【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】

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29 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 22:22:13.09 ID:mqKwt4SvO



真宮寺「……キーボ君?」

キーボ「教えてください、二人とも! キミ達も含めて、みなさんには、早急にお伝えしなければならないことがーーー」

アンジー「……伝えなきゃいけないことって、どんなことー?」

キーボ「……!」

真宮寺「……まずは、それを、一番最初に僕らに教えてくれないかな? でないと、他の人にも、すぐに伝えるべきかどうか判断できないヨ」

キーボ「あっ…? いや、でもーーー」

アンジー「キーボ? まずはアンジー達に教えてー?」

アンジー「……ショックな話だったらー、最初に知る人は少ない方が良いと思うよー?」



キーボ「……!!」



真宮寺「……そういうわけで、教えてくれるかな、キーボ君」



真宮寺「君が知っていることについて」



30 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 22:23:54.05 ID:mqKwt4SvO



キーボ「……わかりました。お教えします」



真宮寺「………」

アンジー「………」



キーボ「実はーーーー」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー



31 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:03:39.87 ID:mqKwt4SvO



キーボ「ーーーということなんです」

アンジー「……なるなるー、よくわかったよー!」

真宮寺「それが、君の知っていることなんだネ……」

キーボ「ええ、まあ……」

キーボ「……なぜ、ボク達、【超高校級が集められて】【コロシアイをさせられたのか】まではわかりませんでしたがーーー」



キーボ「ーーー【黒幕を突き止め】【全て終わらせました】」



キーボ「それは、確かな事実です」



アンジー「………」



キーボ「……ボクはこの話を今すぐ赤松さん達に伝えるべきだと思います」



キーボ「そうでないと、赤松さん達はーーー」



真宮寺「ーーーその必要はないヨ」



32 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:05:16.85 ID:mqKwt4SvO



キーボ「え?」

真宮寺「今すぐ赤松さん達に伝える必要はないヨ」

キーボ「はっ? いや、でもーーー」

真宮寺「というか、君の語ったことは、赤松さん達としても大体検討のついていることだからネ」

キーボ「!?」

キーボ「それは、どういうことですか?」

アンジー「……実はねー、見てたんだよー」

キーボ「……見ていた?」

真宮寺「そう、『彼』が殺された時……魂魄が肉体から抜け出た瞬間ーーー」



真宮寺「ーーー【誰が】【どの部屋に入っていったのか】をネ……」



キーボ「………!!?」



33 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:06:49.11 ID:mqKwt4SvO



真宮寺「そして、その後、どんな理不尽が起きたかは僕達も知っての通り……」

真宮寺「つまりは、そういうことだったんだろうネ……」

アンジー「だからねー? キーボがいま言ったことについては、みんな大体わかってるんだー」

真宮寺「【ずっと前から何度もコロシアイが起きていた】という話も、『彼』の証言から、ある程度は検討のついていたことーーー」



アンジー「ーーー【黒幕を突き止め】【全て終わらせた】っていうのは、今ここで、初めて知ったことだけどーーー」



キーボ「………!??」



アンジー「ーーーみんな、いつかそうなるってことは、信じてるからねー」

アンジー「だから、急いで伝えるような話でもないしー」

アンジー「……キーボの知ってること、すぐに伝える必要はないと思うよー?」



キーボ「………」



34 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:08:58.23 ID:mqKwt4SvO



キーボ「……しかし、裏付けとなる証言は早めに知っておいた方が良いのではないでしょうか?」

キーボ「でなければ……同じく死んだ、あの人でなしが、赤松さん達のところに向かって、口八丁で騙して混乱させてくる可能性だって出てきます」

キーボ「ここが死後の世界である以上、あの人でなしに何かされる可能性はゼロではありません」

キーボ「ならば、早めにボクの証言を伝えた方がーーー」



真宮寺「その必要もないヨ」



キーボ「……それは、なぜでしょうか?」



真宮寺「……君の語ったことが真実なのであれば、君が恐れているような事態には絶対にならないからサ」



キーボ「?」



アンジー「さっき、アンジーは言ったよねー?」



アンジー「一部を除いて、って」



35 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:10:36.95 ID:mqKwt4SvO



キーボ「……一部を除いて?」



真宮寺「……そう、現世で死を迎えたとしても、全ての魂魄が尸魂界に送られるわけじゃないんだ」



真宮寺「生前、非道な行為に手を染めた者は、地獄に送られる決まりだからネ」



キーボ「………」



36 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:11:41.55 ID:mqKwt4SvO









キーボ「……えっ、?」








37 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:12:58.78 ID:mqKwt4SvO



真宮寺「……何かな?」

キーボ「……あっ、いや、その……」

アンジー「………」

真宮寺「……このことで何か気になることがあるなら、言ったらどうだい? いつだって受け付けるヨ?」



キーボ「……いえ……」



キーボ「……もう、 “ 意味はない ” んでしょう……?」



真宮寺「………」



キーボ「なら、地獄に送る必要もない……」



キーボ「そういう……こと、なんでしょう……」



アンジー「………」



38 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:14:48.02 ID:mqKwt4SvO



真宮寺「……話を戻すけど、生前、非道な行為に手を染めた者は、基本的に地獄に送られる決まりになっている」

真宮寺「少なくとも……【その時代の現世】【罪を犯した場所に定着した倫理から見て】【あまりにも非道な行為に手を染め】【人を大きく傷つけ】ーーー」



真宮寺「ーーー【そうした罪を、罪とも思わず】【死後の世界でも非道を繰り返し行う気があるような者】ならば、間違いなく地獄に送られるという話だ」



キーボ「………」



真宮寺「そういう者は、 “ 地獄の鎖 ” に囚われ続けーーー」



真宮寺「ーーー “ クシャナーダ ” と呼ばれる地獄の管理者の手によって、責め苦を受け続けることになるのサ」



アンジー「………」



真宮寺「 “ 人でなし ” は地獄に送られる」

真宮寺「 “ 人でなし ” である限り、地獄から解放されることはない」

真宮寺「だから、赤松さん達が騙されてーーーなんてことには絶対にならないヨ」



キーボ「……なるほど、よくわかりました」



39 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:16:30.04 ID:mqKwt4SvO



キーボ「ーーーただ、真宮寺クン達の話で気になったことが二つあります」

真宮寺「……何かな?」

アンジー「なーにー? キーボ?」

キーボ「……まず、一つ目に気になったことですがーーー」



キーボ「ーーーキミ達は、なぜボク達、【超高校級が集められて】【コロシアイをさせられたのか】についてーーー」



キーボ「ーーーこの死後の世界から、何か突き止めることはできたのでしょうか?」



キーボ「もし、そうなら、どうか教えて貰いたいのですがーーー」



真宮寺「……いや、残念ながら、何もわかっていないままだヨ」

アンジー「……神さまも、きっとよくわかんないってー」



40 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:18:47.67 ID:mqKwt4SvO



キーボ「……一応確認しておきますけど、この……ソウル・ソサエティにいる他の住民に対して、聞き込みはしていないんですか?」

真宮寺「……しているヨ」

真宮寺「……現在も過去も、僕達が巻き込まれた案件に関して何か突き止められることはないか、定期的な聞き込みは行っている」



真宮寺「 “ 現世で生き残ったみんながどうなったか? ” なども含めてネ」



キーボ「……それは、キミ達よりも前に亡くなられた方に対してだけですか?」

アンジー「いやいやー? そんなことはないよー?」

真宮寺「夜長さんの言う通りだヨ」

真宮寺「僕達は、僕達よりも……それこそ今日から見て何日か前に亡くなって、新しく尸魂界に来た人達にだってーーー定期的な聞き込みを続けている」

アンジー「……今日から一ヶ月前の人でも、十日前の人でも、三日前の人でも、新しい人が来るたびに、聞き込みしてーーー」



アンジー「ーーーおとといだって、そうしてたからねー?」



キーボ「……そうでしたか」



41 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:20:08.89 ID:mqKwt4SvO



キーボ「………」






キーボ「…………」









キーボ「………………」



42 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:21:53.79 ID:mqKwt4SvO



キーボ(……なるほど)


