【安価】男「異世界転生しちゃった」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 11:39:31.46 ID:f+nH/MKh0


「ちょっと試してみるか」


俺はその場から立ち上がり、軽く準備運動を始める。
最近訛ってたから念入りにな。


「よし!」





行動内容。行動によって起きた事柄。行動によって判明した能力。
安価下2
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 11:41:00.56 ID:SFZNm4Bi0
適当に進むと街道を発見
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 11:54:10.36 ID:+rxBvqI9O
ゴブリンらしきモンスターを発見。
まだ気付かれてはいないようだ。
しかし見た感じ話が通じそうではないので静かに立ち去る。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 12:27:14.61 ID:f+nH/MKh0


何かを始めようとした時、視界の端にゴブリンらしきモンスターを発見する。


「う、うわ…やばっ……!」


俺は出来るだけ声を殺し、音を立てずに背の高い草にうつ伏せになる。どうやらまだ気付かれてはいないようだ。
漫画やゲームではモンスターが喋るのはそう珍しくない。知能が高いモンスターは喋れるという設定もよく見る。

しかし、あいつは見た感じ全く話が通じそうにない。まだ自分の事もよく分かってないのに、あんな得体の知れないやつと戦えるか。
ここは、静かに逃げよう。


「……そーっとな……そーっと……」


動く度に草が揺れ、その度俺の鼓動が早くなる。
頼むから気付かないでくれよ。とりあえず近くの木の後ろまで行ければ。


「ギギ……ッ!!」


「やぁっ!」


女の声がした。俺は少し顔を上げてゴブリンの姿を確認する。ゴブリンは女の前で倒れている。
死んでる?あの女がやったのか?
すると女は腰から短刀を抜き、ゴブリンの前に蹲って何かをしている。素材でも取っているのか。

この世界の事はまだわからないし、迂闊に人も信用出来ない。
話を聞きたいが、どうするか。


安価下
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 12:28:33.95 ID:/lU4AnRW0
愛想よく話しかけてみよう
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 12:54:19.49 ID:f+nH/MKh0

(怪しまれないように、自然と、愛想よく話しかけよう)


俺は勢いよく立ち上がったせいか、大きな音を立ててしまう。
流石に女も気付き、こちらを振り向く。


「や、やあ。こんな所で何をしてるの?」


「見ての通りだけど」


「あ、そ、そうだよね!」


やべーミスったか。とりあえず何か言わないと。


「それ、君がやったの?凄いね」


「……」


やべぇ、すげぇ怪しまれてる。


「…ふん。これくらい楽勝よ。何?あんた、冒険者?」


(冒険者!その職業があるって事はギルドがあるかな?)


一般的にギルドとは俺の知っている限り2種類あって、ライセンス登録をし、討伐、採取、護衛…etc。様々な依頼を受けたりしてランクを上げる冒険者ギルド。
もう1つは同じ志を持った仲間が集い、組織を立ちあげるギルド。
冒険者という職業があるなら、前者の可能性が高いな。


「そう、そうなんだよ。ちょっと道に迷っちゃって……」


「ふーん……それにしては変な格好ね。装備も無さそうだし……ホントに冒険者?」


や、やっべぇぇぇ!そういや忘れてたけど上下スウェットだ俺!
そりゃそうだわ、こんな冒険者いるわけねぇわ。やべぇじゃん、俺超怪しいじゃん。


「これには少々事情があってね……」


「……あっそ。で、何か用なの」



安価下
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 12:55:14.99 ID:68siRF640
とりあえず近くの町まで案内してくれないかな?
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 13:09:50.53 ID:f+nH/MKh0


「さっき言った様に、道に迷っちゃって……良かったら近くの町まで案内してくれないかな?」


「いやよ」


ほぼ即答だった。こんな右も左もわからない世界で、モンスターの出るフィールドに居るのはまずい。


「そこを何とか……お願いしますっ!」


両手を合わせて懇願する。


「いやよ。私に何の得もないじゃない」


「そ、そんな……」


取り付く島もないとはこの事か。案内が駄目なら道を聞くか、流石にそれは良いよな?


「じゃあ……近くに町はあるかな?道だけでも教えてくれると助かるんだけど」


「……あっち。しばらく歩くと街道があるわ。右はリネル村、左はメリルの町よ」


「あ、ありがとう!」


「別に。こっちもやる事終わったし、消えるわ」


「あ、うん」


女は素早い動きで指した街道とは逆に走っていく。だが、収穫はあった。


「とりあえずは街道だよな……どっち行くか」



安価下
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 13:12:09.89 ID:eKZKUJLf0
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 13:30:03.47 ID:f+nH/MKh0


左のメリルの町に行こう。
村という響きは長閑で親切な人が多いと想像するが、今は情報の多そうな町にしよう。

道中モンスターに出くわすことも無く、暫く歩くと街道を見つけた。
俺は女に言われた通り、街道を左に進んでいく。



〜メリルの町



「おお……すっげぇ!」


町に入るや否や、俺は感動する。俺の居た世界程の高さはないが、見たことの無い建物、綺麗な街並み、楽しそうに話す町民、武器を背負う冒険者と思われる者達。
様々な店が立ち並び、何処からか香ばしい匂いが俺の鼻を刺激する。
同時に安心したからか、腹が鳴る。

「あ……そういや死のうとしたから何も食べてなかったんだっけ……どうしよ」



安価下
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 13:38:07.56 ID:SFZNm4Bi0
酒場らしき場所に向かい、店主に相談
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 13:56:01.79 ID:f+nH/MKh0


やはりここは酒場だろう。トラクエなら仲間を見つけ、ロマサカなら町を動かすアイテムを教えてくれる。とにかく重要な場所だ。

酒場を探しながら町を歩いていて、分かったことが二つある。
まずは俺の服装だ。周りの町民から奇異の目を向けられ、恥ずかしい想いをした事。
そしてもう一つ。文字が全くわからない。看板には何語?ってレベルの文字が描かれ、俺の世界に存在した文字ではない。
でも、言葉は通じたな。よくわからん。

町を練り歩いていると、前の建物から昼間から泥酔した男性が仲間に担がれて出てきた。ここが酒場だな。



〜酒場


「へぇ……!」


居酒屋とはまた違う、大衆居酒屋とでも言うのか。仕切りは一切無く、木の丸テーブルと、その周りに木の丸椅子が室内に敷き詰められ、正面には店主と思わしき禿頭のおっさんがグラスを拭いている。
奥には階段があり、あそこは店主の寝床だろう。

俺はとりあえず店主の元へと移動する。その際も周りから変な奴が来たなって感じの目で見られた。


「あのー」


「おう、いらっしゃい。変わった格好してんな兄ちゃん」


「そうですよね、ははは……」


「で、なんにするんだ?」


「あ、いや、実は……」


「ん?」



相談内容
安価下
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 14:02:27.73 ID:eKZKUJLf0
とりあえず可愛い店員さんにお酌を・・・
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 14:25:11.36 ID:f+nH/MKh0


「あ、なんでもないです。お酒をひとつ貰えますか」


「だから何にすんだ?」


「えっと……火酒で」


「火酒か、ちょっと待ってな」


たくさんの異世界転生物を読んだ俺に死角はない。よく使われているであろう異世界の飲み物は火酒とエールだ。
まさか本当にあるとは思ってなかったが、言ってみるもんだ。


「ほらよ、代金は後払いだ」


「ありがとうございます。それと……可愛い女の子にお酌とかって……そういうサービスはあります?」


「なんだ兄ちゃん、女に酌させてぇのか」


「まぁ、はい」


「いいぜ。おーい!エルフ!ちょっとこっちきて兄ちゃんに酌してやれ!」


店主が大声で叫ぶもんだから周囲の目が俺に集まる。凄い恥ずかしい、やめてくれ店主よ。
すぐにエルフという可愛い女の子が近付いてきて、席に案内される。
お猪口を持ち、酒を注がれながらエルフという女の子を見る。
肌が黒いから、ダークエルフかな?それに…

「……耳、長いんだな」


「え?」


やばい、口に出していたか。ただでさえ変な目で見られてるんだ、目立たないようにしないと。


「いや、エルフって耳長いなーって」


「……」


沈黙が流れる。気まずい。変な事言ってしまったのか俺は。


「ぷっ…あはは!何言ってんすかお客さん!当たり前じゃないっすかー!」


「そ、そうだよね!あはは!」


「あはは!変なの!それじゃ私はこれで。ごゆっくりー!」


「あ、うん。ありがとう」


エルフが席から離れていき、俺は酒を飲む。うん、これは焼酎だな。
ただ酒を飲むのは良いが、一つ問題がある。
金が無い。



安価下
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 14:27:38.76 ID:/lU4AnRW0
この酒場に住み込みで働かせてもらう
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 14:51:21.91 ID:f+nH/MKh0


そうだ、住み込みで働いてしまえば良い。
そうすれば金も貯まるし、この服装ともおさらば出来る。
うんうん良いな、そうしよう。
俺は火酒を飲み終わると席を立ち、店主の元へと向かう。


「あの、ちょっと良いですか」


「ん?どうしたんだ?」


「実はさっきの続きなんですけど……住み込みで、ここで働かせてくれませんか?」


「はぁ?何言ってんだお前」


「実は、お金を持ってなくて……」


「何ぃ?持ってねぇくせに酒飲んでんのか!いい度胸してんな兄ちゃん!」


「は、ははは……」


上手く行きそうな流れだな。正直に話したのが良かったのか?


