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【二次創作】ダンガンロンパ Re:MIX【オリロンパ】ch.3
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2 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:31:05.34 ID:MYWNZgLQO
【彩海学園 生徒名簿】
【女子】
※身長や胸囲はフィーリングなのでおかしい部分は目を瞑ってください
【名前】瀬川 千早希(セガワ チサキ)
【才能】超高校級のコスプレイヤー
【身長】167cm
【胸囲】87cm
【好きなもの】クレープ
【嫌いなもの】カメラ
【名前】天地 りぼん(アマチ −−)
【才能】超高校級の家庭教師
【身長】154cm
【胸囲】64cm
【好きなもの】プラネタリウム
【嫌いなもの】宝くじ
【名前】御伽 月乃(オトギ ツキノ)
【才能】超高校級の童話作家
【身長】165cm
【胸囲】95cm
【好きなもの】雲
【嫌いなもの】尖ったもの
【名前】陰陽寺 魔矢(オンミョウジ マヤ)
【才能】超高校級のヒーロー
【身長】160cm
【胸囲】71cm
【好きなもの】竹刀
【嫌いなもの】ハムスター
3 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:32:01.36 ID:MYWNZgLQO
【名前】古河 ゆめみ(コガ −−)
【才能】超高校級のスタイリスト
【身長】170cm
【胸囲】84cm
【好きなもの】流行りもの
【嫌いなもの】水たまり
【名前】臓腑屋 凛々(ゾウフヤ リリ)
【才能】超高校級の家事代行
【身長】163cm
【胸囲】74cm
【好きなもの】干したての布団
【嫌いなもの】火事
【名前】月神 梓(ツキガミ アズサ)
【才能】超高校級のアイドル
【身長】168cm
【胸囲】82cm
【好きなもの】ぬいぐるみ
【嫌いなもの】パクチー
【名前】照星 夕(テルホシ ユウ)
【才能】超高校級の柔道家
【身長】158cm
【胸囲】92cm
【好きなもの】マット運動
【嫌いなもの】避難訓練
4 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:32:43.12 ID:MYWNZgLQO
【男子】
【名前】御伽 朝日(オトギ アサヒ)
【才能】超高校級のショコラティエ
【身長】170cm
【胸囲】76cm
【好きなもの】ハートマーク
【嫌いなもの】猫
【名前】駆村 沖人(カケムラ オキト)
【才能】超高校級の地域振興委員
【身長】187cm
【好きなもの】時雄島
【嫌いなもの】嵐
【名前】神威 スグル(カムイ −−)
【才能】超高校級の???
【身長】160cm
【好きなもの】マカロン
【嫌いなもの】抹茶ラテ
【名前】竹田 紅重(タケダ ベニシゲ)
【才能】超高校級の玩具屋
【身長】196cm
【好きなもの】狩猟
【嫌いなもの】ハイテクノロジー
5 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:33:26.71 ID:MYWNZgLQO
【名前】吊井座 小牧(ツルイザ コマキ)
【才能】超高校級のイラストレーター
【身長】176cm
【好きなもの】日陰
【嫌いなもの】〆切間近
【名前】デイビット・クルーガー
【才能】超高校級のプロファイラー
【身長】184cm
【好きなもの】統計学
【嫌いなもの】イエダニ
【名前】飛田 弾(トビタ ハズム)
【才能】超高校級のダンサー
【身長】190cm
【好きなもの】美しいもの
【嫌いなもの】もんじゃ焼き
【名前】御影 直斗(ミカゲ ナオト)
【才能】超高校級の幸運
【身長】168cm
【好きなもの】醤油ラーメン
【嫌いなもの】ピーマン
6 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:34:19.85 ID:MYWNZgLQO
※
頭痛が痛い。……間違えた、頭が痛い
ガンガンとハンマーを打ち付ける様な鈍い衝動。目の奥では、チカチカとした赤が瞬いている
逃げる様にギュッと目を瞑り、布団を頭から被る。……結論から言うと逆効果だった
この痛みは外からじゃなくて中から……私の内側が原因。心の中から響いてくるモノ
逃げ場を失った鼓動は頭の中を反響して、更に強い情動となって私の中を蹂躙していく
悪循環の無限ループ。これを断ち切るには、逃げるよりも根本の原因を探った方が早そうな気がする
……考えるまでも無いか。学級裁判、オシオキ、私はクロである彼女に、確かに親近感を抱いたんだ
自分を偽り続けて、本当の自分を見失う。ゲームや漫画ではよくあるシチュエーションだけど、実際にそんな人はいない
けど、クラス。ひいては社会という大きな一組織の中で生き残る為にはキャラを作るのは必須でもある
臓腑屋さんはきっとそんな人だったんだ。それに、私だって皆には言えない秘密が……
「……今何時?」
小難しい事を考えていたら、とろんとした睡魔の気配を察知する
時計を見ると、短針は九の文字を示している。少し速いけど、もう一眠りしようかな
精神的な疲労から回復するために目を閉じる。眠りに落ちるのは、そう難しい事じゃなかった
7 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:35:10.33 ID:MYWNZgLQO
※
〜学級裁判数時間前〜
古河「御影ぇ……きちっと話してもらおか?」
御影「うわぁああ!! 来るんじゃかったー!」
デイビット「ハ、ハ、ハ。お手柔らかに頼もうカ、ここは懇親の場である故にネ」
月神「そうね……ふふっ、皆楽しそうで嬉しいわ」
駆村「………………」
駆村「悪いな、スグル。俺はお前に投票して……」
スグル「い、いえ! 大丈夫ですよ。それに、僕の為を思ってしてくれたんですから」
スグル「それに、駆村さんは秘密が見たいだけなんですよね? 僕が嫌いなんじゃなくて嬉しいです」
駆村「……俺が言える事じゃないが、スグルはもう少し人を疑った方がいいと思うぞ」
スグル「?」
駆村「それで、スグルの秘密なんだが……やっぱり才能の部分は塗り潰されていたからわからないな」
スグル「そうですか……どうして僕だけ才能を隠すんでしょう?」
駆村「さあな……それと、秘密に書かれているものなんだが」
駆村「『新世界プログラム』って、何の事だ?」
スグル「さあ………?」
8 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:38:34.45 ID:MYWNZgLQO
【Chapter3】
善悪インヤン双方の悲願
9 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:39:30.29 ID:MYWNZgLQO
※
月神「……………………」
竹田「……………………」
御影「……………………」
古河「……なあ、もうええんと違うか?」
月神「もう少し待ってましょう。もしかしたらそろそろ来るかも……」
古河「もう昼過ぎや! ええ加減にせえ!!!」
ぼん。と大爆発。ゆめみが怒っている。……無理もない
飛田「ぐぅおぅ……! 脳にキーンと来るぞ……!」
古河「じゃかあしいわ! そもそも瀬川はいつまで寝とるんや! おかしいやろ絶対に!」
朝日「あは。きっと疲れちゃったんだねぇ」
竹田「疲れてるの範疇か? 寝付きがいいとかそういう次元じゃねえだろうよ」
古河「もう我慢出来ひん、ウチらだけで新しい階を探索するで!」
……ゆめみは早く探索したいみたい。それを全員で宥めるを、かれこれ数回はやっている
私はそれを傍目で見ながら、お菓子を口の中に詰めていた。今食べているのはお気に入りのマシュマロ
ふわふわとした感触……至福。ついついもう一つ口に運んで……
朝日「月乃ちゃあん。そのマシュマロ、私にも一個欲しいなぁ」
月乃「殺すぞ」
10 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/07/28(日) 22:41:06.09 ID:MYWNZgLQO
朝日「ふえぇ。酷いよぉ」
月乃「……頭の中に糖分しか貯まってない朝日にはまだ甘い」
朝日「昔は優しかったのにぃ……」
しゅんとした顔の朝日……私の鏡写しの様な姿の兄は、哀しそうに髪を弄る
昔の話は嫌い。昔の兄は、本当に普通の子供だった癖に。でも、小さな頃から家で本を読んでいる事が多かったはず
朝日「月乃ちゃん。皆は探索するみたいだよぉ」
月乃「……流石に、一日中待つのは非現実的」
朝日「ねぇねぇ、一緒に行こうよぉ。月乃ちゃんと二人なら安心するもんねぇ」
月乃「……一人でいって」
自分と同じ顔。自分と全く違う、媚びた性格。甘える様な声にはうんざりする
何時からだっけ。兄を避け、嫌うようになったのは
私も行こう。遅れない内に……
朝日「あれぇ、スグルくぅん。どうしたのぉ?」
スグル「えっと、前までは瀬川さんが一緒に探索に来てくれたんですけど……」
朝日「来てないもんねぇ。ならぁ、私と一緒に行かない? 私も一人なんだぁ」
スグル「本当ですか? ありがとうございます!」
朝日「えへへ、せっかくだから手を繋ごうよぅ。優しく、ぎゅって握ってあげるねぇ」
月乃「……私も行く。全く油断も隙もない」
本当は置いていきたいけど、スグルもいるなら仕方ない
なるべく早く終わらせて、好みのお菓子でも食べていよう……
11 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/03(土) 20:04:39.94 ID:GxwKatA3O
※
月乃「……ついた」
スグル「はぁ、はぁ……すみません。少しだけ休憩させてください……」
月乃「……軟弱。もっと体力をつけるべき」
朝日「辛いならぁ、私に掴まっててもいいよぉ?」
スグル「だ、大丈夫で……うわっ!?」
朝日「うふふ。バテちゃったんだねぇ、私が支えてあげよっかぁ?」
朝日「ねね。やっぱり私と手を繋ごうよぅ。スグルくんは私の事、好きだもんねぇ〜」
スグル「えっと、はい……」
月乃「……付き合わなくていい。無視が一番」
月乃「……朝日には関わらない方がいい。お互いにとってもそれが最善」
朝日「あは。月乃ちゃん、もしかしてスグルくんに嫉妬しているのぉ? 可愛いなぁ〜」
月乃「……止めて」
朝日「月乃ちゃんも大好きだよぉ。一緒に手を繋ぐのってぇ、幾つ以来だっけぇ?」
月乃「朝日!」
朝日「ごめんなさぁい……」
スグル「あ、あの……二人とも、僕の事を心配してくださってありがとうございます」
スグル「もう大丈夫ですから……行きましょう」
朝日「えへぇ、どういたしましてぇ〜」
月乃「……礼には及ばない。早く行った方がいい」
12 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/03(土) 20:05:32.78 ID:GxwKatA3O
※
古河「お、珍しいやん。月乃もおるんか?」
月乃「……珍しい?」
飛田「朝日とスグルは仲が良いじゃあないか。他にも千早希とも一緒にいるな」
飛田「何故オレでは無いのだ……ぐぬぅぅぅ……」
古河「オマエウザいからに決まっとるやろ……」
……知らなかった。確かに、私は朝日を避けていた
けど、いつの間に……スグルには後で言おう
朝日「道具がいっぱい置いてあるねぇ。ここは何の部屋なのぉ?」
飛田「工作室だそうだ。月乃もふとした日常で、小道具やインテリアが欲しくなる時があるだろう?」
古河「そん時はここでチャチャッと造ればエエって事やな! DIYとか楽しそうやろ?」
飛田「フッ、日曜大工なんていうみっともない真似死んでもしたくないなぁ」
朝日「私も汚れちゃうしぃ……」
スグル「僕も少し……」
古河「なんなんオマエら!? 幾らなんでも男の癖に非力過ぎるやろ!」
朝日「オトコノコだもん……」
月乃「……わかった。次に行く」
朝日の手を引っ張って外に出る。その後ろをスグルがわたわたとついてきた
13 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/03(土) 20:08:20.23 ID:GxwKatA3O
※
月神「あら。三人とも、いらっしゃい」
朝日「わぁ、可愛いお洋服……私、ちょっと着てみようかなぁ」
月乃「……着たら二度と服が着られない体にする」
スグル「どういう事ですか……」
御影「ここは被服室だってさ! つまらないよね」
朝日「私は綺麗なお洋服が見れて幸せだよぉ?」
月乃「……服を選ぶ楽しみもわからないの。哀れ」
御影「なんでそこだけ意気投合するのさ!?」
月神「それにしても……今日は、月乃さんも二人と一緒にいるのね」
月乃「……今日は?」
月神「私の主観だけど……普段、朝日君はスグル君と一緒にいる事が多いの」
月神「二人ともとても仲が良くて……見てる私まで笑顔になるわ」
月乃「…………そう」
スグル「あれ? 月乃さん、どうしました?」
月乃「……次に行く。きたかったら好きにして」
朝日「あぁん、待ってよぉ〜」
14 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/03(土) 20:12:44.65 ID:GxwKatA3O
※
駆村「お、今日は月乃もいるのか。珍しいな」
月乃「……いたら悪い?」
駆村「いや、そんな事は無いんだが……」
駆村(なんか……やけに機嫌が悪くないか?)ヒソヒソ
スグル(さあ……?)ヒソヒソ
月乃「……ここは科学室。実験器具が置いてある」
朝日「わぁ〜お薬がいっぱいだぁ。ビタミン剤あるかなぁ?」
スグル「ビタミン剤、飲むんですか?」
朝日「栄養価がどうしても偏っちゃうからねぇ。外から摂取しないとダメなんだぁ」
竹田「止めとけ止めとけ。栄養ってのはメシを食わねえと摂った気分にならねえだろ?」
スグル「そういうものなんですか……?」
竹田「それに、ここにあるのは全部劇薬だ。下手に飲むとお陀仏になるぜ」
スグル「そっちを先に言ってください!」
駆村「まあ、ご丁寧にどの毒薬にも対応する解毒薬が置いてあるからな。最悪、ここまで取りに来れば問題は無いか」
竹田「つっても即死寸前まで持っていく奴もあるからな。下手なモンは口にすんなよ?」
朝日「はぁい。わかりましたぁ」
朝日「でもでもぉ、私の作るお菓子は愛情たっぷりだから甘くて美味しいよぉ〜」
月乃「……余計な事は言わなくていい」
スグル「あはは……」
15 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/03(土) 20:13:42.86 ID:GxwKatA3O
