【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】

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254 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:34:24.56 ID:pwF/1nuYO



キーボ(……そして、二つ目の思い違い。それはアンジーさんが、これほどまでに、物に囚われていたということ)




アンジー「………」




キーボ(……だから、百田クンは答えられなくてーーー)




キーボ(ーーーアンジーさんは、他の誰でもなくーーー)




キーボ(ーーーボクをーーーー)


255 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:35:17.06 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーほら、キーボも答えられない……」






キーボ「………」






アンジー「……やっぱり、何も、信じられないーーーー」


256 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:35:58.36 ID:pwF/1nuYO









キーボ「ーーーそれは、違います!」








257 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:36:53.77 ID:pwF/1nuYO



アンジー「!?」






キーボ「……アンジーさんが、何も信じられないまま終わる?」






キーボ「そんなこと、絶対にありません!」


258 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:38:34.68 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……っ、キーボに! アンジーの、何がわかるの?!」



キーボ「………」



アンジー「わかるはずないよ!」



アンジー「……アンジーは、間違えた!」

アンジー「それが正しい生き方だと信じて! 人として……やっちゃいけないことをやったし、やろうとした!」



アンジー「だから罰が当たって……死に落とされてーーー」







アンジー「ーーーまっくらに、塗り潰されたんだ!」



キーボ「………」


259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/23(水) 20:40:15.55 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……こんなにも、砕かれた……!」



アンジー「……アンジーの神さまも、その力も、全部、闇に……!」



アンジー「……何もかもを、奪われた……!」



キーボ「………」



アンジー「……転子たちには、才能が、立場が、残されたっていうのに! アンジーには、何にも無い!」



アンジー「アンジー以外のみんなが、当たり前に持っているものすら無い!」






アンジー「……自分が、物にしか、見えないんだよ……!」






キーボ「アンジーさん……」


260 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:41:53.14 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……キーボは、アンジーとは違う」

アンジー「そう、キーボは、転子たちと同じで、いろんなものを持ってるから」



キーボ「……」



アンジー「……瀞霊廷に住める立場がある。才能がある」

アンジー「……『すごいもの』がある。『すごい力』がある」



アンジー「……『未来』がある! 『希望』はそこに、繋がっている!!」



アンジー「……そんなキーボに、アンジーが、いまどんな気持ちかなんて、わかるはずない!!!」


261 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:44:31.26 ID:pwF/1nuYO



キーボ「…………アンジーさんの全てがわかるとは言いませんよ」

キーボ「ボクとアンジーさんに、異なる部分があるということは、覆しようのない事実なのですから……」



アンジー「………」



キーボ「……ですが、それでもわかることはあります」



アンジー「……!?」



キーボ「……自分を信じたいというその気持ち、ボクには、よくわかるんです!」


262 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:51:50.30 ID:pwF/1nuYO



アンジー「なっーーー」



キーボ「アンジーさんだって、本当は、信じたいと想っているんでしょう!」



キーボ「他ならない、自分を!」



アンジー「!!」



キーボ「誰だって、自分や他人に胸を張れる自分でありたい! ボクだってそうです!」

キーボ「ならば、どんなに自分が信じられなくても、本当は信じたいはずです!」

キーボ「だからこそ、アンジーさんは! 死後も、神さまを信じようとした!」



アンジー「………っっ、!!」



キーボ「そう! 切っても切れない、アンジーさんの一部とも言うべきーーー神さまを、信じようとしたんです!」



キーボ「だったら、その気持ちの通りに、自分を信じれば良い!」



キーボ「自分の想いを信じれば良い!」



キーボ「その『想い』で、自分に胸を張り、他人にも胸を張れば良い!」


263 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:55:05.99 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……っ、簡単に! 信じて、だなんて! 言わないでよ!!」

アンジー「アンジーの想いが! アンジーの何もかもが! 紛い物だったらどうすれば良いの!?」

アンジー「みんなと違って、価値の無い物だったら、どうすれば良いの!?」



キーボ「価値はある!」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんも、その想いも、決して、価値の無い、紛い物などではありません!」

キーボ「なぜなら、今の自分が抱いている想いは、紛れもなく本物だからです!」



アンジー「……!?」


264 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:56:49.82 ID:pwF/1nuYO



キーボ「たとえ、自分の根っこが、どのような存在であったとしても!」

キーボ「どれほどの過ちや間違いーーー闇を重ねて、今の自分が形作られていようとも!」



キーボ「今の自分が……どれだけの嘘と矛盾に満ちていたとしても!」



キーボ「そんな自分が、世界全体から見て、どのような存在であろうとも!」

キーボ「どんな終わりを迎えようとも!」



キーボ「ボクらの心は、今こうして、ここにある!」



アンジー「……!!」


265 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:00:22.28 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……自分にとって、そこに心があるから! 想いが募っているから! ボクらは苦しんでいる!」

キーボ「心を通して、痛みを、共に感じることができる……!」



キーボ「だからこそ、お互いに自分を信じたいと思っている!」



アンジー「!!」



キーボ「これは、今こうして、起きていること!」

キーボ「今もなお、胸に刻まれ続けていること!」



キーボ「その意味は、過去や未来がどうなろうと、決して変わりなどしない!」



キーボ「断じて、紛い物なんかじゃない! この心は、紛れもなく本物です!」

キーボ「そして、この心を支えているものは何か? それがボクらの胸に刻まれた想いなんです!」

キーボ「だったら、その想いは、心と同様に本物なんですよ!」

キーボ「それが、価値の無い、紛い物?」



キーボ「そんなことは、決してありません!」



キーボ「誰であろうと、このかけがえのない価値を、奪えなどしない!」


266 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:02:30.54 ID:pwF/1nuYO









アンジー「ーーーーーーーーーーーーーー」








267 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:04:08.03 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーボクはロボットですが、同時に、人だと想っています」



