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高山紗代子「敗者復活のうた」
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280 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:18:35.99 ID:ZRhpxi3E0
静香「世界で2番目? なんだか変わっているというか、半端ですね。世界1の山を飾っているなら、なんとなくわかりますけど」
麗花「K2は高さでは世界で2番目だけど、世界1なこともあるんだよ?」
育「なになに? なにが世界1なの、麗花さん?」
麗花「登頂って言ってね、頂上まで登るのが一番難しい山なの」
紗代子「世界1、登るのが難しい山……」
桃子「それって、エベレストよりも難しいってことなの?」
麗花「うん。高さではエベレストにはかなわないけど、険しさや厳しさはエベレストよりも上でね、登頂を果たした人もすっごく少ないの。事実、冬期に登頂を果たした人はまだ誰もいないんだ」
千鶴「つまりこのジグソーパズルは、紗代子のプロデューサーの、困難に挑む矜持を示したものなのですわね」
瑞希「かも知れません……いえ、きっとそうなのでしょう」
P「残念ながら違う」
紗代子「プロデューサー!」
281 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:19:22.63 ID:ZRhpxi3E0
P「たまたま、見つけた1000ピースのパズルがこれだっただけだ。深い意味はない」
紗代子「本当ですか?」
P「……」
志保「あら?」
育「どうしたの? 志保さん」
志保「これ、パズルのピースが落ちちゃってるんじゃない?」
のり子「あれ? 気をつけて運んでるつもりだったけど……ん? それって、床じゃなくてデスクの上にあったんだよね」
志保「そう言われてみれば……じゃあこれは、落ちたんじゃなくてまだ嵌めずに置いてあったのかしら」
静香「たった10ピースだけ嵌めずに……何か意味があるんですか?」
環「たまき、パズルとか得意だから、完成させてやるぞ」
P「待て待て。そうはいかない」
紗代子「え?」
P「これを嵌めるのはまだまだ先だ」
紗代子「? どうしてですか?」
P「紗代子もまだ、このパズルみたいに未完成だからな」
紗代子「?」
282 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:20:30.49 ID:ZRhpxi3E0
P「俺は今まで紗代子に、990の事を教えてきた。そして紗代子がそれを覚えるたびにピースをひとつずつ嵌めてきた」
紗代子「えっ!?」
P「自分じゃ気づいてないだろうが、紗代子は既にそれだけのものを身につけてるんだぞ」
紗代子「私が……?」
P「ま、それはまた後でいいだろう。それより今は……」
琴葉「あの……プロデューサー? その手にしているハンマーみたいなものはなんですか?」
P「これか? これは、ハンマーだ」
琴葉「それで……そのハンマーでなにをするつもりなんですか?」
P「これはな、こう……使う!」
ドガッ!
プロデューサーはハンマーを隠し部屋のデスクに叩き込む。
載っていたパソコン等の機材にヒビが入る。
琴葉「や、やめてください! 劇場でなんてことを!!」
P「大丈夫。安心してくれ、田中さん」
琴葉「え?」
283 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:21:20.16 ID:ZRhpxi3E0
P「心配しなくても、これらは全部、俺の私物だ」
琴葉「なるほど。それなら……い、いいえ! よくありませんよ!!」
制止する琴葉を横目に、プロデューサーはハンマーを振り下ろし続ける。
P「こんな……こんな場所があるからいけないんだ! もう、ここは……こんなものは……必要ない!!」
その言葉に、琴葉も制止を解く。
美奈子「もう止めないの?」
琴葉「……後片付けは、自分でしてもらうわね」
P「ほら、紗代子も」
紗代子「えええっ!? わ、私もやるんですか?」
P「もうここには、戻らないからな」
紗代子「プロデューサー……わかりました」
284 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:22:34.73 ID:ZRhpxi3E0
冷静に考えると、不思議な気もする。
ずっと外国にいると思っていた、自室から受け取ったり送ったりしていたメールは、実際にはここでやりとりされていたのだ。
紗代子の振り下ろしたハンマーに、ディスプレイが砕ける。
百合子「な、なんだか少し、もったいない気もしますね」
昴「ああいう機械って、どのくらいするんだ?」
杏奈「あの機種だと……たぶん……120万円ぐらい?」
紗代子「え?」
百合子「も、もったいなくないです!?」
紗代子「ぷ、プロデューサー! そ、そんな高価な機械、私……」
P「いいんだ。もう要らない。こんな機械も、場所も。もうオサラバだ」
その後、全員で代わる代わるトマソン内でハンマーを振るった。
琴葉は最初遠慮をしていたが、それでも紗代子の心情を慮り1度ハンマーを振り下ろした。
紗代子と片付けをしながら、プロデューサーはポツリと言う。
P「単独ライブ、がんばろうな」
紗代子「はい! ご指導、お願いします!!」
285 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:23:28.11 ID:ZRhpxi3E0
紗代子の単独ライブの日が来た。
会場前からファンが大挙して押し寄せ、物販の売れ行きも好調だ。
そこへ神妙な顔の、このみがやって来る。
このみ「紗代子ちゃんのプロデューサー」
P「あ、馬場さん。どうされました? 紗代子だったら……」
このみ「違うのよ。来てるの」
P「え?」
このみ「5階席に、黒井社長が来てるのよ!」
P「……」
黒井社長は、紗代子のセンター公演にも来ていた。それも、初めて765プロの招待を受けて、だ。
幸いにも特に何かを仕掛けてきたわけではなかったが、それだけに不気味でもあった。いや、後に何かとんでもない事をしてくる下準備のような気すらしている。
その黒井社長が、今日も来ているというのだ。
いったいどんな企みを狙っているのか……
P「しかもまあ5階席か。また腕を組んで座ってるんだろうな」
このみ「渋い顔してたわね。まあチケットを買って来てくれたお客さんだから、無碍にはできないんでしょうけど」
P「ええ、気をつけておきます」
286 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:24:30.11 ID:ZRhpxi3E0
志保「今日は、客席でみんなと応援をします」
P「ありがとう北沢さん。よろしくな」
志保「楽屋で紗代子さんに会いました……いつも以上に、魅力的に見えました。それに、堂々としてる様にも見えました」
P「今までやってきた事が、ようやく紗代子にも淡い自信となってきたんだろうな」
志保「紗代子さんは、Shahをライバルにしているんですよね」
P「紗代子が世界一のアイドルになるには……少なくともそれを目指す為には、世界一のプロデューサーが必要だ」
志保「え? でも、高山さんにはプロデューサーがいるじゃないですか」
P「俺も、自分が世界一だなんて自惚れているつもりはないさ」
志保「そうなんですか?」
P「だからこそ、Shahの一件があった時に、あれほど俺はショックを受けたんだろうな。思い当たることがあったから……図星を指されたから、あんなに辛かったんだうな」
志保「……」
P「まあ、誰だってそうさ。自信はあっても過信しちゃいけない。真に世界一のプロデューサー以外はな」
志保「誰なんです? 世界一のプロデューサーって」
287 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:25:47.60 ID:ZRhpxi3E0