※
月乃「……ここで、最後のはず」
朝日「ここはぁ武道館だってねぇ」
スグル「凄いですね……凛とした空気を感じます」
照星「お! スグルんに先輩達、せっかくだしここでお茶でも飲んでいくっすか?」
照星「自分、こう見えても茶道をちろっと習ってたんっすよねー。天地先輩ともそれで仲良く話してたんっすよ!」
スグル「あ……。……ごめんなさい」
照星「別に謝る必要なんてないっすよ! 自分も、先輩達の背中を見てきてるんすから」
照星「もし、先輩達が間違っても自分はそれを理解したいっす……自分頭はよくないっすけどね!」
スグル「そんな事……素晴らしいと思いますよ」
照星「にひひっ! 素晴らしいなんてスグルんらしくない事言うもんじゃないっすよ! わしわし」
スグル「頭を撫でないでくださーい!」
16 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/03(土) 20:15:04.25 ID:GxwKatA3O
月乃「……ところで、あれは?」
陰陽寺「…………………………」
照星「なんか精神を統一するから話しかけるなって言ってたっすよ。武道家みたいっすね!」
朝日「それ、照星さんが言うのぉ……?」
照星「自分はゆるーくやるタイプっすから!」
月乃「……スタンスは人それぞれ。それを否定するのは良くない事」
朝日「今は多種多様なライフスタイルを尊重する事が大切だもんねぇ」
スグル「多種……えっ?」
照星「ら、らい……? って何っすか?」
月乃「……人の価値観を大切にするべき」
月乃「但し朝日はダメ」
朝日「そんなぁ〜……」
月神「皆、そろそろ集まるわよ」
スグル「はい!」
照星「陰陽寺先輩、もう終わりっすよ!」
陰陽寺「……………………」
月乃「……聞いていない」
月神「仕方無いわね……それじゃあ、陰陽寺さんには私から伝えておくわね」
朝日「それじゃあ行こっかぁ。皆が待ってるもんねぇ」
17 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:38:40.43 ID:CZMuodwSO
※
駆村「結局、今回も成果は無しか……」
月乃「……モノクマも私達に反撃の手段は与えないはず。そういう意味では価値はあった」
古河「どこがやねん! 無意味やろこんなん!」
飛田「おいスグルッ、さっきから姿が見えないが、魔矢は何処に行った?」
スグル「それが……話を聞いてくれなくて……」
飛田「フン、役立たずめッ! お前の様な素性不明の人間の話を聞く奴がいないのは当然の事!」
飛田「思えば……才能の一つも話せない貴様なぞに頼った我々が間違っていたなッ!」
スグル「ご、ごめんな……」
朝日「飛田くん。それは酷いなって思うよぉ?」
照星「そーっすよ! それに、スグルんだけじゃなくって自分達もいたんすよ?」
竹田「虫の居所が悪いのはわかるけどよ、誰かに当たるのは良くねえよ」
飛田「……クッ!」
……ピリピリしているのが黙っていてもよくわかる
そろそろ他人への不満が噴出する頃。どこかで息抜きをするべきかもしれない
月乃「……朝日。…………朝日?」
18 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:39:47.52 ID:CZMuodwSO
朝日「スグルくぅん。大丈夫ぅ?」
スグル「は、はい! 僕の事はご心配なく……」
朝日「心配するよぉ。スグルくん、見てて不安になるんだもん」
スグル「そ、そうですか……?」
朝日「……ねぇ、スグルくんって家族の事は覚えているのぉ?」
スグル「家族……ですか? ええっと……」
スグル「……確か、お姉さん。それと、お兄さんがいた気がします」
朝日「わぁ〜! スグルくんって末っ子なんだぁ」
スグル「二人とも、僕にとても優しくしてくれたんです。色々な事を僕に教えてくれて……」
朝日「スグルくん。お兄さんとお姉さんが好きなんだねぇ〜」
スグル「はい! ……でも、今は少し寂しいです」
朝日「あは。そうだよね……そうだぁ! 私の事、本当のお兄さんだと思ってもいいよぉ?」
スグル「え……? 朝日さんを、お兄さんに……?」
朝日「私ねぇ、ずーっと弟も欲しいなって思っていたんだぁ。オトコノコなら一緒に色々出来るもん」
朝日「月乃ちゃんもぉ、きっと喜んでくれると思うんだぁ。ね、私達の弟に……」
月乃「……勝手に決めないで」ゴツンッ
朝日「きゅう!?」
スグル「月乃さん!?」
月乃「……変な事を教え込まないで。兄さん」
月乃「……スグル。こっちに来て」
スグル「は、はい……」
19 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:42:35.30 ID:CZMuodwSO
月乃「……………………」
スグル「あ、あの……月乃さん……」
スグル「もしご気分を害されたらすみません。僕が変な事を言ったせいで……」
月乃「……スグルが謝る必要は無い。悪いのは、全て私の兄」
月乃「……兄の下らない妄想に付き合わせてしまって、申し訳無い」
スグル「そ、そんな事は無いですよ!」
月乃「……朝日は昔からそうだった。いきなり勝手な事を言い出して……」
月乃「人の事を考えているふりして、結局は自分の事だけが大切なんだ。兄さんは」
スグル「……月乃さん?」
月乃「……なんでもない」
……珍しく熱くなってしまった。少しだけ
朝日「頭痛いよぅ……」
月乃「……自業自得」
スグル「怪我は……してませんね。よかったです」
「あ、あのー……」
瀬川「お、おはようございまーす……」
「「「………………………………」」」
20 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:44:53.53 ID:CZMuodwSO
※
瀬川「あ、あはは……」
……視線が痛い。というか身体が若干軋んでる
理由はわかっている。単に同じ姿勢で寝続けていたから。……要は寝過ぎだ
視線の方はもっと単純。”お前何してたの?”という声が聞こえてきそうに呆れられていた
瀬川「その〜お腹すいちゃって、今何時かなーって思って起きてきたんだけど……」
月乃「……今、何時?」
瀬川「ん〜大体……六時くらい?」
古河「朝のか?」
瀬川「夕方のです……」
駆村「お前この時間まで寝てたのか……?」
瀬川「疲れてたんだもん!」
私だってずっと寝てた訳じゃないし……ただ、”まだ余裕あるかな〜”って思ってただけだし!
……二度寝しなきゃよかったかなぁ
月神「ま、まあいいじゃない。ご飯、食べる?」
瀬川「食べる!」
古河「動物かオマエは!」
仕方ないじゃんお腹減ってたんだし! 月神さんの渡してくれたご飯を口に頬張る。美味しい……
空腹に満たされていく幸福感。それに浸っていると聴こえてくるのはノイズの音……ノイズ?
振り向くと、砂嵐の映ったモニターが。それが意味する事を理解すると……がっくりと肩を落とした
21 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:46:41.11 ID:CZMuodwSO
※
〜〜〜♪
ハルカ『よい子の皆ー! ココロオドルTVの時間だよー!』
ヨウ『ちゃんとコロシアイ学園生活をエンジョイしているな? 探索も既に終えたみたいだしな』
ハルカ『学園に眠る謎……ドキドキするね!』
ヨウ『それはただの動悸だろ』
ハルカ『動悸息切れには! 救sヨウ『もうそのネタは飽きてるんだよ!』
ハルカ『ちぇ。ならさっそく学級裁判を乗り越えた皆にプレゼントをあげようかな』
ヨウ『疲労も溜まってきたであろう中盤戦。そんなお前らに”大浴場”を解放しておいたぞ』
ハルカ『大浴場は一階の突き当たりにあるからね。すぐにわかると思うけど』
ヨウ『深い湯船にゆっくり浸かって、常日頃のストレスでも解消してくるといい』
ハルカ『それに、裸の付き合いってあるしね! 私も温泉ロケに呼ばれたかった……』
ヨウ『セル画だから水に浸かるとアウトだぞ』
ハルカ『……………………』
ヨウ『……………………』
『『鮮やかな!!!』』
ハルカ『遥かな明日を!』ヨウ『見届けよう!』
ハルカ『バイバーイ! 私も温泉入りたかった!』
22 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:51:07.65 ID:CZMuodwSO
※
駆村「で、これからどうするんだ?」
月神「そうね……もう夜のご飯も終わったし、一度皆は部屋に戻って……」
御影「え〜せっかくだし大浴場行こうよ〜!」
飛田「そうだッ! ここにいる美女達の裸をこの眼に納める使命がオレにはあるッ!」
古河「言うと思うたわ……行くわけあらへんやろ」
月乃「……動機が不純。認めたくない」
竹田「あ〜……ちっと待てよ?」
竹田「そもそもの話なんだがよぉ、その大浴場ってどこにあんだ?」
スグル「確かに……見ていないですね」
朝日「瀬川さん。ここに来る時に見たぁ?」
瀬川「え……? ん〜……見てないと思うけど……」
少しぽわぽわとしていたけど、流石にそんなモノがあればここに来る時に気づくはずだもん
そもそも、そんな場所あった? 初めて聞いた場所なんだけど……?
照星「じゃあ探しに行くっすよ! もしかしたら、単に見逃しただけかもしれねーっすからね!」
古河「それはありそうやな……瀬川やし」
瀬川「無かったはずなんだけどなぁ……」
23 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:55:00.41 ID:CZMuodwSO
※
古河「……で、ちっと歩いたワケやけど」
古河「あるやんけ! あるやんけ! 大浴場目の前にあるやんけ!!」
瀬川「あれ〜……? おっかしいなぁ……」
まさか本当にあるとは思っていなかった……というか、何で急に大浴場なんて出てきたの……?
確かにさっき通った時には、こんなものは無かったハズなのに、まるで急に生えてきたみたいな……
御影「まぁまぁいいじゃん細かい事はさ! 早く皆でお風呂入ろうよ!」
古河「入らん言うとるやろ! クドイわ!」
朝日「私はやってみたいなぁ……裸のおつきあい」
月乃「独りでやってろ」
月神「そうね……せっかく解放されたのだし、一度くらいなら入ってみましょう」
御影・飛田「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」
月神「ただし、男女は別けさせて貰うわね」
御影・飛田「「うわあああああああああああああああああああ!!!!」」
キーンと耳をつんざく絶叫。この世の終わりみたいなシャウトに、殆どは耳を塞いでいた
照星「あ、頭っ。頭に響くっすぅ……」
竹田「あーこりゃキツいな……うし。んじゃ野郎衆は戻るとするかね。行くぞ坊主共」
男子達が去っていく。残されたのは女の子だけだ
瀬川「……そう言えば、陰陽寺さんはいいの?」
古河「呼んでも来ぇへんやろどうせ」
そりゃそうか。丁度、さっきので変な風に汗もかいちゃったしお風呂に入るにはいいタイミング
大きなお風呂……どんなだろう? 楽しみだなぁ……!
24 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:56:38.72 ID:CZMuodwSO
※
御影「……女子の皆はもう入ったかな?」
飛田「そうだな……そろそろ頃合いだろう」
朝日「御影くぅん。何の話をしているのぉ?」
駆村「……まさか、お前たち覗きに行く気か?」
御影「当然だろ! 何のために大浴場が用意されてると思ってるんだよ!」
スグル「えぇ!? そんな事は駄目ですよ!」
飛田「あくまでも崇高なる芸術的探索であり、断じて低俗な目的な覗きではないッ!」
朝日「本当かなぁ?」
御影「で、ボクと飛田クンと駆村クンとスグルクン以外の二人は来るの?」
スグル「ボク達は確定なんですか!? 嫌です!」
御影「ケッ、ノリ悪っ!」
飛田「もういい。貴様の様な男とも女とも取れない未熟な肉体の子供を同行させるのが間違いだッ!」
駆村「……なんだか、やけに仲がいいな」
御影「当たり前だろ! どれだけの時間を過ごしたと思ってるんだよ!」
飛田「オレ達は既に目的を同じとする同士! 仲違いなど起こす理由があるものか!」
御影(いざって時には飛田クンのせいにすればいいしね!)
飛田(仮にバレてもこいつの責任にすればいいだけだしなッ!)
駆村(絶対にろくでもない事を考えているな……)
25 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 13:58:59.72 ID:CZMuodwSO
御影「で、他の二人はどう?」
朝日「遠慮したいかなぁ。皆に悪いしねぇ」
スグル「朝日さんの言う通りですよ!」
朝日「それにぃ、私は女の子よりぃ……ううん。何でもないやぁ」
御影「……ホントに?」
スグル「た、多分……」
竹田「あー……俺も辞めておくわ」
御影「えー!? 何でですか!?」
竹田「いやな……俺も坊主みてぇにまだ若ぇなら、まだ若気の至りで済むんだけどな……」
竹田「今の俺がやると、マジで洒落にならねえ犯罪になるんだよな……」
「「「あぁ……」」」
御影「じゃ、じゃあボクと飛田クンと駆村クンで行く事にしようか!」
駆村「いや、俺も出来ればいきたくないんだが」
飛田「フン、ヘタレが……ッ」
駆村「そうじゃないだろ……今、俺達は共同生活をしているのに相手に不安を与えてどうする?」
駆村「女子達もきっと不安なんだ。それなのに俺達が更に迷惑をかけられないだろ?」
スグル「そうですよ。駆村さんの言う通りです」
御影「うっ……それを言われると……罪悪感が……」
駆村「そもそも、俺には許嫁がいるからそんな事をする訳には……」
朝日「え? 許嫁……?」
駆村「あ」
御影「ちょっとちょっとどういう事だよ!? 駆村クン、彼女いるのかよ!?」
飛田「その話……詳しく聴かせて貰おうッッッ!」
26 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 14:01:45.31 ID:CZMuodwSO
※
瀬川「おお。結構本格的……」
檜のお風呂。でいいのかな……? テレビで見た、旅館みたいなおっきな温泉
ちゃぷんと湯船に手を入れてみると、丁度いい温度のお湯が包み込んでくれた
照星「ひゃー! おっきいっす! 何だか泳ぎたくなっちゃうっすねー!」
月神「ダメよ。お風呂はゆっくり、百まで数えて肩まで浸からないと」
古河「オカンか! そんな長く入ってられんわ!」
月乃「……凄く大きい。胸がドキドキしている」
瀬川「わかりみが深いよ……大きなお風呂って、なんかドキドキしてくるよね!」
心なしか、皆のテンションもハイになっている気がする。私も何だか心が踊るなぁ!
