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タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part7
- 1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/11(月) 17:14:19.32 ID:AYXxqwWno
- このスレは、誰かが書いたタイトルからSSを書くスレです。
(例:タイトル「○○○○」)
誰がタイトルを投下しても、SSを書いてもOKです。
たった一文のあらすじ程度のものでも、数レスにわたる短編SSのようなものでも、何でもお書きください。書ける内容に制限はありません。
ただし、板のローカルルールに則って、R-18内容を含むものを書くことはタイトル・SS共にご遠慮ください。
他の人とタイトルが被ってしまっても大丈夫です。気軽に書き込みましょう。
前スレ↓
タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part6
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522054323/
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1573460059
- 2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/11(月) 17:16:37.04 ID:AYXxqwWno
- タイトル「冬が来る」
- 3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/11(月) 18:13:57.33 ID:Gcj/I5BqO
- タイトル「佐賀のやばいばあちゃん」
- 4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/12(火) 23:58:35.17 ID:vd3nhIjJ0
- 前スレ>>979
タイトル「魔王の正体」
勇者「ついに追い詰めたぞ!魔王!」
魔王「魔王か……問おう勇者よ」
勇者「命乞いなら魔王になる前にするんだったな!」ジャキン
魔王「そう気が短いと、何も見えぬであろう。聞こえぬであろう。世界の破滅が」
ガキィィン!
勇者「させないためにここに来た!俺はこの世界の平和を築く!」
キィィィィィン!
魔王「平和……何をもって平和だ?様々な国を持ち、領土を奪い合い戦争を起こし、資源を枯渇させ、また奪う……」
勇者「戦争など過去の出来事!今はお前から世界を取り戻すためにみんなで結託しているんだ!」
カァァァァン!
魔王「絆?協力?笑止。所詮は体のいい言葉遊び……善意に見せる悪意の隠れ蓑よ」
魔王「ならばどうだ?魔王はいなくなった。そして人々は平和に協力し合うか?言葉も文化も違う国々が手を取り合うか?」
勇者「俺がその架け橋になるんだぁぁぁ!」
ガッキィィィィィィィィィィィィン!
魔王「勇者よ、魔王城に万里眼という万里先の事象を見る球がある。人間の悪意を止めたくば、それで見よ」
勇者「何を言っているんだお前は!」
魔王「勇者よ、魔王城に魔導扇という魔物どもを操る扇がある。もし戦争を目論む国があるならそれで力を奪え」
勇者「き、貴様……」
魔王「勇者よ、ここは人間界から離れた果ての果ての魔王城だ。人間が領土拡大(せんそう)するために邪魔な魔王(ゆうしゃ)となるならここで世界を敵にしろ」
勇者「な……まさか……」
魔王「勇者(まおう)よ、恐怖を知らない勇ましい者よ。世界の破滅の音がとまったぞ」
勇者「お前は一体……何者なんだ!」
魔王「余は、魔王。恐怖(せかい)を知った意気地なしだ」
終わり
- 5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/13(水) 13:48:36.33 ID:er4bI++Do
- 乙
- 6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/13(水) 17:33:01.24 ID:w3CEEhMlO
- タイトル「家庭の味付け格差」
- 7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 13:45:32.53 ID:glILGpZgO
- タイトル「家庭的仮定の過程」
- 8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/16(土) 14:22:10.63 ID:glILGpZgO
- タイトル「とぎとぎ」
- 9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/20(水) 19:40:23.85 ID:eb177/1TO
- タイトル「THE TSUNDOKU」
- 10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/20(水) 20:21:41.72 ID:eb177/1TO
- タイトル「二番目のファーストスリー」
- 11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/22(金) 17:23:48.18 ID:8CbPKO32O
- 本を買って満足してしまう現象、あれはなんだろうか。
どうしても欲しかったはずなのに?安かったからまとめ買っただけ?
流行りでみんな持っているから?コレクターとして?
