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にこ『Hello,Wonder World』
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1 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 09:33:50.64 ID:D/ABzthS0
ユーザー 『矢澤 にこ』 の ログイン を 確認しました
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2 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 10:02:33.25 ID:D/ABzthS0
──────
────
──
にこ「ん……ここはどこ?」
目が覚めると、私はよく分からない場所にいた。周りを見渡すと、ここは森の中のような場所で、私が寝ていた場所は小さなお花畑のようになっている。
にこ「夢の中なのかしら」
先程まで部室にいた筈。記憶にある限りではそこから移動した覚えは無い。ということはここは私の夢の中の世界。そう考えるのが普通だろう。
にこ「どうして私、こんな夢を見てるのかしら」
人が夢を見るときには、記憶や感情の整理をしているらしい。でもこの場所では私が森にいるだけで他には何も無い。頭の中では何をどう整理しているのだろう。
にこ「でもまあ、夢なら覚めるのを待てばいいわよね?」
私は一人虚しく呟きながら横になる。だってそれ以上はすることが無いから。
それにここは居心地がいい。太陽の陽が当たってぽかぽか陽気、心地の良いそよ風。更には土もフカフカで周りはお花畑とまできた。こんなところで寝ていたら誰かにお姫様と間違われてしまうんじゃないかとまで思ってしまう。
にこ「ああ、もうすっとここで寝ていたいわ……」
3 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 10:03:19.10 ID:D/ABzthS0
「それはいけないよ」
4 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 10:16:23.99 ID:D/ABzthS0
にこ「誰!?」
突然聞こえて来た声に驚いて飛び起きた。私が横になる前までは誰もいなかった筈なのに。
「それは元の世界に戻ることを諦めた者がする事だ。元の世界に戻りたいなら君は進まなくちゃいけないよ」
辺りを見渡しても人の姿は見えない。でも声は続けて聞こえてくる。このよく分からない状況に頭が混乱してしまいそうになった。
「どうだい? 君は元の世界に戻りたいのかい?」
冷静になってくると段々とその声に聞き覚えがある事に気がついた。
間違いない、今聞こえているのは海未の声。でも明らかに口調が違う。海未はもっと話し方が丁寧で語尾はですます口調である筈。こんな話し方は一度も聞いたことが無い。
にこ「誰? 誰なの!? どこにいるのよ、出て来なさい!」
私はこの怪奇現象ともとれる状況を解決しなければと思い、必死に頭を振り回して声の主を探した。
5 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 10:35:14.77 ID:D/ABzthS0
「僕はここだよ」
さっきよりも自分に近いところで声が聞こえた。それも私の真後ろ。その声でまた驚いた私は後ろに飛び上がりながら振り返った。
にこ「何よ、誰もいないじゃない!」
人の姿を探しても、初めに見た景色が広がっているだけで誰もいない。それどころか人の気配までしない。でも確かに自分の真後ろで声がした筈だ。何かがいる筈だと思った私は森の奥の方へ目を凝らした。
その時、私の膝の辺りに何かが触れた。
「だからここにいるって」
にこ「きゃっ!」
私はまた後ろに飛び退いた。驚いた拍子にバランスを崩して倒れてしまう。私の膝に触れたのは白いウサギだった。ウサギは二本足で立って、私の事をまるで品定めするかのように見つめている。足から腰、そして顔に視線が移った時にウサギは喋り出した。
ウサギ「あなたがにこさんですね?」
にこ「そうだけど、どうしてアンタが私の名前を知ってるわけ?」
ウサギ「私は物知りですからね! 他の住人よりもいろんなことを知っているんですよ!」
目の前のウサギは人の私でも分かるくらいのドヤ顔をしながら仰け反った。別に私は私の名前を知っている事に対して凄いとは思わないんだけど?
