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【鬼滅の刃】しのぶ「バレンタインデー」
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7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 06:59:21.65 ID:ViqLDuZYO
「冨岡くんが?」
「えぇ、この間だって始業式でネクタイがぐちゃぐちゃだったのよ?私が見つけて直したから良かったようなものの、あのまま式に出てたら教師失格よ」
「ドジっ子…」
確かに冨岡さんは顔はいい。だけど、それを台無しにするぐらいの残念さを持ち合わせている。カナヲが言うようにドジっ子と呼ばれて許される年齢はとうに過ぎているのに。
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:00:00.26 ID:ViqLDuZYO
「あらあら、あれ直したのしのぶだったのね」
「姉さん気付いてたの?」
だったら直してあげればいいのに。
「でも本当、あの人どうするのかしら?」
「どうする…って?」
「だって頼みの綱のお姉さんも結婚してるのよ?今はまだ私がたまに行って料理の作り置きとか、部屋の掃除してるからいいけど、放っておいたら死んじゃうわよ?」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:00:35.16 ID:ViqLDuZYO
幼馴染みのよしみで、たまに様子を見に行くけれど、彼の部屋はそれはもうひどい有様だった。散らかっているというよりは物がない。本当に何もない。同じジャージが三着だけかかったラック、洗濯機、布団しかない部屋を見た時には唖然とした。
冷蔵庫もなかった。一体食事をどうしているのかと聞くと。コンビニで済ませるそうだ。その日のうちに彼のお姉さん…蔦子さんに連絡し、三人で家電を買い揃えたことは忘れられない。蔦子さんにはこちらが申し訳なくなるほどの謝罪とお礼を言われた。どうしてこんなにしっかりした人の弟がこんなことになるんでしょう。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:01:23.37 ID:ViqLDuZYO
「姉さん、冨岡先生の家に行ってるの?」
「あら?カナヲは知らなかった?」
「だってあの人!本当に生活力ゼロなのよ!?」
せっかく家電を買い揃えても、彼自身はそれを使わない。というよりは使えない。だからたまに私が行って料理の作り置きをしたり、部屋の掃除をしたりする。
流石に申し訳なく感じるのか、何かすることはないかとちょこちょこと子犬のように付き纏うので、「それなら洗濯をお願いします」と唯一できる洗濯をさせるのだ。
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:02:09.32 ID:ViqLDuZYO
「本当…あんなんじゃ誰もお嫁さんに来てくれないわよ…」
しょうがないからたまになら、彼の好きな鮭大根でもお裾分けしに行ってあげようか。そんなことを考えていた私に姉さんが爆弾を落とした。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:02:41.30 ID:ViqLDuZYO
「あら?冨岡くんはモテるわよ?」
「は?」
何の冗談でしょう。姉さんらしくない。
「冨岡先生は…多分、学園の中でもベスト3には入る人気だよ?」
あのカナヲまで冗談を!?信じられない。
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:03:18.19 ID:ViqLDuZYO
「な、何の冗談?冨岡さんがモテるわけないでしょ!?」
何故か私は叫んでいた。どうしてこんな面白くもない冗談に動揺しているんだろう。
「だって顔はいいし…」
「顔はね!?顔は!」
「声もかっこいいわねえ」
「声って…でもそれだけでしょ!?ふたを開ければただのドジっ子よ!?それにどれだけ体罰してると思ってるの!?」
私がどうしても信じられないのは彼の普段の指導を見ている学園の女子から人気だという点だ。PTAにも何度も注意をされている。いつもいつも、クビにならないか心配するこちらの身にもなってほしい。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:03:47.10 ID:ViqLDuZYO
「そういうところも、人気なんだって」
「は?」
カナヲは何も悪くないのに、ついつい語気が荒くなる。
「『放っておけない』とか、『捨てられた子犬みたい』『私がなんとかしないと…』ってよく言われてる…」
「そんな…嘘よ!」
「嘘って…しのぶは冨岡くんがモテてたら嫌なの?」
「いや…そういうわけじゃ…」
我ながらよくわからない。けれど、冨岡さんがモテるという話もニワカには信じがたい。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:04:17.84 ID:ViqLDuZYO
「ひょっとして…冨岡くんのこと好きなの!?」
「はぁ!?」
姉さんがキャーっと嬉しそうに叫ぶ。可愛い。いや、可愛いけれど!?
