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絵里「例え偽物だとしても」

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1 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:17:47.06 ID:Sjljkzyd0
「助けてください!」

絵里(街中に響く一人の少女の叫び声。しかしその叫び声は虚しく人々の耳を左から右へと突き抜けていき皆揃いも揃って見て見ぬふりをする)

絵里(今日の降水確率は100パーセントで外は当然ながら酷い雨だった、風も酷く吹き荒れていてとても外出出来たものではなかったと思う)

絵里「……あぅ、あ」

絵里(…そして、大都会の大きな横断歩道から成る歩行者天国で倒れる私はどうして倒れているのだろう)

絵里(倒れる私の周りにはこんなにも人がいるというのに、通る人全ては私を心配することもない)

「どうして助けないんですか!?」

絵里(…ただ“珍しい人”もいるみたい)

絵里(誰一人として倒れた私を助けようとしないのに、この人はだけは私を助けようとしていた)

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2 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:19:34.05 ID:Sjljkzyd0
絵里「あなた…っ」

「大丈夫ですか!?今私の家に…!」

絵里(なんで、私を助ける人がいないんだろう)

絵里(そんなの答えは簡単だった)

「F-613…もしかしてあなたは……」

絵里「………」

絵里(私の首元についた数字が今私の前にいるこの人との決定的な違いだった)

絵里「…そうよ」

絵里(じゃあ答え合わせをしましょうか)

絵里(なんで私を助けてくれる人がいないのか、今も数百といる人が皆私を無視する理由、それは……)



絵里(私がアンドロイド――いわば造られた命を宿すロボットだからよ)


3 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:21:11.13 ID:Sjljkzyd0
〜次の日

絵里「…はぁ」

「どうしたの?絵里さん」

絵里「ん…あぁ千歌、いや昨日ちょっとあったのよ」

千歌「何かあったんですか?」

絵里「ちょっとトラブルで体が動かなくなっちゃって…」

千歌「えっ!?大丈夫だったんですか!?」

絵里「ええ、少ししたら動けるようにはなったけどこういうことがあると正直移動が不安なのよね」

絵里(次の日、私は何事もなくオシャレなカフェテリアで溜め息をつく)

絵里(あの後、すぐに私はあそこから去った。助けてくれるのは嬉しかったけど、無様に助けてもらうのはなんだか私のプライドが許せなかった)
4 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:23:02.76 ID:Sjljkzyd0


『——です!私…——って言うんです!だからもし…助けが必要だったら絶対に助けますから!』


絵里「……変な人」

千歌「ん?何がですか?」

絵里「いえ、なんでもないわ」

絵里(それでこの子は千歌、高海千歌という子)

絵里(彼女は私と同じ造られた命を宿すアンドロイドだ、だから彼女の首にもF-083という識別番号が刻まれている)

絵里「あ、またその歌聞いてる」

千歌「えへへ、かよちゃんの歌はすごいんですよ?」

絵里「かよちゃん?」

千歌「知らないんですか?今人気ナンバーワンといっても過言じゃないアイドルですよ!」

絵里「へー」

千歌「もうまさに私の推しアイドル! 絵里さんも直で見たら絶対に心奪われますよ!」

絵里(携帯から流れる“かよちゃん”と呼ばれる人の歌、聞いてると癒される優しい声と元気が出るような明るい曲調になんとなく千歌がはまってしまう理由もわかる気がした)
5 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:24:54.13 ID:Sjljkzyd0
千歌「あ、そういえばその…」

絵里「ん?何かしら?」

千歌「倒れた場所って…」

絵里「あぁ、アキバのど真ん中よ、歩行者天国に埋もれてたわ」

千歌「え、じゃあそれってつまり…」

絵里「……ええ」

絵里(誰も助けてくれなかったのか、千歌はそう言いたいのよね)

絵里(この世界はそうよ、アンドロイドという存在が栄えるとたちまち不思議なカーストが生まれた)

絵里(アンドロイドは人間より下の存在で、しかもある意味でいえば家畜と同等の存在とも言えた)

絵里「…仕方ないのよ、私たちがアンドロイドとして生まれた以上は」

絵里(私たちはアンドロイド、それは造られた命。そしてつまりそれは生命が宿ってると認識されない“モノ”でしかない)

絵里(単なる造り物に思いやる気持ちなんてこの世にはなくて、救済の手を差し伸べるに値しない理不尽さがそこにはあって、例えアンドロイドがどれだけ可愛くても“所詮”アンドロイドである以上人間と同等の立場になることはない)


絵里(だから私はどこで倒れようとも放置されるだけだ)


絵里(そしてそれはこの街だからこその光景だった)


絵里(“アンドロイド隔離都市”であった東京ならではのね…)


6 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:26:14.02 ID:Sjljkzyd0
千歌「私は……」

千歌「…私はそうは思いません」

絵里「……知ってるわ」

絵里(しかし私たちは人として分類される生き物であるのは確たる事実、涎や汗、かさぶたや流血など人間として体の機能は本物と瓜二つ)

絵里(だから外見も、ましてや深層部にいかない程度の内部でさえ人間と同じなのに、どうして私たちは差別されるのだろうか)

絵里(子供だって作れるし、リストカットをすればちゃんと死ぬ。機械としてのトラブルはもちろんあるけど痛みだって感じれるし、病気だってちゃんとある)

絵里(なのに…なのに…!)


絵里(どうして私たちはこんなにも低く見られるのかしら…)

7 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:27:51.64 ID:Sjljkzyd0
「おまたせ」

千歌「ん?あ、真姫ちゃん!」

絵里「こんにちは真姫、随分と遅かったわね」

真姫「ごめんなさいね、授業が長引いたの」

千歌「ううん!全然大丈夫!」

絵里「そう、大変ね」

真姫「まぁね」

絵里(…しかしまぁ例外ももちろんある、この子は真姫。識別番号は――って真姫にはないんだったわ)

絵里(真姫は識別番号がない正真正銘の人間、人間にも私たちロボットを見下すことなく平等な立場で接してくれる人がいる。それが真姫なのよ)

真姫「二人は大丈夫?」

絵里「ええ、まあ」

千歌「えへへ、大丈夫だよ」

絵里(何が大丈夫かって?そんなのアンドロイドだからいじめられたりしてない?っていう隠語なのよ、不幸中の幸いというべきなのかしら、私の顔つきや体はほぼ完璧と言ってもいいほどに整ってた)

絵里(アンドロイドとはいえど顔や体の良し悪しはもちろん存在してて、その中でも私は大当たりを引いたのだと思う)

絵里(だからこそいじめはないし、むしろ学校じゃ憧れの存在だったりする)
8 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:29:29.51 ID:Sjljkzyd0
真姫「そう、ならいいけど」チューチュー

絵里「随分とオシャレなもの持ってきてるじゃない」

真姫「あぁこれ?今話題のジュースショップで買ってきたのよ、オレンジジュース」

千歌「オレンジジュース!?うわー!私も飲みたい!」キラキラ

真姫「……飲む?」

千歌「飲むー!」チューチュー

絵里「あはは…全部飲まないようにね」

千歌「うんうん!」

真姫「ふふふっ」

絵里「ごめんなさいね、私の可愛い可愛い後輩が」

真姫「いいのよ、というか私も…その…絵里の可愛い可愛い後輩のはず…なんだけど?」

絵里「ふふっそうね」クスッ

真姫「笑わないで!」
9 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:31:03.10 ID:Sjljkzyd0
真姫「…というか絵里の食べてるものも随分とオシャレね」

絵里「あぁなんか無性にタンパク質を摂取したくてね、つまりはお肉が食べたかったのよ」

真姫「それでステーキを選んだと」

絵里「そうそう、私このステーキを食べる時のナイフとフォークを使う上品な感じが好きなの」

千歌「えー私はばばっとすぐに食べたいなー」

真姫「千歌はそんな感じよね」クスッ

千歌「あー!今私の事バカにしたでしょー!」

絵里「ふふふっ」クスクス

絵里(学校という場所は外の世界とは違って意外にも快適なの、私を人間と並べて見てくれる人間はたくさんいるし居心地がすごくいい)
10 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:33:07.45 ID:Sjljkzyd0
「あの子、ロボットと仲良くしちゃって…」クスクス

「ただのロボット相手に何を思ってるんだか」

真姫「!」

千歌「!」

絵里「………」

絵里(……ただ、正義がいるなら悪がいるのもまた当然。平等は不平等という言葉と一緒に生まれたのよね、この学校にも私をただのモノとしか見ていない人も少なくはない)

絵里(そして何故か、白羽の矢は私に立つのではなくアンドロイドと関わった真姫が標的になる。アンドロイドがモノという固定概念があるせいか、今度はそんなモノとおしゃべりしてる人間がおかしいと思われるみたい)

絵里(だからこそ、こんなアンドロイドとして生まれた私に腹が立つし、下等な存在だと見下されただけではなく真姫にまで被害が及ぶ理不尽さにも怒り心頭だった)

真姫「いいわよ、気にしないで」

千歌「ご、ごめん」

真姫「だからいいって」

「あら、ごめんなさい。もしかして可愛い可愛いロボットちゃんを傷つけちゃった?」クスクス

真姫「っ…」

絵里(世界にはいるのよ、心無い発言をする人間が)

絵里(そりゃあもちろんそういう人間にも慣性があって、考えがあるのは否定しない)


ダッ


千歌「絵里さん!?」

真姫「何やってるのよ!?」


「っ!どうなっても知らないからっ!」


絵里(…ただ、それを私が受け止められるかはまた別の話だ)

11 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:35:15.33 ID:Sjljkzyd0


バァン!


