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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」
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410 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/03/25(木) 20:32:46.75 ID:yO92N9VFo
朝雲「遠大佐の秘書艦の子、古鷹さんが超過保護になった原因かも……」
提督「」
明石「」
鳥海「!?」
加古「え、なにそれ」
朝雲「えーと、私、この鎮守府に来る前にL大尉……その時は少佐だったんだけど……」
* かくかくしかじか *
朝雲「……というわけで、古鷹さんも、過保護通り越して介護してるような感じだったのよね」
加古「うわあ……」ドンビキ
提督「俺の風呂やトイレまで世話しようとした時はどうしようかと思ったぜ」
鳥海「そんなことまで……」
朝雲「うちの古鷹さんが遠大佐の雷に触発されて、重度の世話焼き重巡になっちゃったんだけど、じゃあ当人はどうなのかな? って思って」
加古「雷がそこまでやってる可能性……ないとは言えないねえ」
朝雲「少なくとも、私たちが演習で出会ったころの遠大佐はまだまともだったと思いたいけど、あれから1年以上経ってるわけだし?」
明石「雷ちゃんにしても遠大佐にしても、いろいろこじらせて悪化してても不思議ではない、と」
霧島「悪化……」
411 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/03/25(木) 20:33:31.25 ID:yO92N9VFo
摩耶「なあ提督、あたしたちは全くの外野だけどさ、話だけ聞く限りだと、やっべえんじゃねえの? そいつ」
加古「いやー、あたしは身内だけど、ぶっちゃけやばいと思ってるよ。実際、今回出撃する前から常々、誰か早く何とかしてーって思ってたし」
提督「明石は俺と同じ顔してるからまあ察するとして」
明石「えー!?」
提督「異論はねえだろ。霧島は今の話、どう思う」
霧島「……い、いえ、私が人様の判断をしていいのかどうか悩みますが」
提督「言い淀んでるってことはろくな感想じゃねえってことだな」
霧島「!?」
提督「で、鳥海は」
鳥海「……」アタマカカエ
提督「もはやフォローの言葉もねえ、と」
鳥海「准尉さん!?」ガタッ
提督「この中で、おそらく一番遠大佐を信頼しているであろうお前が、そういう顔してる時点でもうダメだろ」
提督「思い当たる節があるから考え込んでたんだろ? お前が無意識に目を背けてたのか、意識して目を瞑っていたのかは知らねえが」
鳥海「あうぅ……」
412 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/03/25(木) 20:34:15.82 ID:yO92N9VFo
提督「もしかしたら、遠大佐がそういう状態だからこそ、戻って支えてやらないとって考えてたか?」
鳥海「そ、それは……」
提督「……」
鳥海「……そう、かも、しれません」
提督「そうか。そうしたいなら引き留めはしねえが……遠大佐にしても秘書艦にしても、更生させんのはくっそきっついだろうなあ」ウンザリ
朝雲「そうね……香取さんからも話を聞いたけど、すっごい大変だったみたいだし」ウンザリ
提督「まあいいや、どうせ遠大佐がどんな奴だろうと、俺には関係ねえしどうこうするつもりもねえ」
鳥海「じ、准尉さんっ!?」ガタガタッ
提督「そこ驚くところかよ? 俺がどうにかできると思ってんのか?」
明石「まあ、普通に考えたら何もできないですよね。秘書艦変えてくれ、って言って変えてもらえるかどうかはそこの提督次第ですし」
霧島「そもそも、お相手が大佐ですから司令の階級ではちょっと……進言したくてもできる立場にないと思いますが」
摩耶「おまけにうちの提督、態度も口も悪りーもんなー」
摩耶「お前の秘書艦なんとかしろとか、上から言われてもフツーにむかつかれるだろーに、こいつが言ったらどうなるかわかったもんじゃねーぞ?」
鳥海「ま、摩耶!? あなた、司令官さんに向かってなんてこと言うの!?」
提督「うん? 摩耶の言う通りだと思うが?」
鳥海「えええ……?」
413 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/03/25(木) 20:35:15.98 ID:yO92N9VFo
朝雲「ねえ司令、この二人はこれからどうするの?」
提督「とりあえず、本営からの情報が来るまではこの鎮守府で預からねえとな」
提督「リストに載っかってくりゃあ、ここで働くかどうかの二択だが、そうでなかったときは鳥海は戻ってもいいだろう」
提督「そのときに、加古も一緒に戻るかどうかは、加古の判断に任せるってだけの話だな」チラッ
加古「……」
提督「……?」
加古「……ぐぅ……」コクリコクリ
朝雲「寝てるーー!?」ガビーン
提督「」
霧島「」
摩耶「いや寝られんのかよ、この流れで!」
鳥海「寝ちゃうのよ、加古さんは……」ガックリ
明石「聞きしに勝るほどの図太さですねえ……」
414 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/03/25(木) 20:36:16.21 ID:yO92N9VFo
* 一方そのころ 本営 *
不知火「……」スタスタスタ
金剛?「……ヘイ、不知火」コソッ
不知火「? 金剛さん……?」
仁金剛「イエス、私は仁提督の秘書艦の金剛デス。あなた、墓場島の不知火デスヨネ?」
不知火「仁提督の……! よく、あの島の不知火だとお気づきになりましたね」
仁金剛「中将のオフィスから出てきたところを、こっそり追いかけてきマシタ」
不知火「そうでしたか、気付かずに申し訳ありません」
仁金剛「こちらこそ尾行みたいなコトをしてソーリーネ。部屋を出てすぐ声をかけるのも、ちょっと憚られるからネ……」
不知火「承知しております。不知火と親しくしてあらぬ噂を立てられるのは、金剛さんにしても仁提督にしても困るでしょうから」
仁金剛「……それはそうなんだケド、あの島を流刑地だとか、これから死ぬ人間が行く島だとか……」
仁提督「関わったら自分の艦娘が轟沈したり、深海棲艦化するだとか……私が聞いた噂だけでもヒドイと思うヨ?」
不知火「立ってしまった噂を必死に弁解しても面白がられるだけですから。それより、不知火に何か御用でしょうか」
仁金剛「イエス、私の仁提督から伝言デス。なんでも、墓場島のことを詳しく調べている人がいるらしいヨ?」ヒソヒソ
不知火「! ……どういうことですか」
415 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/03/25(木) 20:37:23.32 ID:yO92N9VFo
仁金剛「轟沈した艦娘を助ける方法を、熱心に聞いて回ってるみたいネ。それで墓場島の噂を聞きつけたみたいなんだケド」
仁金剛「妙に張り切ってて、あの勢いだと最悪、墓場島に乗り込んで行くかもしれないワ……!」
不知火「しかし、轟沈した艦娘を自分の鎮守府に連れ帰ることは……」
仁金剛「イエース、私もそれは知ってるし、わかってるつもりヨ? でも、あの人たちはそんなことはお構いなしみたいで……」
仁金剛「むしろ、悪評の多い墓場島から、轟沈した艦娘を助け出したら逆に評価されるんじゃないかー、とか?」
仁金剛「トンチンカンなコトを言ってたらしいカラ、墓場島の関係者に知らせないと、って、仁提督が言ってたんデス」
仁金剛「それで以前、中将と関係があると聞いて、丁度良く不知火の都合が聞けて、私に伝言を頼んだわけデース」
不知火「! それは……ありがとうございます」
仁金剛「あなたはこれから墓場島に戻るのでショウ? 提督准尉に、伝えてあげてくだサイ」ニコッ
不知火「はい……お心遣い、本当に痛み入ります」ペコリ
仁金剛「ユーアーウェルカム! ついでに料理上手な比叡と、妹思いの黒潮にも、よろしく伝えてネ!」
仁金剛「それでは私は仁提督のもとへ戻りマース! シーユー!」タタッ
不知火「……」ケイレイ
416 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/03/25(木) 20:38:09.19 ID:yO92N9VFo
今回はここまで。
417 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/03/27(土) 02:03:05.11 ID:2GJVtibU0
更新が早い!のは嬉しいけど無理して書いたりはしないでね?
ホシュー
418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/03/28(日) 13:46:40.74 ID:XuyRKm610
利根の霊や筑摩の問題、テレビ出演に浮かれるアホ提督やマスゴミの問題、それに加えてまた面倒くさそうな2人(留提督を入れれば3人)の問題もあって段々複雑になってきてるけど、これが全部解決すればすごいスッキリしそうですね。
応援してます。頑張ってください!
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/03/29(月) 11:10:41.65 ID:xMJAebYMO
>>417
早いか?めちゃくちゃ遅いだろ
楽しみにはしてるから待ってるよ
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/03/30(火) 16:53:09.61 ID:Nwr2FHkb0
このスレにしては早いほうなんじゃない?
空白の半年とか色々あったからな
421 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 00:57:46.01 ID:N8s463Dyo
少しだけ続きです。
422 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 00:58:30.88 ID:N8s463Dyo
* 数日後 墓場島鎮守府 執務室 *
提督「……つうことはなにか? 遠大佐がこの島に乗り込んで鳥海たちを連れて帰ろうとしてんのか」
不知火「はい。まだ可能性の段階ですが」
提督「やれやれ……どいつもこいつも勝手な真似しやがって」
電「雷ちゃんが一枚かんでると思うと申し訳ないのです……」(←今日の秘書艦)
提督「何度も言うが、お前が委縮する必要はねえぞ?」
電「……なのですか?」
不知火「はい、あなたに落ち度はありません」
電「……」ションボリ
提督「と言っても気に病むのがお前らなんだよなあ……いくら姉妹艦だっつっても、一度も話してなきゃ他人だろうがよ」
不知火「ところで」チラッ
武蔵「む、どうした」
筑摩「?」
不知火「いえ。筑摩さんが、伺っていたよりも顔色が良いといいますか」
423 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 00:59:16.91 ID:N8s463Dyo
筑摩「一応、ね。浮かれてはいけないと思ってるんだけど……」
武蔵「利根と2秒ほど目を合わせても避けられなかったそうだ」
不知火「2秒、ですか……」
提督「あれで利根も努力というか、筑摩を怖いと思わないように必死になってくれてるからな」
提督「筑摩も筑摩で利根との接触を避けるために執務室に引き籠ってるわけだが、居場所がわかってる分、利根も安心してるみたいだし」
提督「お互い我慢もこの調子で続けてもらって、そう遠くなく良い結果になってくれりゃあ御の字だ」
提督「武蔵には、出撃せずに筑摩に付き合ってもらうっていう、別の意味で我慢を強いてるところもあるがな」
武蔵「いいさ、出撃するにも資材を節約せざるを得ない現状だ。今は執務で鎮守府に貢献させてもらおう」
提督「畑仕事も頼りにされてるみたいだしな」
武蔵「ああ、いい汗をかかせてもらっている」フフッ
<シレーカーン!