「でも駄目だな。金がねぇならさっさと出ていけ、火酒の1杯くらいくれてやるよ。だが、二度と来んなよ。てめぇの面は覚えたからな」


「あ……」


「さっさと行け!もし次来たら憲兵にしょっぴかせるからな!!」


「は、はい…!」


俺は逃げる様にして酒場を出る。周りからは笑い声が聞こえた、恥ずかしい。外に出ると陽は落ちて、すっかり夜になっていた。
もう酒場には行けない。


「何か……違うなぁ……」


空を見上げて俺は呟く。
異世界転生ってもっとこう、転生した俺がモンスターをばったばった倒して、自然と仲間が集まって、強大な敵に挑むもんだと思ってたけど、俺の異世界転生はそんなんじゃないのか。

そういえば、あの時は試せなかったけど、俺って何か能力はあるのかな?それとも、本当に無力な存在なのか。駄目だ、悪い方に考えるな。
さて、夜だけど今日の寝泊まりはどうしよう。火酒だけじゃ腹も満たされない。困ったな。



安価下
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 15:02:12.30 ID:pRyJXGyDO
路地裏で野宿
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 15:26:09.21 ID:f+nH/MKh0


野宿、かな。人は減ったとはいえ、表で寝るのは些か気が引ける。
路地裏に行こう、ここなら人目につかない。
近くの路地に入っていくと、建物と建物の間に良い感じのすぺーすがあった。


「はぁ……」


溜息が出る。無理もない、こんなはずじゃなかったんだから。
メリルの町は路地裏も綺麗なのか、横になっても問題なさそうだ。
ちょっと硬いけど、これくらいなら寝れるだろう。


「あんた、何してんのよ」


「え!?」


突然声を掛けられ、俺はあらぬ声を上げる。まさかこんな所に人が居るなんて思いもしなかったからだ。
声を掛けたのは昼間の女。
あの時もそうだが、上半身を濃い茶色のフード付き外套に身を包み、下は短パン、顔は良く見えない。


「依頼から帰ってきたらあんたがいたのよ。何するのかと思ったら路地裏に入ってくし、寝ようとするし……何してんの」


「あぁ〜……」


見られてたのか、恥ずかしいな。


「お金が無くてね、仕方なく野宿をしてるんだ」


「あんた、やっぱり冒険者じゃなかったのね。何者なの?見たことも無い格好だし」


「……突拍子も無い話だけど、聞いてみる?」


「聞くわ。宿でね」


「え?」


今なんて言った?宿?
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 15:45:52.98 ID:f+nH/MKh0


「何て顔してんのよ、宿で聞くって言っただけじゃない」


変な顔してたようだが、今はそんな事気にしてられない。


「いいの?宿」


「良いわよ別に。私があんたの事、気になるだけだし」


良かった。この女のおかげで今日は野宿せずに済みそうだ。
俺は宿に歩き出した女の後に付いて行く。



〜宿屋


「……あの」


「何よ?」


「え、同じ部屋?良いの?色んな意味で、いいの?」


「別に良いわよ。か二部屋借りるの勿体ないでしょ」


違うわい!同じ部屋に男女が2人、何も起こらないはずもなく。
ドキドキしてきた!


「そっか。そうだね」


「変なの」


そう言うと女は外套を脱ぐ。やっと女の顔が見れるな。


「え」


俺はその姿を見て、また変な声が出る。


「……?何よ」


女は端正な顔立ちで、頭からは兎の耳のような物が垂れていた。
外套の下は緑のチューブトップで、それなりに胸はあるみたいだ。
珍しいな、これはなんて言う種族なんだろう。


「いや、珍しいなって思って」


「そう?ま、何でもいいけど。話聞かせてよ」


俺はベットの脇に座っていて、女は隣に座る。
え、なにこれ?マジ?良い匂いするんですけど!


「ほら、早く」


肘でつつかれる。
俺は事の顛末を女に説明した。自殺しようとした事、転生した事、無能かもしれないと言う事。全てを聞き終えた女は、少し悩む素振りをする。


「どう?信じられそう?」


「……まぁ、無理な話よね。でも……」


「でも?」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 16:06:00.27 ID:f+nH/MKh0

「あんたが嘘を言ってるようにも見えなかった。これでも嘘を見抜くのは得意なの。だから多分あんたの話は本当なのね」


まさかこんなにあっさりと信じて貰えるとは思ってなかったぞ。
転生した俺に対するご都合展開かな?


「明日からはどうするの?お金、無いんでしょ?」


「それが今の悩みの種だね、戦えればギルドの依頼とか受けたいけど……」


「採取依頼とかは?時間はかかるけど、あんたでも出来るんじゃない?」


確かに、と声が漏れた。集めるだけなら俺でも出来るだろう。
そうか、採取依頼か。良いかもしれない。


「ありがとう。参考にするよ」


「私も面白い話聞けたしね、別に」


女はベットから離れると持ってきた鞄から櫛を取り出して、桃色の髪を梳かしている。寝る前の習慣かな?
そんな事を思っていると、また腹が大きな音を立てる。


「……そういえば、あんた何も食べてなかったんだっけ?」


「うん……こんな事頼むのもアレなんだけど、食べ物ってある……?」


「ちょっと待ちなさい…………ほら、干し肉だけど」


女は鞄から、紙で包まれた干し肉をくれた。
優しさに涙が出そうになったが、我慢する。
俺は包を剥がし、干し肉食べる。滅茶苦茶美味い。


「ありがとう。ほんとに…」


「良いわよ。私はさきに寝るからね、食べたらあんたも寝なさいよ。あと変な事したら[ピーーー]から」


「怖ァ…」


女は隣のベットに潜ると、就寝する。
俺も干し肉を食べ終わり、満腹になると明日の事を考える。
ちゃんと、生きていけるかな。というか浮かれて忘れてたけど、死のうとしたのに生きようとするなんて変な話だな。

まぁ転生なんてしたら死んだも同然か。切り替え切り替え。
ベットに入り、明日に備えてしっかりと寝よう。
おほ〜ベット気持ちいいぃ〜。

22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 16:12:11.19 ID:f+nH/MKh0

翌朝、女に冒険者ギルドに案内してもらった。女は用事があるらしく、そこで別れる事に。
いつか恩返ししよう。俺はそう心に刻んだ。
とりあえず、ギルドで手続きをしてしまおう。



〜冒険者ギルド


ライセンスの発行は手こずったが、何とか取れた。
文字がわからないから、口頭で受付嬢に伝えて書いてもらったのだ。さぁこれで俺も冒険者だ。ちょっとワクワクすっぞ。

まずは依頼だ、施設内の壁に依頼書が乱雑に、大量に貼ってある。
やりたい依頼があったら依頼書を取り、受付嬢に渡すというシステムだ。
さて、どれをやろう。




安価下
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 16:18:25.59 ID:eKZKUJLf0
ゴブリンにさらわれた少女の救出
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 17:10:53.91 ID:f+nH/MKh0

採取依頼を探している時、ある依頼書に目が留まる。
それは、ゴブリンに攫われた少女の救出依頼だ。俺はふと、周りの冒険者を見る。

こんなに居るのに、人命が掛かってるというのに、何故誰も依頼を受けないんだ?
俺は元の世界に居る時の事を思い出す。俺が仕事を終え、帰り道を歩いてる時に、目の前の大通りで事故が起きた。

横たわる女性の傍に男性が2人とガードレールに激突した車。恐らく女性が轢かれたんだろうなってすぐ分かった。
だが、それだけ。可哀想だなって思うだけで、俺も、数十人の野次馬も、可哀想だなって思うだけなんだ。

その時は誰かが助けているし、大丈夫だろうとも思った。仮に誰も女性に近寄って、助けて無かったとしても、俺は見捨てるだろう。
俺はこの依頼書を見て、その時の事を何故か思い出してしまった。

俺に出来るのは採取依頼くらいだろう。だけどだ、見知らぬ少女だろうが人の命が掛かってるんだ。
今度こそ俺は、助けを求める声を、見捨てない。
俺は依頼書を剥がし、受付嬢の元へ行く。


「ありがとうございます。救出依頼ですね。少々お待ちください」


受付嬢は何かを書類に書き終えると、俺にバッチを渡してくる。


「これは?」


「救出依頼中という証です。依頼が完了したらお返し下さい」


了承すると、地図を渡される。


「これは……リンネ村の先の森かな?」


メリルの町と街道で繋がるリンネ村。その先には森があり、誘拐先と思われる所に印がある。


「あまり時間はありません。お願いします、男さん」


後ろから受付嬢の声が聞こえ、振り向くと深々と俺に頭を下げていた。そうか、受付嬢も気にしてたんだ。でも、期待に応えられるかな。安心と不安が同時に来る。

弱気になるな。戦おうと思えば戦えるんだ。気合い入れろよ、俺。
パンパンと頬を叩き、俺はメリルの町を出る。

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 17:16:23.52 ID:f+nH/MKh0
間違えた、リネル村です
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 17:42:27.93 ID:f+nH/MKh0

〜リネル村


歩く事数時間、特に何も無くリネル村に着いた。
想像通り長閑そうな村で、左には大きな畑が沢山ある。
右には民家が建っている。あまり多くはないが。


「そこな御方……もしや冒険者様ですか?」


「え?はい、そうですけど」


ライセンスが後押ししてるのか、俺は堂々と冒険者だと言い張れる。だが、どうして俺が冒険者ってわかったんだろう?
お爺さんが、杖をついて近付いて来た。


「おおお…貴方様が……ありがとうございます。どうか……どうか少女を……お願い致します……」


「まさか……」


俺はバッチを見た。なるほどな、これのおかげで俺が冒険者ってわかったんだな。


「必ず、助け出してきます。安心して待っていて下さい」


「おおお……冒険者様も、どうかお気を付けて……」


俺は村の奥の、もう1つの入口から森へと入っていく。
まず俺は石を何個か広い、適当な大きさの木の枝に掴まり、体重で折る。


「初期の有者ですらもっと良いもん持ってるよなぁ……」


頼りないが、投石用の石数個と木の棒を手に入れた。
俺は地図を取り出し、現在地を大体把握する。
今の位置から南西、北東、東の3箇所に印がある。
どうしようか。



安価下
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 17:53:04.83 ID:YQ9FwTJA0
3箇所の印について聞いてみる
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 18:19:06.69 ID:f+nH/MKh0

