魔法少女アレイスたん☆マギカ

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 18:17:42.73 ID:BL9zSwSq0
 終章
 体の感覚が失くなってくる。
 あれ程全身を叩くような痛みと灼熱の業火に焼かれるような熱さが、今となってはほとんど感じなくなっている。
 私は死ぬのだろう。
 体にどれだけ力を入れてもピクリとも動かない。体温も下がって、恐らくもうすぐにでもただの肉塊へと変り果てるだろう。
 無様だ。
 今の姿は誰がどう見ても無様に映るだろう。
 だがそれだけの事をしてきたのだ。仕方の無いことだ。
 リリスは無事に育つだろうか。反抗期などきたら...いや、ミナ=メイザースに任せておけば大丈夫だろう。少なくともまともに子育てをしていなかった私よりはいい。
 世界は、学園都市は、子供達は大丈夫だろうか。私が引っ掻き回した世界、これからも病みは必ず出てくる。それらに対抗しうるだけの力をそなえていればいいが...いや、他人の心配事など、私らしくないな。任せたのだから後は祈るよりも他はあるまい...

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1579166262
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 18:43:01.35 ID:BL9zSwSq0
  沈みゆく意識の中、アレイスター=クロウリーはぼんやりと考えていた。
 自分の娘の事、これからの未来の事を。問題はまだ山積みである。しかし心配する事はないだろう。
 何故なら、大人達の支配は終わり、これからは子供達が時代を築くのだから。彼ら彼女らを阻む壁がどれだけ高かろうと、どれだけ闇の力が強かろうと、対抗し、打ち勝つだけの力ある。そうアレイスターは信じていた。
 心配事といえばリリスに脅威が降りかかるかも知れないということだが、これもミナ=メイザースや子供達に任せて大丈夫だろう。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 20:38:04.05 ID:BL9zSwSq0
 などと考えている内に意識が朦朧としてきた。
 当然だ。アレイスターはただでさえオルソラやメイザースとの戦闘、コロンゾンの奇襲で重症を負っているのだ。これまで動けていた方が不自然なのだ。そして何よりもアレイスターの命を奪っていっているのは、コロンゾンの一撃による腹の風穴である。腹の穴からは今もおびただしい量の真っ赤な鮮血が溢れ出ていた。
 これから死ぬ。
 なのに胸の内は満足感でいっぱいだった。
 これまで不幸続きだった、失敗だらけだった、敗北ばかりだった。けれど今は違う。コロンゾンの野望を食い止め、リリスを救う為に皆を信じ、共に戦った。結果として自分が死ぬ事になっても、それでも構わなかった。リリスを救えれば、それで。
 心残りがあるとすれば父親としてリリスの成長を見られない事くらいか。
 ガゴンッッ!!という重い金属音が遠く聞こえた。この船もじきに沈む。そして暗い海底へと沈んでいくのだろう。
 全く良い人生とはいえなかった。しかしこういう最期も乙なものだ。
 そう思案するアレイスターの顔は満足気で晴れ晴れとしたものだった。たった一人の娘を守りきったとある男の、父親の人生が今幕を閉じようとしていた。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 20:41:21.78 ID:BL9zSwSq0





さあ、最期の時間だ




5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/16(木) 21:18:25.31 ID:LREaO/ql0
最近の禁書知らんとスレタイからとあるssだって全然分からないだろうなw
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/17(金) 18:13:28.78 ID:Mx1HyxAXO
つかムーンチャイルドとかレディ・エセルドレーダとかそっちのほうかと思って期待しちまったわ
禁書とか紛らわしいな
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/18(土) 00:24:38.55 ID:hFSJRyZSO
なんてこった変態親父が紛れ込んじまった。種付けオジさんより厄介者だぞ
8 :時に愛は2人を試してる [sage]:2020/01/19(日) 10:04:57.90 ID:D6AzE3TD0
 「う...ん...?」
 まだ薄暗い早朝のとある街の路地裏にてアレイスター=クロウリー(見た目は♀、中身は♂ことド変態クソ親父)は目を覚ました。
 「ここは...?」
 幼くも美しく危険な香りを放つ少女(?)はぼんやりとする頭を抑えながら辺りを見渡す。辺りはまだ薄暗いが、ぼんやりと見渡せる程度の明るさはある。路地裏といっても学園都市のようなゴミが散乱し、薄汚い印象はなく、逆に小奇麗な感じだった。
 続いてアレイスターは自分の体をペタペタと触り始めた。身体の方は相も変わらずベイバロンをイメージソースとした女の身体である。格好は以前と同じ薄い青をベースとしたダブルブレザー系統の制服の上に真っ黒なマント、魔女のような帽子を被っていた。近くには女体化した時から使っている箒が転がっていた。
 結論としては身体には怪我らしい怪我もなく、何も異常はなくーーー
 「傷が...ない...?」
 と、そこでアレイスターは初めて思考が現実に追いついた。
 そうだ、確か自分はコロンゾンの一撃を受け、イギリスで死んだ筈...。
 それが何故こんな路地裏にいるのか、いや、そもそも何故自分は生きている?
