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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」不知火「その3です」

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1 : ◆EyREdFoqVQ [sage]:2020/03/12(木) 00:48:23.02 ID:Wdzf2wR1o

前スレはこちら

提督「墓場島鎮守府?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476202236/
【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529758293/

時系列的にはここがこのスレ。

【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」【×影牢】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467129172/
【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その2だよ」【×影牢】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515056068/

上記スレッドの番外編です。

・舞台になっている鎮守府、通称『墓場島鎮守府』の過去の話になります。
 提督の着任から、各艦娘がこの島へ着任するに至った経緯を書いていきます。

・艦娘の殆どが不幸な目に遭っておりますので、そういう話が嫌な方は閉じてください。

・影牢のキャラは出てきません。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1583941702
2 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 00:54:14.03 ID:Wdzf2wR1o

舞台の「墓場島」について
 作中の表記は「××国××島」、通称「墓場島」。太平洋上にあるとある無人島、パラオ泊地が一番近いと思われる。
 島の北側には海底火山があり、潮流が強く流れが特殊なため、普通の船舶は近寄れない。
 そのためか深海棲艦も寄り付かず、轟沈した艦娘の亡骸がよく島の北東に流れ着いている。
 島の北部は火山活動によってできた岩場。西側は手つかずの林に包まれ、小さいながら切り立った崖がある。
 島の南から北東にかけては、なだらかな丘陵と砂浜が続いており、島の東側に鎮守府が建てられている。

 墓場島と呼ばれるようになった所以は、提督が流れ着いた艦娘を埋葬し、墓標代わりに艤装を並べたことから。
 最近では、問題を起こした艦娘を送り込む墓場、という意味に勘違いした海軍から、艦娘を送り付けられている。



艦娘以外の主要な登場人物

・提督
 階級は准尉。一般人には見ることすら出来ない妖精と話が出来たせいで
 親からも変人扱いされたため、人間嫌いをこじらせる。結構な不幸体質持ち。
 中佐の補佐官として海軍に入ったが、無人島の鎮守府に幽閉同然の扱いで着任した。

・中佐(前スレ初登場時は少佐)
 戦争は金儲けの道具と考え、中将の威光を傘に暗躍。後に大佐にまで昇進する。
 妖精と会話できる提督の存在に危機感を覚え、離島の鎮守府に封じ込めた。

・中将
 中佐の父親。有能だったらしいが息子が絡むと駄目になるらしい。
 足を悪くしており、本営の自室でデスクワークが日常。

・そのほか、たくさんの『提督』
3 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 00:56:06.77 ID:Wdzf2wR1o

登場艦娘一覧

如月:試作の新兵器の実験台にされていたところを脱走し大破、島に漂着
不知火:もと少佐の部下。解体前提で如月捜索に駆り出されるが、提督の計らいで中将麾下に
朧、吹雪:捨て艦で轟沈後、島に流れ着く(二人とも別の鎮守府出身)
由良、電:大破進軍で轟沈し、島に流れ着く(同じ鎮守府出身)
神通:慕っていた司令官を謀殺され、その復讐の途中で左遷させられる
大淀:日々の解体任務に疑問を覚えて仕事が手につかなくなり異動してきた
敷波:由良と電の捜索を命じられそのままMIA
明石:提督に帳簿の不正を強いられ、そのまま首犯扱いで雷撃処分
朝潮、霞:提督の不正の内部告発を計画するも逆に犯人扱いされ雷撃処分
暁:信頼していた提督の変貌に錯乱して敵陣特攻し記憶喪失に
初春:捨て艦で轟沈後、暁に助けられ島に漂着
潮、長門:変態の上官に迫られ耐え切れなくなり家出、長門はその護衛
比叡:料理上手なのに認めてもらえずご飯を投げ捨てられて鬱に
古鷹:お人よし過ぎて自分の練度が上がらず観艦式において行かれる
朝雲:観艦式に向かう途中で艦隊を離脱して古鷹を追いかけてきた
利根:司令官の猟奇趣味に巻き込まれ死にかける
ル級:オリョールで毎日毎日潜水艦に小突かれる日々に嫌気がさし脱走
伊8:オリョールに行ったら逃げたル級の代わりの軽巡に轟沈させられる
大和:妖精が提督に内緒で大張り切りで大型建造したら作られた
初雪:艦娘管理ツール使いの提督に昼夜問わずこき使われ失神後漂着
金剛:愛情から目を背ける提督を説得し続け、煙たがられて左遷
五月雨:玉砕覚悟の敵討ちを望むも、仲間を沈めた濡れ衣を着せられて追い出される
榛名、那珂:養成所の訓練と称して轟沈するまで戦わされ島に流れ着く
扶桑、山城:理由もなく疫病神扱いされ、戦況不利な海域に誘導され轟沈する
龍驤:暴食を強要され体形を馬鹿にされ、ブチ切れて鎮守府を火の海に
陸奥:龍驤と同じく暴食を強要され、かつ度重なるセクハラで男性不信に
雲龍:特別海域で艦隊に邂逅できず、餓死寸前だったところを龍驤に保護される
島風:スピードを追い求める姿勢を疎まれて、訓練中に除名される
白露:島風と一緒に特訓するため艤装を改造、同じく訓練中に除名される
黒潮:姉妹艦を人身御供にした司令官にぶち切れて、犯人もろとも海に投げ捨て離反
山雲:ドロップ直後に、黒潮を探す雪風が起こした深海勢に激突される
最上、三隈:最上にベタベタし続けたことに三隈が切れて提督の股間を破壊
摩耶、霧島:理不尽な防戦指示を無視して戦況を好転させたため、提督に激怒される
川内、若葉:夜戦禁止の腰抜け提督の下で輸送部隊の撃破のため夜戦したら馘になった