提督「!」
扉の外の声「司令官、ごめんなさい! 両手がふさがってるから、扉を開けて欲しいの!」
電「この声は暁ちゃんなのです!」スクッ
424 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 01:00:00.88 ID:N8s463Dyo
不知火「不知火が開けます」ガチャ
暁「ありがとう司令か……じゃなくて、不知火? 戻ってきてたの?」カチャカチャ
武蔵「おや、お茶の時間か?」
暁「ええ、今日は電が秘書艦だから、なにか差し入れようと思って、作ってきたの!」
暁「こっちのラスクは金剛さん、ミルクティーは比叡さんに教えてもらったのよ!」エッヘン!
筑摩「あら、美味しそう。こんなに器用な暁ちゃんは初めてだわ。電ちゃんのお姉さんはすごいわね」ニコッ
電「!」
暁「そ、そんなに褒められると、ちょっと照れちゃうわ。えへへ……ありがとう筑摩さん」
武蔵「せっかく持ってきてくれたんだ、取り分けるくらいは手伝おうじゃないか」
電「い、電も手伝うのです!」
武蔵「……なあ筑摩。姉のことで電が落ち込んでいるのに気づいてたな? 貴様もなかなか妹思いじゃないか」ヒソヒソ
筑摩「ふふ……なんのことでしょう? 私は末っ子ですよ?」ヒソヒソ
不知火「……」チラッ
提督「……」
不知火(司令が心なしか笑っているようにも見えますが……言わないほうがいいでしょうね)
425 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 01:01:31.32 ID:N8s463Dyo
* *
武蔵「それにしてもだ」フゥ…
武蔵「こんな島だからいろいろと不自由ばかりだと思っていたが、これほど自由というか、良い意味で緊張感がないとは思わなかったな」
筑摩「そうですね……」
提督「? どういう意味だ」
武蔵「轟沈した艦娘をそのまま運用すると、やがて深海棲艦になる……という話があったな?」
提督「おう」
武蔵「その割には鎮守府内に制約らしい制約がないなと、筑摩と話をしていたんだ」
筑摩「流れ着いた轟沈艦を運用し、深海棲艦になるかを調べるという建前があるのでしたら……」
筑摩「例えば監視カメラですとか位置情報システムですとか」
提督「ああ、そういう意味か……」
筑摩「立地はともかく、設備や機能が圧倒的に足りなさすぎではないかと。この体制で本営は納得しているのでしょうか?」
提督「本営の連中がとやかく言ってこないのは、自分の発言がきっかけで余計なことに巻き込まれたくないってのあるんじゃねえかな?」
426 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 01:02:15.82 ID:N8s463Dyo
提督「ただでさえ、俺が外と連絡とること自体を、中佐が良く思ってねえ」
提督「おそらくこの島に人を近づけさせないために、中佐が一枚も二枚も噛んでるんだろうな」
提督「俺もいたずらに中佐を刺激する動きを取って、こっちの身動きを制限するような真似はしたくねえ。準備ができるまでは大人しくしてるさ」
武蔵「なんだその準備というのは。物騒なことを考えていないだろうな!?」
提督「物騒じゃねえよ。いずれはこの島をどうにかして、艦娘たちだけの島にしたいと思ってるだけだ」
武蔵「!」
提督「治外法権と言えばいいか、領土と言えばいいか……不可侵領域みたいなものを、作ってやりたいと思ってる」
筑摩「……まるで国家ですね」
提督「!」
暁「……司令官?」
提督「そうだな……その形が、今のところは理想だな」
武蔵「おい、本気か!?」
提督「ああ、悪くねえな。悪くねえ……!」ニヤァァ
電「司令官さんの笑顔が相変わらず悪人みたいなのです……」タラリ
427 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 01:03:00.47 ID:N8s463Dyo
暁「暁たちのためなのはわかるけど、司令官はもっと普通に笑ったりできないの?」タラリ
提督「うん? 俺みたいなのがお前らみたいににこにこしてたら気持ち悪くねえか?」
暁「そんなことないわ、大人だって笑ってた方がいいわよ。金剛さんや比叡さんだって、にこにこしてるでしょ?」
提督「まあそうだけどよ、俺にはあいつらほど可愛げはねえぞ? それに、不知火だって滅多に笑わねえよな?」
電「そういえばそうなのです」
不知火「いえ、不知火は笑いたいときには笑いますので、どうぞお気遣いなく」
暁「……そういえば……」
提督「どうした?」
暁「扶桑さんって、ここへ来たばかりのときは全然笑わなかったんだけど、今はずっと笑顔よね? 笑ってないときがないくらい……」
提督「あー……あいつは前の鎮守府の扱いが非道かったからな。その反動じゃねえかな?」
暁「司令官は理由を知ってるの?」
提督「ああ。知りたいんなら扶桑を呼ぶぞ?」
暁「そ、そこまでしなくていいわ!?」
428 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 01:03:46.10 ID:N8s463Dyo
武蔵「提督よ、ここでお前が話せばそれまでじゃないか?」
提督「この手の話は本人不在のところで話したくねえんだよ。当人のあずかり知らねえところで、俺がべらべら喋ってたら気分悪いだろ」
武蔵「しかし、利根のときは」
提督「利根は話が別だ! 思い出させたらぶっ倒れるような話、本人にさせられるかよ!?」
武蔵「ぐ……」
提督「正直、利根の過去はできれば誰にも知られずに、触れられなければいいと思ってたんだ」
提督「だが、事情を知らないがために利根があんな目に遭うなら、知ってる奴が……っつうか、この場合俺だよな。俺がどうにかするしかねえ」
提督「利根自身の名誉もある。ことがことだけに、あんまりおおごとにしたくなかったんだがな」
筑摩「……」ウツムキ
電「司令官さん以外には、このことを知ってる人は誰だったのですか?」
提督「来た当初からその辺の事情を知ってたのは、確か朝潮だけだったはずだ。その後、長門にも軽く話して……」
提督「明石と如月にも話したんだが、それはそれからもう少したってから……利根がだいぶ良くなってからだな」
429 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 01:04:30.98 ID:N8s463Dyo
暁「……ねえ、司令官? もしかしてその話、利根さんが入渠しないのと関係ある?」
提督「……」
暁「……ふーん、そう。そういうことなの」ウナヅキ
電「あ、暁ちゃん? どうかしたのですか?」
武蔵「おい、どういう意味だ」
暁「司令官がそういう顔をして押し黙ったってことは、当たってるけど答えたくない、ってことでしょ?」
提督「そういうこった。ったく、お前らほんとに察しが良くて助かるぜ」ハァ…
武蔵「おい、まさか……」
提督「言うなよ武蔵。利根がああなったのは、『ああなりそうになった』ってことだぞ?」
武蔵「で、では、利根は……!!」ワナワナ
提督「それ以上話したいんなら明石んところに行け。どんな顔されるかは知らねえがな」
武蔵「……!!」
筑摩「なんて……なんてこと……!!」ボロボロボロボロ
電「筑摩さん……!」
430 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 01:05:15.71 ID:N8s463Dyo
提督「……」
暁「……食器、下げるわね」
不知火「手伝います」
カチャカチャ…
提督「……暁は、筑摩に声をかけないのか?」
暁「それはもう電がしているもの。駆逐艦に寄ってたかって励まされても、ちょっとね……?」
提督「なるほど。お前も声をかけるタイプだと思ってたが、それもそうか」
暁「司令官は声をかけないタイプよね?」
提督「ああ。俺が言っても逆効果だからな」
不知火「……当事者にしかわからない感情に口を出したくない、でしたか」
暁「ああ、そういうこと。司令官らしいわね」
提督「……」
431 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/04/26(月) 01:06:00.72 ID:N8s463Dyo
今回はここまで。
だいたい投下できないときは、話の結末に悩んでいるか、
書いて読み直して気に入らなくて書き直しているか、どちらかです。
ご容赦願いたく。
432 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/04/27(火) 17:04:44.29 ID:qyYF6UGD0
乙です。
艦娘による国家…見てみたいですね。罠だらけを見てないのでなんとも言えませんけど。
433 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/05/01(土) 01:49:58.58 ID:ptkLuddJ0
一瞬罠だらけのエンド1思い出した
434 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:20:53.58 ID:QzRUn/eeo
お待たせしました、続きです。
435 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:21:47.41 ID:QzRUn/eeo
* 鎮守府内 会議室 *
(会議室内に、提督、不知火、朧、若葉、朝潮、吹雪、電、神通、那珂が集まっている)
提督「時間だが……古鷹がいねえな?」
那珂「朝雲ちゃんに呼ばれてるから、少し遅れてくるって言ってましたー!」
提督「そうか……まあ古鷹は接触させる気ねえから、後でもいいか」
朧「? 何の話ですか?」
提督「不知火からの情報だ。この島の鎮守府に、テレビの撮影班が入るかもしれねえ、って情報があってな」
吹雪「テレビですか!?」
提督「はしゃいでんじゃねえよ。俺はこの島のことをテレビに映す気はねえぞ」
吹雪「え?」
提督「お前たちに集まってもらったのは、この島の映像や音声が外に出るのを阻止してもらうためだ」
朝潮「阻止、ですか?」
若葉「……那珂さんにそれをさせるのか」チラッ
那珂「!」
提督「ああ、だから最初に那珂には謝らないといけねえ」
436 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:22:47.01 ID:QzRUn/eeo
提督「テレビのことを知ってそうだからこそ協力を仰ぎたいわけだが、この話は那珂の望みとは真逆のはずだからな」
若葉「提督が、テレビに映ることを拒否する理由はなんだ?」
提督「とにかく目立ちたくねえってだけだ。俺はこの島の存在自体を世間から隠し通したい」
提督「ま、俺の考え関係なく、ただでさえ余所から蛇蝎のごとく嫌われてる鎮守府がテレビに出てちやほやされたら、面白くねえと思う連中が大多数のはずだ」
提督「万が一があったら、くっそつまんねえ理由で因縁つけられて陰湿な嫌がらせを受けるのは目に見えてる」
神通「でしたら、そのテレビ局が入ってこないようにするのが一番なんでしょうが……」
提督「それが難しい。この前、島に流れ着いてきた加古と鳥海。あいつらの轟沈の原因になった無理な指示を飛ばしたのが、芸能人だって話でな」