 と思案していた所でまた一つ、”変化”に気付いた。
9 :Because I love you [sage]:2020/01/19(日) 10:50:50.28 ID:D6AzE3TD0
 「位相が...違う?」
 そう、自分達のいた位相とここの、この世界の位相は全くの別物であるとアレイスターは気付いた。幾重にも折り重なりあっている位相の何処かに迷い込んだか?とアレイスターは考える。別の位相に迷い込んだ可能性の他に多重宇宙、平行世界etc...考えられる候補はあれど確信には至れず、とりあえず保留となった。
 アレイスターは意識を切り替え、
 「さて、またいつもの『失敗』か。ここは何処か、何故私が生きているのか、それらは今は置いとこう。当座の目標はまず情報収集だな」
 (それにこの世界は妙な違和感を感じる)
 この世界に来たと分かってから感じる世界を覆う違和感。魔翌力にもAIM拡散力場にも似ているが確かに違う謎の力をアレイスターは感じていた。
 (これに関しては自分の足を使って調べるしかないか)
 と、意気込んだはいいもののまずどうやって情報を集めるかが問題となってきた。
 彼女(?)は現在、無一文である可能性があるからだ。
 情報を集める上で便利になってくるのはやはりインターネットであるのだが、彼女(?)は現在、スマホやパソコンを持っているわけではないのだ。
 となるとネット喫茶を使うのがいいのだが、なんせ金がかかる。
10 :キワどい視線を振り切って WOW [sage]:2020/01/19(日) 11:18:06.55 ID:D6AzE3TD0
 アレイスターは国のつや二つ、買える程の金があったのだが、そもそもそれは学園都市統括理事長として座していた頃の金で権限を全て一方通行に譲ったし、ここがどういった所か、大体位相自体違う訳だからアレイスターの金があるかどうかも怪しい。
 ポケットマネー、すなわち懐にあるカードもあまり期待できそうにない。
 その為、アレイスターはほぼ無一文に近い状態であるからして、ネット喫茶は厳しい状況である。
 ネットが使えないかも知れないという状況にアレイスターは頭を抱えて、
 「...仕方ない。地道に調べていくしかないか」
 最悪体を売ればいいと考え、何かを諦めたようにアレイスターはため息を吐きながら、路地裏を出ていくのであったーーー
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/19(日) 11:20:32.25 ID:EP8y+OeUo
ナチュラルに身体売ることを選択肢に入れるアレイスたん
12 :嘘も真実も駆け引きさえも いらない [sage]:2020/01/19(日) 22:06:11.99 ID:D6AzE3TD0
 時空の狭間にてーーー
 また失敗だった。
 あの少女との約束を交わしてからどれだけ繰り返しただろうか。どんな方法をとっても必ず何処かで失敗する。
 いや、落ち込んでいる暇があれば次はどうすれば惨劇を回避できるか考えなければ。
 どうやったら彼女を救える?
 どうすれば平穏な日々を取り戻せる?
 ただ疑問がぐるぐると頭の中を駆け巡る。無駄な事を考えている暇さえないのに、時は考える時間も与えず刻一刻と迫りつつある。

 『キュウべえに騙される前のバカな私を助けてあげてくれないかな』

 ふと、彼女と交わした約束が頭によぎる。
 そうだ、こうやってウジウジしてはいられない。
 今度は、今度こそは!絶対に!!彼女を!!!−−−
13 :今はオマエが誘うままに Oh 溺れてみたい [sage]:2020/01/20(月) 00:08:16.49 ID:Lq78b/Cn0
 「ふう、こんなとこか」
 アレイスターはネット喫茶のパソコンから目を離す。
 アレイスターは自分の所持金に不安を抱えていたが杞憂に終わったようだ。彼女のポケットマネーはこの世界でも十分に使えるらしい。...まあ最悪の事態に備えていた『案』が潰れたのを残念に思ったのはまた別の話だが。
 またネット喫茶に入った時に店員がコスプレ家出少女と間違われ、一悶着あったのも別の話である。
 この街、この世界について分かった事がある。
14 :MORNING MOON [sage]:2020/01/20(月) 00:32:35.97 ID:Lq78b/Cn0
 まず、この街は日本の群馬県の見滝原市というらしい。
 大体この時点で疑問符しか浮かばない。アレイスターのいた世界に群馬県はあれど見滝原市などという街は存在しないからである。
 これについては一旦保留として、次に、この世界には学園都市は無いという。
 こちらについては大方予想出来ていたからあまり驚きはしなかったが。
 ただ科学技術の宝庫であり、科学サイドの総本山である学園都市がない代わりにこの見滝原市では他より科学技術が進歩しているらしい。科学技術では学園都市が上をいくが普及率に関しては見滝原市の方が上だろう。このネット喫茶に来る道中には“外”とは思えない程には科学技術が詰め込まれた物がいくつもあった。これにはアレイスターも少し驚いた。
15 :昨夜の涙の理由も聞かず [sage]:2020/01/20(月) 18:04:35.60 ID:Lq78b/Cn0
 また、表立ってはいないがローマ正教やロシア成教、イギリス清教を代表とする宗教・魔術関連の組織も一応あるらしい。
 魔術サイドと科学サイド、この二つが分かれているという事はアレイスターの原型制御は働いているのだろう。
 恐らく、魔術サイドと科学サイドは対立こそしてはいないものの仲は決して良くはないだろう。
 それから万が一自分が生きている事がバレぬよう細工せねばなるまい。(まあアレイスターは小細工をどうこうしたところで無意味なので成り行きに任せる他はないのだが)
 ついでに自分の戸籍等についても調べたのだが、芳しい情報は出てこなかった。
 「だがまあ、衣食住に関しては何とかなりそうだ。」
 というのも現在、彼女の財産はブラックカード以上の価値の、大量の金が収められているカードを所持しているからである。
 このカードがあれば、ネット喫茶を寝床として、服や食べ物も買える。
16 :遠く 空回る言葉わトゲに変わる [sage]:2020/01/20(月) 18:31:05.25 ID:Lq78b/Cn0
 「さて、情報も粗方集まったが、これからどうしたものかね。私としてはあの時あの場所で[ピーーー]れば満足だったのだが」
 何故自分は生きているのか、何故別位相に飛んでしまったのか、そしてこれからどうするか。
 疑問や問題は掃いて出てくるのに、解決策が一向に思い浮かばない。衣食住はどうにかなるとはいってもそれも無尽蔵にある訳ではないのだ。
 ...考え事をしても仕方ない。
 先ずは行動しなければならない。
 「息抜きに散歩でもするか。この街についてもよく分かっていないのだからな」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/20(月) 20:48:17.63 ID:epV4EM/SO
メール欄にsagaを入れたほうがよろしいかと
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/20(月) 20:51:43.99 ID:QzN1Smnmo
名前欄にサブタイ入れてるって今気づいた
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/21(火) 17:27:26.36 ID:25Yr1v7N0
名前欄のやつはGLAYの『誘惑』です。
邪魔ですね。消します。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/21(火) 18:10:05.03 ID:25Yr1v7N0
 「改めてみれば本当に凄いなこの街は」
 アレイスターは見滝原市という街を見渡し感嘆の声を漏らした。
 学園都市にいた頃は外なんぞ大したことはなかった。だがここ見滝原市は違う。
 学園都市以外の場所でこれだけ学園都市に近い科学力のある場所は新鮮に映り、何かとは童心に帰ったアレイスターだった。
 学園都市という科学の王として君臨していた頃は学園都市は様々な実験や研究は勿論、学園都市内の学校の経費、また、アレイスターが設定したとはいえ様々な事件や事故等(勿論暗部関連も含む)が多発しており、それらの処理等に金をつぎ込む為の金が必要なのだが、それは学園都市の上層部がいつも頭を抱える程の莫大な金額が必要だった。
 その為か見滝原市と比べると普及率はやはりというべきかダンチであった。
 この街は地方都市であるにも関わらず、近未来的であり、最新技術も数多く導入されていた。
 公共機関は全てタッチパネルであり、恐らく一般家庭にまでにまで及んでいるだろう。実際、アレイスターがいたネット喫茶でも全てタッチパネルによる操作盤だったのだから。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 20:21:09.00 ID:MMDrx4Kao
オープン席なら会員になる必要無いだろうけどネット使える席ならほぼ確実に会員証いるだろうし身分証とかどうしたんだ?
