【ゲゲゲの鬼太郎 6期】「恐怖の異星獣 スペースビースト」【ウルトラマンネクサス】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:09:49.62 ID:QsocQsYy0
本作はタイトル通りの作品となります。

以下は、読む前に把握して欲しい事です。


1.本作は、『ゲゲゲの鬼太郎第6期』と『ウルトラマンネクサス』のクロスオーバー作品になります。
内容的には、鬼太郎の世界にみんなの(聖夜の)トラウマとして有名な『あのビースト』が出張しに来る感じです。
よって、残念ながらウルトラヒーローは登場いたしません。
また『ネクサス』以外の作品のキャラクターも少しだけ登場します。

2.時系列は6期本編第84話と第85話の間。つまり第84.5話のようなものです。

3.ストーリーの都合で、双方の原作に登場していないオリキャラや独自設定が出て来ます。
苦手な方はご注意して下さい。


ちなみに、どのような作品を書くかは
当方で考えて決める方針なので、次の作品のリクエストの類は受け付けていないことをご了承下さい。

以上を把握の上でご覧下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1586326189
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/08(水) 15:10:47.03 ID:QsocQsYy0
〜アバン〜


鬼太郎「ゲゲゲの鬼太郎」



『グオォォォ――――!!!!』

『異(い)なる星の獣と書いて『異星獣』。それがあの怪物の正体です』

『好きな娘できたら。絶対にその娘を、守ってやってね』



鬼太郎「見えてる世界が全てじゃない」

「見えないものもいるんだよ」

「ほら…君の後ろの暗闇に」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/08(水) 15:11:22.71 ID:QsocQsYy0
〜アバン〜


鬼太郎「ゲゲゲの鬼太郎」



『グオォォォ――――!!!!』

『異(い)なる星の獣と書いて『異星獣』。それがあの怪物の正体です』

『好きな娘できたら。絶対にその娘を、守ってやってね』



鬼太郎「見えてる世界が全てじゃない」

「見えないものもいるんだよ」

「ほら…君の後ろの暗闇に」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/08(水) 15:12:02.89 ID:QsocQsYy0
のっけからミスしてしまいました……

>>3はないものとしてお願いします……
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:12:49.94 ID:QsocQsYy0

〜ゲゲゲの鬼太郎第6期 オープニング(2年目バージョン)〜
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:14:05.81 ID:QsocQsYy0
―12月某日:東京都 調布市―

冬休みも間近に迫りつつあるとある日の深夜。

懐中電灯を持った二人組の青年と一人の女性が、郊外にある廃ビルに足を踏み入れた。

廃墟マニアが、肝試し感覚でこの建物に侵入したのである。


女性「ねぇ…やっぱ怖いよ〜」

青年A「だったら、もう帰ってもいいんだぞ?」

女性「それもヤだ〜」

青年A「まったく…最初に『暇だから肝試ししましょ☆』って、言い出したのは何処のどいつだよ」

女性「だって、夜の廃ビルってこんなに怖いなんて知らなかったんだも〜ん……」

青年A「相変わらず面倒な奴……」

青年B「シッ!二人とも、静かにして」

青年A「何だよ!急に」

青年B「何か、音聞こえない?」

青年A「音ぉ?」


青年Bの言う通り、通路の奥からバリバリと言った感じの音が鳴っていた。

まるで、何者かが何かをかじっているような、そんな音が……
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:14:57.53 ID:QsocQsYy0
青年A「な、何だよこの音…?」

