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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」
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452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/05(土) 21:53:12.22 ID:phFxlZkR0
そろそろ投稿の予感
453 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 21:57:05.13 ID:Fa4j/EEho
>>452
なんでわかるんですか……(白目
続きです。
454 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 21:57:49.97 ID:Fa4j/EEho
* 北東の砂浜 *
霞「なによ、また一人でぐじぐじ悩み事?」
提督「まあな」
霞「まあな、って……あんたねえ」ハァ
霞「……朧と吹雪から聞いたわよ。朝潮姉のことと、那珂さんのこと」
提督「そうか。朝潮はまあともかく……那珂のことは、どうにもうまくいかなくてな」
提督「あちらを立てればこちらが立たねえ。まったく、世の中はうまくできてやがんな、ってなぁ」
霞「当たり前じゃない、あんたは欲張り過ぎなのよ。あれもやってこれもやって、それをあんた一人で考えて」
霞「三人寄れば文殊の知恵、って、朧も言ってたわよ。もう少し誰かを頼ったらどうなのよ!」
提督「俺は楽をしたいだけのに、お前らに頼るのはどうなんだ?」
提督「今回の話だって俺の我儘だからな。これでも目いっぱい頼りにしてるつもりだぜ」
霞「……ふーん、私は頼りにならないってわけ?」
提督「頼れるか、って意味では頼りになる方だと思ってるさ」
提督「ただ、今回の相手は無視しなきゃいけねえんだよ。一言物申さずにはいられないお前にゃ向かねえなって判断しただけだ」
455 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 21:58:35.42 ID:Fa4j/EEho
霞「はぁ……わかったわよ。あんたがそこまで言うなら、従うわ」
提督「そうしてもらえると助かる。ついでに、今回手伝いを頼んだ連中には徹底して無視しろって伝えてるんだが、お前もできるか?」
霞「いいわよ。どうせ言っても聞く耳持たない相手なら、最初から相手にしないほうがいいわね」
霞「でも、手助けがいるんなら、黙ってないで私たちに言いなさい。いいわね?」
提督「ああ。また蹴落とされたくねえしな」
霞「っ! か、カナヅチ相手に、そんなことするわけないでしょ!? バッカじゃないの!?」
提督「……悪かったよ、そんなに怒んな」
霞「だいたい! 泳げない自覚があるんなら、海辺にぼーっと突っ立ってんじゃないわよ! 波に掻っ攫われたいの!?」
提督「……波に、か……」
霞「? ちょっと!?」
提督「……ん、ああ、悪い。ぼーっとしてた」
霞「な……何やってんのよもう! 大丈夫なの!?」
提督「ああ……海に落ちたときのことを思い出してな」
456 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 21:59:20.86 ID:Fa4j/EEho
提督「なぜかと言われたら説明できねえが、海そのものは嫌いじゃなかったんだ。不思議と、落ち着くっつうか……」
提督「海の中に、沈んでいく時も……そう……」
提督「……」
霞「ちょっ……しっかりしなさいよこのクズ!!」ハライゴシ
提督「うお!?」グイッ
ドシャッ
霞「……ったく! 頭使いすぎて、自分が疲れてんのに気付いてないんじゃないの!?」
霞「私たちに無理するなって言ってるんだから、艦隊の指揮を執ってるあんたこそ実践して見せなさいよね!」
提督「……わかったよ。確かに呆けてる場合じゃねえしな」ムクッ
霞「ったく、もう……話を変えるけど。あんた、好きな食べ物ってある?」
提督「あん?」
霞「疲れてるみたいだから気を使ってあげてるのよ。少しは察しなさいよね、バカ」
提督「……」
霞「で? 何が好きなのよ」
提督「……悪いが、ぱっと思い付かねえな。これと言って、好きなもの……」
457 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:00:05.02 ID:Fa4j/EEho
霞「そう。なら質問を変えるわ、食べたいものってある?」
提督「……んー、そうだな」
霞「……」
提督「豚レバーの竜田揚げ」
霞「レバー?」
提督「最近食ってねえな、と思ってな。久々にそういうのも食いてえな、と思っただけだ」
霞「ふぅん……苦手な人も多いって聞くけど、あんたは違うのね」
提督「好き嫌いは別にして、スーパーでバイトしてた時に売れ残ってたのを安く買ってたんだ。まあまあうまかった記憶があるがなあ?」
提督「そういやモロヘイヤとかも一時期流行ったんだが、あれも調理方法がわからなくて売れ残って買わされたりしたな」
霞「ああ、あれね……どうやって食べてたの?」
提督「ネギと紫蘇と茹でたモロヘイヤ千切りにしてめんつゆに入れて、そうめん食ってた」
霞「よく考えるわね、そんなの」
提督「なんかの雑誌で見たんだ。大体の料理の知識は本からだな」
458 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:00:50.22 ID:Fa4j/EEho
霞「ふーん……じゃ、じゃあ、逆に苦手なものってなによ?」
提督「あー、馬鹿みたいに唐辛子入れたカレーとか、胡椒の味しかしねえラーメンとか、下が見えないくらいマヨネーズかけたどんぶり飯とか……」
提督「一つの器に、どばーっとひとつの調味料だけを入れたよーなのは理解できねえ。薄味のが好みだし、激辛とか激甘とかは食う気しねえな」
霞(……つくづくここに流れ着いた比叡さんがあの比叡さんで良かったわ)
提督「あとはナントカの踊り食いとか、芋虫を食えとか、そういうゲテモノもパスだな。せめて食える見た目にはしてほしいぜ」
霞「なるほどね……よくわかったわ」
提督「それはそれとして、肉だって貴重なのに、レバーなんて保存のきかねえもん、わざわざこんな離島に送ってくれるかね」
霞「そんなの、聞いてみなきゃわからないでしょ! 聞く前から諦めるなんて、情けないと思わないの!?」
提督「贅沢が絡む話だからな。俺も向こうには頼りたくないし、期待はしないほうが気楽だぜ」
提督「それがなくても、釣り人は増えたし、伊8が海底の海産物とってきてくれるようになったから、献立もだんだん豪華になってるじゃねえか」
提督「お前たちの料理の腕も上がってるし、これ以上の贅沢を言っちゃあ罰が当たるだろ」
霞「……ふ、ふん! あんたはもう少し欲を出したらいいのよ! ったくもう!」プイッ
提督「欲張りだの欲を出せだの、さっきと言ってることがあべこべだな」ボソッ
霞「何か言った!?」ギロリ
提督「何も?」
459 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:01:50.74 ID:Fa4j/EEho
* それから数日後 執務室 *
鳥海「准尉さん、申請用の書類の確認、終わりました」
提督「ご苦労さん、っと……悪いな、手伝ってもらって」
鳥海「いえ、お世話になっていますので」ニコ
潮「わぁ……字が綺麗……!」
提督「これで摩耶と同じ高雄型だからなあ……口の悪いあいつとは大違いだ」チラッ
加古「ふわ〜ぁ……」ゴロゴロ
提督「で、ずっとソファでごろごろしてるあいつが古鷹と同型っつうのも、なんつうか、なあ……」
潮「古鷹さん、いつもお掃除してる印象ありますから、対照的ですよね……」
提督「働く奴とだらける奴、元気な奴とお淑やかな奴ってことで、世の中どっかでバランス取れてんのかねえ……」
扉<コンコンコン
武蔵「戻ったぞ」チャッ
筑摩「提督、こちらは明石さんから今月の収支報告です」
提督「おう、ご苦労さん。潮、数字チェック手伝ってくれ」
潮「は、はい!」
460 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:02:35.12 ID:Fa4j/EEho
武蔵「……おい、加古」
加古「ふぁい……?」ムニャ
武蔵「貴様、本当に古鷹の妹か?」
加古「うん、そーだよー? 古鷹型の2番艦、加古ってんだー」ムニャー
武蔵「先日の砲撃演習では高得点を叩きだしたと聞いているが……これでまともに戦えているのか?」
鳥海「驚かれるのも無理はないと思いますが、これでも加古さんは遠大佐の鎮守府では五指に入る実力者ですよ?」
筑摩「そ、そうなんですか?」
鳥海「はい、海の上ではギアが入るといいますか、潜水艦相手でさえなければ、だいたい任せられます」
鳥海「その分……陸の上では、こうなんです」
武蔵「なるほど。それでは、加古を誘ってまた演習しに行くか?」
加古「うん、また明日ねえ〜」ゴロゴロ
武蔵「……」
鳥海「その、腰が重いのもたまにキズでして……」
461 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:03:34.96 ID:Fa4j/EEho
扉<コンコン
摩耶「よっ! 邪魔するぜ!」ガチャー
鳥海「ま、摩耶!? 准尉さんにそんな挨拶、失礼じゃないの!?」
摩耶「あん? いつもこんな感じだぞ? ノックだってしたし、あいつもこれでいいって言ってるし」
鳥海「……」アタマカカエ
摩耶「そんなことより、加古借りてっていいか?」
加古「んあ〜?」ムクッ
摩耶「いやあ、この前一緒に出撃した時、お前すごかったよなあ! また一緒に出よーぜー!」
加古「んー、そのうちねえ〜」
摩耶「そのうちぃ? 今見せてくれよ、今ー!」ペシペシ
摩耶「おーい、提督からも言ってやってくれよー、加古に出撃してくれってさぁ」
鳥海「摩耶っっ!?」
武蔵「提督なら書類の数字を確認中だ。少し待ってやれ」
摩耶「そっか、んじゃ仕方ねえな」
462 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:04:34.99 ID:Fa4j/EEho
鳥海「武蔵さんも摩耶の態度は諫めないんですか」タラリ
武蔵「提督が良いと言っている以上、私が余計な気を回す必要もあるまいよ」
鳥海「……摩耶、あなた、よくこれまで解体されないで来たわね……」
摩耶「まー、あたしもここへ来て日が浅いんだけどな。前の鎮守府だと、いっつも霧島さんに助けられてたっけなあ」
