【安価】安価ファンタジー冒険者で地の文多めのマジメなやつ

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1 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 16:24:08.81 ID:DPnHy/wh0
スレタイ通りのものやるよー


【作風】
ライト風味のファンタジー
大体マジメ
ギャグは苦手なので少なめ
少し気を抜くとダークファンタジーになる(ならないように気をつけはする)
血は流れるけどグロくはしない
恋愛は話の流れ次第では書くけど苦手で筆が遅くなる
NTRは絶対無理、書かない

【舞台】
魔物とかそういうのが居る中世風ファンタジー世界
魔法は処理が面倒なので使えない(存在はするけど一般的ではない)
種族は処理が面倒なので人間のみ(存在はするけど一般的ではない)
情勢は荒れてはいないけど完全な平和でもない

【安価】
キャラメイクは主人公のみある
選択肢方式
完全自由安価は無いか有っても稀
コンマは多分無い


大体こんな感じ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1567581848
2 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 16:27:37.20 ID:DPnHy/wh0
キャラ作ってくよー

【主人公の性別】

↓1
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 16:28:25.18 ID:Mx0g83Wu0
4 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 16:31:00.09 ID:DPnHy/wh0
【性別】 女


【主人公の年齢】

14歳 〜 40歳

高いと初期能力+ 成長性−

低いと初期能力− 成長性+

↓1
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 16:40:15.94 ID:bGfcTvGDO
18
6 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 16:47:20.45 ID:DPnHy/wh0
【性別】 女
【年齢】 18


【冒険者になる前の職業】

初期能力に影響

例として農民だと筋力や体力に+
修道女だと精神力に大きく+
無職や家事手伝いなどの場合は満遍なく少量ずつ+

ファンタジー世界にありそうなら大体OK
ただし魔法が一般的じゃないので「魔術師」指定だと「占い師」程度にされます

↓1
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 16:47:55.83 ID:lC0CCZsF0
修道女
8 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 16:51:20.05 ID:DPnHy/wh0
【性別】 女
【年齢】 18
【前職】 修道女


【主人公の来歴】

どこで生まれ、どうやって育ったか
簡単な一文でもいいし張り切って数行でもいい
ただし長すぎるとこちらで勝手に省略や要約する

初期能力に影響

↓1
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 16:53:24.91 ID:/Ur8/xfe0
国境沿いの辺境にある小さな町で生まれ育った
性格は気弱で大人しいが心優しい性格であり、誰かの為に働いてきた
10 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 16:57:04.27 ID:DPnHy/wh0
【性別】 女
【年齢】 18
【前職】 修道女
【来歴】 国境沿いの辺境にある小さな町で生まれ育ち、誰かの為に働いてきた


性格は別安価なので削り


【主人公の性格】

そのまま性格
ストーリー全体と初期能力に影響

↓1
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 16:58:39.42 ID:bGfcTvGDO
気弱で引っ込み思案
12 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 17:01:30.66 ID:DPnHy/wh0
【性別】 女
【年齢】 18
【前職】 修道女
【来歴】 国境沿いの辺境にある小さな町で生まれ育ち、誰かの為に働いてきた
【性格】 気弱で引っ込み思案


【主人公の目的】

なぜ前職を離れ冒険者を志したか
ストーリー全体と初期能力に影響(来歴や性格と一致しているほど効果大)

↓1
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 17:02:59.63 ID:Mx0g83Wu0
町に死にかけの冒険者が辿り着いた。懸命に看病したが救うことができず、平和な街で祈るだけの自分が許せず冒険者になることを決めた。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 17:03:16.51 ID:5cBcw+LZ0
攫われた妹を助ける為
15 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 17:15:14.26 ID:DPnHy/wh0
【性別】 女
【年齢】 18
【前職】 修道女
【来歴】 国境沿いの辺境にある小さな町で生まれ育ち、誰かの為に働いてきた
【性格】 気弱で引っ込み思案
【目的】 平和な街で祈るだけの自分が許せず冒険者になることを決めた


以上から初期能力決定

★ = ☆x2

筋力 ★☆
敏捷 ★
耐久 ★★
感覚 ★★
精神 ★★★☆
幸運 ★★

情熱 ★★★★★(最高値)