注:ル級は島の北の離れ小島近辺に住んでいます。この鎮守府所属ではありません。
4 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 00:56:51.53 ID:Wdzf2wR1o

以上テンプレ。

では本編の続きです。
5 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 00:57:36.88 ID:Wdzf2wR1o

 * その日の夜 *

川内「夜戦だああああああああああ!!」


 * 提督の部屋 *

提督「……うるせえ……」ムクッ

提督「ありゃあ川内か? くっそうるせえな……」

提督「……あーくそ、起きて説教しなきゃなんねーか……面倒臭え」

 コンコン

提督「!」

 チャッ

如月「司令官……?」コソッ

提督「なんだ、お前も川内のアレで目を覚ましたのか?」

如月「え、ええ……司令官も?」

提督「ああ。寝付く前にあんだけ大声上げられちゃあな」ノビーッ

如月(……せっかく私が司令官のベッドに入る日だったのに)ムー

6 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 00:58:25.57 ID:Wdzf2wR1o

 * *

川内「夜だよ、夜! みんな起きてーーー!!」

 *

山城「……なんなのよ……」ムクリ

扶桑「うう……ん」フトンカブリ

山城「あの夜戦馬鹿……」ブツクサ

 *

長門「なんだ、敵襲か……?」

潮「ん、ふえぇ……?」

陸奥「もう……なんなの……」

 *

最上「……うう、なに? なに?」

三隈「もがみん……」ギュー

最上「三隈、寝惚けてないで……なんで抱き着いて離れないのさ」

 *
7 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 00:59:21.88 ID:Wdzf2wR1o

川内「みんなああ! 夜戦の時間だよーーー!!」

 *

初雪「すぴー……」

吹雪「初雪ちゃん、よく寝てるなあ……あ、耳栓してる」

 *

古鷹「むにゃ……?」

電「……な、なんなのですか?」

暁「うにゅぅ……まだ夜じゃない……」

 *

敷波「もー……なんでこーなるかなー」フトンカブリ

朧「ほんとに……」ネガエリ

 *

龍驤「ほんっまやかましいやっちゃなあ……!」

雲龍「……」スヤスヤ

龍驤「雲龍はこんなんでも寝てられるんか……」

龍驤「ま、ええわ……二度寝しよ」ポユン

 *
8 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:00:06.36 ID:Wdzf2wR1o

川内「夜戦! 夜戦! 待ちに待った夜戦の時間だよーー!!」

 *

金剛「Wooo... いい夢を見ていたのに、邪魔されたデース」

榛名「……」スヤァ

霧島「榛名お姉様は意外と眠りが深いんですね……」

比叡「明日の朝ごはんの仕込みがあるんだけどなあ……」ウーン

 *

大和「……精神集中、精神集中……心頭滅却すれば……」ブツブツ

 *

由良「……ああ、もう……」ゴロゴロ

大淀「……眠れないですね……」ウーン

 *
9 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:02:06.48 ID:Wdzf2wR1o

川内「や・せ・ん! 夜戦夜戦! 夜戦だよーーー!!」

 *

霞「……予想はできてたけど、予想以上だわ」

朝雲「う〜、うるさいよぉ……」

山雲「ん〜……」ゴロン

朝潮「……」ウツラウツラ ヌギヌギ

霞「朝潮姉!?」

山雲「寝ながら着替えてるわ〜……」

朝雲「だ、大丈夫なの……?」

 *

明石「も〜、なんなんですかいったい……」

伊8「……」ムクリ

明石(……目が据わってる……!)ビクッ
10 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:02:51.62 ID:Wdzf2wR1o

 * 通用口 *

神通「案の定ですね……」ハァ

初春「まあ、こんなことじゃろうと思っておったがのう……」

若葉「無理もないな」

那珂「夜更かしはお肌に良くないんだけどなあ……」メヲコスリ

利根「なんじゃ、おぬしら起きてきおったか」

神通「利根さんは見回りでしたか」

利根「うむ。摩耶も一緒じゃ」

摩耶「まあ、あたしは来たばっかりだし。こうやって少しでも慣れていかねーとな」

若葉「その手の仕事なら、若葉に任せてくれればいいんだが」

神通「若葉さんには明日から遠征のお仕事がありますよ」

若葉「そうか!」キュピーン

初春「おぬしはわーかーほりっくか……」
11 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:03:36.35 ID:Wdzf2wR1o