女性「ね〜、やっぱ帰ろうよ〜!」

青年B「でも、気になるじゃないか。行ってみよう」


得体の知れない何かがいるかもしれない以上、
女性の言う通り、本来なら引き返すべきだ。

しかし、若さゆえの好奇心か、音の正体を知りたいという欲求が勝り、
結局、青年二人は不安そうな女性を連れて、音のする奥へ奥へと足を進める。


そして、三人はついに音のする部屋へと足を踏み入れた。


青年A「お、おい…何だあれ!?」


辿り着いた部屋の中を見て、三人は驚愕した。

まず、懐中電灯で床を照らしてみると、そこには血らしき赤い跡。

その跡を辿って部屋の奥を照らすと
人間らしきものを貪り食っている、ネズミに似た怪物の姿が……
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:15:43.88 ID:QsocQsYy0
女性「キャアァ―――!!!!」


人を食う怪物の姿を見て、女性が悲鳴を上げる。


怪物『グオ――!』


言うまでもなく怪物は、その声に反応して三人の存在に気付き、彼らの方に顔を向ける。

さすがに危険だと察し、逃げようとした三人であったが時すでに遅し。

怪物は咆哮を上げながら、あっという間に三人の元に走り寄り、そして……
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:16:22.44 ID:QsocQsYy0

『ギャアァァァァ――――!!!!』


『嫌アァァァ――――!!!!!』
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:17:08.94 ID:QsocQsYy0

次の瞬間、廃ビルから二人の男と一人の女の悲鳴が響き渡ったのだった。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:18:16.80 ID:QsocQsYy0

―サブタイトル―

第八十四点五話

恐怖の異星獣 ―スペースビースト―
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:20:14.26 ID:QsocQsYy0
―翌日の夕方―


下校中の『犬山まな』は、友人の『桃山 雅』からある話を聞かされていた。

無論、昨晩の出来事の話しである。


雅「もう知ってるかもだけど、昨日の晩また人が殺されたらしいよ」

まな「またなの?」

「この間も、デュナミスト・バンドの孤門さんの恋人とその家族さんも、殺されたり行方不明になったばっかなのに……」

雅「しかも、事件現場の近くで大きな怪物が目撃されたから、そいつに食べられたんじゃないかとか言われてるみたいよ」

「実際、死体として見付かってる人は、みんな獣に食べられたみたいに下半身から上がないらしいし……」

まな「…………」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:21:23.24 ID:QsocQsYy0
まな(もしかして、妖怪の仕業かな?)


そう考えたまなは、雅と別れた後、足早にゲゲゲの森のゲゲゲハウスへと向かった。


まな「……………」

「いない」


だが、家には誰もおらずもぬけの殻であった。


まな(色々とニュースになってるの知って、調べに出掛けたのかな?)


だとしたら、わざわざ相談に来る必要もなかったか?

いずれにせよ、誰もいないのではここにいてもどうしようもない。

仕方なくまなは、家路につく事にした。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:22:25.13 ID:QsocQsYy0
まな「あーあ、無駄足だったなぁ」


そう呟きながら、いつもの道を歩くまな。

日が落ちるのが早い冬の時期と言う事もあり
ゲゲゲの森から出て、いつもの公園辺りに来た頃には
もう既に日が完全に落ち込んで暗くなっていた。

夜空になった空を見上げて、まなは何かが起きる前に家に帰ろうと思い始めた。


ねずみ男「あひぇ――!誰か助けてえぇぇぇ―――!!」


しかしその時であった。

公園の向こうから、人間と妖怪のハーフであり、
鬼太郎の悪友でもある『ねずみ男』が叫びながらこちらに走ってきたのだ。


まな「ねずみ男さん?」

ねずみ男「そこにいるのは、まなちゃんか?」

まな「どうしたの?そんなに慌てて」

ねずみ男「そうだった!」

「まなちゃん、こんなとこにいねぇで早く逃げろ!じゃねぇと、まなちゃんも『アイツ』に目ぇつけられ………」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:23:31.21 ID:QsocQsYy0

怪物『グオォォォ――――!!!!』
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:26:43.10 ID:QsocQsYy0
「『アイツ』に目ぇつけられるぞ!」と言おうとするねずみ男の言葉を遮るように、
彼の後ろから口から三本の鋭い前歯を生やし、両手に五本の鋭い爪が生えた指を持った、
皮を剥いだネズミのような姿をしたおよそ5メートルくらいのサイズの二足歩行型の怪物が、咆哮を上げながら姿を現した。