鳥海「え」ヒキッ
摩耶「しょーがねーだろー!? C提督は、霧島さんの手柄をことごとく否定するんだぜ!?」
摩耶「てめーの気に入った艦娘ばっかり贔屓してデレデレしやがって! あんなくそ野郎に頭下げてられっかよ、くそが!」
鳥海「摩耶ああああ!?」プルプル
筑摩「あの……摩耶さんは、どうしてこの鎮守府に来たんですか?」
摩耶「あれ、話してなかったっけか。あたしは命令違反扱いでここに送られたんだよ」
武蔵「それは私も初耳だぞ……?」
鳥海「なんでも、姫級の深海棲艦と交戦中、攻撃するなって指示に背いたからだ、って、摩耶に聞きましたけど……」
筑摩「それは、作戦とかそういう意図ではなく……?」
摩耶「それを作戦って言うなら、手柄を他の艦隊に取ってもらうための作戦だろーな」
摩耶「今思えばあの指示って、あたしや霧島さんをわざと沈めるつもりだったんじゃねーかなー」
463 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:05:21.86 ID:Fa4j/EEho
鳥海「私には、摩耶のその態度に問題があるとしか思えないんだけど……」
摩耶「だーかーらー、そいつは元の鎮守府にいるC提督が悪いんだよ。霧島さんのこと、ろくに見ないで文句ばかり言いやがって、くそが!」
鳥海「摩耶……せめてその言葉遣いくらいは、なんとかならないの?」ガックリ
摩耶「それは提督にも言ってやれよ。なんであたしにばっかり言うんだよ、不公平だろー?」
鳥海「……」アタマカカエ
武蔵「なあ提督? 貴様はその言葉遣いを直す気はないのか?」
提督「この齢で今更この性格を矯正すんのは無理だろ……っと、これでよし。潮、大淀の承認貰う準備をしといてくれ」
潮「は、はいっ!」
提督「で、何の話だっけか?」
摩耶「ん? ああ、加古を貸してくれって話だけど」
鳥海「それより前に、准尉さんへの言葉遣いの話でしょ……」
提督「言葉遣い? そんなの別に構やしねえよ」
摩耶「……」カチン
潮「て、提督! 言い方……!!」ハラハラ
464 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:06:04.94 ID:Fa4j/EEho
摩耶「おい提督、お前、あたしのことどうでもいいと思ってんのか?」
提督「んん? なんだそりゃ?」
潮「あわわ……!」
筑摩「あの……提督は、艦娘にはできる限り好きにさせているわけですよね? 摩耶さんの言動にも言及はしないということですか?」
提督「ああ。誰かが被害を被ってるわけじゃなきゃあ、摩耶がどう振る舞おうと俺は構わねえよ」
摩耶「な、なんだよ、そういうことかよ……」
提督「まあ、それを鳥海が不快に思うんなら、他にもそう思う奴を集めて、当事者間で話し合ってくれってだけだ」
武蔵「ふむ……」
提督「鳥海みたいに礼儀正しくしろって言い分もわからなくもねえが、摩耶が無理だっつうんなら無理強いはしねえさ」
提督「俺も礼儀正しくしろって言われたら、面倒臭えから嫌だって言うだろうしなあ」
摩耶「めんどくせーのかよ!?」
提督「面倒臭えだろ。一応、中将とかと話すときとかなら、敬語使うくらいの最低限の礼儀はわきまえてるつもりだけどな」
筑摩「一応ですか……」
提督「そうでないなら、いくら取り繕ってもどうせそのうち襤褸が出るんだ。だったら最初から曝け出してた方が楽だろ?」
465 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:06:50.92 ID:Fa4j/EEho
提督「それに、ぶっちゃけここが自分の家みてえなもんだしな。いい子ちゃんのふりして生活なんてやってらんねえ」
提督「とはいえ、いくら自宅と同じでも、だらしない恰好でうろつかないとか、そういう程度の気遣いはしてるつもりだがな?」
鳥海「家、ですか……? もしかして、准尉さんはずっとこちらに住んでおられるんですか? 日本へ帰ったりは……」
提督「帰る?」
潮「!!」ビクッ
提督「帰るもなにも、日本に俺の居場所なんかねえよ。ここが俺の終の棲家だ」
鳥海「え……?」
潮「ちょ、鳥海さん、それ以上は訊かないほうが……」
鳥海「居場所がない、って……ご家族はいらっしゃらないんですか? 心配されるのではないかと……」
潮「ちょ……!!」ビクビク
摩耶「やめとけ鳥海。それ以上訊くな」スッ
鳥海「え?」
摩耶「わけありなんだよ。こいつは、妖精と話ができるのを馬鹿にされて、家族にも避けられてたらしいからな」
鳥海「……!」
筑摩「……」
466 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:07:49.69 ID:Fa4j/EEho
武蔵「……なるほど。貴様の性格は、そういう環境によって作られたということか」
提督「そういうこった。思い出しても不愉快なだけなんでな、生きてはいるだろうが、俺の家族はいないと思ってくれ」
鳥海「それは……大変失礼致しました」ペコリ
妖精「提督? 家族はいないわけじゃないでしょ?」ヒョコッ
提督「……」
妖精「こらー! 無視しないのー!」
武蔵「妖精よ、家族がいないわけではない、というのはどういうことだ?」
妖精「うん、前に医療船が来て、その船に乗ってた女性提督に、家族と不仲は良くないって説教されてね」
提督「おい、妖精!」
妖精「そこで、今の自分の家族は、この鎮守府に一緒にいる艦娘たちだ、って言ったんだよ」
提督「……っ」セキメン
武蔵「ほう……この男にしては、なかなか熱い台詞じゃあないか」ニヤリ
提督「にやにやしてんじゃねえぞ、くそが……」
武蔵「いやいや、私は感心しているんだぞ? ふふ、そうか、家族か……」チラッ
潮「!」
467 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:08:35.27 ID:Fa4j/EEho
武蔵「なあ提督。例えばだが、お前にとって潮は、家族だとしてどんな間柄になるんだ?」
提督「あぁ? 潮か?」チラッ
潮「……!」
提督「うーん……年の離れた妹ってところか? 娘と呼ぶにはでかすぎるし……どっちにしろ庇護対象って感じだな」
武蔵「ほほう。それはどういうところからだ?」
提督「遠慮がちで臆病、心配性で人に気を使いすぎてるきらいがある。昔はずっと不安そうな顔してたしな」
提督「最近は眉を顰めることもなくなったし、俺を叱るくらいには馴染めたから、いい傾向だと思うぜ?」
提督「とはいえビビリなのは変わってねえからな。昔のトラウマもあることだし、俺も極力、潮には触らないようにしてる」
潮「……!」ハッ
武蔵「触らないようにしている? なんだそれは」
提督「潮は前の鎮守府でひどいセクハラを受けたんだよ。だよな、潮?」
潮「……」コク
提督「だからそれを思い出させないように、男の俺は潮に触らないようにしてるってことさ」
潮「……」シュン
468 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:09:50.08 ID:Fa4j/EEho
提督「ま、この鎮守府には、思い出したくない過去を持つ奴がたくさんいるんだ。俺も含めて、な」
提督「だからちょっとだけ気を遣ってもらえると、助かる」
筑摩「……」ウツムキ
鳥海「そういうことですか……」
武蔵「なるほどな。貴様が家族と呼ぶ理由、確かに合点がいくものだ」
提督「所詮は古傷の舐め合いだけどな」
提督「ここに来る奴はひどい目に遭わされてきた奴ばかりだし、少しでも良くしてやりたいと思って艦隊の指揮を執ってるだけさ」
妖精「提督が素直じゃないせいで、誤解されまくりだけどね?」
提督「今日はなにかと一言多いなお前……」
摩耶「ふーん、潮が妹か……」
提督「まあ、家族の枠に当てはめての話だからそう言ったが、真面目に妹扱いする気はねえからな?」
提督「そもそも、潮には姉妹艦の朧や、前の鎮守府からの付き合いの長門がいるし……」
提督「最近じゃあ陸奥とも仲良くなったみたいだしな。俺が出る幕でもねえだろ」フフッ
武蔵「!」
摩耶「!」
鳥海「!」
潮「!」
469 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:10:36.66 ID:Fa4j/EEho
提督「この調子で、穏やかに過ごせる奴が増えりゃ安泰……って、なんだお前らその顔は」
武蔵「い、いや……」
摩耶(不意にいい笑顔見せやがって……)
潮(あんな風に笑ってるところ、初めて見ちゃった……)
鳥海「とてもいい笑顔でしたよ? 娘を思うお父さんみたいな……」
提督「お父さんだぁ?」ジロリ
鳥海「」
潮(もう戻っちゃった……)タラリ
妖精「提督、提督。睨んじゃ駄目だよ?」
提督「ああ、悪い。どうも父親ってものにいいイメージがなくてな……」
鳥海「ほ、本当にご家族……というか、ご両親が嫌いなんですね」
提督「俺の血縁に、ご丁寧に『ご』なんか付けなくていいぞ? 『ゴミ』ならつけてもいいが」
摩耶「おい、鳥海に汚ねえ言葉喋らせんじゃねーぞ、くそが!」
提督「……悪かったよ」フン
摩耶「あん? やけに素直だな……」
470 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:11:20.10 ID:Fa4j/EEho
提督「別に素直ってんじゃねえよ。普通なら、そうやってお互いを思い遣るのが兄弟……っつうか、お前らは姉妹か。姉妹の理想のあり方だろ?」
摩耶「あ、ああ、そりゃー当然だと思ってるけど……」
提督「だったらそれでいいだろうが……ったく」
妖精「……もしかしたら、提督は嫉妬してるのかもね」
鳥海「嫉妬?」
妖精「提督にも弟さんがいたんだけど、提督の両親……特に父親に、提督の言うことは信じるな、耳を貸すな、って言われ続けてたから」
妖精「結局、弟さんも同じように提督を蔑むようになっちゃってね。お互いを助け合うなんてことがなかったから……」
妖精「憧れていたからこその、さっきの笑顔だったんじゃないかなあ」
全員「「……」」
提督「……ふん」
扉<コンコンコン
大淀「失礼致します」チャッ
大淀「提督、くだんの艦隊がこの島に来る予定日がわかりました」
提督「……!」
471 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:12:04.98 ID:Fa4j/EEho
今回はここまで。
472 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/06/07(月) 07:39:41.44 ID:j8wkSRAO0
>>452
エスパーで草
面白い展開待ってますよ。
