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絵里「例え偽物だとしても」

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770 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 19:49:29.15 ID:hEQnKdja0
絵里「………」

絵里(ここで私は一つ思う、このまま戦いを続けててもそれぞれが見たものを返し合ういたちごっこになる。それは不毛であり意味のない戦いに過ぎない、なら短期決着が望ましい)


絵里「……よしっ」


絵里(その時私は一つの道を見つけた、この相手に————私に勝つ方法を)

絵里(私一人じゃ勝てなくても、“みんなの力”を使えば勝てるのよね、私にだって)


絵里「…じゃあラストスパートと行きましょうか」


絵里(私個人の始まりのトリガーは今引かれた、ショットガンの舞をしながら近づく相手に私は姿勢を低くして近づいた)


えりち「っ!この舞に近づくの?」


絵里「ええ、私はそれが良いと思ったから」
771 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 19:50:14.47 ID:hEQnKdja0
絵里(あの時の希の動きは双方にショットガンを持つことで片方でトリガーを引いてももう片方を撃つことで反動を相殺する仕組みで、銃があってこそのよく出来た戦術だ)

絵里(ただしそれは力業でもなければ希だけが出来る業でもなく、工夫を何重にも施し、メリットとデメリットを計算しつくした希の有する力でも出来るようにした業であったと思う)

絵里(この動きのメリットは相手を寄せ付けない、相手を無理矢理動かすことが出来る、手数で勝つことが出来たりと火力面では強い)

絵里(だけどその動きは————)


絵里「片方の足を上げないと成立しないのよね!!」


えりち「!!」

絵里「もらったぁ!」ズサー

絵里(あの動きは重心をどちらかの足に置いてバレエのような舞を射撃と共にするまさにダンスそのもの、片足を上げることで次へのステップをすぐに行えるように、そしてそれを連鎖的に行えるようにした最大の特徴であり最大の弱点)

絵里(銃が無い今は近づくことも不可能ではない、あの片足を————重心を弾くことが勝利への第一歩なのよ)
772 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 19:54:36.64 ID:hEQnKdja0


えりち「あっ……」


絵里「これがことりの力よ!」ドカッ

絵里(バランスの要であった片足をスライディングで崩して宙に浮かせ、その後すぐにスライディングを解除して飛び膝蹴りをした)


ことり『強くてごめんねっ!』


絵里(あの時ことりが見せてくれた飛び膝蹴りを真似た、右足から天を統べる鳳凰のよう凛々しく飛んで、左膝で“打撃”を行うのではなくこの左膝を相手の背中に“めり込ませて”相手を吹き飛ばす。中国拳法で鍛えられたキレの良さは他の人の飛び膝蹴りとはまた違う強さがあった)


えりち「っあぁ…!がっ………」

絵里「えっ…ちょっと……」


絵里(背中から私の蹴りを受けた相手は派手に宙を舞い横へ吹っ飛ぶのではなくて上へと吹っ飛び胸から地面へと叩きつけられ、大量の血を口から吐き出して動かなくなった)

絵里(…これは相手がアンドロイドだから分かるけど、私の蹴りは確実に背中辺りにある何か重要なシステムを担う何かを壊した。その結果機能が一時停止してる可能性が高くみんなの力を使わずともことりの力だけでKOさせてしまった)
773 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 19:55:52.02 ID:hEQnKdja0
絵里「……やっぱり私…」

絵里(目を開けたまま、口を開けたまま動かない相手…ううん私を見て思うのはやはりこの力は使うべきものではないというのが分かる)

絵里(拳銃も持ってなかった私が今では格闘だけでこんなことができるなんて思いもしなかった)

絵里「………」

絵里(確かに相手が言う通り、誰かを守る為の力があるのは誇らしいことだと思うけどこの力はいくらなんでも人間離れしすぎてるし、ましてやアンドロイドの括りにも到底嵌められたモノじゃない)

絵里(この力を持って私は何を全うするのだろう、この力の存在を知っていながら私はどういう生き方をするのだろう)

絵里(分からないけど…分からないけど私という化け物が死んで私は心底安心した)


『…やっぱりあなたは自殺で生涯を終わらせたのね』


絵里(…そう、そうなってしまうのよ。今ならよく分かるわ)

絵里(だって私は死にたくないもの、死にそうになったら必死に抗って逃げたり戦ったりして生き延びたい生き物なんだもの)

絵里(だけど生き延びた分強くなっていく私はあのまま生き続ければきっと軍神と謳われた穂乃果以上にアンドロイドという歴史に名を深く刻むことになるのでしょう。だからそんな物語がここで止まってよかった、正義感という私が、私という正義感が私の死を心から喜んでいた)
774 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 19:57:14.02 ID:hEQnKdja0
えりち「…ぷはっ」

絵里「!」

えりち「はー…負けたわ」

絵里「…私の勝ちね」

えりち「ええ」

えりち「…さっきも言ったけどあなたは強くなりすぎてる」

絵里「ええそうよ、だから私は平和を崩さない為に死ぬ運命にあるのよ?よく分かったでしょ?」

えりち「いいや、あなたは生きる運命にある。何故ならあなたには守るべき人がいて、知るべき真実があるから」

絵里「…あなたは一体何を知っているの?」

えりち「……少なくとも、あなたよりかは遥かに知っていることが多いはずよ」
775 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 19:58:32.83 ID:hEQnKdja0
絵里「…じゃあ聞くわ」


絵里「私の知るべき真実っていうのはどこにあるの?」


えりち「ええ、答えてあげる。それは————」



えりち「——小原鞠莉がいるあのホテルの最上階よ」



絵里「………」

えりち「そこにあなたが一番知りたい真実があるわ、あなたはそこでこれまでとこれから全部を含めたとしても最大となる選択に迫られる」

えりち「あなたは死ぬ前にターニングポイントを作りなさい、死を語るのはそれからよ」
776 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:00:21.92 ID:hEQnKdja0
絵里「…まるで私が生きていてそこに行けって言ってるような口振りね」

えりち「ええ、生きてるもの」

えりち「…いや、具体的には死んでるけどね」

絵里「…何を言ってるの?」

えりち「あなたは死んだわ、人間の脳に当たる記憶保存領域に鉛玉を撃ち込んだからね、記憶保存領域の内部を破壊したことによりあなたの記憶は機械的に保持が出来なくなる。壊れた記憶保存領域からしちゃあなたの記憶は存在不明、解析不能なモノになってしまうからまさにTHE ENDって感じ」

えりち「でもおかしいと思わない?記憶保存領域が壊れてるのになんであなたの記憶は今もこうして保持されてるの?」

絵里「それは…」

絵里「………」

えりち「…分からないでしょ?当然よ、だって知るはずがないもの」

絵里「…どういうこと?」
777 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:01:33.72 ID:hEQnKdja0


えりち「あなたは私————私はあなた」


えりち「ここまで言えば分かる?」

絵里「………分かりたくない」

えりち「正直ね、でもごめんなさい。分かってもらうわ」


えりち「私という存在が生きてるからあなたはまだ記憶を保持していられるのよ」


えりち「あなたには真実を知る権利があるの、だからその真実を知ってもらうまで私はあなたを殺さない」

絵里「…じゃあ私があなたを今ここで殺せば私は死ぬの?」

えりち「ええ、死ぬわ」

絵里「………」
778 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:02:29.22 ID:hEQnKdja0
えりち「さっき戦って分かったわ、まだあなたには戦う気力がある。生きる力を完全に失ったわけじゃない」

えりち「勝ちたいって思えるならもうそれでいいわ、小原鞠莉のところに往って小原鞠莉に勝ってきなさい」

絵里「…無茶言うわね」

えりち「でも、その無茶をやろうとしてたのはあなたでしょう?」

絵里「………」

えりち「…残念だけど今ここで私を殺そうとは思わないほうがいいわよ、私とあなたは平行線の存在。今という状態じゃあ何をしたって変わらないわ」


えりち「だって同じ存在なんだもの」


絵里「………」

えりち「元々私はあなたが死んだ時に埋め込まれる新しい記憶だった、けどいいわ。私の命をあなたにあげる」

えりち「この命こそが最後の命。私とあなたは一心同体なの」

えりち「だからこの私が託した命で退廃した世界を変えなさい、あなた自身の力で」

絵里「………」
779 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:04:06.56 ID:hEQnKdja0
えりち「返事は?」

絵里「…何故私にそこまでするの?」

えりち「あなたは私だけど、私はあなたではないからよ」

絵里「……意味が分からないしさっきと言ってることが違うんだけど」

えりち「同じ存在でも、違う私たち————でも今の本当のあなたっていうのは生まれた時から記憶を保持してるあなたでしょう?あなたが生きている以上私はあなたを応援するわ」


えりち「これは“私”としてのけじめなの」


えりち「私、命に盲目じゃないから」

絵里「……そう、分かったわ」
780 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:04:55.11 ID:hEQnKdja0
絵里「なら初代絢瀬絵里に免じてここはあなたの命を貰うわ」

えりち「ええ、ありがとう」

絵里「…お礼を言うのは私なんだけど?」

えりち「あなたは私、私はあなた。だから嬉しいのよ」

絵里「………」

絵里(私という人物はこういう人なのかしら…少し考える)

絵里(確かに私は正義感の強いアンドロイドよ、決して自分の持つ強さを曲がらせることのない自分を強く持った人格が備わってる)

絵里(でも、自分の命をあげる?私が?当事者でもなんでもないしこれに関しては考えたくもないから一概には何とも言えないけど私はそんな人が良いアンドロイドだとは思わない)


絵里(……これが“次の私”なのかしら)

781 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:06:07.69 ID:hEQnKdja0
えりち「とにかくあなたは後数分後には現実へとトリップする、記憶保存領域は壊れてるしおそらく頭には穴が空いたまま、だけどあなたはそれでも正常よ」

絵里「…なんなのそれ」

えりち「私のおかげよ、だからあなたは諦めるまでは最後まで強く生きていきなさい」

絵里「……ええ、分かったわよ」

えりち「素直でよろしい、じゃあね」


えりち「私は常に私でありなさい」


絵里「……なにそれ」

えりち「偽物の命なんて、この世にはないんだから————!」

絵里(その言葉はよく木霊した、この何もない世界で、この穴の開いた私の頭の中で、何重にもなって木霊した)

絵里(————視界が真っ白になった、そう感じた一瞬を最後に私の感覚全てが消えた)

絵里(それは現実へ向かう為の動作であり、臨死体験とでも言っておきましょうか、ある意味仮死を体験した瞬間でもあった)
782 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:07:23.22 ID:hEQnKdja0


絵里「ん……んん……」


絵里(次に意識が戻ってきた時は目を開ける前から自覚した)


絵里(私、生きてるって)


絵里「…はっ」

絵里(だから強く目を見開いた)

絵里「……ここって」

絵里(匂いだけでも分かるこの懐かしい感じ、レジスタンスであったみんなと生活を共にして、時には刃物にもなり兼ねない言葉が飛び交った小さな戦場でもあり、みんなの笑いが集う楽園でもあったこの場所…)


絵里「…家だ」


絵里(明かりが何一つついてない真っ暗なリビング、いつも回ってるはずの天井扇も回ってなくて、横になっていたイスから降りて真っ暗な地面を歩けば当たる金属の感覚)

絵里「これ……」

絵里(せつ菜の武器だ、リビングのテーブルには曜のハンドガンがあり、このリビング・ダイニングに無造作にみんなの武器が散らばってた)
783 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:08:29.47 ID:hEQnKdja0
絵里「………」

絵里(…荒れたんだ、なんとなく想像がつく)

絵里(私がリーダーなんだから、その私が死んだら統率が取れなくなって何をすればいいのか分からなくなるのよね、もし私がことりや曜の立場だったら私だって荒れるもの、ずっと泣くもの)

絵里(…でも、そんなみんなが今ここにいない)


絵里「…みんなっ!」


絵里「………」

絵里(返事は無かった。寂しさを誤魔化す為に完全に閉じられたカーテンを少し開ければ月明かりが私の視界を奪う。だから眩い月明かりから外れればここら辺に転がってる武器が照らされてこのリビングにみんなの持つ武器全てがあることが分かった)

絵里「……っ」ダッ

絵里(家中を駆け回った、私や曜がいつも寝てる寝室、お風呂、図書室、ことりや善子が寝てた寝室、トイレ、この家全てを回ったけど誰もいなかった)

絵里「………」ジワッ

絵里(みんないなくなっちゃった)

絵里(私がいなくなってみんな戦う意味がなくなったのかしら…そう思うと私の物語ももう、終わってしまったのかも)
784 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:11:04.77 ID:hEQnKdja0
絵里「うううぅううううっ………」

絵里(ただ単純に悲しかった、今まで戦線を共にした仲間全員が消えた。それに私は実質ルビィを殺した、私の無駄な死が人数不利を作ってルビィを死へ一気に近づけた)

絵里(二代目の私からエールを貰ったのはすごい励みになったけど、現実がこうじゃ見えるのは絶望だけ)

絵里(……いや、自業自得なのは分かってるんだけどまさか自殺してから現実へ戻ってくるなんて考えてるわけないでしょ?)

絵里(それにあの時の私は本当に死を望んでいた、あの時ほど自分がイヤになったことはない)


絵里(…事実、今でも私は人間離れを起こしているわけだし)

785 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:12:33.14 ID:hEQnKdja0
絵里「うぅ…うぇえええあああああああ…!!」ポロポロ

絵里(戻ってきた現実は相変わらず退廃的で、死にたくなるほど絶望的でどうすればいいか分からなくてただ泣いた。涙を我慢する必要なんてなくて募りに募った悲しみ全てが赤子のように泣く私の口から出てた)

絵里(これからどうすればいいんだろう、私一人で鞠莉のところへ行けるのかしら?)


絵里(…否、無理があるわ)


絵里(ならどうすればいいの?私は私に問う)

絵里(……ダメね、他の方法も見つかるはずがない)

絵里(こんなお先真っ暗じゃ涙も枯れることを知らないままでいるようで、今はただ…ただただ泣き続けるだけだった)
786 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:14:19.54 ID:hEQnKdja0


「絵里…ちゃん…!?」


絵里「!!」

絵里(それは突然声が聞こえた。昨日聞いた…いや今日聞いたばっかなのに数年ぶりくらいの懐かしさを感じるこの声————その声に私は目を丸くした)

絵里「こ、ことり…?」

ことり「絵里ちゃんなの…?絵里ちゃんなの!?」

絵里「ええ!ことりなのよね…!?」

ことり「うんっ!ことりだよ!絵里ちゃんに助けてもらったことりだよ!」

絵里「うぅ…うわああああああああああん!」


ギューッ


ことり「わぁ!?ど、どうして絵里ちゃんが…?」

絵里「帰ってきちゃったのよぉ…!」
787 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:14:49.79 ID:hEQnKdja0
曜「ことりちゃんどうし————って絵里さん!?」

絵里「曜!曜よね!?」

曜「な、なんで絵里さんが……」


タッタッタッタッ


穂乃果「絵里ちゃん!?」

絵里「みんな…!」

絵里(ことりの存在に気が付けば玄関の方の扉が開いててそこから曜や穂乃果がやってきた。それを見て安心した、仲違いを起こしたり分裂したりしたわけじゃないんだって)
788 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:15:56.01 ID:hEQnKdja0
ルビィ「…絵里さん」

絵里「ルビィ…ごめんなさい……」

ルビィ「…どうして、あんなことしたんですか?」

絵里「…そうよね、言わなきゃダメよね」

穂乃果「…何があったの?」

曜「私も気になる、そして絵里さんがこうして今ここにいる理由も」

ことり「私も」

絵里「ええ、話すわ。全てを」

絵里(私は私自身の機能について、自殺してから今に至るまでの事、そしてこれから行うべきことの三つを話した。どれもこの世界では初めて話すことで聞いてる誰もが驚きを隠せないようでいた)

曜「それじゃあ希ちゃんの探してた標準型アンドロイドXっていうのは……」

絵里「…ええ、多分私の事」

ことり「私の中国拳法が使えるって…」

絵里「実際使ったけどよく真似出来てたわ」

ルビィ「…絵里さんは人間だよ、ちゃんとした人なんだから」

絵里「…ありがとう、ルビィ」

絵里(しかしみんなのその後の反応といえば驚きもあったけど何より温かった。こんな大罪を犯した私でも許してくれるみんなの優しさが逆に痛かった)
789 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:16:40.01 ID:hEQnKdja0


えりち『あなたは最強に最も近いアンドロイド、敵の技術を全て吸収する兵器————そして強い正義感を持っていることで様々な者を引っ張っていく守られ愛されるリーダーのような存在を自分に確立させる人との生き方が分かっているアンドロイド』


絵里「………」

絵里(分かる気がする)

絵里(……いや、自分を優しいとかそういう風に思うつもりはないけど、私ってちゃんとリーダーをしてて引っ張っていってるんだなって自覚はある)


絵里(人間関係に恵まれてるんじゃなくて、人間関係を上手いように操ってるのが私なんだ)


絵里(そしてそれが本能的に、感情的に行ってるから私は私を憎めない。私が心から思うことがその人にとって最高の選択になるんだから改めて私の存在が強く見えた)
790 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:18:12.11 ID:hEQnKdja0
絵里「…あれ?花丸とせつ菜は?」

ことり「え、それはぁ……」

ルビィ「………」

絵里「…何?」

絵里(…だけど現実が良いことばかりじゃないのはもう知ってる、今まで笑顔やら安堵の息をついてたみんなが急に顔を曇らせた時には何かを察した)

穂乃果「…花丸ちゃんは死んだ、せつ菜ちゃんは意識不明の重体」

絵里「えっ……」

穂乃果「…花丸ちゃん、自爆特攻をしたんだ。私とせつ菜ちゃんだけじゃあの二人に勝てないからって」

絵里「……そんなことが」

曜「…だから、そんな花丸ちゃんの死や絵里さんの今まで繋いでくれた道を無駄にしない為にも最後まで頑張ろうって私たち決めたんだよ」

ことり「…多分、私たちの銃はもう敵に割れてる。街中で銃声がしたならそれは私たちだってすぐにばれちゃうからまだ知られていない武器でせつ菜ちゃんを真姫ちゃんのところへ連れてくために外へ行こうって言って武器を整えたんだ」

絵里「…あ、じゃあこの武器は……」

曜「そうだよ、とりあえずここの武器庫にあった武器をいっぱい持ってきて自分に合う武器を取っていったんだ」

絵里「なるほど……」
791 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:19:20.87 ID:hEQnKdja0
絵里「…花丸が死んでせつ菜が目覚めない……」


絵里「…となると残り戦えるのは私たちだけになるのかしら?」


ルビィ「…そうだね」

ことり「…うん」

穂乃果「随分と減ったね……」

曜「五人か……」

絵里「…こうなっては仕方ないわ、この五人で鞠莉のいるホテルの最上階を目指しましょう」

絵里(戦いは増えるモノと減るモノが一緒な出来事だ)

絵里(生きてる人が減り、死人が増えるこの出来事では時間によってもたらされる変化がとてもよく分かった)

絵里(最初こそたくさんいた、敵も味方もね)

絵里(でも今は敵も味方もほとんどいない、千歌も善子も果南も…凛も海未もにこもいない)

絵里(やはりこの東京では——ううん、東京のせいにはしない)


絵里(この戦いという出来事には死と正面から向き合わないといけないらしい)


絵里(…そんなこと分かってたけどね。でも気付くと周りは死んだ人たちばっかりだったから少し過去が淡く見えた)
792 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:20:08.41 ID:hEQnKdja0
穂乃果「……小原鞠莉のいるホテルの最上階に行くならどう考えても実行は今日の夜だよ、Y.O.L.Oまで破壊したんだ、流石に政府も黙っちゃいないよもう」

曜「その通りだよ、政府が戦いに絡むとなると逃げることは可能だけど挑むのはかなり難しい」

曜「だからおそらく今日が最初で最後のチャンスだよ」

ルビィ「…うん、ルビィもそう思う。ホントなら今すぐにでも行きたいけどそれだと準備不足だからね、明日ならまだ政府も対応に追われる頃だからまだ間に合うと思う」

ことり「…じゃあいよいよなんだね」

絵里「……ええ、果林と梨子がY.O.L.Oのアンドロイドを殺しに動いてたのも一枚鞠莉が噛んでるらしいわ、だから今この混沌の時に行くべきよ」

穂乃果「…うん」
793 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:22:15.85 ID:hEQnKdja0


絵里「……ってあれ?そういえば果林と梨子はどうなったの?」


曜「それならY.O.L.OのアンドロイドにEMPグレネードを当てて終わったよ」

絵里「え?」

曜「一番最初に戦った時私が銃弾を避けることに驚いてたからEMPグレネードの知識も無いんだろうなぁって思ってたけど案の定やっぱりなかったよ」

ことり「…死んだ絵里ちゃんを連れて帰る時に会ったけど“私たち必要なくない?”みたいなこと言いあってて人生楽しそうだなって思ったよ」

曜「…まぁ私たちに対して敵意が無いのはすごくいいことなんだけどね」

絵里「やっぱりEMPグレネードって強いのね……」

曜「まぁね、でもアンドロイド相手に投擲物は基本当たらないからそれを当てることが出来た二人の腕は本当にすごいよ」

曜「絵里さんにも勘違いしてほしくないんだけど、EMPグレネードは万能武器じゃないからね」

曜「コストが高くて量産も出来ないからちゃんと使い時を見極めないといけないよ」

絵里「難しいのね…」
794 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:27:39.74 ID:hEQnKdja0


