【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【後編】

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154 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 21:26:24.73 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ(……『魂の欠片』を通じ、人間に与えし『力』ーーー)




ユーハバッハ(ーーーそれらは、決して永く保つものでは無い)




ユーハバッハ(一定期間を過ぎれば、徐々に老いて劣化しーーーいずれ、力も欠片も、跡形もなく消え失せる)


ユーハバッハ(無論、老いの速さには、個人差があるがーーーそれでも消え失せる運命にある)


ユーハバッハ(そうして失われた力は、容易に取り戻せるものではない。仮に、私のような滅却師に『新たな欠片』を与えられたとしても、一時的にしか取り戻すこと叶わぬだろう)


ユーハバッハ(『魂の欠片』は、通常の人間において、基本的に一度きりの代物。【崩玉】などを介さず、二度も与えられることあればーーー死に近づいてしまう)


ユーハバッハ(……『力』が戻った直後、『力』も『欠片』も引き剥がされ、死ぬ)


ユーハバッハ(自らに死を与えることなく、力を取り戻したくばーーー通常の努力をもって、己を磨き上げるしかない)


ユーハバッハ(そうした無力な人間へと、成り下がることになるのだ)



タッタッタ……



ユーハバッハ(魂魄となって、生身の束縛から解放された場合、『力』を維持できる時間は伸びるがーーー)


ユーハバッハ(ーーー所詮は数日の差でしかない。それは魂魄となった時、その身に『欠片』が残されていようといなかろうと変わらぬこと。必ず老いはやってくる)


ユーハバッハ(老いた果てに、力と欠片は消え去りーーー無力な人間の魂魄へと成り下がる)



タッタッタ……


155 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 21:29:44.18 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ(『不死身の肉体』……もしくは、『霊力ある魂魄』を有しているのであれば、恒久的な維持は可能だがーーー)


ユーハバッハ(ーーー奴ら三人の魂魄と肉体は、どちらも脆弱なものだ)


ユーハバッハ(『力』を維持できず、老いて劣化し、力と欠片は消え失せる)



タッタッタ……



ユーハバッハ(……だからこそ、赤子の私に『力』を与えられた人間達は、永く保たなかったのだ)


ユーハバッハ(老いて力を失った……あるいは失われていくことを受け入れられず、そうした恐怖から狂気に呑まれてしまった)




ユーハバッハ(些細な言葉一つを切掛に、自死を選ぶ程までに)




ユーハバッハ(……奴らも自死を選ぶかどうかは知らぬがーーー少なくとも、現世に解放された瞬間、奴らの老いた力と欠片が消え去ったことは、確認済みだ)


ユーハバッハ(今の奴らは、何も無い、ただの人間に過ぎない)



タッタッタ……


156 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 21:32:51.87 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ(また、霊力が無いということは、死後、瀞霊廷に住めぬことを意味する)


ユーハバッハ(……住めぬが故に、生前も、死後も、いつ “ 死 ” を迎えるかわからぬ恐怖に、怯え続けることになる)



タッタッタ……



ユーハバッハ(……その恐怖は消えぬ)


ユーハバッハ(いかなる『未来』を夢見ようと、いかなる『希望』をもって前に進もうとも)


ユーハバッハ(その『想い』は、いつか “ 死 ” によって、黒く塗り潰されーーー砕かれることになる)




ユーハバッハ(……砕かれし、希望、未来、想いーーー)




ユーハバッハ(ーーーそんなものに、意味など無い)




ユーハバッハ(……利用価値を見出されることはあれ、必要無くなれば、闇に消える)




ユーハバッハ( “ 死 ” は、全てを奪うのだ)




ユーハバッハ(…… “ 死 ” を迎えし時、奴らは気づくだろう。終焉は常に、一(はじ)まりの前からそこにあることに)


ユーハバッハ(どれだけ苦しもうとも、どれだけ祈ろうとも、決して変わることの無い真理)


ユーハバッハ(そう、どれほど世界が革新を遂げようと、 “ 死 ” ある限り、決して真理が変わることは無い)



タッタッタ……


157 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 21:33:48.82 ID:Lvdsr++LO



ユーハバッハ「……全ては、奴らのお陰だ」






モノクマ?「陛下……」






ユーハバッハ「哀れなり」






ユーハバッハ「奴らのお陰で、永き時間(とき)を得られぬ数多の命は、限られた可能性の中で、死の恐怖に怯え続けることになるのだ」






ユーハバッハ「永遠に」


158 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 21:34:46.28 ID:Lvdsr++LO









クシャナーダ「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」








159 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 21:36:10.18 ID:Lvdsr++LO









グシャァッ!!!








160 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:24:24.27 ID:Lvdsr++LO



ー尸魂界・志波家の屋敷の修練場ー



……ガチャッ



アンジー「………」



キーボ「……来て頂いて、ありがとうございます。アンジーさん」



アンジー「……アンジーは、ヒマだからねー」



アンジー「おやすみまでの時間、何もやることないから……」


161 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:25:18.23 ID:Lvdsr++LO



キーボ「………」



アンジー「……それよりも、アンジーをここに呼んだ理由は何なのかな?」



キーボ「………」



アンジー「それを、教えてほしいかな……」


162 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:26:02.96 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……それは、アンジーさんに伝えたいことがあるからです」