一旦戻って印の所に心当たりがないか聞いてみよう。
俺は踵を返し、リネル村へと戻る。
戻ると、近くに中年の男性が居る。この人に聞いてみよう。


「すみません、ちょっと聞きたいんですけど」


「ん?なんだい、冒険者さん」


俺は地図を男性に見せる。男性はほうほうと唸ると、すぐに地図を返してくれた。


「冒険者さん、その地図の印は違うねぇ。今奴らの住処はもっと南東にあって、廃村に居るはずだよ」


「え?」


「古かったんじゃないのかい?その辺りは他の冒険者さんが結構前に潰したはずだよ」


「あ、そうだったんですね。情報ありがとうございます」


危なかった。何も知らないでこの3箇所を回ってたら無駄骨も良い所。聞いてみてよかった、今の俺は冴えてるな。

気を取り直して、南東へと向かう。奥へと進んでいくと、なあの男性の言う通りゴブリンらしき足跡があった。
俺は緊張して、何度も深呼吸をする。すると、廃村らしき所が遠目に見えてきた。

草陰に隠れ、廃村が良く見える位置に移動する。
ゴブリン共が荒らしたせいなのか、元々なのか、荒れに荒れている。とてもじゃないが住める様な状態じゃない。ボロボロの家が沢山あるから、それなりに大きい村だったみたいだな。

俺がする事は──



安価、実行出来そうなものは全部実行します
安価下3まで
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 18:24:19.52 ID:h6e4p1RtO
ステルスミッション(可能な限り戦闘を避けて、現状を把握)
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 18:43:19.07 ID:OTTnyd4zO
もっとまともな武器がないか屋内を探してみる
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 18:48:16.54 ID:eKZKUJLf0
少女の様子を最優先する
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 18:49:26.55 ID:lsnCYWk9O
ゴブリンに見つからないように少女を捜索。ついでに目眩ましに使えそうな物や縄など、役に立ちそうな物を見つけたら確保する。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 19:27:18.23 ID:f+nH/MKh0
undefined
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 19:29:14.01 ID:f+nH/MKh0
なんだこれ、書き直しか
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 19:44:11.27 ID:OTTnyd4zO
1レスに対して文字量が多すぎるとそうなる(らしい)よ
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 19:46:09.28 ID:f+nH/MKh0

可能な限り戦闘は避けていこう。今の俺じゃゴブリンの相手は辛過ぎる。
とりあえず草陰から一番近い廃家の裏に着くと、裏口の扉があった。ドアノブを捻ると扉はカンタンに空いた。とりあえず中に潜入完了。

静かに割れた窓から村の中心部を覗き見る。見えるだけでもゴブリンは8匹、他のも考えると是非とも相手にしたくない数だ。

窓から離れ、音を立てずに今居る廃家の中を物色する。ダンボールとエロ本があれば無敵なんだがな。
冗談はさて置き、少女の安否が最優先だが、もしもの時に備えて物色する事に損は無いだろう。

使える物は何でも使わなければ、俺みたいなのは生き残れない。
先ずは冷蔵庫だ、中を開けるが当然腐っていて異臭を放っている。


「ヴォエッ……クッッサ」


あまりの異臭に吐きそうになるが、我慢しろ。我慢だ。
鼻をつまみ、使えそうな物はあるか眺めていると、中身の見えない瓶を発見した。これ、中身なんだろう?

普通に触りたくないが、今はそんな事言っている場合ではない。
瓶を触ると、ネチョッとしていてベタベタだ。
気持ち悪いぃぃ、これも我慢だ。

お次は台所。ここには期待を寄せてしまうよね、台所だし。
異世界転生補正で何かあってくれると良いが。
戸や引き出しを開けるが、何も出てこない。慈悲は無かったようだ。

入っきた裏口から外に出て、廃家に張り付く。
TPSばりの張り付きで覗き込みに挑戦するが、ゲームみたいには行かないね。普通に頭だけで覗いた。

観察していてわかった事が二つ。

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 19:57:34.58 ID:f+nH/MKh0

まず表のゴブリンで武器を持っているのは3匹。短剣持ち2匹と小弓持ちだ。あいつらから武器を奪えれば俺の戦闘力は跳ね上がるだろうが、奪うのは難しい。というか無理、多すぎる。

そしてもう一つ。
他のゴブリンは焚き火を囲んで座り、何かの動物らしき残骸を貪ったり、寝ていたりする中。小弓のゴブリンだけはここから一番遠い廃家から離れない。

何かを守っているみたいに、な。恐らく少女はあそこの廃家に居る。ただ焦るな、他の所に居る可能性もある。
奥の廃家に行くには間違いなくゴブリン共の注意を逸らす必要がある。

注意を引いてる間に廃家の裏から裏へと回り、あそこまで行くしかない。ただ、どうやって注意を引くか……






安価下


>>35 なるほど、ありがとう
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/05(月) 20:00:16.09 ID:3WgEmMqN0
石を投げる
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/05(月) 20:34:29.38 ID:f+nH/MKh0

「あ、そうだ」


俺はスウェットのポケットから石を1つ手に取る。当たると痛そうな石、こいつを使おう。
狙うは右の廃家で良いだろう。失敗しないぞ。

「……ふぅ」


石を投げる事はつまり、存在を知らせる事に近い。見つからなければ何事もないが、警戒心が強まってしまう。
俺は何度も、心の中で同じ言葉を反芻する。
俺なら出来る、俺は転生者……と。
自己暗示に近いが、小さいが少しの自信となる。

「……よっ…と」


俺は投げた、投げてやった。さぁもう退けないぞ。やるしかないぞ。
石は派手な音を立て、居眠りしていたゴブリンも起こす。
ゴブリン共は音の出処に注意を払い始め、俺の方を見るゴブリンは居ない。

すかさず俺はゴブリン共との間に廃家を置くように転々と移動していき、目的の廃家に到着する。
先程と同様にこの廃家にも裏口があり、そこから侵入する。


「ギギッ!?」


「ちょ……!」


依頼された少女は居た。ついでにゴブリン1匹。こいつは音に気が付かなかったのか!
仲間に大声で知らされる前にどうにかしなければまずい、まず過ぎる。左手には瓶、右手には木の枝、ポケットには小石が数個。



安価下
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 20:41:25.60 ID:77dH6JJpo
一匹なら瞬殺できるやろ
突貫
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 20:41:51.45 ID:oLy3v/Cao
瓶をゴブリンの顔に投げつけた後、接近して木の枝を喉に突き刺す
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 20:57:59.65 ID:f+nH/MKh0

落ち着け。たかがゴブリン1匹だ、俺ならやれる。
やるなら一撃必殺だ、下手な攻撃じゃ声を出されてしまう。
俺は木の枝を前に突き出し、ゴブリンの胸を一刺しにする。
俺はそのまま倒れ込み、ゴブリンの上に跨る。

「ギャッ……!」

危ない。油断はしない。断末魔に備えて俺の左腕をゴブリンの口に噛ませる。


「…ってぇ……!」


多少痛みは覚悟していた。初めて生き物を殺傷した。
本心は怖くて、痛くて、今にも泣きそうだ。
でも、隣で気絶している女の子はもっと怖かったはずだ、それなのに俺がここで弱音を吐く訳にはいかない。


「……!!……!!!」


ゴブリンは呻いているが、次第に静かになり絶命した。
噛ませた左手からは血が滲む。クソ痛いけど、我慢できない訳じゃない。
俺は気絶している少女をおんぶして、静かに裏口から逃げる。

ゴブリンがまた定位置に戻ろうとしていたので、また遠くへ小石を投げる。するとまたゴブリン共は音の方へと向かっていった。
こうも扱いが簡単だと逆に拍子抜けだな、腕は痛いけど。

そして俺はリネル村へと帰還した。
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 21:00:57.90 ID:f+nH/MKh0
息抜きのつもりが結構楽しくなってきました
一旦休憩しますが、良かったまたお付き合いください
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 21:05:09.26 ID:XMu8v/dVo
おつおつ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 21:37:06.26 ID:f+nH/MKh0
前々作【安価】勇者「魔王倒すわ」
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1564307071/
前作【安価】元勇者「復讐するわ」
https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1564588816/

一応
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 22:17:17.52 ID:f+nH/MKh0

少女を連れて村に到着すると、住人が気付いたのかお爺さんが駆け寄ってきた。俺はお爺さんに少女をゆっくりと渡す。


「マリア……!よく無事で……!冒険者様も……誠にありがとうございます…!」


「はは……なんとかなりましたよ」


安心したら急に力が抜けてきた。俺は地面に膝から前に倒れ込む。
やべぇ、気ぃ張ってたからかな。


「冒険者様!?……酷い傷だ…誰か!手当を!」


意識が途切れそうだ。でも、依頼は達成したんだ。
ここで寝てても怒られないだろう。お爺さんや住人が何か言ってるけど、聞こえないや。






「……ん」


あれ、ここは何処だ?たしか地面に倒れてた筈だけど。


「あっ!起きた?おじーちゃーーん!冒険者様起きたよー!」


「君は…」


「私?私はマリア!助けてくれてありがと!冒険者様!」


マリアという少女は俺に抱き着いてくる。年はいくつだろうか、俺の居た世界で例えるなら小学2.3年くらいかな?
そして俺は改めてこの子を助けたという実感を得て、ちょっと泣いてしまう。
子供の前で泣くとか、恥ずかしいな。


「冒険者様?泣いてるの?」


「いいや、ちょっと目にゴミが入っただけだよ」


「大丈夫?取ってあげよっか?」


「大丈夫だよ、ありがとう」


そうしている内に、部屋にお爺さんが入ってくる。


「身体の具合はどうですかな?冒険者様」


「大分良いですよ。傷の手当もしてくれてありがとうございます」


俺は軽く左腕を動かして、調子が良い所を見せる。
動かしてもそこまで痛くない、この世界の傷薬かな?


