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【BLEACH×ロンパV3】キーボ 「砕かれた先にある世界」【前編】
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187 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:18:42.22 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「魂魄が、損壊……?」
真宮寺「………」
キーボ「…………」
キーボ「………っ、!!!」
188 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:19:58.60 ID:Vk1V6IAHO
キーボ(ーーーそんな、まさかーーー)
真宮寺「………」
キーボ(ーーー “ あれ ” は、悪意による合成映像ではーーー)
真宮寺「ーーーとにかく、僕の霊力は期間限定のもの」
真宮寺「その消えていく『力』は、何をどうしようと、まず取り戻すこと叶わない」
真宮寺「消えていく速度も徐々に上がり続けーーーいずれは、跡形もなく消え失せるだろう」
キーボ「………」
真宮寺「……瀞霊廷への居住申請が通るはずがないんだヨ」
189 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:21:28.21 ID:Vk1V6IAHO
アンジー「……だからねー、アンジーは、是清もここに住めるよう、空鶴たちにお願いしたんだー」
キーボ「……アンジー、さん、が?」
アンジー「そうだよー、空鶴たちは優しくてねー。行くアテのないアンジーに、この家の掃除をお手伝いする仕事を紹介してくれたんだー」
アンジー「しかも、空鶴たちは、アンジーに仕事を紹介してくれたあと、もう一人募集してたからねー」
アンジー「それで、アンジーが、 “ 是清も ” ってお願いしたら、叶えてくれたのー!」
アンジー「……空鶴たちには感謝しかないよー、にゃはははー!」
キーボ「………」
190 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:22:40.86 ID:Vk1V6IAHO
キーボ「……なぜ、ですか?」
アンジー「………」
キーボ「なぜ、アンジーさんは、自分からーーーー」
191 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:24:22.34 ID:Vk1V6IAHO
アンジー「……あー、キーボ、ちょっとアンジーの部屋に来てくれるー?」
キーボ「えっ……?」
真宮寺「………」
アンジー「来てー?」
キーボ「いや、しかしーーー」
アンジー「いいから、来てー?」
キーボ「……はい」
192 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/17(火) 15:25:35.29 ID:Vk1V6IAHO
アンジー「……ごめんね、是清、ちょっと、キーボとふたりで話してくるから、男のお風呂にでも入っといてー」
真宮寺「……わかったヨ、夜長さん」
真宮寺「今のうちに入浴させて貰うとするヨ……」
キーボ「………」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
193 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:00:38.85 ID:o4EGf6bhO
スタスタ……
アンジー「とうちゃーく!」バタンッ
キーボ「……こちらがアンジーさんのお部屋ですか」
アンジー「………」ガチャリ
キーボ「ーーー思っていたよりも、さっぱりしているんですね」
ガラーン……
キーボ「アンジーさんの作品らしきものも見当たりませんしーーー」
アンジー「………」
キーボ「ーーー少し、意外でした」
194 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:02:22.26 ID:o4EGf6bhO
アンジー「……キレイに使わないと空鶴に怒られちゃうからねー」
キーボ「……あー、そういうことでしたか」
アンジー「ーーーって、そんなことよりも、さっきの質問の続きだけど……一応その先を聞かせてくれるー?」
195 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:03:39.85 ID:o4EGf6bhO
キーボ「……わかりました。続きを言わせて頂きます」
キーボ「なぜ、アンジーさんは、真宮寺クンと一緒に住まわせて貰うよう、お願いしたんですか?」
アンジー「………」
キーボ「……淋しさを埋めるためだとしても、それならこの家には、ガンジュ…クン達がいるじゃないですか」
キーボ「あの人達と一緒にいるだけでも、淋しさは吹き飛ぶんじゃないですか?」
196 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:05:14.90 ID:o4EGf6bhO
アンジー「……うんうん、それには島から見える海よりも深いものがあってねー」
アンジー「それを話すと、どうしても是清のことまで話すことになるんだよー。そうしないと意味が通じないからねー」
キーボ「………」
アンジー「まー、是清に聞けば、答えてくれるだろうけど……あの話を是清の口から言うのは、是清としても辛いだろうからねー」
アンジー「だから、今回だけ特別に、アンジーの口から、是清と居候する理由を話すことにするよー」
キーボ「……わかりました。お願いします」
197 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:06:17.89 ID:o4EGf6bhO
アンジー「……それで、アンジーが是清と一緒に住むことを頼んだ理由だけどーーー」
キーボ「………」
アンジー「ーーー “ もう意味はない ” からだねー」
198 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:09:23.60 ID:o4EGf6bhO
キーボ「ーーー “ もう意味はない ” ことは知っています」
キーボ「ここは死後の世界ですし……何より真宮寺クン自身が、 “ あの人 ” に縋ることをやめたようですからね」
キーボ「だとしたら、真宮寺クンが奇怪な行為に手を染める “ 意味はない ” 、故に今の真宮寺クンは無害ーーー」
キーボ「ーーーそう、仰りたいのでしょう?」
アンジー「……うんうん、その通りだよー、キーボ!」
キーボ「確かに、それならば、一緒にいてあげても構わないと、思えることもあるのかもしれませんがーーー」
キーボ「ーーーだからといって、信じられるんですか?」
キーボ「あの、真宮寺クンのことを」
アンジー「………」
キーボ「……ひょっとしたら、かつて自分の中にいた “ あの人 ” が幻だった事実にーーー真宮寺クンは耐えられなくなるかもしれません……」
アンジー「………」
キーボ「……それで、狂乱の果てに、また同じことをーーーー」
199 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:10:55.01 ID:o4EGf6bhO
アンジー「……それはないよ」
キーボ「……なぜ、そう言いきれるんですか?」
アンジー「だって、今の是清はーーーー」
アンジー「ーーー本当の “ あの人 ” のーーー」
アンジー「ーーーそして、みんなの『想い』のために、生きているから」
200 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:12:30.11 ID:o4EGf6bhO
キーボ「……本当の、 “ あの人 ” ?」
アンジー「是清はねー、聞いたんだー」
アンジー「しにがみ、から、 “ あの人 ” の伝言を」
キーボ「………」
アンジー「伝言の内容はねー、是清はー、【是清自身とその友達を大切にして欲しい】って話だったみたいだねー」
キーボ「真宮寺クン、自身の……?」
アンジー「そう、 “ あの人 ” は、それを、是清がこの死後の世界に来たら伝えるよう、しにがみに頼んだんだってー」
201 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:14:44.85 ID:o4EGf6bhO
アンジー「ーーーしにがみが言うには、 “ あの人 ” はどういうわけか、現世で生きていた時のことについて、ほとんど話さなかったみたいでねー」
アンジー「だけど、それでも、是清に言葉を送ることを選んだってー。それも、自分のことじゃなくてー、是清やその友達のことを大切にして欲しい、って、内容の言葉を」
キーボ「………」
アンジー「しかも、しにがみは、 “ あの人 ” は是清が言ってたような人じゃないって、根気よく是清に話したみたいだねー」
アンジー「……だからかなー」
