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男「帰りのコンビニと、美味しい肉まんと、いつものギャル」
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1 :
◆qhZgDsXIyvBi
[sage saga]:2020/02/17(月) 21:22:42.10 ID:zNWUekts0
「ありがとうございました〜」
男「はむっ……うむ」
男(やっぱりここのコンビニの肉まんは最高だな)
男(美味しいだけじゃなくて、満足度が違う)
男(家の帰りにこのコンビニがあるのは感謝しかない)
男「……ん?」
女「……」
男(出た、いつものギャルだ)
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1581942161
2 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:25:01.72 ID:zNWUekts0
男(制服で……いつもいる)
男(何をしているんだろ)
女「……ねえ」
男「!」
女「美味しそうなの食べてるね? 一口ちょうだい」
3 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:25:38.51 ID:zNWUekts0
軽やかなステップで僕の方へやってきた彼女は。
僕が手に持っている肉まんを、とんでもなく自然な流れで頬張った。
女「んーっ、美味し! えっ、ヤバいねこれ」
男「い、一応人気商品、だから」
言葉がつい、きょどってしまう。
女「あはは、変な言い方」
いきなりこんなことされたら、こうなるさ。
4 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:27:17.21 ID:zNWUekts0
女「その校章、同じ高校だね」
胸ポケットから校章を取り出して、僕の襟についていた校章と照らし合わせた。
女「何年生?」
男「二年生」
女「あ、同じだね。……はじめまして、メガネくん」
勝手にあだ名を付けられた。なんなんだ。
しかも安直だ。
5 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:27:55.94 ID:zNWUekts0
女「結構このコンビニ来てるよね。帰り道?」
僕は頷いた。
女「なるほどね。だからか」
彼女はそういうと、コンビニの車止めの上に乗って空を見た。
女「また会ったら肉まん、ご馳走してよ」
ニコッと笑って、そのまま帰ってしまった。
6 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:28:48.04 ID:zNWUekts0
なんなんだ、一体。
僕は食べられた肉まんを見る。
彼女のらしきリップクリームが付いて、少しツヤっとした肉まんの生地。
男「……忘れろ忘れろ!」
そう言って、肉まんを全部食べ切った。
7 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:29:17.58 ID:zNWUekts0
次の日。
女「おっ、メガネくん」
ギャルはまたコンビニにいた。
女「昨日はありがと。今日も肉まん食べるの?」
男「まあ」
女「そっか。じゃあ外で待ってるね」
もらう前提じゃないか、それ。
8 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:29:55.95 ID:zNWUekts0
「ありがとうございましたー」
男「……」
女「おかえり。買った?」
男「う、うん」
また食べられるのか……。
女「よーし……じゃんっ」
あれ、肉まん……?
9 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:32:14.69 ID:zNWUekts0
女「一緒に食べようと思って待ってたんだ」
男「え……」
女「いただきまーす。あむっ……ん、食べないの?」
男「ど、どうして待ってたの?」
女「へ? 食べさせてくれたじゃん」
いや、そうだけど。
理由になってない。
10 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:32:40.34 ID:zNWUekts0
女「んー、初めて食べたんだよね、ここの肉まん」
僕を指さして。
女「美味しさ教えてくれたのがメガネくんってことで」
それが理由だよ、と。
ニコッと笑う。
男「……」
可愛い。
11 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:33:46.18 ID:zNWUekts0
この現状はなんだろう。
僕は今、ギャルの隣で一緒に肉まんを食べている。
いつも遠目で見ていた彼女が。
今、すぐそこにいる。
彼女は黙々と食べる。
僕も黙々と食べる。
内心、凄く緊張しながら。
12 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:34:15.78 ID:zNWUekts0
女「メガネくんさ、学校楽しい?」
男「え……別に」
女「ふーん? じゃあ一緒だね。私もあんまり楽しくない」
男「な、なんで?」
女「ん? なんかあんまり合わないんだよね、クラスメイトと」
肉まんを頬張りながら、そう言った。
13 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:34:42.05 ID:zNWUekts0
女「ノリって言うのかな。あんまりワイワイするのも好きじゃないんだよね」
そういう風には、とてもじゃないけど見えない。
女「……疑ってる?」
疑ってはいない。
