん、そして紅一点の西条さんの五人という設定。
代表曲は「英雄」。
他のメンバーの名前の元ネタも、『ネクサス』でデュナミストになった人達。
代表曲はまんま同作のオープニングテーマ。


異星獣=スペースビースト・・・『ULTRAMAN』及び『ウルトラマンネクサス』に登場した敵怪獣の一群。
M80さそり座球状星団からやって来た、知的生命体の恐怖の感情をエネルギーにする謎の宇宙生命体で、その誕生の経緯は不明。
唯一分かっているのは、知的生命体にとって害悪であるということ。
来訪者の故郷を滅ぼしたり、ダークザギの手引きでザ・ワンとして
地球に飛来してウルトラマン・ザ・ネクストに倒されて、その破片が地球の生物やエレメントやらを取り込んで現在の姿になった。

ぬらりひょんの語る、ビーストの身に起きた出来事は『ネクサス』の最終回のその後であり
強化されたTLTの尽力により、孤門の住む世界ではビーストの出現は続いているものの
ウルトラマンネクサス(ノア)がいた時ほどの脅威ではなくなっており、満足に恐怖の感情の摂取効率が悪くなり
増殖力も悪くなった為、地球に在留していた個体のいくつかは宇宙へ旅立った。
その旅立った個体のいくつかが、ギャラクシークライシスやウルトラ・フレアの時空の歪みに巻き込まれて現れたのが
『大怪獣バトルシリーズ』や『ウルトラマンX』などに登場したビースト達だった……

というのが、当方の解釈です。

しかし、本作のノスフェルがこちらに来た理由は、ちょっと特殊だったりします。

なお、ぬらりひょんが孤門が住む世界の人間がビーストにした事を
ちょっと悪く言っていますが、妖怪の復権を狙う彼はあくまで人間を否定する立場いるので
どんなに孤門の世界の人々に大義名分があろうと、それを認める訳にはいかない。
それでいて、向こうの世界の事情を知らない鬼太郎に
少しでも人間達に対する悪印象を植え付けてやろうという事で、孤門達の世界の人々を悪く言ったわけです。

こんな時でも人間を悪者扱いする事を欠かさなかった……っと、解釈していただければ結構であります。

実際、TLTや孤門らが対処しなければ、人類にとって害悪でしかないのは明らかですからね。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 17:15:52.32 ID:QsocQsYy0
以上となります。

次回パートの投稿は未定なので、気長にお待ちください。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:06:33.77 ID:d5HixjwK0
時間ができたので、続きを開始します。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:07:12.40 ID:d5HixjwK0

CM開けアイキャッチ:ねずみ男
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:08:15.33 ID:d5HixjwK0
あれから、一週間と二日が経った月曜日。

鬼太郎ファミリーは、張り込みはもちろん
化けガラスに監視させたり、学校内での様子はぬりかべや花子さんに見張らせたり
ねずみ男にまなの周辺のネズミに聞いて回らせたりと
あの手この手で、ノスフェルらしきピンク色のネズミを見付けようとしたが
依然として姿を見せる気配はなかった。


そして、夕方のゲゲゲハウス……
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:09:54.00 ID:d5HixjwK0
鬼太郎「みんな、どうだった?」

ねこ娘「カラス達の方も全然だって」

ぬりかべ「オレも、花子達と見張ったけど、全然変わりなかった」

鬼太郎「…あれ?ねずみ男は?」

ねこ娘「金になりそうな話でも見付けたのか、いつの間にかいなくなっちゃったわ」

「まったく、まなも自分も危ないかもしれないっていうのに……」

鬼太郎「じゃあ、後でカラス達に探させておくよ」

目玉おやじ「…しかし、ノスフェルは何故、姿を現さんのじゃろうか?」

一反もめん「やっぱり、やられた振りしとったっちゅーのは、考え過ぎたったんじゃあなかとね」

鬼太郎「……………」


そう言われたところで、鬼太郎は納得しない。

一体、自分達は何か見落としているのか?

そう考えていると、ぬりかべが話しかけてくる。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:12:53.32 ID:d5HixjwK0
ぬりかべ「鬼太郎。オレ、明日の見張り休みたい……」

鬼太郎「どうしてだ?」

ぬりかべ「まなちゃんの見張りもそうだけど、先週からずっと、優美のコーチの仕事もやってたから、クタクタなんだ……」

鬼太郎「優美って確か、まなの学校でテニスやってた……」

ねこ娘「彼女との関係、まだ続いてたんだ」

鬼太郎「父さん、どうします?」

目玉おやじ「疲れたままの状態では、何かあった時心許ない」

「それに、まなちゃんの周りで何も起きないという事は、目の付け所を間違えた可能性も考えねばならん」

「もう一度これまでの奴の行動を整理して、考え直そう」

鬼太郎「分かりました、父さん」

ぬりかべ「よかった…休める……」


安堵しながら帰っていくぬりかべ。

それから鬼太郎ファミリーは、残ったメンバーでノスフェルの捜索方針を考え直す事に決めたのだった。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:14:11.96 ID:d5HixjwK0
―斎田家―

博も涼子も、今日は早めに仕事が終わったらしく自宅におり
涼子はいつものように、中学校から帰ってくる息子の為、夕飯の準備をしていた。


涼子「…………」

「…あら?」


その時だった。

彼女が、コンロの方へ向かおうとそちらを向いてみれば
そこにはピンク色のネズミが、涼子の方をジッと見ていた。

涼子「ね、ネズミ!?」

「で、でも、何か色がへ…………!?」


色が変だと思ったその時、ピンク色のネズミは目を怪しく光らせると、
みるみるうちに大きくなっていき、そして………
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:14:58.97 ID:d5HixjwK0

涼子「きゃあ――!!」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:16:47.88 ID:d5HixjwK0
博「涼子?どうし……!!」


