【安価】男「異世界転生しちゃった」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 08:16:04.70 ID:2xWRfFWL0
この任務が終わったらジャスミンはどうする?…とか聞きたかった
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/10(土) 09:22:25.38 ID:swoF+qcF0

「ジャスミン…ちょっと良い?」


「えつ…あ、はい…?」


ジャスミンは俺の傍にトコトコと駆け寄ってくる。もう何でも可愛く見えてきた。クレアとお爺さんも何かを話しているが、内容はわからない。
俺は寄ってきたジャスミンに耳打ちする様に小さな声である事を聞く。


「ジャスミンのスリーサイズ教えて」


「……えっ?」


聞こえなかったか、仕方ないもう一度。


「ジャスミンのぉ──」


「き、聞こえてましたよっ!……そうじゃなくて…その、あの…あぅ……」


顔を真っ赤にして、手をモジモジとさせている。おいおい、抱き締めたくなるじゃねぇか。


「わ、私……その…は、測った事……なくて……」


もう目を閉じて絞り出すように喋っている、恥ずかしさの限界か。測った事ないと来たか……ならば仕方ない、俺の目測で測るしかないな!


「測った事ないんだね、じゃあちょっと失礼して……」


「ふぇっ…」


俺は顎に手を当て、舐め回すようにジャスミンの肢体を凝視する。俺は元の世界での元カノを参考にする。


「ぁ…あゎゎ……そ、そんなに……見ないで…」


「あ、ごめんごめん。もう大丈夫だよ」


俺の目測結果、83-54-75と見た、良い身体してんねぇ!合ってるかわかんないけど!


「付き合わせてごめんね、じゃあ俺達も寝ようか」


「あ、はい…」


俺とジャスミンは天幕へと、就寝に向かった。






翌朝。俺達は野宿の道具を片し、再びノース帝国への道へと戻る。湖沿いに進み、反対側に行かなければならない様だ。
俺は大湖を眺めている。間にこんな湖があったら交通の便が悪いだろう、橋でも作らないのかな、とか考えていた。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 14:34:04.06 ID:GUyQL1LqO

「大きいでしょう、このメルヴィス湖は。この中には巨大な魔物が潜んでいるとも言われているんですよ」


後ろからお爺さんの声が聞こえる。俺は相変わらず後ろに座ってるので前の状況がわからないが、おそらくジャスミンに話しているのだろう。それにしても巨大な魔物か、たしかに居てもおかしくないな。


「そして満月が1つになる日……『ヒトツキの夜』にこの湖に訪れると、セイレーンの歌が聞けるそうですよ」


へぇ、月が1つになる日があるのか。ジャスミンが何か言っているが聞き取れなかった。お爺さんの声はよく通るな。




〜国境


一度休憩を取り、しばらく経った頃。巨大な城壁の前で俺達は一度止まる。門番らしき兵士が2人、恐らくここは国境なのだろう。
お爺さんが馬車から降りて、門番に何かを見せている。通行手形的なやつかな?

様子を見る際、クレアの様子もついでに見る。退屈そうなのか、悩み事なのか、前を通る俺を見る事も無く、ただひたすらに遠くを見ている様だった。

通行許可が出たのか、お爺さんは馬車に戻って再び手綱を取る。俺も後ろに戻り、国境を後にする。
今更だけど、クレアは何しに行くんだろう。俺が知る事では無いのだが、クレアの様子から恐らくノース帝国で何かあるのだろう。




〜街道


「あまり風景は変わりませんが、ここはダーウィンの領土であり、領主のエルサム・ダーウィン様が統治しておられるのです」


風景は確かに変わらないが、何というか草むらに大きな岩が多い感じがする。遠くには牛を連れて歩く人物も見え、この国も平和なんだなと思った。


105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/10(土) 14:56:43.22 ID:GUyQL1LqO

腹のすき具合からして恐らくもう昼だろう。夕方には着くと言ってたし、もう少しの辛抱だ。頼むから何も起きてくれるなよ。

俺は欠伸をして呆けていると、遠くから何かがこちらに向かって来るのが見える。いや、追いかけられてる?
目を凝らしてもよく見えないので、レヴァンテインの力を使って右目の視力を上げる。
見えたのは馬に乗った如何にもな山賊が3人。


「山賊らしき奴らがつけてきてます!数は3人!」


フラグ回収早すぎだろとか思いながら、前に居る2人に大声で知らせる。このままだと、追いつかれるのは時間の問題だ。


「ここで野盗にで遭遇するとは……馬車を止める事は出来ませんぞ」


お爺さんの言う通り、ここでクレアに被害が及ぶのは絶対に駄目だ。







行動安価

安価下
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/10(土) 15:17:22.20 ID:L2dgG80P0
レヴァンテインの真空刃やジャスミンの遠距離攻撃できる魔法で盗賊か馬を攻撃
合ってるかどうかは自信がない
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 10:32:39.70 ID:epqmQo9JO

そうだ…あれなら。俺は馬車の屋根によじ登り、上から真空刃を飛ばす事にした。だが、思ったより走行する馬車でバランスを保つのが難しい。

フラフラとしながら何とか安定させ、剣を抜き、構える。敵は直線上、横薙に斬るのが最善だな。腹の底から右手に力が流れるイメージ、部分的にレヴァンテインの能力を発現させる。


「……!」


まさに今、振り抜こうとした際に、俺は気付いてしまった。
今俺は、人を殺そうとした、躊躇もせずに。相手は人間で、モンスターとは訳が違う。

いくら相手が悪党で、人の命を平気で奪う奴らだとしても、俺自身は人を殺した事なんて無いし、 モンスターと同じ感覚で倒せるはずもない。

なのに……俺は、殺せる。モンスターを殺すように、人が虫を潰す時のように……殺せる。


「お、男さん!大丈夫です………か…?」


「あ…ジャスミン…?」


どうやらジャスミンも屋根に上がって来たようだ。一瞬ジャスミンが固まった気がするが、何か顔についてたか?流石に2人では狭いので、ジャスミンに促されお爺さんの隣に降りて座る。


「私が……足止めします!」


申し訳ないが、ここはジャスミンに任せよう。今の俺は少し、おかしい。俺は少し前のリネル村の救出任務を思い出す。廃家に居たゴブリンを俺は殺した。初めて生き物を殺したという実感で泣きそうだったはずなのに。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 15:11:14.36 ID:epqmQo9JO

今でもあのゴブリンを刺した感触は覚えてる、気持ち悪かった。
でも、報復しにきたゴブリンの時には殺せるかもって思ってた…何でだ?
もしかして、この力のせいなのか。


「…あっ!!」


ジャスミンの声が聞こえたと思ったら、何かが落ちる音がした。まさかと思い屋根上を見たらジャスミンが居ない、落ちたのか!?


「ゲルムさん!ジャスミンが落ちた!止めてください!」


「…………すみません」


「!!」


無理もない。このお爺さんにとってはクレアの安全が第一だ。俺達はただの雇われ冒険者、優先順位なんて考えるまでも無かった。





行動安価
安価下
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/11(日) 15:13:40.82 ID:Bw7Ok6z40
ジャスミンを助けるために馬車から飛び降りる
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 15:53:32.51 ID:epqmQo9JO

「……あとは頼みます!ゲルムさん!」


お爺さんの返事も待たず、俺は馬車を飛び降りる。その時に見えたクレアは、野盗に追われていて、ジャスミンが落ちたのにも関わらず、涼しい顔で景色を眺めていた。

地面を転がり落ち、すぐに立ち上がる。野盗は2人に減っていた、1人は何とかしたようだ。
駆け足でジャスミンの元へ向かう。街道から外れた所に横たわって動かない、気絶しているかも。

俺がジャスミンの傍に来たと同時に野盗2人も馬から降り、こちらに近づいてくる。手には武器…話し合いは出来なさそうだ。


「てめぇら!よくも兄貴に怪我させてくれたなぁ!覚悟出来てんだろうなぁ!!」


兄貴…ジャスミンが何とかした奴か。キレてる奴が剣を振り上げるが、もう1人の髭面が止めてくれた。もしかしたら案外まともな奴かもしれない。


「落ち着け。いきなりぶっ殺しちゃぁ可哀想だろ?それに女は殺しちゃぁ勿体ねぇ……お仕置きしねぇとな。男の方も、たっぷりと可愛がってやろうぜ」


全然まともじゃなかったわ。ヤバイ奴だったわ。このままでは俺もジャスミンも危険だ、何か対策をしなければ。






安価下
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/11(日) 16:20:30.14 ID:4Q994Evp0
おいおいこんなところで野盗かよ、どこから流れてきたんだとか適当言って煽りつつ装備やらの観察、様子見
襲ってきたら仕方がないので鞘付き剣ぶん回し〜レヴァンテインを添えて〜でおねんねさせる
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/11(日) 17:29:29.56 ID:epqmQo9JO