筋力=力の強さ
敏捷=素早さ
耐久=体の丈夫さ
感覚=五感の鋭さ
精神=意志の強さ
幸運=運の良さ

情熱=冒険者という職に対する熱意 無くなるとゲームオーバー
16 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 17:19:21.07 ID:DPnHy/wh0
【性別】 女
【年齢】 18
【前職】 修道女
【来歴】 国境沿いの辺境にある小さな町で生まれ育ち、誰かの為に働いてきた
【性格】 気弱で引っ込み思案
【目的】 平和な街で祈るだけの自分が許せず冒険者になることを決めた

【能力】

筋力 ★☆
敏捷 ★
耐久 ★★
感覚 ★★
精神 ★★★☆
幸運 ★★

情熱 ★★★★★


【主人公の名前】

この子に名前をつけてあげてください
明らかにアレな場合は下ズレ
出来れば西洋風

↓1
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 17:22:32.89 ID:7BGUsxeO0
ミア
18 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 17:32:56.72 ID:DPnHy/wh0
諸々自動決定して、こんな感じの主人公


【名前】 ミア
【性別】 女
【年齢】 18
【前職】 修道女
【来歴】 国境沿いの辺境にある小さな町で生まれ育ち、誰かの為に働いてきた
【性格】 気弱で引っ込み思案
【目的】 平和な街で祈るだけの自分が許せず冒険者になることを決めた

【能力】

筋力 ★☆
敏捷 ★
耐久 ★★
感覚 ★★
精神 ★★★☆
幸運 ★★

情熱 ★★★★★

【装備】

主 メイス
副 ウォーピック
防 修道女の服
他 聖印

【技能】

手当 Lv1 自分や他者の負傷を回復
祈念 Lv1 一時的に幸運をブースト
栽培 Lv1 一部の草花系アイテムを一定期間毎に自動獲得
料理 Lv1 食べ物系アイテムの効果を自動的にブースト
信仰 Lv2 異教徒以外の人物の初期好感度にボーナス
19 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/04(水) 17:35:44.35 ID:DPnHy/wh0
キャラメイク終わり
ストーリーやらNPCやら整えてそのうち開始します
お疲れ様ー
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 17:41:33.27 ID:Mx0g83Wu0
乙。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 17:43:38.75 ID:bGfcTvGDO
乙です 期待してます
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/09/04(水) 17:52:42.76 ID:VuwGw40+o
おつ
期待
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 20:02:16.83 ID:46WG3OL/o
おつ
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/04(水) 20:54:52.95 ID:OpN1iH9JO
期待してる!
25 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:45:59.83 ID:JsU2vhmx0
とある国のとある土地。
隣国との境も近い小さな町にその女性はいた。

名前はミア。

町娘として何の変哲も無い響きの名前通り、彼女に取り立てて特別な所はない。
平均的な両親の下に生まれ、ごく普通に愛されて育ってきた女だ。
困った隣人が居れば手を差し伸べる優しさが取り柄と言えたが、いつも人の顔色を伺うような生来の気弱さとハッキリと主張の出来ない引っ込み思案が足を引き、人の目に留まるほどでもない。

つまりは平凡な人間だった。
輝かしさや華やかさといった言葉とは無縁で、町を探せば似たような人物は幾らでも見つかるに違いない。



ミアは町外れの修道院で暮らしていた。
これもまた、特別な理由がある訳でもない。

端的に言えば婚期を逃し他に道が無かっただけである。
要領の良い同年代の女達が手頃な男を捕まえる中、気弱なミアはそれに失敗した。
より正確に表現すると挑戦にさえ怖気づいてしまった。
明日こそは、次こそは。
先延ばしにし続けて……気付けば適齢期とされる14歳からの2年間が終わっていたという話。

諦めずに相手を探す者、開き直って独り身を貫く者。
そういった者も多いが、人の目を気にしやすいミアには出来ず、清廉と純潔を求められるために相手がいなくとも許される修道院に入ったのだ。
26 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:47:21.11 ID:JsU2vhmx0
とはいえ、ミアに不満は無い。
修道院の生活は彼女の性に合っていた。

