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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」
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518 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:48:38.55 ID:5Fsdg4Xoo
留提督「そうじゃなくないよ、君が悪いんじゃない! 僕の……僕の判断ミスなんだ!」
加古「だからさあ」
留提督「本当にすまなかった!」ガバッ
加古「ちょっとぉ……」
留提督「許してくれ!!」
加古「……」
提督「おい。お前、加古の話を」
留提督「准尉、今、僕は加古と話をしているんだ。茶々を入れないでくれないか」
提督「そうじゃねえよ。加古はそういうことを言」
留提督「部外者が口を挟まないでくれないか!」
提督「ああ?」
加古「ちょっと留提督?」
留提督「ああ、すまない加古! さあ、一緒に帰ろう、積もる話は呉の鎮守府に戻ってからゆっくり話そう!」
加古「……」
519 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:49:22.92 ID:5Fsdg4Xoo
提督「……こりゃ駄目だな」
クルー1「ちょっと准尉さん、せっかく話がまとまりかけてるってときに、横から口を出さないでくださいよ」
提督「お前らには、まとまったように見えたのか? 今の話」
加古「……こりゃー駄目だねー。話をするだけ無駄だわー」ハァ
留提督「ど、どうしてだ!? まだ何か心配事でもあるのかい!?」
加古「どうせ聞く耳持たないっしょ?」
留提督「そんなことはない!! 体に不安があるのなら呉に戻ってからいくらでも検査する!」
留提督「なんにしても、こんな離島で、何も悪くないのに隔離された生活をしていたらおかしくなるぞ!」
留提督「僕は君たちが心配なんだ!!」
加古「……」チラッ
鳥海(……加古さんが見てるのは……遠大佐?)
遠大佐「……」
鳥海(遠大佐、ずっと俯いてるけど……)
鳥海「あの、遠大佐?」
遠大佐「うん……なんだ」
520 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:50:07.23 ID:5Fsdg4Xoo
鳥海「遠大佐は、今回の進軍を諫めなかったこと……どのようにお考えですか」
遠大佐「……私の、判断ミスだと思っている」
雷「司令官……!」
加古「……」
鳥海「遠大佐……」
留提督「そんなことはありません! 僕のせいです!」
加古「……」
提督「おい、そこの秘書艦はどう思う」
雷「わ、私!? え、ええと……」
遠大佐「雷に聞くまでもない……そう、だな。私のせいだ」
雷「司令官……そ、そんなことないわ!? 元気を出して!」
加古「……」
鹿島「……」
提督「……」
521 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:50:54.14 ID:5Fsdg4Xoo
山風「……」ソワソワ
ガンビアベイ「……」ソワソワ
山風「……私たち、なんで呼ばれたのかな」ヒソヒソ
ガンビアベイ「わ、わからないです……ヒッ」ビクッ
提督「……」ギロッ
山風「どうかした……ヒッ」ビクッ
ガンビアベイ「な、なんであの人、私たちを睨んでるんでしょう……!」ビクビク
山風「早く帰りたい……」グスグス
提督「……」
提督「なあ、妖精?」ヒソッ
妖精「なにかな?」ヒョコッ
提督「あいつの連れてる艦娘、艤装を外してるのか?」
妖精「そうみたいだね。さっき見たときはちゃんとつけてたみたいだけど……わざわざ外してきたのかな?」
提督「なにか裏がありそうだな。ちょっと探りを入れてもらっていいか?」
妖精「うん、いいけど……あんまり睨みつけちゃ駄目だよ。二人とも怯えてるみたいだし」
提督「なに? 俺にか……?」
522 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:51:37.30 ID:5Fsdg4Xoo
妖精「うん。それに……」ユビサシ
提督「……」チラッ
クルー1「!」メソラシ
妖精「提督も見張られてるみたいだね」
提督「……何でこっちを見てるんだ、あいつは」
留提督「とにかく、二人とも無事で何よりだ! さあ、二人とも支度をして、呉へ帰ろう!」
鳥海「は、はぁ……」チラッ
加古「……あたしは行かないよ。一人で帰って」ガタッ
留提督「なっ!? 強がりはよせ! 君はそれでいいと思ってるのか!?」
留提督「君を慕っていた呉の鎮守府の仲間が、君の帰還を待っているんだぞ!?」
留提督「それだけじゃない、あの戦いで沈んだという汚名を雪ぎたいと思わないのか!?」
加古「……」
留提督「君は、もっともっと活躍できるはずなんだ!」
留提督「こんな島で……船の墓場みたいな場所で、終わるような艦娘じゃない! そうだろう!?」
加古「……はぁ」
523 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:52:23.90 ID:5Fsdg4Xoo
留提督「加古……! 頼む!!」
加古「帰ってよ。あたしはそっちには行かない」
留提督「頼む!! お願いだ!!」
鳥海「……」オロオロ
提督「……わかんねえな。なんであいつはそこまで加古に執着するんだ?」
クルー2「ちょっと准尉さん、少しは私たちに協力してくださいよ」
提督「あぁ? なんでだよ」
クルー2「ちょっ……」
提督「お前らこそ身の程を知れよ、どの面下げてあいつらの前に現れたんだ」
クルー3「この島は轟沈した艦娘を保護しているんでしょう? 元いた鎮守府の司令官が来たら、その人に引き渡すべきです」
提督「艦娘の当人が拒否してるんだから、その理屈は成り立たねえな」
クルー4「鳥海も加古もああやって普通にしているのに、こっちに引き渡せないとか、おかしいんですよ」
クルー4「艦娘が沈んだら深海棲艦になるんでしょう? なってないんだから、元いた鎮守府に戻すのが筋でしょう」
提督「何が筋だよ、何を根拠に言ってやがる。覆水盆に返らず、って言葉を知らねえのか」
524 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:53:07.56 ID:5Fsdg4Xoo
クルー3「だいたい、沈んだ艦娘が深海棲艦になったのは本当なんですか!? エビデンスとかないんですか!」
提督「ねえよ、んなもん」
クルー3「な……!」
提督「それ以前に、お前エビデンスとか言ってるけど、意味分かって言ってるか?」
クルー3「そ、それは……!」
クルー1「……根拠とか、裏付け、証拠……という意味ですよね」
提督「なんだ、知ってる奴いたのかよ……まあ、そうだな」チラッ
クルー3「……」ムッ
提督「沈んだ艦娘が深海棲艦になる……過去にあったらしいが、そいつはあくまで『らしい』の話だ」
クルー3「だったらあの艦娘たちを戻してもいいんじゃないんですか!」
提督「ある鎮守府では、轟沈した艦娘を受け入れたことがある」
提督「受け入れてしばらくして、深海棲艦による攻撃で鎮守府が壊滅した。どんな理由が考えられる? お前、答えてみろよ」ユビサシ
クルー4「……」
525 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:54:14.39 ID:5Fsdg4Xoo
提督「……海軍の調査では、轟沈した艦娘が深海棲艦になった説、轟沈した艦娘が深海棲艦を呼び寄せた説のふたつが有力視された」
提督「轟沈した艦娘が深海棲艦になるかどうか、真相ははわからないが、壊滅した理由のひとつとして考えられる以上……」
提督「安易に轟沈した艦娘を受け入れて同じことになるのは避けたい、というのが海軍全体の意識だ」
提督「不確定要素がある以上、危機管理として間違ったことはしていない。違うか?」
クルーたち「「……」」
提督「で、お前らこそ、安全だと言える『根拠』はどこから拾ってきたんだよ」
提督「こちとら命を張ってんだ。ちょっとでも危ねえと思ったらすぐ退くのが正解なんだよ」
提督「それを無理して突き進んで、お前らのお仲間が海の藻屑に消えた事件もあったよなぁ?」
提督「手前に都合が悪い話は、覚えていられねえってか?」
提督「それとも、そいつは奴らだけの問題であって、俺たちには関係ねえ、ってか?」
提督「今ならカメラも回ってねえぞ。ほれ、何か答えてみやがれ、くそどもが」
クルーたち「「……」」
526 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:54:57.99 ID:5Fsdg4Xoo
留提督「加古! 僕がこれほど君の帰還を望んでいるというのに、なぜだ!? なんで拒否するんだ!?」
加古「そもそもの原因追及を拒否してんのはあんたじゃん……」
留提督「もしや、この島に、なにか秘密があるとでも言うのか……? 遠大佐!」
遠大佐「なんだね?」
留提督「この島を調査しましょう! 加古が戻ろうとしない理由がそこにあるかもしれません!」
提督&加古「「は?」」
雷「そうね……こんなに一生懸命な留提督の説得が通じないとしたら、もっと別なところに原因があるのかも!」
提督&加古「「ねえよ……」」
鳥海(なんで台詞が両方から聞こえるの……)
雷「鳥海さん! この島のこと、教えて貰っていい!?」
鳥海「えっ? い、いえ、おそらくそういうことでは……」
留提督「遠大佐! この場はお任せいたします! 僕たちはこの島の調査に入ります!」
クルーたち「「!」」ガタッ!
