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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」
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774 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:28:48.32 ID:1mbWFkSso
* 墓場島鎮守府 牢屋 *
クルー7「ひっく、ぐすっ……うえっ」
クルー1「……」
留提督「……」
クルー2「はぁ……参ったな……」
ガラガラガラ…
クルー2「ん……台車の音か? 誰だ?」
古鷹「おはようございます。朝餉をお持ちしました」
クルー2「あ、ああ……そういや、朝飯まだだったんだっけか」
古鷹「おにぎりとお味噌汁、それからお漬物です。あとでお茶もお持ちしますね」コト
クルー2「……いいよ。いろいろありすぎて、とても飯なんて食える気分じゃない」
古鷹「……差し出がましいようですが、こういうときこそ、しっかり食べてください」
古鷹「あなたがたはまだ生きています。まだ、今日を生きられることができます」
クルー2「……そりゃあ、そうかもしれないが、多分、これで俺たちの仕事は駄目になった。稼ぎが消えたんだ」
クルー2「おまけに入った先が牢屋だ。これから俺たちはどうなるんだ? もう、俺たちゃ死んだも同然じゃないのか……」
775 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:30:03.37 ID:1mbWFkSso
古鷹「私たちの仕事は、あなたがたの命を深海棲艦から守ることです」
古鷹「ですから、あなたがたのこれからの人生に直接関われるわけではありません。ですが……」
古鷹「私は、こうやってお話しできた人たちが、出会った人たちが、みんな幸せになれればいいな、って、思ってます」ニコ
クルー2「……!」
古鷹「今を、不幸だ不幸だと嘆くのは、仕方のないことだと思います」
古鷹「提督や、あなたがたと話した皆さんから、あなたがたが何をしたか、何をしようとしてたかを聞きました」
古鷹「提督は厳しい方ですから、あなたがたがやったことに容赦しなかった結果がこうなったのだと思います」
古鷹「……ですが、それでも命を奪うようなことまではしませんでした」
クルー2「……」
古鷹「人の世界には、人の世界の決まりや法律がありますから、あなたがたが行った行為に対する処罰がこれから決まると思いますが」
古鷹「私は、それを乗り越えて立ち直って欲しいと思っています」
クルー2「……簡単に言うなよ……!」
古鷹「ええ、簡単ではないと思いますよ。でも、あなたは今、死にたいとは思っていないでしょう?」
クルー2「……」
古鷹「食べた方がいいと思います。どうやってこれから生きていくか考えるために」
クルー2「……」
776 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:31:18.68 ID:1mbWFkSso
クルー7「……なんだよ……なにが、どうやってこれから生きるか、だよ……」
クルー7「先輩、死んじまったんだぞ……仕事だって、続けられるかわかんねえ。俺は、これから何を目標にすりゃあいいんだ……」
古鷹「素敵な先輩だったんですね。では、あなたも、その先輩のいいところを、誰かに伝えていってはいかがでしょうか」
クルー7「ど、どういう意味だよ……」
古鷹「あなたがその先輩から受けた、嬉しかったこと。それを、他の誰かに同じようにしてあげるんです」
古鷹「私も、されて嬉しかったことは、同じように誰かにしてあげたいと思っています」
古鷹「ここで腐ってしまっては、その先輩の良かったところを、誰にも伝えられません。それは、悲しくありませんか?」
クルー7「う……!」
古鷹「どんな人にも、良いところと悪いところがあります。どうせなら、良いところをみんなに知ってもらいたいと思いませんか?」
クルー7「あ、ああ……!!」
古鷹「そして、良いところを知れば、応援してくれる人も現れます」
古鷹「人は誰だって過ちを犯すものです。自分の悪いところを反省し、見直して、改める……そして、自分の間違いとちゃんと向き合うこと」
古鷹「正直に言えば、あなたがたが襲った艦娘の皆さんが、あなたがたを許すかと言えば、それはわかりません」
古鷹「でも、素直な気持ちで自分の間違いを認め、省みることができれば……ほんの少しでも、変わるのではないでしょうか」
クルー7「ううっ……ぐす……」
777 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:32:33.58 ID:1mbWFkSso
古鷹「それに、短絡的にここで死んだことにするのも簡単かもしれませんが……」
古鷹「この島で亡くなった方たちの遺族のように、悲しむ人を増やすのもどうかと思います」
古鷹「生きて、お世話になった人たちや、悲しんでくれるであろう人たちを安心させてあげた方が、何倍もいいのではないでしょうか」
留提督「……父さん……」
クルー1「……妻と、娘に……」
古鷹「さっきも言いましたけど、私たちの仕事は、あなたがたの命を深海棲艦から守ることです」
古鷹「生きるのなら、これから、もっと良い人生にして欲しいな、って思います」
古鷹「それでこそ、私も、戦う意義が……命をかける理由があると、感じられますから」ニコッ
クルー2「……」
クルー1「う……」ジワッ
留提督「……あんた……いや、あなたの、名前は……?」
古鷹「私ですか? 古鷹と言います」
留提督「ふる……ま、待ってくれ、もしかして、加古の……」
古鷹「はい。加古は私の姉妹艦です」
留提督「……なんで……なんでだ!? 俺は、加古を沈めたかもしれなかった……いや、それくらいのことをしたんだぞ!」
留提督「なのに、なんで……」
778 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:33:33.43 ID:1mbWFkSso
古鷹「結果的に、加古が助かったからというのもありますが……」
古鷹「戦争に於いては、誰を憎んでも仕方ないと思うんです。それと、これもさっき言いましたけど……」
古鷹「私は、こうやってお話しできた人たちが、みんな幸せになれればいいな、って、思ってるだけなんです」ニコ
留提督「……」
古鷹「だから、この島で二人の方が亡くなられたのは本当に……残念で」ウツムキ
古鷹「だからこそ、これ以上、悲しくなるような事件が起きなければいいな、って思っているんです」
留提督「……」
古鷹「……ごめんなさい、話し込んじゃいましたね。朝餉、冷めないうちにお召し上がりください」ペコリ
留提督「あ……」
タタタッ…
留提督「……」
クルー2「……」
クルー1「……」
クルー7「……ぐすっ、ぐすっ」
クルー2「……飯、食いましょーよ……」
クルー1「……ああ」
留提督「……」
留提督「……しょっぱい」
クルー1「留さん……」
クルー2(あの人が泣いてるとこ、初めて見た……)
留提督「しょっぱいよ、このおにぎり……」ボロボロボロ
779 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:34:33.58 ID:1mbWFkSso
* 同時刻 *
* 墓場島鎮守府 埠頭 *
提督「あれ? お前……」
士官(←もと中佐の部下1)「……お前のおかげで散々な目に遭ったぞ、ちくしょうめ」
提督「散々? そうか? あれの下で働くよりはずっと快適だろ?」
士官「うるさい。中将に顔を覚えてもらうチャンスだったのに」
提督「お前の狙いはそっちか。大和を連れてったついでに、か?」
士官「ああそうだ。だが、あの大和、本営で噂になるほどの問題児らしいな?」
提督「らしいな。俺も詳しく聞いてねえが、少将相手にやらかしたとかいう話は聞いてる」
士官「はぁ!? そりゃやらかしすぎだろ!! 聞いてねえぞそんなの……無茶苦茶じゃねーか」
提督「今は大和のことはいいだろ。今やらかしたのはあいつらだ、とりあえず連れ帰ってもらえるんだろ?」
士官「ああ、呉に戻ったら呉の大将直々に審問するらしい。遠大佐は降格ののち、おそらく余所に転籍になるだろうがな」
提督「転籍、ねえ」
士官「海外の泊地に左遷されるはずだ。早い話が不始末だからな、この島に置いていこうかって話もあったくらいだ」
提督「あぁ!?」
士官「露骨に嫌そうな顔すんな。中佐が大将に頭下げてやめてくれって頼んだらしいから、その話はなくなったぞ」
提督「……ふーん」
780 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:35:48.40 ID:1mbWFkSso
士官「なんだその反応は。遠大佐たちが島に留まるのが嫌だったんじゃなかったのか?」
提督「留まられるのは当然嫌なんだが……中佐がやめろと言う話も、多分そうなるだろうと予測できてたからな」
士官「……どういう意味だ」
提督「俺が中佐にとって不都合なことをいろいろと知ってるせいで、俺と他人とを接触させたくねえんだよ」
士官「……だから、お前はこの島で隔離されてる、ってことか?」
提督「中佐の望みは俺がこの島で野垂れ死ぬことだ。ただ、下手に中将と関わりがあったせいで、俺を故意に死なせるのは難しい」
提督「だからあいつは、この島に放り込んで提督として着任した扱いにして、勝手に死んでくれるのを待ってんのさ」
士官「いったい何をしたんだお前は……」
提督「何もしてねえよ。あいつが勝手に俺を疎んでこの島に閉じ込めたのが悪い。ご丁寧に初期艦や大淀、明石の着任も妨害してやがったしな」
士官「はぁ!? それをどうやってここまで……」
提督「それこそいろいろあったんだよ。俺の素性くらい中佐の部下だったんなら知ってんだろ?」
士官「生憎と俺は何も聞いてない。そもそも俺は中佐の下じゃ3か月も働いてないんだぞ」
提督「ほーん……」
士官「本当は中将の下で働きたかったんだ。息子である中佐に認められれば、中将にもお近づきになれると思ってたんだが……お前のせいで台無しだ」
提督「そりゃあどうかねえ……それより、今は呉の大将と仕事できてんだろ? 好転してんじゃねえのか」
士官「残念ながらそれも今回だけだ。呉の重鎮にはこの島との関わりを異様に嫌がるお方もいるせいで、俺は今回限りの使い捨てだよ」
提督「そいつはまた面白くねえ話だな」ウヘェ
士官「ああ、まったくだ」ムスッ
781 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:37:18.66 ID:1mbWFkSso
提督「ところで、鹿島たちの艤装はどうした? この船、昨日あいつら乗せて来た船と違うよな?」
士官「そっちの船は、本営に回ってからこっちに来る手筈になってる。おそらく明日になるだろう、早くても今夜だな」
提督「なんだそりゃ?」
士官「遠大佐……というか留たちテレビ関係者の荷物を、本営の中佐に届けることになってるんだ」
提督「中佐に? じゃあ、お前もこの後あいつに会うのか?」
士官「いいや、さすがに中佐とはもう顔を合わせづらいからな。俺の仕事は、ここへ来て遠大佐たちの身柄を確保するのと引き渡しまでだ」
士官「あの船に乗って鹿島たちの艤装を持ってここに来るのは、別の『提督』だ」
提督「なんだそりゃ? 二度手間じゃねえか? 今の時点でこいつらがカメラ隠し持ってたらどうすんだ」
士官「それはそれで回収するさ。とにかくテレビ局の連中は、全部着替えさせて衣服も全部回収しろってお達しだからな」
提督「身ぐるみ剥げってか」
士官「中佐が、この島で撮影された内容を全部精査するって息巻いてるんだよ。放送可能なシーンを選んでテレビ局に返すんだと」
士官「だから今ある荷物はすぐさま全部回収するし、こっちにいる奴らが隠し持ってる荷物も全部回収する」