絵里(響く銃声、銃弾は私たちの後ろのテーブルで火花を散らして床へ落ちてゆく。この世界なんてゴミ溜め同然、既に道徳的退廃を迎えてる世界に救いようなどなくて、つまり私も退廃を迎えてるのよ)

『射線確認。推測距離3メートル、目的へ無傷で到達出来る可能性…』

タッ


『100パーセント』


絵里(彼女の言葉を聞いてる最中にもう体は動き出してた、怒りは私を動かす理由へと変わっていく、ダメだと分かっていてもやはり機械の体は言うことを効かないものなの)

絵里(……ううん、別に、機械の体じゃなくて私は動くのだろうけど)

真姫「絵里!今すぐにでもいいから止まって!」

絵里(地面を蹴って素早い跳躍で相手に近づいていく。それに反応した相手は懐からM1911――――いわば拳銃と聞いて誰もが想像するような外見と性能をした標準的な拳銃を出して私に向けて発砲した)
12 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:36:55.90 ID:Sjljkzyd0
絵里「ふっ!」

絵里(そして私は机を利用して回避する、ここの机は銃弾さえ弾くものだから机を遮蔽物として扱えば拳銃程度怖くもない)

絵里(世の中便利なモノが多いのよね、アンドロイドもそうだし今は科学の力でいくらでも魔法の応用ができる)

絵里(…ただ、ここみたいに拳銃が使いにくいフィールドなら拳銃は便利とは言えないの)

千歌「絵里さんっ!」

タッタッタッ!

「……っ!」

絵里(拳銃は弱点がありフィールドによって強弱が左右される、しかしさっきからずっと持っていたこのナイフはどこのフィールドでも同じ戦果を出し人間相手に私を裏切ることはない)

絵里(回避に専念し散々撃たせてリロードをさせたら後の祭り。机を飛び越え、床を強く蹴って相手との距離を一瞬にして詰めた)


絵里「今ここで死になさい」


絵里(そして姿勢を低くしナイフを片手に相手の喉元に――――)

「……ぁ」

絵里「…これに懲りたら見境も無く人をバカにすることはやめることね」

絵里(――突き付けて警告をした。いくら怒ってるとはいえ殺すなんてそこまで殺戮に飢えてるわけじゃない)

絵里(相手は拳銃を地面に落として戦意喪失しているのを見て私は静かに真姫と千歌のところへ戻った)
13 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:38:00.33 ID:Sjljkzyd0
絵里「ふう」

真姫「絵里…別にそこまでしなくてもよかったのに…」

千歌「そ、そうですよ」

絵里「いいの、今咎めておくべきだと思ったから」

千歌「んあははは…にしてもやっぱり絵里さんはすごいや、あんな動き出来ないよ」

真姫「ホント、見てて惚れ惚れするわ」

絵里「んーあはは、自分でもなんであんな動きが出来るのかよく分からないのよね」

千歌「銃弾を回避する術とか距離を詰める業とかホントにすごい!私もあんなかっこいい動きしたいなぁ…」

真姫「千歌じゃ無理ね」クスッ

千歌「あ、酷い!」
14 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:39:42.70 ID:Sjljkzyd0
絵里「……銃弾を回避する術か」

絵里(この世界では銃火器を持ってる人が普通にいる)

絵里(だからといって全員が持ってるわけではないの、護身用とかそんな軽い感覚で持てるものではなくてちゃんと訓練やらをして資格を持ってる人じゃないと持てないの)

絵里(まぁ警官とかいるじゃない?そういう類の人間なのよ、今みたいに銃を持ってる人間というのは)

絵里(…それと或いは……)

千歌「絵里さんは何かやってたんですか?武術とか」

絵里「んー特にそういうのは」

真姫「じゃあ生まれつきであんな動きが出来たってこと?」

絵里「そうねなのかしら……でも私は標準型のアンドロイドだから戦闘特化の機能は搭載されてないはずなのよね…」

真姫「まぁ確かに…」

絵里(アンドロイドというのは大きく分けて種類が三つある、一つは私や千歌みたいな標準型、つまりは人間として生まれたアンドロイド。これが造られた意図は少子化対策——並んで人口の増加だ、そしていざ戦争などの大きな戦いが起こった時に歩兵として使う貯金でもある)

絵里(二つ目は仕事などをする業務用アンドロイド、これに関して言えばこれはアンドロイドというよりかは単なるロボットでしかない。これは同じロボットの私からしてもそれ以上のない発展性の無いモノだ)

絵里(何故ならそのアンドロイドは人であるのは変わりないけど、頭の中にあることは全てその仕事に関することだから。自己学習機能は搭載されてはいるけど自立型ではない為に仕事だけをこなすちょっと可哀想なロボットね)

絵里(そして三つ目、それは――――)
15 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:40:58.91 ID:Sjljkzyd0
「面白いことしてるね」

千歌「あ、果南ちゃん!」

果南「ふふふっ相変わらず絵里の動きは凄まじいね」

絵里「果南…見てたの?」

果南「そりゃあ戦いの匂いでやってくるのが私だから♪」

絵里「…そうだったわね」

絵里(三つ目、それは戦うことに特化した戦闘型アンドロイドで、今私の目の前にいる果南がそれに該当する)

絵里(このアンドロイドは運動神経や頭の良さなどの能力値が高く、またほとんどの戦闘型アンドロイドが親を必要としない自立型である為に学習能力が非常に高い。そして私たち標準型と比べて耳が良い為物音に敏感で、銃声や剣撃の音などに反応してやってくる平和を守るヒーロー兼バーサーカーのようなアンドロイドね)
16 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:42:33.78 ID:Sjljkzyd0
真姫「それであんたは何しに来たの?」

果南「あんた呼ばわりは納得いかないけどまぁいっか、別に何かしに来たわけじゃないよ、銃声がしたからやってきたけどもう解決してたみたいだし」

絵里「ごめんなさいね、果南の大好きなバトルを奪っちゃって」

果南「あはは、全然いいよ」

千歌「今お昼食べてたんだけど果南ちゃんもどう?」

果南「うんっじゃあご一緒させてもらおうかな」

絵里(基本的に街にいるのは標準型のアンドロイドなんだけど、たまに混ざってるの、戦闘型アンドロイドがね)

絵里(戦闘型アンドロイドは元より戦闘をする為に生まれたアンドロイドだから、人生において必ず自己防衛について努める時期があるの、そこでほとんどの戦闘型アンドロイドは“自分だけの武器”を確立させるの)

絵里(だからこの都市で銃火器を持ってるのは警官の類だけではなく)


絵里(戦闘型アンドロイドも銃火器を持っているの)

17 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:44:01.92 ID:Sjljkzyd0
千歌「んー!ここの料理はやっぱりおいしい!」

絵里「あ、それ私のお肉!」

千歌「えへへ、なんかもう見てたら手が動いてて…」

果南「ご飯くらい自分で頼もうよ」アハハ

真姫「ホントね…」

千歌「えへへっ」

絵里(…と、まぁいざこざあっても何事もなかったかのように時は動き出す。銃声が響けば悲鳴の一つ二つはもちろんあるけど、見慣れてる人もいるくらいには危ない場所でもある)

絵里(私は気性が荒いもので怒り任せに戦いを仕掛けることはよくあるけど、私は他のアンドロイドと比べてかなり性能が良かったみたいで思ったように動けてる)

絵里(それ故か、私は本当に学校じゃ有名なの。それはいい意味でも悪い意味でも)
18 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:45:05.68 ID:Sjljkzyd0
果南「こうして絵里ファンクラブの一ページが刻まれたわけだね」

絵里「か、からかわないでっ」

千歌「そりゃああんな絵里さんみたいな美人があんなかっこいい動きしたらファンも出来ますって!」

真姫「まぁ…ね」

絵里「別にファンを作りたくてあんなことしてるわけじゃないんだけどね」アハハ

絵里(まぁ、こんなことしててファンが増える一方なのはある意味でいえば平和な証拠なのかもしれない)

絵里(しかし色んな意味で変わった世の中よね、何かある度に私はそう思うばかりだわ)



スタスタスタ

「絵里」

絵里「!」

絵里「善子…どうしたの?」

絵里(お昼休みが終わり教室へと戻る際、見知った顔から声をかけられた)
19 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:46:01.88 ID:Sjljkzyd0
善子「見た?あいつのこと」

絵里「……ええ、見たわ」

善子「…どう思った?」

絵里「もう知らないわ、あんなやつ」

善子「それ、本気で言ってる?」

絵里「触らぬ神に祟りなしって言うでしょ?無視が一番なのよ」

善子「…私はそうは思わない」

絵里「……知ってる」

絵里(こんなやりとりをさっきもやった気がする、アンドロイド同士の話はどうもいつも暗くて重い)

善子「私は戦闘型アンドロイド、だけど戦う事に意味があるとは思えないの」

善子「戦いは戦った分の傷を生み、罪を作る。私はそれが嫌いなの」

絵里「………」

善子「でも、正直今は人々が戦う意味も理由も分かる気がする。戦って変わるものがあるのなら、傷も罪も増えようとも戦うことを厭わない私になれる気がする」

絵里「………」

絵里(この子が何を言ってるのか理解出来てない人がほとんどだろう、当然よ。だって理解出来るのはアンドロイドだけだもの)

絵里(人間にも個人的に嫌いだとかで出来る敵がいるけど、アンドロイドにも同じように敵がいるのよ)
20 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:48:13.00 ID:Sjljkzyd0
絵里「…じゃあ何?善子は」


絵里「小原鞠莉と殺し合いでもするの?」


善子「………」

絵里「勝ち目なんてないわよ、それを一番分かってるのは戦闘型アンドロイドである善子のはずだけど」

絵里(小原鞠莉――――それは私たちアンドロイドを造った生みの親、つまり私たちの母と言ってもいい人)

