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夕立「ボ、ボコフェス連れてってっぽい!!!!!!!」
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65 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 20:52:20.55 ID:8agroj4w0
(,,゚Д゚)「『善き人の味方』、大いに結構だ。三十路も近ぇのにご立派だよ。だが独善って言葉もあるのは知ってるよな?」
(;T)「……」
(,,゚Д゚)「何でもかんでも筋肉で思い通りにはならねえんだよ。切り捨てなきゃならねえもんは選んでかねえと、俺らまで道連れにされてしまう。そんなのは御免だ」
(*;゚ー゚)「ギコくん、やりすぎだよ!!」
(,,゚Д゚)「口を出すな。いいか、この際だからハッキリ言っておく」
(,,゚Д゚)「俺はアンタのそういう所が、虫唾が走るほど嫌いだよ」
(;T)「……」
まさか、説教された後に説教し返されるとはな。だが、ギコは間違ってはいない
きっと俺は幼稚なのだろう。取捨選択はしていたつもりだが、側から見れば大人としての割り切りが出来ていなかった
( T)「……悪かった。放せ。関節逆方向に曲げるぞ」
(*;゚ー゚)「そ、それもちょっとどうなのかなって……」
( T)「いや、夕立が。夕立落ち着け、どうどう」
夕立「……」
俺の懐刀の一人は、手を上げようものならいつでも飛び掛かろうとしぃの腕の中で牙を剥いている
折角の休暇に野暮な怪我は勘弁だ。それと、これ以上険悪にもなりたくない。やだ、今更……?
66 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 20:56:53.32 ID:8agroj4w0
(,,゚Д゚)「……ご立派な番犬だな。これじゃ言いたい事も言えやしねえ」
( T)「ポイズン」
(*;゚ー゚)「マッさん、ふざけるとこじゃないよ……?」
舌打ちを一つして、乱暴に突き放される。俺は襟首を大袈裟に払ってシワを直した。イジメだ
(,,゚Д゚)「それじゃ、作戦を立てるとするか」
( T)「そうだな」
(*;゚ー゚)そ「二人とも立て直し早くない!?情緒どうなってんの!?」
こいつの好きな所を一つ挙げるとするならば、禍根をいつまでも引きずらない事だ
目的は脱出であり、俺の人格矯正ではない。こういう切り替えの早さには、良くも悪くも救われる
( T)「ッメ……ッテロヨ……ソガ……」
(,,;゚Д゚)「無事に帰ったら飯奢るから機嫌直せよ……」
まぁ俺は根に持つけど。後でしっかりしばき回すけど
(*;⁼ー⁼)「もー、さっきから心臓に悪いことばっかだよ……この人、どうするの?」
(,,゚Д゚)「まさか連れて行くなんて言わねえよな?」
( T)「……今は触れずに置こう」
彼も被害者に他ならない。だが、既に手遅れなのだろう。きっと娘は元には戻らないし、場合によっては俺らの手でトドメを刺してしまうかもしれない
連れて行けばその現場を目の当たりにさせてしまう。捨て置けば、誰にも気づかれずひっそりと孤独に死んでいくのかもしれない。どちらにしても、詰みだ
『何でもかんでも筋肉で思い通りにはならねえ』。ああ、これだから怪異はクソだ。絶対の自信を、いとも簡単に無用の長物に変えちまう
( T)「先ずは手がかりだ。それを探そう」
せめて、彼の二の舞にはならないようもがき続けるのが関の山だ
67 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 20:59:52.38 ID:8agroj4w0
―――――
―――
―
( T)「加賀」
愛里寿ちゃんを寝かせているソファーの傍らで船を漕ぐ加賀を揺り起こす
本人は寝るつもりは無かったのだろう。ハッと顔を上げ、涎を拭い取った
加賀「ごめんなさい、気を抜いてたわ……」
( T)「構わねえよ。お前だってこんな事態慣れてねえだろ。疲れるのは当然だ」
加賀「ええ……とんだ休暇になりましたね……進展は?」
( T)「地図と手記を見つけた。ボスとは正面切ってかち合う事になりそうだ……少し、外してくれるか?」
毛布を頭まで被る愛里寿ちゃんに目配せすると、加賀は去り際に俺の耳元に顔を寄せて囁いた
加賀「デリカシーのある会話を心がけて頂戴」
俺ってそんなに信用無いの???????
( T)「やれやれよっこらマキシマム・ソルジャー……平気か?」
ソファーに腰掛け声を掛けると、毛布から目元がひょこりと現れる
散々泣き腫らした瞳は真っ赤だった。無理もないだろう。俺だって一人だったら失禁してた
愛里寿「は……恥ずかしい所を、お見せした……」
( T)「何のことだかさっぱりだな。俺にはずっと頑張っていた君しか見えなかったが」
話し方が大人びたな。取り繕う余裕は出来たようだ
あの後、ギコからこの子は飛び級で大学生になったと聞いた。段飛ばしで成長せざるを得ない環境にいたのだろう
大したものだ。つくづく、女の子ってのは男の数倍強い性別だと感心してしまう
68 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:12:05.00 ID:8agroj4w0
( T)「……」
愛里寿「おじさん……?」
言いづれえ。散々議論しても、これ以上の策は思いつかなかった
魔女の狙いはこの子だ。誘い出すには、作戦に参加してもらう必要がある
これ以上怖い目に遭わせたくはない。だが、相手の正体も力量もわからない以上、手札は全て切って挑まねばならない
愛里寿「……お話、しよう」
( T)「ん?」
なんて切り出すか迷っていると、彼女から先に提案をされた
レストランで最初に会話した時もこんな始まり方だったな。つい数時間前の事だが、随分昔に感じてしまう
愛里寿「おじさんは、軍人さんなんでしょ?」
( T)「ああ……まぁ、ちょっと特殊な環境と立場でな」
愛里寿「マスクも特殊の一つ?」
( T)「そうだ。美貌を隠さないと嫉妬と羨望の視線で心を病んじまうからな」
愛里寿「ふふ……そうは思えないよ」
( T)「バレたか」
69 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:15:20.23 ID:8agroj4w0
お互いクスクスと笑いあうと、愛里寿ちゃんは天井を仰いで溜息を吐いた
愛里寿「こんな時に言う事じゃないんだけど……相談があるの。聞いてくれる?」
( T)「勿論。ただし、恋愛相談だけは勘弁な。色男はロクなアドバイスが出来ない」
愛里寿「私にはまだ早いよ……」
( T)「おや、引く手数多かと思ったんだがな。世の中の野郎は度胸がないと見える……それで?」
愛里寿「……友達がね、軍人さんになっちゃうかもしれない」
( T)「……」
よもや、高校生にも満たない年頃の女の子からこのような相談を持ちかけられるとは
いよいよ日本も切羽詰まったか。その一端を担っている身としては、申し訳なさが募る
愛里寿「その人の友達がね……ドイツにいるんだけど、深海凄艦の侵攻を受けて軍人に成らざるを得なくなっちゃって、みほさ……私の友達も、責任感が強い人だから、周りも心配してて……」
(;T)「ベルリンか……」
欧州が陥落する引き金となったベルリン侵攻。その余波が、遠い島国にまで届いている
国民の存亡が懸かっているのは重々承知だが、志願にしろ招集にしろ、決して賢い行いとは言えない
愛里寿「気分転換になるかなって、ボコフェスに誘ったのは良いけど……ずっとどこか上の空なの。ねぇおじさん。私は止めるべきなのかな?それとも、みほさんの思う通りにさせるべきなのかな……?」