士官「二度手間だろうとなんだろうと、急いで全部持ってこい、というお達しなんだそうだ」
提督「……随分焦ってやがんな」
士官「まあ、仕方ないと言えば仕方ないんだよ」
782 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:39:03.18 ID:1mbWFkSso
士官「今や艦娘の存在は、過熱しすぎてて食傷気味になる程度にはブームになってる。あの二世タレント軍団はそれに乗っかりたかったんだろう」
士官「そんなご時世に、実は艦娘が轟沈してるだの、こんな島があるだの、そんな話が流れたらどうなるか想像してみろ」
提督「まあ、間違いなく面倒臭いことになるか……」
士官「そういうことだ。暫くはメディアを迎合していた海軍全体が、今じゃ引き締めにかかってるからな」
士官「特にこの島には外に出せない事情が多すぎるとか……俺も詳しく聞けなかったんだが」
提督「ふーん……だとすると、テレビ局というより、俗にいうパパラッチ連中には間違いなくこの島はスクープの種になると思うんだが」
士官「そうならないように大将が釘をさすらしいぞ? 緘口令も出るし、轟沈させるなってお達しも……」
提督「いやいや、そういう意味じゃねえよ、これからの話じゃない。昨日今日でこの島で起こったことの話だ」
提督「あいつらが今回撮影した動画とか、衛星通信とかで直接テレビ局に送ったりされてたら、その時点でアウトだろ?」
士官「んん……そういう話なら、今回はそこまで心配はいらないはずだな」
提督「そうなのか?」
士官「動画ってのは必然的にデータサイズがでかくなるからな。こんな離島から衛星通信使って送信したんじゃ、金と時間がかかりすぎる」
士官「こんな離島からスマホで転送できる動画の量なんてのもたかが知れてるし……」
士官「テレビで使いたい映像をリアルタイムで撮る気で来たんなら、できれば転送用の専用の通信機材と、それ用の電源がないと無理だな」
士官「連中が乗って来た船にバッテリーが入ってた鞄があったし、予備を持ち歩いてなけりゃあ撮影の継続もできなかっただろう」
提督「つうことは、情報は漏れてないと見ていいのか……?」
士官「希望的観測だが。送信履歴を遡ってみるが、多分、奴等のスマホから外には出てないはずだし、撮影用のカメラにも通信機能はなさそうだ」
783 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:41:21.37 ID:1mbWFkSso
士官「どのみち、こいつは没収して中佐に送って、中身が見られないことを確認することになるだろう」
士官「写真数枚なら送ってる可能性もあるが、普通に撮影機材一式を持ち込んでるし、ピンポイントでスマホで数枚だけ、ってのは考えにくい」
提督「このメモリーカード? だったか、こいつも全部ぶち割って水に浸したけど、これも持っていくのか?」
士官「ああ、これはこれで復元不可能だってことを確認するためにも、全部持っていく」
提督「そうか。連中が持ってきた缶ビールの空き缶とかはどうする」
士官「それはさすがにお前んとこで処分しろ」
提督「なんだ、つまらねえな」
士官「なんだじゃねえよ、ゴミ回収まで俺に押し付けんじゃねえ」
提督「留提督連中も同じゴミなんだから、いいじゃねえか」
士官「生ゴミだろ? 離島だからってゴミの分別サボんじゃねえ」
士官「とりあえずテレビ局の関係者8人と、遠提督を連れてきてくれ。あと6隻の艦娘もだ」
士官「ただ、艦娘の回収はこの船じゃ行わないぞ。留提督と遠大佐がやったことを事情聴取するだけだ」
提督「それなんだが、テレビ局関係者は2人ほど死体になったぞ。いわゆる土左衛門だ」
士官「っ!! そりゃ本当か?」
提督「ああ。お前の言う通りの生ゴミだ」
士官「マジかよ……ったく、頭が痛えな……」
提督「それから、遠大佐も狂ったから、秘書艦がいないと話になんねえかもしれねーぞ?」
士官「はああ!? どういう意味だそりゃああ!」
提督「見たほうが早えぞ」ハァ…
士官「……やっぱとんでもねえな、この島は……」
784 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/12/05(日) 22:42:49.47 ID:1mbWFkSso
短いですが、今回はここまで。
785 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/05(日) 22:48:40.97 ID:1mbWFkSso
おっと書き忘れ。
もと中佐の部下1だった士官は、1スレ目の中佐が島に来た騒動のときに出ています。
ついでに書くと、>690で上がっていた留提督の「昔の悪友」は、
2スレ目で出た黒潮の鎮守府にいた雪風たちを襲った一味の一人です。
786 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/06(月) 01:08:54.14 ID:+u52DCG0O
天使や……
天使がおる……!
787 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/12/06(月) 11:10:38.10 ID:X9ANNptu0
続き待ってます
788 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/07(火) 11:47:32.51 ID:JTJZu96IO
更新乙
789 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/12/12(日) 19:12:56.98 ID:1WQnYKmx0
更新お疲れ様です
790 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/14(火) 21:38:23.73 ID:Mn/jseA5O
保守
791 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/12/16(木) 14:03:40.80 ID:XjU6eKdg0
続きはまだか!まだかってんだよ!
792 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/12/16(木) 20:07:15.57 ID:mansuY1XO
投稿ペース落ちてるからなぁ まあ神作品だから期待されるってことで
793 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/12/16(木) 21:02:03.81 ID:mansuY1XO
y
794 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/16(木) 21:58:00.58 ID:3v6dqOqU0
sageしない人が増えているのでイッチに代わって申し上げます。
書き込む時は「名前」の下の「Email」の部分から「sage」を選んでか書き込みましょう。
795 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/16(木) 22:09:33.12 ID:QiK+J1qq0
故意的に上げる荒らしには言っても無駄じゃね?
796 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/12/17(金) 08:04:01.26 ID:+rrPeeGD0
令和にもなってsage自治おんの草生えるわ
797 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/17(金) 14:09:17.69 ID:XWBbmTvP0
>>798
令和とか関係ないしスレ主がsageお願いしますって言ってんだからsageするだろ
798 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/17(金) 14:10:26.78 ID:XWBbmTvP0
>>797
>>796
だわ
799 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/17(金) 20:36:30.06 ID:N/aFB/QY0
エタったスレに連投してまでお気持ち表明とか痛すぎる
800 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/19(日) 17:17:12.17 ID:J3rxEWemO
まだ来ない予感
801 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:37:37.80 ID:WmSDkBawo
下げた方が荒らしに巻き込まれづらいと言うのが
当時のセオリーだったと記憶していますが、今はどうなんでしょうね。
続きです。
802 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:39:02.61 ID:WmSDkBawo
* それからしばらくして *
* 埠頭 *
利根「……と、いうわけでの」
提督「鳥海がおかしくなったってか」アタマカカエ
暁「た、確かにショックよね……鳥海さん、遠大佐を信じてたみたいだし」
利根「とりあえず鳥海には、明石に鎮静剤を打ってもらって眠らせておる」
利根「ほかにも朧も立ち直っておらんし、大和も泣きながら如月に連れられて部屋に行くところを見た」
暁「大和さんが?」
提督「なんでそっちにまで飛び火してんだよ……」
利根「すまんが、そちらの二人もおぬしからフォローしてもらえまいか」
提督「いやまあ行くけどよ……あいつら、どんだけこの鎮守府引っ掻き回してくれてんだよ、くそが」
暁「……そういえば……ねえ、司令官?」
暁「さっき巡視船に乗り込んでいった留提督たち、落ち込んでいたっていうか……反省してたみたいな感じだったけど、司令官がなにかしたの?」
提督「うん? いや、俺はあいつらには砂浜で文句言っただけだぞ? むしろ、もうちょっと反抗的な目を向けられると思ってたが」
利根「ああ、それは古鷹のせいらしいぞ?」
提督「古鷹? あいつ、あいつらと話したのか?」
803 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:40:02.72 ID:WmSDkBawo
暁「どういうこと?」
利根「古鷹が朝餉を持って行って、優しい言葉をかけたそうだ。提督が砂浜で打ちのめした直後であろう? 効果覿面である」
提督「……ったく、あれほど念押ししたのに、結局なにか話したのかよ」
暁「いけなかったの?」
提督「今となっちゃあ、いいけどよ。これ以上俺たちがあいつらと接触することもねえだろうし、古鷹がなにか悪い影響受けてなきゃ、それでいい」
暁「ふーん……」
提督「古鷹にあいつらとの接触を控えろって指示してたのも、連中を下手にもてなして調子に乗らせないようにしたかったってのと……」
提督「あいつらが加古を轟沈させてるから、そもそも近づけさせたくなかったってのと」
提督「あとは、雷に関わってお人好しが悪化しないようにしたかった、って意図があったんだ」
暁「……その……ごめんなさい」
提督「そこは暁が謝るなよ。いくら姉妹艦だからって、今回来た雷とはほぼ関わってないだろ? 俺がいろいろ仕事を押し付けたせいでな」
暁「それって、私が雷を見てショックを受けないようにって気を使ってくれてたわけでしょ?」
提督「この鎮守府に古鷹が来たときのこと、覚えてるか? それこそやりすぎだったからな」
提督「あんまりな姿にショックを受けさせたくなくて接触を控えさせてたわけだが……」
暁「大丈夫だと思ってた最後の最後に、とんでもない爆弾を投げつけられた感じよね……」アタマオサエ
