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【モバマス】凛「ああ、あこがれのポケモンマスターに」(続)

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628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2020/02/15(土) 23:45:33.57 ID:1rn9grZzO
://youtu.be/AWvoIdC9n4w
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2020/02/18(火) 23:03:10.07 ID:TFyi2aSRO
加藤純一(うんこちゃん) Youtubelive

ポケセン封鎖『プラチナ編』第9夜

『真・ポケモンセンター本当に終了のお知らせ
ver.プラチナ涙の最終回』
(18:05 配信開始)

https://youtu.be/ftcpZ-KR0cY
630 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:36:06.88 ID:52h3i4KQ0
投下します
631 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:36:37.04 ID:52h3i4KQ0
凛「ムクホーク、お疲れ様」

凛「……チャーレム!」ポン

チャーレム「チャー!」

凛「しねんのずつき!」

チャーレム「チャー!」コォォォ

未央「速い……!」

チャーレム「チャー!」ドガァ
632 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:37:03.23 ID:52h3i4KQ0
カポエラー「カポー……!」

恵磨『カポエラー、チャーレムの攻撃を受け止め続けますが――』

瑞樹『さっきムクホークが吹かせたおいかぜでさらにスピードとパワーが上がっているわ』

瑞樹『これは耐えられないでしょうね』

カポエラー「カポ……」

未央「……まだまだ!」

未央「起死回生のカウンター!!」
633 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:37:29.29 ID:52h3i4KQ0
カポエラー「カポ……」

カポエラー「カポォォォ!!」

ドゴォッ

凛「!?」

美玲「お互いに吹っ飛ばされた!」

チャーレム「チャー……!」

チャーレム「チャー」バタンキュー

カポエラー「カポー」バタンキュー
634 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:38:06.32 ID:52h3i4KQ0
卯月「これも相討ち……!」

文香「これでお互いに、無傷で残っているのはエースのポケモンのみになりましたね」

凛(……)

凛(……残すはジュカインだけ)

凛(でもゲッコウガもドリュウズも相性が悪い……)

凛(やっぱり挑発に乗らずにサザンドラを残しておくべきだったかな)

凛(……いや)

凛(もしかしたら心のどこかで、私はこの対面になるのを望んでいたのかもしれない)
635 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:38:44.40 ID:52h3i4KQ0
未央「はあ……もう最後の一匹かぁ!」

未央「早いような短いような……やっぱりしぶりんは強いね!」

未央「……ねえしぶりん、私ね」

凛「?」

未央「モバPからキモリをもらったこととか、3人で一歩目を踏み出したこととか、思い返したらほんと昨日みたいでさ」

未央「あれから辛いこともたくさんあったけど、今はこうやって夢にまで見たポケモンリーグでしぶりんとバトルできてる」

未央「だからあの時、旅に出てよかったって思えるんだ」
636 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:39:16.94 ID:52h3i4KQ0
未央「旅をしていく中で、私が勝ったら喜んでくれる人も、応援してくれる人も、大好きなポケモンもたくさん増えたから!」

凛「……そうだね」

未央「それに……」

未央「昨日の夜にね、ジュカインの毛繕いをしてた時にさ」

未央「ジュカインが話しかけてくれた気がしたんだ。『チャンピオンになりたい』って。そう聞こえた気がする」

未央「それで私も、改めてジュカインの気持ちに応えなきゃなってなった。チャンピオンを目指しているのは、私だけじゃないから」

未央「だから……しぶりん」
637 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:39:47.43 ID:52h3i4KQ0
未央「チャンピオンに挑むのはこのちゃんみおだよ!!」ポン

ジュカイン「……」ズッ

ジュカイン「ジュカァァァァ!!」

未央「お待たせ、ジュカイン」

未央「さあ、全力で弾けるよ!」

凛「未央……」
638 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:40:42.15 ID:52h3i4KQ0
凛「私も、三人で一緒に旅に出てよかった」

凛「未央とも卯月とも、同じ舞台に立ててよかった。モバPもきっと喜んでくれるんじゃないかな」

凛「……ここまで来たんだ。チャンピオンに挑むのは……私だよ」

凛「ゲッコウガ!」ポン

ゲッコウガ「……」スッ

ゲッコウガ「ゲコ」キッ

恵磨『バトルは大詰め! ここで遂に両者のエース、ゲッコウガとジュカインが激突だぁぁーー!!』
639 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:41:18.64 ID:52h3i4KQ0
瑞樹『わかるわ。あの二匹も、あの二人と同じ町から旅に出たのね』

瑞樹『そして、何回戦ってきたのかはわからないけど、こうして最高峰の舞台であるポケモンリーグで再会している』

瑞樹『否が応にも熱くなってしまう場面ね』

凛(ドリュウズは完全に消耗しきっている。これが最後の一匹……!)

