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絵里「例え偽物だとしても」

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269 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/25(水) 23:53:22.71 ID:RR8ZWgfX0
梨子「にこ先輩!」


にこ「あいよ」ポンポンッ


穂乃果「グレネードランチャー…!花丸ちゃん逃げるよ!」ダッ


花丸「あ、うん!」ダッ

タッタッタッ

花丸「あの、穂乃果ちゃ…」

穂乃果「………」

花丸「………」

花丸(今話しかけるのはやめておくずら…)
270 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/25(水) 23:54:01.77 ID:RR8ZWgfX0
穂乃果「…貸して」

花丸「え?」

穂乃果「希ちゃんのショットガン持ちながら希ちゃんをおんぶするのは辛いでしょ」

花丸「あ、うん…」

穂乃果「……仕方ないけどあの夢追い人を呼ぶよ」

花丸「…そうだね、流石に来てくれるよ」


花丸「希ちゃんの左腕だもん」

271 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/25(水) 23:55:09.21 ID:RR8ZWgfX0
穂乃果「……海未、とか言ったっけ」

花丸「あの青い髪の人?」

穂乃果「それ、希ちゃんからはやばいやばいとは言われてたけどあいつは何?なんでグレネードの爆破を間近で受けても生きてるの?」

花丸「マルの情報が確かなら海未という人は他の人間と比べて魔法でも使ってるかのような再生能力と生命力があるらしいずら、だから銃弾一発貫かれたくらいじゃ死にはしないっぽくて、それ同様グレネードも耐えたんだと思う」

穂乃果「……化け物じゃん」

花丸「………」

花丸(…穂乃果ちゃんも充分化け物だけどね……)
272 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/25(水) 23:56:29.78 ID:RR8ZWgfX0
穂乃果「……なんでこんな時にあいつはいないの?」

花丸「あの人はさすらい人だから…」

穂乃果「…いくら散歩が好きとはいっても、その間に飼い主が死んじゃったら何の意味もないじゃん」

花丸「それは……そうだね」

花丸(……今あの人は何をしてるんだろう)

花丸「……ごめんね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「…なんで花丸ちゃんが謝るの?」

花丸「マルが銃を扱えたらきっと、戦力差はそこまで生まれなかっただろうから」

穂乃果「…いいよ、花丸ちゃんの過去は知ってる。無理に銃を使う必要なんかないよ」

花丸「……今日の穂乃果ちゃんは優しいんだね」

穂乃果「………」


穂乃果「…こうなった以上、死ぬまで引き下がれないよ」


花丸「…もちろんずら!」
273 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/26(木) 00:02:49.00 ID:UhZS0BQS0
〜同時刻、別荘

コンコンッ

絵里「曜、いる?」

曜「いるよー」

絵里「入ってもいいかしら?」

曜「うん、いいよ」

ガチャッ

絵里「失礼しま…ってうわ…すごい隈じゃない…」

曜「あはは…かれこれ徹夜続きだからね…」

絵里「あなたねぇ…」

絵里(二日間ずっと部屋にこもりっぱなしでちょっと心配になって見に行ったら酷い有様、そこら中に部品や紙切れが転がってて髪はぼさぼさ、別に急いでるわけじゃないんだから休めばいいのにと一目見て思った)
274 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:04:07.41 ID:UhZS0BQS0
曜「…なんかさ、寝ぼけてるだけかもなんだけど…変な予感がするんだ」

絵里「変な予感?」

曜「戦況が大きく変わりそうな予感がする」

絵里「…何を根拠に言ってるの?」

曜「…ただの勘だよ、悪寒がしただけ」

絵里「そ、そう…」

絵里「…そういえば曜は戦えるのよね?」

曜「うん、戦えるよ」

絵里「今でも銃弾は避けれるの?」

曜「もちろん避けれるよ」

絵里「どうやって?」

曜「アンドロイドの原理とはまた違うけど、私の靴には重力を利用したブースト機能があるんだ。だから跳躍すれば銃弾を避けれるようになるそれ相応の勢いがプラスされる、それで避けるんだ」

絵里「へぇ…」
275 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:05:32.31 ID:UhZS0BQS0
曜「このゴーグルはアンドロイドと同じで射線が見えるようになる、この二つのアイテムで銃弾を避けるんだ」

絵里「なるほどね…人間相手はそこまで警戒する必要ないと思ってたけどやっぱり侮れないわね…」

曜「当たり前だよ、特に希ちゃんとか対アンドロイド特殊部隊の人は舐めてかかったら死ぬよ」

曜「海未さんとかと関わったりでもしたらほぼ死は確定だよ」

絵里「…そこまですごいの?」

曜「…まぁね」

曜「……あ、出来た」

絵里「え?」


曜「はい、絵里さんの武器」


絵里「え、これが?」

曜「そうだよ、どうかな?」

絵里(突然渡された一つの銃、どんな銃かは分からないけどとりあえずコメントするならグリップの部分にYOUというロゴが入ってた)



曜「スコーピオンEVO A1————それがその銃の名前だよ」


276 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:07:18.12 ID:UhZS0BQS0
絵里「すこーぴおんえぼえいわん…」

曜「発射レートはかなり早めの銃で、善子さんの持ってる銃よりも早いよ。装弾数は52発のサブマシンガン」

曜「他のと比べてとびぬけた連射速度を持ってるから瞬時火力は並外れたものになってるよ、その分ブレも結構酷いけど、一応コンペンセイターとかアタッチメントをつけてブレを軽減させてるから最適の状態ではあると思う」

絵里「へ、へえ…」


曜「それが今の絵里さんにとって最適の武器だと私は思うよ」


絵里「これが……」

絵里(これが将来私の相棒になるのだろうか、曜の話を聞けばすごく攻撃的な銃らしい)

絵里(クセは強いけど、使いこなせれば人間だろうとアンドロイドだろうと瞬殺で、例え射線が見える相手だろうとそう簡単に銃弾を避けさせない銃でもあるから対人でも対アンドロイドでも非常に有効と豪語してた)




善子「これが……」

果南「絵里の武器…」

ことり「趣味悪っ……」

果南「…それことりが言うことじゃないよね」
277 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:10:02.21 ID:UhZS0BQS0
絵里「どうかしら…?」

ことり「スコーピオンEVO A1ってあの瞬時火力がすごい銃でしょ?初めて見たよ」

善子「私も…これレアな銃よね…」

絵里「え、そうなの?」

ことり「名前だけは結構広まってるんだけど、肝心の実物が出回ってないの。危険な銃だからね」

果南「撃ってみれば分かるよ、トリガーを一瞬引くだけで何発の弾が出ることか…」

絵里「そんなにすごい銃なの?これって…」

曜「戦い慣れしてない人には到底扱うことは無理であろう代物だよ、銃社会においてもこういう危険な銃が増えると作る側としても使う側としても厄介だから誰も作ろうとはしないんだよ」

絵里「どうして?」

ことり「スコーピオンEVO A1を一から作った人間は貴重な人材として狙われるからだよ、こんなもの作れる人早々いないからね。それにその銃は連射速度が速すぎて射線が見えても避けれないことがあるんだよ、だからアンドロイドにとってそれは勝負においての懸念材料だし、ましてやアンドロイドが避けれない銃弾を人間が避けれるはずもなく、みんなそれを忌み嫌ってるんだよ」

果南「私もその銃にいい思い出はないかな…」

絵里「そこまでなのね…」

曜「そうだよ、まぁそれで頑張ってよ」

絵里「え、ええ」

絵里(この後家の地下にある射撃場で試し撃ちをしたけど、曜の言う通りブレがあまりにも強くて確かに戦闘慣れしてない人には無理がある銃だと感じたわ)

絵里(それにこの銃の何がすごいってトリガーを引くとすぐに一マガジンが無くなる上に、その後私の目先数mにある的を見れば蜂の巣の如く数えきれない黒い穴が無残にも残っていて、こんなのを人に向かって撃ったらすぐに死ぬに決まってるわよ…)
278 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:11:18.33 ID:UhZS0BQS0
果南「どうだった?絵里の相棒になる予定の銃は」

絵里「あれはすごいわね…いくらなんでも火力が高すぎるわ」

ことり「その分クセも強いから上手く扱わなきゃだね」

絵里「ええ」

曜「ふー…じゃあ私は寝るよ、おやすみ…zzz」

善子「寝るのはやっ…」

絵里「徹夜だったらしいからね…」

果南「あはは、お疲れ様だよ」
279 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:12:32.67 ID:UhZS0BQS0
ことり「…絵里ちゃんの武器が出来たわけだけど、それでどうするの?これから」

絵里「とりあえず様子見だけど、動けるようならもちろん動くわよ」

善子「でも相手が何かしてこない限りは動けないわね」

果南「そうだね、こうやって今会話してるうちも何か動いてるかもよ?」

ことり「…それはそうだね、対アンドロイド特殊部隊は今も渡辺曜を探してるだろうし」

絵里「…ええ」

絵里(いくら私の銃が強いとはいえ、それが勝敗に直接的に繋がるかと言われたらNOだ)

絵里(今AAの総戦力が私たちのところに来たりでもしたら勝ちはまずないでしょう、果南とことりが戦えるならまだしも戦えないというのだから現在も戦況は超劣勢のまま)

絵里(何回も言うけど、負け戦上等ではないからね。劣勢の状態で攻めるのは悪手であり自殺行為、おとなしく傷が癒えるのを待つのが最善の択なのよ)

絵里(……でも、私たちがこうやって何かをしている間に、誰かが廻した歯車が狂い始めてた)


絵里(それは私たちにとって、良い意味でも悪い意味でも転機であった)

280 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:14:19.14 ID:UhZS0BQS0
〜次の日

穂乃果「……なにこれ」

「本です!漫画ですよ!」

穂乃果「…なんで女の人と女の人が付き合ってるの?」

「そういう漫画だからですよ!」

花丸「はわぁ…えっちずら…」

穂乃果「……まぁいいよ、そんなことよりね、なんで今日ここに呼んだか分かる?」

「いえ、全く」

「でも珍しいですよね、穂乃果さんが私を呼ぶなんて。いつもは花丸さんが呼んでくれるのに明日は槍でも降るんじゃないんでしょうか?」

穂乃果「…緊急事態なんだよ」

花丸「………」

「…緊急事態?」

花丸(穂乃果ちゃんや私の顔を見て、何かを察したのか——ちゃんの顔も引き締まったものになった)
281 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:16:22.44 ID:UhZS0BQS0


穂乃果「…希ちゃんが死んだ」


「…え?」

「……嘘…ですよね?」

穂乃果「…ホントだよ、——ちゃんが業務用アンドロイドというのなら私が嘘を言ってないって分かるでしょ?」


穂乃果「あなたも私と同じ、軍人として生まれたアンドロイドなんだから」


「………」

「…分かりました。では希さんを殺したのはどこのどいつですか?」

花丸「対アンドロイド特殊部隊、園田海未さんだよ」

「……そうですか」

「悲しいです、あそことは戦いたくなかったんですけどね」

カチャッ

穂乃果「…やる気なんだね」

「当たり前ですよ、業務用アンドロイドは主がいないとやっていけない生き物ですからね」


「主が殺された今、主を殺した人物を殺しに行くのが部下ってもので、システムってやつで、本能っていうでしょう?」


穂乃果「…もちろんだよ」
282 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:17:37.90 ID:UhZS0BQS0
「花丸さんはいつも通り情報収集をお願いします、穂乃果さんは私と共に行きましょう」