にこ「ふーん。それで物知りなウサギさん、さっきアンタが言っていたのはどういう事?」
6 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 10:47:39.41 ID:D/ABzthS0
ウサギ「ああ、そうでした。今はそれが一番大切ですからね」
ウサギは口に手を当て「コホン」と一度咳をすると、さっき言っていたことの説明を始めた。
ウサギ「ここは夢の世界なんかではない。この世界もまた現実の一つ」
にこ「でもそれなら私、瞬間移動した事になるんだけど」
ウサギ「まぁワープしたようなものなので間違ってはいないね」
にこ「ふーん。それで、私はどうすれば良いのよ」
ウサギ「出来るだけ早く元の世界に戻らなければいけないよ。でないと……」
にこ「でないと?」
ウサギは私の目をじっと見てきた。
ウサギ「体がこの世界に順応してしまって、二度とこの世界から元に戻れなくなってしまうね」
にこ「それは困るわね」
戻れずにずっとこの世界にいるということはμ'sとしての活動ができなくなってしまうのは勿論、もう家族にも会えないという事だ。そんなのは絶対に嫌だ。なんとしてでも戻らないと。
7 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 10:48:14.99 ID:D/ABzthS0
ウサギ「ああ、そうでした。今はそれが一番大切ですからね」
ウサギは口に手を当て「コホン」と一度咳をすると、さっき言っていたことの説明を始めた。
ウサギ「ここは夢の世界なんかではない。この世界もまた現実の一つ」
にこ「でもそれなら私、瞬間移動した事になるんだけど」
ウサギ「まぁワープしたようなものなので間違ってはいないね」
にこ「ふーん。それで、私はどうすれば良いのよ」
ウサギ「出来るだけ早く元の世界に戻らなければいけないよ。でないと……」
にこ「でないと?」
ウサギは私の目をじっと見てきた。
ウサギ「体がこの世界に順応してしまって、二度とこの世界から元に戻れなくなってしまうね」
にこ「それは困るわね」
戻れずにずっとこの世界にいるということはμ'sとしての活動ができなくなってしまうのは勿論、もう家族にも会えないという事だ。そんなのは絶対に嫌だ。なんとしてでも戻らないと。
8 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 10:49:30.51 ID:D/ABzthS0
ウサギ「ああ、そうでした。今はそれが一番大切ですからね」
ウサギは口に手を当て「コホン」と一度咳をすると、さっき言っていたことの説明を始めた。
ウサギ「ここは夢の世界なんかではない。この世界もまた現実の一つ」
にこ「でもそれなら私、瞬間移動した事になるんだけど」
ウサギ「まぁワープしたようなものなので間違ってはいないね」
にこ「ふーん。それで、私はどうすれば良いのよ」
ウサギ「出来るだけ早く元の世界に戻らなければいけないよ。でないと……」
にこ「でないと?」
ウサギは私の目をじっと見てきた。
ウサギ「体がこの世界に順応してしまって、二度とこの世界から元に戻れなくなってしまうね」
にこ「それは困るわね」
戻れずにずっとこの世界にいるということはμ'sとしての活動ができなくなってしまうのは勿論、もう家族にも会えないという事だ。そんなのは絶対に嫌だ。なんとしてでも戻らないと。
9 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 10:59:40.79 ID:D/ABzthS0
にこ「どうしたら元の世界に戻れるの?」
ウサギ「それは僕にも分からないよ」
にこ「は?」
ウサギ「今までここに来た人も、ある日みんないなくなっちゃったんだ。何かしらの帰る条件はあるんだろうけどね」
にこ「何がなんでも良い加減すぎない?」
ウサギ「でもがむしゃらにでも帰ろうとしないと帰れなくなっちゃうからね。そのためにも動き回らないとダメだよ?」
にこ「めんどくさいわねぇ……」
方法が分からないというのはとても致命的だ。方法が分かりさえすればちゃっちゃと終わらせれば良いのだけれど、それも出来ないじゃない。
ウサギ「とりあえず先に進もうか。ここでじっとしていても何も進展はしないからね」