804 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:40:47.76 ID:WmSDkBawo
利根「ふむ……欲望というのは単純であればあるほど強くなるからな。遠大佐は余程、母性に飢えていたんだろうよ」
提督「母性、ねえ……ん?」
利根「む? あれは……千歳たちか?」
提督「なんだあいつら、もう戻って来たのか?」
(埠頭に寄港している巡視船から降りてくる千歳たち)
千歳「あら、准尉! わざわざ待っててくださったんですか?」
提督「ん……まあ、そんなところだ。事情聴取は終わったのか?」
千歳「ええ、思った以上にすんなり終わりましたよ。当時の状況はガンビアベイちゃんが理路整然と説明してくれましたし」
提督「理路……あの控えめな性格でか?」
ガンビアベイ「私の国は、訴訟大国ですから……」エヘヘ
提督「あー、なるほど。お国柄とはいえ、あんまり嬉しくねえ適性だな」
足柄「テレビ局の6人も、一部しぶしぶだけどやったことは認めてるし、遠大佐以外は早いうちに解放されてたわね」
暁「それで雷が帰ってきてないのね……」アタマカカエ
提督「……まあ、骨が折れるだろうな、あれは」
805 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:41:33.52 ID:WmSDkBawo
鹿島「その、なんと申し上げたら良いか……私たちの提督が申し訳ありません」
提督「いや、それで鹿島が謝るのはおかしいだろ。お前たちだって被害者なんだぞ」
暁「そうよ! それより鹿島さん、早くそのお顔、治療しに行きましょ?」
利根「うむ、ここに来た呉の関係者に見せるためとはいえ、その青あざをそのままにしておくのは、この鎮守府に所属する者として申し訳が立たん」
利根「いくら時間がたてば消えると言っても、怪我は早期治療が肝要じゃぞ」
鹿島「で、ですが……」
提督「その怪我は俺が連中を焚きつけた結果だ、鹿島が委縮する要素はどこにもない。俺が言うのもおこがましいが、治療を受けて行ってくれ」
鹿島「……」
山風「鹿島さん……!」
ガンビアベイ「鹿島……!」
鹿島「……わかりました」コク
提督「よし、利根、修理ドックまで案内を頼む」
利根「うむ、任されよ」
山風「私も、鹿島さんについてく……」
ガンビアベイ「Yes, 同行します」
ゾロゾロ…
806 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:42:33.00 ID:WmSDkBawo
提督「早期治療か……利根が言うと説得力が違うな」
暁「司令官、利根さんって確か……」
提督「ああ、一緒に風呂に入りたがらない理由がそれだよ」
暁「そうなんだ……」ウツムキ
提督「さてと、雷だけここに戻ってきてないが、そもそも戻ってくるのか?」
足柄「どうかしら……遠大佐のあのはっちゃけぶりだと、雷と離したら発狂するんじゃないかしら」
暁「そんなにひどいの……?」
足柄「遠大佐がはっちゃけたせいで、留提督の企みもわかったのが良かったのか悪かったのかなんだけど……」
千歳「留提督の目的は、単純に芸能界での力を得ることだそうです。海軍に所属して艦娘を率いたとなれば、それだけで知名度は段違い」
千歳「親の七光りなんて言われたくなくて、自分独自の……と言っても親のコネを使ってるわけだけど、独自の地位を築きたかったみたい」
提督「軍人系アイドルってか。斬新だな」
千歳「誰かの二番煎じを避けたかった、という意図があったのなら、まあまあいいところに目を付けたとは思うけど……」
千歳「初手で鳥海と加古を沈めましたからね。スタート地点がマイナスじゃ格好がつかないから、なんとかサルベージしようって話になって」
千歳「彼らか墓場島のことを知ったのは、それからみたいですね」
807 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:43:33.12 ID:WmSDkBawo
足柄「この島の話はあちこちで誇張されてるみたいなの」
足柄「やれ提督が艦娘を奴隷にしてるだの、囚われた艦娘が帰れなくて困ってるだの、どこまで本当かがわからないくらいよ?」
暁「もう……誰も見てもいないのに、どうしてそういう話になるのかしら」
提督「まあ、噂話なんてだいたいそんなもんだ」ハァ
千歳「それから、留提督は、轟沈した艦娘が深海棲艦になるかもしれないって話を知らなかったようです」
提督「本当かよ?」
千歳「意図的に情報が止められてたみたいで、ディレクターのクルー1さんしか知らなかったみたいですね」
足柄「6君と一緒に飲んでたときもその話になったけど、彼も知らなかったって言ってたわね」
足柄「連れて帰って何か起きたら誰が責任を取るんだ、って頭を抱えてたわ」
足柄「そういえば千歳も昨日言ってたわよね。あの人たち、やってしまえばこっちのもの的な考えがあるって」
提督「面倒が起きたら海軍に丸投げ、何も起きなきゃあいつの手柄、ってか?」
千歳「ええ。それに加えて、どさくさに紛れて准尉さんの功績も奪うつもりだったんじゃないかしら……」
提督「あいつらには手に余る話だと思うがな」
暁「……ねえ司令官? 私たちがこの島を出てもいいって判断するのは、本営の人たちになるの?」
提督「ん? ……多分、そうなるな。ぶっちゃけ俺は本営がそんなことはしないと思ってるが」
808 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:44:32.61 ID:WmSDkBawo
暁「えっと……一番長くいるのは如月と不知火よね? 次が吹雪と朧?」
提督「だな。ただ、不知火は本営の中将麾下だから、ちょっと都合が違うな」
千歳「え、ちょっと待って。本営中将って……」
提督「今言った通りだぞ。不知火は俺の部下じゃなくて、本営中将の部下なんだ」
提督「この島には憲兵も特別警察もいないだろ? 不知火にはその代わりにお目付け役をしてもらってる」
提督「だから今回の騒ぎも不知火には中将に直接報告してもらうつもりだ」
足柄「ちょっとぉ、一番最初にその話をしなさいよ。話してたらこの島に乗り込まれずに済んだんじゃないの?」
提督「さあ、どうだろうな? あまり中将に頼りたくないってのもあるが、それを伝えても強引に押し切られる前提で考えてたからな」
提督「あいつらが言って素直に聞く連中とは思えないし、この島にメディアが来たらこうなるぜ、って見せしめを作りたかったってのもあるしな」
足柄「見せしめって……」ヒキッ
提督「だからこそもうちょっと念入りにすり潰しておきたかったんだが……しょうがねえ、あとは中佐けしかけて追い打ちかけとくか」
千歳「そ、そこまでやる必要あります?」
提督「何度も言ってるが、俺が外の人間と関わりたくないんでな。二度と起き上がれない程度にやりすぎるくらいで丁度いい」
暁「……司令官。そういうの、ほどほどにしたほうがいいわよ?」ジト
提督「やめとけってか? しゃあねえな」カタスクメ
809 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:45:17.72 ID:WmSDkBawo
暁「やりすぎて余計な恨みを買わないほうがいいでしょ? もう」ヤレヤレ
足柄「な、なんかここの暁ちゃん、大人びすぎてない?」ヒソヒソ
千歳「そ、そうね……以前もこんな感じでびっくりしたけど」ヒソヒソ
暁「……それから、さっきの話の続きなんだけど。如月って、ここへ来て1年以上経ってるわよね?」
提督「ん? そうだな……1年半くらい経つか?」
暁「それまでずっと、司令官が様子を見てきたんでしょう? 普通の鎮守府に戻れる判断基準とか、決まってないの?」
提督「まったくないな。俺は俺でこのままでいいと思ってたし、向こうから働きかけてくることもなかった」
提督「とはいえ、放置し続けるのも問題か。俺たちが受け入れ続けるにも限界があるしなあ」
提督「持ち直した奴を戻してやるってのも、真面目に考えねえと駄目な時期にきたってことかねえ」
暁「司令官。そこで『面倒臭い』はなしよ?」
提督「なんでだよ。やることはやるから、そうぼやくくらいは許してくれよ。手続きにしろ調査にしろマジで面倒臭えんだからよぉ」ハァ…
提督「この島から送り出す先の相手を探すのも骨が折れるぞ? それなりに……いや、それなりじゃなく信頼できそうな安心できる相手を探さねえと」
足柄「心配しすぎじゃないの?」
提督「しすぎなもんかよ。送ってやった先が中佐や留提督みたいなくそ野郎だったりしたらどうすんだ」
810 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:46:02.94 ID:WmSDkBawo
暁「……司令官って、お父さんみたい」
提督「あぁ?」
暁「だって、そうでしょ? 司令官のお父さんはそうじゃなかったんだろうけど」
暁「お父さんっていうのは自分の子供を心配して、それが娘だったら『お前のような男に娘はやらん』みたいなことを言うんでしょ?」
提督「どっから仕入れてんだよ、そういう俗な知識……」
足柄「でも、よくあるシチュエーションよね。『お義父さん、娘さんを僕に下さい!』『貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いはない!』みたいな!」
提督「お前もそこで暁に変な知識吹き込むんじゃねえよ」
足柄「その反応がもう完璧に、娘を持つお父さんと同じじゃないの」
暁「ねー?」
提督「……」
千歳「お父さん、ねえ……」ウーン
千歳「ねえ、足柄? 留提督のお父さんって、どのくらい海軍に顔が利くのかしら」
足柄「へっ? どのくらい……って、民間人でしょ? そんなの、たかが知れてるんじゃないの?」
提督「いや、なんか、あいつの父親は有名人らしくて、海軍に金を出してるとか言ってやがったぞ?」
足柄「そうなの!?」
千歳「足柄……また聞いてなかったの?」ガックリ
足柄「えへへ……」
811 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:46:48.01 ID:WmSDkBawo
暁「留提督のやってることがすごく行き当たりばったりな気がするのも、そのせい?」
提督「かもなあ。金があるから好きにさせろ、って頭はあるかもしれねえな」
暁「うーん……だからって、鹿島さんを殴るなんて、やっぱりおかしいわ! やっていいことと悪いことの区別もつかないのかしら!」プンスカ
提督「それこそ区別つかなかったんだろうよ。あいつらの生きてる世界はまた特殊で、注目を集められる人間こそが正義ってところがある」
提督「芸能界なんて、いるだけで特別扱いされる世界だし、それこそここでも特別扱いしてもらえるって目算もあったんだろ」
提督「ただ、芸能人なら体裁を気にすると俺は思ってたんだ。色恋沙汰のスキャンダルくらいならありふれてるが、暴力はそうはいかねえ」
提督「だから煽ったんだが、そういうラインを平気で越えてくる輩だと見抜けなかったのは、俺の落ち度でしかねえよ」
暁「そういうのがテレビの世界なの? 幻滅しちゃうわ……」
提督「俺個人の色眼鏡がかなり強く入ってるから、全部が全部そういうわけじゃないだろうがな」
提督「暁はどうなんだ? お前、自分がテレビに映ったりしたら嬉しいか?」
暁「うーん……それはわかんないけど、どうせ映るなら、もっと立派なレディーになってからにしたいわ。今だとまだ子供に見られそうだし」
足柄「もう十分に大人びてると思うんだけど……」
千歳「どんな育ち方をしたらこんなに大人びた子になるのかしら……」
812 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:47:33.11 ID:WmSDkBawo
提督「そうだなあ、俺なんか目立ちたくも他人と関わりたくもないから撮影拒否してんだ。暁と比べたらくそガキもいいとこだぜ」ヘッ
暁「司令官はそうやって、自分を悪く言うのやめてよねって、みんな言ってるでしょ?」ジトッ
提督「へいへい、悪かったよ」