(;T)「そう、だな……」
残酷な選択肢だ。本人もさる事ながら、周りにすら重圧を押し付けている
これはきっと、『頼りない大人』が招いた事態だ。何物かもわからないバケモノの暴力を跳ね除けられなかった、俺たちの責任問題なのだ
70 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:18:31.65 ID:8agroj4w0
( T)「……おじさんはな、高校卒業してねえ」
愛里寿「え?」
だから、俺は選択肢から目を逸らす事にした。『ごまかし』とも言い換えられる
『みほさん』とやらは泥沼の中にいる。戦いの道を選んだ友人に続かねばならないという、呵責に苛まれている
引き揚げるのが叶わなくとも、少しでも沈む速度を遅らせる事は出来る筈だ
( T)「十四人……くらい?ボコボコのボコにして退学食らってな。その後すぐに自衛隊に入った。教官も何人かボコボコにした」
愛里寿「えぇ……?」
( T)「まぁ十年以上前の話で、当時は深海凄艦もクソも無かった。その頃を振り返ると、別の道もあったんじゃねえかなって思う」
愛里寿「……」
( T)「その、みほさんとやらに会ったことはねえから、偉そうな口聞けねえが……アドバイスをするなら、『良く考えろ』に尽きる。ドイツの友達だって、その子にプレッシャー与える為に軍人になったってワケじゃねえだろうしな」
( T)「そんで……在り来たりにはなるが、周りを良く見て欲しい。彼女が大きな決断を下せば、第二、第三の『みほさん』が産まれてしまう。行くも勇気だが、退くも勇気だ。おじさんからはこれ以上言えねえ」
気の利いた答えではないのは重々承知だ。しかし、無責任に『送り出せ』とも、『止めるべき』とも答えられない
結局は自分自身で『納得』しなければならないのだ。それが周りにどんな影響を与えるのかも弾き出した上で
人は他人の思い通りにはならないし、そうなる義務も無い。だから、どんな答えを出そうと、それもまた『納得』として飲み込まねばならない
71 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:20:47.45 ID:8agroj4w0
愛里寿「……私は、どうするべきかな」
( T)「そうだな……君はみほさんにどうして欲しい?」
また、目尻に涙が溢れ出し、彼女は両手で抑え込んだ
愛里寿「行って欲しくない……あんな、あんな恐ろしい場所に、い、行って欲しくない……!!」
その想いもまた、重く受け止めるべき一つの要素だ
( T)「なら、気が済むまでそう伝えろ。おじさんの毒にも薬にもならないアドバイスより、よっぽど効き目がある」
愛里寿「ほ、本当に、そうかなぁ……?」
( T)「当たり前だ……そうだな。じゃあ一つだけ、約束をしよう」
愛里寿「約束……?」
俺はみほさんの友達でもないし、愛里寿ちゃんほど深く想ってもいない。無意味な行為に終わるかもしれない
だが、やっぱり泣く子には勝てねえ。これが精一杯だが、多少の気休めにはなるだろう
( T)「もしも、みほさんがいよいよって所まで来ちまったのなら……出来る限り引き返すように薦めよう」
愛里寿「本当に……?」
( T)「余り過度な期待はしないで貰いたいがね……だが、『友達』に泣かれたまま引き下がれはしねえよ」
愛里寿「友達……」
ちょっと踏み込み過ぎたか。ヤバい元の世界に戻って真っ先に通報されたらどうしよう
72 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:22:33.08 ID:8agroj4w0
愛里寿「ふふ……うん、ありがとう。じゃあ、約束しよ?」
その心配も、杞憂に終わったようだ。ちょっとタメあったからめっちゃ焦った
愛里寿ちゃんは小指を差し出す。触れれば折れてしまうほど細い指に、俺の小指を絡めた
愛里寿「ゆーびきーりげんまん嘘ついたら……」
愛里寿「17ポンド砲はーなつ」
(;T)「えっちょっと待ってペナルティクッソ重い」
愛里寿「指切った!」
そう言えば戦車道大学選抜チームの隊長だった。俺はこの子に殺されるのかもしれない
(;T)「変な汗かいてきたんだけど……」
愛里寿「おじさんが言い出しっぺなんだから、ちゃんと守らないと本当に撃つからね」
(;T)「褌締め直すよ……」
言葉通り、意識を改めなければいけない。狭いコミュニティでの生活で、俺は市井の生の声に触れる機会が無かった
活動方針は変える気は無い。俺たちはロクデナシの悪魔のまま、戦争行為を楽しむ。だが、長く続ける気など無い
せめて今の子供が『兵士』にならぬよう、一刻でも早くあのクソ共を根絶やしにしてやる
73 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:23:20.04 ID:8agroj4w0
愛里寿「じゃあ、次はおじさんの番。私に何をして欲しいの?」
いつの間にか、会話の主導権は向こうへと渡っている。やっぱ女の子は強ぇわ
そして俺自身、先程までのバツの悪さは消えていた。今なら、すんなりと頼めるだろう
( T)「この世界を脱出する為に、君の力を貸して欲しい」
愛里寿「いいよ」
( T)そ「わぁ即答」
愛里寿「大方、予想は出来ていたから」
(;T)「あー……不安にさせたくは無いが、何が起こるか俺にもわかんねえ。相当怖い目に遭うかも知れないが、大丈夫か?」
愛里寿「そんなの、戦車道だって一緒だから」
砲弾ブチかまし合うスポーツの主将は、俺が思ってた以上に肝が据わってらっしゃる
それかもしくは、俺たちをチームとしての信頼し、勇気が湧いたか。どちらにせよ、いい傾向だ
( T)「もうじき夜だ。作戦開始は近いぞ」
愛里寿「うん。覚悟を決める」
愛里寿ちゃんは毛布を跳ね除け、勇み足でフロアへと向かう。その姿は紛れもなく小さくて立派な戦士だ
俺も、彼女の覚悟に見合うだけの働きをしなければな。働き盛りの底力って奴を見せる時だ
74 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:25:09.42 ID:8agroj4w0
―――――
―――
―
( T)「作戦の最終確認を行う」
愛里寿「そうそう!!三十五話の大将軍ボコ、側面に敵将がいたのに気づいたんだけど結局倒されちゃって!!」
夕立「うんうん!!遂に勝っちゃうのかなって思っちゃったけど、結局負けて安心したっぽい!!」
(*゚ー゚)「あの話だけ別監督が撮っててどこかで似た展開あっただろって炎上して、結局円盤に収録されなかったんだよね!!」
( T)「この短時間で滅茶苦茶仲良くなってボコトークで盛り上がるウチら陽気なかしまし娘誰が言ったが知らないが女三人寄ったらかしましいとは愉快だねさん達、最終確認を行う。あとそれ劇辛だろ」
(,,゚Д゚)「古ぃし長ぇよ」
加賀「提督」
( T)「なんだ?」
加賀「愛里寿さん……その、凄く、可愛いので……どうにかして持ち帰れないかしら?」
( T)「俺は誘拐の一端を担いたくない。最終確認を行う」
(,,゚Д゚)「サッサと纏めろよ隊長殿。それでも艦隊提督様か?」
( T)「さっきからガタガタガタガタうるせえなお前が横やり入れるから始まんねえんだろうが皮はぎ取って三味線作るぞ」
(,,゚Д゚)「日本版ソーヤー家の一員かお前」
なんか一つ段落を越える毎にボケを挟まないといけない呪いか何かに掛かってるのだろうか?
緊張が解けてるのは良い事なんだが、それにしても緩み過ぎでは?ジャージのゆるゆるゴムか?紐締めなきゃずり落ちるやつか?