提督「その汚名を返上したいんだか何だかで、調べてるうちにこの島のことを嗅ぎつけたらしい。だよな不知火?」
不知火「はい。仁提督の秘書艦の金剛さんから、そのように伺っています」
提督「仁提督がそうだったように、そこがどういう場所か知らない奴は、こっちの都合なんか知ったこっちゃねえし、何をしてくるかもわからねえ」
神通「留提督……でしたか。彼が、自分が正しいと思っているのなら、私たちが受け入れられない要求をしてくる可能性もあるわけですね?」
提督「ああ。だからこうやって、心構えだけでもしておきたくて、集まってもらったわけだ」
電「その人は、轟沈した艦娘がここ以外では運用できないことを知らないのですか……?」
提督「知ってるはずっつうか、調べてりゃ嫌でも知ると思うが……」
437 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:23:32.52 ID:QzRUn/eeo
不知火「むしろ、轟沈した艦娘をこの島から助け出すことが良いことであると思い込んでいる可能性があります」
不知火「金剛さんも、あのままでは島に乗り込みかねないと仰っていました」
電「……それってもしかして、司令官さんが悪者みたいな扱いになってませんか?」
朧「あー、ありそう……」
提督「そういうのは慣れてるから気にすんな」
吹雪「慣れちゃだめですよ!?」
提督「仮に俺が正しかろうと、奴らがこの島に来る時は、鳥海や加古を連れ戻しに来る時だ」
提督「否応なしにやりあう羽目になるんだろうな……面倒臭え」ハァ
提督「それでだ、少し脱線したが、那珂にはそういう意味で我慢を強いることになる……すまない」ペコリ
那珂「……!」
提督「俺は、この島にやってくるテレビ局の連中を、どんな手を使ってでも追い返すつもりでいる」
提督「その時にお前がいて、追い出すのに加担したように見られたんじゃ、お前が将来テレビに出て有名になろうって時にマイナスになるだろう」
提督「だから、この島に那珂がいること自体、悟られたくない。この島では隠れていて欲しいんだ」
電「司令官さん……」
438 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:24:17.50 ID:QzRUn/eeo
提督「もっと言えば、那珂がこの島にいること自体、那珂にとってはマイナスだと思ってる」
那珂「え……? ど、どういう意味……!?」
提督「だってなあ、この島に関わっただけで本営にいい顔をされてねえんだぞ?」
提督「それだけじゃねえ。那珂は、この島の鎮守府に在籍してただけじゃなく、轟沈してこの島に流れ着いてる」
提督「メディアに出たいって望みがあるなら、このふたつは絶対に秘密にして隠し通すべきだと、俺は思ってるんだ」
提督「できることなら余所の鎮守府に移籍して、そこの鎮守府出身ってことで出自を偽るのも必要悪じゃねえかと思ってる」
全員「「……!」」
神通「この鎮守府とはかかわりがないように見せたい、と……?」
提督「そういうことだ。俺は俺が日陰者であることを望んでいるが、お前たちはその限りじゃないだろう」
提督「朧や吹雪みたいに轟沈したことがわかってるとさすがに厳しいが、那珂は所属すらわかってねえし、誤魔化そうと思えば……」
那珂「でも……でも、それじゃ!」
提督「!」
那珂「この鎮守府でお世話になったみんなを……応援してくれたみんなを、見捨てるようなこと、できないよ……!!」
提督「……」
439 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:25:02.30 ID:QzRUn/eeo
那珂「ファンやスタッフを大事にするのが、那珂ちゃんが目指すアイドルだもん……!」
那珂「ステージも作ってもらって、そのステージに立つ前から、拍手も、応援や励ましもたくさんもらって……!」
那珂「こんなにお世話になったのに、この島の思い出を捨てちゃうようなことしたら、自分が許せないよ……!」
提督「そうか。そりゃあ……困ったな」
神通(困ってるようには見えませんね……)
不知火(微妙に嬉しそうですね……)
提督「俺はテレビ局の連中を陥れようとしてる。奴等が来た時に那珂がいるとは思われないようにしねえとな」
朝潮「ということは、那珂さんの存在を知られないようにすることも任務の一つですね!」
提督「ああ、そうだ」
吹雪「それじゃ、あとはどうやって追い返すか、ですね……」
神通「提督、今回の任務はどこまでを想定していますか?」
提督「俺はもう上陸されること前提で考えてた。この手の連中はこっちの静止なんざお構いなしだろうしな」
電「そういえば、仁提督のときも勝手に上陸されてたのです」
朝潮「霞からはむこうの長門さんに追いかけられたと聞いてますが……それも連絡なしだったと?」
朧「うん。事前連絡なしで来たらしいよ?」
朝潮「えぇ……」
440 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:25:47.58 ID:QzRUn/eeo
提督「ともかく、あいつらが勝手に鎮守府内を歩き回る事態は避けたい。まずは戦艦を並べて上陸を拒否するつもりだ」
提督「で、万が一島に入られた場合なんだが、若葉、朝潮、朧には、奴らが変な動きをしないか取り囲んで見張ってて欲しい」
朝潮「!」
若葉「変な動き?」
提督「ああ。一番はなにより盗撮されたくねえ」
提督「最近の撮影機器は小さいからな、手元でなにかを動かしたり、もぞもぞしてるようなことがあれば、すぐに俺に教えてくれ」
提督「肩から下げたカバンの向きをわざとらしく動かしたり、ずっと腰に手を当ててたりするやつも要注意だ。カメラを仕込んでる可能性がある」
神通「提督、彼女たちが選ばれた理由を伺っても?」
提督「完全に俺の独断と偏見だが、テレビカメラを向けられても愛想を振りまかないことができるか、だな」
提督「潮みたいに恥ずかしがったり、暁みたいに愛想がよくても付け込まれるからな。無視と無関心があいつらの一番困る反応だ」
朧「笑わないようにしないといけないんですね?」
提督「どんなふうに映されるかわかんねえからな。ちょっと笑っただけで気があるみたいな壮絶勘違い編集されても困る」
提督「戦艦に頼もうかとも思ったが、霧島はここへきて日が浅いし遠慮がち、長門以外はちょっと愛想が良すぎる」
吹雪「山城さんもですか?」
提督「あいつが一番愛想いいだろ。自分からネタ振っていじられに来てんだぞ、あいつ」
朧「多分、そんな意図ないと思いますけど……」
441 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:26:32.22 ID:QzRUn/eeo
提督「ともかく。若葉、朝潮、朧はその撮影グループを取り囲んで監視。で、その後ろをさらに神通が隠れて見張るのがいいだろうな」
提督「俺からの指示がない限りは、そのグループから何を訊かれても無視。任務に集中してくれ」
若葉「ふむ……わかった、任せてくれ」
提督「それから電と吹雪、あとで古鷹にも頼むが、お前たちは、あいつらの行動した場所に変なものが残ってないかを調べて欲しい」
電「へんなもの……ですか?」
提督「中佐のいる鎮守府にもマスコミが入ったんだが、ご丁寧に盗聴器を仕掛けていきやがったそうだ」
吹雪「盗聴器!?」
提督「普段から掃除してる古鷹なら、見たことのない置物が増えたり、コンセントに知らない機械が刺さってたりすれば気付くだろ?」
提督「電と吹雪も、この島の艦娘の中では古参の方だ。壁に変な穴が開いてないかとか、少しでも違和感があったらすぐ教えてくれ」
電「か、考え過ぎではないですか……?」
提督「んなもん石橋叩き割るくらいでいいんだよ」
吹雪「割ったら駄目じゃないですか!?」ガーン
提督「ぶっちゃけ奴らの渡る橋は、連中もろとももれなく叩き落としておきたいくらいだ」
吹雪「しれーかーん!?」ガビーン
442 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:27:34.94 ID:QzRUn/eeo
提督「で、那珂にも協力を仰ぎたいんだが……」
那珂「は、はいっ!」
提督「那珂は俺たちを含めて、俯瞰できる場所から奴らを監視してくれ」
提督「もしかしたら、あいつらが勝手に他の場所に行って、そこから撮影を始めるかもしれねえ」
若葉「別動隊が出ると?」
提督「ああ、だかそれは俺が認めねえ。歩くときは一か所に固まって、神通たちの目が届く範囲にいてもらう」
那珂「うーん、それ、できるかなあ……?」
提督「? やっぱり問題あるのか?」
那珂「野外ロケするときって、ロケしている場所がどんなところかを見せる必要があるんです。周囲の景色が見えるとよくわかるでしょ?」
那珂「まとまって撮影しているグループから離れて、引いた風景を撮影する班も、いるはずなんですよー」
若葉「なるほど……」
那珂「そういうわけだし、見張るんなら見張りグループを複数作らないといけなくないかなー?」
提督「ちっ、くっそ面倒臭えな。撮影できる連中が複数いることを想定しなきゃなんねえのかよ……」
吹雪「それがだめなら、強制的に行動を制限するしかないですよね」
朧「でも提督は、向こうがアタシたちの指示に従わないことを危惧してるわけでしょ?」
朝潮「私たちが見張るとしても、相手が大人数では難しいかと……」
443 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:28:32.37 ID:QzRUn/eeo
提督「そうだな……やっぱ戦艦たちも呼ぶか? それか、指示した場所からはみ出そうようなら、戦艦に強制的に海に投げ落としてもらうか」
若葉「!?」ギョッ
朝潮「!?」ギョッ
那珂「!?」ギョッ
朧「提督……本気ですか?」
提督「おうよ。むしろそっちのほうがいいかもしれねえな、撮影機器もついでにおじゃんにできるかもしれねえ」ニィ
那珂「提督さんってば、テレビを目の敵にしすぎだと思うんだけど……」オロオロ
提督「俺は単純に、この島のことを放っておいて欲しいだけだよ。テレビに映るなんてもってのほかだ」
提督「ん、そうだ、今からでも遅くねえ。中佐にも介入してもらって、奴らの妨害を依頼するか」ニタァ
若葉「」
朝潮「」
提督「俺がテレビで余計なことを言えば、一番困るのは中佐だ。奴ならことを大きくできそうだしなあ……!」ケッケッケッ
電「司令官さんがいつになく悪い顔をしているのです……」タラリ
若葉「だ、大丈夫なのかこの男は……?」
吹雪「もともとちょっと悪人っぽい顔してるけど、ここまで悪い顔は初めて見るかなあ……」
神通「中佐に迷惑をかけることができるからですね……気持ちはわかりますけど」
不知火「ああ、なるほど……納得です」
444 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:29:17.26 ID:QzRUn/eeo
朝潮「」カチーン
朧「って、朝潮が固まったまま動かないんだけど……」
神通「あの、提督? あまり悪い顔をしますと、朝潮さんが認識を拒絶してフリーズしてしまいますので……」
提督「あぁ? こいつまだ俺を善人だと思ってんのか? おい朝潮しっかりしろ! 現実見ろ!」
朝潮「」チキチキチキ チーン
朝潮「はっ!? し、失礼しました司令官!」
朝潮「この朝潮! 司令官のためにならどんな悪事にも手を染める覚悟です!」ビシッ!