にこ「悔しいけどそれはそうね。なんとしてでも帰らなくちゃいけないし」
ウサギ「よし、それじゃあ行くよ」
立ち上がって森の入り口へと向かったウサギについていく事にした。方法が分からない限りはウサギのいうことを聞いているしかないだろう。
10 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 11:11:15.28 ID:D/ABzthS0
* * *
ウサギ「怪我をしないように気をつけてね。ここの辺りの道はでこぼこしていて歩き難いから」
ウサギの言う通り、この辺りの道は舗装されている訳ではないので気を抜いていると転びそうになる。森の中なんだから舗装されていないのは当たり前なんだけど。
にこ「どこまで進む気?」
ウサギ「もう少しで猫の家に着くよ。一回そこに寄って行こうと思うんだ」
にこ「猫の家?」
ウサギ「そう。彼もまた物知りだからもしかしたら元の世界に帰る方法を知っているかも知れない」
私はウサギの後をただひたすらついていく。ただ定期的に問題が起こる。
にこ「ちょっと! そこの道は私だと通れないじゃない!」
ウサギ「あ、ごめんごめん」
このウサギ、確かに道は分かっているみたいだけれど、体のサイズ差について何にも考えてくれない。今の私の指摘だってもう何回目だか分からない。
にこ「もう、いつになったら着くのよ!」
ウサギ「ほら、あそこに大きな木が見えるだろ? あの木の中に彼の家があるんだ」
ウサギの視線の先には確かに大きな木があった。でもあれって、
にこ「まだかなり遠いじゃない!」
ウサギ「ほら、文句を言う暇があったら急いで!」
にこ「うるさいわね!」
11 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 13:35:39.01 ID:D/ABzthS0
少し時間を開けて続けます
12 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 18:16:04.98 ID:D/ABzthS0
森の中を進んでいるとある事に気がついた。
にこ「そういえば、かなり歩いているはずなのに全然疲れないわね」
最初にいたお花畑が、かなり遠くに小さく見えるくらい移動している。でも疲れを感じる事なく今も歩き続けている。
ウサギ「ああ、ここでは歩くことでは疲れを感じないんだよ。転んだりすると少しずつ体力が無くなって、最後には動けなくなっちゃうんだけどね」
にこ「は? じゃあ転んだりしなければずっと移動し続きることが出来るって事?」
ウサギ「怪我しなければね。だから本当に転ばないように気をつけてね」
にこ「分かったわよ。というかさっきから気をつけてるけど」
ウサギ「それなら安心だね。じゃあ走って向かおうか」
にこ「ええ……転びそうなんだけど」
ウサギ「ええ……」
13 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 18:51:25.67 ID:D/ABzthS0
そうやってウサギの後ろを転ばないように気をつけてついていった。
ウサギ「ほら、もうすぐそこだよ!」
にこ「ほんとだ……ってこんなに早く移動できるなら最初から走っても疲れない事教えなさいよ!」
ウサギ「それは出来ないよ。物には決められた順序があるんだから、決まりは守らないと」
急にウサギの声が真面目なトーンになった。その言葉には恐怖すら感じられたけれど、その事について尋ねることは出来なかった。
* * *
ウサギ「さあ、ついたよ」
にこ「うわぁ……近づいたらやっぱり大きいわね……」
先ほど見た距離から大きく見えたのだから当たり前なのだけど、近づいて見てみるとおっそろしい程大きかった。
ウサギ「大きいから家になってるのさ。小さい家は嫌でしょ?」
にこ「そりゃあ小さいよりは大きい方が良いわよね」
ウサギ「だろ? じゃあそこのベルを鳴らしてみなよ。用があるのは君なんだからね」
一々トゲのあるような言い方をしてくる。そんなにも私といることが嫌なのか。こうも何度も正論ばかりぶつけられると、流石にこちらも嫌気がさしてくる。
にこ「これを引っ張ればいいのよね?」
ウサギ「うん、やってみて」
14 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 19:33:08.34 ID:D/ABzthS0