ねずみ男「うわあ、もう追い付いてきやがった!」

まな「キャア――!!!!」


ねずみ男が驚く一方、まなは唐突に現れた醜悪な姿の怪物に驚き、悲鳴を上げてその場で腰を抜かしてしまう。

すると怪物は、その悲鳴に反応してまなの方を向くと、
まるでターゲットを変えたかのように、彼女の方へゆっくりと足を進める。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:30:09.17 ID:QsocQsYy0
まな「ひぃ!」


こちらに迫ってくる怪物に怯えるまなだったが、
すぐにねこ娘を呼ぶべきだと判断してスマホを取り出す……のだが、恐怖と焦りで手が震えてスマホが上手く操作できない。

そうしている間に、怪物はまなのすぐ目の前にまで迫る。


ねずみ男「まなちゃん!」


さすがのねずみ男も、彼女を助けに行こうとした。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:31:44.63 ID:QsocQsYy0
怪物『!?』


しかしその時、風を切る音共に二つの下駄が
まなとノスフェルの間に割って入るかのように横切り、怪物は足を止める。
その隙を突くかのように、黄色と黒のちゃんちゃんこを
片腕に巻いた茶髪の少年が、その腕で横から怪物を殴り飛ばした。


『ゲゲゲの鬼太郎』の登場だ。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:33:28.93 ID:QsocQsYy0
まな「鬼太郎!」


親友の一人でもある妖怪の登場に、まなは一気に安心感を抱いた。

一方の鬼太郎も、戻ってきたリモコン下駄を両足に履き戻すと
「大丈夫か?まな」とまなに歩み寄った。


まな「私は平気。ちょっと危なかったけど……」

ねずみ男「鬼太郎〜!来てくれると信じてたぜ〜」

鬼太郎「ねずみ男」

ねこ娘「…てことは、やっぱりアンタが一枚かんでたって訳?」


そして同行していたらしい、鬼太郎の仲間にして幼馴染の『ねこ娘』が、
両腕を組みながら、怖い顔でねずみ男を睨んだ。


ねずみ男「ご、誤解だ!俺も被害者なんだよ!」

まな「ねこ姉さん」

「二人とも、やっぱり例の連続殺人事件の事調べてたんだね」

鬼太郎「あぁ。ねこ娘と一緒に、事件の犯人の手掛かりを捜していたんだ」

ねこ娘「そしたら、なんかこっちの方が騒がしかったから、すぐに駆け付けたのよ」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:36:27.69 ID:QsocQsYy0
怪物『グルルルル…!』


ねこ娘がこの場に来た経緯を説明する中、
怪物が唸り声を上げながら立ち上がり、鬼太郎とねこ娘を睨む。


ねずみ男「お、おい…アイツ怒ってるぞ!」

鬼太郎「父さん、あの怪物は?」

目玉おやじ「わしにも分からん。少なくともアレは妖怪ではないぞ」


鬼太郎の髪の中から現れた彼の父親である『目玉おやじ』はそう言った。

その言葉にまなは驚く。


まな「え!?アレ妖怪じゃないの?」

鬼太郎「そうみたいだ。今まで一度も、妖怪アンテナで妖気を拾う事ができなかった」

ねこ娘「かといって、人里に迷い込んだ野生動物でもなさそうよ」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:37:37.39 ID:QsocQsYy0
怪物『ギャオォォ―――!!!!』