アンジー「是清は、 “ あの人 ” からの伝言を受けてからいろいろ考えてー……人の心を、人の『想い』を、本当の意味で大切にする生き方をするって決めたんだってー」
キーボ「………」
アンジー「……本気の本気で、そう決めたみたいなんだ」
アンジー「だから、もう是清は、大丈夫なんだよー」
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/09/18(水) 13:18:54.19 ID:bBDOsleWO
キーボ「ーーーですが、それは、よく知らない人からの情報ですよね? 真宮寺クンがそういった情報を信じたんですか?」
アンジー「……そうだねー、信じたんだねー」
キーボ「なぜ、信じたのでしょうか?」
アンジー「それはねー、是清が人を観察し続けてきたからなんだってー」
キーボ「……観察ですか」
アンジー「うん、是清は人を観察し続けてきた」
アンジー「だから、長く話しているとー、その人が誰をどう大切に想っているかがわかるみたいー」
アンジー「実際に、しにがみは、 “ あの人 ” はもちろん、伝言の相手の是清のことも、大切に想ってたんだってー」
アンジー「その気持ちが、是清にも伝わったみたいだねー」
203 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:21:03.82 ID:bBDOsleWO
キーボ「……大切って、その死神の人と “ あの人 ” は、いったいどんな関係だったんですか?」
アンジー「先生とー、教え子だねー」
キーボ「………」
アンジー「しにがみは先生でー、 “ あの人 ” は、見習いのしにがみだったんだってー」
キーボ「死神の……見習い?」
アンジー「……なんでもねー? しにがみ学校の生徒は、しにがみとしての『すごい才能』があれば、しにがみの見習いになることがあるんだってー」
アンジー「実際に、 “ あの人 ” は、しにがみとして、『すごい才能』があったみたいー」
アンジー「だから、 “ あの人 ” は、見習いのしにがみでーーー」
アンジー「ーーーその見習いを育てる先生が、是清と話をした、しにがみだったんだってー」
204 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:24:15.03 ID:bBDOsleWO
キーボ「……ちょっと待ってください。 “ あの人 ” は見習いの死神だったんですか?」
アンジー「んー? そう言ってるけどー?」
キーボ「だったら、どうして正式に死神となる前に生まれ変わったんですか?」
キーボ「真宮寺クンが言うにはとっくに生まれ変わったってーーー」
アンジー「ーーーそうしないと、いけない事情があったからだよー」
キーボ「……事情?」
アンジー「……なんでもねー? “ あの人 ” は、虚(ホロウ)……しにがみが言う悪い幽霊の名前なんだけど、その悪い幽霊に襲われて死にかけたみたいなんだよー」
アンジー「それで、なんとか、命は繋げたけど、代わりに魂がすごく傷ついたみたいでねー?」
アンジー「……そのせいで霊力を失ってー、しかも是清と違って、すぐに、ぜんぶ失ってー.……」
アンジー「……瀞霊廷に住む資格を失った後、生まれ変わることになったんだってー」
キーボ「………」
205 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:27:33.03 ID:bBDOsleWO
アンジー「…… “ あの人 ” は、瀞霊廷に住んでいた。だから、住めない人から、差別されやすかったみたいー」
キーボ「差別……」
アンジー「しかも、 “ あの人 ” は、すごい美人さんだったみたいでねー? そういうことを理由に襲われたりすることを、ものすごい、こわがったらしいんだー」
アンジー「……それで、瀞霊廷の外に住むんじゃなくて、すぐに生まれ変わることにしたんだってー」
キーボ「………」
206 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:30:24.41 ID:bBDOsleWO
アンジー「……あー、話を戻すけどー、ふたりはすごく仲の良い見習いと先生だったみたいでねー?」
アンジー「だから、しにがみの先生は、 “ あの人 ” を大切に想ってたしー、伝言相手の是清のことも、大切に想ってたみたいだねー」
アンジー「その気持ちが、是清にも伝わったみたいなんだよー」
キーボ「………」
アンジー「……それで、是清は、しにがみの伝言を信じて、いろいろと考えて考えてーーー」
アンジー「ーーー最後には、【もう人の心を、想いを踏みにじりたくない】って考えるようになって、これまでとは違う生き方を選んだんだー」
キーボ「………」
207 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:32:20.49 ID:bBDOsleWO
アンジー「……それから、是清は、やらなきゃいけないことを考えた」
アンジー「 “ あの人 ” だけじゃない、みんなの心を、想いを、どう大切にすべきか考えた」
アンジー「それで、是清は、アンジーに、みんなに、頭を下げた」
アンジー「いっぱい、いっぱい、頭を下げたんだよ」
キーボ「………」
アンジー「アンジーはねー? そんな是清なら、信じられると思ったんだー」
アンジー「そんな是清と一緒にいれば、それだけ淋しくなくなるって」
アンジー「そう、思ったんだー」
アンジー「だから、一緒に住むことを、空鶴たちにお願いしたんだよー」
208 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:33:56.39 ID:bBDOsleWO
アンジー「……それから、是清は、アンジーが退屈しないように、この家や図書館から借りた本を読んでくれたりーーー」
アンジー「ーーー難しい本で勉強して、アンジーにいろいろ面白い話してくれるようになったんだー」
キーボ「………」
アンジー「……今では、そういう意味でも、一緒にいたいって思える」
アンジー「……この気持ち、そんなにダメかな?」
209 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:34:53.85 ID:bBDOsleWO
キーボ「………」
キーボ「…………」
キーボ「………………」
210 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:38:21.49 ID:bBDOsleWO
キーボ「……それが、アンジーさんの望みならば、誰かが無理に止めるようなことではありませんよ」
アンジー「………」
キーボ「実際に、百田クン達からも止められていないのでしょう?」
アンジー「……うん、解斗たちは、止めなかった」
キーボ「………」
アンジー「……もちろん、最初は止めようとはしたけど、アンジーが良いならって、認めてくれたんだー」
キーボ「……それに加えて、ここの家主のクウカクさん達が、アンジーさん達を任せられる、信頼できる人だった」
キーボ「だからこそ、今の状況が成立している」
キーボ「きっと、そういうことなんでしょう……」
アンジー「………」
キーボ「……ならば、ボクも、アンジーさんの意志を尊重しますよ」
211 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:39:40.72 ID:bBDOsleWO
アンジー「……ありがと、キーボ……」
キーボ「ーーーただーーー」
アンジー「……?」
キーボ「ーーーただ、一つ、聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
212 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:40:28.33 ID:bBDOsleWO
アンジー「ーーー何かな?」
キーボ「………」
アンジー「答えるよ?」
アンジー「それが、アンジーに答えられることなら」
213 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 13:41:16.72 ID:bBDOsleWO
キーボ「……ならば、聞かせて頂きます」
アンジー「………」
キーボ「ボクが聞きたいこと、それはーーー」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
214 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:01:49.09 ID:bBDOsleWO
バタン……
キーボ「………」ガチャリ
真宮寺「……お帰りなさい、キーボ君」
真宮寺「これから僕達が夜を共にする、この部屋まで」
キーボ「……おかしな言い回しはしないでください」
真宮寺「……そうだネ。ちょっと誤解を招く表現だったかもしれないネ」
真宮寺「これからは、気をつけるヨ」
キーボ「………」