527 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:56:07.36 ID:5Fsdg4Xoo
提督「な……おい!? 勝手な真似を」
留提督「みんな行くぞ! 日没までに鎮守府を調査するんだ!」
クルーたち「「わかりました!」」
提督「待て! 勝手に」
留提督「行くぞーー!!」ダダダダ…
提督「おいこら! 待ちやがれ!!」
提督「……」
提督「……最悪だ」アタマカカエ
朧「て、提督! 何があったんですか!? 今、みんなばらばらに……!」
提督「あいつら、勝手にこの鎮守府の探索をおっぱじめやがった」
朧「えええ!?」
提督「朝潮たちはどうした?」
朧「ほかのみんなは、それぞれ誰かを追いかけて行きました! 朧は、神通さんから提督に指示を仰げと……」
提督「そうか……よし、こうなりゃ誰でもいい、侵入者全員とっ捕まえてここに集めてくれ」
528 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:57:07.80 ID:5Fsdg4Xoo
提督「ひとまず最初に那珂、次に大淀へ知らせろ。俺は俺で執務室に行って、全館放送で連絡する」
朧「わ、わかりました!」ダッ
提督「くそ……妖精たちの手も借りねえと。あいつら、もしかして最初からこれを狙ってやがったのか!?」
黒潮「なあなあ、司令はん、ちょっとええかな」
提督「! どうした?」
黒潮「いや……ちょっとこの部屋入るとこ見てたんやけど、あっちの鎮守府から来てた鹿島さんとか、艤装外しとったやん?」
提督「……ああ……」
黒潮「なんか、気分悪ろうてなあ」
提督「……」シカメッツラ
黒潮「司令はん?」
提督「……なあ黒潮? 鹿島たちが『そう』なる可能性、あると思うか?」
黒潮「……」シカメッツラ
提督「あり得るんだな?」
黒潮「ないとは言えへんね……」
529 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:57:53.24 ID:5Fsdg4Xoo
ドドドド…
島風「提督ーー! って、うわぁ」
提督「なんだそのうわぁは」
島風「提督と黒潮ちゃんが同じ顔してるんだもん……またなにかあったの?」
黒潮「まだ起きてへんよ」
島風「まだ、って……」
提督「それより島風はどうしたんだ」
島風「そうそう、聞いてくださいよー! さっき、外から来た男の人たちに潮ちゃんが話しかけられてて!」
島風「なんか嫌がってたみたいだから、私が声をかけたんだけど、そしたら私も腕を掴まれたんです!」
黒潮「は?」
島風「なんかいきなりこっちの鎮守府に来いとか言われて、意味わかんなくって!」
島風「白露も一緒なのかって聞いたら、白露なんかどうでもいいとか言うし! 頭にきて断ったんですけどしつこくって!!」プンスカ
提督「……」
島風「話が通じないから、潮ちゃんと一緒に走って逃げてきたんです!」
黒潮「……」
530 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:00:37.50 ID:5Fsdg4Xoo
島風「提督! あの人たちいったいなんなんですか!?」
提督「……ただの部外者……いや、侵入者だよ」
提督「ったく、あいつらいくらなんでも好き勝手しすぎだろ、顔に何枚バルジ貼り付けてやがんだよ、くそが!」
提督「島風、今の話は他に誰に話した?」
島風「まだ誰にも話してないよ?」
提督「潮はどうした」
島風「食堂にいた長門さんに預けてきました!」
提督「んじゃあ、そっちに行って詳しく聞くか……島風、俺は執務室に寄ってから食堂に行く。白露もそこへ呼んできてくれるか?」
島風「はいっ!」ダッシュ!
提督「黒潮も食堂へ行って、長門に事情を話しててくれ。思ってたより上の対策立てなきゃ駄目だなこりゃあ……」
黒潮「不知火から話を聞いてたけど、また厄介な……」
提督「まったくだ……あの戦艦バカより数百倍もたちが悪りぃぞ、くそが」
531 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:01:22.38 ID:5Fsdg4Xoo
* 一方その頃 *
* 仁提督の鎮守府 *
仁提督「ぶぅえっくしょい!!」
雪風「! しれぇ! お風邪ですか!?」
仁提督「ずずっ……そうじゃない、ただのくしゃみだ」
雪風「心配です! お熱測って差し上げます!」ヨジノボリ
嵐「ちょっ!?」ギョッ
仁提督「おい!? 登ってくるな!」
文月「あ〜、雪風ちゃんいいなあ〜」
皐月「よーし、僕も登るね!」ヨジヨジ
嵐「登るのかよ!? 止めろよ!」
文月「文月も登るぅ〜」ヨジヨジ
時津風「おもしろそう! 時津風も混ぜてー!」ヨジヨジ
長月「登るなって言ってるだろう!?」ガビーン
仁提督「お、お前たちいい加減にしろおお! 金剛! 長門を呼べ!!」
皐月「えっ!?」
532 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:02:07.24 ID:5Fsdg4Xoo
嵐「お、おい、みんな降りろ! 長門さんが来たら大変だ!」
時津風「みんな逃げるよ!」ピョン スタッ
文月「ああ〜、待ってぇ〜」
雪風「しれぇ! お熱はありませんでした!」
長月「雪風、急げ!」
雪風「はいっ! 失礼します、しれぇ!」
キャーキャー バタバタバタ…
仁提督「……やれやれ」
金剛「テートク、お疲れ様デース。おはな、出てマスヨー」ティッシュサシダシ
仁提督「おう……お前ものんきに見てないで助けてくれ」ズビー
金剛「オウ、ソーリー。微笑ましかったので、ついつい眺めたくなってしまいマシタ。最近入った時津風も、馴染んでいるようで何よりデス」
仁提督「俺は舐められてるようにしか思えないんだがな。雪風の心のケアを心掛けてたら、他の駆逐艦連中まで寄ってきてこの様だ」
金剛「でも、おかげで雪風もよく笑うようになりマシタ。テートクのしたことは間違ってまセンヨー」
仁提督「そうだといいがな……」
533 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:02:52.30 ID:5Fsdg4Xoo
金剛「大丈夫デース! 胸を張ってくだサーイ!」
仁提督「……」
金剛「……テートク?」
仁提督「あいつは、雪風みたいなやつを、何人も相手にしてきたんだろうな」
金剛「オウ、あの島の准尉のことデスネ?」
仁提督「ああ、あいつのことは気に入らんが、それでもやってることは評価せねばならん。雪風を相手にして、その苦労が良くわかった」
仁提督「雪風たちがあれだけ元気になったのも、あいつが黒潮を保護していたところが大きいしな……」
金剛「だからテートクはあの鎮守府に助け舟を出したわけデスネ?」
仁提督「俺は黒潮の件の借りを返しただけだ」フンッ
仁提督「そうでなくても、准尉以上に留提督という男が別ベクトルでいけ好かん」
仁提督「へらへらしていて落ち着きがない上に、人の話を聞かないと来た。なんだか昔の俺を見てるみたいでイライラさせられる」
金剛(今も話を聞かずに突っ走るときが結構ありますケドネ?)
仁提督「のこのこついてきた遠大佐も何を考えているのやら。あの小さい駆逐艦娘を随分信頼しているようだが、大丈夫なんだろうな?」
金剛「こちらでおいでになったときも、一言も喋りませんでしたからネー……」
534 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:03:37.44 ID:5Fsdg4Xoo
* 回想 *
仁提督「墓場島!? あの島に行くって言うのか!? やめておけ! 行ったところで得られるものは何もない!」
仁提督「確かに轟沈した艦娘が流れ着く島だ。艦娘を水葬できなくて埋葬しているから、そういう名前がついたと聞いている」
仁提督「連れて帰る!? 馬鹿を言うな! 一度轟沈した艦娘を連れて帰ったらどうなるか、話を聞いてないのか!」
仁提督「命が惜しく……いや、それよりも近隣の鎮守府が許可したのか!? 地域住民には説明したのか!」
仁提督「悪いことは言わんぞ、貴様らが轟沈させた艦娘は諦めろ! 何が起こっても責任はとらんからな!!」
仁提督「俺たちが守るべきものはなにか! 理解してから行動しろ!!」
* * *
仁提督「まったく……轟沈したと知っていながら連れ戻そうなどと、これだから素人考えは……」
金剛「ブッチャケ、あのときはテートクも他人のことを言えた立場ではありませんでしたケドネー」ボソ
仁提督「聞こえてるぞ金剛……まあいい、俺もあの時は墓場島の艦娘を使い捨てにするつもりだったのは認める」
仁提督「そういう打算的な考えがあったのは間違いない。さすがに轟沈経験艦だとは思いもしなかったが……」
金剛「……」
仁提督「……なんだ?」
535 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:04:37.85 ID:5Fsdg4Xoo
金剛「テートク、素直になった気がしマス。以前はこんなふうに、自分の失敗を素直に認められる人じゃなかったデス」
仁提督「そ、そうか……!? まあ、あの提督准尉のせいだろうな……」
仁提督「お前の相手に潜水艦を連れてきた件といい、島風と白露をあいつが引き取ってた件といい、黒潮が実は生きていた件といい……」プルプル
仁提督「ああああ、思い出すだけで赤っ恥だ! ……とにかく! あの島の出来事に比べれば、もうこれ以上恥をかいたりはせんだろうよ」ハァ
金剛(……わざわざ言って、フラグを立たせてるような気がしマス)タラリ
金剛「そういえば、テートクは白露と島風を連れ帰ろうとしませんでしたネ? 轟沈したわけでもないのに……」
仁提督「馬鹿を言うな、あいつらに限っては、俺が切ったんだぞ? 俺が関係を破綻させたんだ」
仁提督「無理矢理引っ張ってきたところでどうせ持て余すに決まっているし、恨まれることはあっても信頼されることはなかろう」
金剛「そうデスカ……?」
仁提督「お前は俺の変化をすぐそばで見てるかもしれんが、そうでない相手にはいきなり態度が変わったようにしか見えんだろうさ」
仁提督「白露と島風は、准尉に任せる。俺の手からはもう離れたんだ、これ以上手を出すのは下世話というか、無恥もいいとこだ」
金剛「それでは、白露と島風にはこれ以上干渉しないと?」
仁提督「ああ、ついでに准尉にも干渉しないようになると最高だがな。黒潮と雪風がいる以上はそうはいかんだろうが……」
仁提督「それから、俺が留提督の相手をすることももうないだろう。言いたいことは言った。あとは准尉にがっつりへこまされればいい」フン
金剛「オゥ……痛い目見ろと仰いマスカ」
仁提督「いや、そう思うだろう? 留提督の様子じゃあ、轟沈経験艦を連れ帰ってきたらどうなるか、全然わかっとらんようだった」
仁提督「遠大佐も遠大佐で、一言くらい助言があっても良かろうものを……よくわからんな」
536 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/07/24(土) 22:05:58.59 ID:5Fsdg4Xoo
というわけで、今回はここまで。
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/25(日) 08:46:55.35 ID:5hVf79EP0
乙
なんだか轟沈騒ぎ自体が墓場島入りを目的にした筋書に思えてきた
538 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/25(日) 18:24:42.42 ID:uqI+atu70
乙です。
>>409
で既に出てたか…最初から読み直して途中で気づいて書き込んだから読めてなかった。
にしても、遠大佐やべーな。作り話とわかってもイライラするぜ。スレ主の文章力は53万です。
539 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/25(日) 18:48:58.02 ID:hKcgy0160
>>538
2016年6月(罠だらけ)から5年間ずっと書き続けてますからね。53万とかいうレベルじゃない希ガス
それと更新の遅さとストーリーの作り込みが相まってわくわくが止まらねぇ 4,5回最初から読み直したけど飽きない
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/25(日) 18:53:00.63 ID:QiYIYrBKO
乙乙
次も楽しみにしてるよ
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/08/14(土) 02:11:09.46 ID:Js3EcmOH0
やっと追いついた、、、某動画サイトから来ました。次回も楽しみにしています
542 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:44:37.84 ID:h6xmbjMBo
続きです。