アンジー「!!」



キーボ「これは、機械なのに魂魄を持つ存在だからとか、瀞霊廷に住めるからとか、普通とは異なる『すごい力』を持つ『すごいもの』だとかーーーそういうことを言っているのではありません」



キーボ「ボクが、人なのは、アンジーさんと同様に心を持っているからです」



アンジー「………!!!」


268 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:07:41.14 ID:pwF/1nuYO



キーボ「だからこそ、生前、アンジーさんがボクを仲間に入れてくれた時は、嬉しかった! 価値ある存在だと認めてくれて嬉しかった!」



キーボ「……そうして、ボクにとって、アンジーさんは、かけがえのない価値ある大切な存在となった!」



キーボ「そんなアンジーさんの側にいられて、心地良かった! 嬉しかった!」

キーボ「初めて、ここで再会できた時も、嬉しかった! またアンジーさんの側にいられて、心地良かった! 嬉しかった!」



キーボ「……さっき、アンジーさんに! 形はどうあれ、ボクが価値ある存在だと言って貰えて、嬉しかった!」



アンジー「!!」



キーボ「先ほど、ボクの言葉に心を傾けてくれて……感情をもって聞いてくれて嬉しかった!」

キーボ「そうするだけの意味を持つ……価値ある言葉だと認めてくれて、嬉しかった!」

キーボ「アンジーさんと、それほどの繋がりを持つことができて、嬉しかった!」



キーボ「そこには、真実も嘘もない! ただ、嬉しいと感じているボクがいる! その『想い』を、アンジーさんに向けたくて、たまらない!」

キーボ「現在も過去も未来も、アンジーさんはかけがえのない存在なんだって、言いたくて仕方がない!」



キーボ「大切にしたい! 作り物で終わらせるなんて、嫌なんだ!」



キーボ「今この瞬間、そう想える心こそが、人の本質なんですよ!」



アンジー「………っ、!?!」


269 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:10:16.63 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……ボクのこの身は、決して、柔らかで温かな肉などではありません。硬く冷たい鉄の身に他ならない」



キーボ「……こわい時に、震えることもできず、悲しい時に涙を流すこともできない、“ ロボット ” 」



キーボ「それが、ボクです」



アンジー「………」


270 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:11:28.97 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーそれでも、心はここにある」






キーボ「嬉しいと想える心が……ここに募られているんですよ」






アンジー「………」


271 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:13:19.38 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ボクは、人です」



キーボ「……こわい時に、震えることもできず、悲しい時に涙を流すこともできないロボットであろうとも」

キーボ「硬く、冷たく、機械的に組み上げられた、鉄の身であろうとも」

キーボ「柔らかで温かな肉をもって、誰かを抱き締めることが叶わなくとも」

キーボ「この身を、どれだけ飾り立て、磨き上げようとも、どれだけ錆びつき折れて、切り落とされようとも」

キーボ「決して消えない、大切にしたいというこの想い。作り物で終わらせたくないという、この想い」



キーボ「そうした想いがあれば、それは人です」



キーボ「そうやって募らせた想いが、心となっているならば、それは人です」



キーボ「……人によっては、作り物でしかなかったとしてもーーー想いを込めた人にとっては、紛れもない人であり、心を持った存在なんです」



キーボ「だから、ボクらは、人なんですよ!」



アンジー「………っっ、!?!」


272 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:16:22.23 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……始めは、作り物の想いでしか、なかったとしても! その想いを込める場所さえ、作り物だったとしても!」



キーボ「それに、心を呑まれなければ! 想いを信じていれば! 本物となる!」



キーボ「……やり方が歪だったとしても! 本当は、間違いなのかもしれなくても! それでも、本物なんだって!」



キーボ「そうやって信じようとする気持ちを、大切にできる心を持てば! 作り物だろうと何だろうと! そこに、確かな『想い』が生まれる!」



アンジー「!」



キーボ「自分の『在り方』! それを支える全てが! 不恰好な作り物だったとしても! 心を呑まれないのが『人』でありーーー」



アンジー「………!!」



キーボ「ーーーそうありたい、そうあって欲しいと想える心が! 人であることの証明なんです!」


273 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:21:01.33 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……どんな人でも! その心は! 想いは! 紛れもない、人のものだから! 本物だから!」



キーボ「想いを糧に、何かに打ち込んで、やり遂げることもできる!」

キーボ「不可能を可能に変えられる!」

キーボ「夢を現実に変えられる!」

キーボ「未来を変えられる!」



キーボ「もちろん、やり遂げるものによっては、すごい才能やその産物に頼ることもあるでしょう! ですが、その根幹にあるのは、人の想いなんです!」

キーボ「花火が、それを作ったり火をつけたりする人の想いと、見る人の想いで、その価値を彩られているように!」

キーボ「人の想いこそが! その価値ある想いこそが! 根幹となって、人を支えているんです!」

キーボ「そうして、人の心を支えてくれたから、ボクらは、 “ 終わらせる ” ことができた!」



キーボ「そう、信じています!」



キーボ「だから、自分が、みんなが、世界全体から見て、どういう存在だろうと! ボクらは人です!」

キーボ「そして、その心と想いは、紛れもなく、本物です!」



キーボ「ボクらは、本物の、人なんですよ!」



アンジー「………!!!」


274 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:21:34.45 ID:pwF/1nuYO



キーボ「だからこそ、ボクは、アンジーさんを信じています」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんが抱く想いに価値があると信じています」



キーボ「アンジーさんの神さまを信じています」


275 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:23:36.98 ID:pwF/1nuYO



アンジー「!?」



キーボ「……ボクはもう、神さまに頼るつもりはありません」

キーボ「それこそが、神さま……そして、頼っていた、かつてのボクに、報いることでもあるのですから……」



アンジー「………」



キーボ「……ですが、それでも、アンジーさんが想う、神さまを信じています」



キーボ「神さまが、意味ある存在だと信じています」



キーボ「価値ある存在だと、信じているんです」


276 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:27:49.79 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……どうして、そんなーーー」



