他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
BBS2ch
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
更新
検索
全部
最新50
【艦これ】山城「不幸のままに、幸せに」
Check
Tweet
1 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:21:03.30 ID:G6ax3z7W0
人間は慣れる生き物だ。そうでなければ生きていくことはできない。
傷口に塩水の沁みる痛みも、いつの間にか感じなくなってしまった。
ならば私のこの不幸にも、いずれ慣れていくときが来るのだろうか。
痛みどころではなかった。左上腕から先の感覚は消失している。眼で確認するのも億劫で、私は自己診断プログラムを走らせた――腱断裂、解放骨折及び出血多量。A3度の危険域。左足表皮と腰骨神経系もA1相当の被害を受けていて、私はそこで走査を打ち切る。
怪我をC1からA3までの九段階で評価する樫村スケールは、あくまで自動修復作用をどこにどれだけ割り振るかの判断基準でしかない。自動修復よりも自壊速度が上回っている現状を鑑みるに、最早意味がないのは明白だった。
不幸だわ。
口癖となってしまっている言葉は、いまこそ似合っているように思えた。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1566220863
2 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:22:53.22 ID:G6ax3z7W0
敵性攻撃群の襲撃を受け、部隊は壊滅。仲間を庇いながら抗戦を続けるにも限りがあった。ついには落伍し、気づけばどこかの岩礁に乗り上げ、迫り来る自らの死と向き合うばかり。
扶桑お姉さまは無事だろうか。満潮は。時雨は。加賀は。鈴谷は。
爆炎と血飛沫は、即ち死とイコールではない。私たちは心が折れない限り何度でも立ち上がれるし、立ち上がってきた。そうあるべくしてあるのが艦娘なのだ。
だからまだ心は折れない。体がたとえ端から腐れ落ちようとも。
視界に引きずられて思考さえも霞がかっていくなか、せめてもの抵抗として、私は楽しかった時の記憶を思い出す。埃の被った小箱に入っていたものすらも。
想起に耽る営みは、肺からの、気管支を経るごぼりという音で妨げられた。陸地だのに溺れる感覚。喘ぐように呼吸を急くが、ずんずんと意識が急速潜航。
私は潜水艦じゃあない。
黒い塊が意識の隅に陣取っていた。それを極力見ないようにして、光へと手を伸ばす。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
3 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:23:23.19 ID:G6ax3z7W0
「発見! 要救助者、はっけーん! 座標は今飛ばした、近ェのは……グラ子か!
大淀と合流してこっちゃ来いやぁ!」
潮騒に負けじと声が響き渡る。
「おい、名前! 自分の名前は、わかるか!」
「ぅ、あ」
声は、喉の振動は、空気の震えは、胸を満たす汚水に飲まれて消える。
「かなりやべぇな、クソがっ」
野太い男の声。苛立ちをぶつけるかのように荒げている。
仲間が救助に来てくれたのだと思ったけれど、どうやら違うらしかった。艦娘ではない。かといって提督の声はこんなに若くない。ならば海保? いや、規定で艦娘の保持は海軍に限定されているはずだから……。
あぁ、この際最早、誰何などは熱量の無駄だ。
ごぼり、ごぼり、体内が音を立てている。汚泥があぶくを立てている。
それらに負けじと私は叫んだ。
「みぃ、んな、をっ! たす、助け、てっ!」
私の、私の、みんな、私の、大事な。
仲間なんです。
ごぼごぼ、ごぼり。
どぼん。
あぁ……。
* * *
4 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:24:01.98 ID:G6ax3z7W0
* * *
人間は慣れる生き物だ。そうでなければ生きていくことはできない。
こんな激痛などには耐えられない。
「ん、っう、くぅうううっ、ぐ、お、ぅ……っ」
暗黒に一条の閃光が迸ったのと、体を雷撃のような激痛が走りまわったのは、完全に同一だった。私は空気を求めて喘ぎ、今度こそ清廉な空気が肺腑を満たすことに驚いて、次いで「今度」という自らの摩訶不思議な認識にまた驚く。
左腕が焼けるように痛かった。それだけでなく、骨から針が出て皮膚を突き破っているような錯覚すらある。右腕でおさえようとしたものの、その右腕の関節やら手首やらには、きっと画鋲がばら撒かれていた。
体を捻じ曲げる。幼児のように丸まることさえも許されず、私は恥も外聞もなく、痛みに泣いた。
がらり、ぴしゃんと扉が開く――そこで私は、ようやく、自らが部屋にいて、ベッドに寝かされていることに気が付いた。硬く濡れた岩礁とは異なる柔らかさと温かさ。
5 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:25:01.29 ID:G6ax3z7W0
がらり、ぴしゃんと扉が開く――そこで私は、ようやく、自らが部屋にいて、ベッドに寝かされていることに気が付いた。硬く濡れた岩礁とは異なる柔らかさと温かさ。
「あ、おっ、お目覚めです! お目覚めですぅっ!」
枯れ草色の上着、濃緑の袴を身に着けた、子供だった。彼女は私の姿を見るや否や、叫んで出ていってしまう。この痛みを何とかしてほしいのに。なんという不幸か。
しかし、不幸な私はやはり、幸いにも、人間であったらしい。激痛は波こそあるものの、ゆっくりと引いていって、なんとか歯を食いしばれば耐えられるほどまでには落ち着いてきた。
部屋の外を走る音。数秒の間があって、部屋へとなだれ込む人影。
「おい、医者が次に来るのは明後日だぞ、クソが」
「お目覚めになったことを喜びましょうよぅ!」
「町医者を呼んでくるか? 問診くらいはできるだろう」
「やめたほうがいいと思いますよ。私たちの身体は機密の塊ですから」
6 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:25:50.03 ID:G6ax3z7W0
視界の焦点が段々と定まっていく。先頭に、男性。白いシャツに徽章の金が眩しい。その隣には先ほどの子供。こちらと男性を交互に見やっている。
その後ろに、さらに二人の女性。片方は黒髪長髪で、眼鏡をかけた、清楚な雰囲気。もう片方は銀髪で凛とした佇まい。
「おい、あんた、名前だ。自分の名前はわかるか」
「……」
名前。名前。私の。
「意識に混濁がまだあるか?」
「状況の把握に戸惑っているだけではないのか?」
「鎮痛剤のアンプル、一本持ってきますか?」
「まずこちらの素性を明かしてからでないと、警戒されてしまいませんかね」
話し合っている。なにかを。私のこと? 処遇?
敵性攻撃群でないのは明らかだった。となれば、あぁ、私は助かったのだ、誰かが助けてくれたのだと、ここでようやく心の底から安心できる。その実感のなんと重みのあることか。
7 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:26:21.80 ID:G6ax3z7W0
「……ぁ、だ、ぃ、ぅお」
大丈夫と言おうとしても言葉にはならなかった。喉から血が戻ってきている気がする。ここもまた、痛い。
「あまり無理しないでください」
眼鏡の女性が言う。
「私たちがあなたを助けました。あなたは一命を取り留めたんです。恢復までには長い時間を擁します。ゆっくり療養していきましょう」
子供が私の手を握ってきた。小さく、暖かい、手。海の上を揺蕩う間は決して手に入らないもの。それだけで涙が滲む。
「もう大丈夫……ですっ!」
「声が出せないか? 喉の裂傷のせいかもしれないな。紙とペンをもってこよう」
銀髪の女性は、透き通るほどに白い肌と、同じくらいに透き通る怜悧な声で呟く。
「水はいるか? いるなら首を縦に、いらないなら横に」
野太い声で男性が尋ねてくる。私は首を縦に振った。それに対して男性も満足そうに頷く。
顔にはいくつか傷があった。そのせいだろうか、僅かに右の頬と、口元、眼尻の動きが引き攣っているようにも見える。左の外耳も耳たぶのあたりが欠けているし、額から左眉にかけても裂傷が二本。
8 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:27:45.05 ID:G6ax3z7W0
「ペンと紙を持ってきたぞ」
「おう、グラ子、助かった」
「大丈夫ですか? ペン、握れますか? 意思の疎通は」
私は僅かに指の感覚を確かめて、うん、これならば、なんとかなると首肯。
「あの、まずわたしたちの……わたしたち、から、名乗ったほうがいいんじゃ?」
「それもそうですね」と眼鏡の女性。「提督、私たちの立場を明らかにしても?」
「そうだな。まずは事情を飲み込んでもらうことが優先だろう」
「では、僭越ながら、わたくし大淀が。
初めまして山城さん。我々は、このたび海軍に新設されました、CSARに特化したARS、通称『浜松泊地』のメンバーです」
「……」
……全然、意味が、わからない。
9 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/19(月) 22:29:36.85 ID:G6ax3z7W0
――――――――――
ここまで。
リハビリもかねて、リクエスト消化。
週一くらいの更新で、100レス程度で終わればいいかな?