花丸「わ、分かったずら!」

穂乃果「…二人じゃ勝てないよ、数で負ける」

「知ってます、だから準備をしましょう。せっかくこの希さんの住んでたマンションという拠点もあることですし」

穂乃果「準備?」


「助っ人を探しに行くんですよ」


穂乃果「…誰か候補はいるの?」

「もちろんです、二人います」

穂乃果「…助っ人に出来る確率は?」

「…80%といったところですね」

穂乃果「ふーん……」
283 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:19:16.05 ID:UhZS0BQS0
「……この銃、久々に持ちました」

穂乃果「私も、——ちゃんがその銃持ってるの久々に見た」

「私は戦いがあまり好きじゃありませんからね、普段はハンドガンしか持ちません」

花丸「…それ使えるずら?壊れてない?」

「はい、使えますよ」


花丸「……ハニーバジャー、やっぱりいつ見てもかっこいいずら」


穂乃果「…相手にしたくないね」

「希さんの言葉を使わせてもらうなら、ウチの相棒ってやつですから」

「…まぁそんなことより早速行きましょうか」

穂乃果「…うん、ついてくよ」

花丸「マルも!」
284 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:21:10.59 ID:UhZS0BQS0




せつ菜「私、優木せつ菜は本気ですよ。希さん」




せつ菜「あなたの仇は絶対にとります」



せつ菜「……絶対に」グッ


285 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 00:25:35.10 ID:UhZS0BQS0
一度中断します。
再開は多分今日の夕方か夜、まだまだ続くと思うのでよろしくお願いします。
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/26(木) 12:49:37.63 ID:ISByMprk0
スクスタやりながら待っとります
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/26(木) 14:30:06.23 ID:ZuMA3SP8O
CoDとデトロイト混ぜたような感じ
288 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/26(木) 22:36:09.07 ID:UhZS0BQS0
すいません、ちょっと今日はスクスタの方に集中させてください。
次キリのいいところまで行くのにかなり長くなると思うので、ちょびっとだけ更新だとどうあがいても変なところで終わるので一気にキリのいいところまでいけるようちゃんとした時間作ってから更新します。
289 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/27(金) 17:29:58.22 ID:SQcoDrlX0



「じゃあ、その前に私たちと遊びましょうか?」



せつ菜「!?」

穂乃果「っ!?」

花丸「ずらっ?」

パリーン!

せつ菜(ベランダからガラスを突き破って飛び出てきたのは見知らぬ誰か、でも相手の顔を見て明らかな“敵意”と“殺意”を感じた私はテーブルに置いてあったアーミーナイフを逆手持ちで振った)


「はっ!」

カンッ!

せつ菜「きっ…」

穂乃果「このっ…!」バンッ!

「!」シュッ

せつ菜(だけど案の定、相手もナイフを取り出して相殺。そして次の瞬間には穂乃果さんが手に持ってた拳銃を撃ったから刃が軋むことなく相手との距離が空いた)
290 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:31:35.61 ID:SQcoDrlX0
穂乃果「…誰?」

せつ菜「…!もしかしてあなたは最近この辺をちょろちょろしてる…あの…!」

「ちょろちょろしてるなんて失礼ね」


ツバサ「私は綺羅ツバサ、あなたたちと同じ殺し屋よ。よろしくね」


せつ菜「殺し屋が私たちに何の用ですか?殺しの依頼を受けて私たちを殺しに来たんですか?」

ツバサ「違うわね」

穂乃果「ならなんで?私たち今暇じゃないんだけど」

ツバサ「それは私も同じ、だからこうやってあなたたちを殺しに来てるじゃない」

穂乃果「……だからそれをどうしてってさっきから聞いてるんだけど」

ツバサ「殺し屋は一つでいいの、そこまで言えば分かるでしょ?」

せつ菜「…理不尽極まりないですね、希さんが死んだ今が攻め時ってことですか」

ツバサ「ええ、その通りよ」
291 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:33:23.27 ID:SQcoDrlX0
穂乃果「…あなたがどれだけ強いのかは知らないけど、私とせつ菜ちゃんに勝てるとは思わないほうがいいよ」

穂乃果「侮るつもりはないけど、仮にもこちらは殺すことに全てを置いたアンドロイドだからね」

ツバサ「ええ、でもこちらも一人で来てるわけじゃないのよ?」

穂乃果「…!」

せつ菜「スナイパーです!避けてくださいっ!」

せつ菜(風で靡くカーテンが大きく揺れ始め外を映した時に見えた一つの煌き——それを見た瞬間体が動いた。穂乃果さんもそれ同様、花丸さんだって戦えないとはいえ戦闘経験はあるから私が声をかける頃には死角へと逃げてた)


シュンッ


せつ菜「くっ…」

せつ菜(私がスナイパーの弾丸を躱すと、ご丁寧に白い軌跡と鋭い射撃音まで残して私の後ろにあった花瓶を貫いていった)

ツバサ「休んでる暇はないわよ!」

せつ菜「ええですよねっ!」

せつ菜(相手も私と同じCQCを得意とする人のようで、銃を持ってるのにも関わらずキックやパンチを使って攻めてきた)

せつ菜(だから私へと伸びる相手の腕を掴んだけどすぐに弾かれてしまい、そう簡単には反撃をさせてくれなさそうだった)
292 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:38:25.11 ID:SQcoDrlX0
花丸「あ、あんまり深追いはいけないずら!」

せつ菜「分かってます!」

せつ菜(スナイパーに見られていると分かっているなら深追いは絶対にダメです、スナイパーの弾丸はアサルトライフルやハンドガンの弾丸と違って弾速が比べ物にならないので弾道予測線が発生した直後に行動を移さないと避けきれず致命傷か或いはそこで死亡してしまいます、なので弾かれた直後は飛び退き様子を窺おうと思ったのですが……)

穂乃果「くらえ!」

せつ菜(その直後には穂乃果さんが私にカバーをするように足元に転がってたショットガンを連射しだした)

ツバサ「ひゅーAA-12は相変わらず派手ねぇ」

せつ菜(室内で、しかも平面でショットガンと対峙するのは誰であろうと不可能、だから相手はベランダへと逃げ出してそのまま飛び降りた)

せつ菜(しかしここは高層マンションの上階、そうと分かっていて自分から飛び降りるということは助かることが分かっての投身だったのでしょう)


せつ菜「穂乃果さんッ!」


せつ菜(私は考える間もなくベランダから飛び降りて相手を追った。だけどこのままだとスナイパーの的になってしまう、だから私はテレパシーを信じてあのスナイパーをどうにかして、と穂乃果さんの名前を呼んで以心伝心を願った)

穂乃果「分かったよっ!」

花丸「マルも手伝うずら!」

せつ菜(流石穂乃果さんは天才です、私の言いたいことを理解した穂乃果さんは私に続くようベランダから飛び降りスナイパーの方向に向かってアサルトライフルを使いちゃんとした殺意を込めて発砲した)
293 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:40:34.03 ID:SQcoDrlX0
穂乃果「花丸ちゃん!」

花丸「はいっ!」スッ


ボンッ!


せつ菜(そして連なる銃撃音の間を縫うように入り込む低い音はスナイパーの弾道を捻じ曲げた)

せつ菜(大都会の大きな公道の上空で“煙る”白い壁——その平和に入り込む違和感ですら気にせず下へ落ちる私たちには驚く暇も喜ぶ暇もない

せつ菜(花丸さんが投げたスモークグレネードは上空に厚い煙の壁を残して穂乃果さんと私へと歯向かう射線を遮った。これでスナイパーは私たちの居場所が分からず撃つことが出来ない、言葉無しでここまでの連携が出来るのは私たちの心が通っている証拠だった)

せつ菜「待てーっ!」

ツバサ「よっ…せいやっと!」ポイッ

せつ菜(空中に浮いた状態じゃろくに体を動かすことが出来ない、だからそれを利用してピン抜きグレネードをある程度溜めてから放すことで私たちは確実にグレネードの爆発に飲まれてしまう)
294 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:48:21.57 ID:SQcoDrlX0


穂乃果「甘い」バンッ


ドカーン!

ツバサ「ぐあっ!?」

せつ菜(でも、穂乃果さんがいるから安心出来る私がいた。放たれたグレネードは穂乃果さんのたった一発の発砲ですぐに爆発し、その爆発で相手は重力場であるこの空中で、更に重力を加速させ勢いよく落ちていった)


せつ菜「穂乃果さん!」

穂乃果「了解だよっ!」


せつ菜(以心伝心——穂乃果さんの名前を呼ぶだけで私のやりたいことを理解してくれて、次第に穂乃果さんは空に足を向けた私の上にやってきて、足の裏を合わせ、私を地に落とすように、また私を踏み台にするように私の足の裏を踏みしめた)

せつ菜(するとどうなるでしょう、地に落ちる私はメテオの如く凄まじい速度で落下していき、次の瞬間には丁度下にある店から飛び出ているシートのような屋根に落ちて落下の衝撃をやわらげ、トランポリンのように一度跳ね上がってから地面へと着地し、何故かピンピンしてる相手に向かって発砲した)
295 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:50:40.01 ID:SQcoDrlX0


ツバサ「はっ」シュッ


せつ菜「やはり銃弾は避けますか…」

せつ菜(しかし案の定というべきか、車が通る公道で大きく半円を描くように走り銃弾を躱すその姿はやはりアンドロイドです。仕方ないので私も大きく半円を描くよう走って発砲をしてはリロードを繰り返しました)


せつ菜「ほっと」シュッ


せつ菜(もちろん相手も私と同じ事をしてきました)


穂乃果「…っと」


せつ菜(そうして半円を描いてるうちに穂乃果さんも背中に希さんのショットガン二丁という二つの翼と、その間にあるアサルトライフルを背負って、この地に堕天使の如く落ちてきました)
296 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:51:45.06 ID:SQcoDrlX0


ドドドドッ!


せつ菜「! 穂乃果さんっ!」

穂乃果「私の事は心配しないでっ!」

せつ菜(私と相手が対向する中で、その相手の後ろの路地裏から飛んできた無数の銃弾。自身がアンドロイドであるならその銃弾が私ではなく穂乃果さんに向かって飛んでいるというのは一目瞭然だった)

せつ菜(だから穂乃果さんに声をかけたけど、流石にこの程度で死ぬほど穂乃果さんも弱くはない。少しの危なっかしさも見せない華麗な回避で銃弾を全て避けきった)

せつ菜「大丈夫ですか?穂乃果さん」

穂乃果「当たり前だよ、こんなんでやられてなんかいられない」


「大丈夫か?ツバサ」


ツバサ「ええ、でも別に助けなんかいらなかったのに」

「バカをいえ、失敗は誰にでもあるものだ。如何なる時も最善であることが重要だ」

ツバサ「…そうね、ありがとう」


ツバサ「英玲奈」


英玲奈「礼はいい、それよりあの二人だ」

ツバサ「ええ、やっぱり一筋縄じゃ行かなそうね」

英玲奈「どちらも生産中止になった軍人生まれの業務用アンドロイドの残骸と聞く、つまりは殺すことに関しては超一流だ。どのアンドロイド、どの人間よりも強い、簡単には殺させてくれないだろう」
297 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:54:02.42 ID:SQcoDrlX0
穂乃果「…簡単には殺させてくれない?勝つ前提なんだね」

ツバサ「わお、聞こえてるみたいよ」

英玲奈「耳が良いのだろう」

せつ菜「勝つ気でいるのはいいですけど、足元掬われないように気を付けてくださいね」

ツバサ「ふふふっどうも忠告ありがとう、でも勝つ前提でいるのはあなたたちも同じよね?」

穂乃果「当たり前だよ、私たちは常にこの姿勢で戦ってきたからね、“いつも”を変えるつもりはないし、常に殺すことだけを考えてるのが殺し屋の矜持ってものだと思うんだけど」

ツバサ「ふふふっこれは失礼、一本取られたわ」

英玲奈「業務用アンドロイドのくせに口が達者なんだな」

穂乃果「私やせつ菜ちゃんは他のとは違うから」

英玲奈「…そうか」

穂乃果「…じゃあ、そろそろ始めようか」カチャッ

ツバサ「ええ、そうね」

せつ菜(穂乃果さんが銃のチャージハンドルを引くと同時に高まる緊張感——お話は終わりです)

せつ菜(そしてここから始まるのは殺し合い——私たち殺し屋が幾度なく経験してきた過ちであり運命)

せつ菜「………」

せつ菜(互いが睨み合い沈黙に返る公道、周りには銃を持った警官もいるでしょうが、生憎三流が私たちのフィールドに踏み込めるほど、ここは生半可な場所じゃない)

せつ菜(死にたがりな人だけ、ここに来ればいい)
298 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:57:04.03 ID:SQcoDrlX0
パーンッ!