提督「だーからそうじゃねえって言ってんだろどうしてそう極端なんだおめーはよおおお!」アタマガシッ
朝潮「し、しれいいい痛い痛い痛いいぎゃあああああ!!?」メキメキメキメキ
吹雪「朝潮ちゃんから、今まで聞いたことないような悲鳴が!?」
那珂「提督さん手加減してあげてー!?」
提督「してるわ手加減くらい! 加減が出来てねえのは朝潮のほうだろどう見ても!」
朝潮「ひいい……この世のものとは思えないくらい痛いです司令官……!」ナミダメ
提督「お前がいろいろ取っ違えてるから、こうなるんじゃねえか。俺は朝潮に悪い事をしろなんて言ってねえぞ」
朝潮「で、ですが、司令官はいつも私たちのために、矢面に立って身を粉にしてくださっています!」
朝潮「その司令官のお役に立てることはこの朝潮にとって喜びです! ですから……」
提督「ったく、お前も面倒臭え奴だな」アタマガリガリ
445 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:30:18.22 ID:QzRUn/eeo
提督「俺はお前らに気分が悪くなるようなことをさせたかねえんだよ。そういうのは全部俺に押し付けとけ」
朝潮「……」シュン…
吹雪「ほんっと、司令官は突き放すふりをして過保護なんだから!」
朧「清濁併せ呑む、って言葉がありますけど、濁ってる方は提督が率先して呑み尽くしに行ってますよね」
提督「ふん……」
朝潮「……司令官。朝潮は、司令官のお力になることを許していただけないのでしょうか……」ポロポロ…
提督「……」ピク
若葉「提督。いいのか、このまま泣かせてて」
提督「……」ムッ…
朝潮「あ、朝潮は、司令官に助けていただいた御恩があります。だからこそ、司令官の苦境ならば、私も……ぐすっ、ぐすっ」
吹雪「泣ーかした、泣ーかした」ボソッ
朧「かーすみーに言ってやろ」ボソッ
提督「ぅっだああああ! 茶化してんじゃねえよ! くそ! ああくそ!」ウガー!
提督「おい朝潮っ!」
朝潮「は、はい!」ビクッ
提督「いいか!? まず、信頼してなきゃここには呼んでねえ!」
朝潮「!!」
446 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:31:02.86 ID:QzRUn/eeo
提督「真面目といえば真っ先にお前が来るくらいにはお前のことを評価してるし」
提督「これからやってもらう任務も人間のためじゃなく、この島のための任務だ。ぶっちゃけ人と関わりたくない俺の我儘だ」
朝潮「……!」
提督「俺一人じゃあ手に負えない。だからお前にも力になってもらおうって話だ。嫌か?」
朝潮「い、いえ! そんなことはありません!!」
提督「協力してくれるなら、頼みたい。大丈夫か?」
朝潮「お任せください! 朝潮は、これからも司令官に尽くす所存です!」ビシッ!
若葉「……なんだか愛の告白みたいな所信表明だな?」
朝潮「!?」カオマッカ
提督「若葉。お前も変なこと言うな」セキメン
若葉「フッ……これは失礼した」
電「痴話げんかはそのくらいにして、とっとと話を進めるのです」チッ
朝潮「!?」ビクッ
那珂「!?」ビクッ
若葉(なんだこのプレッシャーは!?)ビクッ
吹雪(電ちゃんが舌打ち!?)ギョッ
朧(電も感化されてるっていうか、すれてきてるのかなあ)
447 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:31:47.20 ID:QzRUn/eeo
提督「だから茶化すなっつってんだろが……つうか、任務自体はさっき説明したのがすべてなんだがな」
那珂「この島の情報を持ち帰らせるな、ってことですね?」
提督「ああ。俺は、この島の存在は極力世間に公表したくない。海軍にとっても扱いに困るだろうからな」
若葉「海軍もなのか?」
提督「俺の個人的な事情だけでなく、本営も少なからずこの島には関わりたくないみたいなんだ」
若葉「それはやはり、轟沈した艦娘が生活しているからか?」
提督「一番はそこだと思うが……本営でこの島の話題を出すと嫌な顔をされるらしいぞ? L大尉がそう言っていたんだ」
不知火「それに関してですが……」スッ
電「不知火ちゃん?」
不知火「……あまり望ましくない言い方ですが、この島自体が、その……縁起が悪い、と言われているようなのです」
不知火「聞くところによれば、流刑地呼ばわりもあるらしく……島と関係すること自体、忌避されているとも言えましょう」
提督「流刑地ね。へっ、いいじゃねえか、そういう噂があるんなら、ますます人も寄ってこねえ。いい気分はしねえけどな」
若葉「なるほど。それなら確かに、若葉もそうだ」
若葉「止提督は特に世間体を気にしていたから、命令違反した若葉たちを解体以外の方法で抹消したかったと考えれば、合点がいく」
448 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:32:32.07 ID:QzRUn/eeo
朧「それって、朧たちもそういう扱いなのかな……」ムスッ
提督「お前たちは事情が違うだろ……っつうか、悪いのは前の鎮守府の提督じゃねえか」
提督「けど、まあ、そうだな。そういうの関係なく、一緒くたにされてる感じはするな」チッ
提督「気分は悪いが、それで今まで奴らからの干渉がないことを良しとしてきたのも、まあ、俺だからな……」
吹雪「で、でも、そうしないと私たちだって、処分されてたかもしれないんですから!」
朝潮「そうです! 司令官の判断あればこそ、私たちが活動できているんです!」
提督「……」
不知火「司令。僭越ながら、今はこれからやってくるであろう敵に備えるのが最優先ではないでしょうか」
提督「……ああ。それもそうだな。そっちを悩むのは後にするか……」フー
提督「とりあえず今日のところは解散だ。電と吹雪はあとでまた来てくれ、古鷹と調整して話させてもらうからよ」
吹雪「はいっ!」
電「了解なのです」
ゾロゾロ…
提督「ああ、そうだ、電」
電「はい?」クルリ
449 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/05/09(日) 10:33:17.68 ID:QzRUn/eeo
提督「ちょっといいか?」テマネキ
電「な、なんでしょう?」
提督「……全員行ったな。いや、お前が舌打ちなんて珍しすぎてな」
電「!」
提督「何かあったのか?」ジッ
電「な、なんでもないのです!」ダッ
提督「……そういう奴ほど、なにか抱えてんだよな。やれやれ……」
電「……」
電(電は、司令官さんのお役に立ててるのでしょうか)
電(司令官さんは、信頼してなきゃここに呼んでないと言いましたけど……)
電(電も、朝潮ちゃんのように、ちゃんと気持ちを伝えられれば……)
電「……」
電(B提督鎮守府で、電を初期艦に選んで貰ったとき、一番お役に立てるように、誓ったのに……)
電(……それすら、叶わず……)
電「……」
450 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/05/09(日) 10:34:02.51 ID:QzRUn/eeo
今回はここまで。
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/05/11(火) 00:48:23.22 ID:ddVJa4H/0
待ってました!
これから面白くなっていきそうだけど罠だらけじゃないからなぁ...