ルビィ「…亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんは私が殺した」


絵里「!!!」

ルビィ「……ごめんなさい」

絵里「…そう、いいわ。気にしないで、元々私が殺す相手だったんだから」

絵里「……それにしてもよく亜里沙を殺せたわね?」

ルビィ「…ルビィもあの時は狂ってたよ、絵里さんが死んで泣いてた亜里沙ちゃんを狂った衝動で殺してその後雪穂ちゃんとタイマンをして勝った」

穂乃果「狂ってたって何?」

曜「それは同じ事思ったかな」

ルビィ「…絵里さんが死んだショックみたいなものだよ、自然と笑いが出てきて目の前にいる生き物を殺したくなっちゃって……」

絵里「……ダイヤもそうだったわ、ダイヤという名前に恥じない壊れない精神を持っていたものけど、ルビィの件で一度壊れてしまうと心の修復が利かなくなって性格がどんどん曲がっていった」

絵里「…私はそこまでダイヤとは関わりがなかったけど、ルビィが目覚めなくなってからのダイヤは一目見て変わってしまったというのが分かった」

絵里「だから遺伝…なんだと思うの」

穂乃果「……そっか」

曜「そうなんだ……」
795 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:28:29.44 ID:hEQnKdja0
絵里「……ええ」

絵里(…まぁ覚悟はしてたけどやはりきついものがあった)

絵里(あんな純粋無垢な妹の死に様を見なくて済んだのが不幸中の幸いと言っておきましょう、戦闘型アンドロイドなのに一度も戦闘をしたことがないというのは嘘偽りもなく、それ故に亜里沙は戦いのリスクをもろに受けて死んだ)

絵里(…もし、次の亜里沙が私の元へつくとしたら今度はどんな亜里沙なのかしら)

絵里(そしてそれを愛せるのか————今の私には新しい亜里沙を愛することが出来る自信がない)


絵里(……やっぱり、東京は道徳が廃れた場所だ)


絵里(東京のせいにはしたくないけど、東京じゃなかったらきっとこうじゃなかったのよ)

796 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:29:41.19 ID:hEQnKdja0


ことり「……とにかく準備しようよ、今こんな話してても誰も得しないよ?」


絵里「…その通りね、準備しましょう?またあの時みたいに楽しく生きていかなきゃ!」

曜「うんっ!よしっ!準備しよう!もう出し惜しみは無しだよ!使える物は全部使っていこう!」

穂乃果「…分かったよ、やるよ!勝利を取るよ!」

ルビィ「…うんっ!」


絵里(あぁ良かった、自分が使う武器を整え始めるみんなを見て私は強く思った)


絵里(————この五人で戦っていく)


絵里(…いや、正確には六人よね。真姫も入れなきゃいけないもの)

絵里(最後の戦いで歴史を変える人物として選ばれた私たちはどこまで往けるのかしら)
797 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:31:06.94 ID:hEQnKdja0


ガチャッ


絵里「!」


真姫「…!絵里…!?」

絵里「真姫!」

真姫「し、死んだって聞いてたのにどうして…?」

絵里「まだ死んでなかったの!だから…今日——今日の夜に決めにいくわ」

絵里(準備が始まると同時に、選ばれし人物の六人目がやってきた)

真姫「…よかった、私絵里が死んだ時私も死のうって思った、私も絵里の仲間として生きていくと決めた以上、絵里が死んでもうやれることはなかったから」

真姫「……でも死ねなかった、怖くて、怖くて…」

真姫「…絵里、あなたが生きているのなら私もまだ生きれるわ」


真姫「…本当に良かった」ギューッ


絵里「……私も真姫に会えてよかったわ」ギュッ

絵里(私と真姫はお互い強く抱き合って、気が済むまで相手の温もりを感じたところでようやくツッコミが入った)

ことり「…重くない?真姫ちゃんの愛」

穂乃果「私も同じ事思った」
798 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:32:31.54 ID:hEQnKdja0
曜「うーんアリだと思うけどなー真姫ちゃんは絵里さんに尽くしてるし」

ルビィ「うんうん、ルビィも良いと思う」

真姫「ちょっ…尽くしてるってなによ!」

曜「違うの?」

真姫「ちが…うと思うわ」

ことり「そこ迷うんだ…」

絵里「…まぁいいわ、とにかく各自準備をしましょう、今回の戦いでは爆発物は最低限でいいわ、ホテルの最上階を目指すからグレネードは正直使えない、今回の作戦では屋内戦を強いるから動きやすい軽装でいいわ」

ことり「了解だよ」

絵里(ことりがお風呂へと向かうのを見てそれぞれ自分のやることをやり始めるのを見て私も動き出す、真姫も機材をたくさん持ってきたらしく最後の戦いではオペレーターになるらしい)

絵里(曜とルビィは銃器のチェックをし、穂乃果は目的地の情報を集めてた)

絵里(そんな私は夏真っ只中の夜に戦いをすれば汗はべとべと、だからそれを洗い流す為にことりと一緒でお風呂に入ったのだけど、そんな時思った)


絵里「……本当に穴が空いてる」


絵里(9mmの弾が私の頭を突き抜けたことによって空いた穴が気になった、この様子じゃ記憶保存領域が壊れてるっていうのもウソではなさそうだしますます私の存在が意味不明になってくる)

絵里(あの新型アンドロイドも複数命があるとは言ってたけど、じゃあその複数の命はどのような意味があって複数の命とされてるのかしら…)

絵里(…頭と胸を撃っても死なないとなると、後はお腹と足と肩を撃てば死ぬのかしら?いや、そんな単純じゃないのかしら…?)

絵里(考えれば考えるほど深みにハマっていって謎が解けそうにないわね…)
799 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:34:28.51 ID:hEQnKdja0


絵里「…いや、分かるのよね」


絵里(そう、それが知りたきゃ鞠莉のいるホテルの最上階へ向かえばいいのよね)

絵里(そこに全ての真実が眠ってる、私はそれを知りたいからこの現実へ戻ってきた)


絵里「……待ってなさい、鞠莉」


絵里(これは私からあなたへの————宣戦布告よ)


ことり「……あのー」


絵里「ひゃああ!?!?」

ことり「いやなんで驚くの!?最初から私いたよ!?」

絵里「い、いや全然気付かなかったわ…」

ことり「えぇ…気配隠してたわけじゃないのに……」

絵里「ご、ごめんなさいね、ちょっと今日の夜のことで集中してて……」
800 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:35:41.27 ID:hEQnKdja0
ことり「……まさか絵里ちゃんとこんなことするなんて思いもしなかったよ」

絵里「私もよ、最初は敵だったのにね」

ことり「…今も分からないの?」

絵里「えっ?」

ことり「…私を助けた理由だよ、あの時絵里ちゃんは自分でも分からないって答えたじゃん」

ことり「私を助けても意味なんてなかったはずだよ、曜ちゃんや矢澤にこには見つかるし死ぬ危険性も充分にあった、それなのになんで?」

絵里「……私が助けるべきだと思ったから助けたのよ」

絵里「例え敵だろうと、目の前でことりが殺されそうになってたなら助けるべきだと私は思ったの」

絵里「あそこで見殺しにしたら私は一生後悔する、必死に逃げることりの姿を見てられなくて、私が助けなくて誰がことりを助けるんだって自分を奮い立たせたの」

絵里「…今ならよく分かるの」


絵里「私、人が殺せないんだって」


ことり「………」

絵里「人が殺せないから、ことりを見殺しになんか出来ないの」

絵里「またことりが死にそうになった時はきっと…いや絶対に助けるわ」
801 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:36:20.70 ID:hEQnKdja0
ことり「…うぅ……!」ジワッ

絵里「えっちょっとことり!?」

ことり「うぅうううう…!ぅ絵里ちゃん優しすぎるよぉ…!」

絵里「そ、そうかしら……」

ことり「…よかった、私絵里ちゃんの背中を追いかけることが出来て」

ことり「苦しいことはたくさんあったけど、それと同じくらい嬉しいことや楽しいこともあった」


ことり「私、この戦いが成功に終わったら絵里ちゃんの学校に通ってみたい!」ニコッ


絵里「…!」

ことり「…なんて、無理かなぁ?」エヘヘ

絵里「…ううん、無理じゃないわ。あそこはアンドロイドを平たく見てくれる人がいっぱいいるからきっと楽しいわよ」

ことり「うんっ!」

絵里(…今、この上ないくらいに幸せを感じた)

絵里(…なんでかって?)

絵里(考えれば分かるでしょ?ことりが笑ったのよ?)


絵里(感情保管領域に欠如が見られることりが、笑ったのよ?)

802 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:37:11.64 ID:hEQnKdja0


ことり『感情の欠如だよ、果南って人に胸を撃たれて私の心から喜びという感情が消えた』

ことり『だから私は笑えない、怒るとか泣くとか悲しむとかは出来ても喜ぶことは出来ないの…』


絵里(…奇跡だ、奇跡としか言いようがないわよ)

絵里(ことりが喜びの感情を取り戻した、それが嬉しくて嬉しくて…嬉しすぎて何故か涙が出てきた)

絵里「うぅぅううことりぃ…!」ギューッ

ことり「わっちょ、ちょっとどうしたの絵里ちゃん!?」

絵里「死ぬんじゃないわよことりぃ…!」

絵里(困り顔して笑うことりを見ればたちまち心は大空へと舞い上がった、もうすぐゴールなんだから…私の目指したエンドロールならもうすぐなんだからここで後ろを向いてなんかいられない)

絵里「よしっ!じゃあ私準備してくるわね!」

ことり「え、えぇ!?お風呂は!?」

絵里「シャワーだけで充分よ!今の時点からスパートかけてやるんだからっ!」ダッ

ことり「えぇ…もっとゆっくりしてればいいのに…」

絵里(やる気に満ちた私は装備の支度をしにいった)
803 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:38:18.92 ID:hEQnKdja0
絵里「…あなたたちは相変わらずこだわりが強いのね……」


曜「ん?あ、絵里さんおかえり〜」

ルビィ「ルビィのスナイパーはこれしかないから!」エッヘン


絵里「あははは…」

絵里(リビングに戻れば武器の手入れをしてる二人がいて、アタッチメントや外見の汚れなど至らないところがないか入念に確認してて、曜に関しては終わったと思えば私や穂乃果の武器までチェックしてるからすごい情熱が伝わってきた)

曜「スコーピオンEVO…いつ見ても恐ろしい武器だなぁ」

絵里「…強いのは分かるんだけど、大して強みを発揮できてないような気がするのは私だけ?」

曜「そんなことないよ、絵里さんが強みを実感できないのはスコーピオンを相手にしたことがないからなんだよ、相手にするとその凄まじい発射レートに驚くことになると私は思う」

絵里「そういうものなの?」

曜「うん、そうだよ。ただ今回はホテル内とその周辺での戦闘を想定した際にはスコーピオンの弱みと強みがハッキリするよ」
804 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:40:16.47 ID:hEQnKdja0
絵里「どうして?」

曜「スコーピオンの強みは連射速度が速いから例えアンドロイドだろうとも避けるのが辛い手数の多さと一瞬で狙ったところに蜂の巣を作るその火力かな」

曜「逆にスコーピオンの弱みは手数に集中してる分一発が小さいから壁を貫通する威力が無くて、アンドロイド相手ならそこまで致命傷を与えられないこと、また反動が強すぎるから狙ったところにあまりいってくれないところも弱みかな」

曜「ホテル内はエントラスト以外ならとにかく角が多いと思う、その場合は近距離から中距離を想定した銃を持つべきだけどスコーピオンは中距離が対応出来ない銃だから数十メートル空いた距離を一直線で戦うとなるとスコーピオンはあまり機能しないものとなる」

曜「でもその逆は比類なき強さを発揮する、サブマシンガンという身軽さを重視したにも関わらず恐ろしい火力を持つスコーピオンは近距離でなら兵器と化すよ、あの路地裏以上に狭い道でスコーピオンなんて対になった状態じゃ避けれるはずがないからね」

曜「だからもし絵里さんがホテル内で戦ったならなるべく近づいて戦うようにしよう、それがベストな戦い方だよ」

絵里「…分かったわ、そこまで教えてくれてありがとね、曜」

曜「お安い御用であります!」ビシッ
805 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:41:07.78 ID:hEQnKdja0
ルビィ「…ルビィずっと思ってたんだけど、スナイパー主体のルビィに今回の作戦で輝ける場所あるのかなぁ…?」

絵里「………」

曜「…確かに」

曜「屋内でスナイパーは荒業すぎるし武器を変えるとかしないとルビィちゃんは戦えないかも…」

穂乃果「…いや、正直武器はそこまで関係無いと思う」

絵里「え?」

絵里(武器について三人悩んでいたらダイニングの方でパソコンとにらめっこする穂乃果が口を開けた)

穂乃果「鞠莉ちゃんのいるホテルには特にこれといった名高いアンドロイドや人間がいないんだよ、もちろん警備隊とかその辺はいるだろうけどそれより問題なのはセキュリティだよ」

曜「…確かに、鞠莉ちゃんのその技術は希ちゃんと花丸ちゃん、そして私を合わせた三人の力でさえ敵わなかった、その堅すぎるセキュリティをどう崩していくかも課題になってくると思う」

ルビィ「…でもルビィパソコンとか分からないよ…?」

絵里「…正直私もそこまで……」
806 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:41:42.39 ID:hEQnKdja0
曜「うーん…穂乃果ちゃんってどのくらい機械に詳しい?」

穂乃果「いや、私もあんまり詳しくはないよ。希ちゃんにパソコンの使い方を一通り教えてもらっただけだもん」

曜「そっか〜うーん厳しいね、こういう時希ちゃんとかがいてくれたらすっごく楽なんだけど…」

穂乃果「………」

絵里「…困ったわね」


真姫「…機械なら私に任せてくれない?」


ルビィ「!」

絵里「真姫…大丈夫なの?」

真姫「とーぜんよ、そりゃあ鞠莉って人に敵うかは分からないけど私、機械には相当な自信があるわ」

真姫「そうでなきゃ機材なんて持ってこないわよ」

絵里「そ、そうよね」
807 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:42:30.75 ID:hEQnKdja0
曜「…でも機械に強いのと機械に詳しいはまた別だよ、鞠莉ちゃんのホテルにあるパスワードやカードキー型の扉みたいなロックシステムをハッキング出来る?それが出来なきゃ意味がないよ」

真姫「舐めないで、何年絵里と一緒にやってきたと思ってるのよ?喧嘩っ早い絵里をアシストする為にずっと機械を触ってきたんだからハッキング程度なら余裕よ」フフンッ

穂乃果「…でもあんまり無理はしないほうがいいよ、鞠莉ちゃんのシステムだもん、希ちゃんが無理だったんだから出来なくても誰も責めないよ」

真姫「…分かってるわよ、でもやってみなきゃ分からないじゃない!」

穂乃果「…それはそうだね」

真姫「見てなさい!今にぎゃふんといわせてやるんだから!」ダッ

絵里「あ、真姫…」

ルビィ「行っちゃったね……」

絵里「あれは真姫本気ね…」
808 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:43:51.62 ID:hEQnKdja0
穂乃果「実際どうなの?真姫ちゃんって」

絵里「少なくとも昔馴染みであった私、千歌、善子、果南、ルビィ、真姫の中ならダントツで機械が強かったわ」

絵里「元々私や果南が誰かと喧嘩ばっかしてたのもあって、真姫自身自分が戦闘的に無力だって分かってたみたいだったから、そういう技術面で自分を伸ばしていったの」

絵里「…だから私は真姫を信じるわ、無理な時はまた新しい入り方や上り方を考えましょう」

曜「そうだね、できることをしてる真姫ちゃんは立派だよ、だから私たちもそれに応えよう?真姫ちゃんがハッキング出来ても私たちがちゃんとしなきゃ意味ないんだから」

穂乃果「うん、その通りだよ」

ルビィ「…じゃあルビィもう寝るね、来る時まで後は寝て備えるよ」

ルビィ「絵里さんの寝室借りるね、おやすみ」

絵里「え、ええ分かったわ、おやすみ」

穂乃果「おやすみルビィちゃん」

曜「おやすみ!」

絵里(ルビィはもうほとんどの準備が終わったらしく、最後の準備である睡眠をしに寝室へ行ってしまった)

絵里(ルビィにおやすみの挨拶をして見送った後ルビィがいたところを見れば、いつも持ってる赤色のスナイパーと赤色のハンドガンがあり、私がそれを瞳に映すと不意に部屋の明かりに反射してルビィの武器が煌きだした)
809 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:44:35.13 ID:hEQnKdja0
曜「…なんというか歳と見た目に似合わぬ強さだよね、ルビィちゃんって」

絵里「それがルビィの武器だからね」

絵里「姉であるダイヤにも弱いという自分だけを見せて生活してきたし、強者の所以ってきっと自分を弱者にみせるところから始まると思うの」

絵里「小さい体で大きな敵の喉を喰いちぎるようなその姿がルビィには合いすぎてる」

穂乃果「…確かにね」

穂乃果「……希ちゃんが生きてればきっと喜んだんだろうね、ずっと探してた殺し屋と会えてあの時の
強さを今でも維持してるんだもん」

絵里「そうね…でもきっと無理だったわ、ルビィは最近まで眠っていたもの、死ぬ運命にあったなら会えるはずもないわ」

穂乃果「…その通りだよ」
810 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:45:59.74 ID:hEQnKdja0


曜「……穂乃果ちゃんの探してる人は見つかった?」


穂乃果「…ううん、見つかってない」

曜「心当たりはないの?」

穂乃果「………無いと思う」

絵里「どんな人を探してるの?」

穂乃果「…それが私もよく分からないんだ」

絵里「分からない?どういうこと?」

穂乃果「……私が知ってるのはその探してる人が私にとってとても大切な人だっていうことだけ、後は全部曖昧なんだ」

穂乃果「私は一回死んで記憶保存領域のリセットがかかった、だけどそれでも私は感じてるの」


穂乃果「この胸に宿る輝き……その正体を知りたいの」


絵里「輝き……」
811 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:46:52.37 ID:hEQnKdja0
曜「…絵里さん、穂乃果ちゃんが探してる人はね、穂乃果ちゃんが死ぬ前の親友とか家族なんじゃないかって希ちゃんが言ってた。でもその人は一向に現れないんだよ」

絵里「そ、そうなの……」

穂乃果「でもいいんだ、これを悲観する気は全く無いし」

絵里「どうして?」


穂乃果「この戦いに勝ったら、私は私の探してる人を探すよ」


穂乃果「もちろん、絵里ちゃんの背中を追いながらね」

穂乃果「だからこの戦いは絶対に生きて勝つよ、誰も死なずにね」

絵里「…そうね、全力を尽くしましょう」

絵里(穂乃果もことりと同じでやることを見つけたようだった、だから尚更負けられない)

穂乃果「私も寝るよ、正直今日はもう疲れたよ…作戦実行までの時間で気が済むまで寝てるよ」ガタッ

スタスタスタ

穂乃果「…あ、絵里ちゃんの寝室で寝るね」

絵里「ええ、分かったわ」

穂乃果「おやすみっ!」

絵里「おやすみなさい」

曜「おやすみー!」

絵里(そうして穂乃果も眠りについてしまった、流石戦闘慣れしてる人はこの辺の準備は早く、ダイニングのテーブルには穂乃果の武器と投げ物と紫色のシュシュが一つ置かれていた)
812 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:47:51.34 ID:hEQnKdja0
曜「…やっぱり穂乃果ちゃんは真面目だなぁ」

絵里「どうしたのよ急に」

曜「あのシュシュは希ちゃんのだよ、せつ菜ちゃんも穂乃果ちゃんも髪を片方だけ結ぶサイドテールみたいな髪型をしてるから二つあるシュシュを一つずつ使って希ちゃんの形見を離さないつもりでいるんだよ」

絵里「へえ…」

曜「…きっと絵里さんも後少ししたら希ちゃんと同じくらい慕ってくれると思うよ」

絵里「そうなの?あまり自信はないのだけれど…」

曜「大丈夫、絵里さんはもう充分に主としての役目をこなしてる」

絵里「…そう、曜にそう言ってもらえるならよかったわ」

曜「えへへっ」

絵里(曜のとびっきりの笑顔も何故か今は哀愁漂う笑顔に変わっていて、一度舞い上がった心もそろそろ今目の前にある恐怖に目を向け始めてるのかもしれない)

絵里「…曜はこの戦いに勝ったら、何をするの?」

曜「そうだなーうーん…分からないな…」

絵里「えー…何よそれ」

曜「だって私お金が欲しくて対アンドロイド特殊部隊に入ってたけど、お金はもういらなくなったし、なんか作るって言っても今は作るモノないしなー」
813 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:48:55.85 ID:hEQnKdja0
曜「んー……あ、そうだ!」

絵里「ん?」

曜「私はこの戦いに勝ったら」


曜「私がやることを探しにいこうかな!」


絵里「…ふふふっ曜らしいわね」

曜「曜らしいって何さー!」

絵里「んふふふふっなんでもないわ」

曜「もー何さー……」

絵里(曜ってこういう人よね、強いんだけどまずその前に曜は面白くて元気な人だ)

絵里(戦いの後もこういうやりとりができるように努めないといけないわね、メーターを振り切ったやる気は更に限界を超えていた)
814 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:49:50.65 ID:hEQnKdja0
曜「じゃあ私も寝るよ、絵里さんの部屋でね」

絵里「あはは…私ではないんだけどね…」

曜「絵里さんの寝室であることは間違ってないからね、じゃあおやすみ!」

絵里「ええ、おやすみ」

絵里(姿が見えなくなる最後の最後まで曜は笑顔で寝室へ向かっていった)

絵里「……最後か」

絵里(これでリビング・ダイニングにいるのは私一人だけ、ことりは未だにお風呂だし真姫は現在進行形で機械と戦ってるしそれ以外はみんな寝た)


絵里「……終わりなのね」


絵里(ラストバトルの前夜は、今まで以上に感慨深いモノになっていた。何度も言うけど、もうすぐ終わりなのよ。ゴールなのよ。答えの在り処なのよ)