せつ菜「はっ!」

ツバサ「今ね!」ダッ

英玲奈「戦闘開始」

穂乃果「負けないっ」ダッ

せつ菜(私に向かってきたスナイパーの銃弾が始まりの合図だった。私がそれを避けたと同時に緊張で止まった時が動き出し、銃を構えたり走り出したりで、とうとう戦いは火蓋を切って落とされた)

ドカーン!

せつ菜「!」

英玲奈「余所見してていいのか?」

せつ菜「しまっ…!」

せつ菜(始まったですぐに聞こえる爆発音、体感ではそう遠くない場所で発生した爆発だと思うのでもしかしたら私たち関係なのではと思った)

せつ菜(しかし兎にも角にも爆発が起こりほぼ反射的に上を見てしまった私は相手の超接近に気付けなくて、そのまま飛び横蹴りを食らってしまった)
299 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 17:59:35.20 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「ぐあっ!」

せつ菜(そして吹っ飛ぶ私、相手の首を見てアンドロイドとは分かっていていましたが、この相手の蹴りは一味違った)

せつ菜(通常のアンドロイド——ましてや戦闘型のアンドロイド以上の威力に、私は後ろにあったデパートの入り口のガラスを突き破ってその奥の壁に叩きつけられた)


ドカーン!


せつ菜「ふう…」

せつ菜(そして相手がいるであろう、そして私が蹴りを受けた辺りで飛び散るコンクリート、それを見て私はわずかに肩やスカートに積もった瓦礫を払いながらゆっくりと体を起こした)

英玲奈「随分と小癪な真似をしてくれるな」

せつ菜「…私は受け手の方が得意ですから」


せつ菜(希さんの十八番——近接攻撃をわざと食らってピン抜きグレネードを地面に落とす)


せつ菜(伊達に希さんの奥義の一つであったが故にその効果は絶大で、相手にダメージはそこまで通ってないものの、腕から流れる少量の血を見て私は少し微笑んだ)

せつ菜(私や希さんのような意表を突くトリッキーなタイプじゃないと出来ない技で、ポーカーフェイスと演技は必須アイテムです)
300 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:02:30.72 ID:SQcoDrlX0
英玲奈「受け手が得意、というがその頭から流してる血はなんだ?」

せつ菜「頭から血を流す程度じゃダメージの範疇に入りませんよ、損傷してても動くんですから」

英玲奈「…恐ろしいな、その損傷を厭わない覚悟が」

せつ菜「ここで負けてなんかいられませんから」

英玲奈「…そうか、だがどうだろうな」

せつ菜「…ええ、どうでしょうねッ!」パサパサパサ

せつ菜(私の相棒——ハニーバジャーというアサルトライフルには“サプレッサー”という銃声を抑えるアタッチメントがついています。だから、他の銃と比べて銃声が小さく、何より音が特殊なんです)
301 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:05:11.75 ID:SQcoDrlX0


英玲奈「ほっ!」シュッ

せつ菜「まだまだぁ!」


せつ菜(トリガーを引きながら銃弾を躱す相手に近づいて後ちょっとの距離を一回の跳躍で詰めて、ハニーバジャーを背中にやって、腰にかけてある刃渡り12cmのスペツナズナイフで素早い横斬りを行った)


英玲奈「ほっと、危ないな」


せつ菜(後ろに大きく体を反って回避する相手、そして次に相手の取った行動は右フックで、それを私は片腕で受け止め流れるように後ろ回し蹴り、これに対して相手は片手で手にしていたアサルトライフルで受け止めたけど、本命はこれじゃない)


バンッ!


英玲奈「何っ!?」

せつ菜「はぁっ!」

せつ菜(向こう側から飛んでくる一つの銃弾と銃声がデパート内で残響した、それを確認した私はダメ押しに回し蹴りをして銃弾と挟み撃ちをした)

英玲奈「くっ…」シュッ

せつ菜「遅いっ!」

せつ菜(どこまでも穂乃果さんは私の相棒であり親友です、穂乃果さんも戦ってるというのに私の方を見てハンドガンで一発、ベストなタイミングで撃ってくれて私も攻撃のタイミングを作れました)

せつ菜(そうしてその結果として、回し蹴りと銃弾を避けた相手に私は追撃の肘打ちで怯ませ、トドメの飛び膝蹴りで相手を吹っ飛ばした)
302 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:06:49.37 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「よしっ!」グッ


タッタッタッ!


穂乃果「死んじゃえっ!」

せつ菜(そうして突然こっちへやってきた穂乃果さんが倒れる相手の胸に向かってナイフを一突き、しかしもちろん相手は横に転がり避けると同時にすぐに起き上がり、ブレイクダンスのように低姿勢で回転しつつ全方向に対して連続で蹴りを繰り出し、近づく私と近づいた穂乃果さんを退けさせた)

タッタッタッ

ツバサ「どこ行ってるのよ!」ドドドド

穂乃果「ふっ」シュッ

せつ菜「よっと」シュッ

せつ菜(私と穂乃果さんに飛んでくる銃弾を避けて相手の持つ銃が弾切れを起こすであろうタイミングに私と穂乃果さんは手の届く距離にまで近づいて固まった、そしてそれは相手も同様)
303 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:08:08.36 ID:SQcoDrlX0
ツバサ「大丈夫?英玲奈」

英玲奈「ああ、だがやはり強いな」

英玲奈「お前らほどの実力を持ったアンドロイドが何故手品師の下につくのか不思議で仕方ないな」

穂乃果「強さが全てじゃないってことだよ」

英玲奈「…一つのことしか考えられない業務用アンドロイドがその言葉を発するとは実に興味深いな」

せつ菜「ならそれは希さんがすごかったのでしょう、私たちを変えてくれたお方ですから」

英玲奈「……よく分からないがやけに希というやつを上げたがるな、何故だ?」

穂乃果「分からなくていいよ、分かる必要性も意味もないから」
304 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:10:17.75 ID:SQcoDrlX0


「お話のところ、ちょっといいですか?」


ツバサ「!」

せつ菜「!」

英玲奈「誰だ?」

穂乃果「…何か用?」

せつ菜(それぞれがそれぞれを睨み合う中で突然混ざった声、その声に反応して全員が同じ方向を向いた)

「お初にお目にかかりますわ、殺し屋さんの皆さん」


ダイヤ「わたくしは黒澤ダイヤ、あなたたちを殺しにわたくしも馳せ参じましたわ」


穂乃果「…面白いこというね」

ツバサ「死にに来たの間違いじゃない?」

せつ菜「…いや、そうでもないみたいですよ」

英玲奈「あぁ、少なくとも仲間が二人いるらしい」

ダイヤ「あら、どうしてお気づきに?」

せつ菜「射線が二つ、現在もこちらへ向かってますね」

英玲奈「あぁ、私も射線を感じる」

ダイヤ「ふふふっ流石アンドロイドですわね」
305 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:11:40.82 ID:SQcoDrlX0

スタスタスタ

せつ菜「…!」

せつ菜(ダイヤ、と名乗る人物が薄気味悪く笑うと後ろから二丁のハンドガンを腰にかけた何気なく誰かが近づいてきた)

スタスタスタ

ダイヤ「この子はわたくしの部下、そして妹のような存在」ポンッ

ダイヤ「ほらっご挨拶を」

「………」


凛「凛は星空凛!よろしくにゃんっ♪」ニコッ


ツバサ「うわっ…」

穂乃果「あざとい…」

せつ菜「なるほど…そういうことですか」

英玲奈「対アンドロイド特殊部隊のやつらか、めんどくさいな」

せつ菜(凛という子の胸元についてるバッジを見て察した相手の情報、この戦い…死ぬと思ってやらないと勝てなさそうです)
306 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:16:43.91 ID:SQcoDrlX0
ダイヤ「わたくし、実は殺し屋という二つ名がありますの」

ダイヤ「ここはわたくし達殺し屋で、殺し屋頂上決戦をやりませんか?」


穂乃果「やだね」


ツバサ「無理なことね」


せつ菜(食い気味に拒否して、私に“行こう”と耳打ちをして立ち去ろうとする穂乃果さんについていけば後ろから飛んでくる弾丸。それを避けて後ろを向けば凛さんがもうすぐそこまで迫ってきてるもので咄嗟に姿勢を低くしてすぐに戦える構えを取れば、次に相手のしてきた行動は私に向けての右ストレートだった)


凛「と、思うじゃん?」


せつ菜「っ!?フェイント…!?」

せつ菜(飛んできた右ストレートは私の顔の前を横切り、左手で腰にかけてたハンドガンを一つ取り、そのまま右ストレートの勢いを利用して横回転し背面からの変則撃ちで私の胸を狙って発砲してみせた)

せつ菜「当たりませんっ!」

凛「だよね、でも後ろの人はどうかな?」

穂乃果「…っ!?」シュッ

せつ菜「穂乃果さん!?」

せつ菜(迂闊でした。私の胸に向かった射線は、凛さんが発砲したと同時に、そして私が避けたせいで突然として射線は私の後ろにいた穂乃果さんの胸へと移る、すると穂乃果さんが射線を感じ取るに相当な遅れが生じて穂乃果さんが避けれなくなってしまう。それを見込んでたであろう相手の策に見事はまってしまいました)
307 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:18:13.54 ID:SQcoDrlX0
穂乃果「きっ…あぶなっ…」

せつ菜「だ、大丈夫ですか穂乃果さん」

穂乃果「なんとかね…」

せつ菜「すいません…」

穂乃果「いいよ、この場合は…」

凛「ん?ふふふっ凛の強さ分かった?」

穂乃果「あいつのせいだから」

せつ菜(頬から赤い涙を流す穂乃果さんを見てこの状況がいかにまずいものであるかを分からせてくれる、横を見ればダイヤと言う人も先ほどまで私と戦っていたアンドロイドの人と戦っていて、突然の超一流の襲来に焦りは加速していく一方だった)
308 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:21:02.04 ID:SQcoDrlX0
英玲奈「はぁっ!」

ダイヤ「おっと危ないですわね、銃を鈍器にして扱うとはナンセンスですわ」

英玲奈「別に何を思われようが構わないがこれが私のやり方なものでな、しかしながらそちらこそ銃を背中につけてるというのにナイフだけで戦おうなんてナンセンスではないのか?」

ダイヤ「あら気付きませんの?あなたほどの相手ならナイフで充分という意思表示ですよ」

英玲奈「…舐められたものだな、いくら人を殺すことに特化した集団とはいえ銃無しで私たちを殺そうなんてお前は夢追い人か何かか?」

ダイヤ「別に冗談を言ってるつもりはありませんのに」

英玲奈「…なら、尚更タチが悪い」

せつ菜「………」

凛「分かったかにゃ?あなたたちは逃げられないよ、少なくとも凛が生きている以上は」

せつ菜(相手の後ろからスタスタと歩いてくる新しい二人を見てそう簡単には逃げさせてくれないことを分からせてくれる、この場合二対三で私たちが不利になる上に相手はおそらく超一流、それは幾度となく戦場を駆けた私たちでも負けは充分にあり得た)
309 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:24:41.67 ID:SQcoDrlX0

