【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】

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387 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:33:37.67 ID:69+uW4bTO



アンジー「……ところで、キーボ……」

キーボ「……?」

アンジー「……もしかして、さっき、空吾たちに会った?」



キーボ「……? はい、確かに会いました!」



アンジー「……やっぱりー」

真宮寺「こっちの【パワーセンサー】にも三人分反応していたからネ。もしやとは思っていたけど……」



キーボ「……それがどうかしたんですか?」



アンジー「………」



キーボ「もしかして、銀城さん達に何か用事があったんですか?」


388 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:34:34.03 ID:69+uW4bTO



アンジー「……ノーノー、違うよー」

キーボ「?」

アンジー「単純に、気になっただけだからー」

キーボ「……気になる?」

アンジー「そうだよー」



真宮寺「………」



アンジー「……キーボが、何か、変なこと言われなかったかなー、って」


389 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:35:34.00 ID:69+uW4bTO



キーボ「変なこと……?」



アンジー「……たとえば、ギリコからーーー」



真宮寺「………」



アンジー「ーーー別の、神さまの、こととかーーー」









アンジー「ーーー言われ、なかった?」


390 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:36:16.44 ID:69+uW4bTO



キーボ「ーーー別の、神さま?」



アンジー「………」



キーボ「……いえ、そのような話はしていませんがーーー」



アンジー「……そう」

真宮寺「………」



キーボ「……?」


391 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:37:19.35 ID:69+uW4bTO



アンジー「……実はねー? ギリコは、アンジーの神さまとは、違う神さまを信じているんだよー」

キーボ「違う、神さま、ってーーー」



真宮寺「……彼は、それを、 “ 時の神 ” と呼んでいるヨ」



キーボ「時の、神……」



真宮寺「まァ、聞いた限りだと、偶像崇拝というよりは、概念の崇拝に近いようだけどネ……」


392 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:38:05.24 ID:69+uW4bTO



アンジー「……これから、ギリコに変なこと言われても、気にしちゃダメだからねー? キーボ?」



キーボ「………」



アンジー「……アンジーの信じる神さまは、アンジーの神さまだけだからさー」



アンジー「別の神さまに浮気したら……きっと罰が当たるよ?」


393 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:38:43.86 ID:69+uW4bTO



キーボ「……大丈夫ですよ」






アンジー「………」






キーボ「……ボクは神さまに頼ることが、できませんから」


394 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:39:28.49 ID:69+uW4bTO









アンジー「…………」








395 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:40:19.20 ID:69+uW4bTO



真宮寺「ーーーアー……とりあえず、家の中に戻ったら、今日の分を、はじめようか」



真宮寺「そう、【鰤清劇場】を、ネ」



キーボ「!」



アンジー「……うんうん、それが良いよー!」



キーボ「………」


396 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/23(月) 23:41:15.13 ID:69+uW4bTO



真宮寺(……今日、話すこと)


真宮寺(それは、昨日話せなかった “ 西 ” についてーーー)


真宮寺(ーーーそう、この、日本人の集う、 “ 尸魂界・東梢局 ” とは、大きく異なる文化圏ーーー)


真宮寺(ーーー “ 尸魂界・西梢局 ” についての話をーーーー)