キーボ(どうやら、この死後の世界でも、『世界の管理者』が存在し、世界に住まう人々の記憶を操作しているーーー)




キーボ(ーーーそう、考えて、間違いなさそうですね)




キーボ(……この世界が、死後の世界ならば、そこにいるアンジーさん達が何も知らないままでいる……という状況が成立するはずがない)


キーボ(あれから二ヶ月も経過したというのならば、尚更です)


キーボ( “ あの事実 ” を考慮すれば、そのような状況が、成立するはずがないのです)


キーボ(この世界に、ボクやアンジーさん達以外の人がいないなら話は別ですがーーーボク達以外にも人は存在するようですからね……)


キーボ(その条件下で、アンジーさん達が何も知らないままでいる……という状況など、 “ あの事実 ” を考慮すれば、成立するはずがないのです。普通ならば)



43 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:23:18.16 ID:mqKwt4SvO



キーボ(……ならば、どうして、このような状況が成立しているのか?)


キーボ(……アンジーさん達が、ボクに真相を隠しているということはないでしょう)


キーボ(真相を知っているのならば、ボクに隠したところで意味がないことは知っているはずですからね)


キーボ(さっきボクが、とっさに誤魔化した時だって、もっと追求するようなことを言ったはず)


キーボ(それでも、今の状況が成立する理由があるとすればーーー)




キーボ(ーーーこの死後の世界に来た者達は、生前の倫理観をもって死後の世界を混乱させないようーーー)




キーボ(ーーー『世界の管理者』から、ある程度の記憶操作を受けていると考える他ない)



44 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:25:19.40 ID:mqKwt4SvO



キーボ(アンジーさん達とボクの記憶に食い違いがないところを見るに、個人レベルの倫理観ならば内容はどうあれ、いちいち記憶操作は受けないようですがーーー)




キーボ(ーーー民衆レベルで溶け込んだ倫理観は、それも偏ったものは、記憶操作の対象となる可能性は極めて高い)




キーボ(ボク達のように民衆から “ 外れた ” 存在とは異なる、ごくごく普通の民衆である他の死者達ーーー)


キーボ(ーーーすなわちボクがここに来た時に見た人々などは、きっと記憶操作を受けている)


キーボ(おそらくは、あの、 “ 人でなし ” の場合であっても、同じように記憶操作を受け、無害な存在へと変わるのでしょう)


キーボ(でなければ、時代によっては、偏った倫理観が死後の世界でもはびこり、無視できない混乱を発生させる可能性がある。それを避けるためには、記憶操作が必要となる)


キーボ(故に、アンジーさん達は、誰からも真相を聞くことができていないのでしょう。聞く対象の記憶が操作されているとすれば当然のこと)




キーボ(……さっき、とっさにああ言って誤魔化してしまいましたが、結果的には良かったかもしれませんね)


キーボ(何事も大勢に伝えるためには、最初に伝えるべき人、場所、状況を、よく考えなくてはならない)


キーボ(……そうです。アンジーさんと真宮寺クンに対し、ここでいきなり “ あの事実 ” を伝えるべきではーーーー)



45 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:26:56.81 ID:mqKwt4SvO



真宮寺「……また、止まってしまったネ、キーボ君」

アンジー「ひょっとしてー、石炭が切れちゃったりー?」

キーボ「……なっ、違いますって! ボクのエネルギー源は石炭でもありません!」

キーボ「……動きが止まったのは、単純に思考の処理に時間がかかったからです」

キーボ「人が考えごとをしている最中にじっとしているようなものです。大したことではありませんよ」



真宮寺「……そうかい? なら良いけどーーー」



アンジー「ーーーところで、キーボ? さっき言ってたことの、ふたつ目って、なーにー?」



キーボ「……ああ、二つ目に気になったことについてですね」



キーボ「それなら単純にーーーー」



46 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:28:11.99 ID:mqKwt4SvO



キーボ「ーーーひょっとして、キミ達は、赤松さん達とボクが再会することを、避けようとしているのではないか?ーーー」






真宮寺「………」

アンジー「………」






キーボ「ーーーそれが、二つ目に気になったことです」



47 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:32:01.49 ID:mqKwt4SvO



真宮寺「……確かに、僕達は、キーボ君が赤松さん達と今すぐ再会することを避けようとはしているヨ……」

キーボ「やはり、ですか」

真宮寺「だけど、それはーーー」

アンジー「それはねー! いま、楓たちは、大事な時期だからなのだー!」

キーボ「……大事な時期?」

真宮寺「……うん、最近の赤松さん達は、この死後の世界での生活基盤を形作るためにいろいろしていて、それで忙しくてネ……」

真宮寺「……故に、君と赤松さん達をいま会わせるわけにはいかない」

アンジー「もし、キーボが来たって知ったらー、楓たちは、無理にでも会おうとするだろうねー」

真宮寺「だから、みんなが落ち着くまで、我慢してくれると助かるヨ……」



48 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:33:53.96 ID:mqKwt4SvO



キーボ「……わかりました。そういう事情があるのであれば、仕方のないことでしょう」



真宮寺「………」



キーボ「ですが、これだけは聞かせてください」

キーボ「赤松さん達は、どちらにいるのでしょうか?」



アンジー「………」



キーボ「……赤松さん達が現在いる場所で何かあった場合を考慮すればーーー赤松さん達の居場所は把握しておいた方が良い」

キーボ「なので、そこだけは聞かせて頂けませんか?」



49 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:35:27.82 ID:mqKwt4SvO



真宮寺「……いま、赤松さん達は、瀞霊廷(せいれいてい)の集合住宅に住んでいるヨ」



キーボ「……!」



真宮寺「……詳しくは、後で地図を見せて教えるとするヨ」



アンジー「………」



50 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/09(月) 23:37:19.80 ID:mqKwt4SvO



キーボ「……セイレイテイ……」



真宮寺「そう、瀞霊廷」

真宮寺「この尸魂界の中心部にある首都のことサ」



キーボ「首都……」

アンジー「………」



真宮寺「……ここから先の説明は、本来ならば、説明会場で、この世界の管理者から教えられる基本事項でもある」



キーボ「………」



真宮寺「……遅れちゃったけど、それをこれから僕が代わりに説明しようと思う」

真宮寺「基本事項について理解していた方が、これからの会話もスムーズに進むだろうからネ」

真宮寺「だから、君にはまず、その説明を聞いて欲しい」



キーボ「……わかりました、お願いします」



51 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 21:20:46.34 ID:cwtAYsKlO



真宮寺「ーーー尸魂界において、居住する場所は主に二つに分かれている」

真宮寺「一つは流魂街で、僕達のいるこの屋敷、君と再会した場所である、あの街は、流魂街に位置している」

真宮寺「そして、尸魂界に来た魂魄は、説明会場で世界の管理者から、この世界における基本事項を教えて貰った後、流魂街に住むことになる」

アンジー「整理券を貰ってねー!」

真宮寺「その通りだヨ。整理券を貰い、それに記された通りの区域に住むことになる」



真宮寺「基本的に、ネ」



キーボ「………」



真宮寺「だけど、条件を満たせるのであれば、瀞霊廷という、人が居住するもう一つの場所に住むことが可能となるんだ」



52 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 21:23:47.39 ID:D9Mxdk9oO