穂乃果「…腹が立つね、その余裕そうな態度」

凛「余裕だからね」

穂乃果「なんで私たちの邪魔をするの?」

凛「それは凛たちが平和を守る対アンドロイド特殊部隊だからだよ」

穂乃果「平和を守るヒーローがこんなぶっきらぼうなやり方をして市民の信用を得られるの?」

凛「平和を守るヒーローは性格が良いなんて決まりはどこにもないし、凛は市民を守る為にここにいるわけじゃないにゃ」

凛「市民が死のうが死なないが凛にとってはどうでもいいことだよ、大体死ぬのなんて弱い自分が悪いんだし」

穂乃果「……ホントにつまらない回答をするね、あなた」

凛「期待してた答えでしょ?」

穂乃果「………」

せつ菜「……こんな時に…」

せつ菜(きっと、私も穂乃果さんも考えてたことは同じだった)


せつ菜(こんな時に希さんがいてくれたら解決なのに)


せつ菜(対アンドロイド特殊部隊の化け物にやられてしまったけど、私たちの主の力は偉大だった。自らを殺し屋と名乗ってはいるけど、大層優しい人で、この人といればどんな窮地も乗り越えられそうな安心感があった)

せつ菜(私と同じトリッキーで、追いかけててすごく楽しかったし、一般人と比べてネジが少し外れてるから普通じゃ思いつかないようなことをしてきてホントに追いかけ甲斐があった)

せつ菜(ここに希さんがいれば、きっと私や穂乃果さんじゃ思いつかないことをして乗り越えらせてくれたんだろう、このまま戦うのは分が悪いし、ここで消耗したくない)

せつ菜(反撃の狼煙はまだ上がってない、こんなところでつまずきたくなんかなかった。この相手は強い、動きが素早いし何より対アンドロイドに慣れ過ぎている、こんなのを相手にしたらノーダメージは無理がある)

せつ菜(だから希さんがいてくれたら……そんな叶わぬ希望は光を見せることもなく心の中で潰えた)
310 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:27:26.17 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「…穂乃果さん」

穂乃果「何?」

せつ菜「……やるしかないようですね」

穂乃果「…そうだね」

スタスタスタ

海未「…昨日ぶりですね、穂乃果さん」

穂乃果「…昨日の傷はどこにいったの?」

海未「治りましたよ、全部」

穂乃果「…化け物だね」

海未「ふふふっありがとうございます」

梨子「私も一日ぶりだね、穂乃果さん」

穂乃果「………」

梨子「なんか返事してよ!」

穂乃果「二重人格?」

梨子「ううん、私の心は一つだけ」

穂乃果「…なら本当に狂ってるんだね、あなた」
311 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:32:28.23 ID:SQcoDrlX0
梨子「梨子って名前で呼んでよ?私は桜内梨子だよ?」

梨子「…あ、そういえばあの死んだ紫髪の人の部下は全員プライドが高いって聞いたなぁ」

梨子「……ふふふふっあぁ楽しみだなぁ、あなたたちの絶望に満ちた顔を見るのが」ウットリ

梨子「ふふふひひっ…泣き顔でもいいよ?生け捕りにして拷問でもしたら見せてくれるよね?」フフフッ

せつ菜「…っ」ジタッ

穂乃果「……希ちゃんがあなたたちを避ける理由がよく分かったよ」

せつ菜(狂気の権化…と形容しておきましょう、殺すことに全てを置いた私たちでさえたじろいでしまうほど、そして人間とは思えないほど穢れた/汚れた考えに冷や汗が出た)

せつ菜(こんなのがいる部隊に近寄ろうなんて思わないし、こんなのがいる部隊がまともな部隊とは到底言えない)

せつ菜(視界に移る最奥を見れば殺し屋と名乗るアンドロイドの人たちと対峙するダイヤさんと誰か。わざわざ私たちを殺しに五人掛かりでやってきたのですね)
312 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:34:27.91 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「…私たちだけ三人なんですね」

海未「軍神とトリックスターですよ?持ってこれる戦力を使うのは当然じゃないですか」

せつ菜「高く評価してもらえるのがこんなに憎らしいなんて思いたくなかったですね」

梨子「ふふふっあなたたちの飼い主に褒めてもらえたらよかったね?」

せつ菜「…つくづくイラつきますね、それ」

凛「お話はいいからとっとと始めない?凛長話は嫌いだからさー」

海未「そうですね、じゃあ」カチャッ

せつ菜「…!」

穂乃果「…勝つよ、せつ菜ちゃん」

せつ菜「…もちろんです」

せつ菜(一斉に銃を構えだす相手に、私たちも同じように銃を構え穂乃果さんは私に耳打ちをした)

せつ菜(こんなところで負けて拷問なんてされたくない、もし負けそうになったなら自害を選ぶまである)

せつ菜(こんなに戦いの記憶を研ぎ澄ましたのはいつぶりだろう、ここまで本気で戦うということをする日は今まででも数回しかなかったはず)
313 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:36:12.49 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「…行きますか」

穂乃果「うん…」

せつ菜(肌がひりつく緊張感、この戦いは絶対に負けられない)

せつ菜「………」

穂乃果「………」

凛「…出ないなら凛から行くよっ!」ダッ

海未「梨子!カバー頼みます!」ダッ

梨子「もちろんです!」ドドドド

穂乃果「あの二人は私に任せてせつ菜ちゃんはあの猫女をやって!」ダッ

せつ菜「え、でも!」

穂乃果「私が負けると思う?」

せつ菜「…!」

せつ菜(穂乃果さんは強い、それは限りなく最強に近い強さ)

せつ菜(軍神と謳われたその才能は、頼り甲斐があるってそんなレベルじゃないでしょう)

せつ菜「…思いません、あの二人はお願いします」

穂乃果「もちろんだよ」ドドドド!

せつ菜「はっ」タッ

せつ菜(穂乃果さんは相手の方に跳躍しながらトリガーを引くに対し私は一度後ろへ飛び退き受けの態勢に回った)
314 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:44:22.10 ID:SQcoDrlX0
凛「あなたは軍神さんと違って逃げるんだねっ!いいよ受けて立つにゃ!」ダッ

せつ菜(凛さんも私のところに来てくれたのでそのままエスカレーターをジャンプで上って戦うフィールドを変えた)

せつ菜「ここで戦いましょうか!」パサパサパサ

凛「うんいいよっ!」ズサー

せつ菜(二階にあがって最初の跳躍と同時に発砲、私に引っ付くように二階へ走って上がってきた相手も私の跳躍に反応して、よく出来た笑顔を歪ませることなくスライディングをして私に近づきながら二丁のハンドガンで私に向かって発砲を行った)

せつ菜(ただ、もちろん銃弾は私にも相手にも当たることはなく、私は跳躍の着地直後すぐにスライディングをして私の体全体に残るこの慣性を残しながら再び横方向へ跳躍し凛さんの放つ銃弾を躱し、相手はすぐさまブレーキをかけ照準を前方向から私が避けた方向である横方向へ向け発砲の対応をして休む暇も与えない展開を作り出した)


凛「はい、せーのっ!」カーンッ


せつ菜(身軽に、でも固く染め上げられた紺色のその姿。私服の上に防弾チョッキを着て、腰からマントをかけ、その上にベルト型のマガジンポーチをつけて、その姿でどこからともなく出てきて宙に浮いたピン抜きグレネードグレネードを私に向かって蹴ってきた)

せつ菜「っ!?」バンッ


ドカーン!


せつ菜(相手の突飛な行動に驚いた私は案の定即座に反応して発砲、そうすればその後は大爆発————天井や床には穴が開き、広い範囲で砂煙が立ち込め始めた)
315 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:50:07.11 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「なんて手荒な真似を…」


タッタッタッ!


凛「よーしっ!いっくにゃー!」

せつ菜「…! そこですか!」

せつ菜(近づく足音を頼りに相手の位置を見破った私は腕を使って受け止める体勢に入った)


海未「ええ、ですが相手が違いますね」


せつ菜「えっ…!?」

せつ菜(気付いた頃には遅かった、濃い砂煙の中でも見える銃剣の一閃に目が眩んだ)


ザクッ


せつ菜「きっ…あああああぁッ!?」


316 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:53:44.90 ID:SQcoDrlX0

タッタッタッ!

穂乃果「せつ菜ちゃん!?」

せつ菜「あぁ…ああああ……!」

せつ菜(痛い、いたい。イタイ……)

せつ菜(一閃で目が眩んだその直後には私の左腕に鋭い斬撃が飛び込んできて大量の血液が噴出した)

せつ菜(この退廃的で厭世的な痛みが懐かしい。痛みを我慢しようとしても声が——体が痛みを我慢出来ず切羽詰まって息が出来なくなり、斬られたその左腕はとうに機能を失っていた)

穂乃果「せつ菜ちゃん大丈夫!?」

せつ菜「ア…あぁ…穂乃果さん…っ!」

穂乃果「ちっ…なんて厄介な…」

タッタッタッ!


凛「仲間の心配もいいけど自分の心配もした方がいいよー?」


穂乃果「ああそうだよ————」


せつ菜(声の成る方へ銃と顔を向けたであろう穂乃果さんは、何故か言葉を止めた)

せつ菜(私は手の痛みを我慢するのに必死で、それどころじゃなくて何が起ころうとしてるのか全く分からなかった)


穂乃果「——ね…?」


せつ菜(砂煙が濃い中で声も足音もしたんだから、銃を向けるのは当然だ)

せつ菜(だけど銃を向けて見えるのはピンが抜かれたグレネードだった)

穂乃果「…ぁ!」

せつ菜(……そして、それが即座に爆発するものであるというのはアンドロイドで尚且ついくつもの戦場を駆けた穂乃果さんならすぐに分かったでしょう)

せつ菜(だからこそ穂乃果さんは感じ取ってしまった。このどうしようもない状況の絶望感を)
317 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:57:01.50 ID:SQcoDrlX0


ドカーン!


せつ菜(私も穂乃果さんも避けれるはずがなかった、相手の煙と足音と声の使い方が上手すぎた。あんなの分かるわけありませんよ…!)