厳しい規律に従う生活は、つまり何をすべきかが全て決まっているという事。
物事をすっぱり決められない性質のミアには逆に喜ばしいだけだった。

日の出とともに起き、信仰を捧げる神へ祈り、ささやかな食事を皆と作り、食べ、麦と果実を育てる畑を耕し、日が暮れれば眠る。

この繰り返しばかりの日々はミアにとって心地良いものだったのだ。
定期的に行う町での奉仕活動も含めて。
他者の助けになれる事を喜ぶ性分も十分に満たされる日々だ。



なのでその日もミアは穏やかな心地で働いていた。
ただし、心地は穏やかであっても苦労がないとは限らないが。


「へへっ、もーらい!」


快活な少女の声とともに黒いウィンプル(修道女が被るヴェール状の頭巾)がバサリと宙に舞った。

ここは修道院のうち、孤児の少女が暮らす区画。
町中にある孤児院を出る年齢になっても職や里親が見つからなかった者のうち、希望する者はここに入る事も出来る。
まだ修道女として道を定めるには早い彼女たちは労働の大半が免除され、その世話は修道女が持ち回りで行っている。

そして今日はミアの当番であり、その度に何かしらの悪戯をされるのは毎度のお決まりだ。
27 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:48:23.39 ID:JsU2vhmx0
「あっ、こ、こらヴィルマ! それはだめ、返して!」


などとミアにしては大きな声で言うもまるで効果が無い。


「ちょっとヴィルマ! アンタいい加減にしなさいよ!」

「うっせー! 欲しかったら取り返してみろよ!」


ミアに味方した数人の少女が同調してもお構いなし。
少女たちの中でも最も悪戯好きな少年じみた少女は笑い声を上げ、ウィンプルを自分の頭に被せて逃げ回る。

ヴィルマにとってミアは良い標的なのだ。
強く叱れず、怒ってもまるで怖くなく、世話役で一番年若いとなれば当然ではある。
勿論ミアにとってはたまったものではないが。

ただ幸いにしてこれが深刻な事態に発展することはない。
辺境ではあるが隣国との交易が盛んである影響から町は比較的に裕福で、孤児院への寄付も多い。
孤児と言っても飢える事もなく心身共に健やかに育ってきた者達だ。


悪戯者のヴィルマも子供らしく構ってほしいだけ。
しばらく皆で追いかけっこをすれば満足して謝りながら返すだろう。

仕方ない子だと、ミアは苦笑を浮かべて立ち上がる。
28 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:49:17.63 ID:JsU2vhmx0
だが、今日はどうやら走り回る必要はないらしい。


「ミア。ミアは居ますか?」

「はっ、はい、院長」


孤児院の扉が突然開き、一人の老婆がやってきた。
途端、ウィンプルを抱えたままのヴィルマは「ゲッ」と声を上げる。

名前を呼ばれたミアが応えた通り、老婆は修道院の院長だった。

僅かな歪みも無く伸びた背筋。
不機嫌そうに結ばれた口。
老いを感じさせない厳格な光を宿す目。
眉間に深く刻まれたシワ。
どれを取っても彼女の人格を読み取るには十分だ。


「ヴィルマ、またあなたですか。
 人の物を許可無く奪ってはならないと何度言えば分かるのです。
 先程の言葉遣いも……」

「うげっ、わ、分かりました!
 ごめんなさい!
 すぐ返します!」


印象通り低い声音にヴィルマは慌てに慌てた。
説教が始まってしまえば長いのだ。
声を荒げはしないものの威圧感のあるそれは悪戯っ子に的確に効く。
だからこそヴィルマはすぐさま謝り、押し付けるようにミアにウィンプルを手渡した。


「謝り、返す。
 それさえすれば何度繰り返しても許されるなどとは思わないことです。
 後でゆっくりとお話をしましょう」


彼女にとっては残念なことに、僅かな減刑にしかならなかったようだが。
29 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:50:02.07 ID:JsU2vhmx0
「あ、あの、院長……。
 この子もそこまで悪気があったわけでは……」

「黙りなさい。
 あなたもあなたです。
 悪童の一人も叱りつけられず何としますか。
 甘やかすばかりでは子は育ちませんよ」

「はい……申し訳ありません」


そして余計な助け舟を出したミアもまたジロリと睨みつけられる。

返す言葉もなく俯いた彼女の横で、女の子たちがこっそり目を合わせて肩をすくめた。
一緒に怒られるに決まってるんだから庇わなきゃいいのにね、と言わんばかり。
全くその通りだったとミアも同意する所ではある。
30 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:50:37.44 ID:JsU2vhmx0
「全く……まぁ、今はそちらは置いておきましょう。
 ミア、少し町まで行ってもらえますか」