あっ、そうだ。お風呂と言えば、当然あのイベントが起きるはず……
瀬川「そうそう。もし男子の皆が覗きに来たらどうする?」
古河「瀬川突き出しとけばええやろ。エロい自撮り撮るの好きそうやしな」
瀬川「やってないよ! 私は100%健全だもん!」
照星「でも興味はあるんすよね〜?」
瀬川「ノーコメントでお願いしまーす……」
エッチな自撮り……やってみたらフォロワー増えるかな? でも身バレした時のリスクがね……
それに、そんな事しなくても私は皆に見て貰える。うん、大丈夫だよ。多分……
月神「うふふ、仲が良いわね。それじゃあゆっくり入りましょう……」
27 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 14:02:41.63 ID:CZMuodwSO
※
瀬川「ふぃ〜……」
とぷん。とぷんとお湯に沈む。滑らかなヴェールを纏わせるように、周囲の水を編み込んでいく
身体にまとわりつく感触が心地いい。暖かなお湯に迎えられて、凝り固まった私の意識は解れていった
どろどろになりそうな温度の中、私の意識も、トロトロに溶けていって……
照星「ひゃっほーう!」
瀬川「うぎゃっ!?」
月神「照星さん! 飛び込んじゃダメよ!」
照星「にひひひっ! スゲーっす! 凄くキモチイイっすよ、このお風呂!」
月乃「……同感。でも騒がしいのは止めてほしい」
古河「照星、月乃、お前らこっち来たらシバき倒すから覚悟しとけや」
照星「月乃先輩のおっぱい柔らけーっすね……指が沈んじゃうっすよ」モミモミ
月乃「……夕こそ。弾力とハリがしっかりしてる。健康的な肉体の証」モミモミ
瀬川「うぅ……私もそっち行こっかな……」
古河「瀬川もや。その胸引きちぎるで」
瀬川「ダイレクトに言った!? って痛い痛い痛いそこつねんないで、揉まないで!!」
古河「別にええやろ腹くらい! 見た目と雰囲気がアホっぽいクセに案外締まっとんなお前なぁ!」
なんなのそれ!? 体型が崩れない様に調整するのはレイヤーの嗜み……っておへそ穿らないで!?
月神「み、皆楽しそうね……でもそろそろ止めた方がいいかしら……?」
28 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 14:04:08.18 ID:CZMuodwSO
※
御影「……見える?」
飛田「見えんな」
駆村「くそっ、見れないならもういいだろ……」
御影「そんな事ないよ! 許嫁の事皆にバラしてもいいのかよ!」
飛田「いやぁ驚いた。これが知られたらどんな風に見られるかなぁ?」
駆村「止めてくれよ……」
御影「でもおっかしいなー……なんかやけに湯気が多いと思うんだよな……」
飛田「声もくぐもっていて何を話しているかさっぱり聞こえん。どうなっている……」
「おい」
御影「何だよ駆村クン。バレるだろ!」
飛田「少し黙っていろッ、オレは今崇高な目的の為に全神経をすり減らしているのだッ」
駆村「は? 俺は何も言っていないぞ」
飛田・御影「「は?」」
「おい。もう一度だけ言う」
陰陽寺「邪魔だ、そこをどけ」
「「「…………………………」」」
29 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 14:05:19.41 ID:CZMuodwSO
「ぎゃああああああああああっっっ!?!?!?」
月神「!? な、何!?」
瀬川「今のって……男子の声、だよね?」
古河「アイツら、まさか覗いてたんか!? 絶っ対許せへん!」
月乃「……でも、ならどうして悲鳴を?」
照星「そうっすねー。なんなら見せてあげたっすけどね! いひひ」
瀬川「呑気だね照星さん……」
陰陽寺「……………………」
瀬川「あ、陰陽寺さん来たんだ」
古河「丁度ええわ、外に男子おったやろ? そいつらは誰や」
陰陽寺「知らん。名前なんて覚えていない」
瀬川「結構時間経ってるのに!?」
月神「陰陽寺さん。別に彼らをどうこうするつもりは無いの。教えて頂戴?」
陰陽寺「御影、飛田、駆村だ」
月乃「……スラスラ答えた」
古河「あんのヤロウ……早速ぶちのめしたるわ!」
瀬川「絶対どうこうするつもりだ……あ、私もそろそろ出るね」
月神「そうね……ごめんなさい陰陽寺さん。ゆっくり浸かっていってね」
陰陽寺「言われなくてもそうするつもりだ」
ふいっと素っ気なく顔を背けて、お湯の中に浸かる陰陽寺さん
気のせいかもしれないけど……その顔は普段よりも穏やかに見えた
30 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 14:07:19.68 ID:CZMuodwSO
※
スグル「あの……どうして三人は正座しているんでしょう」
竹田「察してやれ坊主。だが敢えて言ってやるなら見つかっちまったんだろうよ」
朝日「あは、皆恐ぁい。ところでねぇ、これチョコアイスなんだけど、食べてみるぅ?」
スグル「あ、いただきます……」
※
御影・飛田「「こいつが首謀者です」」
古河「そうなんか? 駆村?」
駆村「ふざけるな! 俺は無理矢理付き合わされただけだ!」
月乃「……でも、一緒に私達の裸を見た」
御影「見てないよ! というか見えなかったし!」
飛田「ぐうぅッ、何故あれだけ凝らしても一片も見えなかったのだ……」
照星「反省ゼロっすね。これはアウトっすよ!」
月神「でも、陰陽寺さんと約束したもの。今回の事は不問にするわ」
御影「ほ、ホント!?」
月神「だけど無罪放免にするのは出来ないから、三人は明日食堂の清掃をお願いね?」
飛田「クッ、何故オレがそんな事を……」
駆村「もう諦めろ……泣きたいのは俺の方だよ……」
この後、三人の処遇について一悶着あったけど最終的には月神さんの案で可決された
これ以上の話はまた明日に。という事で、今日の所は解散となった
……なんだか眠たくなってきたのは、お湯に浸かって気持ちよくなったからだと思いたい
31 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/15(木) 14:08:13.52 ID:CZMuodwSO
月神「皆、お休みなさい。私はもう少しだけ食堂にいようかしら……」
月神「……あら? これは……”勾玉”? いったい誰のものなのかしら……」
32 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/20(火) 21:44:49.21 ID:pBsD3Q3wO
※
朝日「スグルくぅん。こっちこっちぃ」
スグル「は、はい……あの、大丈夫なんですか?」
朝日「大丈夫だよぉ。女の子達は、もう入っているんだもん」
朝日「私達オトコノコだって……入っちゃったって問題無いよねぇ」
スグル「ところで……他の方々は?」
朝日「……えへへぇ。実はねぇ、誰にも教えていないんだよぉ」
朝日「私、スグルくんと二人っきりで入りたかったんだもん」
朝日「だから、今夜一緒にお風呂に入った事はぁ私とスグルくんだけの……ひ、み、つ。だよぉ?」
スグル「は、はい……」
朝日「それじゃあ……服、脱がせてあげるねぇ。腕をばんざーいってしてよぉ」
スグル「え……!? そ、それは流石に……!」
竹田「ん……? なんだ坊主か? こんな夜更けに何してんだ」
スグル「た、竹田さん!?」
竹田「おっ、もしかして坊主共も銭湯に用か? 若いのに風情がわかるじゃねえか」
朝日「じゃあ、竹田さんも……」
竹田「応ともよ。デカい銭湯なんざこのご時世、軒並み潰れちまったからなあ」
竹田「俺がまだガキの頃は、あちこちにあったんだけどな……っといけねえいけねえ。無駄話だな」
スグル「あ、あの! 竹田さんも一緒にどうでしょうか?」
竹田「あ? いいのか?」
スグル「はい。朝日さんも……いいですよね?」
朝日「うん。私は構わないよぉ」
竹田「有り難いねぇ。んじゃ、男だけの裸の付き合いでもやるとするか!」
33 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/20(火) 21:46:57.07 ID:pBsD3Q3wO
※
朝日「スグルくん。肌すべすべだねぇ」
スグル「そ、そうですか……あの、くすぐったいのでそろそろ……」
朝日「ん〜……もうちょっとだけねぇ」
竹田「よっ……と。いい湯加減じゃねえの……痛つ」
スグル「! 竹田さん。その肩、包帯を巻いているじゃないですか……!」
朝日「右腕……怪我しているんですかぁ?」
スグル「もしかして、臓腑屋さんに襲われた時に僕達を庇ったせいで……」
竹田「あー、気にしてんのか? しゃあねえだろ、反応しちまったんだからよ」
竹田「あそこでスグルの坊主らを見殺しにするなんざ大人の面子丸潰れだろ? 大人にはな、無茶してでも見栄を切るべき場面があるもんだ」
竹田「ま、何て言うかね……そんな気にすんなよ。あれは俺が好きでやった事だからよ」
スグル「……はい」
朝日「そういえば、前々から気になっていたんですけれどぉ」
朝日「竹田さんってぇ、どうしてその年で超高校級なんですかぁ?」
スグル「朝日さん、それは……」
竹田「なんだぁ? んな事が聞きたいのか。別に面白くもねえし長くなるぞ?」
竹田「けどまあ気になんなら話さねえ訳にはいかねえわな。百数えるつもりで聞いてくれや……」
34 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/20(火) 21:50:11.22 ID:pBsD3Q3wO
竹田「俺も昔は……坊主らと同じくらいの歳の頃は超高校級だったんだぜ?」
竹田「ま、俺の場合は親父の会社継いで発展させただけだからよ。他の連中とは事情が違うわな」
スグル「へぇ……昔から超高校級と呼ばれていたんですね」
竹田「だけどよぉ、親父が急にぽっくり逝っちまってな。今すぐにでも会社を建て直さなきゃならなくなっちまってな」
竹田「学業との両立は、どう考えても不可能だったんだ。だから俺は……」
朝日「学校を辞めて、会社に専念したんだぁ」
竹田「そういうこった。だからまあ高卒だな。俺の最終学歴はよ」
竹田「ん? 社長が高卒でもいいのかって? 俺は学歴よりも肩書きのが重要視されたのさ」
スグル「そうなんですか……」
竹田「……けどまあ、何も不都合が無いとは言え、ずっと高卒ってのはだせえだろ?」
竹田「だから、またここに来たのさ。箔をつけ直す為にな」
竹田「元々超高校級だったのも好都合だったな。鶴の一声で決まったのさ」
朝日「会社は大丈夫なんですかぁ〜?」
竹田「信頼のおける奴に任せてある。俺が帰れなくなっても大丈夫な様にな」
竹田「本当は姉貴が継いでくれりゃあ良かったんだがね……」
スグル「お姉さん。いるんですか?」
竹田「応。……ま、数十年くらい会ってねえんだけどよ」
35 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/20(火) 22:26:11.36 ID:iTX0uBg2O
朝日「会ってないのぉ? お姉さんなのにぃ」
竹田「ん……まあな。けど勘違いすんなよ。別に死に別れたって訳じゃあねえ」
竹田「駆け落ちしたのさ。何処の誰とも知れねえ男と、腹に身籠ったガキを連れてな」
竹田「そのせいで、親父もおふくろも姉貴の事は俺に教えてくれなかったな……勘当したらしいしな」
竹田「俺に教えてくれたのは、ガキは女で、育っていれば坊主らと同い年くらいって事しか知らねえ」
竹田「だからよ。姉貴が継げねえ以上は俺がやるしかねえ……仕方ねえ事なのさ」
朝日「でもぉ、駆け落ちするなんてすっごく情熱的なお姉さんなんだねぇ。私には出来ないかなぁ」
竹田「……朝日の坊主は月乃の嬢ちゃんと離ればなれになるの、嫌か?」
朝日「考えた事無かったなぁ……私達はずうーっと一緒にいるんだって思っていたんだもん」
朝日「小さな頃は、二人でよく遊んでたんだぁ。私が王子様で、月乃ちゃんがお姫様……」
朝日「もう、ずっと昔だから……月乃ちゃん。忘れちゃっているかもねぇ」
スグル「……きっと、月乃さんも朝日さんの事が大好きだと思いますよ」
朝日「ありがとぉ〜スグルくん、優しいねぇ」
スグル「あはは。そんな事ありませんよ」
竹田「ま。優しい所は坊主の美徳だ……そろそろ上がろうぜ。のぼせちまうと敵わねえからな」
「「は〜い」」
36 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/20(火) 22:28:04.36 ID:iTX0uBg2O
※
竹田「よっと、忘れ物はねえよな?」
スグル「はい。僕は大丈夫です」
朝日「私もだよぉ」
竹田「いやあ悪かったな。本当は坊主ら二人、水入らずだったんだろ?」
竹田「それをこんなオッサンが割り込んじまって、迷惑だっただろう?」
朝日「どこも迷惑なんかじゃありませんよぉ。私も楽しかったなぁ〜」
スグル「はい! 僕も、貴重なお話が聞けてとても嬉しいです!」
竹田「がっははは! そりゃあ俺も風呂に来た甲斐があるってモンだな!」
「……おい」
竹田「……あ? なんだぁ? 今の声は」
朝日「私も聞こえたけどぉ……だぁれぇ?」
陰陽寺「お前達がここにいたならちょうどいい」
陰陽寺「ここに落とし物があったはずだ。それはどこにある」
スグル「落とし物……? そんなものはありませんでしたけど……」
陰陽寺「………………そうか」
朝日「ねぇ、落とし物って何なのぉ? 私達も手伝うよぉ」
陰陽寺「必要ない。もう帰る」
スグル「あっ……! ……いっちゃいましたね」
竹田「ま、何にせよ話は明日だな……気を付けて帰れよ。坊主共」
朝日「はぁ〜い」
37 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/25(日) 12:48:33.63 ID:Ex8xBX3qO
※
「……んっ。ふぁああ〜」
なんだかよく眠れた気がする……温泉のお陰かな?
時計を見てみると、今は朝の六時を迎えようとしているみたい
まだ少し時間があるし、もう少し眠っていてもいいかな……
「……やっぱり、もう起きてよっと」
……いや、二度寝は間違いなく寝過ごすフラグだ
昨日はそれで酷い目にあったし……また同じ事になるのは避けたい所だ
たまには早起きして、皆を待ってもいいかもね!
