魔女「寂しい人ね。頭も心も」屍男「……余計なお世話だ」

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1 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:12:03.91 ID:8OoW/DPso
前スレ

吸血娘「死なないハゲってさ、不老不死ってより不毛不死だよね」屍男「…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1530550185/
屍男「おい、そこのロクでなし」吸血娘「なんだ髪なし」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1546657845/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1582981923
2 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:13:08.58 ID:8OoW/DPso
ピピッ……ピピッ……




吸血娘「Zzz……Zzz……」


吸血娘「……んっ」パチッ



吸血娘「ふわぁ……あぁ……」


吸血娘「あーもう10時か……久々にぐっすり寝たな。目覚ましの音に全然気づかなかった」

吸血娘「……腹減ったな。飯食うか」スクッ

吸血娘「おーい、ハゲ。晩飯兼朝飯はどこに……ってあれ?」




シーーーーン



3 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:14:21.16 ID:8OoW/DPso
吸血娘「……電気が付いてない。まだ帰ってきてないのかあいつ」パチッ

吸血娘「いつもならとっくに帰ってきてる時間のはずだ。残業でもしてんのか?バイトに残業なんてあるのか知らんけど」

吸血娘「しゃーない。適当に冷蔵庫でも漁るか、コンビニでも……ん?」ピクッ

吸血娘「なんだこれ?手紙?」ペラッ



『しばらく家を留守にする。飯は適当に自分で買え。出来るだけ早く戻る』



吸血娘「……は?」

吸血娘「なにこれ、家出?いやそんな歳でもないか。じゃあ……どこに行ったんだ?」


吸血娘「…………」
4 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:15:29.40 ID:8OoW/DPso
プルルルルル……プルルルル……



ガチャ



後輩女『もしもし?どうしたんですか?こんな時間に』


吸血娘『ハゲがどこにいるか知らない?家に帰ってないみたいなんだけど』


後輩女『え?センパイですか?もしかして、聞いてなかったんですか?』


吸血娘『聞いてない?何を?』


後輩女『一週間くらい旅行に行くって昨日言ってましたよ。あれ?もしかして姪さんも一緒じゃないんですか?私てっきり二人で行ってるのかと』
5 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:16:21.05 ID:8OoW/DPso
吸血娘『はああああああああああああああああ!?!!??!?』

吸血娘『りょ、旅行だと〜〜〜!?!?!!??!!?!?』

吸血娘『んな話聞いてねえぞ!!!!どこに行くって言ってたんだ!!!!』


後輩女『え、えぇと……そういえば……」

後輩女『た、確か……アメリカに行くとか言ってたような……」


吸血娘「はぁっ!?アメリカァ!?」
6 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:17:02.92 ID:8OoW/DPso





…………………………………………………
………………………………




7 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:18:02.28 ID:8OoW/DPso
スタスタ スタスタ


屍男「……」キョロキョロ





「ゾンビくーん!こっちこっち!」





屍男「……」クルッ


魔女「久しぶり、ゾンビくん。元気してた?」


屍男「……あぁ、まあな」

魔女「長旅お疲れ様。悪いわね、こっちまで来てもらっちゃって」

屍男「問題ない。それより、本題に入りたい」

屍男「何しろ、いきなりアメリカに来いとだけしか言われていないからな。何があったんだ」

魔女「えぇ、そうね。じゃあさっそく、その件について話しましょうか」

魔女「そこのカフェに入りましょ。ゾンビくんもお腹空いてるでしょ?」
8 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:19:04.00 ID:8OoW/DPso
カランカラン♪



魔女「私はコーヒーで、ゾンビくんは?」

屍男「……コーヒーと、このサンドイッチを三つ、ホットドックも三つくれ」

魔女「あ、相変わらず大食漢ね……機内食は出なかったの?」

屍男「……足りなかっただけだ」



モグモグ モグモグ



屍男「で、何の用件があって俺を呼び出した」

屍男「お前のことだ。どうせろくな話ではないのだろう。”仕事”の依頼か?」

魔女「話が早くて助かるわ。でも、今回はちょっとアナタが思ってる内容とは違うのよね」ペラッ


魔女「“フレア・ウィッチの森”って知ってる?」


屍男「…………」
9 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:20:45.92 ID:8OoW/DPso
屍男「……名前だけはな。確か、20年ほど前に4人の男女が行方不明になった森だろう」