P「AISの創業者にして社長、そして現役プロモーターのコーエン……ロジャー・コーエンだ」
志保「ロジャー・コーエン……」
P「コーエンには借りがある。いや、以前はなんで俺の担当アイドルを、コーエンが引き抜いて掻っ攫っていったのかがわからなかった。だが、今ならわかる」
志保「? どうしてなんですか?」
P「紗代子にとってサー、いやShahが運命の相手であったように、俺にとってコーエンは宿敵であり、そして目指すべき、尊敬すべきライバルだからだ」
志保「運命って、言いたいんですか? プロデューサーは、そういうのを信じない人かと思っていました」
P「不思議な巡り合わせを体験したからな……俺は世界1のプロデューサーになる。コーエン以上のな。きっとその為に俺はコーエンと縁があったのさ」
志保「はい……」
P「それで? 君の悩みは? 北沢さん」
志保「え?」
P「なにか悩みがあるんだろう?」
志保「紗代子さんのプロデューサーは、私のプロデューサーじゃありません」
P「? ああ」
志保「だから、言えます……いえ、言います。どうすれば私と私のプロデューサーも、紗代子さんと紗代子さんのプロデューサーみたいになれるんでしょうか?」
288 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:26:51.97 ID:ZRhpxi3E0
P「彼と話し合えばいい」
志保「っ……それは……ひ、人に頼ったりするのは……得意じゃありません」
P「頼るんじゃない」
志保「え?」
P「君の方から、協力させるんだ」
志保「私から……協力をさせる……」
P「阿諛佞媚を絵に描く必要なんてない。求められれば応じる、そうやって共に協力していく。俺は紗代子からそれを教わった」
志保「逆じゃないんですか?」
P「え?」
志保「あなたが紗代子さんを、引っ張ってきたんじゃないんですか? その……色々と別の思惑があったにしろ」
P「色々な……いや、紗代子でなければ俺はいつまでもあの穴蔵のようなヒュッテに閉じこもったままだっただろう。紗代子が、俺をあそこから出してくれた。というよりは、引きずり出されたも同然だがな」
志保「私にも……そんなことできるでしょうか」
P「少しずつでいい。気持ちを相手にぶつければいい。必ずそれに応えてくれる。それがプロデューサーってもんだ」
志保「わかりました。あの……この話は……」
P「もう忘れた。さあ、行こう」
289 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:27:51.95 ID:ZRhpxi3E0
東京都文化会館大ホールは満席となった。
その満座のステージで、迷いも不安もふっきった彼女は、2時間の間歌い、踊った。
彼女の歌声は、どの曲も観客の心を揺さぶった。
観客も歌声に応えるように熱狂した。
SNSでもその様子はすぐに伝えられ、話題になった。
次の日から、紗代子関連のグッズがどこも品切れになった。CDも完売し、増産がすぐに決まった。
テレビの出演を含め、次々と仕事が舞い込んできた。
765プロの先輩アイドルを追いかけるように、彼女の周囲は変わっていった。
そして、さらにその後を追いかけるように……
可奈「えー!? 私のセンター公演ですか!?」
志保「! み、みんな次々にセンター公演を……」
美奈子「私、テレビ番組のレギュラーが決まったよ」
のり子「アタシは単独ライブ」
桃子「べ、別にドラマの主役なんて今更だけど、主題歌は……ちょっと嬉しいかな。ちょ、ちょっとだよ!」
環「たまきと育、そのドラマのレギュラーだぞ」
育「可憐さんは、ラジオ番組だったっけ?」
可憐「は、はい……こ、声はミキサーで調整してもらえるから……゛、がんばります!」
瑞希「みなさん……躍進ですね。私も……セクシー枠を狙っていますが……とりあえずは、クイズ番組に出演です」
290 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:29:59.46 ID:ZRhpxi3E0
P「これは、先日の礼だ」
2人だけになるとプロデューサーはそう言い、綺麗にラッピングされた包みを紗代子に渡す。
紗代子「礼?」
P「俺をゆるしてくれた事と、俺をプロデューサーに選んでくれた事」
紗代子「そんな! そんなの、当たり前の事ですから」
P「それと」
紗代子「え?」
P「いつだったかの、夕食の礼だ。遅くなったがな」
紗代子「はい……」
P「どうした? 元気がないな」
紗代子「プロデューサー、私……」
P「今更、日本を代表するトップアイドルになるのはやめます、とか言うんじゃないだろうな」
紗代子「ち、違います。あの……ジグソーパズルのことです」
P「ん?」
291 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:32:26.35 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「私、もうプロデューサーから教えてもらうことは、あと10個しかないんですか? もう私には、成長の余地は……伸びしろはないんですか!?」
P「俺からの礼……」
紗代子「えっ!?」
P「開けて見てくれないのか?」
紗代子「はあ……あ!」
ラッピングの中から出てきたのは……
紗代子「新しいジグソーパズル! プロデューサー、これって!!」
P「まだまだ高山紗代子というアイドルが完成するわけないだろう? 1000ピースはただの区切りだ。これからも……いや、これからは今まで以上に厳しくいくぞ」
紗代子「はい! あ、このジグソーパズルの絵は」
P「わかったか。俺たちが最初に会った、筑波山だ」
紗代子「やっぱり、K2も意味があるんですね?」
P「昔……登ろうとしたが、断念した」
292 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:35:15.00 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「K2をですか? 確か、世界一登るのが難しい山……なんですよね」
P「俺の場合は、スタートラインにも立てなかったがな」
紗代子「?」
P「入山許可が下りなかったんだ。それ以来、俺にとっては高嶺の花さ。見果てぬ夢とも言うか……」
紗代子「プロデューサーと一緒なら、私はどこまでも、どんな困難な山でも、頂点にたどり着くつもりです!」
P「じゃあとりあえず、日本のトップになりにいくか」
紗代子「はい! ……え?」
293 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:36:52.10 ID:ZRhpxi3E0
瑞希「ワールドフェスティバル オブ ニューオーダーズ……これは、世界規模の新人アイドルフェスですか。すごい」
P「AIS主導の、な。当然に会場も主催も放映権もアメリカ……AISが握っている」
紗代子「もしかしてプロデューサー、これに私が出られるんですか!?」
P「いや待て。出たいとは思っているが、まだ決まった訳じゃない」
翼「紗代子ちゃんのプロデューサーさ〜ん。私もこれ、出た〜い」
P「日本からの出場枠は、ひとつだけだ」
瑞希「なんと……しかしそうなると、まず765プロにも先輩にあたるみなさまが……」
琴葉「ううん。この要項を読むと、出場者は本年デビューしたアイドル・アーティストに限る……とあるわ」
P「そう。順当な人選でいけば、確かに他の娘の可能性もあるが、この規定に沿えば今年候補生になった娘から、選ぶことになる」
翼「私は〜?」
P「そしてその中でやはり、センター公演を経験している、即ち紗代子か真壁さんか、福田さんとなる」
翼「え〜!」
294 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:37:24.20 ID:ZRhpxi3E0