絵里(願わくばその終わりが良い意味であることを私は願うだけ)
815 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/07(月) 20:51:13.47 ID:hEQnKdja0
絵里「……よしっ」

絵里(その場に立って通常より弾薬が多く入った拡張マガジンのついたスコーピオンを片手に下げ、目を瞑り戦いの意識を研ぎ澄ました。覚悟が決まれば目を見開き銃にセーフティーがかかっているかを確認して私も寝室へと向かった)


絵里「……ふふふっ可愛い寝顔ね」


絵里(そうして静かに寝室の扉を開ければ可愛い寝顔をした三人が私をお出迎えしてくれてた)

絵里(相変わらず曜は面積を取ってるしルビィはダンゴ虫のように丸く縮こまってるし、穂乃果は予想以上に寝相が悪い)

絵里(そんな中でわざとらしく空いているベッドの中央で横になった、目覚めた時が決戦の時間。だけどそれまではこの幸せな気持ちをみんなと共有していたい)


絵里「…おやすみなさい、みんな」


絵里(ある意味でこの寝室で起こる“最後の眠り”はどこまでも心地の良い今までに感じたことのない幸せの香りがした)
816 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/07(月) 21:05:30.01 ID:hEQnKdja0
今日はここで中断。
再開は明日か明後日にします
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/07(月) 21:13:27.08 ID:N9GeQvif0
亜里沙に関してはもっとショック受けると思ってた・・・
いよいよ最終決戦って感じ出てるなあ
818 : ◆iEoVz.17Z2 [sage]:2019/10/09(水) 19:25:09.26 ID:0ZphuHNv0
ちょっと緊急事態なので報告させてください。
自分はいつもPCの方からこちらへ書き込みを行っていますが、現在何故かPCから書き込みが出来なくて、スマホならどうだと思いこれを書き込んでいます。
とはいえ、正直言えばスマホで書き込みが出来たところで解決になるわけでもなく、自分の持つ携帯の機種が古いのか、ただ単にここが重いのかは分かりませんが、このサイトを開くのにえらい時間がかかるので正直スマホで投下はあまり良くないなと思っています。
して、解決法としましてはこのまま8時まで待ってみてそれでも(PCの方で)書き込みが出来ないようだったら、ここまで見てくれた方には大変申し訳ないのですが、他の板で最初から書かせていただこうかなと思っております。
ホントのこといって、SS速報はあまり人がいないと思っていましたが、その中でもこんな長い作品にわざわざ応援を書き込んでくれる方、見てくれている方にイヤな思いをさせるのはこちらとしてもいいモノではありませんが、だからといって完結させずに終わらせるのはもっとイヤなのでそこはご了承願えたらなと思います。本当にすいません。
819 : ◆iEoVz.17Z2 [sage]:2019/10/09(水) 19:30:24.55 ID:0ZphuHNv0
スマホからは書き込み出来るんですね…。
結論の方は追って報告します。
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/09(水) 22:11:43.36 ID:fisWr3pto
いずれにせよ最後まで読みたいから待ってます
解決策が見つかるといいね
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/09(水) 22:51:59.14 ID:WSmBm0020
容量不足とかでは?
part2立ててみたらいいかも
822 : ◆iEoVz.17Z2 [sage]:2019/10/10(木) 18:41:47.84 ID:wesiesbo0
テスト
823 : ◆iEoVz.17Z2 [sage]:2019/10/10(木) 18:53:20.93 ID:wesiesbo0
昨日の八時にまで書き込みできなかったら他の板で立てるとはいいましたが、昨日だけで判断するには不十分だと思い一日待ってみましたがなんか今日はPCの方からでも書き込めました。
昨日書き込めなくなった、今日書き込めるようになった原因は不明ですが、昨日の寝る時にPCの更新をしたので、それが解決の要因になったのかな、と現時点では考えています。
そして、現在こうしてPCの方から書き込みが行えてる以上、別の板で立てる必要性はもう無くなったのでこのままここでえりちの物語を書こうかと思います。お騒がせしてすいませんでした。
824 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 18:58:27.46 ID:wesiesbo0
〜数時間後

絵里「………」

ルビィ「あれが……」


曜「オハラホテル…だね」


ことり「たかーい……」

穂乃果「あのホテルの最上階に……」


絵里「…待ってるのよ、鞠莉が」


絵里(夜景という名の人口宇宙の中で聳え立つホテルをビルの上から見つめる私たち)

絵里(あのホテルが瞳に映るだけで緊張が段々と漂い始めた)

825 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:00:37.17 ID:wesiesbo0
曜「…風が強いね」

穂乃果「でも雨が降る様子はないよ」


絵里(その風は歓迎であったのかしら、警告であったのかしら。そしてその風は追い風だったのかしら、それとも向かい風だったのかしら)

絵里(どちらにせよ、髪を常に靡かせる強い風は緊迫感を煽り黄昏を作りだした)


真姫『こちら真姫、こっちはいつでもおっけーよ』


絵里「ええ、了解」

曜「いよいよだね…」

ルビィ「緊張してきた…」

ことり「私も……」

絵里「…私も超緊張してるけどとりあえず作戦のおさらいをするわよ」

穂乃果「うん、了解だよ」


絵里(これがラストバトル)


絵里(強風に煽られれば煽られるほどそういう意識が出てくる。今私が背にしてるあの建物で終止符が打たれるのよね)

絵里「すう…はぁ……」

絵里(緊張を抑えるために一度大きく深呼吸をした。覚悟を決めてゆっくり目を見開けば自然と戦いの意識は研ぎ澄まされ、みんなの顔も引き締まったものになってた)
826 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:02:30.98 ID:wesiesbo0


絵里「まず前提条件として、無駄な殺傷は避けること」


絵里「鞠莉がいるここで事を大きくしてしまっては元も子もないわ、Y.O.L.Oは跡形なく消し飛ばしたから私たちの痕跡も消えてるけどここでは絶対に痕跡が残る。だから戦闘をしても殺すのは少し考えて」

曜「前から聞いてたけどすごいハードなミッションだよねー今回」

穂乃果「そうだねー」

絵里「ええ、それで今回は2と3の動きでいくわ、先行する二人と後衛、或いは追手の殲滅をする三人よ」

絵里「ルビィと私は2、それ以外が3ね。私たちは突貫するから3は注意を引いたりして」

曜「了解でありますっ!」

絵里「侵入に関しては真姫が用意してくれたこのカードキーでなんとかして」

絵里「…真姫、ありがとう」

真姫『いいわよ別に』

絵里「真姫がハッキングして大体のシステムはこのカードキーを認証場所にかざすだけでいけるはず、もしいけないようだったら……壊して進みましょう」

ことり「そんなんで大丈夫かなぁ…」
827 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:05:06.44 ID:wesiesbo0
絵里「大丈夫よ、というかプラン通りに事が進むわけないんだからそこは臨機応変に、そして柔軟に対応していきましょう」

穂乃果「そうだね、もう何やったってもいいんだから出来ることに全力を尽くそう」

絵里「…よしっじゃあ行きましょう」


「うんっ!」


絵里(もう後戻りはできない)


絵里(待つのは死か————それとも生か)


絵里(…それを決めるのは誰でもない私で、その未来を照らすのは他でもない私の銃)



絵里(————それじゃあ、銃弾で物語を語りましょうか?)


828 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:06:21.15 ID:wesiesbo0


曜「うわー…分かってたけど人いっぱいだなぁ……」

穂乃果「…殺傷は極力避ける、か」

ことり「難しいね……」

ことり「私たちは揺動でしょ?どうすればいいのかなぁ?」

曜「簡単だよ、殺さずに揺動なんて“これ”を使えばいいんだよ」

穂乃果「これ?」


曜「スタンとスモークグレネード、これだけで視界と聴覚の情報が消える。後は様子見すればいいよ」


曜「せーのっと!!」ポイッ
829 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:07:57.01 ID:wesiesbo0


ピカーン!


曜「よしっ大成功、ちょっと様子見する位置を変えよう。ここにいたらさっきのグレネードの飛んでくる方角を見てばれると思うから」ダッ

穂乃果「了解」

ピッ

曜「こちら曜、とりあえず下はてんてこ舞いって感じだよ、そっちはどう?」





絵里「絵里よ、曜の見立て通り二階に窓が空いてる部屋を発見したからそこから侵入したわ」

ルビィ「怖かった……」

絵里「…このラペリングってやつは意外にもスリリングね……ルビィは恐怖のあまり顔面蒼白よ」
830 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:09:36.36 ID:wesiesbo0
曜『あはは………とりあえず侵入出来たなら何よりだよ。こっちはこっちでやってるからそっちも頑張ってね』

絵里「ええ、もちろんよ」

絵里「それじゃあね」

曜『うん!それじゃあ』

ピッ

絵里「…よしっじゃあ行きましょうか」

ルビィ「うん、分かった」

絵里(侵入した部屋から出て周りを確認する、ここから先は見つかってはいけない、隠密行動を心掛けて用心深く歩みを進めていく)

絵里(…のだけど、下で陽動を行ってくれたおかげで上は筒抜け状態。流石一流ホテルの警備は報告が早いけど、早いせいで警備隊や宿泊客の移動も早くて私たちも早く行動できた)
831 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:11:16.36 ID:wesiesbo0

スタスタスタ

絵里「……待って」

ルビィ「!」ピタッ

絵里「………この角の先に足音がする」

絵里「人数は……おそらく一人ね、こっちへ来るわ」

絵里「…待ち伏せして気絶させましょう、この先に階段があるから迂回もできないわ」

ルビィ「………」コクコク

絵里(万が一のことを考えてゆっくり進む中で段々と聞こえるこの静寂をかき消し残響を伝わせる足音に私たちは一度足を止めた)

絵里(あくまで私たちは隠密行動をしてる、だからルビィも言葉を使わずに身振りや手振りで返事をしてて私もかなり声を抑えて喋ってたけど、足音が近づけば近づくほど緊張感が加速してたちまち口は開かずの扉になってしまった)
832 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:13:32.13 ID:wesiesbo0

スタスタスタ

絵里「………」

ルビィ「………」


スタスタスタ


絵里「…今!」ダッ

ルビィ「うん!」ダッ


「!」


絵里(足音の人物が角を挟んですぐそこまで来ただろうという時ルビィと一緒に飛び出した。まず私が相手のお腹に向けて肘打ちをし、そしてそれを食らい怯んだ相手の頭にルビィが跳び蹴りをかました)


絵里(————はずだった)

833 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:18:56.83 ID:wesiesbo0


「はっ!」


絵里「何っ…!?」

絵里(私の右肘で出した肘打ちを左回りに体を捻ることで攻撃を躱し、次に来るルビィの蹴りはしゃがんでよけた。そして更には蹴りの後隙で無防備なルビィの背中に入る肘打ち、続けざまに私の頭に飛んでくる回し蹴りと相手は回避からすぐさま攻撃に転じ私たちの進行は突然止まった)


ルビィ「ぐぇっ!?」

絵里「くっ…」


絵里(ルビィは背中に強く肘を打たれたことで近くの壁に叩きつけられ、私は私の頭に歯向かう蹴りを右上腕を使いヒット直前で受け止めた)
834 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:19:28.34 ID:wesiesbo0


「私に近接で勝とうなんて片腹痛いですわ」


ルビィ「!!!」

絵里「あなたは……」


ルビィ「……お姉ちゃん」

絵里「ダイヤ……」


ダイヤ「ルビィ…病院で聞きましたがやはり生きていたのですね……」

ルビィ「………」
835 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:20:14.35 ID:wesiesbo0
ダイヤ「…しかしどうしてですか?この絵里という方の下でつく意味を考えなかったのですか?」

ルビィ「…それはどういうこと?」

ダイヤ「この方は言ってしまえば反社会的勢力なのですよ?自分らの目的のために破壊の限りを尽くして人々に迷惑をかけたのですよ?」

絵里「………」

絵里(確かにその通りかもしれない、現状アンドロイドでテロリズムを心に宿すのはマイノリティであり反旗を翻す為に銃を持って行動を起こすのは確かに常識的じゃないし過激だ)

絵里(…だから正直ダイヤには返す言葉がなかった)


ルビィ「お姉ちゃん、それは違うよ」


ダイヤ「!」

絵里「ルビィ……」

絵里(だけど、ルビィは考える素振りもなく即答だった)
836 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:21:35.47 ID:wesiesbo0
ルビィ「私は小さい頃から善子ちゃんや絵里さん、そして千歌さんや果南さんとかアンドロイドと一緒に大きくなってきたからアンドロイドの気持ちはよく分かる」

ルビィ「だけどお姉ちゃんはアンドロイドの生活を知らない、だから好き勝手言えるんだよ」


ルビィ「アンドロイドだからっていう理由だけでいじめをうけた」


ルビィ「……そんなのをルビィの眼で見てきたらアンドロイドが何か行動を起こしたくなるのも分かるよ、だって理不尽なんだもん、納得できないもん、意味分からないもん」


ルビィ「それを何も知らないお姉ちゃんの口からあーだこーだ言ったらアンドロイドの心には更に火はつくの分からない?」


ダイヤ「…!」

ルビィ「…お姉ちゃんは認めてくれなかったよね、ルビィがアンドロイドと関わるのを」

絵里「………」

ダイヤ「………」

ルビィ「お姉ちゃんみたいな人がいるからアンドロイド差別は収まらないんだよ」
837 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:22:28.08 ID:wesiesbo0
ルビィ「……でも、ルビィはお姉ちゃんのことが大好きだよ」

ルビィ「ただね」


ルビィ「アンドロイド差別をする人を好きになるなんて無理にも程があるよ」カチャッ


絵里「る、ルビィ……」

絵里(殺意と敵意丸出しでダイヤの顔に銃口を向けたルビィに思わず私は唾をのんだ)

ダイヤ「……ルビィ」

絵里(そして言うまでもなくそのルビィの言葉はダイヤにとって死刑宣告のようなものだった。何かを抑えるような力が拳に宿ると手がぷるぷると震え始めて不意に出たダイヤの“ルビィ”という呼び声は実に弱々しくてすぐに消えていった)
838 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:23:15.95 ID:wesiesbo0
ルビィ「絵里さん、お姉ちゃんはルビィに任せて先へ行って」

絵里「え、でも……」

ルビィ「いいの、黒澤家の問題は黒澤家の人だけで解決するよ」

ルビィ「…それに見て」

絵里「え?」

ルビィ「あそこ、監視カメラがあるのに誰一人ここへ来ない」

ルビィ「ルビィたちは今見られてるのに誰もこないんだから、きっと鞠莉さんは来るのを待ってるんだと思うよ」

ルビィ「だから絵里さんは往って、ルビィが思うに今最上階に上る資格があるのは絵里さんだけだと思うから」

絵里「……分かったわ、でも無理はしないようにね」

ルビィ「…うんっ!」ニコッ

絵里「…それじゃあね」ダッ
839 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:25:02.32 ID:wesiesbo0


タッタッタッタッ


絵里「………」

絵里(本当にこれでよかったのかしら、エレベーターに乗り、ドアが閉まってから思う)

絵里(…私がダイヤとルビィの話にどうこう言える話じゃないけど、もっと穏便に済ませられたんじゃないかって……)


絵里「……いや、無理ね」


絵里(…そう思ったけど無理そうね、私がダイヤの妹でルビィが善子のようにいじめられてるのを見たらルビィと同じ事をするでしょう)

絵里(アンドロイドを大切にしたい自分の一番近くにいるのがアンドロイドに差別意識を持ってる姉だなんて言ったらイヤになるし、嫌いになる)

絵里(それなのに好意で向こうからずりずり寄ってきてきちゃあルビィも銃口を向けたくなるわよ)

絵里(ダイヤに悪気がないのは分かってる、だけどルビィの意志とは対極の位置にあるダイヤの意志は残念だけど平行線で双方が永遠に理解出来ない交感になるでしょう)

絵里(…だからきっとここでも始まるんでしょうね、一方的な正義と一方的な正義の戦いが)

絵里(……いや、もし私の考えが外れていたならきっとルビィも違う行動を起こすのでしょうけど)


絵里(もし、ルビィと私の考えが同じだったらルビィは————)

840 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:27:25.66 ID:wesiesbo0


ダイヤ「……さっきの跳び蹴り、驚きましたわ」

ダイヤ「鞠莉さんや果林さんなどから聞きました、ルビィは戦える子だというのを」

ダイヤ「…しかしですね、正直言うとルビィが力を隠しているのは知っていましたわ」

ルビィ「…!?」

ダイヤ「理由の方はお答えできませんが、やはりルビィの力は私の考えをいつも超越してくる」

ダイヤ「その力が……羨ましくて……憎いですわ」

ルビィ「………」

ダイヤ「…アンドロイドの件については謝罪しますわ、ごめんなさい」


ダイヤ「……しかし」


ダイヤ「今更考えを曲げたところでもう遅いでしょう?ルビィ、あなたから向けられたその銃口と殺意——それは殺し合いをお望みですか?」

ルビィ「…そうだよ、ルビィが絵里さんの下で就く以上、ルビィが善子ちゃんを忘れない以上、ルビィがアンドロイドの事を好きでいる以上はお姉ちゃんとは敵同士、ルビィだって今更お姉ちゃんに考えを改めてほしいなんて思ってないよ」

ダイヤ「…そうですか」
841 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:29:23.18 ID:wesiesbo0
ダイヤ「……私はルビィの事が大好きです、今も昔もずっと…」

ダイヤ「ルビィが長い眠りについた時に私は強くなろうと決心したのです、いつまでも刀に囚われてないで、現代を生き抜く為に銃を学ばないとと思い必死に勉強をして今では対アンドロイド特殊部隊という強さは指折りの人間しか入れないところに所属しました」

ダイヤ「…ですが、そうですよね。そういう問題じゃないではないのですよね」

ダイヤ「私が育むべきだったのは生き物を殺める為の物理的な強さではなくて、広い心を創る精神的な強さだったのですね…」

ルビィ「………」

ダイヤ「ただ、ここ数年で手にしたこの力が無駄だったとは思いません」

ダイヤ「……何故なら、今ここでルビィと対等に戦うことが出来るのですから」カチャッ

ルビィ「…!」


ダイヤ「侮るつもりはありませんわ」


ダイヤ「いくら大好きな妹だからとはいえそう易々と殺されるわけにはいきません、ここは東京————ルビィもここで育ったというのならその言葉の意味は当然分かるでしょう?」


ルビィ「……戦いで勝負をつける」


ダイヤ「その通り、だから容赦は致しませんわ」

ルビィ「…ルビィもだよ」
842 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:31:09.29 ID:wesiesbo0
ダイヤ「………ふぅ」

ルビィ「………」

ルビィ(お姉ちゃんの深い息を吐く姿はお姉ちゃんの近くにいた人なら誰だって知ってる、あれは武士としての精神統一みたいなものでもあって人を殺めることを全てに置いた証拠でもある)

ルビィ「……っ」

ルビィ(深い息を吐いたと同時に飛んでくる鋭い眼差しに思わず後ずさりした。長いこと眠ってたしお姉ちゃんのことはよく知らないけど、対アンドロイド特殊部隊に入れるのならきっと相当強く、それ以前に黒澤家として、武術を学んだ身としてその一つのハンドガンを両手で下げた時のスレンダーな姿はまるで刀を持っているかのような錯覚さえ感じてしまう)

ルビィ「……はぁ」

ルビィ(だけど、ルビィも黒澤家の人間だよ)

ルビィ(小さい頃からスナイパーを使っていたルビィの集中力を舐めないでほしい、ただ一点だけを————殺すことだけを考えて撃つまでの緊張感、ルビィはそれさえも振り払ってトリガーを引いてきた)

ルビィ(スナイパーで人を殺めるのに比べたらこの緊張だって可愛いものだよ、そう考えるルビィに宿るのは勝利への強い意志、この意志を持ってお姉ちゃんを————)


ルビィ(————殺すよ)

843 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:32:55.44 ID:wesiesbo0


ダッ


ルビィ「決めるっ!」バンッ!

ルビィ(狙いは心臓、頭という小さな的を狙おうとすると目線でばれる、ならそれよりお姉ちゃんと顔を合わせながら的が大きい胸を狙うのが得策。人間と人間の戦いはほぼ一瞬で決まる、アンドロイドなら話は違うけど、人間相手なら攻めたもん勝ち!)

ダイヤ「はっ!」シュッ

ルビィ(だけどそれを避けるお姉ちゃんにはもう驚かない、お姉ちゃんの靴にも曜さんの作ったアシストが施されてるんだよね、分かってるつもりだよ)


ルビィ(だから回避と同時に放たれたお姉ちゃんの銃弾の存在もなんとなく分かってた)


ルビィ「やあっ!」ズサー!