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/21(火) 23:21:08.71 ID:25Yr1v7N0
 それからアレイスターがこの街を良く思っているのはそれだけではない。
 当たり前の事だがこの街には闇の匂いがしない。
 アレイスターの管理・管轄していた学園都市では常に闇の気配がしていた。常に血みどろの世界だった。
 毎日誰かが道具のように扱われ、いつも誰かが悲鳴にならない声を上げていた。
 暗部だけではない。
 例えば今朝、アレイスターが倒れていた時、学園都市ではどうだったか。スキルアウト等に見つかれば速攻R指定だっただろう。
 学園都市の悲劇・惨劇はアレイスターが作り出してきた。他人を鑑みず、ただ己の目的の為だけに。
 この街はもしかしたら学園都市が本来あるべき姿なのではないだろうか?
 「全く、同じ科学の進歩した街だというのにこうも違うと泣けてくるな」
 自分の創った科学の街が、上条当麻を活躍させる為だけに悲劇が生まれるようにしたと、その為に創ったと、こう改めて考えれば自分は本当に救いようのないクソッタレな人間だと、アレイスターは心の中で自嘲した。
 (まあ今更感傷に浸っても仕方ないのだが)
 アレイスターは頭のスイッチを切り替え、街の散策を続けたーーー
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/22(水) 17:09:25.34 ID:aZR1Q2go0
 街の散策を続けてアレイスターの気分が良くなり、夢中になっていた為か、いつの間にかもう太陽が沈みかけオレンジ色に輝き、月が見え始め、夜の始まりを迎えようとしていた。
 周りには仕事から解放され、疲れきったサラリーマンがごった返していた。アレイスターは人の奔流から外れた路地裏の入り口の付近にいた。
 (ふむ、少し散歩に夢中になっていたかね。そろそろネット喫茶にでも戻るとするか)
 残念ながらアレイスターが目を覚ました時に感じた妙な違和感については分からなかったが、この街についてはある程度把握した。やる事はまだまだ山積みだが、今は体を休めたかった。
 (ん?)
 そう考えていた時、不意に違和感を感じた。日常ではまずあり得ない、この人混みの山に紛れる、非常に薄いが闇の気配。
 ...路地裏からだ。
 ある程度暗部に関わっている者、浸っている者ならばこの程度の闇にもすぐに気付く。ただ普通であればこの程度、大したことも出来ないチンピラ同然だろうがアレイスターにとっては少し気掛かりな事があった。
 魔力とアレイスター=クロウリーの魔術の派生術式。
 即ち魔術師。
 魔術を行使すれば位相の衝突・軋轢から生じる火花・飛沫、即ち運命を魔術の規模に関係なく撒き散らす事になる。
 そうやって自分の目的の為に例え無自覚だとしても関係のない人々を運気の奴隷とする事はアレイスターにとっては見過ごせる訳がなかった。
 それにこの科学の街で魔術師が入り込み魔術を行使するというのはどうも“不穏”という二文字が付きまとう。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 17:28:10.60 ID:rt9m4+XSO
魔法少女の神となるまどかは魔神と呼べるんじゃないかい?とQB10032号は口に出します
25 :1です。 [sage saga]:2020/01/22(水) 18:51:37.47 ID:aZR1Q2go0
<<24
まど神様は全宇宙に干渉し得る存在なので
まど神様>魔神
となります。
ただまど神様は概念となっているので同じく概念で世界に強い影響力を持つ樹(セフィロト、クリフォト、クロノオト)とまど神様は、
まど神様≧樹
となるのかな?まど神様は意思を持った概念と言えますし。魔神は法則や樹のような概念をどうこうできない筈ですし。出来るとすれば白いあのお方位しか思いつきませんが…アンナは無視して頂いてください。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 19:00:13.66 ID:rt9m4+XSO
まどかは未踏級だったのか。
ならばほむらは漆黒の顎?もしくは全知?それともおが屑頭の便所ブラシ悪魔?