キーボ「……条件、ですか」

真宮寺「そう、条件」

真宮寺「その条件こそが、 “ 霊力 ” を有していることであり、それがあれば瀞霊廷の居住を許されるのサ」

キーボ「……霊力?」

真宮寺「霊力とは、霊的な力……いわゆる霊能力の略称サ」

真宮寺「また、そうした霊能力を扱う際に消費されるエネルギーの名称も、同じように霊力と名付けられている」

真宮寺「そうした力を、赤松さん達は死後に目覚めさせていた」



キーボ「……?」



キーボ「待ってください。どうして、赤松さん達にそんな力がーーーー」



53 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 21:25:32.20 ID:D9Mxdk9oO



真宮寺「ーーーそれは、わからない」



真宮寺「ただ、少なくとも、二ヶ月前、君を除いた僕達全員がこの世界に来た時には目覚めていたそうだヨ」



キーボ「………」

アンジー「………」



真宮寺「……僕達全員が、尸魂界の同じ時間の同じ場所に送られた時に、ネ」



54 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 21:28:03.02 ID:D9Mxdk9oO



キーボ「……時間や場所が同じだった?」



真宮寺「その通りだヨ」



真宮寺「……後から聞いた話だけど、【心中でもしない限り】【送られる時間や場所が同じになるなんて】【まずありえない】らしいんだ」

真宮寺「だけど、どういうわけか、僕達は全員、同じ時間の同じ場所にいたんだ」

真宮寺「それぞれ、死亡した時、はたまた死亡して肉体から魂魄が出て少し経った時に、意識を失いーーー」



真宮寺「ーーー気づいた時には尸魂界に来ていた」



真宮寺「……みんな、同じように、霊力が目覚めた状態で、ネ」



アンジー「………」



55 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 21:29:18.82 ID:D9Mxdk9oO



キーボ「……どうして、そんなことがーーー」



真宮寺「ーーーそれも、わからない」



キーボ「………」



真宮寺「……いま、わかることは、たった一つ」



真宮寺「君もまた霊力を持っているということだ」



56 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 21:30:20.91 ID:D9Mxdk9oO



キーボ「……はい?」






アンジー「………」

真宮寺「………」






キーボ「それは、どういうーーーー」



57 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:06:41.71 ID:DZOh/mOeO



岩鷲「おおーい、オメーら! 帰ったぞー!!」バタンッ!



キーボ「!?」



岩鷲「………っ、!?!?」



キーボ「えっ、あっ……」



岩鷲「………」



キーボ「キ、キミはいったいーーー」



岩鷲「うおおおおおおおおおおおおお!!!」



58 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:08:06.00 ID:DZOh/mOeO



キーボ「!?」

岩鷲「オメーか!」ダダッ

キーボ「!?!」

岩鷲「オメーが、アンジーちゃんと真宮寺の言ってた “ ろぼっと ” って奴だな!?」ガシッ

キーボ「え、あ、その……」

岩鷲「そうなんだな!?」キラキラ…



59 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:15:19.72 ID:DZOh/mOeO



アンジー「……そうだよー! キーボはロボットなんだよー!」

真宮寺「……彼こそが、 “ 超高校級のロボット ” キーボ君。紛れもなく僕達が話した存在サ」

岩鷲「……そうかそうか! よろしくな、キーボ!!」ガシッ

キーボ「えっ、あっ……」

岩鷲「いやー、それにしても、スゲーなおい! こんなスゲー “ ろぼっと ” なんて、俺はじめて見たぞ!」ベタベタ

キーボ「いや、ちょっと……」

岩鷲「この白髪! ゴテゴテヒヤヒヤした鉄の身体と服! 全部、アンジーちゃん達の言ってた通りだ!」ベタベタ



60 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:19:08.18 ID:DZOh/mOeO



キーボ「あっ、うっ……」

岩鷲「……ああ、そうだ! 俺の自己紹介がまだだったな!」

岩鷲「俺こそ、自称【西流魂街のーーー」



空鶴「うるっせえぞ、岩鷲!」ヒュンッ



ドゴオッッッ!!!



岩鷲「ぶほおっ、!?」



バッターンッッッ!!!



61 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:21:09.81 ID:DZOh/mOeO



岩鷲「……いてて、姉ちゃん! 何すんだよ、いきなり!?」ガバァッ



キーボ「………!?!」



空鶴「それはこっちのセリフだ!」

空鶴「汚ねえ手でベタベタ触ってんじゃねえ!! 礼儀を忘れたのか!? ああ!!」

岩鷲「あっ……!?」



キーボ「」ポカーン



岩鷲「……す、すまねえ! “ ろぼっと ” さん! この通りだ! 許してくれ!」ババッ



62 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:26:11.53 ID:DZOh/mOeO



キーボ(……この光景は、現実なのでしょうか?)


キーボ(細身の女性が一瞬で部屋の中に回り込み、体格の良い男性を一撃で部屋の外まで殴り飛ばすだなんてーーー)


キーボ(ーーーしかも、それだけの力を身に受けた男性の方もまた、すぐに立ち上がった……)




キーボ(……なるほど、この人達がーーー)




空鶴「おい、聞いてるか? “ ろぼっと ” っての」



63 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:28:01.55 ID:DZOh/mOeO



キーボ「……あっ……」



空鶴「……安心しろ。コイツには、おれがよーく言い聞かせておく」

岩鷲「………」



キーボ「……あー、はい。まあ、彼も謝っていることですし、ボクはもう別にーーー」



岩鷲「……お、おう! ありがとな、 “ ろぼっと ” さんーーー」

空鶴「黙ってろ」ゲシッ

岩鷲「ぶふぉう!?」ドザアッ!



