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梨子「未来のあなたが知ってるね」
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:39:49.84 ID:LeKpDSJgO
「ねぇ、知ってる?最近この辺りに出るっていう、[亡霊]のこと」
梨子(Aqoursの練習が終わって。何故だか訂正の線が自然に思えてしまう、『スクールアイドル部』のプレートが掲げられた部屋の中で)
梨子(皆が帰りの支度をしている最中のことだった)
梨子(メンバーの一人……一年生の津島善子ちゃんが、唐突にそんなことを言いだした)
果南「ぼ、ぼうれい?」
善子「そう、亡霊。……果南ってばもしかして 言葉の意味わかってない?」
果南「いやそうじゃないよ!そうじゃなくて、本当なの?……その、オバケが出るって話」
善子「オバケじゃなくて亡霊だってば!」
果南「どっちでもいいよそれは!そんなことより本当に幽霊が出るっていうの!?」
善子「だから幽霊じゃなくて亡霊だってばー!」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1561984789
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:46:38.97 ID:LeKpDSJgO
梨子(練習が終わった後だっていうのに、二人とも元気だなぁ……)
梨子(まあ、いつものことなんだけど)
梨子(私以外のメンバーも、特に気にしていない様子だったり「また始まった……」というような呆れ顔を浮かべたりしていた)
梨子(それにしても皆話半分に聞いているものだと思ったんだけど、果南ちゃんが食いつくのは珍しいわね)
梨子(普段は善子ちゃんだけじゃなく、結構色んな人の話を聞き流している印象があるんだけど……)
梨子(霊という言葉に過剰に反応しているところを見ると、意外に怖がりなのかな?)
梨子(いい意味でマイペースでサバサバした頼りがいのあるお姉さん、って感じの果南ちゃんだけど……結構可愛いところがあるのかも)
ルビィ「ぼうれい、かぁ……」
花丸「ルビィちゃん、どうかしたずら?」
ルビィ「あ、ううん。ちょっと気になっちゃって」
花丸「気になったって、善子ちゃんのいつもの与太話のこと?」
ルビィ「あ、うん。……亡霊って、幽霊とどう違うのかなって思って」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:48:05.06 ID:LeKpDSJgO
梨子(ルビィちゃんの言葉を聞いて不覚にもはっとして、少し考え込んでしまった)
梨子(亡霊……確かに普通に生きていればあまり聞きなれない言葉だと思う)
梨子(こういう場合だと、それこそ果南ちゃんのようにお化けとか幽霊とか、そういう言葉で表現するんじゃないかな)
梨子(もちろん善子ちゃん特有のちょっと変わった言葉選びなんだと思うけど……でも、実際に言葉が違うってことは意味も少し違ってくるのかもしれない)
梨子(花丸ちゃんだったら読書家だし、色んな知識を持ってるから……もしかして違いを知ってるかな)
曜「あ、私もそれちょっと気になるかも。花丸ちゃん、知ってる?」
梨子(曜ちゃんが二人の話に割って入っていって率直に疑問をぶつけた)
梨子(……曜ちゃんも気になったんだろう)
花丸「ああ、そういうことずらか。……言葉の意味ってことだと……」
花丸「えっと、おらが知る限りなんだけど……」
梨子(流石というかなんというか、花丸ちゃんは知ってるみたいね)
梨子(……ふと皆の方を見てみると、視線が花丸ちゃんの方に集中しているのがチラリと目に入った)
梨子(……どうやら同じことを考えていたのは私と曜ちゃんだけじゃなかったみたい)
梨子(皆、ルビィちゃんの疑問に興味を持った様子だ)
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:48:52.96 ID:LeKpDSJgO
善子「……」
果南「……」
梨子(……さっきまで騒がしくしていた善子ちゃんと果南ちゃんまでもがいつの間にか言い合うのをやめて花丸ちゃんの方を向いていた)
梨子(花丸ちゃんは、そんな皆の様子を知ってか知らでか、滔々と話し始めた)
花丸「亡霊って大きく分けて三つの意味があるずら」