未央「ゲッコウガ……ここで戦えるのを待っていたよ」

凛「全力で行くよ、未央!」

未央「望むところだー!!」
640 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:41:45.52 ID:52h3i4KQ0
凛「ゲッコウガ!」

ゲッコウガ「ゲコ!」

凛「みずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」シュバババ

未央「ジュカイン、リーフブレード!」

ジュカイン「ジュカァ!!」

スパッ
641 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:42:14.02 ID:52h3i4KQ0
茜「おお……みずしゅりけんが真っ二つに!」

未央「そのまま突っ込むよ!」

ジュカイン「ジュカ!」ダッ

文香「ジュカイン、今までで一番気合いが入っていますね」

美玲「あのリーフブレード、喰らったらタダじゃ済まなそうだな……」

晶葉「そうだな。あれをうまく躱していかないと――」
642 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:42:41.91 ID:52h3i4KQ0
凛「受けて立つ! つばめがえし!」

美玲「ええ!?」

ゲッコウガ「ゲコォ!」

ガキンッ ガキンッ

バチィッ!!

ゲッコウガ「ゲコ……!」ズザァ

ジュカイン「ジュカ……!」ズザァ
643 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:43:08.40 ID:52h3i4KQ0
未央「つばめがえし……ジュカインへの対策で覚えてきたんだね」

凛「うん。真っ向勝負がしたかったからね」

未央「うんうん! こういうところで引かないのがしぶりんらしいよね!」

未央「本気のしぶりんと戦えて私、嬉しいよ」

凛(本気……)

凛(もしこの勝負、私がメガシンカを使っていたら――)

凛(なんて考えてる暇はなさそうだ)
644 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:43:40.04 ID:52h3i4KQ0
ジュカイン「ジュカ!!」バッ

凛「みずしゅりけんを撃ちながら後退!」

ゲッコウガ「ゲコ!」シュバババ

恵磨『ゲッコウガ、相手を牽制しながら距離を取ります!』

ジュカイン「ジュカ!」バシィ

凛「よし、今だ! つばめがえし!」

ゲッコウガ「ゲコ!」ズバッ
645 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:44:08.16 ID:52h3i4KQ0
恵磨『ゲッコウガのアッパーカットが決まったー!!』

未央「ジュカイン! ドラゴンクロー!」

ジュカイン「ジュカ……」

ジュカイン「ジュカ!!」ズバッ

ゲッコウガ「ゲコ……!」

恵磨『ジュカインもお返しの一撃!!』

恵磨『息もつかぬ攻防戦! 両者、一歩も譲りません!!』

ワァァァァァ
646 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:44:49.45 ID:52h3i4KQ0
卯月「すごい……!」

茜「まるで自分が戦っているようで……身体が熱くなります!!」

文香「それに穴だらけのフィールドであれほど素早く、的確に動けるなんて……」

晶葉「相性はジュカインの方が有利だが」

晶葉「もうここまで来たらそんなものは関係ないな」

卯月「未央ちゃん……凛ちゃん……」
647 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:45:15.27 ID:52h3i4KQ0
凛(ここまでほぼ互角……)

凛(でもジュカインはまだ大技を持っている)

凛(ハードプラント……あれを乗り越えないと)

凛(とにかく今は攻めるのみ!)

凛「ゲッコウガ、かげぶんしん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」ババババ

ジュカイン「ジュカ……?」

未央「落ち着いて、ジュカイン!」
648 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:45:43.82 ID:52h3i4KQ0
未央「全員まとめて相手するよ! アイアンテール!」

ジュカイン「ジュカ!!」シャキーン

バッ

凛「……!」

恵磨『ジュカイン、跳び上がりました!』

恵磨『高速回転しながらアイアンテールを分身にぶつけていきます!!』

ジュカイン「ジュカァ!!」グルグルグルグル
649 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:46:12.30 ID:52h3i4KQ0
フッ フッ フッ

幸子「分身が徐々に消えて……」

フッ

晶葉「……いない!?」

凛「ゲッコウガ!」

ゲッコウガ「ゲコ!」

未央「後ろ……!」

未央「そんなの想定済みだよ!」
650 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:46:40.61 ID:52h3i4KQ0
ジュカイン「ジュカ!」バシィ

フッ

未央「え!?」

凛「本体は……下だ!」

凛「つばめがえし!!」

ゲッコウガ「ゲコォ!!」ズバッ

ジュカイン「ジュカ……!」

凛「よし!」
651 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:47:07.87 ID:52h3i4KQ0
未央「ジュカイン!」

未央「跳び上がったことが裏目に……」

未央「……いや、それを利用して!」

未央「ジュカイン、突っ込むよ!」

ジュカイン「ジュカ!」グワッ

志希「おお、重力で急降下してきた!」

未央「リーフブレード!!」
652 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:47:35.38 ID:52h3i4KQ0
ジュカイン「ジュカァ!!」ズバッ

ゲッコウガ「ガァッ……!」

凛「くっ!」

未央「もう一発!」

凛「つばめがえし!」

ジュカイン「ジュカ!!」

ゲッコウガ「ゲコ!!」
653 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:48:07.40 ID:52h3i4KQ0
ズバッ

ジュカイン「ジュカ……!」

ズバッ

ゲッコウガ「ゲコ……!」

ワァァァァァ

恵磨『お互いに技がヒット! 両者、ここまでほぼ互角に渡り合っています!!』

瑞樹『……』
654 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:48:46.14 ID:52h3i4KQ0
恵磨『み、瑞樹さん?』

瑞樹『……』

美玲「解説の人が喋らなくなった……」

美玲「……ってあれ?」

晶葉「……」

志希「……」

文香「……」

卯月「……」

美玲(み、みんな黙りこんぢまった)