待て、次回。
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/19(月) 22:55:02.41 ID:85bvewljo
潜水艦泊地から
乙支援
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/19(月) 23:11:42.20 ID:Id9+PI7Bo
>>9
もう来たか次作
舞ってる次回
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/20(火) 00:47:06.30 ID:978RGUQJO
前作あるの?ゾクヘンなんでしょうか
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/20(火) 05:09:18.47 ID:uyFVSiyno
乙乙
CSAR:コンバット・サーチ・アンド・レスキューの専門鎮守府とな!?
14 :
◆yufVJNsZ3s
:2019/08/20(火) 20:19:00.77 ID:lnANcWZz0
>>12
このお話に前作は存在しませんが、私の過去作が存在するということですね。
15 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/21(水) 01:26:38.37 ID:zqrS27Hw0
声が出なかったのは、きっと体の傷が原因のすべてではない。
私は別段、自分が一般常識に欠けているとは思わなかった。それでも、たったいま目の前の女性、大淀と名乗った彼女が口にした単語――いや、そもそも単語なのかすら定かではない――言葉の羅列は、私の知識の中にはなかった。
CSAR。ARS。恐らく、何か英単語の頭文字なのだろう略し方という類推はできても、それまでである。
誇らしげに大淀は胸を張っていた。たった今口にしたその文字に、自らの威信と誇りを委ねているという態度のようにすら見えた。
「通じてねぇようだが」
それみたことか。男性のニュアンスは皮肉交じり。
大淀はそれを受けて小さく呟いた。なるほど。なにが「なるほど」であるのか私にはちっとも理解ができなかったけれど、彼女は納得したらしい。
16 :
りゅうくん
◆GaijiYAdxjSs
[りゅうくん ◆GaijiYAdxjSs]:2019/08/21(水) 01:26:46.23 ID:zPI2+ObI0
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs
17 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/21(水) 01:27:05.52 ID:zqrS27Hw0
「CSARとはCombat Search and Rescueの略ですね。即ち、『戦場における捜索と救難』です。そしてARSはAir Rescue Squadronの略で、直訳だと……『航空救難戦隊』? まぁ、つまりは救難部隊を指しています。
我々の救助対象は艦娘です。たまに深海棲艦に襲撃された客船やタンカーも救助しますが、任務中、あるいは遠征中に襲われたロストバゲージの捜索と救助が主任務となります。
コードネームは『浜松泊地』。まぁ浜松に拠点があるわけではないんですが、説明すると長くなりますので」
戦闘捜索救難を行う部隊、航空救難戦隊が彼女たちの正体だと。それが海軍に新設された。……航空? 海軍なのに?
疑問はあったが、言葉の枝葉末節はどうでもいいことだと思考から追いやった。重要なのは、私が彼らの活動の結果として救難され、いま、こうしてベッドに横たえられているという事実。
18 :
りゅうくん
◆GaijiYAdxjSs
[りゅうくん ◆GaijiYAdxjSs]:2019/08/21(水) 01:27:09.21 ID:zPI2+ObI0
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs
19 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/21(水) 01:27:36.61 ID:zqrS27Hw0
「さて、山城さん、落ち着いて聞いてください。あなたは任務の最中に敵性攻撃群、通称『深海棲艦』に襲われました。その後、我々が捜索し、発見、いまに至ります。ここは浜松泊地所有の医療施設で、幸いなことに命に別状はありません」
私は手を握り、開いた。痛みはしつこく残っている。それでも最早泣き出したくなるほどではなかった。
「山城さんは四日ものあいだ意識を失っていました。医者の見立てでは、日常生活を送れるようになるまでに二週間、完治まで二か月とのことです。後遺症の具合によってはさらに伸びる可能性もあります。
なにより、この数字は高速修復剤を利用した上での日数です」
高度修復剤、通称「バケツ」。浸せば体の損傷をたちどころに回復させてしまう、祈祷によって清められた霊水。
普通、どんなに酷い状態だったとしても、一日もあれば全快になるはずだ。それが二週間とは、まさに私は生死の境目を彷徨っていたのだろう。不幸中の幸い、ここに極まれり、である。
20 :
りゅうくん
◆GaijiYAdxjSs
[りゅうくん ◆GaijiYAdxjSs]:2019/08/21(水) 01:27:50.62 ID:zPI2+ObI0
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs
21 :
りゅうくん
◆GaijiYAdxjSs
[りゅうくん ◆GaijiYAdxjSs]:2019/08/21(水) 01:28:26.27 ID:zPI2+ObI0
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs
22 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/21(水) 01:33:32.45 ID:zqrS27Hw0
「食事やリハビリについては、この施設で賄うことができます。ある程度状態がよくなれば、軍の病院にも移送することは可能です。いまはとにかく体を休めることを優先に考えてください。
常に我々がつきっきりというわけにも行きませんが、基本的に誰かしらはいる構造になってますので、不便があればいくらでも呼んでくださいね」
なにからなにまで、申し訳ない。
「浜松泊地」なる救助隊が設立され、活動に勤しんでいるという話は初耳だった。新設と自ら謳うのだから、本当に最近できたばかりなのかもしれない。
私は部屋をぐるりと見渡す。大淀は先ほどから「我々」と口にしている。銀髪で怜悧な女性も、和服の少女も、傷の多い男性も、みな救助隊のメンバーなのだろう。
23 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/21(水) 01:34:01.75 ID:zqrS27Hw0
「グラーフ・ツェッペリンだ。艦種は空母」
もしかしたら視線で思考が伝わってしまったのかもしれない。銀髪の女性が直立不動で名乗った。堂々とした態度。その確かな存在感は、私には光沢のある金属を想起させる。
「た、大鷹です。軽空母……です」
こちらの挨拶は控えめだった。引っ込み思案というよりは、年上と話すことにあまり慣れていないように感じられた。
「後藤田だ。後藤田一という。俺は見ての通り男だから、艦娘じゃあねぇ。こいつらを指揮する……お前らふうに言えば、『提督』ってやつになるのか。この部隊、『浜松泊地』を預かっている」
最後に傷の多い男が名乗る。野太い、芯のある声。決して揺らぎそうにない力強さ。
その表現はどこかきちんとした線引きがあることを示唆している。あるいは、彼もまた、この隊を任されて日が浅いのか。
それでも私には、この後藤田という男性と、彼の部下であろう三人が、強固な絆で結ばれているように見えて仕方がなかった。とかく些細な営みのほうが、信頼は強く表に出るものなのだ。
24 :
りゅうくん
◆GaijiYAdxjSs
[りゅうくん ◆GaijiYAdxjSs]:2019/08/21(水) 01:34:31.98 ID:zPI2+ObI0
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs
25 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/21(水) 01:34:34.22 ID:zqrS27Hw0
「この三人のほかに、あと二人、構成員がいる。駆逐艦の不知火。重巡のポーラ。もし知らない顔がいても驚かないでくれ」
だから、ごく自然に大淀のあとを彼が引き継ぐことも、なんら驚くべきことではない。
「――ここまでで、何か質問はあるか?」
彼が尋ねるのをきっかけにして、大鷹が、グラーフが、そして大淀が、静かに部屋を後にしていく。その意図が私にはわからなかった。
混乱に僅か戸惑う頭でも、正常には回る。質問。わからないこと。気になること。訊きたいこと。
それはなぜ航空という冠がついているのかであったし、なぜたった五人という少数精鋭なのかでもあった。けれど、私が知りたいのは、本当に訊きたかったのはそんなことではなくて。
26 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/21(水) 01:35:02.02 ID:zqrS27Hw0
ペンを握る。紙に走らせる。
みんなは、どこ?
痛む手でやっとこさ書き上げた文字列を、彼は悲痛な表情で一瞥する。
そのとき理解した。三人が自主的に去ったのか、それとも以心伝心で彼が三人を去らせたのは定かではないが、どうして無言のままに彼女たちは部屋を後にしたのかを。
後藤田提督は首を振る――横に。
「残念ながら、生き残ったのはあんただけだ」
泣き顔なんてなるべくひとに見せたくないだろうという、配慮だったに違いない。
27 :
りゅうくん
◆GaijiYAdxjSs
[りゅうくん ◆GaijiYAdxjSs]:2019/08/21(水) 01:35:41.46 ID:zPI2+ObI0
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん
◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSsりゅうくん ◆GaijiYAdxjSs
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/21(水) 02:21:10.50 ID:5LjWVyllo
お疲れ様です?
