飛鳥「ボクが私だった頃」

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5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/10(火) 01:55:11.84 ID:isiKC6fj0
「ここにいたのか」
 過去を懐かしんでいたら、君は屋上の扉を開けて来てくれた。その手に、梱包された何かを持って。

 それはなんだい? と聞けば、忘れたのかと肩をすかしていた。

「誕生日おめでとう、飛鳥」

 まったく、君というやつは……いつの間にか、ボクの人生の節目に立ち会うほどに、近くにいてくれる存在となっていた。
 渡された物は、誕生日プレゼントだろうか。開けていいのかと聞けば、きっと喜ぶと自信たっぷりに胸を張っている。

「これは……」
 コーヒーの豆が、小瓶に入れられていた。どうやらブルーマウンテンのようで、高かっただろうと、今度はこっちが呆れた。

「飛鳥が、初めて辞めないでいてくれたアイドルだからな。安いもんだよ」

 あのロッカーたちは、ボクが来る前に解散していた。ボク自身も、ずいぶんと燻っていたけれど、目の前のキミが導いてくれた。人気アイドル二宮飛鳥へと。

「早速頂こうか。もう、魔法瓶も空だからね」

 そうして、ボクとキミは屋上を後にする。階下には、これでもかと346プロダクションのアイドルがそろっていた。みんなが、誕生日おめでとうと言いながら。
 柄ではないが、少しばかり嬉しくて涙が出そうだった。だけど、ボクはひねくれものなんでね。すました顔で、礼を告げる。
 もちろん、キミにも。
「さぁ、十五歳のアイドル生活をはじめよう」
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