215 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:03:00.22 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……それで、夜長さんとの話は終わったのかい?」
キーボ「……ええ、まあ」
真宮寺「……夜長さんは?」
キーボ「アンジーさんなら、女性用の風呂場まで向かうとのことでした」
キーボ「……入浴が終わり次第、就寝に移るそうです」
216 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:04:20.20 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……確かに、そろそろ寝た方が良い時間だネ」
キーボ「………」
真宮寺「……うん、僕も、もうそろそろ寝ることにするヨ」
キーボ「……ボクも一緒ですからね」
217 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:05:06.12 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……ごめんネ」
218 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:06:29.86 ID:bBDOsleWO
キーボ「……何に謝っているんですか」
真宮寺「……何もかもサ」
真宮寺「僕はーーー」
キーボ「ーーーボクにそれを言うくらいなら、これから “ しっかりと ” 生きてください。それが、キミが一番やり続けなければいけないことでしょう」
真宮寺「………」
キーボ「……これからもこの死後の世界について教えてください」
真宮寺「!」
キーボ「それが、ボクの、当面の望みです」
219 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:07:33.57 ID:bBDOsleWO
真宮寺「………」
真宮寺「…………」
真宮寺「………………」
220 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:08:11.06 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……もちろん、だヨ」
キーボ「………」
真宮寺「僕に答えられることなら……なんだって、答えてみせるヨ」
221 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:12:24.17 ID:bBDOsleWO
キーボ「……それなら、今ここでボクの質問に一つ答えて頂けますか?」
真宮寺「……質問?」
キーボ「真宮寺クン」
真宮寺「……なんだい?」
キーボ「キミは、この死後の世界に来る前に、夢を見ましたか?」
222 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:14:31.93 ID:bBDOsleWO
真宮寺「夢……?」
キーボ「……実はボクの記憶領域には、この世界に来るより前に、夢ともエラーともわからない光景が刻まれているんです」
キーボ「そして、その内容は……ボクら死者が、みんな同じ場所に囚われているというものでした」
真宮寺「……囚われる? あの学園のことかい?」
キーボ「いえ、違います。もっと、暗くて、狭い空間でした」
キーボ「気づいたらそこにいて……囚われているみんなを見ていたら突然エネルギー不足に陥ったかのように力が抜けてーーーうつぶせに身体が倒れてしまいました」
キーボ「その後も、急に重力が倍になったかのごとく、上手く身体を動かすことができなくてーーー」
真宮寺「………」
キーボ「ーーーそうして、もがいている中、光が降り注いできたんです」
223 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:15:23.66 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……光?」
キーボ「……ただの光じゃありません」
真宮寺「………」
キーボ「天使の光です」
224 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:17:35.53 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……天使?」
キーボ「ええ、そうです」
キーボ「光が降り注いでくる中、見上げると光り輝く天使がいたんです」
真宮寺「……それは、死神の間違いじゃなくて?」
キーボ「……おそらく、違います」
真宮寺「……人型の黒装束ではないんだネ?」
キーボ「……明らかに、違います」
真宮寺「………」
225 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:18:29.71 ID:bBDOsleWO
キーボ(……それに、あの、あたたかな感覚ーーー)
キーボ(ーーーあれは、まるでーーーー)
226 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:19:53.19 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……それ、写真にはできるかな?」
キーボ「………」
真宮寺「……あァ、何だったら、入間さんがここに置いていった、君用の現像機を使うかい?」
真宮寺「あれなら、外付けではあるけど、写真にできるはずーーー」
キーボ「ーーー残念ですが、写真にするのは難しいですね」
真宮寺「……そうなの?」
キーボ「ええ……急に倒れたことによる衝撃が理由かは不明ですが、記憶領域にある映像の解像度は高くありませんでした」
真宮寺「……なるほど、だから写真にすることは難しい、と」
キーボ「……そうですね」
227 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:21:03.53 ID:bBDOsleWO
キーボ「……ですが、それでも記憶領域に残された映像は、一般的にイメージされる天使のそれでした」
真宮寺「………」
キーボ「その天使を見上げていたら、どういうわけか空の暗闇にヒビが入りましてね」
キーボ「そのヒビから、さらなる光が降り注いできたと思ったら気を失ってーーー」
キーボ「ーーー気づいた時には、この世界にいたんです」
真宮寺「………」
キーボ「……もしかしたら、キミも、そうした夢をーーー」
真宮寺「……悪いけど、僕にそんな記憶はないヨ」
キーボ「……そうですか」
228 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:22:14.74 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……ひょっとして、夜長さんにも、同じことを聞いたのかい?」
キーボ「ええ、去り際に、一応」
真宮寺「……夜長さんは、何て?」
キーボ「……実は、アンジーさんも同じように、夢を見ていたようでーーー」
真宮寺「!」
キーボ「ーーー先ほど話した “ 光 ” 」
キーボ「……あるいは、アンジーさんも、ボクと同じものを認識していたのかもしれません」
229 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:23:57.85 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……かも、しれない?」
キーボ「……ええ……」
キーボ「アンジーさんは、夢の内容について語る際、ビカビカーという擬音語を出していましたので」
キーボ「同じ光を、認識していた可能性はあると思います」
真宮寺「………」
キーボ「ただ、アンジーさんは、その時意識が曖昧だったようで、光以外は認識できていなかったようですが」
230 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:25:19.62 ID:bBDOsleWO
真宮寺「ーーー興味深い話だネ」
キーボ「………」
真宮寺「実に、実に、知的好奇心を刺激させられる話だヨ」
真宮寺「想像力を掻き立てる」
キーボ「………」
真宮寺「……ただ、僕は早起きでネ。もうそろそろ寝ないといけない時間が来てしまう」
真宮寺「夢の考察は、またの機会にさせて貰うヨ」
キーボ「……そうですか」
真宮寺「……そろそろ部屋の明かり、消しても良いかな?」
キーボ「……どうぞ」
231 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:26:55.28 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……ホタルカズラO」
真宮寺「今日も、照らしてくれて、ありがとう」
真宮寺「 “ お疲れ様 ” 」
フッ……