「それは良かった。改めて、冒険者様。本当に孫を助けて頂いてありがとうございました」


「あ、いや、もうお礼は十分ですよ」

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 22:36:40.15 ID:f+nH/MKh0

深々と頭を下げるお爺さんに俺は困惑する。当然の事をしたまでだ、何度も感謝されるとむず痒い。


「なんと寛大な……冒険者様、ギルドに行けば報酬が貰えるでしょうが、私からも受け取って頂きたい物があります」


「え……それは…」


良いのかな、貰っちゃっても。正直貰えたら嬉しいけど、介抱までして貰ったし。何か悪い気もするけど、やはり貰えるものは貰おう。俺には足りない物が多すぎる。

お爺さんは大きな箱を部屋の脇から引きずって持ってくる。
大きいな、なにが入ってるんだろう。


「……開けても?」


「はい、是非」


「おじーちゃん、これ何が入ってるの?」


「これはな、冒険者様に必要な物が入ってるんだよ」


「……!これは…! 」


有り体に言えば新しい服、剣、瓶に入った赤い液体。
これは嬉しいな、服があれば変な目で見られなくて済む。そして剣。これでやっとまともに戦えるかもしれないな、長さ的にショートソード?なのかな?
赤い瓶は恐らく、いや、間違いなく回復役だな。色で大体相場は決まってるもんだ。


「ありがとうございます。物凄く助かります」


「いえいえ、感謝を形にしただけですよ」


『うわぁぁぁああ!!!』


外から聞こえた男性の叫び声が耳を劈く。

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/05(月) 23:27:54.13 ID:f+nH/MKh0

「な、何事か!?」


俺は箱から剣だけを持ち出し、部屋を飛び出る前に2人に警告する。


「絶対にここから出ないで下さいね!良いというまで待っていて下さい!」


そう言い残し、俺は外へと飛び出した。そしてすぐに俺は村に起きた事を理解する。
これは、報復だ。
住人を襲うのはゴブリンだった。恐らくあの部屋に居たゴブリンを見つけて仕返し、と言った所か。
先にやったのはそっちだろうと思うが、考えてもしょうがないので住人を避難させる。


「皆さん!良いと言うまで出てこないで下さい!!戸締りは固く!物を置いたりして、絶対に開けないで!!」


久しぶりに声を張り上げた。だが、これで良い。
ゴブリン共が集まってきた。予想通りとはいえ、やはり緊張する。
格好付けたは良いが、結局はさっきまでの俺にちゃゆとした得物が付いただけだ。普通に足が竦む。


「来いよ。言っとくけど俺はよえーぞ」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/06(火) 01:00:49.45 ID:xoSF0oKl0

言うや否や、ゴブリンは飛びかかってくる。
最初の数匹の短刀はいなせるが、襲いかかってくるやつと二撃目に入るやつを同時に相手に出来ない。
刺されたりは無いが、切り傷が増えていく。

くっそ、このままじゃやられちまう。
ゴブリンの猛攻は止まらず、次第に焦りを感じてくる。
何か、何かをしなければ。


「ぐぁっ……!」


気を抜いた訳ではないが、ゴブリンの一撃が脇腹に刺さる。
熱い熱い熱い!焼けるように痛ぇ!
このままじゃ本当にやばい。


「やるしかない……!」


俺は剣を思いっきり突き立て、叫ぶ。


「俺は転生者だ!何でもいい!技を繰り出せ!術を放て!完全無欠の能力!そろそろ何かあってもいいだろう!」


怒鳴り声にゴブリンが一歩下がる。
これは、チャンスだ。俺は剣を地面から抜いた。
やってやる、やってやるさ。



行動内容。行動によって起きた事柄。行動によって判明した能力。
安価下
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 01:19:45.55 ID:1GP1Kfof0
右手が黒い籠手に覆われ、右目が赤くなる
身体能力と右目の視力やら動体視力やらが上がる
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 02:30:43.83 ID:xoSF0oKl0

両足を開き、肘を腰まで落とし、叫ぶ。


「うおおおおおおおおおおおあああああああああ!!!!!」


身体の中身を全部吐き出せ。
魂の叫びを轟かせろ。
俺にはもう、後がないのだから。


「ギギッ!!」


「……!?」


右の死角からゴブリンの声が聞こえ、振り向いた時には短刀の刃が顔に刺さる寸前、俺は思った。まだ死にたくない、と。


「ギギギッ!?」


「なっ……」


本当に驚いた。俺の右手が、いつの間にか刃先を指の腹で止めている。でも、痛くない。指で止めているのに?
何が起きているんだ、俺に。


『我が名を唱えよ』


「!?」


突然頭の中に声が流れてきた。本当に何なんだ。


『この場を制す力が欲しいのだろう』


「だ、誰なんだよ……?」


俺は硬質化?されてる指でゴブリンを押し返すと、とんでも無い速さでゴブリンが気に衝突し、四散する。
他のゴブリン共はその様子に怖気付いたのか、その場から動かない。


「なっ!?何が────」


『我が名を唱えよ』


「だから!なんなんだよさっきから!お前の名前なんて…!!俺は……なぁ?」


あれ、何でだろう。俺は、頭の中にしゃべりかけてくる奴の名前を知っている。会った事も見た事もないのに。
これが異世界転生補正ってやつなのか何なのかはわからない。だが、こんな不可思議な現象は間違いなく俺の能力が引き起こした物だろう。


「はは……マジかよ」


なら、やる事は簡単だ。待ちくたびれたよ、本当に。
やっと、転生者らしくなれるのか。
期待が募る、高翌揚が止まらない。
俺はこの時を待ってたんだ、期待してるからな。



お前の名は────


『唱えよ』

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 02:31:53.59 ID:xoSF0oKl0






「レヴァンテイン」





53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 02:56:24.32 ID:xoSF0oKl0

唱えた瞬間、俺の右半身が漆黒の炎で燃え上がる。


「っっ!あっっつ!!」


『精約だ。我慢しろ』


また我慢かよ、とか思っていたら炎が消えた。
右手には肘まである、漆黒の歪な篭手が装備されていた。


『精約完了により、我の精霊としての力を貴様に与えた』


「精約……あれ?」


何だか左右の目での視界の映り方が違う。何なら右目は、遠くを見ようと思えば、100m先の木の窪みまで見れるくらいに視界が異常に発達している。
燃やされた右半身だけ、力の加減が違うというのか、恐らく右手右脚にも何かが起きているのは容易だった。


『奴らを見ろ』


奴らといえば、ゴブリン共しかいない。とりあえず今は言う事を聞こう。俺はゴブリン達を見据える。


『右手を握ってみろ』


「……?」


ぐっ、と軽く握ってみる。その瞬間、ゴブリン共は闇に包まれ、爆散する。


「なっ!?なんだこれ!?」


『魔眼の目。貴様に心から恐怖心を抱いた者を視界に入れて右手を握る事により、条件を満たした者は絶命する』


なんつー恐ろしい能力。悪役側みたいな能力だな。


「すっごー……」


『我は再び眠りに就く』


「え?ちょ、待って待って!?」


精霊からの返事はない。マジか、本当に寝やがった。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 07:30:10.48 ID:Ucs/CS5a0
おお、想定してたよりかっこよくなっておる
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 15:08:12.00 ID:XjO4I6vmO

いくら呼んでも精霊は起きないので、今は後回しにしよう。


「皆さーん!出てきて大丈夫ですよー!!」


大声で叫んだ。俺は精霊の力を解除して、安堵すると脇腹に激痛が走る。これはまた、看病してもらわないと、ダメかな。


「冒険者様!?大丈夫!?」


マリアが駆け寄ってくる。


「大丈夫だよ…ちょっと……痛いけど……」


俺の意識はそこで途切れた。






「……ん…」


目が覚めると、ゴブリンに刺された脇腹をさする。
傷は手当てされている、ありがたい。


「あっ!冒険者様!おはよおはよ!」


「ああ。おはよう、マリア」


俺は身体を起こし、右手を見つめる。俺は、ついに特殊な力を手に入れたんだな。
口元がニヤけてしまう、ふふふ。


「冒険者様?何で右手見ながらニヤけてるの?」


「あっいや!何でもないよ!」


危ない危ない。まだ使いこなせる訳じゃないんだ、気を抜くな。


「おお、起きましたか…冒険者様」


お爺さんが入って来た。トレイを手に持ち、俺の横に置いた。
飯だ。すっかり忘れていたが、この世界に来てからまともな食事をしていない気がする。
目の前にある、パンに目玉焼きにベーコン、温かそうなスープ。
やばい、超美味そう。


「召し上がれ」


「い、いただきますっ!」


恥も外聞なんぞ、もう気にしてられない。
久々に食べる飯は凄い美味しくて、優しい味で、涙が出てくる。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/06(火) 15:48:53.70 ID:XjO4I6vmO

「ほっほっほ……ゆっくり食べて良いのですよ」


「くぁwせdrftgyふじこlp」


自分で言うのも何だが、行儀が悪かったな今のは。






食事も終わり、俺はお爺さんから貰った服に着替えていた。
白の膝丈まである外套、インナーの黒シャツ、白のチノパン、白のスニーカーに近い何か。派手過ぎる服装だが、スウェットよりかは幾分マシだった。


「では、メリルに戻ります。色々とありがとうございました」


「お礼を言うのはこちらです。どうか、貴方様に精霊の御加護かあらん事を」


精霊の加護は貰ったと言いかけたが、その言葉を呑み込む。
この世界では精霊は神様的な物なのか。俺はその力を借りたって事だよな、結構凄くね。やっとそれらしくなってきたなぁ!