俺はあれこれ考え、実行する。


「…はぁ〜〜っ…ついてねぇな……馬車から投げ出されて、挙句野盗に襲われるとか……俺の運も尽きたか」


俺は両手を上げ、抵抗しないよとアピールしてみる。


「ヒャハハハ!見ろよ!こいつ抵抗すらしないぜ!?」


「…素直だな。何か企んでねぇか?」


髭面は俺の行動を怪しむが、馬鹿には通じそうだ。


「こっちは1人気絶してるしな。守りながら抵抗するにしても圧倒的に不利だ、俺も馬鹿じゃないさ」


「随分と落ち着いてんじゃねぇか。肝が据わってるのか、ただの馬鹿なのか…」


髭面は長い髭をさすり、俺の様子を窺う。


「変な詮索しなくても、ただの馬鹿だよ俺は」


そう言いながら奴らの装備を確認する。馬鹿の得物は剣、特に硬そうな装備はしてなくて、布で出来た服だけ。
髭面は布の服の上から胴当てと、頭に角が左右に生えた兜、両手には篭手を装備している。得物は斧だが、まだ背中に差したままだ。
やるならこの馬鹿からだな。


「ダンテ!このビビり野郎をアジトに連れていこうぜ!」


「…まぁ良いだろう。お前、変な気起こしたらぶっ殺してやるからな」


髭面は俺を指差し、目で威圧してくる。安心しろよ、すぐに変な気起こしてやるから。


「わかったよ。俺のツレ…気絶してるし、抱えてもいいか?」


「ったりめぇだろ!さっさと持て!!」


「ああ…ありがとう」


馬鹿が。
ジャスミンに振り向く勢いのまま、ショートソードを鞘ごと抜き、そのまま振り向いて、後ろに居る馬鹿の顔面に鞘を叩きつけた。
馬鹿は勢いよく転げ回り、ピクリとも動かなくなる。やべぇ、やりすぎたか。


「ちっ…油断しやがって。やってくれるじゃねえか兄ちゃん…大した馬鹿力だが、俺はそう簡単にはいかねぇぞ」


髭面は斧を抜き、構えをとる。マジか、今の見て反応それだけか。

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/13(火) 15:22:44.43 ID:EVQnE6soO

まぁ、確かに魔法のある世界だし、怪力くらいじゃ驚かないか。俺も鞘を構える。
剣術なんぞ皆無の俺だが、ゲーム漫画アニメで培った知識がある。アテになるかわからんが、当たれば良い。この力に頼って振れば勝てるだろう。


「抜かねぇのか?」


「……抜くまでもないって事だよ」


「けっ…舐めやがって」


髭面は唾を吐き捨てると、回転して斧を投げてきた。
馬鹿かこいつ、得物を投げやがった。難なく交わして体勢を変えた時、右肩に激痛と衝撃が走る。
俺は衝撃にぶっ飛んでしまい、草原に倒れ込む。


「いっ…てぇ!!」


何が起きた?殴られたのか?俺の居た場所には、髭面が立っていた。いつの間に距離を詰めた…?


「軽いなぁ兄ちゃん……どうだ?効くだろ、俺の『魔撃』はよ」


髭面は俺を見下し、鼻で笑う。見るのとやられるのじゃ訳が違う。
今のは喧嘩慣れした奴が、服で目眩ましをして死角から殴るアレと同じだ。
俺は立ち上がり、構える。


「おいおい、大人しくしてりゃあ骨の数本で勘弁してやっても良いんだぜ?女は貰ってくけどなぁ」


髭面は髭をさすり、ニヤケ面でジャスミンを見ている。この野郎…絶対にそれは許さねぇ。
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/13(火) 15:49:18.18 ID:EVQnE6soO

「ふざけんな……ジャスミンに手を出したら、許さねぇからな」


「ガハハ!威勢がいいのは結構だけどよ」


髭面が低く構える。


「そういうのは、強くなってから言えや」


「…!」


髭面が消えた。くそ、どこに行きやがった!
俺は適当に鞘を振る。当たればいい、当たれば俺の勝ちなんだ。


「俺ぁこっちだぜ?」


「なっ…────ぐあっ!!」


左頬を殴られた。今度は何とか踏ん張り、倒れずには済んだ。血の味がする、口の中が切れたか。
それにしてもこいつ…どこから出てきやがったんだ。


「…力量差がありすぎだな、兄ちゃんに最後のチャンスやるよ。諦めろ」


「う、うるせぇ……俺はまだ本気出してねぇだけだ……」


「……ガーーーッハッハ!やっぱりただの馬鹿だったか!気に入った!次で殺してやるよ!」


「やれるもんならな…!」


馬鹿にしやがって、お前なんか当たればなんて事ねぇんだ。当たればな。
ただ、あいつの動きが速すぎて見えねぇ。何か…何か策は…。








男ステータス
右手の筋力増強のみ



行動安価
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 16:03:08.31 ID:R1Q8DHn0O
地面を殴って砂煙で覆う
物理的なダメージがあるなら、攻撃が飛んできた時にその場所だけ何か変化があるはず
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 16:04:05.47 ID:vltKaLrh0
目の強化とかはできないか
てかこいつホンマに盗賊かよ

全力で強化して地面をブン殴り叩き割る
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 16:05:43.71 ID:R1Q8DHn0O
あ…適応されるか分からないけど、砂煙で覆った後に魔眼も使ってください
反応速度を上げておかないと辛そう
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 16:18:55.41 ID:EVQnE6soO
安価下とか入れ忘れました
上記3つ参考にして頑張ります
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 18:04:12.30 ID:vltKaLrh0
ここってある程度定まったルートがあるわけじゃなくて、安価を参考にしてイッチが舵をとる感じ?
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/13(火) 18:34:10.47 ID:TbkMklKWO
ちょっと先までの展開はあって、余程今の流れに逆らう安価でない限りは、その動線に乗せて話を進めてますね。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 15:00:43.77 ID:kgfHVtwqO

「…ふぅぅ〜……」


落ち着け男よ、クールになれ。まずはジャスミンを避難させよう、ここでは巻き込んでしまう。
俺は鞘を腰に戻し、ジャスミンに近付いて抱き上げる。小柄だからか、思ったより全然軽い。


「…何してんだ?」


「…ここじゃジャスミンを巻き込んじまう、少し遠くに運ばせてくれ」


「馬鹿かお前…俺がそれを許すとでも思ってんのか?」


まぁ、そうだな。俺は左肩にジャスミンを担ぎあげ、空いた右手で鞘を抜いて、大きく振り上げ不敵に笑ってみせた。


「なら、無理矢理運ぶさ」


地面に向かって鞘を振り下ろす。爆音と共に一瞬で視界が砂埃に覆われた。俺は右脚を強化して、その力で大きく後ろに跳ぶ。正直どのくらい跳ぶかわかんなかったけど凄いな、この力。
砂埃を抜け、大きな岩の近くまで来たのでジャスミンを裏に隠して、飛び出た方を見ると、中から髭面が埃を割って出てきた。


「兄ちゃんよぉ……悪足掻きはよせ。萎えちまうだろ」


俺はジャスミンと髭面が遠くなる方向へ走り、後ろを振り返ると髭面は俺を見るだけで追って来ていない。
俺は走るのを止め、髭面に向き直す。


「どうした!かかってこいよ!」


安い挑発だ。髭面は何故か装備を外し始め、身軽になると肩を回して低く構えた。
もしかして更に早くなるとかそういうやつ?勘弁してくれ。俺は鞘を振り上げる。


「またそんな事しても意味無いぜ!死ぬ準備しろよ!兄ちゃん!」


髭面が消えた。これでいい、俺はまた鞘を叩きつけて地面から砂埃を発生させる。魔眼も発現させ、些細な砂埃の些細な変化に神経を尖らせる。

高速で向かってくる人影が見える、良く見える……来る!
顔を狙った一撃を側面に交わす。よく見えるよ、お前の動きが!