キーボ「ーーーキミが寝る前に断っておきますが、キミが寝ている間も、ボクは起きていますからね」
真宮寺「……まァ、君は寝る必要がなさそうだからネ」
キーボ「ええ、先ほど夢を見たかのようなことを言っておいてなんですがーーーボクはキミ達で言うところの睡眠が必要ではありません」
キーボ「身体の動きを止めているだけでも充分な休息になります」
キーボ「なので、キミが用意したこの布団の上で、そうさせて貰いますね」
真宮寺「………」
232 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:28:28.59 ID:bBDOsleWO
キーボ「また、今のボクの視力と聴力はとても高いです。そのため、この暗闇の中でもキミが何か妙な真似をすれば、すぐにわかります」
真宮寺「……初耳だネ」
キーボ「事実です」
真宮寺「……僕の指、何本に見える?」
キーボ「現在立たせている指でしたら、左手の親指、薬指、小指と右手の親指、中指、薬指、小指の計七本です。ああ、今急いで小指二本に変えましたね」
真宮寺「……正解だヨ」
233 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:29:56.47 ID:bBDOsleWO
真宮寺「………………ねェ、僕が今ーーー」
キーボ「ああ、今のキミが、うっすら呟いた言葉ならわかりますよ」
キーボ「 “ 一昨日の夕飯はおでん ” 、そうでしょう?」
真宮寺「……それも正解だヨ」
キーボ「わかって頂けました?」
真宮寺「……こわいほどにネ」
キーボ「そして、今のボクは大した力はありませんが、音声のボリュームを上げる機能は付いています」
キーボ「それで叫び続ければ、近くにいるキミの脳はダメージを受け身体の動きは鈍ります」
キーボ「その後、ボクにのしかかられた場合、キミはまともに身動きが取れなくなるでしょうね」
真宮寺「………」
キーボ「それからも叫び続ければ、キミの脳のダメージは増大し、あまりのうるささにクウカクさん達も起きて、ここに駆けつけてくるでしょう」
キーボ「そのことを決して忘れないよう、お願いします」
真宮寺「……肝に銘じておくとするヨ」
234 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:30:55.09 ID:bBDOsleWO
キーボ「……それと最後にーーー」
真宮寺「……何かな?」
キーボ「ーーーおやすみなさい、真宮寺クン」
真宮寺「………」
キーボ「そして、今日は休日の中、いろいろ気遣ってくれて、本当にありがとうございました」
キーボ「物理的なお礼をするかはまだ未定ですがーーー精神的なお礼はいま実行します」
キーボ「……ありがとう、ございました」
235 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:31:29.83 ID:bBDOsleWO
真宮寺「……そうかい」
キーボ「………」
真宮寺「喜んでくれたのなら、何よりだヨ……」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
236 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:57:57.97 ID:bBDOsleWO
ー翌日・志波家の庭ー
真宮寺「ーーー以上で、今日の仕事……今日の、この夕方までに行う分の掃除は終わりだヨ」
キーボ「……お疲れ様です。真宮寺クン、アンジーさん」
アンジー「お疲れー!是清ー、キーボ!」
真宮寺「お疲れ様だネ。夜長さん、キーボ君」
キーボ(……ボクは疲れないのですがーーーそれでも、労わって貰うというのは、悪いものではありませんね、やはり)
237 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:58:52.33 ID:bBDOsleWO
キーボ「……それで、真宮寺クン」
キーボ「今日の、朝食前に交わした約束についてですがーーー」
真宮寺「わかっているヨ。この世界についての説明を改めて行う」
真宮寺「それに、昨日は、流魂街や瀞霊廷などについて、そこまで詳しく話せたわけじゃなかったからネ」
真宮寺「今日はそうしたことを、しっかりと説明させて貰うヨ」
キーボ「……ありがとうございます、真宮寺クン」
238 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 14:59:49.31 ID:bBDOsleWO
アンジー「……ねーねー、キーボ、是清、よかったらーーー」
岩鷲「おおう! オメーら、終わったか!」
239 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:04:35.65 ID:bBDOsleWO
アンジー「………」
キーボ「あっ、岩鷲クン」
真宮寺「お帰り……薪拾いは終わったのかい?」
岩鷲「おう! そのくらい、朝飯前よ!」
キーボ「?」
キーボ「待ってください。朝食でしたら、朝の時点で終わっていてーーー夕刻を迎えた現在、今日の食事は夕飯を残すだけのはずですよ?」
キーボ「なのに、どうして、朝飯前なんてーーー」
アンジー「……キーボは、アンジー以上に日本語の勉強が必要みたいだねー」
真宮寺「……君の言語データには、朝飯前という言葉の使い方がないのかな?」
240 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:05:54.89 ID:bBDOsleWO
キーボ「えっ、あー、ちょっと待ってください……」
キーボ「……ああ、ありますね。申し訳ありません。データの認識が不充分だったようです」
岩鷲「なっはっは! 気にすんな! 誰にだって失敗はある!」
岩鷲「俺だって、ここに来る前、うっかりオメーのこと話しちまったからな!」
キーボ「……なっ、!?」
岩鷲「いや、そいつらは昔の居候共なんだがよ。流魂街に現れた謎の “ ろぼっと ” について聞かれてな」
岩鷲「そうしたら、話の流れでポロっとーーー」
空鶴「ーーーどういうつもりだ、岩鷲?」
241 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:06:59.35 ID:bBDOsleWO
岩鷲「ーーーね、姉ちゃん!」
空鶴「なんで、そんなことをした?」
岩鷲「あっ、いや、だから、そのーーー」
空鶴「テメエの今の狼狽えっぷりからして、キーボ本人が、 “ そうしてくれて構わない ” って言ったわけでもねえんだろ?」
岩鷲「うぐっ……」
キーボ「………」
空鶴「……それをする必要があっても、まずは、家主のおれに許可を取れっつったよな?」
空鶴「なのに、どうして、勝手に話した? ああ?」
242 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:08:07.35 ID:bBDOsleWO
岩鷲「……あ、いや、でも、あいつらは、無駄に話が広まんないように “ 工夫 ” してくれてーーーその上で俺は話をしたんだ」
真宮寺「………」
アンジー「………」
岩鷲「それに、あいつらなら、口だって固えしーーー」
空鶴「ーーーそれが、おれの “ 決まり付け ” を破った言い訳か? 岩鷲?」
243 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:08:40.42 ID:bBDOsleWO
岩鷲「あ……」
空鶴「…………」
岩鷲「……びゃああああああああああああ!!!」
244 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:09:16.39 ID:bBDOsleWO
ーGAME OVERー
ガンジュくんがクロに決まりました。おしおきを開始します。
245 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:10:44.14 ID:bBDOsleWO
岩鷲「どわああああああああああああああ!!?」
チュッドーンッ!!
キーボ「岩鷲クーーーン!!?」ガガーンッ
アンジー「あー、これまたよく飛んだねー」
真宮寺「そうだネ。毎度のことながら、空鶴さんの花火師としての腕には感心するヨ」
キーボ「な、何を言っているんですか、二人とも!?」
アンジー「んー? どうしたー、キーボ?」
キーボ「どうもこうもありませんよ!?」
キーボ「目の前で処刑が行われたというのに、どうして、お二人はそんなーーー」
真宮寺「ーーー心配はいらないヨ」
アンジー「そうだねー、だってーーー」
ドサッ……
キーボ「ーーーえっ、?」
岩鷲「……いたたたた」ムクッ
アンジー&真宮寺「「普通に生きてるから」」
246 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:11:54.75 ID:bBDOsleWO
岩鷲「ケホッ……うおおっ、煤まみれ……」
キーボ「……!?」