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


397 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:10:44.61 ID:sD187VVtO



〜尸魂界・流魂街〜



アンジー「………」



シバタ「ーーーあっ、アンジーお姉ちゃん! おはよう!」



アンジー「……あー、ユウイチ! おはよー!」



シバタ「奇遇だねーーー」

シバタ「ーーーって、あれ?」



アンジー「んー? どうしたー?」



シバタ「今日は、真宮寺お兄ちゃんは一緒じゃないの?」


398 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:11:27.35 ID:sD187VVtO



アンジー「……あー、是清は、お花摘みに行ってるところだよー」






シバタ「……そうなんだ……」


399 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:12:39.84 ID:sD187VVtO



アンジー「……是清に、何か用かー?」

シバタ「……うん、実は、 “ 家族 ” のみんなに絵を描いてプレゼントしようって思ったんだけどーーー」



アンジー「………」



シバタ「ーーーそれと一緒に付ける手紙、それができたら、まずは真宮寺お兄ちゃんに出来を確かめて欲しいと思ってさ」

シバタ「万が一、変なこと書いちゃってたら、大変だし」



アンジー「………」



シバタ「それを、伝えたくてーーーー」


400 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:13:44.44 ID:sD187VVtO



アンジー「……プレゼント、するんだー?」

シバタ「……うん、 “ 家族 ” のみんなに!」

アンジー「……にゃはははー! 是清はすっかりユウイチに頼られてるねー!」

アンジー「アンジーもすごい嬉しいよー!」



シバタ「………」



アンジー「……? どうしたー、ユウイチ?」



シバタ「……ちょっと、ね……」



アンジー「ちょっと?」



シバタ「うん、ちょっとだけーーー」







シバタ「ーーーアンジーお姉ちゃんが羨ましいなあ、って」


401 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:14:33.88 ID:sD187VVtO



アンジー「………」



シバタ「ぼくは、真宮寺お兄ちゃんのこと、まだ全然知らないしーーー」



シバタ「ーーーだから、真宮寺お兄ちゃんと一緒に住めるアンジーお姉ちゃんが羨ましいって、思える時があるんだ」



シバタ「もっと、真宮寺お兄ちゃんに近づけたらな、って」


402 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:15:24.20 ID:sD187VVtO



アンジー「……ユウイチ?」

シバタ「?」

アンジー「ユウイチには、ユウイチの “ お兄さん ” がいるよね?」

シバタ「……そうだね」

アンジー「是清のことを好きになってくれるのは嬉しいけどーーー」



アンジー「ーーー “ お兄さん ” のことも大事にしないとダメだよ?」



シバタ「………」



アンジー「でないと……罰が当たるよ?」


403 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:16:42.57 ID:sD187VVtO



シバタ「……大事に、したいよ」

シバタ「……今の “ お兄さん ” が、現世のどこで、どんな人になって、どんな人生を送っているかはわからないけどーーー」



シバタ「ーーーぼくの “ お兄さん ” であることに変わりはないから……」



アンジー「………」



シバタ「…… “ お兄さん ” 、“ 家族 ” のみんなには、僕自身、納得のいく内容の手紙と絵をお供えしたいと思ってる」

シバタ「だから、真宮寺お兄ちゃんに、手紙の出来を見て貰いたかったんだ」


404 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:17:59.59 ID:sD187VVtO



シバタ「……それに、真宮寺お兄ちゃんは、前にも僕を助けてくれたからね」

シバタ「そんな真宮寺お兄ちゃんの、支えになりたいと、僕は思う」



アンジー「………」



シバタ「だから、近くでそれができるアンジーお姉ちゃんが羨ましい」



シバタ「そう、思ったんだ」


405 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:19:02.79 ID:sD187VVtO



アンジー「……アンジーが是清を、支える、かー……」

シバタ「……うん、アンジーお姉ちゃんならできるでしょ?」



アンジー「……どうかなー?」

シバタ「えっ……?」

アンジー「……むしろ、逆かもよー?」

シバタ「……?」

アンジー「アンジーが是清を支えているんじゃなくて……是清がアンジーを支えてくれてるんだー」


406 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/24(火) 00:19:50.87 ID:sD187VVtO



シバタ「……そうなの?」

アンジー「……そうだよー」

アンジー「そうでないと、アンジーはーーーー」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜〜〜〜〜〜


〜〜〜〜


〜〜


407 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 22:53:33.93 ID:L8hfhPzqO



チュンチュン……




アンジー「………」パチリッ






アンジー「…………」ムクッ









アンジー「………………」


408 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 22:56:39.96 ID:L8hfhPzqO



アンジー(……夢かー……)




アンジー(ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)




アンジー(……なんでかなー)




アンジー(……なんで、あの時のーーー)




コンコンッ……


409 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 22:58:38.49 ID:L8hfhPzqO



アンジー「………」



キーボ「……アンジーさん、アンジーさん」コンコンッ

キーボ「起きていますか?」



アンジー「……起きてるよー」ムクッ…スタスタ



アンジー「……開けるねー?」ガチャッ…バタンッ

キーボ「おはようございます! アンジーさん!」

アンジー「……アンジーに何か用かー?」


410 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:01:59.19 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……ああ、いえ、この時間、アンジーさんは今まで、ボクと真宮寺クンのいる部屋まで、朝ごはんの誘いに来ていたので……」



アンジー「……うん、そうだね」



キーボ「でも、今日はなかったので、どうしたのか気になってーーー」



アンジー「……んー、ちょっと、変な夢見ちゃってねー……?」



キーボ「……夢、ですか」



アンジー「……詳しい内容は秘密だけどーーー夢見悪くて、調子狂って、起きるの遅めになっちゃったのかもねー」


411 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:03:16.32 ID:L8hfhPzqO






キーボ「……まあ、そういうこともありますよ」



アンジー「………」



キーボ「あまり気にしない方が良いですよ、アンジーさん」





412 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:04:41.55 ID:L8hfhPzqO



アンジー「……ねー、キーボ?」

キーボ「はい! なんでしょうか、アンジーさん!」

アンジー「今更、かもしれないけどねー?」

キーボ「?」






アンジー「……キーボと、こうしてまた会えてーーーー」


413 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:05:45.69 ID:L8hfhPzqO









アンジー「ーーーアンジーは、すごく嬉しいんだー……」








414 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:07:38.29 ID:L8hfhPzqO



キーボ「………」

アンジー「……もちろん、悲しまなきゃ、いけないことはわかってる」

アンジー「キーボも、アンジーたちと同じなんだから」



アンジー「そう、秘密子たちと、離ればなれ……」



キーボ「………」



アンジー「アンジーは、それが、悲しい」



キーボ「アンジーさん……」



アンジー「……だけど、それでも、キーボとこうしてまた会えたことはーーーー」









アンジー「ーーーすっごく、嬉しいんだ……」


415 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:08:50.19 ID:L8hfhPzqO






キーボ「………」






アンジー「………」





416 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:15:33.65 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……それは、ボクも同じです」

アンジー「!」

キーボ「ボクも嬉しいですよ、アンジーさん」

キーボ「また、アンジーさんに会えて」

キーボ「一緒にいられて」



キーボ「すごく、嬉しいです」


417 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:17:48.81 ID:L8hfhPzqO



アンジー「……そう……」

キーボ「………」

アンジー「……ありがとねー、キーボ」

キーボ「!」

アンジー「アンジーと “ 同じ ” でーーー」



アンジー「ーーー嬉しいって言ってくれてーーーー」






アンジー「ーーー本当に、ありがとう……」


418 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:20:39.84 ID:L8hfhPzqO



キーボ(……そうです)




アンジー「………」




キーボ(今度こそ、アンジーさんが、喪われることのないようにしなくてはーーー)








キーボ(ーーーそのためには、まずーーーー)


419 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:21:45.74 ID:L8hfhPzqO






キーボ「ーーーボクからも、お礼を言わせてください」






アンジー「………」






キーボ「ありがとうございます、アンジーさん! またボクと一緒にいてくれて!」





420 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:24:32.86 ID:L8hfhPzqO



アンジー「……そんな風に言って貰えるなんてねー」

アンジー「アンジー、やっぱり嬉しいなー」

キーボ「アンジーさん……」

アンジー「……ねーねー、キーボ?」

キーボ「? なんでしょうか?」

アンジー「これから朝ごはんの時間だよねー?」

キーボ「ええ…そうですね」


421 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:26:24.42 ID:L8hfhPzqO



アンジー「……アンジーが、食べさせてあげようかー?」



キーボ「……はい?」



アンジー「……ほら、 “ あーん ” ってやつだよー」



キーボ「………」


422 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:27:29.72 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……??」