リビングでくつろいでいた博は
妻の悲鳴を聞いて、キッチンの方を振り返ると、途端に体が固まってしまう。

何故なら、キッチンには、得体の知れない大きな影が立ち尽くしていたのだから。


『グルルルル……』


大きな影は、すぐさまリビングにいる博に視線を向ける。

その視線は、彼らの息子に向けられていたものと同じであった。


博「ひ…ひぃ!」


怯える博。

そんな彼に対し、不気味な視線は容赦なく迫っていき、そして……
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:17:36.14 ID:d5HixjwK0
一方、自宅でそんな事が起きているなど知らない薫は
普段通り、学校での授業を終えて、帰宅の路についた。


薫「あ……」


その時、目の前に同様に帰宅中のまなの姿を目撃する。

だが、一人だけではない。

蒼馬や雅といった、珍しいメンツが一緒だったのだ。


薫「……………」


薫は、声をかけようと思ったが、出来なかった。

友達と一緒にいるので、声を掛けづらいというのもあったが
何しろ、自分の恋路をやたらと全面反対している蒼馬がいた為
近付きたくても近付けなかったのだ。

なので彼は、悔しさを胸にその場を離れるしかなかった。


薫(駄目だな、僕……)

(アイツ(蒼馬)のこと怖がって、大好きな人に近寄れないなんて、馬鹿らしい……)

(でも、いざ目の前にすると、勇気が出ないんだよなぁ………)


心の中で呟きながら、薫は胸ポケットから
ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを取り出して
それをジッと見ながら、まなの事を思い出した。

そして、「はぁ…」と溜め息を吐いて
キーホルダーを胸ポケットに戻すと、足早に自宅に帰ったのだが…………
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:19:02.81 ID:d5HixjwK0
薫「ただいま……」


「…………………」


「…………………あれ?」


いつも通りに帰宅したのだが、すぐさま彼は異変に気付いた。

普段は返ってくるはずの両親の「お帰り」の声が聞こえてこず
家の中は、電気もついていなくて真っ暗。

そして何よりもおかしかったのは、床や壁といった木で出来た部分が
不自然に削り取られた跡がある事であった。

彼のいる側からは見えないが、それは和室や姉の仏壇も同様だ。

それはまるで、巨大なネズミがかじったかのような跡であった。


薫「お父さん?お母さん?」


靴を脱いで家に上がり、恐る恐る父と母を呼んでみる。

すると、リビングの方から、カリカリと何かが削れる音が鳴っている事に気付く。

なので、床や壁同様にボロボロになったドアをゆっくりと開けて、中を覗いてみると……
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:19:51.81 ID:d5HixjwK0
薫「!!!!」


次の瞬間、中の光景に薫は絶句した。

そこには、父と母がいたのだが、二人とも体の一部……
特に腕の色がおかしくなっており
ネズミのように、壁やテーブルの足をガリガリとかじるという異常行動を行っていたからだ。


薫(まさか、家がこんなにボロボロなのは……!)

(で……でも、何でお父さんとお母さんが?)









『ぢぅ……』
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:21:30.80 ID:d5HixjwK0
薫「え…?」


両親の異変に困惑していると
異様に低い鳴き声が後ろから聞こえ、薫は振り返る。

その先には、ピンク色のネズミが自分の方を見ていた。


薫「ね、ネズミ?でも、こんな色したネズミなんて……」


いるはずがない。


動物好きな彼は、すぐにそのネズミが異常なものである事を察するが
直後、そのネズミはみるみるうちに大きくなっていき……
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:21:57.31 ID:d5HixjwK0
『グオオォォ―――!!!』


その姿は、大きな怪物へと変化した。

それは、鬼太郎に倒されたはずの、あの怪物……
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:23:01.80 ID:d5HixjwK0

テロップ:ノスフェル
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:24:38.64 ID:d5HixjwK0
薫「わあ!!」


真の姿を現したピンク色のネズミを前に、薫は驚きながら後ずさった。

その次の瞬間、いつの間にか背後に現れた両親に、腕を掴まれて身動きを取れなくされてしまう。


薫「お、お父さん?お母さん?」

「な、何するんだよ!放してよ!!」


もがく薫であったが、異様な力で掴まれているせいで離れる事は叶わなかった。

そうしている間に、ノスフェルはジャキンと自身の爪を強調するかの如く
片手を大きく開きながら、ゆっくりと薫の目の前に迫る。

そして……
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:26:49.92 ID:d5HixjwK0
薫「うわあぁぁ―――………!!」







次の瞬間、斎田家から薫の悲鳴が響き渡り
和室にあった理子の遺影が、ボロボロになった床に転げ落ちたのだった。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:30:42.29 ID:d5HixjwK0
―次の日の朝―


蒼馬は、いつものように中学校の下駄箱にまでやって来た時であった。

彼は、見慣れた少年の姿を目撃する。

昨日ノスフェルに襲われたはずの、斎田薫だ。


蒼馬「よお、斎田!まなとの恋はどうなんだ?」

薫「………」

蒼馬「て…聞くまでもないか。どうせまだ、進んでないんだろ?」

薫「…………」

蒼馬「何度も言うけどよ、アイツの事は止めとけって」

「気に入らない事があると、すぐ手ぇ上げるし態度もデカイ!」

「そんでもって、超鈍い!」

「シャイなお前とは、相性最悪だって」


全面反対してみせる蒼馬であったが、何故か薫はジッとしたまま黙っている。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:31:52.48 ID:d5HixjwK0
蒼馬「お、おい……どうしたんだよ?」


あまりにも無反応すぎる薫の様子に、さすがの蒼馬も心配になって、彼の肩を掴んだ。

すると彼は無言でこちらを振り返るのだが
その顔は、不気味な程に青ざめており、瞳に光が宿っていなかった。


蒼馬「ひ…!?」


同級生の異様な表情に、蒼馬は怯えて後ずさった。

そんな彼を少しの間見た後、薫は無言でその場を立ち去った。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:34:05.85 ID:d5HixjwK0
―お昼休み―