美玲(そうか……本当にすごいバトルって、こんなことになるんだな)
655 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:49:18.98 ID:52h3i4KQ0
未央「しぶりん!」

未央「そろそろ決着をつけよう……!」

凛「うん……!」

未央「この一撃に……私たちの全部を乗せる!!」

未央「ジュカイン! ハードプラント!!」

ジュカイン「ジュカ……」

ジュカイン「ジュカァァァァ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴ
656 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:49:52.63 ID:52h3i4KQ0
恵磨『ジュカインの究極技が放たれたー!!』

恵磨『地面から伸びる巨大なツタがゲッコウガを襲います!!』

凛「ハードプラント……!」

凛(この時を待っていた……)

凛(この作戦、きっと一か八か――)

凛(いや、違う! 絶対に成功させる!)

凛(ゲッコウガを信じるんだ!!)
657 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:50:23.60 ID:52h3i4KQ0
凛「ゲッコウガ! ツタに飛び乗るよ!」

ゲッコウガ「ゲコ!」バッ

ズォォ

ゲッコウガ「ゲコ」ヒュン

タッ

ゲッコウガ「ゲコ!」

ダダダダダ
658 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:51:05.25 ID:52h3i4KQ0
恵磨『な、なんと! ゲッコウガ、俊敏な動きでハードプラントの上を走っている!?』

未央「そんな……!?」

恵磨『ツタの合間を掻い潜っていく……まるで忍者だ!』

ダダダ

バッ

ジュカイン「……!?」

凛(視界に捉えた……!)

凛「よし……今だ!」
659 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:51:43.34 ID:52h3i4KQ0
凛「ゲッコウガ、ハイドロカノン!!」

ゲッコウガ「ゲコ!」ゴポッ

ゲッコウガ「ゲコォォォ!!」

ドドドドドドドド

ジュカイン「ジュカ……!!」

恵磨『今度はゲッコウガの究極技が炸裂だーーー!!』

晶葉「決まった……か!?」
660 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:52:19.71 ID:52h3i4KQ0
未央「……!」

ジュカイン「ジュカ……」

ヨロッ

未央「ジュカイン……」


未央「負けないで!! ジュカイン!!」


ジュカイン「……!!」


グッ


ダァン!!
661 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:53:02.08 ID:52h3i4KQ0
恵磨『――!? なんとジュカイン、踏みとどまったぁ!?』

ゲッコウガ「ゲコ!?」

ジュカイン「ジュカァァァァァァ!!!」

ズバッ

凛「……!」

フッ

ズドォォォォォン

凛「……! ゲッコウガ!!」
662 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:53:47.09 ID:52h3i4KQ0
恵磨『ジュ……ジュカイン、よろめきながらも踏ん張って』

恵磨『ゲッコウガを吹っ飛ばしました!!』

晶葉「な……あの一撃を受けて倒れないなんて……」

こずえ「……」

こずえ「ジュカイン……お姉ちゃんが悲しむの、悲しい……って」

晶葉「まさか……トレーナーのために最後の力を振り絞ったのか……?」

シュゥゥゥゥゥ
663 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:54:19.19 ID:52h3i4KQ0
ゲッコウガ「……」

ジュカイン「……」

ヨロッ

恵磨『2体が一斉に倒れた……!?』

恵磨『……いや!』

ジュカイン「ジュカァ……!」
664 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:54:55.07 ID:52h3i4KQ0
ジュカイン「……!」

ドサッ

ゲッコウガ「ゲコ……」ガッ

グググ

ゲッコウガ「ゲコォォォォォ……!!」

瑞樹『先に倒れたのは……ジュカインのようね』

恵磨『ジュカイン、戦闘不能!』

恵磨『決勝戦、勝者は……』

恵磨『凛選手ぅぅぅぅ!!!』
665 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:55:39.27 ID:52h3i4KQ0
ドワァァァァァァァ


ゲッコウガ「ゲコ……」フラッ

凛「……!」

バッ

凛「ゲッコウガ……!」

ゲッコウガ「ゲコ……」

凛「ギリギリまで……堪えてくれたんだね」

凛「ありがとう。……ありがとう」ギュッ

ゲッコウガ「ゲコー」
666 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:56:07.69 ID:52h3i4KQ0
未央「……」

未央「ジュカイン……お疲れ様」

未央「……」

未央「……」グッ

未央「……ううん、泣かない」

未央「しぶりん!」

凛「未央……」
667 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:56:48.14 ID:52h3i4KQ0
未央「しぶりんの全力、バッチリ受け止めたよ」

未央「はー……これでまたしぶりんに勝ち越されちゃった!」

凛「そんなことないよ……どっちが勝ってもおかしくなかった」

未央「えへへ、ありがとう」

未央「正直ね、すごく悔しい。でも、しぶりんに負けたら、何かスッキリしちゃった!」

未央「あ、諦めたわけじゃないからね! ゆっくり休んで落ち着いたら、また来年のリーグに向けて特訓するつもりだし」

未央「次こそはぜーったいに負けないからね!」

凛「私こそ……負けないよ」
668 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:57:15.97 ID:52h3i4KQ0
未央「明日の試合、ちゃんと見てるからね」

