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七尾百合子「恋に恋して、大騒ぎ」【ミリマスSS】
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1 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:37:48.59 ID:WHh6WAPF0
ミリマスSSです。
一応、地の文形式。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1561862268
2 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:40:19.85 ID:WHh6WAPF0
ありふれた終わり方とは、どういうものだろう。
物語ではハッピーエンドがそれに当てはまるかもしれない。だから、ある作家が「幸せな結末で終わる偉大な話はない」と言ったのだろう。
しかし、なかなか不思議なものだ。現実世界において、ハッピーエンドで終わる出来事は少ない。とりわけ恋愛ではなおさらだ。青春時代に好きになった人と、そのまま死ぬまで永遠に結ばれるなんて話は滅多にないし、そもそも、好きになった人と一瞬でも恋人同士になることすら叶わない場合が大半だ。
となると、私たちが生きる世界での、ありふれた終わり方というのは、何も成就しない悲しい結末とみなすべきなのかもしれない。
それ故に、たとえありふれた終わり方だとしても、幸せな結末を迎える物語を私たちは求めるのだろう。
3 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:43:53.70 ID:WHh6WAPF0
教会で神父の前で永遠の愛を誓うと、パイプオルガンと女性らの讃美歌が荘厳に響いた。
二人の門出を神様は祝福し、契りに立ち会う友人や家族も祝福する。ときに笑顔で、ときに涙で。もしかしたら、その涙は「私が好きだった彼をあの女に取られた!」などという後の祭りのような血涙かもしれない。とはいえ、結婚式では喜びに満ち溢れている。特に今その瞬間に夫婦になった当事者二人にとって、その喜びはひとしおだろう。
白いタキシードを不格好に身に付けた男性は照れ臭そうに笑っている。一方、純白のウェディング・ドレスに包まれた私の友人は喜びを噛み締めるように微笑んでいた。
教会の椅子に座っていた私と友人たちは、彼女のこれからの幸せを心の底から祝福した。しかし、同時に、壇上で幸福を振りまいている二人を羨ましく思った半分、齢二十五にして身を固める気配もない自分自身を情けなく思った。
4 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:44:41.60 ID:WHh6WAPF0
女子は男子の家に入りて、というような風習は取り払われつつあるようなこのご時世だが、婚姻という男女の契りをして幸せオーラ全開である二人の姿を見せつけられると、好きな男性と結ばれるというものは、やはりいいものだと改めて考えさせられる。一度は夢見た、白馬の王子様とのロマンスを妄想、もとい、想像する。でも、考えさせられるだけだ。相手がいないのだから。運命の人には出会っていないから。本当に好きだと思える人に、いまだ出会えていないから。
でも、運命だと思った人はいた。
ありふれた終わり方で結末を迎えてしまうなら、私なりに書き換えてみようと試みたこともあった。
七尾百合子、二十五歳。職業、アイドル。今はちょっとした執筆業もしている。彼氏イナイ歴は年齢に等しい。結婚願望は無し。嘘。アリです。特に今は千倍増しにありますとも。
ああ、私も運命の人と結婚したいなぁ......。したいなぁー!!
5 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:45:23.31 ID:WHh6WAPF0
結婚式後の二次会も終わると、辺りはすっかり真っ暗になっていた。人もまばらな通りの中を、私たち三人はパンプスの細い靴音を鳴らしながら闊歩していた。
「あぁ。ミクちゃんのドレス姿、キレイだったなー」
思わず私から野太い声が出た。中学校からの友人のウェディング・ドレス姿を思い出すと、彼女を心の底から綺麗だと思ったと同時に、羨望の気持ちも混じったからだ。昼から飲み続けた酒が喉を焼いたことも、原因かもしれない。
「ちょっと百合子ったら、やめてよ。おじさんみたいな声だったよ?」
「でも、本当に綺麗だったよね。エリもそう思ったでしょう?」
私の野太い声に笑っていたイブキちゃんが、エリちゃんに問いかけた。
「まあ、それは本当にそう思ったけど。でも、あのミクがねぇ」
6 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:46:07.07 ID:WHh6WAPF0
