反物質男「またお前に会えて嬉しいよ」対消滅女「……なにカッコつけてるのさ」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/09/07(土) 01:10:23.75 ID:qoKz8IIqO
小さな小さな素粒子はワープが可能らしい。
完全に仕切りで遮っても通過するようだ。
そして確率論から言えば、それは何も素粒子の世界に限った話ではなく、等身大のこの世界においても可能性はゼロではなかった。

「というわけだけど、どう思う?」
「まったくもって馬鹿らしいと思うよ」

別に量子力学を専攻しているわけではなく、ネットで知った情報を語ったところ、クラスで一番頭の良い女子に鼻で笑われてしまった。

「でも可能性はゼロじゃないんだろう?」
「たしかにゼロではないね」
「なら、試してみる価値はある」
「やめておいた方がいいと僕は思う」
「なんでだよ」
「可能性はゼロではないと言っても限りなくゼロに近いことは理解出来るだろう? ダッシュで壁に激突して君の頭がこれ以上クルクルパーになったらどうするつもりだい? 大学受験はおろか、進級出来るかどうかも危うくなるよ?」

留年。浪人。フリーター。ヒキニート。
次々と負の連想が脳裏をよぎり、意気消沈。
たしかに自分は馬鹿であり、この頭の良い僕っ娘の言うことは正しいのかも知れない。

けれど馬鹿には馬鹿なりの思い切りの良さがあり、たとえ目に見えた結果であってもそこに飛び込むのが馬鹿としての矜持であった。

「脳震盪を起こしたら、あとは頼む」
「僕は忠告したからね」
「ああ、ありがとよ」

すっかり呆れ果てた様子の頭の良い僕っ娘であったが、その口元には笑みが浮かんでおり、何だかんだ言っても馬鹿な振る舞いを見るのが好きらしい。

ならばその期待に応えてみせようではないか。

「んじゃ、ちょっと壁の向こうに行ってくら」
「行ってらっしゃい。怪我しないでね」

なんて軽い調子で壁に突っ込んだところ。

「おっ?」

スルリと壁をすり抜けて、マジびびった。

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