「何だと!?」


「俺の……価勝ちだ!!」


振り上げた鞘を、髭面の首裏に叩きつける。力が強すぎたのか、髭面は地面から派手な音を上げた。

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 15:51:21.62 ID:kgfHVtwqO

暫くすると砂埃は消え、視界が鮮明になってくる。勝ったんだな、俺は。改めて、この力と魔眼の凄さに気付かされた。
まだ謎が多いが、もっと使いこなせれば更に強くなれる気がする。

髭面は倒したし、とりあえずジャスミンの様子を見なきゃ。
俺はジャスミンの元へと向かおうとした時────。


「待てよ……兄ちゃん」


「!?」


吃驚した。殺してないとはいえ、意識があるとは思わなかった。俺は再び鞘を抜き、倒れたままの髭面に向かって構える。


「そう構えんな……もう戦う気力もねぇ。俺の負けだ」


「……」


油断するつもりは無いが、たしかに先程までの雰囲気とは違う気がする。俺も鞘を戻し、気になっていた事を聞こうと思った。


「たしか……ダンテだっけ?お前、ただの野盗じゃないだろ」


「なんだ……俺はただの野盗だぜ。そんな事聞いてどうすんだよ…?」


「少し気になったんだ、強いから」


ファンタジーの盗賊や山賊…色々あれど、手強いというイメージが無かったからか、髭面の強さに疑問を持っていた。この力が無ければ間違いなく負けていたしな。


「…そうかい。で、俺を殺さないのか?」


「え?」


何言ってんだこいつ、殺す訳ないだろう。


「おいおい……わかるだろ。俺は野盗だぜ?このまま生かしといて良いのかよ?」


「あぁ…」


そうか、こいつ等を生かしたらまた別の人が被害に遭う。でも、こいつらには兄貴ってのが居るはずだ。こいつを殺しても野盗を根絶出来るわけじゃない。それに俺は人を殺したい訳じゃない、感覚はおかしくなっているが理性はある。

とあるゲームの主人公は人を初めて殺した時にかなり取り乱していたが、それは人を殺したという業を背負う覚悟がないからだ。画面越しの俺はゲームだからと理解しているから、こいつ取り乱しすぎだろとか思っていた。今なら少しは気持ちがわかる。

殺らなければ殺られる、正当防衛、言い方はあれど結局は人殺しだ。背負わなくて良いなら俺だって業を背負いたくはない。ただ、野放しにする事によって被害者が増えるのも好ましくはない。ジャスミンの容態も気になるし、何とかしたいが。








行動安価
安価下
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 16:01:56.83 ID:bGDDDw35O
武装解除と称して武器を取り上げて拘束し、ジャスミンの手当てをする。
ジャスミンの容態が落ち着いたら
依頼人を放ってしまったことに頭を抱えてジャスミンと相談する。(助けたこと自体に後悔はしていないと伝えて)
ダンテに捕まえた後の賊の処遇を尋ね、ここら辺(世界)の司法関連について聞いてみる。
可能ならば戦闘中に使った技術を聞いたり、賊から使えそうなものをぶんどる。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 17:06:13.00 ID:kgfHVtwqO

こいつの処遇は後だ、一先ずはジャスミンを確認してこよう。俺は髭面に近付いて、服を脱がし始める。


「おいおい何してんだ…まさかお前──」


「勘違いすんな!ちょっと拘束するだけだ」


脱がせた服を細長く折り畳み、手足を固く縛る。その際、他に何か武器は無いか漁るが特には見つからなかった。今のこいつなら解く力もないだろう。俺は髭面を置いて、ジャスミンの元へと向かう。





あれから少し経ったが、まだジャスミンの意識は戻らない。馬車から落ちた時に怪我をしていないか確認したが、素人目には擦り傷と打撲くらいしか分からなかった。

外傷はそれだけで、死んではいないはず。ノース帝国で医者に診せてやりたいが、まだまだ距離はある。俺はジャスミンの傍で座り込み、この後の事を考えながら時折髭面を見ていた。あれ、あいつ寝てね?まぁいいけど。


「……ん…」


「おっ……ジャスミン?」


良かった、生きてる。


「……?」


「起きた?」


「え……えっ!?」


目を開けたので声を掛けたらめちゃくちゃ驚かれた。ジャスミンは半身を起こして前髪を整えて俺に上半身だけ向ける。


「あれ…あの……私、馬車から落ちて……」


「そう、気絶してたよ」
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 17:40:57.46 ID:kgfHVtwqO

「気絶……」


そう言うとジャスミンは辺りを見回す。遠くで拘束されているダンテを見つけたのか、一瞬顔が止まり俺とダンテを交互に見やる。多分俺が野盗を倒したと理解してくれた。


「…あの……クレア様達は…?」


「先にノース帝国に行ったよ、俺はジャスミンを助けに馬車を降りたんだ」


「えっ……何…どうして……私なんか…」


俺の頭に稲妻走る。さながらロマサカでいう技習得時の電球がピコーンと音を鳴らすアレが俺の中で起きた。これは言うしかない、言うしかないだろう。まさか俺が言える日が来るとは思わなかった。


「誰かを助けるのに理由がいるの?」


「……」


言えたああああ!選んだ自分で言うのも何だけどこのセリフ最高だな!流石スクエ〇だなぁ!
ジャスミンは少し驚いた後、俯いてしまう。あれ、怒った?ミスった?


「……ありがとう…ございます、男さん」


「…!……ジャスミンが無事で良かった」


顔を上げたジャスミンの口角が上がっていた、顔全体を見なくても嬉しそうにしているのがわかる。俺も嬉しくなる。


「あ、怪我してると思うんだけど大丈夫?痛くない?」


「えっと…左腕が……ちょっと痛いですけど……大丈夫です」


「そっか…無理しないでね」


俺は立ち上がり、ジャスミンに手を差し伸べる。一瞬迷っていたが、ジャスミンは俺の手をとって立ち上がる。俺はそこら辺のヘタレ主人公共とは違って、手を握るくらいじゃ動揺しないぞ。


「これって依頼失敗……かな?」


「…そう……なるんですかね…」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 18:24:10.99 ID:kgfHVtwqO

野盗も倒し、ジャスミンも助けたまでは良い。だが、この後の対応がまだ思い付いていない。


「あの……そこで寝てる人は……どうするんですか…?」


「あ……」


たしかに。ノース帝国までの交通手段は後回しにして、あの髭面…ダンテから少し話を聞こう。







俺はいびきを立てて寝ているダンテに跨り、頬をペチペチと往復ビンタする。


「ぐご……んん………なんだぁ?」


「おい、起きろ」


「何だよ兄ちゃんか……やっと殺す気になったか?」


「え……こ、殺す…?」


殺すという単語にジャスミンが反応する。おい、勘違いされるだろ。


「殺さないよ。ちょっと聞きたい事があるんだ、教えてくれよ」


「何だつまらねぇ……教えるのは良いが…退いてくれ、重い」


「そんな重くないだろ!」


俺はダンテから離れ、傍に座り込むとジャスミンも隣に座った。



「で?……聞きたい事って何だよ?」


「ああ…お前をノース帝国に連行したとして、賊の処遇はどうなってるんだ?」


「なるほどな、そう来たか……捕まった賊はアジトの場所を吐くまで拷問されんだよ、それがえらいキツイらしくてなぁ……吐く奴も居れば耐えられずに自害する奴も居るぜ。過剰な拷問で殺しちまう事も良くある」


「拷問……穏やかじゃないな」


賊に対する処遇はとしては妥当かもしれないが、殺してしまう程の拷問とは酷いな。民の為に賊を根絶やしにする……拷問は仕方の無い事かもしれない。


「んで、聞きたい事ってのはそれだけかよ?」


「いや、まだある。この国の法とかはどうなってるんだ?」


「はぁ…?俺に聞くかよそれを」


まぁ、そう言われちゃあそうなんだけど。この国での法があって、俺がいつ侵すかもわからんしな。聞いておいて損はないだろう。

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:09:28.52 ID:kgfHVtwqO

「法も何も、普通に生きてりゃ大丈夫だろ。領主や王族の奴らに歯向かうとかしなけりゃ、普通に生きていける」


「犯罪を犯した奴や賊を取り締まるのは国か?それともそういった機関があるのか?」


「他所者にてめぇの国の問題を任せる訳ねぇだろ。問題が起きれば領主や国王、帝王の私兵が動く。民の支持を得られるからな」


なるほどな、俺の世界で言う警察機関は無いらしい。例えるなら都道府県各県に王様が居て、王様が責任を持って自分の国の犯罪者を私兵で取り締まり、県民から支持を得ていく感じだな。

法に触れるラインも、あまり人道的ではない事をしなければ問題はなさそうだ。偉い奴には頭下げる、そこは現実と変わらんな。



「わかった。じゃあもう1つ質問」


「まだあるのか…お次は何だ?」


「お前の技……あれは何だ?俺にも出来るのか?」


これが一番気になっていた。仮にアレが俺にも出来るなら大いな成長が望める。


「ああ…『魔走』の事か。自分で言うのも何だが……俺の魔走は中々のモンだったろ。魔翌力のある奴なら誰でも出来るが…簡単じゃねぇぜ」


「誰でも……」


俺はジャスミンを見る。魔翌力があるならジャスミンにも可能なのか?俺の視線に気付いたのか、ジャスミンは首を横に振る。


「わ、私には出来ません……」


「そうなんだ?……そうなのか?」


再びダンテに視線を戻して聞く。


「嬢ちゃんは『ノーナ』だからな、出来ねぇのも当然だ」


「ノーナ…?」


「まさか…知らねぇのか?」


「ちょっと世間に疎くて……」


「どんな僻地で育ったんだよ……まぁいい。ノーナってのは魔翌力を放出する事を得意とする奴の総称だ。俺みたいに魔翌力を内に留めるのを得意とするのが『レクタ』って言うんだ」