アンジー「……キーボ、そういうこと、されたことないでしょー?」



キーボ「……いや、まあ、確かにされたことはありませんがーーー」



アンジー「だったら、アンジーがそれをする “ 初めて ” の相手なんだねー」



アンジー「なんだか、嬉しいなー」


423 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:28:14.73 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……?」






アンジー「………」






キーボ「……??」


424 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:28:58.83 ID:L8hfhPzqO






アンジー「……んー? どうしたー、キーボ?」



キーボ「………」



アンジー「何か、変かなー?」





425 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:29:44.58 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……ああ、いえーーー」



キーボ「ーーーそんなことは、ありません」



キーボ「おかしくなんて、ないですよ……」



アンジー「………」



キーボ「……アンジーさんは、誰に対してもーーーー」


426 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:30:43.80 ID:L8hfhPzqO









キーボ「ーーーすごく、あたたかい人ですから」








427 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:31:49.82 ID:L8hfhPzqO



アンジー「……それで、どうするのー? キーボ?」



キーボ「? どうするってーーー」



アンジー「アンジーの “ あーん ” のことだよー」



アンジー「どうするー? どうするー?」


428 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:33:06.66 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……お気持ちはとても嬉しいのですがーーー」

キーボ「ーーー食卓には真宮寺クン達もいますし、ボクも一応は高校生です」

キーボ「流石に、ちょっと、恥ずかしいというかなんと言いますかーーー」

アンジー「にゃはははー! ロボットでもこういうこと、恥ずかしかったりするんだねー!」

キーボ「なっ、ロボット差別ですか!?」

アンジー「ノーノー、嬉しいんだよー」

アンジー「ロボットのキーボが、恥ずかしいって気持ちを知ってることがねー」

アンジー「それってー、『すごいこと』だよねー?」

キーボ「……!」


429 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:34:11.06 ID:L8hfhPzqO



アンジー「……ねーねー、キーボ?」



キーボ「……なんでしょうか? アンジーさん?」



アンジー「 “ あーん ” が恥ずかしかったらさー」



アンジー「……アンジーの、隣で食べるくらいは良いかな?」



キーボ「………」



アンジー「……キーボ、今日から、アンジーの隣で食べて貰ってもーーー」







アンジー「ーーー良い、かな?」


430 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:36:30.52 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……もちろんですよ」



キーボ「むしろ、こっちからお願いしたいくらいです」



キーボ「隣に来させて貰います、アンジーさん」



アンジー「……ありがとね、キーボ」


431 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:40:36.51 ID:L8hfhPzqO



アンジー「……アンジーは、これから朝の着替えをする」

アンジー「それが終わったら……一緒に行こうー?」

アンジー「着替え終わる頃には……朝ごはんの時間だからねー!」



キーボ「……ええ、そうですね!」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


432 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:50:25.72 ID:L8hfhPzqO



キーボ(ーーーあれから、一週間以上もの時が経ちました)


キーボ(ボクら三人はこれといった問題もなく、こちらの屋敷での生活を続けていました)


キーボ(仕事の日は三人で掃除を行い、空いた時間にはアンジーさんと共に、真宮寺クンの……【鰤清劇場】を聴いていたのです)


キーボ(その話の中には、 “ 護廷十三隊 ” ……尸魂界や魂魄を守護する十三の部隊が、敵対勢力と交戦をしていたという内容もありました)


キーボ(……藍染惣右介(あいぜん そうすけ)をリーダーとした裏切り者の死神達と、崩玉(ほうぎょく)と呼ばれる謎の霊的アイテムでパワーアップした悪霊の軍団ーーー)


キーボ(ーーーそうした敵対勢力が、空座町(からくらちょう)と呼ばれる “ 重霊地 ” ……霊の集まる現世の土地を、悪用しようとした結果、起こってしまった戦争ーーー)


キーボ(ーーーそれ以外にも、因幡影狼佐(いなば かげろうざ)という死神が率いる、人造魂魄との戦争という内容のものまでありました)


キーボ(その全てが、興味深い話でした)


キーボ(それは今でもボクの記憶領域に大切に記録されています)


キーボ(絶対に記録しなければ、なりません)


キーボ(なぜなら、その話は、真宮寺クンがボクらのために話してくれたことでーーー)




キーボ(ーーー他ならぬ、アンジーさんと一緒に聴いたことなのですから)




キーボ(そうして近くで、話題を共有することによって、ボクはアンジーさん達とこれまで以上に仲良くなれたように思います)


キーボ(また、真宮寺クンの持つカルタや花札で遊んだり、アンジーさんが浦原さんから購入したお菓子を、一緒に食べたりもしました)


キーボ(……まあ、それでも、アンジーさんに、その…… “ あーん ” を、させて貰ったりはしませんでしたがーーーー)


433 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:52:25.21 ID:L8hfhPzqO



キーボ(……そんな中、休日である今日この日、とうとうボクに封筒が届きました)


キーボ(そう、ボクが瀞霊廷に住むための申請、その結果に関する通知の入った封筒が、です)


キーボ(空鶴さんが瀞霊廷に行った手続き、それに対する返事が今日ついに届き、空鶴さんからボクに手渡されたのです)


キーボ(それを知ったアンジーさん達から、一緒に結果を見ても良いか頼まれ、その通り一緒に見ることにしました)




キーボ(そして、その結果はーーーー)


434 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:53:16.79 ID:L8hfhPzqO









キーボ(ーーー合格、でした……)








435 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:55:43.66 ID:L8hfhPzqO



キーボ「………」



アンジー「………」



真宮寺「………」



キーボ「……えーと、その……」



キーボ「……これは、どういうーーー」







アンジー「ーーーすごいねー、キーボ!」


436 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:56:59.81 ID:L8hfhPzqO



キーボ「ーーーえっ、?」



アンジー「……だって、キーボは、瀞霊廷に住めるんだよー?」

真宮寺「………」

アンジー「ロボットなのに魂があるだけじゃなくてーーーすごい場所にだって住めちゃうんだよー?」

アンジー「それって、ものすごく、『すごいこと』なんだよー!」



キーボ「………」



アンジー「だからーーーいってらっしゃい、なんだよー!」ニパアッ!