せつ菜「けっ…はっ…!」

穂乃果「……うぅ」

せつ菜(吹っ飛ばされた私たちはどちらもひどい傷だった。穂乃果さんはすぐに立ち上がってたからまだ死なずとも、まず強烈な蹴りで壁に叩きつけられ、次に剣で腕を斬られ、最後に爆発を直で受け体の至る所から血を流す私は失血死が近かった)


せつ菜(久々に感じた、これが死の味なんですね)


せつ菜(こんなにも死の味が絶望感に満ちてるなんて、もう忘れてた。そして思い出したくなかった)

穂乃果「せつ菜ちゃん…だい、じょうぶ…?」

せつ菜「こんな…ところで…ッ!」

せつ菜(…でも、まだ死んでない)

せつ菜(こんなところで負けてなんかいられない、死ねない理由が私には合って、死にたくない心が私にはまだある)

せつ菜(だから私はその心で無限に輝きを放つ希望を抱いてゆっくりと立ち上がった)
318 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 18:59:46.98 ID:SQcoDrlX0


梨子「あ、いましたよ」

凛「爆発で肉片もなく吹き飛んだのかと思ったよ」

海未「この場合肉片ではなく部品でしょう」


穂乃果「…どうする」

せつ菜「……あの二人はどうでしたか」

穂乃果「一対一なら負けない、けど二対一でやってる以上不利だし上手く攻めれない」

せつ菜「…私でも戦えそうですか?」

穂乃果「……今のせつ菜ちゃんには無理かな」

せつ菜「…そうですか」

せつ菜「…でしたら穂乃果さん」

穂乃果「何?」

せつ菜「お願いがあります」

穂乃果「…言ってみてよ」

せつ菜「時間を稼いでほしいんです、私に…私に時間をください」

穂乃果「…任せて」
319 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:01:43.10 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「…そしてもう一つ、あるんです」

穂乃果「…何?」

せつ菜「………」


せつ菜「私を信じてほしいんです、今から何が起こったとしても」


穂乃果「…もちろんだよ、せつ菜ちゃんは私にとって——」


穂乃果「——家族みたいなものなんだから」


せつ菜「…ありがとうございますっ」ニコッ

せつ菜(穂乃果さんにとびっきりの笑顔を見せた後、穂乃果さんはすぐに三人に向かって発砲しだした)

せつ菜(その時の穂乃果さんの目といえば本気だった、手慣れたリロードや全く隙の無い身のこなし、相手の弱点を探るような多彩な攻め方をしてて、そんな穂乃果さんを見れば私も出し惜しみをしている場合じゃないと奮いを立ててすぐさま行動へ移した)

せつ菜(これが最終兵器になるかといえば、それは違うけど、でも今の私たちにはこれしか方法がなかった)

せつ菜(私は懐にあった携帯を耳に当て、この戦場から背を向けて逃げだした)
320 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:03:56.15 ID:SQcoDrlX0

プルルルルルルルルル ピッ


「もしもし?」


せつ菜「…にこさんですか」

にこ「何?珍しいわね、あんたが私に電話なんて」

せつ菜「……助けてください」

にこ「…え?何?もう一回言って?聞き間違いだと思うから」

せつ菜「…助けてください」

にこ「……何?あんたがその言葉を言うってことはとうとう狂った?」

にこ「まぁあんたは生まれてこの方殺し合いしかしてなかったからね、希も死んだし精神がやられてるとは思ってたけど正直ここまでとは思わなかったわ」

せつ菜「………なんかいませんよ」

にこ「ん?何?」


せつ菜「狂ってなんかいませんよッ!助けてほしいんですよッ!!!」


にこ「っ!?」
321 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:05:51.20 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「今の私たちじゃ勝てないんです…!お願いです…!お願いですから…っ!!」


せつ菜「助けてくださいよぉ…!!」ポロポロ


にこ「……相手は誰?」

せつ菜「凛さんと梨子さんと海未さんです……」

にこ「……そう、分かった。でも、あんたらを助けられる保証はないし、もし私が行くまでに死んでたら助けることは出来ないからね」

せつ菜「…いいんですか?私から言っといて難ですけど」

にこ「私は対アンドロイド特殊部隊では海未と曜以外のやつらが大っ嫌いなんでね、特にダイヤと凛が嫌いだから、そいつらを殺せるかもというのなら行くわ」

せつ菜「…分かりました、お願いします」

にこ「……あんたらも生きてなさいよ、ここで死んだら希も悲しむわよ」

せつ菜「…もちろんですよ!」

にこ「……じゃあね」

せつ菜「はい…」

プツッ
322 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:09:52.84 ID:SQcoDrlX0
せつ菜「………」

せつ菜(私と穂乃果さんは、ご存じの通り軍人として生まれた業務用アンドロイドでした)

せつ菜(それはつまり殺すことだけを考えた殺戮マシーンだったんです)

せつ菜(…しかし変わりました——いや、変えてくれたんです)


せつ菜(希さんが。希さんが私たちを変えてくれたんです)


希『んー君たちー』

せつ菜『…何か用ですか?』キッ

穂乃果『…近づくと殺すよ?』

希『んあはは…まだ何も言ってへんのに』

せつ菜『じゃあ何の用ですか?もしくだらないことだったら殺しますね』

希『んーそうやねー』


希『ウチのところで就いてみる気はない?』


せつ菜(…それが始まりでした、もちろん当時の私たちは拒否しましたよ、ふざけるなって)

せつ菜(そしたら希さん、ウチとバトルしてウチが勝ったらついてきてよっていうもんですから、なんかその勝つ気でいるような態度がムカついて衝動的に体が動いてたんです。当時の私と穂乃果さんとの連携は現在と比べてもそこまで劣っていなかったので穂乃果さんと二人がかりで希さんを負かすのではなく殺しにいったんです)
323 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:15:01.40 ID:SQcoDrlX0


希『がっ…!』


せつ菜『…愚かなものですね、人間風情が生意気にもアンドロイドにバトルなんて挑むから』

穂乃果『遺言は何かある?』


希『…ふふふっそっちがね」


カランッ


せつ菜『っ!?』

穂乃果『グレネードっ…!?』


ドカーン!


せつ菜(…あぁ、懐かしいですね)

せつ菜(それで私たち二人は一緒に吹き飛ばされて意識を失ってしまいました、目覚めれば手当をされベッドで横になってて、私たちが目覚めるまでずっと近くにいてくれた花丸さんが動いちゃダメずらって可愛げに言ってきたのを今でも覚えています)
324 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:17:21.29 ID:SQcoDrlX0
希『ふふふっ別に逃げたいなら逃げてもいいよ、でも今は逃げない方がいいよ。君たち二人を処分しようとしてる連中がいっぱいいるから』

せつ菜『! どうしてそれを…!』

穂乃果『………』

希『ウチは二人を守りたいんよ、ウチはアンドロイドの味方やもん。それに、こんな可愛い子が殺されるのを見たりなんかしたら、ウチ一生後悔しそうだからね』

せつ菜(…それから希さんの背中を少しずつ追いかけた)

せつ菜(最初は反抗ばっかだったけど、次第に心を開いて、そして優しい私へ————)


せつ菜(業務用アンドロイドではない、自分だけの心を持ったアンドロイドへと変われた)


せつ菜(その自我を持った私が心の底から救済を求めてた。これを落ちぶれたというのなら、それを私は退化と呼ぶでしょう)

せつ菜(私は成長した、誰かに頼ることのできる私になった。だから希さんには本当に感謝しなければいけません)


ピッ プルルルルルルル


せつ菜(…そして私は、再び携帯を耳に当てた)


せつ菜「もしもし、——さんですか?」

325 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:19:26.36 ID:SQcoDrlX0



ドドドドドド!


穂乃果「ちっ…」

梨子「穂乃果さんの相棒さん、逃げちゃったけど?」タッ

穂乃果「逃げたんじゃないよ、これも作戦の内だよ」

海未「見苦しい嘘はやめてください、私は共感性羞恥なのでそういうことを聞くのが辛いんですよ」スッ

凛「というか一人で凛たち三人を相手にしようなんて凛たちも舐められたものだね、生け捕りじゃなくてそのまま殺さないかにゃ?」バンバンッ

梨子「いいや、生け捕りで拷問して楽しむ方がいいよ」

梨子「その方が絶対に気持ちいいから」ウフフ

凛「…別に凛はそういうの興味ないんだけどなー」

海未「どっちでもいいですから戦いに集中してください、三対一とはいえ相手は軍神で、希の入れ知恵まで授かってる相手です。侮ることは許されません」

梨子「あはっ…もしかして海未ちゃん、あの紫髪の置き土産グレネードがトラウマになってる?」クスクス

梨子「怖かったよね〜あんなのやられたら私死んじゃうな〜」

海未「…遠まわしに私への煽りですか」

凛「いや遠まわしも何も直球にゃ…」
326 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/27(金) 19:21:50.55 ID:SQcoDrlX0
海未「あなたの頭を治してくれる病院を教えてあげましょうか?」

梨子「あはははっそれはお互い様だね」


穂乃果「…あなたたち全員狂ってるけどね」ドドドド


梨子「何百人もの人を殺してるデスマシーンには言われたくないかな」シュッ

凛「自覚症状ないパターンが一番タチ悪いにゃー」

海未「私たちの話に参加する余裕があるとは驚きましたね」

海未「…というか、さっきから引いてばっかですね。戦う気あります?」

凛「時間稼がれてるにゃー」

梨子「何か企んでるね」

海未「そうですか、なら即行で方を付けましょうか!」ダッ

穂乃果「させないっ!」


バンバンバンバンッ!


海未「っ!希のショットガンですか…!」
327 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:26:01.21 ID:SQcoDrlX0
梨子「あれはまともに相手したら死んじゃうね」

海未「ええ、なら離れて集中砲火と行きましょうか!」ドドドド!

梨子「凛ちゃん投げ物よろしくねっ!」ドドドド

凛「了解にゃ!」

穂乃果「ちっ…」

穂乃果(このまま逃げ続けても状況は変わらない…!どうすればいいんだろう…)


タッタッタッ!


花丸「させるかーっ!」


穂乃果「…!花丸ちゃん!」

花丸「助けに来たずら!」

海未「ちっ…希のところの部下ですか」

花丸「これでも食らえーっ!」ポイポイッ

凛「っ!?グレネードにゃ!」

梨子「あんなに持ってきて…!」
328 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:27:15.47 ID:SQcoDrlX0


ドカーン!


花丸「穂乃果ちゃん今のうちに逃げるずら!」

穂乃果「う、うん!」ダッ

梨子「逃がさないッ!」ダッ


せつ菜「逃がしますっ!」ドドドドッ


梨子「ちっ…」

海未「帰ってきましたか…」

せつ菜(電話を終え戦場に戻った私はトリガー引いて発砲、穂乃果さんが逃げるタイミングをなんとか作った)


穂乃果「ありがとうせつ菜ちゃん、花丸ちゃん!」

花丸「このくらいお安い御用ずら!」

せつ菜「私もです!」

329 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:30:05.75 ID:SQcoDrlX0
海未「…感動の再開で盛り上がるのはいいですがその三人で私たちにどう勝ちますか?」

海未「二人は死にかけ、それにあなたは銃が撃てないらしいですね」

花丸「………」

梨子「んふっ…じゃあ銃が撃てないっていうなら殺しやすいあなたから殺すのが最善よねっ!」ダッ

花丸「ふっ」シュッ

梨子「あれ…戦えないんじゃなかったの…」

せつ菜(跳躍使って一瞬で距離を詰め、逆手持ちでナイフを突き刺そうとする梨子さんに対して花丸さんは飛び退け回避をした)

花丸「…マルだって最低限は動けるよ、非戦闘員だったらここに来るはずがないよね」

梨子「あはは、そうだね」

海未「…しかし最低限戦闘が出来るとしても状況は変わらない」

凛「八方塞がりだね、どうするにゃ?」


せつ菜「…戦うのみです」カチャッ


穂乃果「そうだね」
330 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:31:24.70 ID:SQcoDrlX0
穂乃果「…花丸ちゃんは逃げて、もうこの戦いに参加しちゃダメだからね」

花丸「…! で、でも!」


穂乃果「“穂乃果たち”を信じて」


花丸「その一人称…!」

穂乃果「ここで死んでも悔いのない戦いをするよ」

花丸「…そっか、でも負けないでね」

穂乃果「もちろん、だから花丸ちゃんは今すぐ逃げて」

花丸「…はいずらっ!」ダッ

凛「あーあの子逃げちゃったけどいいの?」

海未「別にいいです、むしろここで逃げる選択は賢明と言えるでしょう。戦えばどうせ死ぬんですから」

凛「そんなことは分かってるにゃーあの子はほぼ戦えないんだからあの子を集中的に狙ってあの子を弱点にすればいいじゃんって話だよ」

梨子「はぁ…これだから戦闘狂のおこちゃまは困るね」

凛「は?」

梨子「もしあそこにいる二人が万全の状態だったらみんなそうするけど、今は死にかけなんだからほとんど戦えない子を相手するより大怪我を追ってる大きな駒を取った方が旨味も大きいでしょ?」