「へぇ〜……」

128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 19:21:18.86 ID:kgfHVtwqO

ノーナとヘクタね…まだまだ知らない事が沢山あるな。


「で、俺にはその魔走は出来るのか?」


「…兄ちゃんには無理だ、魔力がねぇからな」


たしかに凄い力は持っているが、元はただの人間だしな。魔力とかってのは生まれた時からの才能的なやつだろう。俺の力は魔力とかそういう次元ではないと分かっただけでも収穫か。


「そうか……そりゃあ残念だ」


「何言ってんだ、俺の魔走を見切ったんだぞ。魔力なんて無くても兄ちゃんなら問題ねぇだろ」


魔眼のおかげだけどね。俺は何となく周囲を見回した時に、街道に野盗が乗ってきた馬が2匹まだ居るのが見えた。これは使えるぞ。


「……あそこの馬一頭貰ってくぞ」


「馬?……ああ、好きにしろよ」


これでノース帝国までの足を手に入れた。後はこいつの処遇だ。






殺す、解放、連行する、その他


安価下
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:24:25.36 ID:IhHWbLuy0
もうひとりいた下っ端っぽいやつってどうなりましたか?
安価下
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:27:07.08 ID:kgfHVtwqO
キレてた野盗は生存。まだ意識は戻らない。
という感じで
安価下
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:28:35.70 ID:YEYuTuwG0
キルしましょう
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:29:11.18 ID:UmvLnwlb0
解放
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:36:50.49 ID:D6bnxIXRO
放置
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:38:22.53 ID:7QO87v5GO
ここで殺してもなぁ、解放で
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:43:27.86 ID:TPerd99j0
なんか[ピーーー]ことに葛藤してたのに[ピーーー]んかい
つーか毎回毎回クズキャラにする奴沸いてくるな
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 19:45:12.58 ID:bGDDDw35O
連取り自重して静観していた結果がこれだよ!
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 20:06:01.50 ID:kgfHVtwqO

俺は悩んだ挙句、答えを出す。やはり、こいつをここで生かしてはいけない。俺は立ち上がる。


「お、男さん……?」


「なぁダンテ、お前達はこの世界じゃあ有名なのか?」


「ああ?……国に居る賊なんて他国からすりゃゴミみてぇな問題だ。隣国だって俺達の事は知らねぇよ」


「…なるほどな。ジャスミン、ここから一番近い別の大陸ってある?」


「えっ……た、多分…ノース帝国から北西にある港町から…西の大陸に……行けます」


「そっか、ありがとう」


俺は今度は鞘ではなく、剣を抜いた。


「あ…?なんだよ兄ちゃん、やっと[ピーーー]気になったかよ」


「ああ……お前を[ピーーー]よ」


「お、男さん!?な、何を…!」


ジャスミンは止めるでもなく、怖いのか俺から少し離れる。人を殺そうとする奴が近くに居たらそりゃ怖い。


「お前達はここに居ちゃいけないんだ、わかるよな」


「けっ…やるならさっさと殺れよ」


「ああ。そうさせてもらうよ」


俺は剣を逆手に持ち、思いっきり突き刺す。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 20:15:10.33 ID:IhHWbLuy0
レヴァンテインの意思(安価)に引っ張られてるんだ!
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 20:20:57.92 ID:kgfHVtwqO

「……おい、なんの真似だよ」


俺は突き刺した。剣をダンテの顔の真横に。


「ダンテは今ここで俺が殺した。お前は今日からゲールだ」


俺は剣を地面から抜き、鞘にしまう。


「は……?何言っ────」


「ダンテは今、ここで、俺が殺した。お前の名前は今からゲールだ。わかったらあそこのもう1人担いで、さっさと港町に行って西の大陸に行けよ。あ、ぶっ倒れてる奴の名前はお前が考えろよ」


「…おいおい……とんだ甘ちゃんだな、兄ちゃん」


「うっせ、俺達はもう行くからな」


「…またここで野盗してるかもしれねぇぞ?」


「そん時はホントに殺してやるよ」


「……ガーハッハッハ!こいつぁ怖えーな!解いたらさっさと西の大陸に逃げねぇとな!」


「そうだろう。じゃあな、ゲール」


俺は怖がるジャスミンに弁解しまくり、何とか誤解は解けた。クレア達がノース帝国に着くのは夕方、俺達は今から行ったら夜の良い時間になりそうだな。
後ろにジャスミンを乗せ、俺達はノース帝国を目指す。

140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 20:26:07.77 ID:IhHWbLuy0
綺麗に捌くな
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 20:31:21.12 ID:bGDDDw35O
*ブラボー!*
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/14(水) 21:31:39.57 ID:kgfHVtwqO

〜街道



「……お、あれかな?」


夕暮れが暗闇に変わりかける頃、とても遠くに大きな街……要塞?が見えた。何かメリルとは全然違うな。


「あ……見えましたね」


「ノース帝国はどんな所なんだろうなぁ…ちょっと楽しみ」


「ここはダーウィン様の領土ですけど…ノース帝国は独立国家なんですよね」


「え?そうなんだ?」


メリルの領土にあるリネル村みたく、領主に統治される訳じゃないのか。独立国家か、領主が怒りそうなもんだけど平気なんだな。


「えと…世界に3つある闘技場の1つがノース帝国にあって……領土が小さくても国としての武力は高い…らしいです」


「へぇ〜…」


要は戦闘に長けた猛者が多く滞在してる感じかな。国としての武力って、戦争でもあったりすんのかな。


「あ、ジャスミン疲れたら言ってね。まだまだ距離はあるみたいだし、疲れたら休憩するよ」


「あ……だ、大丈夫です……ありがとうございます、男さん…」


「そっか。なら、飛ばすよー」


言ったは良いが馬の扱いなんて知らんな。困惑していた俺に、ジャスミンが教えてくれた。夕日は沈み、月が2つ。



〜ノース帝国


「うわぁ……なにこれぇ……」


俺じゃ形容出来ない程の……なんかもう凄い。FF〇で見た街に似てる気がする。なんだっけ、ミッドガル?
明らかにメリルの町とは使ってる素材が違うと一目でわかる建造物群。お店も入口から沢山見え、まだ営業している様だ。

決して綺麗とは言えない街並みだが、迫力が凄い。中央には巨大な円形の建物、恐らくこれが闘技場だろう。夜だというのに人がまだまだ沢山出歩いている。ここでは普通なのかな。

闘技場の上から…奥にそびえ立つ城みたいなのが見える。帝国というくらいだ、あそこに帝王が居るのは間違いないだろう。
クレアも恐らくは…。


「初めて来ましたけど……凄い、ですね」


「だねぇ……さて……」







☆ノース帝国参考
宿屋、武器屋、防具屋、占い屋、闘技場、王宮、貴族街、貧民街



行動安価
安価下
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/14(水) 21:37:42.64 ID:IhHWbLuy0
利用しそうな施設の場所確認しながら先に宿取るか
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 14:31:37.53 ID:LlQ5T+rGO

「とりあえず…宿を探しながら街を見て回ろうか」


「え……クレア達達は…良いんですか?」


「ああ、それなら大丈夫だと思うよ」


俺は入口すぐの厩舎を指差す。


「馬を預ける時にクレア達の馬が居たんだ。だから多分、奥に見える城に居るんじゃないかな」


「あ……そうなんですね…良かったぁ…」


「クレア達は逃げないし、今日はとりあえず休もう。あまり長旅に慣れてないから、疲れちゃったんだよね」


疲れたとか言わないジャスミンの前で言うのは少し恥ずかしくて、照れ隠し代わりに頬を指で掻く。


「あ、はい……そうしましょうか」


「じゃ、行こうか」


俺は街へと向き直し、歩こうとしたら袖が後ろに引っ張られた。振り返るとジャスミンが俺の袖を摘んでいる。俯いていて、モジモジしている姿はとても可愛らしく見えた。

漫画とかでよくある別れを告げて背を向ける男の服を女が掴んで本音を漏らす的なそういうシーンが次々に頭を過ぎる。


「あ、あの…その……私…」


俺は察した。なるほど、俺を壁代わりにしたいんだな。メリルの町でも木の影に隠れているくらいだ、人混みを歩くのは苦手なのだろう。


「いいよ、後ろに隠れてても」


「えぁ……あ、ありがとうございます…!」


これくらいならどうってことないしな。ジャスミンは袖からシャツを掴み、壁から覗き込む様に隠れる。思ったより密着していて、俺は歓喜する。






「ここは武器屋か」


俺の武器はショートソードだ。この剣も使い勝手は悪くないが、ここで新しく新調して何を使うか決めてもいいな。

145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/15(木) 14:53:32.72 ID:LlQ5T+rGO