437 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:58:05.15 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……アンジー、さん……」



アンジー「……どうしたー、キーボ?」



アンジー「瀞霊廷に住めるなんて、めったにない話だよー?」



アンジー「もっと、喜んだらー?」


438 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/28(土) 23:58:49.18 ID:L8hfhPzqO



キーボ「……いえ、そうではなく……」



アンジー「……?」



キーボ「……アンジーさん、今あなたはーーー」



アンジー「………」



キーボ「ーーー笑いながらーーー」







キーボ「ーーー泣いてーーーー」


439 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:00:10.04 ID:N/vkYi+RO



アンジー「ーーーえっ、?」ジワッ…



ポロ……ポロポロ……



アンジー「……あっ、あれ?」ポロポロ…

アンジー「……おかしいなー? なんでかなー……」ガクッ…

アンジー「……あれれ?」ガクガク…

アンジー「あれれー……?」ガクガクブルブル…



キーボ「………」

真宮寺「………」



アンジー「……うーん、寒くて、身体ヘンになってるのなー?」ブルブル…

アンジー「キーボみたいには、いかないねー、にゃはははー!」ガクガク…



キーボ「アンジーさん……」


440 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:01:52.17 ID:N/vkYi+RO



アンジー「……ごめんねー? ちょっと、アンジーの部屋で落ち着いてくるねー?」ブルブル…

キーボ「えっ……」

真宮寺「………」

アンジー「……大丈夫だよー! ちょっと、落ち着けば、なんとかなるからー!」ガクガク…

アンジー「……ぐっばいならー! にゃはははー!」タッタッ…

キーボ「あっ、アンジーさんーーー」ダッ…



ガシッ!!



キーボ「!?」

真宮寺「………」ググッ


441 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:05:58.63 ID:N/vkYi+RO



キーボ「……なんですか、真宮寺クン? この手は」

真宮寺「……今の時点で、君を夜長さんのところに行かせるわけにはいかない」



真宮寺「そう、思っただけだヨ」



キーボ「……どうして、そう思ったんですか?」

真宮寺「……逆に聞くけど、君は夜長さんがああなった理由がわかるかい?」

キーボ「それは……」

真宮寺「わからないのなら、行くべきではないヨ」


442 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:07:25.74 ID:N/vkYi+RO



キーボ「………」



真宮寺「……よくわからないまま、不用意なことを言ってしまえば、それで相手の心を傷つけてしまうかもしれない」

真宮寺「場合によっては……最悪の結果で終わりを迎えることになるかもしれない」



キーボ「……!!」



真宮寺「コトダマは時に、 “ 死 ” を生み出す凶器にもなり得るのだから」



真宮寺「そうだろう、キーボ君?」


443 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:09:38.86 ID:N/vkYi+RO



キーボ「……だったら、キミはわかるんですか?」

キーボ「アンジーさんの、あの様子について」

真宮寺「……少なくとも、今の君よりはわかるつもりだヨ」

真宮寺「夜長さんとは、今の君よりもずっと長く時間を共有していたわけだからネ」



キーボ「………」



真宮寺「一応言っておくけど、夜長さんがどうしてああなったのかは、自分で考えて欲しい」

真宮寺「……君が今それをわからないのは、夜長さんと再会したことによって得られた、安心感による油断が原因だとは思うけどーーー」



真宮寺「ーーー逆に言えば、こうして自分と夜長さんの関係に不安を感じている今であれば、気づけるはずだヨ」



キーボ「………」


444 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:11:15.37 ID:N/vkYi+RO



真宮寺「……キーボ君、僕が斬魄刀の話をしていた時には、君は自分に心が与えられた理由に、気づくことができたじゃないか」

真宮寺「……少なくとも、僕の出した問題に、答えることができたじゃないか」

真宮寺「僕が用意していた解答と同じ答えを自力で見出すことができたじゃないか」

真宮寺「それができるのなら、夜長さんがああなってしまった理由にだって……僕の出した結論以上のものを見出せるはずだ」



真宮寺「……自力で気づけるはずなんだ」



真宮寺「違うかい?」



キーボ「………」


445 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:14:20.23 ID:N/vkYi+RO



真宮寺「……もし、どうしても自分から理由に気づけないというのなら、ある程度は僕から話しても良い」

真宮寺「だけど、自力で気づくことすらできない身の程で、夜長さんに対して、何をしてあげられるだろうか?」

真宮寺「自力で気づくことすらできない者がーーーどうやって人の複雑な気持ちに……夜長さんの心に向き合えるというのだろうか?」



キーボ「………」



真宮寺「……そのことを踏まえた上で、よく考えて欲しいんだ」



真宮寺「夜長さんが、ああなってしまった……その理由を、ネ」


446 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/29(日) 00:15:52.21 ID:N/vkYi+RO



キーボ「………」






キーボ「…………」









キーボ「………………」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


447 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:06:32.69 ID:h3Y4QDXJO



キーボ(ーーー真宮寺クンにああ言われてから、約半日が過ぎました……)


キーボ(今日は休日であったため、充分な時間が用意されていました)


キーボ(その間に、ボクは思考を繰り返し、それをまとめーーー)




キーボ(ーーーボクとしての “ 解 ” を出した)




キーボ(なぜ、アンジーさんが、ああなってしまったのか?)