早いな!
舞ってる次回
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/21(水) 02:35:33.28 ID:6UH1xJd4o
乙
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/21(水) 13:08:08.40 ID:1d4h5fup0
乙
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/21(水) 19:00:30.69 ID:NG8rLnyq0
また面白そうな作品だ 期待
32 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:15:12.88 ID:ihyj2nok0
扶桑姉さまは、この世でたった一人の家族だった。
私たちは天涯孤独ではなかったけれど、単にひとつ屋根の下で暮らす存在が家族だとは思わない。戸籍謄本に乗っているだけの関係が家族だとは思わない。そういう意味では半分だけ孤独ではあったのかもしれない。
私には姉さまが、姉さまには私が、それぞれいればそれで十分だった。互いが互いの半身だった。
人という字はひととひとが支え合っている様を表すというのは、きっと間違いなのだろう。私と姉さまがふたりでひとつ。少なくとも、私たちにとっては。
山城。わたしたちは、ずっと一緒にいましょうね。わたしは絶対にあなたを裏切らないから、信じ抜くから、あなたもわたしを裏切らないでね。信じ抜いてね。
こんな不幸に満ちた世の中なんて、きっと一人では生きていられないわ。だけど大丈夫。わたしにはあなたがいるもの。あなたにはわたしがいるもの。
姉さまは口癖のように、夜毎の子守歌のように、隣でそう言っていた。
33 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:15:41.61 ID:ihyj2nok0
母親が死んだのは私たちが八歳の時で、後妻がやってきたのがその三年後。私たちが高校へ上がると同時に父親も倒れて、私たちは後妻の実家へ移り住むこととなった。
共同体の中に、異物がふたつ。
そこでは私たちは家族ではなかった。ただ単に、よそ者だった。
叔父からの性的な視線。一回りも年の離れた相手との見合い話。生理用品を買うのにすら領収証を貰わなければならない狂った生活。
それでも大丈夫だった。耐えられた。姉さまの至言があったから。
こんな不幸に満ちた世の中なんて。
一人では決して生きていられないけれど。
私には姉さまが、姉さまには私が。
姉さまがいれば、それだけで。
姉さまと二人でいられれば、それだけで。
よかったのに。
34 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:16:24.72 ID:ihyj2nok0
私たちは走った。走り続けた。朝の農道を。昼の畦道を。夜の隧道を。
気分はさながら、嘗てドラマで見た恋人の駆け落ち。迫る追っ手、逃げる主人公、試される真実の愛。
違うところと言えば、迫る追っ手はおらず、私たちは決して主人公足りえないという、二点だけ。真実の愛は既に試されていて、乗り越えたからこそ、いま私たちは走っているのだ。
変な男と結婚させられなくてよかったね。と私が言った。九州は、離れ離れになるには遠すぎるもの。
不幸続きの人生にも、たまには好機は巡ってくるのね。と姉さまが言った。旅立ちの前日に、家が失火に見舞われるなんて。
顔を見合わせて、笑う。そしてまた走り出す。家事の混乱に乗じて、誰も知らないどこかへ行って、清貧でもいい、静かに暮らしたかった。二人一緒にいられるのなら、地獄の方が天国よりもましに思えた。
35 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:16:54.45 ID:ihyj2nok0
姉さまは、けれど、もしかしたら気づいていたのかもしれない。私が家に火をつけたのだということに。
36 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:17:27.17 ID:ihyj2nok0
この世は不幸に満ち満ちていて、姉さまはいつも力なく笑っていた。どんなに辛いことも苦しいことも、いずれ慣れる時が来る。受け流してしまえばどうにでもなる。それに、山城、あなたさえいれば。
不幸な私たちに与えられた唯一の幸運が、最愛の姉妹の存在なのか、あるいは、最愛の姉妹という幸運によって、これほどまでの不幸が与えられているのかは、一生わかることはないのだろう。
相も変わらずにこの世は――というより、私たちの人生は不幸に満ちていた。それでも徐々に、遅々としてではあるが、上向いてきてもいた。仲間ができたのだ。同じ鎮首府で、背中を預けられる大事な戦友。
満潮や時雨は小さいけれどしっかりもの。口数の少ない加賀も、自己主張が苦手なだけで、魅力的な人物だ。鈴谷の性格は私たちとはまったく違っていて、まともな化粧の仕方をそこで初めて教えてもらった。
たった二人だった私たちに、家族ができようとしていた。
だからなのだろう。
この世は不幸に満ちているから。
少しそのことを忘れてしまえば、すぐにほら見たことかと言われてしまう。
身分相応を知れと蔑まれてしまう。
多くを望んでしまったのが運の尽きだ。
37 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:17:54.70 ID:ihyj2nok0
極秘任務になど手を上げなければよかった。六人ならば作戦は成功させられるなんて思いあがらなければよかった。提督のため、鎮首府のために挑戦しようと考えなければよかった。
そうしなければ誰も死ななかったのに。
胸が苦しい。痛い。内臓ではない。心が。心臓ではなく。心。心なんて空想なのに、ひとが生み出した幻なのに、どうしてこんなにも痛いのだろう。
あるはずのないものが、確かに自分の中心に、どっかと腰を下ろしている気がした。
後藤田提督が立ち上がる。何か不便があったら枕元のボタンを押せとだけ言って。
38 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:18:22.22 ID:ihyj2nok0
彼らは、こうなることを知っていたに違いない。私が、という話ではない。要救助者を全員助けられないことのほうが圧倒的に多くて、眼を覚ました者はみな第一声に他者の安否を尋ね、そして……絶望する。
激痛に苛まれる体であってさえ、死よりは遥か遠くにある。それでも喜びの感情はない。かといって自分が誰かの代わりに死ねたらいいのにとも思えない。姉さまも、他のみんなも、嬉しくはないだろうから。
この世はとかく不幸に満ち満ちている。
姉さまは、いずれ慣れると言っていた。私はどうにも、それを信じられそうにない。
人間は慣れる生き物だ。苦しみにも、辛さにも、痛みにも。事実私は随分と体を動かすのも楽になった。だけれど、親しい人や愛する人が死ぬという不幸、それに揺れる心さえも麻痺してしまった生き物が、果たして人間と呼べるのだろうか。
こんな苦しみ、辛さ、痛みなど、もう二度と味わいたくはないというのに、鈍感になりたくもないという自己矛盾。
39 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:18:51.00 ID:ihyj2nok0
いっそ死んでしまおうか。海に飛び込んでも浮くばかりだから、どこか高い、いい景色のところから、真っ逆さまに。
いや、それこそ姉不幸者だ。姉さまを悲しませることは、私には到底出来そうもない。
後藤田提督は私に療養の時間をくれたが、あぁ、そんなものは不必要。暖かいベッドに横たわっていると、一際死の冷たさと静寂の輪郭が際立つ気がして、足元の崩れていく錯覚に陥る。
浜松泊地と名乗った彼らは確かに私の命をこそ救ってくれたけれど、この身の境遇までは救ってくれなかった。いや、そこまで願うのはお門違いか。
姉さまは自分の不幸や幸福を他者に希求することはなかった。ならば私も、そうするべきだ。
それでも。
「ぐ、う、ぅっ、おぉ、う」
叫びだしたいのに体が言うことをきいてくれない。もどかしい。気が狂ってしまいそうになる。
40 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:19:24.73 ID:ihyj2nok0
こんな不幸に満ちた世の中なんて、一人では生きていられない。
私は一人になってしまった。
姉さま。姉さま。山城は、恐ろしいのです。なにがと尋ねられても、答えに窮してしまいますが、なにかが、目に見えないなにかが、姿かたちの無いなにかが、まったき暗闇の色をもって、どこかから私を狙っているように思えてしょうがないのです。
手を。手を握ってください。どうか。二人で空腹を堪えた夜のように。寒空の下を歩いた朝のように。
「だぁいじょーぶ、でぇすかぁー?」
手がふんわりと暖められて、陽気な香りが鼻孔を衝いた。
41 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/22(木) 00:21:38.37 ID:ihyj2nok0
――――――――――
ここまで
一回ぶんの文字数を半分にして、投稿ペースを倍にする試み。
待て、次回。
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/22(木) 02:01:57.21 ID:xM19Qutq0
乙
まさか翌日に来るとはビックリだ 姉不幸者のところはあえてかな?うまい言い回しだ
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/22(木) 13:05:43.46 ID:K2dpUcYm0
×鎮首府
○鎮守府
山城の独白はどうしても太宰治な調子になるよな
44 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/23(金) 00:17:24.68 ID:2euMv+sS0
美少女だった。
美少女が、立っていた。
わからない。それはもしかしたら、日本人的な美的感覚のせいかもしれない。
絵画のモデルがそのまま抜け出してきたかのような白い肌、そしてプラチナブロンド。頬は紅を挿してもいないのに仄赤く染まり、表情だって柔和だ。幼さの残る顔立ちはまさしく天使のようだった。
たとえば先ほどのグラーフ、凛とした彼女もまた美しかったが、目の前の少女とは毛色が異なる。近づけない存在が「綺麗」なのであり、「可憐」な存在は穢れを許さない。
なぜか右手にワインの瓶を持っているのが、まさしく宗教絵画のようでもあった。ワインとパンの寓話くらい私だって知っている。
そこではたと気づいた。浜松泊地にはまだ私の知らない構成員がいる。不知火とポーラ、彼女はそのどちらかで、見た目を考慮に入れれば後者なのだと推測できる。
45 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/23(金) 00:17:52.97 ID:2euMv+sS0
「痛そぉ、ですねー」
私の手を握るその手のひらの温度は高い。僅かに目元は濡れていて、少しだけ物憂げな気配があった。
なぜだかわからないけれど、背徳的な雰囲気。
「ベッドに寝てばかりじゃあ、からだ、固まっちゃいますよぅ?」
顔が近い。不自然に近い。
個人のパーソナルスペースはそれぞれだけれど、これではまるで制空権がない。
というか、唇と唇が。
「……」
葡萄の匂い、発酵臭――酵母菌のもの。アルコール醸造の際に発生する、特有の。
彼女が呑んでいるのは明白だった。
「立てますかぁ? 海風にでも、あたっちゃいましょー。ポーラも、うふふ、一旦酔い覚ましでぇ」
そしてその事実を隠そうとしていなかった。
大丈夫なのか?