そうと決まったらやる事は一つ。手早く髪を解かしていって、顔を洗う
鏡に写った私の顔は、紛れもなく今までの瀬川千早希の顔だった
38 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/25(日) 12:49:45.98 ID:Ex8xBX3qO
※
月神「あら……? おはよう。瀬川さん、今日は早いのね」
瀬川「まあ、たまにはいいかなって……」
駆村「せめて昨日にそう思ってほしかったよ……」
瀬川「ごめんなさーい……」
箒を持った駆村君に嫌味を言われた……よく見たら後ろで伸びてるのは御影君と飛田君だ
御影「うぅ……掃除ダルい……」
飛田「こんな地味な事……何故オレがしなければならぬのだ……」
月神「後少しよ、ファイト!」
駆村「そう言って窓拭きから廊下掃除、果ては料理の仕込みまでやらせたじゃないか……!」
瀬川「うわ、スパルタ……」
早起きして良かった。さりげに月神さんの教育方針がおっかない事がわかったんだもん……
三人が掃除しているみたいだし、私がドタバタ動くのも申し訳無いし、座って様子を観察してよう
瀬川「あ、ちょっとお水注いで貰えるかな?」
御影「それくらい自分でやってよ!?」
瀬川「いいじゃんちょっとぐらい……」
月神「あまり頼りすぎもダメよ? はい。お水」
瀬川「あ、ありが……」
「おい」
39 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/25(日) 12:51:39.60 ID:Ex8xBX3qO
瀬川「……っ!?」
ゾクリ。声が聞こえた途端背中に嫌な感覚が走る
聞こえてきた声には覚えがあるし、その声自体は何の感情も宿っていない
けど、発言した人……振り向かなくても理解できる程の冷たい殺気を振り撒きながら、進んで来るのがわかる
他の人も、恐る恐る声の主の方を向く。そこにいたのはいつも通りの仏頂面の……
いいや……仏頂面を通り越して怒り心頭有頂天な雰囲気を放出している……!
瀬川「お……陰陽寺、さん……?」
陰陽寺「……………………」
40 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/25(日) 12:53:05.54 ID:Ex8xBX3qO
御影「ヒィイイイ!!! な、何なのさ!?」
飛田「おおお落ち着け落ち着くのだ。流石に昨夜の件でオレ達を殺しに来た訳ではがぁぐ!?」
駆村「思いっきり動揺してるじゃないか! 思いっきり舌を噛んでるじゃないか!」
瀬川「あのー……私達に何かご用でも……」
陰陽寺「単刀直入に聞く」スッ
瀬川「単刀直入ってそっちの意味で!? 竹刀をこっちに向けないでよーっ!」
剥き出しの殺気と抜き身の竹刀を突き付けられる様な事をした覚えなんて無いのに!?
陰陽寺「僕の落とし物はどこだ。昨夜大浴場にいたならば、知っているはずだ」
飛田「落とし物……? そんなもの知らんッ」
陰陽寺「あの後、徹底的に学園内を捜索した。お前達が奪い取ったんだ」
御影「勝手に決めつけないでよ!? 本当にそんなモノ知らないってば!」
陰陽寺「嘘をつくな。渡さないつもりなら僕も手段を選ぶつもりはない」
瀬川「話を聞いてよ!? そもそも落とし物って何の事……」
月神「……もしかして、勾玉の事かしら?」
41 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/08/25(日) 12:54:05.91 ID:Ex8xBX3qO
陰陽寺「……!」
月神「キャッ!」
御影「月神さん!?」
陰陽寺「返せ……。それは、僕のものだ……!」
瀬川「お、陰陽寺さん……? 落ち着いて……!」
言うが速いか。目にも止まらぬ速さで距離を縮めたかと思うと、月神さんの首を握り締めている
このままじゃマズイ……下手しなくても月神さんが絞め殺される……!
飛田「ややや止めたままままま……」
駆村「もう飛田は黙っていろ! 陰陽寺、それ以上は見過ごせないぞ……!」
月神「い……今は、持ってきていない、の……」
月神「でも、確かに私が預かっているわ……後で、私の部屋に来てくれれば……!」
陰陽寺「……その言葉。確かに聞いたからな」
満足したのか、手を離す。月神さんは苦しそうに咳き込むと、呼吸を整えて立ち上がった
対する陰陽寺さんは、もうここには用はないとばかりに背中を向けて……
月神「……何処にいくの?」
陰陽寺「用は済んだ。ここに居る価値は無い」
駆村「いいや。陰陽寺にはここにいてもらう」
駆村「重大な話がある……それが終わるまで、食堂で待っていてもらうからな」
瀬川「重大な、話……?」
重苦しそうに切り出す駆村君。陰陽寺さんもその空気を察したのか、手頃な椅子に静かに座った
……早起きは三文の得。という諺が頭を過る
偶々早く来たせいで、何だか物凄い事に巻き込まれちゃった気がする……!
42 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/09/01(日) 11:29:30.52 ID:Vl9jRUY1O
※
瀬川「……”新世界プログラム”?」
食堂に全員が集まって少し、駆村君がおもむろに切り出してきたその単語
語感からして、何かのソフトウェアか、もしかして箱庭的育成ゲームかな……?
皆も聞き覚えが無いみたいで。首を傾げたり捻ったりを繰り返していた
古河「いや、知らんがな。何なんソレ?」
御影「と言うか、何で駆村クンがそんなモノ知っているのさ!」
スグル「それは……僕から説明します」
瀬川「スグル君?」
スグル「まず、先に話しておきたいのは……駆村さんは、僕に投票していたんです」
照星「え!? 駆村先輩はスグルんが嫌いなんっすか!?」
駆村「そんな訳ないだろ! 本当に嫌いならそもそも言い出さなければいいんだぞ!」
照星「それもそうっすね。サーセン!」
月乃「……兎も角、何故その新世界プログラムがスグルの秘密と関係があるの?」
スグル「はい。僕の秘密は……これなんです」
『超高校級の???神威スグルは、新世界プログラムの奪取に関わっている』
43 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/09/01(日) 11:40:45.22 ID:Vl9jRUY1O
瀬川「……? ドユコト?」
これが、スグル君の致命的な秘密……?
スグル「それが……僕にもわからないんです。記憶が曖昧だからだとは思いますが……」
竹田「奪取って事は誰かから奪い取ったんじゃあねえのか? 下手したら超高校級の強盗かもな!」
スグル「それは違う……と、思いたいです……」
照星「スグルんが強盗なんて無理っすよ。雰囲気がふにゃふにゃっすからね! いひひっ!」
スグル「ありがとうございます。照星さん」
古河「言うとくけど、褒められとらんからな」
朝日「でもぉ、そのプログラムがどうしたのぉ?」
駆村「スグルの才能に関する情報だからな。名前も出ているし誰か知っているかと思ったが……」
スグル「知らないなら解らず仕舞いですね……」
しょぼんと肩を落とすスグル君。自分に関わる情報かもしれなかったのに、解らなかったからショックなんだろうな
皆もその態度を見て何て声を掛けていいのかわからない。スグル君を見て哀しそうな顔を浮かべていた
”大丈夫だよ。私がついているから!”って言えば、好感度も上がるかな……よし!
瀬川「大丈夫だよ。私が」
モノクマ「新世界プログラムなら、ボクが説明致しましょう!」
44 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/09/01(日) 11:41:42.98 ID:Vl9jRUY1O
瀬川「ぎゃあっ!?」
スグル「瀬川さん、大丈夫ですか!?」
瀬川「な、何とか致命傷で済んだよ……」
急に出てきたから、椅子からひっくり返っちゃったよ……しかも逆に言われる側になったし!
瀬川「いきなり何なの!? 唐突に現れて唐突に脅かすの止めてよ!」
駆村「瀬川が勝手に驚いたんだろ……」
モノクマ「まあまあそんなに怒らないでよ。新世界プログラムの事について知りたいんでしょ?」
モノクマ「生徒の疑問に答えるのも学園長の大切な役目だからね。ボクが丁寧に解説しましょう!」
陰陽寺「どういう風の吹き回しだ」
飛田「そうだッ貴様の言う事等信じられるかッ!」
月乃「……デタラメを言っても私達には判断が出来ない。聞く価値は無い」
私達にはわからない……そりゃそうだ。モノクマが適当な事を言って私達を混乱させようとしているのかもしれない
月神「……モノクマ、帰って頂戴」
モノクマ「しょぼーん。生徒はいつか旅立つものとはいえ悲しいなぁ……」
モノクマ「あーあ。せっかくオマエラが知りたがる様な情報があるのになぁ」
御影「とっとと帰れよお前!」
全員からのブーイングを身に浴びながら、モノクマはすごすごと退散した
……かと、思っていたんだけど…………
45 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/09/01(日) 11:42:45.11 ID:Vl9jRUY1O
ハルカ『それでは、第一回新世界プログラムについての講義を始めまーす』
瀬川「うわぁ!? なんか始まったよ!?」
古河「シカトやシカト! 放っとけ!」
ヨウ『先に言っておくが、ちゃんと聞かないと毎日流すからな』
照星「メンド臭いっすね!?」
スグル「……仕方無いですね」
ハルカ『まず、新世界プログラムとは何か? という疑問にお答えします』
ハルカ『答えは”現実世界と同じ体験が出来る仮想空間システム”の事なんだよ!』
月神「現実と同じ仮想空間……? そんな事、本当に可能なのかしら」
瀬川「案外有り得るかもね。要はVRの進化系みたいなものでしょ?」
何かのアニメで、ゲームの中で過ごしてハーレムを作ってたのがあったっけ。あれみたいな感じかな
ヨウ『本来の用途はセラピー用らしいな。足の動かない人間に歩く体験をさせたりとかしたらしい』
ハルカ『へー凄く便利だね! そんな便利なものをどうしてスグル君は奪い取っちゃったのかな?』
ヨウ『くっくっく。便利な物には裏があるのさ。この世が光と闇の表裏一体である様に、シロの裏にはクロがある様にな!!』
御影「それはオセロでしょ!?」
古河「はぁ? それ言うんならリバーシやろ!」
月乃「……どっちでもいい」
竹田「静かにしな。そろそろ次みたいだぜ」
46 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/09/01(日) 11:44:04.35 ID:Vl9jRUY1O
ヨウ『このプログラムを作ったのは……超高校級の絶望だ』
ハルカ『え、えぇ〜っ!? あ、あの超高校級の絶望だってぇ〜!?』
スグル「……っ!?」
月神「スグル君!? どうしたの!?」
スグル「あ、頭が痛いっ……吐き気が……っ!」
飛田「は、吐くんじゃあないぞッ!?」
竹田「無理すんな坊主。そら、床に寝転がってろ」
竹田「俺の羽織で申し訳ねえが、無いよりかは幾分楽だろうよ」
スグル「あ、ありがとうございます……っ!」
脱いだ陣羽織の上に横になるスグル君。加齢臭とかで逆に気分悪くならないかな……とは言わないけど
ヨウ『超高校級の絶望とは、読んで字の如くだな。超高校級に絶望的な連中さ』
ハルカ『やりたい放題やり過ぎたせいで、世界から駆除されちゃったんだよね! ざまーみろ!』
ヨウ『で、その超高校級の絶望からの戦利品がその新世界プログラムという事さ』
ヨウ『本来の新世界プログラムはアバターを使ってコロシアイを行う……謂わばコロシアイシミュレーションと言うべき代物なのさ』
……コロシアイのシミュレーション。要するにデスゲーム系のアニメでよくあるアレなのかな?
某ソードでアートするオンラインゲームとかでもお馴染みの便利な舞台……少しやってみたいかも
ハルカ『なるほどなるほど〜……そんな危ない人達が作ったのにこんな平和な使い方が出来るなんて、バカと鋏は使い用って事だね』
ヨウ『そうだな。まあ今の新世界プログラムは安全に安全を重ねて”絶対にコロシアイが出来ない”様にある細工がされているがな』
47 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/09/01(日) 11:47:56.23 ID:Vl9jRUY1O
ハルカ『ふうん。なら安心安全だね! でもそれってどんな細工なの?』
ヨウ『知りたいのか? 別に俺達には関係無いじゃないか』
ハルカ『だって、ここってプログラムのな……』
ハルカ『……………………』
ハルカ『わーーーー!?!?!? どうしようヨウくん! ネタバレだよ!!!』
ヨウ『おおお落ち着け。まだどこがどうネタバレかは言ってないからまだギリギリセーフだろ多分』
ヨウ『ここは別の話題でお茶を濁そう。という訳で新しい校則について説明しておこう』
ハルカ『前回の臓腑屋さんみたいに、全員を皆殺しにしようとするのはこっちとしても困るんだよね』
ヨウ『と言う訳で、今後は【同一のクロが殺せるのは二人まで】というルールが追加されるぞ』
ヨウ『仮に同一のクロが三人以上殺害した場合、校則違反として処刑されるから覚えていてくれ』
ハルカ『はい! 皆はこのルールだけ覚えておいてね! 他は忘れていいからね!』
ヨウ『それじゃあまたな! 絶対に気にするなよ、いいな!』
瀬川「……何だったんだろう。今の」
スグル「さあ……?」
48 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/09/01(日) 11:49:39.83 ID:Vl9jRUY1O
本日ここまで
キャラの作成については後に話します
49 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/03(木) 22:50:14.92 ID:9EL7v5CGO
テレビが終わって、しーんと静まり返る。この無言の沈黙が痛い……
もう、いいかげん誰でもいいから何か話して……。とか考えていたら、竹田さんが口を開いてくれた
竹田「ま、なんだ。要するに一人のクロにつき二人までしか殺すなって事だろうよ」
駆村「そうでしょうね……安心すべきでは無いと、俺は思いますけど」
古河「なんでなん? 殺される数が減るんなら儲けもんやろ!」
月乃「……それは、また事件が起きる前提で話しているから。事件なんて起きない方がいい」
古河「…………せやったわ」
一人につき二人までしか殺せないって言われても、それが殺人の回避に繋がる訳じゃない
毒薬も出てきたし、少なくとも一人の手で皆殺しにされる危険性は無くなったって言えるけど……
月神「……大丈夫よ。もう、皆もコロシアイなんてしないって思っているでしょう?」
月神「コロシアイなんて、もう起きない。四人の為にも、私達はモノクマに負けちゃいけないの」
照星「そうっす! もう自分は負けねーっす、見ててください、自分の頑張り!」
うーん、皆張り切ってるなあ。私も頑張ろっと! 何かを!