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:05:00.35 ID:ViqLDuZYO
「ち、違うわよ!そんなんじゃ…」
「じゃあどうして冨岡くんのネクタイを直すの?」
「そ、そんなの…怒られたらかわいそうじゃない…」
「部屋に行ってまで世話をするのは?」
「そんなの、私がなんとかしないと死んじゃうわよ!?」
「…姉さん、今まで他の誰にもチョコ渡したことないのに、冨岡先生には毎年渡してる…」
「それは…だって…も、もらえないだろうから…」
「それなら、今年はその心配はないわ♪作らなくても大丈夫よ」
「っ…」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:05:30.99 ID:ViqLDuZYO
どうするべきか急にわからなくなった。私が冨岡さんのことを好き?そんなわけない。そんなわけ…。
姉さんが「少しイジワルしすぎたかしら」と小声で言いながら、おやすみと言って自分の部屋に戻っていく。私はとても眠れそうにない。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:05:58.18 ID:ViqLDuZYO
おかげで今日は寝不足だ。バレンタインは次の月曜日。土日で準備するためには今日決めなければならない。いっそ辞めてしまおうか…。いや、今まで毎年あげていたのに急に辞めてしまったら、それはそれで私が冨岡さんのことが好きで、意識しすぎているように見えないだろうか。
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:06:37.95 ID:ViqLDuZYO
「うーん…」
「どうしたんですか?しのぶ先輩」
「…ん、あぁ、ごめんなさい。何でもないのよ」
後輩のアオイに声をかけられる。寝不足だから仕方ない。断じて冨岡さんのことで悩んでなんかいない。
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:07:04.95 ID:ViqLDuZYO
「今日の放課後、お店に寄ってもいいですか?」
「えぇ、いいけれど、どこに?」
「ちょっとチョコレートを買いに」
ほら、バレンタインですし。と続けるアオイ。この子も誰かに本命チョコを贈るのだろうか…具体的には、野性的なあの人に…。
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:07:34.60 ID:ViqLDuZYO
「伊之助くんですか?」
「ぎ、義理チョコですよ!義理チョコ!」
義理チョコ?そうよ、義理チョコってはっきりわかればいいんじゃない!
今まで、冨岡さん一人に渡していたから本命だと誤解されるたのよ!それなら、本命のチョコは別に用意して、冨岡さんには義理だとわかるチョコをあげればいいんだわ!
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:08:03.18 ID:ViqLDuZYO
「ありがとうアオイ!早速お店に行きましょう!」
「え?お店に行くのは放課後ですよ!?」
逸る気持ちが口に出てしまった。
「一体何のお礼なんですか?」
と聞いてくるアオイに
「秘密です」
と微笑んだのは照れ隠し。
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:08:30.92 ID:ViqLDuZYO
「…という作戦を思いついたのよ!」
「…へぇ」
家に帰って、私はカナヲに作戦の詳細を説明した。カナヲはいつも私と一緒にチョコを作る。本当なら姉さんも職場に配るチョコを一緒に作っていたんだけど、今回は私が無理やり外に追い出した。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:09:00.31 ID:ViqLDuZYO
「姉さんのことが嫌いになったの!?」
出ていってほしいと言った時、姉さんはこの世の終わりのような顔をしていた。
「そんな…そんな…しのぶが…反抗期…」
「そういうのじゃないから!」
虚な表情で、何なら少し泣いていた。正直心が痛んだけれど、この作戦は姉さんがいたら成立しないのでしょうがない。
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:09:48.17 ID:ViqLDuZYO
「流石に、冨岡さんの他に『本命』がいれば、周りも義理だと思うはずよ!」
「…そんなに渡したいの?」
カナヲが少し呆れたように聞いてくる。違うわよ。ちゃんと義理チョコを渡さないと今までの辻褄が合わないじゃない。
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:10:20.42 ID:ViqLDuZYO
「けど、その作戦なら『本命』を渡す相手が必要なんじゃ…」
「そう!そうなのよ!流石!カナヲは賢いわね!」
この作戦の肝と言ってもいい。冨岡さん以外の『本命』だ。適当に見繕ってもよかったのかもしれないが、それでは私の態度でバレてしまう可能性がある。それなら、本当に大好きな相手にあげなくてはいけない…
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:10:50.16 ID:ViqLDuZYO
「誰にあげるの?」
「姉さんよ!」
「…」
カナヲがびっくりしている。驚きのあまり声も出ないみたい。可愛いわね。流石私の自慢の妹だわ。
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:11:32.83 ID:ViqLDuZYO
「姉さんなら、美人だし、可愛いし、何より私が大好きだから!誰からも疑われないわ!」
流石に渡す相手、それも本命の相手に見られながらチョコを作るだなんて意味がわからない。だから今年は姉さんに席を外してもらったのだ。