絵里(…まぁ母とはいっても私と鞠莉は“ある意味”同年齢、しかも通ってる学校まで同じの案外身近な存在だったりする)

絵里(しかしそれは返ってマイナスな事でしかなかった、何故ならそれは……)

善子「…ならどうしろっていうの!?」


善子「あんなやつ生かしておけるわけないじゃない!?」


善子「私たちを作ったくせに私たちが低く見られる原因を作ったのがあいつだなんて、それだけでも憎いのに今でも低く見られる原因を作り続けてるのは何!?なんで私たちを生んだの!?」

絵里「……所詮造られた命なのよ、むしろ今こうやって自由の場を設けてもらってるだけでも感謝すべきなのかもしれないわ」

善子「…堕天使って何なのよ、私の頭にインプットされてるこの堕天使っていう記憶は何なのよ……」

絵里「………」

絵里(鞠莉は私たちを道具として造った、それ故か鞠莉は私たちの事を道具と公言し続ける一方で、それなら私たちに心を与えなければよかったのにわざわざ心を与える鞠莉の残忍さは多くのアンドロイドを敵に回す原因となっている)

絵里(しかし鞠莉は弱冠12歳にしてアンドロイドを作り上げた天才、そんな鞠莉を殺すには警備が厚く鞠莉自身も戦闘経験が豊富という噂から反旗を翻すアンドロイドはほとんどいない)

絵里(だから私たちはずっといじめに似た何かを受けながら生活していくのかもしれない)
21 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:49:16.51 ID:Sjljkzyd0
絵里「仮に叛逆するにしても、今はまだ早いと思うの」

絵里「だからもうちょっと穏やかに行きましょう?」

善子「……怖いだけのくせに!」ダッ

絵里「あ、ちょっと!」

絵里(この事をあまり大事にはしたくない、だからなだらかに話を収めようしたけど善子は私に心に刺さる銃弾のようなものを放って走り去っていった)

絵里「…別に怖くなんかないもん」

絵里(怖くないっていったウソになるけど、私にだって覚悟や考えはある)


絵里(だけどそれが銃弾に変わるのはいつなのかしら)

22 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:50:44.11 ID:Sjljkzyd0
〜家

絵里「…はぁ」

絵里(今日も悪い意味で濃い一日だった)

絵里(私の周りで何か起きては毎日何かについて考えさせられる、今日考えたのは小原鞠莉の事とアンドロイドの存在意義)

絵里「……むー」

絵里(でも、そんなことを考えて気分がよくなるはずもなくベッドの枕に顔を埋めて頭を真っ白にさせた)

絵里(今日の事を振り返ればこの世界のことが分からない人でも多少は理解してもらえるんじゃないかしら、人間とアンドロイドが歪な形を成して共存する世界で、物騒な世界。ただそれだけの世界)


絵里(こんなどうしようもない世界で私は生きていく)


絵里(ここで必要なのは物理的強さなんじゃなくて、相手を理解する気持ちと非情を受け止める気持ち。心を広く持っていかないと多分精神はすぐに壊れちゃうから)
23 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:51:58.63 ID:Sjljkzyd0
トントン

「お姉ちゃーん、ご飯だよー」

絵里「あ、はーい。今いくわね」

「はーい」

絵里(扉の外から聞こえる心地の良い声、その声の正体は紛れもない私の妹――――)

ガチャッ

絵里「あ、待って」


絵里「亜里沙」


亜里沙「ん?どうしたの?」

ギュッ

絵里「…やっぱり亜里沙は抱き心地最高ね、ハラショーよ」

絵里(亜里沙は私の妹として造られた識別番号A-0613の戦闘型アンドロイドで、この退廃的世界の癒しでもある)

亜里沙「お姉ちゃん…また何かあったの?」

絵里「ううん何もないわ、ちょっと亜里沙に抱き着きたくなっただけ」

絵里(ご飯を作ってくれたりお風呂を沸かしてくれたりですごく出来る自慢の妹なんだけど、中学三年生ということもあって純粋でまだまだ可愛いお年頃だから私が守っていかないといけない)

絵里(だから日々、理不尽なことが起こったとしても亜里沙がいるから生きていられるといっても過言じゃないの)
24 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:53:30.33 ID:Sjljkzyd0
亜里沙「そっか、まぁとりあえずご飯出来てるからいこう?」

絵里「ええ、そうね」

絵里(亜里沙は可愛いし、千歌は元気をくれるし、真姫はいい相談相手になってくれたりで充実してるところはたくさんあるけどやっぱり明日という日は憂鬱で仕方がない)

絵里(もし武力で世界を変えられるというのなら、今頃はどういう世界になってたのかしら)

絵里(人間とアンドロイドが気持ち的な意味で上下が無くなったとしても、立場上アンドロイドは人間の手中にあることを否めない)

絵里(死は救済ってよく言うけど、今の私にはそれがよく分からない。例えこんなゴミ溜めの世界だとしてもそこは分からないままで、もし答えが見つかるというのなら今すぐにでも私の胸を撃ち抜いてほしい)


絵里(見つかるのなら、だけどね…)




ザワザワザワザワ

絵里「…何?」

絵里(憂鬱であった次の日、それは登校してる最中の時で特に意識せずとも人だかりが目に留まって私も通行人と同じよう足を止めた)

絵里「ちょっとすいません、すいませんどいてください」

絵里(みんなが注目するものが気になるのは心を持つ者の性よね、人混みをくぐりぬけてその中心部に辿り着けばすぐに人混みの答えは現れた)
25 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:55:29.52 ID:Sjljkzyd0
「ふふふっ人間のクセに生意気だね♪あなた」

絵里「なにあれ…」

絵里(見えるのは私と同じ女子高校くらいの女の子がスーツを着た中年男性の顔を踏み潰してるところ、どういう経緯でああなったのかは分からないけど傍から見て普通ではなかった)

絵里(地面に血が浸蝕してるのを見て殴ったり蹴ったりしたんだなっていうのが容易に想像できる、しかし何故こういう事態になったかはよく分からない)

「ほらほらっ♪これが欲しかったんでしょ?」

絵里「っ!何をやってるの!やめなさい!」ダッ

絵里(顔を踏みつける足の力が強くなったのを確認してすぐ行動を起こした、若干人の影に隠れながら見てたけど“行かなきゃ”と思った瞬間には目の前の人なんか気にする暇もなく押しのけ今も顔を踏みつけている彼女の元へ向かった)

「ん?あ、はぁ…♪私に挑んでくる人がいるなんて…♪」

絵里(ただ、向かっただけじゃない。彼女の暴力的行為を止めるべく格闘術で止めようとした)
26 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 17:58:10.83 ID:Sjljkzyd0
タッタッタッ!

絵里「はぁっ!」

絵里(接近するスピードはおそらく最速、姿勢を低くして彼女のお腹に掌底を打ち込もうとした)


「ふっ」

絵里「っ!」


絵里(だけどどういうわけか彼女はお腹に掌底が打ち込まれるギリギリで反応をし、私の手首を掴んで見事に止めてみせた)


「強くてごめんねっ!」

絵里「まずっ…!」


絵里(掴まれた私は一方的な展開を迎えることを強いられた。強く手首を引っ張られ仕返しと言わんばかりに私のお腹に彼女の跳び膝蹴りがヒット)


絵里「がっ…!」

「ふふふっ今のは加減間違えちゃったかも〜ごめんね?」

絵里「っあ……くそ…っ」

「汚い言葉使っちゃダメだよ?女の子なんだから♪」

絵里「別に使ったつもりはないわ…っ、とにかくその男の人を踏みつけるのをやめなさい」

絵里(膝蹴りをされた私は後方へと吹っ飛び地面に叩きつけられる、この時の痛さといったらアンドロイド特有のもので吹き飛ばされた後すぐに起き上がることは出来たけど、常人の蹴りが人を吹っ飛ばせるわけもなく……)


絵里「…戦闘型アンドロイド」


「あれ?今更気付いたの?てっきり気付いて挑んできてくれたと思ったんだけど」

絵里「……ごめんなさいね、敵も把握できないようなバカで」

「あははっそんなこと言ってないよぉ」
27 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:02:11.16 ID:Sjljkzyd0
「…それでどうする?まだやる?お腹痛かったら帰ってもいいよ?」

絵里「…いいや、やりましょうか」

絵里「負けたままじゃ終われないからね」

「…あはっ面白いこと言うんだね、あなた」

絵里「何か変なことでもいったかしら?」

「私に勝つなんて無理だよぉ、第一あなたは標準型だよ?標準型が戦闘型に勝つのは別にありえないことじゃないけど、標準型が私相手に勝つのは無理かなぁ」

絵里「…やってみなきゃわからないでしょ」

「うんうんっでもやっても結果は変わらないと思うけどね」

絵里「…どうかしらねっ!」ダッ

絵里(相手である彼女に向かって突っ走った、そうして蹴りが届く位置にまでいけばすかさず回し蹴りを頭狙いで炸裂させた)

「甘いかな」

絵里(そして彼女はそれを片腕でガード、威力はそこそこあったはずなんだけどそれを軽々しくガードしてるのを見るに余裕なんだなと思う)

絵里「ふっ、せやあッ!」

絵里(しかし受け止めるのは予想済み、受け止められたのを確認して私はすぐにもう片方の足を使って後ろ回し蹴りをした)

「うっ、くっ…!」

絵里(これに対して彼女は腕をクロスさせてガードしたけど、流石に私の蹴りもやわなものじゃないから余裕で受け止めるのは無理なようで、その証拠に顔は少し力んでた)