足柄「ちょっと准尉? 暁ちゃんの精神年齢、高すぎない?」
提督「それは別にいいだろ、暁はレディーになりたいって言ってんだから。俺たちが困るようなことあるか?」
提督「むしろ、そうありたいって望んでんのに、それを俺たちの感情で、見た目通り子供らしくしろって言うのこそ理不尽だろ」
足柄「そ、それもそうだけど……」
暁「大丈夫よ、暁はレディーなんだからそのくらい気にしてないわ。むしろ大人に見られて光栄だって思わなきゃ」
千歳「対応が大人過ぎるわ……」
暁「でしょ?」ニコ
千歳「笑顔が愛らしいだけにますますギャップが……ううん、こういう物言いこそ失礼な話ね。ごめんなさい」ペコリ
暁「ふふっ、いいのよ! 間違いは誰にだってあるんだから!」
提督「笑って済ませられる間違いならいいんだがなあ……なあ暁、応援を呼ぶからこの場を任せていいか?」
暁「?」
提督「そろそろ朧たちのフォローも入れてやらねえと、と思ってな」
813 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/19(日) 21:48:34.27 ID:WmSDkBawo
短いですが、今回はここまで。
814 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/19(日) 22:18:29.64 ID:geMy2V5wO
更新乙です
この文章力…見習わなければ
815 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/20(月) 19:16:23.98 ID:S+165CY/0
更新乙。一件落着だな?
816 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/12/21(火) 11:59:27.64 ID:YuhIkno/0
綺麗に片付いた感あるけど、こっから中佐来ちゃうんだよな......
817 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:50:08.43 ID:TSQ7cZ5Qo
まだまだいろいろ片付いてないんですよねえ、これが……。
続きです。
818 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:51:01.34 ID:TSQ7cZ5Qo
* 鎮守府正面入り口 *
物陰から提督を見ている榛名「……」コソッ
提督「……? 榛名はさっきから何やってんだ」
榛名「はっ!? 榛名の気配に気付いたのですか!?」
提督「気付くも何も、あれで隠れてたつもりか? めっちゃ物陰から体を乗り出してただろ」
榛名「そ、そうでしたか……」
提督「どうかしたのか? 話しづらいことでもあんのか?」
榛名「は、はい! その……提督は、あの、大丈夫ですか?」
提督「……端折りすぎだろ。それじゃ何が大丈夫なのかわかんねえよ。なんとなく言いたいことの察しはつくが」
榛名「も、ももも、申し訳ありません!」オタオタ
提督「まあ確かに、神経すり減らされる出来事ばっかりで、疲れたってのは正直あるな……この二日間でいろいろありすぎだ」ハァ
榛名「そ、それでしたら提督!」パァッ
榛名「榛名をお母さんだと思って甘えてくださっても」リョウテヒロゲテ
提督「そういう冗談はよせ」アタマツカミ
榛名「はう!? も、申し訳ありまあああひぃいいいい!?」メキメキッ
819 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:51:46.29 ID:TSQ7cZ5Qo
提督「お前、俺を心配して来たっぽいのに、逆効果なことやってどうするよ?」ハァ
榛名「はうぅ……も、申し訳ありません。ですが、提督も、両親と呼べるご家族がいなかったのを思い出しまして……」
提督「……」
榛名「榛名は心配なんです。提督は、いつもご自身より艦娘のことを案じておられます。いつも私たちを支えようと、気を張っておいでです」
榛名「提督はいつお休みになられているのか、気の休まるときがあるのか……」
榛名「提督が身を預けて休めるような、心の支えと呼ぶべき人が、提督にはおられませんので、榛名がその代わりになれればと……」シュン
提督「そんな顔すんな。むしろ、俺はお前らのために働いてる時の方が、俺はしっかりしていられる気がするんだ」
提督「お前ならわかるだろ? 俺もこうやって普通に接してくれる相手が妖精しかいなかったからな。それだけでもありがたいと思ってる」
榛名「……!」
提督「心配してくれたのに、悪かったな」ナデ
榛名「提督……!」ウルッ
提督「ところで、鳥海のことで金剛に相談したいことがあるんだが……」
榛名「そ、そうでした! 鳥海さんが大変なんです!」
提督「ああ、そいつを利根から聞いてな。それでちょっと頼まれてほしいことがあるんだが、頼んでいいか?」
820 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:52:31.28 ID:TSQ7cZ5Qo
* 鎮守府内 朧の部屋の前 *
提督「さてと……」
コンコン
提督「……」
扉<キィ…
潮「て、提督! 来てくれたんですね……!」
提督「おう。まだ朧は立ち直ってねえか」
潮「は、はい……」チャッ
提督「朧、入るぞ」
(ベッドの中の朧が枕に顔を突っ伏して布団をかぶりうずくまっている)
朧「」ズォォォ…
提督「……放ってる空気がくっそ重てえな。こんな朧は初めてだ」
潮「昨日からずっとこんな調子で……朧ちゃん、提督が来てくれたよ……!」
朧「……」ドヨーン
提督「なんつうか……朧も結構潔癖だったってことか?」
潮「そ、それは、わかりませんけど……」
821 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:53:16.20 ID:TSQ7cZ5Qo
提督「おい、朧」
朧「……」
提督「朧?」ツンツン
(ゆっくりとかぶっていた布団をまくって顔を出す朧)
朧「……」モソッ
提督「うお……お前、目の下のクマがすげえぞ。眠れてないのか?」
朧「……」ジトッ
提督「おい、おぼ……うお!?」ガシ グイッ
(朧が手を伸ばして提督の手を取り、そのまま提督を引き寄せる)
提督「お、おい、急に引っ張るな! 危ねえだろ……!」
朧「……」
提督「……本当にどうしたんだ?」
朧「……提督の……」
提督「?」
朧「提督の手は、どうしてこんなに安心するんですか……」ギュ
提督「朧……?」
822 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:54:01.19 ID:TSQ7cZ5Qo
朧「あの知らない人に触られたときは、すごく嫌な……気持ち悪い感じがしたのに……」
朧「提督に……提督の手に触れられてると落ち着くのは、なんでなんですか……」
提督「……」
朧「あのとき……提督に、頭をなでられたとき、すごく……嬉しくて」
朧「こうやって、提督の手を、頬にあてると……胸の奥が、ぽかぽかしてきて……」スリ
朧「離れたく、なくなる……」
提督「……」
提督(困ったな……潮はどこ行った?)キョロ
物陰に隠れた潮「……」ドキドキ
提督(いつの間にかいなくなりやがった……)タラリ
朧「提督」
提督「」ドキ
朧「もっと、こっちに来てください」ジッ
提督「あ、ああ」
朧「もっとです」グイ
(朧が座るベッドの端に、屈んだ提督の膝が付くくらいに近づける)
提督(……目が怖え)
823 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:54:46.23 ID:TSQ7cZ5Qo
朧「うふふ……えいっ」ダキツキ
提督「っ!? ……ったく、お前、本当に大丈夫かよ」
朧「駄目です」
提督「……」
朧「だから、もっと触ってください」
提督「触れって……こ、こうか?」ナデ
朧「ん……」ニヘラ
朧「アタシ、こっそりとですけど、いいなあ、って思ってたんです。金剛さんとか、大和さんとか」
朧「みんな、こうやって、提督にくっついて、なんの躊躇もなく、ぎゅって、できるじゃないですか」
朧「アタシはそういうタイプじゃないし……自分でも、違うなあ、って思ってたんです」
提督「……」
朧「でも、朧、気付いたんです。提督に頭をなでて貰えたの、嬉しくて」
朧「もっと、触って欲しいなあ、って」スリ
提督「……」
824 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:55:31.11 ID:TSQ7cZ5Qo
朧「だから、こっちも触ってください」グイ
提督「!? お、おい……!」
朧「知らない人に触られた場所も、触ってください……!」
提督「……俺にセクハラしろってか」
朧「アタシが望んでたら、ハラスメントとは言わないでしょ?」
提督「かもしれねえけどよ……」セキメン
朧「まだ、一回しか、触って貰えてないんだから、いいでしょう?」ジトッ
提督「一回? 俺の記憶なら、一回じゃねえな」
朧「……え?」
提督「お前が砂浜に流れてきたときも抱きかかえていったし……」
提督「N中佐だったか? あいつをお前が問い詰めた日の夜、お前が意識不明のまま出歩いて倒れてたの、覚えてねえだろ?」
提督「そのときもお前を背負って部屋に連れてったし……」
朧「……」
提督「まあ、そのときにも、もしかしたら尻を触ってたかもしれねえんだが……」
朧「……」
825 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:56:16.23 ID:TSQ7cZ5Qo
提督「……朧?」
朧「そう……ですか……」ニヘラ
朧「一回だけじゃ、ないんですね……」ギュ…
提督「……」
朧「……」
提督「おい……?」
朧「……」クテン
提督「! ……困ったな」キョロキョロ
潮「……?」チラッ
提督「ん? 潮、そんなとこにいたのか……!」テマネキ
潮「す、すいませ……」
提督「……」(←口元に人差し指を立てて静かに、と促す)
潮「? ど、どうしたんですか?」ヒソヒソ
826 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:57:01.15 ID:TSQ7cZ5Qo
提督「……」(←提督の懐にもたれかかった朧を指さし)
潮「朧ちゃん……?」コソッ
朧「……すー、すー……」
提督「寝ちまったんだ」ヒソッ
潮「……!」
提督「寝付いたばかりだからな。もう少ししたら横にして寝かせるよ」
潮「は、はい」
提督「……それにしても」
潮「はい?」
提督「その……なんだ。あいつらに触られたところを触ってほしいとか……わけわかんねえ。意味わかるか?」
潮「うーん……嫌な記憶を、いい記憶で上書きしてほしかった、とか……」
提督「俺が、いい記憶になるのか……? 逆効果だと思うんだが……」
潮「あはは……でも、提督が嫌いだったら、朧ちゃんもそんなふうに、提督にもたれかかって眠ったりしないと思います」
潮「ほら、朧ちゃんもなんだか安心したような顔をしてますし……!」
提督「……そんなもんかねえ」セキメン
827 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:57:46.25 ID:TSQ7cZ5Qo
潮「だと、思います。だから、あの……少しだけ、そのまま、動かないでくださいね?」
提督「ん?」
潮「わ、私も、提督にだったら、その……触っても、大丈夫、ですから」ウシロカラダキツキ
提督「潮!? お、お前……」
潮「あ、あの、ちょっとだけ、朧ちゃんが背負われてたの思い出して、ちょっと、いいなあって思ったので……」エヘヘ
提督「いきなりだからびっくりしたぞ。いいけどよ……」
潮「男の人の背中って、大きいんですね……」スリ
提督「……」
潮「こうしてると、提督って、お父さんみたい……」スリスリ
提督(また、お父さんみたい……か。そういうもんなのか?)