543 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:45:31.08 ID:h6xmbjMBo
* 鎮守府内 執務室へ向かう廊下 *
足柄「あのう、提督准尉?」
提督「ん? おお、いたのか」
足柄「ちょっ、いたわよ!? 単に話すことなくて大人しくしてただけじゃない! それよりも!」
千歳「准尉、私たちになにか協力できることはありませんか?」
提督「協力?」
千歳「ええ。申し遅れました、私、軽空母の千歳です。足柄と一緒に、波大尉のもとで働いておりました」
千歳「今は、遠大佐と留提督からこの島の案内役を依頼されまして、遠大佐のところで一時的に働いているんです」
提督「一時的? レンタルみたいなもんか?」
千歳「いえ、ちょっといろいろありまして……わたしたち、今は無所属の状態なんです。新しい所属先を探してる途中でして……」
提督「で、『一時的』にあいつらの部下になったってことか?」
千歳「はい。すっごく後悔してますけど」ハァ
提督「引き受けなきゃ良かったじゃねえか」
千歳「いえ、折角来たのに断ってしまうと、この後に仕事の話が来るかどうかわかりませんので」
足柄「だいたい、最初は『この島に加古と鳥海が来ていないか確認するだけ』って聞いてたのよ?」
544 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:46:15.90 ID:h6xmbjMBo
千歳「それがこの島に上陸した時に、いきなり『轟沈した艦娘も何人か引き取って、呉の鎮守府でリハビリさせる』って言い出すんですもの」
提督「……」
千歳「挙句の果てには、勝手に鎮守府の中を家探しし始めるし……まるで騙し討ちに加担させられたみたいで、私たちも立つ瀬がなくて」
足柄「波大尉だったら、逐一私たちに報告確認しながら進めてるはずよね。勝手が違いすぎるっていうか、あの人、勝手が過ぎるわ!」
千歳「波大尉はもともと会社員だったからじゃない? 海軍のいろはがわからないからって、いつも私たちに相談してくれてたし」
足柄「そう! それが留提督にはないのよね……その場で思い付いたことを衝動的にやってるみたいで、動きが読めないわ」
提督「……やれやれ」
千歳「とにかく、留提督がやっていることは准尉にとっても迷惑にしかならないと思うんです」
千歳「留提督に雇われてこの島に案内した以上は、少しでもその尻拭いをしてお詫びしないと……」
足柄「そうね……留提督がどうなろうと自業自得でしかないと思うけど、准尉にこれ以上迷惑かけるわけにはいかないしね」
提督「まあ、いいけどよ。あまりお前らに頼むようなことはねえぞ?」
千歳「それでもかまいません。今後、私たちは准尉の指示に従います」
足柄「でも、どうして留提督は、轟沈した艦娘を引き取るなんて言い出したのかしら……」
千歳「多分だけれど……テレビ用の話題を作って、人気を集めたいから、じゃない?」
千歳「加古や鳥海を連れ帰って凱旋すれば、轟沈した艦娘を救った提督として、特別視されるんじゃないか、とか……」
545 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:47:03.76 ID:h6xmbjMBo
千歳「仮に、他の艦娘も一緒にリハビリさせて、戦線に復帰させられるようになったら、艦娘の運用に改革が起こるわ」
足柄「……それって准尉の功績を横取りしようとしてるってこと!?」
千歳「准尉が協力的なら、准尉の協力を得て艦娘の帰還が実現した、とか、いくらでも都合よく言い換えられるんじゃない?」
千歳「今回は准尉が最初からこうだったから、方針を変えたとか……」
提督「ふぅん……思惑としちゃあ、いい線行ってんじゃねえかな。テレビ局引き連れてんだ、留提督が珍しいことをやれば視聴率も稼げるだろ」
足柄「やればいいってものじゃないわよ……その後のフォローとか、どうするつもりなのかしら」
提督「連れ帰るのがゴールなんだろ。とにかく連れ帰ってしまえば、あとは海軍が総力を挙げて尻拭いせざるを得ねえ」
提督「革命がしたいだけのテロリスト……かつ、自惚れの激しいナルシスト、ってとこか? 面倒臭え人種だな」
千歳「……」
提督「気になる話は他にもあるが、まずはあいつらをとっ捕まえるのが先だ。これ以上、うちの艦娘に嫌な思いはさせられねえからな」
足柄「私たちは何をしたらいいの? なんでも手伝うわよ?」
提督「なら、ちょっと話を聞かせてもらうか。その前に執務室だ」
546 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:47:45.84 ID:h6xmbjMBo
* 鎮守府内 提督の私室 *
如月「司令官のお部屋で待機、っていうのも悪くないわね」
大和「提督、大丈夫でしょうか……」
金剛「心配ネー……」
榛名「榛名は、ずっとここで待機していても大丈夫です!」ベッドニゴロゴロ
金剛「榛名……服がしわだらけになりますヨー……」
榛名「提督はいつもこちらでお休みになっているのですね……ああ、提督に包まれている感じがします!」
金剛(ここで寝てるのはテートクだけではありませんけどネ……)ハイライトオフ
如月「司令官のことは心配だけど、私たちが騒いだらかえって司令官が心配しちゃうわ。果報は寝て待て、って言うじゃない」
金剛「Oh... 駆逐艦が一番大人びてマス……」
大和「でも、その通りですね……提督には迷惑をかけられません」
ドタドタドタ…
如月「足音……誰かしら?」
榛名「提督ではありませんね?」
547 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:48:31.64 ID:h6xmbjMBo
大和「ですね……」
金剛(みんな当然のように足音でテートクかわかるんデスネ……)タラリ
扉<バンッ!
クルー1「……!!」
如月「だ、誰!?」
クルー1「こ、ここはなんだ……!?」
金剛「あなた、提督のお部屋に何の用デス!」
クルー1「提督の部屋!? ……金剛に、如月に……大和!? そうか……やっぱりそうだったか!!」
大和「?」
クルー1「よっしゃスクープだぁぁぁ!!」ダッ
如月「ど、どういうこと……?」
クルー1(どこの提督も似たようなもんだ! 案の定、贔屓の艦娘を部屋に連れ込んでハーレム作ってやがった!)
クルー1(ご丁寧にでかいベッドまで用意して、2〜3人連れ込んでヤリまくってたわけか……いいネタ掴んだぞ!)
朧「ていっ!!」ガッ!
クルー1「うわあっ!?」グリンッ ズデーン!
如月「朧ちゃん!?」
548 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:49:15.94 ID:h6xmbjMBo
朧「よりによって、提督のお部屋に来るなんて……何を考えてるの!?」
クルー1「ちくしょう、准尉の手先め……!」
朧「手先?」ムッ
クルー1「ここの提督は、お気に入りの艦娘を集めて好き放題してるんだろう!?」
朧「……なにそれ?」
クルー1「とぼけやがって……」ヨジッ
サワッ
朧「っきゃあ!?」ビクッ
クルー1「おっ、手が緩んだ、今の隙に!」スルッ ダッ
如月「朧ちゃんどうしたの!?」
朧「お、お尻触られた……!」アオザメ
大和「なんですって?」
朧「て、提督にも触られたことないのに……!」ジワッ
如月「ちょっとあなた、待ちなさい?」ギロッ
クルー1「!?」ビクッ
549 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:50:00.62 ID:h6xmbjMBo
金剛「朧に謝りなサイ!」
クルー1「はあ?」
大和「狼藉を働いておいて、何の謝罪もせず逃げおおせる気ですか!」
クルー1「お、お前らが最初に俺に暴力をふるったんだろうが!」
如月「暴力だとか言う前に、あなた、誰?」
如月「この鎮守府に、誰に断って入ってきたの? それも、司令官のプライベートな場所に……!」ジロリ
クルー1「……!」ジリッ
榛名「金剛お姉様? この人は誰でしょう? 侵入者ですか?」ヒョコッ
金剛「そうみたいデス、とりあえず捕まえ……」
榛名「敵なら、撃ちましょうか?」ガシャンッ
クルー1「ひ、ひいい!?」ダッ
大和「逃がさないわ!」ダッ
金剛「榛名は少し落ち着くデース!」ダッ
館内放送『ジジー……カシャッ』
如月「……あら?」
550 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:50:48.13 ID:h6xmbjMBo
* 同時刻 *
* 鎮守府内 別の廊下 *
クルー2「はぁ、はぁ、なんだあの足の速いっていうか、不気味な艦娘は……」
タタタタッ ヒュッ
クルー2「うわあ!?」
神通「どこへ行くおつもりですか?」
クルー2「ひいい!」クルッ ダッ
神通「……」
シュバッ
神通「どこへ行くおつもりですか、と、訊いているのですが」
クルー2「ひぃえぁ!?」
神通「……」
クルー2「あ、あの、と、と、トイレに……」
神通「そうでしたか……でしたら、こちらに」クルッ
551 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:51:31.06 ID:h6xmbjMBo
クルー2(今のうちに!)ダッ
神通「……」
シュバッ
神通「トイレはそちらではありませんよ?」
クルー2「ひゃひぃいい!?」
神通「ご案内いたします」ニコ
クルー2(だ、駄目だ……逃げられる気がしない)
クルー2(神通と言えば、おどおどしてて臆病な艦娘のはずだが……)
神通「提督からは、皆さんが勝手な行動をとられないように仰せつかっております」
神通「事を荒立てて難癖をつけ、あわよくばこの島の鎮守府の弱みを掴もうとお考えでしょうが……やめておいた方が身のためかと」
クルー2「!?」
神通「御用が済みましたら、速やかにお帰りください」ニコ
クルー2「……は、はひ……」
552 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:52:16.61 ID:h6xmbjMBo
* 同時刻 *
* 鎮守府内 工廠 *
利根「うむ、これで少しは使いやすくなるのではないかな」
由良「わぁ……利根さん、ありがとうございます」
明石「利根さんもカタパルトの整備が板についてきましたねえ」
利根「それは先生の教え方が良いからであろう」
明石「もー、先生って何言ってるんですかあー!」テレテレ
利根「先生は先生である。仮にも専門家の手ほどきを受けておるのだ、吾輩もこのくらいはできねばな」
明石「なんだかこそばゆいですねえ」ニマニマ
由良「でも、本当に助かります。この島に流れ着いてきたときは妖精さんしかいなかったし」
明石「あー、あの時はびっくりしたなあ……間宮さんもいないもんね、ここ」
五月雨「みなさーん、麦茶持ってきましたー」カチャカチャ
由良「五月雨ちゃん!? 無理しなくていいから!?」ガシッ
五月雨「あ、ありがとうございます! ちゃんと落とさずに持ってきましたよ!」
利根「た、確かにそのようだが……五月雨が何か運んでいると、どうにも危なっかしくてひやひやするな」
由良「麦茶のボトルもガラス容器じゃなくて、プラスチック容器とかを買ったほうがいいんじゃない?」
553 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:53:01.08 ID:h6xmbjMBo
龍驤「ついでにうちらの式神用の和紙も、追加注文してもらってええかな?」ヒョコッ
雲龍「お邪魔するわね」
明石「お二人もカタパルトの整備ですか?」
龍驤「うんや、うちらはお散歩中や」
雲龍「今日は出撃もないし、出歩かないよう言われてるから、暇なの」
利根「ああ、あの例の……ん?」
クルー3「……ここまでくれば……うん? ここは……」
五月雨「あれ、もしかして……どうしたんですか?」
クルー3「うわっ!? ……か、艦娘か……物々しいけど、ここはいったい?」
明石「工廠ですよ。関係者以外立ち入り禁止ですけど、何の用ですか?」
クルー3「え、ああ、用っていうか……取材をさせてくれないか。ここの提督のことについてなんだが」
利根「提督の?」
クルー3「そう。人となりというか、どんな人物なのか」
由良「……」
雲龍「……」
554 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:53:46.01 ID:h6xmbjMBo
クルー3「な、なんでだんまりなんだ?」
龍驤「なんでって、あんたに喋ってええかどうか、わからんしなあ?」
クルー3「いやいやそう言わずに。自分たちの提督がテレビに出て有名になったら嬉しいだろう?」
雲龍「それはないわね」
龍驤「うん。ないない」
クルー3「えぇ!?」
由良「提督さん、有名になりたいなんて、これっぽっちも考えてないわよね」
明石「絶対、面倒臭いって言いそう」
クルー3「なにを言っているんだ、有名になれば支援が増えて仕事もやりやすくなるだろう?」
明石「そのためにあなたがたを接待しろと? お断りですよ、そんなの」フンッ
クルー3「え!?」
五月雨「!?」ギョッ
利根(明石……!?)
