魔法使い「それはそれとして」猫娘「?」

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1 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/25(木) 20:39:50.21 ID:UiOOBhhQ0
魔法使い「今日をもってお前は卒業だ」

猫娘「えっ」

魔法使い「お前ももう自立できる年齢だ」

魔法使い「都市の大会でだって優勝できただろう」

魔法使い「こんな田舎でくすぶってないで、大きな世界で自立するときが来たんだ」

猫娘「しかし」

魔法使い「駄目だ」


彼女は涙ぐんでいるが、心を鬼にしなければならない
そう彼は考えたが、猫とは元来自由を求める生き物
何故悲しげな顔をするのだろうかとも思っていた


猫娘「...分かりました」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1564054790
2 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/25(木) 20:49:37.33 ID:UiOOBhhQ0
魔法使い「それはそれとして」

猫娘「?」

魔法使い「これでもう師弟の縛りはないので、あくまで自由意思として聞くが」

猫娘「はい」

魔法使い「尻尾をもふらせてくれないか」

猫娘「...え?」


唐突な提案
冷静な質であるため、何を言われても平静でいようと思ったが
肩透かしであった


猫娘「お言葉ですが師匠」

魔法使い「もう師匠じゃないが」

猫娘「自由意思として師匠と呼ばせていただきます」

魔法使い「...何でしょう」

猫娘「あまりにも下らないです」


切り捨てるような物言い
彼の心は少々のダメージを受けた。が
その発言と彼を見つめる軽蔑するような視線は彼女が優秀な氷魔法の使い手となることを予見しているようだった
3 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/25(木) 20:58:11.28 ID:UiOOBhhQ0
魔法使い「ご不満?」

猫娘「不満はございません」

魔法使い「では一体何故僕を侮蔑するような視線を浴びせた」

猫娘「昔から目線が冷たいとはよく言われるので」

魔法使い「そうか。確かにお前はそうだったかも知れ「それよりも」

猫娘「私の尻尾で師匠は悦ばれるのですか」

魔法使い「あ、ああ。そうだが?」


食いぎみな返答に戸惑いながらも会話を続ける
冷めきったように見える彼女の目にも少しばかりの火が灯ったように見えた
4 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/25(木) 21:10:52.96 ID:UiOOBhhQ0
猫娘「...私は愚かでした」

魔法使い「愚か?」

猫娘「今まで私が師匠に行った献身は無駄だったのですね」

魔法使い「話が掴めないが、そこまで悲観するな。お前が炊事や洗濯ができるようになったおかげで僕は助かった」

猫娘「確かにそうかも知れないです。しかし私が真に求めていたもの、分かりますか」

魔法使い「魔法の知識」

猫娘「それは大前提ですよ」

魔法使い「...さっぱり分からないな」

猫娘「それは師匠の悦楽です」

魔法使い「聞けよ」

猫娘「そこまで人を理解できていない師匠に育てられたから私が冷たいのかも知れませんね」

魔法使い「泣くぞ」
5 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/25(木) 21:19:31.42 ID:UiOOBhhQ0
猫娘「もふっていいので泣かないで下さい」

魔法使い「いいのか」

猫娘「なんなりと」

魔法使い「それでは失礼して...」


恐る恐るその白毛に触れる
そして優しく撫でる


猫娘「く、くすぐったいです」

魔法使い「すまない」


粗めに強く握ることにした
どこか弾力があり、その上で柔らかい
素晴らしい尻尾であることは疑う余地もなかった


猫娘「にゃひん!」

魔法使い「大丈夫か!?」

猫娘「強く握りすぎです」

魔法使い「ごめんよ」
6 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/26(金) 00:37:13.40 ID:PAe3fhCF0
魔法使い「満足」

猫娘「...その、やっぱり、旅立たないと駄目ですか」

魔法使い「ああ」

猫娘「私...私...」

魔法使い「?」

猫娘「師匠のことが好きなんです!」

魔法使い「そりゃ僕も好きだよ」

猫娘「愛情じゃなくて恋愛感情です!」

魔法使い「...まじ?」
7 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/26(金) 00:42:20.50 ID:PAe3fhCF0
猫娘「...やっぱり、冷たい女の子は嫌いですか」

魔法使い「好きだよ。恋愛感情だってあるさ」

猫娘「本当ですか。じゃあ」

魔法使い「だがそれ以上に師匠としての思い入れもある」

猫娘「...」

魔法使い「自分勝手だと分かってはいる。しかし...」

猫娘「つまり師匠に認められるような一人前の活躍をすれば良いわけですね?」

魔法使い「そうだ」
8 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/26(金) 00:46:43.80 ID:PAe3fhCF0
それから彼女が出発するまでは実に早かった
身支度を済ませ、都市に向かったことだろう