その行為はいつしか"買い専"や"積読"と称された。
ーここ日本に、世界一の積読が存在した。
日本電波塔に及ばず通信鉄塔を凌いだ高さまで天へ頁を綴っていた。
過去この塔が建った時、メディアや研究家たちがこぞって調べたものだ。
研究はなおもつづいている様子だが膨大な図書を前に困難を極めているようである。
わたしは論文のために積読の塔を徹底的に調べ上げ、ここに記した。
幅182mm,奥行128mmと所謂B6判、単行本のサイズで高さは240m。
驚いたことに本の重複はないがこの全ては一人の著者が書いていることに気がついた。
わたしは全く同じ本を図書館で借り、ネットで買い読み更けた……
全てを読み終え、一抹の感動を繰り返し、そして論文にまとめた。
冊数12,310冊、225万頁。字数はなんと10億字を超えた。
わたしは知ってしまった。
この本の最古のもので42年前……この本を作り上げるためには寝る間を惜しみ、書いたとしても秒間百幾十字以上を綴らねばならないことに……
作者はもしかしたら、人智を超えた存在なのかもしれない……
教授はわたしの書き上げた論文を読み終え、
「ふむ……実に、いや実に興味深い内容だ。僕もあの積読塔には興味を持っていたのでね」
とおっしゃった。ありがとうございます。
教授「だが君、卒論を6ヶ月で書き上げたようだが、休みもせず秒間8ページも見たのかね?」
わたしは人智を超えた存在なのかもしれない。
- 12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/22(金) 17:26:16.76 ID:8CbPKO32O
- ↑忘れてた
>>9
タイトル 「THE TSUNDOKU」
- 13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/24(日) 20:59:20.81 ID:D4qhafoi0
- タイトル「陣地を越えた存在」
- 14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/24(日) 21:00:08.83 ID:D4qhafoi0
- タイトル「パッシング・ザ・センターライン」
- 15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/24(日) 21:18:43.09 ID:4F4d95KnO
- タイトル「罪喰イ」
- 16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/26(火) 17:44:26.41 ID:ByGv2Gg4O
- タイトル「KITASAN BLACK」
- 17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/28(木) 06:34:36.74 ID:A/oIEN+O0
- タイトル「オリキャラがオリキャラに召喚されました」
- 18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/28(木) 17:38:02.75 ID:5G8O4kAxO
- タイトル「FINAL ANSWER」
- 19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/28(木) 17:38:49.75 ID:5G8O4kAxO
- タイトル「時を超えた川島」
- 20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/28(木) 23:05:50.47 ID:Bl/80ASb0
- >>2「冬が来る」
お月様が真っ青に照っている夜、僕は点々と灯る街灯の下を歩いていた。数匹の蛾がその周りを飛んで、残像を残しては消えて移動する影が足許にぱらぱらと落ちる。
目の前は幅の広い坂道である。梶井基次郎が滑り落ちるサラリーマンを見たような坂だ。凍りついた日には雪ダルマになった子供が下ってくるかもしれない。赤いニット帽をかぶった童顔がのぞいているのは実に面白い想像だった。あとは塀から飛び降りて雪に埋まる三毛猫とか。
笑いを抑えながら下っていくと、右側の灰色のブロック塀からニョッキリと中折れ帽をかぶった紳士がすり抜けてきた。