キーボ「ーーーあのー……もしかして、あなた達がーーーー」



64 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:29:32.13 ID:DZOh/mOeO



空鶴「……おれの名は志波空鶴! この志波家の家主、そして流魂街一の花火師だ!」



キーボ「やはりあなたが、クウカクさん……」



空鶴「ああ、ついでに、この土下座してるのが、弟の岩鷲だ」カラッ

岩鷲「つ、ついで、って……」



キーボ「………」



65 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:31:31.12 ID:DZOh/mOeO



空鶴「……事情は真宮寺から全部聞いてる」



キーボ「……はい?」

真宮寺「……あァ、実はここに向かう途中で、空鶴さん達に連絡しておいたんだヨ」

キーボ「……なっ、!? そんなの、いつの間にーーー」



空鶴「ーーーしばらく、この家に泊めてやる」



キーボ「ーーー!?」

アンジー「!」

真宮寺「………」



空鶴「寝床は真宮寺に貸してる部屋を二人で使いな」



66 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:32:58.75 ID:DZOh/mOeO



キーボ「……いや、ちょっとーーー」



岩鷲「ん? ちょっと待ってくれよ、姉ちゃん。まずは俺の部屋じゃねえのか? 真宮寺の時はーーー」

空鶴「ベタベタ触る奴とされた奴を同じ部屋にできるか、バカ」

岩鷲「うっ……」



キーボ「……あのーーー」



空鶴「気にすんな、死神とのゴチャゴチャした手続きはこっちでやっておく」



67 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:36:05.00 ID:DZOh/mOeO



キーボ「……えっ、?」



空鶴「……今のテメエが、死神と会うわけにはいかねえだろ?」

空鶴「足元を示す手型一つ持たねえ今のテメエが死神と接触してみろ。不審者扱いで無駄に時間がかかることは目に見えてる」



キーボ「……ふ、不審者……」



空鶴「手続きが終われば、おれの元に通知が来る」

空鶴「テメエの手型が、おれのもとに来るんだ」



キーボ「………」

アンジー「………」



空鶴「瀞霊廷に住めるかどうかも、そこでわかるーーー」



空鶴「ーーーそんで住めるってなったら、実際に住める日まで、泊めてやる」



空鶴「……まあ、手続きなんざ普通は即日で済むんだが、テメエの場合はそうもいかねえだろうからな……」



68 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:38:12.50 ID:DZOh/mOeO



キーボ「……えーと……」



空鶴「実際に、テメエが瀞霊廷に住めるかどうかはわからねえがーーー」



空鶴「ーーーもし、この流魂街に住み続けることになったら、転生の日まで正式に居候させてやるよ」



アンジー「!!」

真宮寺「………」

キーボ「……あっ、えっ、?」



空鶴「……何年か前までは、居候が三人もいたんだ。また居候が三人になろうが、大したことでもねえ」

空鶴「まっ、なんにしろ、ここで食って寝る以上は、みっちり働いて貰う! そこは覚悟しとけ!」



69 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:40:58.33 ID:DZOh/mOeO



キーボ「ち、ちょっと待ってください!」

キーボ「ここに住むって、いきなりそんなーーー」



空鶴「ああ? なんだ、テメエ、おれの家に住めねえってか?」



キーボ「ーーーあっ、いや、そうではなく……」



アンジー「……キーボ、ここは空鶴の言う通りにした方が良いって、きっと神さまも言ってるよー?」

真宮寺「……そうだネ。彼女には逆らわないことを勧めるヨ」



岩鷲「そうだ! “ ろぼっと ” さん……いや、キーボ! 姉ちゃんに逆らったらそれはもう恐ろしいことにーーーぶべえっ!?」ドザアッ!

空鶴「雑音はともかく、住むか住まねえかハッキリしな」ゲシゲシッ

空鶴「それで、テメエの今後が決まる……!」ゴオオッ



70 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:45:15.54 ID:DZOh/mOeO



キーボ「ーーーわ、わかりました! わかりましたから! どうか、ボクをここに住まわせてください!」



空鶴「よしっ、そんじゃあ、決まりだな!」




キーボ(……ううっ、勢いで言ってしまいましたが、大丈夫なんでしょうか………)




空鶴「……ただ、今日はもう夕飯時だ、ゆっくりしていけ。それに、今日はお前ら居候の休みの日でもあるしな」



キーボ「あっ、はい……」



アンジー「………」

真宮寺「………」



71 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:46:39.50 ID:DZOh/mOeO



空鶴「……しばらくしたら飯にすんぞ」



キーボ「………」

真宮寺「………」

アンジー「………」



空鶴「……おい、岩鷲! いつまでも土下座してねえで、しゃんと立ちやがれ! そんで、ベタベタした罰として飯の準備手伝え!」グイッ

岩鷲「わ、わかったよ、姉ちゃん! いてて! そんな引っ張んなって!」ズルズル…



72 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:48:57.25 ID:DZOh/mOeO



キーボ「………」



アンジー「……あらら! キーボ、また固まっちゃってるねー」

アンジー「今度は、ゼンマイがほどけちゃったりー?」



キーボ「………」



アンジー「……うんうん、ホントにカチコチだよー、何も返さないしー」

真宮寺「……まァ、空鶴さんも岩鷲君も、強烈な個性の持ち主だからネ。思考処理のために動作を停止させてしまうのも無理はないヨ」

真宮寺「ただ、彼女が言っていた通り、キーボ君にはしばらく、僕が貸して貰ってるこの部屋に寝泊まりして貰うからネ」

真宮寺「そこは記憶領域に残して欲しいかな。なぜなら僕らは空鶴さんにーーー」



キーボ「ーーーわかってますよ! あのクウカクさんに逆らうわけにはいかないのでしょう?」



キーボ「……だったら、泊まりますよ! 誰の部屋であっても!」



真宮寺「ククク……助かるヨ」



73 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:51:12.21 ID:DZOh/mOeO



浦原「……あー、あー、スイマセ〜ン! ちょおっと、お時間よろしいでしょうか〜?」トテトテ



キーボ「!?」



アンジー「……あー、喜助ー!」

真宮寺「これはこれは……もう到着したのかい?」



浦原「ええ、ただいま到着しました〜! 毎度ご贔屓に〜!」



真宮寺「今日は、商品を買うわけではないんだけれどネ」



浦原「わかってますよ〜! これは、毎度、ウチを贔屓にして貰ってる真宮寺サンに対する特別サービスでもあるんスから!」



74 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:52:30.89 ID:DZOh/mOeO



キーボ「……え、えーと、すみません?ーーー」



浦原「………」



キーボ「ーーーあなたは、いったいーーー」



浦原「……ああっ、これは失礼しました!」

浦原「アタシ、浦原喜助という者っス!しがない駄菓子屋の店主ではありますがーーーどうぞ、よろしく!」パッパラ〜!


75 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:54:53.78 ID:DZOh/mOeO



キーボ「あっ、これは、どうも……」

浦原「どうか、キーボさんも! アタクシ共、浦原商店をご贔屓に〜!」

真宮寺「ククク……浦原さん、商売も良いけど、まずはメールで頼んだことをお願いするヨ」

浦原「わかってますよ〜! それでは、キーボさん、さっそくーーー」スッ

キーボ「ち、ちょっと、急になんですか? 近づいてきてーーー」

浦原「……あー、スイマセン、失礼ながらこれから検査をさせて頂きます」



キーボ「……検査?」



浦原「ええ、検査です」







浦原「……そのステキなボディの中に、危険物でもあれば、大事になりかねませんから」



76 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:56:39.39 ID:DZOh/mOeO



キーボ「!?」

キーボ「き、危険物ってーーー」



浦原「ーーーいやあ〜、だって、ロボットと言ったらドリルやミサイルってイメージあるじゃないっスか?」



キーボ「……あっ……」



浦原「そういったものが付いていたら、日常生活も大変でしょう?」



キーボ「……っ、」



浦原「……それにアタシ、こんな成りしてますが、科学者の端くれではありましてね」



77 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 22:58:50.48 ID:DZOh/mOeO



キーボ「科学者……?」

浦原「ええ、科学者です」

キーボ「……ここは、オカルトな死後の世界ではなかったのですか?」

浦原「確かにここは、オカルト現象の吹き荒れる死後の世界ではありますがーーー科学者は普通に存在していますよ」



浦原「実際に、入間サンという科学者の方が、こちらに来ているじゃないっスか♪」



キーボ「………」



浦原「それで、もしキーボさんの身に何か危険があれば、アタシの力でどうにか解決できたら、と思っています」



真宮寺「……大丈夫だとは思うけど、一応ネ」

アンジー「アンジーも、やった方が良いと思うなー」



78 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 23:01:08.21 ID:DZOh/mOeO