絵里(また、そんな私の攻撃を受けて流石に遊んでられないと感じたのか彼女は凄まじくキレのよい中国拳法のような肘打ちから体を逆さに横回転させてもう一回肘打ち、そして空中で回し蹴りと格闘ゲームのコンボのような連続攻撃をしてきて、それに対して私は受け流すことを選んだけど、素早い行動故にことりの連続攻撃から離れるのは無理だった)


「これでっ!」

絵里「っ!?」


絵里(そして今までのまだ序の口、彼女の着てるカーディガンの裏から出てきたのは不思議な形をした拳銃で、何はともあれあんなのを直で食らえば死んだも同然だった)


「しんじゃえっ!」

絵里「まだっ…!」


絵里(向けられた銃口の方向から外れる為回避をしようとしたけど、私の瞳があの銃口から放たれる弾を避けられる確率を3%と示していた)


絵里「なんで…!?」


絵里(拳銃を手に持って構えるまでの時間はおよそ二秒、その間で私は射線から外れたというのに何故私の瞳は死を悟ってるのだろう)
28 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:04:43.56 ID:Sjljkzyd0


「ふっ…照準型には今見えてる光景の意味が分からないだろうねっ!」



果南「諦めるにはまだ早いんじゃないかな?」



「!」

絵里「!」

絵里(次の瞬間に聞こえてきたのは果南の声――――ではなくて銃声が先だった)

絵里(銃声がした瞬間、私の目の前では火花を散らせて相手の持っていた拳銃が吹っ飛んだ)

絵里(銃弾の飛んできた方向を見れば拳銃を片手で構える果南の姿があって、そこで初めて果南が相手の持つ拳銃を狙撃したことを理解した)


果南「戦いの音がするから来てみれば絵里がいるなんて」

果南「それに……」


果南「あの南ことりまでいるなんてね」


絵里「南ことり…?」

ことり「へー私の事知ってるんだね」

果南「そりゃあ戦闘型アンドロイドなら知らない方が珍しいくらいだからね」

ことり「ふーん…あなたも戦闘型アンドロイドなんだ」

果南「随分と殺意の高いモノを持ってるんだね、その拳銃」

ことり「私のお気に入り♪」

果南「趣味悪いね…」
29 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:08:44.77 ID:Sjljkzyd0
絵里「果南、こいつは…」

果南「南ことり、識別番号はA-82のかなり初期に造られた戦闘型アンドロイドだね」

絵里「初期型…!」

ことり「多分設定上あなたたちより年下だけど、戦闘経験はあなたたちの倍はあるかなぁ」

果南「そうだね、ことりの持ってるその銃はタウルス・ジャッジっていう拳銃で、トリガーを引くと散弾が出るんだ。だから絵里は回避がほぼ不可能だった」

絵里「そういうこと…」

果南「後、さっき見た感じあなた中国拳法知ってるでしょ?それに指の形までそれぞれちゃんと決まっててほぼ完璧と言ってもいい身のこなし」

ことり「あはっよく見てるんだね」


果南「私、眼がいいって言われてるから」


ことり「そっかぁ、それであなたたちは私を――――んん、ことりをどうしたいの?」

絵里「…なんで一人称は変えたの?」

ことり「えへっだってそれはぁ…」


ことり「モードの切り替えの為だからだよっ!!」ドドドド


絵里「なっ…!」

果南「させるかっ!」

絵里(ことりが喋りだした瞬間、背中にかけてあったアサルトライフルで私たちに発砲してきた。アンドロイドだから可能であった反射神経で初弾と二発目を回避したところで果南がことりへ向かって発砲した)

ことり「はっ」

絵里(ことりはそれに対して地面を蹴り、右側へ跳躍して回避を行いながら再び発砲をして攻撃に転じた)

果南「遮蔽物を上手く使って!」

絵里「分かってる!」

絵里(その一瞬で私たちは木やらイスやらを使ってなんとか回避する、もう野次を飛ばしていた通行人も周りにはいない。私たち三人だけのフィールドになった)
30 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:11:22.18 ID:Sjljkzyd0
ことり「ちっ…こんな時に…!」

果南「絵里!今のうちに逃げよう!」

絵里「言われなくても!」


ことり「させない!」ブンッ!


絵里(弾の切れ目が命の切れ目とはよく言ったもの、ことりがリロードをするタイミングで私たちはことりから見た死角へと走り出したけど、そんな逃げる私たちを逃さないとことりはナイフを投げつけてきた)

果南「はっ!」


カンッ!


絵里「や、やるわね…」

果南「ふふふ、私拳銃は使えないけどこの拳銃だけは扱えるんだよね」

絵里(そんな投げナイフに向かって果南は発砲し、見事にヒット。ナイフは別方向へ吹っ飛んでいった)

ことり「なにあの子…!」


絵里「とりあえず一安心ね…」

果南「そんなわけないじゃん、ことりは執念深いって聞くから追ってくるよ」

絵里「えっじゃあ逃げないと」

果南「はい、これ」

絵里「えっ…なにこれ」

果南「デザートイーグルだよ、私が唯一使える拳銃」

絵里「これを私に渡して何のつもり?」


ことり「そこに隠れてるのは分かってるよー」


果南「逃げるのは絵里だけだよ、私はことりと戦う」

果南「もしことりや他の誰かに襲われたらその拳銃を使ってよ、でも反動が大きいから連射すると肩外れるよ」
31 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:14:50.75 ID:Sjljkzyd0
絵里「いや、果南が残るなら私も残るわ。あいつに恨みはないけど私だけ逃げるなんてそんなのやだわ」

果南「ダメ」

絵里「いや私もダ」


果南「絵里は逃げてッ!!」


絵里「!?」

果南「ことりは強い、私の眼がそう言ってる」

絵里「舐めないで、私だって戦闘に自信はあるわ」

果南「生半可な戦闘経験は死を生むだけだよ、とにかく逃げて」

絵里「イヤよ、このまま逃げてカッコ悪いままなんかより果敢に挑んでカッコよく死んだ方が私はマシ」

絵里(何回も逃げろと警告はされたけど私だけ逃げるなんてそんなのは私のプライドが許さない、元はといえば自分から売った喧嘩を人になんか任せたくない)

果南「そっか」

絵里「…?ええ」

絵里(しかし果南は突然何かを悟ったような態度をし始めて淡々と鞄に入ってた銃を取り出した)


果南「ふんっ!」

絵里「かっ…ぁ…!?」


絵里(そして次の瞬間、果南は長めの銃――おそらくアサルトライフルであろう銃を使って私のお腹を殴ってきた)

絵里「な…んで…!?」

果南「ことりと戦ったらどうせ傷は出来る、なら今私が代わりに傷を与えとくからここで寝ときなよ」


果南「絵里は今戦うべきじゃない」


絵里「ふざ…っけ…かはっ…な……い…でっ」

果南「じゃあね」

スタスタスタ

絵里「ま…て」

絵里(突然の裏切りと言ってもいいほどに唐突で、果南の銃を使った打撃は激痛を通り越して死に至る痛みでもあった。銃という名の鈍器を使ったからね、横になっても目を瞑っても痛みは消えなかった)

絵里「…ぁ…なん」

絵里(諦めきれない思いと、果南への怒りが痛みを超えて私の意識を覚醒させてくる)

絵里(だけどすぐに視界は真っ暗になった。次の瞬間には意識も無かったかしら、流石戦闘型アンドロイドはパワーが強すぎた)


絵里(私はことりと戦う前に、果南に敗北した)

32 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:16:53.01 ID:Sjljkzyd0


「ねえ、起きてる?」


絵里「ん……」

絵里(私が倒れてどのくらいが経ったのかしら、今私がどこにいるのかも、どういう体勢を取ってるのかも、目を開けてるのか開けてないのかすら分からないけど声が聞こえた)

絵里「誰?」

絵里(生きてる心地さえしてないけど、声は出せた。今私の中の世界にあるのは声という音だけだった)

「気付いたら私もここにいたの」

絵里「…?どういうこと?」

「アンドロイドの異常なのかしら」


「私はあなたの心の中で生まれたもう一人のあなた…と言えばいいかしら?」


絵里「…は?」

「私もよく分からないのよ、でも私はあなた、あなたは私…それだけは分かるの」

絵里「………」

絵里(何なのかしらこれは、言ってることはとにかく意味不明、だけど聞こえてくる声は紛れもない私の声だった)
33 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:18:41.47 ID:Sjljkzyd0
「今あなたは意識を失ってる状態にある、だからあなたは私と会話が出来るの」

絵里「ちょっと待って、なんで私の状態が分かるの?」

「それは私があなただからよ、システムの異常であなたのデータにいる私と考えて」

絵里「えぇ…」


えりち「…後、あなたも私もいっちゃえば絵里だし私はえりちってことでどう?」


絵里「え、えりち?」

えりち「ええ、可愛い名前でしょ?これで私とあなたの差別化が出来るじゃない」フフフッ

絵里「そ、そうね…」

絵里(もし仮にこの相手が私だとしたら、“えりち”ってネーミングセンスには絶望しそうになる。私ってこんな人なのかしら…)

絵里「それでそんな私が何の用?」

えりち「別に用はないわよ、というかさっき私という自分がいることに気付いたんだから用もへちまもないわよ」

絵里「…そうね」

えりち「とりあえずあなたの中に私がいるってこと、覚えておいてね。またあなたが意識を失った時は多分逢うと思う」

絵里「……気持ち悪い」

えりち「やめてよ、相手は私なのよ?」

絵里「相手が私だからこそよ…」

絵里(絵里、という私はこういう人物なのかと少し考えさせられた。しかし相手が私でも私ではない――何を言ってるのか分からないと思うけど言ってることは間違ってないはず)