私たち四人は、中学と高校が同じで、ずっと仲良しのグループだった。みんな図書委員だった私たちは読書が好きで、偶然にも同じシリーズの本が好きだということで、すぐに意気投合した。クラスはバラバラだったが、昼休みには一緒になって固まって弁当を食べたり、本のことを話したりしたものだった。
それから私がアイドルになると、それまでは私のことなんか微塵にも興味のなかった人たちが、さも昔からの友人であるかのように振る舞ってきた。陰で妬んだりする人もいた。そうした人の感情の醜さに、私が傷つき悩んでいると、三人は親身に相談に乗り、ずっとそばにいてくれた。私のアイドルとしての仕事が多忙となり、時折しか学校に顔を出せなくなった時にも、彼女たちは変わらず私を迎え入れ、私と他愛のない話をして過ごした。
そんな彼女たちに、私はどれほど救われたことか。私は感謝してもしきれないし、心の友を持つことができて本当に良かったと心底思った。そして、別々の大学に行こうと、様々な社会の道に進もうと、私たち四人はずっと四人なのだと思っていた。
ミクちゃんの結婚は、その矢先の出来事であった。
7 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:46:36.98 ID:WHh6WAPF0
「しっかしイケメンだったねぇ、あの旦那さん」エリちゃんがため息を交らせて言った。「しかも射止めた相手が外資系企業のホープときた」
「そんな人と、どこで出会ったの?」
イブキちゃんが尋ねた。
「ほら、言ってたじゃん。「共通の知人の紹介」って」
「あー、そうだったね」
「それでも合コンとはいえ、そんな彼を射止めちゃったのはスゴいよねぇ」
「いいなぁ。ホント、私もそんな出会いがあったらなぁ……」私は大きくため息をついた。
「ゆりゆりも、すぐいい相手が見つかるよ」
「そうそう」
「二人に言われたって、何の慰めにもならないよ!」
この二人も、すでに彼氏がいて良好な関係が続いている。イブキちゃんに至っては、両方の親の公認も受けていて、もう結婚も秒読みだ。
「えへへ……、ごめんね?」
「うわぁん! みんながドンドン遠くに行っちゃうー!」
まさにその通りだ。私だけが大人になれないで、そのまま時が止まったかのように、足が止まったかのように、取り残されているようだ。焦りはあるかと問われたら、むしろ焦りしかない。
8 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:47:31.85 ID:WHh6WAPF0
「あー、私も結婚したいー!!」
私の悲鳴にも近い叫びが通りに虚しく響いた。
「でもさ百合子、良い人いないの? 芸能人なんだし、私たちよりはよっぽどイイ男がいるでしょう?」
「そうよ。ゆりゆりは綺麗なんだしさ」
「いませんよーだ。いたら、こんな愚痴言わないよ」
実際、言い寄ってくる男性の芸人とかアイドルもいた。でも、ほとんどがタイプではなかった。そろそろ選り好みするような立場ではないのだろうけど、一度も男性と付き合ったりしたことがないと、結婚ということも考えてしまうし、そうなると交際のハードルがなおさら高くなる。要するに、妥協したくない、ということだ。しかし、そんな綺麗事を吐いてばかりだと結婚はますます遠のくし、いわゆる喪女――もう既に片足を突っ込んでいるような気もするが――への道まっしぐらのような気がして、日に日に焦りは募るばかりだ。
9 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:49:06.45 ID:WHh6WAPF0
そもそも、あまり他人を恋愛感情として気にすることがなかった。でもそれは、男性に興味がなかった、ということではない。むしろ興味津々だった。興味関心しかなかった。世界を救うヒーローや、謎めいた雰囲気を漂わせる男、ちょっとドジだけど好きな女の子を全力で愛する青年など、私は本の中で色んな男性に出会った。本の中には男女が事を行う描写もあったから、愛し合う男女は何をするかも知っていたし、想像しては悶々とすることもあった。
しかし、邪なことは抜きにしても、本を通じて私には理想の恋愛ともいえるものが蓄積されたおかげで、理想の男性像に対する要求が高くなったのかもしれない。求めてしまうのはいわゆる運命の白馬の王子様だけれども、残念ながらそんな王子様には、本当に好きだと思える人には、いまだお目に掛かれていない。
いや、ただ一人いた。この人こそ私の運命の人だと思った人が。
10 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:50:27.54 ID:WHh6WAPF0
「あっ、そうだ! プロデューサー! 百合子、あなた昔、プロデューサーのこと......」