「またね!冒険者様!」


「うん。またね、マリア」


マリアに手を振り、俺はリネル村を出ていった。



〜メリルの町


着いたや否や、周りからの視線が恐ろしいくらい刺さる。スウェットの比ではないぞ、これは。
なんだ、やっぱりこの格好がマズイのか。どっちにしろ見られるのか、俺は。
もう、早くギルドに行こう。



〜冒険者ギルド


「おかえりなさい。そしてお疲れ様でした。男さん」


受付嬢は俺を見ると立ち上がり、あの時と同じ様に深々と頭を下げる。


「何とかなったよ。はい、バッチ返すね」


「ありがとうございます。では、報酬をお渡ししますね」


受付嬢はカウンターの下に潜ると、報酬であろう金貨の入った袋を取り出していた。


「こちらが今回の報酬になります」


俺はその袋を受け取り、中身を見る。金銀銅のコインが沢山入っていた。俺はそれを1000円、100円、10円に置き換えて計算してみた。
12440円という結果に。この世界の物価はわからないが多分中々の額なのだろう、なんたって金貨は金だからな!

まぁ、それは置いとこう。しばらくは何とかなりそうだしね。
とりあえずは、これからの事を決めねばならない。
俺は、何をしよう。




安価下
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 16:08:52.97 ID:DBBLHEM70
美人なお姉さんがいる酒場で豪遊だ
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 16:15:24.42 ID:1p8l0Bn60
前々作といい前作といいいまだにクズキャラや外道キャラが面白いと思っている幼稚な精神の読者がいるんだなぁ
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 16:20:57.06 ID:+wj46c+M0
また主人公糞キャラ化させるなら死なせて終わらせるかな
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/06(火) 18:43:42.74 ID:Ucs/CS5a0
イッチ息抜きって言ってたしすぐ死ぬならいいんでね(適当)
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 08:14:22.23 ID:LAhGqKG90

こんなに金があるんだ、少し自分にご褒美をあげたっていいだろう。


「あ……でも」


俺は思い出す。少し前にメリルの酒場で無銭飲食をし、見逃してくれる代わりに二度と来ない事を約束したのだ。
金を持ったからって約束を破って良いのか?

いや、待てよ。考え方を変えようじゃないか。
俺は前回の事を、謝りに行こう。うん、これなら不自然じゃないし酒も飲める。まさに天才のそれ。

そうと決まれば酒場に行ってみよう。入った途端に店主に怒られないといいけど。




〜酒場


俺は酒場の戸を開け、中に入る。相変わらず活気が良い。
戸に取り付けられた鈴が鳴り、店主や店員の女の子から、元気の良い挨拶が飛び交う。
ここへ来ても視線は相変わらず刺さる。だが、特に俺を睨んで居たのは店主だ。そりゃそうだ。
俺は店主の元まで行き、事情を説明する。


「話はわかったけどよ……兄ちゃん、何したんだ?」


「え?」


「その服……」


店主は顎をさすりながら俺を指差し、マジマジと見てくる。周りからも注目を浴びるしで、なんなんだ。


「……精装束だろ、それ」


「精装束……?」


「まさか兄ちゃん…知らないでそれ着てんのか?」


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 09:01:11.26 ID:LAhGqKG90

何だそれは、この服はそんな名前が付く程の代物なのか。あのお爺さんは俺にそんな凄い物をくれたのか、ありがたいな。


「教えてくれます?コレの事」


「……ガハハ!この前もそうだが、兄ちゃんいい度胸してるぜほんとによ!仕方ねぇ、教えてやるよ。座りな」


俺は店主の前のカウンター席に座り、話を聞く。
精装束とは、精霊の魔翌力で縫ったとされる装束。これは本来、王家から認められた者しか着れないらしい。

装束は何十種かあり、俺のは『聖光』と呼ばれる装束。
店主は俺の胸に刻まれた刺繍を指差す。これが何よりの証拠らしい。
ただの模様かと思ってたよ俺は。

店主は、この『聖光』の装束は遥か北にある国、ガーランド王国にあるはずだと言う。


「何処で手に入れたんだよ?」


俺はリネル村で起きた事を店主に語った、もちろん精霊の事は伏せてある。


「そりゃあ大変だったな……だが、あんな辺鄙な村で、そんな服があるとは思えねぇなぁ……まさか偽物か?」


そんな御大層な物を複製するとは思えないが、話の通りならこの地域にあるはずはない。
俺と店主はどうなんだろうね、と言った感じで悩んで居ると、店員の女の子がわらわらと寄ってくる。


「ねぇねぇ!お兄さんって凄い人なの!?」


「あたし知ってるよ、この服は精装束っていうんでしょ!なんか凄い人しか着られないとか!」


「マジ!にーさんめちゃくちゃ凄い人って事じゃん!」


うーん、そんなに引っ付くと俺が幸せになっちまうだろう。そんなにベタベタしないで、もっとして。


「も〜、おにーさん困ってるっすよ!離れるっす!」


俺から女の子を引き剥がしたのは、この前俺にお酌してくれたダークエルフだ。なんてひどい事を、この所業は許されないぞ。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 09:55:31.95 ID:BcvmBzI1O

「大丈夫っすか?おにーさん」


「うん。大丈夫……」


「まぁ何にせよ、だ。兄ちゃんは今日酒を飲みに来たんだろ?なら、飲もうじゃねぇか」


楽しそうに笑う店主の言う通り、俺は酒を飲みに来たんだ。
大分目的から逸れたが、豪勢に飲み食いしてやるぞ!



〜宿屋


「うひぃ〜……」


やべぇ、吐きそう。普通に飲みすぎた。でも、気分は最高だ。異世界で俺は生きているって感じがする。
モンスターと戦って、酒場で飲んで食って、宿屋で寝て。いやぁー俺生きてるわー。異世界でちゃんとやってんなぁ〜。

マジで異世界最高。ラノベの主人公程の無双じゃないけど、俺にも凄い力が手に入ったんだ。
成り上がり系?……なんてな。

さて、バカ言ってないで寝よう。明日は依頼か、旅に出るか、金があるうちは遊ぶか、何をするのも俺の自由だ。
生きるのって、楽しい。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/07(水) 10:14:49.50 ID:BcvmBzI1O

〜冒険者ギルド


翌日。俺は聖光を半分に畳んで、腕にかけて町へ出た。こいつの刺繍を見られたら、また視線が飛んできてしまうからな。
功が奏して、昨日俺の顔を見た奴はチラチラと見ているが、ほとんど視線を感じることは無く、安全にギルドへと到着した。

やはり俺は、この世界で生き抜く為に自分を鍛える意味で依頼をする事にした。俺の力は凄いが、まだ未知の事が多く、俺自身が場数を踏んで経験を積む必要があると判断した。
戦闘の依頼は無数にあるが、種類別に分けるとこうなる。

大型モンスター討伐(3~5人)、洞窟探索(3人)
護衛(2人)、魔物討伐(1人)



なんの依頼をやろうかな。



安価下
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 10:18:04.10 ID:gEjBFyDs0
お嬢様の護衛
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/07(水) 14:45:12.90 ID:ZVqTSxLqO

「……よっ…と」


俺はその中から、要人警護の依頼を取る。内容は、メリルの町からノース帝国までの護衛だ。
ノース帝国の場所は知らないけど、新しい地域に行くのは心躍るな。
俺はその依頼書を受付嬢に持っていき、護衛依頼中のバッチを貰った。


「では、明朝に西門の前でお待ちください。そこにもう1人の護衛者と依頼人がやってきます」


「わかった、ありがとう」


俺はギルドを出ると、明日に備えて準備に取り掛かる。何日かかるかもわからんしな。
とりあえず鞄を買うとして、他に何がいるかな?

俺の手持ちのアイテムと言えるのは、ショートソード、回復薬5個、濁り過ぎて中身の見えない瓶(洗浄済)だけだ。




買う物
安価下1.2.3
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 14:53:43.12 ID:rqaywoz00
焚き火用の道具
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 14:58:46.96 ID:peag6gg4O
鉢金とか胸当てとか急所を守る類いの防具
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 15:12:49.13 ID:0msFf3W8O
奴隷
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/07(水) 18:20:27.41 ID:ZVqTSxLqO
undefined
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 19:46:00.98 ID:ZVqTSxLqO

野宿する事を考えて、焚き火が出来る準備をしておいた方が良いだろう。異世界といえば焚き火を囲んで野宿だよな!
とりあえず色々なお店を見て回ろう。

俺は数時間見て回り、火バサミ、耐火グローブ、炎焼石を購入。この炎焼石とは、炎焼石を2個用意して、火打ち石の様に使うと数秒後に発炎する魔道具らしい。やはりこの世界では、こういった不思議な道具も売っている。見ていて楽しい。

その他にも胸当てと鉢金を購入した。胸当ては重く、比較的軽くて頑丈なのを選んで貰った。鉢金はバンダナみたいな物で、額に銀プレートが付いている。
フルプレートも着てみたいが、俺の残金じゃ買えないそうだ、残念。

一通り買い物を終えた俺は武具屋の向かいで新しい建物を建てている男達を見て、この町に、いや、この世界に奴隷は居るのだろうかと思った。

メリルの町は一通り見て回ったが、それらしい者は誰一人と居なかった。少なくともこの町には奴隷は居ないだろうが、他の国はわからない。
見えないだけで、裏社会的な何かとコネがあれば、何かわかるかもしれないが、そんなコネは無い。