絵里(まぁ、何はともあれこの相手の事が理解出来たとしても“えりち”っていうネーミングセンスだけは納得いかない)
34 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:20:20.46 ID:Sjljkzyd0
絵里「…!なんか視界が段々明るくなってる…?」

えりち「意識が戻ってるのよ、絵里の状態も異常から正常に戻ってる。だからここで私とは一時のお別れね、次いつ逢うのかは分からないけど」

絵里「そう…よく分からないけどありがとう」

えりち「いいわよ、また逢った時はたくさんお話しましょう」

絵里「…余裕があったらね」

えりち「了解よ♪」

絵里「………」

絵里(機嫌が良さそうな私の声を聞くのは何とも複雑な気持ち、目の前が真っ白になった自覚を持つとようやく体の感覚が戻ってきた)

絵里「…ん、く…」

千歌「絵里さんっ!」ギューッ

絵里「わっ」

絵里(目がやっと半分開いた頃、突然として包容は私を弄ぶ)

絵里(目が覚めたらここはどこ?周りを見渡す限りそれは見慣れた保健室だった)

真姫「よかった…絵里が運ばれたなんて聞いてビックリしたわよ」

絵里「あぁ…いや…」

絵里(果南にやられた、と言おうとしたけどよくよく考えれば果南のことをいって面倒な事になっても困るし喉にまで上がった言葉をギリギリで止めた)
35 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:22:12.69 ID:Sjljkzyd0
絵里「私はなんでここに?」

真姫「対アンドロイド特殊部隊の一人が近くにいたみたいで、その人が絵里をここまで運んできたのよ」

絵里「対アンドロイド特殊部隊?そんなのがあるの?」

真姫「ええ、あるらしいわ」

絵里「へえ…」

絵里「その人は今どこに?」

真姫「もう帰っちゃったわ、仕事があるとかで」

絵里「そ、そう」

絵里(そんな部隊があるのね、と不思議に思ったけどそりゃあアンドロイドに対抗する手段はいくつも必要よね、しかしどういう人がいるのかしら、対アンドロイド特殊部隊って)

絵里「…!果南は!?」

真姫「…病院に送られたわ」

絵里「どうして!?」

千歌「…撃たれた」

絵里「ど、どこを?」

真姫「肩を撃たれたらしいわ、死には至らなかったけどそれでもダメージは大きいと思う」

絵里「肩か…」

絵里(果南が負けるなんて私にとっては信じられなかった)

絵里(果南は私の周りにいる人物の中なら間違いなく最強だった、しかしそんな最強は私が思ってる以上に案外脆い最強だったのかもしれない)
36 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:25:40.45 ID:Sjljkzyd0
真姫「…でも、果南はいい方よ」

絵里「どういうこと?」

真姫「問題は果南と戦ってた相手よ、相手は左肩、左足、右の横っ腹…」


真姫「そして胸を撃ち抜かれた」


絵里「…!それって…!」

真姫「…ええ、果南が撃ち抜いたんでしょうね」

真姫「胸を貫いても相手はアンドロイドらしいから死にはしないけど、損傷はかなりのものよ」

絵里「胸は私たちアンドロイドの心を保管する大切な場所だもの…それが欠けつつあるということは…」

真姫「果南の相手をしたアンドロイド…感情に乏しい部分が出てくるかもしれないわね」

絵里「………」

絵里(戦いで失うモノはたくさんある)

絵里(一番多く減るのは命――でも、大体それは人間が絡むことが多い)

絵里(人間同士が戦えば失われるものは命だけど、アンドロイド同士が戦えば話はまた変わってくる)

絵里(アンドロイドも人間と同じで、命はたった一つしかないの)


絵里(だけど、アンドロイドの命は人間の命より繊細なのよ)


絵里(人間みたいに命と心が同義ではないので胸を撃たれても死なない、心臓は存在してないから)
37 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:27:34.91 ID:Sjljkzyd0
絵里(…いや、心臓はある。だけどそれは心臓とは言わないの、記憶保存領域である頭を撃ち抜けば私たちは死ぬ)


絵里(ただ待って、私たちはその死でさえ人間とは意味が違う)


絵里(死ぬのは私たちの記憶と意識、体は直せばまた動くでしょう。でも再度動いたところで私たちはそこにはいない、もう別の誰かが私たちの体に住み着いてるだろうから)

絵里(だから今回みたいに感情を保存する心が欠ければそれは修復不可能になる、今回の戦いで南ことりは確実に何かを失った)

絵里(それは何なのか、いずれにせよ人間なんかより失うモノはアンドロイドの方が断然多いの)


絵里(銃弾で物語を語るのなら、酸いも甘いも最後は惨劇でしかない)


絵里(何故なら戦って手に入れたものがあったとしても、失ったものの数に勝ることはないからよ)
38 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:29:47.21 ID:Sjljkzyd0
千歌「…近々果南ちゃんのお見舞いにいこっか」

絵里「……行っても平気なの?」

真姫「大丈夫よ、私の病院だし」

絵里「そう…なら近々行きましょうか」

真姫「ええ」

絵里(保健室の空気は重かった、理由のない戦いに意味などない――今回の戦いで得たものがないというに果南は何の為に戦ったのだろう。あの状況なら逃げてもよかったのに、私にはよく分からない)



スタスタスタ

絵里「……はぁ」

絵里(私の傷は果南やことりと比べれば浅すぎるものだった、故に私は目が覚めてからは普通に授業を受けることにした。真姫や千歌には何度もやめろって言われたけど、別に問題ないしやるって言って押し通した)


「南ことりと戦ったそうね」


絵里「!」

絵里(そうして廊下は歩く最中、後ろから忌々しい声が聞こえた)

絵里「……ええ、そうよ」

「ことりは手強かったでしょうに、戦闘型アンドロイドの中でも特にActiveなやつだからね、ことりって」

絵里「…そんなことはどうでもいいわ、それよりあなたが何の用?」


絵里「小原鞠莉」


鞠莉「ふふふっことりとbattleしたのに随分と余裕そうね、傷が一つもない」

絵里「私は果南に気絶させられた、それだけの話よ」

鞠莉「そう」
39 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:33:01.29 ID:Sjljkzyd0
絵里「………」

スタスタスタ

絵里(こんなやつとなんか話しても時間の無駄、声を聞くだけでも頭がおかしくなりそうだわ)

鞠莉「wait!もちろん用無しで来たわけじゃないわ」

絵里「…何?」

鞠莉「はい、これ」

絵里「…何、これ?」

絵里(突然近づいて懐から出したのは一つの拳銃、それを私に渡してきた)


鞠莉「PR-15って言うの、私なりにCustomizeしといたから是非使って」


絵里「…何のつもり?」

絵里(こんなやつから貰い物があるなんてそこだけでも疑う理由はあったけど、鞠莉の警戒の無さが一番ひっかかった)

絵里(鞠莉の心拍数は通常と全然変わってないし無理矢理渡されてから拳銃をまじまじと見れば弾が既に入ってる。それなのに鞠莉はニコニコとしてる)

鞠莉「あなたにも武器は必要でしょ?今回みたいにことりと戦うなんてことになった時、銃が無ければ負けはほぼ確実よ、それを一番分かってるのは今日ことりと戦ったあなたでしょう?」

絵里「………」

鞠莉「とりあえずそれは貰って。別に捨ててもいいわよ、あなたの為に作った物を今更返されてもどの道ゴミ箱行きだから」

鞠莉「それじゃあね」

スタスタスタ

絵里「………」

絵里(返す言葉が無かった、それは鞠莉の言うことが正論でもあって、今の鞠莉相手に何を言っていいのかがよく分からない)
40 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:34:14.40 ID:Sjljkzyd0
絵里「PR-15…」

絵里(鞠莉なりにカスタマイズした、と言っていたが確かにみんなの持ってる拳銃とちょっと違うところがある。具体的どこが違うのかと言われれば言葉は詰まるけど、一つ私でも言えることがあるなら拳銃のくせにサイトがあることかしら)

絵里(みんなサイト無しの拳銃を使ってるせいかすごくカッコよく見えたのがとても悔しい)

絵里「……仕方ないわね」

絵里(捨てるにしてもとりあえず今は持っておくことにする、なんであんなやつが私に武器を渡したんだろう)

絵里(しかもご丁寧にカスタマイズまでして何が目的なのかしら…)
41 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:36:52.51 ID:Sjljkzyd0
〜放課後、図書室

真姫「ふーん…あの鞠莉がねぇ」

絵里「どう思う?」

真姫「どう考えても怪しいでしょ、第一なんで今になってそのハンドガンを渡すのよ」

絵里「それが分からないから聞いてるじゃない…」

真姫「私にだって分からないわよ、そんなの」

絵里(時刻は放課後、鞠莉のあの行動にもどかしさを感じる私はあまり人のいない図書室で真姫と話をしてた)

真姫「というかハンドガンってどんなものを貰ったの?」

絵里「これよ、PR-15って言うらしいわ」

真姫「へぇ…いい趣味してるのね、鞠莉って」

絵里「冗談でもあいつを褒めないでよ…」

真姫「ご、ごめんなさい。でも私もこういうスタイリッシュな銃が好きなの」

真姫「茶色を含まないシックな感じがたまらないわ」

絵里「ふーん…」
42 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:39:28.99 ID:Sjljkzyd0
真姫「でも、性能は良さそうね。生意気にサイトまでつけちゃって」


「ずら〜!?」


絵里「っ!?」ピクッ

真姫「!」

絵里(真姫に鞠莉から貰った拳銃を見てもらってたら突然真姫の手元から拳銃が消えた)