「ち、ちょっとエリ! その話題は!」
「......あっ」
エリはあからさまに「しまった」という顔をした。
「大丈夫、気にしないよ」私は二人にニコニコ顔を向けた。「でも、何だかまだまだ飲みたくなってきちゃったな」
この近くによく知ってるバーがあると二人に提案した。
「ゆ、ゆりゆり、あなた二次会でも結構飲んでたでしょ?」
「ほろ苦い初恋思い出して、百合子さんは傷心しちゃった」
私が唇とツンと尖らせると、二人は苦笑した。
「ほらぁ、やっぱり気にしてるじゃん! 何かユラァってしてる! ユラァって!」
私は真っ黒な笑みをたたえて応えた。いわゆる暗黒微笑だ。この歳になって暗黒微笑とか、考えるだけでも痛々しいのかもしれないが、半ばやけっぱちの私はそうした羞恥心をどこかへ打ち遣った。
「わ、私、明日は彼氏とデートだから、早く帰りたいなーって」
「じゃあなおさら連れていかなきゃ!」
「もう、ゆりゆりの鬼!」
11 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:51:17.68 ID:WHh6WAPF0
渋る二人の手を取ると、二人は観念したように私について来た。二人に悪いなと思う気持ちはあったけど、この後一人で寂しく過ごせるほど私の心は強くない。多少強い酒をもって、心に沸き立つ濁りを洗い流したかった。
そうだ、ただ一人の男性とは、私をアイドルの世界に導いてくれたプロデューサーさんだ。彼は一番私の思っていることや、理想を怖いくらいに分かってくれた。私は勝手に運命の男性だと思い込み、彼に対して想いを寄せ、そして、その恋は破れた。
ああ、あの失恋の日を次第に思い出す。そうだ。十年近く前の出来事だ。ぼんやりとしていた記憶が、だんだんと輪郭を帯びてきた。渚に吹く風の涼しさや、枕を濡らした昼間の暗さを、一陣の風が過去のページをめくるように、記憶からはっと呼び覚まされる。
恋に恋していたあの日々だ。
そして、恋に恋したその先に何があるのか、私は知ってしまった。
きっかけは、アイドルになってから半年が経とうとしている頃だった。
12 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:53:33.79 ID:WHh6WAPF0
**********
最初に出会ったときは、ちょっと歳の離れたお兄さんかな、という印象だった。
プロデューサーというのはどのような人なのだろうか。あのトップアイドル集う765プロダクションだから、プロデューサーも戦場帰りの元傭兵のようなコワモテの男性なのではないかと、人見知りな十五歳の私は不安に思っていた。しかし、現れたのは優しそうな男性でホッとしたことを覚えている。とはいえ、最初に受けた印象はそれだけで、よく恋愛小説で見かけるような雷を受けたような衝撃であったり、一目で運命を悟る、なんてことは全くなかった。
13 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:54:38.43 ID:WHh6WAPF0
歌もダンスもからっきしダメな私だったが、彼は私の苦手を克服できるよう、親身に支えてくれた。特に私はダンスが苦手で、基本のステップを会得するだけでも一苦労だった。
「プロデューサーさん、下手でも絶対に笑わないでくださいね?」とダンスレッスンのとき、彼に言ったことがある。
「笑わないさ。だって、百合子は一生懸命にやってるんだろ? そんな努力を笑うことなんてできないよ」
彼はそう言って微笑んだ。
私の努力を見てくれてるのだと思うと、大きな心の支えになったし、何よりも嬉しかった。それからも、彼は辛抱強く私のレッスンに付き合った。私が居残りでレッスンをするときには、彼は嬉々として付き合い、一緒にステップの確認をした。次第に私のダンスが上達すると、彼は私のことのように喜んでくれた。私も、彼の期待に応えられるよう、ますますレッスンにのめり込んだ。
14 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:55:42.79 ID:WHh6WAPF0
面白い人だと思った。他人のために時間を割き、とことん意向を汲んで、その人のために動こうとする。根から優しい人なのだろう。だから、彼は心の底から褒めてくれるような気がしたし、そんな彼に褒められるのが私はとても嬉しかった。
思えば、このときから感情の変化があったのかもしれない。私の彼に対する気持ちが明確になるには、そう時間がかからなかった。いつから異性として好きになったのだろうか。
好きだと自覚したのは、何かにつけてプロデューサーさんと結びつけて物事を考えていると気付いたときであった。面白い本を読んだり、楽しい出来事に遭遇すれば、真っ先に彼へ伝えたいと思い始めていたし、家で過ごしていると、今彼は何をしているのだろうと気がかりになった。