魔法使い「...」

魔法使い「あいつなら上手くやるだろう」

魔法使い「積ん読の消化でもしてじっくりと待とう」
9 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/26(金) 00:59:11.53 ID:PAe3fhCF0
〜都市〜


猫娘「都市はあまり好きじゃないんだけど」


そこは都市というからには立派で大きな都市である
ここの王は反獣人派であり、猫娘にとっても生きづらい場所であった
彼女が魔法大会に出場した際もその素性は隠しての参加だった


猫娘「一人前の活躍をする最も単純な方法といえば、ギルドに所属することだろう」

猫娘「だがギルドと言ってもピンキリだ」

猫娘「まずは酒場でくだを巻いている冒険者にでも聞いておくか」
10 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/27(土) 01:41:29.17 ID:7/Kwsx6+0
〜酒場〜


猫娘「酒飲みというのは、結構多いのかもしれない」


それは大きな勘違いであった
そのような推測に至る理由はとても単純であり
『酒場がギルドの集会所を幾つか内包しているため異常に大きい』ためである


猫娘「酒はまだ飲むなと師匠に言われたな...」

猫娘「慢心は禁物だ。いつこの外套を脱いで姿を見られてしまうか分からない」

猫娘「私には酒なんかよりマタタビの方がよっぽど効くだろうが、ね」
11 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/27(土) 01:53:55.03 ID:7/Kwsx6+0
酒場に一目見て冒険者と分かる者は三名
両目に包帯を巻いた男、ほろ酔いのオッサン、金色の甲冑に身を包んだ何者かだ

包帯男は陰湿な魔導士の雰囲気があり、実際そうではない可能性があっても問いかけの相手としては却下された
金色甲冑人間は微動だにしない。一瞬置物ではないかと疑ってしまう
それらの理由から彼女はとりわけ気前の良さそうなオッサンに話しかける運びとなった


猫娘「すみません」

オッサン「なんだね」

猫娘「実力派の権威あるギルドってありませんか」

オッサン「...そうだなぁ。国家御用達の『カノン』っていうギルドがある」

オッサン「実力派が揃ってると思うし、国家と癒着してるっていう噂もある」

オッサン「ってかほぼ確実にそうなんだが。だからそういう類の権威は最もあるギルドだ」

猫娘「なるほど。感謝する」
12 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/27(土) 02:02:25.11 ID:7/Kwsx6+0
彼の言うには都市の西側にそのギルドはあるという
彼女の現在地は南側なので、北西を目指して移動しなければならない
その気になれば身軽に動ける彼女にとって交通ルールの遵守とは大変窮屈なことであった
だからと言って動かない彼女ではないが

彼女が信号で歩みを止めると、後ろから声をかけられる


警察「ようねーちゃん」

猫娘「何?」

警察「ねーちゃん、獣人だろう?任意同行頼むぜ」

猫娘「...手短によろしく」


何故バレたのだろう
目の前の男はそこまでの使い手には見えない
では外部からのタレコミがあったと見るべきだが、この広い都市では誰の仕業かなんて見当もつかない
とにかく、同行するしかない
13 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/27(土) 15:15:39.84 ID:geh7MNx60
〜交番〜


警察「それでねーちゃん」

猫娘「なんだ」

警察「この都市じゃあ獣人の扱いが悪いのは知っているだろ」

猫娘「...」

警察「通報があれば俺は動かなきゃならないし後は魔女裁判だ」

警察「だからせめて穏便に捕まってくれねぇか?」
14 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/27(土) 15:38:57.18 ID:geh7MNx60
流石の彼女もこれほど扱いが悪いとは思っていなかったようだ
どうすべきかと思索し、答えあぐねている


猫娘「...」

警察「逮捕状を取るのに時間はとらな...うっ!?」


煙幕が張られたが、彼女の手によるものではないため彼女も同様に困惑していた
すかさず手が差しのべられる


???「手を取って!逃げましょう!」

猫娘「...いいでしょう」


ここまでお膳立てするような奴の言うことを聞かぬ手はない
そう判断した彼女はその手に連れられていく
15 : ◆cp20depv3E [saga]:2019/07/27(土) 19:36:44.64 ID:geh7MNx60
しばらく走り回り、そいつはマンホールの蓋を開け飛び込んだ
衛生もへったくれもない奴だと思いながら猫娘もまた飛び込んだ


???「怪我はないかな?」

猫娘「...ああ。助けてくれて感謝する」

???「...まぁ、これで君も追われる身というわけだね」

猫娘「仕方あるまい。ところでお前、名前は?」
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