提督「……」スタスタスタ

利根「む?」

神通「提督……?」

那珂「えっ、提督さん来てるの!? 那珂ちゃんすっぴんなんだけど!?」ワタワタ

初春「あの男はそんなことをまったく気に留めないだろうがのう……」ポツリ

若葉「それよりもだ、あの男、明らかに怒っているよな?」

摩耶「あん? いっつもあんな顔してなかったか?」

初春「普段からあの仏頂面じゃ、いまいちわかりにくかろうが、安眠妨害されれば当然じゃろうな」

摩耶「止めないのか?」

神通「一度痛い目を見てもいいと思います」

若葉「サラッと言うところが容赦ないな」

提督「……おい、神通、那珂」

神通「はい」

那珂「!? は、はいっ!」
12 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:04:37.22 ID:Wdzf2wR1o

提督「ちょっと川内を黙らせてくる。いいな?」

神通「はい。不肖の姉が申し訳ありません」ペコリ

提督「神通が謝るは必要ねえよ。ちょっと行ってくる」スッ

神通「はい」コク

那珂「あ、あんまりひどいことしないでね?」アセアセ

提督「……川内次第だな」

那珂「だ、大丈夫かなあ……」ハラハラ

 ゾロゾロ

霞「なに? あいつ、川内さんのところに行ったの?」

如月「司令官、大丈夫かしら」

由良「素直に静かになってくれるといいんだけど……」

伊8「……」ムスー

利根「なんじゃ、おぬしたちも起きてきたのか」

由良「さすがにあれだけ騒がれれば、みんな目を覚ましちゃいますよ」
13 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:05:47.03 ID:Wdzf2wR1o

霞「朝潮姉なんか、半分寝たまま着替えちゃってるんだもの。ただの夜戦演習だからって眠らせてきたわ」

若葉「それより、異常に殺気立ってる潜水艦がいるんだが」

伊8「……はっちゃん、ちょっとあの軽巡、沈めてきますね?」

初春「ま、待たんか! 夜の潜水艦が本気を出したら、水上艦はひとたまりもないぞ!?」

伊8「はっちゃんの健やかな睡眠のためです」ドロリ

初春(うっ……なんと濁った眼をしておるんじゃ)

明石「まあ、三大欲求の一つですし? 安眠妨害されたら恨みを買うのも仕方ないでしょ〜……ふわあ」

初春「明石……こうなる前になんとかならんかったのか?」

明石「それができたらここには来てないってば。でもまあ、提督が来てるんだし、なんとかなるでしょー」

摩耶「なんだ、随分信頼されてやがんな」

由良「……信頼、って言うのかな?」クビカシゲ

摩耶「なんだそりゃ」

霞「とりあえずなんとかしてくれそう、ってのはあるわね……」

初春「有無を言わさず、という感じも多分にあるがの」

明石「っていうか、いつも力押しって感じもするけど?」
14 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:06:36.94 ID:Wdzf2wR1o

由良「いつも思うけど、もう少し手段を選んで欲しいわ。ハチちゃんなんか殺されかけたんだし」

利根「う、うむ……そうじゃったな」

摩耶「何やってんだよ……」

伊8「あのときは、はっちゃん、おかしくなってましたから。自分で死にたがってたんです」

明石「私はあのときのこと、未だに納得してないけど。艦娘を深海棲艦に撃たせる人間なんて……」

霞「……北上さん、今頃なにをしてるのかしら」

明石「……そう、よね。元気……だと、いいんだけど」ウツムキ

摩耶「この鎮守府に北上がいたのか?」

霞「そうじゃないわ。私と朝潮姉、明石さんは、以前A提督鎮守府に所属していたの」

霞「明石さんは、そこでA提督の横領を手伝わされていたのよ。手伝わなければ、みんなの艤装に細工をして怪我をさせるぞ、って脅されて」

霞「私と朝潮姉は、そのA提督の不正の証拠を掴んだところを捕まえられて……3人揃って雷撃処分されたのよ」

若葉「口封じか……」
15 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:07:36.47 ID:Wdzf2wR1o

明石「そのとき、私たちを雷撃したのが北上さんです。北上さんは、私と一緒に開発した新型魚雷の失敗作を使ってくれました」

明石「だから私たちは、致命的な損傷を受けずに、生き延びられたんです。でも……北上さんとはそれっきりで」

利根「北上に、明石たちが生きていることを伝えられていないわけじゃな」

如月「……黒潮ちゃんも、同じよね。ずっと雪風ちゃんのことを心配してるし」

那珂「そっか……そうだよね。心配、だよね……」

 < ヤセンダアアアアア!!