浦原「……というわけで、検査させては、頂けませんか?」



キーボ「っ、しかしーーー」



アンジー「……キーボ、大丈夫だよー」



キーボ「……アンジーさん?」



アンジー「……喜助はねー? ものすごーく、うさんくさいけど、信頼できる人だからー!」

真宮寺「そうだネ。非常に怪しい人物ではあるけど、信頼は大切にする人だヨ」

浦原「信頼第一、商売人として当然っス!」



キーボ「………」



真宮寺「ーーーどうか、彼を信じて、検査を受け入れてくれないかな、キーボ君?」



79 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 23:03:11.00 ID:DZOh/mOeO



キーボ「……わかりました」

浦原「!」

キーボ「……確かに、危険物をそのままにしては、迷惑をかけかねませんからね」

キーボ「検査、お願いします」

浦原「……ありがとうございます! それではーーー」



キーボ「ーーーただし!」



真宮寺&アンジー「「!?」」



浦原「………」



キーボ「……ボクの記憶領域には、決して干渉しないでください。それが検査の条件です」



80 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 23:04:05.22 ID:DZOh/mOeO



真宮寺「………」



アンジー「………」



浦原「………」



キーボ「……良いですね?」



81 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 23:07:03.72 ID:DZOh/mOeO



浦原「……もちろんっス。キーボさんの記憶領域には一切触れません。その条件で検査させて頂きます」



キーボ「……それでは、検査をーーー」



浦原「ーーーっと、その前に、場所を変えようと思います」



キーボ「えっ……」



浦原「……いやー、万が一、ここで “ ドガン! ” ってなったら大変でしょう? なので修練場……広く頑丈な部屋の方まで移動してから、検査させて頂こうかと思いましてね」

浦原「修練場とその付近の部屋は、現在、防音設備も充実していたりしますからねえ。音が廊下に漏れることは無い……」



浦原「……いろいろ話しやすくもあると思うっスよ?」



キーボ「………」



浦原「……構わないっスよね?」



82 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/10(火) 23:08:40.47 ID:DZOh/mOeO



キーボ「……わかりました。移動しましょう」



浦原「……ありがとうございます! それでは、修練場まで、レッツゴーといきましょう!」



キーボ「………」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー



83 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:00:37.72 ID:xIUq6BSMO



キーボ(そうして、ボクは、アンジーさん達といったん別れて、浦原さんと共に修練場に行った)






キーボ(それから、検査が始まるーーー)






キーボ(ーーーそのはずだったんですがーーーー)


84 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:04:23.34 ID:xIUq6BSMO



ー志波家の屋敷・修練場ー



キーボ「………」

浦原「………」



キーボ「……あの、すみません」

浦原「……なんでしょう?」



キーボ「さっきからボク、浦原さんに言われた通り、ずっと目を閉じているんですけどーーーいつ検査は始まるんでしょうか?」



85 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:05:32.32 ID:xIUq6BSMO



浦原「……ああ、もう大丈夫っス」



キーボ「……? それはどういうーーー」







浦原「……既に検査は終わりましたから」


86 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:07:51.41 ID:xIUq6BSMO



キーボ「!?」パチリ

浦原「………」

キーボ「そんな、いつの間にーーー」

浦原「一応言っておきますが、インチキとかサギとかではありませんよ」

浦原「アタシは確かに、さっきキーボさんが目を閉じている間、検査させて頂きました」

浦原「というか、そうでもなければ、あのお強い空鶴さんからどんな目に遭わされるかわかりませんから」

浦原「いいかげんな商売は、できません」



浦原「……まっ、具体的な方法は、企業秘密っスけどね♪」



キーボ「………」



浦原「その上で検査結果を報告させて頂きますがーーーー」


87 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:09:32.61 ID:xIUq6BSMO



浦原「ーーー今のキーボさんには、危険な機能は、何一つ付いていませんでした」

キーボ「……!?」

浦原「入間サンからお聞きしていた通りの設計っス」

浦原「人と一緒に生活していても、何ら危険の生じない、安全安心の設計っスよ!」

キーボ「……ま、待ってください! そんなはずーーー」

浦原「おや、何かおかしなことでもあるんスか?」

キーボ「……っ、」

浦原「何か危険なものを取り付けたご記憶でも?」

キーボ「……っっ、!!」


88 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:22:40.62 ID:xIUq6BSMO



浦原「……ちなみに、尸魂界(こっち)で “ それら ” が付いていない状態になっていたとしても、何ら不思議は無いっスよ」

キーボ「……どういうことですか?」

浦原「尸魂界には、持っていけるものとそうでないものがあるんス」

浦原「最近着用したもの……いわゆる “ 外付け ” したような、身体との繋がりの小さいものは、基本的に持っていけない仕組みなんスよ」



キーボ「………」



浦原「……まあ、それが、生命活動の維持や精神の安定などに必要不可欠なものである場合、話は別なんスけどね」

浦原「それなら、身体との繋がりも別の意味で大きくなりますし、尸魂界への持ち込みも不可能では無くなるっスけどーーー」



浦原「ーーーそうした事情を持たない、身体との繋がりが小さい “ 外付け ” アイテムは、基本的に持ち込めないってわけっス」


89 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:25:34.83 ID:xIUq6BSMO



キーボ「……なるほど」

キーボ「しかし、そうなると、衣服なども持ち込めないということになりますけど……」

浦原「おっしゃる通り、衣服を持ち込むことはできません」

キーボ「………」

浦原「衣服は、定期的に着脱を繰り返すものですし、魂魄にその情報が完全に定着するだなんて、よほどのことが無い限り、あり得ない……」



浦原「まず、持ち込めないっスね」



浦原「故に、キーボさんのおっしゃる通り、衣服は尸魂界に持ち込めず、基本的に誰もが、ありのままの姿で送られるってわけっス」


90 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:28:26.47 ID:xIUq6BSMO



キーボ「ありのまま……つまりは、裸ってことですね」

浦原「ええ、現世で亡くなり魂魄となった者は、現世では魂魄が衣服を着た状態にありますがーーー」

浦原「ーーーその情報定着が不完全なため、現世から尸魂界に移動する際、衣服の情報が形を保てなくなってしまう場合がほとんど……」



浦原「そうして、裸になってしまう、ってわけっス」



キーボ「………」



浦原「とは言っても、別に人が目を覆うような、あられもない、ふしだらな事態にはなりません」

浦原「きちんと、衣服は自動的に着用されることになります」

キーボ「……?」

浦原「……尸魂界には、魂魄が来た瞬間、自動で和服を着用してくれるシステムがあるんスよ」

キーボ「!?」


91 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:33:55.99 ID:xIUq6BSMO



浦原(……まあ、魂魄に自動着用される和服は、色やデザインの統一された簡素なものになるのが普通なんスけどね)


浦原(逆に言えば、霊力を有する特殊な魂魄である場合、その人に合った色やデザインの和服が自動で着用されることになる……)


浦原(……そう、真宮寺サンとアンジーさんが現在着ているような、その人に合った色やデザインをした和服は、霊力ある魂魄のみ着用される仕組みというわけでして……)




キーボ「………」




浦原「……とにかく、そうした風に、瞬間的に服が着用されるシステムを、修多羅千手丸(しゅたら せんじゅまる)サンという科学者の方が形にしてくれたんス」


92 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:37:29.26 ID:xIUq6BSMO



キーボ「瞬間的に、着用……」

浦原「………」

キーボ「……そんなこと、どうやってーーー」

浦原「……残念ながら、秘匿技術でして、アタシも詳しくはわかりません」

キーボ「……そうですか」

浦原「ーーーですが、何はともあれ、無償で和服を貰えて、あられもない姿を晒すことが無くなったわけっスからね」

浦原「現世で亡くなられた方たちにとっては安心できる話だと思うっスよ」


93 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:39:34.01 ID:xIUq6BSMO



キーボ「……あれ? でも、さっきの真宮寺クンは、浦原さんの言う和服以外にも、マスクやバンダナを付けていたようなーーー」

浦原「ああ! あれはウチの商品っス!」

キーボ「……商品? 駄菓子屋ではなかったんですか?」

浦原「フフフ……駄菓子屋だからと言って、その名の通りのことばかりしていれば、時代に取り残されてしまいます」キラーンッ

浦原「浦原商店では、マスクやバンダナ……パンツだって売ってるんスからねー!」パッパラ〜!