にこ「えいっ」
大きな扉についている小さなベルから垂れている紐を思いっきり引っ張った。
──ゴーンガラーンゴーン、カラーンコーンカラカラカラ……
大きさに似合わない程の大音量でベルが音を出した。
にこ「うっるさいわねぇ!」
ウサギ「そりゃあそうだよ。君は今、この木中にある鐘という鐘を全て鳴らしてしまったんだから」
にこ「え、それどういうこと?」
──ズゴゴゴゴ……
ウサギ「ほら、扉が開くよ。胸を張って堂々として!」
にこ「ちゃんと説明しなさいよ」
ウサギ「いいから!」
にこ「ったく分かったわよ……」
私はこれ以上言っても無駄だと思い、仕方なくウサギの言う通りに胸を張った。
15 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 20:50:31.72 ID:D/ABzthS0
凄まじい音と共に大きな扉が開いていく。扉の奥からは強い光が──。
にこ「うっ、眩しい……!」
あまりの眩しさに、顔を腕で覆ってしまった。
ウサギ「さあ、ようこそ。私たちの世界へ」
* * *
様子を見て腕を元に戻すと、いつの間にか扉の中に入っていた。
──バタン
背後で扉が閉まる音が聞こえた。つまり閉じ込められてしまったという訳だ。
「見えないぞ!」「どんな人だ?」「私にも見せて!」
にこ「えっ?」
私が振り返るとそこには、いろんな小動物が私の正面に立っていた。
「可愛らしい!」「女だ!」「こっち向いて!」
動物たちは口々に騒いでいて一つの大きな騒音になっている。
16 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/21(日) 21:07:10.94 ID:D/ABzthS0
──ざわざわ……ざわざわ……
にこ「なに……どういうこと?」
まるでステージに立っているような感覚。私を囲っている動物達は、私に注目してざわついている。
「静まれーーーーい!」
その場所全体に広がる程の大きな声が響いた。その大きさに思わず耳を塞ぎそうになる。
にこ「今のは?」
ウサギ「王女様だよ。この世界のね」
にこ「王女様……?」
動物達が一斉に動き出し道を開けると、奥から召使と思われる猫を何匹か連れた大きな猫が現れた。
王女「ようこそ。あなたがにこさんね?」
にこ「えっと、そうです」
王女様と呼ばれている猫は人間の私から見ても明らかに美人……いや、美猫だった。
王女「それではここを案内いたしますのでついて来てください」
ウサギ「ほら、いくよ」
にこ「は、はい」
私はウサギに促されて王女様と呼ばれる猫についていく事にした。
17 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/22(月) 07:07:02.18 ID:0XSXQMn60
* * *
王女様直々に街を案内される。
王女「ここが魚屋さん、反対側がお花屋さんでして……」
大きな家だなとは思っていたものの、こんな一つの街みたいになっているとは思わなかった。案内されて歩いているけれど。お店が並んでいる中で所々に家もあって。私たちの暮らしている秋葉原とほとんど変わらないと思う。
王女「にこさん?」
にこ「はい!」
王女「これから私の住む家へ案内します」
にこ「やはり大きな宮殿だったりするんですか?」
王女「宮殿ですか……。それだったら面白いんですけれど、残念ながらこの木の中はそれ程土地が広くありません」
にこ「そういえば木の中なんですものね」
忘れかけていたけれどここは木の中だった。
王女「ええ。ですから位が高いものほど上の階へ行く仕組みとなっております」
にこ「なるほど、そういう事ですか」
王女「というわけで最上階へと案内いたしますね」
にこ「わかりました」
恐らくそんなに気にして敬語を使わなくて良いのだろうけどつい敬語が出てしまう。というのもこの王女は絵里と同じ声をしていた。
18 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/22(月) 08:39:07.13 ID:0XSXQMn60
* * *
王女「こちらです。どうぞお入りください」
にこ「はぁ……大きいですね」
王女「ええ、一つのフロアが丸ごと一つの家になっていますからね」