キーボ「……その神さまは、もはやアンジーさんの一部でありーーー」



キーボ「ーーー仮に、そうでなくとも、人が胸を痛めて想いを募らせる、かけがえのない存在」



キーボ「ならば、その存在には、絶対に意味がある」



キーボ「価値が無いはず、ないじゃないですか」



アンジー「ーーーーーーっっっ、!!!」



キーボ「ボクは、アンジーさんと神さまを、信じています」

キーボ「想いを込められる存在であると、信じています。そうして、より確かな『想い』に変え、深く込めることもできるーーー」






キーボ「ーーーそう、信じているんです」


277 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:29:32.95 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……だからこそ、アンジーさんも、自分を信じて欲しいんです」



アンジー「………」



キーボ「今すぐは信じきれなくてもーーーそれでも、想いを募らせ、信じて欲しい」

キーボ「そうやって、自分を信じたいという気持ちの通りに、自分を信じて欲しいんです」

キーボ「そして、それは、自分の気持ちだけじゃない。自分に込められた全ての気持ちを信じて欲しい……」



キーボ「……その全てに、信じられるだけの価値があるって!」


278 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:33:11.42 ID:pwF/1nuYO



キーボ「でなければーーーアンジーさんは、何も信じることができなくなってしまう!」



キーボ「心を呑まれて、全てが雲に覆われてしまう!」



キーボ「一人きりで、何もないと思い込んだまま、生まれ変わって、 “ 死 ” を迎えることになってしまう!」

キーボ「それでは、アンジーさんは、アンジーさんの中で、物として終わってしまう!」



キーボ「ボクらにとって、アンジーさんは人なのに! 人同士だから信じ合い、『想い』を分かち合えるはずなのに!」



キーボ「一緒にいれて、嬉しい気持ちになれるはずなのに!」



キーボ「アンジーさんが、物として終わってしまったら、ボクらの人としての繋がりは、その価値は、どうなってしまうんですか!?」

キーボ「ボクらは、人が何の感慨もなく機械を扱うような関係でしかなかったのですか!?」



キーボ「機械的な利害関係しかない間柄だったのですか!?」



キーボ「それじゃあ、アンジーさんが死んでしまったら、ボクはアンジーさんの中では無用の長物……物で終わるというんですか!?」



アンジー「っっ、!?!」



キーボ「ボクは、それが、たまらなく、こわくて、悲しくて、イヤなんです」


279 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:35:21.92 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーだから、アンジーさん、どうか自分を信じてはくれませんか?」



キーボ「そして、ボクやみんなの気持ちを、信じてはくれませんか?」



キーボ「アンジーさんは、みんなに、大切に想われているんですから」



アンジー「………」


280 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:37:19.65 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……現世で生き残ったみんなは、何があろうと、アンジーさんのことを大切に想っていましたしーーー」



キーボ「ーーー尸魂界(こっち)に来たみんなも、アンジーさんのことを大切に想っているはずです」



キーボ「ーーー事実として、アンジーさんは、百田クンとも話をされたのでしょう?」



アンジー「………」



キーボ「……大切に想っているのは、その時話した百田クンだけじゃない。ボクや真宮寺クンはもちろん、他のみんなだって同じです」



キーボ「……全てが、作り物ーーー」



アンジー「!」



キーボ「ーーーみんなはそれに、心を呑まれなかった」



キーボ「だからこそ、みんな、アンジーさんのことを、価値ある存在だと信じている」



キーボ「そして、それは、アンジーさんが、みんなのことを価値ある存在だと想っているからなんです!」


281 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:42:06.85 ID:pwF/1nuYO



アンジー「!?」



キーボ「アンジーさんが、笑顔で瀞霊廷に送り出してくれたのはボクだけじゃないはずです」

キーボ「百田クン達のことも、笑顔で送り出してくれたのでしょう?」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんはそれだけ、ボクらを、みんなを、価値ある存在だと想ってくれている! 幸せを、願っている!」



キーボ「それは、アンジーさんの中に、みんなを人として見ている気持ちがあるからできること!」



キーボ「作り物で終わらせたくないと想える気持ちがあるからできること!」



アンジー「!!!」



キーボ「そう! 全てを作り物で終わらせ! みんなの価値を否定するような人物だったのなら! 決してできないことなんです!」

キーボ「だから、アンジーさんは、みんなを大切にしたいと想い! 自分の過去と向き合い! 笑顔で送り出すことに決めた!」



キーボ「アンジーさんは、心呑まれることを良しとしなかった! だから、みんなと同じように、人を大切にできた!」



キーボ「その気持ちに! 百田クン達が応えようとしないはずがない!」



キーボ「だとしたら、百田クンの言葉には、きっとその裏で、全員の気持ちが込められていたはずですよ?」



アンジー「………っっ、」


282 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:43:44.81 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……だから、アンジーさんは、みんなから、大切に想われているんです」



アンジー「………」



キーボ「みんなから、価値ある存在だと信じられているんです」

キーボ「アンジーさんには、その気持ちを信じて欲しいんです」

キーボ「自分の想いと一緒に信じて欲しいんです」



キーボ「そんな自分を……価値ある自分を信じて欲しいんです」


283 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:44:52.96 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……そうすれば、決して、心を呑まれることはありませんしーーー」



キーボ「ーーーアンジーさんの想いが込められた作品に、価値があると、実感することができる」



キーボ「『想い』を、残すことができる」



キーボ「ボクはそう信じています」



アンジー「………」


284 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:46:15.32 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーそして、その価値ある作品に、一緒に込めさせて貰うボクの気持ちにも、価値があると信じてはくれませんか?」