岩鷲「……あっ、すまねえ、オメーら! 掃除したばっかだってのに、煤で汚しちまった!」
アンジー「……あー、大丈夫だよー、気にしないでー」
真宮寺「……それに、いま汚してしまったところは、今日清掃した場所じゃあないからね」
真宮寺「とりあえず、また気をつけてくれればそれで良いかな……」
岩鷲「悪いな、本当……!」
247 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:13:24.85 ID:bBDOsleWO
キーボ「………?!!?」
岩鷲「……それとは別に、すまなかった、キーボ! 勝手にオメーのこと話しちまって!」
キーボ「あっ、えっ……」
岩鷲「でも安心しろ! あいつらは口の固い連中だ! だから、オメーのことを知ったとしても、むやみに話したりはしねえし、おかしな真似はしねえ! 心配すんな!」
キーボ「うっ、あっ……」
岩鷲「……自称【数多の通り名を持つ男】の名にかけて、そこは保証ブゲオォッ!?」
空鶴「それ以上は、風呂と掃除の後だ! 岩鷲! 煤まみれで長話してんじゃねえ! 無駄に汚れるだろうが!」ズルズル
岩鷲「ええっ!? 煤まみれなのは、姉ちゃんがーーー」
空鶴「………」ズルズル
岩鷲「ーーーわ、わかった! わかったから! ちゃんと風呂も入るし、煤で汚したとこも、俺だけで今日中に掃除するから! 大砲の方まで引きずんのはやめてくれ、姉ちゃん!」
248 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:25:24.68 ID:bBDOsleWO
アンジー「……あー、行っちゃったねー」
真宮寺「まァ、あれだけ派手に打ち上げられたことだし、これ以上はフリだとは思うけどネ」
キーボ「ーーーなんですか、これは」
アンジー「んー?」
真宮寺「何ってそれはーーー」
キーボ「なんで大砲で打ち上げられた人が、生きているんですか!?」
249 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:28:11.07 ID:bBDOsleWO
真宮寺「ーーーあァ、それについては、簡単だヨ」
キーボ「??」
真宮寺「それは、岩鷲君の “ 霊圧 ” がとても大きいからサ」
キーボ「……レイアツ?」
真宮寺「霊圧とは、霊力ある魂魄が持つ圧力のことだヨ」
キーボ「圧力……ですか」
真宮寺「そう、霊力ある魂魄は圧力を持っている」
真宮寺「霊力があればあるほど、その圧力は大きくなる。故に、霊的な鍛錬を積んで、霊力の全体量を増やせば、霊圧も大きくなる」
真宮寺「そして、霊圧は、時に “ 気 ” のようなものとなって、それで周囲にいる人を叩きつけたり、押し潰すことも場合によっては可能だしーーー」
キーボ「!」
真宮寺「ーーーさっきの岩鷲君のように、ただ霊圧を持っているだけで、ほぼ自動的に身体の強度が高まり、損傷を防ぐことも可能なのサ」
キーボ「……そんなことがーーー」
真宮寺「現世じゃあり得ないような現象ではあるけどーーー “ 霊子 ” が基本の尸魂界では当たり前のことなんだヨ」
250 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/18(水) 15:34:57.53 ID:bBDOsleWO
キーボ「……レイシ?」
真宮寺「霊子とは、僕達のこの魂魄など、霊的な物質を構成する原子のことサ」
真宮寺「霊子は、入間さん曰く、信じられないくらい自由度の高い原子のようでネ。彼女も、その存在を知った時には、あまりの衝撃に卒倒しかけたそうだヨ」
キーボ「………」
真宮寺「そういった原子が基本となる世界であるが故に、現世で普通に生きる人間の常識ではあり得ないような……いわゆる超常現象が当たり前に起きてしまうのサ」
251 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:39:20.88 ID:pU3OgjCOO
真宮寺「……いや、まァ、正確には、現世でも多かれ少なかれ超常現象は起こり得るんだけどネ。霊子は現世にもあるわけだからサ」
真宮寺「だけど、それらのものを、現世で普通に生きてる人達が見て記憶することは “ 基本的に ” 不可能だ」
真宮寺「霊子やそれによって引き起こされる超常現象を、認識しきれないのが現状なんだヨ」
アンジー「………」
真宮寺「……【生前の時点から相応の霊力を持ち】【その影響で霊子などを、ある程度知覚可能になっている】などといった状況にあれば話は別だけど、そういうケースはとても少ないしーーー」
真宮寺「ーーーもしも、なんらかの理由で、本来霊力を持たない人達でも霊子などを知覚できることがあったとしても、それらは混乱防止のため、記換神機(きかんしんき)と呼ばれる記憶操作技術をもって、別の記憶に書き換えられてしまうだろうネ」
キーボ「………」
真宮寺「だから、現世で生きる、普通の人達の常識では、霊子やそれによる超常現象を、当たり前のものとされていない」
真宮寺「……もちろん、知らないもの、目に見えないものに対して、想像を働かせることはできるだろうけどーーー」
真宮寺「ーーー全容を知り、記憶し続けることが困難である以上、自分達の想像が実状と一致しているかどうか、死ぬまで確かめることはできない……」
真宮寺「……そう、実際に死亡して魂だけの状態になり、死の側の存在とならない限りは、霊子やそれによる現象を確かめるなんて、まず不可能……」
真宮寺「……故に、現世で普通に生きる大多数の人達は、自分達が死ぬまでの間、霊子やそれによる現象を、当たり前のものとして認識できない運命にあるのサ……」
キーボ「………」
252 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:43:22.38 ID:pU3OgjCOO
アンジー「…………うんうん、今日も絶好調だねーーー【鰤清劇場】!」
真宮寺「……【ブリキ劇場】? どうして、そこでキーボ君が出てくるんだい?」
キーボ「なっ、違いますよ! アンジーさんは、【ブリキ劇場】ではなく、【ブリキヨ劇場】と言ったんです! ロボット差別に繋がるような聞き間違いはやめてください!」
アンジー「……そうだよー! キーボの言う通り、ブリキじゃなくて、ブリキヨなんだよー!」
アンジー「魚の “ 鰤 ” に、是清の “ 清 ” で、 “ 鰤清 ” なのだー! にゃはははー!」
253 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:44:56.33 ID:pU3OgjCOO
キーボ「……ん? でも、なんで、そこで魚の鰤が登場するんですか?」
アンジー「んー? なんとなくー?」
キーボ「………」
真宮寺「……まァ、どういう考えをもって命名したかはともかく、夜長さんが付けてくれた名前であることに変わりはないからネ……」
真宮寺「……うん、僕は良いと思うヨ? 【鰤清劇場】」
254 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:46:48.49 ID:pU3OgjCOO
アンジー「……にゃはははー! 是清のお墨付きだねー! これからも【鰤清劇場】よろしくだよー!」
真宮寺「……そうだネ。ちなみに、この後は、キーボ君にこの世界について更に詳しく説明するつもりだから、もし良ければ夜長さんもーーー」
アンジー「うんうん! アンジーも聴くよー! 何度聴いても飽きないからねー!」
キーボ「!」
255 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:47:40.36 ID:pU3OgjCOO
アンジー「……そういうわけだからー」
キーボ「……?」
アンジー「……アンジーも、キーボと一緒に、聴いてもーーー」
アンジー「ーーー良い、かな?」
256 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:48:36.59 ID:pU3OgjCOO
キーボ「……ええ、もちろんですよ! むしろ、こっちからお願いしたいくらいです!」
アンジー「!」
真宮寺「………」
キーボ(……アンジーさんと一緒の方が、和やかな気持ちで聴けそうですからね……)
257 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:51:01.70 ID:pU3OgjCOO
アンジー「……ありがと、キーボ」
キーボ「? どうして、アンジーさんがお礼をーーー」
真宮寺「……アー、ちょっと良いかな?」
アンジー「……?」
キーボ「……真宮寺クン?」
真宮寺「……劇場を開く前に、留意しなければならないことがある」
真宮寺「その説明のため、いったん話題を岩鷲君の頑強さの件に戻させて貰うネ?」
258 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:54:42.31 ID:pU3OgjCOO
真宮寺「……岩鷲君が空鶴さんに打ち上げられた件についてだけどーーーそれは誰であっても決して真似してはいけないヨ?」