咆哮を上げながら、怪物は鬼太郎とねこ娘に向かってきた。


鬼太郎「来るぞ!」

ねこ娘「ねずみ男、まなを頼むわよ」

「ただし、何かしたら八つ裂きだからね!」

ねずみ男「へいへい、分かりましたよっと」


ねずみ男にまなを預けると、鬼太郎とねこ娘のコンビも怪物に向かって走る。

すると怪物も、自分も臨戦態勢である事をアピールするかの如く、
ジャキンと両手の指を広げて、爪を強調して見せた。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:39:35.65 ID:QsocQsYy0
ねこ娘「ネズミの化け物の癖して、爪で勝負ってわけ?」

「受けて立つわよ!」


ねこ娘は化け猫顔になって、
両手の爪を伸ばすと、鬼太郎を追い抜いて真っ先に怪物を引っかきに掛かる。

当の怪物も爪で応戦。

猫妖怪とネズミのような怪物の鋭い爪対決が展開される。

やはりというか、怪物の方が爪の一撃はかなり重く、ねこ娘は若干押され気味であった。


ねこ娘「ネズミの割にはやるじゃない。けど……」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:40:32.09 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「髪の毛針!」


ねこ娘と怪物が戦っている隙に、鬼太郎は遠くから針と化した髪の毛を発射する。

だが、怪物はすかさず飛び上がって回避。

そのまま空中で体を丸めると、縦回転しながら鬼太郎目掛けて急降下し、
その勢いに任せて尻尾を叩きつけようとする。

鬼太郎もすぐさま反応して空中にジャンプしてかわしたが、
その代わりに尻尾を叩きつけられた地面が砕けてしまった。


目玉おやじ「気を付けろ。こやつ、結構な力があるようじゃぞ」

鬼太郎「そのようですね。…うわ!?」


目玉おやじに忠告されたその直後、
鬼太郎は何かに足を引っ張られて地面に叩き付けられ
その拍子に頭に乗った目玉おやじが落とされる。

見れば、怪物が口から黒い舌を伸ばし、鬼太郎の右足を捕らえていた。


鬼太郎「こんな事も出来るのか…!」


驚きつつ、ちゃんちゃんこに手を伸ばそうとする鬼太郎。
だが、鬼太郎に足に巻き付いた、怪物の舌の先が
なんと細かく分かれて、触手のように絡みつき、鬼太郎の左足以外の全身を覆ってしまう。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:41:15.51 ID:QsocQsYy0
鬼太郎「く…!体内電気…!」


鬼太郎は、すぐさま体内電気で反撃。

しばし耐える怪物だったが、次第に耐えられなくなって鬼太郎を開放する。

そして、舌を出したまま、鬼太郎を睨みつけたが、
その隙にと言わんばかりに「ニャァ―――!!」という鳴き声と共に
走ってきたねこ娘の爪で、舌を切り落とされた。


怪物『グギャアァ――!』


舌を切断され、悲鳴を上げる怪物。

すかさず鬼太郎は、ちゃんちゃんこで包んだ腕を構えながら怪物に向かう。

それに気付いた怪物は、すぐに左手の爪を広げて引っ掻こうとしたが……
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:41:46.63 ID:QsocQsYy0

鬼太郎「霊毛……」


「ちゃんちゃんこぉッ!!」

26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:42:50.14 ID:QsocQsYy0
鬼太郎のちゃんちゃんこパンチで爪を打ち砕かれ、逆に怯まされる。

そして、間髪入れんと言わんばかりに
鬼太郎は、即座にちゃんちゃんこを着直すと右手を銃のように構え
人差し指の先に妖気を集中させる。


鬼太郎「指鉄砲!」


そして鬼太郎は、指先に集中させた妖気を一気に解き放つ。
放たれた妖気は、光線のように一直線に飛ぶと、怪物の胸を貫いた。


怪物『ギャギイ―――!!!』


指鉄砲の直撃を胸に受けた怪物は、後ろに向かって吹っ飛んだのち、爆発して木っ端微塵になった。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:44:03.52 ID:QsocQsYy0
まな「やったー!」