潮「……提督の心臓の音が聞こえる……」ギュ…
提督(あまり胸を押し付けないで欲しいんだがな……)タラリ
潮「……」
潮「……」
潮「……」ノシッ
提督「んん? ……まさか」
828 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:58:31.24 ID:TSQ7cZ5Qo
潮「……スヤァ……」
提督「マジかよ……」ガックリ
提督「そういや長門から、潮はすごく寝付きが良いとか言われたことがあったようななかったような……」
朧「……すー……」
潮「……くー……」
提督「……動けねえ……やべえ、しゃがんでるせいで足も痺れてきた」
提督「くそ……誰か、誰か来ねえか……!?」
提督「そ、そうだ! 妖精! 誰かいるか!? 潮か朧の装備妖精、いるんだろ!?」
潮の装備妖精「ふえっ!?」ビクッ
提督「お前まで寝かけてたのかよ……悪いが、誰か艦娘呼んできてくれ」
提督「このままじゃ俺も動けねえし、二人をちゃんと布団に寝かせてやらねえと。誰かの手を借りたいんだ」
潮妖精「わ、わかりましたー!」スクッ ピューーン
提督「誰か都合よく来てくれると助かるんだが……くっそ、榛名に一緒に来てもらった方が良かったか?」
829 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 19:59:16.98 ID:TSQ7cZ5Qo
* 数分後 *
提督「……」プルプル
提督(前後から力いっぱいのしかかられて、筋トレ状態だぞ……)
提督(潮の装備妖精はまだか……? 朧の装備妖精も一緒になって寝てるし、俺の妖精はどっか行ってるし)
提督(っつーか、妖精には昨日働いてもらったから休んどけって言ったばっかりだったな、そういや……)ガックリ
提督(くそ、マジできついぞ……まだ数分しか経ってねえよな?)
タッタッタッ…
提督「来たか……!?」
潮妖精「連れてきましたー!」シュタ!
大和「……提督……?」
提督「大和か……ちょっと手を貸してくれ。動けなくて困ってんだ」
大和「は、はい、今参ります……!」ササッ
提督「とりあえず背中の潮を引っぺがしてくれ。起こさないようにゆっくり頼む」
大和「わ、わかりまし……」
830 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/12/26(日) 20:00:01.51 ID:TSQ7cZ5Qo
潮「むにゃ……」グイッ
提督「うお……っ!?」ヨロッ(←よろめいて前に倒れて朧を押し倒す)
ドサッ
大和「て、提督! 大丈夫ですか!?」
提督「……あ、あぶねえ……! もうちょっとで朧を押しつぶすとこだったぞ……!」
大和「提督、急に倒れ込んだように見えましたが……」
提督「ずっとあの体勢でいたから脚が痺れたんだよ。おかげで全然踏ん張れねえ」
提督「とにかく俺の背中から早く潮をどかしてくれ。身動き取れねえ……」
大和「は、はい! ……がっちり抱き着いてますね……提督、潮ちゃんの手をほどけますか?」
提督「ああ……つか、なんか首筋が冷てえんだが」
大和「潮ちゃんのよだれです……」
提督「……」
831 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/12/26(日) 20:02:41.84 ID:TSQ7cZ5Qo
短いですが今回はここまで。
今回の話と直接関係ありませんが、
祝・朧のクリスマスグラ&アーケードの潮改二実装!
タイミング的にはたまたまですよ?
おそらく次の更新は来年になりますので、皆様良いお年をお迎えください。
832 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/26(日) 21:29:05.82 ID:SFim7dw70
乙
うしおぼサンドとはうらやまけしからん
良いお年を〜
833 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/12/27(月) 20:28:34.62 ID:7sIYlcqD0
提督め!なんて羨まゲホッゲホッ羨ましい!
よだれ垂らして寝てる潮ちゃん見てぇえ!
良いお年をー!
834 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/12/28(火) 12:26:19.44 ID:BCyK6s9TO
朧ちゃ゛ん゛は゛可愛い゛な゛あ゛
良いお年を〜
835 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 08:06:42.39 ID:Fu6CA3VMO
保守
836 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/17(月) 08:07:24.48 ID:Fu6CA3VMO
保守
837 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/22(土) 04:52:07.58 ID:cYmH+UZm0
いつの間にかこんなに伸びてた件。
艦これ知識が改の序盤ぐらいだが楽しませてもらってるぜ。
続きを期待。
838 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:38:54.22 ID:xuaBtb3Vo
私の一月はどこへ消えたのか
続きです。
839 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:39:51.60 ID:xuaBtb3Vo
* 朧の部屋の外 *
大和「提督、お疲れ様でした」
提督「ああ。ところで……そろそろおろしてくれ」(←お姫様抱っこ)
大和「まだ足の痺れが残っておられるのでは?」ツン
提督「ひうっ!?」ビクッ
大和(反応が可愛い……)
提督「くそ……ま、まあ、そうだけどよ……」プイ
大和「でしたら、もうしばらくこのままで」ニコー
提督「誰も来ないといいけどな……つうか、俺はこのあとお前のところにも行こうとしてたんだが」
大和「えっ!? そ、そうだったんですか!?」パァッ
提督「お前も泣いてたとか聞いたからだよ。昨日から立ち直れてなかった朧を優先してこっちに来てたんだ」
大和「そ、そうでしたか……ご心配おかけして申し訳ありません」
提督「遠大佐のあの言動で鳥海や加古がショックを受けるのはわかるが、なんでまたお前が泣き出したんだ?」
大和「それは、その……やはり、私が提督に甘えるのが、おかしいのか、と、思いまして……」
提督「……」
840 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:40:35.29 ID:xuaBtb3Vo
大和「音声を聞いた限りですが、遠大佐があの小さな駆逐艦に甘えていたのを聞いて、私も少なからず眩暈を覚えました」
大和「そう思うと、この大和が、提督に甘えようというのはやはり間違っているのではと……」ウルッ
提督「まだ悩んでたのかよお前。外聞が気になるんなら、露見しなきゃいいんじゃねえの?」
大和「……」
提督「恥ずかしいなら隠れてやりゃあいい。遠大佐も大っぴらにしたから俺たちからドン引きされたわけだろ?」
大和「提督……!」
提督「そもそも、お前の場合、今更恥ずかしがることもねえんじゃねえか? 昔っから俺にくっついてたわけだし」
提督「向こうで鳳翔に叱られるまでは、しょっちゅう俺にくっついてきてたろ」
大和「……あ、いえ、それは、その……」セキメン
提督「なおかつ、お前は俺に甘えたいって言ったし、俺はそれを聞いたからな。今更やめろなんて言わねえよ」
提督「周囲の目が気になるんなら、事情を説明して理解者を増やすか、二人だけの時だけそうするか……ってのが解決策だろうな」
大和「よ……よろしいん、ですか?」
提督「いいも悪いも、それがお前の望みなんだろ?」
大和「……は、はいっ!」
提督「ったく、どいつもこいつも、なんで俺にそういうのを求めんだよ。俺を過大評価しすぎなんじゃねえの?」アタマガリガリ
提督「朧と潮もあんな感じだし……俺としちゃあ、早いとこ親離れしてほしいんだがな」
大和「お、親……ですか?」
提督「ああ、俺が父親みたいだと。ここに来る前に足柄や暁にも言われたし、潮にも言われたぜ。そんな器じゃねえと思うんだがなあ」
841 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:41:19.47 ID:xuaBtb3Vo
大和「お言葉ですが提督? 提督は十分その器だと思いますよ? 提督は以前、私たちを家族だと言って下さったではありませんか」
提督「そりゃあ……まあ、言ったけどよ。大和から見たら、見た目の齢が近すぎて親子って感じでもねえだろ」
大和「ふふっ、それは仰る通りかもしれませんね」
大和(どうせなら、親子よりも、夫婦に見られたい……なんて)ポ
提督「くそ、なんか恥ずかしくなってきた……足の痺れも消えたな。大和、そろそろ降ろしてくれ」
大和「は、はい!」
ストン
提督「ん、ありがとな。朧たちのことも、助かった」
大和「いいえ、お役に立てたようでなによりです」ニコ
提督「……」
大和「提督? 大和がどうかしましたか?」
提督「いや。さっき来た時は元気がなさそうに見えたんだが、今はそうでもねえかな、と思ったんだ」
提督「やっぱりお前はそうやって胸張って堂々としてたほうが、凛々しくていいな」
大和「そ、そうですか……?」ポ
提督「おう。背中丸めて縮こまってるよりかは、ずっといい。見てて晴れやかになる」