……そうだ。いい機会だし、聞いておこっかな?
瀬川「そうだ、月神さんに聞きたいんだけど」
月神「何かしら?」
瀬川「結局、月神さんの秘密って、何なの?」
50 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/03(木) 22:51:53.29 ID:9EL7v5CGO
月神「……えっ?」
瀬川「いや、本当に気になっただけなんだけどね。でも隠し事するのはよくないでしょ?」
朝日「でもぉ、月神さんってぇ、確か自分で自分に投票してって言ってたよねぇ」
駆村「瀬川……お前、誰に投票した?」
瀬川「陰陽寺さんですごめんなさい……」
自爆した……陰陽寺さんの視線が痛い。物理的に
月神「だ、大丈夫よ陰陽寺さん。きっと大した事は書いていないから」
陰陽寺「ふん。どうだか」
うん。本当は大した事が書いてあるんだけど、それは秘密だ。言ったら殺される……
飛田「まぁまぁ言いじゃあないか。オレなんて可憐なレディの秘密を盗み見る事なんて出来ないから御影に投票しているしなッ!」
御影「よくないよ! 何してんのさ!?」
古河「少なくともオマエが言えた事ちゃうやろ!」
古河さんにド突かれてぶっ飛ぶ御影君。そりゃ、私と同じで私怨で入れたもんなあ……
御影「痛たたた……やったな! このチンピラ!」
古河「言うたな! このボンクラの役立たず!」
月神「二人とも、喧嘩は止めて!」
口喧嘩を始めそうな二人を、月神さんでは珍しく、強い勢いで制止する
とはいえ、それだけで止まる様な二人じゃない。手は出してないけどバチバチと睨み合いを続けている
月神「それで……私の秘密を知りたいのね?」
月神「私も、どんな秘密が渡されたのかは知っているわ。それはね……」
ぽつりぽつりと語り出す。月神さんの、少しだけ昔のお話を……
51 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/03(木) 22:57:30.26 ID:9EL7v5CGO
月神「まず、私の秘密についてなんだけど……家族が絡むの」
月神「それなら最初に、私の家族構成から話した方が良さそうね。私は、父と弟と暮らしているの」
瀬川「弟って幾つ!?」
スグル「そこは気になる所ですか……?」
月神「確か、小学6年生だから……12歳ね」
瀬川「やったぜ!」
御影「何がだよ!?」
重要な事だからね、私にとって! きっと月神さんに似た、可愛い子なんだろうなぁ〜
竹田「で、その弟さんが秘密に関係あんのか?」
月神「いやそれは……ううん。関係していると言えば、しているわね」
瀬川「マジで!?」
月神「私がアイドルになる切欠は、スカウトだったの。街で買い物をしていたら、突然……」
古河「よくあるやっちゃな。で、そのスカウトからアイドルになったんやろ?」
月神「そうなんだけど……私、一度断っていたの」
月乃「……何故? アイドルに憧れる少女は多い。私も羨ましい」
朝日「そうなのぉ? でも月乃ちゃんは私の一番のアイドルだから大丈夫だよぉ」
月乃「……………………!」ゴンッ!
朝日「痛いよぉ……」
照れ隠しなのか違うのか、鉄拳が朝日君のこめかみを撃ち抜く。今鈍い音したけど大丈夫だよね?
困惑を隠せない皆。月神さんは大丈夫、と声をかけて、話を続けていく……
52 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/03(木) 23:03:22.85 ID:9EL7v5CGO
月神「……私の家は、あまり言いたくないけれど貧しい家だった。それでも、三人でなんとか暮らしてきたの」
月神「お母さんは、もういないから……」
照星「……事情は聞かないっすよ!」
月神「スカウトが来たのも、私がアルバイトをしている時だったの」
竹田「トップアイドルの原石もバイトする時代か、世知辛えなあ」
御影「あれ? お父さんいるんでしょ、バイトなんかしなくてもよくない?」
瀬川「女の子はお金が欲しいんだよ。貯めても貯めてもすぐに消えちゃうからね」
スグル「そ、そうなんですか……」
月神「そう。私はお金が欲しかったの……それに、レッスン代や衣装代なんて、とても払えない」
月神「……お父さん、体を壊して、ずっと車椅子で生活しているから」
陰陽寺「……………………」
月乃「…………それって」
月神「そうよ。私、動けないお父さんを置いてここに……アイドルとして来ているの」
泣きそうな、叫び出しそうな。月神さんの、無理に造った笑顔が痛々しい
家族を放置して、アイドルとして活動する事が、今でも苦しめているって理解出来るくらいには
53 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/03(木) 23:04:59.84 ID:9EL7v5CGO
飛田「だ……だがおかしいじゃあないかッ、最初のレッスン料等はどうしたのかねッ」
月神「事務所が払ってくれたの。私が必ず返してくれるって信じるから、今は投資するんだって」
月神「でも、それだけじゃ普段の生活もままならない……弟も、クラブを止めて内職をしているの」
月神「だから……私は諦めちゃいけない。家族や事務所の人。マネージャーさんの為にも、絶対に前を向き続けたい」
月神「それが、今の私に出来る恩返しだから……」
スグル「月神さん……」
瀬川「……それって、いざって時には私達を犠牲にしますよって事だったり?」
スグル「瀬川さん、そんな言い方……」
月神「そんな事はしないわ。だって、私の大切なクラスメイトなんですもの」
月神「私、ほとんど友達がいなかったの。ずっとアルバイトをしていたせいで……」
月神「だからクラスメイトの皆とこうして交流出来る事が、本当に楽しいの! ……お父さんには悪いと思っているけれどね」
バツの悪そうな顔で、控えめに微笑む
家族を置き去りにしたのに、自分が楽しんでもいいのか……そう考えているのかな
54 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/03(木) 23:09:55.94 ID:9EL7v5CGO
月神「……これで、私の秘密はおしまい。『家族を見捨てた』。それが私の知られたくない秘密……」
古河「せ、せやかてそんなん仕方無いやろ! そんなん言い出したらキリがあらへん!」
竹田「家族の為にアイドルやってんだろ? それに引け目を感じる事なんかねえだろう」
スグル「お父さんや弟さんも、月神さんを応援してくれているんでしょう?」
月神「それは……そうかもしれない、けど」
朝日「なら大丈夫だよぉ。これからもぉ姉弟で助け合っていけばいいと思うなぁ♪」
月乃「……お前が言うな」
朝日「酷いよぅ月乃ちゃあん……」
月神「……ありがとう。皆」
……なんかいい話になってるけど、これって結局月神さんしか得してなくない?
こんなはずじゃなかったのに……。もっとエグい秘密があるって信じていたのに!
……気を取り直して、今日も一日頑張ろーっと。私の秘密はバラさないようにね
55 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/14(月) 21:27:28.68 ID:VaVsGbM8O
※
暇だなぁ。どっか適当にぶらついて……
瀬川「……うわぁ!?何、今の!?」
なんか目の前に飛んできたんだけど!?
御影「あ〜そっち行っちゃった……あれ? 瀬川さんどうかした?」
瀬川「どうかした?じゃないよ! 人の目の前に、得体の知れないもの飛ばさないでよ!」
朝日「瀬川さぁん。それゴムだよぉ」
瀬川「……ゴム?」
朝日「あっ……輪ゴムの事だよ……?」
瀬川「わかってるよ! 朝日君は何と勘違いしたと思っているの!?」
そんな事はわかってるよ。輪ゴムが飛んでくる事自体がおかしいんだって!
御影「竹田さんが作ってくれたんだ! 暇潰しに遊んでみたらってさ!」
朝日「これなんて凄いよぉ? 割り箸を飛ばしたり消しゴムを飛ばしたり出来るんだぁ」
瀬川「そう……」
そんなニチアサ玩具のバリエ違いみたいな……いや竹田さんは玩具屋だし得意だとは思うけど
朝日「良かったらぁ、瀬川さんも一緒に」
瀬川「遠慮しまーす」
御影「即答!?」
そういう子供のオモチャには興味ないんだよね。私小さい頃は塾通いばっかだったし
ここにいても面白くないな……別の所にいこうっと
56 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/14(月) 21:29:37.83 ID:VaVsGbM8O
※
『ダンスホール』
瀬川「あれ? 珍しいね、二人が一緒なんて」
スグル「はい。そうなんで……」
飛田「やあレディー! オレに会いに来てくれたのかい? スグル、お前は用済みだ。どこへなりとも消えるがいい」
哀れスグル君はお役御免となってしまった。何に付き合わされていたのかは知らないけど可哀想に……
瀬川「……飛田君。スグル君に何させてたの?」
スグル「なんでもスランプみたいで……僕にスランプを解消する手伝いをして欲しかったみたいです」
瀬川「ふーん……で、何すればいいの?」
飛田「とにかくオレの全てを称え、オレを誉めちぎればいいだけの簡単な仕事さ」
瀬川「ヨイショ要員かい!」
飛田「練習だッ、スグルカモンッ!」
スグル「はい! 飛田さん、カッコいいです!」
飛田「バカにしてるのかキサマァ! そんな見え透いたお世辞で、本当に喜ぶと思っているのか!?」
飛田「全くこれだから男は……オレの美しさを理解するだけの容量が足りていないな」
いやこれ結構難しくない? 気分良くなる様に褒めないとダメなんでしょ? 無理だよこれ!
瀬川「あっ、私用事を思い出した!」
スグル「え、瀬川さん!?」
申し訳ないけど、私には絶対無理っぽいんだよね。面倒臭いし
と、いう訳で……逃げるんだよぉ〜!
飛田「ん? いないな……やむを得ん。スグル、続けろ」
スグル「うわぁぁぁ……!!」
57 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/14(月) 21:31:05.81 ID:VaVsGbM8O
※
古河「……で、結局食堂に戻ってきたん?」
瀬川「うん……」
輪ゴムをぶつけられたり無茶振りを要求され続けた結果、最終的に着いたのは食堂だった
照星さんが淹れてくれたお茶を流し込む。案外料理上手なんだね……
照星「自分は母親が病気だったっすからね。姉貴と自分が料理の担当だったんすよ」
照星「けど、姉貴の料理は薄味過ぎて……健康にはいいんすけどね……」
瀬川「だから味が濃いめなんだ……」
遠い目をする照星さん。気持ち濃い目のお茶をすすりながら、お茶請けのお菓子をかじる
古河「ウチもアニキや弟が料理せへえんからオカンが料理せへえん時はウチがやるわ。まあ二人には食わせへんけど」
瀬川「食べさせてあげようよ。兄弟なんだし……」
古河「働かんヤツに食わすメシは無いわ!」
照星「そう言えば、瀬川先輩には兄弟いないんすよね。前に聞いたっす」
瀬川「あ、そう言えば……」
あの時は臓腑屋さんも一緒にいたっけ……お姉さんがいるって言ってたけど、お姉さんは何していたんだろう
……まあ、これも嘘かもしれないけどね
照星「一人っ子って羨ましいっすねー。でも、何となく寂しくないっすか?」
瀬川「寂しくなんて無いっ!!!」
古河「ど、どないしたんや。そない大声だして」
瀬川「……ゴメン」
目を白黒する二人に頭を下げる。寂しいという言葉に、過剰に反応してしまった事に、激しい自己嫌悪が襲ってくる
……気まずい雰囲気が辺りに漂う。結局、話が弾む事はなかった
58 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/10/14(月) 21:31:58.39 ID:VaVsGbM8O
※
『月神の個室』
月神「……はい。これがその勾玉よ」
陰陽寺「………………………………」
月神「どう? それで間違いないかしら」
陰陽寺「ああ。邪魔をした、僕はもう戻る」
月神「待って、せっかく来たのだもの。お茶でもどうかしら?」
陰陽寺「必要ない」
月神「そ、そう……けど、あの勾玉。とても大切な物なのね」
陰陽寺「……お前には関係無い」
月神「……裏に刻まれていた名前は、お母さんの名前かしら?」
陰陽寺「お前には関係無い!」
月神「……ごめんなさい。無神経だったかしら」
陰陽寺「お前は……苦手だ。話していると、どうしても思い出す……」
陰陽寺「どうして、どうしてそんなに、”アイツ”によく似た目をしている……」
月神「……陰陽寺さん?」
陰陽寺「何でもない。もう僕に話しかけるな」
月神「……陰陽寺さん」
59 :
◆hFluTDb/oi42
[sage]:2019/10/26(土) 23:23:50.15 ID:YINJeZweO
※
ハルカ『よい子の皆ー! ココロオド……』
ハルカ『ってあれ? 普段のイントロは? ていうか、心なしか何だか簡素になってない?』
ヨウ『ああこれの事か? 飽きたんだとよ。需要も無さそうだしやる意義が感じられないんだとよ』
ハルカ『め、メメタァーっ!』
ヨウ『まあそんな事はどうでもいいさ。重要なのは動機の方さ』
ハルカ『あ、もう動機って言っちゃうんだね。建前上は皆が仲良くなる為のミッションなのに』
ヨウ『そんな細かい部分に気づいてる奴いないぞ。という事だ。生徒諸君は体育館に来てくれ』
ハルカ『ゴールデンから週末に左遷されたせいで、尺が取れないんだよね……』
ヨウ『さて、唐突だが初の合言葉といこうか!』
『『鮮やかな!!』』
ハルカ『遥かな明日を!』ヨウ『見届k
※
60 :
◆hFluTDb/oi42
[sage]:2019/10/26(土) 23:24:40.21 ID:YINJeZweO
※
『体育館』
モノクマ「うぷぷ。来たみたいだね……」
瀬川「いや、さっきのは何?」
打ち切られた……いや打ち切り所か投げやり過ぎる展開に唖然としながらここまで来たよ
まだ断末魔が耳にこびりついてるよ。あの悲壮な顔がまだ目に焼き付いてるよ
ほら、皆も気まずそうな顔してるよ……
モノクマ「昔ながらのやり方じゃ通用しなくなってきているからね……色々変えていかないと」
竹田「時代についていけなくなったってか。悲しい事言ってくれるじゃねえの」
月乃「……流行り廃りとは残酷なもの」
しみじみと語り出す竹田さん達。今のこの状況で、そんな悲しい話はやめて……
飛田「そんな事はどうでもいいッ、いったい全体、何の用件だと言うんだッ!?」
モノクマ「ああそうそう動機動機……。ところで、オマエラには会いたい人とかいない?」
……は? 会いたい人?