上手く行くといいが...胸糞展開が待ってる予感
452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/05(土) 21:53:12.22 ID:phFxlZkR0
そろそろ投稿の予感
453 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 21:57:05.13 ID:Fa4j/EEho
>>452
なんでわかるんですか……(白目
続きです。
454 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 21:57:49.97 ID:Fa4j/EEho
* 北東の砂浜 *
霞「なによ、また一人でぐじぐじ悩み事?」
提督「まあな」
霞「まあな、って……あんたねえ」ハァ
霞「……朧と吹雪から聞いたわよ。朝潮姉のことと、那珂さんのこと」
提督「そうか。朝潮はまあともかく……那珂のことは、どうにもうまくいかなくてな」
提督「あちらを立てればこちらが立たねえ。まったく、世の中はうまくできてやがんな、ってなぁ」
霞「当たり前じゃない、あんたは欲張り過ぎなのよ。あれもやってこれもやって、それをあんた一人で考えて」
霞「三人寄れば文殊の知恵、って、朧も言ってたわよ。もう少し誰かを頼ったらどうなのよ!」
提督「俺は楽をしたいだけのに、お前らに頼るのはどうなんだ?」
提督「今回の話だって俺の我儘だからな。これでも目いっぱい頼りにしてるつもりだぜ」
霞「……ふーん、私は頼りにならないってわけ?」
提督「頼れるか、って意味では頼りになる方だと思ってるさ」
提督「ただ、今回の相手は無視しなきゃいけねえんだよ。一言物申さずにはいられないお前にゃ向かねえなって判断しただけだ」
455 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 21:58:35.42 ID:Fa4j/EEho
霞「はぁ……わかったわよ。あんたがそこまで言うなら、従うわ」
提督「そうしてもらえると助かる。ついでに、今回手伝いを頼んだ連中には徹底して無視しろって伝えてるんだが、お前もできるか?」
霞「いいわよ。どうせ言っても聞く耳持たない相手なら、最初から相手にしないほうがいいわね」
霞「でも、手助けがいるんなら、黙ってないで私たちに言いなさい。いいわね?」
提督「ああ。また蹴落とされたくねえしな」
霞「っ! か、カナヅチ相手に、そんなことするわけないでしょ!? バッカじゃないの!?」
提督「……悪かったよ、そんなに怒んな」
霞「だいたい! 泳げない自覚があるんなら、海辺にぼーっと突っ立ってんじゃないわよ! 波に掻っ攫われたいの!?」
提督「……波に、か……」
霞「? ちょっと!?」
提督「……ん、ああ、悪い。ぼーっとしてた」
霞「な……何やってんのよもう! 大丈夫なの!?」
提督「ああ……海に落ちたときのことを思い出してな」
456 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 21:59:20.86 ID:Fa4j/EEho
提督「なぜかと言われたら説明できねえが、海そのものは嫌いじゃなかったんだ。不思議と、落ち着くっつうか……」
提督「海の中に、沈んでいく時も……そう……」
提督「……」
霞「ちょっ……しっかりしなさいよこのクズ!!」ハライゴシ
提督「うお!?」グイッ
ドシャッ
霞「……ったく! 頭使いすぎて、自分が疲れてんのに気付いてないんじゃないの!?」
霞「私たちに無理するなって言ってるんだから、艦隊の指揮を執ってるあんたこそ実践して見せなさいよね!」
提督「……わかったよ。確かに呆けてる場合じゃねえしな」ムクッ
霞「ったく、もう……話を変えるけど。あんた、好きな食べ物ってある?」
提督「あん?」
霞「疲れてるみたいだから気を使ってあげてるのよ。少しは察しなさいよね、バカ」
提督「……」
霞「で? 何が好きなのよ」
提督「……悪いが、ぱっと思い付かねえな。これと言って、好きなもの……」
457 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:00:05.02 ID:Fa4j/EEho
霞「そう。なら質問を変えるわ、食べたいものってある?」
提督「……んー、そうだな」
霞「……」
提督「豚レバーの竜田揚げ」
霞「レバー?」
提督「最近食ってねえな、と思ってな。久々にそういうのも食いてえな、と思っただけだ」
霞「ふぅん……苦手な人も多いって聞くけど、あんたは違うのね」
提督「好き嫌いは別にして、スーパーでバイトしてた時に売れ残ってたのを安く買ってたんだ。まあまあうまかった記憶があるがなあ?」
提督「そういやモロヘイヤとかも一時期流行ったんだが、あれも調理方法がわからなくて売れ残って買わされたりしたな」
霞「ああ、あれね……どうやって食べてたの?」
提督「ネギと紫蘇と茹でたモロヘイヤ千切りにしてめんつゆに入れて、そうめん食ってた」
霞「よく考えるわね、そんなの」
提督「なんかの雑誌で見たんだ。大体の料理の知識は本からだな」
458 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:00:50.22 ID:Fa4j/EEho
霞「ふーん……じゃ、じゃあ、逆に苦手なものってなによ?」
提督「あー、馬鹿みたいに唐辛子入れたカレーとか、胡椒の味しかしねえラーメンとか、下が見えないくらいマヨネーズかけたどんぶり飯とか……」
提督「一つの器に、どばーっとひとつの調味料だけを入れたよーなのは理解できねえ。薄味のが好みだし、激辛とか激甘とかは食う気しねえな」
霞(……つくづくここに流れ着いた比叡さんがあの比叡さんで良かったわ)
提督「あとはナントカの踊り食いとか、芋虫を食えとか、そういうゲテモノもパスだな。せめて食える見た目にはしてほしいぜ」
霞「なるほどね……よくわかったわ」
提督「それはそれとして、肉だって貴重なのに、レバーなんて保存のきかねえもん、わざわざこんな離島に送ってくれるかね」
霞「そんなの、聞いてみなきゃわからないでしょ! 聞く前から諦めるなんて、情けないと思わないの!?」
提督「贅沢が絡む話だからな。俺も向こうには頼りたくないし、期待はしないほうが気楽だぜ」
提督「それがなくても、釣り人は増えたし、伊8が海底の海産物とってきてくれるようになったから、献立もだんだん豪華になってるじゃねえか」
提督「お前たちの料理の腕も上がってるし、これ以上の贅沢を言っちゃあ罰が当たるだろ」
霞「……ふ、ふん! あんたはもう少し欲を出したらいいのよ! ったくもう!」プイッ
提督「欲張りだの欲を出せだの、さっきと言ってることがあべこべだな」ボソッ
霞「何か言った!?」ギロリ
提督「何も?」
459 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:01:50.74 ID:Fa4j/EEho
* それから数日後 執務室 *
鳥海「准尉さん、申請用の書類の確認、終わりました」
提督「ご苦労さん、っと……悪いな、手伝ってもらって」
鳥海「いえ、お世話になっていますので」ニコ
潮「わぁ……字が綺麗……!」
提督「これで摩耶と同じ高雄型だからなあ……口の悪いあいつとは大違いだ」チラッ
加古「ふわ〜ぁ……」ゴロゴロ
提督「で、ずっとソファでごろごろしてるあいつが古鷹と同型っつうのも、なんつうか、なあ……」
潮「古鷹さん、いつもお掃除してる印象ありますから、対照的ですよね……」
提督「働く奴とだらける奴、元気な奴とお淑やかな奴ってことで、世の中どっかでバランス取れてんのかねえ……」
扉<コンコンコン
武蔵「戻ったぞ」チャッ
筑摩「提督、こちらは明石さんから今月の収支報告です」
提督「おう、ご苦労さん。潮、数字チェック手伝ってくれ」
潮「は、はい!」
460 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:02:35.12 ID:Fa4j/EEho
武蔵「……おい、加古」
加古「ふぁい……?」ムニャ
武蔵「貴様、本当に古鷹の妹か?」
加古「うん、そーだよー? 古鷹型の2番艦、加古ってんだー」ムニャー
武蔵「先日の砲撃演習では高得点を叩きだしたと聞いているが……これでまともに戦えているのか?」
鳥海「驚かれるのも無理はないと思いますが、これでも加古さんは遠大佐の鎮守府では五指に入る実力者ですよ?」
筑摩「そ、そうなんですか?」
鳥海「はい、海の上ではギアが入るといいますか、潜水艦相手でさえなければ、だいたい任せられます」
鳥海「その分……陸の上では、こうなんです」
武蔵「なるほど。それでは、加古を誘ってまた演習しに行くか?」
加古「うん、また明日ねえ〜」ゴロゴロ
武蔵「……」
鳥海「その、腰が重いのもたまにキズでして……」
461 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:03:34.96 ID:Fa4j/EEho
扉<コンコン
摩耶「よっ! 邪魔するぜ!」ガチャー
鳥海「ま、摩耶!? 准尉さんにそんな挨拶、失礼じゃないの!?」
摩耶「あん? いつもこんな感じだぞ? ノックだってしたし、あいつもこれでいいって言ってるし」
鳥海「……」アタマカカエ
摩耶「そんなことより、加古借りてっていいか?」
加古「んあ〜?」ムクッ
摩耶「いやあ、この前一緒に出撃した時、お前すごかったよなあ! また一緒に出よーぜー!」
加古「んー、そのうちねえ〜」
摩耶「そのうちぃ? 今見せてくれよ、今ー!」ペシペシ
摩耶「おーい、提督からも言ってやってくれよー、加古に出撃してくれってさぁ」
鳥海「摩耶っっ!?」
武蔵「提督なら書類の数字を確認中だ。少し待ってやれ」
摩耶「そっか、んじゃ仕方ねえな」
462 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:04:34.99 ID:Fa4j/EEho
鳥海「武蔵さんも摩耶の態度は諫めないんですか」タラリ
武蔵「提督が良いと言っている以上、私が余計な気を回す必要もあるまいよ」
鳥海「……摩耶、あなた、よくこれまで解体されないで来たわね……」
摩耶「まー、あたしもここへ来て日が浅いんだけどな。前の鎮守府だと、いっつも霧島さんに助けられてたっけなあ」
鳥海「え」ヒキッ
摩耶「しょーがねーだろー!? C提督は、霧島さんの手柄をことごとく否定するんだぜ!?」
摩耶「てめーの気に入った艦娘ばっかり贔屓してデレデレしやがって! あんなくそ野郎に頭下げてられっかよ、くそが!」
鳥海「摩耶ああああ!?」プルプル
筑摩「あの……摩耶さんは、どうしてこの鎮守府に来たんですか?」
摩耶「あれ、話してなかったっけか。あたしは命令違反扱いでここに送られたんだよ」
武蔵「それは私も初耳だぞ……?」
鳥海「なんでも、姫級の深海棲艦と交戦中、攻撃するなって指示に背いたからだ、って、摩耶に聞きましたけど……」
筑摩「それは、作戦とかそういう意図ではなく……?」
摩耶「それを作戦って言うなら、手柄を他の艦隊に取ってもらうための作戦だろーな」
摩耶「今思えばあの指示って、あたしや霧島さんをわざと沈めるつもりだったんじゃねーかなー」
463 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:05:21.86 ID:Fa4j/EEho
鳥海「私には、摩耶のその態度に問題があるとしか思えないんだけど……」
摩耶「だーかーらー、そいつは元の鎮守府にいるC提督が悪いんだよ。霧島さんのこと、ろくに見ないで文句ばかり言いやがって、くそが!」
鳥海「摩耶……せめてその言葉遣いくらいは、なんとかならないの?」ガックリ
摩耶「それは提督にも言ってやれよ。なんであたしにばっかり言うんだよ、不公平だろー?」