ルビィ(射線は見えてないけど銃口の向いてる位置が上向きだったのを確認してルビィはスライディングをして銃弾を避けた)


ダイヤ「お覚悟ですわ!」

ルビィ「望むところだよお姉ちゃん!」


ルビィ(お互いトリガーを一回引けば縮まるルビィとお姉ちゃんの物理的距離は近接戦闘の始まりの証。ここの戦いを制した人が勝ちだよ、だからこの一瞬の戦いにルビィの全てを注ぐ)
844 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:34:07.49 ID:wesiesbo0


ルビィ「せいのッ!」


ルビィ(近づいたのはルビィ、だから攻撃を仕掛けるのはルビィからで、そんなルビィの一発目は絵里さんもよく使ってる後ろ回し蹴り)

ダイヤ「くっ…」

ルビィ(苦しそうな顔はするけど普通に片腕で受け止めてくる様子を見るにやっぱり生半可な技じゃ攻撃は通らないし倒せないなと思う)


ルビィ「もう一回!」


ルビィ(だからこそルビィは用意してたよ、次の一手をね)

ルビィ(後ろ回し蹴りをガードされた後は逆さ回りでもう一回後ろ回し蹴り、そしてその後がガードされてようがされなかろうがそのまま回し蹴り、と反撃の隙も与えない連続攻撃をお姉ちゃんにお見舞いした)


ルビィ『お姉ちゃんに比べたらっ!』


ルビィ(ことりさんと戦った時にも似たようなことをした。後ろ回し蹴りからの後ろ回し蹴り————それは常識では考えられない動きだ)

ルビィ(それ相応の運動神経が必要で、その動きを完璧にこなすための勇気と瞬発力がいる。後バランス感覚とか色々)

ルビィ(でもそれ以前にルビィはそれを可能にするポテンシャルがあった)
845 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:35:26.12 ID:wesiesbo0


ダイヤ「ッ…!!」


ルビィ(体が小さいこと)


ルビィ(ルビィはお姉ちゃんのようにスレンダーな体には育たなくて、だからルビィに刀は似合わなかった。体が小さいと走る時もお姉ちゃんより大股にしないと追いつけないし、精神的に強気に生きていけない————つまりそれはマイナスだらけの体だった)

ルビィ(……だけど少なくともルビィのこの小さな体がプラスに働くこともあった。それが運動神経に関わることだったんだ)

ルビィ(ルビィは絵里さんやお姉ちゃん、ましてや穂乃果さんや曜さんと比べても手は小さいし足の長さが短い、だけどそれは蹴りや殴りを行う時の空気抵抗に関わってくる)

ルビィ(足が短ければ短いほど空気抵抗による重さのようなものを受けにくくなるし、例えそれがほんのごくわずかな差でもバカには出来ない。実際その影響でルビィはこの動きが可能だし、ことりさんはこの動きに驚いてた)

ルビィ(だからことりさんほどの体格だとあの動きは難しいのだと思う…多分……)


ルビィ(…まぁね、この動きはとにかく常識外れな動きでお姉ちゃんも流石に予想出来ないからこれに対して対策が出来るはずもなく、ましてや初めて見る動きだというのに)


ルビィ(避けれるはずないよね)

846 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:36:16.02 ID:wesiesbo0


ルビィ「これで終わりッ!!」


ルビィ(これもあの時と同じ、二回目の後ろ回し蹴りが頭にヒットしてここからずっとルビィのターン)

ルビィ(今回は二つ目に続き三つ目の蹴りもおまけとして入ったから結果的に、お姉ちゃんは頭に強力な蹴りを受けてその直後にお腹に同じように強力な蹴りを押し込まれた。そうすればお姉ちゃんは仰向けに倒れてそこで戦いは実質終わりを迎えた)



バァン!



ルビィ(ルビィが二回目のトリガーを引いたのが最後、大きな銃声が鳴った直後にその世界から音が消えた)

ルビィ(倒れたお姉ちゃんは目を開けたまま動かない、立ってる私も目を開けたまま動かない)
847 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:38:32.94 ID:wesiesbo0


ルビィ「………」


ルビィ(ルビィはただお姉ちゃんから広がる赤を無感情で見つめてた)

ルビィ(結局ルビィがお姉ちゃんの気持ちを理解することはなかった。ルビィだって薄情じゃない、お姉ちゃんがルビィの為に強くなってくれたのはとても嬉しいし、こうして終わりを迎えてはお姉ちゃんは一生報われない存在だ)

ルビィ(だからそこに同情は出来るし、今となっては一緒に生きる道も存在してたのかもしれない)


ルビィ(でも、時間は巻き戻せない)


ルビィ「………」


スタスタスタ


ルビィ「……終わったんだね」

ルビィ(お姉ちゃんに近づいて脈を確認して放った言葉はすぐに消えた。止まった鼓動はいうまでもなく死の証拠、今も広がり続けるこの血だまりは終わりの証拠)
848 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:41:17.78 ID:wesiesbo0
ルビィ「…これでよかったのかな」

ルビィ(ふと呟いたその言葉。これでよかったっていったらウソになるけど、これが当然の結果といっても納得はできる)

ルビィ(……ただ、ルビィの足元を飲む血だまりに落ちる涙はどうにもこうにもルビィが後悔を感じてる証拠だった。昨日涙は枯れたはずだったのに、また無限に溢れ出るのはどうしてだろう)


ルビィ(あぁ…これなんだね…あの時の亜里沙ちゃんの気持ちって……)


ルビィ(殺すまでは出来るけど、殺した後がどうしようもないんだ。どちらかというとそれは“自分が殺されるから抵抗するしかない”というところから始まる殺意なわけで、決して相手を殺したくて殺したわけじゃない)

ルビィ(…ルビィ、この気持ちを抱いてる亜里沙ちゃんを殺したんだ)


ルビィ(……最低だなぁ)


ルビィ「……んん」

ルビィ(…でも、こんなとこで泣きじゃくってるだけの弱いルビィにはなりたくない。お姉ちゃんに勝った今、お姉ちゃんより強く生きていかないといけないのがルビィの務め)

ルビィ(絵里さんが死んだ時も残りのメンバーだけでなんとか頑張っていこうって決めて自分を強くもったんだ、だからルビィは涙を拭って手に持ってたハンドガンを強く握った)
849 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:43:34.09 ID:wesiesbo0
ルビィ「……あれ?」

ルビィ(ふとしてお姉ちゃんの死体を見つめると、お姉ちゃんの持ってるハンドガンに目がいった)

ルビィ「これ……?」

ルビィ(そのハンドガンは普通の人からすれば何もおかしくないただのハンドガン、だけどルビィから見ると何かがおかしい)


ルビィ「ぶろーにんぐはいぱわー…?」


ルビィ(お姉ちゃんの銃に刻まれたこのハンドガンの名前らしきもの。手にもってモデルを確認すれば更に疑問符は増えていった)

ルビィ「……こんなハンドガンあったっけ」

ルビィ(ルビィが持ってるのはブローニングというハンドガンで、このお姉ちゃんが持ってるのは次世代モデルにあたるのかな。でもこんなハンドガンあったっけ……銃にはすごく詳しいけど、こんなハンドガン知らなくてちょっと違和感を覚えた)

ルビィ「…あるよね」

ルビィ(それは今気にすることじゃない、そう判断したルビィはお姉ちゃんの形見としてこのブローニング・ハイパワーを持ってそこを後にした)
850 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:44:59.46 ID:wesiesbo0
ルビィ「……絵里さん」

ルビィ(流石高級ホテルといえるような近未来エレベーターの前につくと、現在エレベーターがある位置は最上階を示していた)

ルビィ(きっと絵里さんはもう鞠莉さんと会ってる、そこでは絵里さんは何を知るのだろう。予想も出来ないや)


ルビィ「……よしっ」


ルビィ(深呼吸をして、エレベーターを押した。けどエレベーターが動かなかった)

ルビィ(疑問に思いながら数回エレベーターで上がるためのボタンを押してるけど反応しない。だから気付いた)


ルビィ(上で何か起こってる、これは————罠だということに)

851 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:45:30.71 ID:wesiesbo0
ルビィ「ッ!!!」ダッ

ルビィ(そう思ったルビィはエレベーターのすぐ近くにあった階段へ突っ走った、短い脚じゃ階段も一つ飛ばしでしか登れないし絵里さんや曜さんと比べちゃそもそも速度が遅い)

ルビィ(だけど走らなきゃ。今本気で走らないでいつ本気で走るんだ、何十階とあるこの階段は本気で走らなきゃ間に合わない!)

ルビィ(そう自分自身の戒めや、昂る感情が奮いを立てて汗も一瞬で過ぎ去ってしまうほどルビィは焦ってた。足音の残響すら置いていかれて、時々つまずきそうになっても無理矢理足をねじって前へ進む)

ルビィ(待つのは生か死、それを確かめる為に今は真実への階段を上る)


ルビィ(そうしてルビィは————)

852 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:47:08.06 ID:wesiesbo0



曜「穂乃果ちゃん後ろ!」


穂乃果「なっ…!」


ことり「せやぁっ!」ドカッ!


ことり(スタンとスモークを投げてから約二十五分後くらい経った今、下は大騒乱だった)

ことり(スタンとスモークは時間が経てば効果も薄くなるしそれは有限、だから私たちが見つかるのも時間の問題で見つかれば見つかったで今度は組手のようなものが始まった)


穂乃果「た、助かったよ」

ことり「いいよ、気にしないで」


ことり(十数人、それも全員拳銃を持ってる相手に近接だけでやり合うのは辛くて、いくら私たちが上手く立ち回れるからとはいえ数の暴力もあるし、武器の性能差を経験だけで埋めるのは無理に近かった)
853 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:49:11.71 ID:wesiesbo0


バンッ!


穂乃果「! はぁっ!」シュッ

ことり「ほっと!」シュッ

ことり(三人全員殴りと蹴りだけを駆使して相手に近づいて一人ずつ無力化していく、だけど伊達に最上級ホテルの警備をしてるだけあって統率はかなり取れてて全員が射撃に集中するのではなくてそれぞれ近接か射撃かの役目を持って行動してる)

ことり(そんな相手に三人だけで挑むのは正直荷が重い、戦いながら何度もそう感じた)

穂乃果「よい…しょっと!」ドカ!

ことり「後は任せて!」ダッ


タッタッタッタッ!


ことり「ふんっ!とりゃー!」ドカッ!


ことり(いつも穂乃果ちゃんは最前線にいる人で、どんな相手でも恐れずに立ち向かう勇敢な人だ)

ことり(だからこの戦いでもまず穂乃果ちゃんが先行する、だから私はその穂乃果ちゃんのカバーをする。穂乃果ちゃんが相手のお腹に肘打ちを入れた後は、私が大きな踏み込みと一緒に掌底をかまして相手を吹っ飛ばした)
854 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:50:41.17 ID:wesiesbo0


曜「スタン投げるよー!」


ことり「! うんっ!」

穂乃果「了解だよ!」

ことり(そうして後ろから飛んでくるスタングレネードはここ周辺全ての人間の視界を奪う。私と穂乃果ちゃんで殲滅を行って曜ちゃんは追撃がこないように辺りをかき乱す役目をやってもらってる)


タッタッタッタッ


穂乃果「悪いね!私たちも本気でやってるから!」

ことり「痛いと思うけどごめんねっ!」


曜「二人とも殺さないようにね…」

ことり(フラッシュに備えた特殊なゴーグルをつけてる私たちには曜ちゃんの投げたスタングレネードは効かない、だから相手の視界を奪ってる間に近づいて殴り、或いは蹴り飛ばす)
855 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:52:12.49 ID:wesiesbo0


ことり「よしっ」

穂乃果「ふう」


ことり(穂乃果ちゃんと連携して数人を殴って蹴って吹っ飛ばしたら、背中を寄せ合って周りを見渡した)


ことり「…囲まれたね」

穂乃果「どうしようか…」


曜「はいはーい!そんな時は渡辺曜にお任せ!」バンッ!


ことり(そういいながら曜ちゃんは天上に向かって銃を発砲、そうすると銃声に反応した数人が曜ちゃんの方を向いたので、私たちはその間を使って曜ちゃんの方向にいる警備員一人に、穂乃果ちゃんはスライディングで相手を宙に浮かせて私はその宙に浮いた相手に飛び膝蹴りをしてそこからどかした)
856 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:53:57.22 ID:wesiesbo0
曜「ぃよしっ!いいね二人とも!残りの人もだいぶ少なくなってきたよ!」

穂乃果「このくらい余裕だよ」

ことり「ねっ」


曜「よーし!後の人たちをちゃちゃっと片付け——————」



ドカーン!



ことり「……え?」穂乃果「え?」


ことり(一歩、二歩、三歩と進んだ曜ちゃんが眩い赤い爆発と共に突然消えた。もう少し近かったら肌が焼けていたかもしれないし、そうでなくても火傷をしてしまいそうな熱が私に伝わってきて、私と穂乃果ちゃんを吹き飛ばす爆風は困惑の声を出してからやってきた)

857 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:56:01.29 ID:wesiesbo0


ことり「ぐっ……」

穂乃果「急に何…!?」


ことり(後ろに数m吹き飛ばれたけど空中で体勢を立て直して着地は怪我無く出来た。だけどそのすぐに飛んでくるモノに私は顔を青くした)


ことり「ッ!?!!!?」

穂乃果「よう……っ!」


曜「……っぁ」

ことり(私たちの前まで飛んできて見せたその姿————頭から血を流して顔の一部が黒く変色してる。ころころと転がって仰向けの状態で止まると見える曜ちゃんのその顔はあまりにも絶望に満ちていて、口が空いたままであまりにも厭世的でトラウマになりそうだった)

曜「…あっ………」

ことり(倒れる曜ちゃんの場所からはじわりじわりと血が広がっていって、首の皮一枚繋がってる状態で生きてはいるみたいだけど、ほぼ死んでるようなものだった)


ことり「曜ちゃん!!!?」


ドカーン!


穂乃果「くっ……一度逃げよう!!」


ことり(曜ちゃんをおんぶした穂乃果ちゃんはそう言った。驚く暇も与えてくれない爆撃がことりたちを襲うもので事態は一気に形勢逆転を迎えた)

858 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 19:58:43.39 ID:wesiesbo0


タッタッタッタッ


ピッ

ことり「真姫ちゃん!」

真姫『こちら真姫、どうかした?』

ことり「曜ちゃんが死んじゃう!!!」

真姫『どういうこと?落ち着いて状況を説明して」

ことり「爆発を受けて曜ちゃんがっ!」

真姫『出血は?』

ことり「もう酷いよ…このままじゃ死んじゃう!というかなんで生きてるのかが分からないくらいだよ!」

真姫『ならいい?まず頭の出血を止めなさい、そうしてすぐにこの位置へ向かって』

ことり「…!ここは……」

ことり(フラッシュに備えたゴーグルに浮かび上がる電子地図に目を丸くした、どこだろうこれ……)
859 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:00:47.49 ID:wesiesbo0
真姫『私の今いる位置よ、黒い車の中にいるからすぐに来て』

ことり「ち、近くない?なんでこんなところに……」

真姫『私の提案よ、あの家からじゃ電波も届きにくいからね、それに私にだって出来ることはあるし』


真姫『そう、例えば治療とか』


ドカーン! ドカーン!


ことり「この爆撃は何!?」

穂乃果「グレネードランチャーだよ!多分後二発か三発は来るよ!」

ことり「そんなここはホテルの立地でしょ!?なんでそんな…!」

穂乃果「私たちが危険な存在として認識されたのかもね…」
860 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:03:22.81 ID:wesiesbo0
ことり「…矢澤にこでももっと考えて撃つと思うけどなぁ」

穂乃果「にこちゃんは堅実だもんね」

穂乃果「…それで真姫ちゃん、話は聞いてたけど今すぐ向かうのは無理だよ、追手が来るんだもん。このまま真姫ちゃんのところへいったら真姫ちゃんも一緒に巻き込まれちゃう」

真姫『それは……そうね』

穂乃果「仮に今から戦って20分で決着がついたとしたら曜ちゃんは助けられる?それとも死んじゃう?」

真姫『…それは曜を見てないから何とも言えないけど、曜がどれだけ耐えられるのかにもよるわ』
861 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:04:54.96 ID:wesiesbo0
穂乃果「…曜ちゃん」

曜「……ぁ」

穂乃果「20分耐えられる?」

曜「………」フルフル

ことり「…!」

ことり(ごくわずかだけど、死にかけの曜ちゃんは首を横に振った)

穂乃果「…じゃあ十分は?」

曜「………」フルフル

穂乃果「五分」

曜「………」フルフル

穂乃果「……三分」

曜「………」フルフル
862 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:06:14.23 ID:wesiesbo0
穂乃果「……二分、二分もつ?」


曜「………」コクコク


穂乃果「…そっか、なら制限時間は二分だよ」

真姫『…えっ二分…?』

ことり「……分かった」

穂乃果「二分後にそっちに行くね、真姫ちゃん」

真姫『えっちょっと待っ————』


プツンッ

863 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:08:04.88 ID:wesiesbo0
穂乃果「……ねえことりちゃん」

ことり「何?」

穂乃果「どうして制限時間は二分って私が言ったのに、驚かないの?」

穂乃果「普通そこは無理でしょって驚く場面じゃない?それなのにことりちゃんはあたかも当然のように受け入れてくれた」

ことり「………」



穂乃果「…ラブライブ」



ことり「…!!」

穂乃果「記憶を失っても、何故かこの言葉だけは覚えてた。この言葉だけは記憶を失う前の言葉だってことが分かった、そしてそれが忘れちゃいけない言葉だって強く自覚が持てた。その名の通り業務用アンドロイドである私が生きることを愛す、私が変化を望もうとした証拠なんだって思ってる、ラブライブっていうのは」

穂乃果「だからそれだけ記憶を失う前の私はその言葉に強い想いを抱いてるんだって思った、記憶を失っても失われない私に沁み付いた何かが私の心にはあったんだ」
864 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:09:33.96 ID:wesiesbo0


穂乃果「ことりちゃん、手を貸してよ」


ことり「えっ」


ギュッ


穂乃果「……ほら、やっぱりことりちゃんは私の知ってる温もりとそっくりなんだもん。機械的に判断して、純度100%の温もり」

ことり「………」

穂乃果「最初に会った時からおかしいって思ったんだ、私はことりちゃんの事知らないのにことりちゃんは何故か私の事をよく知ってた」

穂乃果「絵里ちゃんと話す時は鼓動のスピードが遅いのに、私と話した途端鼓動のスピードが加速する、なんで私と話すことに緊張してるんだろうって」

穂乃果「他にも色々あるよ、初めて会ってからあの家の図書室で話をした時、ことりちゃんは儚そうな淡い笑顔をしてた。それが儚いって分かったのは花丸ちゃんも同じ笑顔をよくしてたからね、そしてそれは間接的に過去に何かを抱えてる人なんだって私は確信したよ」

ことり「………それで?」
865 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:10:51.93 ID:wesiesbo0
穂乃果「あの時手を握った時には明らかな手応えがあった、ここまで私の探してる人の温もりと合致する人…いやもう本人なんじゃないかって思うほどの人は初めてだったよ」

穂乃果「希ちゃんの合致率は63パーセント、花丸ちゃんの合致率は41パーセント、せつ菜ちゃんの合致率は18パーセント、念のためと思って握ったにこちゃんに関しては3パーセントだったよ」

穂乃果「だけどことりちゃん自身が否定をするからきっと違うんだって思ってたよ」

穂乃果「…だけど、今確信したよ」



穂乃果「ことりちゃん、あなたは私が記憶を失う前にずっと一緒にいた人でしょ?」



ことり「……!」

穂乃果「私のペアでもないのにことりちゃんはせつ菜ちゃんと同じくらい…いやそれ以上に息のあった動きが出来てる、私の行動癖を知ってて、私がやるであろう行動をもう知ってての動きをしてる」

穂乃果「それはつまり私が記憶失うずっと前から戦線を共にしてきた人なんだよね?ことりちゃんは初期型、私も初期型、昔から一緒でも何もおかしな話じゃないんだよ」
866 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:12:09.41 ID:wesiesbo0


ドカーン!