どうしてそんな事を急に……。いや、いないと言えば嘘になるけど
けど、その人にはもう会えない。だって……
61 :
◆hFluTDb/oi42
[sage]:2019/10/26(土) 23:26:21.88 ID:YINJeZweO
スグル「会いたい人……」
月神「……それが、どうかしたのかしら?」
古河「まさかそれが動機言うんちゃうやろな!」
モノクマ「あったりぃ〜! 今回コロシアイを勝ち抜いたクロには、クロが会いたい人にもう一度会わせて差し上げます」
モノクマ「微妙な別れ方をしたアイツも、二度と顔を見たくないアンチクショウにも、ボクプレゼンツの感動の再会をさせてみせま〜す!」
……再会? それが動機になるの?
御影「な〜んだ! 大したことないじゃん!」
駆村「そもそも、今更誰かに会う為だけに人を[
ピーーー
]奴なんている訳が……」
モノクマ「本当に? 【死んだ人にも会わせる】って言っても大したこと無いかな?」
瀬川「…………は?」
死んだ人にも? どういう事なの?穢土転生?
照星「死んだ人……。……嘘っす! 死んだらもう会えないんすよ!」
モノクマ「そう思うならご自由に! ボクは決して嘘なんて言わないよ!」
モノクマ「正真正銘、本人に会わせてあげるよ!コロシアイしてくれたらね!ぶひゃひゃひゃひゃ!」
嫌な高笑いを残して、モノクマは去っていった
コロシアイしたら会いたい人に会える。……それが既に死んでいる故人だとしても
その動機が私達にもたらすモノは、今の私には理解できなかったんだ
62 :
◆hFluTDb/oi42
[sage]:2019/10/26(土) 23:27:44.85 ID:YINJeZweO
瀬川「……どう思う?動機」
硬直した空気に耐えきれなくなる。背中がむず痒くなる感覚がくすぐったい
でも、そろそろ辛くなってくる。取り合えず、何か話しかけてみる事にした
御影「どうって……死んだ人に会えるって、流石に有り得ないでしょ!」
月乃「……科学的にも、倫理的にも不可能」
朝日「私には月乃ちゃんがいるから大丈夫だよぉ」
月乃「………………………………」
瀬川「……だよねえ」
会いたい人がいる……。けど、それがイコール人を[
ピーーー
]動機になるかって言われると疑問だ
現に、皆はこの動機に対して何も驚異を感じていない。今回はモノクマも失敗したかな……
照星「あ、あの。もしかしたら、なんすけど……」
照星「それって天地先輩や吊井座先輩にも会えるって事なんすかね……?」
63 :
◆hFluTDb/oi42
[sage]:2019/10/26(土) 23:30:34.18 ID:YINJeZweO
瀬川「……は?」
何を言ってるんだこの人は……頭がおかしいのかな?
照星「それに、デイビット先輩や臓腑屋先輩……」
照星「死んじゃった人達って事は、四人ともそうっすよね……?」
駆村「な……しっかりしろ!モノクマの言葉に惑わされるな!」
スグル「そうですよ!皆さんも言ってるじゃないですか。死んだ人にはもう会えないんです!」
照星「け、けど……自分、ずっと後悔してて、これでいいのかなって悩んでて……」
陰陽寺「……下らない。いつまでも死人に執着するなんて無駄な事を」
陰陽寺「死人は死人だ。人じゃない。そんな奴に会ったところで、何が出来る」
月神「……陰陽寺さん!」
陰陽寺「モノクマを信じるのは好きにすればいい。それでどうしようと僕の知った事じゃないからな」
照星「……………………」
つかつかと帰っていく陰陽寺さんに、項垂れる照星さん。それを遠巻きに眺める私達……
この動機……なにか一波乱ありそうな予感……!
64 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:10:37.66 ID:rDbZw++MO
※
私が会いたい人は、きっと私に会いたくないと思う
だって、私は、その人から【──】を奪い取ったから
いなくなった事をいい事に、好き勝手してきたんだから
だから、会いたいけれど会いたくない。そんな矛盾した想いを懐いている
ああ、でも───
もし、許されるなら、もう一度…………
※
65 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:12:24.89 ID:rDbZw++MO
※
瀬川「おはよー」
月神「おはよう。瀬川さん」
動機が語られた次の朝。食堂には、いつもと変わらない顔の皆が揃っていた
何て事無さそうな態度を見るに、気にしている人はいなさそう
照星「……。あ、おはようございますっす。先輩」
……いや、一人いた。陰陽寺さんにバッサリされた照星さんだ
まだあの二人に未練があるのかな……。見るからにしょげた表情は、見てるこっちも辛気臭くなるよ
古河「そないしょげんなや。あんなんウソに決まっとるで」
駆村「死人が蘇るなんて……時雄島では有り得ないしな」
御影「いやどこでも有り得ないから!?」
照星「……なんかごめんなさいっす。自分のせいで」
月神「そんな事ないわ。悪いのはモノクマ……けほっ、けほっ」
朝日「あれぇ?月神さん。もしかして風邪ぇ?」
月神「そうじゃないわ。少し、むせただけ……」
66 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:15:46.51 ID:rDbZw++MO
…………ドサッ
67 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:16:25.30 ID:rDbZw++MO
スグル「つ……月神さん!」
飛田「ノォオオオオオオウ!?何があったのだね!?」
月神「あ……ごめんなさい。少しふらついて……」
唐突に倒れ込んだ月神さん。少し。と言った割には結構辛そうな顔をしてるけど……?
というか、なんか息が荒いんだけど……??
月乃「……熱がある。今日は寝ていた方がいい」
月神「平気よ。私は皆のリーダーなんだもの。このくらい……」
駆村「体を壊したら元も子もないだろう?休む事だって仕事の内と島では言われているんだ」
月神「でも……」
照星「……だーい丈夫っす!自分、先輩の分まで頑張るっす!」
竹田「ぶっ倒れて死んじまう事の方がよっぽど怖えからなあ。好意ってのは素直に受け取っとくモンだぜ?嬢ちゃん」
月神「……そうね、今日は部屋で休む事にしましょう」
月神「けど、何かあったら遠慮せずに私に相談して。話を聞く事くらいなら出来るから」
古河「そんじゃ行くで。また倒れたら敵わんからな。ウチの肩貸したるわ」
ありがとう。と会釈して、月神さんは食堂から出ていった
流石に毒とかは無いよね……なんて、そんな事を考えながら一日は始まっていくのだった
68 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:17:15.85 ID:rDbZw++MO
スグル「月神さん、何事も無くて良かったですね」
瀬川「うん。倒れた時はビックリしたけど」
御影「いや~でも正直焦ったよ!何かあったらどうしようって」
月乃「……何も無いのが一番。ゆっくり休めば明日には治る」
のんびりとお茶をすすりながらさっきの一幕を思い返す
急にフラッと倒れたから、てっきり毒でも盛られたのかと……
スグル「でも、心配です。早く戻ってこれるといいですね」
瀬川「……どうして?月神さんはリーダーだから?」
スグル「それもありますけど……月神さんは皆の為に一生懸命ですから。きっと疲れも溜まっていたんでしょうし」
瀬川「ふーん……そっか」
スグル君の答えに適当な相槌で返す。まるで"お前とは違って"とでも言いたそうにしていたのは気のせいだと信じたい
月乃「……それに、直前に動機が出されて、疲弊していたのかも知れない」
月乃「……肉体での疲労と違って、精神の疲労は自覚しにくい。知らず知らずの内に蓄積していく」
月乃「……それが、今日に噴出しただけ」
少し遠く見ながら、月乃さんはそう呟いた
まるで、どこか遠くの過去を見つめる様に……
69 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:18:03.97 ID:rDbZw++MO
御影「あ~あ!でもどうせなら古河さんが倒れてくれれば良かったのになあ」
瀬川「えっ、何で?」
御影「だって怖いし、乱暴だしさぁ……この前の一件で、やたら当たりが強くなったんだよね」
スグル「確かに、前から御影さんにはキツかったですね」
御影「いるよねああいうチンピラ……どうせボクの事を動くサンドバッグか何かだと思ってるんだよ……」
月乃「……ちょっかいかけやすいだけでは?」
御影「はぁー……ボクはいずれビッグになる男だからね。その時に古河さんに泣き付かれても許さないからね!」
古河「ほーん。何をどう許さないんや」
御影「そりゃもうボクをパシりにしたり顎で使ったりうわあああああああああああ!!!!」
瀬川「あぁ……フラグだったね」
速攻回収と言わんばかりに登場した古河さん。逃げようとした御影君をむんずと掴み、その足を思いっきり踏みつけた
古河「んー?誰が倒れてほしかったん?言うてみいや」
御影「そこから聞いてたの!?ごめんなさああい!!!」
古河「謝って済むなら警察要らんのやこのボケぇええ!!!」
スグル「……大丈夫でしょうか。御影さん」
月乃「……死にはしないと思う。多分」
走り去る二人を眺めながら、のんびりとお茶請けをくわえる月乃さん
なんというか……うん……元気だなぁ……
70 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:19:10.48 ID:rDbZw++MO
※
古河「ったく。あのボケカスクソ野郎……」
駆村「また御影を追い回してたのか……」
あの後、散々御影君を虐めて満足したのかまた戻ってきた
今は皆で月神さんのご飯を作っている最中だ。お粥とかなら私も作れるって言ったけど、気持ちだけ受け取るってさ。ちぇ
竹田「御影の坊主も苦労するねえ。嬢ちゃんもよく坊主を虐めんの飽きねえなあ」
古河「あいつイジメんのおもろいねん」
瀬川「最低の答えだ……」
そんな理由でちょっかいかけられる御影君が不憫だ……。まあ自業自得なトコもあるんだけどね
駆村「あんまり御影を追い詰めるなよ?案外参っているかもしれないからな」
古河「はあ?アイツが?ありえへんありえへん」
古河「万一御影に何かあったとしても、ウチは絶対になんともならへんな!」
竹田「冷たいねえ。ま、若いモンにはそれが普通かもしれねえけどな。手加減はしてやれよ?」
古河「わーっとるって!ウチもそこまで酷い事はせえへん。少し殴ったりする程度やし」
瀬川「少し……?私はいぶかしんだ」
流石に暴力が原因でコロシアイになる訳無い……よね?
駆村「お、そろそろ出来そうだな。瀬川、持っていくか?」
瀬川「……何で私が?」
駆村「手伝いたいって言っていたじゃないか」
そうだった……下手な事は言うもんじゃないね。うん……
71 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:20:09.93 ID:rDbZw++MO
※
瀬川「はあ~。めんどくさ……」
こんな事になるなら素直に戻ってればよかった……お粥重いし……
朝日「あ、瀬川さぁん。どうしたのぉ?」
瀬川「朝日君に照星さん?珍しいね。二人が一緒なんて」
飛田「オレもいるぞッ!」
あ、本当だ。正直視界に入っていなかった
照星「そうっすか?ちょっとパトロールしてたんす。そしたら先輩達とばったり会ったんすよ」
朝日「それでちょっと話してたんだぁ。栄養管理学」
瀬川「ん?」
ええ羊羮……なんだって?
朝日「でも意外だったよぉ。二人とも頭がいいんだねぇ。勉強になったよぉ」
照星「健全な肉体は健全な食事からっす!自分もまだまだだと痛感したっす……」
飛田「このオレの美しさを保つ為。伸ばす為には労力は惜しまない!それこそがオレの流儀ッ!」
瀬川「お、おおう……」
最悪だ……私の預かり知らぬ所で、ヘンなグループが形成されている……!
照星「ところで、瀬川先輩は何持ってるんすか?」
瀬川「そうだ!私お粥持ってかないと!」
飛田「そうか!ならオレも一緒に」
瀬川「結構です!」
さっさと変人集団から逃げ出そう。……あれ?よく考えたらあの三人に押し付けとけばよかったんじゃない?
瀬川「……本っ当にツイてなーーーい!」
72 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:21:12.46 ID:rDbZw++MO
※
月神「……けほっ、ごほっ!」
瀬川「はーい。お粥持ってきたよー」
月神「あ、ありがとう。これ、瀬川さんが作ったの?」
瀬川「え?まあ皆と一緒に……」
本当は見てただけなんだけどね……。皆がそう言ったからそうしただけで嘘は言ってないしいいよね?