怪物が倒されるのを見て喜ぶまな。

一緒にいたねずみ男も
「いや〜!さすがは俺様の大親友!絶対やってくれるって信じてたぜ〜!」
と言いながら、馴れ馴れしく鬼太郎に近寄ったが、ねこ娘にヒゲを引っ張られてしまう。


ねずみ男「イテテテテテ!な、何すんだよ!」

ねこ娘「すっとぼけるんじゃないわよ!」

「アンタ、あの怪物とどういう関係?」

ねずみ男「な、何だよ!ネズミみてぇな姿してたからって疑ってんのか?」

「さっきも言ったけど、俺も被害者なんだよぉ!」

鬼太郎「じゃあ、何であの怪物に追われていたんだ?」

ねずみ男「それがよ……」


ヒゲを解放してもらいつつ、ねずみ男は怪物に追われていた経緯を語り出した。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:47:05.50 ID:QsocQsYy0
彼は、いつもの如く三人の借金取りに追われていたのだが
丁度その真っ最中に、先程の怪物が何処からともなく出現。

真ん中の一人を爪で引っ掻いて負傷させ、恐怖に震える彼を頭から食べてしまったのだという。
無論、その光景を目にして恐怖で腰を抜かしたもう二人も、漏れなく捕食されたのだが、
最後の一人は味が気に食わなかったのかは知らないが、頭から胸まで食べて止めてしまったのだという。


ねずみ男「で、俺も腰を抜かしてたらアイツに目ぇ付けられて……」

「逃げてる内に、まなちゃんとばったり出くわしちゃったって訳」

「これで分かっただろ?俺は関係ないって」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:48:19.23 ID:QsocQsYy0
まな「借金取りが、頭から食べられたって……」

ねこ娘「確か、死体が残っている人達って、みんな下半身から上がない事が多かったわね」

目玉おやじ「今の話から察するに、これまでの連続殺人事件の犯人は、今鬼太郎が倒した怪物で決まりじゃな」

まな「じゃあ、これで事件は解決したんだね?」

ねこ娘「そうね」

鬼太郎「妖怪じゃないからどうなる事かと思ったけど、問題なく倒せてよかった」

目玉おやじ「……………」



事件は解決したものと認識し、安堵する一同。

しかし、目玉おやじは浮かない表情で、粉々になった怪物の残骸に目(目玉しかないが)を向けていた。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:49:07.38 ID:QsocQsYy0

―深夜―

鬼太郎達も帰り、誰もいなくなった公園で、異変が起きていた。

鬼太郎に粉砕された爪の破片や、怪物の細かな肉片が、
ドロドロのスライム状に変化して一ヶ所に集まり出したのだ。


そして、その様子を不気味な老人が静かに見つめていたのであった。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:51:19.98 ID:QsocQsYy0
―翌日―


この日は土曜日で学校も休みだった為、まなは何の当てもなく外を歩いていた。


まな「暇だから家を出てきたのはいいけど、雅達は用事があって出れないって言うし……」

「今日もゲゲゲの森に遊びに行こっかな?」

「………あ」


その時、まなは市の図書館が目に入った。


まな「そう言えば最近、あんまり本読んでなかったな」

「それに、案外昨日の怪物の事とか載ってる本があったりして……」

「よーし、行ってみよう!」


という事で、まなは図書館で昨夜の怪物の正体を調べる事にするのであった。

そして早速、動物の図鑑などを読み漁る。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:55:05.10 ID:QsocQsYy0
???「…あれ?犬山さん?」


そこへ中性的な出で立ちをした、まなと同い年くらいの黒髪の少年がやって来た。

彼の名は『斎田 薫(さいだ かおる)』

まなと同じクラスの男子生徒の一人だ。


まな「斎田君!君も、本読みに来てたの?」

薫「うん。犬山さんも?」

まな「まあね」

薫「横、座っていいかな?」

まな「いいよ」


彼女の了承を得て、横の椅子に腰かける薫。

座るや否や、持ってきていた本を開く。

見たところ、動物の本であるようだ。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:56:34.94 ID:QsocQsYy0
まな「また動物の本?斎田君って本当に動物好きだよね」