P「そして765プロの代表となっても、次に日本予選がある」
紗代子「そうでしたね。日本からの出場枠は1つなんですものね」
P「そう。誰がこのワールドフェスに出るのか、それを決める大会があるのさ。無論、そこで優勝すれば今年の新人アイドルで一番と認められることになるだろう」
紗代子「プロデューサーの言っていた、とりあえず日本のトップになりにいくか、って言うのはそういう意味だったんですね」
P「そうだ。さて、真壁さんと福田さん」
瑞希「はい。高山さん……出てください」
のり子「そうだね。約束の対決、果たしなよ」
紗代子「え?」
瑞希「私はまだまだ、実力をつけてから挑みます。今回は、高山さん、どうぞ」
のり子「アタシも、少なくとも単独ライブやってから。ね、これは遠慮じゃないよ。だから、約束……果たしなよ紗代子!」
紗代子「2人とも……ありがとう。うん! 私、優勝する!! 優勝して、約束を果たしに行くよ!!!」
翼「私は〜?」
295 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:39:15.43 ID:ZRhpxi3E0
静香「翼はまず、センター公演してからでしょ」
翼「え〜〜〜」
静香「私の次は、未来か翼にやって欲しいんだから」
翼「それは私も〜……え? 次の……センター静香ちゃんなの!?」
静香「そうよ。昨日、決まったの」
未来「ええーいいなあ」
静香「だから未来、翼、2人とも、がんばってね」
翼「あ〜ん。負けてられない。私もセンターやるー!」
未来「私も!」
紗代子「それて予選大会っていつあるんですか?」
P「12月29日だ。そして本フェスは新年の19日だ。結構な過密日程だが、やるしかない」
紗代子「12月29日……」
P「どうした?」
紗代子「私の、誕生日です」
296 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:39:51.27 ID:ZRhpxi3E0
P「そういえば、そうだったな。よし、最高の誕生日プレゼントになるよう、がんばるしかないな」
紗代子「そうですね。このバースデープレゼント、自分で掴み取ります!」
のり子「あははっ。自分の誕生日プレゼントを、自分で掴み取るっていうの、紗代子らしいなあ」
美奈子「うんうん。すっごく紗代子ちゃんらしいよね」
紗代子「え? へ、変ですか?」
のり子「そんなことないよ」
美奈子「そうだよ。紗代子ちゃんらしくていいなあ、ってことだよ」
小鳥「おはようございます」
P「おや、音無さん。どうされました?」
小鳥「あ、良かったプロデューサーさん。実はですね、765プロで管理している紗代子ちゃんの公式Twitterが、Shahの公式Twitterからフォローされまして」
297 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:40:17.83 ID:ZRhpxi3E0
P「え? ああ、そうだったな。2人はもう会ったんだったな」
小鳥「公式ですし、問題ないと思ってこちらからもフォローを返したらDMがきまして」
P「なんて言ってきたんです? 彼女は?」
小鳥「Facebookはやってないの? って」
のり子「どうなの、紗代子」
紗代子「やってません。けど、どうしたのかな」
P「おそらく話がしたいんだろう。アメリカじゃLINEはほとんど使われていなくて、代わりにFacebookのメッセンジャーが主流だ」
瑞希「そういうことですか……高山さん、今から登録しましょう。Facebook」
紗代子「うん! ええと……」
杏奈「紗代子さん……杏奈、手伝っても……いい……よ」
紗代子「ありがとう! 助かるよ、杏奈ちゃん」
298 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:43:17.27 ID:ZRhpxi3E0
杏奈「んと……それで、完了……だよ」
紗代子「うん。助かったよ、ありがとうね。えっと……登録したよ……と、わ! すぐ返事が来た。えっと、ビデオ通話?」
Shah「よーちゃん、久しぶり! 顔色は……いいわね?」
紗代子「うん。あの後のこと、心配してくれたんでしょ? もう、大丈夫だよ」
P「……俺は打ち合わせがある。じゃあな」
紗代子「あ、はい」
Shah「……あの人も元気そうね」
紗代子「あ、うん」
静香「瑞希さん、やっぱり紗代子さんのプロデューサーは、わざと席を外したんでしょうか」
瑞希「はい……かも知れません。高山さんと和解したとはいえ、Shahさんに対してはまだ、わだかまりがあるのかも……知れません」
Shah「さて、よーちゃんもワールドフェスの話は聞いた?」
紗代子「聞いたよ。私も出られるよう、がんばる」
Shah「待ってる。あの時の約束……果たせるよう、待ってるね」
紗代子「絶対に行くから、少しだけ待ってて!」
299 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:43:48.13 ID:ZRhpxi3E0
Shah「あ、ひとつだけ助言……というか警告。961プロに気をつけて」
紗代子「えっ!? どうして?」
Shah「何を考えているのかはわからないけど、あそこの社長がコーエンに接触してるみたいなの」
瑞希「Mr.コーエン……Shahさんのプロモーターで、AISの社長さんですね」
Shah「ええ。日本の予選大会で、何かしてくるかも」
紗代子「ありがとう、さーちゃん。でも、私は誰が何をしてきても負けないよ! あ、私とプロデューサーは、ね」
Shah「……2人にアメリカで会うの、楽しみにしてる。じゃあ……次はアメリカでね、よーちゃん」
紗代子「私も楽しみにしてる。ありがとう、さーちゃん!」
300 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:46:16.85 ID:ZRhpxi3E0
高木社長「では、我が765プロからはワールドフェス日本代表予選へ高山紗代子君を、代表として出場することに決定したわけだね」
P「はい。他の娘の担当プロデューサーからも了承を得ました」
高木社長「では改めて、君にひとつ聞きたい」
P「なんでしょうか?」
高木社長「君の復讐は、終わったのかね?」
P「……」
高木社長「その様子を見ると、まだのようだね」
P「教えてください、社長。復讐は、いつ終わるんですか? どうすれば終わるんですか? もう誰が何を言っても気にしません。Shahもそうです。でもまだ、俺の心は何かを求めてざわついているんです!」」
高木社長「私が、以前君に言ったことを覚えているかね?」
P「覚えています。俺の復讐も、いつか終わる。そして、そのいつかは突然にやってくる……でしたね」
高木社長「私としては、そのいつかも遠くないと思っているよ」
P「そしてその時、俺はプロデューサーとしての真価が問われるんですか……」
高木社長「そうだ。心に傷を負った……人生の敗北を味わった君が、そこから真の意味で抜け出す時がやがて来る」
P「そんな日が果たして、来るんでしょうか……」
301 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:48:03.39 ID:ZRhpxi3E0
『いつかは今日だった』
302 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:49:05.99 ID:ZRhpxi3E0
ワールドフェスを前日に控え、瑞希は紗代子に声をかける。
瑞希「高山さん。調子は……いかがですか?」
紗代子「あ、うん……大丈夫」
瑞希「私たちも、そろそろ……長いつき合いです」
紗代子「え? うん」
瑞希「今の高山さんが、強がっておられることぐらいは、わかります」
紗代子「……そっかー。瑞希ちゃんにはお見通しかー!」
瑞希「何か、心配事があるのですか?」
紗代子「プロデューサーのジグソーパズル、ね」