大和「……!」パァッ
842 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:42:19.38 ID:xuaBtb3Vo
提督「あ、言っておくが、あくまで俺の勝手な感想だからな。お前が嫌なら無理しなくていいからな?」
大和「っ……もう、わかっておられませんね提督は」プク
提督「ん?」
大和「私は大和ですよ? このくらい無理でも苦でもありません。むしろ戦艦艦娘として当然の立ち居振る舞いです」
大和「なによりあなたからお褒めの言葉を戴いたことは、この大和の誇りであり誉れなんですよ?」
大和「それを二言目に無理するなと言われてしまっては……まるで私が不甲斐ないように思われているようで心外ですっ」プイ
提督「……あー、ま、それもそうか。それは悪かった」
提督「悪い意味にとらないでくれ。無理が来たら言えって言いたいだけだ」
大和「はいっ!」ニコニコ
提督「さて、ほんじゃあ次は鳥海んとこに行くか」
大和「大和もご一緒させていただきますね!」
提督「ん? おう」
筑摩「……」コソッ
武蔵「……」コソッ
筑摩「大和さん、背筋が伸びましたね」
武蔵「ふむ……立ち直ったと見て良さそうだな。提督が大和と何を話したか知らんが、私が口を出す必要はなさそうだ」
武蔵「良し、行こうか。付き合わせて悪かったな」
筑摩「いえ……」
筑摩「……」
843 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:43:04.29 ID:xuaBtb3Vo
* 入渠ドック内 医務室 *
鳥海「」ポケー
提督「目を覚ましてもこうだと、相当重症だな……」
大和「それでも明石さんが言うには、先刻より良い状態という話ですから……」
提督「鳥海もいい加減な真似ができねえタチなんだろうなあ。霧島が摩耶と相性いいのは、霧島が鳥海に似てるってのもあるのかもな」
大和(霧島さんが力技で押し込もうとする辺りは武蔵とも似てますけどね)
扉<コンコン
金剛「テートク、榛名に聞きましたヨー。私に御用デスカ?」チャッ
提督「おう、呼び出して悪いな。ちょっと頼まれて欲しいことがあってなあ」ユビサシ
鳥海「」ポケー
金剛「鳥海……?」ヒキッ
提督「まあ、あれを聞かされちゃしょうがねえか……」
金剛「いったい何があったんデスカ?」
提督「? お前、あの遠大佐のやりとり、聞いてなかったのか」
大和「金剛さんはあのとき、霧島さんたちと一緒に埋葬を手伝っていましたから」
844 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:43:34.36 ID:xuaBtb3Vo
提督「ああ、なるほど、そういうことか。金剛、実はな……」
* かくかくしかじか *
提督「で、その話をしてたところを聞かせたら、こうなったんだとよ」
金剛「Oh, my ...」
提督「でだ。金剛、この落ち込みすぎて壊れてる鳥海に『あれ』をやってくれ」
金剛「アレ?」クビカシゲ
提督「なんて言ったらいいんだあれは? お前が自分に甘えろとか言って俺や霞にやった、捕まえて頭を撫でてた『あれ』だ」
金剛「Oh, アレは確かに……ナデナデとでも呼んだらいいんデショウカ?」
提督「どんな呼び名がいいかはわからんが、それを鳥海にやってほしいんだ。頼めるか?」
金剛「Yes ! 私にお任せくだサーイ!」
大和「て、提督? 本当にそれで大丈夫なんですか?」
提督「まあ見てろ。金剛のあれは俺ですら落ちかけたからな……」
大和「お、落ちかけた!? どういう意味ですか!?」
提督「落ちかけたっつうか毒を抜かれかけたというか……ちょっとなんて表現したらいいかわかんねえな」
845 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:44:19.70 ID:xuaBtb3Vo
提督「とにかく、鳥海をまともに話ができる状態にしたいんだ。怪我してるんなら入渠させるし、寝てるんなら起こしてやるわけだが……」
提督「今回の鳥海は遠大佐の仕打ちというか、やったことに絶望しまくったわけだ。無理矢理叩き起こしても失意の底にまた沈んじまうだろう」
提督「沈んだ感情をサルベージしてやらねえことには、何を話しても破滅的な方向にしか進まなさそうだと思ってな」
提督「希望を持たせると言うか、気持ちを浮上させてやるっつうか……」
大和「金剛さんに癒してもらおう、ということですか」
提督「ああ、それだそれだ。今の鳥海に必要なのは、癒しなんだ。精神的、感情的にプッツンした糸を修復できるのはそれしかねえ」
金剛「鳥海〜、楽にするデース」ナデナデ
鳥海「……」
金剛「ンー……鳥海、大丈夫デス、安心してくだサイ……」ギュ ナデナデ
鳥海「……」ピク
金剛「Okey, 体の力を抜いて……」ナデナデ
鳥海「……」ピクンピクン
提督「見ろ、何やっても無反応だったっつう鳥海が、金剛に撫でられて反応してる。こうなりゃそのうち覚醒するはずだ」
提督「金剛、この場は任せていいか?」ヒソッ
金剛「……!」smile & thumbs up
提督「ありがとな。大和、俺たちは部屋から出るぞ」
大和「は、はい」
846 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:45:04.42 ID:xuaBtb3Vo
* 医務室前廊下 *
大和「あの場に提督がいらっしゃらなくて良かったんですか?」
提督「鳥海がまともに話せるようになるまでは、まだ時間がかかんじゃねえかな。気持ちの整理もつけなきゃならねえしな」
提督「じきに摩耶も来るだろ。これからどうするかの答えを聞くのは、鳥海が金剛、摩耶とゆっくり話してからでも遅くはねえ」
大和「……提督もお優しくなりましたね」
提督「んん?」
大和「如月さんから聞きましたよ。以前のあなたなら、アイアンクローで無理矢理起こしていたのでは?」
提督「ああ、金剛がいなかったらそうしてたかもなあ」
<ウワァァァン
提督「!」
大和「あれは……鳥海さんですね。感情が戻って来た、という感じでしょうか」コソッ
提督「みたいだな。あとは摩耶にフォローしてもらうか」
摩耶「提督!」タタタッ
提督「お、噂をすれば……って、多いな!?」
霧島「摩耶の姉妹艦の一大事ですので……!」
847 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:45:49.63 ID:xuaBtb3Vo
提督「霧島や榛名はともかく、なんで比叡までいるんだ?」
摩耶「金剛型総出で轟沈艦娘の埋葬を手伝ってもらったおかげで早く来れたんだよ」
榛名「榛名は、まだお手伝いできることがあればと思いまして……」
比叡「私は金剛お姉様がこちらに来ていると聞いて!」
提督「比叡は野次馬かよ……とりあえず摩耶は早く鳥海を安心させてやってくれ」
摩耶「おう!」タタッ
利根「なんじゃ、何やら人の気配がすると思えばおぬしたちか」
提督「よう、うるさくして悪いな。さっき連れてった鹿島の怪我はどうなった?」
利根「それならば何も問題ない、明石が綺麗にしてくれたぞ。しかし、まだどこかぎこちない感じではあるな」
利根「山風に限っては白露たち姉妹艦もいることで、いくらか緊張も解けたようだが……他の二人は誰と話をさせれば良いかと思ってな」
提督「ガンビアベイと鹿島の話相手なあ……アメリカの空母に練習巡洋艦だろ? 艦種で呼ぶなら雲龍か? 鹿島は……」
比叡「それじゃあ、私が鹿島さんとお話ししましょうか?」
提督「比叡がか?」
比叡「はい! 私、練習巡洋艦じゃないけど、練習戦艦になったこともありましたし!」
提督「なるほど……なら、いいかもしんねえな。鳥海がひと段落ついたら金剛も呼ぶか、英語繋がりで」
比叡「はい! お願いします!」
848 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:46:49.94 ID:xuaBtb3Vo
榛名「でしたら、私はお茶をご用意しますね!」
提督「……」
霧島「司令? どうなさいました?」
提督「ん、ブリテンとメリケンじゃあ水が合わねえかもしれねえな、と……とはいえ、ほかに候補もいないしな」
大和「ふふっ、大丈夫ですよ、金剛さんなら」
比叡「はい! 金剛お姉様がいれば百人力です!」
提督「まあ、大丈夫だとは思うけどな」
利根「……なるほど、鳥海の見舞いに摩耶が来ておるのか」
提督「? どうした、利根」
利根「いや、なんでもないぞ」
利根(……姉妹というのは、良いものだな)
利根(吾輩も……向き合わねばなるまい)
提督「んじゃ、ここは金剛立ちに任せるか。大和は長門と大淀を呼んで、埠頭の巡視船まで連れて行ってくれ」
提督「今、暁が千歳と足柄と一緒に報告待ちしてる」
提督「いくら暁が大人びてるとはいえ、この手の仕事は全部わかってる連中に任せないと負担になるからな」
大和「はい、提督はどちらに?」
提督「埋葬された奴らに手を合わせに行ってくる」
大和「! 承知しました、いってらっしゃいませ」ケイレイ
849 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:47:34.68 ID:xuaBtb3Vo
* 幕間 その後…… *
金剛「朝は紅茶デース!」
ガンビアベイ「No ! Coffee is best one !! です!」
榛名「!?!?」オロオロ
明石「うっわ、面倒臭い英米戦争が。誰か提督呼んできてー!」
朝潮「明石さん! お二人のために鴛鴦茶を作ってまいりました!」ガチャバーン!