473 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2021/06/07(月) 19:54:35.04 ID:svFZL7Gw0
このあたりで青葉が来る予感まぁこの前は、たまたまだし当たる気がしないけど
474 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/13(日) 18:20:42.20 ID:IOCo11OE0
乙だす
475 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/25(金) 20:52:42.22 ID:1sytHWto0
投稿の予感ッ!(やりたい)
476 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/06/26(土) 16:50:11.04 ID:808TipeK0
いやまだまだだなあと一週間ぐらい
477 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/06/26(土) 20:09:23.39 ID:LZmzf1e20
一週間はだいぶ賭けたなぁw
正直良作だったら時間なんていくらかかってもいいので良いストーリーを期待
478 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:26:01.41 ID:6yCIFqn8o
ハードル上げるの勘弁してください……
続きです。
479 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:26:46.74 ID:6yCIFqn8o
* 墓場島鎮守府 埠頭 *
(提督が双眼鏡を構えている)
提督「……おいおい、マジで来やがったぞ。どの面下げてこの島に乗り込もうってんだ、あの連中」
大淀「提督、早く準備を。あのサイズの巡視船なら、15分ほどで到着します」
提督「チッ、つくづく面倒臭えな」
大淀「私だって相手にしたくありません。できることなら今すぐ帰ってほしいと思ってますよ」
大淀「ですが、誰かが動かなければ追い返すこともできません。提督、お願いします」
提督「……何か言われたのか?」
大淀「いいえ? 自分たちで沈めておいて『助けてあげる』とでも言うような相手の態度が気に入らないだけです」
提督「……十分じゃねえか。さぁて、とっとと準備するか」
* * *
* *
*
480 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:27:32.24 ID:6yCIFqn8o
* 墓場島鎮守府 埠頭 *
(接岸した海軍の巡視船から降り立つ数名の男女)
遠大佐「よいしょ……っと。雷、大丈夫?」
雷「ええ、大丈夫よ! ありがとう司令官!」ニコッ
雷「留提督も大丈夫?」クルッ
留提督「とうっ!」ピョンッ スタッ
留提督「墓場島上陸!」ビシッ
雷「きゃー、格好いい!」パチパチ
留提督「ふふっ、ありがとう! ……ふーん、ここが墓場島かあ。当然だけど、鎮守府の建物もちっちゃいな」キョロキョロ
留提督「もしあの二人が轟沈していたら、この島に流れ着いている可能性が高いんだね?」
雷「そうみたい。私たちが本営で聞いてきたから間違いないわ!」
留提督「で、もしかしたら、あの二人が助かってるかもしれなくて、ここで働いてるかもしれない、と……」
雷「でも、本当に轟沈していたら、連れて帰ることはできないわ。聞いたでしょう? 轟沈した艦娘は……」
留提督「うん、それはわかってるよ」ウンウン
481 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:28:16.91 ID:6yCIFqn8o
留提督「でも、この鎮守府はそれを承知で受け入れていて、その轟沈艦が原因の問題もこれまで起きていない」
雷「そ、そうね……」
留提督「でも、それよりも! この島に住んでいる艦娘たちのことを第一に考えれば!」
留提督「ただでさえ戦闘で傷付いて死の淵を彷徨い、せっかく生き延びたっていうのに……」
留提督「こんな小さい島に隔離されっぱなしで戻ってくることができない……それはあんまりじゃないか!?」
留提督「早く元の鎮守府に戻してあげるか、それに近い環境に戻してあげないと可哀想だよね!」
雷「え、ええ、それはその通りだわ……!」
留提督「だよね? だから、僕たちでこの仕事ができないか、相談してみようと思うんだ」
雷「ええええ!?」
遠大佐「……」
留提督「遠大佐にはこの話は既にしているんだ。ここの提督准尉にこの話をして、この鎮守府の艦娘を何人か引き取って……」
留提督「呉の鎮守府でリハビリをしてもらおう、という話に決まったんだ!」
雷「だ、大丈夫なの司令官!?」
遠大佐「……」ニコニコ
482 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:29:01.79 ID:6yCIFqn8o
船内から聞こえる声1「そ、そんな話聞いてないですよ!?」
声2「お、おちついて……!」
声3「そ、そもそも、返して貰うこと自体、無理ですってば……!」
留提督「あの声は……」クルッ
声2→山風「司令官が、知らないはず、ない……!」
声3→ガンビアベイ「無理です! 無理無理……!」
声1→鹿島「遠提督さんに確認してください! 轟沈した艦娘の扱いについて、御存知のはずです!」
留提督「ああ! 鹿島じゃないか!!」パァッ
鹿島「ひっ」ビクッ
留提督「そんなに僕が心配なのかい? 大丈夫だよ、何も怖がらなくていいんだよ」カケツケダキヨセ
鹿島「ひぃっ?」ダキヨセラレ
留提督「それとも、僕に会いたくてじっとしていられなかったのかなあ?」カオヲチカヅケ
鹿島「ひいいいっ!?」オシリサワラレ ゾワゾワッ
山風&ベイ(うわああ……)ドンビキ
鹿島「し、知りませんっ!!」バッ タタタッ…
留提督「……行っちゃった。つれないなあ」
483 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:29:47.21 ID:6yCIFqn8o
テレビクルー1「留さーん、俺たちも上陸していいんですかー?」
クルー2「カメラ準備できてますよー!」
留提督「あーそうだね、みんな入って!」
ゾロゾロ
クルー3「ここが墓場島かあ」
クルー4「本当に何もねえな〜」
留提督「ほら、千歳も足柄も! この島の准尉と知り合いなんでしょ? 早く来なよ!」
千歳「……」
足柄「……」
千歳「まさか、私たちがこの島に足を踏み入れるなんてね……」
足柄「ねえ、留提督が鳥海と加古を連れ戻すって話、聞いてる?」
千歳「初耳よ……流れ着いてきたか確認するだけ、一言お詫びの言葉を、って、それこそ何度も確認したじゃない」
足柄「そうよね? 私が聞き逃したのかと思ったわ……」
千歳「……はぁ」
484 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:30:31.60 ID:6yCIFqn8o
足柄「千歳、大丈夫?」
千歳「大丈夫じゃないわよ……留提督は本職でもなんでもないのにルール無視しようとするし、遠大佐も全然頼れなさそうだし」
千歳「ただでさえ、ここに立ち入った提督たちが不幸な目に遭ってるって聞いてるのに、それを話してもまるで緊張感がまるでないし」
足柄「そ、そうね……この島に入ってもいない波大尉も、まさかあんな風になっちゃうとは思いもしなかったわ」
千歳「准尉と相容れないところに触れてしまったのがまずかったんだけど、なんだかそれを思い出すのよね」
千歳「留提督の楽観的な言動といい、行き当たりばったりな行動といい、ここまでやってしまえばこっちのもの的な発想といい……」
足柄「ああ……」
千歳「気が重いわ……」ズーン
足柄「……あの人たちが准尉に接触する前に、准尉に事情を説明しないと駄目そうね」
千歳「それはそうだろうけど……今から行くの?」
足柄「ええ、行ってくるわ。何もしないよりはマシよ!」ダッ
留提督「あ、おーい! 足柄、どこへ行くんだ!?」
千歳「提督准尉に事前に話をしに行ったのよ。みんなここで待ってて!」
クルー1「追いかけましょう!」
クルー2「カメラ回せ! 早く!」
千歳「ちょ、ちょっと待って!? まだ撮影許可取ってないでしょ!?」
485 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:31:18.08 ID:6yCIFqn8o
* 鎮守府内 玄関ロビー *
提督「ったく、どいつもこいつも、何の連絡もなしに勝手に上陸しやがって……」
若葉「なめられているんだろうな。提督、これを機に少しは地位向上を考えてもいいだろう?」
提督「んな面倒臭えことしてられるかよ。人間の役になんか立ちたくねえっつうの」
若葉「嫌だ嫌だで世の中渡っていけるほど世間は甘く……ん?」
タッタッタッ…
足柄「玄関はこっちかしら……あっ」
提督「!」
若葉「あなたは……足柄さんか」
足柄「良かった、丁度ここにいたのね。提督准尉、お久し振りです」ペコリ
提督「……久しぶり? ……もしかしてお前、医療船にいたあの女提督の……」
足柄「はい、もと波大尉鎮守府所属の、足柄です。数日前から遠大佐鎮守府に身を置かせていただいています」
提督「もと? 数日前から……?」
若葉「知り合いなのか?」
提督「一度会ったことがある、って程度だが」
486 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:32:01.31 ID:6yCIFqn8o
足柄「私のことは後にしていただいて。突然で申し訳ありませんが……」
提督「鳥海と加古か?」
足柄「え!? は、はい、遠大佐鎮守府所属の鳥海と加古がこの島に流れ着いていないかと……」
提督「来てるぞ」
足柄「来てるの!?」
提督「ああ。だが確認してどうする気だ?」
足柄「……実は、ある有名人……留って言う人なんですけど、その人が先日、一日提督として遠大佐の鎮守府で指揮を執っていまして」
足柄「そのときに、無理を押して進軍させたために、鳥海と加古が行方不明になってしまったんです」
足柄「それで、もし二人が見つかったら、私たちの鎮守府に戻ってもらうことができないか、ご相談をと……」
提督「ふーん……別にいいぞ」
足柄「いいの!?」
提督「加古と鳥海の二人が納得してそう望むんだったら、な。それから、俺は責任取らねえぞ」
足柄「……」アッケ
提督「なんだその顔は」