キーボ「そうすれば、より確かに、価値の感じられる作品となるはずです」



キーボ「……そんな作品に、育っていくはずなんです」



アンジー「………」


285 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:48:34.38 ID:pwF/1nuYO



キーボ「お願いします、アンジーさん」

キーボ「これは、ボクの問題でもあるんです」



アンジー「キーボの……?」



キーボ「はい。ボクが、他ならぬアンジーさんと共に、想いを込めて、価値ある作品を作り育てたいから言っているんです」



キーボ「……ボクが、アンジーさんと生きていて良かったと、一緒にいて嬉しいことを実感したいから、言っているんです」

キーボ「その気持ちを、分かち合いたいから言っているんです」

キーボ「一緒に、価値ある作品を愛したいから言っているんです」



キーボ「それだけアンジーさんが! アンジーさんという人の想いが! 同じ、人であるボクにとって! かけがえのない、価値ある『想い』だから言っているんです!」



アンジー「!!!」



キーボ「ボクは、アンジーさんに、必要とされたいんです!!」



アンジー「ーーーっっ、!!!」



キーボ「だから、どうか一緒に、ボクらにとって、価値ある作品を作ってはくれませんか?」


286 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:49:48.97 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……もし、どうしても、一緒に作ることのできない事情があるのならーーーせめてボクを信じてくれませんか?」

キーボ「その上で、ボクの……『想い』を、どうか受け取ってください」

キーボ「その『想い』と共に、作品を作って欲しい……」



キーボ「……アンジーさんとボクの『想い』を、作品に込めてーーー世に残して欲しいんです」



アンジー「………」



キーボ「ーーーお願いします、アンジーさん」


287 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 21:50:45.18 ID:pwF/1nuYO









キーボ「一緒に、作品を、作ってください!!!」








288 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:37:56.66 ID:pwF/1nuYO



アンジー「………」






アンジー「…………」









アンジー「………………」


289 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:38:28.98 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そう、かーーー)






キーボ「………」グッ…






アンジー(……そういうこと、なんだねーーーー)


290 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:39:42.43 ID:pwF/1nuYO



アンジー(ーーー物、なんかじゃ、ないんだ)




アンジー(始めから、みんな、人だった)




アンジー(心を持った時から、ずっと、ずっと前から、そう)




アンジー(キーボも、是清も、蘭太郎も、転子も、解斗たちもーーー)








アンジー(ーーーみんな、みんな、人だったんだ)


291 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:41:22.83 ID:pwF/1nuYO



アンジー(みんな、人だからーーー)




アンジー(ーーー心があるから、物にされるのがこわい)




アンジー(物にされて、終わるのがこわい)




アンジー(そうやって、人として、扱われないことがこわいんだ)


アンジー(たとえ、どんな『物』でもーーー物である限り、簡単に価値が変わる……)


アンジー(……ただの、物、に、なるかも、しれない……)


アンジー(……そのまま、自分をまったく必要とされなくなること……)




アンジー(それこそが、 “ 死 ” だから)




アンジー(……本当の意味で、死ぬってことなんだから)


アンジー(どんなに、『すごい力』や『すごいもの』があっても、同じこと)


アンジー(あっても、なくても、絶対に逃げきれなくてーーー)








アンジー(ーーー変わらず、そこにある)


292 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:42:58.70 ID:pwF/1nuYO



アンジー(そこに、落ちるのが、イヤ)


アンジー(物にされたら、近づいてしまう)


アンジー(……すごく苦しくて、目の前がまっくらになってーーー近づいてしまうんだ)


アンジー(そうして、そのまま転がり落ちればーーー)




アンジー(ーーー砕かれて、終わる)




アンジー(……闇に消える……)


293 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:43:57.17 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そんな、取り返しのつかない、痛み)


アンジー(それがわかるから、みんな、誰にもさせたくなくてーーー)




アンジー(ーーーアンジーにも、させたくなかったんだ)




アンジー(痛みがこわいから、おかしくなりそうだからーーー)


アンジー(ーーー踏み外して、転がり落ちるかもしれないからーーー)


アンジー(ーーーきっと、みんなは、それにアンジーを巻き込みたくなかった)




アンジー(それだけ、なんだよ……)


294 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:45:34.43 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……きっと、みんなは、アンジーのこと、人だって想ってくれた。作り物で、終わらせたくなんてなかった)


アンジー(……どんなに、心が呑まれそうでもーーー『人』として、必死にアンジーを想ってくれたんだ……)




アンジー(……だから、蘭太郎も転子もゴン太も楓も竜馬も斬美も美兎も小吉も是清もーーー解斗みたいなことはできなかった)


アンジー(解斗みたいに、みんなの『想い』を背負って、アンジーの前に立つこともできなかったんだ)


アンジー(……解斗も、アンジーの言葉を前に、踏み出せなかった……)




アンジー(……人が、物にされて、終わる)




アンジー(そのことに、改めて向き合ってくれたから……)


295 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:46:34.02 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……みんなは、決して心を呑まれなかった。だから、踏み外すのがこわかった)




アンジー(言葉を大きく間違えればーーー本当に “ 死 ” を招いてしまうかもしれなかったから)




アンジー(だから、踏み出すことができなくてーーー)










アンジー(ーーーこうして、踏み越えることもできるんだ)


296 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:48:18.90 ID:pwF/1nuYO



キーボ「………」



アンジー(……物じゃない、『物』でもない。人だから、できること)


アンジー(誰だって、同じ)


アンジー(心が痛いから、その心と想いは絶対に本物だからーーー)




アンジー(ーーー “ 死 ” の痛みがわかる)




アンジー(その痛みに近づいていくことーーー物にされることのこわさがわかる)




アンジー(わかるから、逃げないで向き合える)




アンジー(……その先が、どんなに惨めで、まっくらに塗り潰されそうでもーーー)




アンジー(ーーーそこに意味が……価値があるって、信じられるから)


297 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:49:58.30 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そうだよ。誰だって、価値を信じて、向き合える)




アンジー(どんなに砕かれて、闇に消えたとしてもーーー)




アンジー(ーーー自分にとっては、人で、かけがえのない、たったひとりを、護りたい……)








アンジー(……そう、想うことが、できるから……!)