明石「悪いことは言いませんから、早くこの島から出て行って、この島のことを全部忘れてしまった方がいいですよ」
クルー3「な、なんでだ!?」
555 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:54:30.86 ID:h6xmbjMBo
明石「この島のことを記録したっていいことなんかありませんもの。むしろあなた方の安全すら脅かすかもしれません」
明石「だってここは、轟沈した艦娘が棲んでる島ですよ? 人間が立ち入っていいかどうかすら疑わしい場所ですよ?」
明石「なんで、この島に提督以外の人間がいないのか、少し考えたほうがいいのでは?」
クルー3「……き、脅迫するつもりか」
明石「脅迫でもなんでもありませんよ、警告というか、むしろただのお節介です」
明石「考えたことありますか? 艦娘が轟沈する理由」
クルー3「理由? ……その提督の判断ミスとか、敵が強かったとか……」
明石「本当にそれだけでしょうかね?」ニィ
利根「お、おい、明石?」
明石「わざと沈められた艦娘も、いるかもしれませんよ? どんな理由かはご想像にお任せしますが……」
雲龍「わざと?」
明石「ええ。例えば、その鎮守府の知ってはいけない秘密を知ってしまって始末されかけた、とか」
明石「もし、その艦娘に接触したことを知られたら黙っていられない人がいるかもしれませんよねえ?」
明石「そうしたら、次に狙われるのは誰になります……?」
クルー3「……」
556 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:55:30.87 ID:h6xmbjMBo
明石「あるいは、新しい艦娘に懸想して、古い子が必要なくなったから、わざと……とか?」
明石「こんなに尽くしたのに! こんなに、好きだったのに! どうしてあの人は、私を捨てたの!?」
明石「そうして、愛を失い、理性を失い、狂ってしまった艦娘が、深海棲艦に……!」
クルー3「……」ゴクリ
明石「なってしまっても、おかしくないと思うんですよねぇ」
龍驤「明石……一応聞くけど、作り話なん?」
明石「はい!」
龍驤「ぞっとせえへんな……」
利根(後者の話はこの前読んだマンガの展開に似ておるな……寝取られものだったか?)
明石「途中まで信じそうになるくらいには、程よくリアルだったでしょう?」
雲龍「……」
明石「この鎮守府にいる艦娘だって、どんな思いを奥底に秘めているか、誰にもわからないんです」
明石「この島に流れ着いた理由が、それぞれにあるんですから。どこで地雷を踏むか、わかったもんじゃないんです」
クルー3「!」
557 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:56:16.11 ID:h6xmbjMBo
明石「なにか起こる前に帰ったほうがいい、と言ったのはそういうことです。私は忠告しましたからね?」
五月雨「明石さん……」
利根「……」
由良「……」
龍驤「……せやなあ。うちも昔のこと思い出したら、また鎮守府火の海にしても、おかしくないもんなあ」
クルー3「!?」
龍驤「そしたら今度こそ、居場所なくなってまうで……」ウーン
雲龍「大丈夫。大丈夫よ」
龍驤「……雲龍……」
館内放送『ジジー……カシャッ』
明石「!」
558 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:57:30.55 ID:h6xmbjMBo
* 更に同時刻 *
* 鎮守府内 食堂 *
クルー4「こ、ここはどこだ……!?」タタッ
潮「ひっ!!」
長門「……こんなところまで追いかけてきたか」
陸奥「潮ちゃん、下がってて」
潮「は、はいっ!」
クルー4「せ、戦艦長門……!!」
長門「貴様は留提督の連れてきた人間だな? 潮をどうするつもりだ」
クルー4「……そ、それは、留提督の艦娘として、戦力にならないかスカウトしていたんだ」
陸奥「そうなの?」
潮「……っ!」フルフル
長門「怯えているようだが?」
クルー4「た、確かに、声をかけたスタッフは少々強引だったが……こんな辺鄙な島にいるよりは、ちゃんとした鎮守府で働けた方がいいはずだろ!?」
陸奥「ちゃんとした鎮守府、ね……」イラッ
クルー4「……? 待て、なんでそんな不満そうなんだ? こんな何もない島がそんなにいいのか?」
559 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:58:15.87 ID:h6xmbjMBo
クルー4「資材だって食糧だって満足に受けられない辺境の島に監禁され続けているのに……この島の提督に洗脳されてるのか?」
潮「は……!?」
陸奥「洗脳……?」
長門「……なんだそれは」
クルー4「なんだ、って言われても……この島で、これまで深海棲艦になった艦娘はいないんだろう?」
長門「……確かに、この島にはいないな」
クルー4「この島の提督は、轟沈した艦娘が深海棲艦になるというデマを利用して、自分の気に入った艦娘を囲っているんじゃないのか」
潮「それ、デマ……なんですか?」
陸奥「さあ……? 囲ってるって話のほうはデマに違いないけど」
クルー4「はぁ!? 囲ってるって話がデマなら、提督は頑なにこの島の取材を拒否するのはなんでだ!?」
クルー4「なにも後ろめたいことがないなら、取材拒否するのはおかしいだろ!」
長門「やれやれ。根本的に間違っているな……」
潮「そ、それって、提督が取材を拒否したら、悪い人と認定する、ってことですよね……?」
陸奥「なにそれ。あなたたち、提督を糾弾するつもりでこの島に来たってこと?」
クルー4「後ろめたいことがあるんだろう? だったら糾弾されて当然じゃないのか」
560 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:59:00.76 ID:h6xmbjMBo
クルー4「いくら轟沈したところを保護したとはいえ、元の鎮守府に帰さないで私物化するなんて、まるで火事場泥棒だ」
クルー4「怪我が治ったら元の鎮守府に戻してやるのが、その艦娘のためじゃないのか?」
陸奥「あら、その認識自体がもう間違ってるわ。加古だって戻りたくないって言ってるじゃないの、留提督の指揮が原因で」
クルー4「いや……でも、軍艦というか、軍人なんだろう? そんなふうに反抗していいのか?」
長門「いくら軍人でも、ストレスがたまれば体も壊すし、心も離れていくものだ。理不尽な命令を受ければ反発もする」
クルー4「え!? そ、そうなのか……!?」
長門「それに、私たち3人は轟沈したわけでもないしな。お前のその話は私たちには当てはまらないぞ」
クルー4「じゃ、じゃあなんでこの島に!?」
長門「……前の鎮守府にいた人間の振る舞いに失望し、いろいろあってこの鎮守府に辿り着いた」
長門「理由は詳しく言いたくない。だが、私たちがここにいる理由の一つに、人間に対する不信感があることは間違いない」
クルー4「人間に不信感!? じ、自分たちの意思で、この島に、いるっていうのか」
長門「その通りだ」
クルー4「そんな、話が違うぞ……艦娘が、人間に歯向うなんて……!」ヨロ…
561 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:59:45.96 ID:h6xmbjMBo
陸奥「ちょっと、何をぶつぶつ言ってるの? 私たちのことは放っておいて。早く帰って欲しいんだけど」
クルー4「……っ!」ダッ
長門「なんだ今の男は……」
潮「最後、なんだか顔色が悪くありませんでしたか……?」
長門「ああ……」
陸奥「……う……」
グラッ
長門「陸奥!?」ガシッ
陸奥「はー、はー……」ガタガタ
潮「む、陸奥さん大丈夫ですか!?」
陸奥「だ、大丈夫……ちょっとだけ、緊張しちゃった……」
潮(陸奥さんのトラウマ、私よりひどそう……!)