487 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:32:47.33 ID:6yCIFqn8o
足柄「だ、だって、准尉は御存知でしょう? 轟沈した艦娘は深海棲艦になるかもしれないって話!」
提督「ああ。だから、遠大佐だったか? そいつがその責任を取るんだろ? 鳥海や加古もそれでいいっつうんなら俺は口出しはしねえよ」
提督「捜索に来た以上はそれなりに反省してるのかもしれねえが……だったら最初から無理させんな、とも言いたいがな」
提督「それで、ちゃんと上には断ったんだろうな? 俺とかじゃなく、本営の将官クラスの連中に、轟沈経験のある艦娘を運用したいって話をよ」
足柄「い、いえ……」
提督「うちが轟沈した艦娘をそのまま運用するのに、いろいろな条件を提示して中将に申請して、特例中の特例で許可が出たんだ」
提督「同じことを遠提督はやったのか? やらないと、連れて帰った後、練度も記憶も全部まっさらにさせられるはずだぞ?」
若葉「!?」
足柄「え、えええ……本当ですか、それ!?」
提督「まっさらにさせられるって話は眉唾だがな。ただ、轟沈した艦娘をそのまま運用するのは、この鎮守府以外に許されてないはずだ」
提督「それがなぜかは、お前ら把握してるか?」
足柄「……いいえ、少なくとも私は初耳です」
提督「その様子だと、遠提督はなぁんも考えずにここへ来たみたいだな?」
足柄「かもしれませんね……」ハァ…
488 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:33:31.49 ID:6yCIFqn8o
提督「海軍の人間ならそのくらい知ってて、ちゃんとわかってここに来ると思ってたが……」
足柄「千歳の言う通り、嫌な予感がするわね……」アタマオサエ
足柄「ごめんなさい提督准尉、この話、一度持ち帰らせていただきます。今の話が本当なら、二人を迎え入れるための準備が不足してるわ……!」
提督「ああ、ちょっと待て、連中は埠頭にいるんだろ。出向いてやるから一緒に来い」
足柄「え?」
提督「俺が直接行ったほうが話は早えだろ」
若葉「確かにその方が話は早いだろうが……」
足柄「……」
若葉「足柄さん?」
足柄「……あ、ううん、なんでもないわ」
若葉「若葉もここへきてまだ日が浅いが、なんとなく言いたいことはわかる」
若葉「提督は、言葉に遠慮のない人だ。仮にも大佐にどんな言葉を浴びせるか、不安で仕方ない……」
足柄「……」
若葉「若葉たちは余計なことを言わないよう指示されている。なるようにしかならない、諦めてくれ」
足柄「そう……そうよね。無理言ってんのは留提督だものね」ガックリ
提督「ああ、そうだ足柄、あいつらカメラ持ってきてるだろ。最初に撮影やめさせるように言ってきてくれねえか?」
提督「俺はテレビに映る気はこれっぽっちもねえ。カメラを構えてる間はお前らの上陸は許可しない、迷惑だってことを最初に伝えてくれ」
足柄「え、ええ、わかりました」
489 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:34:46.77 ID:6yCIFqn8o
* 埠頭 *
足柄「……ということなんです」
留提督「えっ、それじゃ、せっかく来たのになにもしないで帰ることになるの?」
足柄「えっ」
クルー1「せっかくだから取材に行くのはいけないんですか?」
クルー2「この島の提督になんとか許可を貰って撮影させてもらいましょうよ」
留提督「せっかく撮影期間を延長してテレビのクルーも乗って来たのに、撮れ高なしはまずいよね」
足柄「で、でも、撮影は駄目だって言ってるのよ!? このままじゃあなたたちは提督と話ができないわよ!」
クルー2「仕方ない……このカメラ、ケースにしまってきてくれ」
クルー3「は、はい!」
留提督「これでいいんでしょ? 提督准尉さん、呼んできてよ」
足柄「え、ええ……」クルッ タタッ
クルー1「……よし、行ったな? 持ってきたか?」
クルー4「はい、小型カメラ持ってきました!」ヒソヒソ
クルー1「お前のウエストポーチに仕込んで撮影できるな?」ヒソヒソ
クルー4「はい、いけます!」
490 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:35:32.35 ID:6yCIFqn8o
(足柄が提督と若葉、朝潮を連れて埠頭に戻ってくる)
足柄「呼んできたわ。こちらが提督准尉よ」
提督「……」
足柄「こちらは遠大佐とその秘書艦の雷ちゃん、そして留提督よ」
遠大佐「……」ニコニコ
雷「雷よ! かみなりじゃないわ、そこんとこもよろしく頼むわね!」
留提督「准尉さん! 今日はお忙しいなかありがとうございます! よろしくお願いします!」テヲサシダシ
提督「……」
足柄「……准尉?」
提督「俺からの要件はふたつだ」
提督「ひとつ、この島に関する記録は全部消せ」
留提督「!?」
提督「ふたつ、とっとと帰れ」
雷「!?」
491 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:36:17.58 ID:6yCIFqn8o
提督「以上だ」
留提督「」
雷「」
クルーたち「「」」
遠大佐「……」
足柄「あの……准尉?」ヒキッ
提督「俺の用は済んだぞ」フンッ
雷「と、取り付く島もないわね……」ヒキッ
若葉(まあ、そうなるだろうな)
朝潮(司令官、殺気立っておられますね……)
クルー1「あ、あの、准尉さん? 我々はこの島で撮影がしたいん」
提督「この島に関する撮影、録音などのすべての記録行為は禁止する」ジロリ
クルー1「ちょ」
提督「もし今どこかでカメラを回してるんならすぐ止めろ。止めねえんなら実力行使する」
クルー2「お、横暴だ! どんな権限があって禁止するんだ!」
提督「お前らこそどんな権限持ってきたんだ? 日本語通じるから日本の常識がまかり通るなんて思ってんじゃねえぞ」
492 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:37:02.17 ID:6yCIFqn8o
留提督「で、ですから、こうやって海軍の皆さんに協力していただいて……」
提督「そうかよ。うちは協力しないから、もう帰れよ」
留提督「……っ」
クルー1「し、しかし、我々は遠大佐に協力していただくという話を……」
提督「だからそんな話はうちにはきてねえよ」
クルー1「ちょっ!?」
雷「し、司令官?」
遠大佐「……准尉。そこをどうにかできないか」
提督「できない」
遠大佐「……」ムッ
留提督「これは……准尉による上官に対する反抗、ということになるのかな……?」チラッ
雷「えっ? えーっと……」
提督「そうしたいんなら好きにしろ。その前に、本営から許可貰って取材に来たのか? だったらこっちに連絡が来るはずだ」
提督「それがねえんだから、お前らをこの島に通す義理も道理もねえ」
493 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:38:16.52 ID:6yCIFqn8o
クルー1「いやいやいや! 私たちはこの鎮守府で艦娘が救われていることを世界に知らせたくて……」
提督「必要ない」
クルー1「なっ!? 必要なくはないでしょう!?」
クルー1「あなただって世界のために戦っているのに、その活動が誰にも知られないなんてあんまりじゃないですか!」
クルー1「こちらの留さんは今ドラマなどで売り出し中のアイドルなんです! 海軍の活動のイメージアップに……」
提督「要らねえっつってんだよ、わかんねえのか、くそが!」
クルー1「っ!!」
提督「お前らがどこの誰かなんて、俺たちにも、深海の連中にも関係ねえんだよ」
提督「テレビの人間なら手を振って貰えると思ってんのか? 海軍に無償で助けて貰えると思ってんのか!?」
提督「はっきり言う。お前らは邪魔だ、とっとと出て行けよ」
クルー1(ちっ、手強いな……!)イラッ
留提督「ここまで話が通じないなんて……! ねえ、遠大佐、雷ちゃん、なんとかできないかな?」
雷「う、うーん……」
遠大佐「雷、私からも頼む。何かいい方法はないか?」
雷「司令官……わ、わかったわ。それなら、せめて……!」
494 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:39:16.86 ID:6yCIFqn8o
雷「准尉! 何の連絡もなしにここへ押しかけたことは、謝るわ……ごめんなさい!」ペコッ
雷「でも、ひとつだけ……ひとつだけ、お願いがあるの!」
提督「……」ピク…
雷「鳥海さんと加古さんに会わせて欲しいの……ここに流れ着いて来たんでしょう?」
提督「……会ってどうする」
雷「せめて、話をさせてもらいたいの。ここに流れ着くまで……そして、流れ着いてから、何があったのか」
雷「いま、ふたりがどんな気持ちなのか。お願い……話を、させてください」ペコリ
提督「……」
遠大佐「雷……」
遠大佐「准尉。私からもお願いする」ペコリ
提督「……!」
留提督「お、おい、みんなも! お願いします!」ペコッ
クルーたち「「お、お願いします!」」
提督「……」
495 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:40:16.64 ID:6yCIFqn8o
足柄「……」
提督「……」チラッ
足柄(准尉は何を見て……あれは……)チラッ
朧「提督!」
(提督たちに背後から駆け寄ってくる朧)
提督「ん? どうした、なにかあったのか?」
朧「耳を貸して下さい。あの人の……カメラが……ごにょごにょ……」
提督「……ふぅん、なるほどな」
留提督「……?」
提督「おいお前……雷、だったな?」
雷「!」
提督「お前に免じて、話はしてやるよ。ただし……条件がある」
雷「条件?」
提督「ひとつは、今そっちの船に乗せている艦娘も全員連れてこい」ユビサシ
足柄(千歳たちも……?)
留提督「……鹿島もか……!」
496 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:41:01.47 ID:6yCIFqn8o
雷「え、ええ、わかったわ。もうひとつは?」
提督「もうひとつは……」スタスタスタ
クルー4「え」
提督「……記録はするな、と言ったよなあ?」グイッ
クルー4「あっ!」ポーチウバワレ
提督「このバッグの中にカメラ仕込んでやがったか。溶鉱炉に捨てとくぞ」
クルー1「ちょっと、待ってください! それを壊されたら困ります!」ダッ
提督「勝手に困れよ。俺はさっき忠告したぞ」
小型カメラ<ミシッ
提督「こんなもの……!」
小型カメラ<ミシミシミシ…!
クルー1「やめ……!」
小型カメラ<グシャッ!!