薫「動物は、奥が深いからね。調べれば調べる程、ついついのめり込んじゃうんだ」

まな「あ、それ分かる!去年も、ハナムグリみたいな虫が、花粉を運んでくれてるおかげで…」

「植物が種を残すのを手助けしてるんだって、友達に教えてもらったし」

薫「ハナムグリだけじゃないよ」

「ハチやアブみたいな怒らせると危険な虫も、花粉を遠くに運んでいるんだ」

「でも、最近田舎の環境とかが変わって、そういった虫や生き物が減ってる悲しい現状もあるんだ……」

「メダカやタガメ、ゲンゴロウみたいな水棲生物も、昔は沢山いたのに、今じゃ絶滅危惧種だし……」

「イノシシも、山に食べ物が少なくなって、人里に降りてくる事も多くなったし……」

「生き物って、少しでも生息地の環境が変わっちゃうと…」

「いなくなったり人前に現れて事件を起こしちゃうから、共存するにしても距離感が大事なんだよね」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:57:17.88 ID:QsocQsYy0
まな「距離感か…」

「やっぱり、妖怪と付き合うのもそう言うの大事なのかしら?」

薫「…そう言えば、妖怪の友達いるんだって?」

まな「あれ、知ってるの?」

薫「桃山さんとかが話してるの聞いちゃって……」

まな「雅かぁ〜…なるほど」

薫「…………」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:58:00.44 ID:QsocQsYy0
薫「ねぇ、犬山さんは、その……妖怪の友達の事、どう思ってる?」

まな「? 好きだけど」

薫「好きって…友達として?」

まな「ちょっと、変なこと聞かないでよ」

「さっき自分で、妖怪の友達って言ってたじゃん」

薫「あ…う、うん……そうだね。ごめん………」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 15:59:30.09 ID:QsocQsYy0
そう言って薫ははぐらかした。

何故彼は、こんな事を聞いたのか?

答えは簡単。

この斎田 薫と言う少年、目の前の犬山まなに恋をしているのだ。

きっかけは、三ヶ月ほど前の事である。

薫は、とあるグッズを買おうとしていたが、
目当てのグッズを前にして、どうにも踏ん切りがつかなかった。

そのグッズと言うのは『ガンバレクイナちゃん』というキャラクターのキーホルダーであった。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:00:04.58 ID:QsocQsYy0
ガンバレクイナちゃんと言うのは、動物を取り扱ったとあるウーチューバーが
絶滅危惧種の保護を応援する為に作った、マスコットキャラクターであり
ヤンバルクイナをチアガールの格好をした美少女に擬人化したものである。

何故ヤンバルクイナなのかと言うと、
このキャラクターを作ったウーチューバーが沖縄出身で、
ヤンバルクイナが大好きだかららしい。

薫はこのマスコットキャラが大好きで、キーホルダーの商品化も望んでいた。
そして、今目の前に望みの物があるわけなのだが
如何せん萌えキャラにしか見えないデザインであった為に、
いざ目の前にすると『欲しいが男性の自分が買っていいのか?』
というジレンマに陥ってしまい、中々購入に踏み切れなかった。

そんな彼の元に、彼女が……犬山まなが現れた。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:02:46.90 ID:QsocQsYy0
まな「あ!斎田君」

薫「犬山さん?どうしたの、こんな所で?買い物?」

まな「そうだよ。そういう斎田君も、お買い物?」

薫「え…?いや……」


答え辛い様子の薫であったが
まなは、彼の見ていた先に目を向けると、
先の、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーが目に入る。