「お、こっちは防具か」


今の軽装も悪くは無いが、ゲームの騎士達が着ているような鎧も良いな。機動力は落ちそうだけど防御に関しては信頼出来る。護衛の金が入るなら考えてみよう。


「ん?ここは何だろう」


「占い屋さん……ですね」


この世界にも占いはあるのか。占いってやった事ないし、信じたことも無いけど異世界の占いはどんなものかは気になるな。


「あ、閉まってるけど…ここはギルドかな?」


看板の文字は読めないが、メリルの町にあるギルドと似たような文字と装飾があった。
暫く歩いていると、目的の宿屋を発見する。なんというか想像と違って……海外でいうモーテルみたいな感じだ。


「ん………あ、そうか!」


俺は大事な事を思い出す。所持品の入ったリュックは馬車の中だ、お金が無くちゃ宿にすら泊まれないぞ。


「やっべー…どうしよ」


「あ、私……あります…」


ジャスミンは袋を俺の横腹から差し出してくる。袋は軽く、どうやらジャスミンも依頼の報酬がないとキツそうだ。


「た、多分……一泊は出来ると……」


くぅ〜情けない、不可抗力とはいえお金を出して貰うなんて。ふかふかのベットで寝る為だ、背に腹は代えられん。


「ありがとうジャスミン、必ず返すから…」


「い、いえいえ!」


ジャスミンは大丈夫と言うがそうはいかない、絶対返す。泊まれると安心した俺達は、宿屋へと入る。



〜宿屋


「ん……いらっしゃい」


宿屋に入ると、受付の内側で座って雑誌?みたいな本を読んでいて、眼鏡を掛けたおじさんが立ち上がる。


「一泊?連泊?」


「あ、一泊で」


「はいよ。部屋は何部屋借りるんだい?……二つ?一つ?」


「えーと…」





安価下
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 14:55:05.12 ID:CPKVf7td0
2つ
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 14:55:17.33 ID:UVdmnbNio
一つ
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 15:31:54.11 ID:LlQ5T+rGO

「二部屋で……いいよね?」


俺はジャスミンを見ると、頷いていた。流石に同部屋は色々とまずい。この前うさ耳女と同じ部屋に泊まったが、ジャスミンはあいつと同じタイプではない。二部屋借りたら金が嵩むが、明日依頼で返せばいいのだ。


「二つね……はい、これが鍵ね」


カウンターにタグの付いた鍵が出され、俺は一つをジャスミンに渡す。タグに書かれた数字が連番になっていたので、隣の部屋になるみたいだ。

俺達は受付を出て宿舎へと向かう。やっと休めると思うとどっと疲れが押し寄せてきた。早く寝よう、今日は。
俺達はそれぞれのドアの前に立ち、おやすみ、と挨拶をして中へと入る。

見た目より内装は綺麗で、胸当てや鉢金を外してベットにダイブする。寝心地は最高だ、もう寝れるぞこれ。
大の字で伸びをして、欠伸をするとドアからノックの音が聞こえた。

俺に来客なんて居ないだろうし、ジャスミンかな?と思いベットから立ち上がりドアを開ける。やはりそこに居たのはジャスミンだった。

外套は脱いでおり、湖の時はネグリジェだったがこの服は何ていうんだ?恐らくこの村娘みたいな格好が外套の下に着ている普段着なのだろう。
スカートも足首まであり、露出は少なく、パンを入れたバスケットを持たせたら似合いそうだ。


「…どうしたの?」


「あ…えと……」


「…?とりあえず中…入る?」


一瞬言中へ入れと言うか迷ったが、ジャスミンが頷いてくれたので中へと入れる。俺は近くの椅子へと座り、ジャスミンはベットに腰掛ける。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/15(木) 15:44:38.41 ID:LlQ5T+rGO

「それて、どうしたの?」


「あ、あの……私、助けて貰ったのに……お礼とかちゃんとしてなくて……その…」


ああ、なるほど。そんな事は気にしていなかった。


「ああね……でも宿屋に泊まれたのはジャスミンのおかげだし、大丈夫だよ」


「それじゃ……ダメです…何か……ちゃんとかお礼したくて…」


「うーん……そう言われてもな…」


「な、何でも…!良いです……何か…ありませんか?お願いとか……」


とあるネタに反応しそうになるが押し留める。特にこれと言ってお願いはないけど……どうせなら……。








安価下
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 15:46:59.12 ID:VPCDPTeg0
風呂で背中を流してくれ
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 15:47:28.42 ID:Eo7QfSXDO
今回の依頼が終わった後も自分と一緒に行動して欲しいかな
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/16(金) 05:19:33.71 ID:qOuS5ChU0

「じゃあ……風呂に入るから、背中流してくれる?」


なーんて、とか冗談っぽく言って軽く笑った。


「えぁ……お、お風呂……背中…」


「…ん?」


あれ?何か予想と違う反応だ、もしかして本気にしてる?


「あ、ジャスミン…冗談──」


「や、やります!お背中…!……流します!」


ジャスミンはバッと立ち上がる。マジか、正直やってくれるのならやってほしいけど……良心と邪な考えがぶつかり合って俺の判断を鈍らせてくる。結果、脳内戦争は邪な考えが勝利し、俺は背中を流してもらう事を決意する。


「じゃあ……お願いしようかな」


「は、はい……!」


俺も椅子から立ち上がり、浴室に向かう。やべぇ、ドキドキしてきた、元カノとも一緒には……いや、あいつとはそれ以前の問題か。
扉を開けると脱衣所になっていて、奥にもう1つ扉がある。奥の方も開けてみると、3mくらいの縦長スペースと、そこまで広くはないが浴槽が隣にあり、シャワーは無さそうだ。

これはあれか、浴槽から湯を掬ってかけるやつか。ならばまずは湯を張らないとな。浴槽の脇に取り付けられた蛇口の左右に赤と青のバルブがある。

これ懐かしいな、ばあちゃんの家がこんなだったな。俺は赤を捻って熱々のお湯を出し、青捻って温度を調整していく。たまにある、外から薪で湯を沸かすやつじゃなくて良かった。
俺はジャスミンに声を掛け、風呂が沸くまで何か話をしようと思って再び部屋の椅子に座る。






安価
雑談内容、或いは質問内容。

安価下2まで
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 06:17:29.07 ID:0Gr8XG2DO
今回の依頼が終了した後、ジャスミンはどうするのか
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 06:59:56.11 ID:3MEv2+2+0
昼間の盗賊の件
彼らはちゃんと更生するだろうか、自分の行動はあれでよかったのだろうか
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 14:37:07.42 ID:x2swtC+CO

「ジャスミンはさ、これからの予定とかって決まってるの?」


「えっと……えと…王都セインガルドに行こうかと…思ってます」


「セインガルド?」


「あ、王都はですね…」


この世界の事をまだ知らない俺に、ジャスミンは王都の事を教えくれる。記憶喪失設定だからね、仕方ないよね。

聞いた話では、王都とはアースガンド大陸の中央部に位置する巨大な王国で、アースガンド大陸は今俺達が居る大陸の名前らしく、1番大きな大陸でもあるらしい。


「ジャスミンは王都で何をしに?」


たしかジャスミンはメリルのヴァーダを襲名すると言っていたはずだ。


「今回の護衛中に…改めて力不足と感じてしまって……王都の魔術協会に入会しようかと……」


「へぇ、魔術協会!なんか凄そう」


「そこで…改めて魔術を学んで……もっと…強くなりたいです…」


「そっか…応援するよ」


「あ、あり…ありがとうございますっ」


魔術協会か、たしかジャスミンの村から指導者が派遣されているとか何とかゲルムさんが言ってたよな。同郷のよしみがあるかは分からないけど、きっとジャスミンなら良い方向に転がるはずだ。

会話が途切れ、気まずくなってきたので俺は話題を探す。何か話せる事は……。あ、昼間の事を話そう。


「ねぇ、昼間の…ゲールの事なんだけど…」


「は、はい…?」

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/16(金) 14:59:42.31 ID:x2swtC+CO

「いやさ…ジャスミンは、ゲール達が西の大陸に行って更生すると思う?」


「あ……えっ…と…うーん…」


ジャスミンは煮え切らない様子だ、無理もない。奴らは野盗で、全てを奪い、命までも刈り取る悪党だ。あれくらいで更生するかと聞かれれば、するとは言い難い。


「ジャスミンは、あの時の俺の行動は……良かったと思った?」


「………」


返事は無い。たしかに、これは正解とかがあるような話ではない。個人の価値観によるモノだし、多くの人々を救う為に人を殺せって言われて、はいって簡単に頷ける話でもない。