27 :マミさんの容姿の描写はWikipediaを参考にしました。 [saga]:2020/01/24(金) 18:37:58.75 ID:PJx/UWFe0
 アレイスターは魔術師を潰すべく、体を闇に溶かしていった。
 路地裏は学園都市と違い、生ゴミや空き缶等のゴミが綺麗に掃除されており、路地裏だというのに全く不快感を感じさせないものだった。だが、そういったゴミ類とは違うねっとりとした闇の匂いが鼻につく。夕陽の消えかかった暗い路地裏をアレイスターは躊躇なく進んでいく。
 路地裏の角を曲がり少ししたところで、アレイスターは“異臭”を嗅ぎ取った。
 ...血だ。
 恐らく動物の血を使い魔法陣を描いているのだろう。先へ進むごとに血の匂いが強くなってくる。
 魔術師の狙いは分からないが、禁止されている動物の血を使って大雑把な術式を組み上げていたり、いくら路地裏とはいえ人払いもせずにこんな大胆に魔術を仕掛けるとはとんだ大物か三下のどちらかだろう。...恐らくというか十中八九後者だが。
 血の匂いがどんどん濃くなっていっているところから魔術師はすぐ近くにいるだろう。
 魔術師の何かを唱える声も聞こえてきた。
 角を曲がってすぐそこに、魔術師はいた。
 真っ黒いローブを顔深くまで被り、右手には巨大な銀の杖、左手には古ぼけた一冊の本を持っている如何にもなヤツだった。更にいえば傍らには鳥の死骸もある。あれで床に魔法陣を描いたのだろう。
 アレイスターがすぐ近くにいるというのに魔術師は詠唱で気付いていないらしい。
 とんだ大間抜けだ。人払いもせず、アレイスターの気配にも気付けず、三下中の三下だ。それともこの世界ではこれが普通なのだろうか...とアレイスターは呆れていた。まあやる事は変わらないのだが。
 「もし、そこの人」
 と声を掛け初めて魔術師はアレイスターの存在に気付いた。
 「!?、貴様どうやっゴハァッッ!!」
 ゴッッ!!と、アレイスターの霊的蹴たぐりによって魔術師は後方へ大きく吹っ飛んでいった。
 「まあ、手加減はしたから死んではいないだろう」
 霊的蹴たぐりで気絶したらしい魔術師は、手加減したが骨くらい折れているだろうが。
 「さて、後はこれらの処理だが...。どうしたものかね」
 鳥の血で描かれた直径1m位の魔法陣にアレイスターに吹っ飛ばされて気を失った魔術師放っておけば問題にしかならない。
 さて、うしたものかと考えている時、ふと背後から人の気配を感じた。
 振り返って見ればそこには少女がいた。
 ツインテールの金髪を縦ロールが特徴的な少女。ブラウスに短めのスカートと、羽つきベレー帽やコルセットを組み合わせた、全体的にクラシカルな格好で服の上からでも分かる程に優れたボディラインをした少女。
 アレイスターが後々知る存在、魔法少女。
 ここに一人の魔術師と一人の魔法少女が邂逅した。
28 :1です。 [sage saga]:2020/01/24(金) 18:50:35.44 ID:PJx/UWFe0
ようやっと一段落つきました。
書き溜めてた分はこれ位ですので次の更新は遅くなると(ただでさえ遅いのに)思います。(読んでくれている人がいるかも分からないけど)
質問等がありましたら気軽にしてください。出来る限り答えます。(答えられない場合もあります。まどマギの映画みてないので円環の理とか分かりませんし…)
これからもしかしたら安価をとるかもしれません。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/24(金) 22:12:39.75 ID:QEsd0VHho
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/24(金) 22:51:26.11 ID:PJx/UWFe0
 (しくじったな事前に人払いをしておくべきだったか)
 先程までは人払いもせずに堂々と魔術を行使するとはとんだ三流魔術師だと嘲っていたが、どうやら自分も他人の事をどうこう言えないらしい。
ついでにいえば先程の行為を目の前のメルヘンチックな少女に見られたらしくこの状況をどう説明し、どう収拾をつけなければならないのかも考えなくてはならない。
 (本当にどうしたものかね…)
 と半ば諦めたようにそっとため息をついていると、
 「ちょっと、そこのあなた」
 
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/24(金) 23:42:31.34 ID:rW1Mjks2o
旧約のロシア編までしか読んでなかったからアレイスターが美少女化してるの今知った()
期待してるよ
32 :しくじった [sage saga]:2020/01/25(土) 00:00:22.02 ID:8eXfXmBi0
 (ん?)
 なんかメルヘンチックな少女が話しかけてきた。
 「あなた、魔法少女?一般人に危害を加えるってどういう了見かしら?」
 やはりアレイスターが魔術師をぶっ飛ばしたところを見られていたようだ。そしてそれが彼女の誤解(まあ魔術師をぶっ飛ばしたことには間違いは無いので誤解もクソもないが)を生んでしまったようだ。
 しかしアレイスターは一つ聞き慣れない単語に首をかしげた。
 (魔法少女?)
 そう、彼女は確かに魔法少女と言った。それも普段から使っているかのようにサラリと出てきた。そりゃあ自分だって魔術師だが、黒いマントを着用している事以外不思議な点はない。それに普通ならばそんな単語、中学生にもなって真剣に使っているのだとしたらただのイタイ子か重度のオタクに見られ口にする機会なんぞ無い筈だが…。
 それに彼女の服装もかなりおかしい(緑の手術服にビーカーに逆さまに浮かんでいたアレイスターの言える事ではないが)。まるで中世のヨーロッパを彷彿させる格好だこんなだったら街中だと目立って仕方ない。彼女が魔術師でもない限りこんな奇抜な服装など誰がするものか。
 しかしいくら憶測を立てても今は意味は無い。レディが話しかけてきたのだから取り敢えずは返事をしなければ失礼だろう。
 「おやお嬢さん、もう子供は帰る時間だがこんな時間に何の用かね」
 とアレイスターは取り繕ったような、表面だけの薄っぺらい笑みを浮かべながらそう尋ねた。
 一方のメルヘン少女は顔をしかめ、
 「だからそこの黒い人をなんで攻撃したのかしら?あまり争い事はしたくないのだけれど」
 と気絶している三流魔術師の傍に駆け寄り、安否を確かめながらアレイスターに警告を飛ばしている。
 …どうやら彼女は自分に敵対心を抱いているらしい。目の前でくたばっている三流魔術師の制裁を加えに来ただけなのに話がメンドクサイ方向へと向かっていっている。
 「お嬢さん、心配しなくともそこの人は死んではいない。まあ骨折位しているだろうがね」
 メルヘン少女は羽飾りの留め具にあるオレンジ色の宝石のようなものを取り外し、魔術師の傍へと近づけた。すると宝石は強く光りだし魔術師の傷を癒やしていった。
33 :ちょっとゴリ押し [saga]:2020/01/26(日) 16:29:19.00 ID:bU5vzFbh0
 (魂だと...?)