75 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:27:30.28 ID:8agroj4w0
( T)「はいはい最終確認するぞ!!外も暗なってきたし時間もあんまり残ってねえんだからな!!」
\はーい!!/
(;T)「大丈夫?無理に明るく努めてない?不安になってきたんだけど」
土産屋に陣取って三時間近くが経過。鳴神が言った『短い夜』は近づいてきていた
見つけた手記と照らし合わせても、彼の話は一つを除いて辻褄が合っている。この夜の間に、魔女は『衣替え』を行うらしい
( T)「現在地の土産屋はメインゲート近くのここ。で、魔女のいる場所は四ブロック先の『夢見のお城』。この遊園地の最深部だ」
卓上に広げた地図……ガイドブックを指し示す
どっかで見た事あるような、なんかディズニーとか怒りそうな形状の城に黒丸が付けられている。ハハッ
( T)「手記によると、捕まった人物はこの城に運ばれ、魔女の新たな『依り代』にされる。そしてまた、この世界を維持していく」
( T)「選考基準は気まぐれで、ある時は子供、ある時は成人、ある時は老人が、時代を問わずに連れ込まれる。今回白羽の矢が立ったのは、島田愛里寿ちゃん」
愛里寿「……」
( T)「そのついでに『働きアリ』を増やすため、着ぐるみの中身として俺たちが選ばれた。つまり、全員が狙われる立場にある」
(,,゚Д゚)「だが、付け入るスキは十分にある、と」
( T)「その通り。依り代以外も必要だと言う事は、手持ちの『働きアリ』に限りがあるって事だ。無限湧きじゃない」
加賀「ただし、決して少ないとは言い切れない。ある程度の余裕があると考えるべき」
(*゚ー゚)「だからこそ、『数の優位』という油断はきっと生じる。そこさえ突けば……」
愛里寿「勝機は、ある……!!」
夕立「……えっと、えーっと、頑張るっぽい!!」
( T)「無理に発言せんでもええんやで……」
76 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:28:24.19 ID:8agroj4w0
( T)「一番の狙いである愛里寿ちゃんを加賀が運び、俺、ギコ、しぃでマッスルトライアングルを形成する。夕立は遊撃だ。場合によってはスーパーつよつよ夕立ちゃんモードも使う」
(*;゚ー゚)「やだなぁそのフォーメーション名……」
(,,;゚Д゚)「ドン引きするほど頭の悪いモードだな……」
( T)「すーーーーーーーーーーーーーーぐ文句言うよなお前ら」
手記、地図に加え、土産屋では役に立つアイテムが勢ぞろいだった。L4Dのセーフティハウスかここは
先ず全員に『雨合羽』を着せた。これは飛び散る汁が服に付かないようにする為だ。折角のオシャレ着を台無しにはしたくない
夕立の物だけは、フードを被った際に視界が狭くなるよう細工を施してある。腐れ魔女様の度肝が抜ける姿が目に浮かぶな
それぞれの武器についてだが、夕立は包丁二振り、しぃと加賀は長めの鉄パイプの先端に包丁を括りつけた簡易槍
ギコはレストランで見つけた肉切り包丁。そしてこの俺は言わずもがな、世界最強の肉体と両拳。俺以外は心許ないが、なんとかなるだろう
そして、愛里寿ちゃんにも役割がある。最重要と言っても過言ではない仕事を任せたのだ
( T)「愛里寿ちゃんには指揮とナビを頼む。どこから敵が来る、程度の簡単なもので構わない。その都度対応する」
愛里寿「わかった。よろしくお願いする」
作戦タイムになると一変して大人モードか。きっと戦車道の試合の時もこのように凛然とした態度で挑んでいるのだろう
この余裕を維持し続けられるのなら、彼女の指示は俺たちにとって有益なものとなる。使わない手はない
( T)「確認できた敵は着ぐるみ、着ぐるみの革、デブ、祟り神の四種類。手記を読んでもこれ以上の存在は無い」
( T)「刃向かう奴は殺し、逃げる奴は追わない。俺らが『脅威』であることを知らしめながら根城へと向かう。魔女も減っていく配下任せには出来ず、自ら獲りに現れるだろう」
右手を掲げ、ギュウと握りしめる。概念を握りつぶす事に慣れ、数多の悪霊を握殺した俺だ
今回も例外なくぶち殺させて貰う。死が生ぬるいほどの苦痛を込めて
( T)「その時が、奴の最期だ」
ようやくエンジンが温まってきたようだ。存分に愉しませて貰おう
77 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:29:15.24 ID:8agroj4w0
夕立「ヒッ……提督さん、外、多分……」
臆病故に気配に敏感な夕立が袖を引いた。賽は投げられたか
唯一の心残りは目を覚まさない鳴神だが、簡単には見つからない場所に隠すのが精いっぱいだった。連れていく余裕はない
『コック』の件もある。彼が変貌してしまえば、この作戦は内側から破綻する。残酷だが、リスクは回避しなければならない
( T)「各々方、配置に着け。先陣は俺が切る。夕立、最初は俺に着いてこい」
夕立「わ、わかったっぽい」
加賀「愛里寿さん、どうぞ」
愛里寿「はい……重くない?」
加賀「いえ、全く。これでも空母ですので。大船に乗ったつもりでいてください」
加賀は愛里寿ちゃんを背負う。閂をした扉から、ドン、ドンとぶつかる音が響いた
それで先手を打ったつもりなら、笑わせる。ザコが集まった所で所詮はザコだ。俺に『スイミー』は通じない
( T)「スゥー……」
さて、始めようか。獲るか獲られるかの『フラッグ戦』を
(#T)「続けェェェェエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!!!!!!!」
.
78 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:32:33.86 ID:8agroj4w0
短い助走を経て、トニー・ジャー直伝(魂に刷り込まれるほど映画観た)の飛び膝で扉をブチ破る
馬鹿正直に真正面でガンガンやってた着ぐるみ一体にその威力を十二分に味わわせ、その後ろに控えていた二体の頭を掴み、地面に叩き付ける
討ち漏らした二体が側面から襲い掛かってくるが、相手にする必要はない
(,,#゚Д゚)「らぁッ!!」
(*#゚ー゚)「はっ!!」
ヤンキー&変態の海軍カップルに任せておけばいい。湿っぽい音を立てて倒れ、着ぐるみは絶命した
加賀「夕立!!怯むと余計に怖いわよ!!」
夕立「わ、わかってるっぽいぃ!!」
出だしは上々。だが、目に入るあちこちの建造物から染み出るように着ぐるみが湧いて出てくるのが確認できる
やはり脚の勝負となる。一匹一匹丁寧丁寧丁寧にブチ殺したいのは山々だが、目標優先だ
愛里寿「ッ!!飛来物接近!!アーチの中へ!!」
(#T)「御意ィ!!!!!」
岳牙副官の一面を見せつつ、歩道アーチの中へ潜る。間も無くして、飛んできた『着ぐるみの革』が天井の骨組みと衝突した
顎下から股にかけて縦にバクリと裂け、不揃いな牙と太く短く生々しい舌が覗いている。暴走状態のグラトニーかよ
でも多分これ性癖拗らせた人に任せたらなんでもかんでもスケベにしてしまうんだろうな。世の中は変態が多いからな
(,,;゚Д゚)「走り抜けろ!!」
元より老朽化してたアーチは次々と投げ込まれる革の重量に耐え切れず、メキメキと折れていく。頼りのない傘だ
(*;゚ー゚)「この先の建物は!?」
愛里寿「フードコート!!」
(#T)「夕立、変身!!斥候、行けッ!!」
夕立はいつものお面の代わりに、手書きのボコが描かれたフードを目深に被った
夕立「ガガガガガゴゴガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!」
獣が如き咆哮と俊敏さで一足先を駆ける夕立の頭上から、骨組みの隙間から漏れ落ちた一体が襲い来るが
夕立「ガァッ!!!!!!!」
『邪魔だ』と言わんばかりに包丁を交差させると、きっちり四等分された革の残骸が弾け飛んだ
79 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:34:36.41 ID:8agroj4w0
(#T)「五月(いつき)の分ねーから!!」
(,,;゚Д゚)「こんな時まで意味わかんねーことほざいてんじゃねえ!!」
(*;゚ー゚)「ギコくん五等分の花嫁読んでないの!?」
(,,;゚Д゚)そ「ハァ!?」
加賀「面白かったでs……アーチが限界!!急いで!!」
夕立は既にフードコートの扉を蹴破って突入している。その入口も、積み重なった革の重しで徐々に狭まっていた
横に抜ける手もあるが、射線から抜け出せるわけではない。遮蔽物なしでこの物量に襲われれば、正直俺以外は一溜りも無いだろう
愛里寿「崩れる……!!」
支柱が一際大きな悲鳴を上げてへし折れていく。このままだと、後続が全員飲み込まれる可能性すらある
ここは人身御供作戦に切り替えるしかない。瞬きの間に腹を括った
(#T)「先に行ってろ……オラァッ!!」
今まさに雪崩落ちそうになった入口のアーチを、へし折れた支柱に代わって俺が支える
その脇を、指示に忠実に従う『軍人』は振り返らずに通り抜けた
愛里寿「おじさん!!」
ただ一人、加賀の背中に乗る『普通の女の子』だけは振り返った
(#T)「よいしょっと!!!!!!!!!!」
愛里寿「投げた!?」
まぁ普通に抜けられるんですけど。筋肉は死亡フラグすら凌駕する
俺を薄焼き煎餅にしたけりゃ気分次第《アンカーテイク》で小惑星コーラでも落としてこい
80 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:36:18.88 ID:8agroj4w0
夕立「ガァッ!!ガァァ!!」
(#T)「夕立、解除!!そのまま裏口抜けろ!!」
案の定待ち伏せしてたであろう『中身』ありの着ぐるみを死体蹴りしていた夕立を元に戻し、一息も吐かず裏手へと向かう
(*;゚ー゚)「射線は切れたっぽいけど、外に出たらまた放射を受けるんじゃない!?」
(#T)「わかっっっっっ!!!!!!!!!!!!っっっっってるよ!!!!!!!!!!!!!!!」
(*;゚ー゚)そ「ヒァァ珍しくイライラしてる」
あんだけバカスカ投げ込まれるのは想定外だ。建物から建物へと走り移っても良いが、一々遠回りしては待ち伏せを破るなど繰り返してられない
出来ることなら消耗を抑えつつ最短距離で目標まで到達したい。何か手はないか……
(,,゚Д゚)「止まれ!!」
(#T)「んだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(,,;゚Д゚)「うわマジだすげえキレてる。バカみてーな策だが一つ思いついた。乗るか?」
そう言ってギコが親指で差した先は、フードコートじゃお馴染みの『長机』
なるほど、マジで脊髄しか使ってないような安直な策だ。叢雲が聞いたら鼻で笑った後にボロックソに扱き下ろされる事だろう。だが
( T)「……悪くねえな」
夕立「ハッ、ハッ……だ、大丈夫っぽい?」
加賀「どうかしらね……対応次第かしら」
愛里寿「ほ、本気?」
(,,゚Д゚)「そりゃ、センチュリオンの装甲に比べりゃ頼りないだろうがね。異論があるなら乗り気になった『おじさん』へどうぞ」
愛里寿「……ムゥ」
( T)「お前そんな意地悪な言い方しか出来ねえから艦娘にも懐かれねえんだよ」
さて、ここでクエスチョン。長机を使った対処法とは何?