明石「それは火に油を注ぐやつだからやめて!!」
鹿島「えんおうちゃ? ってなんですか?」
比叡「えーっと、紅茶とコーヒーのブレンドティーだったかな?」
鹿島「」
850 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:48:19.45 ID:xuaBtb3Vo
* 丘の上 *
電「……」
電「……」
提督「また、増えちまったか」
電「! 司令官さん……!」
提督「気に病むな、とは言わねえが、これはお前が背負いこむことじゃねえぞ」
電「……そうは、いかないのです」ウツムキ
電「もとはと言えば、電があの人を諫められなかったのが悪かったので……」ガシッ
提督「……お前なあ」
電「す?」アタマツカマレ
提督「いい加減にしろ! いつまでも自分を追い詰めてんじゃねーぞ、しつけえんだよくそが!!」メキメキメキ
電「ぎ゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!? 痛゛い゛の゛で゛す゛う゛う゛う゛!?」ジタバタ
提督「ったく……大和といい鳥海といい、真面目が過ぎる奴が一番面倒臭え」パッ
電「は、はううう……頭に穴が開くかと思ったのです」
提督「そのまま死んだ方が楽だったか?」
電「そ、そんなことは……!!」
851 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:49:04.63 ID:xuaBtb3Vo
提督「ねえよなあ? もしそうなったら、由良や敷波がどんな顔するよ? 暁や長門だって黙っちゃいねえだろうさ」
電「……」ウツムキ
提督「今、お前が使命感に駆られたところで、できることなんざ何もねえよ。諦めろ、っつってんだ」
提督「しいて言うなら……そうだな、何をしてやったら喜ぶかな。雪風が無事だってことを伝えて安心させてやるくらいか?」
電「……」
提督「無念を晴らそうにも空母棲姫は撃沈済みだしなあ。B提督を断罪ってのも無理があるし……」
電「あの……司令官さん?」
提督「ん?」
電「電は、B提督の鎮守府に戻ろうと思うのです」
提督「……説得のためにか?」
電「はい。なので、私たち轟沈艦娘が、この島から出られる方法を検討してほしいのです」
提督「……」フー…
電「司令官さん……!」
提督「確かに……ずっとこの島でリハビリなんてのは、方便とはいえもともとの目的にそぐわねえ」
提督「様子を見ると言った以上は、結論をいつかは出さなきゃあなんねえな」
電「それじゃあ……」
852 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:49:49.32 ID:xuaBtb3Vo
提督「ただな。俺個人の見解として、お前がそいつのもとに行ったとしても、その説得に勝算はないと思ってる」
電「そ、そんな……!」
提督「むしろ、お前がそいつに始末されたりしないか心配だ」
電「い、いくらなんでもそんなことは……!」
提督「寝惚けんな。そこに並んだ艤装をちゃんと見ろってんだよ」
電「っ!」
提督「お前が初めてB提督に出会ったときのことは知らねえが、今のそいつは目的のために手段を選ばなくなってると俺は見てる」
提督「ここまでして中佐のやつに取り入られたかった奴が、お前の説得に応じると思うか?」
提督「聞く耳を持たないだけならまだいい。最悪、目障りに思われたら、無事に帰ってくることすら怪しいな」
電「……」ゾクリ
提督「そんなことになったら、それこそ由良たちが何を言ってくるか、だ。この話はあいつらにこそ相談が必要だろ」
提督「だからB提督のことなんざ忘れちまえ。お前はB提督に殺された。その時点で縁が切れたんだ」
電「そんなの、無理なのです」
電「司令官さんだって、司令官さんのお父さんやお母さんのことを、忘れられてないんじゃないですか……!?」
提督「んぐっ……! ったく、痛えとこ突いてくれるな、お前はよ……!」
853 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:50:34.51 ID:xuaBtb3Vo
提督「俺はいいんだよ。お前らと違って、ねじくれまくって矯正も後戻りもできねえ人間だ」
提督「吹雪にも言ったけどな。俺は俺があいつらと違うことを証明したいため、俺の自己満足のためにお前らを利用してるだけだ」
提督「そんな人間、もう救いようがねえんだから、汚れ仕事をおっかぶせるのに丁度いいじゃねえか」
提督「思う存分、俺を使え。俺も、くそみたいな人間を潰すのには躊躇しねえよ」
電「……」
提督「とはいえ、お前の復讐を果たすまでには、まだ俺たちの力は及ばねえ……」
提督「だから今は、忘れちまえ。封をして、眠らせろ」
電「司令官さん……」
提督「こっちは五月雨にも言ったんだけどな、恨み続けるってのは体力も気力もすげえ消耗するんだ」
提督「お前が自分を責め続けるのも同じだ。ただ気疲れするだけで、B提督のダメージになんかこれっぽっちもなりゃしねえ」
提督「そんなの、面白くねえだろ?」
電「……」コクン
提督「だから、お前の無念も、こいつらの無念も、俺に一旦預けとけ。な?」
電「……司令官さんは、ずるいのです」
提督「ん?」
854 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:51:19.54 ID:xuaBtb3Vo
電「そうやって、電たちから悪いものを取り除いたふりをして、自分が沈む準備をしているのですから……」
提督「それはいいっつったろ、俺みたいな人間が全部……」
電「司令官さんは!」
提督「!」
電「自分がされて嫌だったことを、電たちに味わわせないようにしてますよね……?」
電「電は、そんな人が、自沈するのを黙ってみているだけの方が耐えられないのです……!」
電「電は、沈んだ敵も助けたいと思っているのです。あなたも……司令官さんも、同じなのです!」ダキツキ
電「勝手に……電の知らないどこかに行くなんて、許さないのです……!!」ギュッ
提督「……」
電「ぐすっ……」
提督「……」
由良「電ちゃん、大丈夫かな……」オロオロ
敷波「初期艦だったからねー、いろいろ思うところがあってもしょうがないよ」
暁「……」
足柄「なんなのよもうっ、霞ちゃんといい、ぐずっ、あなたたちといい……!」
千歳「足柄、泣き過ぎよ……」
足柄「如月ちゃんだって提督だってそうだわ! ここのみんなは、いろいろあり過ぎよ……!!」グスグスッ
855 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:52:05.61 ID:xuaBtb3Vo
* 鎮守府内 ロビー *
ゾロゾロ…
長門「む、提督が戻って来たか」
大和「提督、おかえりなさいませ!」
大淀「提督、電さんはどうしたんですか?」
提督「電にも思うところがあってな。話聞いてやって泣き出して、そのまま寄りかかられて寝ちまったんで抱きかかえてきた」
敷波「自分が初期艦だってことにいろいろ思うところがあったみたいだしさー」
由良「しょうがないわよね、ね」
大和「足柄さんも目元が赤いですね……」
千歳「もらい泣きしたんです。足柄になにかあったわけじゃないから、大丈夫ですよ」
長門「そういえば先日、厨房で霞の境遇を聞いたときも大泣きしていたんだったな」
足柄「……はっ!? まさか、大淀や長門さんも……っ!?」
大淀「私はそんなに大したことはありませんよ」クス
提督(そうかねえ……)
足柄「あったことは事実なんでしょお!?」ブワッ
暁「足柄さんって、こんなに涙もろかったかしら」
千歳「ま、まあね……ちょっと、感情移入しやすいところはあるかもね」
856 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:52:49.65 ID:xuaBtb3Vo
大淀「それより提督、本営の船ですが、遠大佐と留提督の一味を連れて日本へ帰りました」
提督「ん、そうか。雷も一緒か?」
長門「ああ。遠大佐のその後がどうなるかは知らんが、雷がいないと話にならなさそうなんだと」
大淀「あのショッキングな告白がありましたからね……」アタマオサエ
提督「ま、あの様子じゃあそうもなるか」
大淀「それから、加古さんと鳥海さんの処遇についてですが、轟沈艦として処理されておりますので……」
提督「んじゃ、あとはあいつら次第だな」
大淀「そういうことになりますね」
千歳「? どういうこと?」
敷波「加古さんと鳥海さんが、この鎮守府でやっていく気があるかどうか、確認するんじゃない?」
千歳「ああ、なるほど……」
提督「加古はともかく、鳥海はあれだからな。ま、答えは急がなくてもいいだろ」
由良「すぐ訊かなくていいんですか」
提督「いい。ぶっちゃけ面倒臭え」
千歳「」
足柄「」
敷波「……」
長門「貴様は……」アタマオサエ
857 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:54:04.50 ID:xuaBtb3Vo
提督「別にいいだろ。昨日今日といろいろ立て続けに起こりすぎて疲れてんだからよ」
提督「それから大和、ちょっと電を抱えててくれるか? 上着脱ぎたいんだ」
大和「え?」
暁「電が司令官の上着をすごい力で掴んでるの」
提督「上着ごと引っぺがして電を部屋のベッドに寝かせてくるから、ちょっと支えててくれ」
大和「は、はい!」
長門「こ、ここで脱ぐのか!?」
提督「ずっと抱きかかえててそろそろ腕がつらいんだよ。お前ら戦艦と同じ体力腕力だと思うな」
大和「上着はどうなさるんです?」
提督「電が掴んだままでいいだろ。相当気に病んでたし、俺の身代わりで安心するんならそれでいい」
大和「……そ、そうですか」
大和(うらやましい……)シュン
由良(うらやましい……)ジトッ
大淀(由良さんの目が怖い……)
858 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/30(日) 21:54:49.55 ID:xuaBtb3Vo
*
長門「提督、これは上を全部脱いだ方がいいな」
大和「制服の下に来ているTシャツまで掴んでますね……」
提督「マジか。ちょっとこのまま押さえててくれ、下着が脱げねえ」
暁「司令官、ここ、引っかかってるわ」
提督「悪い、暁もちょっと手伝ってくれ」
暁「っていうか、ここでやらなくてもいいんじゃない? 面倒がらずにお部屋に移動してからでもいいでしょ?」
千歳「ま、まあ、いろんな手間を省くつもりなんだろうし、提督の判断に任せましょ?」
暁「? 千歳さんがそう言うなら……」
千歳「うんうん」
由良「……」ギラギラ
大淀「……」チラッチラッ
足柄「……」ドキドキ
敷波(まあ、提督のこんなところ、見る機会はないけどさー……)ソワソワ
千歳「思った以上に耐性のない子が多くて不安なんだけど」ボソッ
敷波「そ、そうだね!?」ビクッ
859 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2022/01/30(日) 21:56:04.17 ID:xuaBtb3Vo
今回はここまで。
860 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/01/30(日) 23:20:03.97 ID:DwMwc5eJ0
更新乙。提督ってどんな体つきだったっけ?