月神「ふふっ。瀬川さんは優しいのね」
瀬川「え、そう?当然の事をしただけだけど」
そもそも、皆から言われたから来ただけだし……
月神「そうやって、誰かの為に動ける事が凄いのよ」
月神「私も、貴女の事を信頼しているわよ?もし、私がまた倒れたら、その時は頼らせて貰うわ」
瀬川「……ありがと」
瀬川「お粥、食べ終わったら置いておいて。また取りに行くから」
月神「大丈夫よ。……ありがとう、瀬川さん」
瀬川「どういたしまして」
それだけ言って、部屋から出ていく。お粥のお皿は残したまま
瀬川「安心しなよ。リーダーは私がちゃんと受け継ぐからさ」
扉を閉める直前に、そんな事を小声で吐き捨てる。当然、聞こえない様にする為に
73 :
◆hFluTDb/oi42
:2019/11/04(月) 22:21:42.91 ID:rDbZw++MO
※
月神「けほっ、美味しい……」
月神「……陰陽寺さんも、隠れなくても良かったのに」
陰陽寺「あいつとは話したくない」
月神「もう。……瀬川さんはいい人よ?」
陰陽寺「どうだかな」
月神「そんなつっけんどんな態度はダメよ。もっと歩み寄らないと嫌われちゃうわ」
陰陽寺「知るか。嫌いたければ嫌えばいい」
月神「ダーメ。……けど、このお守りのお陰かしら。何だか、誰かに守って貰っているみたい」
月神「今は陰陽寺さんに守って貰っているけれどね」
陰陽寺「もう戻る」
月神「でも、いいの?私がずっとお守りを預かっていて」
陰陽寺「……ずっと僕の手元にあると、僕はそれに頼る。お前が持っていろ」
陰陽寺「お前は……アイツに似ている。顔も、声も、性格も違うのに……」ボソッ
月神「……?今、何か言った?」
陰陽寺「何でもない」
月神「そう?……じゃあね、陰陽寺さん」
74 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:01:54.33 ID:GwnjO7d1O
※
古河「ほーん。じゃあ月神はもう平気なんやな?」
月乃「……熱も引いてきた。後は一晩眠れば収まるはず」
駆村「それはよかった。時雄島直伝の栄養豊富な粥だからな」
飛田「いやあ倒れた時はどうなるかと思ったが、オレの献身のお陰かすぐに治って良かったじゃあないかッ」
御影「えっ!?飛田クン何かしてたっけ!?」
あの後、何人かが代わる代わる様子を見に行っていたみたい
どうやら月神さんの容態は順調に回復しているようで、明日には復帰できるみたいだね
朝日「でも油断は出来ないよぉ。引き始めと治り始めはしっかりと様子を見ないとねぇ」
竹田「なら誰か看病について貰うか?男の俺達よりも、女子の方がいいだろう」
照星「はいはいはーい!自分やるっす!」
スグル「張り切りすぎてぶつけてませんでしたか……?」
月乃「……今回は別の人にしてもらう」
照星「そうっすか……」
駆村「じゃあ、誰かやってくれる人はいるか?いないなら適当に決めよう」
瀬川「……………………」
75 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:02:33.32 ID:GwnjO7d1O
※
月神「……それで、瀬川さんが看病してくれる事になったの」
瀬川「うん。まあ……」
本当の所は、“ここでやるって言えば褒めてくれるかな”って考えでやってるんだけどね……
ありがとうとは言われたけど、褒めてはくれなかったな……誰も
月神「一応、熱は引いたけど……」
瀬川「でもまだ動けないでしょ?何かあるなら私も手伝うよ」
月神「ありがとう。けど今は大丈夫。ココアでも飲む?」
瀬川「朝日君が淹れてたやつ?飲む飲む!」
月神さんからコップを受け取って、それを喉に流し込む
う~ん。やっぱり朝日君のココア美味しいなあ……
瀬川「……ふぁあ。なんか眠くなってきちゃった。少しだけ寝てていい?」
月神「構わないわよ。ベッド使う」
瀬川「流石にそこまではね……少し仮眠とるだけだから、ベッドに突っ伏すだけでいいや」
月神「そう?お休みなさい」
瀬川「はーい……」
76 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:03:46.19 ID:GwnjO7d1O
※
瀬川「……んっ。うぅん……」
瀬川「ん~……。よく寝た……」
ココアは眠りにいいって聞くけど、案外本当かもね……
月神「すぅ、すぅ……」
ありゃりゃ、月神さんも寝ちゃってる。まあこっちとしてはやり易いからいいけれどね
で、今何時?そんなに寝てないとは思うけど
瀬川「…………うわぁあああ!!!朝の6時じゃん!?!?」
月神「きゃっ!?どうしたの!?」
瀬川「ゴメン!一晩寝ちゃってた!」
月神「いいのよ、瀬川さんも疲れていたんでしょう?」
月神「私の為に色々と手を尽くしてくれたんだもの。この位、なんて事無いわ」
瀬川「ごめんなさーい……」
クラスメイトの部屋で寝落ちとか、恥ずかしくなってくる……
瀬川「じゃ、私部屋に戻って二度寝してきまーす……」
月神「せっかくだし、一緒に行かない?私、待っているから」
瀬川「……体調はいいの?」
月神「万全よ。よく眠れたもの」
瀬川「わかった。じゃあ少し待っててね」
77 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:04:31.04 ID:GwnjO7d1O
※
瀬川「うぅ、寒い……眠い……」
月神「もう朝よ……?」
瀬川「私はエンジンかかるのが遅いの!」
ストレッチもして、顔も洗って……でも、それでもまだ体が怠い
そもそも私はスロースターターなの!朝はもっと寝てたいの!
竹田「うん?誰かと思ったら月神の嬢ちゃんに瀬川の嬢ちゃんか。体調はもういいのか?」
月神「はい、お陰さまで」
瀬川「竹田さん早くない?まだ6時過ぎだよ?」
竹田「そうかあ?それと、年取ると眠りが浅くなるんでね……」
瀬川「うわぁ、悲しい……」
月神「………………あら?今、そっちの方で何か動いた様な……」
瀬川「えっどこ?見えないけど……」
竹田「俺も見えなかったけどなあ。……俺がボケ始めた訳じゃねえよな?」
月神「気のせいだったのかしら……」
竹田「ま、何でもいいだろ。せっかくだ、オッサンも一緒に食堂に行かせて貰おうかね」
78 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:05:24.68 ID:GwnjO7d1O
※
……数分後
スグル「あれ、古河さんに照星さん、珍しいですね」
照星「おはよっす!バッタリ会ったんすよね。運命っす!」
古河「ウチは普段遅めなんやけどな。なんか今日は目ぇ覚めてもうて」
照星「あ、スーグルん!一緒にいこっす!」
スグル「あははは……いいんですか?」
古河「別にええわ。ほなパパッといくで!」
スグル「はい!…………あれ?」
照星「どしたんすか?」
スグル「今、向こうで何か……」
古河「向こうって……花畑やん。気のせいと違うんか?」
照星「自分もよくわかんないっすね……」
スグル「……………………………………」
照星「あっ、スグルん!?どうしたんすか!?」
スグル「なんだか……嫌な予感がします……!」
79 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:06:09.80 ID:GwnjO7d1O
瀬川「……な、なにこれ!?」
食堂の中は、メチャクチャに荒らされていた
椅子は倒され机は明後日の方向に吹き飛んでいる
足元には食器が散らばり、壁の至るところには傷がついている
月神「いったい、何が……?」
竹田「……オイ、嬢ちゃん。あれは何だ?」
瀬川「あれ。って……」
竹田さんが指差すその先、そこに倒れていたのは……
※
照星「スーグールーんー!本当にどうしたんすかー!?」
古河「こんな所に入り込んで、何がしたいんや!」
スグル「わからないです……けど、確かに見たんです!」
古河「何をや!」
スグル「……人間です!」
古河「ハァ!?」
80 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:06:46.27 ID:GwnjO7d1O
瀬川「……ウソ、でしょ?」
仰向けに倒れていたその人は、既に息をしていなかった
深々と喉に突き刺さった銀の矢。一目で死んでいると確信する惨たらしい姿
竹田「なんてこった……」
月神「そんな……。そんな、どうして!!」
月神さんが叫ぶ。虚ろな目で天盖を見つめる、仲間だったモノの名前を
※
スグル「………………」
古河「はぁ、はぁ……オイコラスグル!人間なんかおる、わ……」
照星「先輩……?どうしたんすか? ……え?」
スグル「……どうして、貴女がここにいるんですか……」
81 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:07:20.05 ID:GwnjO7d1O
月神「…………御影君っ!!」
哀しい叫びが響き渡る。超高校級の幸運、御影直斗君は、もうここにはいないんだって示すように
※
照星「陰陽寺、先輩……?」
古河「なんで……なんでや!なんで陰陽寺が死んどるんや!?」
※
……そして、これはまだ序の口で
この裁判が、私達にとって最大の試練になる事なんて、この時はまだ思ってもいなかったんだ
82 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/09(土) 20:07:55.15 ID:GwnjO7d1O
「死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を行います!」
「死体が発見されました!一定の自由時間の後、学級裁判を行います!」
83 :
◆hFluTDb/oi42
[!red_res saga]:2019/11/09(土) 20:08:47.67 ID:GwnjO7d1O
【Chapter3】
善悪インヤン双方の悲願 非日常編
84 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/17(日) 23:55:35.05 ID:JfQMgyAqO
※
~~~♪
ハルカ『良い子の皆……ココロオドルTVの時間だよ……』
ハルカ『………………はあ』
ヨウ『どうした?無駄に高いテンションだけがキャラを作っているお前にしては珍しい』
ハルカ『だってさあ……このコーナー、いる?』
ハルカ『ただでさえ視聴率取れてない番組の更に隅っこ……』
ハルカ『言うなれば、マイナー雑誌の巻末の打ち切りコースをひた走ってる様なものじゃん……』
ヨウ『真理ここに到ったか……』
ヨウ『言いたい事はよくわかる。というか俺も同意見だ』
ヨウ『しかし、やらないと給料が貰えないぞ』
ハルカ『そうだよね……合言葉だけ言って終わろうか』
『『鮮やかな……』』
ハルカ『遥かな明日を……』ヨウ『見届けよう』
ヨウ『ま、俺達の明日は無いんだがな』
※
85 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/17(日) 23:56:14.86 ID:JfQMgyAqO
※
モノクマ「うぷぷ……全員揃ったよね?」
モノクマ「今回は大変だよ!何せ二人も死んでるからね!」
アナウンスが鳴らされた後、私達は学園の正門前に全員が集められていた
死体がバラバラの位置にある都合で、一度別の場所に纏まらないと不平等だからね
飛田「な、何がなんだかわからんッ。どういう事だッ!」
駆村「二人も死んだ……本当なのか?」
照星「間違いないと思うっす。息も止まってたっすし……」
竹田「なんてこった。御影の坊主の他に、陰陽寺の嬢ちゃんまでくたばっちまったのか」
月神「嘘………………」
こぼすように呟く。私だって信じられないよ、あの陰陽寺さんが死んでいるなんて……
モノクマ「ま、ともかく殺ったものはしょうがないので、捜査頑張ってちょーだいな!」
86 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/17(日) 23:56:54.64 ID:JfQMgyAqO
竹田「捜査っつってもなぁ……どうするよ?」
竹田「前みてえに二人づつ見張りをつけると、捜査に割く人が足りなくなるぜ」
朝日「えっとお、十二人引く二で十人でぇ……そこから四人引くからぁ……」
スグル「六人ですね……二つの事件を並行して調べる事も考えると、かなり厳しいです」
月乃「…………私に、提案がある」
月乃「……二人組で捜査をすればいい。互いが互いを見張り合う形になる」
飛田「なるほど逆転の発想かッ!」
月神「そうね。……」
瀬川「大丈夫?月神さん、まだ本調子じゃないでしょ?」
月神「……正直、辛いわ」
月神「けど、ここで折れる訳にはいかない。亡くなった二人の為にも私は立ち上がらないといけないから……」
駆村「よし、皆いいな?それじゃあジャンケンで決めるぞ……」
「「じゃーん、けーん」」
「「ぽん!!」」
87 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/17(日) 23:57:32.63 ID:JfQMgyAqO
【捜査開始】
瀬川「よろしくね、月神さん」
月神「此方こそ。……頑張りましょう」
厳正なるジャンケンの結果、私は月神さんと組む事になった
なんだか最近、月神との縁ばっかりだなあ……
月神「早速、モノクマファイルを確認しましょう。二人分の量は少しキツイけれど……」
瀬川「はーい」
※
【モノクマファイル3】
被害者は陰陽寺 魔矢
死体発見現場は、彩海学園敷地内花園
死因は何らかの毒物の接種による中毒死
背中に何らかの刃物で突き刺さった形跡が残っている
【モノクマファイル4】
被害者は御影 直斗
死体発見現場は一階食堂
死亡推定時刻は夜の12時頃と見られる
争った形跡があり、喉には矢が突き刺さっている
※
瀬川「……惨いね」
月神「そう、ね……」
あまりに凄惨な状況に、思わず二人でため息を吐く
正直、逃げたいけど……逃げられないよね。絶対に
88 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/17(日) 23:58:28.05 ID:JfQMgyAqO
※
月神「陰陽寺さん……」
まず、私達は陰陽寺さんの方から調べる事にした
眠るように目を閉じ、だらんとしたその姿。生前の、あの刃の様な雰囲気は微塵も感じられない
別に、私は陰陽寺さんと仲良くないし、特に何かされた訳でもない。けれど……
あの氷の様な寒気の殺気が感じられない。その実感が、彼女の死が、肌に痛々しく伝わってきた
瀬川「……本当大丈夫?なんなら私が見るけれど」
月神「っ、平気……って言えば嘘になっちゃうけれど……」
月神「本音を言えば、泣きたい。どうしてって叫びたい……」
月神「けど、それは全てが終わった後。そうじゃないと、陰陽寺さんにバカにされちゃうから」
瀬川「ふーん」
月神さんと陰陽寺さん、そんなに仲良かったっけ?まあ単純にリーダーだからって言うのもありそうだけどね
でも、あの陰陽寺さんでも哀しんでくれる人がいる……。それが少しだけ、救いになるんじゃないかな……
89 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/17(日) 23:59:09.88 ID:JfQMgyAqO
瀬川「えーっと、背中に何か刺さった傷があるんだっけ?」
月神「よいしょっ……と。ごめんなさい、陰陽寺さん」
陰陽寺さんの死体を横にズラす。字面だけ見ると中々エグいけど、その手つきはこなれている
私達、もうこんなに死体の扱いになれたんだなぁ……
月神「……これの事ね。確かに何かが突き刺さった後があるわ」
指差す先には背中の赤黒く染まった部分。確かに、何かが背中に刺さったみたいな傷がある
瀬川「でも、これかなり小さくない?これが致命傷になる?」
月神「流石に私達じゃわからないわね……」
まさか、これが俗に言う秘孔ってやつ?でも、そんなの知ってそうなのはそれこそ陰陽寺さんくらいしか……
月神「……あら?これは何かしら」
瀬川「毛糸じゃない?でも、陰陽寺さんのマフラーのものじゃないと思う……」
月神「わかるの?」
瀬川「コスプレイヤーなんですけど!超高校級ですけど!」
瀬川「服に使われている糸くらい、パッと見れば断言出来るんですけど!」
月神「凄いわ!瀬川さん!」
……けど、この毛糸どっかで見たんだよなぁ。どこだっけ?