花丸「一つは死者の魂のこと。これは幽霊とも同じずら」
花丸「もう一つは滅びたはずのもののことを比喩的に表現したもの」
花丸「そして最後に、いないはずの霊のことずら」
梨子「……それって、結局幽霊とどう違うの?」
梨子(……なんか気になってつい口走っちゃったけど)
梨子(やっぱり皆も同じように気になってたみたいで、花丸ちゃんの続きの言葉を待っていた)
花丸「言葉の意味の上だと、幽霊って今現実にはないはずのものがあるって意味で使うんだよね」
花丸「たとえば幽霊部員とかがわかりやすい例ずら」
花丸「いるはずなんだけど、いない。いない方が常識なのに、いるという証は残っている……ってことなんだけど」
梨子「実際には部活に所属してないも同然だけど……名簿上はいるって扱いになるってこと?」
花丸「そうそう。それに対して、亡霊はむしろないはずなのにあった、とか復活した存在……みたいな意味で使うずら」
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:50:31.99 ID:LeKpDSJgO
梨子(……まだちょっとわからないわね)
ルビィ「?まだちょっとわかんないや」
梨子(ルビィちゃんもそう思ったか……)
花丸「キーは″時間″ずら。今いないはずなのにあるって意味で使うのが幽霊で」
ルビィ「……昔なくなったはずなのに今なぜかあるっていう意味が強いのが亡霊って、こと?」
花丸「そうそう。その通りだよ、ルビィちゃん」
梨子(?ってことは……)
梨子「それって結局、今に注目するか過去に注目するかのニュアンスの違いで、指してるもの自体は同じってこと?」
花丸「まぁ、言葉が指すものっていう意味ではそうなるのかな……」
曜「理由は何であれ、今いないはずなのにいるのが幽霊で、昔”なくなった”からいないってハッキリしてるのに何故か今いる方が亡霊ってこと?」
花丸「そういうことだね。でも結局、どっちも同じものを指していることには違いないずら」
善子「えっそうだったの?」
花丸「善子ちゃん知らなかったのに使ってたずらか?」ニヨ~
善子「そ、そんなわけないでしょ!ただ……」
花丸「ただ、なんずらか?」
善子「……ただ、なんか違うっていうか」
曜「幽霊と亡霊じゃなんとなく違う気がするってこと?」
花丸「それって何も考えずに言葉の響きだけで使っただけってことじゃないの〜?」
善子「ち、違うわよ!」
梨子「……」
善子「ちょ、ちょっとリリーからも何か言ってよ!」
梨子「え、わ、私?」
花丸「そうやってすぐ梨子ちゃんに頼ろうとするのは善子ちゃんの悪い癖ずら」
善子「うっさい!あと私はヨハネ!」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/01(月) 21:51:15.16 ID:LeKpDSJgO
善子「そ、それそれ!イメージの上ではやっぱちょっと違うんじゃないの?って言いたかったわけ!」
花丸「善子ちゃん……本当に?」
善子「何で嘘だと思うのよ!後ヨハネ!」
曜「ま、まぁまぁ落ち着いて……」
梨子「……花丸ちゃんっていろんな本を読んでるわよね。その中に、亡霊とか出てきたりしない?」
花丸「そうだね。善子ちゃんからかうのも飽きたからそろそろちゃんと話すずら」
善子「ずら丸あんたね……」
梨子(善子ちゃん……本当にいじられキャラよね)
花丸「物語なんかだと、心残りがある方を幽霊と呼んだりすることが多いずら」
曜「じゃあ亡霊は心残りがないほう?」
花丸「そうだね。だから幽霊は生前やり残したことをやろうとするけど、亡霊はそうじゃないんだよ」
ルビィ「う〜ん、具体的にはどういうことなのかな」
ダイヤ「……例えば、生前に恨みを持っていた相手に復讐するために蘇ったものを幽霊で。目的を果たしても現世に留まって無差別に人を襲い続けるのが亡霊……と、そういうことになるのでしょうか?」
梨子(ダイヤさんも食い付いた……)
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2019/07/01(月) 21:54:07.33 ID:LeKpDSJgO
>>5
梨子(……善子ちゃんをかばうわけじゃないけど)
梨子(私も正直、二つの言葉から受けるイメージは、ちょっと違う気がするんだよね)
ルビィ「花丸ちゃん、さっき言葉が指すものではって言ってたよね?じゃあ、それ以外だったらどうなのかな?」