「オヤ、遂にコンクリートを透過できる時代になったか」面白くなって僕は彼に会いに向かった。紳士は明治時代の男爵みたいに立派なカイゼル髭だった。
彼は僕を見て中折れ帽を押し上げた。つぶらな緑色の瞳である。
「ああ、ああ、君は私を見つけられたのだな」と言って、右手の杖をカツンとアスファルトの上に鳴らせた。彼の晦渋さに満ちたしわくちゃの顔が妙に笑いを誘うので、派手な失笑が漏れて僕は顔を伏せた。その先には頑丈なオオバコが座っている。
私を見たのは初めてかね、と老紳士が訊いても、僕は笑ったままであった。紳士は目すら合わなかったにもかかわらず顎に手をやって満足そうに二、三度頷き、
「そうとも、そうとも。私を二度見ることができるものは、この世に二人といないのだからね……」
ふっふっふっと、不敵さの欠けた滑稽な笑いをして、
「じゃあそういうことで、後のことは頼んだぞ。今年は君が役割を担うのだ」彼はぴょーん、ぴょーんと坂を下り、また塀の中に消えていった。
人影が消えた坂道に凍えるような風が吹いた。撃ち落とされたように蛾がよろよろと去っていき、その影を夜闇の中へ溶かした。
日が昇った頃に窓を、まだ化粧いらずの愛らしさを保っている少女が開け、腕を抱えて縮こまって震え、
「寒っ、いきなり寒くなったなあ」と、白い息を外に吐き出した。「まだ秋っぽいことやりきってないのに」
これから坂道に霜が降り始める季節だ。そして路面は凍り、獲物を飲み込むようないい滑りをした罠に様変わりするのだ。
この道を通る人間は誰もがそのようなイメージを持って日々共生している。
- 21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/28(木) 23:31:26.56 ID:Bl/80ASb0
- >>18「FINAL ANSWER」
二回目の見直しを済ませて、自信のない一問を睨みつける。これが間違っているという確証も、これが間違っていないという自認もない。
答えを変えても変えなくても頭を抱えて後悔しそうである。
「なあ、どうすればいいかな」と鉛筆に話しかける。
「俺に訊かれても困るよ、考える脳がないんだから。尻の消しゴムを使いきるたぁ、大したもんだね」
「迷ったんなら変えちまえ、変えちまえ! どうせお前ごときが一個正解を上乗せしたからって、誰も影響を受けやしないんだよ! そんだから、俺を消費しろい。俺の存在理由を満たしてしまえ、オタンチン!」消しゴムが怒鳴る。
「相も変わらずガラの悪いやっちゃのう」と筆箱。「へなちょこフグリの軟体動物が」
「貴様、偉そうなこと言いやがって、ただじゃ置かねえぞ! 叩き潰してやる!」
「できるものならやってみたまえよ、むしろ君が潰されて、飲み込まれるんだから」
「ねえ、どうすれば……」
「やかましいね、たかが持ち主のくせに」異口同音だった。「君のテストなんか、こっちに取っちゃどうだっていいんだ」
冷酷な態度で僕を突き放すと、侃々諤々の騒々しく喧しい激論が机の上で繰り広げられた。
結局答えは何に確定させればいいんだ? 最終的な判断は僕には下しかねるぞ。
そこに試験官がやってきて僕を見下ろしてきた。威圧感が背中から滲んできている。
「どうかしましたか。僕何もやってませんよ」
いいや、と机の上を指さし、「お前が持ち主なら、こいつらを黙らせろ」消しゴムと筆箱がルール無用の取っ組み合いをしている。
「これは僕の責任ですか」
「そりゃそうだ、お前の持ち物だからな」他のクラスメイトも気になっていたのか、八十の瞳が僕の机を注視している。
「しかしながらですね、彼らは自分たちの自由意思で闘争を始めたわけです。しかもそれは彼らの実存にかかわっている。これは非常に重大な問題です。どうして僕にそれが邪魔できるのでしょう? 僕ができることは、彼らの意志に従うだけです」
反論を行うことで、僕はこの実存問題に自覚的になることができた。彼らが導くこの大問題の答えを妨げられないようにしなくてはならないのだ。
「そうか」と試験官は言い、筆箱たちを一手に机の上から薙いだ! 呆然とした面持ちで筆箱たちは宙を舞い、トマトを磨り潰したような声を立てて動かなくなった。
「そういうことならば、俺はお前を排除しなければならん」試験官は毅然とした態度で言った。
「それならば僕も彼らのために抵抗しなくてはなりません」
「やかましい」それが聞こえると同時に試験官の右手が僕の頭に乗せられるとそれはだんだん下がっていき同時に僕も縦に縮んでいった。