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:12:08.40 ID:ViqLDuZYO
「あの…姉さん…」
「あぁ、違うのよ!カナヲが好きじゃないってことじゃないの!もちろん大好きよ!でも、カナヲには炭治郎くんがいるじゃない?私が割って入るとややこしいでしょう?」
私は妹の幸せを心から願っているのだ。けれど、どうしてだろう。カナヲからは諦めの目線を感じる。
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:12:37.18 ID:ViqLDuZYO
「…まぁ、姉さんがそれで納得するなら…」
「ふふん♪姉さんにはとびっきりのガトーショコラを作るわ!」
今日悲しませてしまった分も、いっぱい喜んでもらわないとね。
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:13:03.67 ID:ViqLDuZYO
「それで?冨岡先生にはどんなチョコを?」
「あぁ、冨岡さんには義理チョコを贈るわ」
「うん、だから、どんな義理チョコを…」
「どんなって『義理』って書くのよ」
「は?」
カナヲがそんな顔をするのもわかる。けど、冨岡さんにはひらがなやかたかなで『ぎり』『ギリ』と書いていても通じない。大方「賞味期限が近いのか?」とか頓珍漢なことを言ってくるだけでしょう。だから、義理チョコだと伝えるためには『義理』と漢字で書かなければ義理チョコなのだとは通じないの。カナヲが絶望したような顔をしている。まるで何かに怯えているようね。わかるわ、冨岡さんって信じられないでしょう?
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:13:54.56 ID:ViqLDuZYO
「姉さん…私、どんなことになっても姉さんの味方だから…」
「カナヲ…」
なんていい子なんでしょう。流石私の自慢の妹ね!
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:14:23.89 ID:ViqLDuZYO
「大丈夫…大丈夫…しのぶ姉さんは大丈夫…」
作戦の成功をこんなに祈ってくれるなんて…なんだかうわ言のようにも聞こえるけれど、気のせいでしょう。
「おかしくなんてない…おかしくなんてなってない…」
チョコをかき混ぜる気迫が凄い。よほど炭治郎くんへの想いが強いのね。
私はというと、とある問題にぶち当たっていた。
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:14:51.32 ID:ViqLDuZYO
「…書けない」
そう、『義理』と書けないのだ。画数が多すぎる。
「そもそも、土台のチョコが小さいのね…」
そうしているうちにチョコはどんどん大きくなっていった。
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:15:30.42 ID:ViqLDuZYO
そして迎えたバレンタイン当日。
「しのぶーーー!大好きぃぃぃい!」
「はいはい…」
姉さんに本命チョコを渡す。ちゃんと本命だと伝えたし、カナヲにも「胡蝶しのぶの本命チョコは胡蝶カナエに渡した」と伝えるように頼んでいる。後は冨岡さんに義理チョコを渡すだけだ。
冨岡さんを探す。この時間ならばそろそろ昼ごはんを食べに屋上に行くはず。そのまま一緒にごはんを食べて流れで渡してしまおう。
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:16:30.03 ID:ViqLDuZYO
「…あっ、冨岡先…」
「冨岡先生!」
「あ、トミセン!」
「あ…」
先に声をかけられてしまった。本当に人気があったんですね。良かったじゃないですか。
「…」
なのにどうしてこんな気持ちになるんでしょう。
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:17:02.50 ID:ViqLDuZYO
「冨岡先生!受け取ってください!」
「いや、俺は…」
「トミセン!あたしのも!」
「いや、だから…」
ほら、嫌がってるじゃないですか…冨岡さんは言いたいことを言うのに時間がかかるんです。ゆっくり待ってあげないと…。
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:17:33.51 ID:ViqLDuZYO
「あ、じゃあ私も!」
「いつもお世話になってるしね!甘さ控えめのビターチョコだよ!」
「あ、う…」
冨岡さんは、意外と甘いのが好きなんですよ…それも言わせてあげてください…待ってあげたらちゃんと言えるんですから…。
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:18:03.54 ID:ViqLDuZYO
「あ、冨岡先生ー!」
「っ…」
もうその場にはいられなかった。気付いたら走り出していた。みっともないみっともないみっともないみっともないみっともないみっともない…なんですか、今の感情は…こんなの…こんなの『嫉妬』以外の何でもないじゃないですか…
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:18:36.78 ID:ViqLDuZYO
「私…冨岡さんのこと…好きだったんですね…」
乾いた笑いしか出てこない。姉にも言われていた。あんなに言われていたのに、あんなに長く一緒にいたのに、気付いたのは今更だなんて滑稽すぎる。
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:19:15.35 ID:ViqLDuZYO
「でも…無理ですよ…あの子たちに…勝てるわけ」