46 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/23(金) 00:18:20.73 ID:2euMv+sS0
いや、変な勘繰りはやめよう。非番だ、そうに違いない。私は嗜む程度にしかお酒を呑まないけれど、この世に酒豪はいくらでもいる。昼間から呑んだっていいじゃないか。
それよりも今は彼女の提案に伸るか反るかである。体の痛みは慢性的だが、数日間ベッドで眠りっぱなしだったものだから、体の節々が固まってしまっているように思う。
日常生活に戻るのですら二週間程度を要するとは大淀の弁。しかし、歩けないことには何もかもが始まらない。それにずっと部屋の中にいては参ってしまう――体よりも精神が。海風が心の澱を吹き飛ばしてはくれやしないかと期待してしまう程度には。
私は、ポーラの提案に頷いた。彼女はすぐに満面の笑みで私の手を引く。力任せでなく、ゆっくりと、慈しむように。
扉はやけに重かった。ぐ、と体重をかけて押してようやく開く。それほどまでに体は衰えてしまっているのか。
47 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/23(金) 00:18:50.33 ID:2euMv+sS0
「……」
廊下は細く、それ以上に窮屈だと感じた。灰色と緑を基調とした空間に、LEDの灯りが煌々と降り注いでいる。扉。むき出しの配管。結束されたコードの束が縦横無尽。
違和感ばかりの中で、私は僅かに遅れて、最大限の違和感に気付く。
窓だ。窓がないのだ。それは普通の建物においては有り得ない話だった。
「大丈夫ですかぁ?」
ポーラが尋ねてくる。なんと答えればいいのか。
私はてっきりここが病院、あるいは浜松泊地の基地であると思っていたが、この光景はどちらにも当てはまらない。工場、研究機関という表現の方がよほど正しい。
そんな不安を知ってか知らずか、酩酊のせいなのか、ポーラはひょいひょい軽やかな足取りで前に進んでいく。最早私には選択肢などなく、一歩ごとに体のありとあらゆる箇所が悲鳴を挙げるのを聴きながら、壁に肩をこすりつけながら追った。
少し歩いては待ち、待ってはまた歩くを繰り返すポーラを見るに、どうやら私のことを気にしてはいてくれているようだったが。
48 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/23(金) 00:19:18.46 ID:2euMv+sS0
螺旋階段を上りきると鉄扉があって、そこには丸い窓がついている。リベット打ちされた頑丈そうな窓。気密性の高そうな扉。
あ、と声が漏れた。珍しく咽ることなく、するり喉から抜け出ていった。
ここは。私がいる場所は。
「浜松泊地の母艦、『しおさい』って言いますー。仲良くしてあげてくださいねぇ」
ポーラがほんわかした口調で扉を開け放った。
海風が流れ込んでくる。
潮の匂い。眼を細めるほどの陽光。
短い廊下に切り取られた先の、大海原。
ここは船の上だ。
甲板の手すりが見える。ウインチ。そばに置かれているのは舫い綱だろうか、それとも荷を固定するためのもの? いや、彼らはCSARなのだから、救助用かもしれない。
49 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/23(金) 00:20:02.09 ID:2euMv+sS0
「おい、ポーラ、てめぇなにやってんだ」
「て、提督? 違うんですよぉ」
「俺はまだ何も言ってねぇ」
ぬっと現れた後藤田提督は、ポーラを見るなり顔を顰めた。ポーラは視線を逸らしてワインの瓶を背後へと隠す。
「それにポーラ非番ですからぁ」
「怪我人連れ出して無理させんじゃねぇぞ?」
「あーんな部屋にいたら気が沈んじゃいますよぉ」
提督は私を見た。無理やり連れだされてはいないだろうな、とその顔は問うている。縦か横か、首をどちらに動かせば正しく伝わるのか不安だったので、苦手だけれど笑顔を作ってみた。
「……」
無言。しかし、言い換えれば反対でもない。
少しばかりの溜息とともに、体に障るようなことはするんじゃないぞと釘を刺し、甲板の向こうへと消えていった。
私は後を追って甲板へと出る。早く海を見たかった。
50 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/23(金) 00:20:31.08 ID:2euMv+sS0
それは決して感傷ではない。私は姉さまや、仲間のみんな――家族のみんなを弔うために、死を悼むために、海を利用しているわけではない。ただ私は海が好きなだけなのだ。自由の象徴としての海が。
船首には、今は帆は折りたたまれているが、金属製のマストが備え付けられてる。そこからずうっと、船体中央を通り越して後部までがフラット。そして船尾には、階段状になった複層式のスペースがある。管制室や操舵室だろう。
トン数は200前後といったところか。内航向けの小型機帆船をリノベーションして使っている? それにしたってこの規模の船舶は漁船やクルーザーとはわけが違う。私はまだ、艦娘と提督以外の乗組員を見ていない。
「船が泊地だなんて凄いですよねー」
酩酊に浮かされた口調でポーラが言う。私に説明してくれているのかもしれなかったし、ただ単の自慢かもしれなかった。
「あはは。みぃんな、『浜松泊地』に助けられた人は、そんな顔しますー」
そんな顔。どんな顔だろうか。
51 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/08/23(金) 00:21:01.86 ID:2euMv+sS0
「医務室は今さっきの階段を下りた先ですねー。中央部分に居住区角は集中してます、ポーラたちの部屋もあのあたりでー、食堂は船尾の、遠距離通信レーダーと気象観測アンテナありますよねぇ、あの真下ですぅ。
時間はきっと、たっぷりありますからぁ……気を落とさないで、元気出して、頑張りましょー」
ポーラはぽやぽやした笑顔のまま踵を返し、甲板を歩いた。そして甲板に備えられたハッチの僅かな段差に脚を引っ掛け、盛大に転ぶ。
顔面から突っ込んでも、ワインの瓶だけは死守していた。
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/23(金) 07:01:02.55 ID:jGa3pAAVo
おつ
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/08/23(金) 12:23:55.01 ID:wvFyOa+5O
乙
意外な、CSARチームにポーラとな?
まさか、まさかの麻酔担当!?