81 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:37:45.32 ID:8agroj4w0
答え
(#T)「行くぞォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」ダバダバドゥ!!!!!!!!!
長机を傘にして脇目も振らず走り抜ける、でした。坂東さん黒柳さんボッシュートになります
(*;゚ー゚)「ねぇギコくんこれ本当に有効だと思ったの!?」
(,,;゚Д゚)「先輩いるからイケるだろって思っちまった!!今は後悔してる!!スマン!!」
夕立「ギコくんはいつも余計なことばっか言うっぽいぃ!!」ビャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!
(#T)「今更泣き言漏らしてもおせええええええええええええんだよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
前方の脚を俺が、後方の脚をギコ(アホ)が持ち、その中に女性陣を潜らせる
一見アホの考えたアホ丸出しの策だが、保険として使う分には存外悪くない。使い捨てが利くし
((゜)(エ)(゜))「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
(#T)「うるせえ!!!!!加賀ァ!!!!!!!」
加賀「了解!!」
向かってくる着ぐるみは、内から槍で突いてサクッと駆除す……
(#T)「いやもう蹴った方が早いわ!!」ドゴォイ!!!!!!
((゜)(エ)(゜))「ぴいいがあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!?!???????????」
加賀「ちょっと」
愛里寿「傍若無人の化身……?」
なんかえらい言われようだった
82 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:38:59.97 ID:8agroj4w0
(,,;゚Д゚)「城まで後どれくらいだ!?」
愛里寿「えっと……あれ!!」
ジェットコースターのレールの先、物見棟の屋根の先端が見える。ディズニーランドのそれとは違って随分とこじんまりとした城のようだ
目測で残り二ブロック足らず。順調にいけば到着まで二分も掛からないだろう。だが
加賀「来ました!!備えて!!」
再び開始される革の投擲。行き先を塞ぐように、前方に落とし込まれた
(;T)「レールの下……」
愛里寿「ダメ!!待ち伏せされてる!!」
視界の端で、『乗客』をごっそりと乗せたコースターが動き始める。中身がある分、頭上に落ちてきた時の破壊力は計り知れない
アーチの一件で学習したか。他の建物や屋根には待ち構えていると考えたほうが無難か
(#T)「回避行動ッ!!しっかりついてこい!!」
少しでも直撃を避けるため、蛇行走行で進む。せめて投擲場所さえ掴めれば対処のしようもあるんだが
(,,;゚Д゚)「先輩ッ!!直上!!」
(#T)「クソが!!」
机を斜めに傾け、頭上に落ちてきた革を『滑らせる』。盾のテクニックの応用だ
しかし逸らしたにも関わらず、机は大きく軋みを上げた。この手は何度も通じないか
愛里寿「……わかった!!」
(*;゚ー゚)「え!?何が!?」
愛里寿「敵の居場所!!量が多いから断続的に見えるけど、一定の周期が……ッ!!」
愛里寿ちゃんが息を飲む。その原因を作ったのは、『ペタペタ』と這い寄る足音
(,,;゚Д゚)「『祟り神』だッ!!」
這いずるの化け物のお出ましであった
83 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:42:20.90 ID:8agroj4w0
(#T)「夕立ッ!!」
夕立「うううううう気が進まないっpガゴガアガガアッゴゴッゴガガガガガアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
スピードは確かに向こうが上だし、気持ち悪さも格段だが、所詮ザコはザコだ。夕立の敵ではない
やはり早急に対処すべきは『革の雨』だ。ここは一つ、指揮官に勇気を振り絞って貰わねば
(#T)「ビビるな!!その他の障害は俺らが何とかする!!野郎はどこにいる!!」
愛里寿「っ……四時方向、バイキング!!振り子運動を利用して、あそこから投げ込んでる!!」
(#T)「バイキング……あれか!!」
船を模した大型ブランコ。大きく揺れ動くそのアトラクションの『船首像』に当たる位置に、ニヤケ面のデブが括りつけられている
地面と接近した際に掴んだのであろう、両手いっぱいの着ぐるみの革を、勢いに乗せて放り投げた
夕立「ガァァアアアアアアアアア!!!!!」
案の定祟り神を瞬殺した夕立は、飛来する革を次の目標に定めている
机の耐久度も一度くらいなら耐えきれるだろう。後は……
(#T)「加賀……っとぉ!!」
(*;゚ー゚)「ひゃあっ!?」
着弾、机の真ん中に大きく亀裂が入る。バイキングは次の『弾』の補給と投擲に備え、後方へと揺れた
(#T)「任せるぞ!!一撃で仕留めろ!!」
加賀「了解……!!」
愛里寿ちゃんを背に乗せたまま、加賀は『槍』を300終盤のレオニダスのように構える。円盤擦り切れるほど観た
目測で凡そ七、八十メートルといった所。狙う箇所は小さく、その上常に移動している
84 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:45:18.59 ID:8agroj4w0
加賀「スゥーっ……」
だが、砲弾飛び交う中で弓を引き絞り、艦載機を正確に放てる集中力を持つ加賀だ
加賀「ハッ!!」
例え息をするのも悍ましい異界に置いても、『正射必中』に狂いはない
鏑矢のような音を鳴り響かせながら、艦娘のフィジカルで投げ込まれた槍は、きしょくて臭そうな男の胸を貫いた
投げ込まれる筈だった革は、手の中から零れ落ちて中途半端な位置へボタボタと落ちていく
(,,゚Д゚)「ヒュウ、お見事」
加賀「正鵠得る……他愛もないわ」
愛里寿「加賀さん、凄い……!!」
加賀「それほどでも……ある、わね……ある」ドヤカガ
(,,゚Д゚)「調子乗っ……」
(*;゚ー゚)「ギコくんシーッ!!」
( T)「夕立、解j……いやもうそのまま行くか!!やったるか!!」
夕立「ガゴっぽガ!!!!!!!」
やべえ一瞬素に戻りかけた。一番の脅威は取り除かれたが、数の多い着ぐるみはまだまだ残っている
現に、待ち伏せの必要が無くなった連中が続々と表へ出てきていた
(*;゚ー゚)「ここから本領発揮ってカンジかな……?」
( T)「そりゃ俺も同じだよ。ギコ、机寄越せ」
半壊した長机の縁を掴んで持ち上げる。此方もコソコソ動く必要が無くなった
悪行超人ですら裸足で逃げ出す残虐ファイトの出番が、ようやく訪れたのだ
85 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:49:24.91 ID:8agroj4w0
(#T)「このまま一直線に突っ切って魔女の首をねじ切るぞッ!!こいつは……」
(#T)「挨拶替わりだァァァッ!!!!!」
机を着ぐるみの集団に向かい投げつけ、駆け出す
((゜)(エ)(゜))「あああいあいあいあああああああああああああああ!!!!!????」
(#T)「そのままよっこいしょぉ!!」
夕立「ガァァアアアアアアアアッ!!」
衝突し、よろめいた着ぐるみを机ごと蹴り飛ばす。机は亀裂から真っ二つにバキ折れ、木片を巻き上げた
夕立は俺の肩を踏み台に跳躍、着ぐるみの頭上を越え、背後を襲う
(,,;゚Д゚)「まるで台風だな!!さぁ急げ!!そろそろうんざりしてきた!!」
(*;゚ー゚)「そうだね!!マッさんの犠牲を無駄にしちゃいけない!!」
(#T)「聞こえてんだぞメシマズ女ァ!!まだ死んでねえよ!!」
((゜)(エ)(゜))「あああああああああああああああああああああああああああい!!!!!!!!!!!」
(#T)「うるせえクソザコクマ公がァ!!」
顔面へ向かってきた大振りのラリアットを躱し、ローキックで蹴り上げて転倒させる