極めつけは、友人三人と話していると、「百合子って最近、アイドルの話になるといつもプロデューサーさんを話題にするよね?」と意地悪な笑みを浮かべながら指摘されたときだ。私は直ぐに否定したけれど、私のあまりの焦りように、彼女たちは私の真意にますます勘付いたようだった。
15 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:57:07.28 ID:WHh6WAPF0
それだけではなかった。彼のプロデューサーとしての手腕は、私を立派なアイドルへと変身させた。
シアターでの公演で初めてセンターに選ばれ、私が不安とプレッシャーで押し潰されそうになったときも、救ってくれたのは彼だった。彼はまるで魔法使いのようであった。「百合子が願えば、ステージ上で主人公になれるんだ」という言葉は私の大きな支えになったし、今でもよく覚えている。センターというものにとてつもなく抽象的な重責を抱えていた私に、大きな自信を与えてくれたのであった。お陰さまで、初のセンター公演も成功に終わり、少しずつ、アイドルとしての私に自信が付くようになった。
本の世界しか知らなかった私が、主人公として現実の世界に飛び出した瞬間だ。
変わろうとする私の背中を支え、押してくれたのが彼であり、そんな彼を私はますます好きになってしまった。
16 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:58:36.16 ID:WHh6WAPF0
プロデューサーさんのことが好きだと気付いてからは、私の好きだという気持ちは風船のようにますます膨らんだ。何かにつけて彼と一緒の時間を過ごしたり、行動したいと思った。
アイドルとしての活動が軌道に乗り始め、仕事や営業も増えたことで、彼と一緒に仕事場に行ったり、一緒に帰ったりする機会も増えた。仕事をちゃんとこなせば彼は褒めてくれたし、行き道や帰り道では他愛のない会話をして過ごすのが嬉しくてたまらなかった。
私は彼のことをもっと知りたかったし、彼に私のことをもっと知ってほしかった。家に帰ると彼との会話を思い出しては反芻し、レッスンが上手くいって私を褒めてくれたりしたときには、自室のベッドで足をバタつかせて悶えることもしばしばあった。
会話では、本についての話題が多かった。私の好きなものだ。そんな私の好きを、私の好きな人と共有できる喜びよ! ああ、どんなに幸せなときであったであろうか。
17 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 11:59:49.23 ID:WHh6WAPF0
「百合子。この前貸してくれた本、読んだよ。面白かった」
「わあ、本当ですか?」
私がプロデューサーさんにしばしば本を貸すからというのも、本の話題が真っ先に会話の種となった理由の一つだ。彼に本を貸すことになったのは、私が本についての話を熱弁するうちに、彼が「読んでみたくなったから、貸してくれないかな」とお願いしてきたのがきっかけだ。
「うん。そうだな......。特に、運転手さんの正体が分かる話が面白かったよ。思わず唸っちゃってさ」
「そうなんです! 私もあのお話が大好きなんです! 普段は表情を変えることないあの運転手さんが途中から落ち着きを失い始めて、主人公が事件を解決すると運転手さんの様子がおかしくなった理由も、彼女の秘密も明らかになって! 才色兼備なスーパーウーマンだった運転手さんが、これまで一体どんな苦悩を抱えて生きてきたのだろう、って想像するともう......!」
「おーい、早く戻ってこいよー」
「あっ。す、すみません、つい......」
思わず、昭和初期へ意識をタイムトリップするところであった。彼は大げさに私の目の前で手を振って、私を現実に連れ戻す。
「でも確かに、あの世界観は行ってみたいと思ってしまうよな。最終回の後を想像すると暗くなってしまうけど」
18 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:00:45.34 ID:WHh6WAPF0
本の世界に没入する私の悪い癖も、彼は認めてくれた。本を読んでいると、私は周りが一切見えなくなる。何度も話しかけられない限り、本の世界の旅から戻ることはなかった。
おまけに、「図書館の暴走特急」の二つ名を与えられていた私には妄想癖も――今も根強く残るが――あった。想像の翼と言えば聞こえは良いが、その翼を広げ過ぎてあらぬ方へ飛び去り、そのまま妄想の世界から戻ってこないこともしばしばだった。この妄想癖は、友人ら四人で同人誌を作成したときに大いに役立ったのだが、この話はまた別の機会ということにしよう。
それだけではなかった。色々と周りに迷惑をかけているのだろうと思っていた私の妄想癖も、彼は「百合子の強みだ」と言ってくれた。そんな風に言ってくれたのは彼が初めてだったし、私が短所だと見做していたことを長所だと考える観点には驚かされた。