キーボ「……服屋も兼ねているってことですか」

浦原「服だけじゃあないんスけど……まあ、わかりやすく言うなら、そんな感じにはなるっスね」


94 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:43:26.42 ID:xIUq6BSMO



キーボ「……ですが、気になることがあります」

浦原「……なんでしょう?」

キーボ「なぜ、ボクは、この装甲を着用したままなのでしょうか?」

浦原「………」

キーボ「先ほど、あなたの返答から、このソウル・ソサエティに衣服を持ち込めないということを確認しました」

浦原「……ええ、そうっスね」

キーボ「しかし、そうだとすると、なぜボクは、この装甲を着用したままなのか……」

浦原「………」

キーボ「この装甲は、ボクからしてみれば服のようなものでーーー生前はメンテナンスのために定期的に着脱だってしていました」

キーボ「なのに、どうして、ソウル・ソサエティに来た今でも、着用したままなのかーーーー」


95 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:45:24.36 ID:xIUq6BSMO



浦原「……そこは、まあ、アレじゃないですかね?」

キーボ「…… “ アレ ” ? アレとはいったいーーー」

浦原「いや、単純に “ ロボットだから ” じゃないんスかね?」









キーボ「ーーーあなたも、ロボット差別ですか」



浦原「とんでもありません! アタクシ共、浦原商店では、ロボットだろうと宇宙人だろうとーーーお客様である限り、ステキな商品をお届けさせて頂く所存っスよ!」


96 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:47:12.50 ID:xIUq6BSMO



浦原「ーーーああ、それはそうとお気づきかもしれませんが……」

キーボ「?」

浦原「……キーボさんの、目のカメラと耳の集音器、どちらも情報伝達の際のフィルターがあったようですが、その両方が撤去されていますね」

キーボ「……フィルター、ですか」

浦原「ええ、キーボさんは、視力と聴力に関しては元から規格外の性能をお持ちだったようなのですがーーー」

キーボ「………」

浦原「ーーーそこから電子頭脳に伝達される情報が、フィルターを介して大幅に制限されていたそうです」

浦原「実際問題、入間サンから教えて貰った内部構造には、フィルターの存在がありましたから」

浦原「それが、どういうわけか、撤去されているという話です」


97 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:49:01.36 ID:xIUq6BSMO



キーボ「……なぜ、フィルターなんてあったのでしょうね?」

浦原「………」

キーボ「なぜ、視力と聴力だけ、元から規格外の性能があったのでしょう?」

浦原「……なぜ、それをアタシに聞くんですか? アタシに答えられるはずがないじゃないですか」

キーボ「………」

浦原「【キーボさんの製作者が】【どういう目的で】【視力と聴力だけ】【規格外の性能にして】【さらにはフィルターをかけて情報制限していたか】なんて、それこそ製作者の方しか答えられないことでしょう」

浦原「その辺りについて、アタシから答えられることは何もありません」

キーボ「……それもそうですね」


98 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:50:30.57 ID:xIUq6BSMO



浦原「……ともかく、ここで大切なのは、【なぜ規格外の性能があったか?】【なぜフィルターがかけられていたのか?】などではなくーーー」



浦原「ーーー【規格外の性能を制限するフィルターが取り付けられていたものの】【それが撤去された状態にある】ってことっス」



浦原「実際に、今のキーボさんは、非常に高い視力と聴力を有し続けているのでは?」



キーボ「………」



浦原「キーボさん……アナタはその気になれば、この屋敷にいる小さな生き物たちの姿とその鳴き声がわかるんじゃないっスか?」


99 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:53:05.80 ID:xIUq6BSMO



キーボ「……言われてみれば、確かに、この屋敷では、小さな虫のような生き物の群れがさえずっているようですね」キュルキュル

キーボ「それらは主に、天井の穴と両わきの木枠の上にある植物らしきものから発生しているようですがーーー」ジー…

浦原「ご名答! その天井にあるのは、【ホタルカズラO】と言いまして、発光型の植物に品種改良を重ねて作り出した、浦原商店の自信作なんスよ!」

キーボ「発光……ああ、だから、こちらの屋敷は電球もなしにここまで明るいのですね」

浦原「その通り! ここが地下にありながらこうまで明るいのも、全ては【ホタルカズラO】のお陰っス!」

浦原「そして、そのOの花粉から生まれる変種の菌が、この空気中を漂う小さな虫みたいな生き物なんスよ!」


100 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:56:19.14 ID:xIUq6BSMO



キーボ「菌……」

浦原「この菌は、人の肉眼ではまず見えないサイズですがーーー」

浦原「ーーー有害となるような悪い菌、人や植物に悪影響を与える菌を捕食し、一瞬で無害なものに変換して取り込んでくれる良菌なんス!」

キーボ「………」

浦原「さらには、O本体の購入者の言葉一つで、本体の発光を止めるよう働きかけることもできます!」

浦原「【ホタルカズラO】! 少々、お値段は張りますが、当店イチオシの商品ですよ!」

キーボ「……あー、その、申し訳ないのですが、今はお金の持ち合わせはおろか、ゲームに使用するようなメダルすら持っていない状況でしてーーー」

浦原「いえいえ! 今回はあくまでキーボさんの視力や聴力が上がっていることの証明を兼ねて宣伝しただけっスから! 購入するかどうか決めるのはまた別の機会です!」



浦原「志波家で働けばご給金は充分に出ますしーーー」



浦原「ーーーもし、キーボさんにも個室が与えられる時があれば、ぜひ、ご一考を!」



キーボ「はあ……」


101 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 03:58:26.66 ID:xIUq6BSMO



浦原「さて、話を元に戻しますがーーーこの空気中の菌を、意識一つ切り替えることでキチンと認識できるくらいには、キーボさんの視力と聴力が規格外のレベルに達していることは証明されたわけです」

浦原「フィルターが撤去されたことについて、納得して頂けましたでしょうか?」

キーボ「……ええ、とてもよく理解しました」

浦原「……どうっスかね? 今なら、サービスで、無料で似たようなフィルターを付け直すこともーーー」

キーボ「結構です」

浦原「……良いんスか? 本当に」

キーボ「ええ、構いません」

キーボ「……このカメラと集音器の機能は、オート及びマニュアルの両方でいろいろと調整可能な状態にありますしーーー」キュルキュル



キーボ「ーーーそれに、今はむしろ、機能の高い状態がデフォルトである方が好都合ですから」



浦原「……そうっスか。それじゃあ、今回のサービスはーーー」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


102 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:37:43.37 ID:xIUq6BSMO



キーボ(ーーーあれから、さらなるサービスとして無料でボクの身体を洗浄してくれた後、浦原さんは帰り、ボクは真宮寺クンの部屋に戻りました)




真宮寺(……布団には予備があるし、一応それも敷いた方が良いかな……)


真宮寺(そして、それからーーー)