けれど。
男「僕と……一緒だと思って」
なんだか、少しだけ安心した。
14 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:35:52.43 ID:zNWUekts0
女「ん〜? メガネくんと一緒かぁ」
唇を一回りペロリと舐めて、
女「悪くないかもね」
と、僕に笑いかけた。
女「それにしても、この肉まん最高だね」
男「うん」
なんだか、和やかなムードだ。
15 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:36:19.26 ID:zNWUekts0
次の日。
女「あ、メガネくん」
男「や、やあ」
女「そろそろ私のこともなんか呼んで欲しいな〜」
男「えっ」
まだ、僕らは一度も名前を名乗っていない。
女「第一印象メガネだったから君はメガネくん。じゃあ私は?」
キラキラした眼を向けられても困る。
16 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:36:49.78 ID:zNWUekts0
男「怒らない?」
女「え、どんな印象!?」
男「……ぎゃ、ギャル」
女「えー! ギャル!? ギャルなのか〜」
ちょっとだけ落ち込んでいる様子だ。
嫌なのだろうか。
女「じゃあ、『ギャルちゃん』って呼んでよ」
男「え……」
急にそんなこと言われても。
は、恥ずかしい。
17 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:37:15.35 ID:zNWUekts0
女「はいメガネくん! せーのっ」
男「……ギャルちゃん」
女「……ぷっ、あははははは!」
なんで笑うんだ。
女「あははははははは……おっかし」
言えっていうから言ったのに。
酷い仕打ちだ。
18 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:37:47.04 ID:zNWUekts0
女「ふー……なんでギャルなの? そんな要素ある?」
男「茶髪だから」
女「え、それだけ!?」
僕は頷いた。
女「なるほど、メガネくんにとっては茶髪はギャルなんだ〜?」
下から顔を覗いてくる。
すっごいニヤニヤした顔で。
19 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:38:52.03 ID:zNWUekts0
女「ギャルは好き?」
男「す、好きじゃない」
女「あ、そうなんだ」
男「……」
また頷く。
女「すっごくストレート否定されちゃった」
男「あ……う……」
なんか、ちょっと罪悪感。
20 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:39:23.64 ID:zNWUekts0
女「じゃあメガネくんは私のこと嫌いなの?」
男「き、嫌いじゃない!」
女「なんだ、良かった」
自分の髪を触って、いつもより控えめに笑った。
女「さっ、肉まんも食べ終えたし、帰るね」
包み紙を丸めてゴミ箱にバスケみたいなシュート。
見事ゴール。
女「よっし! んじゃね、メガネくん」
21 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:40:37.24 ID:zNWUekts0
男「……」
ペースはずっと、彼女に持っていかれている。
次はもっと、ちゃんと。
男「……って、何を考えてるんだ僕は」
次があるかもわからないのに。
ちょっと期待している僕は、バカだ。
22 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:41:26.16 ID:zNWUekts0
次の日。
女「毎日毎日肉まん買えるお金があって凄いなーメガネくん」
男「バイトしてるから」
女「えっ、すごっ!」
別に、凄くない。
女「……ねえ、まだ今日ギャルちゃんって呼ばれてないよ」
男「えっ」
きゅ、急過ぎる。
女「はい。呼んでー、どぞっ!」
男「ぎゃ、ギャゥちゃん」
女「噛んだー!! あはははっ」
……恥ずかしい。
23 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:43:25.64 ID:zNWUekts0
次の日。
女「あれ、今日は肉まん買わないの?」
男「毎日食べてると、身体に良くないから」
それに、毎日買えるほどの財力はない。
……昨日言われたけれど、流石に毎日は買えない。
女「え〜、ちょっともらおうと思ったのにな」
昨日も一昨日もあげたじゃないか。
女「ま、いいや。お話しよ」
仕切り直して、彼女は笑う。
24 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:44:58.49 ID:zNWUekts0
彼女と僕は、コンビニでしか会わなかった。
学校で見たこともないし、お互いに探そうともしていなかった。
コンビニでいつも会えるから、僕はそれでいいと思っていたし。
きっと、彼女もそうなんだと思う。
そもそも、学校で僕と彼女が一緒にいたら不自然だ。
それくらい、一緒にいるような人間じゃないと思っているから。
25 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:45:24.38 ID:zNWUekts0
女「ねえメガネくん」
男「なにギャルちゃん」
もう、お互いに呼び合うのは慣れてきた。
女「この前学校でメガネくん見かけちゃった」
いやにニヤニヤしてるなぁ。
女「隣にいた女の子誰なのかな〜?」
26 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:45:56.02 ID:zNWUekts0
隣にいた女の子……?