「この銃すごいずらー!」

絵里「ちょ、ちょっとそれ奪わないで」

「あ、ごめんなさい…ついこの拳銃が目に留まって…」

絵里「別に良いけど…」

真姫「あなたは…花丸さん?」

花丸「あ、はい!図書委員なのでいつも放課後はここにいるんです」

絵里「なるほど、図書委員なのね」

絵里(突然奪われたのはビックリしたけどあまり悪い子には見えなさそうだからとりあえず許すことにした、縦長のテーブルで真姫の隣にすとんっと座ってPR-15に目をキラキラさせてた)
43 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:42:05.12 ID:Sjljkzyd0
絵里「ねえ花丸さん」

花丸「はい、なんでしょう?」

絵里「この銃、すごいとか言ってたけど具体的に何がすごいの?」

花丸「それはもうモデルずら!!」

真姫「も、モデル?」

花丸「PR-15――――それはもう弱点無しの高基準なハンドガンずら!反動がそこまで大きくないから連射も出来て装弾数は10発のところをこのPR-15はマガジンを拡張させて15発まで込められて、尚且つドットサイトをつけて狙いやすくした最高に使いやすいハンドガン!」

絵里「へぇ…そんなにすごいの…」

花丸「それにこのロゴはどう見てもオハラモデル…ずら!」

真姫「オハラモデル?」

花丸「あの小原社が作った銃はこのようなロゴがつくずら、これがつくだけでどんな銃も桁が一つ変わると言われるくらいに質感とか、後出来がいいんです!」

花丸「……あ、ごめんなさい。これお返しします」

真姫「ど、どうも」

絵里「なるほど、そんな代物なのね、これ」

真姫「みたいね」

真姫「…どうするの?それ」

絵里「使いやすいらしいし貰っておくわ、確かに相手だけ銃を持ってるのに私だけ銃がないのは分が悪いもの」

真姫「…そう」
44 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:45:47.08 ID:Sjljkzyd0
花丸「お二人はこういうのをいっぱい持ってるんですか?」

絵里「いえ、私はないわ」

真姫「私も特に。銃はいっぱい持ってるけどオハラモデルとかこだわりはないわ」

花丸「あ、そうなんですか」

絵里「あなた、銃は詳しいの?」

花丸「はいっ!だけど怖くて撃てないずら…」アハハ

絵里「そうなの…それは残念ね」

花丸「はい、ただそれでも銃は大好きなので銃の知識は誰にも負けないつもりずら!」

真姫「へぇ…」

絵里(不本意だったけどこの鞠莉のくれた拳銃の事が知れてよかった、バランスの良い拳銃ならいい武器になってくれそうね)



絵里「今日はありがとう、また来るわね」

花丸「はいっ是非またずら」

絵里「ええ」

絵里(図書委員の子とはよく分からないけど仲良くなれたわ、銃のことなら相当な知識を持ってるみたいだから銃で困ったら図書室へいけばいいのかも)
45 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:48:14.14 ID:Sjljkzyd0

スタスタスタ

真姫「マガジンは私に任せて、絵里のそのハンドガン用のマガジンを発注してあげるわ」

絵里「いいの?」

真姫「いいわよ、どうせお金なんて有り余ってるし」

絵里「なんか悪いわね…」

真姫「いいわよ別に、その代わり今度なんか奢りなさいよ?絵里イチオシの店でね」

絵里「ふふふっ分かったわ」

絵里(私の周りには優秀な人たちが集まってる、気性が荒くて不器用な私にとってこの奇跡のような集まりは本当に嬉しくて、一人舞い上がってしまいそうだった)

絵里「あ、帰り果南のお見舞い行ってもいい?」

真姫「いいわよ」

絵里「じゃあ千歌を連れていきましょうか」

真姫「いや、多分もう千歌は行ってるわよ。お見舞いに」

絵里「え、そうなの?」

真姫「ええ、図書室に行くとき突っ走ってるのを見たわ」

絵里「そうなの、じゃあ私たちも行きましょうか」

真姫「ええ」

絵里(銃の話が落ち着けば次は果南のお見舞いに行くことが決まった、あの南ことりと戦ったのよ、傷は相当なはず――――)


果南「あ、絵里と真姫、お見舞いにきてくれたの?嬉しいな〜♪」


絵里(――だと思ってたんだけど…)
46 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:50:26.94 ID:Sjljkzyd0
千歌「あ、絵里さんと真姫ちゃん!」

真姫「こんばんは、果南具合はどう?」

果南「うん、ばっちしだよ、特に痛むところもないしいつもと変わりないかな!」

絵里「えぇ…肩を撃たれたのでしょう?」

果南「撃たれたっていってもかすり傷みたいなものだよ、肩はちゃんと動くし痛くないし大丈夫!」

絵里「すごいわね…」

絵里(肩を撃たれたと聞いていたけど全然元気そうで安心した、ことりは相当な傷を負ったみたいだけど果南はこれほどに元気だと流石と思えてくる)

果南「へーあの鞠莉がハンドガンをかー」

絵里「そうなのよ」

千歌「かっこいいー!」

真姫「かっこいいわよね、私も好きだわ」

絵里(今日の朝はあんな大惨事だったというのに、今はこうやって会話に花を咲かせてるのが当たり前すぎて不思議に思わなかった、今は…ね)

絵里(ここにいるみんなはアットホームな関係でありたい人たちだから、常に笑いがあって退屈しないものだった)

絵里(だからこそ今みたいな状況から一転する時は、空気の違いがよく分かった)

ガララ

絵里「!」

千歌「!」

「こんばんは、ここが松浦果南さんのお部屋ですか?」

「ふーん、あんたが松浦果南ね」

絵里「あなたは…」


海未「こんばんは、私は対アンドロイド特殊部隊の指揮を務めています、園田海未と申します」

にこ「同じく矢澤にこよ」

47 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:52:43.07 ID:Sjljkzyd0
果南「…対アンドロイド特殊部隊のお二人が私に何の用?」

海未「今日の朝の件で南ことりと一戦交えたそうですね」

果南「そうだよ」


海未「南ことりは私たち特殊部隊で危険度Aの上から二番目に危険なランクに該当するアンドロイドです」


海未「しかしそんなことりに四発の弾丸を撃ち込んで尚目立った損傷をきたさない松浦果南というアンドロイドは、あなたから見れば誠に不本意ながら相対的に危険度Sに該当されることとなりました」

真姫「危険度S…!?」

果南「…それで?」

にこ「危険度Aは私たちの監視下に置かれることになってること、知ってる?」

果南「…知らない」

にこ「そう、なら危険度Sってどうなると思う?」

果南「………」

海未「答えは見つかったようですね」

絵里「ちょ、ちょっと待って!果南は悪くないわ!」

千歌「そうだよ!悪くないよ!」

絵里(オシャレな服を着た二人組が突然来て何を言いだすかと思ったら果南が危険度Sに該当されたなんてそんなの横暴すぎるわ、しかも次第に二人が黒い手袋をつけてるのを見て私は察した)


絵里(危険度Sがどうなるかを)

48 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:56:21.78 ID:Sjljkzyd0
海未「ごめんなさい果南さん、これは鞠莉からの命令なのです」

果南「鞠莉…」

絵里「鞠莉…ッ!」

絵里(今日は拳銃をくれたし、少しは感謝したけどやっぱりあいつはあいつのままだった)

絵里(自分から作り出したくせに、今度は自分から破滅を及ぼすなんて命の冒涜――いや、アンドロイドへの侮辱そのものよ)

海未「では……」

果南「…何?」


海未「さよならですねっ!」バァンッ!


果南「っ!?」

真姫「はやっ…!?」

絵里(まさに早業、そして不意の一手だった)

絵里(懐から拳銃を出した瞬間左へ跳躍、だから私たちアンドロイドは銃弾に反応して回避を行うのだけど、今ここにいたアンドロイドは全員同じように体が動かなかったでしょう)

絵里(それは何故か?答えは簡単で、私たちアンドロイドが反応したのは銃弾ではなく先に高速移動をした海未本人の方だった。だから銃弾への反応は遅れて回避が間に合わない)


絵里(いわばそれは詰みの状態だった)

49 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 18:59:00.67 ID:Sjljkzyd0


ダッ


千歌「果南ちゃん! っあ……」


絵里「千歌!?」

絵里(そうして次の瞬間には何が起こったんだろう、海未が撃った銃弾は果南の頭を貫くことはなかった)

果南「っ…千歌…?」

絵里(海未の撃った銃弾から一番近くて、一番銃弾への反応が早かったのはおそらく千歌だった。だから千歌は咄嗟の判断で海未の射線上にわざと飛び出した)

真姫「なっ…あっ……え…?」

絵里(…結果、千歌は頭を射貫かれた。それは紛れもない――――)


絵里(――死、そのものだった)


千歌「……ぁ」

バタッ

果南「千歌!?ねえ千歌!」

海未「ちっ今度こそ!」

絵里「させないっ!」バンッ!


絵里(今こそ収束/終息の時――――次第に湧き出る怒りはアドレナリンを発生させ続けた)


絵里(だから私は)


絵里(始まりのトリガーを引いた)

50 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 19:00:37.05 ID:Sjljkzyd0
海未「くっ…」スッ

真姫「…!何やってるの早く逃げて!」

果南「分かってる!くっ…いたたっ…」

絵里「…!」

絵里(果南は肩を押さえてる、なんとなくわかってた。やっぱり強がってたんだ、やはりあのことり相手にかすり傷じゃ済まされないのよ)

絵里「っ!いくわよっ!」ダッ

果南「うわっ!」

パリーン!