提督「……」パラパラ…
クルー4「に、握り潰した……!?」
留提督「う、嘘だろ……!」
497 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:41:46.82 ID:6yCIFqn8o
朝潮「し、司令官!? 手は大丈夫ですか!? 破片でお怪我をしては……!」
提督「ん? ああ、大丈夫だ」
若葉「ふむ……提督、詰めが甘いぞ」スッ
提督「ん?」
若葉「今のカメラは記憶媒体も小型化している」ハヘンヒロイアゲ
クルー2「あっ」
若葉「このカードを処分しないと、データが読み取れてしまうぞ」メモリカードテワタシ
提督「こんな小指の爪みたいなもんでか? ……やれやれ、こりゃあ厄介だ」パキッ
クルー1「ああ……!!」
クルー2「なんてことを!」
提督「なにが『なんてことを』だ。実力行使する、って俺は言ったぞ?」
提督「他にもカメラやら何やら持ってるなら、全部船に置いてこい。さもなきゃ、次はてめえらの頭をこうしてやるぜ……!」
クルーたち「「……」」ゾゾッ
遠大佐「……ここは准尉に従おう。鳥海や加古と話す機会を逃してはならない……そうだろう? 留君」
留提督「え、ええ、そうですね……」
雷「司令官、私、みんなを呼んでくるわね!」
遠大佐「ああ、頼んだよ」
雷「ええ、任せて!」
留提督「……」
498 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/06/27(日) 23:46:58.12 ID:6yCIFqn8o
今回はここまで。
梅雨加古が可愛かったので、
改二とバレンタイン古鷹と一緒にアケにください。
那智改二もはよ。
499 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/06/28(月) 07:15:33.07 ID:6Q+9yk1/O
更新乙です。
500 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/28(月) 07:39:56.54 ID:9UXjO0Tk0
うっしゃ当たったぁ!
そういえば前のカキコsage忘れてました。申し訳ない。
501 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/28(月) 07:40:44.69 ID:9UXjO0Tk0
うっしゃ当たったぁ!
そういえば前のカキコsage忘れてました。申し訳ない。
502 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/28(月) 16:56:32.22 ID:UbWLYPWJ0
外れたかーまあいいや
503 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/30(水) 00:47:37.15 ID:blncNXTY0
乙です。
小型カメラを手で握りつぶすってなかなかだよね。普通に握っても隙間に入って割れないだろうから手のひらと指で挟んで指力だけでプレスしたって感じか。
普通にバケモンだ…
504 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/08(木) 10:07:58.82 ID:DFcO848S0
あと二、三週間ぐらいかかるかな?
505 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/16(金) 21:28:18.60 ID:px1LFpPO0
まだだったかー。
更新を確認するワクワクが二番目に楽しい。もちろん読むのが一番なわけだけれど。
そういえば最近夕立が多いですね。このスレは夕立ちゃんは出てくるのかな?
506 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/07/17(土) 13:21:03.09 ID:LoQeTMQPO
罠だらけの方で出てないから他鎮守府で出ない限りは夕立は出ないと思うよ
507 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/17(土) 14:58:24.80 ID:uwJZkeFz0
罠だらけじゃ出てないんですね。ありがとうございます。
本当なら読みたいですが時雨みたいに「あっこいつ死ぬんだな」ってわかっちゃうので読めないww
508 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/20(火) 02:44:49.28 ID:f1CV1fu/0
どのくらいのペースで確認するのがいいんだろうか
毎週末に確認するくらいか1ヶ月おきにか
509 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/20(火) 18:02:00.76 ID:G01oRvNo0
毎日確認する!
510 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/22(木) 04:28:27.02 ID:hxzAdi0H0
雷のこの感じ、どっかでみた気がする。
そういや、古鷹の世話焼きは演習相手の秘書官からのアドバイスって言ってたけど、まさか…な。ハハッ…
511 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:41:00.33 ID:5Fsdg4Xoo
以前は週一を目指していましたが、なかなか筆が整わず。
月刊よりは短い周期を目指しますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
>>503
小型カメラといっても、イメージ的にはコンパクトサイズのデジカメです。
提督はバケモノですよ。
>>510
>>409
をどうぞ。
では続きです。
512 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:41:52.68 ID:5Fsdg4Xoo
* 数時間前、執務室 *
加古「……会いたくないなあ」グデー
鳥海「せっかく会いに来たのに追い返すわけにはいかないわ。戻りたくない理由を伝えて、途中退席するのはどう?」
武蔵「ああ、どうせ最後なんだ、顔を見せるだけでいいんじゃないか?」
長門「……私は、無理に会わなくても良いと思っているが」
武蔵「長門!?」
長門「会って話をすることが苦痛だというのなら、それを伝えて帰ってもらうのも、相手に対する答えにはなろう」
扶桑「それで相手が素直に帰ってくれれば良いのだけれど……」
鳥海「はい、だからこそ加古さん本人が面と向かって説明しないと駄目だと思っているんですが」
陸奥「本当に会わせていいのかしら。留提督が無理矢理連れ帰る可能性もあるわよ?」
鳥海「いくらなんでもそこまで強引なことは……」
摩耶「そうは言っても、留提督にしてみりゃ鳥海たちの轟沈は不始末だからなあ。ちからずくでってこともありえねえか?」
山城「それ、やったとしても本当に呉のお偉いさんが帰港を許すのかしら。呉の中でも下の方なんでしょ? 遠大佐って」
霧島「むしろ許可も取らずにこの島へ向かうこと自体、考えにくいのですが……」
513 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:42:37.75 ID:5Fsdg4Xoo
山城「あら、上に報告しなくたって、この島に来ることはできるわよ。ふらっとやってきて駆逐艦たちを連れ去ろうとした輩もいたくらいだし」
筑摩「そ、そんなことがあったんですか!?」
山城「ましてや私たち艦娘が世界に現れて、海軍なんてものに縁のなかった民間人まで提督になってるご時世だもの」
山城「遠大佐も留提督も、海軍にとっての『普通』をどこまで理解してるかわかったもんじゃないわ」
鳥海「そ、そこまで悲観しなくても……それに遠大佐は民間出身ではありませんし」
長門「そうなのか!?」
武蔵「ならばなおのこと、上への報告は怠るはずがないな……」
扶桑「ですが、それはそれで、鳥海たちの進軍に苦言を呈さなければいけない立場でありながら、見過ごしたことは看過できないのでは」
筑摩「そうですよね。一言言えば轟沈を防げたはずなのに、どうにも解せないと言いますか……」
山城「直接的ではないにせよ、戻ってくるなとほのめかされたんでしょ? 悪いのはそいつらじゃない……頭に来るわ」
鳥海「あ、あの……皆さんは、轟沈を経験されたのですか?」
長門「……この場には、そうではない者の方が多いな」
鳥海「そうですか……これまで、この島に流れ着いた誰かが深海棲艦になったことはないんですか?」
長門「いや、それはないな」
514 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:43:22.46 ID:5Fsdg4Xoo
鳥海「だとしたら、轟沈した艦娘が深海棲艦化すること自体、作り話という可能性も……」
山城「……まあ、なくはないわね」
筑摩「本営が何らかの理由で嘘をついていると……?」
霧島「確かに、何がきっかけで艦娘が深海棲艦になるのか、誰も証明できていないわね……」
陸奥「鎮守府が壊滅した記録が残っているんでしょう? 証言できる生存者がいれば、そこらへんもはっきりできると思うけど」
扶桑「生存者、いるのかしら……」
全員「「……」」
鳥海「准尉さんは、このことをどうお考えなんでしょう……」
長門「おそらく……あの男にとっては、その話が事実かどうかはさほど重要ではないはずだ」
鳥海「は……?」
武蔵「なんだと!?」
山城「どういう意味よそれ……?」
長門「あの男は、この島から人間を遠ざけるためにこの話を利用している、と私は推測している」
鳥海「!」
515 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:46:07.53 ID:5Fsdg4Xoo
山城「私たちに対する同情のつもりかしら」
長門「そこは同情というより、提督自身が人間を毛嫌いしているからだろう」
長門「この島に来る艦娘の大半は、人間に嫌な思いをさせられているが、提督もそれは同じでな」
摩耶「あー……鳥海もこの前聞いた、あの話っすか? 両親にも嫌われてたって話」
陸奥「自分を迫害していた人たちと同じになりたくない、ってことなんでしょうね」
長門「人間を毛嫌いしているからこそ、提督は私たちの味方になってくれていて……」
長門「だからこそ、この島に流れ着いた轟沈艦娘が深海化しない、とも考えられないか?」
全員「「!!」」
筑摩「長門さんは、艦娘が深海化する原因がストレスだと考えているんですか?」
長門「確信はしていないが、かもしれない、とは思っているな」
長門(……ただ、この鎮守府に遊びに来ているル級が、ストレスを感じているとは思えないし)
長門(仮にストレスを感じていないとしたら、もしかしたらル級が艦娘になったりするのか……?)
長門「なんにせよ、この話は分からない部分が多すぎる。安易にこうだと決めつけるのは、良くないな」
霧島「ええ、推測だけでは机上の空論になりかねません」
武蔵「ところで……さっきから長門がよく質問に答えてるが、長門はこの鎮守府は長いのか?」
長門「ああ、私がこの島に最初に来た戦艦だからな。私が来るまでは駆逐艦と軽巡洋艦だけだったぞ」
摩耶「えええ!?」
516 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:47:07.36 ID:5Fsdg4Xoo
筑摩「長門さんが最初なんですか!?」
山城「重巡もいなかったの!?」
武蔵「……珍しいのか?」
霧島「え、ええ、普通なら私たち金剛型や扶桑型、伊勢型が最初にくることが多いのですが……」
扶桑「……」
筑摩「そうでなくても、重巡より戦艦が先に着任すること自体、普通ないですよね」
扉<コンコンコン
黒潮「司令はーん……って、なんやこれ!?」
武蔵「おお、遠征帰りか。提督は外周り中だ、書類なら私が預かろう」
黒潮「お、おおきに……っていうか、なんで執務室に戦艦や重巡が勢揃いしてんの……?」
長門「雑談しているうちに、加古や鳥海のいた鎮守府の遠大佐がどんな人物かの話になったんだ」
摩耶「加古がそいつに会いたがらねーんだけど……」
黒潮「はぁ……ええけど、加古はん寝とるよ?」ユビサシ
加古「すぴー……」
全員「「」」
517 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:47:52.57 ID:5Fsdg4Xoo
* 現在 *
* 墓場島鎮守府会議室 *
留提督「本当に申し訳ない!」ドゲザッ
鳥海「留提督!?」
加古「……」
留提督「僕のせいで君たちをこんな目に遭わせてしまったこと……本当にすまなかった!」
雷「留提督……!」
鹿島(この人が、土下座するなんて……!?)