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/09/20(金) 23:24:15.64 ID:xAIihgQXo
待ってる
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2019/09/30(月) 22:49:11.89 ID:P1xDypFl0
じゃー……ちち、ち、ちっ、ちっ……。
プラスチックのかたかた鳴る音とともに、ルーレットが止まった。数字はまたも2。先ほどから1〜3しか出ず、それなのに必要のないところで8や9が出て、よくないマスへと突き進む。
「会社が倒産。500万支払う」。
どうして会社が倒産してそんな大金を支払わなければならないのだ。しかも銀行へ。なんだ、私は経営陣で、債務者だったのか? そんな馬鹿な話があるか。
じゃー……ちち、ち、ちっ、ちっ……。
止まった数字は6。車を模したコマが停まったマスは青。
「あ、仕返しですね。15マス戻ってください」
「私、あなたになにかしたかしら?」
「さぁ。ま、人間、どこで恨みを買っているかわからないものですし」
56 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 22:50:07.53 ID:P1xDypFl0
しれっとした顔で不知火は言う。大局は既に決している。最初はやる気を奮っていた彼女も、今や消化試合を続ける面持ちで、けれど自らが誘ったという負い目からか、何とか私にそれを悟らせまいとする意地が見え隠れしていた。
人生ゲームは果たして二人でやるゲームだったろうか。いや、結局は私が弱すぎるのが悪いのだ。というよりも、不幸すぎるのが。
完全情報ゲームならばまだしも、不完全情報でここまで差が開いてしまうのは、逆に申し訳なくなってしまう。
「降参よ。さすがに逆立ちしたって逆転は無理よ」
「そうですか」
意図的にあげた音を不知火はあっさり承諾した。手慣れた様子で駒や札、債権を回収していく。
「次はなにします? 将棋、チェス、オセロ、モノポリー、ダイヤモンドゲーム、有名どころは一通りそろってます。ドミニオンにニムト、宝石の輝き、カタン、ギロチンなんかは? カードゲームがいいならポケモン、遊戯王、MTG。ドミノもありますね」
「倒すやつ?」
「倒さないやつです。本来の遊び方です」
57 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 22:51:18.12 ID:P1xDypFl0
「色々持っているのね」
感心してしまう。
「船の上だと退屈しのぎは重要です。それこそ、食事の次くらいには」
「付き合ってもらって申し訳ないわ。非番、なのでしょう?」
「平気です。不知火は、個人的には、盤面や手札越しにこそ相手を最もよく知ることができるのだと考えています。退屈しのぎでもあり、山城さん、あなたのことを少しでも理解したく、ゲームに興じているのです」
「他のひとたちともよく一緒にゲームを?」
「はい」
人生ゲームの箱を閉じて、不知火は無言のままに、将棋の盤を互いの間に置いた。駒の箱を開き、こちらへ手渡してくる。
ぱちん、ぱちん。治療室の部屋に、木で木を打つ乾いた音が響く。心地いい。
「提督はギャンブル型ですね。ハイリスクハイリターンを好みます。期待値がマイナスでもお構いなしなので、どっちかというとスリルが好きなのでしょう。
大鷹は正反対の慎重型。臆病と言い換えてもいいくらいです。石橋を叩いて渡る典型で、堅実に小金を稼いでクリアを目指します。ラスを引くことは少ないですが、トップをとることもありませんね」
58 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 22:53:29.09 ID:P1xDypFl0
玉を握った私が先手だ。7六歩。まずは角道をあける。
「ポーラは読めません。荒唐無稽と言いますか、一貫性がないのです。ちまちま稼いでると思えば急に全財産を賭けてみたり……酩酊の為せる業なのかもしれませんね。
グラーフはいかにもドイツ流です。確率を計算し、期待値通りに動きます。定石のある場面ではきちんと定石を打ってくる。場面によってぶれない。質実剛健とは彼女のためにあるような言葉ですね」
飛車先の歩を衝いたのに合わせて8八角。私は同銀と返す。そして不知火の指がとったばかりの角へと動き、ぱちん、少し甲高い音を立てた。
「筋違い角、ね」
歩の一枚はとられるとして、果たして大きく戦況に左右するだろうか。それよりも角の位置が一見して悪そうなことに気をとられる。
「……奇手奇策が好き、という自己紹介かしら」
呟きを不知火は聞き逃さなかった。自慢げに、これがわたしなのだとばかりに――あるいは「よくわかっているじゃないですか」とでも言うように、不敵に笑う。
59 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 22:55:44.15 ID:P1xDypFl0
「一番強いのはグラーフさん?」
「いえ」
ひとまず穴熊へと走る私。不知火は歩を駒台の上に置いて盤上を眺める。
「大淀が。彼女は、その……こういう言い方はよくないのかもしれませんが、和マンチの気がありまして。手八丁はさすがに使いませんが、口三味線やルールの穴を衝くことに抵抗がなく……というよりもそうやって相手をやり込める事に楽しさを見出してしまっているようでして」
「難しいところね」
盤面も、スタンスの違いも。
「いえ」
けれど不知火はあっさり否定した。どちらを、なんて考えるまでもなかった。
「不知火はそういう、勝ちに貪欲な彼女を見るにつけ、あぁ今日も彼女は彼女なのだなぁと、幸せな気分になります」
60 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 22:56:54.93 ID:P1xDypFl0
その気持ちを少し考えてみて、わかるようなわからないような、不思議な気分になる。たとえば姉さまが急に幸福の連続に見舞われたとしたら、逆に心配になるだろう。そののちに不幸な目に遭ったとき、喜びさえ覚えるかもしれない。
酷薄だという非難は尤もだが、てんで的外れでもあった。変わらない日常が何よりも貴重である――そんな使い古された文言は、当然この世のすべてではないけれど、少なからず使い古されてきたなりの重みや実感を伴う。
ぱちん、ぱちり。
静かな病室に、静かに駒を打つ音が響く。
80手目で私の勝利だった。
「お見事だな」
手こそ叩かず、いつから見ていたのだろう、後藤田提督が扉の傍にいた。相も変わらず傷だらけの顔が、引き攣って不器用に、しかし朗らかに笑みを形作る。
「席を外しますか?」
返事を待たずして不知火が立ち上がる。後藤田提督は「いや、いい」と留めるも、不知火は「飲み物でも持ってきます」と部屋を後にした。私は彼女のことなどまるで知らないけれど、その所作をどこか不自然に思う。
61 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 22:58:48.62 ID:P1xDypFl0
後藤田提督は頭を掻きながら、先ほどまで不知火が座っていた場所へと腰を下ろす。安物のスツール。私だけがベッドに横になっていることが申し訳なくなるくらい。
大きなひとだった。肩幅が広い。背丈もある。筋肉、特に首筋から胸元にかけてが丸太のようだ。事務仕事を主とする艦娘相手の提督には珍しいタイプ。
「体調はどうだ」
「随分とよくなりました」
嘘ではなかった。まだ完全に痛みが引いたわけではないが、体も動かせるし、食事だって自力で摂れる。会話だって。
その答えに彼は満足したように頷いた。
「うちのメンバーにはもう全員?」
「はい、会いました。みんないいひとばかりで」
「いいやつらには違いないが、一癖も二癖もある。まぁ、狭い船の上じゃあ、それくらいのほうが退屈しなくていいもんだ。
誰かからうちの話は聞いたか」
62 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 22:59:39.56 ID:P1xDypFl0
後藤田提督は頭を掻きながら、先ほどまで不知火が座っていた場所へと腰を下ろす。安物のスツール。私だけがベッドに横になっていることが申し訳なくなるくらい。
大きなひとだった。肩幅が広い。背丈もある。筋肉、特に首筋から胸元にかけてが丸太のようだ。事務仕事を主とする艦娘相手の提督には珍しいタイプ。
「体調はどうだ」
「随分とよくなりました」
嘘ではなかった。まだ完全に痛みが引いたわけではないが、体も動かせるし、食事だって自力で摂れる。会話だって。
その答えに彼は満足したように頷いた。
「うちのメンバーにはもう全員?」
「はい、会いました。みんないいひとばかりで」
「いいやつらには違いないが、一癖も二癖もある。まぁ、狭い船の上じゃあ、それくらいのほうが退屈しなくていいもんだ。
誰かからうちの話は聞いたか」
63 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 23:02:57.05 ID:P1xDypFl0
後藤田提督は頭を掻きながら、先ほどまで不知火が座っていた場所へと腰を下ろす。安物のスツール。私だけがベッドに横になっていることが申し訳なくなるくらい。
大きなひとだった。肩幅が広い。背丈もある。筋肉、特に首筋から胸元にかけてが丸太のようだ。事務仕事を主とする艦娘相手の提督には珍しいタイプ。
「体調はどうだ」
「随分とよくなりました」
嘘ではなかった。まだ完全に痛みが引いたわけではないが、体も動かせるし、食事だって自力で摂れる。会話だって。
その答えに彼は満足したように頷いた。
「うちのメンバーにはもう全員?」
「はい、会いました。みんないいひとばかりで」
「いいやつらには違いないが、一癖も二癖もある。まぁ、狭い船の上じゃあ、それくらいのほうが退屈しなくていいもんだ。
誰かからうちの話は聞いたか」
64 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 23:04:14.81 ID:P1xDypFl0
「うちの?」
「俺たち『浜松泊地』のことを」
「……いいえ」
気にならないわけはなかったが、さりとて気軽に訊ける要素もなく。
「そうか。……俺たちの話をするより先に、単純な質問でもしておこうか。山城一等海士殿」
「はい」
急にあらたまった呼び方をされて、思わず背筋がすっとなる。膝の上に手をやり、弛緩と緊張のいい塩梅を作って、真剣なまなざしは真っ直ぐに彼。
「苦しみながら死ぬほうと、気楽に生きるほう、どっちがいい?」
65 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/09/30(月) 23:05:19.90 ID:P1xDypFl0
――――――――――――――
ここまで
時間に余裕ができたので復活します。
66 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/09/30(月) 23:06:19.02 ID:dq6clWtLo
乙
67 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/09/30(月) 23:21:22.08 ID:TSuSFOEko
お疲れ様です
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/09/30(月) 23:32:38.16 ID:gW9YMopTO
乙。
アカン、扶桑型戦艦とは、戦艦山城とは、そういう生死の境をこそ楽しむように「成って」しまった存在ではなかっただろうか?