恥ずかしい話だが、俺はああいう展開を漫画で見た事があるからこそ、あの方法を思い付けた。正解かどうかはわからないが、少なくとも俺の中で一番納得の行く方法だった。


「私は……男さんが剣を抜いた時…本当に怖かったです。後からすれば、考えがあっての事なんですけど……あの時の男さんの顔が…」


ジャスミンはそこで黙ってしまう。そんなに怖い顔していたのか俺は…逆に気になるな。


「男さんの行動の…善し悪しは……私にはわかりません。でも…あの選択は……とても良かったと…私は思います」


「お…そ、そっか…ありがとう」


誰かに自分の行動を肯定してもらうだけで、こんなにも胸のモヤが取れるのか。俺を気遣ってかは置いといて、そう言ってくれるのは嬉しい。

俺は壁の時計を見る。もうそろそろ張ってても良い時間だな。数字と思われる記号は分からなくとも、記号の位置や針の動きは同じなので問題は無い。


「えーっと……じゃあそろそろ、お風呂に…」


「……!は、はははいっ!」

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 15:20:35.55 ID:x2swtC+CO

俺は脱衣所で服を脱ぎ、中へと入る。風呂場によくあるバスチェアに腰掛け、浴槽から湯を汲み身体や頭にぶっかけてジャスミンを待つ。
や、やべぇ…超緊張してきた……浴室に男女が2人、ToL〇VEるが起こらないはずもなく…。


「む……!」


アホな事を言っていたら脱衣所から音がした。ジャスミンが脱ぎ始めたのか……振り向きたいが、振り向いたら終わりな気がする。くそ…落ち着け、クールになれ、平静を保て。


「お、おじゃ………うぅ〜……お、お邪魔します…」


ぎゃあああ来てしまったあああ!!どんな格好してるの!?ねぇねぇねぇ!!


「うんうんうんうん…い、いいいらっしゃい」


駄目だ!緊張し過ぎて震えが止まらん!平静なんぞ装えるか!振り向いていいのか!?良いよね!?


「う、後ろ……見ちゃ、駄目…ですよ」


「は、はいっ!」


ああああああああああああああああ!!!でも可愛いからもう何でもいいやあああああああああ!!!


「それじゃ……や、やりますね…」


「どうぞ!?」


上ずった声を出してしまった、恥ずかし!そうするとすぐに、背中に浴室にある付属品のボディブラシが当たる。


「痛かったら……言ってくださいね」


「お願いします!!」


ブラシが擦られ始めた。普通に気持ちいい、人にやってもらうのと自分でやるので、ここまで差がある物なのか。背中を流すって考えた奴天才かよ。


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/16(金) 15:30:00.86 ID:x2swtC+CO

ゴシゴシと、ジャスミンは丁寧に洗ってくれる。いやぁ〜最高の気分ですなぁ!たまに肌に当たるジャスミンの手や指先に反応しては、邪な考えがギュンギュンとフル稼働する。

悶々としているとブラシが背中から離れ、丁度いい温度の湯が泡を流していく。ああ……これで終わってしまうのか…悲しいなあ。


「終わり…ました」


「う、うん!ありがとう!」


「じゃ、じゃあ私は…これで…」









自由安価
行動、起きた事柄、会話……etc


安価下
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 15:35:11.26 ID:HKTSZ3yy0
滑ってジャスミンを押し倒してしまう
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 16:03:21.24 ID:x2swtC+CO

ジャスミンが立ち上がり、脱衣所への扉を開ける音がした。


「きゃっ!」


ジャスミンが変な声を上げる。なんだ!不審者か!?俺は振り向いてはいけない掟を破り、振り向きざまに立ち上がる。ジャスミンはバスタオル1枚の姿だった。ただ残念なのはそこで俺の足が滑ってしまった事だ。


「おわっ!?」


「えっ……きゃぁ!」


何とか体勢を整えようとするが……駄目!滑った勢いのままジャスミンを押し倒してしまう。


「いてて…………ん?」


何だ?この柔らかい物は。顔に伝わる心地良い感触は。


「あ……ああ…」


「んはっ!?」


ジャスミンの震えた声で我に返り、すぐに顔を上げる。ジャスミンは前髪を上げていて、今は顔全体がわかる。超真っ赤な顔してる、可愛いけどこれはまずい。

おいおいマジかよ、リト君かよ。俺は顔を上げる際に手を突くが、突いた場所がまた最悪だった。かぁ〜っ!これはァー!
バスタオルが肌けるアクシデントは回避したものの、この手に伝わる感触は……。


「うっ……うぅ…」


「ご、ごめん!!ジャスミン!わざとじゃないんだ!」


ジャスミンは限界なのか、両手で顔を隠して震えている。俺は飛び退いて、すぐに目を逸らす。本当にToL〇VEるしちゃったよ、何だよマジかよありがとう。


「ご、ごめんね……大丈夫…?ジャスミン?」


振り返らずに聞く。事故とはいえやってしまったのは事実。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/16(金) 22:02:40.08 ID:x2swtC+CO

「ごめん…なさい……ごめん…なさい……」


「いや!謝るのは俺の方だし!ジャスミンは悪く……ないよ」


俺は違和感に最後、言葉が濁る。ジャスミンは俺が喋っている最中でもずっと謝っていた。これは俺に言っているものでは無い…?
過去に何かあったと推測するのは容易だった。でも、それは触れちゃいけない物なんだろう。

俺は立ち上がり、ジャスミンを見る。まだ、手で顔を隠したまま謝っている。あまりの異様な光景に、今までの取り乱しが嘘のように、俺は落ち着き払っていた。

本来ならこの姿を見るだけでも大分興奮していたんだろうな、とか思いながらジャスミンをベットへと運ぶ。今日は色々ありすぎた、もう寝よう。ベットに寝かせると、服に着替えてジャスミンの部屋に行って寝た。





翌朝、ジャスミンは昨日の出来事は覚えてないらしい。俺とぶつかって気を失ったと思っているようだ。めちゃくちゃ頭を下げられたが、俺はアレに触れる事は無くジャスミンを宥め続けた。

とりあえず俺達は朝食を済ますべく、まずは王宮に居るであろうクレアからリュックを返してもらわなくては。ついでに依頼の成否も気になるしな。外へ出ると、昨日の夜とは打って変わってどうやら朝は人が少ないみたいだ。


「これくらいなら大丈夫?」


「が、頑張ります…!」


意気込むジャスミンを微笑ましく思い、王宮を目指す。



〜王宮 正門


「ご要件は?」


「多分ここにクレア様が来ていると思うんですけど…居ますか?メリルからここまで護衛した者なんですが」


「少しお待ちください」


門番の兵士は、もう1人の兵士に耳打ちすると門の奥へと走っていく。にしてもでっけぇ城だなぁ…クレアはここに何しに来たんだろう。
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/17(土) 23:37:43.58 ID:QAupTT0a0

しばらく待っていると、先程の兵士が戻ってきた。


「お待たせしました。御案内します」


そう言うと中へと歩き出したので、俺達は後を追う。


「やっぱりここに居たね」


「そう、ですね…」


こそこそ話していたら兵士が立ち止まり、俺達に向かって敬礼する。正門から王宮までは距離があり、敷地内には色々と家らしきものが大小と点々と存在している。俺達はそのうちの一つの前で止められたという事は、ここにクレアが居るのだろう。


「クレア様は此方においでになります。それでは、失礼します」


「ありがとうございます」


俺は兵士に頭を下げると、ジャスミンも続いた。兵士が遠くなっていき、俺達は段差を上がって扉をノックする。


「入りなさい」


この声は間違いない、クレアだ。こちとら苦労したってのに…まぁ言ってても仕方ないな。許可が出たので扉を開けると、そこには執事のゲルムが深々と頭を下げて待っていた。クレアは奥の窓近くのテーブルに腰掛け、ティーカップを口に運びながら俺達を見ている。


「男さん、ジャスミンさん…先日の非道なる判断……大変申し訳ありませんでした」


「い、いやいや!頭を上げてくださいよ…別にあれは仕方ない事ですし」


「は、はい……私が不甲斐ないばかりに……ごめんなさい…」

163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/17(土) 23:42:41.54 ID:ho2P27Hb0
依頼人から離れたから怒られるかと思ってたわ
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/17(土) 23:52:30.46 ID:QAupTT0a0

俺達を含め、お爺さんからすればクレアの身の安全が第一だ。飛び降りたのは俺の勝手な判断だしな。仮に止まっていたとしても、あのゲールが相手だ、クレア達が居たらただでは済まなかっただろう。