凛「旨味って…」

海未「使う言葉がちょっと違いますが大体はあっています、つまり逃げだした子を狙うよりあの二人を狙った方がいいでしょう」
331 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:33:42.09 ID:SQcoDrlX0
穂乃果「…そうしてくれるならこっちも好都合だよ」

せつ菜「ええ」

梨子「その強気な発言がいつ崩れるか見物だね」

凛「いいからとっとと————」


凛「——やるにゃあ!」ダッ


せつ菜(やはり先陣を切るのは相手の凛さんでした、一回の跳躍で私との距離を縮めて右手を大きく後ろに構えて右ストレートかと見せかけてのローキックを繰り出してきた)

せつ菜「あぶなっ…」

せつ菜(何も考えず力任せに動いてそうな割には希さんみたいな手品の類を使ってくる相手でした、人もアンドロイドも何か構えを取れば先入観で何が来るかを読んで先にそれに対応しようとします、だからそれを逆手に取り後ろにまでやった右手に注目させて、その間にローキックを仕込むというちょっと高度な技ですが、それを今の相手がやってるとなるとこれからも何をしてくるか分かりません)

凛「その体じゃ躱しながら撃てないよね!だって片方の肩が壊れててグリップの部分が持てないから!」バンバンッ

せつ菜「ちっ…」

凛「なら攻撃を続けてればいいだけの話!」
332 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:34:41.79 ID:SQcoDrlX0
海未「今日ここで刀の錆びにしてあげますよ!」ダッ

穂乃果「せつ菜ちゃ——」


ドドドドド!


穂乃果「!」シュツ

梨子「穂乃果さんの相手は私だよ?」

穂乃果「ちっ…」


せつ菜「きゃっ……」

海未「ほらほらいつもの威勢はどこに行きましたか!?」ブンブンッ

海未「銃が撃てないんじゃか弱い女の子同然ですねっ!」

凛「トリックスターだけどね」

せつ菜「これでっ!」ポイッ

海未「っと…」ピタッ


凛「はっそんなものっ!」ドカッ


せつ菜「っ!?」

せつ菜(足止めくらいと考えてグレネードをぽいっと落としたのですが、何を思ったのか強引にもピンの抜かれたグレネードをサッカーボールを蹴るみたいに私の方向へと飛ばしてきた)
333 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:35:58.15 ID:SQcoDrlX0


カンッ!


ドカーン!

穂乃果「っあぶない……」

せつ菜「穂乃果さん…!」

せつ菜(穂乃果さんは飛んでるグレネードにナイフを投げて見事に命中、結果グレネードの軌道を変えたことにより私はほぼ無傷だった)

せつ菜(穂乃果さんが助けずとも多分死にはしてなかったと思いますけど、流石穂乃果さんは如何なる状況でも凄い人でした)

タッタッタッ!

海未「本当に軍神は厄介ですね!」ドドドド!

穂乃果「よしっ…」

せつ菜「…!」

せつ菜(穂乃果さんのその一言を聞いて私は察した、梨子さんと戦いながら苦し紛れに放ったリスクと織りなす投げナイフ、それは私を助けると同時に凛さんか海未さんが私につけてるマークを穂乃果さんに移す為での投げナイフでもあった)

せつ菜(結果海未さんは穂乃果さんへ一直線、左手が壊れててまともに銃が撃てない私に二人相手はもはや死ぬしか残された道はなく、それを解消するために穂乃果さんは動いた)
334 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:37:15.21 ID:SQcoDrlX0
穂乃果「なら私と勝負しようか!」ドドドド!

海未「ええそうしましょう!梨子!ついてきてください!」

梨子「もちろん!」ダッ


凛「じゃあ凛はあなたとだね!」ダッ



にこ「はい、ストップ」ドドドッ



凛「っ!?」シュッ

海未「…! にこ…?」ピタッ

梨子「にこさん…?」ピタッ

穂乃果「なんであいつが…」

せつ菜(凛さんの猛攻を再び躱そうと体を動かそうとした時、救済の手はとうとう私たちへと差し伸べられた)

せつ菜(小さな体だけど、その人の背中は誰よりも大きかった)
335 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:38:22.90 ID:SQcoDrlX0


せつ菜「にこさんっ!」キラキラ


にこ「はぁ…はぁ…間に合った…」

凛「…凛に発砲って何のつもり?」

にこ「悪いわね、海未」

海未「…何故私に謝るのですか?」

にこ「私にも戦う理由があるの、海未とは仲良くしたかったけど、生憎私はここの部隊じゃ海未と曜以外とは仲良く出来ない人間なんでね」

にこ「私ムカつくのよね、凛とダイヤが」

凛「…それはつまり?」


にこ「あんたらを殺しに来たのよ」


梨子「…はははっもしかしてにこさんも頭おかしくなっちゃった?」

にこ「ええ、元からおかしいわ」

にこ「でもあんたらはもっとおかしいわ、狂った私が軽蔑するほどに狂ってる」
336 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:39:10.64 ID:SQcoDrlX0
梨子「…あーあっそっかそっか、じゃあ結局にこさんも所詮愚者であったってことなんだね」

海未「…にこ、もし今その考えを取り下げるというのならあなたには何もしません、ですからやめましょう?そんなこと」


にこ「お断りね」


にこ「だから謝ったのよ、海未」


にこ「私も海未とは戦いたくないけど、それ以上にこいつらがムカつくからね」


海未「…そうですか、残念ですね」

にこ「……あんたら」

せつ菜「はい」

穂乃果「…何?」

にこ「適当に戦って隙を窺って逃げるわよ、今の状況じゃ勝つことは無理だから」
337 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:40:47.12 ID:SQcoDrlX0
凛「…耳打ちのつもりかもしれないけど聞こえてるよ?」

梨子「逃げるっていうなら尚更逃がすわけにはいかないかな」カチャッ



「そうだね、逃げる必要はないかな」バンッ!



梨子「きゃっ!?」

凛「今度は何ー!?」

海未「曜…!」

にこ「曜…!?なんで曜が…!」


曜「ふふふっせつ菜ちゃんに呼ばれたんだよ」


にこ「せつ菜が…!?」

せつ菜「曜さんっ!」キラキラ

梨子「なんで曜ちゃんがこいつらと…」

曜「ごめんね梨子ちゃん、希ちゃんが殺されちゃったっていうなら私もせつ菜ちゃんたちの味方をしないといけないからさ」
338 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:42:02.88 ID:SQcoDrlX0
海未「曜もですか…ですが曜、あなたは何も分かっていませんね」

曜「何が?」

海未「曜は無謀を何かと履き違えていませんか?死にかけの二人とにこ一人、そしてほぼ無傷の私たち三人というこの状況を打開できる何かを持っているのですか?」


曜「当たり前だよ」


凛「へー何?教えてにゃー」


「こんにちは、AAの皆さん」



善子「堕天使ヨハネ——こうり」



絵里「曜の助っ人として、あなたたちを潰しに来たわ」


善子「最後まで言わせなさいよぉ!」

海未「絢瀬絵里と津島善子…!?」

梨子「げっ…堕天使だ…」

凛「なにそれ?」

海未「………」

曜「これでタイ…いや、こちらが有利だね」
339 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:43:06.51 ID:SQcoDrlX0
海未「…あの二人を呼んできてください、向こうの殺し屋は無視してもらって結構です」

梨子「あ、うん!」ダッ

にこ「…驚いたわね、せつ菜。そして曜もね、まさか絢瀬絵里と津島善子とつるんでたなんて」

曜「あははっもう私が対アンドロイド特殊部隊にいる理由がなくなっちゃってね」

にこ「…そう」

曜「そういうにこさんこそ良かったの?対アンドロイド特殊部隊の人たちを敵にして」

にこ「いいの、確かに私は強くなる為にここに来たけど、あいつらとつるんで強くなりたいとは思わないわ、海未には申し訳ないけどね」

にこ「海未、あんたにはお世話になったわ。丁寧に色々教えてくれて、戦う時以外に可愛く笑う姿を見ればあんたもやっぱり普通の女なのねって幾度となく思った」


にこ「海未、あんたは常識人よ」


にこ「ただ海未は、“死ねないだけ”の常識人よ」
340 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:43:52.95 ID:SQcoDrlX0
海未「…そうですか、にこにそう言ってもらえるならとても嬉しいです」

海未「ですがやはり疑問です、ダイヤや凛がおかしいというのは私にでも分かります、ですがこの頭おかしい人たちを敵にするとまずいと一番分かってるのはにこなのでは?」

海未「今回の行動はあまり賢いとは言えませんよ」

にこ「それは私と海未が何を重要とするか、そこに違いがあっただけの話よ」


にこ「私は道徳性を重要としたいの」


にこ「もっとも、人の汚さとかじゃなくて、私は一人の姉としてダイヤを軽蔑してるだけ」

海未「…分かりませんね」

にこ「そりゃそうよ、姉という立場でしか分からないことだからね」
341 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:45:43.01 ID:SQcoDrlX0
凛「はっ所詮にこちゃんはにこちゃんだね」


凛「雑魚は雑魚のままだったよ」


曜「対アンドロイド特殊部隊同士じゃ戦わないから分からないと思うけど、にこさんは強いよ」


凛「へぇ曜ちゃんがそう言うのなら強いのかもだけど、やっぱり曜ちゃんも曜ちゃんだよ」

凛「今回のこの行動、ホントにバカだね。自分の強さに過信しすぎじゃないかにゃ?」

曜「…それはお互い様だよね」

善子「私たちもいるの忘れてない?この状況、人数だけでいうなら有利だからね」

凛「死にかけの二人がいるから不利だと凛は思うんだけどねー」


穂乃果「なら死にかけの私たち二人を一人としてカウントすればいいだけ」


せつ菜「私たちは二人で一人です」


海未「………」
342 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:47:12.13 ID:SQcoDrlX0
「戻ってきてみれば…」


ダイヤ「また随分と騒がしいことになっていますわね」


にこ「…ダイヤ、久しぶりね」

ダイヤ「にこさんですか、梨子さんから話は聞いていますが無茶なことをしますわね」

にこ「チャレンジャーなものでね」

「ふふふっあの軍神とトリックスターが死にかけなんて眼福ね」クスクス

穂乃果「…腹が立つね」

せつ菜「私もです」

絵里「…誰?」

「あら、分からなかった?ごめんなさいね」


果林「私は朝香果林、よろしくね」


果林「…あ、あなたは別に自己紹介はいいわよ?絢瀬絵里、うん知ってるから」

絵里「…別にするつもりなんてなかったわよ」

果林「あらそう?ごめんなさいね」フフフッ
343 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:48:14.97 ID:SQcoDrlX0
絵里「………」


曜『行かなきゃ!これは行かなきゃ絶対にダメだよ!』


絵里(曜が突然そう言いだすもので急いで準備して来てみた場所、それはまさに戦場と言ってもいい場所だった)

絵里(この状況、五対六————もしくは五対五の大規模な撃ち合いが始まる前であった)


絵里(相手も、味方も、全員が超一流)


絵里(曜はせつ菜という子と穂乃果という子を守りたいという理由が大きくて絶対に負けられないと言ってたけど、私たちからしてもこの状況は絶対に負けられない)

絵里(この勝負で雌雄を決するでしょう、ここで私たちの主力を全員投じるのだから、全て…全てを賭けた戦いが今、始まる)