ことり「……気付いちゃったんだね、穂乃果ちゃん」

ことり(爆発が近くで起きても動じない私たちがそこにはいた)

ことり(例え記憶を失っても、私の事をどこかで覚えていてくれるのは何とも穂乃果ちゃんらしかった)

ことり(別にばれたくないって思ってたわけじゃない、だけど秘密にしておいた方が悲しまずに済むと思ってずっと逃げてた。前の穂乃果ちゃんとは別人だって思ってても、ニッコリとした笑顔や最前線を突っ走るあの姿は何も変わらなくてもどうしても昔の穂乃果ちゃんと重なってしまう)

ことり(穂乃果ちゃんと喋ると緊張する、心があたふたする。昔の穂乃果ちゃんより真面目で笑顔の数も減った穂乃果ちゃんといると心が苦しくなる)

ことり(だけどやっぱり穂乃果ちゃんは穂乃果ちゃんのまま。記憶を失ってもどこか冷静だし戦う時に見せる背中はとても大きく感じる、笑ってなくてもなんだかんだ優しいし、軍神としての強さも失ってない)

ことり(だからそっと傍で穂乃果ちゃんを見てるのがことりにとって幸せだった。もう悲しくなりたくないから、もう何も起こってほしくないから私は進展よりも停滞を望んだんだ)


ことり(それなのに穂乃果ちゃんは私のことに気付いちゃったんだね……)


ことり(別にイヤなわけじゃないよ、でも…ことりの心が揺れだすのはもはや避けられないことだよ)
867 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:15:18.30 ID:wesiesbo0
ことり「…当たり前じゃん、穂乃果ちゃん動きを知ってるんだから連携が取れないわけないじゃん」

穂乃果「……やっぱり」

ことり「だって…ずっと昔からいた人のこと忘れられるわけないじゃん!どんなに辛い思い出抱えてたってことりにとっては大切な思い出なんだもん!」

穂乃果「…穂乃果だってそうだよ!今は記憶を失って何もわかんないけどことりちゃんの事大切にしてたっていうのは覚えてる!この体で感じてる!!」


穂乃果「穂乃果にとってことりちゃんは運命の人だったもん!!!」


ことり「!!」


穂乃果「……会いたかった」


ギューッ



ことり「………ことりもだよぉ!!」ポロポロ



ことり(穂乃果ちゃんに“運命の人”って呼んでもらえるだけでもうこの上ないくらいに幸せだった)

ことり(気付いたら笑えるようにもなってて、それもこれも全て絵里ちゃんのおかげだよ。幸せを運んでくれることりたちのリーダーに、穂乃果ちゃんの主に)


ことり(東京を変える人物として相応しい人だよ)

868 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:17:45.28 ID:wesiesbo0
穂乃果「…さて、ことりちゃん」

ことり「んん…」ゴシゴシ

ことり「何?」

穂乃果「真姫ちゃんから無線を切ってからもうすぐ一分半だけどどうする?」


ことり「……三十秒もあれば充分だよ」


ことり「倒す必要なんてないんだから」

穂乃果「うん!そうだね!」ダッ

ことり「行こう!」ダッ

ことり(そう言って穂乃果ちゃんは曜ちゃんを背負いながら走り出し、後に続くことりは残った全てのスモークとスタンを一定の間隔をあけて投げた)

ことり(するとどうだろう、後ろで大きな煙幕が上がった途端に飛んでくるグレネードランチャーの弾二発に対しては、私たちがほぼ同じタイミングで後ろを向きそれぞれ別々の弾を撃って空中爆破させた)
869 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:19:09.18 ID:wesiesbo0


穂乃果「えへへっやっぱり分かってるね」

ことり「元相棒だからね♪」


ことり(穂乃果ちゃんが右にいるにも関わらず撃ち落とすのは左のグレネード弾っていうのは知ってる、こういう局面に陥った時、穂乃果ちゃんは自分の方向とは逆の方を撃ち落としてクロスファイアを作りたがる、その方がかっこいいからって言ってたのを覚えてる)

ことり(そうして前を向いて走り出せばすぐに左へ大きく曲がって相手の視界から外れた。ここで左に行くのはずっと昔から困ったら左に行こうって根拠も無しに胸張って言ってたから)


ことり「はっ」ピョーン

穂乃果「ほっと!」ピョーン


ことり(横に橋があっても飛び越えられる川ならジャンプで飛び越えるのも知ってる、その方が風が当たって気持ちいいからって言ってるのも覚えてる)


タッタッタッタッ


ことり「真姫ちゃん!」

真姫「二人共!大丈夫?」

穂乃果「追手は撒いた、後は曜ちゃんをよろしくね」

真姫「ええ、任せない」
870 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:20:51.04 ID:wesiesbo0
曜「……ぅ」

真姫「あなたたちは今からどうするの?」

穂乃果「絵里ちゃんがどうなってるか知ってる?」

真姫「絵里からはとうとう最上階に上るっていう連絡が最後、ルビィはそもそも連絡がないわ」

ことり「絵里ちゃん最上階に行ったんだ……」

真姫「……無事だといいわね」

穂乃果「………」

真姫「どうする?行くのもよし、ここに残るのもよしだと私は思うわよ」

ことり「……二人に応答を入れられない?」

真姫「………無理ね、電波の届かないところにいるみたいだわ」

ことり「うーん………」
871 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:22:36.65 ID:wesiesbo0


穂乃果「……待とう、絵里ちゃんが生きてるのを祈って私たちは待とう」


穂乃果「今ここで出てもまた見つかって辺りが騒然とするだけだよ、確かに私たちが最上階に行くことで変わることもあるだろうけどハイリスクすぎる、そしてそこにリターンがあるのかすら分からない。今鞠莉ちゃんと一対一の状態の絵里ちゃんを邪魔するわけにはいかない」

穂乃果「だからここは待とう」

ことり「……分かった」

真姫「…そうね、賢明な判断だと思うわ」

穂乃果「………」

ことり「………」

真姫「………」


「何もないといいけど……」

872 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:24:03.37 ID:wesiesbo0


絵里「……うん、お願いね、うん、それじゃあ」

真姫『ええ、それじゃあね』

絵里「……はぁ」

絵里(もしかしたらこれが最後の応答になるかもしれない、そう感じながら真姫に最上階に行くと連絡をした)

絵里(果たして何が待ってるんだろう、考えたくないような気がして思考を停止させ興味のままで終わらせたけど、もうすぐしたらイヤでも見ることになる)

絵里「十二…十三…十四…」

絵里(現在の階を示す数字が増えるにつれ増していく緊張感)

絵里(これが最上階まで来たらとうとう私の目標地点にまで到達する)
873 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:25:24.37 ID:wesiesbo0
絵里「………三十」

絵里(長かった。このエレベーターに乗るのにどれだけ苦労したんだろう、様々な死線を超えて、たくさんの感情が巡って、絶望をイヤと味わって、自殺までした)

絵里(だけど、こうして私は真実を知る者としてこのエレベーターに乗っている)


絵里(————ここからが本番)


絵里(ゴールが終わりじゃない、ゴールに何があるかが重要だ)

874 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:27:21.27 ID:wesiesbo0


絵里「……四十六」


ピコンッ♪


絵里「………」

絵里(最上階である四十六階につくと鳴る軽快な効果音。しかし扉は開かない)

絵里「…ここに当てるのね」

絵里(エレベーターの階を入力するところの上に、カードを読み取るっぽい場所があった。だからここに真姫が用意してくれたカードをかざした)


『————コード613、機密ID認証をしました。ウイルス、スパイウェアの確認無し』

『ロックを解除、扉が開きます』


ウィーン

絵里「………」

絵里(セキュリティによる何重にもかけられたロックの解除が終わると、扉が開いた)
875 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/10(木) 20:31:22.86 ID:wesiesbo0


スタスタスタ


絵里「………」

絵里(その先はとても広く、奥は全面ガラス張りの社長室。床はロイヤリティ溢れる絨毯が敷かれていて、入って斜め左にあるテーブルには分厚い本の束がいくつもあって、右の壁には様々な資料が貼り付けられている)

絵里「……ようやくなのね」

絵里(私の目線の先にあるイスに座る誰か。私が声を発することで外を向いていたイスがゆっくりとこちらを向き始めた)

絵里(あぁ、ようやくなのね)



絵里(やっとこそで私は————)


876 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/10(木) 20:38:47.45 ID:wesiesbo0
今日はここで中断。
昨日は色々ありましたが今日はこうして何事もなく投下できていて安心しています。
再開は明日か明後日、おそらく次が最終回になります。
877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/10(木) 20:45:51.89 ID:CGlVK3gD0
いよいよラストかー
あの子が序盤以来出てきてないのが気になるな・・・
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/11(金) 16:01:33.03 ID:HR93flPJ0
なんというかFPSの知識で書いてるんだなって感じ
879 : ◆iEoVz.17Z2 [sage]:2019/10/12(土) 21:42:52.71 ID:U3SzFWDY0
すいません、台風の影響もあってちょっと今日は投下厳しいので明日か明後日にやります。
880 : ◆iEoVz.17Z2 [sage]:2019/10/12(土) 21:43:27.21 ID:U3SzFWDY0
すいません、台風の影響もあってちょっと今日は投下厳しいので明日か明後日にやります。
881 : ◆iEoVz.17Z2 [sage]:2019/10/12(土) 21:44:23.95 ID:U3SzFWDY0
なんか連投しちゃいましたけど気にしないでください
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/13(日) 18:47:34.05 ID:u5IEOG0O0
名残惜しいけどもう終わっちゃうのか…
ことりが穂乃果に対してそっけないと感じてたけどこういう理由があったんだな。
883 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 19:50:32.02 ID:raJY7OxV0


鞠莉「…待っていたわ」


絵里「鞠莉……」

鞠莉「海未とにこに銃弾を放った時からあなたは絶対にここに来ると思ってた」

鞠莉「アンドロイドの生みの親にしてアンドロイドの差別を作り上げた私のところに来るのはもはや分かっていたこと」

絵里「………」

鞠莉「…でも、ここに来るまでのあなたは様々なDifficultyに遭遇してきた」

鞠莉「対アンドロイド特殊部隊との衝突、仲間の突然の裏切り、大切な仲間の死、自殺、愛すべき妹との殺し合い」

鞠莉「それを全て乗り越えてここまで来たのよ、まずは私からおめでとうを言いたいわ」

絵里「…ふざけないで、私の今までのしてきたことはおめでとうなんて綺麗な言葉で収められるものじゃないし収めていいものでもない」

絵里「そもそもなんで鞠莉が果南が裏切ったことや私が亜里沙と戦ったことを知ってるの?ましてや自殺まで知ってるのはおかしいんじゃない?」
884 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 19:53:09.04 ID:raJY7OxV0


鞠莉「私は常に私でありなさい」


絵里「……!」

鞠莉「聞き覚えない?」


えりち『私は常に私でありなさい』


絵里「まさかあなた…!!」

鞠莉「そうよ?」フフフッ


鞠莉「私がえりち、あなたの二代目になる予定だった記憶よ?」


絵里「…どういうことよ、あなたは死んで終わりの人間じゃない。仮にアンドロイドが機械的に記憶の移動が出来たとしてもあなたは機械仕掛けの記憶を有していないから記憶の移動が出来ないわ」

鞠莉「ええ、人間の脳を有してる私だけじゃ出来ない。けどそれを補助する機械を使えば記憶の移動も可能になるっていったら信じてくれるかしら?」

絵里「そんなこと出来るの…!?」
885 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 19:59:50.65 ID:raJY7OxV0
鞠莉「——ええ、私はそれをソウルボックスと名付けた。それは脳に存在する意識という概念の発生源を見つけた時に私は考えた」

鞠莉「テキストやワードにはコピー&ペーストなんて便利な機能があるじゃない、それと同じ原理よ、意識の源が分かったのならその意識の源をスキャニングして、解析する。そして解析して得たデータを元に、私の脳にあるニューロンをアンドロイドを作ったのと同じ方法で人工的に再現して、機械的に私の記憶をコピーした」

鞠莉「するとどうなる?機械化された私の記憶がそこには出来て、ソウルボックスを埋め込んだアンドロイドの機械化された記憶が私の今この胸に刻まれているソウルボックスへやってくる、それを他のアンドロイドと連携させれば私はそのアンドロイドを乗っ取ることが出来る。そうして私はもはや半永久的な不死身になったのよ」

絵里「そんな馬鹿げた話が————」


鞠莉「あるのよ」


絵里「!!」

鞠莉「これを使えばクローンだって作れる、もちろんそんなことはしないけどね」

鞠莉「元々アンドロイドは私が作ったのではなくて私と希で作ったのよ、その中で私たちは相手が特定の行動をすることでそれを読み取りこちらも特定の行動をする、という人間とロボットが差別化されるようなものにはしたくなかった」

鞠莉「希には強いこだわりがあった、まるで人間みたいなんじゃなくて、人間そのものとして機能させたいという強い思いがあった」

鞠莉「だから私たちはここのホテルのスタッフに脳のスキャンを協力してもらってをニューロンの可視化をして、意識の源を発見した。アンドロイドの脳は機械仕掛けよ、意識はあるけど記憶の保存は全て機械で行ってる。だから私たち人間の脳に存在する細胞や神経は別に要らなくて、記憶の移動に関しては記憶の機械化が出来た時点で十分に可能だった」

鞠莉「そうして長い年月を経てソウルボックスという機械があるのだけれど、実際の成功例をあなたはもう知っているでしょう?凛を殺したのは誰?」

絵里「……!!!」
886 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:01:56.38 ID:raJY7OxV0


鞠莉「そう、私よ?」


鞠莉「あなたの身体を借りて私があの戦場に立ったわ、あの時は死ぬかと思ったわ。だって目覚めたら背中にナイフが突き刺さってるんだもの」

絵里「な、なんで…凛は対アンドロイド特殊部隊でしょ?仲間じゃない……」

鞠莉「凛という人物とあなたという人物を天秤にかけた結果よ?私にとってあなたの方が重要だったの」

絵里「…それはどうして?」


鞠莉「————標準型アンドロイドX、聞いたことある?」


絵里「!!!」

鞠莉「その様子だと聞いたことあるのね、どこから漏れたかは知らないけどアンドロイドを作っていく中で私はとあるアンドロイドにそういう特殊な呼称をつけた」

鞠莉「標準型アンドロイドXという特別性を持たせるためにね」
887 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:04:54.34 ID:raJY7OxV0


鞠莉「第一に、それは人間でなきゃいけなかった」


鞠莉「目に見えて強い戦闘型でもなければ、目に見えて人間とはまた違う業務型でもない。人間に最も近い標準型でなきゃいけなかったの」


鞠莉「そして第二に、それは識別コードが私の誕生日でなきゃいけなかった」


絵里「!」

鞠莉「あなたの識別コードを今のうちに確認しておきなさい?」


鞠莉「第三に、それは私が死んだ時に自動で記憶が飛ぶ対象でなきゃいけなかった」


鞠莉「ソウルボックスは近年に開発された代物よ、そんなものを有象無象のアンドロイドが有してるわけもなく、標準型アンドロイドXという呼称をつけるにあたってはそのアンドロイドの胸にソウルボックスを埋め込んで、私が死んだ時自動で私の胸のソウルボックスに入っている私の記憶がその標準型アンドロイドXに転移するように作った」

絵里「……!」


鞠莉「最後第四に、それは私とそっくりなアンドロイドでなきゃいけなかった」


鞠莉「私の分身であるような、そしてそれが作られる頃には私がソウルボックスを利用してそちらの身体に移動しても違和感のないようなアンドロイドでなきゃいけなかった」
888 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:06:11.74 ID:raJY7OxV0
絵里「……それが私?」

鞠莉「そうよ、識別コードF-613、名前は絢瀬絵里、高校三年生」

絵里「………」

鞠莉「あ、そうそう、なんであなたに絵里って名前がついたか知ってる?」

絵里「…知らないわ」

鞠莉「あなたは私————私の分身、そしてもう一人の私。そういうコンセプトで作られたアンドロイドなのよ」


鞠莉「Electric Loot Identity」


鞠莉「その頭文字を取ってELI、そう…だからあなたは絵里なのよ」

絵里「…意味が分からないわ、その単語に込められてる意味がまるで分からないんだけど?」
889 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:08:53.15 ID:raJY7OxV0
鞠莉「さっき言ったわよね、あなたは私だと」

鞠莉「あなたの特徴は何?」

絵里「特徴…?」

絵里「………」

鞠莉「…そうね、あなたはちゃんと言われるまで自覚しない人だもの。私とそっくりだわ」


鞠莉「あなたは一度見た動きを即座にコピーする」


絵里「!」

鞠莉「……私がそうだったの」

鞠莉「テレビで見たプロレスの技や時代劇の剣捌き、サスペンスでやってた犯行の手口、実際に見たプロのタイピング、他にも色々見てきたわ」

鞠莉「そうしてく中で私は歳をとればとるほどやれることが多くなってることに気付いた、それも全てが職人レベルでね」

鞠莉「だから私は七年前というまだ中学生でもない時にアンドロイドの開発に成功した」

絵里「………」
890 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:10:18.75 ID:raJY7OxV0
鞠莉「私もね、希に言われるまでは気付かなかったわ。自分のこの才能に」

鞠莉「私はこの才能を誇りに思った、けどね、私のやってることがいくらすごくてもそれって率直に言ってしまえば」



鞠莉「他人の個性を盗んでるだけに過ぎないのよ」



絵里「…!!」

鞠莉「気付いた?Electric Loot Identity、それぞれを直訳して電子、盗む、独自性————その三つの単語のうち、後ろの二つから形成される人物が私なのよ」

鞠莉「この才能が人を傷つけるっていうのを知ったのは運動会の時、クラスで一番速い子のフォームを見て覚えてそれを真似て学年一位の座についた」

鞠莉「そのクラスで一番速い子、泣いてたわ。それはもう大泣き」

鞠莉「他にも中学の美術はプロのを見て先に覚えてたからダントツで上手かった、私が上手すぎたせいでクラスで絵がとっても好きだった子の熱意を殺してしまった、差を見せつけすぎて現実を直視させてしまった」

鞠莉「料理番組を意図せずとも数百と目にしてきたから私は料理がものすごく上手かった、調理実習は私の料理が上手く出来過ぎて逆に上手く出来なかった子がバカにされてた」

鞠莉「私のこの才能は色々な人を傷つけすぎた、だからこの才能はプラスではなくてマイナスのニュアンスとして扱われるべきだと思って私はElectric Loot IdentityのLの部分をLootにした」

鞠莉「…これで分かったでしょう?ELIという名前の意味が」
891 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:10:46.32 ID:raJY7OxV0
絵里「……ええ、よく分かったわ。この力はあまりにも人間離れしすぎてる、それは鞠莉と戦ってる時によく分かった」

鞠莉「…そうよ、この才能は恐ろしすぎるの」

鞠莉「希はこの才能を才能とは呼ばなかった、多分希の優しさかしら」


鞠莉「行動記憶体質って、希はそう言ってた」


絵里「行動記憶体質……」

鞠莉「そう、あなたもその体質なのよ」
892 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:11:48.12 ID:raJY7OxV0
絵里「……じゃあ私が頭を撃ち抜かれても生きてるのは何故?記憶保存領域が壊れてるはずでしょ?」

鞠莉「あなたの死は私の死と同義だからよ、事実あなたの命はもう消えた。だけど私の命が残ってる」

鞠莉「私の胸に埋め込まれたソウルボックスが私の心臓の鼓動を検知しなくなったら自動的に機能を停止してあなたも死ぬわ」

絵里「…じゃあ今の私はゾンビなの?」

鞠莉「いや死に至る痛みを感じたらあなたのシステムが自動でシャットダウンするから死ぬわよ、今は死を誤魔化してる状態にすぎないの」


絵里「……今ここで鞠莉を殺せば私も死ぬのかしら?」


鞠莉「ええ、その通りよ」


カチャッ


鞠莉「……私を殺すつもり?」

絵里「ええ、あなたを殺すわ」
893 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:13:28.42 ID:raJY7OxV0
鞠莉「私を殺したらあなたも死ぬのよ、それでもいいの?」

絵里「いいわ、元々はない命だもの、もうどう使ったって後悔なんてないわよ」

鞠莉「……やっぱりあなたは私と同じね、その頑固な感じは私を見てるみたいだわ」

絵里「…それは嬉しくないわね」

鞠莉「素直に喜んでもいいのよ?」フフフッ

絵里(最上階に上ってから様々な情報が私の脳へ伝達した。えりち————いや、鞠莉が言ってたその“真実”ってやつはパンドラの箱だった)

絵里(アンドロイドの抱える過去のその全貌が見えたような気がして、私というアンドロイドと、鞠莉という人間の関係がよく分かった)

絵里(…そして、それが分かった上で取った行動は鞠莉を殺すこと)


絵里(今ここで鞠莉を殺して、私も死ぬ)

894 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:15:13.33 ID:raJY7OxV0
絵里「……!その武器は…!」

鞠莉「ええ、あなたと同じ武器よ、スコーピオンEVO A1とPR-15、さいっこうにcoolな武器構成だと思うわ」

鞠莉「私も生きとし生ける東京を知ってる人間だからね、抵抗空しく殺される気はないわよ」

絵里「…そう」

絵里(…きっと鞠莉の立場に私がいたらきっと私は鞠莉と同じ事を言っていた、そのことに少し驚いてしまった)

絵里(東京が好きでここにいる私、どんな相手でも抵抗をする私、どんな相手でも勝てないとは思わない私がいる。そんな私がいう言葉はきっとその鞠莉の言葉なんでしょう)

鞠莉「last battleに相応しいわね、あなたと私」


鞠莉「最強対最強の戦いよ?」


絵里(そういいながら鞠莉は曜がいつも使ってる射線が見えるゴーグルをかけ、スコーピオンを下げて戦闘態勢に入った。これがラストバトル、これが天下の分け目)

絵里(泣いても笑ってもこれで最後)

絵里「すぅ…はぁ…」

絵里(鞠莉から目を離さず呼吸を整える為に息を吸って吐いた。私の人生の集大成——秘められた私の想いと宿る強き思いを乗せて私は————)


絵里(————ラストバトルへのトリガーを引いた)

895 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:18:24.21 ID:raJY7OxV0
絵里「はっ!」ダッ

絵里(発砲と同時に鞠莉に近づいた、願わくばこれで終わってほしいけどやっぱり鞠莉はスコーピオンのトリガーを引いた分すべての弾を回避してきて、跳躍の際に靴の裏がほんのり光ってるのを見て鞠莉も曜と同じで跳躍アシストを使ってるのを確認出来た)

鞠莉「あなたはこれを避けられるかしら?」


バリバリバリバリ!


絵里「っ!?」シュッ

絵里(とんでもない数の射線が私の瞳に映る。果南のアンダーバレルショットガンや希のショットガン二丁の射線に劣らないその手数の多さに目を丸くした)


曜『そんなことないよ、絵里さんが強みを実感できないのはスコーピオンを相手にしたことがないからなんだよ、相手にするとその凄まじい発射レートに驚くことになると私は思う』


絵里「ちっ……」


絵里(曜の言う通りだ、トリガーを引くことで鳴る恐ろしい銃声は恐怖の権化で、それと共に飛んでくる数えきれない銃弾は一発自体は小さいもののトリガーを引きっぱなしなら弾の全てが連なった状態で飛んでくる、そんなのを受けたらひとたまりもない)

絵里(スコーピオンの弾丸を初めて見た私は左へ大きく跳躍、動き自体はよかったものの驚きで少し反応が遅れて結果的に上腕に銃弾一発が掠った)
896 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:23:16.50 ID:raJY7OxV0


タッタッタッタッ


鞠莉「あの時の再戦といきましょう!」


絵里「ええ、そうねっ!」

絵里(私が走り出せばまるで鏡のように同じスピード、同じ体勢、同じタイミングで鞠莉も走り出し、結果的な距離の縮まりは近接戦闘の始まりの証だった)

鞠莉「ふっ!」

絵里(しかし攻め方は少し特殊で大体ここで飛んでくるのはストレートやフックなんかの殴りなんだけど、鞠莉が行ったのは私の前で止まって上段蹴りで、どうやら鞠莉は私が一度見たものをコピーするという特性を知っている以上みんながしてるような行動では攻めてこなさそうだった)


絵里「はっ!」ガシッ


絵里(でも、上段蹴り自体は見たことある。それをしゃがんでよければ第二の蹴りが飛んでくるのでしょう?それは知ってる、だから私は避ける選択をしたのではなくて鞠莉の足首を掴んで受け止める選択をした)

絵里(そうして私は掴んだ足首を引っ張って鞠莉のお腹に膝蹴りをして、そのまま怯んだ鞠莉の足首をもう一度強く引っ張り後ろに流し鞠莉の後頭部目掛けて蹴りを————)


鞠莉「はい、残念」ドカッ


絵里「ッ…!?」

絵里(——入れることが出来なかった)
897 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:25:47.94 ID:raJY7OxV0


鞠莉「受け止められるのは想定済み、この場合希みたいに反撃するためのコラテラルダメージを受けるのがいいのよね、私は希の動きを何十回と見てきたからこれには自信があるの」


鞠莉「私、受け手なものでね」フフフッ


絵里「ぐっ…うぅううう…!!」

鞠莉「ごめんなさいね絵里、私はあなたより戦闘経験豊富だから」

絵里(鞠莉は後ろに流され私の視界から外れた瞬間にバランスを元に戻しもう片方の足で私の横っ腹に蹴りを入れてきた)

絵里(アンドロイドにも劣らない蹴りの威力はおそらく後二発でも受ければ体がおかしくなる、だからもう食らえない、食らっても一発…だから次攻撃する時はちゃんと行動を選んでやらないといけない)


鞠莉「そんなゆっくり起き上がってたら死ぬわよ?」バリバリバリバリ!