「なんと寛容な…改めて心から感謝致します」


「全く…馬車から落ちたり勝手に助けに行ったり……護衛としてどうなのかしらね」


「あぅ……」


ぐうの音も出ない。確かに頼りないうえに勝手過ぎた、怒られても仕方ない。こっちの苦労も知らないで、と思うのはお門違いだ。


「安心して下さい。お嬢様はああ見えてちゃんと心配なさっていたんですよ。昨日も──」


「ちょっと!余計な事は言わなくて良いのよ!」


お爺さんは笑って、ベットの脇に移動すると俺の荷物を持ってきてくれた。


「どうぞ、男さん」


「あ、ありがとうございます」


「報酬の方も、ギルドに話せば受け取れます。この度は誠にありがとうございました」


お爺さんはまた、深々とお辞儀をする。良かった、ちゃんと報酬も貰えるのか。


「感謝しなさい。ほんとはあげなくても良いんだから」


「はい、ありがとうございます」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 00:27:02.83 ID:F69gr1Vz0

俺達はクレア達の元を後にして、とりあえずはギルドへと向かう事にした。道中、俺は気になる事があり、ジャスミンに聞いてみた。


「クレアはさ……俺達を心配してたって言うけど、何か引っかかるんだよね」


「…?…どういう事ですか?」


「ジャスミンが馬車から落ちた時……クレアはそれを気にする素振りもなかったんだよ。落ちる時に一瞬見えただけだけど…興味がないというか…そんな感じの顔」


俺の気のせいかもしれないし、考え過ぎかもしれない。ジャスミンは考え込んでいるのか、黙ってしまう。


「まぁ……考えても仕方ないよね。ごめんごめん、忘れて」


「あ、はい……」


話しているうちにギルドへ着き、俺達は受付嬢から報酬を受け取る。中々の額で、財布袋が潤う。とりあえずは朝食を食べようと、食事の出来るお店に入る。

見た目は普通の一軒家みたいだが、使ってる素材が鉄?みたいなもので、見た感じではとてもお店には見えなかった。中は小綺麗で、洋風テイストな良い雰囲気の店内。案の定文字は読めないのでジャスミンにあれこれ聞いて注文する。


「じゃ、依頼達成を祝して…かんぱーい」


「か、かんぱい…」


俺達はジュースで達成祝いをする。流石にこんな時間から酒を飲むのは、異世界とはいえ気が引ける。


「ジャスミンはこの後…王都に?」


「そう…ですね。準備したらすぐにでも……」


「そっかそっか…」


俺はどうしようか。今更だが、生きる、という事以外に明確な目的がない。強いて言うならば……この力の事を調べるとか?ん〜…とは言っても手掛かりがなぁ〜…あ、ゲルムさんがこの力の事知ってたか。

まぁ急ぎ過ぎって訳でもないし、未知の事が多すぎるこの世界では、当面は依頼でもいいかもしれない。



「お、男さんは……これからは…?」


「うーん…」








次の目的
安価下
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 00:32:20.23 ID:ZsSg0oLB0
昨日宿屋の代金を立て替えてもらったことを思い出して、その代金を返すとともに、せっかくだしジャスミンに何かしてほしいことがないか聞いてみる
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 03:31:49.43 ID:F69gr1Vz0

「あ、そうだった」


「…?」


俺は袋から宿屋を立て替えてもらった分を少し色を付けて、銅貨をジャスミンの前に置く。


「宿代…まだだったよね、ありがとう」


「え……でも…多くないですか…?」


「そう?まぁ取っといてよ。ほら、ジャスミン居なかったらお店で注文出来なかったしね」


「で、でも…」


しばらくこんなやり取りが続いて、料理が運ばれてくる。俺は銅貨が邪魔でしょ、と促して何とか受け取ってもらえた。


「お待たせしました。ワイルドボアの燻製塩焼きセット、お二つになります」


目の前に置かれたのは、俺の世界で言う所のベーコンだ。パンが1枚と目玉焼きにミニサラダ。リネル村でも同様のを食べたし、料理というのは異世界でも、あまり変わらないのかな?

使う素材は作品によって様々だが、味の問題はない。たまに稀ではあるが、異世界の食事に舌が合わないという作品もある。なんなら言語すら通じないやつも。俺はそのタイプではないから何とかなってるとはいえ、想像したら大変そうだ。


「いただきまーす」


「い、いただきます…」


食事は始めながら、俺は先程の問の答えを考えるが思い付かない。気になる事はあれど、やりたい事は無いのだ。
ふと、もぐもぐと食べるジャスミンを見る。


「ねぇ、ジャスミン」


「んっ……ん…は、はい?」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 06:05:06.23 ID:F69gr1Vz0

「何かしてほしい事とか……ない?」


「え……え?」


考えも無しに言ってしまった。流石にこれは唐突過ぎたか。


「あ、いやさ…さっきの続きなんだけど、このあと特にやる事も決めてなくて……ジャスミンから何か無いかなー…なんて」


「あ…な、なるほど…」


ジャスミンは手を止めて考えてくれる。言っといて何だが無茶振りだったな。


「じゃあ……その…クレア様の様子を伺ってくれますか…?」


「えっ…クレアの?」


予想外の内容だった。


「え…ど、どうして…?」


「その……クレア様の様子…変なの……気付いてましたよね…?」


「まぁうん…」


国境や野盗に襲われた時のクレアを思い出す。たしかに普通ではないと思ったけど…。
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 06:15:28.34 ID:F69gr1Vz0

「えと…私がクレア様の様子を見ても良いんですけど……やっぱり私には…そんな時間が……」


「これは、もしかしたら私の気のせい……かも…しれないんですけど…ちょっと心配で…」


なるほど。ジャスミン自身も気にはなっているが、目的と天秤に掛けた時に目的が優先されたんだな。
確かに暫くは滞在出来る資金もあるし、かと言ってやることも無い。クレア達なら顔も知れて居るし、様子を見るのも良いかもしれない。


「ど…どうですか……?」










ジャスミンの頼みを受ける、受けない
安価下



安価下で受けない場合、別のやりたい事
安価下2
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 06:23:03.76 ID:J6JEahpN0
うけない
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 06:34:21.56 ID:ong6g2K90
しばらくこの町を拠点に依頼をこなす
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 07:21:22.92 ID:F69gr1Vz0

問題のない頼みとはいえ、俺自身はクレアが苦手だ。出来ればあまり関わりたく無いのが本音である。ここはジャスミンから受けるという体裁を保ったまま、俺は別の事をしよう。
特に帰る場所がある訳でもないし、拠点はノース帝国で大丈夫だろう。


「わかった。任せといて」


「あ、ありがとうございますっ」


心は痛むが、承諾したフリをする。いくら可愛い可愛いジャスミンの頼みとはいえ、嫌なものは嫌だ。
俺達は食事を終えると、広場らしき所で別れる事にした。


「男さん…短い間でしたが……ありがとうございました」


「俺の方こそ。ジャスミンと会えて良かったよ」


「私もです……またいつか…会えたら良いですね」


「そうだね。会えるのを楽しみにしてるよ」


「はいっ!……それでは…失礼します。後はお願いしますね……」


「任せといて。またね、ジャスミン」


俺は手を振ってジャスミンを見送ると、ぶらりと街中を歩く。さぁさぁ、本来の主旨に戻るとするか。元々俺は生きる為に、経験を積む意味で依頼を受けたんだしな。

金はたんまりある。店を回ってみるのも良いが、ギルドへ行って早速依頼を受けてもいい。闘技場の見学も面白そうだな。





行動安価
安価下
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 07:31:02.14 ID:sRVO26GDO
占い屋に行ってみる
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 07:31:27.84 ID:ksLUuA520
とりあえず装備新調するべ
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 07:44:24.71 ID:df8ysP4g0
ジャスミンとお別れか
最後くらい彼女の依頼を受けたかった
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 08:25:33.92 ID:rj39qo6X0
うーん相変わらずのフラグへし折りっぷり
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 08:49:24.08 ID:UhQ/em3/0
安価取れない奴が悪い
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 08:52:45.37 ID:Izwcjuwp0
常に張り付いてる暇人ニートには言われたくない
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 08:54:48.15 ID:YYmqqJhW0
嫌がらせ安価しか思い浮かばない奴ってどれだけ精神が腐りきってるんだろうか
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 09:39:24.48 ID:F69gr1Vz0
ここまでに結構専用単語出して来たんですけど、単語のまとめって要ります?
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 09:41:26.57 ID:sRVO26GDO
できればまとめ欲しいです
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 10:23:39.57 ID:V4TeZdzI0
要る
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 14:10:12.46 ID:fahfQ4YfO

●用語まとめ


〜大陸

ガーランド大陸…中央大陸、1番大きい
北の大陸
西の大陸


〜国・地域

メリル…ガーランド大陸南東部に位置する国
メリルの町…メリル領土内中心部に位置する町
リネル村…メリル領土内南東に位置する村
ダーウィン…ガーランド大陸南西部に位置する国
ノース帝国…ダーウィン領土内南西に位置する独立国
王都セインガルド…ガーランド大陸の中心部に位置する王国
ガーランド王国…北の大陸の最北端にある王国
ベルベット村…未開拓地域にあるとされる村
メルヴィス湖…メリルとノース帝国の間にある大湖