屍男「警察が数百人態勢で捜査したが、何も見つからず、それどころか森の中にいたはずの痕跡すらもなかったと聞く。そして何も分からないまま捜索は打ち切られた」


魔女「さっすが、もしかして、“Shadow”の時にもちょっと調べてたりしてたのかしら」


屍男「……あぁ、あの事件は大々的に報道されていたからな。嫌でも目に付いた」

屍男「一応、関連記事を読み漁ってみた記憶があるが、大した情報は何もなかった。分かったのはその事件の前にも何人か行方不明になっていたのと、森に伝わるある伝承……」


魔女「“炎の魔女伝説”でしょ?」


屍男「……あぁ、それだ」
10 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:21:28.88 ID:8OoW/DPso
屍男「あの森には伝承が残されていた。かつて魔女狩りが流行っていた時代に、その処刑場所にあの森が使われていたと」

屍男「処刑方法は磔にして火あぶりにされたという、そこで何百人もの魔女疑惑があった女が被害に遭った」

屍男「……だが、その中には本物の魔女が紛れ込んでいた」


魔女「そう。で、その処刑された魔女がその森に呪いをかけたのよ」

魔女「この森に立ち入る者は一人たりとも我が力で呪い殺してやる……ってね。これがあの森に伝わる“炎の魔女伝説”」

魔女「さて、この事件を聞いて、ゾンビくんはどう推理したのかしら?」


屍男「……森の呪いが本物なのか、それとも、ただ遭難しただけなのか、確率的には半々と言ったところだろうな」
11 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:23:03.91 ID:8OoW/DPso
屍男「普通ならば山奥の樹海じゃあるまいし、道沿いを歩いていけば子供でも脱出可能だろうが、可能性は0ではない」

屍男「伝説は彼らも知っていたはずだ。道に迷い、集団パニックを起こし、川に流された……ということもあり得る。実際、遭難する前日には大雨が降っていた」

屍男「警察の見解もこれと似たような結論に至ったはずだ。次に、呪いの線だが……」

屍男「もし呪いがかけられていたと仮定すれば、森の主は恐らくその魔女の霊だろうな。数百年経っても力が残っているならば、最低でも足付き、最悪その森に“突然変異”したとまでは考えられる」

屍男「だが、森に立ち入った者を全て殺すほどの力ならば、捜索した警察も全員道ずれになっていないとおかしい」

屍男「つまり、一度に手にかけれる人数は精々一桁が限界、それ以上は精気を吸い過ぎて逆に消滅する可能性があるため手を出せなかった」

屍男「その程度の力ならば、俺がわざわざ出向かなくとも、現地の狩人で対処出来るはずだ……そう俺は判断した」


魔女「……ふーん」
12 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:23:57.21 ID:8OoW/DPso
屍男「……で、その森がどうしたんだ。察するに、お前はその森に用があるのか」


魔女「えぇ、そうよ。ゾンビくん、アナタには私と一緒にその森に行ってほしいの。本当に“炎の魔女”が実在するかどうか、確かめてみたいから」


屍男「……なぜだ?なぜ今更その森に用がある」


魔女「……そうね」

魔女「ビジネス半分、私情半分ってところかしら」
13 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:26:09.49 ID:8OoW/DPso
ブゥゥゥン


魔女「森がある町までは車で4時間もあれば着くわ。私が運転してあげるから、それまではゆっくり休んでて」

魔女「あ、そうだ。そこの後ろの席の下にあるバック、確認してみて」


屍男「……これか?」ガサッ


魔女「えぇ、もし森で戦闘になった際でも問題ないように、一通りの狩人の道具は用意したわ。足りないものがあるなら言って。途中で寄って調達するから」


屍男「……」ガサゴソ

屍男「……いや、問題ない。十分過ぎる装備だ。並みの幽霊や怪物相手なら、仕留められる」


魔女「そう、良かった。じゃあこのまま真っすぐ行くわね」


屍男「……」

屍男(備えとしては文句の付け所がない、完璧な装備だ。だが……少し用心過ぎるような気がする。存在するのかも疑わしい相手にここまでするか?)