69 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/03(木) 00:59:27.68 ID:1OeslLNk0
最初は聞き間違いかとも思った。
だって、それは語義がテレコになっていない。意味が対義になっていない。普通ならば苦しみながら生きるのか、はたまた死んで楽になるのか、そういう話のはずだ。そういうときに使われるべき文句のはずだ。
負に負、正に正を足したって、符合は変わらない。
しかし目の前の後藤田提督は、彼を真っ直ぐに見る私の瞳を覗き込んできている。矢を打ち返すように真っ直ぐと。その様子を見るに、聞き間違いでも、言い間違いでも、ない。
それならやはり、言った通りの意味なのだろう。苦しんで死ぬか。楽に生きるか。
意図はわからなかったが、それでも私は天邪鬼ではなかった。
「気楽に、生きます」
「そうか。なるほど、そうか」
彼は鷹揚に頷いて、
「なら、手筈は整えてある」
と言った。
70 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/03(木) 01:00:01.85 ID:1OeslLNk0
「おおよそ三日後、母艦『しおさい』は苫小牧か室蘭、余裕のあるほうの港に停泊する。お前はそこで下船し、札幌を目指せ。北大付属の病院に空きがある。新千歳まで行けば職も斡旋してくれるそうだ。勿論、艦娘じゃない、綺麗な仕事を」
「ま、待ってください! 待って!
話が急すぎます! なにがなんだか……まるでわからない! 私には故郷があります! 家族がいます! 鎮首府と、そこのみんなが私を待ってくれているんです!」
ここに骨を埋めようと覚悟した岬のことを思い出す。ここに灰を蒔いてくれと願った渚のことを思い出す。
提督は少し優柔不断なきらいがあるものの、優しく、分け隔てなく私たちに接してくれた。同僚はみな気のいい友人で、非番の前夜には、自然と酒と肴を持ち寄る関係になっていた。
それらを全部捨てろ?
いきなり北国へ連れてこられて、見知らぬ土地で暮らせ?
一体誰がそんな、首を縦に振るだろうか。このひとたちは私がはいわかりましたとでも言うと思っているのか?
71 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/03(木) 01:00:31.34 ID:1OeslLNk0
「一旦落ち着け。そして落ち着いたまま聞け。
……お前の受け入れは拒否された。艦籍は剥奪された。最早お前は無所属の艦娘だ」
「うそ」
驚きよりも断定の感情が前に出た。うそだ。そんなことあるはずがない。こいつは嘘を言っている!
「うそよ! うそだわ! 助けてくれたことには感謝するけど、だからといってそんなつまらないことを言う権利はない!」
「不知火」
「はい」
呼ばれて、薄紫色の髪の毛が、視界の端で揺れる。
三つのグラスになみなみの麦茶。それらをお盆の上に乗せ、不知火は遊戯に興じていた先ほどとまるで変わらない顔をしている。
「極秘任務に就かれましたね? そうして、失敗した……。いえ、否定も肯定も必要ありません。裏はとれています。それに、何より、不知火もそうでした」
かたん、ことん、こつん。グラスがベッドに備え付けのテーブルの上へと置かれる。
72 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/03(木) 01:01:25.08 ID:1OeslLNk0
「この世には失敗が許されない任務というものがあります。失敗はありえないのです。ありえない。わかりますか? もし失敗したのなら、『そもそも任務があったことさえ抹消される』。当然、参加した艦娘は、初めからいなかった」
「だからなに? だから私が? 信じられると思う?」
「高度に政治的な問題を含む作戦行動は、戦争や侵略とさして変わりがありません。不知火の場合、運河における敵対勢力の秘密裡の殲滅でした。秘密裡ということはつまり、我々だけが――日本だけが、その運河を利用できるようになる、ということです」
失敗してしまえば、私益行為が明るみに出る。任務など初めからなかったことにしてしまえば、全ては暗い水の底。
「お前の提督は、それでも最後に漢気を奮ってみせたようだ。俺たちに助けを求めたのはそいつ自身。そして、北海道にお前を逃がしてくれというのもそいつの依頼から来ている。放っておいた方が楽だろうに、な。
お前が拒むと拒まざるとにかかわらず、海軍にお前の居場所はもうない。別に追っ手が差し向けられたりはしないだろうが、それもお前が静かに暮らしている限りの話」
73 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/03(木) 01:02:01.41 ID:1OeslLNk0
息が詰まる。指先が震える。怪我は、だいぶ治ったというのに。
うそだ。うそに決まっている。
確かに私の人生は不幸ばかりだった。不幸続きの人生だった。不幸と地続きに道が伸びていた。だけど、それでも、こんな、うそだ、こんなのってうそだ!
「なら! それなら、不知火さんがこうしてCSARをできていることが不自然です! 抹消されたはずなのに! ほら、彼女自身が反証です!」
「不知火たちは空軍の所属です」
え?
「空挺第七特務小隊。実質的には、海軍に貸し出されるために設立された部隊だ」
「なんで、空軍が……」
「海軍にはCSARのノウハウはねぇからだよ、嬢ちゃん。海保だってそうだ。NPOの海難救助法人だってそうだ。交戦規定さえ存在しないやつらにゃ荷が重い。
俺たちは海軍にCSARの礎を作りにきた……っつーと話を盛ってんな。結局は空軍が海軍に恩を売るための取引の結果か」
74 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/03(木) 01:02:40.16 ID:1OeslLNk0
「ありえない。プライドの高い上層部が、そんなことを認めるはずがない」
ただでさえ最近は、深海棲艦という火急を要する存在の登場によって、予算の増加と発言権の強化を得ているというのに。
わざわざあいつらが既得権益を手放すとは思えなかった。
「国村さんのおかげだな」
ため息交じりに吐き出された名前は、私でさえも聞き及びのあるものだった。
「国村? 国村健臣一佐ですか?」
「知っているか?」
愚問だ。潜水艦娘という新たな艦種の設立を初めとし、とかく現場第一主義の、前線に出ている私たちからすれば神様のような存在。
同時にその辣腕によって追い落とされた者も多いらしい、とは風の噂で耳にしたことがある。そうでなければ権威主義の気が強い、旧態依然の上層部とは真っ向に渡り合えないのかもしれないが。
国村一佐であれば、なるほど確かに、CSARの導入を試みようとするのも道理であるような気がした。
75 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/03(木) 01:03:47.40 ID:1OeslLNk0
「いま後藤田提督が仰ったように、提督自身は空軍からの出向です。ポーラとグラーフは同盟国からの協力。大淀は海軍のお目付け役。不知火と大鷹は……生き残りです。他に行くあてもなかったもので。
山城さん、あなたは新しい土地で暮らすことができます。選択肢があるというのは大事なことです。不知火たちにはありませんでした。どうかお幸せに生きてください」
幸せに。
楽に、生きる。
うそだ。と喉元まででかかっているのに、さらに先へと向かってくれない。
空中を二度叩けばバーチャルウインドウが立ち上がるだろう。設定→端末情報→識別番号と階層を進めば、そこには私の鎮首府の基地コードの主番と枝番が記載されているはずだ。
私の鎮首府の主番は27、枝番は7。そうだ、それを確認するだけでいい。そうすればこのひとたちの言っていることがたちの悪い冗談で、私の帰るべき故郷は、友人たちは、きちんと脳裏に思い描いた通りの岬にいることが明らかになる。
だのに。
私はどうしてそれをしないのだ。
76 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/03(木) 01:04:56.67 ID:1OeslLNk0
――――――――――――
ここまで。
国村健臣は前作の主人公。今作はその2−3年後くらい? 出世街道まっしぐら。
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/03(木) 03:47:01.82 ID:VzT2CTQoo
おー国村さん出てきたか
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/03(木) 08:42:34.45 ID:bBYdjhmnO
乙
国村提督も元気そうで安心した
79 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 00:48:43.50 ID:a3VuJV360
結局私は自らの基地コードを確認することすらできなかった。それは私が彼らの言ったことを殆ど真実であると受け止めているということである。悔しいことに。