861 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/31(月) 21:27:28.07 ID:y3ExNOm9o
>860
そういえば言及していませんでした。
追加で書き足しです。
862 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/31(月) 21:28:51.16 ID:y3ExNOm9o
* 食堂 *
長門「……」
陸奥「長門、どうしたの? 考え事?」
長門「いや、ついさっき、初めて提督の裸を見たんだが」
陸奥「!?」
不知火「!?」ブボッ
如月「きゃあ!?」
不知火「げほ、げほっ! す、すみません……」フキフキ
陸奥「ちょ、ちょっと長門! どういうことなの!?」
長門「いや、それがな。かくかくしかじか……」
不知火「こほん……なるほど、電も思いつめていたと」フキフキ
長門「ああ。それで提督が上半身裸になる羽目になったんだが、軍人としてはどうも細いなと思ってな」
長門「肉がついていないわけではない。が、無駄がないと言えばいいのか、無駄がなさすぎるというか……」
長門「やせすぎとか貧相とまではいかないが、最低限の筋肉しかついていない。減量中のボクサーみたいな体つきだったな」
如月「そういえば司令官も、もうちょっと脂肪を付けたいとは言ってたわね。でもここは離島だし、食肉だけは補給に頼るしかないから……」
863 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/31(月) 21:30:47.98 ID:y3ExNOm9o
長門「確かに動物性の脂質を摂るのは難しいな。魚ばかりというのもそれはそれで栄養が偏るか」
不知火「……私の方から本営に掛け合います」
長門「そうしてもらえると助かる。それから、提督も結構、体に傷が多いというか……とくに腕はひどいな? 無数の引っ掻き傷ができていた」
如月「あれって、学生時代にケンカでできた傷なんですって。ほら、司令官って殴る蹴るより、まず掴むじゃない?」
如月「そうすると、振りほどこうとして腕を掴まれてああいう傷が増えたんですって」
長門「掴んでいれば、その間は相手が腕一本分有利にはなるからな。反撃もそれなりにもらうわけか」
如月「そもそも司令官、殴るのを嫌ってるし、ね?」
陸奥「如月ちゃん、詳しいのね……やっぱり初期艦だからかしら」ジッ
長門「付き合いは長いだろうからな。私たちより提督のことを知ってて当然だろう」
如月「え、あの……はい。そうですね」ポ
如月(今の話を司令官と一緒に寝たときにしたって言ったらどう思われるかしら……)セキメン
不知火「……どうしましょう、不知火は司令の体については何も知らないのですが」
不知火「不知火も司令に裸体を見せていただくようお願いすべきでしょうか」カオマッカ
陸奥「そ、そこまでしなくていいと思うわよ……?」
864 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/01/31(月) 21:33:34.64 ID:y3ExNOm9o
追加ここまで。
177センチ、やや痩せ気味、というのがここの提督の体型です。
南の島にいるため、若干日焼け気味、というのも書き足したかったんですが、
できるだけ自然に文中に入れるのは、なかなか難しいですね。
865 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/01(火) 08:03:55.49 ID:KQgVQk10O
乙
866 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/02/02(水) 17:49:08.97 ID:1DrWRJvo0
さあ、続きを待ってるぞ
867 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2022/02/02(水) 22:37:01.07 ID:7tdVfInX0
乙です。島にイノシシとかはいないの?
868 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2022/02/02(水) 22:49:08.24 ID:dc5tZu/D0
乙乙。わざわざ書き足してくれてありがとう。
結構ガッチリした体型だと思ってたけどなるほど痩せマッチョか確かに無人島生活ならそれでもおかしくないわ、
869 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/02/13(日) 14:18:37.86 ID:O3CU2Q2io
>867
イタチのような小動物は見かけるが、猪のような中型の獣は見たことがない、と言う状態です。
もしかしたら毒蛇であったり、過去に住んでいた人間が仕掛けた罠であったり、
どんな危険が潜んでいるかがわからないため、提督たちは島の西側の林の中には立ち入っていません。
また、野生生物は寄生虫が心配と言うことから、釣った魚以外は食べないようにしています。
鮭も養殖物でなければ生食はできませんし。
それでは続きです。
870 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/02/13(日) 14:19:32.82 ID:O3CU2Q2io
* 翌日の朝 墓場島埠頭 *
提督「なんだ、お前かよ……身構えて損したぜ」
L大尉「なんだじゃないよ、ひどい挨拶だなあ。少しは歓迎してくれたっていいじゃないか」
提督「何言ってんだ、お前の秘書艦のせいで鹿島がああなってんだろが」ユビサシ
鹿島「うわああああん!」ナミダジョバー
香取「大変だったわね、鹿島」ダキヨセ
鹿島「香取姉えええええ!!」ヒシッ
L大尉「あれは僕のせいでも香取のせいでもないと思うぞ?」
ガンビアベイ「Oh...これが、緊張の糸が切れる、デスカ」
山風「鹿島さんも、無理してたんだね……」
千歳「相当気を張り詰めてたでしょ?」
足柄「反動もあるんじゃない?」
朝雲「さっきまで話してた時はすっごいしっかりしてたのに……」
山雲「山雲は〜、ちょっとだけ、気持ちがわかるかも〜」
白露「やっぱり姉妹艦だと気の持ち方とかいろいろ違うよね〜」
山風「うん……あっ」
871 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/02/13(日) 14:20:17.81 ID:O3CU2Q2io
海風「良かった、千歳さんも足柄さんも無事だったんですね!」
白露「あっれぇ、海風じゃん!」
海風「海風姉……!」
海風「白露姉さん!? 山風も!?」
白露「なになに、海風ってば足柄さんたちの知り合い?」
海風「は、はい、私は波大尉の鎮守府の所属です! 白露姉さんも被害に遭ったんですか!?」
白露「私はこの鎮守府の所属だよ。被害に遭ったのは山風!」
海風「そ、そうだったんですか……!」
千歳「海風、どうしてあなたがここに?」
海風「はい! 千歳さんたちがこちらの鎮守府に向かったと聞いて、お迎えに上がったんです!」
足柄「波大尉はどうしたの? 海風に秘書艦を引き継いだのに……」
海風「……波大尉は、その……入院、しています」
足柄「え?」
千歳「もう、あの子ったら……あの程、お酒は控えてって言ったのに……!」
海風「ち、違います! その……お酒もあるかもしれないですけど、鬱、です。司令官は、うつ病になったんです」
千歳「うつ……!?」
872 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/02/13(日) 14:21:02.78 ID:O3CU2Q2io
朝雲「ええっ!? ちょっと、あんなに明るい人が、いったいどうして!?」
足柄「うつ病って、なにがあったの……?」
海風「……こちらの鎮守府の用を済ませて、ブルネイまで医療船を届けた後、お二人と大喧嘩して艦隊から除名されましたよね」
L大尉「喧嘩? それで除名だなんて、いくらなんでも短絡的じゃないか」
足柄「それは……いろいろ仕方ないのよ。あのときだって、酔った勢いで売り言葉に買い言葉、ってやつだったんだから」
千歳「私も居合わせたけど、ひどかったの。波大尉の部屋の床に無数のお酒の空き缶が転がってて、そこで更に飲もうとしてるから」
千歳「飲むなって言っても聞かなくて、私も思わず感情的になっちゃって……お医者様からもお酒は控えたほうがいいって言われてたのに」
足柄「おまけに波大尉ってお酒が入ってネガりだすと止まらないの。それで、勢い任せに私たちの解任と除名の手続きを始めちゃって」
足柄「千歳でもどうにもならなくて……私が怒鳴ったのが決定的だったのよ。泣くわキレるわ怯えるわ、まともに話せなくなっちゃって」
L大尉「それはまた……」
提督「それでお前らが路頭に迷う羽目になったってか」
海風「そう……です。お二人が鎮守府を離れることになって、私が秘書艦を務めたんですが……波大尉がもう……」フルフル
海風「千歳さんたちを解任したことをものすごく後悔なさってて、それ以来ろくに執務が出来なくなって」
海風「自己嫌悪からくるやけ酒と不摂生から体を壊して……入院なさってからも、私が病室に行くたびに、ごめんなさい、ごめんなさいって」
海風「千歳さんと足柄さんの名前を出して、私に謝られるんです……!」ポロポロ…
千歳「……」
足柄「……」
873 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2022/02/13(日) 14:21:47.96 ID:O3CU2Q2io
L大尉「そういうわけで、診断の結果を見て、本営は、波大尉にこれ以上の軍務を続けさせられないと判断したんだ」
千歳「……!」
足柄「それって……!!」
海風「……」グスッ
提督「退役して一般人に戻る、ってことか」
L大尉「……だね」コクン
L大尉「それで、波大尉の入院先が、彼女の地元に近い神戸に移ることになったんだ。徐々に艦娘や海軍から離れてもらうためにね」
L大尉「彼女が回復するまでは、海軍が責任を持って看病することも決まって、僕がそこに一枚かむことになった」
L大尉「僕も元民間だったから、その民間人の視点でどう彼女をリハビリさせた方がいいか、その相談役のひとりとして、ね」
提督「波大尉が海軍を辞めるんなら、後釜はどうなる」
L大尉「それがいなくてね。かといって艦娘たちも全員フリーにするわけにはいかないから、O中尉だったかな? 彼が身元を引き取るらしいんだ」
提督「O中尉……あいつか。まあ、預け先としちゃあ悪くねえかな?」
L大尉「知り合いかい?」
提督「中佐んところで善行積みすぎて目障りになって切られた奴だ」
L大尉「……と、とにかく信用できるんだね?」
提督「知らん」
L大尉「……」
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