絵里(それを見て私は迷う事なく果南を連れて逃げる事を選んだ)

絵里(腕を引っ張って力強く跳躍、外へと続く窓ガラスを突き破って二階から飛び降りた)

絵里「逃げるわよ!」

果南「絵里…!なんでっ…!」

絵里「……いいのよ」


絵里(その行為は紛れもない対アンドロイド特殊部隊――そして鞠莉への宣戦布告だった)


絵里(私は今日からレジスタンスになる、今日から世界の人々は敵になったのよ)
51 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 19:01:07.27 ID:Sjljkzyd0
ちょっと中断
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/24(火) 19:27:58.21 ID:ohhWlCfQO
複雑な世界観だけどこういうの好きだな
続き期待してます
53 : ◆iEoVz.17Z2 [saga]:2019/09/24(火) 20:04:35.17 ID:Sjljkzyd0
にこ「まてっ!」

絵里「そこで止まってなさいっ!」バンッ!

にこ「ちっ…厄介ね、あれ」

絵里(追随を許さないよう窓から顔を出すにこへと数発発砲した、あぁ…マガジンに15発の弾があって尚且つ連射出来て良かった。この使いやすさのおかげで牽制はほぼ完璧、だから私は果南を連れて走り出した)

パリーン!

海未「どこを見てるんですか?」

絵里「何っ…!?」

絵里(その動きはまさに奇想天外で、果南のいた病室の隣の病室の窓から飛び出してきた海未。これには想定外すぎて足が止まってしまった)


パリーン!


善子「そっちがね!」バンッ!


海未「!」

海未「っあ…ッ」

絵里「善子!?」

絵里(そしてこれまた想定外で、海未の出てきた下の病室の窓から善子が飛び出し両手に持ってた拳銃で海未の右足を射貫いた)
54 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:06:28.28 ID:Sjljkzyd0
海未「あぁ…くぅ……!」

善子「地面にキスでもしてなさい、この堕天使ヨハネの前では……ってまたやっちゃったぁ!」

果南「何やってるの善子!」

善子「!逃げるわよ!」

絵里「え、でも」

善子「いいからいくの!ほら!」ダッ

絵里「え、ええ!」

絵里(足を撃たれた海未は空中で体勢を崩しそのまま地面へと叩きつけられた。だから今のうちに逃げ出した)

タッタッタッ!

絵里「なんで善子がここに!?」

善子「…ルビィのお見舞いよ」

絵里「…!ごめんなさい」

善子「いいわよ、それよりも今はあの二人から逃げる事が先よ」
55 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:08:08.94 ID:Sjljkzyd0
果南「どこへ逃げるつもり?」


ピコンッ♪ピコンッ♪


絵里「…!電話よ」

果南「私が出るの?」

絵里「私は果南をおんぶするのに必死だから」

果南「分かったよ…」

ピッ

果南「もしもし?」

真姫『もしもし』

果南「あれ、真姫じゃん、そっち大丈夫?」

真姫『それはこっちのセリフよ!そっちは大丈夫?』

果南「うん、大丈夫だよ」

真姫『そ、そう…これからどうするつもり?』

果南「分からないからとりあえず行き先も考えずに逃げてるところだよ」

真姫『なら私の別荘を使って、森の奥だからしばらくの間は身を隠せるはずだわ』

果南「え、ホント?でも場所が分からないよ」
56 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:12:02.30 ID:Sjljkzyd0
真姫『私の家にいて、玄関からは鍵がかかって入れないけど、二階の私の部屋に通じる窓は鍵がかかってないから入れるはずだわ』

果南「えっ…それ防犯的に大丈夫なの?」

真姫『私の家庭は多大な権力を有しているのよ、そんなところで盗みを働かせる間抜けはいないし、アンドロイドは金銀財宝に興味がないと聞いてるから、それを信じての行為よ』

果南「あはは…なにそれ」

真姫『とりあえず私の家にいて、私も時機にいくわ』

果南「うん、分かった」

果南「…あ、後そんなべらべら喋ってもいいの?近くに対アンドロイドの人いるんでしょ?」

真姫『………』


にこ『海未!しっかりして!』

海未『やられました…まさか三人目が…ぐっ…!』

にこ『あいつら…!』


真姫『…あの様子じゃ絵里たちを追う余裕は今のとこないと思うわ』

果南「??? よく分からないけど大丈夫なんだよね?」

真姫『ええ』

果南「そっか、分かったよ。じゃあ真姫の家で落ち合おうか」

真姫『ええ、よろしくね』

ブツッ
57 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:12:49.94 ID:Sjljkzyd0
果南「真姫の家に向かおう、真姫が別荘を貸してくれるって」

善子「別荘…!?真姫ってどんだけお金持ちなの…?」

絵里「一生遊んでいけるくらいのお金は持ってるでしょ、伊達に大きな病院の娘なだけあってお金の使い方はサバサバしてるし」

果南「…でも、お金に興味ないのが私たちアンドロイドなんだよね」アハハ

善子「……分かるのが悔しいわ」

絵里「ほんとにね」

絵里(なんだかんだ善子とは付き合いが長いし、果南は親友って言えるくらいに仲が良いからこんな状況でも話すことは案外軽かった)

絵里(しかしやってることは人生最大の過ちと言ってもいいだろう、私も果南も、そして善子も真姫も…もう立派なレジスタンスになってしまったのだから)

絵里(だから…これからどうやって生きていくか、考えるだけでも頭は痛かった)
58 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:14:25.67 ID:Sjljkzyd0
〜真姫家

果南「ふう…いたたた……」

絵里「…強がる必要なんてなかったのに」

果南「絵里はともかく千歌がいたんだもん、千歌にはかっこいいところを見せたかったんだよ」

絵里「……もういないけどね」

果南「………」

善子「…え?何どういうこと?」

絵里「…千歌は死んだ、海未に殺された」

善子「っ!?はぁ!?」

絵里「果南を庇って死んだの、頭を撃ち抜かれたからおそらく即死だったわ…」

善子「そんなっ…あの千歌が…!」

絵里(私に“始まり”をくれた千歌は終わりを迎えた。失ったものの代償は大きかった、心とか体とかそんなちんけなものじゃなくて千歌はあらゆるものを総じて命を失った)


絵里(銃弾で物語を語るのなら、死なんて些細なことに過ぎない)


絵里(でもそれはあまりにも突然で、理解も間に合わない死だった)
59 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:16:50.56 ID:Sjljkzyd0
絵里「…なんでっ!」

絵里(床を思いっきり叩いた、何故今日になって死人が出ないといけないのか、きっとそれは誰にも分からない)


千歌『絵里さん!』

千歌『絵里さーん!』

千歌『絵里さーんっ!!』


絵里「千歌…!」

ポロポロ……

絵里(私はその日から神を信じるのをやめた)

絵里(千歌の事を考える度に毎日見せてくれた千歌の笑顔が瞼の裏で鮮明に映る)

絵里(例えこの先、高海千歌というアンドロイドが存在しようとも私たちの知ってる高海千歌はもういない)

善子「…あり得ない」


絵里(アンドロイドの命は美徳と語られることが多々ある)


絵里(何故ならアンドロイドの命は記憶と同義であるから、記憶が消えることこそアンドロイドの死を意味するから)

絵里(…だけどそこに美しさなんてどこにも存在しない、あるのは血まみれの死体と虚ろな瞳だけ)

絵里(そうして人は神様神様って奇跡を信じようとするの)


絵里(しかし私は断じて否、神様なんかに縋るから何かを失うのよ)


絵里(銃弾で物語を語るのならそれは私自身が放った銃弾で語るの、神様に代行してもらった運任せの銃弾なんて要らない)

絵里(私が…その心——心臓を撃ち抜くのよ)
60 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:18:15.08 ID:Sjljkzyd0
果南「…やめよ、千歌のことは考えたくない」

絵里「…そうね」

善子「でも!」

果南「やめてッ!」

善子「っ…」

果南「…千歌のことはもういいよ、今は今で私たちが危ないんだから」

善子「……そうよね、ごめんなさい」

果南「………」

絵里「………」

絵里(当たり前だけど、空気は随分と重いものだった)

絵里(果南は物理的にも精神的にも強いけど小さい時から一緒だった千歌が死んだ喪失感は誰よりも大きいと思う、それに肩は痛いだろうしイライラは加速する一方だろう)

善子「…私、トイレ行ってくる」

ガチャンッ

絵里(空気の重さに耐えられなくなった善子はその場を抜け出した、トイレとか言ってるけどどうせトイレには行ってないでしょうね)
61 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:20:47.36 ID:Sjljkzyd0
絵里「…果南はこれからどうするつもり?」

果南「仕返しに行く、千歌の命を奪った罪は重いよ」

絵里「その傷であの二人に勝てると思う?第一私たちは海未にやられてるといっても間違ってないのよ?」

絵里(対アンドロイドならではの動きだった、私たちはアンドロイド故に危険なものや動くものには即座に反応する、それを逆手に取り先に海未本人が目にも留まらぬ速さで跳躍し、私たちが海未に反応をしてから発砲する)

絵里(千歌がいなければ果南が死んでた、何がどうあったとしてもあそこで一人は死んでいた。それはもう間違いなく敗北の二文字だった)

果南「…そんなの関係ない」

絵里「……気持ちはわかるけどやめておきなさい、無理よ」

絵里(にこという人物は分からないけど海未という人物がかなりの手練れなのは事実、コンディションの整った果南なら分からないけど傷を負った状態じゃあいつに勝つのはほぼ無理、私の瞳も一桁代の確立を示してる)

果南「なんで……」

絵里「…何?」


果南「うるさいんだよッ!」スッ


絵里「っ!?」

絵里(突然気でも触れたかのように果南は立ち上がりと同時に私へと横蹴りをかましてきた)


果南「千歌を失った気持ちが絵里には分かる!?」

果南「勝てるとか勝てないとかそんなの気にしてられないんだよ!」

果南「勝てないなんて知ってるよ!勝てないのは眼がいい私自身が一番分かってるつもりだからッ!」


絵里(何の計算性もない左ストレートから左回りの後ろ回し蹴り、そしてそのままサマーソルトキックともう力任せな怒りの攻撃だった)

絵里「…動きが鈍いわ、やっぱり無理よ」

果南「舐めないでっ!肩が負傷してても私は戦える!ほらっ!これが証拠だよッ!!」
62 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:22:27.90 ID:Sjljkzyd0
絵里「なら銃を使ってみなさいよ、今ここで」


絵里「私を殺してみなさいよ」


果南「っ!」

バンッ!