アンジー「……?」



キーボ「ただ、それを言う前に、聞かせて欲しいことがあります」


163 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:26:59.62 ID:Lvdsr++LO



キーボ「ーーーアンジーさんは、生まれ変わりがこわいですか?」



アンジー「………」



キーボ「生まれ変わりという、自己の喪失がこわいですか?」



キーボ「 “ 死 ” がこわいですか?」



アンジー「………」



キーボ「……それに、答えては、頂けませんか?」


164 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:27:53.59 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……キーボは、何を、言ってるのかなー?」



キーボ「………」



アンジー「死ぬのが、こわくないかー、だってー?」



アンジー「本当、何を言ってるのかなー?」



キーボ「………」



アンジー「……死ぬのが、こわくない、命、なんてーーー」









アンジー「ーーーいない、と、思うよ……?」


165 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:28:36.88 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……ありがとうございます。答えて頂いて」



アンジー「………」



キーボ「ボクも同じです」



アンジー「……?」



キーボ「ボクも、 “ 死 ” は、こわいです」


166 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:30:00.33 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……何を言ってるのかな?」

キーボ「………」

アンジー「キーボは瀞霊廷に住めるよね?」

キーボ「……はい」

アンジー「……キーボはロボットだよね?」

キーボ「……その通りです」



アンジー「だったら、キーボは、『死なない』ーーー」



キーボ「ーーーそれは違います」


167 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:30:49.22 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……確かに、ボクは瀞霊廷に住めますし、紛れもないロボットです。生き物としての寿命だってありません」



アンジー「………」



キーボ「ですが、それでも、死の恐怖はわかります」

キーボ「寿命がなくても、 “ 死 ” を迎えずに済むとは限りませんから」



アンジー「………」



キーボ「……ボクも、 “ 死 ” を迎えることになるかもしれません」



キーボ「敵の手によって、強制的に」


168 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:38:15.30 ID:Lvdsr++LO



アンジー「………」



キーボ「……瀞霊廷は、この世界を管理する者達の本拠地です。それだけに、今の世界を良しとしない者から、狙われる理由がある」

キーボ「……どんなに盤石なセキュリティを誇っていようと、外敵はそれを上回る方法で侵入し、攻撃してくるかもしれませんしーーー」

キーボ「ーーーあるいは、一部の死神が、藍染一派のように裏切り、敵側につく可能性もゼロではない……」

キーボ「これからずっと、決してあり得ないとは、誰にも言えないはずです……」



アンジー「………」



キーボ「それらを考慮すれば、瀞霊廷にいるからこそ、絶望的な “ 死 ” を迎えてしまうことだってーーーまったくあり得ない話ではないと思います」



キーボ「……事実として、瀞霊廷の死者はたくさんいます」



キーボ「特に、十年前の戦争においてーーーー」


169 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:40:30.49 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……!」



キーボ「ーーーいずれ、ボクも敵に襲われて、死ぬかもしれません」

キーボ「とても無念で……絶望的な “ 死 ” を迎えることになるかもしれません」

キーボ「……ボクは、この通り、ロボットですからね。そして、世の中は、ロボットを傷つけることに罪悪感を持てる人ばかりではない」



キーボ「……そうした世の流れのままに、身も心も傷つけられーーー」



キーボ「ーーーどんなに惨たらしい “ 死 ” を迎えることになるか……わかったものではないんです」



アンジー「………」


170 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:42:22.18 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……それで、キーボが伝えたいことって、結局、なんなのかなー?」

アンジー「……こわいのはみんな同じなんだから、ガマンしろってことー?」



キーボ「……そうではありません」

キーボ「 “ 死 ” に、怯える資格は、誰にだってあります」

キーボ「それを奪う権利など、誰にもありはしない」



アンジー「………」



キーボ「ただ、ボクは、誰にでも “ 死 ” の可能性があると理解しーーーその上で、やりたいことができたのです」


171 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:43:33.29 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……やりたいこと?」



キーボ「ええ、そうです」



キーボ「そして、それこそが、最初にアンジーさんにお伝えしようとしたことでもあります」



アンジー「……?」


172 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:47:50.26 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……アンジーさん、どうかボクとーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーボクと、一緒に、絵を描いては、頂けませんか?」


173 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:48:41.60 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……絵?」



キーボ「そう、絵です」



キーボ「テーマは、アンジーさんの望む形で大丈夫です」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさん……」



キーボ「どうか、ボクと、一緒に絵を描いては頂けませんか?」


174 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:49:19.14 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……どうして、かな?」



キーボ「………」



アンジー「……どうして、そうしたいと思ったのかな?」


175 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:50:04.48 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……それはーーー」






アンジー「………」






キーボ「ーーー残したいから、です」


176 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:50:45.93 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……何を?」



キーボ「……決まっています」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんとボクの想いをーーー」







キーボ「ーーー価値ある、『想い』を、です」


177 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:51:45.22 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……価値ある、『想い』?」



キーボ「はい、ボクらの『想い』を、残すんです」

アンジー「………」



キーボ「……何かに真剣に打ち込めば、そこに想いが募られていく」

キーボ「その想いに、価値があることを、実感できる」



キーボ「……想いの価値を、信じられる」


178 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:53:41.12 ID:Lvdsr++LO



キーボ「信じることができればーーー込められた想いは、より確かな『想い』に変わる。より深く絵の中に込められていく」

キーボ「そうして、『想い』を、自分の意志で残すことができる」

キーボ「赤松さんが、『想い』を残した時のように……」



アンジー「………」



キーボ「……それは、とても素晴らしいことだと思います」

キーボ「いずれ、終わりを迎えるとしてもーーー生きていて良かったと、心から喜ぶことのできることだと思います」

キーボ「その全てが、意味のある……価値あることだと思います」



キーボ「そのために、想いを込めて、真剣に描きたい絵を描くんです」


179 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:54:57.47 ID:Lvdsr++LO



キーボ「……お願いします、アンジーさんーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどうか、ボクと一緒にーーー」