花丸「それ以外?例えば、イメージの上では……ってこど?」
善子「そ、それそれ!イメージの上ではやっぱちょっと違うんじゃないの?って言いたかったわけ!」
花丸「善子ちゃん……本当に?」
善子「何で嘘だと思うのよ!後ヨハネ!」
曜「ま、まぁまぁ落ち着いて……」
梨子「……花丸ちゃんっていろんな本を読んでるわよね。その中に、亡霊とか出てきたりしない?」
花丸「そうだね。善子ちゃんからかうのも飽きたからそろそろちゃんと話すずら」
善子「ずら丸あんたね……」
梨子(善子ちゃん……本当にいじられキャラよね)
花丸「物語なんかだと、心残りがある方を幽霊と呼んだりすることが多いずら」
曜「じゃあ亡霊は心残りがないほう?」
花丸「そうだね。だから幽霊は生前やり残したことをやろうとするけど、亡霊はそうじゃないんだよ」
ルビィ「う〜ん、具体的にはどういうことなのかな」
ダイヤ「……例えば、生前に恨みを持っていた相手に復讐するために蘇ったものを幽霊で。目的を果たしても現世に留まって無差別に人を襲い続けるのが亡霊……と、そういうことになるのでしょうか?」
梨子(ダイヤさんも食い付いた……)
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:55:06.07 ID:LeKpDSJgO
花丸「ん〜概ねその通りずら」
善子「ってことは、リングとか呪怨とかに出てくるのは亡霊ってわけ?」
花丸「りんぐ?じゅおん?」
善子「ほら。前に一緒に観たじゃない。……ルビィが観たいからってことで」
花丸「ああ、あの映画のことずらね。……善子ちゃんが、ビビってたやつ」
善子「うっさいわ!」
果南「……よくあんなもの観れるね。というかよく観たいと思うね、ルビィ」
ルビィ「え?……あはは」
鞠莉「ショージキ私も、流石に好んでは観ないわ……」
曜「……それで。結局、善子ちゃんの言ってる通りなの?」
花丸「うん。そうだと思う。……自分を生んだ理由。言い換えれば目的を果たした後も存在して、何らかの行動を起こし続けるって意味では、亡霊という言葉が当てはまってるずら」
梨子「……[過去]にいたはずなのに、今いるっていう言葉。……確かに[亡霊]は、過去で、既に目的を果たして、未練も消して……」
梨子「そして、存在までも消えたはずなのに。でも、残って行動し続けるって意味では、[過去]に注目していると言えるわけね……」
ルビィ「幽霊は……目的を果たしていないから、それを果たすまではいるけど……」
曜「目的を果たしたら、成仏しちゃうってことだよね」
花丸「う〜ん。一概にそうとも言えないずら」
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:56:39.80 ID:LeKpDSJgO
ダイヤ「と、いうのは……?」
花丸「復讐を果たしても、そのまま無差別に人を襲うようになったりすることもあるから」
曜「ああ……そっか」
ダイヤ「幽霊から亡霊になることも、あり得ると。……そう考えると、あまり厳格な区別ではないのかもしれませんね」
梨子「それでも、やっぱり違い自体はあったのね……」
善子「……ほら見なさい。私の言った通りでしょ」
果南「うん、そうだったね。じゃあこの話は終わりってことで!」
善子「そうね!……ってちょっと待ちなさーい!そんなことはどうでもいいの!話はこっからなんだから!」
曜「……そういえば、この辺に[亡霊]が出るっていうのが最初の話だったね……」
梨子「……。花丸ちゃんの話を聞くのに集中してすっかり忘れてたよ……」
果南「……忘れてると思ったのに」
善子「忘れるわけないでしょ!本題を話してないんだから!」
花丸「でも忘れかけてたずら」
善子「うるっさい!」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:57:20.39 ID:LeKpDSJgO
鞠莉「まぁまぁ、善子。……それで、どんな話なの?その、ゴーストの話って」
善子「……ま。鞠莉ぃ……!」
ルビィ「善子ちゃん……カンゲキしてるね」
ダイヤ「……鞠莉さん?また悪ノリしてません?」
鞠莉「違うって。……この学校の理事長としてはさ。不審者の可能性もあるから、注意を払った方がいいって思ったってことよ」
ダイヤ「あ……」