長門「……まったく、あいつらは何をしに来たんだ……!?」
館内放送『ジジー……カシャッ』
562 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/16(月) 00:00:31.10 ID:ONe+sA41o
長門「うん? なんだ?」
館内放送『あー、あー。提督だ。鎮守府所属の艦娘全員に緊急連絡』
館内放送『この鎮守府に、外部から遠大佐及び留提督とそのお仲間が来ていることは承知していると思うが』
館内放送『このうち留提督とその一味、男5人が、鎮守府内を勝手に探索と称して家探しを開始した』
館内放送『全艦娘はこの侵入者5名を直ちに捕縛、拘束し、会議室へ連行せよ。なお、生死は問わない』
館内放送『繰り返す。生死は問わない』
館内放送『首だけでも構わねえ、5人全員とっ捕まえて、会議室に持ってこい』
館内放送『手間ァかけさせて悪いが、よろしく頼む。以上だ』
長門「……」
潮「さ、さっきの人を捕まえないと、いけないんじゃ……!?」
長門「いや、やめておこう。陸奥の状態が酷いからな」
ドドドドドド…
長門「あれは……」
島風「長門さーーーん!」
563 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/16(月) 00:01:15.83 ID:ONe+sA41o
* 一方そのころ *
* 鎮守府内 提督の私室へ続く廊下 *
大和「生死は問わない、ですか」
金剛「テートクは、相当に Angry デスネー……」
榛名「首だけでもいいんですよね!?」
クルー1「じょ、冗談じゃねえええ!」ダッ
大和「!」
クルー1「さっきの部屋に戻りゃあいいんだ! 遠大佐になんとかしてもらうしかねえ!!」
金剛「なんて逃げ足の速さデス!?」
大和「火事場の馬鹿力、ですか……!」
クルー1「うおおおおお!!」ダダダダ…
金剛「Shit ! 逃げられてしまいマシタ!」
大和「……」
如月「朧ちゃん!? しっかりして!」
朧「……」ズーン
榛名「金剛お姉様……この子は、提督に見ていただいたほうが良いのではないでしょうか?」
金剛「Nmm... 今のテートクにその時間があれば良いのデスガ」
大和「……許せない」ギリッ
564 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/16(月) 00:02:01.61 ID:ONe+sA41o
* もう一方では *
* 鎮守府内 工廠前 *
利根「……生死は問わない、か」
クルー3「……」ブルッ
由良「どうなっててもいいから、連れてこいってことなんでしょうね」
明石「五月雨ちゃん、悪いんだけど、この人を会議室まで案内してあげて」
五月雨「は、はい!」
明石「あなたも無駄に死にたくないでしょ?」
クルー3「……」コク
スタスタ…
明石「ふぅ……あの人は大人しくしててくれそうかな」
龍驤「明石、出まかせとはいえ良くあそこまですらすら言えたなあ?」
明石「出まかせってわけでもありませんよ。私がそうですから」
龍驤「は?」
565 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/16(月) 00:02:46.34 ID:ONe+sA41o
明石「あ、言ってませんでしたっけ? 裏帳簿作らされて、その罪を私に押し付けられて雷撃されたって話」
龍驤「はああ!? 聞いてへんで、そんなの!」
利根「それはあれか、北上に失敗作の魚雷で雷撃されたおかげで生き延びたという、あの話か」
明石「はい、それですね」
龍驤「はぁ……提督も大概やけど、キミも他人のこと言えた立場やないな」
雲龍「……明石も、提督に恩があるのね」
明石「まあ、そうですけど……私は別に提督が特段好きってわけじゃないですよ? あの人、自暴自棄だし、朴念仁だし、ニブチンだし」
龍驤「容赦ないなぁ……」
明石「でも、あの人の行動は全て、艦娘を守るための行動ですから」
明石「人間に失望してああなった人ですから。せめて私たちが味方してあげないと、かわいそうでしょ?」
566 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/08/16(月) 00:03:31.08 ID:ONe+sA41o
今回はここまで。
567 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/16(月) 02:49:04.35 ID:RyQg/d0m0
乙乙
次も楽しみ待っとくわ
568 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/16(月) 06:36:59.15 ID:AYWXOU6r0
乙
時期が時期だから感動ポルノと言う言葉が脳裏を過る
569 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/16(月) 15:15:43.15 ID:s3+6yB9m0
乙です
さてさて何が起きるやら…?
提督love勢にセクハラした罪は重い…
570 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/17(火) 12:32:43.48 ID:p2VD5tsbo
乙
クルー狩りの夜が始まる…
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/08/18(水) 01:10:14.29 ID:6Z2an0L/0
更新乙。
人間狩りじゃー!であえであえ!つかなに朧のSiri触ってんだ形変えるぞクルー1
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/03(金) 23:38:26.67 ID:GIbtPecu0
クルー1は果たしてどうなる…
一週間以内にバケツ100
573 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/04(土) 03:28:32.72 ID:DRTH65jj0
更新来てないか…
3日以内にバケツ50
574 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 11:45:08.63 ID:wjOZiD+y0
>>573
3日は攻めるねぇww
575 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 12:56:20.06 ID:WAM6fwFIo
現在、文章を十分書けるのが3週間ペースなので、
そろそろとヤマをはってる人はだいたい当たるんではないかと。
私の投稿の周期を把握している方もいらっしゃるようですし。
では続きです。
576 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 12:57:03.15 ID:WAM6fwFIo
* 少し時間をさかのぼり *
* 島の南東 丘の上 *
留提督「まさか外に出たとは誰も思ってないだろうなあ……」
留提督「それにしても、なんだ? ここ」
(丘の斜面に立ち並ぶ墓標代わりの艦娘の艤装群)
留提督「艦娘の背負ってる、船の装飾? なんでこんなもの置いてんだろ。まあいいや、電話しよっと」
* 一方 墓場島鎮守府 埠頭に停泊している遠大佐の巡視船内 *
島妖精「……きみたちも詳しく聞いてないのか」
鹿島の装備妖精「はい。いきなり連れてこられて、私たちも戸惑ってるんです」
山風の装備妖精「この島に来るなんて聞いてないし、艤装を外して連れていくなんて……」
ガンビアベイの装備妖精「Muri...」
妖精「なんで装備を外すことになったんだろう……」
鹿島妖精「艦娘が非武装なら、敵意がないことをわかってくれるはず、って、土下座して頼まれたんです」
山風妖精「危ないって言ったのに……」
ベイ妖精「Murii...」
577 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 12:57:47.38 ID:WAM6fwFIo
島妖精「どうする、一旦提督に報告するか?」
妖精「そうだね……」
♪ジャーンジャジャンジャーン
妖精「?」
クルー5「はい、もしもし?」
妖精「……電話の音かぁ」
島妖精「今の電話は音楽が鳴るんだな」
鹿島妖精「電話っていうか、今のスマホはなんでもできますよ?」
島妖精「すまほ?」
山風妖精「うん、スマートホン。電話だけじゃなくて、写真や動画も撮れるし……」
島妖精「写真!? おい、まずいぞ……」
妖精「しっ……!」
クルー5「あー、駄目でしたかー。じゃあ、准尉を追い込む作戦で行くんですね」
島妖精「んなっ!?」
578 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 12:58:32.08 ID:WAM6fwFIo
クルー5「わかりました、じゃあ俺たちも島に乗り込んでネタ探してきます!」
クルー5「見た感じ、こっちは誰もいませんね。はい、見つからないように行きますんで! 衛星写真の地図もありますし大丈夫っすよ!」
クルー5「連絡とれるの俺だけですけど……衛星電話なんて料金高くて普通使えませんし、普段から海外への渡航経験あるのも俺だけですから」
クルー5「はい、任しといてください! 留さんも気を付けて!」
妖精「……!」
島妖精「地図だと……?」
クルー5「おい、俺たちも出るぞ!」
クルー6「え、マジで行くんすか?」
クルー7「行くに決まってんだろ? じゃなきゃこの企画、落ちるぞ?」
クルー6「や、ガチのマジで大丈夫なんですか? いくら下っ端でも海軍のいち司令官っすよ?」
クルー5「大丈夫だって、准尉なんて大佐から見たらずっと下なんだから、遠大佐がなんとかしてくれるって!」
クルー6「だといいんすけどねえ……大丈夫なんすかね、あの准尉って人」
クルー7「ぐずってないで行くぞ、いまフリーの俺たちが撮れ高あるネタ探さねえと放送できねーぞ」
クルー6「しゃーねーっすね、行きますかあ」
クルー5「みんなカメラは持ったな!? 行くぞォ!」
クルー6「うーっす」
クルー7「へーい」
クルー5「もうちょっと気合入れろよ!」
ゾロゾロ…
579 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 12:59:17.84 ID:WAM6fwFIo
島妖精「やっぱり2グループ目がいたか……」
妖精「ねえ、テレビ局の関係者は何人来たの?」
鹿島妖精「今の人たちで全員です」
妖精「ということは、全部で8人だね……」
島妖精「わたしたちはあの3人を追いかける。お前は提督に報告を頼む」
妖精「うん……!」
タッ
妖精「……」
山風妖精「みんな、大丈夫なのかな……」
ベイ妖精「Mow, Muriie...」
妖精「……ねえ、この船の乗組員さんは?」
鹿島妖精「いますけど……」
妖精「誰か私たちの姿が見える人、いないかな?」
山風妖精「見える人はいないみたいです」
妖精「そっか……とりあえず、提督に相談かな」
ベイ妖精「Baaaay... Come baaaack... Come Back hurry...」プルプル
妖精「それより大丈夫かなこの子」
鹿島妖精「ま、まあ、この子はわたしたちが見ますから……」
580 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 13:00:02.42 ID:WAM6fwFIo
* 島の南東 丘の上 *
留提督「ふう……これで良し、っと」
敷波「……ちょっと。なにしてんの? 提督の服を着てるっぽいけど、誰?」
留提督「うお!? な、なんだ、おいもちゃんかあ」
敷波「はぁ?」カチン
留提督「ちょっと休ませてよ。今朝からいろいろあって疲れてるんだ」
敷波「ちょっと!? 艤装に座んないでよ!!」
留提督「ギソウ?」
敷波「そこに座るなって言ってんの!!」
留提督「えー? じゃあどれだと座っていいの?」
敷波「いいから立ち上がって!」
山城「……だわ」
敷波「……あ」クルリ