蹴った脚をそのまま弧を描くように回し、背中を踏み潰す。まるで毛虫でも潰したかのように体液が飛び出した
(#T)「テメエらのボスに伝えろ!!お姫様が欲しけりゃまず俺を殺してみろってなぁ!!!!」
城までの距離は、一ブロックを切っていた
86 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:50:49.39 ID:8agroj4w0
―――――
―――
―
(;T)「ハァー……ハァー……」
夕立「ハァッ!!ハァッ!!ゲホッ、オエッ!!」
(,,゚Д゚)「吐くなよ」
夕立「ゼェッ、んぐっ……ギコくんと、一緒にすんなっぽい……」
(,,゚Д゚)「さっきから言葉に棘があんな」
(*;⁼ー⁼)「ギコくんが悪い」
(,,゚Д゚)「えっ?」
加賀「一番頑張った夕立に対してその言い方は酷いわね」
愛里寿「最低……」
(;T)「お前ぜってー提督業出来ねえよ。だって顔は良くても中身はクソだもん」
(,,;゚Д゚)「おっ、おう……わ、悪かった……」
体液でベトベトになった合羽を脱ぎ捨てる。振り返ると、殺して殺して殺しつくした着ぐるみの死体が、道しるべのように点々と連なっている
最後の一匹が、涙が出るほど健気な抵抗として足首を掴もうとしたので、丁重に踏み潰してやった
ボコなら『次は頑張るぞ!!』と意気込む所だが、こいつらは汚ぇ汁を撒き散らすだけ。可愛げの欠片もねえ連中だ
(;T)「とにかく……ハァァ……着いたな……」
高くそびえる……なんて、大層なもんじゃない。チープで、小さくて、今の子供ならガッカリするような、名ばかりの城だ
入口の看板には、ポップなフォントで『夢見のお城』とピンクのネオンが光る。やらしい店か何かか
87 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:52:24.80 ID:8agroj4w0
(,,゚Д゚)「如何わしい宿みてえだな……」
加賀「あら、ご贔屓にしていらっしゃるようね?」
(,,;゚Д゚)「失言だった」
(*;゚ー゚)「ギコくんもう喋んないで。私までダメージ受けるから」
夕立「提督s( T)「もうちょっと大きくなったら榛n……ダメだあいつにまともな教育が出来るとは思えねえ」あっエッチなのはわかったっぽい」
あいつは殺生院キアラか?
愛里寿「ここに、魔女が……」
加賀の背中から降りた物の、不安げに裾を掴む愛里寿ちゃんは恐れから身震いをする
加賀はてぇてぇの波動に中てられてニヤケ面を噛み殺しながら身震いをした。間違いを起こす前に早めに引き剥がすべきだろうか。そん時しばき回せばいいか
( T)「そうらしい……駒も粗方ぶっ殺したし、ボス戦突入だな」
(,,゚Д゚)「途中から無双ゲームになってたぞ」
( T)「得てしてそういうもん」
(,,゚Д゚)「なんでもハリウッド映画にする天才か?」
( T)「それほどでもある。開けるぞ。各自、構えろ」
加賀は愛里寿ちゃんを背に一歩下がり、他はそれぞれ強襲に備える。俺は拳を握りしめた
( T)「……」
ふと、一人の『友人』とのやり取りを思い出す。一つ再現してみるか
( T)「ノックは必要か?」
(,,゚Д゚)「どうでもいいからサッサと開けろよ」
( T)「……」
惜しい別れだった。あれほど気が合う奴と、『元の世界』でも出会えるだろうか
(#T)「オラァッ!!」
あの時と同じく、見かけだけが立派な扉を蹴破った
88 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:52:51.25 ID:8agroj4w0
.
89 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:53:48.01 ID:8agroj4w0
(,,゚Д゚)「……モンペの鑑だな。やっぱアンタも変わったよ。すっかり親バカが似合うようになっちまった」
( T)「マジで?」
(,,゚Д゚)「そうじゃなかったらわざわざガキを遊園地に連れてくるかよ」
( T)「それもそうやな!!ガハハ!!ほぼ毎日心が折れそうな罵倒を頂戴してるが」
(,,゚Д゚)「蛙の子はなんとやらだな……心に響くご高説をどうも。そろそろ戻ろうぜ」
日本語不自由なんかしらんが諺の一つもまともに言えないギコは吸い終えたタバコを、今度はストンと灰皿に落として立ち上がった
俺も言いたい事は言い終えた。これからこいつがどんな選択をして、どう変わっていくかはわからないが
少なくとも、友人として、先輩としての忠告と警告はやり終えた。酷な言い方にはなるが、後はどう転がろうと『その道』を選んだこいつらの責任だ
( T)「折角の休暇に水を差す真似をして悪かったな。本当はお前がクソブサイクな首相と来た時に済まそうと思ってたんだが」
(,,゚Д゚)「全くだ。気分が悪ぃよ。コーヒー一杯じゃ割に合わねえくらいにはな」
( T)「飯くらい奢ったるやないけ!!!!!!!」
(,,゚Д゚)「車も買え」
( T)「そこまでにしとけよ俺だって怪我の治療費なんざ奢りたくねえんだよ」
いくら悔やんでも過去はやり直しがきかない。ならせめて、未来で過ちを繰り返さないよう願いたいもんだ
( T)「ドアを開けて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」ガラリァン
(,,゚Д゚)「警備員にとっ捕まるからその気持ち悪いテンション元に戻せ」
90 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:54:41.24 ID:8agroj4w0
喫煙者ではあるが、ヤニ臭いタコ部屋から解放された瞬間ってのは清々しい
その上、遊園地だ。ガキの頃に心躍った場所は、大人になれば『懐かしさ』というテイストを加えて更に味わい深くなる
( T)「こんなとこ野郎二人で歩いてたら誤解されんな。サッサと合流するか」
(,,゚Д゚)「ああ」
( T)「そういや腹も減って来たし、俺らもなんか頼むか。遊園地って大体チュロスとか置いてあるし」
(,。Д゚)「そうだな」
( T)「しっかし売店ってどこにあるんだ?そんな遠かったっけか?」
(,。D゚)「ああ」
( T)「まぁ、コウノトリに渡し賃払ってスケープゴートしてもらえば二日も掛からねえか。波止場で踊って蜂蜜酒で乾杯だ」
(,。D゚9「そうだな」
( T)「インフィニティストーンの傍受でラッパがガラガラ鳴り響いて裸の心がまぁ裸って言っても心が丸出し状態なんだけど文字記号で形成されたキャラクター達のスターシステムによって形成された物語に登場した自動販売機のレンジ機能搭載スプリンクラーでネジを間引いて」
(,。D;9「ああ」
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( T)「@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@」
@@@「@@」
91 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:55:14.49 ID:8agroj4w0
「おい、おい!!し、し、しっかりしろ!!」
.
92 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:57:19.99 ID:8agroj4w0
(;T)そ「ーーーーーーーーーーーーーッ!!??」
先ず最初に感じたのは、地面の冷たさ。程なくしてやってきたのは、三半規管の狂いによる眩暈と吐き気
そして、何だ、今の……『悪夢』は?ああ、悪夢、悪夢だ!!支離滅裂で纏まりがなく、目を覚ましてほぅと安堵する、正真正銘の悪夢だ!!
(;T)「ハァーーーーーーッ!!ハァーーーーーーッ!!」
(;∵)「こ、こ、こっちだ、こっちを見ろ!!わ、わ、私を見ろ!!」
(;T)「だ、大丈夫だ……人より錯乱には慣れている……アンタ、どうして……」
頬を掴む両手の暖かみが、現実だと教えてくれる。俺もヤキが回った。出会って間もない見ず知らずのオッサンの体温に、こうも安心してしまうとは!!