留提督「君たちが助かったこと……提督准尉のもとで治療してもらえたこと、本当に、本当に運が良かった……!」
加古「……」
留提督「君たちの帰りを待っている艦娘がいるんだ! 頼む、戻ってきてくれ!」
鳥海「留提督……」
加古「……あのさ。今回の話、何が問題だったか、わか」
留提督「それは全部、僕のせいだ! 君たちを止められなかった、僕の判断が悪かったんだ……!」
加古「そうじゃなくてさ……」
518 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:48:38.55 ID:5Fsdg4Xoo
留提督「そうじゃなくないよ、君が悪いんじゃない! 僕の……僕の判断ミスなんだ!」
加古「だからさあ」
留提督「本当にすまなかった!」ガバッ
加古「ちょっとぉ……」
留提督「許してくれ!!」
加古「……」
提督「おい。お前、加古の話を」
留提督「准尉、今、僕は加古と話をしているんだ。茶々を入れないでくれないか」
提督「そうじゃねえよ。加古はそういうことを言」
留提督「部外者が口を挟まないでくれないか!」
提督「ああ?」
加古「ちょっと留提督?」
留提督「ああ、すまない加古! さあ、一緒に帰ろう、積もる話は呉の鎮守府に戻ってからゆっくり話そう!」
加古「……」
519 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:49:22.92 ID:5Fsdg4Xoo
提督「……こりゃ駄目だな」
クルー1「ちょっと准尉さん、せっかく話がまとまりかけてるってときに、横から口を出さないでくださいよ」
提督「お前らには、まとまったように見えたのか? 今の話」
加古「……こりゃー駄目だねー。話をするだけ無駄だわー」ハァ
留提督「ど、どうしてだ!? まだ何か心配事でもあるのかい!?」
加古「どうせ聞く耳持たないっしょ?」
留提督「そんなことはない!! 体に不安があるのなら呉に戻ってからいくらでも検査する!」
留提督「なんにしても、こんな離島で、何も悪くないのに隔離された生活をしていたらおかしくなるぞ!」
留提督「僕は君たちが心配なんだ!!」
加古「……」チラッ
鳥海(……加古さんが見てるのは……遠大佐?)
遠大佐「……」
鳥海(遠大佐、ずっと俯いてるけど……)
鳥海「あの、遠大佐?」
遠大佐「うん……なんだ」
520 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:50:07.23 ID:5Fsdg4Xoo
鳥海「遠大佐は、今回の進軍を諫めなかったこと……どのようにお考えですか」
遠大佐「……私の、判断ミスだと思っている」
雷「司令官……!」
加古「……」
鳥海「遠大佐……」
留提督「そんなことはありません! 僕のせいです!」
加古「……」
提督「おい、そこの秘書艦はどう思う」
雷「わ、私!? え、ええと……」
遠大佐「雷に聞くまでもない……そう、だな。私のせいだ」
雷「司令官……そ、そんなことないわ!? 元気を出して!」
加古「……」
鹿島「……」
提督「……」
521 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:50:54.14 ID:5Fsdg4Xoo
山風「……」ソワソワ
ガンビアベイ「……」ソワソワ
山風「……私たち、なんで呼ばれたのかな」ヒソヒソ
ガンビアベイ「わ、わからないです……ヒッ」ビクッ
提督「……」ギロッ
山風「どうかした……ヒッ」ビクッ
ガンビアベイ「な、なんであの人、私たちを睨んでるんでしょう……!」ビクビク
山風「早く帰りたい……」グスグス
提督「……」
提督「なあ、妖精?」ヒソッ
妖精「なにかな?」ヒョコッ
提督「あいつの連れてる艦娘、艤装を外してるのか?」
妖精「そうみたいだね。さっき見たときはちゃんとつけてたみたいだけど……わざわざ外してきたのかな?」
提督「なにか裏がありそうだな。ちょっと探りを入れてもらっていいか?」
妖精「うん、いいけど……あんまり睨みつけちゃ駄目だよ。二人とも怯えてるみたいだし」
提督「なに? 俺にか……?」
522 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:51:37.30 ID:5Fsdg4Xoo
妖精「うん。それに……」ユビサシ
提督「……」チラッ
クルー1「!」メソラシ
妖精「提督も見張られてるみたいだね」
提督「……何でこっちを見てるんだ、あいつは」
留提督「とにかく、二人とも無事で何よりだ! さあ、二人とも支度をして、呉へ帰ろう!」
鳥海「は、はぁ……」チラッ
加古「……あたしは行かないよ。一人で帰って」ガタッ
留提督「なっ!? 強がりはよせ! 君はそれでいいと思ってるのか!?」
留提督「君を慕っていた呉の鎮守府の仲間が、君の帰還を待っているんだぞ!?」
留提督「それだけじゃない、あの戦いで沈んだという汚名を雪ぎたいと思わないのか!?」
加古「……」
留提督「君は、もっともっと活躍できるはずなんだ!」
留提督「こんな島で……船の墓場みたいな場所で、終わるような艦娘じゃない! そうだろう!?」
加古「……はぁ」
523 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:52:23.90 ID:5Fsdg4Xoo
留提督「加古……! 頼む!!」
加古「帰ってよ。あたしはそっちには行かない」
留提督「頼む!! お願いだ!!」
鳥海「……」オロオロ
提督「……わかんねえな。なんであいつはそこまで加古に執着するんだ?」
クルー2「ちょっと准尉さん、少しは私たちに協力してくださいよ」
提督「あぁ? なんでだよ」
クルー2「ちょっ……」
提督「お前らこそ身の程を知れよ、どの面下げてあいつらの前に現れたんだ」
クルー3「この島は轟沈した艦娘を保護しているんでしょう? 元いた鎮守府の司令官が来たら、その人に引き渡すべきです」
提督「艦娘の当人が拒否してるんだから、その理屈は成り立たねえな」
クルー4「鳥海も加古もああやって普通にしているのに、こっちに引き渡せないとか、おかしいんですよ」
クルー4「艦娘が沈んだら深海棲艦になるんでしょう? なってないんだから、元いた鎮守府に戻すのが筋でしょう」
提督「何が筋だよ、何を根拠に言ってやがる。覆水盆に返らず、って言葉を知らねえのか」
524 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:53:07.56 ID:5Fsdg4Xoo
クルー3「だいたい、沈んだ艦娘が深海棲艦になったのは本当なんですか!? エビデンスとかないんですか!」
提督「ねえよ、んなもん」
クルー3「な……!」
提督「それ以前に、お前エビデンスとか言ってるけど、意味分かって言ってるか?」
クルー3「そ、それは……!」
クルー1「……根拠とか、裏付け、証拠……という意味ですよね」
提督「なんだ、知ってる奴いたのかよ……まあ、そうだな」チラッ
クルー3「……」ムッ
提督「沈んだ艦娘が深海棲艦になる……過去にあったらしいが、そいつはあくまで『らしい』の話だ」
クルー3「だったらあの艦娘たちを戻してもいいんじゃないんですか!」
提督「ある鎮守府では、轟沈した艦娘を受け入れたことがある」
提督「受け入れてしばらくして、深海棲艦による攻撃で鎮守府が壊滅した。どんな理由が考えられる? お前、答えてみろよ」ユビサシ
クルー4「……」
525 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:54:14.39 ID:5Fsdg4Xoo
提督「……海軍の調査では、轟沈した艦娘が深海棲艦になった説、轟沈した艦娘が深海棲艦を呼び寄せた説のふたつが有力視された」
提督「轟沈した艦娘が深海棲艦になるかどうか、真相ははわからないが、壊滅した理由のひとつとして考えられる以上……」
提督「安易に轟沈した艦娘を受け入れて同じことになるのは避けたい、というのが海軍全体の意識だ」
提督「不確定要素がある以上、危機管理として間違ったことはしていない。違うか?」
クルーたち「「……」」
提督「で、お前らこそ、安全だと言える『根拠』はどこから拾ってきたんだよ」
提督「こちとら命を張ってんだ。ちょっとでも危ねえと思ったらすぐ退くのが正解なんだよ」
提督「それを無理して突き進んで、お前らのお仲間が海の藻屑に消えた事件もあったよなぁ?」
提督「手前に都合が悪い話は、覚えていられねえってか?」
提督「それとも、そいつは奴らだけの問題であって、俺たちには関係ねえ、ってか?」
提督「今ならカメラも回ってねえぞ。ほれ、何か答えてみやがれ、くそどもが」
クルーたち「「……」」
526 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:54:57.99 ID:5Fsdg4Xoo
留提督「加古! 僕がこれほど君の帰還を望んでいるというのに、なぜだ!? なんで拒否するんだ!?」
加古「そもそもの原因追及を拒否してんのはあんたじゃん……」
留提督「もしや、この島に、なにか秘密があるとでも言うのか……? 遠大佐!」
遠大佐「なんだね?」
留提督「この島を調査しましょう! 加古が戻ろうとしない理由がそこにあるかもしれません!」
提督&加古「「は?」」
雷「そうね……こんなに一生懸命な留提督の説得が通じないとしたら、もっと別なところに原因があるのかも!」
提督&加古「「ねえよ……」」
鳥海(なんで台詞が両方から聞こえるの……)
雷「鳥海さん! この島のこと、教えて貰っていい!?」
鳥海「えっ? い、いえ、おそらくそういうことでは……」
留提督「遠大佐! この場はお任せいたします! 僕たちはこの島の調査に入ります!」
クルーたち「「!」」ガタッ!