明日への旅立ちの前に酒場に寄り、残りの有り金で飲み食いした後、宿屋で明日に備えるのだった。



〜西門


「……あれ」


早く来すぎてしまったのか、まだ西門には誰も居ない。早朝は肌寒く、聖光を羽織って無い俺は半袖のシャツなので、ちょっと寒い。
暫く西門で座り込み、リュックの中身を確認していると馬車がこちらへ向かってくる。

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/07(水) 20:16:36.34 ID:LAhGqKG90

手綱を握っているのは執事服を着たお爺さん。お爺さんと言ってもそんなに歳がいっている訳では無さそう。
馬車は俺の前で停止すると、お爺さんが降りてきた。


「おはようございます。そのバッチ…御依頼をお受けになった冒険者様ですね?」


「あ、はい。男です、よろしくお願いします」


俺は立ち上がり、軽く会釈する。


「ありがとうございます。どうか、宜しくお願い致します」


お爺さんは深々とお辞儀をする。執事服のせいか、何処と無く品がある気がする。するだけ。
俺は馬車の客席をチラ見する。この中に俺が守らないといけない要人がいるのか、どんな人なんだろう。


「して……もう1人の御方は、何処に?」


そうだよ、もう1人はどうしたんだ。寝坊か?依頼人より後に来るとか常識ないな。俺もこの世界の常識知らないけど。


「あ、多分……もうすぐ…」






護衛者安価
容姿、服装、得物、性格…etc
ひとつだけでも可、足りない部分は補います

安価下
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 20:18:27.20 ID:3Oc4f/m+0
かなり気弱でオドオドした性格
容姿は小柄で目を前髪で隠している
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/07(水) 21:18:21.92 ID:LAhGqKG90

「あ、あの……!」


門近くの木から女の声がした。もしかしてもう1人の奴か?


「誰だ?」


「あの…冒険者……です……」


木から出てきたのは小柄な赤髪の女の子。目は前髪でがっつり隠れていて、足元が隠れる茶色のローブ、手には杖を持っている。見るからに魔法使いだ。胸にはバッチが見える。
こんな小さい子が冒険者?


「君が、護衛の冒険者なのかな?」


「は、はい…!そうです」


「そっか。遅かったね」


「ず、ずっと居ました……知らない人に話し掛けるのが怖くて……ごめんなさい」


なんだって?ずっと居たの?全然気付かなかったぞ。女の子はトコトコとお爺さんに近寄り、お辞儀をする。


「お、お力になれるかわかりませんが、宜しくお願いしみゃ…!……あっ!します!」


「はっはっは。頼りにしていますよ、小さなお嬢さん」


お爺さんも女の子にお辞儀をし、客席のドアへと手を掛ける。


「遅ればせながら、ご紹介致します」


お爺さんがドアを開けると、中にはいかにもお嬢様という感じの服を、お召し物を?着た女性が足を組んで悪態をついていた。
綺麗な金髪に端整な顔立ちをしていて、街ですれ違ったら目で追ってしまいそうだ。


「我が主、クレア・グランフォード・メリルお嬢様で御座います」


「ふんっ……遅いわよ!何日待ったと思ってるの!」


開口一番に怒鳴られた。そんな理不尽な。
隣の女の子は今の一喝で萎縮しちゃってるじゃないか。

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 08:06:40.77 ID:J21fjLg20

「お嬢様、それは彼等には詮無き事。ご配慮下さい」


「何よ!私に口答えするの!?」


「滅相も御座いません。このゲルム、お嬢様に口答えなど毛程も考えておりませぬ。ただ、これからの旅をより良くする為に提案した次第でございます」


「ふん……爺がそう言うならわかったわ。悪かったわね、冒険者。改めて、私はクレア・グランフォード・メリル。クレア様って呼ぶ事を許可するわ」


な、な、何だこいつ!俺は心の中で叫んだ。
お嬢様ってこんなんなのか?すっげぇ偉そうだな!あ、偉いのか!


「わ、私は…ジャスミン・リ・ラスティア……です。宜しくお願いします、クレア様」


「あ、自分は男って言います。どうぞ宜しくお願い致します」


俺とジャスミンは軽く会釈すると、何故かクレアはジャスミンを睨む。おいおい、そんな怖い目で見てやるなよ。


「ラスティア……ですって?」


「あ……はい…何か?」


「…………。いえ、何でもないわ」


「…では挨拶も済んだ事ですので、そろそろ旅立ちましょうか」


「ええ、そうね。冒険者、ちゃんと報酬分は仕事しなさいよ」


「はい、任せて下さい」


このクソあm……ふぅ〜落ち着け。クールになれ男。滅茶苦茶鍛錬の為に我慢だ。


「が、頑張ります……」


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/08(木) 09:34:48.00 ID:J21fjLg20

〜馬車


俺達はメリルの町から出て、1時間くらいが経った。手綱を握るお爺さんの隣にジャスミンが座っていて、俺は後ろの腰掛けるスペースくらいしかない板に座り、景色を眺めていた。真後ろにはお嬢様が居るが話し掛けはしてない。

護衛任務ってこんなので良いのかな?と思いながら、呑気に欠伸をする。それにしたって暇だな。
誰かに話しかけてみるか?






話しかける人物と内容
安価下
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 09:38:23.69 ID:71WpbcTU0
ジャスミン
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 09:41:06.16 ID:NrlzRK3U0
ジャスミン
とりあえず互いにどういう経歴なのかを含めて自己紹介
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 11:47:49.62 ID:0vpkZjNaO

やはりここは、背中を預けるであろうジャスミンに話しかけよう。連携的な意味でも、友好関係を築ければ大きなアドバンテージになる。
俺は後ろから降りてジャスミンのすぐ後ろにある客席の、屋根についた装飾を掴み、下の出っ張りに足を引っ掛けて近くに寄る。
自分で言うのもなんだが、粋な乗り方だと思う。多分。


「ねぇ、ジャスミン」


「うぇっ!?あ、は、はい!ななな……何ですか?」


突然話しかけたからか、ジャスミンは吃驚して取り乱す。気付いたお爺さんは気を付けてねと一言。


「あ、ごめんごめん。ほら、俺達は協力して魔物と戦う訳だし、少しお互いの事を知っておこうと思ってね」


「あ…な、なるほどです…」


俺は嘘と真実を織り交ぜて、ジャスミンに今までの経緯を語る。記憶喪失になり、この世界の事を何も思い出せず放浪していた事。名も知らぬ女の世話になり、酒場での出来事やリネル村での救出劇を、多少話を盛って面白可笑しく話した。でも精霊の事は教えていない。
ジャスミンは顔の半分は髪で隠れてしまって表情が分かりにくいが、笑っていた。好感触だ!


「……こんなので感じかな、俺の話は」


「記憶喪失なのに、そんな……凄いです。私だったら怖くて…動ける気がしません…」


まぁそうだろう。モンスターの出る世界に記憶喪失で放り出されたら、そりゃ怖いわ。異世界転生に興奮してたから、とは言えないな。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 12:25:49.72 ID:0vpkZjNaO
最初からだけど、誤字脱字が酷すぎた
補完でお願いします
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 13:21:11.45 ID:nUGQ8H1/0
はいな
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 15:07:48.94 ID:0vpkZjNaO

「ジャスミンはどこから来たの?メリルの人?」


話しやすいように話題を振ってあげる。


「えと……私はベルベット村から来ました」


「ほう。ベルベット村ですか……それはまた、珍しい所から来ましたな」


無言で話を聞いていたお爺さんは、ベルベット村に興味を示したみたいに食いつく。


「珍しい村なんですか?」


「それはもう。魔術に秀でた方が多く、王都にて魔術指導をされているとか。ベルベット村の人材は、門外不出の財産とまで言われています」


「ただ、村の所在は王都の者しか知らなく、未開拓の地域にあるのだとか」


「へぇ〜……そんな珍しい村から来たんだ。じゃあジャスミンも凄い魔法使いとか?」


「…………」


「ジャスミン?」


ジャスミンは黙り込んでしまう。この沈黙はもしかして、魔法使いとしての才能が無いとかそっち系?これは、触れない方が良いか。


「あ、まぁ…それはそのうち分かるよね!うんうん!」


「……ごめんなさい」


「いやいや!……あ、じゃあ、ジャスミンはどうしてメリルの町に居たのかな?」


「あ……えっと…」


ジャスミンは少し考え込んでしまう。もしかしてこれも言えない感じのやつか?