ダイヤ「ではこうして向かい合ってても難ですし始めましょうか、私たちが来るのを待ってくれたのは感謝します」

曜「あはは、待ってたわけじゃないけどね」

凛「えーこれ流れ的に五対六でやるのー?なんかごちゃごちゃしてて凛イヤにゃー」
344 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:49:15.60 ID:SQcoDrlX0
にこ「…穂乃果、せつ菜」

穂乃果「何?」

せつ菜「何ですか?」

にこ「あんたら希に色々教わってる身でしょ?」

せつ菜「はい」

にこ「なら私と一緒に戦いなさい」

穂乃果「…なんで?連携取れないんじゃごちゃごちゃしててマイナスにしかならないよ」

にこ「あら知らないの?」

穂乃果「何が?」


にこ「私、昔は希と一緒に殺し屋してたのよ?」


穂乃果「…え?」

にこ「だから希と連携することは慣れてるの、あんたらも希に動き教わってるっていうなら多少は取れるでしょ?」

にこ「だから死にかけ二人のカバーを私がしてやるって言ってるのよ」

穂乃果「………」
345 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:50:26.17 ID:SQcoDrlX0


曜「私は海未さんをやるよ、希ちゃんの仇は絶対に取る」


せつ菜「待ってください、海未さんは私たちにやらせてください」

曜「え、でもその体じゃ…」

せつ菜「いいんです、希さんの仇を取るのは私たちの役目です」

果林「あははっ可愛いわね、飼い犬らしい行動だわ」

穂乃果「飼い犬だからね」

梨子「そこ弁えてるところがもっと可愛いね」クスクス


善子「うわー…あの二人相手にすると相当やばいタイプよ…」

絵里「人間関係的な意味で関わりたくないわね」


にこ「大丈夫よ、曜。私がいるから」

曜「うーん…まぁにこさんがいるなら…」

曜「…じゃあ私はダイヤさんをやるよ」


絵里「なら私たちと善子はあのオレンジ色の髪の子とぶどう色の髪したやばい子ね」


凛「凛には凛って名前があるにゃー!」

梨子「私も梨子って名前がありますしやばい子じゃないです!」

善子「いややばいでしょ…」
346 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:52:03.24 ID:SQcoDrlX0


ダイヤ「…戦う相手は決まりましたか?」


曜「うん、決まったよ」

ダイヤ「なら開始いたしましょうか」

果林「まぁ、そちらが決めた相手と戦えるとは限らないけどね」

にこ「知ってる知ってる、でも銃を使った乱戦が運任せの戦いになるのはあんたらも知ってるはずよ」

にこ「結局は、ここで二対二か一対一に持ってこれればどうでもいいわ」

凛「確かに」

梨子「私は死にかけの二人がいいかなぁ」


曜「いいからとっとと始めようよ!」ドドドドッ!


ダイヤ「おっと」シュッ

曜「あははっ!やっぱり戦うっていいね!胸が躍るよ!」ダッ


曜「ターゲットが変わらないうちに動いた方がいいよ」ボソッ


絵里「!」

絵里(走った直後私に耳打ちをした曜、それを聞いてすぐに私も動いた)
347 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/27(金) 19:53:12.08 ID:SQcoDrlX0


絵里「いくわよ善子!」

善子「ええ!」

凛「えへっ凛の相手はあなたたちだね!」ダッ

梨子「すぐに片付けるよ!」ドドドドッ!


絵里(曜が動き出したと同時にみんなが一斉に動きだした、そうすればさっき決めた通りに対峙し始めて至る所で銃声が鳴り始めた)


タッタッタッ!


凛「にゃにゃにゃにゃー!」

絵里「はやっ…!」

絵里(凄まじい移動速度に驚きたかったけど、そんな驚く暇も与えてくれないほどに相手は速かった。そうしてそれに反応すればたちまち飛んでくる銃弾を躱し、こちらも仕返しに発砲をしようと思ったのだけど、別方向から銃弾が飛んできて反撃が出来なかった)

絵里「くっ…」シュッ

梨子「凛ちゃん!あの金髪が持ってる銃はスコーピオンEVOだよ!あんなのと真正面から対峙したら全弾は避けれないから撃たせない立ち回りをして!」

凛「了解にゃ!」

絵里「ばれてる…」

絵里(流石戦いのプロはスコーピオンEVOの存在を知ってた、だけど持ってるだけで威圧になるというのならこちらとしても好都合、相手が当たらない立ち回りをするというのならこちらは何としてでも発砲して銃弾を当てるだけの話よ)
348 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 19:56:24.74 ID:SQcoDrlX0
梨子「いけっ!」ドドドド

絵里「ふっ」シュッ


凛「せいやっと!」


絵里(梨子が私に向かって発砲したからもちろん私は回避を行った、けど行った直後に凛がすぐそこまで近づいてきてここは発砲ではなく格闘での接近戦を強いられた)


善子「私も忘れないでもらえる?」ドドドド!


凛「ちっ…」シュッ

善子「絵里!今よ!」

絵里「ええ!」バリバリバリ!


梨子「きったない銃声…」

善子「いつ聞いても恐ろしいわね…その銃声…」


凛「きっ…かぁっ…!」

梨子「! 凛ちゃん!」

凛「大丈夫!掠っただけ!」

梨子「ほっ…」

絵里(ブレがすごすぎて狙った位置に行かないのがスコーピオンEVO A1で、三発目辺りで既にサイトのレティクルがあらぶっていた)

絵里(その結果爆音を鳴らして飛び出た銃弾は凛の頬と首をそれぞれ二発ずつ掠めた後に、腰にかけてるマントに数えきれない穴が空けた)
349 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:00:58.72 ID:SQcoDrlX0
凛「そんなことより——」


凛「————お返しにゃ!」ドカッ!


絵里「くっ…」

絵里(仕返しがしたい凛は無数の銃弾を避けた後私へと近づき飛び横蹴りをしてきて、私は反動と銃を構えてたことで回避をすることが出来ず、両腕を使って受け止めた)


善子「はぁっ!」

凛「ほっと!凛も接近戦は得意だよー!」


絵里(私がガードした瞬間すぐに善子が突き蹴りでカバーしてくれたおかげで、凛は私への攻撃をやめて、別方向から飛んできた梨子の放った銃弾も危なげなく躱すことが出来た。もし善子が来てくれなかったら今頃どうなっていたか少し怖くなったわ)
350 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:07:29.07 ID:SQcoDrlX0


善子「これでも食らっときなさい!」ババババッ!

梨子「こっちも見てね堕天使さん!」ドドド!


善子「! よっと、危ないわね」

タッタッタッ!

凛「はいはいこっちも見てね!」パンパンッ!


絵里「二対一にはさせない!」


梨子「だからと言ってその銃は撃たせないよ!」ドドド!

絵里「くっ…」シュッ

絵里(相手の二人の目線が善子に行く中で、私がスコーピオンEVOを凛に構えれば今度は梨子が私に向かって発砲してきた。それを避けながら再び構えれば今度は凛も私に向かって発砲してるし相当私に撃たせたくないのでしょう)
351 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:14:27.74 ID:SQcoDrlX0


善子「どこを見てるの?」


凛「! しまっ…」

絵里(そんな中で善子が凛の後ろを取り銃のストックの部分で頭を殴ろうと両手で振りおろせば豪快ににぶい音がして、銃声が一気にシーンと静まり返った)

凛「かっ……」

善子「らしくないミスね、後ろを取られるなんて」

絵里(善子の打撃は凛の頭にヒットし、凛の頭からは血が出てた。そして当の凛は殴られてからフリーズしたままで、死後硬直とはいってもちょっと不自然だし何か違和感があった)


凛「————ちょっと甘いかなっ!」


善子「何っ!?」

絵里「善子!!」

絵里(時が止まったみたいにフリーズした凛は突然動き出し、振り向くと同時に足払いをして善子を宙に浮かせた)


凛「お返しにゃッ!!」ドカッ!


善子「かはっ…!」

梨子「堕天使さんさよなら!」ドドドドッ

絵里「間に合って!」バリバリバリ!

絵里(そしてそのまま肘打ちを食らって向こうへ吹っ飛ぶ善子へ追撃の発砲を梨子が行った。梨子が銃を構えた時点で私は発砲を察してすぐに梨子に向かって発砲した)
352 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:15:53.22 ID:SQcoDrlX0
凛「梨子ちゃん危ない!」

梨子「分かってるよ!」シュッ


梨子「ぐぎぅ…!!」


タッタッタッ!

絵里「善子!」

善子「くぅ…痛い…」

絵里「大丈夫!?」

善子「あいつ…頭を銃で殴ったっていうのになんで生きてんのよ…」

絵里「………」

絵里(善子は横っ腹を二発貫かれた。当たり所が横っ腹だったから死にはしなかったけどそれでも戦闘には大きく関わってくるものよ)

絵里「動ける?」

善子「……なんとかね、でも激しい動きは無理ね」

絵里「そう…」

絵里(善子を助けるために放った銃弾は梨子の上腕を貫いた、連射速度が速すぎる故に一つの跳躍が絶対に回避出来ないものと化してるからダメージは安易に与えられるものの、やはり狙った場所に銃弾が飛んでくれないのが難点だ)
353 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:17:58.83 ID:SQcoDrlX0
凛「梨子ちゃん大丈夫?」

梨子「うん、平気。でも帰ったら私少し休む…すごい痛いから」

凛「う、うん」

梨子「そんなことよりあの堕天使をやれなかったのがきついかな…凛ちゃんもわざと敵の打撃を食らったんだからあそこは殺らないと…」

凛「ご、ごめん凛があの金髪に撃ってれば…」

梨子「もういいよ、とりあえず今はやるべきことをやるしかないよ」


絵里「…善子、私が前線に行くわ」

善子「ええ、頼んだわ」

絵里(本当なら前衛後衛を臨機応変に変えてくのがいいけど、善子が怪我をしたのなら私が前線を張るしかない。凛に与えた後頭部への打撃や私が放った銃弾で作った梨子の上腕へのダメージなど確かなダメージは与えたものの、善子が横っ腹を撃たれたんじゃあまりいい状況を迎えてるとは言えなかった)
354 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:23:03.34 ID:SQcoDrlX0
絵里「………」


スタスタスタ


絵里(ほんの数秒目を閉じ覚悟を決め、目を見開く頃には足は前へ動いていた)

絵里(一歩一歩を進めば進むほど、段々と足は速くなり気付けば走っていて、銃を構えればすぐにトリガーを引く力が私に宿った)

絵里「はぁっ!」バリバリバリ!


凛「よっとぉ!」シュッ

梨子「ほっと!」シュッ


絵里(お互い両サイド別々の方向へ回避の意味を込め跳躍し、その瞬間に発砲。結果相手の二人は扇状に回避をした為に私へ歯向かう正面からのクロスファイアは危険を伴いながらも前へ突っ走るか強引に横へ跳躍してクロスファイアから逃れるかの二択を生むので、私は迷うことなく強引に横へ跳躍して生き延びることを選んだ)

善子「任せてっ!」バババッ!

絵里(そしてその後も絶え間なく来る追撃は善子にカバーしてもらった)
355 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:26:14.26 ID:SQcoDrlX0
絵里「………」


スタスタスタ


絵里(ほんの数秒目を閉じ覚悟を決め、目を見開く頃には足は前へ動いていた)

絵里(一歩一歩を進めば進むほど、段々と足は速くなり気付けば走っていて、銃を構えればすぐにトリガーを引く力が私に宿った)

絵里「はぁっ!」バリバリバリ!