まな「あ!コレ、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーじゃん!可愛いね!」

薫「う、うん……」

まな「斎田君、こう言うの好きだよね?」

薫「え…?」


突拍子もない問いに、薫は驚くもまなはお構いなしに
「だって斎田君、動物好きじゃん」と返した。


薫「そうだけど……」

まな「じゃあ、コレ買いに来たんだね?」

薫「え?あ、ま…まぁ、そんなところ……」

まな「丁度よかった〜。私も買おうと思って来たの。ね、一緒に買おう?」

薫「え?う、うん……」


どうやら、彼女も目的は同じだったようで、
薫は場の流れに流されるがまま、まなと一緒に
ようやくガンバレクイナちゃんのキーホルダーを購入した。

結果的に、彼女のおかげで目当ての品を買う事が出来たのである。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:03:56.66 ID:QsocQsYy0
薫(か、買っちゃった……)

(いや、むしろ喜ぶべき……だよね?)


薫が心の中で呟いている一方でまなは、
早速キーホルダーを出して、「可愛い〜」と言いながら眺めている。

それを見て彼は、まなが当たり前のように、
自分と一緒にガンバレクイナちゃんのキーホルダーを買おうと言い出した事に疑問を抱いた。


薫「…ねえ、犬山さん」

まな「ん?なに」

薫「どうして、僕なんかと一緒に、このキーホルダー買おうって言ったの?」

まな「え?」

薫「いや、だって…このガンバレクイナちゃん、どっちかと言うと女の子が好きそうなデザインのキャラじゃない」

「男の僕が買おうとするの、何か変だとか思ったりしなかったの?」


素直に疑問をぶつける薫。

その疑問に対するまなの答えは、彼にとって実に意外なものであった。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:05:39.27 ID:QsocQsYy0
まな「思わなかったけど」

薫「え…?」

まな「何かが好きなのに、男も女も関係ないじゃない」

「実際蒼馬だって、ああ見えて、このガンバルクイナちゃんに凄いデレデレなのよ?知ってる」

薫「アイツが?マジかそれ!」

まな「マジよマジ!弟の大翔だって同じなんだから」

薫「何それ……ちょっとおもろいんだけど!」

まな「でしょ?けど、言っちゃダメよ。一応クラスのみんなには、内緒って事にしてるから」

薫「一応?それって、知ってる人結構いる奴じゃん!」

まな「そうよ。少なくとも、私含める女子は全員知ってるよ」

薫「はは!やっぱりか……」

「ちょっと、アイツの見る目変わっちゃったなぁ」



まな「……」


「………へぇー」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:08:59.11 ID:QsocQsYy0
薫「…え?なに?」

まな「いやぁ〜『斎田君も、そういう喋り方できるんだな〜』って思ってね」

薫「あ……」


蒼馬の話題に乗っかっている内に、無意識に地が出ていた事に薫は初めて気づいた。


薫「ごめん……イメージ崩しちゃった?」

まな「ううん!全然そんな事ない。むしろ、安心しちゃった」

薫「安心した?」

まな「だって君ってさ、動物の話題が出るとき以外、大人し過ぎて他の男子と違うのかなって思ってたから」

薫「僕って、そんな風に思われてたんだ…」

「ごめんね、心配かけちゃって……」

まな「謝らなくてもいいよ。深刻に考えてたわけじゃないし」

「それに、他の男子と違うとか言っといてこんなこと言うの変かもしれないけど…」

「斎田君は他の男子と違って悪ふざけしないし、真面目に勉強やってるし」

「動物とか大好きで、すっごく優しいじゃない」

「私、君のそういうとこ、好きだったりするんだよ?」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:10:29.96 ID:QsocQsYy0
薫「え!?」