キーボ(その解を携えて、今のボクは、修練場の扉の前にいる)


キーボ(ボクが、 “ 解を出した ” と、真宮寺クンにメールを送った後に、 “ 指定した時間に修練場で話そう ” と返信されたのです)


キーボ(故に、今のボクは、修練場の扉の前にいる)




キーボ(……ボクの出した解が、完全に正しいとは限らない。いや、完全とは到底言えないものでしょう)




キーボ(だからこそ、より正しい解を、見出すために、ここにいる)




キーボ(最良の結果を求めて、こうしてここにいる)


448 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:08:02.20 ID:h3Y4QDXJO






キーボ(……ボクに、痛覚は無いはずなのに……)









キーボ(……また、こんな、気持ちになるだなんて……)





449 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:09:24.44 ID:h3Y4QDXJO



キーボ(ーーーそれでも、ボクは歩み続ける)


キーボ(そうしないと、前に進めないから)


キーボ(辿り着けないものがあるから)


キーボ(向き合えないものがあるから)




キーボ(だから、ボクは歩む)




キーボ(今ここで……)


キーボ(……ボクの中にある、みんなの『想い』と共にーーー)




キーボ(ーーーいざーーーー)




ガチャッ……


450 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:10:57.63 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「ーーー来たようだネ」

キーボ「……ええ、来ましたよ」

キーボ「ボクとしての、解を携えて」



バタンッ……ガチャッ!



真宮寺「ーーーそれなら、さっそく聞かせて貰うヨ? キーボ君」

キーボ「………」

真宮寺「なぜ、夜長さんは、ああなってしまったのか?」



真宮寺「その解をーーー」



真宮寺「ーーー他ならない、君の推理を、ネ」


451 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:12:47.24 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……結論から言わせて頂きます」



真宮寺「………」



キーボ「アンジーさんが、ああなってしまったのはーーーー」









キーボ「ーーー “ こわいから ” です」


452 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:14:09.52 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「ーーーこわい、ネ……」



キーボ「………」



真宮寺「……一応確認しておくけど、夜長さんが、何をこわがっていると言うんだい?」



真宮寺「まさかとは思うけど、君が瀞霊廷に住むことで離れ離れになってしまうことーーー」



真宮寺「ーーー “ それだけ ” が、こわいなんて、言うつもりはないよネ?」


453 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:15:42.34 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……そうですね」

キーボ「 “ それだけ ” ではありませんよ」

真宮寺「………」

キーボ「 “ それだけ ” ならば、あんな風に、震えたりはしない……」

キーボ「ならば、アンジーさんがこわがる理由は、他にもある。いや、むしろ、それこそが、あんな風に震えてしまう最大の理由なのでしょう」

キーボ「……あの身体の震えは、その理由が根幹となったものでありーーー」

キーボ「ーーーボクが瀞霊廷に住めるという事実が、震えを誘発してしまった」

キーボ「こわがる、最大の理由を、想起させてしまった」

キーボ「そういうこと、なのでしょう」


454 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:16:24.89 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……それで、結局それは、何なのかな? キーボ君?」



キーボ「………」



真宮寺「夜長さんが、他に、こわがっていることって、サ」


455 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:17:19.97 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……アンジーさんがこわがっているものーーー」






真宮寺「………」









キーボ「ーーーそれは、 “ 死 ” です」


456 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:21:10.19 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」



キーボ「……これは、事故や事件などに巻き込まれて “ 死 ” を迎えることだけを恐れているのではなくーーー寿命による “ 死 ” をも恐れているんです」



真宮寺「寿命、ネ」



キーボ「ええ、寿命です」

キーボ「事実として、流魂街の住民には、寿命があります」

キーボ「それも、【瀞霊廷に住める者達とは異なり】【短い時間の中で】【新しい命に生まれ変わらなければならない】ーーー」



キーボ「ーーーそんな寿命が」



真宮寺「………」



キーボ「……生まれ変わりとは、言い換えるのならば、現在有している自己が喪われ、全く違う新しい自分に存在を書き換えられるということです」

キーボ「ボクは、それを、ある意味での “ 死 ” であると考えています」


457 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:23:26.23 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……アンジーさんもまた、同じように考えている」

キーボ「故に、それをこわがっている」

キーボ「しかも、この流魂街では、いつ自分が輪廻の輪を通り、生まれ変わることになるかわからない」



真宮寺「………」



キーボ「……現世の出生率が増加した場合は、尸魂界の魂魄には輪廻の輪を通って現世の生命に生まれ変わって貰う必要が出て来ますしーーー」

キーボ「ーーー現世で多数の死亡者が出て、その魂魄が尸魂界に来た場合は、それによる世界バランスの変化を修正する必要がある。つまりは、これまで尸魂界にいた魂魄は輪廻の輪を通らなくてはならない」

キーボ「そう、現世の状況次第では、いつ自分が輪廻の輪を通らされるか、わからない」



キーボ「……いつ、輪廻の輪の中で、自己を喪うことになるか、わからない」

キーボ「いつ、現世のどこの誰に生まれ変わることになるか、わからない」



キーボ「そうした、 “ 死 ” を、いつ迎えても、おかしくはない」



キーボ「それを思えば、アンジーさんがあんな風に震えて、こわがるのは当然の反応でしょう」


458 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:31:00.30 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……転生はある意味での “ 死 ” であり、それをこわがっている、ネ……」

キーボ「………」

真宮寺「……だけど、なんで夜長さんまでこわがるんだい?」

真宮寺「……彼女には、神さまがついているんだヨ?」

真宮寺「その神さまから、元気の出る言葉をかけて貰って……それで勇気を湧き上がらせればーーー」



キーボ「ーーーそういうわけにもいかなかったのでしょう」


459 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:32:10.78 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……なぜなら、今のアンジーさんはーーー」



真宮寺「………」












キーボ「ーーー神さまの声を、しっかりと聞くことができないのでしょうから……」


460 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 08:33:48.28 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」