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/08(木) 15:37:41.97 ID:0vpkZjNaO

「私には……2人の姉が居て、私は末っ子なんです。お姉ちゃん達は凄い優秀な魔法使いで……その…私は平凡で……周りや家族からも白い目で見られてて……」


なるほどな。あるあるだな。


「でも、そんな私に……お姉ちゃん達は優しくしてくれて…ですね。嬉しかったんですけど…お姉ちゃん達に追いつけない自分が嫌になって……村を飛び出したんです」


ああ、あるある。俺はひたすらに頷く。


「それで、私は……お姉ちゃん達の姉妹として恥ずかしくない魔法使いになりたくて……船を渡ってメリルの町まで来ました」


「……なるほど」


お爺さんが顎をさすって呟く。


「ジャスミンさん……貴女の目的は、『烈風』の精装束ですね?」


「……!」


ジャスミンの反応が、正解だと示している。そうか、それを手に入れて村の皆を見返そうって訳か。


「……はい。そうです…」


「そうでしたか。ですが、あれは……」


お爺さんは言葉を濁らせる。何?知りたいんですけど。


「手に入れるのが難しいとかですか?その烈風って精装束は」


「はい。手に入れるならば、困難を極めるでしょう」


あれ?でも精装束って王家に認められた人が〜って事じゃないっけ。それが難しいのか。いや、難しいわ。


「……それでも…私は…」


「……意志は固いのですね。ならば私は、貴女の成功に祈りを捧げましょう」


待って待って。なんか話が重くない?なんか命懸けみたいな雰囲気なんですけど。



「ちょ、ちょっと質問。精装束って王家から貰うんですよね……?」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 04:29:14.44 ID:+iujvg/60

「如何にも。男さんは精装束をご存知の様ですが、精装束を縫う為の精霊の魔翌力とは何処から手に入れるか…知っていますかな?」


知ってるも何も持ってるしね。でも、精霊の魔翌力ってのは溢れている訳ではないのか。


「いえ…知りません」


「では、是非知っておくと良いでしょう。この世界には精霊の魔翌力を有した魔物…魔獣という個体が存在するのです。並の冒険者では歯が立たず、王家に仕える戦士……神代(ヴァーダ)でないと倒せないと言われております」


「ヴァーダ…?」


王家お抱えの精鋭部隊みたいなもんか?名前からして超強そうだな。


「はい。人の身でありながら、強大な力を持ち、魔獣と唯一対等に戦える者。これは噂になりますが、降霊の儀を終えたヴァーダは、精霊の加護を授かると言われております」


「……!」


まさか、俺と同じ力を持った奴がいるのか。


「逸れてしまいましたね。魔獣を討伐した後、魔翌力を吸収します。吸収した魔翌力を魔縫士に渡し、そこで初めて精装束が完成します」


「へぇ〜!なるほど!……え、じゃあ…さっきの困難を極めるってのは…?」


「先程、魔獣は精霊の魔翌力を保有している事は話しましたね?精装束というのは、完成後に名付けるのでは無く、魔獣の特性で名付けるのです」


「……ん?つまり危ないってのは…」


「お察しの通りで御座います。まだ、烈風はメリル国内にて生きております」


なんて事だ、ジャスミンはそんな危険な魔獣を相手にしようとしていたのか。


「ヴァーダってので、やっと倒せるくらいの相手…なんだよな?ジャスミン……大丈夫なのか?」


「あ、は、はい……自信は無いですけど…」


暫く黙り込んでいたジャスミンを見て、ふと疑問が浮かぶ。何故護衛任務をやっているんだ?考えれば生きる為だのなんだの理由は思い付くが、護衛で遠出する必要性がない気がする。

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 12:40:45.51 ID:+iujvg/60

「ジャスミンは何で護衛任務を?」


「えと……それは……」


ジャスミンはお爺さんをチラ見する。話していいのか迷っている感じだった。お爺さんは目敏いのか、その反応も見逃さない。


「構いませんよ」


「あ、はい……私は……メリルのヴァーダを襲名したくて……」


メリルの町にもヴァーダがあるって事は、王族や王家の奴が居るって事か。でも、護衛とヴァーダに関係性が見えない。


「つまりどういう──」


俺が言いかけた所で背後から窓をノックする音が鳴る。何かの合図なのか、お爺さんは街道から外れて停止する。
何故止まったのか困惑していたら、お嬢様は客席から降りてきて伸びをしていた。
お爺さんは客席に置かれた荷物から何かを出している。


「何だぁ…?」


「さ、さぁ……」


俺とジャスミンは訳もわからずその様子を眺める。お爺さんは折り畳みの椅子、簡易テーブルを出し、水筒?らしき物から熱々の何かをティーカップに淹れている。
お爺さんは注いだ後、お嬢様の脇の少し後ろに立つ。呆然と見ていた俺達を、お嬢様は一瞥する。


「何してるの貴方達。ちゃんと護衛として働きなさいよ」


休憩か、こんな所で。


「す、すみません…!」


ジャスミンは馬車を降りるでもなく、客席の屋根上によじ乗る。意外と大胆な事するんだな。
俺も見張りをしようと馬車から飛び降りて、広範囲の見える位置に陣取る。丁度お嬢様達が見ている方向の反対側だ。


「爺。ノース帝国までは、あとどのくらいかかるの?」


「何も無ければ明日の夕方までには。ですが、野盗や魔物の襲撃も考慮しますと、明後日になります」


「…長いわね」

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 13:33:44.12 ID:+iujvg/60

その後に何か小さく呟いていたが、聞こえなかった。


「あ、あの!……ま、魔物です!」


ジャスミンが叫ぶ。俺は周囲を見回すが魔物らしき生物は見当たらない。


「ジャスミン!どこにも居ないぞ!」


「わ、私の領域に入って来ました…!近くの森から来ますが…一体です!」


森か。俺はお嬢様達の近くへ移動し、剣を抜き、森へと身構える。お爺さんとお嬢様は微動だにしない、肝が据わっているのか、ティーカップを揺らして眺めている。


「怖くないんですか?」


俺は思わず聞いてしまう。


「怖くないわよ、別に。それより、貴方達の力量を見させてもらうわよ」


「男さん、ジャスミンさん、期待していますよ」


言ってくれる。


「……来ます!」


ジャスミンが叫ぶと、森の茂みから大きい魔物が出てくる。


「な、なんだこいつ…!」


巨大なゴブリンとでも言うのか、筋骨隆々な巨大な身体。手には大きい棍棒、胸には弓道で着けるような胸当てをしている。
長い耳はいくつもピアスをしていて、如何にも猛者感が溢れている。


「ハイゴブリンね」


お嬢様は、この魔物を前にしても顔色一つ変えない。マジか。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/09(金) 13:45:14.07 ID:+iujvg/60

「…穿て」


馬車の上から声が聞こえた。振り向こうとしたその時、尖った風の塊がハイゴブリンを襲う。すげぇ、魔法とか初めて見た。それに、アイツの腕を負傷させてる。ジャスミンすげぇ!


「ほほぅ……平凡とは、よく言ったものですな」


お爺さんはどこか、楽しそうにジャスミンを見ている。俺も同感だ、これで平凡とか嘘だろ。
俺も負けてられないな、やるぞ。



俺は剣を、ぎゅっと握りしめた。






行動安価
安価下
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 14:12:33.40 ID:2kDwNyZEO
レヴァンテインの力をほんのちょっぴりだけお借りして斬撃飛ばし
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/09(金) 14:49:20.48 ID:+iujvg/60


ジャスミンが一定間隔で風の槍を撃ち続ける。
俺は剣を後ろに引き、構える。俺は『レヴァンテイン 』の能力を少し引き出せるかどうか、試してみる。
完全に発現させると面倒な事になる予感がするからだ。

神経を研ぎ澄ませる。ゆっくりと、中から力が溢れるイメージ。
ハイゴブリンは吼えると、こちらに突進してくる。ジャスミンの風の槍が止まった。何かを呟いているか、あまり余裕は無さそうだ。

……来た。身体の変化がわかる。イメージするのは真空刃。何故だかは知らないが出来る気がする。俺は体重を乗せて、全力で振り抜く。


「グガァァァァッ!!!!」


「よっ……しゃぁ!」


イメージ通りだ。真空の刃がハイゴブリンを襲い、横一文字に血飛沫をあげる。ハイゴブリンは勢いに押されたのか、後ろに倒れ込む。


「…切り刻め」


ジャスミンはその隙を逃さない。目に見える程の、いくつもある円形の風の刃がハイゴブリンの周囲を不規則に飛び回り、切り刻む。
それが決定打となり、切り刻まれたハイゴブリンは息絶えた。


「すげぇな…」


思わず呟く。


「お、男さんも……凄いですっ!」


聞こえていたか。ジャスミンは屋根から飛び降りて、俺のそばに寄ってきてお辞儀をされた。


「ありがとう、ジャスミン」


俺はその瞬間、頭に一筋の閃光が走る。待てよ、ここでジャスミンの頭を撫でたら、何か漫画の主人公っぽくね!?やるか、やってみるか!?
俺は頭を下げているジャスミンに手を伸ばす。


「貴方達、少しはやるじゃないの」


「想像以上の方々ですね。頼もしい限りです」


お爺さんとお嬢様が、席から立ってこっちに歩いてくる。ジャスミンも頭を上げ、俺の手は引っ込んだ。
すると、お嬢様は俺の顔を覗き込み、訝しげな顔をする。


「貴方……その眼は何?」


「え?」

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 15:46:13.95 ID:+iujvg/60

目?もしかして魔眼が出ているのか?


「あぁ〜えっとこれは……体質みたいな物で……」


少々無理のある言い訳だが、これで乗り切るしかない。


「体質?こんなに眼が赤いのが?」


お嬢様は更に怪しんできた。ですよねー!