(;∵)「あ、あ、後を着けた。お、お、驚いたよ。き、き、君たちの強さもそうだが、お、お、お嬢さんの慧眼にも」
(;T)「ッ!!あいつらは!?」
背筋が凍り付いた。俺以外の誰もがこの場に残っていない事に
(;∵)「ま、ま、まだ間に合う!!つ、つ、着いてこい!!」
(;T)「恩に着る!!」
足腰はまだ頼りなかったが、強く踏みしめて気合を入れ立ち上がる
口の中は鉄の味がした。気を失い、倒れた時に切ったのだろう。血が止まってないのを見るに、そう時間は経っていない
入口はすぐ背後。正面にはレールから脱線したコースターと、埃と蜘蛛の巣を被って無機質にほほ笑む『魔法使い』の蝋人形
『夢見のお城』はキャラクターと仕掛けを眺めて楽しむ低速ライドアトラクションらしい。ストーリーは王道のシンデレラ仕立てか
鳴神はランタンを引っ掴むと、乗り場からレールへと降りる。俺も急いで後に続いた
(;∵)「ひ、ひ、酷い悪夢を見ただろう。あ、あ、あれを三時間も見続けてしまえば、わ、わ、我々の仲間入りだ」
(;T)「ああ、最悪な気分だ!!テメーの内側がバグっていく感覚がしたよ!!鳴神さん、アンタ正気か!?」
(;∵)「も、も、勿論だ。わ、わ、私が語った話も、い、い、偽りの真実だと、は、は、ハッキリと言い切れる」
(;T)「その点に関しては手記が役に立ったよ!!だが悪夢の記述はなかったぞ!?」
(;∵)「ひ、ひ、比較的まともな方とは言え、わ、わ、私も魔女の管理下だ。き、き、切り札は、か、か、隠し通したかったのだろう」
93 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 21:58:56.98 ID:8agroj4w0
レールの外では意地悪な継母と義姉が笑い、シンデレラが涙ながらに床を拭いている
物語の序盤だ。ハッピーエンドまではまだ遠い。逸れたあいつらとの距離を表しているようだ
(;T)「アンタはどうしてまともなんだ!?」
(;∵)「そ、そ、それはきっと、ま、ま、魔女のベースとなっている、む、む、娘の、さ、さ、最後の抵抗だろう。す、す、『スイーパー』の種も、う、う、植え付けられなかった」
(;T)「祟り神か……人間の体裁を保った奴を残すのは、『崇拝』による存在維持の為か?」
(;∵)「そ、そ、その通りだ。く、く、詳しいな」
(;T)「少し前に説明を受けてな」
貞子襲来の際にあきつ丸から『怪異とは人から恐れられることで力を得る代物』と聞いた
魔女は世界を維持し、奴を恐れ、崇拝する『拉致被害者』が魔女を維持する。何とも自分勝手なシステムだ
(;∵)「つ、つ、詰めが甘かったが、き、き、着ぐるみや『クラフトマン』の、た、た、大半を殺している。ま、ま、魔女も、お、お、追い詰められている」
(;T)「待てよ……今の魔女の依り代は……」
(;∵)「も……もう手遅れだ!!わかっているさ!!都合の良い妄想に逃げ込んでいたツケだ!!君たちの責任じゃない!!」
魔女は依り代を交換する。ここでの『依り代』は、バッテリーに相当する物だろう。尽きれば、ゴミだ
(;∵)「だから頼む……この連鎖を断ち切って欲しい……む、む、娘を、解放してやって欲しい……」
( T)「……」
言葉が尻つぼみになっていくと同時に、走る速度が落ちていく彼の肩を、後ろから支えた
受けた恩を蔑ろにはしない。それが彼の『救い』になるのなら
( T)「勿論だ、急ごう!!」
これ以上の恩返しはない
94 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:01:06.91 ID:8agroj4w0
シンデレラは魔法使いと出会い、ドレスとガラスの靴を纏いガボチャの馬車に乗り込んだ
どこかのセンサーに引っかかったのか、スピーカーから大音量で割れた音楽が流れ、電球が切れかけたスポットライトがチカチカと光る
(;∵)「こ、こ、この先が、あ、あ、アトラクションの見せ場だ。ぶ、ぶ、舞踏会の、ひ、ひ、広間となる。ま、ま、魔女のお気に入りの場所だ」
( T)「……」
この先に、最終目標がいる。数多の魑魅魍魎をこの手でぶっ殺してきた俺だ。多少の妖気的なモノは感じ取れる
にも拘わらず、『特に何も感じない』。何が一番恐ろしいかって、捕らわれている筈のあいつらの気配すら読み取れない
(;∵)「こ、こ、ここから先は、み、み、未知だ……わ、わ、私がもしまた、と、と、取り乱したりした時は、よ、よ、容赦なく切り捨てろ……」
( T)「ああ、また暫く眠ってもらう。行こうか」
彼は『間に合う』と言った。その言葉を信じて、次の舞台へと足を踏み入れた
(;T)「っ……」
眼が眩むほどの強烈な照明が出迎え、色とりどりに着飾った男女が手を取り合ってクルクルと踊り始める
その輪の中で、あいつらが積み重なる状態で眠っている。中心には
愛里寿「」
(;T)「愛里寿ちゃん!!」
老婆のように干からびた顔面の少女に覆いかぶさられる愛里寿ちゃんの姿があった
今まさに、『口づけ』を交わそうとした『魔女』は、予期せぬ来訪者にどす黒い眼孔を向けた
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」
入れ替わりより、排除を優先したか。天幕が揺れるほどの甲高い雄叫びを上げて、此方へと向かってくる
(;∵)「よ、陽子……陽子ォ!!」
(;T)「鳴神さん、待て!!動くなァ!!」
威嚇する肉食獣のようなバケモノに、『父』は恐れを抱かない。耐え切れぬと言った様子で駆け出した
肩を掴んで止めようとした俺の手は、細腕からは考えられないほどの強さで払いのけられてしまう
(;∵)「『行け』」
(;T)そ「なっ……!?」
そして、これまで聞いた中で一番、ハッキリと確かな声で短い指示を下された
彼は正気だ。正気の上で、狂気を演じている。その意図は考えずとも理解できる
自らを犠牲に、俺達を救う道を選んだのだ
95 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:03:21.27 ID:8agroj4w0
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
(:∵)そ「うぶっ……!!」
惨烈の形相で襲い掛かる魔女を、彼は包み込むように抱きしめた。枯れ枝のように細い指は肩に食い込み、そして沈んでいく
首筋を噛みつかれるが血は吹き出ず、一体化するかのように身体の中へと埋まっていった
(;T)「鳴神さん!!」
(;∵)「行け、行けぇ!!家族を救え!!」
(;T)「ッ……ああ!!」
嘘つきめ、何が『未知』だ。彼は最初っから魔女のやり口を知っていて、この方法を取る事を決めていた
自信満々に皆殺しにする気だった俺の立つ瀬がねえ。だが、このチャンスは最大限に活用せねばならない
舞台上へと上がり、延々と踊り続ける人形を押しのけ、連中の元へと辿り着く
(;T)「愛里寿ちゃ……」
愛里寿「……洗いボコ……洗濯機……ふへ……」
(;T)「寝言!?な、なんか大丈夫そう!!」
体温は平常。呼吸、脈共に乱れがない。妖気的なモノも一応感じない。眠っているだけのようだ
対し、他の奴らは明らかに顔色が悪く呼吸も荒い。依り代と崇拝者との扱いの差は歴然だった
(;T)「夕立、加賀!!頼むから目を覚ませ!!メシをゴミに作り変える女!!サッサと起きろ!!」
夕立「う……ヒィア!?」
加賀「ッ、ハァッ!!あ、ああ!!」
(*;゚q゚)そ「ペニュヌス!!トンビマグガイバー!?」
(;T)そ「うわぁ思いの外すぐ起きた!!!!!!!良かった!!!!!!!!」
若干一名バグりっぱなしのようだが、元からこんなもんだろう
:(,,; Д ):「ア……ア……」
(#T)「いつまで寝てんだチンカス野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ドゴォッ!!!!!!!!
(,,; Д )・'.。゜「ブフォァ!?」
手のかかる後輩だな全く
96 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:06:20.41 ID:8agroj4w0
夕立「ごめんなさいごめんなさい!!殴らないで!!閉じ込めないで!!夕立、役に立つから!!」
(;T)「ただの夢だ!!夕立ちゃん強い子!!大丈夫!!」
:(,,; Д ):「て、てめえ……い、今、蹴り……」
( T)「優しく起こしただろ文句言うな」
加賀「不覚を、取りました……最っ低の夢を……」
(*;゚q゚)「アヒィーーーーン!!!!ブルブルティンティン!!!!!!!」
(#T)「マッスル指パッチン!!」バチコォン!!!!!!!!
