高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「七夕のカフェで」

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22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:37:24.27 ID:tebchJYr0
>>21 4行目の藍子のセリフを一部修正させてください。
誤:藍子「頭の上に……ウサミミ?」
正:藍子「頭の上に……うさみみ?」


加蓮「お子様ランチを1人分にするなら、あとは何を注文するの? さすがに2人で分けて食べるのは量が少なすぎでしょ」

藍子「それなら……。加蓮ちゃんって、お腹空いてますか?」

加蓮「実はほとんど」

藍子「あはは、私も。夢だからかな?」

加蓮「夢だからだろうね。じゃ、いつも通りのサンドイッチにでもしよっか」

藍子「は〜い。それでお願いします、店員さんっ♪」

加蓮「よろしくー」

藍子「わ、戻っていく時にうさみみがぴょこぴょこ揺れてる……。あっ、よく見ればうさぎの尻尾までついています! 可愛いな……♪」

加蓮「……藍子にもつけてあげよっか?」

藍子「え?」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:37:52.14 ID:tebchJYr0
加蓮「くくくっ。藍子、よく考えてみなさい。藍子は時計を出すことはできなかったけど私は出すことができた。つまり――」

加蓮「今の私なら、藍子にウサミミをつけることも尻尾をつけることも自由自在!」

藍子「!!!」

加蓮「出てきなさいウサミミ! 尻尾! バニーガール衣装!!」

藍子「何か増えてますよ!? 待って、加蓮ちゃんっ、待っ――」

……。

加蓮「……何も出てこないんだけど」

藍子「ほっ……」

加蓮「何でよ! 時計を出せたんだからバニーガール衣装の1つくらい出てもいいでしょ!」

藍子「まあまあ。ほら、ここは夢の世界ですからっ」

加蓮「ぐぬぬ……。途端に藍子が余裕ぶってるの、すっごいムカつくっ」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:38:22.09 ID:tebchJYr0
<おまたせしました〜

加蓮「早っ」

藍子「ありがとうございますっ。あの……どうして、店員さんはうさみみなんですか?」

加蓮「……答えないで行っちゃった」

加蓮「あれかな。私の中で星とか宇宙って言ったらあの人しか思い浮かばないからかな……」

藍子「あ〜……」

加蓮「さて、お子様ランチは……。うん。お子様ランチだね」

藍子「お子様ランチですねっ。ご飯と、ハンバーグと、ひかえめの野菜と、スープと……。編みぐるみ!」

加蓮「ご執心だねー」

藍子「可愛い……♪ 見てみて加蓮ちゃんっ。目の中もお星様になってる! それに織姫さんのドレスも、すっごく作り込まれてて――」

加蓮「……ふふっ。藍子、ホント楽しそう」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:38:52.32 ID:tebchJYr0
加蓮「やっぱりこの夢は藍子が見てる夢なんじゃないのー? こんなに大はしゃぎしちゃって」

藍子「え〜っ。絶対、加蓮ちゃんの夢ですよ。店員さんがうさみみだったのも、加蓮ちゃんがそうイメージしたからです!」

加蓮「藍子だってそれくらいの連想はできるでしょ。絶対藍子だよ」

藍子「絶対、加蓮ちゃんっ」

加蓮「藍子!」

藍子「加蓮ちゃんっ」

加蓮「藍子でしょ。いいじゃん、認めちゃえば。別に笑ったりしないよ?」

藍子「加蓮ちゃんこそ、私は笑ったりしませんよ。いいじゃないですか。七夕の日に、夢を描いたって」

加蓮「いやいやさすがに私のキャラじゃないし。こういうのは藍子のすることでしょ?」

藍子「ううんっ、加蓮ちゃんのやることです!」

加蓮「むー」

藍子「う〜」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……食べてみよっか」

藍子「そうしましょうっ」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:39:24.16 ID:tebchJYr0
……。