新しい自分を彼が見つけてくれたようで、嬉しい半分、何だかこそばゆい心地もした。
19 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:03:28.19 ID:WHh6WAPF0
「そうだ」プロデューサーさんがデスク脇に置いていたカバンを持って来た。「あった、あった。はい、今回はこれを持って来たよ」
「わあ、ありがとうございます!」
彼は、私が貸した本とともに、一冊の本を私に手渡した。
本を貸すうちに、私は彼がお薦めする本を読みたくなった。彼もよく本を読むようで、私の要望に快く応じてくれた。私と彼が読む本はジャンルが違った。私はいわゆる冒険やファンタジーものであったり、推理小説やホラーを中心に読んでいたが、彼は歴史小説やノンフィクション小説を好んで読んだ。
「以前、プロデューサーさんが貸してくれた本も面白かったです」フランスに渡った日本人の美術商と、今や誰もが知るあの画家とその弟の交流を焦点に当てた物語だ。「彼らの交流がとても美しくて、でも儚い結末を迎えることになって。最後は泣いてしまいました」
「気に入ってくれて何よりだよ。今回も同じ作者の本にしてみたんだ。サスペンスものだから、百合子が好きかもしれないぞ?」
「わあ、楽しみです!」
私は表紙に描かれた、ピカソのモノクロの大作を眺めた。まじまじと見つめていると、彼はくすりと笑った。
20 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:04:33.00 ID:WHh6WAPF0
「百合子は楽しいときには、本当に楽しいって顔をするよね」
「そ、そうですか? でも、楽しいって気持ちはちゃんと出さないと、心の底から楽しめないと思うんです」
プロデューサーさんはなるほど、と得心が行ったように笑った。
「なんだか、百合子らしいや。でも、そうやって幸せそうな表情観てると、こっちも嬉しくなってくるよ」
「あ、ありがとうございます。えへへ......」
私は熱くなった頬を掻いた。
21 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:05:25.96 ID:WHh6WAPF0
彼が貸してくれる本は、趣向が違うからというのもあって、普段の私ではあまり手にすることのない本が大半だった。しかし、どれも私の興味を引き出す絶妙な本だった。
今になってよく分かることだが、他人に自分自身の好きな本を進めるというのは非常に難儀なことだ。その本のことをいくら私が好きだとしても、他人の心の琴線に触れるとは限らないし、押し付けになってしまうこともあり得る。しかし、彼から借りた本は、一度読み始めると読み終えるまで没頭してしまうような、どれも私の想像の翼を広げてくれるようなものばかりだった。
そんな難儀なこととは当時の私は一切気付かず、私とプロデューサーさんとの間で、本の貸し借りがしばしば行われた。私は彼と交換日記をしているような心地がして、次はどんな本を彼に貸そうか、彼は私にどんな世界を見せてくれるのか、楽しみで仕方がなかった。何よりも、彼の知っている世界を私も触れることができることに、私の心はいっぱいに満たされた。
一方で、事務所で本を読んでいないときには彼の一挙手一投足が気になり、ついつい彼の方に目を向けていた。彼が私の視線に気付き、私の方に顔を向けようとすれば、私はすぐさまに視線を逸らしてさも何事もなかったかのように振る舞った。思えば彼にはバレバレだったのだろうが、当時の私は完璧に誤魔化し通せていると確信していたものだった。
22 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:06:00.83 ID:WHh6WAPF0
彼への私の恋心は、傍から見れば分かりやすかったようである。感情が顔に出やすいから、仕方なかったのかもしれない。
ある日、レッスンを終えて事務所に戻ると、プロデューサーさんが杏奈ちゃんと話していた。
ゲームと本という点では異なるが、いかにもインドア派なである雰囲気に、私は出会った当初から杏奈ちゃんに対して親近感を抱いていた。さらに、同じオンラインゲームが好きだということが分かり、それからすぐに仲良くなった。事務所で会ったときは大抵おしゃべりするし、家に帰って時間があるときにはゲームの中でも再会する。
杏奈ちゃんとプロデューサーさんの会話は盛り上がっていて、私が戻ってきたのも気付いていないようであった。普段であれば、私も会話に参加するものだが、二人の間には何だか近寄りがたい、親密な雰囲気があるように思えた。談笑する二人の姿をみるうちに、私の心は次第にささくれるような感じを覚えた。