果南「っあ…痛ッ…!?」

絵里(…突然の結果だったわ、私の挑発に乗った果南は懐からすぐにデザートイーグルを出して発砲、だけど反動から来る肩の痛みで私は避けずとも果南から外してくれたし、強まる痛みに果南はすぐにデザートイーグルを手放した)

スタスタスタ

絵里「…ゲームセットね、私が敵ならここで果南は死んでるわ」カチャッ

絵里(地に落ちたデザートイーグルを拾って銃口を果南に向ける、アイアンサイトから見える果南の諦めきれない悔しそうな顔が、敗北の証拠だった)


果南「くそっ…!なんでっ…!なんでぇ…!!」ポロポロ


絵里「…諦めなさい」

絵里(果南はそのまま崩れ落ちて泣き出した。滅多に見せない果南の涙は実にブルーで、哀歌はとても力強かった)
63 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:26:45.03 ID:Sjljkzyd0
〜数時間後


真姫「…人の家で殺し合いとかやめてくれる?」


絵里「…ごめんなさい」

絵里(私たちが真姫の家に来て数時間後、ようやく真姫が家に帰ってきた。あの後すぐに帰ったら怪しまれると思ったんでしょうね、おそらく真姫の事だから迫真の演技とかを数時間してきたのでしょう)

真姫「別にいいけど…果南は大丈夫?」

果南「うぅううううぅう…あああぁ…!」

善子「…ダメでしょ、こういう時は気が済むまで泣かせとくのが一番よ」

絵里「善子…戻ってきてたの」

絵里(善子は部屋を出てから今に至るまでずっと戻ってこなかった、おそらく外には出てないでしょうけどこの真姫の家に一人でいるだけというのも随分と退屈なものよ)

善子「真姫が来たからね」

絵里(泣きじゃくる果南を前に廊下の壁に腕を組みながら背中を寄せる善子と片手を横っ腹において堂々と立つ真姫、そしてデザートイーグルを片手に持って立つ私が集まり、レジスタンス四人が揃った)
64 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:28:37.10 ID:Sjljkzyd0
真姫「…あなたたちは良かったの?」

絵里「何が?」

真姫「別に私は何もしてないから普段通り過ごすけど、善子と絵里と果南は多分無理よ」

絵里「知ってるわ、もう戻れないなんて承知の上よ」

善子「私もやっちゃったからには戻れないわ、だからもう既に覚悟は決めてるつもり」

真姫「…そう、ならいいけど」

真姫「…さっきも言ったけど私は何もしてないから普段通り過ごす。けど支援はするわ、お金で解決できることは私に任せて、私は武力はないけど財力ならあるんだから」

絵里「…助かるわ」

真姫「このくらいとーぜんよ」

絵里(外もまともに歩けないであろう私たちにとって真姫の存在は大きすぎた、もうしばらくは妹の亜里沙にも会えない、学校で仲のいい友達にも会えない)


絵里(犯罪を犯した代償は重すぎた)



善子「ここが…」

絵里「相変わらず大きいわね…」

真姫「ええ、不便のない生活は出来ると思うわ」

絵里(それからして深夜の三時、私たちは夜道を高速で走り別荘へ辿り着いた)

果南「ここに私たち住むの?」

真姫「ええ」

果南「おー!私こういうところに住んでみたかったんだ!」

善子「ここが堕天使の住処…!」

絵里「また堕天使モード入ってるわよ…」

絵里(数時間泣きじゃくってた果南もとりあえず立ち直ったみたいで今では普通の状態、真姫の別荘を見てはしゃいでるのを見て私はなんとなく安心した)
65 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:29:43.20 ID:Sjljkzyd0
真姫「とりあえず入って、色々と設備を紹介するわ」

絵里「ええ」

善子「分かったわ!」

絵里(それで真姫に案内されるがままに別荘へと入った、大きさは一般の一軒家の二倍程度で二階建て、リビングは相も変わらず広々としてて真姫の言う通り不便の生活が約束されてるような場所だった)

真姫「…と、まぁここの説明はこのくらいよ」

真姫「何か質問ある?」

絵里「ここの存在がばれた場合どうすればいい?」

善子「それは私も聞きたかった」

真姫「切り捨ててもらって結構よ、逃げることが第一だからね」

果南「分かったよ」

真姫「他はある?」

絵里「私は特に」

善子「私も」

果南「私もないよ」

真姫「分かったわ、じゃあ今日のところは帰るわね。流石に私が家にいないと親に怪しまれるから」

絵里「分かったわ、ホントにありがとう真姫」

真姫「いいわよ、それじゃあね。そこにあるの家の鍵だから」

善子「ええ」

果南「りょうかいっ」

真姫「じゃあね」

スタスタスタ

絵里(時刻は四時、真姫はレジスタンスだけどあくまでも一般人、だから私たちと違って怪しまれるような変な行動は出来ないし真姫は武術の心得がなく戦闘面に関して言えば無力に等しい、つまり何かあった時抵抗する手段がない)

絵里(だからここは安牌として家に帰ることを選んだ、だからここからは私たちだけだ)
66 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:30:31.28 ID:Sjljkzyd0
果南「これからどうする?」

絵里「寝る場所を決めましょう、寝室が二つしかないらしいの」

果南「え?みんなで一緒に寝るんじゃないの?」

絵里「えっそうなの?」

善子「いや違うと思う」

果南「じゃあどうするの?」

善子「…私は一人で寝たい、少なくとも今日と明日は」

果南「…?よく分からないけど、分かった」

果南「絵里はどうする?」

絵里「私はどこでもいいわよ」

果南「じゃあ一緒に寝ようよ、一緒に寝た方がお泊り感あって好きなんだぁ」

絵里「遊びでここに来てるんじゃないのよ私たち…」

果南「知ってる知ってる」
67 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:31:59.18 ID:Sjljkzyd0


スタスタスタ


絵里「善子、どこいくの?」

善子「私の家に一度行く、こうなった以上武器は持っておかないと安心なんて出来ない」


善子「…こんな拳銃一つじゃあの二人とは戦えない」


絵里「善子…」

絵里(片手に持つ拳銃を悲しそうに見ながら善子はそう言った、確かに拳銃一つじゃ手数も火力も出来ることの数も少ない)


絵里(拳銃の強みは軽いからどこにでも持ち運べて、小さいから運用が簡単なこと)


絵里(だけど、拳銃はそれ以外の強みがない。火力は人を殺すには充分すぎるものではあるけどそれでもまだ足りないものなのよ)
68 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:32:56.42 ID:Sjljkzyd0
絵里「でも外は危険よ…?」

善子「分かってる、でも拳銃一つじゃ戦えない。ならまだ監視の目が酷くならないうちに危険を冒して家から武器を持ってくる方が賢いわ」


善子「堕天使ヨハネは常に一手先を考えてるの」


果南「…言ってることは正しいけど堕天使ヨハネいる?」

善子「あーもう!仕方ないの!これプログラムだから!」

絵里「ふふふっまぁいいわ、じゃあ行ってきていいわよ」

絵里「私も行きたいけど果南を一人にさせるわけにはいかないから、くれぐれも気を付けて」

善子「ええ、じゃあね」

タッタッタッ

果南「…行っちゃった」

絵里「やっぱり善子はすごいわね」

果南「ホントだよ、とても一年生とは思えない頭の良さだよね」

絵里「ええ」
69 : ◆iEoVz.17Z2 [sage saga]:2019/09/24(火) 20:34:57.85 ID:Sjljkzyd0
果南「…二年前だよね、善子と私たちが出会ったのって」

絵里「ええ、善子がいじめられてたのを助けた時からだったわね」

果南「懐かしいなぁ絵里が単身っていじめっ子のグループに突っ込むもんだから見てられなくて私もついていった覚えがあるなぁ」

絵里「あ、あれは仕方なかったのよ!だって千歌とか他の友達巻き込みたくなかったし…果南に知られたらまためんどうなことになりそうだし…」

果南「あはは、酷い言われようだなぁ」

絵里「果南は解決の仕方が暴力的すぎるのよ」

果南「それ、絵里が言う?」

絵里「果南よりかはマシよ」

果南「…ふふっ」

絵里「ふふふっ」


かなえり「あはははははっ!」


絵里(前から一緒の私たちの絆は何よりも堅かった)

絵里(善子は中学二年生の時に善子をいじめていた子を私と果南でやっつけた事で知り合った、何事にも真摯な対応をする子だけど、生まれた時からインプットされていた堕天使ヨハネというプログラムが彼女の特徴でもある)

絵里(今思えば、善子も成長したけど悪い方向で成長したともいえる。しかしもちろん理由はあって、善子を変えた原因はおそらく二つあるの)

絵里(一つはいわずも鞠莉のせい、あいつがアンドロイドの品格を下げ続けてるから意図せずとも恨みや邪念など生まれてしまった)

絵里(そして二つ目は――――)


絵里「……善子、大丈夫かしら」


果南「…やっぱり心配?」

絵里「ええ、身の危険もそうだけどもう一つあるの」

果南「ん?何かあるの?」
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