未央「……頑張って!」

凛「うん……ありがとう」

凛「本当にいい勝負だった。ここで未央と戦えてよかったよ」

グッ

パチパチパチ
669 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:58:10.67 ID:52h3i4KQ0
美玲「……はぁ」

輝子「見てるこっちまで疲れた……」

乃々「もりくぼも……疲れた……」

幸子「まさに手に汗握る名勝負、でしたね」

晶葉「ああ。こんなにいいバトルを見たのはいつぶりだろうか」

志希「バトルだけじゃない、二人の熱い友情……ポケモンとトレーナーの絆……いやあー、たまにはこういうのもいいもんだねぇ」
670 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:58:43.04 ID:52h3i4KQ0
文香「本当に……素晴らしい一戦でした」

こずえ「お姉ちゃんたち……どっちもすごかった……」

茜「うっうっ……私、思わず涙が……」グスッ

卯月「あはは……茜ちゃんったら大袈裟だよ」

卯月(でも……大袈裟じゃないのかも)

卯月(凛ちゃん、未央ちゃん、ありがとう)

卯月(二人のバトルを見てたら、私……本当にやりたいことが見つかった気がする)
671 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:59:13.31 ID:52h3i4KQ0


その夜

モバP「……」

コンコン

モバP「未央、いるか?」

未央「あっ、モバP……」

モバP「ちょっといいかな?」

未央「うん……大丈夫だよ」
672 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 21:59:56.32 ID:52h3i4KQ0
モバP「そうか、じゃ失礼するよ」

ガチャ

モバP「お疲れ様……本当に、いい勝負だった」

モバP「最後の最後までどっちが勝ってもおかしくない試合だった」

モバP「凛も未央も卯月も、見違えるぐらい成長しててさ」

モバP「なんか勝手に感動しちゃったよ。ははは」

未央「モバP……」
673 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 22:00:31.81 ID:52h3i4KQ0
未央「私ね。一人じゃここまで強くなれなかった」

未央「私を信じてくれるポケモンがいた。高め合える仲間がいた」

未央「それに……ずっと応援し続けてくれた人がいた」

モバP「……」

未央「モバP。私たちを旅に送り出してくれてありがとう」

未央「そして……私たちをここまで連れてきてくれて、本当にありがとう」
674 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 22:01:09.20 ID:52h3i4KQ0
未央「ねえ。……最後のわがまま、聞いてもらっていい?」

モバP「おいおい……」

モバP「勝手に最後だって決めつけるなよ」

モバP「俺はこれからもお前たちの一番のファンだし、兄貴分でいたいからな!」

未央「……!」

ポロッ

未央「モバP……ずるい」

未央「ずるいよぉ……!」ポロポロ

モバP「未央……」

未央「うわぁぁぁぁん!!」
675 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/19(水) 22:03:35.19 ID:52h3i4KQ0
今回はここまで

次回は月曜日に投下します
どうしても登場させたかった担当の子がいるので、最終決戦前にもう一本サイドストーリーをお送りします

読んでいただきありがとうございました
676 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 22:57:14.43 ID:PVoDCfEn0
投下します
今回は番外編、サイドストーリーです
677 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 22:57:47.66 ID:PVoDCfEn0
サイドストーリー「スズランとタンポポ」



凛が旅立つ半年前 キクチシティ

??「よいしょ! よいしょ!」

トスン

??「ふう、これで全部ですね!」

村人「ありがとう有香ちゃん、助かったよ」

有香「いえいえ、これくらいお安いご用ですよ! 筋トレにもなりますし!」

村人「いやあ、有香ちゃんにはいつも助けてばかりだなあ」

村人「これ。よかったら食べてよ」
678 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 22:58:25.42 ID:PVoDCfEn0
有香「わあ……モモンのみがたくさん!」

有香「こんなにもらっていいんですか?」

村人「いいよいいよ。この前知り合いから送られてきたんだけど、どうせ僕一人じゃ食べきれないし」

有香「ありがとうございますっ!」ペコッ

村人「いやいや、お礼を言いたいのはこっちの方だよ」

村人「いつもありがとうね」

有香「また困ったことがあったらお助けします!」

村人「うん、そうさせてもらうよ」
679 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 22:59:13.58 ID:PVoDCfEn0
ジーッ

有香「……?」

有香(誰かの視線を感じる……)

ジーッ

有香(どこだろう……)キョロキョロ

有香(!)

ガサッ
680 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 22:59:46.52 ID:PVoDCfEn0
ピクニックガール「あっ……」

有香「あ……」

有香「も、もしかしてさっき、あたしのこと、見てましたか?」

ピクニックガール「あっ、あの、その……すみません……」

ピクニックガール「あの私、この町のジムリーダーを探しているんですけど……」

有香「ジムリーダー……」

有香「それはあたしのことですね!」
681 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:00:14.91 ID:PVoDCfEn0
ピクニックガール「え?」

有香「いかにも、あたしがキクチシティのジムリーダー、かくとうタイプの有香です! 押忍!」

ピクニックガール(お、押忍……?)