昼食の弁当も食べ終えて、まなは雅、綾、姫香の三人と教室で楽しく談笑していた。


蒼馬「おい、まな!」

まな「ん?」


その時、教室の外から蒼馬がこっちに来るよう、手招きしている事に気付き
彼女は「ゴメン、ちょっと離れるね」と言って中断し、彼の元へと向かった。


まな「もう!何よ蒼馬」

蒼馬「なあ、まな。お前、斎田の奴と何かあったか?」

まな「え?何、急に?」

蒼馬「いいから答えろって」


唐突な友人の質問に、まなは怪訝に思いつつも素直に「特に何もなかったわよ」と答えた。


蒼馬「本当か?何か話したりとかは?」

まな「うーん。先々週の土曜日ぐらいに、図書館で会った時に話はしたけど……」

「その時は、いつもと変わりなかったわよ」

蒼馬「そうか……」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:35:06.23 ID:d5HixjwK0
まな「…ねぇ?斎田君がどうかしたの?」

蒼馬「いや、今朝アイツに話し掛けたんだけど、なんか様子がおかしかったんだよ」

「顔色も、悪かったし……」

まな「言われてみれば今日の斎田君、いつも以上に大人しくて静かね」

蒼馬「それに、ずっとアイツの様子観察してたんだけどよ…」

「授業はただ聞いてるだけだし、おまけに弁当も持ってきてないみたいなんだよ」

まな「確かに斎田君、お昼食べてる様子全然なかったね」

蒼馬「だから、お前となんかあったんじゃないかと思って……」

まな「え?なんで私なの?」

「確かに私、斎田君とは仲いいけど……」

蒼馬「え?あ……そ、それは……その……」

「あれだよ!あれ!」


薫がまなの事が好きだから、まなとの間に何かあったと考えたのだと
素直に言えず尚且つまながこのような疑問をぶつけてくる事まで
考えていなかった蒼馬は、上手く誤魔化せずに、適当にはぐらかそうとする。

そんな蒼馬の真意が分からず、まなは不思議そうに首を傾げることしか出来ない。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:37:39.60 ID:d5HixjwK0
????「何々?斎田君がどうかしたの?」


そこへ、異様に大人びた体付きをした少女が、二人の会話に割って入る。

昨日ぬりかべが言っていた、まなの同級生でテニス部所属の『岡倉 優美(おかくら ゆみ)』だ。


まな「優美。……蒼馬が、斎田君の様子がおかしいって言うの」

優美「おかしい?」

蒼馬「そうなんだよ。朝っぱらから顔色悪いし、何も喋らないしで気味が悪いんだ」

まな「それに、お昼も食べてないみたいなの」

優美「お昼も食べてない……」

「……そういえば」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:38:36.74 ID:d5HixjwK0
蒼馬「何か、他にあったのか?」

優美「多分、見間違いだと思うけど…」

「さっき、校庭の方で斎田君っぽい子見掛けてね」

「その……」


見てはいけないものを見てきたような表情を浮かべ、言葉に詰まる優美。

そんな彼女に対し、蒼馬は「どうしたんだよ?」
まなは「ねえ、何があったの?」と聞いた。

すると彼女は、答えにくそうにしながらこう言った。


優美「さっき校庭で、その斎田君っぽい子が……」








「校庭に落ちてた、太い木の枝かじっていたのよ」

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:40:17.27 ID:d5HixjwK0
蒼馬「木の枝を……」

まな「かじってた?!」

優美「そうなのよ」

「まあでも、本当に見間違いかもしれないけどね」

蒼馬とまな「「………」」


優美の話しに、二人はただ呆然とするしかなかった。


優美「…………」

「…そ、そうだ!まな、ぬりかべコーチ見なかった?」

まな「ぬりかべさん?ううん、見てないけど」

優美「おっかしいなぁ。先週から昨日まで、ずっと来てくれてたのに………」

「今日はお休みなのかしら?」


そんな疑問を口にする優美であったが、今の二人にとって
ぬりかべが学校に来ていない事など、どうでもいい話しであった……
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:42:22.25 ID:d5HixjwK0
―夕方―


学校を終えて、下校するまなと蒼馬は
昼間、優美から聞いた話の事を話し合う。


まな「ねぇ、蒼馬…昼間の優美の話し、どう思う?」

蒼馬「どうもこうも、信じられねぇよ」

まな「だよね……」

蒼馬「まぁ…仮に本当だとしたら、妖怪に取り憑かれてるとか」

まな「妖怪……確かに、その可能性あるわね!」

「じゃあ、今すぐ鬼太郎とねこ姉さんに……」

蒼馬「…い!?」


と、スマホを出そうとしたまなであったが
突然蒼馬が、彼女の後ろを見たかと思えば、何かに驚く。

まな「どうしたの、蒼馬?」

蒼馬「わ、悪いまな……俺、早く帰って宿題済ませなくちゃならないんだ」

「つー訳で、さいなら〜!!」


そう言いながら、蒼馬は逃げるように走り去ってしまった。


まな「はあ?宿題って…」

「早く帰っても、真面目にやらない癖に……」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:43:13.60 ID:d5HixjwK0







まな「……………ん?」







ふと、まなが後ろから気配を感じて振り返ると、そこには件の薫が、ジッと立ち尽くしていた。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:44:01.58 ID:d5HixjwK0
まな「わぁ!さ、斎田君いたの!」