初めてだった。

同じクラスの女子生徒と、話しをした事はない訳ではない。

でも、それは他愛のない会話ばかりで
自分に対する話題も、評価も、出した事も出された事も一度もなかった。

自分の方も、あまり大して目立とうとしなかったから当然だ

しかし、他人に……それも同級生の女子から、
ここまで素直に評価されるとは思ってもみなかった。


そしてこの瞬間、薫は胸が高鳴ると同時に、心臓を矢で射られるような衝撃も感じた。

それが、彼女に……まなに、惚れてしまったと気付くのに、そう時間は掛からなかった。

だが後日、まなは誰でも分け隔てなく接する人物であり、
そのせいで自分に対する恋心には、凄まじく鈍感な人物であった事を思い知らされた。
おまけに、薫自身がシャイな事もあって、中々進展しない。

さすがに辛抱溜まらず、勇気を出して比較的仲のいい男子に相談してみたが……
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:11:07.58 ID:QsocQsYy0
『鈍ちんで態度がデカイ彼女は止めた方がいい』


と、皆口々にまなを恋するのに反対した。

特に必要以上に反対してきたのは蒼馬であり、
薫はどうしてそこまで反対するのかと尋ねても
彼は適当にはぐらかすばかりで、答えなかった。

そしてしまいには、『まなを恋する変人男子』と言われ、いじられまくる始末だ。

ちなみに、女子にはこっそりバラされるのを恐れ、誰にも話していない。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:18:41.11 ID:QsocQsYy0
そして、現在―――

薫は、男子たちにどう言われても、まなの事を諦めずに好意を向け続けていたのだ。

相変わらず、まなは自分に対する好意に気付かず、シャイな自分もまた一歩踏み出せず進展なしだが……

薫は、横で図鑑に目を通すまなの横顔を見る。


薫(…こんなに優しくて可愛い人を諦めるなんて、やっぱり出来ない)


反対する男子たちの姿を思い出しながら
ガンバレクイナちゃんのキーホルダーを取り出し、それを眺めていた。

まなを恋するきっかけを作ったこのグッズを、彼は御守りの様に肌身離さず持っていたのだ。


まな「あれ?それ、この前いっしょに買った、ガンバレクイナちゃんのキーホルダーじゃない」


ぼうっとキーホルダーを見つめている事に気付いたのだろう、まなが声を掛けてくる。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:20:14.35 ID:QsocQsYy0
薫「そ、そうだけど」

まな「大事に持ってたんだね?」

薫「うん。あれからずっとね……」

まな「よかった。大事にしてて……」


「とか言って、私はいつも家においてたりするんだけどね」
と、舌をペロッと出した表情と共に、罰の悪そうに付け加えた。

その際のまなの表情に、薫は改めて胸がときめいた。


薫(やっぱり、諦められないなぁ……)


改めて、自分はまなの魅力から逃れられなくなっている事を
実感する薫だが、当のまなはそんな事など全く気が付いていない。





そして、そんな二人を、窓の外から見詰める不気味な視線があった。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:24:09.36 ID:QsocQsYy0

老人「……………」


そして、同じ場所には昨晩の不気味な老人の姿もある。

老人は何かを確認すると、その場を歩き去ったのだが
不思議な事に日陰に差し掛かると溶け込むように、忽然と姿を消してしまうのだった。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/04/08(水) 16:25:52.31 ID:QsocQsYy0
―ゲゲゲの森 ゲゲゲハウス前―

鬼太郎は、自宅に続く桟橋前にある妖怪ポストをチェックしていた。

肝心のポストの中は、空っぽであった。


鬼太郎「依頼の手紙はなしか……」

「今日はゆっくり休めそうですね、父さん」

目玉おやじ「…………」

鬼太郎「どうしました?」

目玉おやじ「ん?あ、いや……ちょっと考え事をな………」

鬼太郎「…………」


どうも浮かない様子の父親が気になった鬼太郎は
「とりあえず、お風呂にでも入りますか?」と聞くと、
目玉おやじは、「あぁ、ひとっ風呂浴びて、ゆっくり考えるとするわい」と返した。

こうして普段通りに家に戻った鬼太郎だったのだが……
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