キーボ「ーーー絵を描いては、頂けませんか?」


180 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:55:58.23 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……あー、悪いけど、アンジー、実はいま、絵の調子が悪くてねー?」



キーボ「………」



アンジー「だからーーー」



キーボ「ーーーそれでも、です」


181 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:57:08.84 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……!?」



キーボ「……確かに、絵のことを想えば、上手に描けるに、越したことはないでしょう」



アンジー「………」



キーボ「しかし、上手に描けなかったからと言って、価値がなくなるんですか?」


182 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:58:03.71 ID:Lvdsr++LO



アンジー(ああー……そういう話……)




キーボ「………」




アンジー(……話しちゃったんだね、アンジーのこと……)






アンジー(是清めーーー)






キーボ「ーーーたとえば!」


183 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:58:50.46 ID:Lvdsr++LO



アンジー「!」



キーボ「たとえば! 子供は家族を想い、その似顔絵を描くことだってあります」



アンジー「………」



キーボ「アンジーさんも、そういう事例は知っているのではありませんか?」


184 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/22(火) 23:59:20.32 ID:Lvdsr++LO



アンジー「……確かに、知らないわけじゃないけどーーー」



キーボ「!」



アンジー「ーーーそれが、何?」


185 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:01:30.45 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……お答え頂き、ありがとうございます」

アンジー「………」

キーボ「……子供が、家族のために、描いた絵ーーー」

キーボ「ーーーその出来栄えは、プロの視点から見れば、未熟と言わざるを得ないのかもしれない……」

アンジー「………」

キーボ「しかし、それで、絵の価値は、失われるのでしょうか?」

キーボ「もし、その絵を描き終わる前に、【家族と離れ離れになってしまったら】【二度と会えなくなってしまったら】ーーー」



キーボ「ーーーその似顔絵の価値は、失われるのでしょうか?」


186 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:02:58.20 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……そんなことはないはずです」

キーボ「その絵に、想いが込められているのであれば、込めた人にとっては、紛れもなく価値ある絵なんです」



アンジー「………」



キーボ「……プロの視点から見た出来がどうこうなどーーー関係がない」

キーボ「誰一人として、その絵の価値を、否定することなどできやしない」

キーボ「故に、想いを込めて、絵を描くことーーー」



キーボ「ーーーそれは、その出来に関係なく、紛れもなく価値あること」



キーボ「価値あると信じられるが故に、想いは、より確かな『想い』に変わる。より深く絵の中に込められていく」



キーボ「そうして、『想い』を残すことができる」



キーボ「ボクは、そう考えています」



アンジー「………」


187 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:04:03.43 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……アンジーさんはーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどう、思いますか?」


188 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:04:53.66 ID:gd3AZBiSO



アンジー「………」






アンジー「…………」









アンジー「………………」


189 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:05:31.40 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……ごめんね、キーボ……」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーには、よく、わかんないや……」


190 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:06:27.14 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……そうですか」



アンジー「……ごめんね、キーボ?」



アンジー「アンジーは、そのーーー」



アンジー「ーーーなんて言ったら良いか、わからなくて、上手く答えられない……」



キーボ「………」



アンジー「……ごめんね?」


191 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:07:41.51 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……大丈夫ですよ、アンジーさん」



キーボ「アンジーさんなら、きっとわかるはずです」



アンジー「………」



キーボ「……そう、雲さえーーー」



キーボ「ーーー雲さえ、取り払うことができればーーー」



キーボ「ーーーきっとーーーー」


192 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:08:32.87 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……雲、?」



キーボ「ーーーええ、雲です」



アンジー「………」



キーボ「……ここで言う雲とは、 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” ーーー」







キーボ「ーーーそうした、考え方のことです」


193 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:53:52.66 ID:gd3AZBiSO



キーボ「ですが、そうした考え方……雲を取り払うことさえできれば、そこから星が見えてきます」



キーボ「人という名の星が」



アンジー「………」



キーボ「ああ、ここで言う星とは、空にある星という意味で、決して星クン個人のことではーーー」



アンジー「……そんなの、言わなくてもわかってるから」


194 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:54:35.06 ID:gd3AZBiSO



キーボ「ーーーすみません」シュン…



アンジー「……それよりも、なんだけどーーー」



キーボ「?」



アンジー「ーーーその続きーーー」



アンジー「ーーー聞かせて、くれる?」


195 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:55:09.30 ID:gd3AZBiSO



キーボ「!」



アンジー「……キーボの言う、その話が、どんな感じなのかーーー」







アンジー「ーーーちょっとだけ、気になるから……」


196 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:55:39.11 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……はい、わかりました!」



アンジー「………」



キーボ「さっそく、続きを、話させて頂きます!」


197 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:57:17.67 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……続きについてですがーーー」



キーボ「ーーー人は、きっと誰もが、星のような存在なんだと、思います」



キーボ「だからこそ、目の前にいる人が、星のように眩しく見えることもある」



アンジー「………」



キーボ「その眩しさは、その人の想いが、目に見える輝きとして現れたものでありーーー」



キーボ「ーーーその輝きに、人は価値を付けることもある」



アンジー「………」



キーボ「しかし、人の全てが、星のように眩しく見えるわけではない……」

キーボ「その中には、自分の眩しさを、こちらまで届かせることが叶わないものも、存在するのではないでしょうか?」

キーボ「もしくは、かつては眩しく光っていたもののーーーブラックホールか何かに呑まれ、砕け散り……消えてしまったとは考えられないでしょうか?」


198 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 00:58:06.88 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……それらを人は、姿の無い闇としか認識できませんがーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーー逆に言えば、闇として認識することはできるわけです」