座高が半分くらいになると脚に反対の手を持っていき僕を三つ折りにして、そのあとは小枝を折る要領で掌にすべてが収まるように縮め、ぎゅっと強く握った。
それを開くとクシャクシャの茶色っぽい塊になり、試験官はそれを教室に備えつけられたごみ箱に捨てた。
「さあ済んだぞ、みんな安心してくれ」
それを聞いた生徒たちはあはは、ととても平和な笑いを振りまいた。
- 22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/28(木) 23:34:56.11 ID:Bl/80ASb0
- >>20 >>21
すみません色々忘れました……
- 23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/29(金) 00:19:24.36 ID:kHPj3Otx0
- 前スレ>>963「青い家」
美しく真っ赤な鯉が手に入ったので、旧友の青山氏にプレゼントしようと彼の家を訪れた。
そこはなんというか、言葉に表しがたいほどの青で埋め尽くされていた。いったい何があったのだろうと思いつつ開け放しの門扉を抜けると、突然池から真っ青な河童が飛び上がって、
「やあやあここをどこと心得る、かの青色大臣青山氏の邸宅であるぞ」
そんなに彼は偉くなっていたのかと思い、「ならばこれで錦の御旗代わりに」
「そんなものが許されるか! 青色大臣に赤い鯉など、ふざけるんじゃない」歯ぎしりの音がここまで聞こえてきて、尋常でない憤怒のようだ。
「こうしてやる、えい!」と河童が腕を振ると鯉は舞い上がって膨張して立派な鯉幟になって隣家の庭に雄々しくたなびき、私は凝縮して変形して固い肌が生み出され、アメリカ式の青いポストとなって青山氏の邸宅の目の前に据えつけられた。
五歳くらいの一枚のはがきを持った女の子がそれを見つけて不思議そうな目で二、三度つつくと、ちがーう! と泣きながら走り去った。
前スレ>>964「チキンレース」
「もう逃げたりはしないな」と髪の逆立った青年が言い、「もちろん、この期に及んで逃げたりしないさ」と金髪の青年は言った。
「じゃあ取り決め通り、俺たちはあの崖に向かって走る。それは俺たちがブレーキを引くのではなく、メーターに進む距離を設定して、よりギリギリで止まることができた方を勝ちとする。正確な距離はわからない。一キロ以上あるからかなり難しい。が、それでもどれだけ攻めることができるか、試してやろうじゃないか!」
「あたぼうよ!」
「設定できたか?」「ああ、完璧だ。何キロくらいにした?」「バカ、言うわけないだろう。それも秘密にしておくのが醍醐味ってもんだ」「それもそうだな」「よし、じゃあ行くぞ! アイマスクをして暗闇の恐怖にも耐えるんだ!」
彼らは出発した。砂埃を上げて、崖へと驀進していく。果たしてどちらが勝つのだろう。いずれにせよ、終われば彼らはがっちりと、漢の握手を交わすだろう。
ところで、彼らが進む距離を入力して設定したメーター、その片隅には「Mile」と書かれていたという。
- 24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/29(金) 09:45:14.54 ID:kHPj3Otx0
- 前スレ>>966「初めての夜」
「お前、初めてじゃないだろ」少年は少女の胴に両腕を回したまま言った。
「どうして?」少女は誘うような甘い声で訊いた。「どこが違うっていうの」
「いやに手馴れているんだよ、どうして初めて同士がこんなにうまく実行できるんだ。反応も喜ばせようとしてるのが自然な形で織り込まれているし」
「だったら君もそうじゃない? スムーズに本命に入りすぎ。準備もすごく上手だった」
「何を、俺のことまで疑うか。今浮上した疑惑はお前のことだ。俺じゃない」
「あれ? 答えたくない理由でもあるのかな? んふふ、君も初めてだから緊張する、って言ってたよね。あっれれー、おかしいなあ」
ケタケタと笑いながら少女は言った。先ほどと同じ態勢のまま少年は言い返せずに並行しながら彼女を睥睨し、少女は流し目で彼の強い律動を誘っている。
「うるさいなあ、アバズレ」
「強がっちゃ弱く見えるゾ、チェリーボーイ」
小馬鹿にしたように彼女は莞爾した。
この一瞬を切り取った写真は、平穏な日常の温かい一コマになるはずだったろう。
しかし間の悪いことに、彼女はあえて事実を外したこと、つまり彼の主張を認める旨を口にした。
つまりは彼をからかって自身の下に据えたのである。