瑞希「?」
紗代子「まだ1ピース、嵌まってないの……」
瑞希「しかしあれは、1000ピースで完成するという類いのものではない……そうではありませんでしたか?」
紗代子「そうなんだけど、なんとなく……気になってて」
瑞希「高山さん、あまり心配しないでください……ふぁいとです。おー」
紗代子「うん……そうだね!」
303 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:51:59.63 ID:ZRhpxi3E0
そして大会当日。
紗代子「こんなに大勢の参加者がいるんですか!?」
P「確かに多いな。いや、確かに定員とかは書いてなかったし、応募資格は今年活動を開始したアイドルかアーティストということだけだからな」
会場である新国立劇場は、アイドルとその関係者達でごった返している。
そしてその中を掻き分けながら、瑞希とこのみがやって来る。
瑞希「大変です……実は、大変なお知らせが2つあるのですが、どちらから聞きたいですか?」
紗代子「じゃあ、大変な方から!」
瑞希「わかりました。当初は全員1回ずつのパフォーマンスで最高得点者が合格と予定されていましたが、勝ち抜き戦のトーナメント方式での開催となったそうです」
P「なんだと!? 最低でも4回はパフォーマンスをするってことになるのか……」
紗代子「それで? 大変な方のお知らせっていうのは?」
このみ「それが……こっちは大問題なのよね」
P「なんですか? いい予感はしませんが」
304 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:53:26.41 ID:ZRhpxi3E0
このみ「961プロから出場予定のアイドルもいたんだけど、出場を取り下げたのよ」
P「なんだって? 961プロにだって今年活動を開始した娘はいるのに……まさか、会場を爆破したりとかするつもりじゃないだろうな」
瑞希「なんでも、961プロは海外も既に視野に入れて活動をしており、今更日本予選などには出ない……と、黒井社長さんはおっしゃっておられたとか」
このみ「なんにしても、気味が悪いのよね。いつもやって来るけど、何もせず帰って行くのは」
確かにこのみの言う通り、結局黒井社長は紗代子のセンター公演も単独ライブもやっては来たが、なにもせず帰っている。
それが何を意味するのかがわからないだけに、765プロの面々としては嫌な予感がしている。
司会「それではワールドフェスティバル オブ ニューオーダーズ、日本予選を開催いたします! 本大会は予選とはいえ日本を代表する本年新人アイドルの大会……すなわち、1を決定する場でもあります。もちろん全国放送もされております」
司会者がテレビを意識したMCを始めた。
司会「本大会は脱落形式で進行、最終的に5回の勝ち抜きを果たした娘の優勝となります!」
P「5回もパフォーマンスをやるのか!? ライブやショーじゃないんだぞ!!」
通常のライブや舞台なら連続して5曲を歌うことも、ないわけではない。だがそれは、事前準備も十分でリハーサルもやった上でのことだ。
だがこれは、観客も入ったショーではあるが、コンテストでもあるのだ。
紗代子「プロデューサー、私は大丈夫です」
P「そうは言うがな……
305 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:54:02.69 ID:ZRhpxi3E0
言い掛けて、プロデューサーは口をつぐむ。
この娘はここまで、こうやって登ってきたのだ。
止めない歩み、あきらめない心、それがあってこその紗代子なのだ。
P「……5回パフォーマンスをやるなら、順序も大事だ。最初はスローテンポの曲でいこう」
紗代子「わかりました。じゃあ、プレシャスとかどうですか?」
P「いや、もう少しメッセージ性の強い曲にしよう。Half Moonは?」
紗代子「いいと思います。準備します」
控え室へと走る紗代子を見て、このみが表情を曇らせる。
このみ「そうとうキツい、戦いになりそうね」
P「申し訳ありませんが、豊川さんを呼んできていただけませんか?」
このみ「そうね。でも、いざという時、紗代子ちゃんをあなたは止められるの?」
P「紗代子の身体が一番です。無理なら止めさせます」
このみ「そう。安心したわ、それが聞けて。じゃあ風花ちゃんと代わるわね」
P「お願いします」
この期に及んで、復讐など気にするはずもない。自分でそう思いながらも、胸のざわつきはプロデューサーに残っていた。
P「決まってるじゃないか。紗代子が最優先だ……」
306 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:54:33.20 ID:ZRhpxi3E0
大会は進行していく。
紗代子の歌はやはり、観客や審査員の心を捉えた。
今や、劇場でも紗代子の歌声は名声を博しつつある。紗代子の歌目当てのお客さんもいるほどだ。
その歌を、表現豊かなダンスやフリが支えている。
彼女は疲弊しつつも、順調に勝ち進んだ。
風花「紗代子ちゃん、大丈夫? 少しでいいから座って休んで。ゼリー飲料も用意したから、摂って」
紗代子「あ、ありがとうございます……大丈夫です。あと1つ……あと1つ勝てば優勝です」
307 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:55:37.96 ID:ZRhpxi3E0
司会「ここで皆様に、ひとつお知らせがございます」
四回戦終了後、残っているアイドルは5人になったところで、唐突に登壇した司会者が言った。
司会「審査員の一人である、大河内先生ですが体調が優れないとのことでここで降板されます。なお、代わりの審査員には」
プロデューサーは愕然とした。
代わりの審査員とは……
司会「黒井崇男さんです。黒井さんはご存じの方もおられるかも知れませんが、あの961プロの社長であり、その目は確かであるということで、主催であるAISも審査員として間違いないと、認定をされております」
P「なんだと……そ、そんな馬鹿な!」
黒井「ウイ。緊急事態でもあり、主催者であるコーエン氏から是非にとのご指名で、不肖この黒井崇男、審査員を務めることになったよ。よろしく」
その瞬間、ようやくプロデューサーはわかった。
P「これか……これが黒井社長の狙いか……」
今まで765プロの動勢を探っていたのも、紗代子の様子をみていたのも、この大会に961プロからのエントリーがなかったのも……
風花「利害関係者ではなくなる為。なんですね?」
P「なんてことだ……これじゃあもう、紗代子は……」
紗代子「だ、大丈夫です。私、まだまだやれます!」
308 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:56:22.46 ID:ZRhpxi3E0
元気に答える紗代子だが、さすがに息があがっている。
一瞬、棄権しようかという思考がプロデューサーの脳裏をよぎる。
黒井社長が審査員である以上、紗代子はトータル得点で他のアイドルより10点は低く集計されることは間違いない。
そして今現在残っている娘は、全員が今年デビューしたアイドルの中でも、それこそトップの娘らだ。
1点の損失が命取りになりかねない。
つまり、紗代子が優勝できる可能性はほぼ0だ。
ここで身体を壊すような無理をすべきではないのではなかろうか……
P「紗代子、黒井社長が審査員になった以上、彼が紗代子に入れる点はおそらく0点だろう。だから……」
プロデューサーが棄権という言葉を口にしかけたその瞬間、それより早く、紗代子は意外な言葉を口にした。
紗代子「じゃあ、今まで以上の……最高の歌声で歌う必要がありますね!」
プロデューサーは、唖然として出るべき言葉がなかった。
いや、紗代子のあきらめない心と、熱意はよくわかっている。
だがそれにしても、それは現実を無視するものではないはずだ。
それなのに紗代子は、まだあきらめていない。まだやるというのだ。