〜能力・精霊物・その他

レヴァンテイン…男が精霊『レヴァンテイン』から授かった力。右脚右手の筋力強化、右目の視力向上。魔眼の目、漆黒の篭手。

精装束…精霊の純魔力を有した『魔獣』から作られる服。魔縫士に頼まないと作れない。現在確認済『聖光』『雷雨』『烈風』

神代(ヴァーダ)…国に仕える戦士。個人で『魔獣』を倒せる程の力を所有する。

魔縫士…魔力を縫う事が出来る魔法使い

ヒトツキの夜…満月が一つになる日。セイレーンの歌が聴けるとか。


〜主要人物

うさ耳女…転生直後お世話になった女
ジャスミン・リ・ラスティア…ベルベット村出身の魔法使い
マリア…リネル村にて救出した少女
リネル村のお爺さん…救出依頼を出した人
クレア・グランフォード・メリル…メリル領主の娘
ゲルム…クレアの執事
アレス…メリル領主に仕えるヴァーダ
エルサム・ダーウィン…ダーウィンの領主
ゲール(ダンテ)…ダーウィン領に居た野盗、改名して西の大陸へ逃がす



大体書いたと思うけど抜けてたら教えて下さい
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 14:24:30.22 ID:ksLUuA520
地図とかって作ってたりします?
あれば見たいです
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 15:10:43.35 ID:fahfQ4YfO
即興で書きました。領地とか適当過ぎたので、あくまで参考程度に。下手過ぎわろた。
https://imgur.com/gallery/ChHYkNN
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 15:21:37.83 ID:fahfQ4YfO

そうだ、占い屋ってのがあったよな。異世界の占い…気になるな。俺は占い屋を思い出しながら街を練り歩く。
たしかわかりやすい目印が…ってあったわ。怪しげな建物に水晶玉が入口に沢山飾ってあり、如何にもって感じの雰囲気だ。


「すみませーん、やってますかー?」


「あら…いらっしゃい…」


中で出迎えてくれたのは、魔女みたいな格好のお婆さん。中は暗く、お婆さんの目の前には大きな水晶玉が置いてある。


「お座り下さい…」


「あ、はい」


俺は床に置いてあるカーペットに腰を下ろす。


「それで……本日は何を占うのですか…?」


「そうですね……」






安価下
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 15:26:37.93 ID:ksLUuA520
位置関係がしっかりわかるので十分です。ありがとうございます

この先の吉兆
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 15:29:41.04 ID:ksLUuA520
日本語間違えてるぅ

吉兆じゃなくて吉凶
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 15:31:18.98 ID:ksLUuA520
いや、吉兆でいいのか?わからん
すみません安価下でお願いします
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 15:44:13.53 ID:fahfQ4YfO

「じゃあ…この先、俺に吉兆はありますか?」


「わかりました。それでは…見てみましょう…」


お婆さんはゆらゆらと、手を水晶玉の回りで動かしている。ああ、何かそれっぽい動きだなぁ。


「……おや?」


「何か見えました?」


「……ふむ」


お婆さんは手を止めると、俺を疑うかの様な目で睨んでくる。凄みがあるというか、少しゾッとする。


「貴方は……人、なのですか?いえ…存在しているのですか?」


「え…?」


お婆さんの言っている意味がわからない、そんなのは見ればわかるだろうに。いや待てよ…転生の事が関係してる?でも……どういう意味かわからんな。


「貴方は……誰ですか?」


「俺は……男って言うんですけど…」


「……ふむ」


その時、嫌な音がした。何かにヒビが入る音。この場にある物でヒビが入るなど、目の前の水晶玉以外にない。


「……これは…」


水晶玉にヒビが入ってもお婆さんは動じない。何処か分かっていたかのような雰囲気で、悲しげに水晶玉を見ている。


「申し訳ありません…私には貴方を占う事が出来ません……」


「そ、そうですか……」


吉兆を聞いた矢先にこんな出来事とか…どうなっちまうんだよ俺。一応銀貨を1枚置いて俺は占い屋を出る。あまり気分は良くないが、何となくこの世界の占いは当たりそうな気がする。
あーやだやだ、気分転換に別の事をしようそうしよう。







行動安価
安価下
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 15:45:03.41 ID:fahfQ4YfO
なんかそれっぽくなったからセフセフ!
安価下
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 15:56:17.51 ID:DntH7ktv0
ギルドで仕事を探す
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 15:56:30.74 ID:XJsQV/Wu0
>>174
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 15:57:14.40 ID:ksLUuA520
すまん、ありがとう
移動時間から考えてアースガンド大陸ってあまり大きくなさそうですが、さっきの地図って世界地図ですか?
それとも五大陸の人類が行ける範囲の地図って感じですか?

安価は下
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 16:28:01.57 ID:fahfQ4YfO
移動距離は書いてて思いましたね、見切り発車が仇になった。地図はまた描き直しするかも、描けなかったら想像で補完にしてもらおうかな。
地図自体は異海の先がある設定ですね、設定だけは無駄に抱えてます。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 16:36:57.05 ID:fahfQ4YfO

気持ちの切り替えなら、ギルドで依頼が良いな。依頼内容に集中すればさっきの出来事も忘れられるだろう。
俺はギルドまで行くと、戸を開けて壁に貼られた依頼書を見る。

やるならやっぱり戦闘か?それとも安全に採取か?壁に貼られている依頼を分けると……




大型モンスター討伐(3~5人)、洞窟探索(3人) 、魔物討伐(1人)
、採取(1人)










(魔物名)討伐
(収集物)採取
(洞窟名)探索



安価下
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 16:42:04.37 ID:XJsQV/Wu0
薬草採取
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/18(日) 20:37:59.43 ID:fahfQ4YfO

ゲールとの戦闘は激戦だったからな、ここで軽い依頼をやるのも良いだろう。俺は駆け出し冒険者がやる様な薬草採取の依頼書を摂取る。受付嬢に持っていき、採取依頼中のバッチを貰って外へと出た。

とある漫画では木の精霊に生やしてもらったり、何十日分の薬草を持ってきたりとあるが、俺の異世界転生はそうはいかない。地道に、適量を集めるのだ。依頼内容も小袋が詰まるくらいと書いてある、漫画のような事はしないし起こらない……起こっても良いけど。

目的地はノース帝国を出て北東の森だ。サンプルも貰っているので多分間違えたりはしないだろう。諸々の準備確認も簡単終わり、ノース帝国の北門に向かおうとした時──。


「うおおおおぉ!アレス様だああああ!!」


「アレス様あああああああ!」


俺達が最初に来た東門の方からいくつもの声が響く。俺は叫ばれる名前に聞き覚えがあった。アレス様ってあのアレス?クレアの?何でここに?

まぁ……うーん…色々と気にはなるが、俺には関係ない事だよな。薬草取りに行くぞ薬草。小袋を握りしめ、北門へと向かう。



〜北東の森


森についてから数時間、依頼は順調だ。サクサク取れる訳でもないが、たまにはこういうのも良いなとしみじみ思う。薬草を取るだけで金が貰えるのだ、元の世界に比べたら採取も楽しく感じる。

あと1.2時間くらい集めれば一杯になりそうな小袋、森に入ればモンスターとの遭遇も考えられたが、平和そのもの。気軽に薬草集めが出来るってもんだ。
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/19(月) 15:21:04.46 ID:za88siOXO

「よいしょ…………お?」


薬草を抜き取った時、奥の方に足跡が見えた。興味本位でまじまじと見ると、魔物と人間の足跡が左へ続いていた。
誰かここで魔物とやり合っているのか。俺は一切遭遇しなかったというのに運の悪い奴だ。


『オオオオオォォォッ!!!』


「な、なんだ!?」


突然、耳を塞いでしまいたくなる程の雄叫びが鼓膜を刺激する。今のは一体…?この先に居る魔物によるものか?









行く、行かない
安価下
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/19(月) 15:24:31.59 ID:3rnAI8Uk0
行く
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/19(月) 15:51:48.18 ID:za88siOXO

どれくらい先から聞こえたかはわからないが、近くに居るはずの人間はただでは済まないぞ。俺は小袋をリュックに入れ、駆け足で足跡を辿っていった。






お、開けた空間が見えるぞ。物音も聞こえてきた、どうやら無事のようだ。俺は近くまで来ると茂みに隠れて覗き見る。

広間にはハイゴブリンとは種族の違うガタイの良い、角が生えた人型の魔物。手には鉈を持ち、あの筋肉質な腕で鉈を振られたら一溜りもないな。

対峙するのは──








安価下 性別
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