凛「よっとぉ!」シュッ

梨子「ほっと!」シュッ


絵里(お互い両サイド別々の方向へ回避の意味を込め跳躍し、その瞬間に発砲。結果相手の二人は扇状に回避をした為に私へ歯向かう正面からのクロスファイアは危険を伴いながらも前へ突っ走るか強引に横へ跳躍してクロスファイアから逃れるかの二択を生むので、私は迷うことなく強引に横へ跳躍して生き延びることを選んだ)

善子「任せてっ!」バババッ!

絵里(そしてその後も絶え間なく来る追撃は善子にカバーしてもらった)
356 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:32:29.39 ID:SQcoDrlX0
凛「いった…」

絵里「悪いわね、接近戦は私も得意なの」

凛「ふーん…そっか」

凛「でも、凛はその上をいってるかな!」ダッ

絵里「はっ!」

絵里(私も凛も真正面から走りだせば私の回し蹴りと凛のチョップが交差するようぶつかり合った)


凛「はぁーっ!」


絵里(次に私のお腹へと歯向かう掌底打ち、即座に反応出来た私は凛の手首を右手で掴み、そして引っ張って左手で腰にかけてたマチェットを逆手で引き抜いて横っ腹を斬ろうとした)

凛「いやっ!」ドカッ

絵里「くっ…おとなしくしなさいっ!」


ザクッ


凛「っぁ!?あぁあああッ!!」

絵里(暴れた為に、狙った横っ腹とは別に腿に深い斬撃を入れる形となった。その結果腿から飛び出る綺麗な赤が私の服に染みついた)
357 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:34:29.86 ID:SQcoDrlX0


タッタッタッ!


梨子「よくも凛ちゃんをっ!」

絵里(その頃に梨子がそそくさとやってきて、薙ぎ払うようマチェットを横にふればしゃがみで避け、姿勢の低いままタックルをしてきて私は回避することが出来ず後ろへ吹き飛ばされた)

絵里「いってて…」

善子「危ないっ!」ババババッ

梨子「ちっ……」シュッ

絵里(追撃を許さないと善子のカバーが入り梨子は後ろへ飛び退き銃弾を躱す、この状況——私だけがほぼ無傷で事が進んでいた)


凛「うぅううぅううう…いだい…痛いよぉ…!」

梨子「だ、大丈夫?」

凛「うぅ…」


善子「あいつ…多分戦うのは無理かしらね…」

絵里「感触的に相当奥にまで刃が届いたからね、刃の長さ的に骨にまで届いてもおかしくないわ」

絵里(凛は斬られた腿を必死に押さえて痛みに耐えてた、ただそれを苦しそうと傍観してる私たちはどこにもいない)


絵里(これは正真正銘、殺し合いなんだから)

358 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:37:38.11 ID:SQcoDrlX0


絵里「まぁ今から心臓を撃ち抜くんだけどね!」バリバリバリ!


梨子「凛ちゃん引っ張るよ!」ダッ

凛「…っ……うんッ…」


絵里(私の放った銃弾は凛のお腹に当たったけど、防弾チョッキが働いたようで何ともないようだった)

絵里(ただ、それでも横っ腹や腕を貫く弾丸は凛の中にある赤を噴射させる一方だった)

凛「ああぁあああっ……!!」

梨子「ちっ…このまま逃げてても!」ダッ

絵里「!」

絵里(そして梨子は逃げに徹したのではなく、凛の手を離して攻撃することを選んだ)


凛「っ……梨子ちゃんゴーグルつけて!」ポイッ


梨子「ええ!」

善子「っ!?絵里!スタングレネードよ!」

絵里「なっ…」

絵里(マチェットを再び引き抜いて対峙しようとした間際で上から飛んできたスタングレネード、相手である梨子はこの戦いが始まる前から曜の言ってたつけてた光を抑えて尚且つ射線を見えるようにするゴーグルをつけてて、その結果対峙する直前眩い光が私と梨子の間で爆発した)
359 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:39:25.84 ID:SQcoDrlX0
絵里「…っあぁ!?」

梨子「よくもっ…!」

絵里(両の腕で光を遮ると突然私の左手を両手で掴む梨子————)


梨子「せいやああああっ!」

絵里「あぁっ…!」


絵里(——そして、次の瞬間には私の左腕を引っ張り後ろへ投げつけるように手を放し、私の後頭部目掛けて協力な蹴りを炸裂させた)

絵里「ぐぅ…!」

絵里(鋭い後頭部への痛みと衝撃、そして今もまだ残る眩い光から私のバランス感覚は決壊し、お腹から地面へと倒れた)

絵里「まだ…!」

絵里(だけどいつまでも倒れたままでいられない、意識がある以上は戦うのみ。だから私はすぐに起き上がろうとした)


凛「これは凛の全てを込めたお返しだよッ!!!」


絵里「!!」

絵里(だけど、まだ這いつくばった状態で頭上を見ればボウイナイフを両手に宙を舞う凛の姿)



ドスッ



絵里「…いっ…あっ……」

絵里(そうして私はどうなったんだろう)

絵里(背中を始めとした悪感に絶望を感じた。鋭利で、久々で、声も出ない終末を感じるこの痛み——背中から入った一つの刃は心を掠めて私のお腹を貫いた)
360 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:42:02.97 ID:SQcoDrlX0


絵里「か…は……」

善子「絵里!?絵里!!?」


凛「う…くっ……」

梨子「休んでる暇はないよ!」ドドドド!


善子「ちっ……」シュッ


絵里(口から、お腹から、背中から血を流す私を置いて、戦線は変化を遂げていく。体が動かない…体が冷えていくのを感じる、今まで何回も感じたこの味は本当に不味くて、絶望の味だった)

絵里「まだ……死ね…ない…」

絵里(ずりずり這いずれば、今も刺さってるこの刃物が私の体内で微かに動いて痛みを与えた)

絵里(死っていうのは本当に一瞬で、こうして力なく地面と一緒になる私はもう無力なんだと痛感した。まだやりたいことが出来てないのに、まだ生きていたいという思う気持ちは私のお腹を中心に発生し続ける痛みで相殺されていく)

絵里「千歌…真姫…善子…果南…ことり…曜……」


絵里「……ごめんっ」


絵里(その言葉を最後に、私の意識は闇へと消えた)

361 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:45:22.42 ID:SQcoDrlX0



「ねえ待って」



絵里「!」

絵里(意識は闇に沈んだ、手も足も何もかもの感覚が消えた。それなのに私に問う声は聞こえた)

絵里「誰?」

絵里(声は出せた、だから私も相手に問う)

「忘れたの?私よ?」


えりち「え・り・ち♪」


絵里「………」

えりち「そんな反応しないでよ!」
362 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:47:01.84 ID:SQcoDrlX0
絵里「はぁ…こんな時に何の用?私は死んだのよ?」

えりち「いやまだ死んでない、生きてるわ」

絵里「…でも、体は動かない」

えりち「……あなたはどうしたいの?」


絵里「…勝ちたい」


絵里「鞠莉のところへ直接行って、あんたの作ったアンドロイドはあんた直属の部隊を潰すことも出来るんだよって言って泣き顔を拝んでやりたい…」

えりち「………」

えりち「…無理ね」

絵里「…知ってるわ、でも反旗は翻す為にあるの」

絵里「私たちが差別されない為には、悔しいけど鞠莉にどうにかしてもらうしかないの」

絵里「でもアンドロイドは人間とは違ってランダム性がない、みんながみんな誇り高き何かを持ってる。差別元となってる鞠莉に差別をどうにかしてくださいなんてプライドを捨てる行為するはずがないの、だから実力行使でやるしかないの」

えりち「………」
363 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:49:32.45 ID:SQcoDrlX0
えりち「…この隔離都市を抜け出すって方法もあると私は思うんだけど」

絵里「ええ、それも考えた。けど違うの、私が求めるそれは根本的な解決にはならない」

絵里「謎のカーストがあるのはこの隔離都市だけ、でも私はこの隔離都市が好きなんだと思う」

絵里「ここにはたくさんの仲間がいるんだから」

えりち「……なら、提案があるわ」

絵里「提案?」

えりち「………」


えりち「この戦いだけ、私に体を貸してくれない?」


絵里「…は?」

えりち「どうせこのままでいてもあなたは死ぬ、なら最後の足掻きとして私に体を貸してくれない?私があの戦場に立つわ」

絵里「で、でも体はもう」


えりち「動く」


絵里「!」

えりち「動かすの、動かすしかないの」

えりち「…だから私に、あなたの全てを一度委ねてほしいの」

えりち「それがパーフェクトな選択だから」
364 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:51:13.53 ID:SQcoDrlX0
絵里「……分かった」

絵里「…じゃあ私はどうすればいいの?」

えりち「私が戦場に立ったらあなたは眠りにつく、私とあなたが入れ替わるまでは」

絵里「……そう」


絵里「じゃあおやすみ」


えりち「…ええ、おやすみ」

絵里「すぅ…」

絵里(こんなことしてよかったのかしら)

絵里(でも、これをする以上に私の出来ることはなかったと思う。意識はあっても、感覚は消えて視界は闇に飲まれた、なら何か起こせるもう一人の私に頼るしかなかった、縋るしかなかった)

絵里(でも、この選択が正しいかと言われればどうも開いているはずの口も開かないままでいてしまう。そもそも“もう一人の私”っていう得体の知れないイレギュラーな存在に、私の体を託してもよかったのかしら)

絵里(後から考えればもう私の体は私の元へは帰ってこないのかもしれない、このまま心も体も乗っ取られて私は一生眠りにつくのかも)

絵里「……すぅ」

絵里(そう考えてると段々眠くなってきた。これが最後の眠りにならなければいいけど。そう願って眠る今はちょっと心地が悪かった)
365 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/27(金) 20:56:15.51 ID:SQcoDrlX0
一旦中断、もしかしたら今日はこれで終わりかも。
>>331の凛「その体じゃ躱しながら撃てないよね!だって片方の肩が壊れててグリップの部分が持てないから!」っていうセリフ、片方の肩じゃなくて片手ですね。すいません
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/27(金) 22:36:39.09 ID:JJVh64YGO
覚醒えりちくるー?
367 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/29(日) 21:01:09.20 ID:7iMNu1YO0


絵里「ん……」

絵里「ん…くっ…いってて……」

絵里(どのくらいの時間が経ったんだろう、目覚めと共にやってきたのは頭の奥に針を刺すような激痛と酷い渇感だった)

絵里(起き上がって頭を押さえながら開こうとしない目を擦って目を開けば、ぼやけた視界が段々と形を表していった)

絵里「ここは……家?」

絵里(見覚えのある寝室、外は真っ暗でほんのり光るランプをつけて小さな鏡で自分を映せば頬には無数の切り傷が、手には包帯がグルグル巻き、改めて自分の体を見れば至る所に包帯が巻いてあって戦いの後であることが確認出来た)

絵里「んん…うおっと…」

絵里(ベッドから降りて歩こうとすれば方向感覚が上手いように掴めなくて、足も力が入らない。よれよれでドアノブに手をかければ目眩がして、どうにもこうにもあの戦いの怪我の影響が出ているようだった)
368 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/29(日) 21:02:46.72 ID:7iMNu1YO0
スタスタスタ

果南「……あ、絵里!」

善子「! 絵里!?」ガタッ

ことり「よかった…起きたんだね」

絵里「あはは…おかげ様で…」

曜「絵里さん…よかった……壊れたんじゃないかと思ったよ…」

絵里「壊れたってそんな大げさな…」

善子「…いや、曜の言う通りよ」

果南「まぁまぁこうして絵里が目覚めたんだからいいじゃん」

絵里「…!あの戦い、どうなったの?」

善子「えっ…覚えてないの?」

絵里「ええ」

曜「…やっぱり壊れてるんじゃ」

絵里「…?何の話?」
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