キーボ「ならば、その闇に込められた想いの価値に、気づくことだってできる」

キーボ「価値ある『想い』なのだと、信じることもできる」



キーボ「ボクは、そのように思っています」



アンジー「………」


199 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 01:01:43.11 ID:gd3AZBiSO



キーボ「そう、人は、ものごとの出来に関わらず……そこに込められた想いの価値に、気づくことができる」

キーボ「変わらぬ価値があると、価値ある『想い』が残されていると、信じることもできる」

キーボ「それは、雲を取り払いさえすれば、できること」



キーボ「 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” ーーー」



キーボ「ーーーそうした考え方……雲を取り払い、闇と向き合えば、誰にだって、できることなんですよ」


200 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 01:03:09.48 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……キーボも、なんだか、ロマンチックなこと言うんだねー?」

アンジー「本当に、キーボなのか、疑っちゃうよー」



キーボ「……確かに、ボクらしくない言葉かもしれません」

キーボ「ですが、それでも過去と向き合い、思考を重ねーーー」



キーボ「ーーー心のままに、想いを募らせ、選択した言葉であることに変わりはない」



キーボ「故に、ボクは、その価値を、信じている」



キーボ「……この言葉もまた、確かな『想い』なのだと、信じているんです」



アンジー「………」


201 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 01:03:59.43 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……改めて言わせて貰いますよ、アンジーさん」



アンジー「………」



キーボ「今のアンジーさんは、 “ 眩しく見えないものに、意味など無い ” という考え方……雲に覆われている」



キーボ「……そして、上手くいかなかったもの、すなわち闇の価値を見失っているーーー」



キーボ「ーーーただ、それだけなんです」


202 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:40:28.11 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……何それ」



キーボ「………」



アンジー「闇の、価値って、何?」



キーボ「………」



アンジー「闇って、光すら届けられないものでしょ?」


203 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:41:42.34 ID:gd3AZBiSO



アンジー「そう、闇はーーー」



アンジー「ーーー上手くいかないもの」



キーボ「………」



アンジー「くらくて、こわいもの」



アンジー「それに、誰が価値を付けてくれるの?」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーはねー? こう思ったりもするんだー」



アンジー「闇に価値なんてないーーー」



キーボ「ーーーそれは違います」


204 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:42:56.84 ID:gd3AZBiSO



キーボ「闇に価値がないなんて、そんなはずはありません」



アンジー「………」



キーボ「……ボクは、闇の価値を知っています」



キーボ「闇の価値を知る存在を、知っているんです」


205 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:44:35.08 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……どういうこと?」