「あ、はい、何をすれば……?」

「エルマーの店に発注をお願いします。
 またネズミが出て豆をいくらか齧られました。
 罠を、そうですね、五つほど」


院長の用件はどうやらお使いのようだ。
ミアもあぁと納得する。
同室のおしゃべりな修道女がそのような愚痴をこぼしていたのは記憶に新しい。


「分かりました、すぐに」

「えぇ、助かります。
 ここは私が代わりましょう」


断る理由は無く快諾し、そうしてミアは町へ向かった。
残念そうな子供たちの声に、出来るだけ早く戻るからと返して、いつも通りの気軽さで。
31 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:51:32.48 ID:JsU2vhmx0
閉まった扉から視線を外し、院長が子供たちに向き合う。
幼い顔はどれもが不満そうだった。
それを見ればミアがどれだけ子供たちに好かれているかはだれの目にも明らかだ。


「ミアは随分と慕われているようですね?」


院長が確認するように口に出すとすぐに返る肯定の声も多い。

中でも利発そうな少女がなぜだかしたり顔で声を上げる。
ヴィルマの悪戯に怒りを見せ、ミアの擁護に呆れていた子の一人だ。


「そりゃそうですよ!
 ミア姉、いっちばん優しいんですから」

「えぇ、そうでしょうね。
 そこは間違いなくあの子の美点です」


院長も頷き、日々の営みを思い返した。

任された仕事への懸命さは多く居る修道女の中でも指折り。
自分の仕事が終われば人手の足りない所を積極的に探し率先して手伝い、不満の一つも漏らさずに良く働く。
ミアの勤勉さと細やかさは院でも随一だった。

規律破りも一度も無く、祈りの時間にも院長に次ぐ真摯さを見せる。
理想的な修道女だと院長も太鼓判を押すところである。
32 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:52:17.06 ID:JsU2vhmx0
「後は、あの弱気が治ればなお良いのですが」


だからこそ院長は小さく溜め息を吐く。
他が完璧なだけに、そこだけが気がかりだと。

それに異を唱えたのは先程と同じ少女だ。
やっぱり同じくしたり顔で、笑みを深めて言う。


「違いますよ先生。
 ミア姉はそこがいいんです」

「……そうですか?」

「そうです。
 先生もきっとそのうちわかると思いますよ」


フフンと鼻息を強めて少女は得意げ。
なんと小憎らしい顔かと、院長は片眉をぴくりと震わせた。
33 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:53:21.72 ID:JsU2vhmx0
孤児たちはその境遇にも歪まず、小生意気ながらも健やかに育っている。

ミアが愛し、院長も良しと見守る日常の象徴のような光景だった。

慣れ親しんだ営み。
僅かに予定外の仕事が入るのもいつもの事。
修道院の生活は何一つ変わらずに続いていく。
誰もがそう思っていた日々はしかし、その日だけは違ったらしい。


明らかな非日常は、扉を乱暴に開く大きな音とともに現れた。
34 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:54:06.06 ID:JsU2vhmx0
余りに耳障りな轟音に眉をしかめ、院長は扉に振り向いた。
大きく開け放たれたその先には息を荒げるミアの姿。

無作法を叱りつけようという院長の考えは一瞬で消える。
大人しく規律に従順なミアがこうもなるなど明らかにおかしい。


「ミア、一体何が……」

「院長っ! ひと、人が……!」


尋ねる言葉さえ言い切らせず、ミアは必死に声を上げる。
顔を蒼白に染めて、震える体を扉に縋るように押し付けて。


「人が、血まみれで倒れています!
 皆を集めて下さい! 助けないと!」
35 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:55:03.29 ID:JsU2vhmx0

―――――
―――



その冒険者らしい男は、誰がどう見ても手遅れだった。

町外れの修道院からさらに外郭、森の中に踏み入ってそこで何かに襲われたに違いない。
そう断言できるのは「道」が出来ているためだ。


生い茂った緑の草の中でもハッキリと分かるほどに、真っ赤な鮮血の道が伸びている。


ここまで逃げてこられた事さえ奇跡と呼べる重傷だった。
人体としての正しい形は欠け、意識は朦朧としてうわ言を繰り返すばかり。
彼に対して出来る事があるはずもなく、急ぎ連れ出した修道女たちも立ち尽くすほかにない。