23 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:07:24.85 ID:WHh6WAPF0
「お、百合子。戻ってたのか」
彼から声を掛けられ、ようやく私はグルグルと渦巻く感情の中から意識を戻した。
「百合子さん...お帰り、なさい...」
私は笑顔を取り繕い、そして応えた。
それからすぐにプロデューサーさんは用事があるから、と出掛けて行った。二人で彼を見送り、それから杏奈ちゃんの方へ振り返ると、彼女は私の方をじっと見ていた。
「杏奈ちゃん、どうしたの?」
「百合子さん、ちょっと......顔が、怖い......」
杏奈ちゃんから心を見透かされているようで、ドキリとした。
「へっ? そ、そうかな? あっ、もしかしたら、今日は表現のレッスンでしかめ面もしたから表情筋がまだ強張ってるのかも」
私が苦し紛れの言い訳をすると、杏奈ちゃんは私をじっと見つめた。彼女の柔らかく垂れた目から放たれる視線は針のように鋭く、私はうろたえた。
24 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:08:03.32 ID:WHh6WAPF0
しばらく見据えていた彼女の目は、途端、不敵な笑みを浮かべた。
「大丈夫......。杏奈は、プロデューサーさんのこと......、百合子さんから取らないよ......?」
「取るって?」
「だって、百合子さん......、プロデューサーさんのこと、好きなんでしょ......?」
杏奈ちゃんの一言に、私は変な声を上げそうになった。
「べ、別に好きなわけじゃ......」私の返しはしどろもどろだ。誤魔化そうとするあまり、なぜかツンデレになった。
「...じゃあ、杏奈が好きになっても、いいの...?」
杏奈ちゃんはクスクスと笑った。普段の優しいうさぎさんから到底かけ離れた、今までにない蠱惑的な表情を彼女は見せていた。
でも、それ以上に、杏奈ちゃんもプロデューサーさんのことが好きなのかもしれない、ということに衝撃を覚えた。表だって感情を見せない彼女が、彼への慕情を心に秘めているのだとすれば? 彼女が、事務所の中で一番の友人であったとすれば?
25 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:08:53.73 ID:WHh6WAPF0
「だ、だめっ!」
咄嗟に声が出た。いくら杏奈ちゃんといえども、彼と結ばれる姿は想像したくない。いくら杏奈ちゃんといえども、私の恋路を阻もうとするなら......!
私は睨むように彼女を見据えた。
「ゆ、百合子さん......。冗談、だよ...?」
杏奈ちゃんはおろおろと困惑した表情を浮かべていた。
「えっ?」
「......ごめんなさい。ちょっと、からかってみたくなった...、だけ」
杏奈ちゃんの表情はいつもの柔らかなものへ元通りになった。
「もう、そんな冗談はやめてよ。杏奈ちゃん」
私は心の底から安堵したが、同時に、親友ともいえる彼女に対し、敵意とも、嫉妬ともいえるような真っ黒な感情を一瞬でも抱いてしまった自分自身に嫌悪した。
杏奈ちゃんが突然笑い出した。一体どうしたのかと私は訊いた。
「でも、百合子さん......、本当にプロデューサーさんのこと...、好きなんだね......」
「そ、そんなこと! ......はい、あります」
さっきのやり取りをした後に否定するのは流石に無理がある。私は観念して杏奈ちゃんに認めた。
26 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:10:27.10 ID:WHh6WAPF0
杏奈ちゃんに、私の恋心にどうして気付いたのか尋ねた。
「どうして、って............。百合子さん、顔に出過ぎ...」
「......ホントに?」
「...うん......。本当は、結構前から、気付いてたけど......」
私は近くの壁に体を傾けた。ゴンと低い音が鳴ったと同時に、頭に鈍い痛みが広がった。頭から湯気が出てきそうなほど、恥ずかしい。
「杏奈も、応援、するよ......?」彼女は胸元に両手で拳を作った。
それ以降、杏奈ちゃんは私の恋のよき相談相手となった。何かアドバイスを出すというよりも、私とプロデューサーさんの間にあった出来事に対して私が抱いた喜びや悲しみを、彼女は共感してくれた。
彼女は私の恋路に興味津々のようで、嬉々として私とプロデューサーさんの模様をしばしば尋ねてきた。
27 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:11:41.94 ID:WHh6WAPF0
私の恋心は、小さな一つの雫が水面に波紋を広げるように、日を追う毎に大きくなった。事務所に行ってプロデューサーさんに会うとなれば、普段よりもおめかししてから赴いた。ファッション誌もよくチェックするようになった。そして彼は、私の身なりのちょっとした変化にもすぐ気付いてくれた。