真宮寺「それが、僕から伝える話サ」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「……さっき、打ち上げられても死なないとは言ったけどーーーそれはあくまで岩鷲君のような非常に大きな霊圧の持ち主だからこそ、起こり得ることだ」
真宮寺「霊的な鍛錬を重ねて……霊力の全体量を増やし、霊圧を上げた者だからこそ、可能なことなんだ」
真宮寺「僕達のような、小さな霊圧であんなことをやれば間違いなく死ぬだろうネ」
アンジー「………」
真宮寺「仮に、僕達に岩鷲君ほどの霊圧があったとしても、やり方を大きく誤れば死ぬことだってあり得る」
真宮寺「僕達だけじゃない、下にいる人も巻き込まれ、死ぬかもしれない」
キーボ「………」
真宮寺「……空鶴さんの岩鷲君に対する折檻ーーー」
真宮寺「ーーーそれは、岩鷲君が非常に大きな霊圧の持ち主であること、そして空鶴さんの花火師としての腕が優れているが故に、死を乗り越えて成立しているんだヨ」
真宮寺「……花火とは、時には人の命を奪う可能性を秘めた危険物であり、爆発物に他ならない。故に、花火師とは命の危険の伴う仕事だ」
真宮寺「花火師として、相応の腕を持たなければ、絶対に務まらない」
259 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:57:13.91 ID:pU3OgjCOO
アンジー「………」
キーボ「………」
真宮寺「……もし、花火師としての小手先の技術を鍛えて小器用になれたとしても、命の……人の心や想いの大切さを知らない者には務まらない」
真宮寺「打ち上げられる存在に込められた心と想い、そして地上に残された存在に宿る心と想いーーー」
真宮寺「ーーーそれらの重みを誰よりも知っている人でなければ、油断して、加減を誤るかもしれないからネ」
真宮寺「死を乗り越えられないかもしれない」
真宮寺「……あの折檻は、岩鷲君が空鶴さんの弟であり、空鶴さんが岩鷲君の姉で、お互いの命ーーー」
真宮寺「ーーーお互いの心と想いの大切さを誰よりも知っている間柄だからこそ、成立していると言って良い」
260 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/20(金) 14:58:39.02 ID:pU3OgjCOO
真宮寺「……だから、あの折檻は、絶対に真似してはならない」
真宮寺「そのことを、絶対に忘れてはいけない」
真宮寺「以上が、僕から伝える話サ」
キーボ「……なるほど、よくわかりました。ボクの記憶領域にもしっかりと記録しておきますね」
アンジー「……アンジーも、改めて覚え直したよー!」
真宮寺「………」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
261 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:33:23.81 ID:mYowPMMHO
ー鰤清劇場・1日目ー
真宮寺「ーーーさて、それじゃあ、約束通りに劇場を開かせて貰うヨ」
キーボ「お願いします」
アンジー「よろしくだよー!」
真宮寺「こちらこそ、だヨ」
真宮寺「それでなんだけどーーー今日は流魂街と瀞霊廷の詳細について説明させて貰うネ」
真宮寺「ただ、その説明をよりわかりやすいものにするためにも、まずは、これまで話した尸魂界の基本について、おさらいさせて貰うヨ」
262 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:38:35.86 ID:mYowPMMHO
真宮寺「……前にも説明した通り、この尸魂界は、現世で死んだ者達の魂魄が送られてくる死後の世界」
真宮寺「故に、そこに存在するものは、霊子という霊的な物質を構成する原子で構成されている」
真宮寺「そして、尸魂界の居住区は、瀞霊廷と流魂街の二つに大別される」
キーボ「……二つ、だけなんですね」
真宮寺「……そうだネ。居住区と呼べる場所は、主にその二つしかない」
真宮寺「なお、瀞霊廷は前にも話した通り、霊力ある魂魄しか住めないけれど、流魂街は誰でも住むことができる」
真宮寺「実際、現世で亡くなった人は、霊力の有無に関わらず、その魂魄を尸魂界の説明会場に送られ、死神から死後の世界についての説明を受けーーー」
真宮寺「ーーーその日のうちに、身元を示す手形や整理券などを貰い、記載された通りの流魂街の場所に、住むことになるのが基本だヨ」
キーボ「………」
真宮寺「……まァ、霊力ある魂魄は、死神に案内されて、瀞霊廷に住むことになるのが基本ではあるのだけれどネ」
アンジー「………」
263 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:41:57.39 ID:mYowPMMHO
キーボ「……それで、流魂街とは、具体的にどんな場所なんですか?」
真宮寺「……そうだネ。それじゃあ、おさらいはこの辺にして、流魂街の詳細について説明するヨ」
アンジー「………」
真宮寺「……流魂街とは、基本的に霊力を持たない魂魄が住み、生まれ変わりを待つ場所サ」
真宮寺「大まかには東西南北の領域に分かれていてーーー細かには東西南北それぞれ一から八十までの番地に分かれている」
真宮寺「ちなみに、僕らが今いるここは西の区域になるネ」
真宮寺「なお、流魂街は非常に広大なため、円滑な移動のために、あちこちに空間転移装置が設置されている」
264 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:43:52.89 ID:mYowPMMHO
キーボ「……空間転移装置?」
アンジー「うん、なんか割と最近ねー? 流魂街のいろんなところに置かれたんだってー」
真宮寺「そうだネ。現世でいうところのバス停のように設置され、流魂街での人々の行き来を非常に楽なものにしているんだ」
キーボ「そんなものが……」
真宮寺「ちなみに、その装置は、君が昨日この志波邸に来た際にも使われている」
キーボ「えっ……?」
アンジー「……本当はねー? この家と他の家ってすっごい遠いんだー」
キーボ「……そうなんですか?」
アンジー「そうだよー」
真宮寺「だからこそ、空間転移装置が使われている」
キーボ「……いや、しかし、ワープしたようにも見えなかったのですがーーー」
真宮寺「それは、その転移が、移動距離が短縮される形で行われたからだネ」
265 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:47:29.93 ID:mYowPMMHO
キーボ「? それは、どういうことですか?」
真宮寺「空間転移装置とは言っても、全てが瞬間移動させるタイプではないんだ」
真宮寺「空間を操作して、移動距離を短縮するタイプだってあるーーーというか、流魂街ではそれがほとんどのはずだ」
アンジー「楽するのもほどほどにしないと、大変なことになっちゃうからねー」
キーボ「………」
真宮寺「……まァ、君には実感しづらいのかもしれないけど、通常の脊椎動物は運動をしなければ身体機能が落ちてしまうし、それで免疫機能が働かず病気にもなりやすくなる」
真宮寺「それを防ぐために、あくまでも移動距離の短縮という形を取っているんだヨ」
266 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:50:24.07 ID:mYowPMMHO
キーボ「……既に病気にかかってしまい、身体を動かしづらい人も、そうした運動をする必要があるのでしょうか?」
真宮寺「……もちろん、そんなことはないヨ」
真宮寺「病気の内容にもよるけれどーーー普段よりも明らかに、思ったように身体を動かせられない場合は、安静にした方が良いと思うネ」
キーボ「……病院のような場所に行って医者からの診察や治療を受ける必要が生じた場合は、どうするんですか?」
真宮寺「その場合は、伝令神機で医者を呼ぶことになるネ」
キーボ「………」
真宮寺「実は、尸魂界に来た魂魄が貰えるのは、整理券や身元を示す手形だけじゃないんだヨ」
真宮寺「死神から死後の世界についての説明を受けた後……今では、一人一つずつ伝令神機を貰えるのサ」
真宮寺「それで、流魂街の各所にある医療所で勤務する医者を呼べば、救急車のごとく駆けつけてくれる」
真宮寺「医療所にある、瞬間移動するタイプの空間転移装置を使ってネ」
キーボ「そうだったんですか……」
アンジー「………」
267 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:52:24.96 ID:mYowPMMHO
真宮寺「……ただ、それは、医者に負担をかける行為だ」
真宮寺「あまりにそれをやり過ぎると、医療ミスに繋がりかねないし、他に必要としている患者のもとに駆けつけることだって困難となる」
アンジー「………」
真宮寺「だから、住民には可能な限り、運動して貰って、身体の免疫機能を維持して貰う必要があるのサ」
キーボ「なるほど……勉強になります」