「大丈夫、大丈夫です!
 きっと助けます!」


叫び、深すぎる傷に布を巻くミアの声も虚しく空回る。
止血のためだろうその行動が何の意味もなしていない事に気付き、院長はそっと目を伏せた。

血は既に止まっていた。
もはや流れ出るものが無いためにだ。
36 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:55:35.33 ID:JsU2vhmx0
「…………ミア。離れなさい」

「っ!
 院長!」


助けなければ。
助かるはずだ。
そう訴えて見上げる瞳にも力は無かった。


「ミア、もう一度言います。
 離れなさい」


ミアと同じく男の横に院長が跪き、震える細い肩に手を添えれば、それでミアは引き下がった。
力尽きるように崩れ落ちて、間に合わなかった事に謝罪の言葉を呟いて涙を零す。
37 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:56:19.99 ID:JsU2vhmx0
それを横目に、院長は男の顔に耳を寄せた。

彼はもう助からない。
ならばせめて最期の言葉を聞くべきだ。
そしてそれは若く感受性に富むミアではなく、老いた自分の役割だと老婆は知っている。

血泡が混じり酷く不明瞭であったが、幾らかの単語は聞き取れた。

一つの場所と、一つの人名。
男は繰り返しその二つを呟き続けている。


「……」


院長は男の手に固く握られた物を見て、耐えるように一度だけ目を瞑る。
38 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:57:05.70 ID:JsU2vhmx0
だがそれもほんの一瞬の事。
すぐに顔を上げ、静かに、けれど明瞭に告げる。


「えぇ、必ず届けましょう」


言葉はどうやら届いたか。
男はそこでうわ言を止めた。
緩やかに目蓋が閉ざされ、手が力無くほどける。


「あなたの献身を主はきっと見ておられます。
 神の園にて、どうかゆっくりとお眠りなさい」
39 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:57:50.42 ID:JsU2vhmx0
何日かの後に男の葬送は恙なく終えられる。

最も心の負荷が大きかったであろうミアに与えられた休養が明けたのはさらに数日後。

それまでの期間をミアは、一度の例外を除いて自室を出ることなく過ごした。
40 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:58:28.29 ID:JsU2vhmx0
―――――
―――




そして今、早朝の院長室にてミアは院長に対面していた。


「来ましたか、ミア。
 調子は戻りましたか?」

「はい、ご迷惑をおかけしました……申し訳ありません」

「迷惑などではありません。
 あなたの心労は当たり前の情動であり、休養もまた当然の道理です。
 頭を下げるのはおやめなさい」


院長はそう促すもののミアは顔を上げようとしない。

これはもう幾日か休ませるべきかと院長は口元に手を当てる。
その考えが形をまとめ声になる前に、ミアが答えた。


「いいえ、上げられません。
 もうひとつご迷惑をおかけしてしまうのですから。
 ……私は、修道院を出ようと思います」
41 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 01:59:00.03 ID:JsU2vhmx0
「あなたは……。
 ……いえ。
 えぇ、そういう事もあるかとは思っていました」


口元に当てられていた手は、そのまま目元を覆い隠した。
院長は疲れたように細く息を吐く。
言葉の通り、院長の想像のうちにその考えはあった。

ミアは人一倍に優しく勤勉で、信仰にも篤い娘である。
それが瀕死の人間を第一に発見し、そして何もできずに助けられなかったとなればどうなるか。

修道院を出て医師や薬師の道を志す可能性はあるかも知れないと院長も考えはしていた。


「ならば一つ聞いておかなければなりません。
 それは贖罪のつもりですか?」
42 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 02:00:25.91 ID:JsU2vhmx0
院長は老いに霞む目をしかと開きミアを見つめた。

事前に考えに至っていたのだから、当然どうすべきかも考えていた。
これがもし罪の意識から、義務感に追いやられての決断ならば止めなければならない。
負の決意はいずれ心を壊すに違いないと。