有香「もしかして、挑戦者の方でしょうか?」

ピクニックガール「あっ、はい、そうです!」

有香「わかりました!」

有香「ではついてきてください。この先のジムでお相手いたしますので!」

ピクニックガール「は、はい!」
682 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:00:53.78 ID:PVoDCfEn0
イシツブテ「イシー」バタンキュー

ピクニックガール「ああ、ぶーちゃん!」

コジョフー「コジョ」スタッ

有香「勝負あり! ですね。対戦、ありがとうございました」ペコリ

有香「残念ながら、あなたにはまだジムバッジはお渡しできませんね」

ピクニックガール「うう……」

有香「……もしかして、イシツブテ以外のポケモンを持っていないのでしょうか?」
683 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:01:24.14 ID:PVoDCfEn0
ピクニックガール「は、はい……」

ピクニックガール「前のジムはでんきタイプだったので、このままぶーちゃんで行けるかと思っていたんですけど……」

有香「そうですか」

有香「ですがあたしはかくとうタイプ使い。イシツブテでは相性が不利ですね」

有香「……この町の北側にあるタカギのどうくつ、あなたも通ってきましたよね?」

ピクニックガール「は、はい」
684 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:02:14.77 ID:PVoDCfEn0
有香「どうやらあのどうくつには、跳び跳ねることでサイコパワーを生み出すポケモンが生息している、と聞いたことがあります」

有香「そのポケモンを捕まえてきたら、きっと有利に戦うことができると思いますよ!」

ピクニックガール「そ、そうなんですか!」

ピクニックガール「あ、ありがとうございます! さっそく行ってみます!」

有香「はい! また挑戦しに来て下さいね!」

タッタッタッ

有香「ふう……」
685 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:02:55.21 ID:PVoDCfEn0
パチパチパチ

ジムの清掃員「有香ちゃん、お見事だねぇ」

有香「あ、見ていたんですね。ありがとうございます」

ジムの清掃員「でも……いいの?」

ジムの清掃員「エスパータイプのポケモンは有香ちゃんには不利だし、ジムバッジを持っていかれちゃうわよ?」

有香「いえいえ、ジムリーダーとはポケモントレーナーを指導する役目でもあるので!」

有香「最終的には勝って、あたしを越えていってほしいんです」
686 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:03:41.98 ID:PVoDCfEn0
有香「それにあたしのコジョフーはエスパータイプ相手にも簡単には負けませんから!」

コジョフー「コジョ」ドヤァ

ジムの清掃員「そう、ならいいけれど」

ジムの清掃員「ほんと、有香ちゃんはお人好しというか何というか……」

ジムの清掃員「すっかりお父さんに似てきたわねえ」

有香「あはは……そんなことないですよー」

有香(そう、あたしはいつか越えられていく存在)

有香(もちろん簡単に勝たせるわけにはいかないけれど、ジムリーダーとはそういうものなのだから)

有香(ジムリーダー……)
687 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:04:10.52 ID:PVoDCfEn0
有香(……でも本当は、あたし)


その日の夜

有香「よし……これでパトロールは終了ですね」

有香「今日も異常なし、と」

有香「……ん?」

チラッ

有香(道の路肩に、何か咲いている)

有香(あれは……何だろう)
688 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:04:41.73 ID:PVoDCfEn0
ザッ

有香(……?)

有香「スズラン……」

有香「こんなところに咲いていたなんて、気づかなかったな」

有香「きれい……」

グスッ

有香「!」

有香(今……人の気配が?)
689 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:05:19.87 ID:PVoDCfEn0
グスッ

有香(また聞こえた……)

有香(泣いているの……?)

有香(も、もしかして、お化け……)ゾクッ

グスッ

有香「う、も、もう帰った方が……」

有香「……いや! ここで怖じ気づいたらジムリーダーの名が泣きます……!」

有香「勇気を出して……こっちの方かな……?」ザッザッ
690 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:05:57.84 ID:PVoDCfEn0
グスッ

有香(……物陰の隅で誰かが膝を抱えて泣いている)

有香(女の子……?)

有香「あ、あの……」

??「!?」ビクッ

有香「あ……驚かせちゃったらごめんなさい!」

有香「どうかしたんですか?」
691 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:06:27.69 ID:PVoDCfEn0
??「あ、あの……私……」

??「うっ……うっ……」グスッ

有香「わ、と、とりあえず、移動しませんか?」

有香「こんな所にいたら風邪ひきますし……」

有香「あたしの家、すぐ近くなんです。動けますか?」

??「は、はい……」
692 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:07:12.39 ID:PVoDCfEn0
有香宅

コトッ

有香「どうぞ。温かいですよ」

??「ありがとう、ございます……」

ゴクッ

??「……」

有香「落ち着きましたか?」

??「はい、何とか」
693 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:07:43.50 ID:PVoDCfEn0
有香「よかった。あたしは有香です。この町でジムリーダーをやっています」

有香「見かけない顔ですけど……」

??「あ、まだ名乗ってなかったですね……」

ほたる「私、ほたるって言います。出身は……アイマス地方ではないんです」

ほたる「その、私……ずっと旅をしていまして」

ほたる「今夜はこの町で宿を取ろうと思っていたのですが、どこかで財布を落としてしまったみたいで」

ほたる「それで途方に暮れていたところを……」
694 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:08:20.50 ID:PVoDCfEn0
有香「そうだったんですか」