薫「…………」

と、驚いたまなであったが、薫は無言で立ち尽くしている。

それどころか、表情一つも変わっていない。

よく見れば、その顔は蒼馬の言う通り真っ青で
無表情な顔と相まって、非常に不気味だった。


まな「さ、斎田君?」

「そ、そうだ。優美がね、昼間君が校庭に落ちてた枝を……そ、その………」

「か、かじってるところ見たって言うんだけど、違うよね?」

薫「…………」


とりあえず、昼間の優美の話の真偽を聞いてみたが
薫は相変わらず無表情で立っているだけ。

それどころか…………
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:46:26.38 ID:d5HixjwK0
まな「え…!ちょっ!?」


薫は突然、まなの手を取って無理矢理何処かへ引っ張り始めたのだ。


まな「ど、何処行くの?」


問い掛けるまなだったが、やはり返事は返ってこない。

そして少しして、まなは異様な力で手を掴まれている事に気付く。

薫の雰囲気も相まって、何か良くない気配を感じ取るまなであったが
先の通り異様な力で手を掴まれているせいで、ただ黙って引っ張られるしかなかった。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:47:40.58 ID:d5HixjwK0
それからまなは、そのまま薫の自宅に連れて来られた。

外観だけは、何の変哲もない一軒家だったが
中に入るとその印象は大きく変わった。

斎田宅の中は、木の部分が昨日以上に
不自然に削られておりボロボロの様相を曝しており
相変わらず電気もついていなくて真っ暗。

まなは、靴も脱がされる事を許されないまま、二階にある薫の自室にまで連れて来られる。

薫の部屋も、同様にボロボロであり
ベッドや、机の一部がかじられたかのように削られた跡がついていた。

この異様な自室に辿り着くと
薫はまなの手を離しまなに背を向けたまま、立ち止まってしまう。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:49:08.78 ID:d5HixjwK0
まな「ど、どうしたの?斎田君?」

「こ、ここ……君の家だよね?」

「な、何かボロボロだけど…………」

薫「…………」


家の様子について尋ねるが、薫は答えない。


まな「さ、斎田君?」

薫「…………」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:49:43.42 ID:d5HixjwK0
薫「……う………」


「ウグ…………!」


まな「!?」


それは、突然だった。

薫は、不気味な唸り声らしきものを発する。

そして………
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:50:29.54 ID:d5HixjwK0





薫「ウ…………」







『ガアアァァァァ――――!!!!!』





次の瞬間、肉や骨がメキメキと変形するような音と共に
薫の両手がノスフェルに似たような爪が生えた異形の腕に変貌
更に野太い雄叫びと共に振り返った彼の顔も
ノスフェルに似たような白目を剥いた顔に変化していた。


まな「きゃぁー!!」


怪人のようになった薫を前にして
まなは悲鳴を上げながら部屋を飛び出して、階段を一気に駆け降りる。

そして降りた先には、その先には薫の両親が立っていた。


まな「あ!斎田君の父さんに母さん!」

「た、大変なんです!斎田君が………」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:51:13.30 ID:d5HixjwK0



博「グオォ―――!!」


涼子「キシャァ―――!!」



息子に起きた異変を話そうとしたまなであったが
博の右腕と涼子の左腕が、薫と同様にグロテスクな音共に
ノスフェルに似た爪が生えた、異形の腕に変貌。

ピンク色に変色し、白目を剥いた異様な表情と共に咆哮を上げた。


まな「ひぃ…!」


怪人のようになった薫の両親を前に、後ずさるまな。
その時、二階から薫が『ガァー!』と、いう叫び声を上げながらおりてくる。
それを見たまなは、即座に裏口から外へ出ると、庭にあった物置の中に逃げ込んだ。


まな「は…早く、鬼太郎とねこ姉さんに知らせないと……!!」


急いでスマホを取り出すと、焦りで震える手で
何とかメッセージを打ち、ねこ娘のスマホに送信した。
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:52:38.90 ID:d5HixjwK0
―ゲゲゲハウス―


鬼太郎「みんな、今日も集まったな」

一反もめん「つっても、ぬりかべは完全ダウンしとって、すぐには来れんばい」

ねこ娘「本当にクタクタなのね……ん?」


ノスフェルの事で話し合おうと
ねずみ男とぬりかべ以外のファミリー全員が集まった、丁度その時であった。

スマホに、レインからのメッセージ音が聞こえてきたため
ねこ娘は手早くスマホの画面に目を向ける。

そこには、言うまでもなく、まなからのSOSのメッセージが入っていた。


ねこ娘「何ですって!?」

目玉おやじ「どうした?」

ねこ娘「それが…斎田って言う友達が、父親と母親と一緒に化け物になって襲ってきて…」

「それで、その子の家の物置に隠れてるって!」

目玉おやじ「なんじゃと!?」

鬼太郎「こっちはそれどころじゃ…!」






「……まさか!」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:53:44.15 ID:d5HixjwK0
砂かけばばあ「どうした鬼太郎!?」

鬼太郎「ねこ娘!その友達の家の場所は?」

ねこ娘「一応、地図も一緒に送られてるけど……」

鬼太郎「じゃあ、案内してくれ!」

「一反もめん、みんな行くぞ!」

一反もめん「え?あ、あ……コットン承知ですばい!」



急かすように言ってくる鬼太郎に
ファミリーは少々困惑したが、友人の危機である以上そのような事は気にしていられない。

全員、一反もめんの背中に乗り、人間界へと飛び出した。


鬼太郎「こっちで合ってるか?」


鬼太郎に聞かれ、ねこ娘はスマホに表示されている
地図を見ながら「うん。間違いない」と答えた。


鬼太郎「一反もめん、スピードを上げてくれ」

一反もめん「これでも精一杯出しとるばい」

「というか、なしてそんな急いどるとよ?」

鬼太郎「…………」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:54:09.91 ID:d5HixjwK0





「奴が……」




「ノスフェルが動き出した!」




117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:55:30.34 ID:d5HixjwK0
ねこ娘「え?」