P「わかっているのか、紗代子!? 他のアイドルより10点のハンデを負って戦うんだぞ。あの娘らとだ!!」
紗代子「なら、他の審査員が10点以上! 11点や12点をつけてくれるような歌を歌うだけです!!!」
どうかしている。
どう考えても普通じゃない。
しかし紗代子は、それでも輝く瞳で彼を見つめている。
309 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:57:56.07 ID:ZRhpxi3E0
P「なぜだ……」
紗代子「え?」
P「どうして紗代子は、そんなにも希望を持っていられるんだ……希望を捨てずにいられるんだ……どうして……」
『俺には出来なかった』その言葉を、プロデューサーは必死で飲み込む。
そうだ。だからこそ、今にして思えば馬鹿な手段で紗代子をプロデュースしようなどと思い上がっていたのだ。それでこの娘を傷つけたりもしながら。
自分の手でトップアイドルを生み出そう、そう固執していた自分はなんと醜かっただろう。
だがこの娘は、ただひたすらに純粋に、前を上だけを燃えるような想いで見つめている。
紗代子「プロデューサー」
一瞬、微笑むと、紗代子はステップを踏んだ。
疲れているはずの身体で、難易度の高いジャイブのステップを軽やかに踏んでみせた。
P「お、おい紗代子。無理するな」
310 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:58:27.49 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「プロデューサーに教わるまで、私はこんなステップどころか普通にダンスをすることもできませんでした」
P「? ああ」
紗代子「今は、歌えば歌声をほめられたりします。でも、発声の基本も、歌に気持ちをのせる方法も、プロデューサーが教えてくれました」
P「……そうだな」
紗代子「私はプロデューサーが最初に見込んだ通り、何もできませんでした。そんな透明な私に、アイドルに必要な事は全部プロデューサーが教えてくださいました」
P「……だからなんだ?」
紗代子「私は、プロデューサーが教えてくれたことしかできません。でも、私はまだ教わっていませんから」
P「……なにをだ?」
311 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 17:59:12.59 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「夢の、あきらめかたです」
312 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:00:43.90 ID:ZRhpxi3E0
P「!」
紗代子「私のプロデューサーは、将来を夢見たアイドルを引き抜かれても、周りからひどいことを言われても、それで心に傷を負って人前に出られなくなっても、夢をあきらめなかった人です」
P「俺は……」
紗代子「心に傷を負い、人前に出られなくてもプロデュースをする方法を模索し、相応しいアイドルを見つけ、そのアイドルをここまで育てた人です」
P「……俺は」
紗代子「担当アイドルを、トップアイドルにするという夢を絶対にあきらめない姿を、私は尊敬しています!」
彼には、わかった。
紗代子と和解しても消えなかった、心の中のもやもやとしたざわめきは、きれいさっぱりと消えてなくなっていた。
自分は誰かに認められたかった。肯定されたかった。
紗代子が自分を認めてくれた。
自分はトップアイドルを育てたかった。それが夢だった。
紗代子をトップアイドルにしよう。それが俺の夢だ。
彼にはわかった。
高木社長の言っていた、復習の終わる時……いつかがやってきたのだ。
いつかは今日だった!
313 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:01:10.31 ID:ZRhpxi3E0
P「わかった」
紗代子「え?」
P「今、わかった。俺は今、プロデューサーとしての真価を問われているんだ」
紗代子「プロデューサー?」
P「この窮地から、紗代子を助けてこそプロデューサーだ!」
314 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:09:07.00 ID:ZRhpxi3E0
P「豊川さん、紗代子をお願いします。できたら可能な限り疲労を取ってやって欲しいんですが」
風花「わかりました。水分補給と、マッサージをしてあげてます」
紗代子「すみません、風花さん」
P「お願いします」
プロデューサーはそう言うと、ディレクターの元に走る。
P「765プロの高山ですが、順番を最後にしていただけませんか。ちょっとトラブルがありまして。いや、単純なものなので、出演は続けられます」
開催ディレクターは渋い顔をしている。が、プロデューサーは引き下がらない。
P「大会規定には、速やかな進行の為に準備が遅れた者は出番を後回しにさせる……とあります。この履行を求めます。後回しにして進行してください」
本来この規定は、準備に手間取るなら出演者を待ったりせず進行を優先するという為のものだ。が、プロデューサーはそれを逆手に取った。
規定にあるならば、やむを得ない。ディレクターも渋々ではあるが、首を縦に振る。
そのままプロデューサーは、舞台裏のミキシングルームに走る。
P「ちょっと調整させてください」
当初から気になっていた、マイクのミキシングを、プロデューサーは紗代子に合わせたものに変える。
P「これで! この調整でお願いします!!」
プロデューサーの迫力に、ミキサールームのスタッフも頷く。
そして紗代子の元に帰ってきた彼は、風花のマッサージを受けている紗代子に話しかける。
315 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:10:09.77 ID:ZRhpxi3E0
P「そのまま聞いてくれ。衣装を変える。あの紫のシックドレスだ。歌は『明日……』だ」
紗代子「あの歌はまだ……」
P「練習中なのは、わかっている。だが、歌える。紗代子は歌えるんだ」
紗代子「え?」
P「あの歌は、紗代子をイメージして作った曲だ。センター公演の時を覚えているだろう? あの時を思い出せ。同じように、気持ちをのせて歌えばそれでいい。テクニックや歌唱は、もう既に紗代子の中にあるものが、自然についてきて紗代子を歌わせてくれる」
紗代子「そうなんですか……?」
P「ジグソーパズルの最後のピースが、それだ。今までのピースを意識せずに使う……今ここで、あのパズルを完成させよう」
紗代子「わかりました! そうか……そうだったんだ」
P「マイクはスタンドを使う」
紗代子「今まで使ったこと、ほとんどありませんけど」
P「その方が動く量が減る。その上で、ハンドアクションで表現を量・質共に補うんだ。それもできるはずだ」
紗代子「し、指示が多いですね」
P「当たり前だ。世界一になるため……だからな」
紗代子「! そうですね……わかりました。他にはなにかありますか?」
316 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:10:39.24 ID:ZRhpxi3E0
P「日本とアメリカ……ラスベガスとの時差、わかるか?」
紗代子「えっ?」
P「こっちはむこうより17時間早い。今が夜8時だからむこうは……」
紗代子「朝の5時ですか」
P「Shahはきっと起きている」
紗代子「そうですね……はい、立場が逆なら私だって夜中でも起きていると思います」
P「中継回線で、きっとこの会場を見ている」
紗代子「はい」
317 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:11:26.27 ID:ZRhpxi3E0
P「Shahに……あの子に聞かせてやるんだ。会ったとはいえ、そんなに話はできなかったんだろう?」