有香「あの、もしよければ、今夜は泊まっていっても大丈夫ですよ」

ほたる「……! 本当ですか?」

有香「ええ、あたしは床で寝るので、ベッドも使ってもらっても大丈夫です!」

ほたる「そ、そんな……それは申し訳ないです」

有香「いえいえ、困っているときはお互い様ですから!」

ほたる「……」

ほたる「あ、ありがとうございます……でも私、その、ベッドより床の方がよく眠れるので、やっぱり床で眠らせてもらいます」
695 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:09:00.01 ID:PVoDCfEn0
有香「わかりました!」

有香「そうだ、お腹は空いていませんか?」

ほたる「そ、そんな……そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ」

グゥー

ほたる「あ……」

有香「大丈夫じゃなさそうですね……じゃあ何かお作りしますね!」

ほたる「す、すみません……」
696 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:09:33.14 ID:PVoDCfEn0
有香「たしか冷蔵庫に卵があったはず……」

パカッ

有香「あ、殻が入っちゃった……」

ほたる「……」


有香「ケチャップの賞味期限が近いな……」

有香「そうだ、チキンライスにしましょう!」

ジュー ジュー

有香「〜〜♪」
697 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:10:17.95 ID:PVoDCfEn0
ジュワッ

有香「ひえっ!?」

ほたる「だ、大丈夫ですか……?」

有香「あ、ああ、大丈夫です! 油が飛んだだけですので!」

ガタッ

ほたる「あっ……」

パリーン

有香「ああ、お気に入りのお皿が……!」ガックリ

ほたる「……」
698 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:10:49.86 ID:PVoDCfEn0
コトン

有香「色々とお騒がせしましたが」

有香「オムライスです、どうぞ!」ジャーン

ほたる「わあ……おいしそう……!」

ほたる「いただきます」

パクッ

有香「お口に合いましたか……?」

ほたる「……」

パクッ パクッ
699 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:11:20.97 ID:PVoDCfEn0
ほたる「……」

有香(あれ、オムライスは苦手だったのかな?)

ほたる「……」

ポロッ

ほたる「う……」

ほたる「ううっ……」グスッ

有香「ええ!? だ、大丈夫ですか!?」

ほたる「ううっ……大丈夫です、とてもおいしいです……」
700 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:12:00.56 ID:PVoDCfEn0
ほたる「でも、私……」グスッ グスッ

ほたる「……すみません。このオムライスをいただいたら、やっぱり私、出ていきます」

有香「え……?」

ほたる「これ以上、ご迷惑をおかけするわけにはいかないので……」

有香「……」

有香「……あたしでよければ」

有香「何か話してもらえませんか?」

有香「力になれるかはわかりませんけど、でもあたし、ほたるさんを放っておけないんです」
701 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:13:06.83 ID:PVoDCfEn0
ほたる「……」ジッ

有香「……」ジッ

ほたる「……」

ほたる「……私は昔から、不幸体質なんです」

有香「……!」

ほたる「物心ついた時から、私の近くでは、いつもよくないことが起きていました」

ほたる「周りからは疫病神だって罵られて。だから私は、故郷の町を追い出されました」
702 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:13:51.61 ID:PVoDCfEn0
ほたる「それで各地を転々としていたんですが、やはり行く先々で、私と関わった人やポケモンは不幸な目に遭っていきました」

ほたる「その度に、『お前のせいだ』って責められて……」

ほたる「今では私の側にいてくれるのは、このヤミカラスだけで」カタッ

ほたる「何か嫌なことが起きた日は、宿の部屋の中とか、誰にも見られない場所で泣いていたりするんです」

ほたる「でも、今日は遂に財布まで落としてしまい、宿に泊まることもできなくなりました」

ほたる「だから、さっき火傷しそうになったりお皿が割れてしまったり、あれは全部私のせいなんです。きっと」

有香「……」
703 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:14:22.23 ID:PVoDCfEn0
ほたる「これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいかないというのは、そういう意味です」

ほたる「有香さんには本当に感謝しています。ありがとうございます」ペコッ

有香「……そんな……」

有香「そんなこと……!」

ポロッ

ほたる「……!」

有香「そんなこと、あるわけないじゃないですか……!」
704 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:14:54.25 ID:PVoDCfEn0
有香「あれは全部あたしの凡ミスなんです……ほたるさんは何も悪くない!」

有香「それに、何もかもほたるさんが悪いなんて簡単に決めつけられないじゃないですか!」

ポロッ ポロッ

有香「だからもう、自分のことを……責めないで下さい……」

ほたる「……有香さん……」

ほたる「どうして……どうしてそこまで……」

ポロッ ポロッ
705 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:15:53.46 ID:PVoDCfEn0
――――――――――――――――――――――――――――

有香「すみません、あたしまで泣いちゃって……」

有香「なんか、ほたるさんの気持ちを考えたら、やるせなくなったといいますか、悔しかったといいますか……」

ほたる「いえ……」

ほたる「自分のために泣いてくれる人がいるなんて、思いもしませんでした」

ほたる「有香さんはとても優しい方ですね」

有香「い、いや、そんなことは……」

ほたる「……ふふっ」
706 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:16:40.07 ID:PVoDCfEn0
ほたる「何だか、有香さんがジムリーダーだというのも、納得できます」