キーボ(また、浦原さんは帰り際に、 “ 伝令神機 ” ……いわゆる携帯電話のプレゼントをしてくれました)


キーボ(もし、ボクの【機械の身体に異常が発生した時】【いつでも電話してくれて構いません】【いつでも修理に駆けつけます】と言伝と取扱説明書を残してーーー)


キーボ(ーーー浦原さん、あの人にはいずれ、しっかりとお礼をしなくてはなりませんね)


キーボ(……浦原さんに検査をお願いしてくれた真宮寺クンにもお礼をするべきでしょうかーーー)チラッ




真宮寺(ーーーよし、後は、この発明品をキーボ君にーーー)スッ




キーボ(ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)




岩鷲「おーい! オメーら、飯ができたぞ!」バタンッ


103 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:39:58.60 ID:xIUq6BSMO



真宮寺「……ありがとう、岩鷲君。すぐにでも行かせて貰うヨ」

岩鷲「おう! 先に行ってるぞ、オメーら!」スタスタ

真宮寺「さァ、キーボ君も」

キーボ「……ボクも行って良いんでしょうか?」

真宮寺「………」

キーボ「キミも、知っているはずでしょう……?」

キーボ「……ボクは、みなさんのように、食事をーーー」



真宮寺「ーーー大丈夫だヨ、キーボ君」



キーボ「……?」

真宮寺「この発明品があれば、ネ」スッ

キーボ「? それはーーー」

真宮寺「はい、キーボ君」ポンッ


104 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:41:44.87 ID:xIUq6BSMO



キーボ「……なんですか、この、メカメカしい蚊取り線香みたいなものは?」ジー…

真宮寺「……これは、入間さんが瀞霊廷で発明した、物質電力変換装置ーーー」



真宮寺「ーーーその名も【エレキイーター】だヨ」



キーボ「【エレキイーター】……ですか?」



真宮寺「……これが君の近くにあれば、特殊な波動が発生し、その影響で君は食事が可能となる」



キーボ「………」







キーボ「……はい?」


105 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:43:10.60 ID:xIUq6BSMO



真宮寺「……そして、君の口の中にある一定の物質……すなわち食料を電力に変換し、そのまま君の魂魄のエネルギーにできるのサ」



キーボ「………!?!?」



キーボ「ーーーな、なんなんですか!? その発明は!?」

キーボ「入間さんはそんなものまで発明したって言うんですか!?」



真宮寺「……そうだネ。入間さんの発明品であることに間違いないヨ」


106 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:45:03.43 ID:xIUq6BSMO



キーボ「………」



真宮寺「……本当に食事が可能かどうか気になるのであれば、食事場まで向かうことだヨ」



真宮寺「僕が案内するからサ」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


107 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:47:22.20 ID:xIUq6BSMO



ー志波家の屋敷・食事場ー



金彦「食事の準備が」

銀彦「整いました」

キーボ「………」

空鶴「よし! 飯の時間だ、テメエら!」

空鶴「全員でーーー」

岩鷲「いっただっきまーす!」

アンジー「いただきまーす、だよー!」

真宮寺「ククク……今日も美味しく頂かせて貰うヨ」



キーボ「ーーーいただきます!」


108 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:49:11.98 ID:xIUq6BSMO



キーボ「………」ジー…



アンジー「……うんうん、ちゃんと美兎の機械持ってきてるね、キーボ」



キーボ「アンジーさん……」



アンジー「……でもでもー、食べないと、ご飯も機械ももったいないよー?」

岩鷲「そうだぞ、キーボ! この料理はウチの金彦(こがねひこ)と銀彦(しろがねひこ)が俺達のために! その機械は入間ちゃんがオメーのために! それぞれ真心込めて作ったもんだ!」

岩鷲「なのに、食わないってのは、人の心を大切にしないってことだ! 俺の目の黒いうちは、そんな真似、させやしねえぞ!」


109 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:50:37.29 ID:xIUq6BSMO



キーボ「……そうですね。キミ達の言う通りです」

キーボ「ありがたく、食べさせて頂きます!」



岩鷲「よく言った! さあ、食え! 遠慮はいらねえぞ!」

アンジー「パクッといっちゃえー! キーボ!」



キーボ「……はい!」

真宮寺「………」


110 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:52:10.66 ID:xIUq6BSMO



キーボ(……これで本当に食事がーーー)




キーボ(ーーーまずは、一口、いきましょうか)スッ…




キーボ「………」パクッ









キーボ「……はっーーーー」


111 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:54:02.51 ID:xIUq6BSMO



キーボ「………」



アンジー「んー? どうしちゃったー、キーボ?」

真宮寺「……もし、何か不具合が起きたのなら、浦原さんに修理を頼んでーーー」



キーボ「ーーー食える」



アンジー「……んんー、?」



キーボ「食えますよ……! 食えますよ、入間さん……!」



真宮寺「……キーボ君?」


112 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:55:35.39 ID:xIUq6BSMO



キーボ「ふはははははははははははははは!!!」



キーボ「食える、食える、食える、食えますよ!!!」



キーボ「これが、甘味か!!」パクパク



キーボ「これが、辛味か!!」ガツガツ



キーボ「これが、旨味か!!!」


113 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:57:11.41 ID:xIUq6BSMO



キーボ「そして、これが、旨味の染み渡る感覚……!」モグモグ



キーボ「ああ、思っていた以上に……」



キーボ「……素晴らしいーーー」






アンジー「ーーー静かにして、キーボ」

真宮寺「流石に叫ばれるのは、ちょっとネ」






キーボ「……すみません」



ーーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーーー


ーー


114 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 06:59:47.64 ID:xIUq6BSMO



空鶴「……食い終わったな、テメエら! それならーーー」



岩鷲「ーーーごちそうさまでした!」

アンジー「神ったごちそう、ありがとー! にゃはははー!」

真宮寺「ごちそうさま、だヨ」



キーボ「……ごちそうさまでした!」



空鶴「ーーーよし! あとは身体休めて明日に備えな! そんで、みっちり働いて貰うからな!」


115 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:02:05.62 ID:xIUq6BSMO



真宮寺「ククク……どうだい? 初めて食事を摂ったことに対する気持ちは?」



キーボ「………」



真宮寺「食事の終わった今なら、多少は声を張り上げても許されると思うヨ?」

アンジー「そうだねー。それに美兎が言うには、その機械で食べるとお口の中にご飯がぜんぜん残んないんだってー! 口の中が錆びるとか、それで異臭が発生するとか、気にしなくて良いんだってー!」