「……いいえ。
 私はただ、助けたいと思ったのです」


しかし、どうやら杞憂だったと院長は悟る。

ようやく顔を上げたミアに負の感情は見えない。
気持ちにどう区切りを付けたかは本人にしか知り得ないが、あの凄惨な出来事はミアに正の決意を与えたらしい。



ならば院長に止める理由は無い。
安堵に小さく頷き、出来うる限りの便宜を図ろうと決めた。


「結構。
 では紹介状を書きましょう。
 エッカルトか、それともアガーテの所にしますか?
 どちらも腕と人格は私が保証しましょう」


院長は町に暮らす知人の名を挙げる。
前者はやや酒癖が悪いものの腕の良い医師であり、後者は声が大きすぎる以外に欠点の無い薬師だ。
二人ともにミアも面識がある上に十分に信頼もできる。
どちらに弟子入りしたとしても良き学びを得られるはずだと院長は確信している。

……だが、ミアはそのどちらも選ばなかった。
43 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 02:01:10.77 ID:JsU2vhmx0
その返答に、院長は思わずしばし放心した。
余りにも想定外が過ぎたためだ。
まさかよりにもよってとさえ思えない。

ミアがその道を選ぶなど一度たりとも考えた事などありえない。
およそ彼女とは最も遠い職のはずだと頭を振る。


「……もう一度、言ってごらんなさい」


出来うる限りの圧と怒りを籠め、院長は再度尋ねる。
気の弱いミアが折れて答えを変える事を期待して。


「……っ」


気圧されたミアは怯えたように口をつぐんだ。
足はミアが意識しないままに半歩下がり、体の正面で重ねられた手は酷く震えている。
44 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 02:01:56.28 ID:JsU2vhmx0
「あなた、剣を握った事は?」

「……あり、ません」


そうだろうと頷く。
睨みつける形に目を細め、追い打つように続ける。


「町を出て、いつ獣が現れるとも知れない道を歩いた事は」

「……ありません」

「力の限りに走って、力尽きても倒れる事を許されなかった事は」

「ありません」

「他者から殺意を向けられて、生き延びるために抗った経験は」

「……それも、ありません」


ミアにそのような経験がある訳がない。

平和な町に生まれ、平凡に育ち、流れるままに修道院に入った。
そこに荒事が差し挟まれる余地は存在しない。

ミアは正真正銘にただの娘だった。
45 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 02:02:36.00 ID:JsU2vhmx0
「ならば分かるでしょう。
 あなたに何が出来るというのですか。
 その決意はただの気の迷いです。
 冷静に――」

「私は!」


しかし、院長の説得は遮られる。

足は下がったまま。
手は震えたまま。
恐怖を克服などできないままに、それでもミアは言い切った。


「わ、私は、冒険者になります!」
46 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 02:03:16.14 ID:JsU2vhmx0
「何ができるとも思っていません。
 大それた事はきっと、一つも出来ないと思います。
 ろくに結果が出せなくて、ただ迷惑をかけるだけになるかもしれません」


でも、とミアは言う。


「それでも、絶対に何もできないとは、決まっていません」
47 : ◆a0UdM47R7d2e [saga]:2019/09/05(木) 02:04:11.89 ID:JsU2vhmx0
ミアは気弱で引っ込み思案で、そして人一倍優しい娘だ。
困った隣人が居れば手を差し伸べずにはいられず、いつも誰かを助けて生きてきた。

だから修道院での暮らしは彼女にとって満ち足りたものだった。

天上の神に人々の安寧を祈る事。
生活の合間に孤児の面倒を見る事。
時折町に入り人々への奉仕活動に勤しむ事。

この三つで十分に、人の助けとなっている自分を誇る事ができていた。

けれど、もうそんな日々には戻れない。
ミアは知ってしまったのだから。



死に際の男が握り、届けてくれと託した物。

それは森に潜む猛獣の臓器だった。
ある死病に対する薬の、その原材料の一つである。

もし臓器を諦め獣の解体をせず、戦闘後にすぐに引き返していれば。
危地に陥る前に逃げ帰っていれば。
いや、そもそも危険な依頼を受けていなかったならば。
彼は死なずに済んだかも知れないのに。

それでも森に踏み入って勇敢に戦い、最期まで人を救おうと足掻いたのだろう。


そんな人の、あるいはそんな人々の存在を、ミアはもう知ってしまった。
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