キーボ「……まずは、闇の価値を知る者、その肩書きを挙げましょうか、アンジーさん……」



アンジー「肩書き……?」



キーボ「そう、闇の価値を知る、肩書き、それはーーー」









キーボ「ーーー宇宙飛行士と花火師です」


206 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:46:52.20 ID:gd3AZBiSO



アンジー「宇宙飛行士と……花火師?」



キーボ「ーーーまずは、宇宙飛行士についてから説明しましょう」



アンジー「………」



キーボ「宇宙飛行士とは、決して、現在見える夜空の光と輝き……その星だけを求める存在ではありません」

キーボ「夜空の闇の先にある、まだ見ぬ星の輝き……もしくはかつてあった星の輝きーーー」



キーボ「ーーーすなわち、宇宙の闇に込められた想いを探求し、その価値を見出す存在でもあるのです」



アンジー「………」



キーボ「故に、宇宙飛行士は、闇に価値があることを知っている」

キーボ「だからこそ、 “ 上手くやれない人 ” を想い、信じることができる」

キーボ「その『想い』をもって、 “ 上手くやれない人 ” の想いに手を届かせることができる」

キーボ「その人に、自分を信じる気持ちを与え、輝かせることができる」



キーボ「……そうして、その人から湧き上がった『想い』を、他の人にも伝えーーー両者の架け橋を築くことだってできるのだと」



キーボ「少なくとも、ボクの知る宇宙飛行士は、そういう存在でした」



アンジー「………」


207 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:49:03.45 ID:gd3AZBiSO



キーボ「花火師も同じです」

キーボ「そう、花火師もまた、闇に価値あることを知っている存在なんです」

アンジー「……どうして?」

キーボ「花火師とは、決して地上に光を降り注がせるだけの存在ではないからです」

キーボ「花火師とは、星々が想いの果てに、闇に消えてしまったしてもーーーその闇の価値を見出す存在なんですよ」

アンジー「……?」

キーボ「闇の価値を見出すからこそ、闇を別の形で輝かせようと、己が意志をもって、光の波動を作り出す」

アンジー「………??」

キーボ「花火の光は、打ち上げるものにしろ、地上で持つものにしろ、夜空の闇があることで、輝きを生みます」

キーボ「それは、【花火の光によって】【夜空の闇が輝く】ということに他なりません」


208 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:50:22.00 ID:gd3AZBiSO



アンジー「闇が、輝く……?」



キーボ「そうです。闇が輝くんです」



アンジー「………」



キーボ「断っておきますが、これは、 “ 闇の暗さで光が引き立つ ” とか……そういう意味で言っているのではありません」



キーボ「…… “ 闇だって光のように輝くことができる ” ーーー」



キーボ「ーーーそういった意味で、ボクは言っているんです」


209 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:52:39.90 ID:gd3AZBiSO



アンジー「……?」



キーボ「……人の抱える心の闇が、花火の光で照らされーーー元気づけられることもある」

キーボ「花火を見た後に、勇気あふれる自分へと、変われることもある」



キーボ「【花火の光によって】【夜空の闇が輝く】から……」



アンジー「……!」



キーボ「……そうして、夜空の闇が、輝ける価値ある存在だと証明されたからこそ、同一性を持つ自分の心の闇もまた、同様の存在だと想えるようになる」



キーボ「……自分を信じることができる」



キーボ「そう、自分がどんなに闇を抱えていたとしてもーーーその想いを受け入れた上で、どんな自分になりたいか、前向きに想い描くことができる」



キーボ「……その『想い』をもって、輝かしい未来を、想い描くこともできる」



キーボ「そうすれば、そこに繋がるかもしれない道を、歩むこともできますしーーー」



キーボ「ーーーそうしている自分もまた、輝いた存在であると、想えるようになる」



キーボ「違いますか?」



アンジー「………」


210 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 12:54:29.00 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……光は輝くものであり、闇もまた輝くもの」



キーボ「そう、光と闇、どちらも価値は同じなんです」



キーボ「……事実として、生きているか、死んでいるかで、人の価値が変わったりはしない」

キーボ「ならば、光だろうと、闇だろうと、込められた想いの価値に、違いなどない」



キーボ「その全てに意味が……価値があるのだと」



キーボ「信じて、 価値ある『想い』として、世に残すこともできるのだと」



キーボ「花火師は、それを証明する存在でもあるんですよ」



アンジー「………」


211 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:21:30.66 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……それらは、宇宙飛行士と花火師に限ったことではありません」



キーボ「誰もが闇に価値を見出そうとしている」



アンジー「………」



キーボ「生前のボクと、現世に残ったみんなだって同じです」

キーボ「……ボクらは、その側で闇になってしまった人々とその想いの価値を知っています」



アンジー「……っ、」



キーボ「そして、その闇を形作るため、血と灰を残し、風に吹かれーーー」



キーボ「ーーーそのまま、風となった人々と想いに、価値があることを知っています」



キーボ「……その人を間近で見ている見ていないに関わらず、その全てに価値があるのだと、知っているのです」



アンジー「………」



キーボ「……繰り返されたその果てに、ボクらは、死んでいった全ての人達とその想いに価値を見出し、信じることができた」



キーボ「その『想い』のため、ボクらは、命をかけたんです」


212 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:25:53.10 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……この死後の世界にも、生前の自分達が迎えた終焉に……闇に価値を見出そうとする魂魄がいる」

キーボ「事実として、ここにいない百田クン達だって、かつて自分達の迎えた終焉に……闇に価値を見出そうとしています」



アンジー「………」



キーボ「だからこそ、百田クンは、宇宙があるかどうかもわからない世界……【宇宙に行く夢を叶えられないかもしれない世界で】【それでも夢を想い描いて】、実現することに決めた」

キーボ「だからこそ、入間さんは、百田クンを 【信じて】【支え合いながら】【共に生きて】、研究を行うことに決めた」

キーボ「だからこそ、茶柱さんと東条さんとゴン太クンは、【みんなで】【協力しあった上で】【人の心を恐怖から護ろうと】、死神を目指した」

キーボ「だからこそ、赤松さんは、【コロシアイを終わらせるために犯した罪で】【一人になってしまう道】【それを選ぼうとした】王馬クンを引き止めて、説得した」

キーボ「だからこそ、王馬クンは、赤松さんに応え、【みんなで】【人を本当の意味で笑わせる】道を選んだ」

キーボ「だからこそ、天海クンと星クンは、 【人を悲しませる結果】【それが生み出されないよう】、赤松さんと王馬クンを支えようとしている」



キーボ「……だからこそ、真宮寺クンは、【人の心を】【大切にできる人になる】ことを決めた」



アンジー「………」


213 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:26:54.01 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……アンジーさんだって、同じです」

キーボ「アンジーさんもまた、過去の闇に価値を見出そうとしている」



アンジー「………」



キーボ「だからこそ、アンジーさんは、【みんなを】【誰もが憧れる世界へと】、送り出したーーー」







キーボ「ーーーそうでしょう?」



アンジー「………」


214 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:29:35.36 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……そうして、アンジーさんを含めた誰もが、闇の価値を見出そうとしている」

キーボ「過去の自分達の迎えた闇に……価値を見出そうとしているんです」



キーボ「それは、闇が価値を見出せるだけの存在、すなわち闇に価値があるという証明に他なりません」



キーボ「自分達の過去は、決して、絶望を形作るだけの無意味なものではなかったのだと」

キーボ「そうした過去の経験を糧に、自分を輝いた存在へと昇華させることもできる……意味あるものだったのだと」

キーボ「過去に想ったことを通じ、輝かしい未来を想い描くこともできる……価値あるものだったのだと」

キーボ「過去の価値を信じて、そうしている現在の自分を信じて、生きていけるのだと」



キーボ「アンジーさん達の今の生き様が、それを証明しているんです」



アンジー「………」


215 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:32:20.07 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……もちろん、その結果、どうなるかまではわからない」

