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有栖川夏葉「とっておきの唄」
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◆TOYOUsnVr.
[saga]:2019/07/20(土) 23:40:56.28 ID:+a76L7SS0
かたかたとキーボードを叩く音が、二人分。いま、事務所に響くのはそれだけだった。
一つは残業中の私の担当プロデューサーのもので、もう一つは私のものだ。
彼が取り組んでいるのは明後日に必要な資料らしいのだが、明日は久々のお休みのようで、曰く「休日を平穏に過ごすために必要な犠牲」とのことだった。
対する私はというと、大学で来週が提出日となっているレポートを仕上げる作業を、事務所のパソコンを借りて行っていた。もちろん期限は来週であるし、今日完成させる必要はあまりないのだけれど、そこはそれ、可愛らしい口実と考えて欲しい。
などと誰に宛てたわけでもない謎の言い訳を脳内で繰り返し、モニターから視線を外して、プロデューサーの方を見やる。
すると、どういう偶然か二枚のモニター越しに目が合ってしまった。
声が「あ」と重なる。
言い表しようのない気恥ずかしさが込み上げてくるのを抑えながら、努めて平静を装い「……あら、もうプロデューサーの方は終わったの?」と訊ねてみる。
「え、あっ、ああ。うん、もう少し」
どうやらプロデューサーも目が合うのは予想外であったようで、若干しどろもどろになっているのがなんともおかしい。
「ええと、それで。夏葉の方は?」
「私? 私は……そうね。もう終わるわよ」
逆に訊かれ、返事に窮してしまう。
なぜなら先述のとおり、私にとってこのレポートはそれほど差し迫ったものではないからだ。
「そうか。戸締りとか、消灯とか、そういうのはやっておくから夏葉が終わったタイミングで帰っていいんだからな」
私も、もう少しだと言うべきだったかしら。
なんて、自身の回答に後悔をしつつ、ここまで粘っておいて帰れるものか、とも思う。
「せっかくだしプロデューサーが終わるまで一緒にいるわよ。それとも、アナタには私がそんな薄情な女に見える?」
「まさか。夏葉くらい気遣いのできる素敵な女の子はそうそういないよ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。だったら気遣いのできる女の本領を見せてあげる」
「……つまり?」
「コーヒー、淹れてあげるから待っていて」
席を立ち、翻って給湯室に向かう。
背中に届くキーボードを叩く音が心なしか跳ねている気がするのは、私の思い込みだろうか。
まあ、思い込みだろう。
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