 しかしアレイスターが注目したのは彼女が取り出したオレンジの宝石で三流魔術師の傷を癒した事ではなく、その宝石の正体が魂である事だった。
 勿論魔術師特有の"匂い"を感じさせない彼女がなぜ回復魔術を使えるのか、その点でもアレイスターの疑問を加速させていった。
 だが、それ以上に気になる事が彼女の魂であった。魔術を極め、己の魂を一〇億八三〇九万二八六七通りに分化させたアレイスターだからこそ気付いた事である。
 彼女の魂は肉体から抜けて物質化されており、精神体で肉体と繋がっている状態である。
 先程の彼女の魔法少女発言や回復魔術、そして何よりも彼女の魂が物質化している事等、気になる点が多々ありアレイスターは思考の沼に沈んでいった。
 が、不意にメルヘン少女から、
 「確認するけどこれをやったのはあなたってことでいいのかしら?一般人に危害を加えて鳥の命も奪って」
 と声をかけられた。敵意を孕んだ声色で。
 なんの事かと辺りを見渡し、ああなるほどと納得した。
 というのも今の今まで忘れていたが、辺りはマニアックな中学生が好きそうな杖に古ぼけた本、倒れている黒いローブを着用した男、極め付けは鳥の血を使って描かれた巨大な魔方陣。魔術師をぶっ飛ばした自分がやったと思われているのだろう。
 全く、路地裏だからと油断して考えなしにあの三流魔術師をぶっ飛ばしたのは失敗だったなとアレイスターは心の中で悪態をついた。
 取り敢えず早くこの場の収拾をつけたいアレイスターは誤解を解くための説明を始めた。
 「確かにそこのクソ野郎をぶっ飛ばしたのは私だ。少しばかり事情というものがあってね。だがそこの魔方陣らは私ではないよ。君の傍にいるヤツがやったことだ。」
 「...」
 目の前の黄色いメルヘン少女はアレイスターを怪訝な顔をしたが信用してくれたのか、
 「...分かったわ。あなたの言う事は信じる。だけど今回は忠告で済ませるけど、どんな事情があっても人に危害を加えないでくれないかしら?お互い争い事はしたくないでしょう?」
 「分かった、肝に銘じよう」
 これで何とか場をおさめる事に成功したアレイスター。
34 :ちょっとゴリ押し [sage saga]:2020/01/27(月) 11:02:03.11 ID:nh4V1ktC0
 アレイスターはイタズラを企てるような笑みを浮かべ、
 「それからこの場の後処理は私に任せたまえ。血の後処理なぞは君のような子供がする事ではない」
 「それはどういう.....!?」
 アレイスターが黒いマントを翻し鳥の血で描かれた巨大な魔方陣に覆い被せるようにして魔方陣の上を歩くと、どうやって取り除いたのかまるで何も無かったかのような綺麗な床が顔を出した。アレイスターはイタズラが成功したと言いたいような笑みを浮かべて、
 「これでいいだろう。鳥は適当な山にでも埋めておくよ。ああそこの男はそのまま放置していても問題ない。恐らく彼の知っている誰かさんに拾われるだろう」
 一方のメルヘン少女はアレイスターの鳥の血の後始末を見て何か考え事をしているようである。そして結論が出たのかメルヘン少女は顔を上げ、
 「.....今更の質問だけれど、あなた魔法少女よね?」
 まただ。どうやら彼女はただのイタイ女の子なのではなく、彼女の発言から魔法少女という存在がこの世界ではいるのだろうか?
 続けてメルヘン少女は
 「さっきの血のを消す時魔力らしい魔力を感知しなかった。だけどさっきみたいな事、魔法でもない限り出来ない事よね?あなた一体.....?」
 「私はただの『人間』だよ。何者でもない」
 魔法少女、物質化した魂。気になる事はあるが彼女もまたアレイスターに対して疑問を感じているようだ。それにアレイスターはこう答えた。
 自分は何者でもないただの『人間』だと。
 「話はそれで終わりかね?なら私は先に失礼させていただこうかね」
 「あ、ちょっと!」
 とアレイスターは鳥の死骸を手に取り、すっかり暗くなってしまった路地裏の外へ出る。それを黄色いメルヘン少女は呼び止めようとするがアレイスターはメルヘン少女に手を振るだけで歩みを止めず、闇の中へ消えていった。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/27(月) 22:00:15.06 ID:fBQO8nc70
 ちょっとマミさん視点入れます
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/28(火) 10:16:04.91 ID:IH+YFkq+0
 いつもの見滝原。それは街中が笑顔で溢れ、どこを見ても幸せそうな風景がある。
 巴マミも見滝原中学の登校途中でふざけあって登校して笑顔の後輩を見れば自然と微笑みがこぼれてしまう。
 だが『いつも通り』ということは当然、悪い側面も『いつも通り』あるという事だ。
 魔女。それが彼女にとっての悪だった。
 関係のない一般の人々を苦しめ死へと追い込む、まさしく絶望を撒き散らす存在。そんな魔女から人々を守るため、彼女は常日頃から魔女退治に勤しんでいた。
 授業が終わり、一旦家に帰り街をパトロールする。ソウルジェムの反応を頼りに魔力の痕跡を追いかけ魔女または使い魔を退治する。
 そんな日々の中、ある夕刻の事、巴マミはいつも通り街のパトロールをしていた。魔力の痕跡を追い、魔女や使い魔を倒す、いつもはこれだけだったのだが今回は魔力の反応がいつもとは少し違っていた。
 魔女や使い魔がだす魔力の反応とは違い、どちらかといえば自分達魔法少女のような魔力だった。だがそれも『ような』であり実際には別物だと巴マミは感じた。
 「キュウべえ、この魔力反応どう思う?」
 「どうだろうね。魔女とも使い魔とも違う、魔法少女に酷似しているようだけどそれとも違うようだ」
 「やっぱりキュウべえもそう思う?」
 巴マミは自身の肩に乗っている小動物(?)らしきものに魔力の主の正体について尋ねたが芳しい回答は得られなかったが、巴マミは魔力の主の正体を確かめるというよりもキュウべえと同じ考えをしていた事に安堵しているようだった。
 魔力の反応を追い、路地裏の入り口まで巴マミはやってきた。
 「どうするんだい?」
 「このまま入る、もしかしたら魔女かもしれないけど尚更」
 そうして巴マミは路地裏の中へと入っていった。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/28(火) 11:06:35.83 ID:IH+YFkq+0
 路地裏に入ってからだんだんとソウルジェムの反応が強くなっていっている。確実に魔力の反応の主までもうすぐだ。この魔力の反応の主が魔法少女であれ魔女であれ、近くに結界やら使い魔やらがいるはず。魔法少女であれば魔女を狩る為に魔法を使う、即ち近くに魔女がいるということ。魔力の反応の主が魔女でまあれば言わずもがな。
 だがそれらは一向に姿を表さない。恐らくすぐそこの角を曲がれば魔力の反応の主はいるだろう。
 万が一急襲に備え魔法少女へと変身しておく。
 不審に思いつつも角を曲がった先にいたのは───
 「!?、貴様どうやっゴハァッッ!!」
 「まあ、手加減したから死んではいないだろう。さて、後はこれらの処理だが...。どうしたものかね」
 ゴッッ!!という激しい音とともにぶっ飛ばされた黒いローブの男と黒いマントをと薄い青系のブレザー制服を身に付けた銀の髪の少女だった。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/28(火) 14:03:41.67 ID:IH+YFkq+0
 (どういうこと?魔法少女が一般人に手を出すなんて.....)