「いい加減にしろ、もともとお前のは伸びて緩かったんだ、おかしいと思ったんだよ!」
彼は激しく罵って彼女を撃った。その後彼女の核に重大な一撃を加えたという。
>>976「さよならエデン」
腹が減った、一枚の穴だらけの襤褸を着た二人の男女が荒漠な草原の真ん中に一本の木を見つけた。そこには真っ赤な実が二つなっている。
太陽のような、狂気的に鮮やかな赤だ。
「果物があるな」
「あるね、それもすごくおいしそうに熟れている」
「どうする? 腹が減ってしょうがないんだ、俺たちは。あれを食べなきゃまたひもじい思いをして歩かなきゃいけなくなる」
「でもあの変な天の声はこう言ってた。気になる赤い実は食べてはならぬ。それはお前たちを縛ってしまう悪魔の実だ。お前たちには永続する罰を受けてもらわねばならなくなる」
「だがそういったところでだね、食べなきゃ死んでしまうんだよ。あれを手に取るしかもう生きる術は」
彼女は考える仕草をした。右腋に抱えられた左腕に、破れた襤褸からこぼれた乳房が乗る。外性器は両者ともにまだ残る襤褸が隠してくれていた。
「罰は怖いね。でも、この感情はどういったことだろう……」
ぐう、と鳴ったのに二人が気づいたのはそれが響いてから数秒経ってからだった。
「何だ今のは」
「訊かれても困る。私だってわかんない」
二人して見つめあい、首をひねった。
さあ、どうするか、その話題に戻った時には、二人の両手にはその身の残骸の芯が握られていた。
「あれ、いつの間に」
「おかしいな、手に取った覚えもないよね」
「どうして食べてしまったのだろう」
「気づいたけど、空腹が紛れてるよ。厭なゴロゴロ具合がなくなってる」
「ああ、そうだな。しかしこの格好はひどいな。誘っているようなもんじゃないか」
「そうしてもいいのよ」
敏感なところに触手を伸ばしあって堪能すると、彼らには翌日への憂鬱が肩に積もった。
- 25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 08:15:06.95 ID:xI2+AMIC0
- >>20-24
怒涛のタイトル回収、素晴らしい
この調子で他のも頼む
- 26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/11/30(土) 18:36:33.55 ID:/MFukC3o0
- >>981「悪魔のささやき」
「はずむから、ね?」と、ちょび髭を生やしたモーニングの男が僕の袖を引っ張って言った。
あからさまな怪しさが人の形をとったような男だ。ペタンと張りついたいやに滑らかで細い癖っ毛、ヒマワリの種のような面長な顔、いずれも奇妙な装いを補強してやまない。足元の真っ黒なビジネスバッグは膨れていて、ファスナーがミシミシと軋んでいそうだった。
「ただこれを運んでくれればいいんだ。それさえ承諾してくれればいくらでも払う。もちろん僕が出せる範囲で、だけども」
「帰ります」そんな怪しい稼業に手を出してたまるか。僕には僕の事情がある。
「ちょっと待ってよ、こんなおいしい話はないよ。どこかにこれを運んで渡してくれってわけでもないんだしさ」
「じゃあどっかに置いておけってことですか? それでも嫌ですよ、リスクがある」
男はイトミミズのように薄い唇を曲げ、
「そんなもんじゃ、ないんだけどなあ」と幼げにつぶやいた。見た目との乖離が、おぞましさを増幅させる。
「誰に渡すのでも、どこに持っていくとかでもないんだよ。ただ持って行ってくれさえすればいいんだ」
「それというのは、つまり?」僕は彼に尋ねた。
「なーんもひねりはないんだ、ただこれをもってどこかに行ってくれればいい。飽きたらその辺にほっぽっといてもらって構わないよ」
「捨てちゃって構わないんですか? その中身は大事なものなのでは」
「いや、大丈夫だよ。中見るかい?」
返事を聞く前に彼は足元の茶色い革のスーツケースを引っ張り出し、錠を開けて僕に示した。
「ほらね、カラッポでしょう。君の手でも確かめてごらん」探ると、確かに空である。上げ底の仕掛けもない。
「いくらです?」
「おっ、やってくれるか。ありがたいねえ。これだけ弾んでやる! 大奮発だ」彼はひと月生活できるほどの金を僕に渡した。
裏通りを抜けて一時間ほど歩くとそこには谷があり、大きな鉄筋の橋が架かっている。街は比較的田舎だったのだ。
その上から下をのぞき込むと川が一本流れていて、そこには枝葉が左右からしなりつつ覆いかぶさっていて、川原はほとんど見えなくなっている。