キーボ「………」



アンジー「だから、今なら口を大きく開けて元気な声出しても、大丈夫なんだよー!」


116 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:04:25.75 ID:xIUq6BSMO



キーボ「……冷静になってみると居た堪れなくなるので、声のボリュームは上げませんがーーー食事を摂ったことへの気持ちについては答えます」

アンジー「……どんな気持ちー?」

キーボ「……嬉しいに決まってるじゃないですか。初めての食事ですよ?」

キーボ「……どうも、ありがとうございました。コガネヒコさん……シロガネヒコさん」



金彦「……こちらこそ、味わって頂き光栄の極みです」

銀彦「それと、お礼の言葉は彼女の方にもお願いします」



キーボ「……そうですね」

キーボ「この美味しいという感覚……それをボクに味わって貰うため、入間さんはこの発明品を作ってくれたーーー」



キーボ「ーーー次にあなたに会った時には、必ずお礼を言わせて頂きます、入間さん!」


117 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:06:09.00 ID:xIUq6BSMO



金彦「……ふふふ、それでは、我々はこれで」

銀彦「仕事がまだ残っておりますゆえ、申し訳ありませんが、この場を離れさせて頂きます」



キーボ「いえ、こちらこそ、お忙しい中、引き止めてしまって申し訳ありません」

キーボ「これからも、よろしくお願いします! コガネヒコさん!シロガネヒコさん!」



金彦「……ええ!」

銀彦「こちらからも、よろしくお願いします、キーボ殿!」


118 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:09:51.97 ID:xIUq6BSMO



スタスタ……



真宮寺「……礼儀正しいんだネ、君って」



キーボ「……相手は知り合ったばかりで、さらには立派な社会人の方々でもあります」

キーボ「だとすれば、親しい関係になるプログラムではなく、礼儀を尽くすプログラムに切り替えるのは当然でしょう」



アンジー「……うんうん、ここで、そういうこと言っちゃうところ、キーボらしいねー」

真宮寺「……まさかとは思うけど、君は自分から行動するのを怠けて、そのプログラムに任せて機械的かつ自動的に礼義正しく振る舞っていたのかい?」

キーボ「そんなことしませんよ! 礼儀のプログラムも親しい関係になるプログラムも、あくまでも参考にしただけで、ボクはボク自身の意志によるマニュアル操作で動いています! 怠けてなんていません!」



真宮寺「……そう、それなら良かったヨ」

アンジー「そうだねー! そこでサボってたら、きっと神さまも罰を当ててたよー!」


119 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:16:44.17 ID:Pk9jS6GpO



キーボ「ーーーしかし、入間さんも、よくこんな、すごい発明ができましたね」

真宮寺「? まァ、確かに、すごい発明ではあるけど……」

アンジー「でもでもー、美兎ならこのくらい普通にできるんじゃないのー?」

キーボ「いや、入間さんがすごいことはボクも同感ですがーーー死後の世界でも生前と同じように発明できたことに驚いたんです」

キーボ「いくら、入間さんでも、自分の研究教室も無しに、ここまでの発明ができるとは思えません」



キーボ「……いったい、どうやって発明をーーー」



真宮寺「あァ……その説明は簡単だヨ」



キーボ「?」



真宮寺「さっきの人……浦原さんから、器具や機材を貸して貰ったんだヨ」


120 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:19:46.65 ID:Pk9jS6GpO



キーボ「浦原さんに、ですか?」



アンジー「そうだよー、喜助が美兎にサービスしてくれたのだー!」



キーボ「………」



真宮寺「……浦原さんは、入間さんに興味を持っていてネ」

真宮寺「自分の目の前で、入間さんの才能を確認させて貰う代わりに、霊的科学に関する知識を教え、器具や機材を貸して……つまりは、ほぼ無償で提供してあげたのサ」

真宮寺「そうして提供された知識……並びに器具や機材を用いて誕生した発明の一つが、【エレキイーター】なんだヨ」


121 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:23:13.88 ID:Pk9jS6GpO



キーボ「……発明の、一つ?」

キーボ「まさか、他にも発明があるんですか?」

真宮寺「そうだネ。たとえば、装着するだけで、片手の指の動きだけでメールを打てるようにするバングルがあるヨ」

キーボ「……なっ、!?」

真宮寺「バングルから読み取られた片手の動きでメールが作成され、その内容は脳内に転送され、内容を確認してからは伝令神機に転送後、そこからメール送信ができる」

真宮寺「これは、視覚や聴覚を阻害しないから、慣れてしまえば歩いている時に息をするようにメールの送信が可能となる」

キーボ「そんなものまで……って、まさか、それはーーー」

真宮寺「そう、僕が気づかれることなく、空鶴さん達と浦原さんにキーボ君のことを伝えることができたのは、その方法を使ったからなんだヨ」



キーボ「……なるほど、入間さんの発明品ならば納得です」



アンジー「………」


122 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:27:15.25 ID:Pk9jS6GpO



真宮寺「……他にも、君の身体を自動で洗浄する【ロボットウォッシャー】、自動でメンテナンスを行う【ロボットメンテ】にーーー」



真宮寺「ーーー最近発明したものの中には、霊力ある存在を感知する装置、【パワーセンサー】があるヨ」



キーボ「……【パワーセンサー】……」



真宮寺「……それは、モノパッドを小さくしたような形状をしていてネ。霊力ある存在が比較的近くにいれば、反応して振動しーーー」



真宮寺「ーーー霊力ある存在を示す印が、液晶画面の細かな地図の中に、映し出されるようになっている」



キーボ「!?」



真宮寺「……僕らはその装置を使って、君に霊力があることを確認したのサ」


123 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:30:59.48 ID:Pk9jS6GpO



アンジー「………」



キーボ「……ん? ちょっと待ってください。それって、もしかして今日、キミ達がボクと再会した時にーーー」



真宮寺「ーーーそうだネ。だいたい、君が察している通りだヨ」

真宮寺「僕らは今日、君に再会する直前の時、【パワーセンサー】で反応を確認した」

真宮寺「突如、流魂街の、あの場所に現れた、君の霊力反応を、ネ」



キーボ「………」



真宮寺「……普段は服の中にしまっている “ それ ” で、君に霊力が宿っていることを確認したのサ」



キーボ「……なるほど」


124 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:34:01.45 ID:Pk9jS6GpO



キーボ「……しかし、そのようなものまで発明するとはーーー」






アンジー「………」






キーボ「ーーー流石としか言いようがありませんね」


125 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:36:15.95 ID:Pk9jS6GpO



真宮寺(……本当に、彼女には恐れ入るヨ)


真宮寺(今の忙しい中、必死に時間をやりくりして、霊力ある存在を感知する装置を発明するなんてネ)




真宮寺(……僕達が持っている伝令神機にも似たような機能はあるけれどーーー)


真宮寺(ーーーあれで反応するのは、悪霊だけだからネ。他の魂魄……ましてやロボットの霊力感知なんてできるはずがない)




真宮寺(……他の発明と言い、ここに来るかどうかもわからないキーボ君がために、ここまでするとはネ……)


真宮寺(入間さん、彼女は、本当にーーーー)


126 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:37:20.83 ID:Pk9jS6GpO



キーボ「ーーーまた、それとは別に、驚きましたよ」



アンジー「………」



キーボ「まさか、ボクに、霊力などというものが宿っているとは……」



真宮寺「……どういう理由かまでは、わからないけどネ」


127 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:39:14.05 ID:Pk9jS6GpO



キーボ(……なぜ、霊力などというものがボクに、ひいては赤松さん達に宿っているのか大変気になるところですがーーー)




キーボ(ーーーここで思考を重ねたところで、おそらく結論は出ないでしょう)




キーボ(そういったことに時間を費やすくらいならば、そうーーー)


キーボ(ーーー赤松さん達の現状、それに加えてこの死後の世界のことを、もっと深く知るべきでしょう)


キーボ(その内容次第では、ボクがこの死後の世界でどう行動するべきかも変わってくるでしょうから)


キーボ(……これからしばらくは、情報収集に集中した方が良さそうですね)




キーボ(そうなると、まず聞くべきはーーーー)


128 : ◆02/1zAmSVg [saga]:2019/09/17(火) 07:40:37.44 ID:Pk9jS6GpO



キーボ「ーーーこれまでの話を振り返ると、赤松さん達は現在、セイレイテイという場所に住んでいて、忙しいんですよね?」



真宮寺「……まァ、そうだネ」

アンジー「………」






キーボ「……赤松さん達は、具体的に、いま何をしているのでしょうか?」


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