普段から、歳下のくせに生意気なことばかり言って、口を開けば憎まれ口、嫌味な言い方しかできないし、こんな時でさえ理由をつけて義理チョコしか用意できない私より、あの子たちの方がよっぽどストレートに感情をぶつけている。
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:19:46.88 ID:ViqLDuZYO
「ひっ…うっ…うぐっ…」
涙がこぼれ落ちてくる。自覚した恋がその瞬間にで失恋だとわかる。もっと素直になれば良かった。わかっていたはずだったのに。そんな想いが溢れてくる。みっともないみっともないみっともないみっともないみっともないみっともないみっともないみっともない…
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:20:17.89 ID:ViqLDuZYO
「胡蝶…」
「…どうしたんですか、冨岡先生」
最悪のタイミングで冨岡さんがやってきた。どうしてこの人はいつもいつもタイミングが悪いんでしょうか…
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:20:51.90 ID:ViqLDuZYO
「急に走っていくお前が見えた…泣いて…いるのか?」
「…さぁ、だとしても先生には関係ありませんよね」
この人にはデリカシーとか無いんでしょうね。いつもの調子で返す私も私ですけれど…
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:21:23.86 ID:ViqLDuZYO
「胡蝶…泣くな」
もっと気の利いたことは言えないんでしょうか。
「…俺はこう言う時に気の利いたことは言えない」
…私の心でも読んでますか?
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:21:54.85 ID:ViqLDuZYO
「だから…その…お前に泣かれると…どうすればいいかわからない…」
「っ…」
この人に他意はない。顔見知りが泣いていたから心配した。ただ単にそれだけ。本当にそれだけなんです。けど、それでも…私を追いかけてきてくれたことが、他の何をおいても私を心配してくれたことが、たまらなく嬉しいんです。
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:22:25.89 ID:ViqLDuZYO
「…冨岡さんのせいですよ」
「何!?」
こんなわかりきったからかいも本気で反応している。そう、こんなところも好きだったんです。
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:22:56.64 ID:ViqLDuZYO
「その…すまない…俺は…その…どうすればいい?」
「…それなら、これ…受け取ってください」
「これは?」
「ふふふ、『義理チョコ』ですよ」
今はまだ、『義理』ですけれど、いつか『本命』を渡しますから…だからそれまで待っていてくれますか?
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:23:24.26 ID:ViqLDuZYO
「あぁ…ありがとう」
あなたは多分気づいていないんでしょうね、だから…
「!?」
「ふふ…照れてますか?冨岡さん?」
そっと冨岡さんの唇に触れる。
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:23:56.24 ID:ViqLDuZYO
「…教師をからかうんじゃない」
「はいはい、すみませんでした。冨岡先生」
いつもの学校での距離に戻る。いつかちゃんと本命チョコをあげますから、それまでは…待っていてくださいね?
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:24:26.61 ID:ViqLDuZYO
その後…
「はい、炭治郎…これ…」
「ありがとう!カナヲ!大切に食べるよ!」
「うん…ありがとう…」
「ところで、しのぶさんはうまく渡せたのかな?」
「うーん…どうかな…本人は『義理』って言ってるけど…というか、書いてたけど…」
「書いてる?」
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:25:05.38 ID:ViqLDuZYO
「うん、チョコに『義理』って書いてた」
「そうなのか、けど『義理』って書くのは難しくないのか?」
「うん、だからとっても大きいチョコになってた」
「そんな大きいチョコだと、逆に『本命』みたいだけど…」
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:25:38.99 ID:ViqLDuZYO
「おまけに、そんなに大きいチョコの型ってなると…ハートしかなくて…」
「…まさかハートで作ったのか?」
「うん…姉さん多分気付いてない…」
「『義理』ってチョコに書いてるんだよな…ってことは…」
「…うん」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2020/03/14(土) 07:26:10.75 ID:ViqLDuZYO
職員室にしのぶからのチョコ…事情を知らない人から見れば大きなハート型のチョコを持って帰った冨岡義勇が
「胡蝶からもらった」
と正直に答え、噂が広まったのは別のお話。
終わり
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/03/14(土) 10:13:18.90 ID:WvmWz1Z5o
おつおつ
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2020/03/14(土) 19:02:02.67 ID:f0DRy/VA0
ぎゆしの最高!!乙です!!!
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