キーボ「………」


298 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:50:47.26 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そうして、心のままに、信じてーーー)




アンジー(ーーー今みたいに踏み越えることもできたんだね……)




キーボ(アンジーさん……!)




アンジー(信じて、必要としてくれた、 “ 心 ” ーーー)




アンジー(ーーーその『想い』が、 “ ここに ” ーーーー)


299 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:51:34.38 ID:pwF/1nuYO






アンジー(ーーーあぁ……)








アンジー(あたたかい、なぁ……)





300 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:52:29.14 ID:pwF/1nuYO



アンジー(…… “ ここに ” ある、もうひとつの『想い』ーーー)




アンジー(ーーー心のままに、歩んで手を、伸ばせばーーー)




キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」




アンジー(ーーーきっと、その先はーーーー)


301 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:53:03.52 ID:pwF/1nuYO









……ぎゅううっ








302 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:54:20.77 ID:pwF/1nuYO



キーボ「………」パチリッ

アンジー「………」



キーボ「ーーーえっ?」

アンジー「………」



キーボ「アンジー、さん、?」

キーボ「何をーーー」



アンジー「ーーー大丈夫だよ、キーボ」

キーボ「!」


303 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:55:35.95 ID:pwF/1nuYO



アンジー「キーボの心は、アンジーの中に入ったよ」

アンジー「キーボの『想い』は、アンジーの心で受け止めた」

アンジー「これで、アンジーは、キーボとアンジーの『想い』、込められる」



キーボ「!!」



アンジー「……だから、アンジーからもお願い」



アンジー「アンジーの心も、キーボの中に入れて……」



アンジー「アンジーの『想い』も、キーボの心に受け止めて欲しいの」


304 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:56:29.84 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……!!」



アンジー「それから、キーボも、アンジーと一緒に絵を描いてーーー」







アンジー「ーーーふたりの『想い』、込めて欲しい」


305 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:57:06.12 ID:pwF/1nuYO









キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」








306 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 22:58:03.35 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……お願い」

アンジー「お願いだよ、キーボ」

アンジー「どうか、アンジーとーーー」



キーボ「ーーーもちろんですよ、アンジーさん!」



アンジー「!」



キーボ「アンジーさんの心は、『想い』は、ボクの中に、心で受け止めます!」



アンジー「………!」



キーボ「一緒に込めましょう!」

キーボ「アンジーさんとボクの想い、ふたりの『想い』を! 一緒に!」



アンジー「……ありがとう、キーボ」


307 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:00:24.73 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……描こう、一緒にーーー」







アンジー「ーーー “ 夜空 ” を」


308 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:01:41.38 ID:pwF/1nuYO



キーボ「 “ 夜空 ” ……もしかして、それがーーー」



アンジー「そう、それが、アンジーとキーボの、絵のテーマ」



アンジー「お星さまの光に、お星さまの闇ーーー」



アンジー「ーーー夜風、花火、見上げる人ーーー」






アンジー「ーーーそして、神さまーーーー」


309 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:02:45.93 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーー全部、全部、描きたい」



アンジー「アンジーは、キーボと、 “ 夜空 ” を描きたい」



キーボ「アンジーさん……!」



アンジー「……描けたら、一緒に見よう?」



キーボ「!」



アンジー「ーーーそれからは、尸魂界(こっち)に来たみんなにーーー」






アンジー「ーーーいつかは、現世(あっち)で生き残ったみんなにも、見せたいな」


310 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:04:00.68 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……いろんな人に、見せたい」

アンジー「それは、同じ学園のみんなに、だけじゃない」

アンジー「空鶴たち、空吾たち、ユウイチたち、喜助、神さまにもーーー」



アンジー「ーーーいろんな『人』に見せたい」



アンジー「アンジーとキーボの絵を……」



アンジー「自慢、したい」



アンジー「胸を、張りたいな」


311 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:04:54.22 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……同感です!」



キーボ「そのためにも、描きましょう! 一緒に!」



アンジー「……そうだよ、キーボとアンジーで “ 描いて魅せる ” 」



キーボ「ええ! 他ならないーーーー」


312 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:05:42.95 ID:pwF/1nuYO









「「 “ 夜空 ” を!!」」








313 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:06:55.20 ID:pwF/1nuYO




(ーーー其れは、闇)






(全に届く、光の輪と双翼を持たない、姿無き闇)






(だけど、胸に刻まれたこの想いは、誰にも奪えない。それが、罪であっても、 “ 死 ” を名乗る神であっても)






(かけがえのない価値を信じて、光と闇を想い描く)






(ふたつが混じり合う人の心に、夜空が届くように)



314 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:07:58.40 ID:pwF/1nuYO









アンジー「ーーーあーあ、キーボがロボットやってなかったらなー!」








315 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:09:18.20 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーなっ、ここで、まさかのロボット差別ですか!?」