 巴マミは混乱していた。目の前にいる恐らく魔法少女と思しき少女が足元に転がっている黒いローブを着た男を攻撃したのだろうが、その理由が分からない。
 不審人物だったから、で済ませられる程魔法少女の力は軽いものではない。足元に転がっている黒いローブの男は怪しくはあるが魔女とは何の関係もないはず.....。いや、そもそも見滝原に外国人の魔法少女がいるとは聞いていない。そもそも魔法少女ではない可能性もある。とにかく真意を確かめなくては。
 ただし一般人に手を出す人物なのだから警戒心を持ちつつ。
 「ちょっと、そこのあなた」
 声をかけてみると銀の少女は反応を示した。マミは続けて、
 「あなた魔法少女?一般人に危害を加えるってどういう了見かしら?」
 と銀の少女に問い詰めるマミ。だが警告とも取れるような言葉を受けても銀の少女は一切動揺もしない。ただ少しばかり考えている素振りをして、中学生でも分かる程の取り繕ったような、薄っぺらい表面だけの笑みを見せ、
 「おやお嬢さん、子供はもう帰る時間だがこんな時間に何の用かね」
 挑発するような、馬鹿にするような言葉にさすがにマミでもムッとした。
 
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/29(水) 18:16:02.55 ID:n507zr8I0
 人を馬鹿にするような態度を取る銀の少女の対して巴マミは胸の内がムカムカしていくのを感じた。他人を馬鹿にするような、見下しているような、そんな雰囲気のある少女だ。
 だが出来うる限り穏便に済ませたいマミはなるべく感情を抑えて、それでいて警戒心を解かずに、
 「だからそこの黒い人をなんで攻撃したのかしら?あまり争い事はしたくないのだけれど」
 と銀の少女に問いかける。
 ただ銀の少女にばかりかまけている場合でもないのだ。先ずは黒いローブの男の治療もしなければならない。黒いローブの男へと駆け寄り、安否を確認し羽飾りの留め具にあるソウルジェムを外し、魔力を使って黒いローブの男の治療を始めようとしていた。すると銀の少女から、
 「お嬢さん、心配しなくともそこの人は死んではいない。まあ骨折位しているだろうがね」
 .....一体誰のせいだと問い詰めたくなる程舐め腐った態度にさすがのマミでも腹立たしい気持ちになった。
 しかしよくよく辺りを見てみれば目を背けたくなる程酷い有り様だった。鳥を殺し、その血で描かれたであろう魔方陣。これもあの銀の少女がやったのだろうか?とにかく真意を確かめねば。
 「確認するけどこれをやったのはあなたってことでいいのかしら?一般人に危害を加えて、鳥の命も奪って」
 確認というよりは問い詰める感じになり少しキツイ言い方になってしまった。
 一方の銀の少女はこちらの言っていることが何のことか分かっていないらしく、辺りをキョロキョロと見回してからようやっと意図を捉えたらしい。
 「確かにそこのクソ野郎をぶっ飛ばしたのは私だ。少しばかり事情というものがあってね。だがそこの魔方陣らは私ではないよ。君の傍にいるヤツがやったことだ」
 「...」
 他人を馬鹿にするような飄々とした態度は崩さないもののどうも嘘をついているようには見えない。少しばかり悩むところではあるが、
 「分かったわ。あなたの言うことは信じる。だけど今回は忠告で済ませるけど、どんな事情があっても人に危害を加えないでくれるかしら?お互い争い事はしたくないでしょう?」
 「分かった肝に銘じよう」
 なんとか穏便に済ませることができたマミであった。
40 :ちょっとゴリ押し [sage saga]:2020/02/01(土) 00:52:03.29 ID:hBF2B/l50
undefined
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/01(土) 01:44:57.52 ID:hBF2B/l50
undefined
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/01(土) 08:39:28.41 ID:hBF2B/l50
 なんとかこの場を穏便に済ませることができたマミであった。一方の銀の少女はイタズラを企てるような含み笑いをしていた。
 「それからこの場の後処理は私に任せたまえ。血の後処理なぞ君のような子供のすることではない」
 さらっと銀の少女に小馬鹿にされた。そりゃ確かに血の後処理なんかは年頃の少女がすることではないが、それふ彼女とて同じこと。見た目で人を判断してはいけないが、むしろ彼女の方が年下であろう。この場に第三者がいた場合、恐らくマミの方が年上というだろうと確信できる程目の前の少女は幼かった。やはりこの銀の少女は他人を馬鹿にするのが好きなようだ。
 ただ、この銀の少女の言い方ではこの場の後始末が出来るというようなことだったので、それが少し気になったので銀の少女に問おうとすると、
 「それはどういう.....!?」
 銀の少女は黒いマントを翻し鳥の血で描かれた魔方陣に覆い被さるようにして魔方陣の上を歩くと、まるで魔法でも使ったかのように、しかし魔力を一切感じられず、血の跡が取り除かれた、まるで何も無かったかのような綺麗な床が顔を出した。
 銀の少女はイタズラが成功したかのような笑みを浮かべ、
 「これでいいだろう。鳥は適当な山にでも埋めておくよ。ああそこの男はそのまま放置していても問題ない。恐らく彼の知っている誰かさんに拾われるだろう」
 .....彼女は本当に魔法少女なのだろうか?
 さっきの血を消す時、魔力らしい魔力を感知できなかった。あれは魔法でも使わない限り出来ないことだろう。それとも単に科学技術で血を取り除いたのだろうか?いや、それはない。いくら科学が発展している見滝原であってもあれほどの、それも血の跡を完全に取り除くことはできない。
 (キュウべえ、どう思う?)
 (.....)