山城「ああ、不幸だわ……何あの軽そうな男。なんで時雨の艤装に汚い尻を乗せてるの?」ゴゴゴゴ
敷波「あーあ……」
581 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 13:00:48.72 ID:WAM6fwFIo
留提督「ん? あれ、誰だっけ……ああ、あれか! 不幸姉妹!」
山城「はぁ?」ピキッ
留提督「髪が短いのはどっちだっけ……妹の方かな? 確かに不幸そうな顔してるなあ」
山城「……敷波。なに、あいつ」
敷波「知らないよー。あたしだっていきなり芋呼ばわりされるし。めちゃくちゃムカついてるんだけど」
山城「そう……お掃除始めたいけど、いいわよね?」
敷波「ここでやらないならいいんじゃない? あたし、布巾持ってくる」
山城「ええ、お願い。それじゃあ、まずはネズミを捕まえるところから……」ヌラリ
留提督「はっ!」バッ
山城「って、逃げてんじゃないわよ!!」
留提督「やばいやばい! 何に怒ってんのかわかんないけど、あの不幸姉妹は使えなさそうだなあ……!」
山城「なにあいつ、逃げ足速すぎよ……!」
582 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 13:01:32.02 ID:WAM6fwFIo
* 鎮守府そばのビニールハウス *
初雪「……水やり終わり」
初雪「……休憩しよ」
(ビニールハウスの片隅にビーチチェアとパラソルのセットが置いてある)
初雪「よいしょ……」ゴロン
初雪「……」
初雪「……」ウトウト
留提督「うおおお、なんだこれ!?」
初雪「!?」ビクッ
留提督「すげー、畑あんじゃん! ダッ○ュ村みたい! 何作ってんの!?」
初雪「!? !?」オロオロ
留提督「あー、なんだピーマンか、ハズレだなー。こっちはなんだろ……うわ、泥だらけだ! きったねー!」ガサガサ
初雪(いきなり入ってきて……なに? この人……)アゼン
留提督「あれ? 君も艦娘? ここでサボってんの?」
初雪「……は?」
583 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 13:02:17.72 ID:WAM6fwFIo
留提督「あ、君、ゲームとかいっぱい持ってる子だよね! 匿うついでにちょっと部屋に連れてってよ!」ズイッ
初雪「!?」
留提督「なんか知らないけど、みんな怒ってんだよね。せっかく俺たちがみんなを助けようって言うのにさあ!」
初雪「!?!?」パニック
留提督「ここの提督に監禁されてるんでしょ? 証拠掴んで公表して、自由にしてあげるからさ!」
留提督「こんな島から脱出すれば、ゲームだっていろいろ買い放題だよ! 早く行こうよ!」ウデツカミ
初雪「ひっ!?」ビクッ
留提督「大丈夫! 僕は君の味方だから!」グイグイ
初雪「い、いや……はなし、て……!」
扶桑「……あら? はつゆ……」
留提督「うわ、やばっ!! 不幸が追いかけてきた!」
ダダッ
扶桑「きゃ!? ……今の、誰かしら。初雪さん、今走っていったのは……」
初雪「……」ガタガタ
扶桑「初雪さん……?」
584 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 13:03:16.93 ID:WAM6fwFIo
初雪「……ふそう、さん……! こ、こわか、った……!」ウルウル
扶桑「え? ……大丈夫よ、心配いらないわ。さっきの人は、走ってどこかに行ってしまったから」ダキヨセ
初雪「ほんと……?」ヒシッ
扶桑「ええ。それにしても、あの人はここでいったい何をしようとしてたのかしら……」
初雪「……ゆうかい、されそうに、なった……!」ガタガタ
扶桑「え……!?」
武蔵「おい、何があった!?」
山雲「畑が荒らされて……こっちに足跡があるわ〜」
武蔵「提督のような服装だったが……もしや留提督か、遠大佐がここにきたのか!?」
若葉「すまない、こっちに留提督が来なかったか!?」
山城「扶桑お姉様は無事なの!?」
山雲「ねえねえ、いったい、なにがあったの〜?」
若葉「実は……」
館内放送『ジジー……カシャッ』
扶桑「あら……?」
585 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 13:04:02.55 ID:WAM6fwFIo
* 鎮守府の西側の林 *
留提督「おっかしいな、なんであんなに反抗的なんだ? 艦娘ってのは、提督に対して従順じゃなかったのか?」
留提督「やっぱり他の鎮守府だからかなあ……となると、やっぱりこの鎮守府を制圧しないと駄目か」
留提督「スタッフのみんなが鎮守府の弱みを見つけてくれると話が早いんだけど……」キョロキョロ
スマホ<♪ッチャッチャッチャーンピロピロピローン
留提督「おっと! もしもし?」
スマホ『もしもし、留さん無事ですか!?』
留提督「うん、だいじょぶだいじょぶ! 生きてるよー!」
スマホ『いや、笑ってる場合じゃないっすよ! 聞きましたか今の放送!』
留提督「放送? なにかあったの?」
スマホ『留さんたちを捕まえろって、准尉から艦娘に指示が出たんです!』
スマホ『それも、生死は問わないって物騒な文言つけて!』
留提督「うわ〜……それじゃあ、この島にやばいものがあるって決定ってことじゃん! なにか見つけた?」
スマホ『まだですけど、留さんは狙われてるんですから、マジで気を付けてくださいよ!?』
スマホ『俺たちはマークされてないから自由に動けますんで、もう少し探してみますけど!』
586 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 13:04:47.18 ID:WAM6fwFIo
留提督「おっけー、それじゃあ引き続き……なんだこれ」
スマホ『どうかしたんすか?』
留提督「いや、これ……骨だ」
スマホ『ほ、ほね?』
留提督「やっべえ、人骨だ! これ多分、人の骨だよ!」
スマホ『えええ!? ほ、本当すか!?』
留提督「マジだよこれ! すっげえ、やっぱやばいんだよこの島!」
スマホ『重要な証拠じゃないっすか! ちゃんとカメラで撮ってくださいよ!』
留提督「わかってるって! うおお、やっべーー!」ゴソゴソ
スマホ『動画で撮影するときは声を入れないでください!』
留提督「わかってるって言ってんじゃん! おお〜……マジやべえ〜……!」パシャパシャッ
スマホ『とにかく、そういうのがあるってわかった以上は、こっちにも何かあるはずです!』
スマホ『俺たちも探しますんで、留さんは無理しないで安全確保でお願いしますよ!』
留提督「おっけーおっけー! そっちも気を付けてね!」
ピッ
留提督「ビデオモードでも撮影……っと……」ジー
留提督「早く持ち帰って編集してもらわないと……!」
留提督「やっべえ、俺、悪い提督から艦娘を助け出すヒーローになるんじゃね?」ワクワク
587 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/05(日) 13:06:28.34 ID:WAM6fwFIo
少し短いですが、今回はここまで。
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/09/05(日) 14:57:08.89 ID:++VYHg9H0
3日以内当たった!うおおおおおお
589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 18:01:45.38 ID:YBWXBh7hO
乙
セリフのほとんどがmuriのベーイ妖精ェ…
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/05(日) 18:08:50.83 ID:wjOZiD+y0
>588 まじかよ!? 運いいっすねww
あぁ俺のバケツ100....
591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/09/05(日) 19:12:34.37 ID:E9JlGnsv0
今までの勘違い提督の中でも群を抜いて気持ち悪い...
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/09/09(木) 15:13:25.37 ID:8Tb3SQHN0
地雷踏みまくってますね
593 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:32:08.09 ID:nFn2ij2jo
続きです。
594 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:33:03.44 ID:nFn2ij2jo
* 鎮守府内 食堂 *
足柄「生死は問わない、って、過激すぎるわよ!?」
提督「別にいいだろ。そもそもこの島の半分は未開拓なんだ、俺だってこの島にどんな毒を持ってる生き物がいるか把握してねえんだぞ」
提督「そうでなくても転んで死ぬことだってあり得る。そういう意味でも回収を最優先しろって話じゃねえか」
提督「それにああ言えば、この島が危険だって認識もするだろ。それがわかんねーなら野垂れ死ねと言ってやりたいがな?」
千歳「一番危険なのはその過激すぎる准尉の思想だと思いますけど……」
島風「あー、提督!! おっそーい!!」
提督「おう、悪いな。で、潮は大丈夫か?」
潮「は、はい!」
黒潮「潮はええけど、なんか陸奥はんが具合悪そうなんよ……」
陸奥「大丈夫、ちょっと気分を悪くしただけよ」
白露「私たちが明石さんところに連れてってあげたほういいかな?」
提督「お前らじゃなくて、頃合い見て長門と一緒に行ってくれ」
島風「えっ!? 私たちじゃないの!?」
提督「お前らは黒潮に何やったのか覚えてねえのか」ジトッ
黒潮「……」ジトッ
白露「……あ、あははは〜」
595 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:33:48.50 ID:nFn2ij2jo
提督「まあいい。で、潮を囲んだ連中がどこに行ったかなんだが……」
潮「そ、それが……」
* *
長門「……というわけで、どうやらここに来たテレビ局の一人は、艦娘が提督には絶対に逆らわないと信じて来たみたいなんだ」
提督「なんだそりゃ?」
島風「よくわかんないですねー?」
黒潮「随分都合のいい設定やなあ……」
長門「私たちが轟沈せずに余所の鎮守府から離反して来たと言ったら、かなりショックを受けていたようでな」
提督「そういう理屈か……あんまり言いたかねえが、艦娘は未だ海軍の備品扱いだ」
提督「人間に対して逆らうことはない、って認識があって、それを見た連中がそれを普通と認識すりゃあ、そうもなるかもな」
潮「で、でも、どうしてそれがそんなにショックなんでしょう……」
提督「人間が手も足も出ねえ深海棲艦を倒せる艦娘が人間に襲い掛かったら、絶対かないっこねえよな?」
提督「人間を攻撃しないはずの猛獣が、実は歯向かう危険があるとしたら、恐ろしさから殺せと言ってくる奴がいてもおかしくねえ」
潮「そんな……」
提督「逃げた奴がそういう胸糞悪い考えでいたとしたら、陸奥が気分悪くするのも無理はねえんじゃねえか?」
黒潮「あー、そういう……」
596 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:34:33.54 ID:nFn2ij2jo
千歳「あの、准尉? この島には、轟沈した艦娘が流れ着いてくるんではなかったの?」
提督「いいや? その認識で合ってるが、そうでないやつもいる、って話だ。ここにいる艦娘は、全員轟沈しちゃいねえよ」
提督「事情はそれぞれだが……前の鎮守府の司令官がとった行動のせいでこの島に来ることになった、いわば避難してきた艦娘だ」
足柄「霞ちゃんもそうなの!?」
提督「んー……そっちはあとで当人から聞いてくれ。つうか、今日は厨房にいるよな? 騒ぎの時に出てこなかったのか」
長門「貴様が言っただろう、関係ない艦娘は極力この件に顔を出すなと。霞はそれを守っているだけだ」
提督「あー、そういやそうだった……」
<シレイカーン!