神通「……」

那珂「……」

初春「神妙な雰囲気が台無しじゃな……」

若葉「その……すまない」

那珂「わ、若葉ちゃんが謝ることじゃないよー」

伊8「やっぱり、一発ぶちかましてきますね」

霞「お、落ち着きなさいよ!」

如月「し、司令官に任せましょ?」

伊8「……任せるのはいいけど、提督に危険が及んだりしない?」

如月「……私も行くわ」

霞「ちょっ!?」
16 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:08:23.65 ID:Wdzf2wR1o

 * 丘の上 *

川内「夜戦だ夜戦だああ!」ピョンピョン

川内「やっぱり夜はいいよねーー!!」

川内「夜は……」ピク

川内「……」

 キョロキョロ

川内「……ここは……」

川内「……」ミミヲスマシ

川内「あまり、騒ぐな、ってこと?」

川内「ふぅん……そっか」

川内「……」

川内「なるほどね」

川内「……」

提督「何を独りでぶつぶつ言ってやがる」

川内「あ、提督! ごめんね、夜戦できるのが嬉しくてうるさくしちゃったよ」ニカッ

提督「……ああ?」
17 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:09:22.67 ID:Wdzf2wR1o

川内「静かにするからさ。夜戦、させてくれるでしょ?」

提督「そりゃあそうだが……うるさくしなきゃ文句はねえよ」

川内「ほんと!? ふふっ、ありがと!」ニコ

提督「……どういうこった。お前、俺の頭の中でも見えたのか」クビカシゲ

川内「ん? 何が?」

提督「俺は、お前が夜中にやかましいから文句を言いに来たんだがな」

川内「ああ、やっぱり?」

提督「自覚あったのかよ」

川内「ううん? そういうの、全然気にしてなかったんだけど」

川内「でも、ついさっきね、うるさくしないほうがいいよ、って声が聞こえてきてさ」

提督「声?」

川内「まあ、考えてみればそうだよね。うるさくしてたら音で探られて狙われちゃうし!」
18 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:10:07.54 ID:Wdzf2wR1o

提督「いや、普通に夜は静かにしろよ。鎮守府を深海の連中に攻め込まれたらどうすんだ」

川内「ああ……そうだね。そんなのは二度と御免だね」

提督「……二度と?」

川内「あたしさ。以前、鎮守府を深海棲艦に襲撃されたんだ」

提督「!」

川内「長期戦に持ち込まれて、あたしたちの提督もおかしくなっちゃって。最後は見捨てるしかなかったし……仲間も、守れなかった」ウツムキ

川内「しかも、そのときは夜戦だったんだよ。あたしの大好きな、夜の戦い! なのに、あたしは全然……戦闘の途中で大破して、気を失って」

提督「……」

川内「若葉もそうだけど、あたしも強くなりたかったんだ。もう二度と、夜で……夜戦で負けない、って。もう、あんなみじめな思いをするのは嫌!」

川内「……でも、止提督のところじゃあ、夜戦させてもらえなくってさ」

川内「勿論、昼は昼で強くなったよ! っていうか、昼間しか戦わせてもらえなかったんだけどね」

川内「夜戦に持ち込むな、昼間の間に全滅させろ。夜は嫌だ、夜は嫌だ、って……止提督はそればっかり」

川内「あたしは、その嫌な夜を……あの夜を、克服したいんだって何度もお願いしてたのに……」
19 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:10:54.69 ID:Wdzf2wR1o

提督「……お前も若葉と同じで、復讐みたいなもんか」

川内「それに近いかもね。でも、あたしの場合は、特定の相手じゃなくて、夜戦。夜は、絶対に負けたくない。夜に、打ち克ちたいんだ」

提督「……夜戦がしたいなら好きにしな。うるさくしなきゃ、文句はねえ」

川内「ふふっ、それ、さっきも聞いたよ? でも、ありがと! あたしの話を聞いてくれて!」

提督「……ああ」

川内「それじゃ、さっそくだけど今夜はずっと個人演習させてね! 夜明けには戻るから!」

提督「わかったわかった。無理すんなよ」

川内「うん!」ニコッ


(歩き去る提督を見送った川内が空を見上げる)


川内「……もう、あたしは負けないよ」

川内「I提督……響……暁……!!」キッ

20 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:11:51.07 ID:Wdzf2wR1o

 * X提督鎮守府 埠頭 *

(夜空を見上げているヴェールヌイ)

ビスマルク「こんなところにいたのね」

ヴェールヌイ「……ちょっと、昔のことを考えていてね」

ビスマルク「……」

ヴェールヌイ「改装を受けて暫く経つけど……かつての仲間が私に気付いてくれるか、やっぱり不安なんだ」

ビスマルク「行方不明になった、姉妹艦のこと?」

ヴェールヌイ「それもあるけど……川内さんも、かな」

ビスマルク「センダイ?」

ヴェールヌイ「うん。あの夜、暁が敵陣に突っ込んだって聞いて、私も暁を追いかけたんだ」

ヴェールヌイ「けど、前後不覚になっていた私を庇って、川内さんが大破して。私も被弾して、結局、暁は探せず仕舞い……」

ヴェールヌイ「入渠した川内さんが目を覚ます前に異動が決まって……お礼を言うこともできずに、私はこの鎮守府に来てしまったんだ」
21 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:12:38.40 ID:Wdzf2wR1o