有香「そ、そうですか?」

ほたる「……この町では、長くジムリーダーをやっているのですか?」

有香「そうですねー、といってもまだ2年ぐらいですけれど」

有香「あたしの父もジムリーダーだったんです。2年前に父が引退して、あたしが後を継ぎました」

ほたる「そうだったんですか」

有香「ジムリーダーとしては、まだまだ未熟ですけどね……あはは」
707 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:17:31.15 ID:PVoDCfEn0
有香「……でも、あたし」

ほたる「?」

有香「一度も、挑戦者としてポケモンバトルをしたことがないんです」

有香「小さいときからジムを継ぐことを期待されて、ずっと修行を繰り返していました」

有香「だからあたし、今でも町の外に出ることもめったになくて」

有香「……今日も、挑戦者とポケモンバトルをしたんですけど」

有香「挑戦者は皆、すごくいい眼をしてやって来るんです。野心に燃える眼、っていうのかな」

有香「それが羨ましかったりして……いつかあたしも旅に出て、まだ見ぬトレーナーやポケモン達と、チャレンジャーとしてバトルをするのが夢なんです」
708 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:18:10.20 ID:PVoDCfEn0
有香「まあ、その夢が叶うのは何年後でしょうかね……あはは」

有香「あ、このことは誰にも話さないで下さいね! ジムリーダーもジムリーダーで楽しいこともいっぱいあるので!」

ほたる「……」

ほたる「すごく、素敵な夢ですね」

有香「え?」

ほたる「有香さん、すごく輝いて見えます」

ほたる「私には何もできないかもしれないけれど、私、有香さんを応援したいです」

ほたる「夢……叶うといいですね」ニコッ
709 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:18:39.32 ID:PVoDCfEn0
有香(……!)

有香(ほたるさん……あんなに辛い経験をしてきたのに)

有香(笑った顔がすごく素敵だ)

有香(それに、さっきヤミカラスの入ったボールに手を添えたとき)

有香(すごく真っ直ぐな眼をしていた)

有香(……)


710 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:19:26.46 ID:PVoDCfEn0
翌朝

ほたる「本当に、お世話になりました」ペコッ

有香「……」

ほたる「一文無しなのは変わりないですけど、今日からまた何とかやっていきます」

ほたる「有香さんのような親切な方もいると考えたら、少し気持ちが楽になりました」

ほたる「本当に……ありがとうございました」ペコリ

有香「……」
711 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:20:06.75 ID:PVoDCfEn0
ほたる「それでは――」

有香「ちょ、ちょっと待って下さい!」

ほたる「!」

有香「あの、いきなりですみません。あたしとポケモンバトル、しませんか?」

ほたる「えっ?」

ほたる「いいですけど、ど、どうしてですか?」

有香「いえ、何となく! ジムリーダーとしての血が騒いだというか、何というか……」

有香「ポケモンセンターの前にバトル用のフィールドがあるんです。そこでよろしいですか?」

有香「ルールは一対一! 手短に済ませるので!」

ほたる「は、はい!」
712 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:20:35.18 ID:PVoDCfEn0
ほたる「ヤミカラス、つばさでうつ!」

ヤミカラス「ヤミー!」バシィ

コジョフー「コジョ!」

コジョフー「コジョー」バタンキュー

有香「……!」

ほたる「か……勝ちました……!」

ヤミカラス「ヤミ〜♪」
713 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:21:07.95 ID:PVoDCfEn0
有香「お疲れ様です、コジョフー」

有香「……」フゥ

有香「対戦、ありがとうございました。完敗です」ペコリ

有香「ほたるさん」

ほたる「は、はい」

有香「もしよければ……この町に住みませんか?」

ほたる「!」
714 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:21:54.43 ID:PVoDCfEn0
有香「さっきのバトル……実は勝ち負けどうこうではなく」

有香「ほたるさんがポケモンに対してどんな気持ちを抱いているか、ということを知りたくて、バトルを挑ませてもらいました」

有香「試すような真似をしてすみません」

有香「でも、これで確信が持てました。心優しいほたるさんなら……きっとこの町の人たちは受け入れてくれると思います」

有香「どうでしょうか?」

ほたる「……!」

ほたる「ありがとう、ございます……!」
715 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:22:28.40 ID:PVoDCfEn0
ほたる「……!」ハッ

ほたる(そういえば。夕べ……)


有香『いつかあたしも旅に出て、まだ見ぬトレーナーやポケモン達と、チャレンジャーとしてバトルをするのが夢なんです』


ほたる(チャレンジャーとして……)

ほたる(有香さんが、おそらく誰にも打ち明けなかったことを私に話してくれた)

ほたる(私なら……)
716 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:23:13.69 ID:PVoDCfEn0
有香「……? どうかしましたか?」

ほたる「……あの」

有香「?」

ほたる「もし、この町に住ませてもらえるのであれば」

ほたる「私に、ジムリーダーをやらせてもらえませんか?」

有香「……!」

ほたる「有香さん、お話しされてましたよね。いつかチャレンジャーとしてポケモンバトルをしたいって」

ほたる「私がジムリーダーになれば……その夢を叶えられると思うんです」

ほたる「私なりに……有香さんに恩返しをさせてもらえませんか?」
717 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:23:58.47 ID:PVoDCfEn0
有香「……」