鳥海「……」アタマカカエ
武蔵「なあ提督? 貴様はその言葉遣いを直す気はないのか?」
提督「この齢で今更この性格を矯正すんのは無理だろ……っと、これでよし。潮、大淀の承認貰う準備をしといてくれ」
潮「は、はいっ!」
提督「で、何の話だっけか?」
摩耶「ん? ああ、加古を貸してくれって話だけど」
鳥海「それより前に、准尉さんへの言葉遣いの話でしょ……」
提督「言葉遣い? そんなの別に構やしねえよ」
摩耶「……」カチン
潮「て、提督! 言い方……!!」ハラハラ
464 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:06:04.94 ID:Fa4j/EEho
摩耶「おい提督、お前、あたしのことどうでもいいと思ってんのか?」
提督「んん? なんだそりゃ?」
潮「あわわ……!」
筑摩「あの……提督は、艦娘にはできる限り好きにさせているわけですよね? 摩耶さんの言動にも言及はしないということですか?」
提督「ああ。誰かが被害を被ってるわけじゃなきゃあ、摩耶がどう振る舞おうと俺は構わねえよ」
摩耶「な、なんだよ、そういうことかよ……」
提督「まあ、それを鳥海が不快に思うんなら、他にもそう思う奴を集めて、当事者間で話し合ってくれってだけだ」
武蔵「ふむ……」
提督「鳥海みたいに礼儀正しくしろって言い分もわからなくもねえが、摩耶が無理だっつうんなら無理強いはしねえさ」
提督「俺も礼儀正しくしろって言われたら、面倒臭えから嫌だって言うだろうしなあ」
摩耶「めんどくせーのかよ!?」
提督「面倒臭えだろ。一応、中将とかと話すときとかなら、敬語使うくらいの最低限の礼儀はわきまえてるつもりだけどな」
筑摩「一応ですか……」
提督「そうでないなら、いくら取り繕ってもどうせそのうち襤褸が出るんだ。だったら最初から曝け出してた方が楽だろ?」
465 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:06:50.92 ID:Fa4j/EEho
提督「それに、ぶっちゃけここが自分の家みてえなもんだしな。いい子ちゃんのふりして生活なんてやってらんねえ」
提督「とはいえ、いくら自宅と同じでも、だらしない恰好でうろつかないとか、そういう程度の気遣いはしてるつもりだがな?」
鳥海「家、ですか……? もしかして、准尉さんはずっとこちらに住んでおられるんですか? 日本へ帰ったりは……」
提督「帰る?」
潮「!!」ビクッ
提督「帰るもなにも、日本に俺の居場所なんかねえよ。ここが俺の終の棲家だ」
鳥海「え……?」
潮「ちょ、鳥海さん、それ以上は訊かないほうが……」
鳥海「居場所がない、って……ご家族はいらっしゃらないんですか? 心配されるのではないかと……」
潮「ちょ……!!」ビクビク
摩耶「やめとけ鳥海。それ以上訊くな」スッ
鳥海「え?」
摩耶「わけありなんだよ。こいつは、妖精と話ができるのを馬鹿にされて、家族にも避けられてたらしいからな」
鳥海「……!」
筑摩「……」
466 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:07:49.69 ID:Fa4j/EEho
武蔵「……なるほど。貴様の性格は、そういう環境によって作られたということか」
提督「そういうこった。思い出しても不愉快なだけなんでな、生きてはいるだろうが、俺の家族はいないと思ってくれ」
鳥海「それは……大変失礼致しました」ペコリ
妖精「提督? 家族はいないわけじゃないでしょ?」ヒョコッ
提督「……」
妖精「こらー! 無視しないのー!」
武蔵「妖精よ、家族がいないわけではない、というのはどういうことだ?」
妖精「うん、前に医療船が来て、その船に乗ってた女性提督に、家族と不仲は良くないって説教されてね」
提督「おい、妖精!」
妖精「そこで、今の自分の家族は、この鎮守府に一緒にいる艦娘たちだ、って言ったんだよ」
提督「……っ」セキメン
武蔵「ほう……この男にしては、なかなか熱い台詞じゃあないか」ニヤリ
提督「にやにやしてんじゃねえぞ、くそが……」
武蔵「いやいや、私は感心しているんだぞ? ふふ、そうか、家族か……」チラッ
潮「!」
467 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:08:35.27 ID:Fa4j/EEho
武蔵「なあ提督。例えばだが、お前にとって潮は、家族だとしてどんな間柄になるんだ?」
提督「あぁ? 潮か?」チラッ
潮「……!」
提督「うーん……年の離れた妹ってところか? 娘と呼ぶにはでかすぎるし……どっちにしろ庇護対象って感じだな」
武蔵「ほほう。それはどういうところからだ?」
提督「遠慮がちで臆病、心配性で人に気を使いすぎてるきらいがある。昔はずっと不安そうな顔してたしな」
提督「最近は眉を顰めることもなくなったし、俺を叱るくらいには馴染めたから、いい傾向だと思うぜ?」
提督「とはいえビビリなのは変わってねえからな。昔のトラウマもあることだし、俺も極力、潮には触らないようにしてる」
潮「……!」ハッ
武蔵「触らないようにしている? なんだそれは」
提督「潮は前の鎮守府でひどいセクハラを受けたんだよ。だよな、潮?」
潮「……」コク
提督「だからそれを思い出させないように、男の俺は潮に触らないようにしてるってことさ」
潮「……」シュン
468 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:09:50.08 ID:Fa4j/EEho
提督「ま、この鎮守府には、思い出したくない過去を持つ奴がたくさんいるんだ。俺も含めて、な」
提督「だからちょっとだけ気を遣ってもらえると、助かる」
筑摩「……」ウツムキ
鳥海「そういうことですか……」
武蔵「なるほどな。貴様が家族と呼ぶ理由、確かに合点がいくものだ」
提督「所詮は古傷の舐め合いだけどな」
提督「ここに来る奴はひどい目に遭わされてきた奴ばかりだし、少しでも良くしてやりたいと思って艦隊の指揮を執ってるだけさ」
妖精「提督が素直じゃないせいで、誤解されまくりだけどね?」
提督「今日はなにかと一言多いなお前……」
摩耶「ふーん、潮が妹か……」
提督「まあ、家族の枠に当てはめての話だからそう言ったが、真面目に妹扱いする気はねえからな?」
提督「そもそも、潮には姉妹艦の朧や、前の鎮守府からの付き合いの長門がいるし……」
提督「最近じゃあ陸奥とも仲良くなったみたいだしな。俺が出る幕でもねえだろ」フフッ
武蔵「!」
摩耶「!」
鳥海「!」
潮「!」
469 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:10:36.66 ID:Fa4j/EEho
提督「この調子で、穏やかに過ごせる奴が増えりゃ安泰……って、なんだお前らその顔は」
武蔵「い、いや……」
摩耶(不意にいい笑顔見せやがって……)
潮(あんな風に笑ってるところ、初めて見ちゃった……)
鳥海「とてもいい笑顔でしたよ? 娘を思うお父さんみたいな……」
提督「お父さんだぁ?」ジロリ
鳥海「」
潮(もう戻っちゃった……)タラリ
妖精「提督、提督。睨んじゃ駄目だよ?」
提督「ああ、悪い。どうも父親ってものにいいイメージがなくてな……」
鳥海「ほ、本当にご家族……というか、ご両親が嫌いなんですね」
提督「俺の血縁に、ご丁寧に『ご』なんか付けなくていいぞ? 『ゴミ』ならつけてもいいが」
摩耶「おい、鳥海に汚ねえ言葉喋らせんじゃねーぞ、くそが!」
提督「……悪かったよ」フン
摩耶「あん? やけに素直だな……」
470 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:11:20.10 ID:Fa4j/EEho
提督「別に素直ってんじゃねえよ。普通なら、そうやってお互いを思い遣るのが兄弟……っつうか、お前らは姉妹か。姉妹の理想のあり方だろ?」
摩耶「あ、ああ、そりゃー当然だと思ってるけど……」
提督「だったらそれでいいだろうが……ったく」
妖精「……もしかしたら、提督は嫉妬してるのかもね」
鳥海「嫉妬?」
妖精「提督にも弟さんがいたんだけど、提督の両親……特に父親に、提督の言うことは信じるな、耳を貸すな、って言われ続けてたから」
妖精「結局、弟さんも同じように提督を蔑むようになっちゃってね。お互いを助け合うなんてことがなかったから……」
妖精「憧れていたからこその、さっきの笑顔だったんじゃないかなあ」
全員「「……」」
提督「……ふん」
扉<コンコンコン
大淀「失礼致します」チャッ
大淀「提督、くだんの艦隊がこの島に来る予定日がわかりました」
提督「……!」
471 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/06(日) 22:12:04.98 ID:Fa4j/EEho
今回はここまで。
472 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/06/07(月) 07:39:41.44 ID:j8wkSRAO0
>>452
エスパーで草
面白い展開待ってますよ。
473 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[ sage]:2021/06/07(月) 19:54:35.04 ID:svFZL7Gw0
このあたりで青葉が来る予感まぁこの前は、たまたまだし当たる気がしないけど
474 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/13(日) 18:20:42.20 ID:IOCo11OE0
乙だす
475 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/25(金) 20:52:42.22 ID:1sytHWto0
投稿の予感ッ!(やりたい)
476 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2021/06/26(土) 16:50:11.04 ID:808TipeK0
いやまだまだだなあと一週間ぐらい
477 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/06/26(土) 20:09:23.39 ID:LZmzf1e20
一週間はだいぶ賭けたなぁw
正直良作だったら時間なんていくらかかってもいいので良いストーリーを期待
478 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:26:01.41 ID:6yCIFqn8o
ハードル上げるの勘弁してください……
続きです。
479 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:26:46.74 ID:6yCIFqn8o
* 墓場島鎮守府 埠頭 *
(提督が双眼鏡を構えている)
提督「……おいおい、マジで来やがったぞ。どの面下げてこの島に乗り込もうってんだ、あの連中」
大淀「提督、早く準備を。あのサイズの巡視船なら、15分ほどで到着します」
提督「チッ、つくづく面倒臭えな」
大淀「私だって相手にしたくありません。できることなら今すぐ帰ってほしいと思ってますよ」
大淀「ですが、誰かが動かなければ追い返すこともできません。提督、お願いします」
提督「……何か言われたのか?」
大淀「いいえ? 自分たちで沈めておいて『助けてあげる』とでも言うような相手の態度が気に入らないだけです」
提督「……十分じゃねえか。さぁて、とっとと準備するか」
* * *
* *
*
480 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:27:32.24 ID:6yCIFqn8o