…………。

「「ごちそうさまでした。」」

加蓮「普通の味だった……」

藍子「サンドイッチ、いつもの味でしたよね。お子様ランチは……子ども向けの味?」

加蓮「って言っても分かんないよねー」

藍子「なんだか、懐かしい味がしたくらいでしょうか」

加蓮「病院食とは違うのは確かだったー」

藍子「……あ、」

加蓮「ん? あぁごめんごめん。……藍子ちゃーん? だからって現世に戻ってから私にお子様ランチを食べさせようとしなくてもいいんだからね?」

藍子「へっ? 何のお話――」

加蓮「あはは、なんでも。……お、店員が戻って来た。お皿を下げに来てくれ、た……?」

藍子「……え? 未央ちゃん!?」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:39:52.11 ID:tebchJYr0
加蓮「どっからどう見ても未央だこれ……。ちっこいけど。ウサミミもないけど」

藍子「未央ちゃんは、いつもうさみみをつけていませんよ?」

加蓮「そうじゃなくて」

<お皿下げちゃうよ!

加蓮「あ、うん。お願い」

藍子「……あっという間にぜんぶのお皿を両手に持って、行っちゃった」

加蓮「……」

藍子「……」

加蓮「……ま、夢だし」

藍子「……うん。夢ですもんね」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:40:21.89 ID:tebchJYr0
加蓮「もしかしたらこれ、私と藍子が一緒に見てる夢なのかも」

藍子「一緒に見ている夢?」

加蓮「ほら、ウサミミ店員はウサミンでしょ? たぶん、私が星や宇宙から連想して出てきたんだと思う」

加蓮「で、未央は未央なんだけど、未央も星のイメージあるじゃん。アイドルのスター! とかいっつも言ってるし」

藍子「『ミツボシ☆☆★』もそうですよねっ。ひょっとして……未央ちゃんが出てきたのは、私が星から連想したから?」

加蓮「ってこと。あとやっぱりこの星のソファーとか私が思い浮かぶ物じゃないし。だから、私達が一緒に見てる夢なんじゃない? って思ったの」

藍子「なるほど〜……。それなら、私と加蓮ちゃんは一緒に眠っていて? ……でも、それで夢が一緒になることって、あるんでしょうか?」

加蓮「さあ。夢だからあるんじゃないの?」

藍子「夢ですもんね」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:40:51.87 ID:tebchJYr0
藍子「あれっ? ちいさい未央ちゃんが、こっちに戻ってきてます」

加蓮「ところでなんであの未央はちっちゃいの?」

藍子「さあ……?」

加蓮「んー……。あ、そっか。なるほどー。藍子から見て、未央はまだまだ子供だって言いたいのかな?」

藍子「……? 確かに、未央ちゃんは1歳年下ですけれど」

加蓮「ちびとかガキとか心の中で思ってたりして?」

藍子「思ってませんよ〜!」

<これ、あげるっ!

藍子「なにかな?」スッ

加蓮「短冊……」スッ
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/07/07(日) 19:41:21.89 ID:tebchJYr0
藍子「そっか。七夕! それなら、願い事を書かなきゃっ」

加蓮「……、」

藍子「ペンも貸してくれるんですね。ありがとうございますっ。願い事、願い事……」

加蓮「……」

藍子「う〜ん。……あっ、短冊の裏に何か書いてある。え〜っと?」

藍子「"書いたら叶うよ!"、だって! 加蓮ちゃんっ。これ、書いたら本当に叶っちゃう短冊かもしれません! 慎重に書かなきゃいけませんね」

加蓮「……、」チラ

藍子「願い事……。私のやりたいこと――」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:41:52.33 ID:tebchJYr0
藍子(……私のやりたいこと?)

藍子(そういえば、何かで聞いたことがあります。夢の中を、ここは夢の世界だって自覚したら、いつもはできないことができるようになるって。明晰夢、だったかな?)

藍子(いつもはできないこと――)

藍子(いつもなら……)ジー

加蓮「ん、これでよし」サラサラ

藍子「できないこと――えっ? 加蓮ちゃん、もう書いたんですか!?」

加蓮「一応ね。フツーのありふれたことだけど……。こらっ、覗き見ようとするなっ」ペチ

藍子「痛いっ」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:42:21.97 ID:tebchJYr0
加蓮「ったく。で、これはどうしたらいいの? どっかに飾ればいいのかな……」キョロキョロ

藍子「あぅ〜」ヒリヒリ

藍子「……やりたいこと……いつもはできないこと……」ブツブツ

加蓮「……、」

藍子「…………」ブツブツ

藍子「――あれっ?」グラッ

藍子「え、なに……? 目の前が、ぐらっとして……」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:42:51.93 ID:tebchJYr0
加蓮「……、」