キーボ「どこまで上手くやれるか? それはその時の未来になってみないと、わからないことなのでしょう」



アンジー「………」



キーボ「ですが、それでも、価値を見出して生きていける」

キーボ「どんな過去であろうとーーーそれでも意味あるものだったのだと」



キーボ「過去を大切にできる」



キーボ「そうやって、過去を大切にするから、そこから生まれた現在の自分を大切にできる」



キーボ「それは、闇に価値があると理解すればできること」

キーボ「……その闇を形作るため、血と灰を残し、風と化した人の想いーーー」



キーボ「ーーーそれに、意味を持たせることも可能だと、理解すればできること」



キーボ「それほどの、価値ある『想い』だったと、信じ続けていればできること」


216 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:35:46.83 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……風となった想いにも価値があると信じ、どうすればそれに報いることができるかーーー探求し続ける」



キーボ「そうして、『想い』を背負い、大切にしていればーーー」



キーボ「ーーー雲を取り払うことだってできる」



アンジー「………」



キーボ「……もちろん、すぐに取り払えるとは限らない。時間をかけなければ、信じきれない場合もあるでしょう」



キーボ「ですが、それでも、『想い』の風で雲を取り払い……上手くいかなかったという闇を見つめられるのならーーー」



キーボ「ーーー闇と向き合えるのなら、誰にだって、闇の価値を見出せるんです」



アンジー「………」


217 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:38:17.80 ID:gd3AZBiSO



キーボ「絵に関しても同じです」

キーボ「……たとえ、上手く描けなかったとしてもーーー」



キーボ「ーーー想いの込められた絵であることに変わりはない」



キーボ「……人によっては、ただの絵でしかないのかもしれませんがーーーそれでも、想いを込めることはできる」

キーボ「想いを込めて描き、想いを込めて鑑賞し、想いを込めて思い出すことができる」

キーボ「……込められた想いの価値を信じ、それを想像することだってできる」



キーボ「そうして、想いを募らせていけばーーー込められた想いが、より確かな『想い』に変わり、深く絵の中に込められていく」



アンジー「………」


218 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:40:44.04 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……絵は、想いを込めた人にとって、絶対に意味のある……価値あるものなんです」

キーボ「それほどまでに想いを募らせたこと……言い換えれば、それほどまでに愛せるだけの存在がいること」



キーボ「その存在に報いるために生きたいと想えること」



キーボ「……そのためにも、その存在を、心の中に残し続けようと想える」

キーボ「そんな自分を誇りに想い、信じて心の支えとすればーーー輝かしい未来を想い描く心の余裕だって生まれる」

キーボ「そう、心の支えがあれば、輝かしい未来への道を歩むーーー活力だって生まれる……」



キーボ「……想いに価値があるから、できることなんです」



キーボ「ならば、上手く描けようとそうでなかろうと……想いを込めたのであれば、その人にとって変わらない価値がある」



キーボ「違いますか、アンジーさん?」


219 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:41:36.04 ID:gd3AZBiSO



アンジー「それは…そうだけど…」



キーボ「……そうなんですよ」



アンジー「………」



キーボ「想いを込めた人、その人だけは、絵に……作品に価値があることをわかっている」



キーボ「それで良いんです」


220 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:45:32.14 ID:gd3AZBiSO



キーボ「想いを込めた人とって、価値があるから、作品を大切にできる」

キーボ「作品を通して、込めた想い……すなわち “ 自分 ” も大切にできる」

キーボ「だからこそ、人は、自分とその作品を、より輝かせることはできないか、より大切にする方法がないか模索し、試行錯誤を繰り返す」



キーボ「そうして、自分と作品と向き合い、対話を重ねたりもする」



キーボ「それらを壊さないためにはどうするべきか? それらを想い描く上で、やって良いことと悪いことは何か?」

キーボ「……自分と作品の中に、どのように想いを募らせ、どのような心を形作るべきなのか?」



キーボ「それらを見極め続ける」



キーボ「……その結果として、自分と作品を描き続ける上での【こだわり】【美学】【倫理】ーーー」



キーボ「ーーー【信念】が生まれ、込められた想いは、より確かな『想い』に変わる」



キーボ「それら全てが、心となり、自分と作品の中に込められていく……」



アンジー「………」


221 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:47:31.41 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……その結果が、姿無き闇だとしても」



キーボ「光だとしても」

キーボ「生だとしても」

キーボ「死だとしても」



キーボ「ーーー価値に、何ら変わりはない」



キーボ「価値の感じやすさに違いはあるかもしませんがーーーそれでも根幹となる価値が消えていくことは、決してない」

キーボ「そう、込められた想い……その全てに価値があることは、永遠に変わることのない事実」



キーボ「誰にも、その価値を否定する権利なんてありはしない」

キーボ「誰にも、その価値を消すことはできないんです」


222 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:48:27.02 ID:gd3AZBiSO



キーボ「ーーーだから、ボクは、アンジーさんと、絵を描きたくて仕方がありません」



アンジー「………」



キーボ「その絵に想いを込めたい」

キーボ「決して変わらない、価値ある『想い』であると、信じて」

キーボ「アンジーさんと一緒に込めたい」



キーボ「……そうやって、『想い』を残したくて、仕方がないんです」



アンジー「……キーボ」


223 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 13:49:16.98 ID:gd3AZBiSO



キーボ「……いつか、お別れをすることになったとしても、それでも一緒に生きることができて良かったと」



キーボ「アンジーさんとボクーーー双方の『想い』を背負い、これからも歩み続けようと……」



アンジー「………」



キーボ「……心から、そう想えるように」


224 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:16:42.61 ID:pwF/1nuYO



アンジー「………」






キーボ「………」


225 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:19:04.09 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……『想い』を残す、かー」