もうここらでいいかな、と思ってスーツケースを放り投げようとした時、後ろから「おじさん何してるの」という幼げな声がした。
振り向くと五、六歳の赤いスカートの幼女が立っていて、その胸にはクマのぬいぐるみが抱かれている。
「おじさん何してるの」ともう一度幼女は言った。
「何してると思う?」
「それ捨てようとしてる」
「そうだね、それの何が悪いのかな。君にそれを咎める力があるのかな」
「あるよ」
「へえ、大層な子だね。でもこっちは……」
そこで幼女は遮って、
「子どもだと思って舐めちゃだめだよ」
すると彼女はクマをしっかり、より強くぎゅっと抱き、一瞬のうちに僕の視界は真っ暗くなった。
どうしたと思ってもがこうとするが、壁のようなものに阻まれてもがくにもがけない。しかもそれは柔らかく、押すと変形するものの破れる気配はない。まったく徒労感を抱かせる様式の壁だった。
「バイバイ」
最後にそう聞こえた気がした。
>>985「光なき世界」
背後で高く鋭い音がしたのでそちらを見ると、涼しげな白いワンピースを着た、長い黒髪の女が立っていた。
「由美子?」由美子というのは半年前に死んだ妻である。そこに立つ女は彼女にそっくりだ。
「ええ、やっと会えた」と女は言った。その足元には写真立てが落ちていて、ガラスの破片が飛び散っている。
「久しぶりだなあ、ずいぶん痩せちゃって」懐かしさにつられて立ち上がり、スリッパを擦りながら手を上げた。彼女はガラスに気を付けるように、と忠告してくれたので、ありがとうと僕は言った。
「私、寂しかったの。友達もいなくて、たった一人で……」両目の尻に光るものが流れて落ち、床に着く前に気化していった。月の光が青く窓に差して、どこか遠い北欧の世界に誘おうとしているようでもあった。
「寂しかったな、辛かったろうに」僕は彼女を抱きしめた。少し冷たかったが、確かに彼女の感覚が僕の元に帰ってきたのだと、閉じた目の奥に涙が落ちた。
「もう離さない」
「ありがとう」と妻は言った。
妻の眦を舐める。かつて折り重なって寝るとき、しばしばこうすることがあったのだ。
「ありがとう」改めて妻は言い、
「これからはずっと一緒ね」
「もちろんだ」僕は返事をした。
身を焦がすような冷たさが僕らの間を駆け巡り、不愛想に座り込む土に囲まれて僕らは眠った。
>>25 ありがとうございます。感想か論評か何かを投じていただけると作者は喜びます。
- 27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/01(日) 13:40:26.66 ID:DxizHrOCO
- >>26
すまん、読んだんだが読解力がないのか…
解説頼む
- 28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/02(月) 00:01:53.29 ID:y0h5eY140
- 前スレ>>995「私が選択しなかった未来」
随分と体が軽いな、と思ってホップ、ステップ、ジャンプして前方宙返りひねりをしてみた。すべて成功。
久々に気分のいい日だな! こんな日は一度たりともなかったのだ。楽しくってしょうがない。
さてそのために高笑いを繰り返した。その時に自然と顎があがって空を見上げることになるのだが、どうしたことか青空に鱗雲が、沸騰しているチーズのように漂っている。それにいやに距離が近い。
怪訝に思って足元をのぞくと、そこにあったのは中空であって、遥か下方には細い路地とやや太い町道が交わる丁字路に数台の車と野次馬が集まっている。
その中心には、ぐったりと体を横たえた青年がいた。
その時に初めて、いつもと違う道を通り、大急ぎで路地を駆け回っていたのを思い出したのである。
死体の前には数枚の、ビニールでパッケージされたプラスチック製の薄い掌くらいの大きさの箱が散らばっていた。
>>26 実をいうと僕もどういうことだかよくわかっていないんです。
何せすべてタイトルからの思いつきで書いているので、ハッキリとした示唆とか特定の暗喩とか盛り込むことができる書き方をしていないのです。
基本ナンセンスなものと思ってくだされば。
- 29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/02(月) 07:31:46.48 ID:cIYQrYUPO
- >>27
わかってないんかい!