一方で、アイドルとしての仕事がない日や、彼が多忙で事務所を空けて全く会えない日があると、私の気持ちは沈んだ。そんな日が二日三日と続けば尚更だった。彼に会えば会うほど、そして会わなければ会わないほど、好きだという気持ちが私の心のなかで膨らむ。
まさに恋のとりこであった。
しかし、その膨らんだ気持ちを膨らんだまま放置しておけるほど、私の想いは大人しいものではなかった。一途な気持ちを抑えられないでいる私は、何か行動を起こして、彼との関係を進展させたいと思うようになった。
きっかけは私のソロライブだった。私がアイドルになってから、ちょうど二年が経とうとしていた。
28 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:12:18.44 ID:WHh6WAPF0
私はアイドルとしても順風満帆だった。ステージに出たり、ユニットとしてフェスに参加した。ソロのCDも出して、個人としての仕事もたくさんこなすうちに私の世間での知名度も高くなった。順調なアイドル活動も、私だけの力ではもちろんなかった。プロデューサーさんの後押しがなければ、私はここまでのアイドルにはなれなかっただろう。彼がソロライブの開催を提案したのは、その矢先であった。
「どうだ百合子。ソロライブ、やってみるか?」
「はいっ。是非引き受けさせてください!」
私は二つ返事で彼の提案を受け入れた。
アイドルになった当初よりもダンスはうんと出来るようになったし、ステージに出ても緊張することなく、むしろ楽しいと思えるほどに、私は自信を持つことができるようになっていた。しかし、ソロライブとなると話が変わる。一曲だけのセンターでの公演や、ユニットの一員としてライブをすることとは異なり、公演の最初から最後まで私がメインのステージとなる。確かに怖い気持ちもある。しかし、彼と一緒にこの挑戦に臨めば、きっと上手くいくと確信していた。
29 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:13:49.13 ID:WHh6WAPF0
彼は満足げに頷いた。そして、こう付け加えた。
「そうだ。百合子にとってこれまでで一番の大仕事になるだろうから、このソロライブが終わったら何かご褒美をあげるよ」
「本当ですか?」何とも時めいてしまう甘美な言葉だ。
「ああ、何でもいいぞ」
でも、稀覯本とかそういうのは高いからやめてくれよ、と彼は笑った。
何にしようか。しばらく考えていると、私の頭に一つのご褒美が浮かんだ。
「あのっ」私は意を決して尋ねた。「ライブ後のお休みの日に、一緒にお出掛けしてくれませんか?」
「俺と?」
「はい」
30 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:15:15.06 ID:WHh6WAPF0
私が所望したご褒美に、彼は沈黙した。どうなのだろうか。やはり、こんな馬鹿げたお願いはすべきでなかっただろうか。後悔の念が浮かび始めたとき、
「うん、分かった。いいよ」
「本当ですか!」
プロデューサーさんは、バッグから取り出したスケジュール帳をパラパラとめくった。
「ああ。ソロライブの一週間後に俺も一日休めるから、そのときにでも行こうか」
「はいっ! わあ、とっても楽しみです……!」
お願いを受け入れられ、私が悦に入っていると、彼は苦笑しながら私のおでこを軽く小突いた。
「でも、まずはライブを成功させることが大事だからな?」
「分かってますよ、もう」
31 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:17:05.86 ID:WHh6WAPF0
私は有頂天になった。彼とデートをする約束を取り付けることができたのだ。私たちの関係に大きな変化が起こるのかもしれない。だって、私のデートのお誘いを彼は受け入れてくれたのだから、もしかしたら彼も私のことを……? そう考えると、私は飛び上がってしまいそうになった。
しかし、彼から釘を刺されたように、まずはソロライブを成功させなければならない。私にと提案してくれた大仕事でもあるから、是非とも彼の期待に応えたい。私が最高のパフォーマンスを見せたら、彼もきっと褒めてくれるはずだ。ソロライブに向けたレッスンや準備に対するモチベーションも、一層高まった。
ソロライブの結果は、大成功だった。
32 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:18:14.81 ID:WHh6WAPF0
・・・・・・・・・・
「プロデューサーさんって、いつ本を読んでるんですか?」
私はランチに付いているサラダをフォークでつつきながら、彼に尋ねた。