アンジー「それは、確かに、価値あることかもしれないね?」



キーボ「!」



アンジー「……想いを込めて絵を描くーーー」



アンジー「ーーーアンジーの知り合いの子供も、同じようなことはしているからね」



キーボ「……!」



アンジー「……まあ、アンジーとやってるわけじゃないけどねー」


226 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:23:10.05 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……あの子が、やっていること」

アンジー「それに、何の価値もないなんて、アンジーには考えられないなー」



キーボ「!」



アンジー「……だから、もし、同じようなことができるならーーーいつか生まれ変わるとしても、落ち着いていられるかもね」



アンジー「……生まれ変わるまで、ずっと、ずっと」



アンジー「淋しくなんて、なくなるかもね」



キーボ「アンジーさんーーー」







アンジー「ーーー解斗も同じこと言ってたよ」


227 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:24:31.33 ID:pwF/1nuYO



キーボ「ーーー!?」



アンジー「……実はねー? キーボがここで話してくれたことーーー」

アンジー「ーーーそれは、前に解斗が、アンジーに話してくれたことと、同じ話だったんだー」



キーボ「なっーーー!!」



アンジー「あー、もちろん、何もかも一緒じゃないよ?」

アンジー「……花火師のところとかは少し違う内容だったけどーーー」



アンジー「ーーーそれでも、伝えたいことは、概ね同じだったはず、って話だよー」



キーボ「………」


228 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:26:33.16 ID:pwF/1nuYO



アンジー「…… “ それならどうして? ” って感じだねー?」



キーボ「………」



アンジー「……だったら教えてあげる、その理由」


229 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:29:50.95 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……理由?」



アンジー「……アンジーはねー? 信じられないんだよー」



キーボ「……信じられない?」



アンジー「そう、信じられない」



アンジー「他ならない、自分を」


230 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:30:46.78 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……?」



アンジー「アンジーはねー? 自分を信じられないんだー」

アンジー「だから、自分の込める想いを信じられない」



アンジー「その想い自体が……意味の無い、価値の無いものだったんじゃないか、って」



アンジー「どうしても、そう、思っちゃうの」


231 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:31:50.78 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……そんなーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーーどうして、そんな風にーーーー」


232 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:32:48.33 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……どうして、そんな風に、思っちゃうのか?」



キーボ「………」



アンジー「その答えは、とっても、簡単」



アンジー「だって、アンジーはーーー」









アンジー「ーーー人じゃないからね」


233 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:33:44.14 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……?」



アンジー「………」



キーボ「………??」







キーボ「???」


234 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:35:04.78 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……言っておくけど、これはアンジーがクインシーだからだとかーーーそういう話じゃないからねー?」



キーボ「………」



アンジー「他ならない、アンジーが、物だから、言っているんだよー」



キーボ「物、ってーーー」




キーボ(……まさかーーー)




アンジー「ーーーキーボだって本当は知ってるんじゃないの?」


235 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:37:00.36 ID:pwF/1nuYO



キーボ「……えっ、!?」

アンジー「キーボは、是清が地獄行きの話をしても、素直に受け入れてたよね?」

キーボ「……!!」

アンジー「アンジーと是清が同じ世界にいることについて、何も追求しなかったよね?」

キーボ「あっ…それは…」

アンジー「それだけじゃないよ? アンジーたちは、聞いたんだ」

キーボ「……聞いた……?」

アンジー「うん、アンジーたち以外の、この死後の世界で暮らしている人達から聞いちゃったんだ」



アンジー「現世について」


236 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:39:00.51 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……現世、それは、アンジーたちが知ってる外の世界とかなーり違う」



キーボ「………っっ、!!」



アンジー「それだけじゃないよ? それだけなら、モノクマがアンジーたちの頭に何かやっただけかもしれない」

アンジー「悪ふざけで、ちょっとだけ記憶をいじって、おかしくしただけなのかもしれない」

アンジー「だから、アンジーたちの記憶とは少し違うけどーーー本当は、同じようなものがあったのかもしれない」



アンジー「……そう、思えたかもしれない」


237 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:40:04.50 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……だけど、そんな軽い話じゃなかった」



キーボ「………」



アンジー「だって、現世にはーーー」









アンジー「ーーー『超高校級』なんて、無かったんだから」


238 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:41:16.88 ID:pwF/1nuYO









キーボ「ーーーーーーーーーーーーーーー」








239 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:42:21.21 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーいや、あることにはあったよ?」



アンジー「でもね? “ それ ” は、アンジーたちが知っているのとは、ぜんぜん違ってた」



キーボ「………」



アンジー「……よく、『超高校級』は、世界が違うとか言われるけどーーー」



アンジー「ーーー現世の『超高校級』は、本当に世界の違うものだったんだよ」


240 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:45:01.28 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……現実じゃない世界……」



キーボ「………」



アンジー「……その世界には、モノクマがいて、コロシアイもあって、学級裁判もあった」



アンジー「ーーーそれって、そういうことなんでしょ?」



キーボ「っ、」



アンジー「アンジーたちは、そういう存在なんだよね?」


241 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:46:58.70 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーだったら、アンジーは、自分の、何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「……現実に無いものを、信じる?」

アンジー「そんなの、何も信じてなかったのと同じ……」

アンジー「……信じられるわけ、ないよ」



キーボ「アンジーさん……」



アンジー「……キーボだって、アンジーの神さまを信じられないんでしょ?」

キーボ「!?」

アンジー「だから、斬魄刀の話の時、主なんていないって言ったんだよね?」

キーボ「……っ、それはーーー」



アンジー「ーーーそれが、普通だよ」



アンジー「アンジーだって、もうわけがわからないんだから」



キーボ「………!!」


242 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:49:32.59 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……この死後の世界はねー? アンジーが、神さまから聞いていたような場所じゃなかったんだよー」