キーボ「……神さまの声が生前と同様に聞こえていれば、その神さまに元気の出る言葉をかけて貰い、勇気を湧き上がらせることもできたかもしれません」



キーボ「そうした勇気をもって、生まれ変わりという “ 死 ” を、受け入れることもできたかもしれない……」



キーボ「……しかし、この尸魂界では、アンジーさんの定義する神さまの声を、生前のように聞くことができない」



キーボ「だから、生まれ変わりを……今の自分の “ 死 ” を、受け入れることはできなかった」



キーボ「だから、ああして、こわがっているんです」


461 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:04:09.67 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……神さまの声が聞こえない、ネ……」

キーボ「……ええ、そうです」

真宮寺「そう思う根拠は、何かあるのかい?」

キーボ「……主に二つあります」

真宮寺「………」

キーボ「一つ目の根拠、それは、アンジーさんがこの世界で神さまの言葉を述べる際に、『きっと神さまは〜』という表現を何度も使っているということです」

キーボ「もし、生前と同じように、神さまの声がしっかりと聞こえるのであればーーー何度もああいった言い回しはしないでしょう」



真宮寺「……なるほど、ネ」



キーボ「そして、二つ目の根拠ですがーーーー」






キーボ「ーーーそれは、この屋敷に来た当初、アンジーさんの部屋に美術品の一切がなかったことです」


462 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:06:06.28 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」



キーボ「……生前のアンジーさんは、自分が美術品を作ることが可能なのは、神さまのおかげであるかのような発言をしていました」

キーボ「それはすなわち、アンジーさんの “ 才能を発揮できる条件 ” には、 “ 神さまの声が聞こえること ” が含まれていたということになります」

キーボ「逆に言えば、神さまの声が聞こえない場所では、才能を発揮できず、納得のいく作品が作れないということでもあります」

キーボ「そして、アンジーさんの部屋には美術品の一切がなかった」

キーボ「それは、アンジーさんが自分で納得のいく作品を作ることができない、すなわち才能を発揮できる状態にないことを意味している」

キーボ「そう、その才能を発揮する上で、必要となる神さまの声が聞こえないからーーー」



真宮寺「………」



キーボ「ーーーそうして、神さまの声が聞こえないが故に、神さまに元気の出る言葉をかけて貰うことができない」

キーボ「神さまのもたらす勇気をもって、恐怖を、抑え込むことができない」

キーボ「それでは、生まれ変わりという “ 死 ” を受け入れるなど、到底できやしない」



キーボ「そういうことなのでは、ありませんか?」


463 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:07:55.61 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……神さまの声が聞こえないのならーーーどうして神さまの声が今でも聞こえているかのような発言をする必要があるんだい?」



キーボ「………」



真宮寺「どうして、素直に神さまの声が聞こえないと、言わないんだい?」



キーボ「……そんなの決まっているじゃないですか」

キーボ「そうしないと、耐えられなかったからです」



キーボ「死の恐怖に」



真宮寺「………」


464 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:09:32.90 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……今のアンジーさんは、生前の時とは違う」

キーボ「常に自分を導いてくれて、なおかつ最大級に信頼を寄せる神さまの声を、生前のように聞くことができなくなった」

キーボ「才能を振るうことも叶わなくなった」

キーボ「ただ、この流魂街で、生まれ変わりという名の “ 死 ” を待ち続けるだけ」



キーボ「……こわいに決まっています」



キーボ「そのこわさに耐えるためには、神さまに頼るしかなかった」



キーボ「だから、アンジーさんは【神さまの声が】【生前と同様に】【聞こえていることにする】しかなかったんです」



真宮寺「………」


465 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:10:45.10 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……いえ、ああして身体を震わせているところを見るに、完全に耐えきれているわけではないのでしょう」



キーボ「ですが、それでも耐えるために、今でも【神さまの声が】【生前と同様に】【聞こえていることにする】しかなかったんです」



真宮寺「………」



キーボ「……キミがそうして、正気でいられることがその証明でしょう」


466 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:12:36.35 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……どういう意味かな?」

真宮寺「どうして、そこで、僕が出てくるんだい?」



キーボ「……人は、【一歩離れた場所から】【落ち着いていない誰かを見ることによって】【自分を落ち着かせることのできる】存在でもあるーーー」



キーボ「ーーーキミにも、よくわかる理屈だと思いますが」



真宮寺「………」



キーボ「実際にキミは、アンジーさんが、【神さまの声を】【聞こえていることにした】ーーーその姿を見ていたのではありませんか?」



真宮寺「!!」



キーボ「……見ていたからこそ、自分の “ 過去 ” と向き合うことができた」

キーボ「……冷静に見つめ直すことができた」

キーボ「だからこそ、そうして正気を保てている」



キーボ「そう、でしょう?」


467 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:14:23.72 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「………」






真宮寺「…………」









真宮寺「………………」


468 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:15:59.83 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……そうだネ。その通りだヨ」

キーボ「!」

真宮寺「……僕は、この世界に来たばかりの頃、正気を保つのが困難だった」

真宮寺「死神からこの世界に関する説明を受ける際は、医療所の中で行われーーー」

真宮寺「ーーー途中で何度も鎮静剤を投与され、安静にするよう言われたり、妙な医療機器を頭に取り付けられたりもした」

キーボ「………」

真宮寺「それから……親切な死神からカウンセリングを受けるなどして、いくらか落ち着いたけどーーー」



真宮寺「ーーーそれでも、ずっと正気を保っていられるわけじゃあなかったんだ」


469 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:17:27.06 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……そんな中で、この世界に来た他のみんなから、キーボ君が言うような状態の夜長さんを、見せられた……」

真宮寺「それで……いろいろと、思い、知らされた、ん、だヨ……」

キーボ「………」

真宮寺「……その後、茶柱さんに投げ飛ばされたり、百田君に何発か殴られたりもした」

真宮寺「だけど、その二人を含めたみんなと対話して、支えられてーーー」



真宮寺「ーーーその結果、どうにか今のように、正気を保ち続けることができるようになった」



真宮寺「……だから、僕が正気でいられるのは、君の言う通り、夜長さんのことがあるからなんだ」

真宮寺「それは、確かな事実だヨ」



キーボ「……やはり、そうでしたか」


470 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:20:41.55 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……一応言っておくけどサ……」