事実は理解とは無関係に存在している。自らに都合よく、甘やかしてくれる「理解」とは正反対に、やつは冷徹で手厳しい。こちらの意志も、希望も、お構いなしだ。
なんとか嗚咽が零れそうになるのを殺しつつ、「少し考えさせて」と、それだけを言うことができた。不知火が提督を向く。提督は全く不服そうに、「楽に生きるんじゃねぇのか」と漏らす。
あぁそうだ。先ほど彼が示してくれた道筋は、楽に生きることのできる平坦な人生なのだろう。きっとそこにだって小石は沢山あって、私はひとよりも少しばかり躓く回数が多いのかもしれないけれど、命の危険に晒されることはない。
80 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 00:50:09.40 ID:a3VuJV360
それは私が願っていた人生のはずだ。
いつか、私の――私たちの人生に分厚くかかった曇天にも穴が空いて、太陽が顔をだし、暖かい光が包みこんでくれる。そうでなければ酷いではないか。そうであってほしい。
もしこれがそうなのだとしたら、なんて意地悪な神様もいたものだ。考えうる限り不味く調理されたフルコース、その前菜が厭味ったらしくテーブルに置かれている。ナプキン代わりの押し付けがまさとともに。
だが、喰わねば餓えて死ぬのは明白だった。味の良しあしなど関係なく、それしか食物がないのならば、否応などない。生きるためには。
なにがしたいのだろう、私は。少し考えさせてと言ったが、そもそも何を考えることがあるというのか。なんであんなことを言ったのか。
ならば死ぬか? お前らの言いなりにはならないと叫んで。まさか。前にも決めたではないか、命を粗末にすることはしないと。自棄になるには、まだ早い。
81 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 00:51:22.11 ID:a3VuJV360
幸せに生きたかった。姉さまがいれば冷たい雨も熱い日差しもへいちゃらだった。どんな困難でも、二人ならば生きていけると思った。生きてきた。
孤独が肌を刺す。
こんな静寂には堪えられない。
だから、扉を銀髪の彼女が押し開けて、安物のスツールに座ったとき、私は正直ほっとさえした。喜びに涙さえ込み上げてきたのである。
「……」
グラーフの怜悧な瞳が活字を追っている。麻雀のデジタル理論についての本らしかった。
麻雀は苦手だ。まるで勝てないから。
「……」
「……」
互いに無言だった。このグラーフ、この部屋に何も言わずやってきて、おもむろに本を読みだし、微動だにしない。なんなのだ。
「……何か用があってきたんじゃあなくて?」
「そういうわけではない」
否定疑問文に否定で返されると一瞬混乱する。日本語特有の曖昧さ。
文法語法に厳格ときくドイツ語では、こんな意味の錯綜は起きないのだろうか? 聞いてみようとも思ったのだが、グラーフが案外真剣に麻雀の教本を読んでいるので、少し面喰ってしまう。
少なくとも賭け事に長じているようには見えないが。
82 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 00:52:48.90 ID:a3VuJV360
「……不知火と?」
「大淀と提督も」
こちらを無視しているわけではさそうで一安心。コミュ障というよりは必要のない会話をしない主義? それともこちらの出方を窺っている?
「大淀が強いんですってね」
「聞いたか。不知火からか? だろうな。大淀は始末に負えない。この国には『勝てば官軍』ということわざがあると聞いた。まさにそれだ」
「ドイツにはないんですか」
「『まずい芋は食卓に並ばない』とは言うな。私は賊軍にもまずい芋にもなりたくはない。してやられるのも、そろそろおさらばだ」
背もたれさえないスツールに、優雅に脚を組んで座るその姿は、一本の筋がきちんと通っている。奇跡のようなプロポーション。
ポーラの可愛らしさが天の与えたもうた御使いのものだとするならば、グラーフのそれは人間が作り上げた芸術品に近い。すらりとした腕に足、鼻筋、きめ細かいプラチナブロンド、小さな顔と薄い唇。
83 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 00:54:32.78 ID:a3VuJV360
「北海道で降りるのか?」
「……」
唐突にぶちこんできた。けれど本人にその自覚はないのか、教本から顔を上げさえしない。
「……そう言われました」
「あちらはまだ少し肌寒いからな。艦娘の感覚に慣れた今だと、大変かもしれないな」
「まだ艦娘です」
「そうか。そうだったな。解体作業はどこになるんだ? 神祇省直轄の神社だと、北海道神宮になるのか?」
「……わかりません」
いろいろな全てが。
「グラーフさんは何人くらい助けてきましたか? 不知火と大鷹が被救助者だという話は聞きました。私のように、艦娘を辞めて、新しい道へ歩んだコたちは、その……どれくらいいました? 彼女たちは元気でやれているんですか?」
「さぁ、すまんがわからないな。私の職務は人を助けることだ。救うことではない。命を拾って、返してやる。返された命をどう扱うかは範疇にない。人生までは拾ってやることはできん」
84 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 00:56:10.44 ID:a3VuJV360
「……そうですか」
「冷たいか?」
「いえ、そんな」
「気にするな。言われ慣れている。私に言わせれば、手当たり次第に抱え込む人間のほうが信用ならんよ。随分と後藤田の薫陶を受けてしまったようで、少々困りものだが」
「後藤田提督の?」
「ふふふっ。あぁ、いや、なに、すまん。忘れてくれ。なんとも恥ずかしいな」
「?」
グラーフはキャップの目庇を深く傾けて、目を隠す。頬が赤らんでいるように見えた。
ぱたん。本が彼女の手の中で閉じられる。
「ヒトに戻ることに不安が?」
「……」
それは恐らく間違いだった。私は私のことさえわからない前後不覚に陥っているけれど、それでも、胸中渦巻く黒い靄の源が、言ってしまえば単なる転職に起因するものとは到底思えなかったのだ。
楽に生きたいと、後藤田提督に言ったのは嘘ではない。ただ、こんなふうに、人生を終わりに向かわせるのもまた違う。
85 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 00:58:15.51 ID:a3VuJV360
グラーフはこちらの無言をどうとったのか、ふ、と笑う。
「わからないことに悩むのは有意義とは言い難い。そうじゃないか? 非生産的だな。我々に備わった論理的思考力をどぶに捨てているようなものだろう。
ただ、なあなあの論理思考ではだめだ。全力で想定する。ありとあらゆる可能性を考えた上で、最も有りうべき未来にベットする。的中率六割なら上出来だろう」
適当に棒を倒すよりもいいんだから、とグラーフ。
「四割が来たら?」
不幸なるこの身では、答えなどあらかじめわかりきっているようなものだ。
「運が悪かったなと笑えばいいさ」
人事を尽くして天命を待て、ということか。
……なるほど。
なんとなく、なんとなくだが、わかった気がする。
言語化にまでは至らないほどの仄小さなあかりが、いま、確かに、灯った。
86 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 01:00:17.75 ID:a3VuJV360
「……ん」
勢いよくグラーフが立ち上がった。膝の上から本が床に落ちるが、彼女はそんなことお構いなし、一目散に駆ける。
「え、なっ! どうしたんですか!」
「召集だ」
私のところには何も――いや、私は最早無所属、どこの通信網からも漏れている。きっと母艦「しおさい」に構築された基地ネットワークで、彼女たちにしか届いていない。
グラーフの発した言葉は端的で、ゆえに全貌の把握が容易だというのはなんとも不思議な話である。時間的猶予がないこと。彼女たちの任務。
即ち、CSAR。
「待ってください」
「なんだ」
息を吸う。吐く。
心は平静だ。驚くほどに、澄み切っている。
「私も出ます。出させてください」
87 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/07(月) 01:01:01.12 ID:a3VuJV360
――――――――――
ここまで
88 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/07(月) 10:13:01.78 ID:5B328rK6O
おつ
いいね
89 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2019/10/07(月) 22:56:33.24 ID:JUteKwEno
お疲れ様です
90 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/12(土) 09:43:00.70 ID:L3t7G6Qz0
「だめだ」
後藤田提督は即答した。逡巡さえするそぶりなく――まるで私がそう言いだすことを知っていたかのような。
グラーフ、彼女はわかっていた? だから何も言わずに私を提督のもとへと連れてきた?