アンジー「しかも、この世界に来てから、神さまの声が、ちゃんと……聞こえなくなった……」



キーボ「………」



アンジー「……神さまの力だって、無くなった」

アンジー「あの学園にいた時みたいに、上手に作品を作れなくなった」

アンジー「上手に、絵を描けなくなったんだよ……」



キーボ「………」


243 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:51:06.17 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……アンジーは、何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「……こんな自分の何を、どう信じれば良いのかな?」



アンジー「こんな自分の、どんな想いに、どんな意味があると信じれば良いのかな?」



アンジー「どんな価値があると信じれば良いのかな?」


244 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:52:49.68 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……アンジーは、本当にアンジーなのかな?」

キーボ「っ、」

アンジー「……魂魄があるわけだし、 “ 芯 ” になった人はいるかもしれない……」



アンジー「……だけどそれは、このアンジーと同じなのかな?」



キーボ「……っっ、!!」



アンジー「……本当は違うかもよ?」

アンジー「……アンジーのこの名前も、カラダも、全部、見せかけだけの、ハリボテだとしたら……?」



キーボ「……!!!」



アンジー「……アンジーの根っこは、全く違う、別のナニカなのかもしれない」



アンジー「この心ですら、そうなんだよ?」


245 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:53:58.31 ID:pwF/1nuYO









キーボ「…………」








246 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:56:19.76 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……だったら、キーボのいう想いだって、本当は、違うかもしれないよ?」

キーボ「!」

アンジー「こんなおかしなことがあり得るならーーーこうして、キーボと話しているのだって、それは今から始まったものなのかもしれない」

キーボ「………!!」

アンジー「それより前の話なんて全部、最初から無かったのかもしれない」



アンジー「アンジーは、空っぽなんだよ」



キーボ「………」



アンジー「そんな想いに……どんな意味があるの?」

アンジー「どんな価値があるの?」

アンジー「そんな想いで絵を描いて……何になるの?」



キーボ「………」



アンジー「……そんなの、虚しいだけだよ」


247 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:58:16.64 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーもしも、神さまの声が! ちゃんと聞こえていたのなら!」



アンジー「神さまの力があったのなら! 『すごい力』があったのなら!」



アンジー「アンジーだけの、『すごいもの』を持てたのなら! アンジーが大好きになれる『希望』を持てたのなら!」



アンジー「……アンジーだけの! 価値ある『物』を! 持つことができたのなら!」



アンジー「解斗たちみたいに、自分を、『人』と想えたかもしれない!」


248 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 14:59:45.14 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……そうだよ! それさえできれば! 物でも! 人でなしでもーーー」



アンジー「ーーー人…の、よう、に……!」



キーボ「………」



アンジー「……っ、だけど! いまのアンジーは違う!」



アンジー「解斗たちや是清みたいな、『すごい力』は無い!」

アンジー「蘭太郎だって、『すごいもの』がある! アンジーには無い、時間と可能性が、いっぱいある!」



アンジー「ーーーキーボは、もっとある!」



キーボ「………」



アンジー「空鶴たちとも、空吾たちとも、ユウイチたちとも違う!」



アンジー「アンジーは、みんなとは違う!」

アンジー「アンジーは、何も無いんだよ!!」



アンジー「アンジーは、それが欲しかった!!!」


249 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 15:01:19.58 ID:pwF/1nuYO



アンジー「ーーーだから、アンジーは! 是清を、アンジーだけの……!」



キーボ「………」



アンジー「……だけど! 是清だけじゃ、ダメだった!! 上手く、いかなかった!!」



アンジー「っ、だから、なのにっ……それなのに……!」ジワッ…


250 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 15:02:28.76 ID:pwF/1nuYO



キーボ「アンジーさん……」



アンジー「ーーーもう一度言うよ、キーボ?」

アンジー「これで、アンジーは、自分の何を信じれば良いのかな?」



キーボ「………」



アンジー「キーボは、どんな想いにも意味がある、価値があるって言うけど、アンジーはそれを信じられないんだよ」



アンジー「……アンジーには、『希望』も『未来』もーーー何にも、無い」



アンジー「……自分を、その想いを、信じられない……!」


251 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 15:03:53.23 ID:pwF/1nuYO



アンジー「……もし、キーボがアンジーと同じで、何も無かったら、信じられるの?」



アンジー「……できるわけないよ!」



アンジー「解斗だって、それに答えることができなかったんだから!」



キーボ「………」



アンジー「アンジーは、何も信じられないまま生きて!何も信じられないまま終わるんだよ!」

アンジー「ねえ、これで、どうやって、アンジーの『想い』を、残せるって言うの!?」







アンジー「答えてよ、キーボ!!!」


252 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:31:36.16 ID:pwF/1nuYO



キーボ(……そう、かーーー)




アンジー「………」




キーボ(ーーーそういうこと、だったんですねーーーー)


253 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/10/23(水) 20:32:49.98 ID:pwF/1nuYO



キーボ(ーーーボクは、二つ、思い違いをしていた)




アンジー「………」




キーボ(……一つ目の思い違い。それは、民衆に記憶が残されていたということ)




キーボ(……少なくとも、究極のリアルのーーーその土台となるものの記憶は、封じられることなく、残されていた……)


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