* 墓場島鎮守府 埠頭 *
(接岸した海軍の巡視船から降り立つ数名の男女)
遠大佐「よいしょ……っと。雷、大丈夫?」
雷「ええ、大丈夫よ! ありがとう司令官!」ニコッ
雷「留提督も大丈夫?」クルッ
留提督「とうっ!」ピョンッ スタッ
留提督「墓場島上陸!」ビシッ
雷「きゃー、格好いい!」パチパチ
留提督「ふふっ、ありがとう! ……ふーん、ここが墓場島かあ。当然だけど、鎮守府の建物もちっちゃいな」キョロキョロ
留提督「もしあの二人が轟沈していたら、この島に流れ着いている可能性が高いんだね?」
雷「そうみたい。私たちが本営で聞いてきたから間違いないわ!」
留提督「で、もしかしたら、あの二人が助かってるかもしれなくて、ここで働いてるかもしれない、と……」
雷「でも、本当に轟沈していたら、連れて帰ることはできないわ。聞いたでしょう? 轟沈した艦娘は……」
留提督「うん、それはわかってるよ」ウンウン
481 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:28:16.91 ID:6yCIFqn8o
留提督「でも、この鎮守府はそれを承知で受け入れていて、その轟沈艦が原因の問題もこれまで起きていない」
雷「そ、そうね……」
留提督「でも、それよりも! この島に住んでいる艦娘たちのことを第一に考えれば!」
留提督「ただでさえ戦闘で傷付いて死の淵を彷徨い、せっかく生き延びたっていうのに……」
留提督「こんな小さい島に隔離されっぱなしで戻ってくることができない……それはあんまりじゃないか!?」
留提督「早く元の鎮守府に戻してあげるか、それに近い環境に戻してあげないと可哀想だよね!」
雷「え、ええ、それはその通りだわ……!」
留提督「だよね? だから、僕たちでこの仕事ができないか、相談してみようと思うんだ」
雷「ええええ!?」
遠大佐「……」
留提督「遠大佐にはこの話は既にしているんだ。ここの提督准尉にこの話をして、この鎮守府の艦娘を何人か引き取って……」
留提督「呉の鎮守府でリハビリをしてもらおう、という話に決まったんだ!」
雷「だ、大丈夫なの司令官!?」
遠大佐「……」ニコニコ
482 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:29:01.79 ID:6yCIFqn8o
船内から聞こえる声1「そ、そんな話聞いてないですよ!?」
声2「お、おちついて……!」
声3「そ、そもそも、返して貰うこと自体、無理ですってば……!」
留提督「あの声は……」クルッ
声2→山風「司令官が、知らないはず、ない……!」
声3→ガンビアベイ「無理です! 無理無理……!」
声1→鹿島「遠提督さんに確認してください! 轟沈した艦娘の扱いについて、御存知のはずです!」
留提督「ああ! 鹿島じゃないか!!」パァッ
鹿島「ひっ」ビクッ
留提督「そんなに僕が心配なのかい? 大丈夫だよ、何も怖がらなくていいんだよ」カケツケダキヨセ
鹿島「ひぃっ?」ダキヨセラレ
留提督「それとも、僕に会いたくてじっとしていられなかったのかなあ?」カオヲチカヅケ
鹿島「ひいいいっ!?」オシリサワラレ ゾワゾワッ
山風&ベイ(うわああ……)ドンビキ
鹿島「し、知りませんっ!!」バッ タタタッ…
留提督「……行っちゃった。つれないなあ」
483 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:29:47.21 ID:6yCIFqn8o
テレビクルー1「留さーん、俺たちも上陸していいんですかー?」
クルー2「カメラ準備できてますよー!」
留提督「あーそうだね、みんな入って!」
ゾロゾロ
クルー3「ここが墓場島かあ」
クルー4「本当に何もねえな〜」
留提督「ほら、千歳も足柄も! この島の准尉と知り合いなんでしょ? 早く来なよ!」
千歳「……」
足柄「……」
千歳「まさか、私たちがこの島に足を踏み入れるなんてね……」
足柄「ねえ、留提督が鳥海と加古を連れ戻すって話、聞いてる?」
千歳「初耳よ……流れ着いてきたか確認するだけ、一言お詫びの言葉を、って、それこそ何度も確認したじゃない」
足柄「そうよね? 私が聞き逃したのかと思ったわ……」
千歳「……はぁ」
484 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:30:31.60 ID:6yCIFqn8o
足柄「千歳、大丈夫?」
千歳「大丈夫じゃないわよ……留提督は本職でもなんでもないのにルール無視しようとするし、遠大佐も全然頼れなさそうだし」
千歳「ただでさえ、ここに立ち入った提督たちが不幸な目に遭ってるって聞いてるのに、それを話してもまるで緊張感がまるでないし」
足柄「そ、そうね……この島に入ってもいない波大尉も、まさかあんな風になっちゃうとは思いもしなかったわ」
千歳「准尉と相容れないところに触れてしまったのがまずかったんだけど、なんだかそれを思い出すのよね」
千歳「留提督の楽観的な言動といい、行き当たりばったりな行動といい、ここまでやってしまえばこっちのもの的な発想といい……」
足柄「ああ……」
千歳「気が重いわ……」ズーン
足柄「……あの人たちが准尉に接触する前に、准尉に事情を説明しないと駄目そうね」
千歳「それはそうだろうけど……今から行くの?」
足柄「ええ、行ってくるわ。何もしないよりはマシよ!」ダッ
留提督「あ、おーい! 足柄、どこへ行くんだ!?」
千歳「提督准尉に事前に話をしに行ったのよ。みんなここで待ってて!」
クルー1「追いかけましょう!」
クルー2「カメラ回せ! 早く!」
千歳「ちょ、ちょっと待って!? まだ撮影許可取ってないでしょ!?」
485 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:31:18.08 ID:6yCIFqn8o
* 鎮守府内 玄関ロビー *
提督「ったく、どいつもこいつも、何の連絡もなしに勝手に上陸しやがって……」
若葉「なめられているんだろうな。提督、これを機に少しは地位向上を考えてもいいだろう?」
提督「んな面倒臭えことしてられるかよ。人間の役になんか立ちたくねえっつうの」
若葉「嫌だ嫌だで世の中渡っていけるほど世間は甘く……ん?」
タッタッタッ…
足柄「玄関はこっちかしら……あっ」
提督「!」
若葉「あなたは……足柄さんか」
足柄「良かった、丁度ここにいたのね。提督准尉、お久し振りです」ペコリ
提督「……久しぶり? ……もしかしてお前、医療船にいたあの女提督の……」
足柄「はい、もと波大尉鎮守府所属の、足柄です。数日前から遠大佐鎮守府に身を置かせていただいています」
提督「もと? 数日前から……?」
若葉「知り合いなのか?」
提督「一度会ったことがある、って程度だが」
486 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:32:01.31 ID:6yCIFqn8o
足柄「私のことは後にしていただいて。突然で申し訳ありませんが……」
提督「鳥海と加古か?」
足柄「え!? は、はい、遠大佐鎮守府所属の鳥海と加古がこの島に流れ着いていないかと……」
提督「来てるぞ」
足柄「来てるの!?」
提督「ああ。だが確認してどうする気だ?」
足柄「……実は、ある有名人……留って言う人なんですけど、その人が先日、一日提督として遠大佐の鎮守府で指揮を執っていまして」
足柄「そのときに、無理を押して進軍させたために、鳥海と加古が行方不明になってしまったんです」
足柄「それで、もし二人が見つかったら、私たちの鎮守府に戻ってもらうことができないか、ご相談をと……」
提督「ふーん……別にいいぞ」
足柄「いいの!?」
提督「加古と鳥海の二人が納得してそう望むんだったら、な。それから、俺は責任取らねえぞ」
足柄「……」アッケ
提督「なんだその顔は」
487 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:32:47.33 ID:6yCIFqn8o
足柄「だ、だって、准尉は御存知でしょう? 轟沈した艦娘は深海棲艦になるかもしれないって話!」
提督「ああ。だから、遠大佐だったか? そいつがその責任を取るんだろ? 鳥海や加古もそれでいいっつうんなら俺は口出しはしねえよ」
提督「捜索に来た以上はそれなりに反省してるのかもしれねえが……だったら最初から無理させんな、とも言いたいがな」
提督「それで、ちゃんと上には断ったんだろうな? 俺とかじゃなく、本営の将官クラスの連中に、轟沈経験のある艦娘を運用したいって話をよ」
足柄「い、いえ……」
提督「うちが轟沈した艦娘をそのまま運用するのに、いろいろな条件を提示して中将に申請して、特例中の特例で許可が出たんだ」
提督「同じことを遠提督はやったのか? やらないと、連れて帰った後、練度も記憶も全部まっさらにさせられるはずだぞ?」
若葉「!?」
足柄「え、えええ……本当ですか、それ!?」
提督「まっさらにさせられるって話は眉唾だがな。ただ、轟沈した艦娘をそのまま運用するのは、この鎮守府以外に許されてないはずだ」
提督「それがなぜかは、お前ら把握してるか?」
足柄「……いいえ、少なくとも私は初耳です」
提督「その様子だと、遠提督はなぁんも考えずにここへ来たみたいだな?」
足柄「かもしれませんね……」ハァ…
488 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:33:31.49 ID:6yCIFqn8o
提督「海軍の人間ならそのくらい知ってて、ちゃんとわかってここに来ると思ってたが……」
足柄「千歳の言う通り、嫌な予感がするわね……」アタマオサエ
足柄「ごめんなさい提督准尉、この話、一度持ち帰らせていただきます。今の話が本当なら、二人を迎え入れるための準備が不足してるわ……!」
提督「ああ、ちょっと待て、連中は埠頭にいるんだろ。出向いてやるから一緒に来い」
足柄「え?」
提督「俺が直接行ったほうが話は早えだろ」
若葉「確かにその方が話は早いだろうが……」
足柄「……」
若葉「足柄さん?」
足柄「……あ、ううん、なんでもないわ」
若葉「若葉もここへきてまだ日が浅いが、なんとなく言いたいことはわかる」
若葉「提督は、言葉に遠慮のない人だ。仮にも大佐にどんな言葉を浴びせるか、不安で仕方ない……」
足柄「……」
若葉「若葉たちは余計なことを言わないよう指示されている。なるようにしかならない、諦めてくれ」
足柄「そう……そうよね。無理言ってんのは留提督だものね」ガックリ
提督「ああ、そうだ足柄、あいつらカメラ持ってきてるだろ。最初に撮影やめさせるように言ってきてくれねえか?」
提督「俺はテレビに映る気はこれっぽっちもねえ。カメラを構えてる間はお前らの上陸は許可しない、迷惑だってことを最初に伝えてくれ」
足柄「え、ええ、わかりました」
489 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:34:46.77 ID:6yCIFqn8o
* 埠頭 *
足柄「……ということなんです」
留提督「えっ、それじゃ、せっかく来たのになにもしないで帰ることになるの?」
足柄「えっ」
クルー1「せっかくだから取材に行くのはいけないんですか?」
クルー2「この島の提督になんとか許可を貰って撮影させてもらいましょうよ」
留提督「せっかく撮影期間を延長してテレビのクルーも乗って来たのに、撮れ高なしはまずいよね」
足柄「で、でも、撮影は駄目だって言ってるのよ!? このままじゃあなたたちは提督と話ができないわよ!」
クルー2「仕方ない……このカメラ、ケースにしまってきてくれ」
クルー3「は、はい!」
留提督「これでいいんでしょ? 提督准尉さん、呼んできてよ」
足柄「え、ええ……」クルッ タタッ