 足下にいるキュウべえに話しかけても珍しくだんまりだし、本人に聞かなければ話にならない。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/01(土) 09:34:13.14 ID:hBF2B/l50
 「.....今更の質問だけれど、あなた魔法少女よね?」
 と銀の少女へ問いかける。続けて、
 「さっきの血を消す時、魔力らしい魔力を感知しなかった。だけどさっきみたいなこと、魔法でもない限り出来ないことよね?あなた一体.....?」
 と問いかけた。銀の少女はそれに対して、
 「私は『人間』だよ。何者でもない」
 と答えた。マミは『人間』というところが妙に頭に残った。何か彼女の大切な矜持のようなものをマミは感じ取った。などと考えている内に銀の少女は、
 「話はそれで終わりかね?なら私は先に失礼させていただこうかね」
 鳥の死骸を手に取ると、すっかり暗くなってしまった路地裏の外へ出ようとしていた。
 「あ、ちょっと!」
 マミは咄嗟に彼女を呼び止めようとするが、銀の少女は手を振るだけで歩みを止めず、そのまま闇夜へと体を溶かしていった。
44 :以下、名無しにかわりまして上イン好きがお送りします [sage saga]:2020/02/01(土) 11:59:52.48 ID:hBF2B/l50
 結局銀の少女がどこへ行ったかは分からなかった。それに一応治療したとはいえ黒いローブの男を放っておく訳にもいかなかった。それから間もなくして、黒いローブの男の知り合いだと言う人に男を引き渡し、銀の少女を探してみたが、見つからなかった。仕方がないので家に帰ることにした。
 なんとも不思議な出会いだった。
 人を小馬鹿にするかと思ったら年相応の子供っぽい側面を見せる。しかし不可解な点も多く、なんともミステリアス少女だったとマミは銀の少女へ思いを馳せていた。
 それに気になったのはそれだけではない。
 「キュゥべえ、あの時なんで黙っていたの?あの娘に何か気になることでもあったの?」
 あの時、マミが銀の少女が本当に魔法少女なのか疑問を感じていた時、キュゥべえに話しかけても返事が来ず、珍しくだんまりしていた時だった。それに関してキュゥべえは、
 「うん、あの少女は魔法少女の素質があったんだけれど、」
 「?、言葉を濁して、キュゥべえらしくないわね。魔法少女の素質があるのなら契約するんじゃないの?」
 やけに言葉を濁しているキュゥべえに疑問符が浮かぶマミ。
 「いつもならそうするんだけれどね。魔法少女の素質があったって言っても特殊でね、いわゆるイレギュラーってやつさ。それで少し不可解なところがあって僕でも彼女の正体は分かりかねたんだよ」
 あの銀の少女がキュゥべえに魔法少女の素質があると見込まれるのも驚きだが、この不思議小動物型生命体キュゥべえが彼女の正体が分からないと言ったのが衝撃的だった。
 「キュゥべえでも分からないこともあるのね。ちょっと意外だわ」
 この博識な不思議生命体が分からないことがあるというのが本当に意外だった。
45 :以下、名無しにかわりまして上イン好きがお送りします [sage saga]:2020/02/01(土) 15:29:12.68 ID:hBF2B/l50
 しかしキュゥべえが分からないのは本当に珍しく、マミはあの銀の少女について好奇心が湧いてきた。
 マミはティーカップに紅茶を注ぎながら、
 「キュゥべえ、聞くけどあの娘ってどこら辺が普通じゃなかったの?魔法少女になったらただの魔法少女にはならないってこと?」
 一方のキュゥべえはマミのソファーの上でゴロゴロしながら、
 「そうだね、彼女は普通の少女とは言えないかな。魔法少女の素質には因果律っていうのが関係しているんだけど、彼女の因果律は過去最高のものだったよ。それこそ史上最強の魔法少女になれる位にね。だけど不可解なことに彼女には因果律が収束しているだけじゃなかったんだ。僕にも分からない謎の力があってそれで魔法少女に出来るかどうか分からなかったんだ」
 「魔法少女の素質ってそういうので決まるのね。でもキュゥべえにも分からない謎の力が働いているせいで魔法少女に出来るかどうか分からないってことね」
 ますますミステリアスさが増していく銀の少女。最初、というか最後まで印象としては悪かったが、もしも彼女が魔法少女になった時、共に戦ってくれるだろうか。もう一人ぼっちにならなくていいのだろうか。
 (本当は巻き込んじゃいけないのかもしれないけど)
 キュゥべえは彼女のことについて考えているのか目線は上の空だ。
 そしてキュゥべえは、
 (あの力.....。何か懐かしいような、どこかで感じたような気がする)
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/01(土) 17:18:50.61 ID:hBF2B/l50
 一方の銀の少女こと糞薬中バイセクシャルド変態魔法少女アレイスたんは鳥を近くの山へ埋め、ネット喫茶へ戻ってきていた。その頃には既に辺りが静まり返り、本格的な夜へと変貌していた。
 そして今日、街を散策した結果を頭の中で整理していた。
 (この街は科学の街のくせして魔法少女など随分とメルヘンチックなものを抱え込んでいるな)
 散策した結果を整理するといっても成果といえば夕方に出会ったあの魔法少女(?)と彼女の足下にいた謎の生命体についてだった。
 (気付いていないとでも思ったのかね)
 あの魔法少女(?)についてもそうだが何よりも奇妙だったのはあの謎の小動物型生命体だった。
 一見するとマスコットのような愛らしい見た目だが、アレイスターには解る。あれは別の星、別の世界からきたものだと。
 この街にある妙な違和感の正体の一つだった。
 (何処かで感じたことのあるものだと思ったが、あの小動物擬き、ネットワークを構築していたのか)
 ネットワーク。
 アレイスターがキュゥべえが別の星、別の世界から来たと断言出来る根拠がこれだった。
 アレイスターもかつては御坂美琴のDNAマップを元にクローンを製造し、そのクローンを使ってネットワーク、通称ミサカネットワークを構築していた。そのためか、キュゥべえの構築しているネットワークに気付いたのだ。そのネットワークの先が遥か遠くの宇宙まで繋がっていたのは驚きだったが。
 「さあて、どうしたものかねぇ」
 今日何度目になるかも分からない台詞を吐きながら、アレイスターはパソコンの前に座る。
 この街、というよりかはこの世界はどうもおかしい(アレイスターのいた世界も十分、なんならアレイスターの方が十分におかしい)。とりあえずは当座の目標はこの街についてインターネットや街の散策等で調べることである。勿論非合法な手段も用いるが。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/02(日) 11:51:03.43 ID:9H4y6mch0
 翌日。
 とにかくこの街について本格的に調べる必要が出てきた。
 コキコキと首を鳴らしながらアレイスターはパソコンを起動させる。
 「さあて、作業に取りかかるとするか」
 アレイスターはまず、あらかじめ昼間の内に完成させておいた小切手位のハッキング用のフラッシュメモリをパソコンへと投じる。
 これから行う作業とは、警備会社にハッキングを仕掛け、街中にある防犯カメラの映像を片っ端から盗み取り、情報を精査していく。地味な作業になるが、どんな艱難辛苦があろうとも決してへこたれない変人魔術師アレイスターにとってはこの程度文字通り作業でしかない。それに別段急ぎという訳でもないのでいくらでも時間をかけてもいい。
 (どんなものが釣れるかなっと)
 とアレイスターはこの街についての情報精査を始めた。
 とはいってもこの街自体は何の変哲もないただの街なのでたいした情報は得られない。その上学園都市と違い宇宙から人工衛星に監視されてる訳でも、ましてや滞空回線がある訳でもない。カメラの数も学園都市に比べて少ない(それでも大量の映像があるわけだが)。
 ハッキングし盗み出した映像をしらみ潰しに見ていっていると、
 (あれは、昨日の......)