絵里「!」

絵里(鞠莉の蹴りの痛みが全然消えなくて起き上がるのが辛かった、でもそんなゆっくりしてたら死ぬのは確かに間違ってない)

絵里(しかし幸いにも片足はもう既に立ってる状態だったからなんとかすぐ回避行動に移れた。ただ、これじゃあ跳躍の勢いが足りなくて銃弾をもろに受ける、だからとりあえず右に跳躍をした後すぐに左へスライディングして、あの時の果南のようなジグザクの形で避けた)
898 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:28:47.53 ID:raJY7OxV0


絵里「今度こそ行くわっ!」タッ

鞠莉「ええかかってきなさい!!」


絵里(そうして回避すれば自然と痛みは消えていく、そうなればたちまち起こる近接戦闘は今まで戦ったどの相手よりもハイレベルなものだった)

絵里(右ストレートを繰り出せば体を捻って避けられすぐに反撃の後ろ回し蹴りが飛んでくる、それを少し姿勢を低くして回避し私も負けじと振り返り鞠莉の顎にアッパーカットを入れる、けどそれも体を少し反って回避され、それはもう回避をしたら反撃をして、反撃されたら回避をするの繰り返しだった)


絵里「はぁ…はぁ…本当に人間なの…?」

鞠莉「ん、んん……私はあなただからね…」


絵里(一進一退の攻防を続けて汗も出始め息も切れ始める、しかしアンドロイドの体力についていける鞠莉という人間は一体何者なんだ、どれだけすごい人間なんだと不思議になってくる)
899 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:30:31.18 ID:raJY7OxV0


鞠莉「そんなことより…早く決着をつけましょうか…長期戦にでもなったら私が負けちゃうからね!」ダッ


絵里(私の問いに答えてすぐに鞠莉は動き出す、いくらアンドロイドの体力についていけてるとは言ってもやはり人間であるのは変わりなく、長期戦に持ち込まれて不利になるのは既に分かっているみたいだった)


絵里「…ええそうね!」ダッ


絵里(だけど、それが分かったところで私の戦法は変わらない。逃げに徹するわけでもないし攻めることをやめるわけでもない)

絵里(私だってすぐに決めたい、だって正直私だってこのまま持久戦をしてたら動けなくなって負ける未来しか見えない。なら鞠莉が望むように、私が望むように私も鞠莉と同じように突っ走った)


絵里「はっ!」

鞠莉「食らって!」


絵里(お互いスコーピオンの弾をリロードする暇なんてなく、この期に及んでは考えることが一緒。前へ走りながらスコーピオンの残弾を相手に向かって発砲、そしてその後する行動も全く同じで、お互い射線で心臓を狙ってるのが確認出来てるからそこはスライディングで一気に距離を詰めながら回避)
900 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:31:57.94 ID:raJY7OxV0


絵里「…!!」


絵里(蹴りが届く位置まで来て鞠莉が次にする行動はさっきと同じ上段蹴り、それが分かったのはさっきのフォームを見てたから)

絵里「………」

絵里(上段蹴りを初めて見た時はしゃがんでよけた、けどそれだと追撃が来てしまう)

絵里(だからさっきは足首を掴んで反撃に転じた、けどそれでも鞠莉には通用しない)

絵里(ならこの攻撃はどうする?安定択で攻撃に付き合わない?それともまた受け止める振りをしてフェイント?)

絵里(……いや、違う)


絵里「っ!」タッ


絵里(ここで弱気になっても勝負はつかない、鞠莉は私、なら私は鞠莉だ。如何なる状況においてもコンディションはほとんどが同じ)

絵里(鞠莉が体力切れなら私も体力切れだし、鞠莉の限界が私の限界だ)


絵里(…でも違う)

901 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:34:20.55 ID:raJY7OxV0
絵里(私と鞠莉の決定的な違いで私は勝負にいかなきゃいけないみたいだ)

絵里(確かに私は鞠莉で、鞠莉は私。そこは素直に認めよう)


絵里「だけど違う!!!」


鞠莉「!」


絵里「鞠莉!これが私と鞠莉の違いよ!!!」


絵里(ここが勝敗の分かれ目だった)


絵里(鞠莉の上段蹴りと私の上段蹴りが交わった直後に発生する小さな衝撃波を感じた瞬間、鞠莉の蹴りは私の蹴りの威力に負け体勢を崩した)

絵里(そうして私は追撃にフルパワーの飛び後ろ回し蹴りを鞠莉のお腹にヒットさせ、吹き飛ばし壁に叩きつけた)
902 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:38:32.74 ID:raJY7OxV0


鞠莉「がっ…けはっ…!うっぷっ……」


絵里「はぁ…はぁ…はぁ……」

絵里(————私と鞠莉の違い、それはアンドロイドか人間であるかの違い)

絵里(アンドロイドは人間より運動神経がよくて、力は強い、例え戦いで人間がアンドロイドと並べてたとしてもそれは表面上に過ぎなくて、武器という小細工がない戦いで交えれば力の差はすぐに出てくる)

絵里(鞠莉、あなたはきっと見たことがないのでしょう?)


絵里(色んな人の動きを見て最強を積み上げてきたけど、鞠莉と同じ立場にいる私の力を見たことがないでしょう?)


絵里(文字通り鞠莉は最強だ、だけどその最強のコピーであり、戦闘的な意味で人間の上位互換種族であるアンドロイドの私の力は、見るだけじゃ分からないでしょう?)
903 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:40:46.23 ID:raJY7OxV0
絵里「………」

スタスタスタ


鞠莉「あ…ぅ……」


絵里(口からよだれを垂らす鞠莉にハンドガンの銃口を近づけた)

絵里(このトリガーを引けば全てが終わる。そう、何もかも全てが終わるのよ)

絵里(始まればいつかは終わる、それが今日なんだとしたら随分と長いようで短い日々だった)

絵里(様々なモノを失った、鞠莉を殺して得るものがあったとしてもきっと失ったモノの数に勝ることはない)

絵里(この戦いで数多くの命が失われた、果たしてその全てが失う必要のある命だったのかしら。今となってはもう分からない)

絵里(振り返ってみればあのままずっと多少の差別を受けながらも平和な暮らしをしていればよかったのかもって思う、だけどレジスタンスになってから得たものには値段とか価値とかそんなものじゃ推し量れない最高のモノだってあったはず)

絵里(ことりや穂乃果、曜やせつ菜————出会いだってたくさんあった)

絵里(だけど、そのレジスタンス生活も今日でおしまいね)

絵里(目を見開いた私はゆっくりとトリガーに指をかけた)
904 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:41:48.47 ID:raJY7OxV0


プルプルプル


絵里「……!」

鞠莉「……ぅ?」

絵里(……まただ)

絵里(鞠莉に銃口を向け、トリガーに指をかけた瞬間に手が震えだした)


絵里『私が…私が…!』

絵里『……なんで』


絵里(何回目だろう、この手の震えは)

絵里(震えた手に力を込める為にもう片方の手を絡めて、無理矢理トリガーを引こうとした)
905 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:42:31.21 ID:raJY7OxV0


絵里「くっ……なんで…なのっ…!!」


絵里(トリガーが引けない、怖い、怖い、怖い)

絵里(これを引いたら人が死ぬ、私は人を殺すことになる。鞠莉という忌々しい相手を前にしても、今までずっと殺すつもりでいた相手を前にしても、殺すことへの恐怖心が拭えてなかった)

絵里(どうして私は人が殺せないのかしら、どうして私は殺すことが怖いのかしら)

絵里(……それはいつまで経っても分からない永遠の謎みたいだった)
906 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:53:52.83 ID:raJY7OxV0


鞠莉「……ふんっ!」


絵里「あっ!?」

鞠莉「はぁッ!」

絵里「ぐふっ…!?」

絵里(あの時のように堂々巡りをしてれば下る甘々な覚悟を持ってた私への天罰)

絵里(尻もちをつき壁に寄り添っていた鞠莉は突然私の足に突き蹴りをいれてきて、トリガーに対して戸惑っていた私は避ける術なく命中するけど、アンドロイド特有のバランス感覚はこれだけじゃ決壊せず怯むだけに留まる)

絵里(だけど間髪入れずに飛んでくる追撃の更なる突き蹴りに対してはどうなるのかしら?)

絵里(……答えはとっても簡単、それに対応できずお腹に強烈な蹴りがめり込んで私はさっきの鞠莉と同じように吹き飛ばされた)

絵里「かっ……なんで…ッ!」

鞠莉「殺さないなら私が殺してあげる、私を殺す時間はたくさんあったのよ、それなのにあなたは殺さなかった」


鞠莉「だから恨むのなら私を殺すことが出来なかった自分を恨むことね」


絵里「……くっ」

絵里(仰向けに倒れる私に向けられた鞠莉のハンドガンの銃口。私自身動けなくはないけどここで動いたら撃たれて死ぬでしょう)

絵里(鞠莉の瞳にはちゃんとした殺意がある、数秒前に私もその瞳の影を宿してれば鞠莉を殺せたのかしら)
907 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:54:25.78 ID:raJY7OxV0


鞠莉「じゃあね、絵里」


絵里(トリガーにかけた指に力が加わるのを感じた私は力強く目を瞑った)

絵里(こんな最後は不甲斐ないけど、ある意味私らしい最後だ)

絵里(東京で人一人殺せないんじゃきっとこうであるべきだったのよ、甘い考えを求めているなら東京から離れるべきだったのよ)

絵里(私の人生を起動修正できるポイントはいくつもあった、そこで私は東京を選んだ)


絵里(殺される直前になって、今更鞠莉を恨むなんてことはしない)


絵里(……もう、悪いのは私なんだから)

908 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:55:30.26 ID:raJY7OxV0


スカッ


絵里「………?」

鞠莉「………」

絵里(だけどどうしてかしら、鳴り響くのは弾が込められていない空の発砲音だけ)


絵里「…ん、ま、鞠莉……?」


絵里(ゆっくり目を見開けば、既にハンドガンを下げてる鞠莉がそこにはいて、瞳を大きく揺らしながら私を見ていた)

鞠莉「………わけないじゃない」

絵里「…え?」


鞠莉「殺せるわけないじゃない!!」


絵里「!!」

鞠莉「あなたは私とかそれ以前にあなたは私の作ったアンドロイドなのよ…?そんな私のアンドロイドを私が殺せるわけないじゃない……」

鞠莉「だから殺しは対アンドロイド特殊部隊の人に任せてたのよ……」

絵里「鞠莉……」
909 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:57:12.67 ID:raJY7OxV0
鞠莉「やっぱりあなたは私よ、誰かの為って時にしか人を殺せなくて、だけどいざ殺せる状況になっても相手を殺せないの、殺すことが出来ないの」

鞠莉「絵里、あなたはここに来るまで人を一回でも殺した?凛は私が殺したのよ、それ以外であなたは人を殺せたの?」

絵里「……殺せてない、殺せなかった」

鞠莉「…知ってるわ、だってあなたは私なんだもん」

絵里「………」

絵里(私はゆっくりと立ち上がった)

絵里(鞠莉のハンドガンは最初から弾が入ってなかった。そして鞠莉も私と同じで理由も無しに人を殺せない人だった)

絵里「…あなたは一体何者なの?仲間なの?敵なの?」


鞠莉「……仲間よ」


鞠莉「私も希も気持ちは同じだった、アンドロイドと仲良くしたい。アンドロイドを人間として扱ってほしい。私たちはアンドロイドの味方なのよ」
910 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:57:48.03 ID:raJY7OxV0
絵里「なら————」


鞠莉「待って、一つ昔話をさせてくれない?」


絵里「昔話…?」

鞠莉「ええ、一番初めに作られた識別コード1のアンドロイドのお話よ」

絵里「…いいわよ、聞いてあげる」

鞠莉「ありがとう」

鞠莉「そうね…どこから話しましょうか」

鞠莉「じゃあアンドロイドを作った理由から話しましょう」

絵里「アンドロイドを作った理由…」

鞠莉「ええ、実は梨子にはちょこっとだけ話したことがあるの、その時にはアンドロイドを作った理由は言わなかったんだけどね」

鞠莉「アンドロイドを作った理由、それは————」


鞠莉「————海未の為だった」

911 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 20:59:51.94 ID:raJY7OxV0
絵里「…海未?あの青い髪の…」

鞠莉「ええ、海未は産まれてすぐに事故で家族全員を失った孤児だったのよ。きっと親の顔も覚えてないでしょうね」

鞠莉「元々私と海未が出逢ったのは海未が十歳の時———いえば私がアンドロイドを作った年だった)

鞠莉「海未はとっても臆病で人見知りが激しくて知らない人じゃ会話もまともに出来ないくらいに弱い子だった、元々孤児ということもあって小原家が海未を引き取ったのだけど、それでも会話が出来たのは私だけだった」

鞠莉「なんでかって?それは私の親はとても厳しい人だったからよ」

鞠莉「臆病な海未が厳しい私の親とまともに会話が出来るはずがなかったのよ」

絵里「………」

鞠莉「だから私は海未を強くしてあげたかった、私以外とも喋れるようになってほしかった」



鞠莉「だから私はアンドロイドを作ったのよ」



鞠莉「人間と瓜二つ、ちゃんと意識があって自我がある。一番最初に作ったアンドロイドの名前はしずくという名前だったわ、海未のように礼儀正しく優しい子だった。けどね、アンドロイドは何もないと破壊を生み出すことに気付いたの」

絵里「破壊?」

鞠莉「ええ、当時のアンドロイドっていうのは標準型だとか戦闘型だとかそういうタイプにわけられてたわけじゃなくて普通に人間として造っただけのアンドロイドだった」

鞠莉「結果しずくは一日で海未と友達になったの、ここまでならよかったねって言えるでしょ?」
912 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:01:42.72 ID:raJY7OxV0
絵里「…何かあるの?」

鞠莉「…そうよ、タイプもわけられてなかった初期型のアンドロイドには課した目標があまりにも簡単すぎたのよ」

絵里「課した目標?」

鞠莉「戦闘型には戦うっていう目標がある、業務型には業務をこなすっていう目標がある、標準型には人間らしく生きるっていう目標がある」

鞠莉「この三つは死ぬまで達成できない目標なのよ、争いは無限に発生するし、業務だって減ることはない。人間らしく生きるなら死ぬまで人間らしく生きなきゃ達成できない。そういう永久的な目標があるの」

鞠莉「でも初期型にはそれがなかった、海未と友達になるっていう目標を課しただけで、それを一日で達成してしまったしずくは後に破壊的衝動を自発的に生み出した」

鞠莉「それから何度と試行錯誤してもその破壊的衝動を抑えることが出来なかった、何故か人を殺すし身の危険を感じると何らかの過激な対抗手段を持って反撃してくる」

鞠莉「いえばアンドロイドはイレギュラーな存在なの、私が作ったにも関わらずまだ謎の多いミステリーな存在なの」

絵里「………」

鞠莉「…そう、それでなんで私がアンドロイドの味方なのにアンドロイドを差別するような発言するのか、それはね—————」
913 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:08:06.05 ID:raJY7OxV0


ルビィ「絵里さん!!!」


絵里「!」

鞠莉「!」

絵里(鞠莉の話を聞いていたら突然階段へ続く扉があいてルビィが大きな声で私を呼んだ)

絵里(その声に私も鞠莉も反応して首をかしげた?)

ルビィ「あ、う…えっと……邪魔しちゃった…かな…?」

絵里「いえ、いいわ。それより来てくれたの?」

ルビィ「もちろんだよ!絵里さんを助ける為だもん!」


絵里「…そう、だけどその必要はないらしいわ」


ルビィ「えっ……」チラッ

絵里「…今の鞠莉は大丈夫よ」

ルビィ「そ、そうなの?」

絵里「ええ」

絵里(警戒するルビィをなだめる私だけど、こんなにも鞠莉を受け入れるのが早いんだなって我ながら不思議に思ってしまった)

絵里(こんな平和的な私がいるんじゃ、今まで戦ってきた私がバカみたいじゃない……)
914 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:12:15.00 ID:raJY7OxV0
ルビィ「あ、だ、だったらえっと、聞いてほしいことがあるの!」

絵里「ん?どうしたの?」


ルビィ「かよさんが!かよさんが狙撃されちゃうよ!!」


鞠莉「花陽が?どうして?」

ルビィ「えっと…かよさんのライブ、今日やっててここの階段からライブ会場が見えてたんだけどその数百m離れたビルの屋上にスナイパーのスコープに反射してる光っぽいものがあったの!」

鞠莉「Really?勘違いじゃない?」

絵里「……いや、ルビィはスナイパーで戦線を潜り抜けた猛者よ、スナイパーのことなら私や鞠莉より詳しいはずよ」

鞠莉「…ならいいわ、今花陽の防衛任務についてる果林と梨子に連絡するまでだわ」

鞠莉「果林、梨子、応答して」


ザー…ザー…ザー……


ルビィ「……応答しないね」

絵里「………」

鞠莉「果林、梨子、緊急事態よ、今がどんな状況でもいいから応答しなさい」


ザー…ザー…ザー…


鞠莉「…ウソでしょ」

ルビィ「やっぱり向こうで何かあったんじゃ……」
915 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:13:43.69 ID:raJY7OxV0
絵里「…!スナイパーに狙撃されるかもしれないんでしょ!?なら今すぐにでも向かわないと助けられないじゃない!」

鞠莉「!!!」

ルビィ「う、うん…」

鞠莉「なら今すぐにGoingでしょ!?そうよね絵里!?」

絵里「え?ええ!」

鞠莉「花陽は守らないといけないわ、あの子を死なせることは————」

絵里「…?」

絵里(鞠莉って花陽の事知ってたのね、どうでもいいかもだけどそう思った)


花陽『はい、私、鞠莉さんに気に入られてるみたいで、鞠莉さん直属の対アンドロイド特殊部隊っていうのは対アンドロイドの前に特殊部隊であるので、SPみたいなボディーガードをすることもあるんですよ』


絵里「……!」

絵里(…いや、既に布石はあった。だからつまりはそういうことなんでしょう)

絵里(私も花陽の事は助けたい、その気持ちは鞠莉と一緒。人が死ぬのを分かっててそれを見捨てるなんてことは)


えりまり「絶対にしたくない!!」

916 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:15:13.48 ID:raJY7OxV0
鞠莉「行きましょう!!」

絵里「ええ!ルビィも行くわよ!」ダッ

ルビィ「う、うん!」ダッ

鞠莉「どこ行ってるのよ!」

絵里「え?だってエレベーターで下に降りるんでしょ?」

鞠莉「何言ってるのよ!それじゃあ時間がかかるじゃない!」

絵里「…まさか」

絵里(喋りながら何かを手に持って私を招く鞠莉を見て私は何かを察した)


鞠莉「そうよ!このパラシュート一つでここから飛び降りましょう!」


ルビィ「え、ええ!?」

鞠莉「時間がないの!」

絵里「……んあぁもうどうなっても知らないわよ!?」

鞠莉「come on!」

絵里「ルビィ、怖いかもだけど耐えなさいよ」ダッ


ルビィ「えっ……」

917 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:17:19.04 ID:raJY7OxV0


ダッ


絵里(急いでパラシュートバッグを背負い、ルビィを抱っこして、そして強く鞠莉の手を握って私は走り出した)


絵里「鞠莉!あの硝子撃って!」


鞠莉「了解よ!」バンッ!


パリーン!