藍子「加蓮ちゃんの顔が、ぼやけてる……?」

藍子「うぅ……」クタゥt

藍子(起き上がれない……。力が、何かに吸われている感じがします……)

藍子(ひょっとして、私が……現世の私が、目を覚まそうとしてる、のかな。それなら、時間が、もうあんまりない……)

藍子「やりたいこと、書かなきゃ……!」

藍子「やりたいこと」

藍子「いつもは、できないこと」

藍子「私の、やりたいこと――」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:43:21.99 ID:tebchJYr0
加蓮「藍子」


藍子(酷い目眩と、鈍い頭痛の中、加蓮ちゃんの声がはっきり聞こえました。まるで、LIVE会場の騒がしさの中でも届く、強い歌のように)


加蓮「藍子は、何がやりたいの?」


藍子(意識の中に直接入り込んでくる言葉に、返事ができないまま、私の意識は星の彼方に流されていって――)




――おしゃれなカフェ――

藍子「はっ!」バッ

藍子「え……え? あれ……?」キョロキョロ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:44:21.88 ID:tebchJYr0
藍子「ここ……いつものカフェ? 私……」

加蓮「起きた。おはよー、ねぼすけ藍子♪」

藍子「おはよう、ございます……。加蓮ちゃん?」

加蓮「……うぷっ、あははははっ! 藍子、口の横のとこ涎がついてる! 跡がすごいくっきり……あははははははっ!!」

藍子「!?」

加蓮「スマフォで見せてあげる。ほら!」スッ

藍子「……〜〜〜っ! お手洗い、行ってきますっ」ダッ

……。

…………。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:44:51.98 ID:tebchJYr0
藍子(それから、お手洗いで入念に顔を洗って……水の感触で完全に目が覚めてから、私は戻りました)


藍子「2時間……?」

加蓮「そ。お昼ご飯を食べたらすぐ寝ちゃってたよ、藍子」

藍子「そんなに……」

加蓮「ま、私もつられて寝ちゃったからあんまり笑えないんだけどね」

加蓮「でさー、さっきまで外が晴れてたんだけど、雨が降り出した瞬間に藍子が起きたんだよね」

藍子「外……。本当ですね、雨が降ってる……

藍子「……うぅ。今年も、天の川は見れないのかな」

加蓮「あんなにはしゃいでたのに。残念だね」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:45:22.00 ID:tebchJYr0
藍子「はしゃいでた、って、私がですか?」

加蓮「覚えてないんだ。もっかい顔洗ってくる?」

藍子「……、」

加蓮「雨が降った瞬間に藍子が起きたから、星の世界からこっちの世界に引き戻されたのかなって思ったよ。……なんて、ちょっとメルヘンチックすぎ?」

藍子「……、」

加蓮「こら、真剣に考え込むなっ。今のナシ! さすがにちょっと恥ずかしいし」

藍子「私……」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:45:51.96 ID:tebchJYr0
加蓮「あ、それと藍子。これ」スッ

藍子「……短冊?」

加蓮「店員がね、よければ書いていってくださいって。ほら、今日は七夕だし。雨が降り出しちゃったけどね」

藍子「願い事……」

加蓮「ま、こんな紙切れに書いて叶う願いなんて願い下げなんだけど。一応、頼まれたんだから書いてあげよっか」

加蓮「んー……。"明日の学校の授業で寝てても叱られませんように"。これくらいならいいでしょ」

加蓮「店員さーん。書いたよー。……えー、駄目? 店員さんもワガママだなー。仕方ない、真面目に書くね」

藍子「……」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/07/07(日) 19:46:30.13 ID:tebchJYr0
加蓮『藍子は、何がやりたいの?』


藍子(短冊に書く言葉が思いつかず、その後、加蓮ちゃんとお話して……"みんなが元気でいられますように"って私は書きました)

藍子(そうなったらいいな、とは思うけれど、私の本音の一番深いところにある言葉は、絶対にそれじゃない)

藍子(でも……そこに何の言葉があるのか分からないのは、どうして……?)


【おしまい】
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