 昨日遭遇した黄色いメルヘン少女だった。
 この時の映像は数日前のもので、映像には夕方で辺りに人は少ない場所に彼女はいた。彼女は昨日のメルヘンチックな姿ではなくカメラの映像でよく確認していた何処かの学校の制服姿であった。
 彼女は左手の中指にしてある指輪からあのオレンジ色の物質化した魂を取り出して何かを探している様子だった。
 アレイスターは彼女の行く先をカメラの映像の記録から辿っていく。彼女は何やら魂の光が強くなっていく方向へと向かっているようだ。だがそれがどういう意味を持つのかアレイスターでも分からなかった。やがて彼女は路地裏の中へと入っていった。さすがに路地裏の中にまでカメラがない以上は彼女がどこに向かって、何をしていたのかも分からない。
48 :以下、名無しにかわりまして上イン好きがお送りします [sage saga]:2020/02/02(日) 13:10:01.21 ID:9H4y6mch0
 (一体なにを......?)
 この街について本格的に調べようとしたのも彼女との邂逅からだった。アレイスターはカメラの映像の記録の精査を彼女の行動に重点的に調べあげることにした。
 数時間、ずっとカメラの映像の記録と格闘していたアレイスターは一旦休憩を入れることにした。この時間、ずっとあのメルヘン少女の行動を追ってきて分かったことがいくつかある。
 まず、彼女は魔術師とはまた違った存在であるということ。
 カメラの映像の記録を見るに恐らく彼女は魔術とは一切関係のない一般人だろう。だが詳しいことは分からないが、何故か彼女は魔術を使うことが出来る。それも原理は同じだがプロセスが微妙に違う。昨日邂逅した時から時折彼女の口にしていた魔法少女なる者特有のものだろう。
 二つ目はキュゥべえという存在。
 恐らく昨日彼女の足下にいた謎の小動物擬きだろう。だがヤツは一般人には見えないらしく堂々と表に出ていた。名前についてはメルヘン少女の口の動きからアレイスターが推測したものである。こいつについては現状一番注意しなければならない存在だろう。
 三つ目は魔女という存在。
 これもアレイスターがメルヘン少女の口の動きから推測したものである。ただ魔女というものならばアレイスターの世界にもいた。だがアレイスターの知っている魔女というものは使い魔はいれど、結界の奥に隠れ潜んでいる訳ではない。それに魔女の被害はここ日本ではなく主にイギリスであった筈だし、魔女といえど人間だ。彼女らの会話や行動から推測したものだが、彼女は日々魔女を狩っているらしい。いくら人の道から外れているといっても彼女のような年端もいかない少女が殺しを行うとは考えにくい。これも不可解な点である。
 調べれば調べる程、不明点は増えるばかりである。
 「しかしまあ、何もないよりかはマシだろう。それにこの街にある力についても目星がついたしな」
49 :以下、名無しにかわりまして上イン好きがお送りします [sage saga]:2020/02/02(日) 17:06:17.51 ID:9H4y6mch0
 この街で最初に感じた、そして今でも感じている違和感。恐らく彼女達の言う“魔女”の力なのだろう。キュゥべえとやらの構築しているネットワークに続き、違和感の大まかな正体について知れたことは僥倖だ。ただ、
 (それだけではないな)
 そう、キュゥべえとやらのネットワーク、魔女、それだけではない。だがそれは常に近くにあって、自分の知っているような感覚である。アレイスターはねっとりと纏わり付くようなもやもやに思考を傾けていく。この違和感はもっと身近にある気がするのだが......と。答えは喉まで出かかっているのに、あと一歩のところで手が届かないようなもどかしさ。
 「はああぁぁぁ。いくら考えても答えが出ないのならば思考を切り替えるしかないか」
 長いため息をつきながらアレイスターは次の行動をおこすべく重い腰を上げた。
 
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2020/02/02(日) 22:17:25.79 ID:9H4y6mch0
そろそろテストなので更新は遅くなると思います。
51 :以下、名無しにかわりまして上イン好きがお送りします [sage saga]:2020/02/03(月) 00:42:26.52 ID:oOE+CogJ0
 監視カメラの映像記録は粗方精査しきったので、一旦行動に移すことにしようと考えた。
 しかし、別段急ぎの用という訳でもないし、今日一日は適当に男でも捕まえてセックスなり乱行パーティーにでも興じようとも考えていた。とにかく外に出て、街の散策なり、男探し(女でも可)でもしなければ。一日中ずっとパソコンと睨みあいっこなんぞただのヒキニートと大差ない。
 という考えでアレイスターはネット喫茶から出ていった。
 二日目ともなればさすがにこの街にも慣れてきて特に驚くこともなかった。当座の目標はとりあえずは魔女探しである。元々アレイスターが目を覚ましてから感じる違和感の正体を探しだそうとしたのはこの街、この世界で何故自分が生きているのかを知る為である。自分は確かにあの時死んだ筈なのに生きている。この状況が不可解なのである。しかしその原因はこの街で目を覚ました時から感じる違和感が関係しているのではないかとアレイスターは直感的に感じていた。......まあこうして考えなしに突っ走るからいつも失敗するのだが。
 とにもかくにも街での魔女とやらを探さなければ。
 カメラの映像の記録ではメルヘン少女は大体人目のつかない所を重点的に探していた。彼女達の会話から察するに魔女とやらは人目のつかない所で結界を張りその奥に隠れ潜んでいるのだとか。人目のつかない所に行けば後は魔力の流れを追いかければいい。
 と路地裏に入ると、
 「ビンゴ」
 路地裏から魔力の流れを感じる。それも並みの魔術師よりも強い波動だ。恐らく魔女だ。
 アレイスターは奥に隠れ潜む魔女にも臆さず、いっそ口笛で吹きそうな程軽い足取りで前へと歩きだす。
 「魔女とやらとの初対面だな。精々楽しませてもらうとするかね」
130.24 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)