まあ作風は好きだからどんどん投下していって欲しい
- 30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/03(火) 22:54:44.83 ID:OhJeNQiF0
- >>15「罪喰イ」
拘置所の壁は鼠色で取りつく島もなく、一つしかない窓には鉄格子がはまり薄ぼんやりとした光しか入ってこない。
送検されてからずいぶん経つが、この広い部屋にただ一人ぶち込まれ、退屈しのぎできるものもなくただ格子の隙間を流れる雲ばかり見ている。
鼠がたまに出入りをして哀れむような眼で見つめてくるだけでもいくらか違ったかもしれない。その時には彼を同じ空間に生きる仲間として、一種の連帯感を抱いて溌溂としていたかもしれないのだ。
だが実際にはそこには何もあらず、閑散としたコンクリートが広がっているだけである。
看守がやってきて扉の前に立ち止まりったかと思うとカチリと音がして、
「立て。出ろ。そして付いてこい」
僕はそれに従うことにした。
「これからどこへ行くんです」と尋ねたのはこれで六回目だ。
しかしいずれにしても看守は反応を示さず、ひたすらに見た目の変わらない殺風景な廊下を下り続けた。僕は不安になった。
「本当に僕をどこに連れて行くんです。取り調べですか? しかしそれならばそういうことだと仰って然るべきでしょう。それなのに、なぜ具体的な予定を伝えてくれないのですか。これはとても奇妙なことだ。厳密には僕はまだ罪のない、真っ新な無辜の民であるはず、だが何も知らされず、不安なまま曳かれて行かれるだけの道理はどこに? 答えてください!」
看守はそれを無視してしばらく行くと、いくらか妥協したように息を吐いて肩の力を抜いた。そこはまだ殺風景な廊下で、終わりも見えてこないところである。彼は手首に巻いた時計を見て、そして、
「お前にはもう用はないんだよ」と言った。
体は微動だにせず、背後に立っている僕には彼が筋肉を動かして言葉を発したことも信じられない。それくらい恐ろしく平板で、感情のない声だった。
「用がないって何です」
「すぐ終わらせる」彼はしゅる、とごく自然に、川底から小石を掬い取るみたいに顔を剥がした。
いや、取ったという方が正確かもしれない。それを見て僕は彼は果たしてスカーフをしていただろうかと錯覚したくらいなのである。
彼は嘯くように、
「いくら推定無罪だといってもな、世間は誰も信じちゃくれないんだよ。今回はお前がやったのは確かだけどな。そうだろ?」
「……」
「たまに本当に怪しいのもあるけどな、大概は正しい判断が下される。有罪にできなきゃお前はとっくに保釈されているだろう」
黙って続きを待つ。
「そこでなんだけどな、俺はある特権を得ている。無作為の有罪が決定的な拘留者に関する一切が俺の掌の上にあるわけだ。だからな」
看守は振り向いた。
「グッド・バイ」
後にはべたついた臭い液体だけが残り、それは駆けつけた清掃員たちが手際よく洗浄して元通りにされ、塩化ビニルの床がぬめるように光っている。
>>29 ありがとうございます。現実においてもかなりの励みになります。
- 31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/04(水) 08:48:10.09 ID:yhRLDRhQo
- タイトル「Secret・Symphony」
- 32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/04(水) 17:41:11.86 ID:o+9kTGFq0
- タイトル「太陽の国」
- 33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/04(水) 20:59:14.89 ID:AWMF1Xr+0
- タイトル「夜の女王」
- 34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/04(水) 21:34:38.22 ID:8AEDY05tO
- タイトル「花咲ハナは離れ離れ」
- 35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/05(木) 18:27:17.15 ID:1bw/We8nO
- タイトル「ようこそ異世界引っ越しサービスセンターへ!」
- 36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/05(木) 18:57:57.04 ID:Rjnyhw4Z0
- >>32 「太陽の国」
未明の国土は明かりも消えてしんとしている。厳冬の盆地にあるこの国では、夜間屋外に生命の名残というのはさっぱり見当たらない。東端の山脈を吹き下ろす風が時々細々と寒さに耐えている枝を揺らす音、それがたった一つの息づいたざわめきである。
昼間までこんこんと降り続いた雪はやみ、半年前には青々としたイネ科の植物が栽培されていた田は真っ白い絨毯をかぶり、急な傾斜の家々の屋根には掌の全長と同じくらいの厚さの真っ新な冠を戴き、それらが青い暗闇に沈んで光っていた。冬の奥地というのは、往々にして静かに黙っているものである。