クルー1「……よし、行ったな? 持ってきたか?」
クルー4「はい、小型カメラ持ってきました!」ヒソヒソ
クルー1「お前のウエストポーチに仕込んで撮影できるな?」ヒソヒソ
クルー4「はい、いけます!」
490 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:35:32.35 ID:6yCIFqn8o
(足柄が提督と若葉、朝潮を連れて埠頭に戻ってくる)
足柄「呼んできたわ。こちらが提督准尉よ」
提督「……」
足柄「こちらは遠大佐とその秘書艦の雷ちゃん、そして留提督よ」
遠大佐「……」ニコニコ
雷「雷よ! かみなりじゃないわ、そこんとこもよろしく頼むわね!」
留提督「准尉さん! 今日はお忙しいなかありがとうございます! よろしくお願いします!」テヲサシダシ
提督「……」
足柄「……准尉?」
提督「俺からの要件はふたつだ」
提督「ひとつ、この島に関する記録は全部消せ」
留提督「!?」
提督「ふたつ、とっとと帰れ」
雷「!?」
491 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:36:17.58 ID:6yCIFqn8o
提督「以上だ」
留提督「」
雷「」
クルーたち「「」」
遠大佐「……」
足柄「あの……准尉?」ヒキッ
提督「俺の用は済んだぞ」フンッ
雷「と、取り付く島もないわね……」ヒキッ
若葉(まあ、そうなるだろうな)
朝潮(司令官、殺気立っておられますね……)
クルー1「あ、あの、准尉さん? 我々はこの島で撮影がしたいん」
提督「この島に関する撮影、録音などのすべての記録行為は禁止する」ジロリ
クルー1「ちょ」
提督「もし今どこかでカメラを回してるんならすぐ止めろ。止めねえんなら実力行使する」
クルー2「お、横暴だ! どんな権限があって禁止するんだ!」
提督「お前らこそどんな権限持ってきたんだ? 日本語通じるから日本の常識がまかり通るなんて思ってんじゃねえぞ」
492 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:37:02.17 ID:6yCIFqn8o
留提督「で、ですから、こうやって海軍の皆さんに協力していただいて……」
提督「そうかよ。うちは協力しないから、もう帰れよ」
留提督「……っ」
クルー1「し、しかし、我々は遠大佐に協力していただくという話を……」
提督「だからそんな話はうちにはきてねえよ」
クルー1「ちょっ!?」
雷「し、司令官?」
遠大佐「……准尉。そこをどうにかできないか」
提督「できない」
遠大佐「……」ムッ
留提督「これは……准尉による上官に対する反抗、ということになるのかな……?」チラッ
雷「えっ? えーっと……」
提督「そうしたいんなら好きにしろ。その前に、本営から許可貰って取材に来たのか? だったらこっちに連絡が来るはずだ」
提督「それがねえんだから、お前らをこの島に通す義理も道理もねえ」
493 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:38:16.52 ID:6yCIFqn8o
クルー1「いやいやいや! 私たちはこの鎮守府で艦娘が救われていることを世界に知らせたくて……」
提督「必要ない」
クルー1「なっ!? 必要なくはないでしょう!?」
クルー1「あなただって世界のために戦っているのに、その活動が誰にも知られないなんてあんまりじゃないですか!」
クルー1「こちらの留さんは今ドラマなどで売り出し中のアイドルなんです! 海軍の活動のイメージアップに……」
提督「要らねえっつってんだよ、わかんねえのか、くそが!」
クルー1「っ!!」
提督「お前らがどこの誰かなんて、俺たちにも、深海の連中にも関係ねえんだよ」
提督「テレビの人間なら手を振って貰えると思ってんのか? 海軍に無償で助けて貰えると思ってんのか!?」
提督「はっきり言う。お前らは邪魔だ、とっとと出て行けよ」
クルー1(ちっ、手強いな……!)イラッ
留提督「ここまで話が通じないなんて……! ねえ、遠大佐、雷ちゃん、なんとかできないかな?」
雷「う、うーん……」
遠大佐「雷、私からも頼む。何かいい方法はないか?」
雷「司令官……わ、わかったわ。それなら、せめて……!」
494 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:39:16.86 ID:6yCIFqn8o
雷「准尉! 何の連絡もなしにここへ押しかけたことは、謝るわ……ごめんなさい!」ペコッ
雷「でも、ひとつだけ……ひとつだけ、お願いがあるの!」
提督「……」ピク…
雷「鳥海さんと加古さんに会わせて欲しいの……ここに流れ着いて来たんでしょう?」
提督「……会ってどうする」
雷「せめて、話をさせてもらいたいの。ここに流れ着くまで……そして、流れ着いてから、何があったのか」
雷「いま、ふたりがどんな気持ちなのか。お願い……話を、させてください」ペコリ
提督「……」
遠大佐「雷……」
遠大佐「准尉。私からもお願いする」ペコリ
提督「……!」
留提督「お、おい、みんなも! お願いします!」ペコッ
クルーたち「「お、お願いします!」」
提督「……」
495 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:40:16.64 ID:6yCIFqn8o
足柄「……」
提督「……」チラッ
足柄(准尉は何を見て……あれは……)チラッ
朧「提督!」
(提督たちに背後から駆け寄ってくる朧)
提督「ん? どうした、なにかあったのか?」
朧「耳を貸して下さい。あの人の……カメラが……ごにょごにょ……」
提督「……ふぅん、なるほどな」
留提督「……?」
提督「おいお前……雷、だったな?」
雷「!」
提督「お前に免じて、話はしてやるよ。ただし……条件がある」
雷「条件?」
提督「ひとつは、今そっちの船に乗せている艦娘も全員連れてこい」ユビサシ
足柄(千歳たちも……?)
留提督「……鹿島もか……!」
496 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:41:01.47 ID:6yCIFqn8o
雷「え、ええ、わかったわ。もうひとつは?」
提督「もうひとつは……」スタスタスタ
クルー4「え」
提督「……記録はするな、と言ったよなあ?」グイッ
クルー4「あっ!」ポーチウバワレ
提督「このバッグの中にカメラ仕込んでやがったか。溶鉱炉に捨てとくぞ」
クルー1「ちょっと、待ってください! それを壊されたら困ります!」ダッ
提督「勝手に困れよ。俺はさっき忠告したぞ」
小型カメラ<ミシッ
提督「こんなもの……!」
小型カメラ<ミシミシミシ…!
クルー1「やめ……!」
小型カメラ<グシャッ!!
提督「……」パラパラ…
クルー4「に、握り潰した……!?」
留提督「う、嘘だろ……!」
497 :
◆EyREdFoqVQ
[sage saga]:2021/06/27(日) 23:41:46.82 ID:6yCIFqn8o
朝潮「し、司令官!? 手は大丈夫ですか!? 破片でお怪我をしては……!」
提督「ん? ああ、大丈夫だ」
若葉「ふむ……提督、詰めが甘いぞ」スッ
提督「ん?」
若葉「今のカメラは記憶媒体も小型化している」ハヘンヒロイアゲ
クルー2「あっ」
若葉「このカードを処分しないと、データが読み取れてしまうぞ」メモリカードテワタシ
提督「こんな小指の爪みたいなもんでか? ……やれやれ、こりゃあ厄介だ」パキッ
クルー1「ああ……!!」
クルー2「なんてことを!」
提督「なにが『なんてことを』だ。実力行使する、って俺は言ったぞ?」
提督「他にもカメラやら何やら持ってるなら、全部船に置いてこい。さもなきゃ、次はてめえらの頭をこうしてやるぜ……!」
クルーたち「「……」」ゾゾッ
遠大佐「……ここは准尉に従おう。鳥海や加古と話す機会を逃してはならない……そうだろう? 留君」
留提督「え、ええ、そうですね……」
雷「司令官、私、みんなを呼んでくるわね!」
遠大佐「ああ、頼んだよ」
雷「ええ、任せて!」
留提督「……」
498 :
◆EyREdFoqVQ
[saga]:2021/06/27(日) 23:46:58.12 ID:6yCIFqn8o
今回はここまで。
梅雨加古が可愛かったので、
改二とバレンタイン古鷹と一緒にアケにください。
那智改二もはよ。
499 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/06/28(月) 07:15:33.07 ID:6Q+9yk1/O
更新乙です。
500 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/28(月) 07:39:56.54 ID:9UXjO0Tk0
うっしゃ当たったぁ!
そういえば前のカキコsage忘れてました。申し訳ない。
501 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/28(月) 07:40:44.69 ID:9UXjO0Tk0
うっしゃ当たったぁ!
そういえば前のカキコsage忘れてました。申し訳ない。
502 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/28(月) 16:56:32.22 ID:UbWLYPWJ0
外れたかーまあいいや
503 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/06/30(水) 00:47:37.15 ID:blncNXTY0
乙です。
小型カメラを手で握りつぶすってなかなかだよね。普通に握っても隙間に入って割れないだろうから手のひらと指で挟んで指力だけでプレスしたって感じか。
普通にバケモンだ…
504 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/08(木) 10:07:58.82 ID:DFcO848S0
あと二、三週間ぐらいかかるかな?
505 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/16(金) 21:28:18.60 ID:px1LFpPO0
まだだったかー。
更新を確認するワクワクが二番目に楽しい。もちろん読むのが一番なわけだけれど。
そういえば最近夕立が多いですね。このスレは夕立ちゃんは出てくるのかな?
506 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2021/07/17(土) 13:21:03.09 ID:LoQeTMQPO
罠だらけの方で出てないから他鎮守府で出ない限りは夕立は出ないと思うよ
507 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/17(土) 14:58:24.80 ID:uwJZkeFz0
罠だらけじゃ出てないんですね。ありがとうございます。
本当なら読みたいですが時雨みたいに「あっこいつ死ぬんだな」ってわかっちゃうので読めないww
508 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/20(火) 02:44:49.28 ID:f1CV1fu/0
どのくらいのペースで確認するのがいいんだろうか
毎週末に確認するくらいか1ヶ月おきにか
509 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2021/07/20(火) 18:02:00.76 ID:G01oRvNo0
毎日確認する!
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