紗代子「わかりました。歌で聞かせてあげます、あの子に、私のアイドルとしての今までを」
P「それでいい。黒井社長以外の審査員に10点以上を出させる……奇蹟に挑戦だ」
紗代子「儚い奇蹟ですけど、私はかなうって信じてます!」
「高山紗代子さん、時間です。スタンバイ、お願いします」
P「わかりました」
紗代子「じゃあ……プロデューサー、行ってきます!」
P「次に会う時は、紗代子は今年の新人日本一だな」
紗代子「でも私はきっと、何も変わっていません。きっと今のまま、ここへ帰ってきます」
P「そうか……よし、行こう」
318 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:12:25.02 ID:ZRhpxi3E0
紗代子が舞台に上がる。
これまでにない、スタンドマイク。それでも緊張せずに、ファンの声援に応えながら彼女は前を見据えた。
いつもの、燃えるような瞳だ。
紗代子「あーーー〜〜〜♪♪♪」
前奏が始まるより早く、紗代子は絶唱する。
そう、あの時のように。
P「思い出せ、とは言ったが……」
いいかけてプロデューサーは苦笑する。
そうだった。この娘は、こうだった。
言われたことは素直に、時に頑迷に、そして着実に実行するんだった。
そして観客はやはり、紗代子の呼びかけの声に、応えるように魂をふるわせた。
その証拠に、一瞬ーー駆けつけたファンの間からすら音が消えた。
全員が、その全身全霊を紗代子に向けていた。
やがてーーわすれていたかのように、怒濤のような歓声が紗代子を包む。
319 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:12:56.59 ID:ZRhpxi3E0
紗代子「ここには誰も いない♪
ここには誰も こない♪
独りきりで 迎える朝♪
でも今日からは 違うの♪」
紗代子の歌に、会場は熱狂した。
みんなが紗代子を注目し、その歌を一瞬たりとも聞き逃すまいと耳を向けた。
紗代子「絶望と暮らした日 サヨナラ♪
弱くて孤独な私に バイバイ♪
弱虫 泣き虫 一番星♪
負けてばかりの私が 歌う♪」
紗代子の歌を聞き、知らずプロデューサーも涙が浮かぶ。
紗代子をイメージした曲と言ったがーーいや、事実その通りなのだが、紗代子が歌うとそれはまるで、自分のことのように彼には感じられた。
もう復讐もない、敗者もいない。あるのは、世界一を目指そうとするアイドルと、それを支える男だけだった。
320 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:15:55.63 ID:ZRhpxi3E0
パフォーマンスが終わった瞬間、紗代子は倒れ込みそうになるのを必死でこらえた。伏せた顔は披露で苦悶に歪み、息は完全にあがっている。
だが顔を上げた刹那、彼女は完璧な笑顔で観客に応え、手を振った。
激情の迸るようなステージたった。
観客もそれに対し、惜しみない拍手と声援をおくった。
客席から、笑顔や歓声と賞賛の言葉が紗代子に飛んでくる。
瑞希「すごい……」
P「完璧だ。紗代子は、全部出し切った。そして、問題は……」
司会者は、やや畏れるような目で黒井社長をちらりと見た。
黒井社長は、業界の実力者だ。しかも必要とあらばどんな手段でもとってくる。有名司会者とはいえ、黒井社長の勘気を被ればひとたまりもなく明日からの職を失うだろう。
その黒井社長は、腕を組んだまま微動だにしない。そして険しい表情からは、意図が見てとれない。
司会「えー……そ、それでは採点です。高山紗代子さんのパフォーマンス、審査員のみなさん得点をお願いいたします!」
321 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/12/29(日) 18:16:22.72 ID:ZRhpxi3E0
十人の審査員は、それぞれ得点のボタンを押す。
それぞれの席にその点数が表示され、司会者はそれを読み上げていく。
司会「これはすごい! 10点、10点、10点、10点、10点、10点、10点、10点、10点……」
司会者はそこで言葉を失った。
黒井社長と目が合う。
司会「黒井……社長?」
765プロに対する黒井社長の敵意はよく知っている。確執も承知だ。
司会者は不思議そうに黒井社長を再度見る。
黒井「なんだね? なにが言いたいのかね」
司会「これは……この点数は、間違いないんですか?」
322 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:17:45.84 ID:ZRhpxi3E0
黒井「君はこの私を誰だと思っているんだい? この私に限り、間違いなどあるはずがない。私の採点はこの通りだ」
やはり間違いはないのだ。いやーーここで黒井社長がこう言っているのだ。これ以上話を延ばせば、自分が危うい。
司会「は、はいっ! それでは黒井審査員の10点を加え、合計は……100点! ま、満点の最高得点です!! この時点で優勝は、765プロ所属の高山紗代子さんに決定です!!!」
紗代子「プロデューサー? 私……私?」
P「や、やったぞ。紗代子……満点だ! 優勝だ!!」
紗代子「プロデューサー!!!」
抱き合う2人。やがて促され、紗代子はステージに登壇する。
目に涙をいっぱいい浮かべながらも、清々しい笑顔で観客に一礼する。
323 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:18:19.53 ID:ZRhpxi3E0
司会「最優秀新人大賞、そしてワールドフェスへの参加、共に手中に収められたわけですが、今のお気持ちは」
紗代子「まず、いつも応援してくださっているファンのみなさんにお礼を言わせてください。本当にありがとうございます!」
司会「大変な熱戦でしたね」
紗代子「私1人では、優勝どころかここまで来ることもてできなかったと思います。私をここまで導いてくれたのは、家族や同じ765プロの友達でありライバルでもあるみんなのお陰です」
司会「ワールドフェスへの意気込みは」
紗代子「去年の今頃、私はまだアイドルに憧れているだけの、どこにでもいる普通の高校生でした。それが今、こうして新人大賞をいただきました。私の周りの、私を知る人すべてが「まさか」という言葉を言っていると思います」
ここで紗代子は舞台袖のプロデューサーを見た。
紗代子「でも1人だけ、プロデューサーだけは最初から私にトップアイドルになれると言ってくれました。そのプロデューサーと世界に行きます。目指すのは……優勝です!」
司会「本年の最優秀新人大賞の、高山紗代子さんからワールドフェスの夕所宣言が飛び出しました!」
満座の拍手と喝采を浴び、大会は終わった。
ステージから降りると、駆けつけていた765プロの同僚・先輩アイドルが一斉に紗代子に駆け寄り祝福の言葉を浴びせる。
324 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:19:36.74 ID:ZRhpxi3E0
アメリカではその様子を、Shahが……あの子が見ていた。
その表情は微笑みながらも、強い瞳で紗代子を見ていた。
Shah「負けないよ。絶対に負けない。だから……待ってるよ。私たちで素敵なステージを作ろうね。私と、よーちゃんと……それから、あの人もね」
325 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:20:03.42 ID:ZRhpxi3E0
『敗者復活のうた』
326 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:21:48.16 ID:ZRhpxi3E0
華々しく終了したワールドフェス日本予選。その舞台裏で、善澤記者は黒井社長に話しかける。
善澤「黒井」
黒井社長「なんだね? 昔なじみだからといって、気安く呼ぶんじゃないよ」