527 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:56:07.36 ID:5Fsdg4Xoo
提督「な……おい!? 勝手な真似を」
留提督「みんな行くぞ! 日没までに鎮守府を調査するんだ!」
クルーたち「「わかりました!」」
提督「待て! 勝手に」
留提督「行くぞーー!!」ダダダダ…
提督「おいこら! 待ちやがれ!!」
提督「……」
提督「……最悪だ」アタマカカエ
朧「て、提督! 何があったんですか!? 今、みんなばらばらに……!」
提督「あいつら、勝手にこの鎮守府の探索をおっぱじめやがった」
朧「えええ!?」
提督「朝潮たちはどうした?」
朧「ほかのみんなは、それぞれ誰かを追いかけて行きました! 朧は、神通さんから提督に指示を仰げと……」
提督「そうか……よし、こうなりゃ誰でもいい、侵入者全員とっ捕まえてここに集めてくれ」
528 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:57:07.80 ID:5Fsdg4Xoo
提督「ひとまず最初に那珂、次に大淀へ知らせろ。俺は俺で執務室に行って、全館放送で連絡する」
朧「わ、わかりました!」ダッ
提督「くそ……妖精たちの手も借りねえと。あいつら、もしかして最初からこれを狙ってやがったのか!?」
黒潮「なあなあ、司令はん、ちょっとええかな」
提督「! どうした?」
黒潮「いや……ちょっとこの部屋入るとこ見てたんやけど、あっちの鎮守府から来てた鹿島さんとか、艤装外しとったやん?」
提督「……ああ……」
黒潮「なんか、気分悪ろうてなあ」
提督「……」シカメッツラ
黒潮「司令はん?」
提督「……なあ黒潮? 鹿島たちが『そう』なる可能性、あると思うか?」
黒潮「……」シカメッツラ
提督「あり得るんだな?」
黒潮「ないとは言えへんね……」
529 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 21:57:53.24 ID:5Fsdg4Xoo
ドドドド…
島風「提督ーー! って、うわぁ」
提督「なんだそのうわぁは」
島風「提督と黒潮ちゃんが同じ顔してるんだもん……またなにかあったの?」
黒潮「まだ起きてへんよ」
島風「まだ、って……」
提督「それより島風はどうしたんだ」
島風「そうそう、聞いてくださいよー! さっき、外から来た男の人たちに潮ちゃんが話しかけられてて!」
島風「なんか嫌がってたみたいだから、私が声をかけたんだけど、そしたら私も腕を掴まれたんです!」
黒潮「は?」
島風「なんかいきなりこっちの鎮守府に来いとか言われて、意味わかんなくって!」
島風「白露も一緒なのかって聞いたら、白露なんかどうでもいいとか言うし! 頭にきて断ったんですけどしつこくって!!」プンスカ
提督「……」
島風「話が通じないから、潮ちゃんと一緒に走って逃げてきたんです!」
黒潮「……」
530 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:00:37.50 ID:5Fsdg4Xoo
島風「提督! あの人たちいったいなんなんですか!?」
提督「……ただの部外者……いや、侵入者だよ」
提督「ったく、あいつらいくらなんでも好き勝手しすぎだろ、顔に何枚バルジ貼り付けてやがんだよ、くそが!」
提督「島風、今の話は他に誰に話した?」
島風「まだ誰にも話してないよ?」
提督「潮はどうした」
島風「食堂にいた長門さんに預けてきました!」
提督「んじゃあ、そっちに行って詳しく聞くか……島風、俺は執務室に寄ってから食堂に行く。白露もそこへ呼んできてくれるか?」
島風「はいっ!」ダッシュ!
提督「黒潮も食堂へ行って、長門に事情を話しててくれ。思ってたより上の対策立てなきゃ駄目だなこりゃあ……」
黒潮「不知火から話を聞いてたけど、また厄介な……」
提督「まったくだ……あの戦艦バカより数百倍もたちが悪りぃぞ、くそが」
531 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:01:22.38 ID:5Fsdg4Xoo
* 一方その頃 *
* 仁提督の鎮守府 *
仁提督「ぶぅえっくしょい!!」
雪風「! しれぇ! お風邪ですか!?」
仁提督「ずずっ……そうじゃない、ただのくしゃみだ」
雪風「心配です! お熱測って差し上げます!」ヨジノボリ
嵐「ちょっ!?」ギョッ
仁提督「おい!? 登ってくるな!」
文月「あ〜、雪風ちゃんいいなあ〜」
皐月「よーし、僕も登るね!」ヨジヨジ
嵐「登るのかよ!? 止めろよ!」
文月「文月も登るぅ〜」ヨジヨジ
時津風「おもしろそう! 時津風も混ぜてー!」ヨジヨジ
長月「登るなって言ってるだろう!?」ガビーン
仁提督「お、お前たちいい加減にしろおお! 金剛! 長門を呼べ!!」
皐月「えっ!?」
532 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:02:07.24 ID:5Fsdg4Xoo
嵐「お、おい、みんな降りろ! 長門さんが来たら大変だ!」
時津風「みんな逃げるよ!」ピョン スタッ
文月「ああ〜、待ってぇ〜」
雪風「しれぇ! お熱はありませんでした!」
長月「雪風、急げ!」
雪風「はいっ! 失礼します、しれぇ!」
キャーキャー バタバタバタ…
仁提督「……やれやれ」
金剛「テートク、お疲れ様デース。おはな、出てマスヨー」ティッシュサシダシ
仁提督「おう……お前ものんきに見てないで助けてくれ」ズビー
金剛「オウ、ソーリー。微笑ましかったので、ついつい眺めたくなってしまいマシタ。最近入った時津風も、馴染んでいるようで何よりデス」
仁提督「俺は舐められてるようにしか思えないんだがな。雪風の心のケアを心掛けてたら、他の駆逐艦連中まで寄ってきてこの様だ」
金剛「でも、おかげで雪風もよく笑うようになりマシタ。テートクのしたことは間違ってまセンヨー」
仁提督「そうだといいがな……」
533 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:02:52.30 ID:5Fsdg4Xoo
金剛「大丈夫デース! 胸を張ってくだサーイ!」
仁提督「……」
金剛「……テートク?」
仁提督「あいつは、雪風みたいなやつを、何人も相手にしてきたんだろうな」
金剛「オウ、あの島の准尉のことデスネ?」
仁提督「ああ、あいつのことは気に入らんが、それでもやってることは評価せねばならん。雪風を相手にして、その苦労が良くわかった」
仁提督「雪風たちがあれだけ元気になったのも、あいつが黒潮を保護していたところが大きいしな……」
金剛「だからテートクはあの鎮守府に助け舟を出したわけデスネ?」
仁提督「俺は黒潮の件の借りを返しただけだ」フンッ
仁提督「そうでなくても、准尉以上に留提督という男が別ベクトルでいけ好かん」
仁提督「へらへらしていて落ち着きがない上に、人の話を聞かないと来た。なんだか昔の俺を見てるみたいでイライラさせられる」
金剛(今も話を聞かずに突っ走るときが結構ありますケドネ?)
仁提督「のこのこついてきた遠大佐も何を考えているのやら。あの小さい駆逐艦娘を随分信頼しているようだが、大丈夫なんだろうな?」
金剛「こちらでおいでになったときも、一言も喋りませんでしたからネー……」
534 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:03:37.44 ID:5Fsdg4Xoo
* 回想 *
仁提督「墓場島!? あの島に行くって言うのか!? やめておけ! 行ったところで得られるものは何もない!」
仁提督「確かに轟沈した艦娘が流れ着く島だ。艦娘を水葬できなくて埋葬しているから、そういう名前がついたと聞いている」
仁提督「連れて帰る!? 馬鹿を言うな! 一度轟沈した艦娘を連れて帰ったらどうなるか、話を聞いてないのか!」
仁提督「命が惜しく……いや、それよりも近隣の鎮守府が許可したのか!? 地域住民には説明したのか!」
仁提督「悪いことは言わんぞ、貴様らが轟沈させた艦娘は諦めろ! 何が起こっても責任はとらんからな!!」
仁提督「俺たちが守るべきものはなにか! 理解してから行動しろ!!」
* * *
仁提督「まったく……轟沈したと知っていながら連れ戻そうなどと、これだから素人考えは……」
金剛「ブッチャケ、あのときはテートクも他人のことを言えた立場ではありませんでしたケドネー」ボソ
仁提督「聞こえてるぞ金剛……まあいい、俺もあの時は墓場島の艦娘を使い捨てにするつもりだったのは認める」
仁提督「そういう打算的な考えがあったのは間違いない。さすがに轟沈経験艦だとは思いもしなかったが……」
金剛「……」
仁提督「……なんだ?」
535 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/07/24(土) 22:04:37.85 ID:5Fsdg4Xoo
金剛「テートク、素直になった気がしマス。以前はこんなふうに、自分の失敗を素直に認められる人じゃなかったデス」
仁提督「そ、そうか……!? まあ、あの提督准尉のせいだろうな……」
仁提督「お前の相手に潜水艦を連れてきた件といい、島風と白露をあいつが引き取ってた件といい、黒潮が実は生きていた件といい……」プルプル
仁提督「ああああ、思い出すだけで赤っ恥だ! ……とにかく! あの島の出来事に比べれば、もうこれ以上恥をかいたりはせんだろうよ」ハァ
金剛(……わざわざ言って、フラグを立たせてるような気がしマス)タラリ
金剛「そういえば、テートクは白露と島風を連れ帰ろうとしませんでしたネ? 轟沈したわけでもないのに……」
仁提督「馬鹿を言うな、あいつらに限っては、俺が切ったんだぞ? 俺が関係を破綻させたんだ」
仁提督「無理矢理引っ張ってきたところでどうせ持て余すに決まっているし、恨まれることはあっても信頼されることはなかろう」
金剛「そうデスカ……?」
仁提督「お前は俺の変化をすぐそばで見てるかもしれんが、そうでない相手にはいきなり態度が変わったようにしか見えんだろうさ」
仁提督「白露と島風は、准尉に任せる。俺の手からはもう離れたんだ、これ以上手を出すのは下世話というか、無恥もいいとこだ」
金剛「それでは、白露と島風にはこれ以上干渉しないと?」
仁提督「ああ、ついでに准尉にも干渉しないようになると最高だがな。黒潮と雪風がいる以上はそうはいかんだろうが……」
仁提督「それから、俺が留提督の相手をすることももうないだろう。言いたいことは言った。あとは准尉にがっつりへこまされればいい」フン
金剛「オゥ……痛い目見ろと仰いマスカ」
仁提督「いや、そう思うだろう? 留提督の様子じゃあ、轟沈経験艦を連れ帰ってきたらどうなるか、全然わかっとらんようだった」
仁提督「遠大佐も遠大佐で、一言くらい助言があっても良かろうものを……よくわからんな」
536 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/07/24(土) 22:05:58.59 ID:5Fsdg4Xoo
というわけで、今回はここまで。
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/25(日) 08:46:55.35 ID:5hVf79EP0
乙
なんだか轟沈騒ぎ自体が墓場島入りを目的にした筋書に思えてきた
538 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/25(日) 18:24:42.42 ID:uqI+atu70