子泣きじじい「なんじゃと?」


鬼太郎の答えに驚くファミリー達であったが

「ふむ。やはりお前も、同じ事を考えておったか」

と言いながら、目玉おやじが鬼太郎の髪の中から出てきた。


ねこ娘「同じ事って?」

目玉おやじ「わしらは、とんだ思い違いをしておったという事じゃ」

「わしらは最初、奴が獲物にしやすいまなちゃんを、すぐにまた狙うと考えておった。だから昨日まで、彼女を見張っていた」

「だが…恐らく奴は、わしらが自分の死を疑う事も想定しておったんじゃ」

「それで雲隠れしつつ、まなちゃんと親しい人間に狙いを付けたのじゃろう」

「彼女を確実に捕らえ、餌にする為に!」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:56:02.88 ID:d5HixjwK0
ねこ娘「それで、無関係な彼女の友達と家族にまで手を出したって言うの!?」

「許せない…!」

鬼太郎「だからこそ、急がなくちゃならないんだ。手遅れになる前に…!」

一反もめん「確かにそりゃ大変ばーい!」

子泣きじじい「しかし、これから戦うとして、どうやって倒すんじゃ?」

「一度倒したのに、復活するような相手なんじゃろう?」

鬼太郎「だから今度は、戦いながら奴の弱点を探すんだ」

子泣きじじい「弱点を探す?そんなものあるのか?」

鬼太郎「恐らく、弱点を突かないと倒せない相手なんだと思う」

「実際ぬらりひょんも、奴の弱点を探さなかったのかと言っていた。これは裏を返せば、奴には弱点があるという事だ」

「だから、それを探してもらうために、みんなにも一緒に来てもらったんだ」
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:57:14.64 ID:d5HixjwK0
砂かけばばあ「しかしぬりかべは、まだダウンしておるみたいじゃぞ」

「一応、場所は伝えておいたが……」

鬼太郎「ぬりかべは、さすがに仕方がないよ。僕達だけで、何とかするしかない」


そうして、斎田家へ急ぐ鬼太郎ファミリー。

一方、まなはメッセージを送ってから
しばらくジッと息を潜めていたのだが、妙に静かである事が気に掛かる。

なので、そっと物置のドアを少しだけ開き、隙間から外の様子を覗き見た。

外には、怪物になった斎田一家が
うろついている様子が全く無く、広い庭だけが広がっていた。

家の外に出た事に、まだ気付いていないのだろうか?

そう考えるまなであったが、背後に置かれた道具の隙間から
ピンク色のネズミの姿をしたノスフェルが
目を光らせながら自分を見ている事に、気付いていない。


そして……
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:58:57.96 ID:d5HixjwK0





バリバリバリッ―――!




まな「え…?」


突如頭上から、何かが引き裂かれる音が響き
真っ暗な物置に、外の光が差し込んでくる。

まなが、その光が差し込む方を見上げると、
そこには両手の爪で屋根に穴を開け、こちらを見下ろす薫の姿があった。


薫『ガァ――!』


まな「きゃあー!」


まなは、驚いて物置から飛び出した。

だが、庭では薫の両親がいつの間にか待ち伏せしており、まなを捕まえてしまう。

そして、丁度そのタイミングで、一反もめんに乗った鬼太郎ファミリーがやって来た。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 08:59:38.99 ID:d5HixjwK0
ねこ娘「まな!」

鬼太郎「遅かったか!」


捕まっているまなの姿を確認する鬼太郎ファミリー。

そこへ、薫が立ちはだかるように、まな達の前に立つ。


まな「さ、斎田君…」

砂かけばばあ「なんじゃ、あの人達の姿は?!」

鬼太郎「あの顔と爪、ノスフェルそっくりだ」

目玉おやじ「奴に操られているのは、間違いないな」

「………む!?」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:00:49.47 ID:d5HixjwK0




『ぢう!』




その時、ピンク色のネズミの姿をしたノスフェルが、まな達の前に現れる。


まな「え?」

ねこ娘「アレは…」

鬼太郎「ピンク色のネズミ!」

『ぢう!』


現れたネズミの姿をしたノスフェルは
その場から大きく飛び上がり、そのまま本来のビーストとしての姿に戻る。
そしてそのまま、両手の爪を広げて鬼太郎ファミリーに迫った。


目玉おやじ「いかん!みんな、降りろ!」


攻撃してくる事に気付いた鬼太郎達は
一斉に一反もめんから飛び降り、庭に降り立った。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:01:58.59 ID:d5HixjwK0
一反もめん「え!?ちょっ…」



「おわああぁぁぁぁ!?」



だが、一反もめんはすぐに避けられるはずがなく
ノスフェルの爪の連撃により、細切れになってしまった。


まな「一反もめんさん!」


一反もめんの惨状にまなが叫ぶ中、ノスフェルはドスンと庭に着地。
『グオォォォ―――!』と雄叫びを上げて、鬼太郎ファミリーを睨んだ。


まな「ど…どうして!?」


死んだと思っていたノスフェルが目の前にいる事に、まなは驚きを隠せなかった。

そして、鬼太郎達もキッとした表情で、ノスフェルを見る。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:02:27.57 ID:d5HixjwK0
鬼太郎「ノスフェル…!」

目玉おやじ「やはり、生きておったか」

砂かけばばあ「こやつが、スペースビーストとやらか?なんと醜い!」

子泣きじじい「コイツは確かに、この世界の生き物ではないぞ!」


砂かけばばあと子泣きじじいは初めて見るスペースビーストの姿に、そのような感想を残す。

そうして、両者は睨み合う。

その睨み合いの中で、鬼太郎はノスフェルの身体を注意深く見回す。


鬼太郎(あれで生きていた以上、何処かに復活の秘密があるはずだ)

(けど見た感じ、鋭い爪以外に目立った点は見当たらない)