善澤「なぜわざわざ、コーエンに働きかけてまで審査員になったんだい?」
黒井社長「……なんのことか、わからないね」
善澤「思えば君は、ずっと高山紗代子君というアイドルを見ていた。そう、765プロのアイドル候補生になってから、ずっとだ。センター公演も、単独ライブも来ていたが、それ以前からずっと気にかけていたようだね」
黒井社長「わからないと言ってるだろう!」
善澤「君はずっと見続けていて、あの高山紗代子君というアイドルに興味以上の好意をもったのではないかね?」
黒井社長「……馬鹿な邪推はやめていただきたいね」
善澤「例の記事……握りつぶしたのも、君だろう?」
黒井社長「なぜ私が、そんなことをする必要があるのだ」
善澤「……高木も馬鹿じゃない」
黒井社長「なんだって?」
327 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:25:32.91 ID:ZRhpxi3E0
善澤「ハッキングのことは、とうに気づいていたそうだよ」
黒井社長「信じられないねえ。まあ、なんのことかはわからないけれども」
善澤「ライバルの動勢に目を光らせるのは当然だ……お互いにね、と高木は言っていた」
黒井社長「なんだって!? ……くそう、まあいい。君も余計な勘ぐりなどしないことだ。さっきも言ったように、私は私のやりたいこと……自分の仕事を正しくこなしただけだ」
善澤「うむ。では僕も、自分の仕事をすることにするよ」
黒井社長「なんだって?」
善澤「高山紗代子君と、そのプロデューサーの出会いと栄光への軌跡を独占取材記事として出版しようと思ってね」
黒井社長「ほう。それは……い、いや! も、物好きだね君も。まあ売れるかどうかはわからないが、出来たら持って来るといい」
善澤「タイトルは『敗者復活のうた』にしようと思っているんだ」
黒井社長「……別に、まあ……それでいいんじゃないかね。うむ……うむ、うむ!」
328 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:28:29.76 ID:ZRhpxi3E0
P「ワールドフェス優勝とは、大きくでたな」
765プロ劇場でのささやかな祝勝会の後、紗代子を自宅まで送り届けるという名目のもと、2人は車に乗る。
紗代子「夢が大きいと、努力もしがいがありますし、絶対に叶えたいですから!」
P「言っておくが、俺は夢のあきらめかたを知らんぞ。夢を持ったなら、かなえるしかないからな」
紗代子「はい! これからも、よろしくお願いします!!」
P「……改めて紗代子、優勝おめでとう」
紗代子「全部、プロデューサーのお陰です」
P「それから、ありがとう」
紗代子「え? いいえ、こちらこそありがとうございました」
329 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:30:57.76 ID:ZRhpxi3E0
P「紗代子がいなければ、俺は立ち直れなかった。だから感謝している。紗代子が俺を、プロデューサーに戻してくれたんだ」
紗代子「私が!? とんでもありません。私こそ、プロデューサーにアイドルに……トップアイドルにしてもらいました」
P「要するに……俺と紗代子は、連壁の関係ってことだ。2人で一人前だが、2人なら最強の一人前だってことかな」
紗代子「はい! これからも……よろしくお願いします!」
いつしか雪が降り始めていた。
混雑する道を車は、高山家まで安全運転でゆっくり、長い時間をかけて2人は語り合いながら帰って行った。
330 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:32:46.48 ID:ZRhpxi3E0
〜2週間後〜
紗代子「じゃあみんな、行ってくるよ! 世界一のアイドルになりに!!」
瑞希「はい……テレビ中継で、応援しています……そして、信じています。お2人の勝利を……」
志保「紗代子さん」
紗代子「志保ちゃん。なにかいいことあったんでしょ?」
志保「はい……テレビのお仕事、決まりました、プロデューサーが見つけてきてくれたんです……」
紗代子「そっか……良かったね」
志保「はい。あの……がんばってきてください。私も、必ず追いつくようがんばりますから!」
紗代子「ありがとう、志保ちゃん。志保ちゃんのプロデューサーと一緒にがんばってね!!」
その後も、765プロの面々が次々と激励を送るその横で、高木社長とプロデューサーは握手を交わしていた。
331 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:34:14.79 ID:ZRhpxi3E0
高木社長「復讐は終わった。復讐は、過去からの清算なのだから、もう君たちは過去に捕らわれてなどいない。これからは、未来に向かって羽ばたく姿を楽しみにしているよ」
P「色々とご迷惑と、心配をおかけしました。行ってきます。最高のアイドルとプロデューサーになりに」
高木社長「うむ。吉報を待っているよ」
紗代子「プロデューサー、さあ行きましょう!」
P「おいおい。フライトまでまだ時間があるぞ」
紗代子「わかっていますけど……待ちきれないんです。あの子が、待ってるんです!」
P「……そうだな。行くか、世界一になるために」
332 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:41:50.82 ID:ZRhpxi3E0
高山紗代子とそのプロデューサーが渡米したのと相前後して、人気絶頂となった高山紗代子の特集誌が刊行され、たちまち売り切れとなった。特集誌のタイトルは『敗者復活のうた』。
綿密に取材され、また関係者からの証言をふんだんに盛り込んだ本となっていた。
その本は、紗代子の候補生時代から現在までのふんだんの写真と共に、こう最後が結ばれていた。
333 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:42:58.97 ID:ZRhpxi3E0
『少女はかつて、敗者だった。何も持たず、誰にも認められず、誰にも選ばれず、夢だけが支えだった』
『男もかつて、敗者だった。夢破れ、嘲笑を受け、人目を気にし、それでも夢を捨てなかった』
https://i.imgur.com/tfctpcc.jpg
334 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:44:33.67 ID:ZRhpxi3E0
『2人の敗者は、出会い、手を取り合った。少女はアイドルとなり、男はプロデューサーだった』
『少女は敗者であったが故に敗北を知った。男も敗者であるが故に敗北を知っていた』
https://i.imgur.com/m9kxQLk.jpg
335 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:45:49.93 ID:ZRhpxi3E0
『敗北を知る2人は、敗者の気持ちがわかった。その気持ちを、歌い上げた』
『彼女が歌えば、聞いた人の弱っていた魂も震え、前へと進む勇気が湧いてきた。それは敗者へ復活を促すエールとなって人々に広がっていく。』
https://i.imgur.com/dNaXZY3.jpg
336 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:46:46.60 ID:ZRhpxi3E0
『男はそれを支える。彼自身もそうであったから』
『もう敗者はいない』
https://i.imgur.com/8MaExkv.jpg
337 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:48:38.71 ID:ZRhpxi3E0
『今日も少女は歌う。敗北からの復活を。自らの辿った苦難と、夢見た未来を』
『これからも彼女は歌い続ける。敗者復活のうたを』
Fin.