(*;゚ー゚)そ「どわぁ!?な、何々なんなの!?」
錯乱したのは夕立一人で、残りは比較的早く立ち直っている
俺は自意識がぶっ壊される夢だったが、彼女の場合は過去のトラウマか
加賀も、あの黒い表情を見るに呉鎮守府にいた頃の出来事を思い返されたのだろう
( T)「加賀、夕立を。しぃは愛里寿ちゃんを見といてくれ。手ぇ出したら折るぞ」
(*;゚ー゚)「へ?あ、はい……え?私って子供に欲情する女って思われてます?」
加賀「どちらへ?それに、魔女はどうなりました?」
( T)「……そいつを、どうにかしに行くんだよ。誰も着いてくるな。そこで待ってろ」
鳴神の姿は見えないが、舞台の下から『ミチミチ』と音が聞こえている。立つことも儘ならなくなったのだ
この世界からの解放の手段は、『生きて帰る』だけじゃない。俺が為すべき事は、一つだけだ
( ∵)「……」
(;T)「……鳴神さん」
( ∵)「……やぁ、上手くいったかい?」
顔面こそ残っていたが、身体は既に見る影もなかった。ビニール袋にホルモンをギチギチに詰め込んだような風貌へと変化している
膨らみ過ぎた血管は穏やかに脈打ち、拳大の『できもの』から血とも膿とも取れない液体が、パチンと弾け飛んだ
だが彼の表情は、今までになく安らかで満たされている。それが『成り代わり』の作用なのか、彼自身の満足感なのかは知る由もないが
97 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:08:16.07 ID:8agroj4w0
( T)「……貴方のお陰だ。本当に感謝している」
( ∵)「いや……ハハ、いやいや、此方こそ、お礼を言わせてくれ……君達の奮闘によって、私は娘と再会を果たせた……これ以上の幸せは無い……ありがとう、ありがとう……」
( T)「……」
これも、また一つの『救い』なのだろうか。彼と、彼の娘の物語はここで終わるのだ。口が滑っても『めでたし』とは言えない終幕だ
そして、その幕引きは、『善き人』に救われた俺が請け負う責務だ。元の世界に帰るカギも、彼と一体になっているのだから
( ∵)「……心苦しいよ。君たちに厄介ごとを押し付けてしまうのは」
( T)「気にしなさんな……殺しは俺の特技だからな」
( ∵)「そうか、そうか……いつか、君達の身の上話を、きかs、き、聞か」
( T)「……ああ、必ず」
膨張の影響が、頭にも及び始めたか。眼球は下から押し出されるように浮き上がり、歯茎から抜け落ちた歯が喉奥へと落ちていく
これ以上苦しい思いをさせられない。一撃で、感謝と敬意を込めて――――
「どけ」
(;T)「は……がっ!?」
右拳を振り上げたその時、側頭部に肘が叩きこまれる
大して効きはしなかったが、上げた拳はよろめく身体を支えようと反射的に床を着く。その隙に
(,,#゚Д゚)「フンッ!!」
『介錯』の役目は、後輩に奪われてしまった
98 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:10:34.65 ID:8agroj4w0
「ぎゅぎっ」
振り落とされた肉切り包丁は、鳴神の顔面を両断する。顔の皮が本の閉じ目のように中央へと寄り、砕かれた前歯がレール上を跳ねる
「コ、ココココココココココ、ビ、ガビ、カ……」
喉からではなく、腹に当たる位置から奇妙な音が痙攣と共に鳴り響き、それが止んだ瞬間
「」
彼の身体は、先の方から灰に変わっていった
(#T)「お前っ……」
(,,⁻Д⁻)「待て、一服させろ。それに見ろ。どうやらゲームクリアだ」
灰に変わっていくのは死体だけじゃない。地面が、レールが、天井が、ボロボロと崩れ落ちていく
その先からは、照明など目じゃないほどの強烈な光が漏れだした。太陽に似た、暖かい光だった
( T)「……」
怒りを忘れ、見惚れてしまうほど、美しい光だった
(,,゚Д゚)「フゥー……我慢ならなかった。『善き人』に手を下さないと言ったアンタが、手遅れだとは言え、『恩人』を殺すのに」
( T)「……珍しく、情に動いたな」
(,,゚Д゚)「そうかもな……それに、こんな仕事は俺の方が慣れてる。適材適所さ」
( T)「一端の口を利きやがって……」
城の崩壊は光が強まる度に速度を増し、地面ですら無くなっていく
いよいよ眩さに耐え切れず、瞳を閉じた。意識は、眠りに誘われるように深く、深くへと――――
99 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:11:53.32 ID:8agroj4w0
.
100 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:13:58.81 ID:8agroj4w0
―――――
―――
―
( T)「……」
(,,゚Д゚)「……戻って来たな」
( T)「ああ……」
次に目を開けた瞬間、俺たちは元の喫煙所へと戻っていた
念の為引き戸を開けて見たが、平穏な遊園地の風景は変わりない。携帯も確かめてみると、電波が通っていrうわ鬼LINE来てる
( T)「もしもし加賀?」
《良かった、通じたわね……無事?》
( T)「ああ、ギコもいる。そっちは?」
《全員一緒よ……それより、愛里寿さんは……》
( T)「確認する、少し待て。ギコ、バッグから俺の顔出してくれ」
(,,;゚Д゚)「あ、ああ……作り物だとわかってても引くくらい精巧だなこれ……」
喫煙所の隣は便所だ。愛里寿ちゃんはお手洗いに行った最中に巻き込まれたと言っていた
(´・_・`)「ギコ、座ってろ。出来る限り目立つな。加賀も、もし見かけたとしても絶対に……っ!!」
女子トイレの出口から、勢いよくモンブランの髪色の少女が飛び出していく
そして、その子を待っていたのであろう女の子が、困惑した様子で腕の中へと迎え入れた
(´・_・`)「ふぅー……無事だ。お友達に泣きついてるよ」
《そう……夕立、椎名さん。あの子も無事です》
スピーカーの向こう側から泣き声と安堵が聞こえてくる。これにて、一件落着……と言いたいが
101 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:16:15.59 ID:8agroj4w0
《提督、愛里寿さんにご挨拶は?夕立や椎名さんは今すぐにでも会いたいと仰っているけれど》
(´・_・`)「悪夢は悪夢のままにしておいた方が良い。下手に関係を残せば、あの子は今日の事を一生引きずっていく。裏世界での出来事も、俺達との共闘も、全部夢と言う事にしちまおう」
《……了解しました。そのように伝えておきます。では、後程》
(´・_・`)「ああ、お疲れ……ハァーーーーー……」
通話を切断し、ベンチにドカリと腰かけてタバコに火を着ける。今回ばかりはかなり滅入った
(,,゚Д゚)「五時間はあの裏世界にいたと思うんだが、二分と経ってねえな」
(´・_・`)「言ってたろ……あの世界は時間の流れが乱雑ってよ……まぁ、こっちとしては休みを無駄にしなくて済んだんだがよ」
(,,゚Д゚)「そういうもんなのか……結局、あの世界は何だったんだろうな?」
(´・_・`)「さあな……魔女の怨念なのかもしれねえし、この地に曰くがあったのかもしれねえ」
(,,゚Д゚)「曖昧だな」
(´・_・`)「怪談ってのは得てしてそういうもんだよ。理解が出来ない、原因が分からないから、人はそれらに『恐怖』する」
(,,゚Д゚)「つまり……考えるだけ無駄ってか?」
(´・_・`)「その通り。強いて言うなら、酒でも飲んで忘れちまうのが一番だ。奴らにとっての最大の脅威は筋肉でも勇気でもない。『忘却』だ」
(,,゚Д゚)「そりゃ……クク、難しいな」
(´^_^`)「ハハ、全くだ……ギコ」
(,,゚Д゚)「なんだよ改まって気持ち悪ぃ」
(´^_^`)「気遣ってくれてありがとよ」
今日の出来事は、鳴神こだまという男の存在は、決して忘れられない重荷として残るだろう
だが、友がその一部を引き受けてくれた。激昂こそしたが、感謝に値する行為だ
(,,⁻Д⁻)「言っただろ、適材適所だ。礼は受け取るが……」
(,,゚Д゚)「いや、やっぱ気持ち悪ぃ。死んでくれ」
(´^_^`)「人が素直にありがとうしてんのになんだその態度はぶっ殺すぞ」
気は合わないが、俺は良い友人に恵まれているようだ
102 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:18:06.87 ID:8agroj4w0
(,,゚Д゚)「行くか」
(´・_・`)「そうだな。腹減ったし」グルルルルオナカペッコペコォン!!!!!!!!!!!