鞠莉「……もーしかして気付かなかったの?……ダイヤってば、ホーント頭がベリーハードねぇ!」
ダイヤ「あ。あたまが、べりーはーど……!?」
曜「どういうこと?」
梨子「……多分、頭が『カッチカチにカタイ』って言いたいんだろうね」
果南「まあ。ダイヤって普段、『ガッチガチのカタブツ』だからね。鞠莉の言いたいことはわかるよ」
曜「ああ……。なるほど」
ダイヤ「……失礼な……!」
ルビィ「それで。結局どういうことなの、善子ちゃん?」
花丸「ああ、そういえば善子ちゃんの話だったね。皆、ダイヤさんで遊ぶからすっかり忘れてたずら」
善子「……。釈然としないけど、これ以上ツッコんだら話が進まないし……まあ、いいわよ」
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:58:46.44 ID:LeKpDSJgO
善子「……ここ最近。内浦を含めて、沼津の各地に、ここら辺じゃ見たことのない若い女性が出没しているってウワサなのよ」
果南「……ゴクリ」
ダイヤ「……見たことのない、若い女性ですか……?」
曜「内浦は観光地だし、沼津だって結構おっきいよ。見たことのない人の一人や二人、普通だと思うんだけど」
善子「それが、普通じゃ考えられないことが起きているのよ。その女性が現れるところには、ね」
梨子「……!普通じゃ考えられないこと……?」
善子「そうよ。例えば、あるトラック運転手の話だと……」
善子「ある日の深夜、山道を走っていたところ。疲労がたたったのか、一瞬意識が飛んでしまったらしいの」
ダイヤ「……なんて、危険な」
善子「そこで、次に気がついた瞬間には、目の前に若い女性の後ろ姿があったらしいのよ」
ルビィ「え……!」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 21:59:30.40 ID:LeKpDSJgO
善子「運転手は咄嗟にブレーキを踏んだそうよ。でも、車と女性の距離は、大体十数メートル程度しか離れてなかった。……追突は、ほぼ確実だった」
果南「………」
善子「……でもね。実際には、誰も、轢かなかったらしいのよ」
曜「……突然姿を消したってこと?」
善子「そうみたい。……運転手は、幻影を見るほど自分は疲れていたんだなと反省して、とにかく休める場所までは運転していこうって思ったみたい」
善子「それで、車を再び動かそうとした時。逆だったことに、初めて気がついたの」
善子「女性が助かったんじゃなくて、逆に自分が助かったんだってことに、ね」
梨子「自分が助かった……?」
善子「そう。……改めてよく見ると。……目の前は、崖だったんだって」
果南「え……。え!?」
善子「……もし、急ブレーキするのが、後少しでも遅ければ。……そのまま、崖の下に真っ逆さまだったそうよ」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:00:17.03 ID:LeKpDSJgO
花丸「……若い女性を見なければ。もしかしたら、その運転手さんは……死んでいた、ってこと?」
善子「……そういうことよ」
果南「ひっ。……こ、怖いこと、言わないでよ……」
曜「……でも、そういうことなら。仮に本当に[亡霊]だとしても、悪霊ではなさそうだね」
花丸「……それはわからないずら。単なる気まぐれの可能性もあるし……」
花丸「そもそも、助けようとしてやったかどうかすら、判断できない」
梨子「……花丸ちゃんが言うと、説得力があるわね……」
善子「ところが。……そもそものそもそもなんだけど。それが本当に霊なのかすら、よくわからないらしいのよ」
ルビィ「……どういうこと?」
善子「その運転手の言っていた、女性を見たっていう場所。……そこから、発見されたのよ」
善子「……靴の跡が、ね」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:01:18.02 ID:LeKpDSJgO
ダイヤ「……く。くつの、あと……」
鞠莉「……マジ?」
善子「大マジよ。……どうも、直前に雨が降っていたらしくて。といっても、小雨程度だったみたいだけど」
善子「しかも、その道って、普段はちょっと砂ぼこりっていうか、砂利というか。……まあ砂がちょうどイイ感じにあんのよ」
花丸「その説明じゃよくわかんないずら」
曜「善子ちゃん……。説明スキルさんが足りてないよ……」