真宮寺「……百田君達は、決して夜長さんを見捨てて、自分達だけ別の場所に行ったわけじゃないからネ?」



キーボ「……わかっていますよ。そのくらい」

キーボ「百田クン達は、アンジーさんのためにここに残るだなんて、できるはずがなかった」

キーボ「なぜなら、残ってしまえば、アンジーさんの心を殺してしまうことになるのですから」



真宮寺「………」


471 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:23:11.82 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……アンジーさんだって、生前のことを何も振り返らなかったわけではないのでしょう」

キーボ「きっと、アンジーさんは、自分の抱える過去と向き合った」

キーボ「だからこそ、百田クン達を引き止めるようなことはしなかったしーーーそれどころか、笑顔で送り出した」



キーボ「そうやって、みんなを、瀞霊廷へと……誰もが憧れる世界へと送り出したのでしょう」



キーボ「ボクを瀞霊廷へと、送り出そうとした時のように……」



真宮寺「………」



キーボ「……そんな中で、百田クン達が空鶴さん達に無理を言って、この屋敷に居座ったりすれば、どうなるか?」

キーボ「アンジーさんのために、百田クン達が自分の可能性を閉ざしてしまったら、何がどうなるか?」

キーボ「それは、アンジーさんに罪悪感を募らせ……最終的に心を殺してしまいかねない」

キーボ「故に、百田クン達は、アンジーさんを残して、瀞霊廷に行くしかなかったのでしょう」


472 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:26:12.04 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……もちろん、百田クン達もアンジーさんのために何かできることはないか必死に考えたとは思います」

キーボ「彼らが、真宮寺クンが言っていたような夢を想い描き、それを目指すようになった理由ーーー」

キーボ「ーーーそれは、彼ら自身の純粋な夢ということもあるでしょうが、アンジーさんに元気になって欲しいという気持ちもあったはずです」



真宮寺「………」



キーボ「だからこそ、東条さん、茶柱さん、ゴン太クンの三人は、人の心をケアする方法を学び、それをもってアンジーさんに元気になって貰えないかと考え、救護部隊を目指した」

キーボ「だからこそ、赤松さん、王馬クン、天海クン、星クンの四人は、アンジーさんの心に届いて元気になれるような演奏や芸を編み出そうと考え、音楽芸人を目指した」



キーボ「だからこそ、百田クンは科学者の道を選んだ」



キーボ「そうした道の上で、入間さんやその発明品から発想力というものを学び、それを我が物とすることに決めた」

キーボ「アンジーさんの心に届くような言葉を、そのための手法を、発想できるようになるために」

キーボ「入間さんは、それにできる限り協力して、百田クンを支える形で、アンジーさんに元気になって貰おうとした」



キーボ「そうして、それぞれ、アンジーさんが元気になるためには、どうすれば良いかを考え、実行に移したのでしょう」



真宮寺「………」



キーボ「……ですが、現状それは上手くいっていない」

キーボ「故に、アンジーさんは現在、ああなってしまっている」

キーボ「……ただ、それだけのことなのでしょう」


473 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:27:44.96 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……君の言う通りだヨ、キーボ君」

真宮寺「百田君達は、決して、夜長さんを見捨てたわけじゃない」

真宮寺「それどころか、時間さえあれば、夜長さんに対して何かできないかを考えている」

真宮寺「それをわかってくれたようで何よりだヨ……」



キーボ「………」



真宮寺「……そう、だからこそ、夜長さんは、ああなった」

真宮寺「彼女の抱える死の恐怖を、誰も退けることができなかったが故に、ああなってしまった」

真宮寺「……これまで、聞こえるようにした神さまの声と、君の存在で抑えていた死の恐怖ーーー」



真宮寺「ーーーそれが、君が瀞霊廷に住めると知った瞬間に、吹き出してしまった」



真宮寺「君と離れ離れになることの淋しさのあまり、死の恐怖が吹き出してしまった」

真宮寺「だから、夜長さんは、ああなってしまったんだヨ」


474 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:28:56.27 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「ーーーアンジーさんは、自分と誰かとの間に、深い繋がりが欲しかったんですね」

キーボ「それこそ、空鶴さんと岩鷲クンの関係のようなーーー」



キーボ「ーーー他者が入り込めない程の、深い繋がりが」



真宮寺「………」



キーボ「……アンジーさんは、生まれ変わりという名の、今の自分の “ 死 ” に怯えていた」

キーボ「故に、それを抑えようと、誰かを求めた」

キーボ「誰かとの、深い繋がりを持とうとした」

キーボ「そして、その対象は、最初は真宮寺クンだった」



真宮寺「………」


475 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:31:32.89 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……キミにそれを求めることは、アンジーさんとしても迷いがあったでしょうがーーー」



キーボ「ーーーあの学園での、当時の状況を考慮すれば、アンジーさんは、キミのことをトラウマになるレベルで恐怖はしていないはずです」



真宮寺「………」



キーボ「それに加えて、今のキミは信頼できる言動を取っている」

キーボ「アンジーさんもまた、キミと一緒にいたい思えるくらいには、今のキミを信頼していた」

キーボ「故に、アンジーさんは、今のキミならば、死の恐怖を抑えるに足る存在であると考え、キミを居候させることを空鶴さんに頼み込んだ」

キーボ「そうして、可能な限り、二人、一緒にいることにした」

キーボ「ボク達が再会したばかりの時、一人で渡しに行くことも可能な回覧板を、二人で渡しに行っていたくらいには」



真宮寺「………」


476 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:32:34.65 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……ですが、やはり、どこか上手くいかなかった」