絵里「行くわよー!!!」ピョーン



ルビィ「ぴぎぃいいいいいいいいいいいいい!?」



鞠莉「シャイニー!!」


絵里(摩天楼に響くルビィの悲鳴と鞠莉の楽しそうな一声。銃弾で散る硝子と共にこの重力場へ飛び出した)

絵里(ルビィは抱っこしてるからいいけど、鞠莉とは手を繋いだ状態ってだけで、パラシュート無しのスカイダイビングをしてるようなもの、だからこの手は離してはならない)
918 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:18:10.55 ID:raJY7OxV0


鞠莉「…私が離さないわ」

絵里「!!」


絵里(以心伝心とはまさにこの事なのかしら、それとも鞠莉と繋いだ手が力んでしまって悟られたのかしら)

絵里(風の音で声も一瞬でかき消されてしまう中で鞠莉の声は風に邪魔されることなく透き通って聞こえた)


絵里「着地するわよ!鞠莉はルビィに掴まって!」

鞠莉「ええ!」ギュッ

ルビィ「ぴぎっ…」


絵里「よっと」


絵里(そうして風に揺られながら着地。パラシュートを開いた為にもうこのバッグやパラシュートは邪魔でしかないので急いで外してすぐに花陽のライブ会場に向かう体勢を整えた)

絵里「る、ルビィ大丈夫?」

ルビィ「あ、足が震えて動かない……」

絵里「じゃあ私がおんぶするわ…」

ルビィ「ご、ごめんなさい……」
919 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:19:46.32 ID:raJY7OxV0
絵里「よしっ行くわよま————」


鞠莉「これに乗りなさい!二人とも!」


絵里「——って、え?」

ルビィ「なにあれ……」

鞠莉「車に決まってるじゃない、これで向かう他ないでしょ?」

絵里「車って鞠莉、運転免許証持ってるの?」

鞠莉「当たり前じゃない!ゴールド免許よ!」

絵里「…なら大丈夫か」

絵里(車なんて聞いて悪寒しかしなかったのだけど、ゴールド免許って胸張って言ってるから安心した)


絵里「ひゃああああああああああ!?」

ルビィ「ぴぎいいいいいいいいいいいいい!!」


鞠莉「かっ飛ばすわよおおお!!!」


絵里(……そう錯覚してたみたいだったわ)

絵里(さっきまでのシリアスはどこにいったのか、天井のない超高級車に乗った矢先、ゴールド免許なのかと疑う荒すぎるドライビングに私もルビィも絶叫だった)
920 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:20:49.34 ID:raJY7OxV0
絵里「ゴールド免許っていくら運転が酷くても一度も運転しなきゃゴールド免許じゃない!!」

鞠莉「教習所の時は超真面目に普通の上位免許を取りに行ったんだからゴールド免許なのよ?」

絵里「というか鞠莉の年齢じゃゴールド免許取れなくない!?」

鞠莉「それは気のせいデース!」


絵里「何なのよそれはぁ!!!」


絵里(一応信号は守ってはいるけどあまりにも荒い。こんな破天荒なことに付き合わされてると今まで鞠莉を殺すために色々してきた自分が本当に馬鹿みたいに思えてくる)

絵里(ルビィはルビィでおそらく鞠莉に対して本来とは違う意味で恐怖を植え付けられたでしょうね……)
921 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:24:23.38 ID:raJY7OxV0
絵里「真姫!聞こえる!?」

ブウゥウウゥウン

絵里「鞠莉うるさいわよ!」

鞠莉「エンジン音は消せないのよ!」

真姫『…どういう状況?』

絵里「話は後!とにかく花陽のライブ会場に来て!」

鞠莉「その無線私にも繋げない?」

絵里「え、でも鞠莉って…っ!?」

絵里(赤信号で止まってるのをいいことにイヤホンをかけパソコンを用意してる鞠莉を見て言葉を失った、事故を起こせば終わりなのにどんだけリスキーなことをしてるのよ…)

鞠莉「それで繋げない?」

絵里「わ、分かったわ。この携帯の電波に入ってきて」

鞠莉「了解よ」カタカタカタカタ

絵里(ふざけながら真面目にパソコンをタイピングしてるのを見てると鞠莉という人物がよく分からなくなる。最上階に行ってから鞠莉に引っ張られっぱなしだ)

絵里(……でも、不思議と悪い気はしなかった。一緒に行動しててこの何も企んでなさそうな純粋な感じはむしろ心地いい感じがして、鞠莉は私で私は鞠莉————同じ存在だからこそ裏に何もないことが分かってしまって鞠莉への信頼はこの短い時間でとても厚くなったような気がした)
922 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:27:13.69 ID:raJY7OxV0
鞠莉「hello!」

真姫『は、はろー……』

鞠莉「私たちは今花陽というアイドルのライブ会場に向かってるの」

絵里「花陽がスナイパーに狙われてるかもしれないの、だから急遽だけど花陽を助けにいくわよ」

ことり『花陽?アイドル?それってあの高校一年生の?』

絵里「ええ、昔助けてもらったことがあるの。だから今度は私が花陽の事を助けてあげたいの」

穂乃果『…それはいいけど、鞠莉ちゃんは信用出来るの?私にとって鞠莉ちゃんと戦線を共にするっていうのはにわかにも信じ難いことなんだけど』

真姫『…ええ、それは正直私も思う』


真姫『今まで敵だったのに急に味方になるのはなんかおかしいんじゃない?』


鞠莉「それは………」

絵里「…いや……」

真姫『え?何?』


絵里「今は鞠莉を信じていいわよ」


鞠莉「絵里……」

絵里(私は鞠莉の事を知ってる、もし鞠莉が私であるなら私と戦線を共にした時点で裏がない。それは私がそうだから、私が鞠莉であるなら鞠莉は私と同じ気持ちを抱いてるはずだから)

絵里(……今の鞠莉は信じていいでしょう)
923 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:28:23.43 ID:raJY7OxV0
穂乃果『…分かった、じゃあその花陽ちゃんって子のライブ会場に向かえばいいんだね?」

鞠莉「いや、待って」

鞠莉「向かうならこっちね」

絵里「そこは……」

絵里(鞠莉がパソコンを使って真姫のパソコンにどこかの位置情報を送ってた、鞠莉のパソコンを確認すればライブ会場周辺のいくつかのビルに赤点がついてた)

真姫『これは…?』

鞠莉「その殺し屋がいると思わしきビルよ、あなたは分からない?」

ルビィ「う、うーんと……階段から見たのが西で、飛び降りて向かった方も西だから……」

ルビィ(思い出して…!)

ルビィ(階段を上ってる時に見えた光…近くに大きなアンテナがあって…かなり高いビルで…でも距離はそこそこあって…だけど丁度ライブ会場が見えるようにビルが並んでて……)

ルビィ「………」

ルビィ(ライブ会場があっち、ならそのスナイパーがいるビルはどう考えても向こう……)

ルビィ「……!」


ルビィ「あれ!あれだよあれ!!」


鞠莉「あれ…ってあれね!」
924 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:29:36.22 ID:raJY7OxV0
絵里「じゃあこのマップでいうと…ここよね!」

鞠莉「ええ!聞いて!このマップだとライブ会場が中央辺りにある緑色の建物なの、その緑色の建物から西一直線にあるビルの赤点!そこに向かって!」

真姫『わ、分かったわ』

穂乃果『行ってどうする?そのスナイパーを止めればいいの?』

鞠莉「止めたいけど止めれるかしら…」

真姫『この距離ならすぐにつくわ、とりあえずいくしかないわよ』

ことり『そうだね』


ルビィ「任せて、ルビィが時間を稼ぐよ」


カチャッ


絵里「…!」

絵里(オープンカーで、しかも高速で走ってるというのにルビィはトランクフードに片足を乗っけてそのスナイパーがいると思わしき屋上に向かってスナイパーを構えた)

絵里(さっきまで絶叫してたのにスナイパーを持つと急に変わるのは何ともルビィらしくて、ルビィのスナイパーの射線を確認をしてても射線がぐらぐらと揺れることなくレーザービームのようにただ一点を貫いていた)
925 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:30:33.88 ID:raJY7OxV0


鞠莉「こ、ここから撃つつもり!?」


絵里(そして流石に鞠莉もルビィ以上のスナイパーテクニックを見たことがなかったのでしょう、目を丸くして驚いてた)

ルビィ「すぅ……」


ドォンッ!


ルビィ「はぁ………」

ルビィ「ちょっと屋上から飛び出してたスナイパーの銃口にヒットさせたよ、でも当たりが浅いから多分壊すことは出来てないと思う…」

鞠莉「い、今のを当てたの…」

絵里「さ、流石ルビィね…」

ルビィ「これで少しは下へ意識を向けることが出来たはず」

ルビィ「後はお願い!」


真姫『ええ、分かったわ』

ことり『もちろんだよっ』

穂乃果『任せて!』

926 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:31:10.58 ID:raJY7OxV0
絵里「…あれ?そういえば曜は?」

ことり『あ、えっとね……』

絵里「…?」

真姫『ちょっと大怪我をしたの、今喋るのもおそらく辛いだろうけど死んではいないわ、安心して』

絵里「そ、そうなの…」

ルビィ「曜さん……」

絵里「…まぁ、とりあえずお願いね」

真姫『ええ、了解よ』

ピッ

絵里「…とんでもないことになってるわね」

絵里(無線がきれると悟りだす私の心)

絵里(私鞠莉と仲良くなるためにあそこに行ったわけではないんだけど…なんて思っちゃって、しかもその後にみんなして花陽を助けにいくんだから想像も出来ないわよ、曜も喋るのも辛くなるくらいに大怪我したって言ってるし)
927 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:32:04.00 ID:raJY7OxV0
ルビィ「…花陽さんを助けた後、ルビィたちと鞠莉さんは……どうなるの?」

絵里「……まだ、決まってないかしら」

絵里(…正直言って、この結果は私の予想していなかった未来だ)

絵里(もし、世界がいくつもあって同じ世界の同じ私がいたとしたらこの未来はきっと…そう多くはないはずよ)

絵里(鞠莉を殺す為に動いてきたのに、鞠莉が仲間のような存在になってしまっては私は不完全燃焼だし、心が晴れたとは言えない)


絵里(だけど、鞠莉を殺して私の心が晴れるわけじゃない)


絵里(ここから色々あったとしても、また平和に暮らすのが一番なのかしら)

絵里(……いや…ここで色々してきたから平和には暮らせないのかも…ってそれはどうか知らないけど、とにかく私たちの未来は何も分からない状態だった)


鞠莉「花陽を助けることが最優先事項よ、その他の話は全部後」


絵里「……ええ、そうね」

ルビィ「…うん、分かった」
928 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:34:37.29 ID:raJY7OxV0
鞠莉「花陽は東京のみならず日本のトップレベルのアイドルよ、だからファンの数は尋常じゃないし、今回のライブに参加してるファンの数もおそらく数えられたものじゃない、今丁度ライブ中だからライブ会場の外にわんさか人がいるわけじゃないとは思うけど移動には充分気をつけなさい、はぐれる可能性もあるわ」

絵里「なるほど…分かったわ…」

鞠莉「今回花陽の使ってる会場はドームみたいな全方位から見渡せるような感じじゃなくて一つの方向をみんなで見る舞台型の会場よ、だから最悪ステージへの侵入も出来る…いや、最悪じゃなくてもステージへ上がって直接花陽を助ける可能性の方が高い」

ルビィ「アナウンスで避難しろーっていうのはダメなの?」

鞠莉「それだとまるで意味が無いわ、だって花陽は人間なんだから避難しろって言われても避難してる最中に撃たれて死ぬわ」

ルビィ「あ、そっか…」

鞠莉「私たちがあのビルに行くっていう考えもあったけどそれもダメ、あそこにいって屋上に上るまでの時間とライブ会場にいって花陽を直接助けるまでの時間はどう考えても花陽を直接助ける方が早いわ」

絵里「…なるほど、じゃあ私たちがやることは」


絵里「一早くライブ会場に入って、ステージに上がり、花陽を助けることね」


鞠莉「その通りよ、私は花陽の事務所のスポンサーやってるからステージ裏には上がらせてくれるはず、だから早く行きましょう」


絵里「ってうわぁ!?」

ルビィ「ぴぎっ!」


絵里(そういい突然アクセル全開にしてくるもので心だけが置いていかれてまた声を出してしまった、真面目だろうと不真面目だろうとどんな鞠莉でも運転は相変わらず荒かった)

絵里(…が、しかしそんな荒い運転に気を取られてるだけじゃない。突然私たちに歯向かう射線に目を丸くして戦いの意識を急激に研ぎ澄ました)
929 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:35:54.55 ID:raJY7OxV0
絵里「射線!あの屋上から!」

絵里「…!ルビィに向いてる!ねえ鞠莉もっとスピードあげて!」

鞠莉「了解よ!!」ブウウン

絵里「んくっ……」


カチャッ


ルビィ「…ホントだ、こっち向いてる」


絵里「撃てる?」

ルビィ「…!!身を引いたよ…?」

鞠莉「…!そいつアンドロイドよ!ルビィの射線が見えてる!」

絵里「アンドロイド…!?」

鞠莉「当たらなくてもいいわ!射線で威嚇して!さっきルビィが一発当てたから射線だけでも充分脅威になるわ!」

鞠莉「絵里もやって!!」

絵里「え、ええ!!」カチャッ!

絵里(そういいあの屋上が見える限りハンドガンの銃口を当て続けた)
930 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:36:33.68 ID:raJY7OxV0
絵里「……今って花陽のライブ中でしょ?」

鞠莉「ええ、そうよ」

絵里「なんで相手は撃たないの?花陽はもうステージに上がってるはずよ、殺すのが目的ならさっさと撃てばいいじゃない」

ルビィ「確かに……」


鞠莉「……何か他にあるのかも」


ピッ!

絵里「!」


真姫『ねえ絵里聞こえる!?』


絵里「え、ええどうしたの?」

真姫『スナイパーの件だけど絵里はおかしいって思わない?』

絵里「おかしい?何が?」


真姫『殺すのが目的なら今ライブしてる花陽を撃てばもう終わるじゃない』


絵里「!」
931 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:38:04.43 ID:raJY7OxV0
真姫『それなのに何故か花陽は死んでない、おかしいでしょ?』

絵里「ええ、それを今私たちも話してたところだったの」

真姫『そ、そうだったの?』

絵里「ええ」

真姫『…まぁとにかく私たちも絵里との無線を切った時におかしいって思ったの、だから穂乃果と私でネットを駆け巡って見つけたの!』

絵里「何を?」


真姫『花陽が死ぬタイミングを!!』


絵里「!!」
932 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:39:28.18 ID:raJY7OxV0
鞠莉「oh what!?どういうこと!?」

穂乃果『殺し屋っていうのは依頼人がいないと成立しない、だから多くは殺し屋サイトみたいなのを所有してることが多くて、またその殺し屋サイトっていうのは大体表面上は普通のサイトなんだけど例えばサイトの一番上にあるロゴの一部分だとかサイトの端っこに透明なリンクが貼ってあるとか何らかの方法で本来の殺し屋サイトにいけるんだよ』

絵里「へぇ…」

穂乃果『だから花陽ちゃんを狙ってる殺し屋を希ちゃんや花丸ちゃんが残してくれた情報網で片っ端から調べた、そしたらヒットしたよ!しかも実行日が今日!』

絵里「!!」

穂乃果『その殺し屋サイト、本当かどうかは知らないけどアンドロイドがいるみたいなんだ!だからスナイパーの精度は相当いいよ!絶対に撃たせちゃいけない!』

ルビィ「アンドロイド…!?」

絵里「それってさっきの…!!」


鞠莉「…もはや確定ね」


絵里「それで花陽が死ぬタイミングっていうのは?」

穂乃果『それは————』



穂乃果『孤独なheavenを歌い終わり次第殺害を実行するらしいんだ!!』


933 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:40:24.56 ID:raJY7OxV0
絵里「孤独なheaven?」

鞠莉「花陽の代表曲よ、花陽といったらまずこれというくらいに、そして花陽を知らなくても孤独なheavenは知ってるという人がいるくらいに有名で、花陽を飾る曲なの」

ルビィ「ルビィも花丸ちゃんからたくさん聞かせてもらったけどものすごくよかったよ、まず開幕のウィンドチャイムから感じるボルテージがすごくて!」

鞠莉「ええ!そして片思いの子の気持ちを綴った切ない歌詞もまた魅力の一つ……」

ルビィ「いつもはワイワイとした盛り上がる曲を歌ってるのにも関わらず孤独なheavenは真面目で切なくて、いつもの花陽さんとのギャップも楽しめる一曲だよね!」

鞠莉「そう!そうなのよ!ウィンドチャイムに続くどこまでも奥ゆかさを感じてしまうダークトーンなピアノ!そしてサビ前ではドラムが最前線を仕切ってボルテージを上げてくれたりCメロではギターが織りなすノスタルジーのようなものが良い味出してて後ろの演奏の良さはまさにexcellent!」

ルビィ「Cメロ後の“言えないよ…”は感情移入しちゃって本当に鳥肌が立つよ!」

鞠莉「Yes!あれは花陽の良さが詰まってるのよぉ!そして花陽も当事者になり切ってるようなあの必死な顔も必見!そう、まさにあれは——」


ルビまり「奇跡の歌!!」


絵里「そんな曲が…」
934 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:42:18.74 ID:raJY7OxV0
ルビィ「まだその孤独なheavenは歌われてないの?」

ことり『今ライブ中継見てるけどまだ歌われてないよ』

真姫『…とまぁそんな感じなの、あなたたちも花陽のライブ中継開いて孤独なheavenが流れたらもうすぐだと思って』


キラキラキラ


絵里「!」

絵里(そんな時ある音が流れた。最初はどこからともなくというようなどこから鳴ってるのかもわからなかったけど、よく耳を澄ませばそれは無線から聞こえてるものだということに気付いた)



『すぅ…あなたへのHeartbeat…熱く…熱く——————♪』



絵里「!!」

絵里(そして次に流れるメロディと共に乗せられた声に鳥肌が立った)

絵里(この透き通った声、高校一年生とは思えない大人びた雰囲気、声から感じられる本気度のようなもの)

絵里(ルビィの言う最初のウィンドチャイムが鳴った瞬間聞こえるファンの歓声を聞くとまるで別の世界へ誘われたかのような錯覚と高揚の気分になっていた)
935 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:43:20.11 ID:raJY7OxV0
絵里「これ……!」

絵里(私の心も乗せられて…いやその花陽さんの声に心を奪われてしまって、無線から聞こえるその花陽さんの言葉一つ一つがとても恋しく感じてしまう)


絵里(確かにこれは、奇跡の歌だ)


ルビィ「!!!」

鞠莉「この曲は……!」

ことり『わぁ!?始まっちゃったよぉ!』

穂乃果『えぇ!?』


真姫『ついた!ついたから行って!』


ことり『う、うん!』ダッ

穂乃果『任せて!』


真姫『絵里!孤独なheavenが始まった!』


真姫『時間がもうないわ!!』

936 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:44:07.09 ID:raJY7OxV0
絵里「なら急がなきゃ!!鞠莉!」

鞠莉「言われなくてもアクセルぜんっかいよッ!!」

絵里「孤独なheavenが終わるまでどのくらいかかる!?」

鞠莉「約四分半よ!孤独なheavenが終わるまで後四分くらい!」

絵里「四分って…!」

真姫『そんな無茶な————』


鞠莉「無茶じゃないわ!」


真姫『!』

鞠莉「私たちなら出来る!後四分もあれば充分よ!」

鞠莉「今は一秒たりともバカには出来ないわ!」
937 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:45:23.14 ID:raJY7OxV0


『——————眠たげなのね。後ろからそっと語り掛けるの』


鞠莉「…っ!ついた!こっちもついたから行きましょう!」

絵里「ええ!」

ルビィ「うんっ!」

絵里「真姫!行ってくるわ!」

真姫『え、ええ!』

ダッ


タッタッタッタッ


絵里「間に合って…!!」

絵里(オープンカーを駐車場の適当な場所に留めて会場へ突っ走った、ルビィは携帯で花陽のライブ中継を開いてて、今ここに、今ここで————)


絵里(————ロストソングがクレッシェンドを含み始めた)

938 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:46:02.17 ID:raJY7OxV0


ピッ


鞠莉「!」

果林『こちら果林よ』

鞠莉「果林!?どこに行ってたの!?」

果林『説明は後、それより今から』


果林『防衛対象に殺意を抱くアンドロイド三体と交戦するわ』


梨子『同じく私もです』

鞠莉「…!それってあの屋上の?」

果林『あの屋上かは知らないけど、屋上で、殺害方法はスナイパーよ』

鞠莉「…分かった、気をつけなさい」

果林『了解』

梨子『了解です!』

ピッ

鞠莉「……だけど時間を遅らせることは無理そうね」
939 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:47:31.54 ID:raJY7OxV0


果林「初めて会ってから一回も姿を見なくなったから何をしてるのかと思えばこんなことを企んでたなんてね」


果林「綺羅ツバサ」


ツバサ「別に企んでたわけじゃないのよ?これも殺し屋としてお仕事の一環だから」

梨子「それでもあの花陽ちゃんを殺すなんてアンドロイドとして道を踏み外してます!」

英玲奈「別に我々はアンドロイドの道を往こうとはしていない、殺し屋として生きていくと決めた以上殺すことを重点的に置いた道を往くだろう」

果林「…何故人を殺すの?」

ツバサ「平和な世界っていうのは案外つまらないものなのよ、知ってる顔と毎日笑いあって、時に苦難を乗り越えて過ごしていく日々…最初はそれで充分だと思っていたけど、つまらないって感じた途端急に生きることに対してやる気が失せた」

ツバサ「当時目標だった成績学年一位も何やってるんだろうなーんて悟っちゃってイヤになったわ」


ツバサ「だからこそ私たちは殺しという新たな境地へ辿り着いた」


梨子「…!」


鞠莉『何も無いと、破壊を生み出すということに』


梨子「これ……」

梨子(鞠莉さんの言ってたことだ、もしかしたらこのアンドロイドもその類のアンドロイドなのかもしれない)
940 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:49:57.26 ID:raJY7OxV0
ツバサ「元々私たちは全員戦闘型アンドロイド、だから戦う事に特化してたし、ちゃんと殺害目標を立てて行う殺害っていうのは面白いほどに心が満たされるというか…やり遂げた気分になれるのよ」

梨子「………」

梨子(全ては鞠莉さんの言うことに沿っていた。アンドロイドという生き物は目標を失うと破壊を生む、それは本当だったんだ)

梨子(このアンドロイドの場合、殺しを目標としてしまった以上は人という生物が消えるまで永遠に殺しを目標にするのだと思う)

梨子(…やっぱりアンドロイドはまだまだ危険な存在だ)