提督「ん?」
朝潮「はぁ、はぁ……こちらにいらっしゃいましたか!」
提督「なんだそんなに慌てて」
朝潮「よ、妖精さんからご報告がございます!!」ビシッ
妖精「朝潮ちゃんに運んでもらったから早く来れたよ」ヒョコッ
提督「報告……って、何かあったんだな?」
* *
597 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:35:18.21 ID:nFn2ij2jo
提督「……やっぱり別動隊がいやがんのか」
妖精「とりあえず島のみんなに協力してもらってるけど、手分けして島の中を撮影しようとしてるみたいだよ」
提督「奴らが乗って来た船の中に、居残りしてる奴はいるか?」
妖精「いないね。テレビのクルーは留提督含めて全部で8人だって」
提督「ほーう……そんじゃあ、またお上に告げ口作戦で行くか。手紙書くから船にまでもってってくれるか?」
妖精「うん、まかせて」
長門「なんだその告げ口作戦というのは」
提督「詳しくは後でな。ちょっと急ぎてえし」
足柄「……准尉、あなた、妖精さんと話ができるの!?」
提督「ん? なんだ、知らなかったのか……つうことは、留提督や遠大佐もこのことは知らねえんだな?」
千歳「え、ええ、多分、そういうことになるのかしら。そもそも妖精さんの話題すら上がらなかったし……」
提督「そういうことなら、足柄と千歳は俺が妖精と話せるってこと、あいつらには内緒にしておいてくれ」
千歳「承知しました」
朝潮「そ、それから、司令官……大変申し訳ありません!!」バッ
提督「ん? どうした?」
朝潮「留提督を、見失いました……!」
提督「見失った?」
598 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:36:22.09 ID:nFn2ij2jo
朝潮「留提督が窓から外へ逃げたところまで、若葉さんと把握しておりましたが……」
朝潮「手分けして捜索に向かったものの、朝潮はその後の足取りを掴むことができず……!」
朝潮「何の手掛かりもないままに、妖精さんを連れて戻ってきてしまいました……!」ウルウル
提督「そうか。別にいいぞ?」
朝潮「大変申し訳ありま……えっ」
提督「そんな深刻になるな。見失ったもんはしょうがねえ」
朝潮「で、ですが」
提督「若葉がまだ戻ってこねえってことは、向こうで何かを掴んでる可能性もある」
提督「最終的にあいつがこの鎮守府のことを放送しなけりゃいいだけの話だ」
朝潮「え、あの……私の処分は」
提督「ねえよ。確かに任務に失敗したかもしれねえが、まだ俺たちの負けが決まったわけじゃねえ」
朝潮「司令官……!」
提督「まだまだ打つ手は残ってるさ。とりあえず朝潮と白露、島風は一緒に来い」
島風「おうっ!?」ビクッ
提督「何びっくりしてんだよ」
白露「だって提督、私たちを頼る気配、全然なかったじゃないですか!」
提督「事態が変わったからな。とりあえずついてこい」
足柄「私はここに残っててもいい? 霞ちゃんと少し話したいんだけど。あ、勿論、邪魔はしないわよ!?」
提督「ん? ああ……長門、一応付き合ってやってくれ」
長門「承知した」
599 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:37:04.15 ID:nFn2ij2jo
* それからしばらくして *
* 夕方 鎮守府内会議室 *
留提督「いやあ、まいったまいった」ドロダラケ
クルー1「どうしたんですかその恰好!」
留提督「いやー、調子に乗って林の中をうろうろしてたらこんなふうになっちゃってね〜」
提督「毒蛇がいるかもしれねえってのに、のんきなもんだぜ」
クルー2「いるんですか!? 毒蛇が!」
提督「調べてねえから知らねえよ」
クルー4「調べてないんですか!」
提督「だから何があるかわからないから立ち入るな、ってなるんだろうが」
クルー1「なんて無責任な……」
提督「勝手に島にやってきて勝手に手付かずの林に立ち入って勝手に怪我したら俺の責任かよ? ふざけんな」
提督「そもそも俺はお前らに帰れと言ったぞ。俺の言うことを聞かない連中が俺に責任を押し付けんじゃねえよ、くそが」
クルー3「……それはそうと准尉さん、売店とかに留さんの着替えは売ってないんですか?」
提督「いらねえとよ。明石に酒保開けてもらって、そこで売ってる服で我慢しろっつったんだがな」
600 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:37:48.44 ID:nFn2ij2jo
留提督「趣味じゃないんだよね、安物な上に普通より高いし。他にないの?」
提督「他なんかねえよ、この島の在庫はあの酒保の分だけだ。その酒保を開いただけでもありがたいと思えってんだよ、贅沢ばっか言いやがって」
留提督「だとしてももうっちょっと趣味のいい服、用意しててほしいんだけど。ああ、あとシャワー貸してくれない?」
提督「もう帰れよ……なんで風呂まで恵んでやんなきゃなんねえんだ、この馬鹿野郎が」ゲンナリ
留提督「……」
クルー2「ちょっ……いくらなんでも言い過ぎじゃないですか!?」
提督「馬鹿は馬鹿だろうが。てめえらのやってることは、勝手に他人ん家に入って冷蔵庫開けて文句言うガキより躾がなってねえって言ってんだよ」
提督「着替えたい服がないならそのままにしてるか洗濯しろ。たらいと洗濯板なら貸してやる」
提督「艦娘が帰ってきたときに艤装の海水を流す水場があるから、日が落ちる前にそこで全部洗ってこい」
クルー3「そこまで目の敵にしなくても……」
提督「ああ? さっきから俺は何度も、お前らを歓迎してねえ、っつってんだろが」
提督「轟沈した艦娘の扱いはさっき説明したよなあ? 鳥海や加古を助けるっつう名目自体、上が通すとは思えねえんだよ」
提督「この島に来る前に、ちゃんと上に報告して了解貰って来たのか? それを証明するものを、お前らは何かしら俺に示したか?」
提督「その撮影許可証だって、呉の鎮守府で撮影するときのやつじゃねえのか? 俺には何の連絡も来てねえんだぞ?」
提督「ほんの少し前まで、艦娘の存在は海軍の機密情報扱いだった。艦娘の詳細を知りたいのはなにもテレビ局だけじゃねえ」
提督「お前らが、テレビ局を装ったスパイだって思われても仕方ねえんだよ」
601 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:38:36.30 ID:nFn2ij2jo
クルー4「で、でも、この人のお父様は有名な」
提督「だから知らねえって言ってんだろ、んなことは!」
提督「いくらテレビの世界で有名だろうが、そんなもん、俺たちにも深海の連中にも知ったこっちゃねえっつったろ!」
提督「そのくだらねえ印籠を振りかざして海軍の船に乗って! 海軍巻き添えにして海底に沈みやがったのがお前らの仲間じゃねえのかよ!」
全員「「……」」
提督「はー……ったく、なんでこんな連中に一日潰されなきゃなんねえんだ。マジ面倒臭えぞ、くそが」
ブォォォーーーーン!
提督「……!」
クルー1「な、なんだ、今の音!」
雷「私たちの船の音じゃない!?」
クルー3「ちょっと!? あの船、動いてないですか!?」
留提督「遠大佐!? なんで勝手に船が出航したんですか!?」
遠大佐「わ、私は何も聞いてないぞ!?」
提督「……なんだそりゃ。つまり、お前ら置いて日本に戻ったってことか?」
留提督「そんな話、聞いてないんだけど!?」
提督「あぁ? 俺に言うなよ、お前らの船だろ?」
602 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:39:33.11 ID:nFn2ij2jo
クルー3「どういうことですか!?」
クルー4「撮影機材は船に積みっぱなし?」
クルー1「バッテリーもか!?」
クルー2「船に残ってるスタッフはどうしたんだ!?」
クルー4「冗談じゃないぞ……これからどうするんだ!? 日本に連絡しないと!」
留提督「准尉! この島に船はないの!? 追いかけてよ!」
提督「ねえよ、んなもん」
留提督「は!?」
提督「この島には、船やボートの類は一切ねえっつってんだよ」
クルー4「そんな馬鹿な!?」
クルー2「どうやって日本に帰るんですか!?」
提督「そんなの知るかよ……」
クルー3「准尉さんだって日本に帰るときどうしたんですか!?」
提督「あぁ!? 俺は日本になんか行かねえよ」
クルー3「そういう意味じゃなくてですね! 里帰りとかどうするんですか!」
提督「……駄目だこいつら」ハァ
鳥海「……」
603 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:40:18.45 ID:nFn2ij2jo
クルー4「それより日本に連絡!」
留提督「遠大佐は!?」
雷「今、遠大佐の鎮守府に電話中よ!」
* *
遠大佐「そうか。わかった、急いでくれ
ピッ
雷「司令官、鎮守府のみんなはなんて言ってたの?」
遠大佐「……船が引き返したという連絡自体、私の電話で初めて聞いたそうだ」
雷「えええ!?」
遠大佐「今、どういうことか調べてもらっている。1時間以内にもう一度連絡を貰うことにした」
クルー1「とにかく、連絡はついたんですね」
クルー2「良かったあ……」
留提督「安心したらお腹がすいちゃったなあ。船が戻ってくるまで時間があるんでしょ? 時間も時間だし、ごはん食べようよ」
提督「ああ? 飯だ?」
雷「テレビのスタッフさんがお弁当用意してきたの! 千歳さんが持ってるはずよ!」
提督「……千歳が? そういう話ならちょっと待ってろ、千歳呼んでくる」
604 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:41:03.56 ID:nFn2ij2jo
* 執務室 *
千歳「ええ、持ってきてますよ……」ガックリ
提督「なんだ、いきなりテンション下がったな」
千歳「だって……」トボトボ
千歳の持ってきた大きな木箱<ガシャッ
提督「でけえ荷物だと思ったが、こいつはなんだ?」
千歳「私の飛行甲板です」
提督「これがか。確かに滑走路は書いてあるが……」
千歳「本当はね、この中に私の艦載機が載せてあるの……」
千歳の飛行甲板箱<ガパッ
千歳「でも、今回は私の艦載機は載せてなくって……今は冷蔵庫の代わりにされてるんです」
提督「は?」
千歳「ほら、これ、保冷剤。中に断熱シートも敷いてて。これがお弁当でしょ? こっちが缶ビールで……」ハイライトオフ
提督「……お前の艦載機は」
千歳「……」ズーン
提督「持ってこられなかったと……」
千歳「せっかく航空母艦になったのに、私は何を運んでるのかしら……」ドヨーン
* 工廠 *
雲龍「雲龍型輸送艦ですって?」キュピーン
龍驤「いきなりどしたん?」
605 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:41:48.09 ID:nFn2ij2jo
* 会議室 *
クルー3「人骨!?」
留提督「うん。この島やばいよ? あいつが何を企んでるか、わかったもんじゃない」
鹿島「……」
山風「じんこつ……!?」ガタガタ
ガンビアベイ「Oh my god ...」ガタガタ
留提督「あいつが俺たちに冷たい態度を取り続けてるのは、そういう後ろめたい部分があるからだと思うんだ」
加古「……」
鳥海「そんな……」オロオロ
雷「大丈夫よ! なにかあっても、私がみんなを守るわ!」
遠大佐「ああ、頼りにしているよ、雷」
雷「ええ、任せて!」ニコニコ
クルー1「ただ……留さん、俺たち帰りの船がないんですよ?」
留提督「大丈夫だよ、僕のお父さんに連絡を入れておいたし!」
クルー1「そ、そうですか……! それなら安心ですね!」
606 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:42:34.11 ID:nFn2ij2jo
鳥海「お父様……? 留提督のお父様は、海軍の関係者なんですか?」
クルー2「いや、超有名な俳優さんだよ。海軍にご友人がたくさんいらっしゃるんだ」
留提督「呉の大将さんとも知り合いなんだ!」ムフー
鳥海「そんなつながりがあったんですね」
留提督「そういうことさ! いざとなったら、お父さんが何とかしてくれるよ!」
加古「……」
扉<ゴン
提督「おい、弁当持ってきたぞ」ガチャ
鳥海「えっ、いまのノックだったんですか!?」
千歳「失礼しますね」ガラガラー
提督「ったく、艦載機の格納庫を冷蔵庫代わりにするとか、何考えてやがんだ」ガシポイガシポイ
(提督が格納庫の中の弁当箱を無造作に掴んで机に投げるように置く)
提督「酒まで持ってきやがって。どこで晩酌する気だったんだ? くそが」ガシャンガシャンガシャン
クルー1「ちょっ! 缶ビールもっと大事に扱ってくださいよ! 缶がへこむし! 開けたときに炭酸であふれるでしょ!」
提督「今すぐ飲むわけじゃねえだろ、気にすんなそんなもん」
607 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:43:18.23 ID:nFn2ij2jo
提督「これで全部か? 保冷材とか余計なもんも全部出しちまえ、どうせもう使わねえだろ」ポイポイポイ
千歳「じ、准尉! あとは私がやりますから!」アセアセ
提督「ん? ああ、悪いな、お節介だったか」
扉<コンコンコン
霧島「失礼致します」チャッ
クルー7「い、いててて! ら、乱暴にすんなよ!」
クルー1「!?」
霧島「司令、島内で工作活動を行っていた不審者、3名を捕縛しました」
クルー7「こ、工作活動って……俺たちは怪しいもんじゃないです!」
霧島「説得力がありませんね。見知らぬ人間がうちの島でこそこそしていたら、怪しいという感想以外出てきません」
摩耶「ったくよー、撃たれなかっただけ運が良かったと思えよな!」グイッ
クルー5「だから痛いっての! 引っ張るなよ!」
最上「抵抗するから僕たちだって力づくになるんじゃないか」
三隈「こちらの方みたいに無抵抗なら、乱暴にはいたしませんわ」
クルー6「……」ホールドアップ
608 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:44:06.47 ID:nFn2ij2jo
クルー5「お前、なんで言われるがままなんだよ!」
クルー6「俺、死にたくねーっすから」
留提督「みんな!?」
クルー5「留さん!? 良かった、無事だったんですね!」
クルー1「おいおい、全員船を降りてたのか!?」
クルー7「は、はい、降りてしばらくしてたら、いきなり船が出航してまして……」
提督「つまり、お前らも勝手に島の中を歩き回ってやがった、と」
全員「「……」」
千歳「……あら?」
提督「どうした」
千歳「これだと、お弁当の数が足りなくないですか? 可愛い柄のランチボックスがひとつと、紙箱入りの豪華なお弁当が9つ……」
提督「あん? なんだ、人間の分しか用意してねえんじゃねえのか」
千歳「そうだとしても、このランチボックスを入れると、全部で十個ですよ?」
雷「そのお弁当は私と司令官のよ!」キョシュ!