338 :
◆VHvaOH2b6w
[saga]:2019/12/29(日) 18:50:49.66 ID:ZRhpxi3E0
以上で終わりです。おつき合いいただきまして、ありがとうございます。
高山紗代子、誕生日おめでとう!
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/12/29(日) 18:54:21.68 ID:ZiHzSSLv0
乙!
読みごたえあって楽しめたぜ!
340 :
◆NdBxVzEDf6
[sage]:2019/12/29(日) 18:54:47.73 ID:7TP9XkZL0
紗代子の誕生日にこのSSを読めてよかった、乙です
>>3
真壁瑞希(17) Da/Fa
http://i.imgur.com/T5y34Mg.png
http://i.imgur.com/8S36pLF.jpg
>>9
音無小鳥(2X) Ex
http://i.imgur.com/hFRWAa5.jpg
http://i.imgur.com/rJCkhta.jpg
>>15
青羽美咲(20) Ex
http://i.imgur.com/N78dpoq.png
>>36
最上静香(14) Vo/Fa
http://i.imgur.com/TKoEetC.jpg
http://i.imgur.com/Bz6miZw.jpg
矢吹可奈(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/kQHQF7j.jpg
http://i.imgur.com/kB9imcc.png
佐竹美奈子(18) Da/Pr
http://i.imgur.com/3jWPs9K.jpg
http://i.imgur.com/ZYK7Gek.png
福田のり子(18) Da/Pr
http://i.imgur.com/NmGswZv.png
http://i.imgur.com/6T0ZmJ4.jpg
>>37
北沢志保(14) Vi/Fa
http://i.imgur.com/ZhetECD.png
http://i.imgur.com/gVLQiiV.png
>>38
伊吹翼(14) Vi/An
http://i.imgur.com/Qm7jkFE.jpg
http://i.imgur.com/JUAw9ZX.jpg
>>39
周防桃子(11) Vi/Fa
http://i.imgur.com/s0804VA.jpg
http://i.imgur.com/BXJEqF4.jpg
中谷育(10) Vi/Pr
http://i.imgur.com/hLqdrjz.png
http://i.imgur.com/8NRFxHY.jpg
>>44
春日未来(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/aQyOApp.jpg
http://i.imgur.com/iuy368T.jpg
>>45
ロコ(15) Vi/Fa
http://i.imgur.com/zbhE4XZ.png
http://i.imgur.com/6vr5piz.jpg
七尾百合子(15) Vi/Pr
http://i.imgur.com/IUJ2Sr7.png
http://i.imgur.com/kQEEf3G.jpg
永吉昴(15) Da/Fa
http://i.imgur.com/hy1aMi8.png
http://i.imgur.com/vkU9hQM.png
>>48
田中琴葉(18) Vo/Pr
http://i.imgur.com/wCLVKQw.png
http://i.imgur.com/EUkPWYq.png
望月杏奈(14) Vi/An
http://i.imgur.com/olHxThh.jpg
http://i.imgur.com/yfmgm0L.png
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/12/29(日) 18:55:10.75 ID:EMtXQeCHO
おつ!
いいSSに出会えた!
342 :
◆NdBxVzEDf6
[sage]:2019/12/29(日) 18:55:21.66 ID:7TP9XkZL0
>>50
エミリー(13) Da/Pr
http://i.imgur.com/vp3VNfy.png
http://i.imgur.com/J79yJ2G.jpg
豊川風花(22) Vi/An
http://i.imgur.com/61iE4NY.jpg
http://i.imgur.com/F8LeGBr.png
>>62
二階堂千鶴(21) Vi/Fa
http://i.imgur.com/b4ZIKIL.jpg
http://i.imgur.com/wHN7zmx.jpg
>>79
三浦あずさ(21) Vo/An
http://i.imgur.com/QXOWM2N.jpg
http://i.imgur.com/lQzJiBd.jpg
萩原雪歩(17) Vi/Pr
http://i.imgur.com/Lg4Bp6y.jpg
http://i.imgur.com/iHIb3Hg.jpg
双海真美(13) Vi/An
http://i.imgur.com/49OQlWm.jpg
http://i.imgur.com/xiw237e.jpg
如月千早(16) Vo/Fa
htts://i.imgur.com/7ViyqyT.png
http://i.imgur.com/fRks4gt.png
水瀬伊織(15) Vo/Fa
http://i.imgur.com/Avg4Gn9.jpg
http://i.imgur.com/iB7Bev1.jpg
天海春香(17) Vo/Pr
http://i.imgur.com/Zqinpkx.jpg
http://i.imgur.com/iWL3wyB.jpg
>>80
高槻やよい(14) Da/An
http://i.imgur.com/9M3mluh.jpg
http://i.imgur.com/pa87Eqk.jpg
>>81
菊地真(17) Da/Pr
http://i.imgur.com/5fzVEHO.jpg
http://i.imgur.com/5ESJljZ.jpg
>>103
篠宮可憐(16) Vi/An
http://i.imgur.com/DPH0oeL.png
http://i.imgur.com/T4feSIe.png
大神環(12) Da/An
http://i.imgur.com/YdWmluz.png
http://i.imgur.com/CaSWHcQ.png
>>104
北上麗花(20) Da/An
http://i.imgur.com/CUHLGYY.jpg
http://i.imgur.com/tOz74dv.jpg
>>114
馬場このみ(24) Da/An
http://i.imgur.com/F9ukoPA.png
http://i.imgur.com/RXWGcYk.jpg
>>115
松田亜利沙(16) Vo/Pr
http://i.imgur.com/IfsfgHL.jpg
http://i.imgur.com/7tt6OQk.png
>>127
野々原茜(16) Da/An
http://i.imgur.com/q2MQX7n.png
http://i.imgur.com/dpRLfWW.jpg
>>134
秋月律子(19) Vi/Fa
http://i.imgur.com/Rc5OXgS.jpg
http://i.imgur.com/FUliF1H.jpg
>>224
高坂海美(16) Da/Pr
http://i.imgur.com/V0WHHVd.png
http://i.imgur.com/7fjDCne.jpg
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/12/29(日) 20:45:41.94 ID:SgcMsurxO
乙!
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/12/29(日) 21:02:33.76 ID:emt29PMEo
長いけど良かった
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