最上階について門が開かれる。その門も私の身長より少し大きい程高さはあって、小動物からしたら十分な高さだろうと思う。
門の中に入ると、そこはまさに王女が住む場所であった。大きな建物、広い庭、その中心にある綺麗な噴水。誰が見ても高貴な人が住んでいると分かる様な造りをしていた。
王女「次は中を案内しますね」
19 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/22(月) 11:40:06.09 ID:0XSXQMn60
王女「そういえばしばらくここに残りますか?」
にこ「えっと」
ウサギの方を振り返ると激しく頷いていた。
にこ「はい、残ります」
王女「そうですか。元の世界に帰りたいですか?」
にこ「それは勿論」
王女「……そうですか」
王女様は少し考え込んでいたけれど、すぐに顔を上げてニッコリと笑った。
王女「それでは先ににこさんの部屋に案内しましょうか」
そう言って方向転換するとまた歩き出した。
王女「そういえば折角お客様が来たのに何もお出ししてなかったですね」
にこ「お構いなく」
王女「いえいえ、そう言う訳にもいきませんから。あなた、あれを持ってきてください」
「わかりました」
召使の一人が列から外れて何処かへ行ってしまった。
王女「少しお待ちくださいね」
20 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/22(月) 12:30:05.42 ID:0XSXQMn60
「お持ちいたしました」
王女「あら、早かったですね。でしたら庭のところでお茶をしましょうか」
にこ「分かりました……?」
先程から言っている事が二転三転している気がする。だからと言ってどうする事も出来ないけれど。
* * *
王女「さぁ、お座りになって」
庭に着くと、王女に促されて椅子のに座った。私たちが着く頃にはお茶も用意された状態で、いつでもお茶会が開始できる様になっていた。
王女「それではお飲みになって」
にこ「はい、いただきます」
机の上のカップをとって口にした。
21 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/22(月) 16:19:34.55 ID:0XSXQMn60
にこ「うっ!」
突然強く腹痛を感じた。痛みを強く感じたり感じなかったりを一定のリズムで繰り返していた。
にこ「痛い」
王女「……連れて行って」
「分かりました」
にこ「どうして……」
王女「あなたを元の世界に帰らせる訳にはいかないのよ。力ずくにでもね」
私はこの言葉を聞いて意識を失った。
22 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/22(月) 17:04:06.98 ID:0XSXQMn60
* * *
にこ「いてて……ここはどこ?」
私はベッドに寝かされていた。ベッドはフカフカで天蓋が付いていて、まるでお姫様専用のであるかの様な形だった。
「あ、お気づきになられました?」
声の方へ振り向くとそこにはエプロン姿のネズミがいた。……今度は凛の声だ。
にこ「えっと……ここはどこなの?」
ネズミ「ここはあなた様がこれから生活なされるお部屋です!」
にこ「え?」
ネズミ「あれ? ここにこれからお住みになられるんじゃないんですか?」
にこ「そんなこと言ってないわよ」
ネズミ「あれぇ? そう聞いてたんですけど……」
ネズミは下を向いて考え込んでしまった。
ネズミ「では、にこさんは本来自分の居るべき場所へ帰りたいという事ですか?」
にこ「そうに決まってるじゃない!」
ネズミ「そうですか……だいたい何が怒っているか分かってきました」
23 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/22(月) 17:17:02.39 ID:0XSXQMn60
ネズミ「帰り方は簡単です。でもそれにはここから抜け出さなければいけません」
ネズミは私の顔を見て話し出した。
ネズミ「でも王女はこの部屋から出してくれないでしょう」
にこ「どういう事?」
ネズミ「簡単に言えば王女様は人間の姫が欲しかったんです。王女様は一度手に入れた物は絶対に離さない人です」
にこ「そういう事ね……」