「クレアお嬢様。男さんが困っています、そこまでに」


「何で?気になるじゃない」


「冒険者の能力は、その数だけあります。多少特異な体質があっても不思議は無いでしょう」


「ふーん……たしかに、アレスも不思議な力を持ってたわね」


何とかなった…?ありがとうお爺さん。


「あ、あの……!クレア様…」


ジャスミンがお嬢様に詰め寄る。


「な、何…?近いわよ」


「やはり…アレス様とお知り合いなのですか……?」


俺もその名前は気になった。不思議な力とは何だろう。


「ああ、その事ね……爺、説明してあげなさい」


「わかりました。アレス様とは、旦那様に仕えるヴァーダです」


「…!ってとこは、アレスって人がメリルのヴァーダ?」


「左様で。そして旦那様とはクレアお嬢様の父君であり、メリルの主権を握る御方です」


「なんと!?」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 16:44:17.40 ID:3U6iQqIwO

実は薄々そうなんじゃないかとは思っていた。お嬢様の名前はクレアなんとかメリルだったからな。もしかしたらとは思っていたが、やっぱりなのか。


「アレス様は精装束…『雷雨』を所持しています。ですが、未だ烈風には手を焼いているのが現状です」


精装束を手に入れてる奴でさえ手こずる魔獣……って事か。ますますジャスミンが、どれほどの危険を犯そうとしているのか理解出来た。
ジャスミンはヴァーダを襲名すると言っていた。つまり、アレスからヴァーダの地位を貰い、烈風を倒すと言っているのだ。


「アレス様は、孤高を貫くお嬢様に優しく接してくれたのです。ご友人をお作りにならないお嬢様が、唯一心を許した相手でしょう。ご友人の居ないクレアお嬢様を、私は────」


「……爺?余計な事は言わなくて良いのよ?」


話の途中で、お嬢様は満面の笑みでお爺さんを睨む。これは失礼致しましたと頭を下げ、お爺さんは一歩後ろに下がった。


「そういう事よ。私はこの広大な土地を所有するメリル王家の娘、クレア様なの。改めて身分の違いがわかったかしら?」


「あ、はい……まぁ」


友達作らないんじゃなくて、作れないんじゃね?ムカつくけど、身分の違いはわかった。この女を怒らせるのは得策ではない。


「わかったなら休憩はお終い。先を急ぐわよ」

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 18:35:46.69 ID:3U6iQqIwO

お嬢様は馬車へと踵を返し、さっさと乗ってしまう。


「……俺達も行こうか」


「あ…はい…」


「男さん、少しお話が」


「え?」


俺はお爺さんに呼び止められ、ジャスミンと顔を見合わせる。先に行くよう促し、俺はお爺さんの元へと移動する。


「どうかしましたか?」


「申し訳ありません。ただ、確認したい事が……」


お爺さんは顎をさすって、俺を見据えてきた。


「……魔王の眼を模した深紅の目…またの名を魔眼の目…」


俺は心臓が飛び出るかと思うくらいに吃驚した。


「何で……」


「この歳になると、見聞を広めるのが唯一の楽しみなのですよ」


お爺さんは馬車へと歩きだし、すれ違い様に俺の肩を叩く。


「くれぐれも力の使い方を間違わぬよう、気を付けて下さい」


そう言い残し、お爺さんは御者席へと戻っていく。あのお爺さん、何者なんだ…?
俺はモヤモヤした気持ちを抑えながら、馬車へと戻った。

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/10(土) 01:46:37.30 ID:swoF+qcF0





陽は落ち、辺りは暗闇へと変化していく。夜空には星が光り、月は2個あった。この世界では普通らしい。
メリルの町とノース帝国の間にある大湖、メルヴィス湖の前で俺達は野宿をする事にした。

俺は適当な木を切って木材を集めようとしたらお爺さんに止められた。どうやら焚き火に使う木は何でも言い訳では無いらしい。
お爺さんの審美眼ならぬ審木眼を頼りに、ジャスミンは太い木を魔法で薙ぎ倒す。魔法ってすげぇ。

焚き火の準備を始めたので、すかさず俺はメリルの町で買った道具を出し、この場は俺に任せろと言ってみた。


「わぁ……男さん…用意が良いですね、凄いです」


「いやいや、それほどでも…」


あるんだな。買って正解だった。


「…では、準備は男さんに任せましょうか。ジャスミンさん、お嬢様と御一緒に湖で汗を流しては?」


え?なんだって?


「えっ!?…あぅ……クレア様と…ですか?」


「はい。女性水入らずでの会話もあるでしょう?」


「あっ……!は、はい…じゃあ、行ってきます」


ジャスミンは客席のお嬢様に声を掛けると、案外すんなりとお嬢様は従ってついて行った。
ふーん…水浴びね。そっかそっか…ふーん。


「では、私は簡易的な天幕を張ってきます。火傷に気を付けて下さいね」


「わっかりましたァー!」


お爺さんはにっこり笑うと、馬車へ向かい中から荷物を取り出して、いそいそと準備に取り掛かる。俺も炎焼石を2つ取り出し、石を打ち付けて、くべられた木材へ投げ込む。すると炎焼石が発炎しだし、すぐに引火して徐々に燃え上がる。

火の勢いが増して来たので、俺は耐火グローブと火バサミで木を動かす。正直動かす意味はわからんが、それっぽいだろう。
よし、これで焚き火は問題無いだろう。




行動案外
安価下
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 02:08:00.46 ID:nH64sxr50
今日知ったことを地面に書き出したりして整理する
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 02:10:34.68 ID:outfzYJF0
あ、いかんミスったかも
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 02:51:49.97 ID:swoF+qcF0

天幕を張るお爺さんを横目に、俺は適当な木の枝を拾った。地面を木の枝でなぞってみる。程よい柔らかさで、書きやすい。
とりあえず今日知った事を書き起こしてみる。

まず、今居る大陸にメリルという領土があり、メリルの町は領土内の一部。
クレアは王族の娘で父親がメリルの領主。
アレスというヴァーダがクレア父に仕えている。
クレアむかつく。
アレスは精装束『雷雨』所持、その他にも力がある?
この事から国ひとつに精装束1つではなく、複数ある事がわかる。

お爺さんが魔眼を知っていた。
クレア友達居ない。
ジャスミンは魔法使い、ベルベット村出身、姉が2人。
クレア偉そう。
精装束は魔獣から作られる。
『レヴァンテイン』は出力を調整出来る、もう少し練習が必要。
俺強すぎ……っと。


「……よし」


大体は書き起こした。こうやって見ると中々濃い1日だったな。
文字を眺めているとお爺さんが俺の方へ歩いてきたので、俺は文字を消した。天幕は張り終わった様だ。


「つきましたね。男さん、ありがとうございます」


「これくらいお安い御用ですよ」


「ははは…どれ、飲み物でも作りましょうか。水浴びのお二人もそろそろ戻って来るでしょう」


はっ!!……いや、別に覗きたかった訳じゃないし。そんなんじゃないし。魔物出たら危ないし?ちょっと気になっただけだし。
俺がブツブツ言っていたら、目の前にコップが差し出される。


「…どうぞ。少し苦いかもしれませんが」


「あ、ありがとうございます」


俺はコップを受け取り、匂いを嗅ぐ。これは珈琲の匂いだ。大丈夫だお爺さん、俺はブラックは好きだぞ。


「いただきます……はぁ〜美味しい…」


「はっはっは…お口に合って良かった」


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 03:22:48.45 ID:swoF+qcF0

珈琲の味を堪能していると、背後から足音。クレアが帰ってきた、寝巻きで。そんな物まで持ってきたのか。なんだっけこの服。
ああそうだ、ネグリジェだ。下ろしていた金髪は、ポニテになっていた。


「夜は冷えるわねー…」


クレアは自分専用の椅子へ座り、焚き火の前で温まる。ちょっと格好と髪型が違うから、中々悪くないなとか思ってしまった。
そして俺はある事に気付く。


「あれ?ジャスミンはどうしたんですか?」


「ああ……あそこよ」


ティーカップを手に取り、顎で俺の背後の大きめな木を指す。なるほど、隠れているのか。


「あの子、私程じゃないけど。中々よ」


「……え?何がですか?」


今の発言の意味がわからなかった。追及するでもなく、か待っていればそのうち来るだろうと思い、俺はまた珈琲を啜る。
俺はその間悔しいがチラチラとクレアを見てしまう。くそ、喋らなければ可愛いなこいつ!


「おや、これはこれは……」


向かいで座っていたお爺さんが俺の背後を見ながら呟く。
ジャスミンか?俺は振り向いた。


「……んなっ!」


そこに居たのは見知らぬ美少女。顔半分を隠して居た赤い前髪は、片目だけ出していて、髪を花のピンで留めていた。
ぶかぶかのローブで体型がわからなかったが、クレア同様のネグリジェを着用している為、ジャスミンの身体がよく分かる。
小柄だが決して小さくはない胸に、すらっとした身体。肌が綺麗なのか脚は美脚と言える。


「え、だ、誰…?」


これは不可抗力だ、咄嗟に出た言葉だ。


「あ…ぅ……や、やっぱり…へ、変ですよね……」


「い、いや!か、かかか…可愛いよ!?!?」


やべぇ!声が裏返った!


「ふぁっ!?……や、あの……その……!」


「とても可愛らしいですよ。ジャスミンさん」


これぞ大人の余裕、と言わんばかりに自然と褒められるお爺さんに俺は敬意を表した。


「あ、あああ、ありがとうございますっ! 」


ジャスミンは駆け足でクレアと向かいの椅子にちょこんと座り、顔を隠す。やべぇ、これが所謂ギャップ萌えというやつでは?
今俺の目にはジャスミンがとても可愛く見える。好きになっちゃいそう!
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/10(土) 03:37:15.00 ID:swoF+qcF0

「ジャスミンさん、どうぞ」


「あ、あ、ありがとう…ございます…」


お爺さんはジャスミンにもカップを渡す。珈琲を啜ったジャスミンは舌を出して苦い顔をする。


「ぅあ〜…に、苦いです…」


そんな顔も可愛いなとか思っていたら、お爺さんは角砂糖とティースプーンを既に用意していた。デキるお爺さんだなぁ!?


「はっはっは…どうぞ。ジャスミンさんには2つくらいが丁度良いでしょう」


角砂糖を入れてもらい、少し混ぜた後にジャスミンはもう一度口を付ける。今度は美味しい!って見てわかる顔だ。


「こ、これ…!美味しく…なりました!凄い、凄いですっ!」


「はっはっは…また飲む時は、砂糖を入れてから差し上げましょう」


めちゃくちゃ優しいやないか!お爺さんこれ若い時は中々のたらしだったのでは??
ジャスミンに少し惹かれつつも、俺は今のこの時間を楽しんだ。






あれからクレアの自慢話を散々聞き、そろそろ寝ようかという雰囲気に。俺はその前に、質問があった。





質問する相手
安価下
質問内容
安価下2
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 04:50:33.12 ID:dQCIdpL0o
ジャスミン
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 06:18:15.96 ID:RxmrgVkd0
スリーサイズは?
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 07:48:38.39 ID:tepvWrTZ0
草ァ!
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