屍男(……考え過ぎか。俺も人のことをあまり言えないしな)
14 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:27:07.74 ID:8OoW/DPso
魔女「到着、今晩はここのモーテルで休みましょ」

屍男「……まさか、お前と相部屋じゃあるまいな」

魔女「あら?今更そんなこと気にしてるの。半年間一緒の屋根の下で暮らした仲じゃない」クスッ

屍男「……はぁ」


ガチャ


魔女「値段の割にはいい部屋じゃない。さて、作戦会議の続きでもしましょうか」ストン

魔女「ゾンビくん、あの森で今まで何人の人間が消えたか知ってる?」


屍男「……先程の話に出てた4人と、その5年前に2人、7年前に3人、そして20年前に1人、それ以降の情報は俺も把握してないな」


魔女「そう、ゾンビくんの知ってるのはそこまでか。実はね、つい3年前にも行方不明者が出てるのよ。18歳の高校生の4人組があの森で消息を絶っているわ」

魔女「ただ、この情報は世間には公表されていない、裏の情報だけど」


屍男「なぜ公開されていないんだ?」


魔女「理由は簡単、本当にその森に入ったか分からないから」


屍男「……は?」
15 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:27:52.97 ID:8OoW/DPso
魔女「実際に目撃されたのはこの町なのは確かなのよ。監視カメラにもちゃんと映ってる」

魔女「でも、最後にどこにいたかが分からないのよね。大荷物を持って町を出たところまでは分かっているけど、それ以降の消息が掴めず行方不明」


屍男「……ではなぜ森に入ったことになっているんだ?」


魔女「目撃者がいたのよ。森の近くに住んでいる100歳近いおばあさんが四人組が確かに森に入るのを見たと言っているわ」

魔女「でも、ちょっとボケが入っちゃってるみたいなのよねぇ……言ってることが支離滅裂で、毎回証言が変わるもんだから、警察も信憑性がないと思ったみたい」

魔女「どうしても、20年前の事件と重なるから、迂闊に発表出来なかったんでしょうね。せっかく風化してきたのに、また蒸し返すようなことが起きれば穏やかな日常を送れなくなる」

魔女「そういう事情も……入ってたんじゃないかしら」


屍男「…………」
16 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:29:28.80 ID:8OoW/DPso
魔女「分かっているだけであの森で14人は行方不明になっているわ。これはもう……ただの遭難とは言えないんじゃないかしら」

屍男「……確かに、異常な事態だな。だが、気になる点が一つある」

屍男「初めて行方不明者が確認されたのは40年前だ。お前が調べた限りでも、それは確かだったんだろ?」

魔女「えぇ、そうよ。それ以前の記録は探してみたけど何も出なかったわ」

屍男「伝承が確かなら、数百年前から炎の魔女の呪いは実在するはずだ。だが、犠牲者が出始めたのは40年前……おかしいと思わないか」

魔女「……確かに、それもそうね。“炎の魔女伝説”が言い伝えられていて、普段から人が立ち入ってないとしても、数年に一度は誰か入っていてもおかしくない」

魔女「でも、実際に被害が出始めたのは40年前、つまり……」


屍男「あの森が異常性を発揮したのは40年前だ。その時、決定的な何かがあったと推測出来る」

屍男「もっとも、これは確定した情報でもない。いくつもの偶然が重なった結果かもしれないし、それこそ40年前に出た行方不明者はただの遭難で、怪異とは何も関係のない可能性もある」


魔女「……どうやら、森に行く前にその件についてもっと詳しく調べる必要がありそうね」
17 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/02/29(土) 22:33:16.32 ID:8OoW/DPso
今日はここまで
はいってことでようやく続きを書けるようになりました…色々遅れちゃってごめんなさい
一応前スレの方に今回の話と関係あるような感じの短編を書いたのでそっちも読んでもらえると嬉しいです
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/29(土) 22:38:49.39 ID:mPJVwSRyo
おつおつ
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/01(日) 00:13:58.72 ID:zk7qwPf3O
新作やん!乙
20 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:28:57.20 ID:s7W+/pzao
□□□□  翌日  □□□□