ノスフェル『グオ――!!』


鬼太郎が弱点探しをしている中
ノスフェルは声を上げながら、爪で引っかこうと走り寄ってくる。

鬼太郎ファミリーは、この攻撃をすぐさま回避。
避けられたノスフェルは、次に鬼太郎の方を向いた。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:03:11.50 ID:d5HixjwK0
鬼太郎「リモコン下駄!」


鬼太郎は、すぐにさま両足の下駄を飛ばして攻撃しようとしたが
ノスフェルは、両手であっさり払い飛ばしてしまう。

当たり損なった下駄は、鬼太郎の足に戻ると
すかさず鬼太郎は「髪の毛針!」と叫んで毛針で攻撃。
これをノスフェルは、両腕をクロスさせて防御する。

その隙に、子泣きじじいがノスフェルの体の上に登り
赤ん坊の泣き声を上げて石化。

石化してどんどん重くなっていく
子泣きじじいの重量に、さしものノスフェルも動きが鈍っていく。


ねこ娘「ニャアァ―――!!!」


そこへ、人差し指と中指の爪を伸ばし
二本を束ねたねこ娘が、ノスフェルの腹部を切り付ける。

束ねられた二本の爪は、鎌のような鋭さで
ノスフェルの腹に食い込んでその肉を切り裂き、大きな切り傷を刻み付けた。


砂かけばばあ「それ!痺れ砂じゃ!!」


追い打ちに、砂かけばばあが痺れ砂を傷口に投げ付ける。

麻痺効果がある薬を多分に含んだ砂を
かけられた事で傷口が沁み、ノスフェルは大いに苦しんだ。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:03:49.72 ID:d5HixjwK0
砂かけばばあ「む?」


だが、その直後に信じられない事が起きた。

ノスフェルの傷が、少しずつ塞がり始めたのである。


ねこ娘「傷が治っていってる…?」

目玉おやじ「やはりそうか!こやつ、再生能力を持っておる!」

鬼太郎「再生能力?」

ねこ娘「それじゃあ、鬼太郎に倒されたのに生きてたのって……」

目玉おやじ「この再生能力によるものじゃろう」

砂かけばばあ「もしそうなら、奴の身体の何処かに、再生能力を発動させる仕掛けがあるのではないか?」

鬼太郎「それが奴の弱点!」


復活のトリックを見破り、いよいよ弱点を探そうという話しになろうとした。


だが………
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:05:33.51 ID:d5HixjwK0




まな「きゃあ!」




まなの悲鳴が聞こえた為、ファミリーが悲鳴がした方を見ると
怪物化した薫が、彼女の首筋に爪を突きつけていた。

相手は相変わらず言葉を発する事はなかったが

『下手な事をすればまなの命はない!』

という意思表示である事を、一目見ただけで理解できた。


鬼太郎「まな!」

目玉おやじ「そうか!」

「まなちゃんを捕まえたのは餌の確保だけでなく、わしらに対する人質も兼ねておったのか!」

子泣きじじい「な、なんということじゃ!」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:06:36.44 ID:d5HixjwK0
ノスフェル『!』


まなが人質に取られた事実を知り、子泣きじじいは泣くのを止めて石化を解いてしまう。

その隙にと言わんばかりに、ノスフェルは舌を伸ばして子泣きじじいを締め上げた。


子泣きじじい「し、しまった……!」

砂かけばばあ「子泣き!…ぎゃあ!!」


続けてノスフェルは、舌の横なぎで子泣きじじいを砂かけばばあに力強く投げ付ける。
子泣きじじいを投げつけられた砂かけばばあは、彼もろとも斎田宅に激突。
壁を突き破って和室に放り込まれ、奥の方にある壁にも激突し、その衝撃で崩れた壁の残骸に埋もれてしまう。


鬼太郎「子泣きじじい!砂かけばばあ!」


鬼太郎とねこ娘が彼らの身を案じようとするが
その隙は与えないと言わんばかりに、ノスフェルが両手の爪を振り回しながら迫る。

まなを人質に取られ迂闊に攻撃出来ない鬼太郎とねこ娘は、避ける事しか出来ない。


鬼太郎「父さん、一体どうしたら…!」

目玉おやじ「どうにかして隙を見付けて、まなちゃんを助けるしかない」

「上手く奴らの気を逸らす事が出来ればいいのじゃが……」


目玉おやじに言われ、爪をかわしながら
まなの救出のタイミングを伺う鬼太郎とねこ娘。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:10:28.57 ID:d5HixjwK0
ねこ娘「きゃっ!?」


そして、ねこ娘が後ろ飛びで爪を回避しつつ、相手から距離を取ったその時であった。
ノスフェルは、擦るように地面を蹴って、彼女の顔に土を振り掛けたのだ。

急な搦め手にねこ娘は反応しきれず、土をもろに浴びて怯んでしまう。
その隙にノスフェルは鋭い爪で、彼女を切り裂こうとした。


鬼太郎「ねこ娘!」


それを見た鬼太郎は、ねこ娘を突き飛ばす。

そしてそのまま、ノスフェルの爪による一撃を胸に受けてしまった。


鬼太郎「あ…がっ……!」


胸に大きな傷を負ってしまった鬼太郎は
妖気と血が流れ出る胸を押さえながら、地面に膝をつく。

傷付いた鬼太郎の姿に、ノスフェルはニヤリと一瞬だけ笑みを見せると
追い打ちと言わんばかりに、今度はアッパーカットのような動作で、鬼太郎の腹に爪を突き刺した。


ねこ娘「鬼太郎!!」

まな「!!!!」


ねこ娘が叫び、まなが言葉を失う中
ノスフェルは腕を大きく振るって、鬼太郎を投げ飛ばす。

投げられた鬼太郎は、力なく地面に叩き付けられ
頭の上にいた目玉おやじはその際の衝撃で「うわぁ!」という悲鳴と共に地面に投げ出された。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:12:05.01 ID:d5HixjwK0
目玉おやじ「き、鬼太郎!大丈夫か!?」