善子「いいでしょそこは!とにかく重要なのは、当時足跡が残る状況だったってこと!」
ダイヤ「……深夜にここ周辺の山道を歩くなど、普通の状況では到底考えられません。……もしその話が正しいとしたら、足跡をつけられる人間は、ほぼ確実にその女性だけ……ということになる」
善子「もっと不思議なことに、避けた後の痕跡は全く残ってないらしいの。あったのは、運転手が急ブレーキをする前に誰かがいたっていうことを示す足跡だけだった」
善子「……まるで。車が迫ってくる、その瞬間。空でも飛んで消えていったかのように、女性が目撃される前と後の足跡が、途切れていたらしいのよ」
梨子「……そ。そんなことが……」
曜「なんか。普通に霊がいたって言われるより、不気味だね……」
果南「…………。…。。……」
花丸「果南ちゃんの顔が、内浦の海よりも深い青色になっちゃったずら」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:04:08.39 ID:LeKpDSJgO
ルビィ「……善子ちゃん。”最近この辺りに出る”っていう言い方をしてたってことは……それだけじゃ、ないんだよね?」
鞠莉「……」
善子「……。その通り。他にも、色んな不思議なことが起きているところで、若い女性が目撃されている」
善子「例えば、沼津の方ではそれこそ色んなことが起きているけど……。一番は、やっぱり『県自』の事故ね」
曜「!……『県自』の事故にも、その女の人が……?」
ダイヤ「……『県自』。静岡県で広く知られている、自動車学校の略で……県外からも、多くの方が免許を取りに来る場所ですね」
鞠莉「沼津は、広くて全部の教習が出来るから。わざわざ飛行機を使ってまで、免許を取りに来る人がいるって聞いているわ」
梨子「……合宿免許とか、そういうのもやってるんだよね」
ルビィ「……わおわお」ボソッ
善子「……うん、まあ、そんな場所のことね。そこの事故、皆知ってるでしょ?」
曜「うん。つい最近、事故があったんだよね……」
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:08:04.90 ID:LeKpDSJgO
果南「……私も、知ってる。……私のクラスメートが目の前で見たって言ってた」
果南「その子も、免許をとりに行ってたんだって。それで、教習の順番待ちをしてた時……」
果南「………目の前に。教習者が、突っ込んでくるのを見ていたって……」
ダイヤ「……」
鞠莉「……」
善子「……。ある教習車が、テンパったのかなんなのか、わからないけど……ブレーキを踏むべきところで、アクセルを踏んでしまった」
善子「そういう時ってフツウ、教官がブレーキを踏んで安全を確保するのよね?……でも、何故か。ブレーキが壊れていた」
善子「何でなのかは誰もわからない。ただ少なくとも、事故が起こる前の点検では、異常は見つからなかったって言われてる」
鞠莉「でも……事故は、起こった」
ダイヤ「……車は、次の教習の順番を待っている人たちのもとへと迫った。……その時……」
果南「急に。……”止まった”」
果南「……ブレーキが効いたとかじゃなくて。……本当に、急に。ピタリと、止まった……」
曜「……一時期、私たち2年の間でも、話題になってたよ」
梨子「そうだったね……」
善子「そこにも、山道で目撃された若い女性がいたっていうわけ」
果南「……」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:08:51.12 ID:LeKpDSJgO
鞠莉「でもねえ。教習所って色んな人がいるし。若い女性ってだけでは、だから何って話じゃない?」
善子「それはそうね。……ただ、この前起きた事件」
善子「……船が壊されたことが、あったでしょ?」
果南「!」
曜「!」
梨子(……)
梨子(『船が壊された』……ついこの間起きた、内浦の漁師さんの船が何者かに壊されていた事件だ)
梨子(私は船に詳しくないからよくわからないけど……果南ちゃんから聞いた話だと、単なるイタズラの範疇に収まらない、ハデな壊され方をしていたそうだ)
梨子(ただ、現場にはかなり不可解なことが起きていたらしい)
ダイヤ「……重機でも用いないと出来ないような壊れ方をしていたのに。現場には、そのような痕跡が全く残っていなかった」
花丸「あったのは……壊された部分の、残骸だけだったんだよね」