ビスマルク「今、川内がどこにいるかはわからないの?」

ヴェールヌイ「止提督鎮守府にいたらしいんだ。でも、命令違反で飛ばされたって。異動先は、記されてなかった」

ヴェールヌイ「いくら強くなっても、改装を受けても、お世話になった人たちに報いることができないんじゃあね……」ウツムキ

ビスマルク「……響、大丈夫よ。そういう話、大将に訊けばあっと言う間じゃない!」

ヴェールヌイ「……」

ビスマルク「私的な詮索は咎められるかもしれないけれど、私たちのアドミラルの叔父さんなんでしょう? 難しい話じゃないわ!」

ビスマルク「不安げな顔をしないで。このビスマルクに任せておきなさい!」

ヴェールヌイ「……スパスィーバ」

ビスマルク「そうね……あなた、以前言ってたわよね、私があなたのお姉さんに似てるって。お姉さんだと思って頼っていいのよ?」

ヴェールヌイ「スパスィーバ……本当に嬉しいよ」ニコ

ヴェールヌイ「でも……『頼っていいのよ』って台詞をよく言うのは、姉ではなくて妹のほう、かな」クスッ

ビスマルク「そ、そうなの!?」
22 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:13:47.03 ID:Wdzf2wR1o

 * 提督の寝室 *

提督「……」

如月「ねえ、なんでみんないるわけ?」ムスー

伊8「川内さんのせいで寝付けないから、今夜のはっちゃんは予定を変更して提督と寝ます」ギュウ

霞「わ、私はいかがわしいことをしないか見張りに来たのよ!」

如月「一緒のベッドに入って見張るの?」

霞「そ、そうよ!」カオマッカ

伊8「なんでもいいから静かにして」

提督「……いやまあいいけどよ」ハァ…

提督(……それにしても。川内が言う、声が聞こえた、ってどういうことだ……?)


由良(……なんで由良も一緒に寝てるのかな……)カオマッカ
23 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/03/12(木) 01:15:07.16 ID:Wdzf2wR1o

というわけで今回はここまで。

このスレも、よろしくお願い致します。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/12(木) 12:52:28.97 ID:cN2mMjBWo
おつおつ。新スレだあああああああ!!!やったあああああああああ!!!!!
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/12(木) 18:20:08.30 ID:4jTLGWs5O
よろしく乙

>>24
姉さん新スレでは静かにしましょう
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/13(金) 02:09:11.19 ID:rzzCKG520
楽しみにしてますね
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/03/14(土) 13:26:48.74 ID:ZTMvM0mF0
新スレ乙です
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/17(火) 00:02:00.77 ID:w80ribEb0
新スレ乙です!
29 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:35:18.74 ID:Nt9MjZvIo
久々の日常編。続きです。
30 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:36:01.10 ID:Nt9MjZvIo

 * 執務室 *

(初雪を膝枕して耳かきしている提督)

提督「……」クリクリ

初雪「……はふぅ」ウットリ

提督「なあ初雪?」

初雪「……はい」

提督「さすがに2週間おきに耳かきしてると、全然たまってなくて綺麗なまんまなんだが」

初雪「……」

提督「……んな顔されても困る。綺麗ならそれでいいじゃねーか」

提督「短くても月一くらいにしとけ。あんまり耳かきしまくっても耳に良くないってはっちゃんも言ってたからな」

初雪(……余計なこと言わなくていいのに)ザワッ

提督「つうか、俺じゃなくて古鷹に頼んでも……」

初雪「提督がいいんです」ボソ

提督「……」
31 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:36:46.62 ID:Nt9MjZvIo

初雪「楽しみにしてたのに……」ドヨーン

提督「……んじゃあどうすりゃいいんだよ」

初雪「……」

提督「……」

初雪「気分だけでも」

提督「ん?」

初雪「膝枕して、お昼寝。週一回、10分間」

提督「……」

初雪「……駄目?」チラッ

提督「……まあ、いいか」

初雪「!」グッ!

初雪「そうと決まれば」モゾモゾ(←位置調整)

初雪「それと、手はここ」ソッ(←提督の手を初雪の頭の上に)

提督「……」

初雪「完璧……!」ムフー

提督「……」

初雪「おやすみなさい……」スヤァ…

提督(……猫かこいつは)
32 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:37:31.37 ID:Nt9MjZvIo

 * 翌日 *

伊8「ってことを聞いたんですけど」

提督「まー、そうなったな」

伊8「はっちゃんも提督と一緒にお昼寝を要求します」キョシュ

提督「……お前はしょっちゅう俺のベッドにもぐりこんできてるよな?」

伊8「それとこれとは話が別です」

伊8「せっかく作ったお風呂も入りに来てくれないし」ムスー

提督「……入るなら一人でゆっくり入りたいんだよ」

伊8「はっちゃん、お風呂の管理者です」

提督「だからってなんでお前も一緒に入りたがるんだよ」

伊8「人肌が恋しいんだから、いいじゃないですか」プク

提督「だから膝枕しろってか」ハァ

伊8「膝枕じゃなくてもいいですよ?」ズイ

伊8「とにかくソファに座ってください」グイ

提督「……」ボス
33 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:38:16.25 ID:Nt9MjZvIo

伊8「10分間でしたよね?」

提督「……ああ」

伊8「それじゃ、失礼して」ノソッ

 (座った提督の正面から抱き着く伊8)

提督「!?」

伊8「それじゃ、おやすみなさ」

提督「ちょっと待て。これは膝枕って言わねえぞ、抱き枕だ」

伊8「そうですけど?」

提督「……」アタマカカエ

伊8「反論もないようですので、おやすみなさ」

 扉<ガチャ

三隈「提督! 三隈、新型にな……」

伊8「あ」ダキツキ

提督「……」ダキツカレ

三隈「」
34 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:39:01.20 ID:Nt9MjZvIo

最上「三隈、どうしたの?」ヒョコ

三隈「くまりんこーーーーーーーー!」イヤーーーー!