キーボ「……まあ、無理もないことですね」



真宮寺「………」



キーボ「……そこで、新たに現れた存在が、ボクでーーー」

キーボ「ーーーそれが、百田クン達と同じように瀞霊廷に住めるとなればーーー」






キーボ「ーーー戸惑いも、しますよ」


477 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:35:36.22 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「ーーー君は、本当によく、わかっているようだネ……」

真宮寺「そう、君は間違いなく夜長さんの希望だった」

キーボ「………」

真宮寺「君はロボット。常識的に考えて瀞霊廷に住めるはずのない存在だ」

キーボ「……ええ、まあ……」

真宮寺「故に、流魂街……この志波邸に留まり続けることになると考えるのが自然だ」



真宮寺「……しかも、君がこの志波邸に留まれば、どうなるか?」

真宮寺「君は今後、誰を最優先対象とすることになるか?」

真宮寺「言うまでもなく、夜長さんだ」



キーボ「………」



真宮寺「それは、夜長さんにとっても同じこと」

真宮寺「お互いを、これ以上にないほど大切にできる関係を築き上げることができる」

真宮寺「夜長さんは、そう考えたはずだ」


478 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:36:50.47 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「だけど、君が瀞霊廷に住めるとなると話は変わる」

真宮寺「瀞霊廷に住めるなら、ここにいる理由はなくなる」

真宮寺「夜長さんは、君を送り出さなくてはならない」



真宮寺「自分の抱える過去を、理由に」



キーボ「………」



真宮寺「そうして、君は夜長さんから離れ、入間さん達と一緒にいることになる」

真宮寺「そんな中で、君が夜長さん個人を最優先対象にするのは難しい」

真宮寺「そうだよネ?」


479 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:38:24.48 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……そうですね」



キーボ「アンジーさんと一緒に住めるのは、今日来た通知によれば、あと一週間しかない」



真宮寺「………」



キーボ「……もちろん、空間転移装置がある以上は、ボクが瀞霊廷に住んだ後も定期的にアンジーさんと会うことはできるでしょうがーーー」







キーボ「ーーー流石に、アンジーさんだけを最優先で……というのは困難であると言わざるを得ません……」


480 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:39:59.82 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「ーーーそれに加えて、君は瀞霊廷に住むことによる特権を享受できることになる」



真宮寺「輪廻転生の輪から逃れることが可能となる、特権を、ネ」



キーボ「………」



真宮寺「それは、生まれ変わりという名の “ 死 ” に怯える夜長さんにとって、羨みの対象となり得るんだ」


481 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:41:51.35 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「羨み、ですか……」

真宮寺「……それも、百田君達に対するものよりも、ずっと大きな、ネ」

キーボ「……まあ、確かに、ボクは百田クン達とは違いますからね……」

真宮寺「………」

キーボ「……百田クン達は、瀞霊廷に住めるため、かなりの長生きが可能ですがーーーそれでも寿命はある」



キーボ「……だけど、ボクは、違う」



真宮寺「………」



キーボ「それは、否定できないことです」


482 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:42:48.94 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……そうだネ。その通りだヨ、キーボ君」



キーボ「………」



真宮寺「君には寿命がない」



真宮寺「君は、永遠を持っている」



真宮寺「ロボットであるが故に」


483 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:45:08.69 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……もちろん、機械的な寿命はあるかもしれないけどーーー悪くなった部分は取り替えれば済む話だ」

真宮寺「入間さんに頼めば、そういったことを自動でしてくれる発明品を作ってくれるんじゃないかな?」



キーボ「………」



真宮寺「……そうなれば、君は永遠だ」

真宮寺「君は、永遠の存在となり得るんだ」



真宮寺「……瀞霊廷の霊力ある魂魄が、倫理を廃した時、寿命を超越し永遠になれる可能性を持つ存在だとするならばーーー」



真宮寺「ーーー君は倫理を廃さずとも、永遠になれる存在であると言える」



キーボ「………」



真宮寺「……短い時間の中でしか生きられない、夜長さんとは、真逆の存在だ」

真宮寺「それが、夜長さんにとって、どう見えるか?」

真宮寺「その相手と、深い繋がりを持つことができるだろうか?」

真宮寺「一緒にいて、死の恐怖を抑えられるだろうか?」



真宮寺「……想像に難くない話だヨ」



真宮寺「期待と現実のあまりのギャップに、夜長さんがああなってしまうのは、無理もないことだろうネ……」


484 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:46:19.79 ID:h3Y4QDXJO



真宮寺「……そんな中で、君がそこまで現状を理解している」

真宮寺「それほどまでの進化を、君は遂げている」

キーボ「………」

真宮寺「それは、霊体という自由度の高い身体になって電子頭脳が活性化したが故なのかーーー」

真宮寺「ーーーそれとも、単純に “ 頼れる誰か ” がいないが故に成長したのかはわからないけどーーー」

真宮寺「ーーーそうして、君が進化したことは、今の状況において、とても喜ばしいことだヨ」



キーボ「………」



真宮寺「……うん、この分なら、君が夜長さんの神さまを全否定することはなさそうだネ……」


485 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:48:00.68 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……そんなこと、するはずがないでしょう」



真宮寺「………」



キーボ「神さまを、全否定する?」

キーボ「それは、人の心の基盤を破壊するということですよ」


486 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/30(月) 09:49:27.67 ID:h3Y4QDXJO



キーボ「……人には、それぞれ、心の基盤としている過去があります」

キーボ「家族、友人、恩師、恋人、夢……人によって内容は変わるでしょうが、それでも基盤としている過去がある」



真宮寺「………」



キーボ「アンジーさんの場合、それが神さまだった」



キーボ「……そう、神さまは、人によっては、かけがえのない心の基盤、立派な過去なんです」

キーボ「なのに、その神さまが存在する可能性を奪い尽くせばどうなるか?」

キーボ「そうやって心の基盤を破壊するような真似をすれば、人に何を与えることになるか?」



キーボ「……計算するまでもないことです」



キーボ「ボクは、そういった行為に手を染めたくなどありません」



真宮寺「………」


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