果南「この田舎で、誰にも気付かれずに船を壊せるレベルの機械を動かすなんてこと、あり得ない」
鞠莉「田舎だからこそ、そういうのには敏感だから。……誰も目撃していないのは、不自然ってわけね」
ルビィ「皆、大騒ぎしてたよね。……何が何だかわからないって」
ルビィ「……その事件があった日に起きた、もう一つの事件があったから、余計に……」
梨子「……(もう一つの事件、か)」
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:09:46.56 ID:LeKpDSJgO
梨子(……船が壊されていた事件とは別に起きた、もう一つの事件)
梨子(これを、事件と呼んでいいのかどうかはわからないけど。……少なくとも、ある意味で大事件だったのは間違いない)
果南「その日。……全くそんな予兆はなかったっていうのに、急な天気の乱れで、海が荒れに荒れた」
ダイヤ「船が壊されていることがわかった、正にその日の午後。天候が急激に変動したのでしたね……」
ダイヤ「……あれは大変でした」
ルビィ「ルビィ達、学校に閉じ込められちゃったもんね……」
梨子「朝、あんなに晴れてたのに……気がついたら、辺り一面が雲に覆われていたのよね」
曜「私も直前まで気づかなかったよ。……体感天気予報、特技なのに」
花丸「……一番不思議だったのは。それだけ急で、大規模な気候変動なのに、犠牲者が一人も出ていなかったこと」
鞠莉「……アンビリーバボーとはこのことよね。その日、果南の家を含めて……なぜか、誰も船を出す予定がなかった」
鞠莉「……唯一。船を壊された人達を除いて」
果南「……」
曜「……」
ダイヤ「不幸中の幸いとでも言うのでしょうか……船が壊れて海に出られなかったことによって、結果的に命が助かったと言えます」
梨子「……奇跡。皆そう言って、船が壊されたこともうやむやになっちゃったんだよね……」
梨子「まるで、嵐が来るのをわかっていたかのようなタイミングで、船は壊され、その船に乗る予定だった人たちは助かった……」
花丸「まさか……」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:10:43.73 ID:LeKpDSJgO
善子「そのまさか。……最近になって、船が壊される前夜、若い女性が目撃されていたことがわかったのよ」
ダイヤ「何ですって……!」
花丸「……船着き場に現れた、若い女性の[亡霊]……」
曜「……船が壊れたところにいるのが見られていて。……その後、不思議なことが起きて……」
花丸「最終的には、人の命が助かっている……。今善子ちゃんから聞いたばかりの話と、沿ってるずら」
果南「そ。そんなことが……」
善子「そう。[亡霊]現るところに、事件あり。つまり……」
善子「[亡霊]こそが事件を引き起こしている張本人なのよ!」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:11:29.46 ID:LeKpDSJgO
梨子「……」
ダイヤ「……」
鞠莉「……」
善子「……あ、あれ?皆、なんか言わないの?」
梨子「そんなこと……あり得るの?」
曜「わからないけど……なんか、説得力あるかも」
善子「いや、そんな真面目に取られても……えっと……」
ルビィ「……でもさ。逆に、今まで何でわからなかったのかな」
善子「え?」
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:12:18.55 ID:LeKpDSJgO
ルビィ「あの時、かなり大きな騒ぎになってたんだよ。船が壊れたって」
ルビィ「そんな状況なのに、その時に目撃者の話をしないのは、不自然な気がするんだけど……」
鞠莉「……それは私も思ったけど。でも、何しろ直後に嵐が起きたじゃない?」
鞠莉「そっちに気を取られて、すっかり忘れていたってことはあり得るんじゃないかしら」
ルビィ「うぅん……」
善子「ま、まあ。今の鞠莉の話は、正しいわ。少なくとも、目撃したって人は同じことを言っている」
曜「でも……じゃあ何でこのタイミングになってそんな話が出てきたのかな?」
善子「……[亡霊]の目撃談が増えるにつれて、思い出したってことみたい」
善子「『そういえば、前の日に同じような人を見た覚えがある』って」
曜「……なるほど」
果南「同じような人ってことは……なんかその、ぼ、[亡霊]には共通点があったってこと……?」