伊8「!?」

提督「!?」

最上「み、三隈!? お、落ち着いて!」

三隈「くまっ、くまあああ!」

伊8「うるさくてお昼寝できないんですけど」ギロリ

提督「そうじゃねえだろ」

 *

三隈「お見苦しいところをお見せしてしまいましたわ……申し訳ありません」

提督「いや、いいけどよ。見苦しいのは俺も似たようなもんだしな」

三隈「え、ええ……その、提督はどうして伊8さんと抱き合ってらしたんですか?」

提督「はっちゃんが俺に抱き枕になれとよ」

三隈「あんな対面座位みたいな恰好……知らない人が見たら悲鳴を上げてしまいますわ」ポ

提督(悲鳴で済めばいいがな……)
35 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:39:46.12 ID:Nt9MjZvIo

最上「はっちゃんは抱っこしてもらうのが好きなの?」

伊8「はい」

最上「それじゃあ、僕が代わりに抱っ」

三隈「くまりんこーーーーーー!!!」

最上「……」ビックリ

伊8「……」ドンビキ

三隈「最上さんは! どうして! そんなに無防備なんですか!!」

最上「み、三隈こそ神経質になりすぎだよ。抱っこって言っても、同じ艦娘だよ?」

三隈「で、でも……」

提督「……ここまで言い淀んでる、ってことは、三隈が神経質にならざるを得なかったんだな? お前らのいた部提督の鎮守府ってのは」

三隈「え、ええ……私がみんなを見張ってないと気軽にぺたぺた触ってしまう、しょうがない人たちだったんです」

三隈「あまりに風紀が乱れていましたので、私が口うるさく注意していましたから、私の前では皆さん大人しくなったんです」

三隈「でも、私のいないところでは相変わらずで……」

最上「それで、三隈が普段からくまりんこーって言うのが日常になっちゃったんだよね」

伊8「? どうしてそうなるの?」
36 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:40:31.82 ID:Nt9MjZvIo

最上「三隈の声が聞こえるとみんな警戒するんだ。部提督も三隈の声が聞こえたら、僕から離れるようになったし」

提督「サイレンみたいなもんか」

三隈「ええ、効果はあったんです。でも、そのせいで、いかがわしい場面に遭遇した時もその口癖が出てしまうようになりまして……」

最上「それだけじゃないよ。出撃中に被弾したときも言うようになっちゃったんだ」

伊8「意識しなくても言っちゃうようになったんですね」

提督「ところで、そのくまりんこ、ってなんだ?」

三隈「そ、それは……」カァ

最上「うーん、決め台詞みたいなものかな?」

提督「……?」クビカシゲ

伊8「女の子にはいろいろ秘密があるんですから、言及しちゃだめですよ」

提督「まあいいけどよ。三隈が言いたくねえならそれでいい」

三隈「お、お気遣い感謝します」モジモジ

伊8「ところで……」

 バタバタバタ

提督「!」
37 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:41:17.82 ID:Nt9MjZvIo

 扉<ガチャバーン!

金剛「Heeey, テイトクゥーーー!!」

三隈「!?」

最上「!」

伊8「……」

提督「ん、金剛か」

金剛「Yes ! 今回の海域、私が活躍しまシタ! MVPデース!!」

金剛「なので、ご褒美を貰いに来まシターー!」ダキツキー!

提督「ぬお!?」ダキツカレー

三隈「くまりんこーーーー!」キャーーー!

大和「金剛さん、何を抜け駆けしてるんですか!」バッ

比叡「司令ってばずるい!!」バッ

榛名「榛名もMVPを取ったら抱き着かせていただきたいです!」ポッ

摩耶「おい待てよ! 霧島さんの指揮があったからあんなにすんなり海域抜けられたんだぞ!?」

霧島(戦艦5重巡1なら、すんなり抜けられて当然の海域だったんだけど……)タラリ
38 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:42:06.43 ID:Nt9MjZvIo

三隈「は、破廉恥ですわ!?」

金剛「No ! 私とテートクは、ハレンチな関係じゃありまセーン!」

大和「その通りです! 提督はそのようなお方ではありません!」

金剛「Heeey, 大和ォ? その言い方はまるで私がハレンチな艦娘であるように聞こえマスヨー?」

大和「すぐに提督に抱き着いて離れないあなたが仰っても、説得力がありませんよ?」

比叡「金剛お姉様! 司令に抱き着くのなんて、慌てなくったって、いつだってできるじゃないですか!」

金剛「えっ」

大和「えっ」

榛名「えっ」

比叡「えっ」

伊8「……」

金剛「比叡? 何を言ってるデース?」プルプル

比叡「だって司令、好きにしろって仰ってましたよ?」

金剛「!?」グリッ

大和「!?」グリッ

榛名「!?」パァッ
39 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:42:46.45 ID:Nt9MjZvIo