ネズミ「私は姫の身の回りの世話をする様に言われてきました。ですがそういう事であれば、私はにこさんがここを抜け出せる様に協力しましょう!」
にこ「ありがとう。それで、私はどうしたらいいの?」
ネズミ「しばらくは王女様のいうことを聞いているフリをして下さい。警戒心を解くのと脱出方法を探すためです」
にこ「わかったわ」
ネズミ「それではこれからお披露目があるので着替えて下さい」
にこ「お披露目……?」
ネズミ「新しい姫が決まったのですから当然です。ほら、着替えますよ!」
ネズミに手伝ってもらい、綺麗なピンク色のドレスに着替えた。
24 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/23(火) 07:13:18.15 ID:1v/8cooL0
ネズミ「さあ急ぎますよ、付いてきて下さい!」
にこ「待って、ドレス着て走ったことなんてないから!」
そう言ってもネズミはスピードを落とさずに前へ前へと進んでいく。私はそれについて行くしかなかった。
* * *
ネズミ「さあ、もうすぐ出ますからね」
一つ下の階に降り、大きなカーテンの前でネズミは立ち止まった。
ネズミ「いいですか? 今日は笑顔で手を振っていればいいだけですからね?」
にこ「え、どういうこと?」
「それでは皆様、お姫様のお披露目です!」
ネズミ「さあ、行ってください!」
目の前の大きなカーテンが勢いよく開いた。
──ワーーーー!!!!
開けた瞬間外を見ると、広場いっぱいに動物達が集まっていた。
にこ「あは、あはは……」
私は言われた通り、ただ笑顔で手を振っていた。
25 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/23(火) 08:57:40.92 ID:1v/8cooL0
──────
────
──
ネズミ「にこさんお疲れ様です!」
にこ「はぁ、緊張した……」
ネズミ「でもお上手でしたよ? もしかして元の世界でも本当にお姫様じゃなかったんですか?」
にこ「あはは、それは無いわよ」
おだてられて少し嬉しかった。けれど……。
にこ「私は元の世界に戻らなきゃいけないの」
ネズミ「分かってますよ。こちらで時間が流れるだけ元の世界でも時間が進みますからね」
にこ「え、それってかなりまずいんじゃ無いの?」
ネズミ「……かなり時間差はあるはずですから大丈夫だと思いますよ」
そうは言われても、向こうの世界で私がどうなっているか分からない。
にこ「できるだけ早く頼むわよ?」
ネズミ「勿論です。それまで逃げようとしているのがバレないようにしてくださいね?」
26 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/24(水) 14:55:34.47 ID:RVFS5XWu0
にこ「そういうのは得意だから安心して?」
ネズミ「分かりました。私も頑張りますから!」
* * *
数日経ってやっとここの暮らしに慣れた頃、ネズミから脱出についての情報が入った。
ネズミ「とりあえず、元の世界に戻る方法は分かりましたよ。戻り方は案外簡単でした」
にこ「なに!? どうやって戻るの?」
ネズミ「最上階から飛び降りるんです」
にこ「は?」
ネズミ「ですから、構造上吹き抜けになってるでしょう? 最上階から入口の門がある広場まで飛び降りるんですよ!」
にこ「ねえ、その情報信じて大丈夫? もし間違ってたら死なない?」
ネズミ「死ぬことだけは絶対に有り得ませんから安心してください!」
にこ「えぇ……」
そんなことを言われても、飛び降りろと言われれば流石に困惑する。私たちの世界ではそんなことしたら……。
にこ「まぁでも……他に方法もないから……」
ネズミ「今すぐでも大丈夫みたいなんだけど、どうする? 今やる?」
にこ「やっぱり夜にこっそりやった方がいいでしょ。周りはみんな逃したくないみたいだし」
ネズミ「そうだね、夜まで時間を潰そう」
27 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/25(木) 10:45:41.46 ID:j/O4eVia0
にこ「でも、どうやって抜け出すの? 夜は門に鍵がかかってるでしょ?」
ネズミ「それは任せて! 作戦を考えてあるから」
28 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/26(金) 05:00:14.47 ID:DpyBH9w/0