魔女「この先に図書館があるわ。そこなら当時の資料を探せるはずよ」


屍男「……ずいぶんこの町に詳しいんだな。初めて来たんじゃないのか?」


魔女「あら?言ってなかったかしら。ここは私の故郷よ。この町で生まれ育ったんだから、それなりには精通してるわよ」


屍男「……初耳だぞ」

魔女「と言っても、12歳までの話だけどね。そこからはもっと都会に移住したわ」

屍男「家族はいないのか?」

魔女「ええ、私、捨て子だったみたいだから。世話してもらった孤児院も10年前に潰れたわ」


屍男「……そうか」
21 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:30:45.90 ID:s7W+/pzao
…………………………………
……………………



ペラッペラッ



屍男「……あったぞ。これだ」


魔女「ほんと?どれどれ」


屍男「1979年に、森に入った夫婦のうち、その妻が失踪している。夫が目を離した一瞬のうちに消えていた……か」

屍男「警察は周辺を捜索したが、発見することが出来ず……唯一の証拠品として、現場に靴が残されているな。ここで初めて“炎の魔女伝説”の話が出ている。やはりこの事件が発端か」


屍男(……妻の方は身重の身で、妊娠六か月だった、か」


魔女「気になるのは……夫婦のうち、妻だけが失踪している点ね。夫は無事に生還しているみたいだし、ここだけは他の事件と明らかに違う点だわ」


屍男「いや、それにもう一つ相違点がある」
22 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:31:46.41 ID:s7W+/pzao
屍男「靴だ。他の事件では失踪者の遺留品は何も見つかってないが、これだけ妻の靴が一足確認されている」


魔女「あ、確かに」


屍男「だが、これだけでは判断条件としては足りないな。もっと情報がいる」


魔女「じゃあ、森について詳しく知ってそうな人に直接聞きに行く?」


屍男「……?誰だ?それは」


魔女「3年前に森で消えた若者たちを見た唯一の目撃者のおばあさんよ」
23 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:32:31.98 ID:s7W+/pzao
…………………………………
……………………


屍男「本当にその婆さんは話ができるのか?だいぶボケているようだが」

魔女「それは実際に話してみないと。でも実は私、そのおばあさんのことちょっとだけ知ってるのよね。私がまだこの町にいた時も……変わり者で有名だった人だから」

屍男「変わり者とは?」

魔女「あの人、森の目の前に住んでるのよ。地元の人間でも薄気味悪くて近付かないのに」

魔女「だから、“炎の魔女”はそのおばあさんだって噂もあったわ。まあ……それは絶対ないと思うけど。それにしてもまだ生きてるのはびっくりしたわ」

魔女「だって私が小さい頃にも歳をとったおばあさんだったのに、まだ生きているのよ?どんだけ長生きしてるのって話よ」


屍男「……」


魔女「あ、今、私の年齢を逆算しようとしたでしょ。ダメよ、レディの歳を探っちゃ」


屍男(……レディって歳か)
24 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:33:35.52 ID:s7W+/pzao
魔女「この家よ。そして、そこを真っすぐ行ったところが森の入り口よ、今は金網で封鎖されていて、一般人は入れないようになっているわ」


屍男「……あそこか」

屍男(何も感じない。一見、どこにでもあるような森だ。中に入ることがトリガーになるのか)

屍男(やはり“突然変異”によって森自体が異界と化している可能性があるな。それなら被害者の遺体が見つからないことにも説明が付く)

屍男(……そうなると、直接退治するというのは難しくなってくる。聖火でここら一帯を焼き尽くすくらいしか方法がない)



ピンポーン



魔女「すみませーん。ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけどー」
25 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:34:31.54 ID:s7W+/pzao
ガチャ


老婆「……」

老婆「……何の用だい」


魔女「あ、どうも。実は私達、あそこの森について取材を――」

屍男「……」


老女「……下手な嘘はやめな。アタシを何歳だと思ってるんだい。普通じゃない人間なんて見りゃ分かるよ。伊達に歳は食ってない」

老女「あんたら、あの森について知りたいんだろ」


魔女「……えぇ、話が早くて助かるわ。その通り、私達はあの森について調べています」

魔女「アナタの知っていることを出来れば全部教えてもらいたいのだけど」


老女「……入りな」スッ
26 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:35:13.90 ID:s7W+/pzao
スタスタ スタスタ