鬼太郎「う…!うぐ………!」


息子に駆け寄る目玉おやじ。

当の鬼太郎は、胸と先程付けられた腹の傷から
大量の血と妖気が漏れだしており、彼の周りに赤い海が広がり出す。

幸い意識はあるものの、ダメージが大きいらしく
その場にうずくまったまま、すぐには起きられない様子だ。


ねこ娘「き、鬼太郎!…はっ!」

ノスフェル『グオォ――!!』


鬼太郎を心配したのも束の間。

ノスフェルはお前で最後だと言わんばかりに、ねこ娘を爪の餌食にしようと襲い掛かる。

ねこ娘は、持ち前の身のこなしで回避するが
相変わらずまなが人質に取られているせいで、反撃に転じる事は叶わない。


ねこ娘「くっ…!!」


だが、それも長く続くはずがなく、左腕に爪が当たって傷を負ってしまう。

切られた傷口から、鬼太郎同様に妖気と血が漏れ出し、ねこ娘は右手で傷口を押さえるのだが……
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:13:05.19 ID:d5HixjwK0
まな「! ねこ姉さん後ろッ!」

ねこ娘「え……ッ!?」







ザク―――ッ!





132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:14:50.55 ID:d5HixjwK0
まなの声を聞き、後ろを振り返ったねこ娘だったが
その次の瞬間、何かが突き刺さる音と共に腹部に衝撃が走った。

一瞬の事で何が起きたのか分からなかったねこ娘だったが、少しして何が起きたのか理解した。

自分の目の前には怪物と化した斎田薫がおり
その薫が、ノスフェルそっくりに変化した右手の爪を
ねこ娘の腹に深々と突き刺しており、刺された箇所からは血と妖気が流れ出ている。

そう、ねこ娘がノスフェルに気を取られている間に
まなを人質に取っていたはずの彼が、背後から近付いてきていたのだ。

恐らく、相手がねこ娘一人だけになった為
今度はあえてねこ娘を回避に集中させた末に、薫を不意打ちに回した……

という事なのだろう。


ねこ娘「あ…!く……!」


気付いた途端に、ねこ娘は痛みに苦しみだす。

その直後、薫はそのままねこ娘を押し倒すと
腹部に突き刺した爪を更に刺し込んで、更なるダメージを与えた。


ねこ娘「ぎゃあぁぁぁ――――!!」

まな「ねこ姉さん!」

鬼太郎「ねこ……むす、め……!」


ねこ娘の悲鳴を聞き、鬼太郎は立ち上がろうとするが
どうにも幽霊族の再生力でも、動けるまで回復するのに
まだ時間が掛かるほど傷が深いらしく、相変わらず動けないままだ。

霊毛ちゃんちゃんこが、回復を促進させる様子を見せているにも関わらずである。

まなも、怪物化した薫の両親に捕まったままで、何もできない。

そして最悪な事に、残るぬりかべはまだダウンしているのか、来てくれる気配が全くない。
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:17:08.29 ID:d5HixjwK0
目玉おやじ「鬼太郎!ねこ娘!」

「ノスフェルめ、まさかここまで頭が回るとは……!」


この絶望的な状況を覆すにはどうすればいい?

目玉おやじは必死に考えた。

指鉄砲を使おうにも、目玉だけのこの身では一発が限界だし
ノスフェルの弱点が判明していない今の段階で撃っても、一時しのぎにしかならない。

そうしている間に、薫は左手の爪をねこ娘に突き刺そうとしたが
ねこ娘は痛みを堪えながら、右手で受け止める。
そして、もう片方の左手で右手の爪を引き抜こうと抵抗するが
片手だけで尚且つ傷を負っている今の状態では、虫の抵抗も同然だ。

そんなねこ娘を薫に任せるかの如く
ノスフェルは、鬼太郎にとどめを刺そうと迫る。


目玉おやじ「ノスフェル!息子を倒したければ、まずわしを……」

「ぎゃあ!」


目玉おやじは、ノスフェルの前に立ち塞がったものの、案の定踏み潰されてぺしゃんこになってしまう。

まなが「親父さん!」と叫ぶ中、ノスフェルは鬼太郎の前まで来ると、爪を振り下ろしたのだが……
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:17:45.30 ID:d5HixjwK0
ノスフェル『!?』


その瞬間、霊毛ちゃんちゃんこが勝手に鬼太郎から離れると
大きくなってノスフェルの引っ掻きから鬼太郎を守ったのだ。


目玉おやじ「ちゃ……ちゃんちゃんこに宿る、幽霊族の先祖の霊が、鬼太郎を守りに出たか……」


ペラペラの姿で起き上がりながら、先祖の加護の発動を確信する目玉おやじ。

しかしそれでも、ノスフェルはちゃんちゃんこを破ろうと引っ掻きを続ける。

単純な切れ味の鋭さだけで、鬼太郎をダウンさせた爪だけあって
さすがのちゃんちゃんこも、少しずつだがボロボロになっていく。

おまけに、鬼太郎から離れた事で、鬼太郎の傷の再生も大幅に遅れだしている。


まな「どうしよう……どうしたらいいの………?」


自分が捕まってしまったばっかりに……

人質に取られ、何もできない自分に苛立ちを覚える。

このまま、何もできないまま、ただただ友人達がやられていく様を見るしかないのか?
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:19:28.84 ID:d5HixjwK0