「そうだな、通勤で使う電車のなかと、家に帰って時間があるときくらいかな。最近は忙しいから、あんまり読む時間は確保できないけど」
それでも月に二冊は読もうと心掛けてるよ、と彼は笑った。
しばらく他愛もない話をしていると、メインのパスタが運ばれてきた。
「ここのパスタが美味しいんだよ」と彼に連れられてやって来たお店は、落ち着きのある少し大人びた雰囲気のお店で、私は何だか背伸びをしているような心地になった。
ライブが成功裡に終わって一週間後、かねての約束通り、私たちはオフの日に二人でお出掛けすることになった。ソロライブが近くなるとライブのことで精一杯だったが、ライブが終わるやいなや、私の頭は彼とのデートのことで頭のなかが埋め尽くされた。
お出掛け当日はどこに行って過ごすのか、彼と相談しあった。デートコースの案や当日来ていく服は、杏奈ちゃんとも相談した。しかし、お出掛けしている間はどのようにして彼と一緒に過ごせばよいのか、本の世界にも相談したが、太宰もブラッドベリも教えてくれない。
高校の友人にも相談すると、相談そっちのけで彼女たちは盛り上がり、当日私たちも後ろを付いて行ってもいいかと訊かれたので、私は全力でお断りした。
両親からは一度事情を話してからは、それ以降何も聞かれなかったが、デートの日が近づくにつれてお母さんはニヤニヤし、一方お父さんはずっとむっつりした表情になった。それが尚更、私の顔を赤くさせた。
33 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:20:22.49 ID:WHh6WAPF0
前日は喜びと興奮と不安やらが混じりほとんど眠ることもできなかったが、待ち合わせの駅で彼の姿を見かけたときには、眠気も不安もすべて吹き飛んでしまった。プロデューサーさんはジーンズに黒い無地の全く味気ない出で立ちでやって来たが、普段スーツ姿の彼しか見たことない私は、それだけで新鮮に思えた。
対して私は、「念のため、一応変装しておこう」という彼の忠告を受けて、麦わら帽と伊達眼鏡を身に付け、いつもの髪の編み込みをしなかった。それから、買ったはいいがこれまで着る機会のなかった、一張羅である薄緑のワンピースを着込んだ。精一杯のお洒落で臨んだ私を見ると、プロデューサーさんは少し目を丸くしていた。
「馬子にも衣装、なんて言いませんよね?」私は不安な気持ちを誤魔化すと、
「本当によく似合ってるよ。とってもかわいい」
彼がそう褒めてくれるから、会って早々、私の顔は真っ赤になった。
34 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:21:37.27 ID:WHh6WAPF0
待ち合わせをしてから、私たちはまず、とある文庫が運営しているミュージアムへ行った。本に関わりのある博物館に行きたいという私の要望を受け、彼が見つけてくれた場所だ。このミュージアムを後にし、私たちはランチにやって来た。
「あのミュージアム、本当に楽しかったです」
小エビ入りのトマトソースパスタをフォークで巻きながら、私は言った。
「特に、あの書庫がすごかったよな」
「そうですよね! とっても綺麗で、壮観で……」
ミュージアムを運営する文庫は、東洋文化や歴史についての本を多く蔵書している。なかでも、文庫の創設者がオーストラリア人東洋研究者から買い取り、それを書籍コレクションを展示している書庫が、このミュージアム最大の見ものだ。二万五千近い厚さも色も様々な蔵書が、古く落ち着いた木製の棚に納められているが、棚は二階の高さまであり、それが三方に広がっている。覆い被さるように取り囲む書架の光景は壮観で、まるで聖堂のステンドグラスのようであった。
私は彼に諭されるまで、書庫内に置かれた椅子に座って眺め続けてしまった。
35 :
◆kBqQfBrAQE
[saga]:2019/06/30(日) 12:22:27.66 ID:WHh6WAPF0
「百合子はしばらくウットリして眺めてたもんな」
「本当は、あの本棚に置かれてる本を片っ端から開いてみたかったんですけどね。でも、触ったらダメって書いてたから残念です」
私がわざとらしく肩を落とすと、彼は笑った。
「百合子らしいや。でも、あの棚の中にどんな本があるのだろうって想像するだけでも楽しいよなあ」
「確かに、たくさんの分野、色んな言語で書かれた本があの中にあるって思うと……」
「おーい、早く想像の世界から戻らないと、パスタが延びちゃうぞ?」
別世界へ足を踏み入れようとしたすんでに彼から諌められた。
「え、えへへ、すみません。……って、プロデューサーさん、もう食べちゃってる!」
彼の皿に盛られていた和風パスタは既に空になっていた。
私が急いで食べようとすると、「ゆっくりで大丈夫、まだ時間もあるから」と彼は苦笑した。
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