(,,゚Д゚)「えっ何その腹の音」
膝を叩いて立ち上がり、喫煙所の扉を開ける。スピーカーからは、ボコのテーマソングが流れていた
現実のありがたみをしみじみと噛み締めながら売店へと向かう。チミチャンガとか食いたい
「おじさん!!猫山さん!!」
(,,;⁻Д⁻)「……」
(;´・_・`)「……行くかちゃうかったな」ボソリヌス
(,,;⁻Д⁻)「悪い……」ヒソリヌス
直前まで話してた会話の内容直ぐ忘れるあたり、頭が大分オッサン化してるかもしれない
背後から駆け寄って来た女の子の小さな手が、俺のジャケットの裾を引っ張っている
いやまぁ今日一日遊園地おったら多分確実にエンカウントしてしまうだろうから、遅かれ早かれだっただろうが
愛里寿「ねぇ、おじさんなんでしょ!?マスクはどうしたの!?」
「愛里寿ちゃん、ダメだよ!!」
愛里寿ちゃん「みほさん!!この人、この人が助けてくれたんだよ!!」
ああ、ハッキリと覚えているか。そりゃ、悪夢で終わらせるには濃厚な恐怖体験だったものな。ゲーム版呪怨かよ
(´・_・`)「あの、誰かと間違えてやしないかい?」
愛里寿「え……?」
だったら、こっちが忘れた振りをしてしまおう
103 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:19:56.98 ID:8agroj4w0
愛里寿「お、覚えてないの……?」
(;´・_・`)「その、あー……お前なんかやったか?」
(,,゚Д゚)「覚えがないな。アンタこそ余計な真似しちまったんじゃないか?」
(´・_・`)「まさか」
初対面のように振舞い、確信を疑惑へと変えてしまおう。現実離れした体験は、それだけ誤魔化しが効く
「ごめんなさい!!すみません!!愛里寿ちゃん、行こう?」
愛里寿「や、約束したじゃない!!嘘ついたら、17ポンド砲放つって言ったよね!?」
「ひ、人に向けて撃っちゃダメだよ!?」
ボロボロと涙を流す彼女の姿に、胸が締め付けられる。『これが最善か?』とも、自問自答を始めてしまう
「どうされました?何か、問題でも?」
「いえ、なんでもありません!!こ、この方たちは何も悪くありませんので!!」
愛里寿「こんなお別れなんて嫌だ!!と、友達だって、言ってくれたのに!!」
愛里寿ちゃんを抑えつけながらも、西住さんとやらは駆け寄って来た警備員に断りを入れる
まぁ、このシチュエーションならデカい男二人が悪者だよな。周りの視線も痛くなってきたし、任せて去ろう
(,,゚Д゚)「……本当に良いのか?」
(´⁻_⁻`)「良いさ、良いに決まっている」
一歩、また一歩と彼女から離れていく。『これで良い』。そう言い聞かせて
愛里寿「おじさん、猫山さん!!」
104 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:21:06.69 ID:8agroj4w0
愛里寿「助けてくれて、ありがとう!!」
.
105 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:22:47.08 ID:8agroj4w0
(;´⁻_⁻`)「っ……」
ここに来て二度目のミスを犯してしまった。感極まって立ち止まるとは、俺もまだまだ青い
ギコは呆れたように鼻で笑い、『観念しろ』と言いたげに俺の背中を強く叩いた。痛ぇなクソが後で腰骨砕こう
(,,゚Д゚)「誰に対しても過保護なんだよアンタは。あの子が忘れたくねえってんなら、その想いを汲んでやるのも大切なんじゃねえか?」
(;´・_・`)「……ハァー、ったく、お前に道徳を説かれるとはな……」
彼女と交わした約束を反故にする気は当然無い。だが、俺達との関係を忘れた方がいいという判断も、結局はただのエゴか
それに、夕立と加賀にも新しい友人が出来た。その繋がりを断つのも酷だろう。言い訳がましいが、そういう事にしておくか
(;´・_・`)「やっぱ、泣く子にゃ勝てねえ」
(,,゚Д゚)「だったらサッサと詫びいれようぜ」
(´・_・`)「言われなくともそうするさ……」
自論だが、男が勝てない女の要素は大きく分けて三つある。一つは『母親』、二つは『涙』、そして三つめが
愛里寿「あ、あはは……おじさん!!」
満面の『笑顔』だ
(´^_^`)「ハハ……」
さて、頭を下げたら休暇を再開しよう。小さな友人とのひと時は、きっと格別に違いないだろうから―――――
おわり
106 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:23:30.12 ID:8agroj4w0
.
107 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:24:05.62 ID:8agroj4w0
深海棲艦による大洗女子学園襲撃及び、『学園艦棲姫』侵攻。【列島事変】発生から数時間後
時刻、一六三八。オスプレイ機内にて―――――
108 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:27:08.96 ID:8agroj4w0
時雨「全く、いい加減“海軍”司令部は僕の扱いを考え直した方がいいと思うね!僕ほどの美少女なら空調の効いたリムジンにテレビとフルコース料理付きで送迎すべきさ!」
時雨ほどの優遇は望まないが、やはりオスプレイの乗り心地はお世辞にも良いとは言えない
悪態が吐けるならまだマシだ。夕立なんか別のもんまで吐きそうな顔色になってる。酔い止めを飲ませときゃ良かった
(,,#゚Д゚)「なるほど貴重な意見だ!俺からも上層部に掛け合ってやるよ!そしたら邪神も真っ青の性格してるクソガキのお守りなんて二度と任されなくて済むからな!!」
こいつらホント仲悪いな。いつもなら頭一発ドツいて黙らせるか、泣いちゃうくらいまで罵倒をしてやるかのどっちかなんだが、今日はどうもその気になれない
よりにもよって、『大洗』だ。叢雲の安否は勿論だが、あの場所にはつい最近出来た友人の『親友』がいる
面倒を避けるために、あの関係は夕立と加賀を含む三人だけの秘密にしていたが、こんなことになるなら叢雲に伝えときゃ良かったと今更後悔してしまう
時雨「死ね!!」
(,,#゚Д゚)「てめえが死ね!!」
この空飛ぶ鉄の棺桶に乗り込む直前、彼女から電話があった。泣き腫らして、枯れた声で、あの子は俺にこう言ったのだ
『みほさんを助けて。大洗の皆を助けて』
喧噪とプロペラの駆動音の中でも、悲痛な願いは確かに俺の耳と心に届いた
古鷹「………あのっ、t!」
《Stork-01より全搭乗員に通達、後20秒で着陸する!総員戦闘用意!繰り返す、総員戦闘用意!》
古鷹「あう………」
俺達は……まぁ鷹さんとか比較的良い子は除いて、ロクデナシの集団だ。戦場へ、遊び半分で乗り込むようなクズだ
だが、一度関わりを持ってしまった以上……『約束』を交わしてしまった以上、今回ばかりは『ガチ』にならなきゃいけない
109 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:27:52.94 ID:8agroj4w0
(,,#゚Д゚)「よし、戦闘用意だ!!敵は手強いぞ、心してかかれ!!」
奴らは、忌々しい事に奴らは、あの子が最も恐れていた事態を、事もあろうに『大洗女子学園』で引き起こしやがった
クソが、クソが、クソが!!一報を貰った瞬間から、腸は煮えくり返っている!!叢雲の休暇を台無しにした事も含めてだ!!
《Shit, Stork-01 One hit!! One hit!!》
《Stork-01より管制機、敵高角砲弾頭が至近で起爆!右翼に甚大な損害、ローターが
脱落した!》
《姿勢制御……クソッ》
必ず成し遂げてやる。勝報を待っていろ愛里寿ちゃん
君との友情と、底なしの怒りに懸けて必ず
( T)「……」
奴らを、皆殺しにしてやる――――
110 :
◆L6OaR8HKlk
[sage saga]:2019/08/27(火) 22:36:14.44 ID:8agroj4w0
終わりです。お疲れさまでした
この話書くにあたって手あたり次第に島田愛里寿ちゃんの資料を閲覧しました。映画も見たし愛里寿・ウォーも見たしらぶらぶ作戦も読んだし二次創作も漁りました
結果、島田愛里寿ちゃんがものすごく可愛いって事だけわかりました。このシリーズは艦これSSです。よろしくお願いします
111 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/27(火) 22:38:12.77 ID:GMlNlLId0
乙。力作でした。
112 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/27(火) 22:39:02.52 ID:evKTYSb20
乙
113 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/28(水) 03:17:56.45 ID:sDu29+Ago
おつかーれ
まってた
114 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2024/02/06(火) 00:55:06.44 ID:rEeD9fE10
乙です 早起きを犠牲にしてまで読み切る価値がある一作
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[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
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