なぜ、どうしてと問い質したかった。けれど自らの愚行を自制できるくらいの良識は、私にだってある。刻一刻を争うCSARは、勝利条件を変えた戦争の一形態でしかない。貴重な時間を奪ってはならない。
甲板には出撃の準備を済ませた五人が並んでいる。あとは彼の号令ひとつで、彼女たちは海上へと躍り出るだろう。
「だぁから嫌な予感はしてたんだ。クソ。
大淀ォ!」
「はい」
「現場の指揮はてめぇに一任する。海図は共有済み、ただし仔細は不明。敵戦力については救助対象の小隊、その視覚情報があるものの、判然としねぇ」
91 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/12(土) 09:44:54.44 ID:L3t7G6Qz0
「人命最優先で?」
「当たり前だ。掃討なんざ海の奴らにやらせとけ。捜索範囲は広げていい。敵のあいだを縫ってでも走れ」
「ラジャ」
「救助対象の作戦行動は機密保持の観点から教えられねぇときた。どうにもきなくせぇが、バニシング・ポイントからの足取りが掴めねぇのがまた厄介だ。注意してかかれ。生きて帰ってこい」
「ロストバゲージは」
「無視しろ。どうせ大した荷物なんか持ってねぇ」
「行動限界設定しますか?」
「三時間……いや、二時間半。深海棲艦の密度によって適宜修正を行う。全員時計をあわせろ。ヒトロクニィハチ」
「ヒトロクニィハチ! 合わせました!」
「よし。可及的速やかに遂行しろ。作戦開始」
「ラジャ!」
我先にと五人が海へと飛び出した。慌てることなく波の上に乗り、白い波濤をかき分けながら、見る見るうちに波のまにまに姿を消していく。
92 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/12(土) 09:45:43.67 ID:L3t7G6Qz0
後藤田提督は五人が視界から消えても、水平線の向こうをしばらく見やっていた。強く吹き付け、髪を――それ以上に心をかき乱す海風に、帽子を持っていかれまいと軽く押さえている。
私も彼の視線を追う。とっくに消えてしまった五人の姿を、けれど彼にはいまだに見えているのだろうと想像できた。確かな絆が確かにあった。
「それで」
感傷などまるでなかったふうにこちらを向く。
「なんだって? 海に出たい?」
「……はい」
「一応確認しておくが、それはつまり、てめぇが俺たちと一緒に、肩を並べて、CSARの任務に携わりたいと――そう言っているわけか?」
「はい」
提督は私の言葉を受けてくつくつと笑った。勘弁してくれと言っているように見えた。
壁を這う配管の束に腰かけ、ぎらり、傷だらけの顔で私を値踏みしている。
「だめだな」
「なんでですか」
問いながらも、理由はいくらでも考えられた。
93 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/12(土) 09:46:09.33 ID:L3t7G6Qz0
知らない人間と歩調を合わせることは難しい。隊列を乱すことはできない。況や戦場ではなおさらだろう。無論、初対面の人間とでも滞りなく作戦を遂行する能力が、兵隊には必要だ。ただそれは互いの中に共通了解や行動規則が存在してのことである。
そして私は所詮厄介者で、海軍から艦籍を剥奪されたつまはじき。不知火や大鷹もそうだったというが、私には少なくとも道が、これから生きる術が用意されている。わざわざ艦娘を続ける必要は、表面上は、ない。OKを出す理由は薄い。
身体面での不安もあった。立って歩けるとはいっても負傷兵である。治ったばかり、という表現を使うにはあまりにもダメージが残りすぎている。能力差は歴然としているに違いない。
ショックはなかった。それはそうだろう、とどこか冷静な自分がいるというのが本音である。
あまりに急な申し出がそもそも受け入れられるはずないのだ。即座に海へ救助へと向かわなければならないときに、私の妄言など異物以下。逆に二つ返事をもらえたほうが困惑してしまう。
94 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/12(土) 09:46:54.69 ID:L3t7G6Qz0
が、だからこそ、交渉の余地がそこにはある。だめなのは当然だ。ならば「どうすれば」私はいいのか。
相手の口から答えを言わせるのは基本である。
しかし、帰ってきた答えは、予想していたいずれとも異なっていた。
「俺は今日を生きようとしねぇやつを隊には組み込まないようにしている」
「今日?」
「山城、てめぇ、死ぬつもりじゃあるめぇな」
「……」
少考してのち、提督の疑問はもっともだと思った。同時に彼の内に秘めた優しさが垣間見られる。それは矜持でもある。彼らの任務は人を助けることで、そこを自殺の場に使われたとなれば、憤慨もするだろう。
あるいは私が初めてではないのかもしれない。それは何ともあり得る話だった。事実として大鷹と不知火が救助後に籍を置いているのだし、全てを失い自棄になって、せめて最期は何かに一矢報いてやろうと、海へ駆け出した艦娘もいたのかも。
「ははっ」
私は笑った。意識的に、自らの意志で、力を籠めて、笑ってやった。
そんな馬鹿なことを言わないでくださいよと。
95 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/12(土) 09:47:35.31 ID:L3t7G6Qz0
「命を粗末にはしません。沈んでいった姉さまたちに申し訳が立ちませんから」
「ならどうしてそんなことを言いだす。陸にあがれると言ったろう。新天地で新しい職を斡旋してやるとも。不満か。なにが不満だ」
「苦しく死ぬか、楽に生きるか」
提督が言った言葉を私は反芻してみる。あぁ、やはりそうだ。そうに違いない。嘗て、私以前に、私みたいなことを言いだした誰かがいたのだ。それはもしかしたら不知火や大鷹であったかもしれない。
でなければ、「苦しく死ぬ」だなんて選択肢は出てこないだろう。陸にあがるのが「楽に生きる」ことだとすれば、じゃあ、彼の言う「苦しく死ぬ」とはどんな人生のことを指している?
……軍に、戦いの中に身を置くことだ。復讐や、恨み憎しみや、そういった嫌な感情の中に身を沈めて生きることだ。
96 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/12(土) 09:50:03.79 ID:L3t7G6Qz0
「だぁから嫌な予感はしてたんだよ。クソ」
吐き捨てるように、本日二度目の言葉。
「てめぇのことも気にせずに、『仲間を助けて』だなんて言うやつは、どいつもこいつもそんなことを言いやがる」
「?」
なんのことだ?
「どちらにせよ、繰り返しになるが、俺は今日を生きようとしねぇやつを隊には組み込まない。わかるか」
「……理解した、とは、言い難いわね」
「生きて帰ってこいっつーな話だ」
後藤田提督は胸ポケットから煙草の箱を取り出した。くしゃくしゃに潰れた、その最後に残った一本を、大事そうに口に咥えて火をつける。
大きく吸い、紫煙とともに深々とした溜息。
「こんなやくざな商売だ。勿論大義はある。もしかしたら、深海棲艦相手にドンパチやるよりも世間様からは称賛されるかもしれねぇな。だが、その大義やら称賛に呑まれて死んだやつらを俺は何人も見てきた。
死ぬくらいなら助けるな。生きてこそだ。過去の償いだとか、理想とする未来像だとか、そのために死ににいくやつを、俺は海には出さん」
97 :
◆yufVJNsZ3s
[saga]:2019/10/12(土) 09:52:05.16 ID:L3t7G6Qz0
「救助部隊なのに?」
「だからこそだよ、嬢ちゃん。俺たちゃ人を助ける。今日も、明日も、明後日も。今日死ぬってことは、明日以降の要救助者を見殺しにするっつーことだ。明日のために生きるってことは、今日を疎かにするっつーことだ。違うか」
間違っているか、否か。提督は私にそう問うたけれど、正誤を判断できるほどには私は賢くはなかった。人として立派でもなかった。
ただ、彼が単なる思い付きでそんな言葉を口にしているのではないであろうことは、考えるまでもなく明白だ。きっとそう言えるまでに、様々な葛藤や呻吟があったのだろう――だなんて感想は上から目線にすぎるかもしれない。
「不知火も大鷹も俺たちが助けた。それは聞いてるな? だから、嬢ちゃん、てめぇを仲間にすることに問題があるわけじゃねぇ。制度的には。こちとら国村一佐の肝入りさ、大抵のことは現場裁量でお目こぼしされている。
だから、問題があるとしたら、それはてめぇの問題なのさ。なぜ海に出る」
192.30 KB
Speed:0.1
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
名前:
E-mail
(省略可)
:
書き込み後にスレをトップに移動しません
特殊変換を無効
本文を赤くします
本文を蒼くします
本文をピンクにします
本文を緑にします
本文を紫にします
256ビットSSL暗号化送信っぽいです
最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!
(http://fsmから始まる
ひらめアップローダ
からの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)
スポンサードリンク
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)