果林「…そう、それは分かったけど、そろそろ二人の後ろにいるスナイパーの子にも喋ってもらえないかしら?」


あんじゅ「えー私?」


果林「あなたがそのスナイパーを下げてくれれば私たちとしてはミッション完了なんだけどね」

あんじゅ「それは無理かしら」

果林「…そう、なら話はもう終わりね」
941 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:51:28.12 ID:raJY7OxV0


カチャッ


果林「これよりミッションを開始するわ」


果林「梨子」ダッ

梨子「はいっ!」ダッ

梨子(あのスナイパーがさっさと花陽ちゃんを撃たないのが引っかかるけどいずれにせよ撃たないのであればこちらとしても好都合だ)

梨子(だから決めるなら即行、私たちが動き出すと同時に動き出す射線をかいくぐって近づく刹那に高まる緊張感は全て銃弾が切り裂いた)


梨子「はぁッ!」ババババッ


梨子(射線が見えてる者同士銃弾が当たらないのは基本、相手から飛んでくる銃弾を避けたら今度は私たちのターンで、私が発砲をする)
942 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:52:35.84 ID:raJY7OxV0


英玲奈「おっと」シュッ


梨子(だけど相手もそれを避けるのは当然、するとたちまち発生する接近戦。ナイフを首元目掛けて横に振れば体を反って回避され、相手の後ろから飛んでくるカバーの銃弾は右に飛び退き回避した)

梨子「はっ…ふッ…!」

梨子(だけど避けても尚まだ飛んでくる銃弾は全てのあの後ろのスナイパーからの攻撃。銃弾を避けること自体はそこまでの事だけど追撃に来る英玲奈というアンドロイドの攻撃が鬱陶しかった)


英玲奈「人数の有利はやはり偉大だなっ!」ブンッ


梨子「ちっ……」

梨子(私がなんとか銃弾を避ける中で右ストレートが私の顔に向かってくるもので、それを姿勢を低くして片手を地につけた状態で回避)

梨子「そっちも見えてる!」シュッ

梨子(何故片手を地につけたのかといえば、それは次に来る銃弾を前転回避する為で、地についた手を使って勢いをつけた)


ツバサ「じゃあ、こっちの銃弾は見えてた?」


梨子「!」
943 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:54:40.54 ID:raJY7OxV0
果林「梨子っ…!」

梨子(果林さんは負けてない、けど戦ってる合間に撃たれたその銃弾に、果林さんは焦ってた)


梨子「そんなっ…!!」


梨子(そんな果林さんの顔を見て悟った)


梨子(私、死ぬんだって)


梨子(偏差撃ちに偏差撃ちを重ねた人数の有利をもろに受けた戦いだった、放たれた銃弾は果林さんの手じゃ止めることも出来なくて、前転回避を終えた直後にはもう迫ってた銃弾だったから私も回避が出来ない)

梨子(見える射線は私の頭を射貫いてる)

梨子(流石に急ぎすぎたかな…最後になって自分の行動に対して反省をした)

梨子(だけど、これでよかったんだと私は思う。元々私の人生なんて腐ってたものだ、アンドロイドを殺す為だけに生きている私は元々死ぬべき存在なのだ)

梨子(…それに花陽ちゃんを守る為に、鞠莉さんからの任務な為に、私が出来ることを尽くして死ぬのなら戦人冥利に尽きるまでだ)


梨子「…はぁ」


梨子(死を受け入れた私は小さな溜め息と共に目を閉じた)

944 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:55:58.84 ID:raJY7OxV0


穂乃果「させないっ!」バンッ


カンッ!


梨子「!!」

梨子(一つの銃声と同時に私の目の前で飛び散る火花と甲高い音に目を見開いた)

梨子(そして見開いて尚意識があって、自分の手を開いて閉じてを繰り返しててようやく自分が生きてることに気が付いた)

梨子「あなたは……」

穂乃果「…助けたわけじゃないよ、ただ目の前で人が殺されてるのを見ていい気分になる人はいないから」

梨子「……ありがとう、穂乃果ちゃん」

梨子(突然現れた穂乃果ちゃんは私に飛んでくる銃弾を穂乃果ちゃんの放った銃弾で跳ね飛ばした)

梨子(アンドロイドだから射撃の精度はもちろんその弾速を機械的に見て自分がどこにどのように撃てば目的が銃弾と接触するかが分かる。だから穂乃果ちゃんはそれを実行して私を助けてくれた)

梨子(その時の穂乃果ちゃんのクールな眼差しといったら痺れてきちゃって、これが軍神たる所以なんだなって思った)


梨子(強いだけが全てじゃないって)

945 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:58:06.97 ID:raJY7OxV0


ことり「こっから逆転だよっ」


穂乃果「絶対に勝つ」カチャッ


英玲奈「…軍神と南ことりが来たことは正直驚いたが、そろそろ時間のようだ」

穂乃果「…!」

ことり「この声…」

果林「何?どういうこと…?」


ツバサ「聞こえる?この歓声」


ツバサ「東京ドーム以上に人を動かしたこのライブの歓声はかなり離れたここまで聞こえてくる凄まじいものよ」

ツバサ「そしてその歓声の元である歌、そして人物————」



ツバサ「——————孤独なheaven、小泉花陽」


946 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 21:59:53.32 ID:raJY7OxV0
ツバサ「…あんじゅ!」


あんじゅ「了解よ」カチャッ


ことり「! 待って!」ダッ

梨子「それはダメ!」ダッ

果林「撃つ気!?させないわ!!」


あんじゅ「ほいっと」ポイッ


ことり「っ!グレネード!?」シュッ

果林「ちっ…」シュッ


梨子「わっ…」


梨子(スナイパーのアンドロイドはスナイパーを構えるのではなくて腰にかけてあったグレネードを投げて私たちを注意と視界を奪った)

梨子(そのせいであのアンドロイドを止めるべくして動く足も止まり、トリガーを引くためにある手もグレネードの爆破範囲から外れるのに精一杯で手を動かすことが出来ず、突然の不意打ちグレネードにみんな怯んでしまった)
947 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:01:03.18 ID:raJY7OxV0


穂乃果「そんなの希ちゃんに比べたら手品にも届かないよ!!」ダッ


英玲奈「無駄だ」バンッ



穂乃果「舐めないで!」シュッ



梨子(だけど、穂乃果ちゃんだけは足も手も止まらずにあのスナイパーのアンドロイドに牙を向けた)

梨子(もうすぐ爆発するというのにそれすらも恐れずに、転がるグレネードを蹴ってグレネードを相手に返却した)

梨子(これが軍神たる所以……その勇ましくグレネード如きで怯まない姿は私たちとの格の違いを知らしめている気がした)
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/14(月) 22:01:27.44 ID:/GuFGKn50
もう今日の更新は無さそうだな
949 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:02:29.90 ID:raJY7OxV0


ツバサ「流石軍神だけど、それも無駄よ」


穂乃果「偽物…!?」

ツバサ「惜しかったわね、もしこれが本物のグレネードだったら私たちは死んでいた。けど生憎そんな危険性を秘めたグレネードを投げるほど私たちはバカじゃないの」

穂乃果「ッ……!」

梨子(穂乃果ちゃんが決死の判断で蹴り返したグレネードは着弾しても地面に転がるだけだった、ピンはちゃんと抜かれてるのに、でもそれはただのおもちゃで——私たちはまんまと嵌められた)



あんじゅ「さよなら東京の歌姫!!」ドォンッ!



ことり「あ………」


梨子「そんなっ…」

穂乃果「間に合わなかった…!!」

果林「……くそっ」

梨子(凄まじく低い銃声がビルからこの摩天楼へ響くと聞こえる絶望感)

梨子(ファンの人が騒いでる。穂乃果ちゃんは強く握った拳を下げて悔しさが隠しきれてない、果林さんも下を向いて喋らないまま、ことりちゃんに関しては崩れ落ちてる)
950 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:03:28.89 ID:raJY7OxV0
梨子「…鞠莉さん」

梨子(一人虚しく呟いた)

梨子(鞠莉さんは今どういう反応をしてるんだろう、気になるけど考えたくない)

梨子(私自身、鞠莉さんの命令だからっていう理由以上に花陽ちゃんを守りたかった)


梨子(それなのに守れなかった)


梨子「……鞠莉さん」


梨子(……この場に残るスナイパーの銃声は、私の心にいつまでも悔しさという残響を発生させていた)

951 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:05:09.15 ID:raJY7OxV0
〜四分前


タッタッタッタッ


絵里「どうやってステージまでいくの!?私この会場全然知らないわよ?」

鞠莉「もう時間がないわ!とりあえず入って関係者用のところからステージ裏まで突っ走りましょう!」

ルビィ「そんな許可も無しにいって大丈夫なの?」

鞠莉「そんなこと気にしてる場合じゃないわ!」


『————見つめることも、迷惑ですかと…』


絵里「なんか会場外なのに人いっぱいじゃない!?」ピタッ

鞠莉「会場内にいなくても花陽の声は聞こえるからそのおこぼれを狙ってこうして集まるのよ!」

ルビィ「どうやっていくの…?」


鞠莉「正面突破しかないでしょ!」ダッ


絵里「仕方ない…ルビィ行くわよ!」

ルビィ「え、うんっ!」

絵里(会場を前にして分厚い人混みと遭遇した私たちは一斉に足を止めた。迂回は多分出来るけどそんなことしてたら曲が終わる、ここは正面から行くしかなくて考える暇もなく鞠莉は止めた足を再び人混みの方向へ動かし始めた)
952 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:05:55.79 ID:raJY7OxV0
絵里「ルビィ、少し私の元へ来て」

ルビィ「う、うん」

絵里(鞠莉は人混みの中へ突っ込んでいった、けど私はルビィをおんぶして会場に行くためにかかっている橋の手すりを走った)


ルビィ「え、絵里さんそれ大丈夫!?」

絵里「心配しないで!いくわよっ!」


絵里(手すりが無くなれば私はそこから大ジャンプ————人混みを一気に跳び越えてここで聞いてるファンを抑えていた警備員の列さえも跳び超えた)


鞠莉「絵里!」


絵里「ええ!」

絵里(そうして着地した頃に後ろから声が聞こえて振り替えれば警備員の抑制をスルーしてやってくる鞠莉がいて鞠莉がある程度近くにきたら再び私とルビィは走り出した)
953 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:07:10.27 ID:raJY7OxV0


『————放課後のバス停の前で』



タッタッタッタッ


絵里「ここからどう行くの!?」

鞠莉「ステージ前にはちょっと深い水があるから正面から花陽を助けるのは不可能よ!だからステージ裏から行くしかない!その為には入ってすぐ左にある関係者用の通路を通ってそこから花陽に近づく必要があるわ!!」

絵里「了解よ!」


「————同じクラス?隣のクラス?」


絵里(入口を超えるとライブの中継じゃなくても聞こえてくる)

絵里(心臓の鼓動と共鳴しだすこの音と声、今も上がり続ける会場のボルテージを肌で感じることができる)


鞠莉「……やはりすごいわね、花陽は」

絵里「ええ…これは心が奪われてしまうわ」


絵里(関係者用の通路を走る際に交わしたそんな言葉はすぐに花陽の歌にかき消された)

絵里(無限に広がっていく波状攻撃のような強い音色と印象を与えていくこの歌————この歌を聞けば聞くほど花陽を守らなきゃという気持ちが強くなっていく)
954 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:08:29.15 ID:raJY7OxV0
絵里「!!!」

鞠莉「!!」

ルビィ「ど、どうしたの?」

絵里「花陽に射線が向かってる…」

鞠莉「まずいわね…」

ルビィ「…!ならルビィが威嚇するから二人は先に行って!」カチャッ

絵里「え、でも」


ルビィ「いいから行って!花陽さんを助けるんでしょ!」


絵里「!!」

絵里(ルビィの必死の声でさえ花陽の歌声やファンの歓声にかき消されてしまう、けどルビィの思いは充分なほどに伝わった)

絵里(スナイパーのトリガーに加わる強い力はルビィの本気の表れ。普段は見せない強気な表情を私に見せることでルビィの真剣さはより分かりやすいものになっていた)
955 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:09:53.44 ID:raJY7OxV0


絵里「…分かった、頼んだわよ」

ルビィ「任せてっ!」


絵里(ルビィはその場で片膝を立てて向こうの屋上に向かってスナイパーの銃口を向けた。そこの角度から果たして見えるものなのか疑問なところだけど動かないということはきっと見えてるのでしょう)

絵里「行きましょう」

鞠莉「ええ!」

絵里(そうして私たちも花陽のところに向かって走る。ルビィの事や私たちの事を気にするスタッフはいっぱいいたけどそんなのに構ってられない。今はとにかく分け目もふらずに走って走って走り続けるだけだった)


『————抱きしめたい…』


絵里(悲愴感が広がるピアノの音色と哀愁漂うギターの音色が合わさり、歌もそろそろクライマックスへ入ろうとしてて、私の身体もクライマックスな汗を流してた)


絵里(そろそろ雌雄を決するでしょう)


絵里(音で切羽詰まる私の心の行方は————)

956 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:11:13.52 ID:raJY7OxV0


「言えないよ……」


絵里「はああああッ!」

鞠莉「もうすぐよ!!」

絵里(花陽の声にエフェクトがかかりだした。会場のボルテージもこの上ない最高潮なのが分かる、だからそのボルテージに乗せられて私たちの足もより加速していく)


「————私だけの、孤独なheaven」


絵里「…っ!!!」

鞠莉「まずい!射線がっ!!」

絵里(はっきりと見えるその射線。真っ赤な線が花陽さんの頭を貫くその様はこの瞳に焼き付いて見える)
957 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:12:50.76 ID:raJY7OxV0


絵里「花陽ッ!!」


絵里(クライマックスなメロディは私の限界を限界でなくしてくる。充分に加速した足は更なる加速を遂げてやっとステージ裏まで来た)

絵里(心臓に響くビート、心に刻まれたその金声、熱が迸るボルテージ、感情さえ司るメロディ)


絵里(私を本気にさせる花陽の心)


絵里(全てが合わさったカオスなフィールド————その階段を私たちは上って——)


「——————熱いねheaven……♪」




ドォンッ!



958 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:15:01.82 ID:raJY7OxV0


花陽「わっ!?」


絵里(広大な人口宇宙の中で響くひっくい銃声が鳴る刹那——直後、この世界で流れる時間は何もかもがスローになり、この世界からほとんどの音が消えた)


『花陽です!私…花陽って言うんです!だからもし…助けが必要だったら絶対に助けますから!』


絵里(すると、突然花陽さんの声がどこからともなくこの世界で木霊し始めた)


花陽『ふふふっ照れてる絵里さんも可愛いですね』クスッ


絵里(そして次に、いたずらっ子みたいに笑う花陽さんの顔が浮かんできた。結局、今になっても私を助けてくれた理由はよく分からない)


花陽『私、絵里さんのファンなんです!音ノ木坂高校のビューティフルスター!』


絵里(理由らしい理由も、なんだかふにゃふにゃしてて変な感じだし、やっぱり花陽さんは不思議な人だ)

959 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:16:04.34 ID:raJY7OxV0


花陽『だからまた今度、お会いした時はもっといっぱいお話しましょう♪』


絵里(でも…そしてだからこそ私は花陽さんを助けたいのよ)

絵里(命を助けてもらった恩があり、次を作りたい私がいる)

絵里(助けたい————抱く思いは当然鞠莉と同じ、だから鞠莉と一緒にこのステージで翔ぶの)

絵里(勢いをつけて、足にこれまでの全てを賭す。これまでの苦難を乗り越え、死を直視して、それでいてようやく手にしたこの翼の耀きで私は————)



えりまり「いっけえええええええええ!!!」



絵里(このクソみたいな東京《ミライ》を変えるのッ!!!)


960 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:17:02.83 ID:raJY7OxV0
絵里「はぁ…はぁ…はぁ…」

鞠莉「たす…けれた…?」


花陽「え、絵里さん…?鞠莉さん…?」


絵里「…うぅううううううう…!はなよぉ…!!」ギューッ

鞠莉「よかった…!ぐすん…よかったわ…!!」

花陽「わわわっ…ど、どうしたんですか!?」

絵里(花陽の歌声が無くなり後奏が鳴り始めた同時に飛んでくる銃弾————それを私と鞠莉で花陽に向かって飛び込み抱き着くことで回避させた)

絵里(花陽に当たらなかった銃弾はステージ後ろのモニターを割り、会場は大パニック。だけど、今も後奏として響くこのメロディは紛れもない勝利のメロディであり、今も溢れでる涙の源でもあった)
961 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:19:34.85 ID:raJY7OxV0

ピッ


真姫『絵里!大丈夫!?どうなった!?』


絵里「…勝ったわ、勝ったわ……」


絵里「花陽を助けれたわぁ…!!!」


穂乃果『そ、それホント!?』

絵里「ええ!やったわ!!」

ことり『よ、よかったぁ…』

ルビィ『ルビィもよかったよぉ…』

穂乃果『ごめん…止めれなくて……』

鞠莉「いやいいわ、多分あの状況じゃ私たちが行っても止めることは出来なかった。だから仕方ないことよ」
962 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:20:56.71 ID:raJY7OxV0


曜『おめで…とう……』


絵里「曜!?大丈夫なの?」

曜『なん…とか……ね』

絵里「そう…よかったわ……」

花陽「もしかして花陽を助ける為に……」

絵里「当たり前じゃない」

鞠莉「その為に私たちここまで本気で走ってきたんだから」

花陽「あ、ありがとうございます!」ペコリッ

花陽「花陽狙われてるなんて気付かなくて…お二人にはなんてお礼したらいいのか…」

絵里「お礼なんていいわ、それよりもこれは私と鞠莉だけの力じゃない」
963 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:21:48.35 ID:raJY7OxV0


真姫『…ふふふっ』

穂乃果『あははっ』

ことり『えへへへ……』

ルビィ『んふふふっ』

曜『よーそろー……』


絵里「寛容で強く、絶望にも負けなかった私の仲間や」


善子『ヨハネよ!』

果南『絵里は人に言えないことがありすぎるんだよ、抱えないで言ってよ?私たち親友でしょ?』

花丸『だからいつまでの話になるか分かりませんが、しばらくの間ここでよろしくお願いします』

にこ『あんたらを狙って悪かったって話よ、私も目が覚めたわ、あいつらとはいたくないもんでね。海未には悪いけど』

せつ菜『……とにかくよろしくお願いしますね、絵里さん』


絵里「……今、ここにはいないけど、彼女たちも寛容で強くて、私を信じてついてきてくれた大切な仲間」

絵里「そのみんなの力が合わさって花陽を助けることが出来たの」
964 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:23:24.32 ID:raJY7OxV0
花陽「…そうだったんですね」

花陽「あれから…また色々あって…それでも絵里さんが生きていてくれてて、花陽はすごく嬉しいです」

花陽「Y.O.L.Oが爆破されたと聞いた時は、少し不謹慎ですけど花陽嬉しかったんです。絵里さんがまだ生きてるって思って…」


花陽「だからまた…こうして会えたこと…そして助けてくれたこと…すごく嬉しい!」ニコッ


絵里(勝利のBGMがまだ響いてる。この胸に宿した勝利があまりにも大きすぎる)

絵里(後ろのモニターは黒く染まってしまったけど、それでもステージはまだキラキラしてる)

絵里(…これなのかもしれない、このキラキラ輝いた場所。この心躍る素敵な場所)


絵里(この“輝き”を私はずっと待ってたのかもしれない)


絵里(ここにいる時はアンドロイドとか人間とかどうでもよくなる気がする…いやそれは根本的にはいけないことだけど、今は…この勝利を胸に宿してる今はそれでいいのよ)


絵里(この余韻はいつまで、続くのかしら…?)

965 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:24:36.84 ID:raJY7OxV0


ツバサ「あーあ、やり逃しちゃったわね」

英玲奈「やはりあの金髪二人は厄介そのものでしかないな」

あんじゅ「あらら、やっぱり殺し屋って難しいものね」

穂乃果「よくもやってくれたね」

果林「…正直、あなたたちの殺しに対する考え方には興味あるけど花陽を殺そうしてた以上は私たちの敵にしかなりえない、悪いけどここで死んでもらうわ」

梨子「その通りです!」

ツバサ「あぁごめんなさい、もう戦う気なんてないから」ピョーン

ことり「っ!?飛び降りた!?」

英玲奈「悪いな、だが消化不良なのはお互い様だ。ここは痛み分けといこうじゃないか」ピョーン

あんじゅ「ばいば〜い」ピョーン
966 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/10/14(月) 22:25:18.43 ID:raJY7OxV0
穂乃果「っ!逃がさない!」ダッ

ことり「ダメ!穂乃果ちゃん追っちゃダメ!」ギュッ

穂乃果「どうして!?あの三人はここで殺さないとまた何かするよ!?」

ことり「穂乃果ちゃんにはここから飛び降りて確実に助かる術があるの!?ここで死んじゃったらまたみんなとの出会いが消えちゃうよ!」

穂乃果「っ……」

果林「…やっぱりあの三人、謎ね」

梨子「鞠莉さんの言ってた通りのアンドロイドとして典型的な破壊衝動を抱いてますね」

果林「ええ、まぁいずれまた会うことになるでしょう」


果林「だって、彼女らもこの東京が好きなアンドロイドだから」

967 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/14(月) 22:26:34.91 ID:raJY7OxV0
終わりがすぐそばまで来ていてこんなこと言うのも難ですが、ちょっと三十分くらい席外します。
また戻ってきます。
968 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/14(月) 22:53:24.03 ID:raJY7OxV0
戻りました。
終わりはもうすぐなんですけど、このスレだけで完結出来るかは微妙で、中途半端なところで区切ってスレを立てないといけない状況にはしたくないので、この時点で次のスレを立てようと思います。
969 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/10/14(月) 22:57:26.86 ID:raJY7OxV0
絵里「例え偽物だとしても」 part2
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立てました。
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