ああ、日直で一緒だったあの子か。
男「なんでもないよ、別に」
女「ふーん」
自分から聞いてきたのに。
つれない返事だ。
27 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:46:25.30 ID:zNWUekts0
女「結構可愛かったじゃん」
男「そうかな」
女「大人しそうな感じ」
男「そうだね」
間違いなく君よりは。
大人しい人だと思う。
28 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:48:37.97 ID:zNWUekts0
女「ああいう子が好きなの?」
男「えっ」
どうしてそんな話になるんだ。
女「あれれ、図星?」
ニヤニヤするギャルちゃん。
こういうの、慣れてないからやめて欲しい。
29 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:49:04.73 ID:zNWUekts0
少し戸惑いながらも、僕は答える。
男「好きじゃないって言ったら嘘になる……よ」
日陰者の僕にも普通に接してくれるクラスメイトなので。
良くも悪くも、だ。
女「ふーん」
スクールバッグからスティックキャンディを取り出して、
女「つまんないの」
と、呟いたのだった。
……どういう意味だ。
30 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:49:31.23 ID:zNWUekts0
女「なんかさ〜好きな人とかいたら面白いのになって思ったのに」
男「いたらいいね」
女「できたら教えてよ」
やだよ。
女「ちなみに好きなタイプは?」
なんで教えないといけないんだ……。
31 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:49:57.67 ID:zNWUekts0
男「言わなきゃダメ?」
女「ないなら別に」
彼女はスカートのポケットから、飴を取り出した。
棒付きキャンデーというやつだ。
男「……」
僕は少し考える。
好きなタイプ、か。
男「静かな子……かな」
女「やっぱりさっきの娘じゃん」
決めつけないでくれ。
32 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:50:42.70 ID:zNWUekts0
女「もー、応援してあげるのに。見栄張っちゃってさ」
ニシシと笑う彼女。
男「待ってくれ。確かにあの娘はわりと当てはまってるけどさ」
女「うん」
男「……付き合いたいとかじゃ、ない」
なんだそれ。
自分で言ってても不思議な発言だ。
33 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:51:09.10 ID:zNWUekts0
女「……ふーん」
彼女は空を見上げて、飴を楽しんでいた。
さっきから、返事が悪いな。
男「……ギャルちゃんは、どうなの」
聞き返してみる。
女「私? 私は好きになった人が好きだよ」
なんだよ、その答え。
ズルい。
34 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:51:40.70 ID:zNWUekts0
女「まぁ、前に言ったけど、私もやかましい人は好きじゃない。疲れるから」
男「一緒だ」
女「そだね、だから……」
彼女は携帯を取り出す。
女「こうやって勝手に連絡先を誰かから聞き出してくる奴らはみんな嫌い」
見せてきた画面には、男子の名前が羅列していた。
ああ、そうだった。
彼女はギャルで。
僕とは住む世界が違うんだった。
35 :
◆qhZgDsXIyvBi
[saga]:2020/02/17(月) 21:52:11.97 ID:zNWUekts0
男「……凄いね」
女「凄くない。ウザいし」
彼女は一切、連絡を返していなかったように見えた。
女「○○ちゃんから教えてもらいました、みたいなのばっかでさ」
ケラケラと笑う。
女「本人から直接聞けないくせに、連絡してくんなって話」
冷めたトーンで、彼女は言った。
女「本当に、嫌になる」
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