268 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:53:43.44 ID:mYowPMMHO
真宮寺「ーーーとりあえず、空間転移装置については、このくらいにして、流魂街の暮らし方に関する説明に移らせて貰うヨ」
キーボ「わかりました。よろしくお願いします」
アンジー「アンジーからもよろしくー!」
真宮寺「それならさっそく、説明に移るけどーーー流魂街では、基本的に魂魄達がお互いの家族となる人を新しく決めて、その家族同士で暮らすことになっているヨ」
269 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:55:48.78 ID:mYowPMMHO
キーボ「……?」
キーボ「家族となる人を新しく決めるってーーーなぜ、そのようなことをする必要があるんですか?」
真宮寺「それは、家族という集団でいた方が犯罪のために狙われる確率が減るからだネ」
キーボ「犯罪……」
アンジー「………」
真宮寺「……君も尸魂界に来たばかりの時、流魂街のあの家屋がどういった作りをしているかは、確認しただろう?」
キーボ「……ええ、まあ、外観だけならば……」
真宮寺「あの街の家屋は、住民の数に応じ、死神の……霊術でいくらでも作り無償で提供することが可能ではあるもののーーー」
真宮寺「ーーーその代償として作りが古い」
真宮寺「その作りは、平安から江戸時代の民家に近いものがある」
真宮寺「そういった家屋では、防犯能力も相応の物になる。現世と比較して、犯罪がやりやすい傾向にあると言っても過言ではない」
真宮寺「事実として、流魂街にだって、決して犯罪が皆無というわけではないんだヨ」
真宮寺「現在の流魂街の治安は、何年か前に比べれば全体的に向上していて犯罪率も低下はしているようだけれどーーーそれでも犯罪はある」
真宮寺「少し前は、かなり治安の悪い場所もあったようだからネ。それが尾を引いているとも言える」
キーボ「………」
真宮寺「そんな中、個人と集団、どちらが狙われやすいか?という話なのサ」
270 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/21(土) 23:57:36.07 ID:mYowPMMHO
キーボ(……なるほど、確かに集団が相手だと狙うリスクも高くなる。それを思えば、集団でいる方が安心感を得られるでしょうね)
アンジー「………」
キーボ「ーーーですが、生前、かつて一緒に暮らしていた家族が、同じく死後の世界にいるケースが一般的ですよね?」
真宮寺「………」
キーボ「……人は、生まれの関係から、ほぼ間違いなく家族が存在するものですから」
キーボ「かつて一緒に住んでいたものの、死に別れて先に尸魂界に送られた家族が、大概のケースで存在しているはずです」
キーボ「集団でいたいなら、その家族と改めて暮らせば良い」
キーボ「それなのに、どうして他の人達と新しく家族関係を結ぶ必要があるんですか?」
271 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 00:00:09.40 ID:c7dAaqOiO
真宮寺「……あるんだヨ」
真宮寺「生前に死に別れた家族と、こちらで再会できるとは限らないからネ」
キーボ「………!」
アンジー「………」
真宮寺「……少なくとも、あの学園にいた僕達全員は、生前に死に別れた家族と再会できなかった」
真宮寺「そういったように、再会できなかった場合は、こちらで新しく家族関係を結ぶ必要がある」
真宮寺「ただ、夜長さんと僕は、空鶴さん達のいる志波家の使用人として雇って貰えたし、赤松さん達は瀞霊廷という更に治安の良い場所に住めている」
キーボ「………」
真宮寺「故に、新しい家族を作る必要もなく、例外的に家族関係を結んでいない状態にあるヨ」
272 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 00:02:50.03 ID:c7dAaqOiO
キーボ「……死神は、生前に死に別れた家族と会わせてくれたりはしないのですか?」
真宮寺「……家族関係に関しては、DNAなどを調べるなどして、そういうことも試みるようになったようだけれどーーー必ず会えるとは限らない」
アンジー「………」
真宮寺「……死んだタイミング次第では既に生まれ変わっているケースもあればーーー」
真宮寺「ーーーそもそも、既に、この尸魂界で新たな家族関係を結んでいて、今さら前の家族と会うことができず、再会を拒否しているケースもある」
キーボ「………」
真宮寺「……死に別れた家族と会わせるだなんて、つい最近まではやっていなかったわけだからネ」
真宮寺「既に、この尸魂界で新たな家族関係を結んでいて、それを壊さないために、前の家族に会うことができないというケースが、多々存在している」
真宮寺「生前で言うなら、なんらかの事情で家族と離れ離れになった人が、新しい場所で別の人と家族関係を結んだ後、前の家族と会いづらくなるようなものサ」
真宮寺「それを思えば、まだまだ新たな家族関係を結ぶ必要が生じてくるんだヨ」
キーボ「……勉強になります」
アンジー「………」
273 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 00:04:56.14 ID:c7dAaqOiO
キーボ「……しかし、話の途中で気になったのですがーーー流魂街にいる他の人達はどこで働いているんですか?」
真宮寺「………」
アンジー「………」
キーボ「ボクらは、空鶴さんから、食べるからには働いて貰う必要があると言われました」
キーボ「それは、魂魄だけになった今でも、食事が必要になるということ」
キーボ「だとしたら、他の人達も同じはずでしょう。食べるためには働かないとーーー」
真宮寺「ーーー彼らに労働の義務はないヨ」
キーボ「……!?」
真宮寺「……生前、人に労働の義務があるのは、いろいろな理由があるけれどーーー最大の理由は食事をしないと生きていけないからだ」
真宮寺「だからこそ、労働を行い、金銭という対価を得る必要が出てくる」
真宮寺「故に、食事を必要としなければ、金銭の必要性も減少し、必然的に労働の必要もなくなることになる」
274 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 00:06:15.64 ID:c7dAaqOiO
キーボ「……食事を必要としないって、真宮寺クン、キミは何を言ってーーー」
真宮寺「……流魂街の住民の大多数は霊力を持たない」
真宮寺「そして、霊力を持たない魂魄は、物を食べないんだ。水だけで生きていける」
キーボ「なっーーー!?」
真宮寺「……しかも、まったく老化しない」
キーボ「……?!?」
真宮寺「……老化しないことが関連しているのかはわからないけどーーーそうした霊力を持たない魂魄は、水だけで生きていくことが可能なのサ」
真宮寺「……まァ、その代わり、魂魄の強度が低く、いずれ現世の生命に転生する義務もあるんだけどネ」
アンジー「………」
275 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 00:08:33.25 ID:c7dAaqOiO
真宮寺「……ともかく、霊力を持たない多数の魂魄は、食事を必要としない」
真宮寺「故に、生前の時のような労働を行う必要がなく、労働義務が免除されているも同然の状態にあるんだヨ」
キーボ「………」
真宮寺「……もちろん、僕らのいる志波邸のように、流魂街でも働いて金銭を稼ぐ場所は存在する」
真宮寺「たとえば、流魂街に何箇所かある飲食店などがそうだ」
キーボ「……飲食店?」
真宮寺「そこにある店の店員として、働くこともできる」
276 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 00:09:59.34 ID:c7dAaqOiO
キーボ「……いや、ちょっと、待ってください」
キーボ「確か、キミが言うには、多数の魂魄は霊力を持ってなくて、基本的に物を食べないのではーーー」
真宮寺「流魂街には、その治安維持を担当する死神達の住む基地が何箇所かあってネ」
真宮寺「飲食店などは、そうした死神達のためにあるんだヨ」
キーボ「ーーーなるほど」
真宮寺「ただ、そうした働く場所があったとしても、霊力ある魂魄が優先して働く決まりになっている」
真宮寺「金銭という対価を得て、物を食べる必要のある、霊力ある魂魄が、ネ」
キーボ「………」
アンジー「………」
真宮寺「故に、基本的な流魂街の住民……霊力を持たない多数の魂魄は、労働の義務がないも同然なのサ」
277 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 00:10:45.86 ID:c7dAaqOiO
真宮寺「ーーーとりあえず、流魂街に関する説明は大体このくらいだネ」
真宮寺「他に、何か質問はあるかい?」
キーボ「……いえ、大丈夫です、ありがとうございました」
アンジー「……アンジーも、特に何もないよー」
真宮寺「……それじゃあ、次は瀞霊廷の詳細について説明させて貰うネ」