609 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:44:48.54 ID:nFn2ij2jo
提督「それでもふたつ……いや、よっつ足りねえな。遠大佐と秘書艦除けば、人間8人と艦娘5人だろ?」
クルー4「そ、それは……」
クルー6「あー、すんません。艦娘の分は弁当準備できてないっす」
千歳「えっ、じゃあ一個多いのは」
クルー6「留さんの分っす。そういう指示だったんで」
提督「……」
クルー2「留さんが急にこの艦娘たちも連れて行こうって言うから……!」ゴニョゴニョ
提督「千歳と足柄の分も用意してねえとこ見ると、最初から艦娘の飯を準備すること自体、頭になかったみたいだな?」ジロリ
クルー6「重油でいいって聞いたっすから」シレッ
千歳「……」
雷「ご、ごめんなさい! 私たちが準備できなくて……!」
遠大佐「この3人を連れて行くことになったのは急に決まったことなんだ」
遠大佐「千歳と足柄の両名についても、合流したのは今朝出立前だ。我々の準備不足だ、すまない」ペコリ
提督「……仕方ねえな。この3人と千歳たちの分はこっちで準備する。大したものは用意できねえが、我慢してくれ」ハァ…
610 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:45:34.03 ID:nFn2ij2jo
留提督「良かったあ、鹿島ちゃん一緒にご飯食べようね!」
鹿島「……」ゾワッ
提督「は? お前らはお前らでここで食えよ。こいつらは食堂に連れて行く」
留提督「はあ!?」ガタッ
提督「はあ!? じゃねえよ、こっちにわざわざ飯を持って来させようってか!? そこまで御膳立てしてられっか!」
提督「この部屋の机だって座れて10人程度だってのに、どうやったら全員で飯が食えると思ってんだよ!」
留提督「だったら僕たちも食堂に」
提督「さっきまで勝手に出歩いてた奴がふざけたこと言ってんじゃねえ! 便所以外でてめーらをこの部屋から出す気はねえぞ!」
留提督「なんでだよ!」
提督「なんで……って、お前は人の話聞いてねえのかよ」ゲンナリ
最上「すごいねー、こういうのを厚顔無恥って言うんだっけ?」
霧島「……」ヒキッ
三隈「最上さん!?」ヒィィィ!?
摩耶「いや、思ってても口に出すなよ……あたしもそう思うけど」ボソッ
留提督「横暴だろ! こっちの遠大佐はお前の上官だぞ!」
提督「それがどうした、こっちはこの鎮守府の責任者だ。郷に入らば郷に従えよ。客なら客らしくその家長に従いな」
611 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:46:22.57 ID:nFn2ij2jo
提督「こちとらあくまで『厚意』で『部外者』を鎮守府においてやってんだ。俺のやることが不満なら、早く島から出ていけってんだよ」
留提督「船もないのに! 泳いでいけって言うのか!」
提督「船がなくなったのはお前らの都合だろ。不満なら出ていけ。出ていきたくないなら俺の言うことに従えって言ってんだ。至極単純だろうが」
留提督「遠大佐! いいんですか、こんな下っ端にここまで言われて!」
遠大佐「……あまり言いたくはないが、君のこの島での権限を剥奪してもいいんだぞ」
摩耶「ああ!?」ギロリ
霧島「司令? このような行為こそ横暴と言うべきでは?」
提督「落ち着け。まあ、権限くらいやってもいいぞ。その時はこの島の艦娘全員集めて通達する。その代わり……」
遠大佐「その代わり……?」
提督「うちの艦娘が、お前らの決定にどんな反応を示したとしても、俺は責任取らないからな?」
遠大佐「どういう意味だ?」
提督「事情は様々だが、轟沈させられた過去を持つ艦娘の面倒を、お前がちゃあんとみていられるか、って話だよ」
提督「何度も言ってるが、轟沈した艦娘は深海棲艦になるってのが通説だ。本営だって根拠なく言ってるわけじゃねえ」
提督「この島に人間は俺一人。憲兵にも特警にも常駐を拒否されたくらいだ。俺が危惧してること、理解できるよなあ?」
遠大佐「……っ」
雷「……そ、そのときは私が司令官たちを守るわ!」
提督「ああ、そうかい。ま、やれるもんならやってみな」フン
612 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:47:03.74 ID:nFn2ij2jo
提督「それからもうひとつ、この島には、轟沈して流れ着いた艦娘だけじゃなく、余所の鎮守府から異動させられてきた艦娘もいる」
クルー3「!」ビクッ
留提督「はあ!? 今更都合のいい嘘をつくな!」
クルー4「い、いえ、それは本当なんです! 俺が会った戦艦長門がそう言ってました!」
留提督「え!? ながもんいるのここ!?」
提督「で、そのなかには、その時の提督に歯向かって提督に危害を加えた艦娘や、鎮守府そのものを焼失させた艦娘もいる」
遠大佐「……!」
摩耶(あたしのことだろうなあ……)ウーン
三隈(三隈のことですよね……)
提督「俺がいなくてもそいつらを抑え込める自信があるなら、俺を解任してみればいいさ。俺は止める気ねえからな?」
留提督「あんた……俺たちを脅すつもりか!」
提督「俺は事実を述べてるだけだ。つうか、この島に来るんだったら、ここがどんな場所か、もうちょいしっかり調べておけよ」
提督「とにかく、お前らはもうこの部屋から出るな。これ以上、この島の艦娘たちの居場所を引っ掻き回すんじゃねえ」
613 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/09/14(火) 22:48:10.64 ID:nFn2ij2jo
留提督「だからって鹿島たちだけを連れて行くのはないだろう!? どうなんですか遠大佐!!」
遠大佐「ふむ……千歳と足柄はともかく、鹿島と山風、ガンビアベイは私の部下だ。それを君が勝手に連れ回すのはどうかと思うが?」
提督「ん……確かに。それはそうだな」
留提督「おおっ!」
提督「そういう話なら、遠大佐とその秘書艦が食堂に同行するのは認める。が、留提督とその一味の退室は不可だ」
留提督「あああああもおおおおおお! なんでそうなるんだよおおおお!」バンッ!
提督「そうなるだろうが。自分がやったことを省みろよ、もう説明すんの面倒臭すぎんぞ……」ハァ
提督「ともあれ、加古と鳥海も一日座りっぱなしで疲れたろ。食堂へ向かうぞ」
鳥海「は、はい!」スクッ
加古「……」ガタッ
提督「遠大佐たちも準備しな。お前たちもだ」
鹿島「は、はい……! みなさん、行きましょう」スクッ
ガンビアベイ「Y, Yes...」ビクビク
山風「うう……」ビクビク
留提督「……くそぉ……!!」ギリギリッ
614 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/09/14(火) 22:49:03.24 ID:nFn2ij2jo
今回はここまで。
615 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/16(木) 13:06:01.47 ID:OFnX5ecu0
乙。
提督チームの切り札は中将への手紙で
留提督御一行の切り札は骨の写真かな?
そうなると墓場島が流刑所扱いな話も出てくるかも
まぁ今一番気になるのは雷だけどな。
616 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/17(金) 06:25:47.57 ID:bN3nuc1W0
中将は骨のことしってるっけ?後クルー達が写真を出しても面倒くさくなるだけで害は、無さそうかな?
617 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/09/17(金) 06:26:52.88 ID:bN3nuc1W0
中将は骨のことしってるっけ?後クルー達が写真を出しても面倒くさくなるだけで害は、無さそうかな?
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