伊8「それ、本当ですか?」

提督「どうせ大和たちには言っても聞かねーだろうしな。逆に比叡だけ駄目だって言う理由もねえ」

伊8「比叡さんはどうして提督に抱き着こうと思ったの?」

比叡「え? 金剛お姉様が頻りに司令に抱き着きたがるから、どういう感じなのかな? と思って……」

最上「ふーん。どんな感じだったの?」

比叡「ええっとねー、金剛お姉様はこう、ふわーっと包み込んでくれる感じなんだけど」

比叡「司令はがっちりしてて! そんなに筋肉質ってわけでもないのに、安心して寄りかかっていられる感がすごかったって言うか!」パァッ

大和(わかります……)

榛名(とってもよくわかります……!)

金剛(比叡……Tension が上がってマスヨー……)

最上「こっちのみんなは、どうして固まってるんだい?」

摩耶「い、いや、あたしに言われてもなあ……」チラッ

霧島「え、ええ……私たちも新参者ですし、困りますね」

三隈「最上さんもそうですけど、比叡さんも相当鈍感というか……」

伊8「全然邪念がないみたいですね」
40 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:43:31.57 ID:Nt9MjZvIo

比叡「それで、また抱き着いてもいいですか、って聞いたら、好きにしろ、って流れに」

金剛「テートクゥゥ!?」グリッ!

大和「どういうことですか!?」グリッ!

提督「いや、お前らが言うなよ」

伊8「ですよね」

三隈「どういうことですの?」

伊8「金剛さんも大和さんも、週一でハグタイム設けてもらってるんだって」

三隈「……くまりんこ……」ガックリ

榛名「つまりそういうことですね! 榛名も大丈夫なんですね!」キラキラッ!

摩耶「ハグタイムって、何かのテーマパークじゃねえんだぞ……」

霧島「ね、ねえ、摩耶……はぐたいむ、って何なの……?」

摩耶「え? あー、なんつうか、人形に抱き着ける時間っつうか……」

伊8「遊園地とかのイベントで、マスコットの着ぐるみとかにハグしてもらえる時間、と言うとわかります?」

摩耶「そ、そうそう! そういうイベント時間!」
41 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:44:18.32 ID:Nt9MjZvIo

伊8「Hug time 、和製英語ですね」

最上「へー、そういうのがあるんだ」

霧島「ふぅん……?」

三隈「霧島さん、いまひとつ理解できていませんわね」

霧島「え、ええ。ちょっと想像できなくて」

提督「……俺はマスコットか」

比叡「マスコット……ではないですよね。司令は成人男性ですし……」

三隈「男性でも、アイドルなら……それでも握手するくらいで、抱き着いたら一大事ですわね」

 扉<ガチャバーン!

那珂「那珂ちゃんのこと、呼んでくれた!?」シャラーン!

提督「呼んでねえし話がややこしくなるから出てくんな」

那珂「ちょっ!? それ、ひどくないですか!? 折角図面を持ってきたのに!」ガーン!

提督「図面? できたのか?」

那珂「はいっ! 明石ちゃんと妖精さんたちが、こんな感じでどうかって!」

提督「そういうことなら、とっとと現場に行くか。おい、お前らちょっと顔貸せ」

全員「「??」」
42 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:45:01.70 ID:Nt9MjZvIo

 * 食堂 *

提督「食堂に入ってこっちが厨房、反対側がただの壁だ」

提督「で、その壁の向こう側は使っていない会議室。つうか、半端にでかいせいで物置になってたわけだが」

提督「この壁をぶち抜いて、ぶち抜いた先のスペースにステージを作ろうって考えたんだ」

大和「なるほど、それで戦艦の力が必要と言うわけですね」

提督「ちょっと段差付けて、舞台の裾に更衣室と音響や照明の設備も置けば、まあそれっぽくはなるだろ」

提督「あまりでかいスペースはとれねえが、今の建物で一番でかい部屋はここしかねえからな」

那珂「でもでも、まさか屋内にステージを作ってもらえるなんて思わなかったなあ……ありがとう、提督さん!!」ナゲキッス

霧島「あ、あの、いいんですか? 勝手に設備を作り変えて……」

提督「俺の鎮守府だからな。いいんだよ」ニタリ

霧島「……」

島妖精E「どうせ本営の人たちは、この島の鎮守府の内装なんか興味ないよ」

島妖精F「安心していいからね!」

摩耶「……そ、そういうもんか?」
43 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:46:00.21 ID:Nt9MjZvIo