* * *
ネズミ「にこさん、起きてますか?」
にこ「勿論よ、起きてるに決まってるじゃない!」
ネズミ「夜になったので見回りさえ避ければ問題なく通れます!」
にこ「分かったわ。あなたについて行くから案内よろしくね?」
ネズミ「私は体が小さいですからね。見失わないように気をつけて。それじゃあ行きますよ!」
そう言うと、優しく扉を開いてキョロキョロと見渡した後、再び私の方を見た。
ネズミ「今なら大丈夫そうですよ。音を出したら死んじゃうからね」
にこ「ひっ! 怖いこと言わないでよ。こんな状況なのに!」
ネズミ「ごめんごめん。じゃあ二人で音を立てないようにのんびりゆっくり進みましょうね」
29 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/27(土) 05:21:22.85 ID:rArhZpfG0
こそこそと建物の中を進んでいく。こんなことした事はないし、できれば生涯で一度もしたくなかったけれどこの際仕方がない。
ネズミ「にこさん、ついて来られてますか?」
にこ「ええ、なんとか」
ネズミ「もう少しですから頑張りましょう」
「むっ! 誰だ!」
ネズミ「やばっ」
警備員の声が廊下に響き渡る。私たちはとっさに柱の影へと隠れた。
「……気のせいか?」
足音が離れていく。なんっとかこの場は凌げたらしい。
ネズミ「門へと一気に行ってしまいましょう」
にこ「そうね、今のうちだわ」
30 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/29(月) 17:07:39.89 ID:Rl1+aaPR0
なんとか門の前にたどり着いた。
にこ「早く鍵開けなさいよ」
ネズミ「ちょっと待ってね」
「コラー! まてー!」
私たちが通ってきた道から大勢の声が聞こえてくる。
にこ「早くしなさいよ!!」
ネズミ「分かってるから焦らせないで!」
ネズミのいる場所からガチャガチャと金属音が聞こえてきた。こうしている間にもどんどん迫ってくる。
31 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/30(火) 04:37:13.36 ID:vPPrtZg60
王女「待ちなさーい!」
見えた群衆の先頭にいたのは王女様だった。
にこ「まだ開かないの!?」
ネズミ「もう少し……開いたよ、走って!」
にこ「あんたはどうするのよ!?」
ネズミ「大丈夫だから早く飛んで!」
にこ「……ッ! ありがとう」
私は吹き抜けのところまで一気に走って行く。
ネズミ「さぁ! 飛んで!」
王女「飛んではダメ!」
ネズミ「急いで、早く!」
私はネズミの声に後押しされて飛び降りた。勢いよく地面に向かって落ちて行く。
にこ「きゃあーーーー!!!!」
私は落ちている間に意識を失った。
32 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/30(火) 23:40:35.41 ID:vPPrtZg60
──────
────
──
にこ「あれ? ここは……部室?」
気がつくと部室のパソコンの前で顔を突っ伏して寝ていた。
にこ「どういうことなの……」
パソコンの画面も真っ暗で、結局のところただ寝ていただけらしい。
絵里「にこー、そろそろ練習行くわよー?」
にこ「ひっ」
絵里「え?」
にこ「あ、ご、ごめん。今行くわ」
絵里「う、うん」
つい、絵里の声を聞いて体が反応してしまった。
にこ「夢の中の話はもう終わりにしないとね」
私は練習着に着替えて部室を後にした。
33 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/30(火) 23:41:47.77 ID:vPPrtZg60
セーブを完了しました。
34 :
◆vlTFewOdSQ
[saga]:2019/07/30(火) 23:42:18.66 ID:vPPrtZg60
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荒巻@中の人 ★
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