アンジー「ノーノー、これは、神ッターでの、つぶやきだよー!」



キーボ「神ッター!? つぶやき!?」

アンジー「そうだよー」



アンジー「……もし、キーボがロボットやってなかったらーーー」









アンジー「ーーーこのまま一緒に……ドロドロに神っちゃうのも、悪くないかなー、って」


316 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:11:04.66 ID:pwF/1nuYO



キーボ「? ドロドロに、神る?」

キーボ「泥を用いて、神さまを模した美術品を造形するということですか?」

アンジー「………」

キーボ「だとしたら、確かにボクは控えた方が良いかもしれませんね」

キーボ「いかに頑丈な設計であるとはいえーーー泥を侮るわけにはいきません。万が一、故障でもすれば、迷惑がかかりますからね」



キーボ「……あっ、ですが、入間さんに頼んで、対泥用のコーティングをして貰えばーーー」



アンジー「ーーーなるなるー! その手があったかー!」



キーボ「ええ、入間さんならできるはずです!」



アンジー「そうだねー! 美兎なら、 “ そういうこと ” 喜んでやってくれそうだからねー!」

アンジー「キーボのアイデアは神ってるねー! おかげでアンジーも閃いたよー!」



キーボ「いえ、こちらこそ、新たな作品作りのお誘い! ありがとうございます、アンジーさん!」



キーボ「ドロドロに神る、その時を……今から楽しみにしています!」


317 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:12:31.77 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……んーとねー? 悪いけど、それはもうちょっと後かなー?」



キーボ「? まあ、確かにそれは、入間さんに頼まないとできないことですからね」



キーボ「いや、浦原さんにやって貰えばーーー」



アンジー「……そうじゃなくてねー?」


318 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:13:46.62 ID:pwF/1nuYO



キーボ「?」

アンジー「……それは、まだ早いから」

キーボ「……早い?」

アンジー「そうだよー」

アンジー「……それをするなら、アンジーにはまだまだやらなくちゃいけないことがあるから……」



キーボ「………」



アンジー「……全ては、それが、終わった後ーーー」






アンジー「ーーー終わった後に、ね?」


319 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:15:07.15 ID:pwF/1nuYO



アンジー(……そう、アンジーは、みんなに向けて、やらなくちゃいけないことがある)






アンジー(それが、終わった後、キーボが、受け入れてくれる時が来たらーーー)






アンジー(ーーーその時に、思いっきりーーーー)


320 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 23:16:35.90 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーーわかりました! アンジーさんに準備が必要というのなら、ボクはそれを待たせて頂きます!」



アンジー「……ありがとねー、キーボ!」



キーボ「いえいえ! 元はと言えば! ボクがアンジーさんに、一緒の、作品作りをお願いしたわけでーーーー」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


321 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:36:04.12 ID:l52JXZ7WO



ー修練場・天井裏(亜空間)ー



空鶴「………」

銀城「……おい」

空鶴「………」

銀城「……おい、アンタ」

空鶴「………」

銀城「……ったく、返事も無しかよ。浦原が言うには、この部屋の音は、絶対外に漏れねえんだろ?」

銀城「中に入ろうにも、アンジーとキーボは、この部屋のこと知らねえし……それ以前にこの部屋は、アンタと “ もう一人 ” が認めた存在しか入れねえ仕組みだそうじゃねえか」

空鶴「………」

銀城「だったら、音が外に漏れることは絶対に無いはずだろ?」

銀城「押し黙る理由もねえだろうに」


322 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:37:37.49 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……黙る?」

空鶴「バカ言いやがれ、そんな理由、ハナからねえよ」



空鶴「ここはおれの家だ。おれはここの家主だ」

空鶴「いつ何を言おうが言うまいが、おれの自由だ」



空鶴「コソコソする理由なんざ、どこにもねえ」



銀城「……そうかい、アンタらしいな」


323 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:39:14.21 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーで、なんのつもりだ、元居候? おれは、テメエが “ 今日おれの家に泊まりたい ” って言うから泊めてやったし、 “ テメエも ” 、この部屋に入れてやった」



空鶴「テメエがウロチョロして、おれの家の邪魔にならねえようにな」



銀城「………」



空鶴「だが、おれはアンジー達が下に来た時、 “ テメエには ” 出て行くよう、何度か命じたはずだ」

空鶴「なのに、シカトこいて残りやがった」



空鶴「……覚悟は、できているんだろうな?」


324 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:40:51.95 ID:l52JXZ7WO



銀城「……それを言うなら、アンタこそ、覚悟はできてんのか?」



空鶴「………」



銀城「……あいつらのやりとりを、勝手に見て、聞いちまってる」

銀城「それは、アンタだって同じのはずだ」



空鶴「………」


325 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:41:43.22 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……覚悟も雑煮もあるかよ」



銀城「………」



空鶴「ここは、おれの家だ。ここの主は、おれだ」



空鶴「何を見ようが、何を聞こうが、おれの自由だ」


326 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:44:04.47 ID:l52JXZ7WO



銀城「……そいつはどうかな」



空鶴「………」



銀城「あいつらが抱えていることは、あいつらの問題だ。アンタには関係ねえだろ?」

銀城「なのに、どうして、勝手に見てる?」

銀城「……どうして、勝手に聞いてやがんだ?」



空鶴「………」



銀城「……あいつらは見世物じゃねえぞ?」


327 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:44:59.42 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーバカいえ、おれはお客様なんかじゃねえ」