提督「ところで妖精、明石はどこ行った?」

島妖精F「工廠に工具を取りに行ったよー」

提督「ああ……もしかして、アレ取りに行ったのか」

島妖精E「うん、明石の出番ですね! って言ってスキップしてたよ」

提督「今回はちょっとしたDIYどころじゃねーんだがな……うん? 工具取りに行ったってことは、すぐにおっ始める気か?」

島妖精F「……かもしれない」

提督「壁ぶち抜くにしても、その前に埃が厨房に行かねえようにシートで覆ったりしねえとまずいだろ」

島妖精E「そうだね、その話は明石とはしてないや」

提督「建物自体ぶっ壊れねえかも心配だ、柱の補強とかも大丈夫なんだろうな?」

島妖精E「そっちは大丈夫。それより、いつやるかちゃんと決めないと駄目だね」

提督「力仕事だからな。戦艦が工事の手伝いできるよう手配しとくから、日程は教えてくれ」

島妖精E「あ、それからこの辺の電飾用のライトとかも準備したいな」

提督「なら、あのカタログ持ってきて、適当なやつ買うか?」

島妖精F「それじゃあ、通販の設備が届く日程も考慮しないといけないね」

最上「……あれ?」

三隈「……」

摩耶「……」

霧島「司令、もしかして……妖精さんと話ができるんですか?」

提督「……今頃かよ」
44 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:46:47.16 ID:Nt9MjZvIo

 * 休憩室 *

龍驤「ほーん。こんなんもあるんやな……」ペラリ

雲龍「……これが、テレビ?」

龍驤「これはDVDプレーヤーやね。こういう円盤の中にデータが入ってるんよ」

雲龍「データ……」

龍驤「あー、テープ言うたらわかる?」

雲龍「……穿孔テープのこと?」

龍驤「えらい前時代的なもんが出てきたったなあ……せめてカセットテープくらい出てこん?」

雲龍「! ……龍驤」ユビサシ

龍驤「うん?」チラッ

島妖精D「通販のカタログは龍驤が持ってたのか」

島妖精C「私たちも見せてもらっていいかな?」

龍驤「おお、ええよ? 何のページを見るん?」

島妖精C「隣の部屋を改造して、那珂ちゃんのステージを作るんだ」

島妖精D「電飾や音響設備のページを見たいんだけど」
45 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/04/02(木) 23:47:31.17 ID:Nt9MjZvIo

龍驤「あ、丁度このページや。ほら、カラオケの設備とかあるで!」

島妖精C「んー……あ、この辺がちょうどいいかも」

島妖精D「うん。これなら機能も十分ぽいね」

龍驤「……これ? なあ、ちょっち高こないか?」

島妖精C「大丈夫だよ、多分」

龍驤「多分て……」

島妖精D「龍驤も、何か好きなの頼んでいいよ?」

龍驤「えっ、ほんま?」

島妖精C「うん、提督はその辺緩くしてるから。ポケットマネーで出してくれるって」

龍驤「……せやったら遠慮するわ。あの提督、お金持ってへんやろ」

龍驤「この音響設備もえらい値段やし、頼んでも無理なんちゃう?」

島妖精C「ううん、むしろ使えって言ってるみたいだよ?」

島妖精D「提督はこの島に着任してから全然帰国してなくてお金も使ってないし、離島勤務で特別手当も出てるらしいね」

龍驤「ちゅうことは、多少のおねだりはアリ、ちゅうことかな……?」

島妖精D「多分ね」

島妖精C「それより、この設備を買ってもらえないか、提督に相談しに行きたいんだけど。カタログ、借りてってもいい?」

雲龍「ねえ、カタログ、私たちが持っていきましょ」スクッ

龍驤「せやね。一緒にいこか」
46 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2020/04/02(木) 23:48:16.89 ID:Nt9MjZvIo
以上、今回はここまで。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/03(金) 00:54:41.48 ID:jC7aWbhb0
初見です。
とても面白いので最初から読まさしてもらいました。
これからも応援します。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/06(月) 00:50:34.80 ID:y+Q2rNGVO
(続きを)待ってました!
(続きを)待ってます!
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/05/05(火) 21:48:00.79 ID:e/wUUiNP0
そろそろかな?
楽しみに待ってます!無理をなさらずに。
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/17(日) 05:42:02.28 ID:S8UToAtp0
ほしゅ
51 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/05/17(日) 23:20:12.71 ID:RP3H2uY3o
少しだけ続きです。
52 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2020/05/17(日) 23:21:01.44 ID:RP3H2uY3o

 * 食堂 *

龍驤「提督! カタログ持ってきたで!」

提督「ん? 気が利くな、持って来てくれたのか」

島妖精C「丁度二人がカタログを見てたからね」

提督「なるほどな、お前らが声をかけたのか」

龍驤「音響設備が欲しいんやって?」

提督「ああ。ついでにライトや暗幕もねえとな、って話をしてたんだ」

龍驤「本格的やなあ。お金は大丈夫なん?」

提督「まあ、謙虚な奴が多くてな。お前も何か欲しいもんがあるなら、遠慮なく言えよ?」

龍驤「ほんま? せやったら……」

提督「口頭で言われても覚えてられねえからな。紙に書いて出してくれ、できる限り要望には応えるからよ」

龍驤「ほーん。じゃあ、あとでまたカタログ借りるで!」

提督「おう、悪いな。さて、手頃なのがありゃあいいんだが……」
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