山の麓には古風な集落があり、クラシカルな佇まいである。
雨が多く林業も盛んなこの国では多くの伝統的な家屋は木で作られていて、蒸し暑い夏には湿気を吸い、凍える冬には熱の伝導を邪魔していくらか寒さを和らげた。都市部の建物はコンクリートや石造りのものも増えたが、それでもなお一般家屋の多くは木造なことから、この地では木が建材として適していると世間で広く知られているのだ。
その雪をかぶった村落の家同士の間には広く空いたスペースがあった。
そこは田畑と農道や公道があって、それらがゆとりある空間設計を実現している。開けていて昼間には清々しい晴天が頭上一面に横たわり、小石を空に投げ込んで同心円状の波紋が見れるんじゃないかと錯覚するほどだ。その二つの漠洋とした風景の連携が、この村をいっそう際立って象徴的な姿にしていた。
都市部の家とは異なり、立派な敷地とそれを取り囲む塀がいささかの格調を与えている。どっしりとした軒、威圧的な面構えの門、そして塀の奥にそびえる新木のような大木。どの家も、同じように立派な風格を湛えていた。
都市部では急激な人口増加により、すし詰めの生活を余儀なくされていた。ますます道は狭く、一棟が占める土地面積も小さくなり、それまで横に大きくなっていた建物は上に伸びた。道幅も制限されていったせいか、路側帯も引かれなくなっていたのだ。
都市の中心部は針山のように立ち並ぶ高層ビルがその発展具合を誇示していた。それらはガラス張りで、その内側をビジネスマンが慌ただしく駆け回るのはまるで透明な棚に陳列されたミニカーを眺めるのにも似て慈愛心を掻き立てた。しかし活気あふれるオフィスも、深夜になり抜け殻となって凍えている。
ビルの鏡面には蒼く澄んだ月がぽっかりと浮かぶ。
日の出が近づくと、東の山脈の背後にクリーム色の雲がたなびく。それが見え始めるころに、全土の主婦たちが起き出して一日の始まりを、子どもや夫の弁当の準備で実感するのだ。
ああ、また今日が始まってしまった、寒い寒い、冬真っ盛りの手先足先が疲れる一日が――
あかぎれた手を撫でて温めながら、彼女らはそう考えながらも家族のために作るのである。
あとでハンドクリームをたっぷり塗ってやろう。
なくなればあの甲斐性なしに買わせればいい。
それぐらい許されなければならないだろう。
これだけ日々働いているのだから。
山脈から太陽の頭がのぞくと、その光は瞬く間に国中を駆け巡る。
外れの農村から、地方の小都市から、中枢の大都市まで、一挙に薄黄色の朝日が伸び、氷のような夜から蜂蜜のような朝への大転換を遂げるのだ。
その時、白い雪を撫でる最初の朝風が、東の空を一緒に吹いてまだ闇に沈んでいる雪の影をさらっていく。
木陰も蝶の鱗粉のような爽やかな光にあてられて目を覚ますと、いよいよ子供も夫も瞬く目をこすって起き上がる。
その頃には雪は冷徹さを失って柔らかい表情に変わっている。太陽は山脈を脱し、全身を青空に晒して煌々と輝いている。
- 37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/05(木) 21:46:03.88 ID:ZF4RotQG0
- タイトル「ズシレンジャーvsハヤママン」
- 38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/06(金) 13:50:25.04 ID:IUnwcezb0
- >>36
乙
前スレの未回収タイトルもどんどん回収してほしい
- 39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/12(木) 19:24:33.75 ID:f8f+Urp3O
- タイトル「絶対弐度」
- 40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/12(木) 21:30:28.35 ID:taO4zPG/0
- タイトル「私の中の悪魔」
- 41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/16(月) 17:11:14.85 ID:/GAyqRDsO
- タイトル「勇者の亡骸」
- 42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/17(火) 08:17:34.97 ID:iZJLJ/J60
- タイトル「サイキックブンドド」
- 43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/19(木) 00:52:02.29 ID:W5GmuUD60
- タイトル「やはり君の青春ラブコメはまちがっている。」
- 44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/19(木) 19:26:22.74 ID:f9omSh35o
- タイトル「オーソドックスな日常を送る君たちへ」
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