ダイヤ「共通点というのは、若い女性であるという以外にですか?」
果南「……うん」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:13:03.19 ID:LeKpDSJgO
花丸「……この手の話で、そういうのはアテにならないというか、誇張されたり味付けされたりしていくものだけど」
鞠莉「でも、それって都市伝説とかの場合でしょ?ローカルなルールが加わっていって、最初の話の原形がなくなっていくっていうのは、地域を跨いだケースにはあると思うよ。でも……」
ルビィ「[亡霊]の場合は、沼津の中だけの話なんだよね……」
曜「じゃあ、ちゃんと信用できる共通点があるかもしれないってことか……」
梨子「どうなの、善子ちゃん?」
善子「……正直、若い女性以外の情報で共通している点はないみたい。そもそもの情報が不足してるってことね」
ダイヤ「ふむ……」
善子「ただ、一つだけ。……髪の長さに関しては一致しているようなの」
梨子「髪……」
ルビィ「どれくらいの長さなの?」
善子「それが……短くもなく、長くもなく、でも女性ぐらいの長さって感じの……」
ダイヤ「……なんというか、至極アイマイですね……」
梨子「善子ちゃん……しっかり説明してよね」
善子「わかってるわよ!えっと……その……そう!」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:14:02.75 ID:LeKpDSJgO
善子「そうよ!ちょうど千歌ぐらいの長さよ!」
果南「!」
曜「!」
善子「……たぶん」
千歌「・・・」
梨子「ち。ちかちゃんぐらい……」
千歌「・・・・・・」
鞠莉「……えっと、千歌?聞いてた?」
花丸「千歌ちゃん?自称堕天使に名前をよばれたよ?」
善子「……自称ゆーな」
千歌「・・・・・・ってえ?わ、わたし?」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:15:01.42 ID:LeKpDSJgO
善子「他に誰がいるっていうのよ。千歌よ千歌」
千歌「え、あ、ゴメンゴメン。チカのことか〜……。で、何の話だったっけ?」
善子「……あんたね……」
梨子「……千歌ちゃん(……話に夢中で、すっかり忘れていた)」
梨子(そういえば千歌ちゃんは、この話が始まってから、一言も発していなかった……)
梨子(……珍しい。確かに千歌ちゃんは、ぼーっとしてることもあるし、善子ちゃんのこの手の話は聞き流すことも多いけど)
梨子(皆が話しているところに、入ってこないなんて)
梨子(それも……内浦であった大事件の話をしてるっていうのに……)
曜「千歌ちゃん。どうかしたの?」
千歌「え?……何が?」
曜「いや、何か……考え事でもしてたのかなって思ったから」
千歌「ああ、うん……ちょっとね」
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2019/07/01(月) 22:15:46.39 ID:LeKpDSJgO
善子「ちょっと。何考えてたの?」
千歌「あ、うん。……もしかして、その女の人。うちの旅館に来たことないのかなって」
梨子「……え?」
千歌「だって、善子ちゃんの言う人って、少なくともここら辺では見ない人なわけでしょ?……だったら、どこかに泊ってるかもしれないって、思って……」
梨子「……あ」
ダイヤ「……確かに」
花丸「もし、地元にいない、知らない人だったら。……どこかに泊っているはず、だもんね」
千歌「もしチカの旅館に泊ってる人なら、わかるかもって思って……。でも、若い女の人、いなかったなぁって、そう思って……」
梨子「千歌ちゃんぐらいの髪の長さの若い人、じゃなくて、そもそも若い女の人が泊ったってことはなかったってこと?」
千歌「う〜ん……少なくとも、ここ数か月はそうだね」
花丸「[亡霊]が出たのって、つい最近の話なんだよね?」
善子「……確かに。話題になったのは、ここ数週間のことね」
ルビィ「……ま、鞠莉ちゃんのところには、いなかったの……?」
鞠莉「いたのかもしれないけど。……流石に、わからない」
果南「……でかい家に住むから、そうなるんだよ」
鞠莉「……はぁ?」
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