老女「そこに適当に座りな。茶でも出してやる」


魔女「あ、どうも」

屍男「……驚いたな。100歳を超えてるとは思えないほどしっかりしている。どこがボケているんだ」

魔女「……どうやら、彼女の証言は警察に揉み消されたってことで確かなようね」


老女「ほら、飲みな」ゴトッ


魔女「どうもありがとうございます」スッ

屍男「……頂く」スッ
27 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:36:30.22 ID:s7W+/pzao
老女「で、何が知りたいんだい」


魔女「そうですね、じゃあまず、三年前の件について」

魔女「三年前、この森に入った4人の男女を見たっていうのは本当ですか?」


老女「……」ゴクゴク

老女「……フーッ」

老女「三年前だけじゃないよ」


魔女「えっ?」


老女「この森に入ったやつら全員の顔は覚えている。そのためにここに家を建てたんだからね」


魔女「……それはどういう意味?」
28 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:37:18.00 ID:s7W+/pzao
老女「……あたしの孫が昔、あの森で消えているんだよ。40年前にね」


魔女「40年前って……最初の行方不明者……」


老女「よく調べているじゃあないか。そうだよ」


老女「あんたらが考えている通り、森がおかしくなったのは40年前だ。確かに、おかしな伝説はあったが、そんなのものはとっくに廃れていて、当時は誰でも入ることが出来てたんだよ」

老女「あたしだって子供の頃から何回も行ったことがある。あの日までは……あの森は普通だった」


屍男「……」
29 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:38:01.96 ID:s7W+/pzao
老女「あたしも調べられることは何でも調べた。でも、同じようにあんたらが知っていること以上のことは何も分からなかった。だからここに家を建てたんだよ」

老女「アイツのことを知るためにね……」チラッ


魔女「……それで、何か分かったことはあったんですか?」


老女「“炎の魔女”は実在する。これだけは確かだよ」ギロッ

老女「あたしゃこの目で何度か見たことがある。炎に包まれた人みたいなやつが、こっちを見ているのを」


屍男「……それは本当か?」


老女「あぁ、アイツは森から出られないようだ。だからたまにこっちを怨めしそうに見ている」
30 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:38:53.58 ID:s7W+/pzao
老女「証拠写真も撮ろうとしたが……駄目だった。アイツの姿はビデオにもカメラにも映らなかったから、証明出来るものは何もないけどね」

老女「でも、あたしの記憶を頼りに描いた絵がある。それがこれさ」バサッ



『』



魔女「これが……炎の魔女、その名の通りの姿をしているわね」

屍男「……僅かにだが、女体のような風貌に見えるな。本当にこの絵の通りだったのか?」


老女「あぁ、間違いないね。アイツのことはこの目にしっかり焼き付いている。確かにあいつは女、魔女だ」


魔女「伝説は本当だった……てことか。でも、そうなるとなぜ急にその炎の魔女が現れるようになったかが謎ね」

屍男「……」
31 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:39:57.38 ID:s7W+/pzao
老女「あんたら、森で消えた人数はどこまで知っているんだい」


魔女「こちらで把握しているのは14人ですね」


老女「……14人かい。そこまで少なけりゃどれだけマシだったか」

老女「少なくとも、その5倍はいなくなってるよ。警察共が揉み消しているせいで、テレビでは報道されてないけどね」


魔女「ご……5倍!?」

屍男「それは本当なのか?」


老女「言っただろ。ここに来るやつらの顔は覚えているって。今でも数か月に一度は肝試し感覚で来る馬鹿共がいるんだよ」

老女「警告してやっても……言うことを聞きやしないせいで、止められなかったことなんて何度もある。まったく……非力なババアになっちまったのが恨めしいよ」
32 : ◆gqUZq6saY8cj [saga]:2020/03/02(月) 18:41:20.61 ID:s7W+/pzao
老女「警察共や市の偉いさんは恐れているんだよ。この事実が他に漏れることをね。だからここで消えたやつらは別件として処理されるんだ」

老女「そりゃそうだ。それだけの人数が消えている森なんてのが実在したら、もはやそれは都市伝説の域は超えている……上から見りゃ、自分の立場が危うくなる危険な存在だ」

老女「あいつらは……見て見ぬフリをしているんだ。我が身可愛さでね」


魔女「……」

屍男「……」


老女「だから、あんたらみたいな外の人間に頼るしか……もう道はないんだよ。あんたら、普通の稼業をやってるわけじゃないだろ?」


魔女「……はい」

屍男「……」
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