有香(さっきのバトル、あたしも結構本気でバトルしたつもりだったけど)

有香(ほたるさんの実力は本物だ)

有香(あたしのコジョフーは相手の攻撃を躱しつつ、『ヨガのポーズ』で攻撃力を上げていく戦い方が得意だけど)

有香(ヤミカラスはそれを『くろいきり』で打ち消してきた)

有香(ただ攻めるだけじゃない、ああいう臨機応変な戦い方ができるのなら……)

有香「……わかりました」

有香「手続きとか、色々あるので、それが終わり次第――」

有香「次のキクチシティのジムリーダーを、ほたるさん。あなたに任命させて下さい」

ほたる「……!」
718 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:24:58.66 ID:PVoDCfEn0
有香「ほたるさん」

有香「あなたが本当に不幸体質なのかどうかは、あたしにはわかりません」

有香「でも、あなたのような人に出会えて……あたしはすごく幸せ者です」

有香「それにヤミカラスも、すごく幸せそうです」

有香「ポケモンが一緒にいるなら、ほたるさんはどんな不幸にも負けない……そう思います」

有香「キクチシティを、よろしくお願いします」ペコリ

ほたる「……!」

ほたる「ありがとう……ございます……!」ポロポロ
719 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:25:56.65 ID:PVoDCfEn0

数週間後


有香「ジムの改修も終わりましたし」

有香「ほたるちゃん、明日から正式にジムリーダーですね。頑張って下さい!」

ほたる「はい、ありがとうございます」

ほたる「有香さんも、今日旅立たれるんですね」

有香「まあ、まだどこに行こうかは決めてないですけど。あはは……」

ほたる「あの、よかったらこれを……」
720 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:26:32.37 ID:PVoDCfEn0
有香「……?」

有香「これは……タンポポの髪飾り?」

ほたる「はい」

ほたる「有香さん、お家にタンポポを活けてあったりして、好きなのかな……と思いまして」

有香「ほたるちゃん……ありがとうございます!」

有香「そうなんです。タンポポって花が咲き終わっても倒れても、綿毛になる時には前よりも高く伸びる植物で」

有香「そういう強さとか健気さが好きだなって思っていたんです!」
721 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:27:08.92 ID:PVoDCfEn0
有香「嬉しい……! 大事にしますね!」

ほたる「はい!」

有香「じゃあ、あたしからもこれを!」スッ

ほたる「えっ?」

有香「これ、スズランで作ったブローチなんです。スズランの花言葉は『再び幸せが訪れる』だと知って、ぜひほたるちゃんに渡したいなって」

ほたる「そんな……いいんですか?」

有香「はい! きっとつけていたらいいことがあると思います!」

ほたる「ありがとうございます……」ウルッ
722 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:28:02.26 ID:PVoDCfEn0
有香「それでは、あたしはそろそろ行きます」

有香「どうかお元気で!」

ほたる「はい……お元気で!」


有香「……」スタスタ

村人「有香ちゃーーーん!!」

有香「!」
723 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:28:37.66 ID:PVoDCfEn0
村人「有香ちゃん、行ってらっしゃーい!」

村人「あたし達はいつでも待ってるからねー!」

村人「身体には気を付けるんだぞー!」

村人「あんたはキクチの誇りだー!」

村人「でっかくなって帰ってくるんだよー!」

有香「……!」

グッ

有香「みんな……ありがとう……!」

有香「行ってきます……押忍!!」
724 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:29:37.88 ID:PVoDCfEn0

現在 キクチシティ


ほたる「……」スラスラ

ほたる(拝啓、有香さん)

ほたる(元気でしょうか? 私は元気です)

ほたる(あれから厳しい自然災害が頻発したり、私のヤミカラスが何処かへ飛び立ったきり帰ってこなくなったりと、気持ちが滅入るようなことがたくさんありました)

ほたる(町の人たちとも折り合わず、どうしようもなく苦しいこともありました)

ほたる(でもそんな時、私を助けてくれたトレーナーがいました。その人のおかげで、今は皆で前を向いて生きています)
725 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:30:09.88 ID:PVoDCfEn0
ほたる(その人は、自分から一歩踏み出す勇気を、恐れない勇気を教えてくれました)

ほたる(つくづく、私は周りの人に恵まれているなと感じます)

ほたる(改めて、この町に住んでよかった)

ほたる(有香さん、私に居場所を与えてくれてありがとうございます)

ほたる(どうか、有香さんの今いる居場所が素敵な場所でありますように。……敬具)

ほたる「……」トン

ほたる「……ふう」
726 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:30:44.61 ID:PVoDCfEn0
ほたる「……窓、開けようかしら」

ガラッ

ほたる(……?)

ほたる(何かを咥えた鳥ポケモンが、こっちに飛んできている……)

ほたる(……)

ほたる(……!)

ヤミカラス「ヤミー!」

ほたる「あ……ああ……!」



サイドストーリー「スズランとタンポポ」 Fin.
727 : ◆7P/ioTJZG. [saga]:2020/02/24(月) 23:33:02.32 ID:PVoDCfEn0
今回はここまでです

次回は金曜日、チャンピオンとの最終決戦です
読んでいただきありがとうございました
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