乙です。
>>409
で既に出てたか…最初から読み直して途中で気づいて書き込んだから読めてなかった。
にしても、遠大佐やべーな。作り話とわかってもイライラするぜ。スレ主の文章力は53万です。
539 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/25(日) 18:48:58.02 ID:hKcgy0160
>>538
2016年6月(罠だらけ)から5年間ずっと書き続けてますからね。53万とかいうレベルじゃない希ガス
それと更新の遅さとストーリーの作り込みが相まってわくわくが止まらねぇ 4,5回最初から読み直したけど飽きない
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/25(日) 18:53:00.63 ID:QiYIYrBKO
乙乙
次も楽しみにしてるよ
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/08/14(土) 02:11:09.46 ID:Js3EcmOH0
やっと追いついた、、、某動画サイトから来ました。次回も楽しみにしています
542 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:44:37.84 ID:h6xmbjMBo
続きです。
543 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:45:31.08 ID:h6xmbjMBo
* 鎮守府内 執務室へ向かう廊下 *
足柄「あのう、提督准尉?」
提督「ん? おお、いたのか」
足柄「ちょっ、いたわよ!? 単に話すことなくて大人しくしてただけじゃない! それよりも!」
千歳「准尉、私たちになにか協力できることはありませんか?」
提督「協力?」
千歳「ええ。申し遅れました、私、軽空母の千歳です。足柄と一緒に、波大尉のもとで働いておりました」
千歳「今は、遠大佐と留提督からこの島の案内役を依頼されまして、遠大佐のところで一時的に働いているんです」
提督「一時的? レンタルみたいなもんか?」
千歳「いえ、ちょっといろいろありまして……わたしたち、今は無所属の状態なんです。新しい所属先を探してる途中でして……」
提督「で、『一時的』にあいつらの部下になったってことか?」
千歳「はい。すっごく後悔してますけど」ハァ
提督「引き受けなきゃ良かったじゃねえか」
千歳「いえ、折角来たのに断ってしまうと、この後に仕事の話が来るかどうかわかりませんので」
足柄「だいたい、最初は『この島に加古と鳥海が来ていないか確認するだけ』って聞いてたのよ?」
544 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:46:15.90 ID:h6xmbjMBo
千歳「それがこの島に上陸した時に、いきなり『轟沈した艦娘も何人か引き取って、呉の鎮守府でリハビリさせる』って言い出すんですもの」
提督「……」
千歳「挙句の果てには、勝手に鎮守府の中を家探しし始めるし……まるで騙し討ちに加担させられたみたいで、私たちも立つ瀬がなくて」
足柄「波大尉だったら、逐一私たちに報告確認しながら進めてるはずよね。勝手が違いすぎるっていうか、あの人、勝手が過ぎるわ!」
千歳「波大尉はもともと会社員だったからじゃない? 海軍のいろはがわからないからって、いつも私たちに相談してくれてたし」
足柄「そう! それが留提督にはないのよね……その場で思い付いたことを衝動的にやってるみたいで、動きが読めないわ」
提督「……やれやれ」
千歳「とにかく、留提督がやっていることは准尉にとっても迷惑にしかならないと思うんです」
千歳「留提督に雇われてこの島に案内した以上は、少しでもその尻拭いをしてお詫びしないと……」
足柄「そうね……留提督がどうなろうと自業自得でしかないと思うけど、准尉にこれ以上迷惑かけるわけにはいかないしね」
提督「まあ、いいけどよ。あまりお前らに頼むようなことはねえぞ?」
千歳「それでもかまいません。今後、私たちは准尉の指示に従います」
足柄「でも、どうして留提督は、轟沈した艦娘を引き取るなんて言い出したのかしら……」
千歳「多分だけれど……テレビ用の話題を作って、人気を集めたいから、じゃない?」
千歳「加古や鳥海を連れ帰って凱旋すれば、轟沈した艦娘を救った提督として、特別視されるんじゃないか、とか……」
545 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:47:03.76 ID:h6xmbjMBo
千歳「仮に、他の艦娘も一緒にリハビリさせて、戦線に復帰させられるようになったら、艦娘の運用に改革が起こるわ」
足柄「……それって准尉の功績を横取りしようとしてるってこと!?」
千歳「准尉が協力的なら、准尉の協力を得て艦娘の帰還が実現した、とか、いくらでも都合よく言い換えられるんじゃない?」
千歳「今回は准尉が最初からこうだったから、方針を変えたとか……」
提督「ふぅん……思惑としちゃあ、いい線行ってんじゃねえかな。テレビ局引き連れてんだ、留提督が珍しいことをやれば視聴率も稼げるだろ」
足柄「やればいいってものじゃないわよ……その後のフォローとか、どうするつもりなのかしら」
提督「連れ帰るのがゴールなんだろ。とにかく連れ帰ってしまえば、あとは海軍が総力を挙げて尻拭いせざるを得ねえ」
提督「革命がしたいだけのテロリスト……かつ、自惚れの激しいナルシスト、ってとこか? 面倒臭え人種だな」
千歳「……」
提督「気になる話は他にもあるが、まずはあいつらをとっ捕まえるのが先だ。これ以上、うちの艦娘に嫌な思いはさせられねえからな」
足柄「私たちは何をしたらいいの? なんでも手伝うわよ?」
提督「なら、ちょっと話を聞かせてもらうか。その前に執務室だ」
546 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:47:45.84 ID:h6xmbjMBo
* 鎮守府内 提督の私室 *
如月「司令官のお部屋で待機、っていうのも悪くないわね」
大和「提督、大丈夫でしょうか……」
金剛「心配ネー……」
榛名「榛名は、ずっとここで待機していても大丈夫です!」ベッドニゴロゴロ
金剛「榛名……服がしわだらけになりますヨー……」
榛名「提督はいつもこちらでお休みになっているのですね……ああ、提督に包まれている感じがします!」
金剛(ここで寝てるのはテートクだけではありませんけどネ……)ハイライトオフ
如月「司令官のことは心配だけど、私たちが騒いだらかえって司令官が心配しちゃうわ。果報は寝て待て、って言うじゃない」
金剛「Oh... 駆逐艦が一番大人びてマス……」
大和「でも、その通りですね……提督には迷惑をかけられません」
ドタドタドタ…
如月「足音……誰かしら?」
榛名「提督ではありませんね?」
547 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:48:31.64 ID:h6xmbjMBo
大和「ですね……」
金剛(みんな当然のように足音でテートクかわかるんデスネ……)タラリ
扉<バンッ!
クルー1「……!!」
如月「だ、誰!?」
クルー1「こ、ここはなんだ……!?」
金剛「あなた、提督のお部屋に何の用デス!」
クルー1「提督の部屋!? ……金剛に、如月に……大和!? そうか……やっぱりそうだったか!!」
大和「?」
クルー1「よっしゃスクープだぁぁぁ!!」ダッ
如月「ど、どういうこと……?」
クルー1(どこの提督も似たようなもんだ! 案の定、贔屓の艦娘を部屋に連れ込んでハーレム作ってやがった!)
クルー1(ご丁寧にでかいベッドまで用意して、2〜3人連れ込んでヤリまくってたわけか……いいネタ掴んだぞ!)
朧「ていっ!!」ガッ!
クルー1「うわあっ!?」グリンッ ズデーン!
如月「朧ちゃん!?」
548 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:49:15.94 ID:h6xmbjMBo
朧「よりによって、提督のお部屋に来るなんて……何を考えてるの!?」
クルー1「ちくしょう、准尉の手先め……!」
朧「手先?」ムッ
クルー1「ここの提督は、お気に入りの艦娘を集めて好き放題してるんだろう!?」
朧「……なにそれ?」
クルー1「とぼけやがって……」ヨジッ
サワッ
朧「っきゃあ!?」ビクッ
クルー1「おっ、手が緩んだ、今の隙に!」スルッ ダッ
如月「朧ちゃんどうしたの!?」
朧「お、お尻触られた……!」アオザメ
大和「なんですって?」
朧「て、提督にも触られたことないのに……!」ジワッ
如月「ちょっとあなた、待ちなさい?」ギロッ
クルー1「!?」ビクッ
549 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:50:00.62 ID:h6xmbjMBo
金剛「朧に謝りなサイ!」
クルー1「はあ?」
大和「狼藉を働いておいて、何の謝罪もせず逃げおおせる気ですか!」
クルー1「お、お前らが最初に俺に暴力をふるったんだろうが!」
如月「暴力だとか言う前に、あなた、誰?」
如月「この鎮守府に、誰に断って入ってきたの? それも、司令官のプライベートな場所に……!」ジロリ
クルー1「……!」ジリッ
榛名「金剛お姉様? この人は誰でしょう? 侵入者ですか?」ヒョコッ
金剛「そうみたいデス、とりあえず捕まえ……」
榛名「敵なら、撃ちましょうか?」ガシャンッ
クルー1「ひ、ひいい!?」ダッ
大和「逃がさないわ!」ダッ
金剛「榛名は少し落ち着くデース!」ダッ
館内放送『ジジー……カシャッ』
如月「……あら?」
550 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:50:48.13 ID:h6xmbjMBo
* 同時刻 *
* 鎮守府内 別の廊下 *
クルー2「はぁ、はぁ、なんだあの足の速いっていうか、不気味な艦娘は……」
タタタタッ ヒュッ
クルー2「うわあ!?」
神通「どこへ行くおつもりですか?」
クルー2「ひいい!」クルッ ダッ
神通「……」
シュバッ
神通「どこへ行くおつもりですか、と、訊いているのですが」
クルー2「ひぃえぁ!?」
神通「……」
クルー2「あ、あの、と、と、トイレに……」
神通「そうでしたか……でしたら、こちらに」クルッ
551 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/08/15(日) 23:51:31.06 ID:h6xmbjMBo
クルー2(今のうちに!)ダッ
神通「……」
シュバッ
神通「トイレはそちらではありませんよ?」
クルー2「ひゃひぃいい!?」
神通「ご案内いたします」ニコ
クルー2(だ、駄目だ……逃げられる気がしない)
クルー2(神通と言えば、おどおどしてて臆病な艦娘のはずだが……)
神通「提督からは、皆さんが勝手な行動をとられないように仰せつかっております」
神通「事を荒立てて難癖をつけ、あわよくばこの島の鎮守府の弱みを掴もうとお考えでしょうが……やめておいた方が身のためかと」
クルー2「!?」
神通「御用が済みましたら、速やかにお帰りください」ニコ
クルー2「……は、はひ……」
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