ヒラリ―――





その時であった。

砂かけばばあと子泣きじじいが吹き飛んだ時に
遺影が壊れたのだろうか、斎田理子の写真が壁が壊れた家の中から飛んでくる。

その動きは、風に吹かれて飛んでいるように見えたが
今は写真が飛ぶほどの風は吹いていないはずだ。

そんな不思議な動きを見せる理子の写真は、まなの目の前に飛んでくる。


まな「アレは、斎田君のお姉さんの……」

「!?」


理子の写真を目にした次の瞬間、まなの頭の中にあるビジョンが浮かび上がってきた。

それは、薫が今も着ている制服の胸ポケットがアップになったかと思えば
その中のガンバレクイナちゃんのキーホルダーが、大写しになると言うものであった。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:20:30.95 ID:d5HixjwK0
まな「ねこ姉さん!薫君の胸のポケットを切って!」

ねこ娘「胸、ポケット…!」


ねこ娘は痛みを堪えながら、薫の制服の胸周りを見る。

確かに、左側にポケットがある。

それを確認すると、右手を掴んだ左手を離すと
薫を傷付けないよう、左手人差し指と中指の爪を短めに伸ばし、ポケットを軽く切り裂く。

すると、中からガンバレクイナちゃんのキーホルダーが、ねこ娘の上に落ちて来た。


ねこ娘「キーホルダー?」

薫『!?』


すると、薫に変化があった。

彼は、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーが
目に入った途端、ハッとした様子を見せいたのだ。

その反応は、まなの方でも確認できた。

そこで、まなは呼び掛けた。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:22:37.36 ID:d5HixjwK0
まな「斎田君。それが何か覚えてる?」

「あなたが大好きな、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーだよ」

「私が、あなたに買ってあげたものだよ」

薫『…………』 

まな「お願い、思い出して!」

「斎田君、あなたは動物が大好きで、それでいて優しい子なんだよ」

「だからねこ姉さんを、これ以上傷付けないで!そして、みんなを助けてあげて!」

「だからお願い!斎田君、元のあなたに戻ってッ!!」


まなの精一杯の声と共に、また理子の写真がヒラリと宙を舞うと
まるで、ねこ娘と薫の間に割って入るかのように、薫の目の前に飛んできた。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:23:15.72 ID:d5HixjwK0

薫『!!!!』


その瞬間、薫は驚きの表情と共に、頭の中にある記憶が呼び覚まされた。

それは、1年前……まだ存命中だった姉の理子と、ある会話を交わしていた記憶だ。
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:24:56.05 ID:d5HixjwK0
薫「お姉ちゃん、彼氏いるんだって…?」

理子「あれ?薫ちゃん何で知ってんの?」

薫「彼氏さんが、僕に自慢してきた」

理子「もう、アイツったら、どうしてまだバラしちゃ駄目って言ったのに、あっさりバラしちゃうのかしらね〜」


口調とは裏腹に、笑みを浮かべながら理子は
ネズミの格好をした3期ねずみ男に酷似した貯金箱に、次々と小銭を入れ続けている。

そして、続けるように「そんなこと聞いてくるなんて、どうしたの?」と聞いた。


薫「いや……ちょっと羨ましくて………」

理子「ふぅん…薫ちゃんも、彼女欲しいとか考えてたんだ」

薫「…おかしい?」

理子「全然。むしろ、私も薫ちゃんにも恋人できて欲しいなって思ってる」

「私だけ恋人いるなんて、不公平じゃない?」

「…んで?気になる娘、いたりするの?」

薫「まだいないよ」

理子「じゃあその内、見付かるといいわね。薫ちゃんのタイプの娘」


そう言っている内に、理子は小銭を全部入れ終えて
「よし!今月の貯金完了っと」と言って、貯金箱を自分の机の上に置くと薫の方へ向き直る。
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:26:41.39 ID:d5HixjwK0
理子「ねぇ…もしも、好きな娘できたら言ってね?お姉ちゃんも応援してあげるから」

薫「そんないいよ……」

理子「遠慮しないの!アンタ、人前だと自分の事あんまり表に出さないじゃない?」

「だから、ちょっと心配なのよね……」

薫「何それ?僕が頼りないって言いたいの?」

理子「うん」

薫「大丈夫だよ!僕、彼女できたら、絶対にその娘を幸せにするから!」

理子「お?まだ出来てもないのに、いきなり踏み込むね〜」

薫「あ……ごめん。気ぃ、早すぎだよね……」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:27:58.60 ID:d5HixjwK0
理子「ううん、そんな事ないよ」

「タイプの人がいつ現れるか分からない以上は、最初からそういう心意気持ってなきゃ…」

「せっかくできた好きな娘を悲しませちゃうし、何しろ守る事だってできはしないわ」

「私の彼氏もそういう人だから、安心して付き合っているのよ」

薫「そうだったんだ……」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:28:26.36 ID:d5HixjwK0


理子「だからね、薫。今言った事、絶対に忘れないでね」


「そして…………」

143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:29:12.44 ID:d5HixjwK0






「好きな娘できたら」



144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:29:58.80 ID:d5HixjwK0





「絶対にその娘を、守ってやってね」




145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:31:54.44 ID:d5HixjwK0
理子のこの言葉が蘇り、現代の薫はねこ娘に突き刺した爪を引き抜くと
姉の写真と、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを手に乗せ、ジッと見た。

ねこ娘がその隙に脱出する中、怪物化した薫の頭の中にまたある記憶が蘇る。

それは、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを買ってもらった時から始まった、まなと三ヶ月間。

恋焦がれるも、中々前に進めずもどかしい思いばかりを抱いていた三ヶ月間。

でも、それだけではない。

自分を評価してくれた、まっすぐで優しい娘……

探し求めていた、自分のタイプの人………


そして……









守るべき愛する人







146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:32:39.96 ID:d5HixjwK0


薫(ソウ…ダ……)

(ボ…ク……ガ……シナクチャ……イケナイコト………)

(ソレハ……コ…ンナ……)

(こン…な………)

147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/13(月) 09:33:27.80 ID:d5HixjwK0





こんな事じゃない!



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