90 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/17(日) 23:59:45.54 ID:JfQMgyAqO
※
『食堂』
スグル「あ、瀬川さんに月神さん!」
竹田「なんでえ、陰陽寺の嬢ちゃんの方はいいのかい?」
月神「ええ。一度別の場所を調べようと思って」
一旦陰陽寺さんからは離れて、御影君の方へと来てみた
皆もこっちの捜査をしているみたいで、ほとんどの生徒はここにいるみたい
古河「……………………」
照星「古河先輩……。その、えっと……」
古河「……ハン!こんな所で勝手に死ぬなんてマヌケやな!」
古河「ま、どうせ御影や。ここで死なへんかっても適当に死んどったやろ!フン!」
瀬川「それはちょっと言い過ぎじゃ……」
古河「せ、せやから、別にウチは何とも思っとらへん……」
古河「うっ、ぐすっ……うぅう……!」
啜り泣く音が聞こえる。あの強気で勝ち気な古河さんが、御影君の死に泣いているんだ
竹田「嬢ちゃん。お前さん……」
照星「……先輩。絶対に勝つっすよ」
熱い決意が漲ってくる。今回の事件はきっと前までよりも白熱した裁判になる……
瀬川「……よし!頑張るぞ!」
91 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:00:17.84 ID:XvMqM0eSO
月神「御影君、痛かったでしょうね……」
目を瞑り、頭を下げる月神さん。痛々しい喉の矢がいやに強く光るのが不気味だ
瀬川「これ、ダンスホールのアレだよね……」
月神「そうね……後で確認してみましょう」
胸や頭ならともかく、喉元を一発で撃ち抜くなんて相当なプロだねこれは……
でも、何でわざわざ弓矢で殺したんだろ?というか肝心の弓はどこに?
瀬川「月神さーん。そっちに弓無い?」
月神「待って……これ……」
瀬川「あった?」
月神「ねえ、これ……陰陽寺さんの竹刀じゃないかしら?」
瀬川「そっちかあ……」
刀じゃなくて弓を探していたんだけど……けど、どうしてここに陰陽寺さんの竹刀が?
あの陰陽寺さんが竹刀を忘れるなんて思えないけど……
92 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:00:57.06 ID:XvMqM0eSO
瀬川「それにしても……酷い荒らされようだね……」
床にはお皿や割り箸、コップが散乱し、椅子や机はとんでもない方向に飛んでいっている
月神「きっと、必死に抵抗したんでしょうね……」
瀬川「うん……。うん……?」
確かに、殺されそうになったら抵抗するとは思う。けど、何か引っ掛かるような……?
瀬川「……あれ?あっ!?これだ!」
月神「ど、どうかした?」
瀬川「これだよ!あの毛糸!御影君のニットの毛だよ!」
質感、色、間違いない……けど、それがどうして陰陽寺さんについてたんだろ?
月神「……あら、これはココアかしら?」
瀬川「あ、そうだね。朝日君が淹れてくれてたヤツ」
あ~あ。溢れちゃって勿体無い……御影君にもかかってるし
これ美味しかったんだよね。まだ作り置きとかあるかな……?
月神「瀬川さん。そろそろ次の場所に行きましょう」
瀬川「は~い……。……ちぇっ」
93 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:01:25.58 ID:XvMqM0eSO
※
瀬川「……これが、あの銀の矢だよね?」
月神「ええ。恐らく……」
凶器の出所を探るため、私達は凶器博物館ことダンスホールに足を運んでいた
今、私の握っているのがその銀の矢だ。案外軽いそれは、弓道というよりはアーチェリーに使わそうな短めの矢
鏃に当たる部分な無く、尖っているだけ。これは競技用の矢にはよくあるんだって。的に当たっても抜けやすいようになってるんだ
月神「そうなの……詳しいのね、経験があるの?」
瀬川「アーチャーはファンタジーの鉄板ジョブだからね!」
まあちょろっと嗜んだ程度なんだけどね。何が役立つかわからないよ本当……
駆村「お、お前達もこっちに来てたのか」
飛田「フフフ、このオレの」
瀬川「ねえ、肝心の弓はどこ?さっきから見当たらないけど」
飛田「ここにあるぞ!」
瀬川「持ってたんかいっ!」
道理で見渡しても無いと思った……。ってアレ?
瀬川「その弓、どこにあったの?」
飛田「ここにあったとも!」
駆村「不思議な事にな……。それに、この弓は相当強い。引ける人間は絞られるぞ」
月神「んっ……!……本当ね。私じゃびくともしない」
ピン。と張られた弦は月神さんを拒む様に不動だ。こんなの引ける人って……
94 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:02:00.35 ID:XvMqM0eSO
※
月乃「……二人とも、毒を探しに?」
瀬川「まあそんな所……」
陰陽寺さんは毒殺されている。という事は毒薬が使われている事は最早確定だ
と、言う訳で毒薬がいっぱいある科学室にやってきたのだった
朝日「きっとこれだねぇ。一個無くなってたんだぁ」
瀬川「なになに、"どんな方法でも即死させる毒"……」
瀬川「……って、幾らなんでも名前が安直過ぎない!?」
これもう名前じゃなくて説明文じゃん!考えた人はな◯う系ラノベの読み過ぎか何か!?
月神「"浸透率の極めて高い猛毒です。水に溶かしても直接注射しても気体に変えても効果があります。無味無臭ですので飲み水にでも混ぜといてください"……」
瀬川「説明文もなんか適当だね……」
朝日「緩いよねぇ。けどぉ、こんな毒を使ってまで陰陽寺さんを殺したかったのかなぁ……」
月乃「……それに、あの魔矢が毒の混入したものを飲むとは思えない。知らないにしても、素直に受け取るなんて」
瀬川「だよねえ……」
警戒心の強い陰陽寺さんが誰かに渡されたものを安易に口にするかな……?もしそうだとしたら、かなり親しい人。とか……?
95 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:02:39.35 ID:XvMqM0eSO
※
捜査はまあまあ順調かな……あ、古河さんに照星さんだ
丁度いいや、あっちの捜査状況も聞いておこっと
瀬川「あっ、古河さんに照星さん。おー……」
月神「しっ」
瀬川「むぐっ!?」
……よく見たら、二人はなんだか真剣な表情で向き合っている。何かあったのかな?
古河「……なぁ、照星」
照星「どうしたんっすか?」
古河「ウチな、正直御影や陰陽寺見とるとムカついてたんよ」
古河「いっつも自分勝手な事ばっか言うとるし、目ぇ離したらすぐどっか行くやん」
古河「せやけど……せやけど!何も、二人揃ってあっちに行かんでもええやろ……!」
古河「なあ、ウチはどうすればええんや?あんなに嫌いやったんに、どうしてこんなに辛いんや!?」
照星「……そうっすね。でも、二人とも行きたくて行っちゃったワケじゃないと思うっす」
照星「戦うっすよ、皆で!それで、真実を見つけるっす!」
照星「……まあ、自分あんまし頭良くないっすけど!」
古河「なんやソレ!」
96 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:03:09.73 ID:XvMqM0eSO
月神「……そうね。全力で戦いましょう」
月神「そして、見つけるの。二人の殺された真相を」
月神「全員で戦えば、きっと掴み取れるはずだもの!」
……まあ、古河さんや照星さん。月神さんがクロの場合もあるんだけどね。言わないけど
瀬川「ねえねえ。捜査の方はどう?順調?」
古河「……スマン。進んでへん」
瀬川「あっ……」
照星「け、けど証拠は見つけたっすよ!ほら!」
手ぶらはマズイと思ったのか、慌てて何かを取り出してくる
月神「これは……ゴム紐?」
照星「工業用ゴム紐らしいっす。駆村先輩から聞いたっす!」
照星「なんでも普通のゴムよりも弾性があって、ちぎれにくいとか……工作室にあるそうっすよ」
瀬川「じゃあ、それはどこにあったの?」
照星「食堂っす!倒れた椅子の下に落ちてたんすけど……」
……食堂?なんでまたそんな所にそんな物が?
そんでもって、なんでそれが必要だったんだろう……?
97 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:04:31.03 ID:XvMqM0eSO
キーンコーンカーンコーン
『うぷぷぷっ。二人分の事件の捜査は終わったかな?』
『終わっていてもいなくても、学級裁判は問答無用で進むのでご注意を!』
『さあ、ドキドキワクワクの最高にハイな学級裁判を始めたいと思いまーす!』
月神「とうとう、始まるのね……」
古河「……しゃっ!気合いいてれくで!」
瀬川「あ、その前に私着替えてくるから先に行ってて……」
古河「……あれ、着る意味あるんか?」
瀬川「あるよ!あれは私の勝負服なんだもん!」
発言力と集中力が当社比三倍、更に精神的スーパーアーマーもついて議論にはハイパームテキなんだから……!
月神「……ごめんなさい。私も少し用事があるの」
照星「月神先輩もっすか?なら先に待ってるっす!」
瀬川「どうかした?もしかして月神もお色直し?」
月神「ええ。少し……ね」
瀬川「???」
……まあなんでもいっか!さっさと着替えてこよーっと
98 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:05:00.59 ID:XvMqM0eSO
※
瀬川「お待たせ〜。待った?」
月神「いいえ、全然。……それにしても、凄い格好ね」
瀬川「それバカにしてるよね!?」
月神「そういうつもりでは無かったけど……ごめんなさい。私も動揺を隠せてないわね」
……言われてみると、確かに心なしか顔が青ざめている。きっと月神さんは今でも結構ムチャしてるんだ。病み上がりなら尚更
月神「今回の事件は異様だもの。アナウンスも二回鳴るし……」
瀬川「えっ、あれ二回鳴るものじゃないの?」
月神「そっか。瀬川さんは前の二つの事件では寝ていたから聴いていなかったのね」
いやそうなんだけど……確かにそうなんだけど、言い方!
月神「あのアナウンスは"死体を初めて見た三人が発見したら鳴らされる"らしいの」
瀬川「ふーん。……あれ?それって犯人は含まれるの?」
月神「フレキシブルに対応するとは聞いたけど……、多分、含まれていないと思うわ」
……なら、陰陽寺さんを見た三人と、御影君を見た私達にはある程度の潔白がある訳だ
何かに使えるかも知れないから、一応覚えていよっと
99 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 00:05:51.94 ID:XvMqM0eSO
※
月神「……お待たせ。待たせてしまったかしら?」
スグル「いえ、全然!」
エレベーターの前で、既に集結した皆が待っていた
全員揃っているのに、その数が少ないと感じるのは、きっと母数自体が削れているからだろう
照星「よーし!気合い!入れて!行くっすよー!」
月乃「……あまり気負いするのも駄目。自然体でやればいい」
竹田「為せば成る。為さねばならぬ、何事も。ってな」
飛田「ぐぐぐッ、しかし二人分の事件だぞ。果たしてオレ達の手に負えるのかッ!?」
駆村「やるしかないだろ……生き残る為なんだからな……」
朝日「……頑張ろうねぇ。私も頑張るからぁ」
古河「……そっちで見とれよ。御影、陰陽寺」
……全員がエレベーターに乗り込むと、静かに、静かに真下へと落ちていく
それは死の宣告への猶予か、それとも精神統一の準備期間かはわからない。けど、私は今はいない二人の事を考えていた
御影 直斗君。緊張感の無い態度で、いつもヘラヘラとしていた彼はどうして死んでしまったのか
陰陽寺 魔矢さん。正直死んでざまあみろと思わなくもない位には仲が悪かったけど、それが良かった事なのかはわからない
善、悪、陰、陽。それをハッキリと示すんだ
ゴチャゴチャになって収拾がつかないくらい、暗く混沌とした裁判の中で
100 :
◆hFluTDb/oi42
[saga]:2019/11/18(月) 22:05:30.65 ID:s9Li+Y7OO
【Chapter3 善悪インヤン双方の悲願】
【コトダマ一覧】
【モノクマファイル3】
被害者は陰陽寺 魔矢
死体発見現場は、彩海学園敷地内花園
死因は何らかの毒物の接種による中毒死
背中に何らかの刃物で突き刺さった形跡が残っている
【モノクマファイル4】
被害者は御影 直斗
死体発見現場は一階食堂
死亡推定時刻は夜の12時頃と見られる
争った形跡があり、喉には矢が突き刺さっている
【陰陽寺の死体】
死体は花園の一角にあった
瀬川は気づかなかったが、月神は何故か一瞬だけ気づいた
【背中の傷】
背中の傷は小さく、穴のような形状をしている
【ニットの毛糸】
陰陽寺の衣服に付着していた毛糸。御影のニット帽に使われていたものである
【喉に刺さった矢】
矢は喉に深く突き刺さっており、外した様子は見られない
この一本以外は、全てダンスホールに仕舞われていた
【陰陽寺の竹刀】
常日頃から陰陽寺が持ち歩いていた、愛用の竹刀
陰陽寺の死体近くではなく、何故か御影の死体の近くに捨てられていた
ボロボロであるが手入れはよくされており、使用者の年期を感じさせる
【荒らされた食堂】
事件前後に荒らされたであろう食堂
椅子や机はふき飛んでおり、床にはコップ、スプーン、割り箸や皿が散らばっていた
【朝日のココア】
事件前に朝日が淹れていたココア。月神に渡したのもこれ
食堂に常備されていた
【銀の弓と矢】
弓は事件現場にはなく、ダンスホールに置かれていた
相当強い弓であるらしく、月神では引くことは出来なかった
【どんな方法でも即死させる毒】
科学室に置いてあった毒。一つ紛失しているため使用されたのはこの毒で間違いない
"浸透率の極めて高い猛毒です。水に溶かしても直接注射しても気体に変えても効果があります。
無味無臭ですので飲み水にでも混ぜといてください"
【工業用ゴム紐】
工作室にあったらしいゴム
伸縮性や弾性に優れ、ちぎれにくい
【死体発見アナウンス】
死体を初めて見た三人が発見したら鳴らされるアナウンス
フレキシブルに対応するらしいが、犯人は含まれないらしい
【アナウンスの順番】
陰陽寺の死体を発見したのは、瀬川、竹田、月神の三名
御影の死体を発見したのは、スグル、照星、古河の三名
101 :
◆hFluTDb/oi42
[sage]:2019/12/05(木) 23:22:00.04 ID:Xbbbl/4BO
Twitterにも貼りましたが暫くの間更新を無期限停止します
このスレの確認は行いますので、何かあれば随時お答えしていきたいと思います
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