278 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 23:36:17.87 ID:X0bI4nb9O
真宮寺「……瀞霊廷はさっきも言った通り、霊力ある魂魄のみが住めるとされている場所サ」
真宮寺「死神の管理する、この尸魂界の中心部にある、たった一つの都市でありーーー」
真宮寺「ーーー住めば、輪廻転生の輪から逃れることができる」
アンジー「………」
キーボ「………」
真宮寺「……逆に、瀞霊廷に住めない限り、輪廻から逃れることは基本的に叶わないけどーーーそれでも出入りはできる」
真宮寺「現在の瀞霊廷は、霊力の有無に関係なく出入りが可能なんだヨ。住むことはできないままだけどネ」
真宮寺「……少し前までは、深刻な労働力不足を理由に、流魂街の住民を住まわせることもあったようだけれどーーー今では、霊力ある魂魄以外の労働力を求めていない」
真宮寺「だから、霊力を持たない限り、基本的に瀞霊廷には住めないと考えて良いヨ」
279 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 23:42:15.22 ID:X0bI4nb9O
キーボ「……霊力があれば住めるということはわかりましたが、それ以外の意味では、具体的にどういった場所なんですか?」
真宮寺「そうだネ。具体的に述べるのなら、貴族の統治下にある死神の本拠地ってところかな」
キーボ「貴族……死神……」
アンジー「……うんうん、そういうお金持ちの人が住む場所だねー。流魂街とは大違いだねー」
キーボ「………」
真宮寺「……流魂街も尸魂界である以上、厳密には同じ貴族の統治下にある死神の本拠地なんだけどネ」
真宮寺「だけど、瀞霊廷はそうした貴族の意志が非常に色濃い場所……ということなのサ」
280 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 23:45:18.36 ID:X0bI4nb9O
キーボ「貴族……正直、ボクには馴染みのない制度ですね」
真宮寺「……うん、そうなるよネ」
真宮寺「だけど、尸魂界において貴族制度は確かに存在するんだヨ」
真宮寺「……そして、それは決して形式だけのものじゃない」
真宮寺「貴族でなければ、政治に参加することは困難だしーーー貴族以外は、基本的に立ち入ることすら許されない場所だって存在するくらいだからネ……」
キーボ「………」
真宮寺「……とまァ、そういった身分社会ではあるけれど、奴隷身分など人権の保証されない身分があるわけじゃない」
真宮寺「そこは、安心して良いと思うヨ?」
281 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 23:47:29.72 ID:X0bI4nb9O
キーボ「……ボクにも人権は保証されるんですかね?」
真宮寺「………」
アンジー「……大丈夫だよ、キーボ」
キーボ「……アンジーさん?」
アンジー「主はきっと言いました……空鶴たちがいるから大丈夫だ、と」
キーボ「? それはどういうーーー」
真宮寺「ーーー空鶴さん達は、元貴族だからネ。それを思えば、彼女達の関係者であるキーボ君をぞんざいに扱うわけにもいかないはずだヨ」
282 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 23:52:40.57 ID:X0bI4nb9O
キーボ「ーーーえっ、ちょっと待ってください。空鶴さんと岩鷲クン、あの人達も貴族だったんですか?」
真宮寺「……そうだネ」
真宮寺「ただ、流魂街での生活が気に入っているからなのかはわからないけどーーー今のところ瀞霊廷には住んでいない」
キーボ「………」
真宮寺「しかも、今では没落し、貴族としての立場を失っているという話だ」
アンジー「………」
283 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/22(日) 23:54:32.32 ID:X0bI4nb9O
真宮寺「ーーーだけど、それでも、かつての【志波家】は “ 五大貴族 ” と言って、尸魂界でもトップクラスの権威を持つ貴族だったみたいなんだヨ」
キーボ「………」
真宮寺「……当時、志波家の人達によって助けられた死神や貴族は、決して少なくないみたいなんだ」
真宮寺「言うなれば、志波家は先祖代々から、いろいろな人に貸しを作っていた一族でもあったんだヨ」
キーボ「貸し、ですか」
真宮寺「まァ、空鶴さん達を含む志波家の一族がそれを意識してやったかどうかはともかくとして……没落した今となっても特定の死神や貴族は志波家の一族に恩を感じ続けているようでネ」
真宮寺「その中には、位の高い死神や貴族だっているという話だ」
真宮寺「だから、君に人権があるかどうかは置いといて、志波家に対して恩がある位の高い死神や貴族がいる以上、君がぞんざいに扱われることはないはずだヨ」
真宮寺「空鶴さんの関係者である君にそんなことをすれば、空鶴さん達はもちろんのこと、位の高い死神や貴族からの怒りも買ってしまうことになるのだから」
キーボ「………」
真宮寺「……よほどの理由がない限りは、自分の不利益となるような怒りを、自ら買いにいこうとする人なんていない」
真宮寺「故に、君の身の安全は保証されていると言って良いヨ」
284 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/23(月) 00:00:29.51 ID:2rn8HxsRO
キーボ「……ですがーーー」
真宮寺「……あァ、空鶴さん達が君より先に生まれ変わっていなくなる可能性はまずないヨ」
キーボ「……どういうことですか?」
真宮寺「あの人達は輪廻転生を免除されているからサ」
キーボ「!!」
真宮寺「没落したとはいえ、かつては五大貴族だったわけだからネ」
真宮寺「五大貴族であるが故の特別な霊力や霊圧だって有しているし、それらを一族独自の鍛錬で磨き上げれば、強い死神にだってなれる」
真宮寺「それほどの血統を絶やすことは、瀞霊廷の貴族達も可能な限り避けたいことなのサ」
真宮寺「魂魄同士でも、子を成すことはできるのだから」
アンジー「……だから、キーボも安心して、ここにいてよいのだー!」
キーボ「……なるほど、わかりました」
キーボ(……空鶴さん達には、改めて感謝しないといけませんね……)
285 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/23(月) 00:21:08.31 ID:2rn8HxsRO
真宮寺「ーーーちょっと話が脱線しちゃったネ。とりあえず瀞霊廷の話に戻すけど良いかな?」
キーボ「……ええ、お願いします」
真宮寺「……うん、それじゃあ、次は瀞霊廷での生活についての話に移させて貰うネ」
真宮寺「それに関してなんだけどーーーはっきり言って、生活水準は、流魂街よりも遥かに高いと言わざるを得ないかな」
キーボ「……そんなに生活水準に違いがあるんですか?」
真宮寺「外観……建物や衣服の見た目などに関してだったら、どちらも平安から江戸時代並みなんだけどね……」
真宮寺「ただ、生活水準に関しては、井戸ではなく水道などが整備されていたりと、現世のものと相違ないーーーいや場合によってはそれ以上の生活水準を誇っているヨ」
キーボ「そんなに……」
アンジー「………」
真宮寺「……まァ、瀞霊廷は、尸魂界において、霊王宮の次に重要な拠点とされているからネ。生活水準が高いのは当然とも言える」
真宮寺「その代わり、瀞霊廷では、外敵に利用されやすい空間転移装置の設置は『公的に』認められていないのだけれどーーー」
真宮寺「ーーー公共の交通機関が新しく整備されている上、セキュリティだって盤石だ」
キーボ「………」
真宮寺「兵士たる死神達が居住している以上、そこで何かあればすぐ対処できるしーーー」
真宮寺「ーーー何より、瀞霊壁(せいれいへき)と遮魂膜(しゃこんまく)があるからネ」
286 :
◆02/1zAmSVg
[saga]:2019/09/23(月) 00:25:48.42 ID:2rn8HxsRO
キーボ「……なんですか、それらは?」
真宮寺「まず、瀞霊壁についてだけどーーーこれは、瀞霊廷の外側を囲む巨大な壁のことを指している」
真宮寺「本来は、この尸魂界の遥か上空にある霊王宮を守っている壁なんだけれどーーー」
真宮寺「ーーー瀞霊廷で緊急事態が発生したなどの場合に限り、地上まで降ってきて、瀞霊廷を守ってくれることがあるんだ」
キーボ「……なっーーー!?」
キーボ「ちょ、ちょっと待ってください!」
キーボ「確か、霊王宮と地上の間には、七十二以上の障壁があるのではーーー」
真宮寺「ーーーその辺りは大丈夫。霊王様の御力で、瀞霊壁は障壁を透過するようになっているから」
キーボ「と、透過……?」
真宮寺「そう、透過」
真宮寺「もちろん、それができるかは霊王様の体調次第らしいけどーーー体調が良い方にあるなら、万物を透過させる力を一時的に付与することも可能らしいヨ」
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