銀城「………」



空鶴「……ただ、家主として、ケジメつけただけだ」


328 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:45:43.18 ID:l52JXZ7WO






空鶴「ここは、おれの家だ」






空鶴「だから、居候に泣かれたままなのは、気に入らねえんだよ」





329 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:47:25.16 ID:l52JXZ7WO



銀城「……まあ、泣かれたまま、 “ お別れ ” なんざ誰だって御免だな」

銀城「だから、 “ 万が一 ” を考えて、アンタも待機してたってわけだ……」



空鶴「………」



銀城「……アンタも割と、リアリストの部類だったんだな。意外だったぜ」


330 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:48:50.16 ID:l52JXZ7WO



空鶴「……あいにくだが、おれは夢見る花火師。寝ても覚めても浪漫を忘れたことはねえ」

空鶴「だからこそ、たっぷり寝る必要がある。だったら、見れるもん、聞けるもんは、さっさと見聞きしてスッキリさせる。おれが今日ここにいたのは、それだけの理由だ」



銀城「………」



空鶴「……何があろうが、どんなに泣かれようが、おれの夢が湿気ることはねえ」



空鶴「絶対にな」


331 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:51:31.30 ID:l52JXZ7WO



銀城「……はっ、 “ テメエらのことは、テメエらでケジメつけやがれ ” ってわけか」

銀銀「訂正するぜ、 “ アンタらしい ” 」



空鶴「……さっきから家主のやることなすこと、ケチばっかつけやがって…」

空鶴「あいつらでどうにかできるもんなら、あいつらにやらせるべきだろうが」



銀城「………」



空鶴「どこの誰だろうが、そいつらだけでケジメつけようとするからこそ、誇れるもんだってあるんだ」

空鶴「なのに、そうじゃねえ奴が、ハナから出しゃばったらどうなる?」

空鶴「まだ、身内でケリつけられるかもしれねえ話に、ズカズカ踏み込んだらどうなる?」

空鶴「あいつらでケジメ突き立てようって時に、横槍入れて別の得物で突き立りゃ、何が、どうなる?」



空鶴「誇りはどうなる?」



銀城「………」


332 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 21:52:18.18 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーー誇りを残せるに越したことはねえ」



空鶴「誇りを残せるから、応えられることもある……」



空鶴「……テメエだって、本当はそのくらい、わかってるはずだ」



銀城「………」


333 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:00:23.35 ID:l52JXZ7WO



空鶴「ーーーって、んなことよりも、テメエこそ、どうしてここで出歯亀してんだ?」

空鶴「ここの家主はおれで、あいつらはおれの居候だがーーー今のテメエは違う……」



銀城「………」



空鶴「……なのに、 “ 危なくなったら ” 連絡するよう居候に頼んで、その通りに来てーーーいったい何のつもりだ?」



空鶴「 “ 万が一 ” が、そんなに気になんのか?」


334 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:01:41.61 ID:l52JXZ7WO



銀城「……そういう問題じゃねえよ」

銀城「……ガキってのは、危なっかしいもんなんだよ」

銀城「信じる信じないの問題じゃねえ。気づいた時には目で追っちまってるもんなんだ」



空鶴「………」



銀城「……それだけ、ガキはどうなるかわからねえしーーー」



銀城「ーーー目を逸らすことはできねえ。誰が、何と言おうとな」



空鶴「………」



銀城「……それだけの話だ」


335 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:02:55.83 ID:l52JXZ7WO



銀城「……あー、お互い、どうにも夜に酔い過ぎたようだな」

銀城「らしくねえぜ、こんなのはよーーー」



空鶴「ーーー最後通告だ」



銀城「………」



空鶴「出てけ、元居候」



空鶴「テメエの出る幕は、もう無え」


336 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:03:28.96 ID:l52JXZ7WO









銀城「……あばよ」ヒュンッ








337 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:04:08.10 ID:l52JXZ7WO



空鶴「………」






空鶴「…………」









空鶴「………………」


338 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:05:16.90 ID:l52JXZ7WO



空鶴(…… “ ガキは、どうなるかわからねえ ” かーーー)




空鶴(ーーーそこだけは乗っかってやっても良いか)




空鶴(……光で闇を輝かせるのが、花火師だあ?)




空鶴(……テメエの心に、人の心が入っただあ?)




空鶴(ーーーあんなガキ共が、あんな言霊吐き出すとはな……)




空鶴(……世の中、いったい全体どうなってんだろうな……)




空鶴「……なあ、 “ あんた ” はどう思うよーーーー」


339 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/24(木) 22:05:50.00 ID:l52JXZ7WO









空鶴「ーーー海燕(アニキ)ーーーー」








340 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/25(金) 22:11:48.52 ID:dexucHa3O



ー志波家の屋敷・廊下ー



キーボ(ーーーあれから翌日)


キーボ(ボクとアンジーさんは、いつも通りに起きて、いつも通りに朝食を摂りました)


キーボ(……厳密に言えば、ボクは寝なかったので、起きたという表現は何か違うかもしれませんがーーー)


キーボ(ーーーそれでも、寝る時間を用いて、アンジーさんのこと、これから描く絵のことを、考えることができました)


キーボ(どういった風に描くか、今から楽しみです)


キーボ(ただ、今日は、この後の時間、どういうわけか真宮寺クンから修練場まで来るよう呼び出しを受けています)


キーボ(朝食が終わった後に、急に言われました)


キーボ(それは、アンジーさんも一緒……)


341 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/25(金) 22:23:14.86 ID:dexucHa3O



キーボ(ーーーそして、そのアンジーさんは、現在、朝風呂の真っ最中です)


キーボ(なんでも、アンジーさんは今日、“ やらなければいけないこと ” があるらしく、そのため心身ともにスッキリした気持ちで臨みたいのだそうです)


キーボ(朝風呂は有料なので、ご給金を使うことになりますがーーーそれでもとアンジーさんはお金を支払い、ひと風呂浴びることにしました)


キーボ(それが終わったら、ボクと一緒に修練場まで行くことになっています)


キーボ(お風呂に入った時間を考慮すれば、おそらくは、ちょうどいい時間で修練場まで到着できるでしょう)


キーボ(それにしても、真宮寺クン、この休日にいったい何の話を……)


342 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:00:38.13 ID:o8QAgG30O



キーボ(……もしかしたら、百田クン達に関わることでしょうか?)


キーボ(百田クン達は、現在アルバイトや勉強などで多忙のようですがーーー)


キーボ(ーーーそろそろ、落ち着ける頃合なのかもしれません)


キーボ(いくら超高校級といえど、ある程度の休息がなければ、参ってしまう)


キーボ(それを考えれば、丸一日休める日が、定期的に必要となる)




キーボ(もっとも、 “ その日がいつになるか ” までは、真宮寺クン達もわからないようで……具体的な日にちまでは述べてくれませんでしたがーーー)




キーボ(ーーーそれは、この間までの話。昨日の夜中辺りに、休む日がいつになるか決まったのかもしれませんね)


キーボ(その日が、近づいているということ ーーーそれを、真宮寺クンはボクらに伝えようとしている)


キーボ(百田クン達がこちらに来れるかもしれない)


キーボ(そんな日が近いとわかればーーーその時に向けた準備もしやすくなりますからね……)


343 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:03:20.72 ID:o8QAgG30O



キーボ(……百田クン達も、真宮寺クンも……苦しんでいるはずです)




キーボ(自分達が、作り物なのではないか?)




キーボ(そのことに、きっと苦しんでいる……)


キーボ(……真宮寺クンは、その苦しみを、なんとかしたいと考えた)


キーボ(だから、ボクらを呼び出し、百田クン達が丸一日休める日について、伝えると同時にーーー)




キーボ(ーーー昨日、ボクがアンジーさんに話したことを、今日この場で詳しく聞くことにした)


キーボ(……それを参考にすれば、他の全員が抱える苦しみもなんとかできるのではないか?ーーー)




キーボ(ーーーおそらくは、そう考えた)


344 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:07:00.38 ID:o8QAgG30O



キーボ(……だとすれば、渡りに船ですね)


キーボ(昨日、最後に修練場を出てから今日の朝食前に至るまで、真宮寺クンはどういうわけか自室におらずーーー)


キーボ(ーーー空鶴さんいわく、別の部屋で、 “ 何か ” をしており、そこで寝落ちしていたという話でした)


キーボ(故に、アンジーさんと話したことを、真宮寺クンに詳しく伝えることはできなかった)


キーボ(ですが、今からであれば、しっかり伝えられる)


キーボ(伝えれば、真宮寺クンの苦しみも、良い方向に和らぐかもしれませんしーーー)




キーボ(ーーーその後、ボクら三人で、百田クン達に同じ話をすればーーー)




キーボ(ーーーもしかしたら、全員の苦しみをーーー)






岩鷲「おー、どうした、キーボ? こんなとこでよ?」


345 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:10:05.01 ID:o8QAgG30O



キーボ「あっ、岩鷲クン」

岩鷲「ここは女風呂の近くだぞ? そんなとこで、なんで突っ立ってるんだ?」

キーボ「ああ、それはーーー」



岩鷲「ーーーまさか、覗きか?」



キーボ「なっ、やめてください! ボクはそんなことしませんよ!」



岩鷲「……じゃあ、なんで、こんなとこに突っ立ってるんだ?」


346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/26(土) 21:12:55.39 ID:o8QAgG30O



キーボ「それは、念のためにです」

岩鷲「? どういうことだ?」

キーボ「ああ、いえ……ちょっと真宮寺クンと待ち合わせをしておりましてーーー」

キーボ「ーーーそれで、万が一その時間に遅れることがないよう、一定時間を過ぎたら大声でアンジーさんに伝えることにしたんです」



キーボ「念のために」



岩鷲「ああ……そういうことか」



キーボ「あまり必要はないとは思いますがーーーそれでも念には念を入れておくことに越したことはない」



キーボ「そう、ボクとアンジーさんは考えたんです」


347 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:14:17.45 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……まっ、時間を守ろうとするってのは良いことだと思うぜ」

岩鷲「それに、キーボなら、アンジーちゃんに声を届けるのにピッタリだしな」



キーボ「ええ、ボクには声のボリュームを大きくする機能がありますからね」

キーボ「これならば、浴槽まで充分に伝わるでしょう」

キーボ「ロボットとして機能をもって、人の役に立てる。嬉しい限りですよ」


348 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:15:05.74 ID:o8QAgG30O



岩鷲「………」



キーボ「ーーー?」



キーボ「どうかしましたか? 岩鷲クン?」


349 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:17:00.92 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……あー、いや、キーボ、オメーはよーーー」



キーボ「……?」









岩鷲「ーーーなんだか良い面構えになったな」


350 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:17:53.92 ID:o8QAgG30O



キーボ「……そうですか?」

岩鷲「ああ、昨日の時は、なんだか元気ねえ感じだったがよーーー」

岩鷲「ーーー今じゃ、だいぶスッキリしてるように見えるぜ」

キーボ「………」

岩鷲「そして、それは、オメーだけじゃねえ」

岩鷲「朝会った時、アンジーちゃんも、真宮寺も “ 吹っ切れた ” って感じだった」

岩鷲「しかも、オメーよりも、ずっとだ」

キーボ「………」

岩鷲「昨日も今日も休日、元気のたまる日には違いねえがーーーそれだけで、そこまで吹っ切れた感じを出せるとも思えねえ」

岩鷲「なんか、あったのか?」


351 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:18:53.34 ID:o8QAgG30O



キーボ「……ええ、実はアンジーさんと、昨日いろいろと話をしましてね」



キーボ「それで、お互いに知らなかったことを知れたんです」



岩鷲「………」



キーボ「……そうして、いろいろな、わだかまりが解けたんです」

キーボ「そうなったという “ 結果 ” は、真宮寺クンにも伝えました」

キーボ「それが、ボクらが吹っ切れたように見える、理由なのでしょうね」


352 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:19:44.90 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……なんにしろ、良かったぜ」



岩鷲「居候の元気な面構えが見れてよ」



岩鷲「やっぱ我が家ってのは、こうでなくっちゃな!」



キーボ「岩鷲クン……」


353 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/26(土) 21:25:01.33 ID:o8QAgG30O



岩鷲「……それと、キーボ」



キーボ「?」



岩鷲「……今のオメーが、胸に込めてるその気持ちだがよーーー」







岩鷲「ーーー大事にとっとけ」


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