エミリーが忘れた日

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7 : ◆AsngP.wJbI [saga]:2019/06/10(月) 20:14:45.84 ID:9pdDfgPfo
 
「……差し当たっては、当分劇場でのエミリーの出演は全てキャンセル。
 ユニット曲については、代替メンバーに入れ替えての続行か、人数を減らしたままの続行かの選択肢がありますが詳細は検討中です。
 また再来週までに雑誌取材三件、ラジオ出演一件、テレビ出演二件のアポが入っていましたがこれも先方へ断りの連絡を入れておきます。
 各メディアへの発表はどうしましょう」

それに心配したり悲しんでいられる時間もあまりない。
エミリー・スチュアートはまだまだトップへはほど遠いが、それでも活躍の場の増えてきた売り出し中の人材だ。
ここで手を誤ればそれこそアイドルとしての未来はない。酷に思われるかもしれないがあくまで事務的に、毅然とした対応をとらねば。
エミリー自身のケアはそれが済んでからだ。

「うむ……しばらくは体調不良による休養として時間を稼ごうか。
 彼女が元に戻るのか、あるいはそれがいつになるのか――分からない限りは、長期の活動休止という方向も……あれ、君」

社長が俺の右腕を見つめていることに気づき振り返ると、エミリーは俺のスーツの袖を控えめに掴んで、またふるふると首を横に振っていた。

「……どうした?」

会話の神妙な様子から、きっと彼女は何の話をしているのか予想がついたのだろうか。

「I... don't want to quit」

俺でも聞き取れるような、ゆっくりとした英語で、小さくそう言った。
やめたくない――アイドルを、ということか?

「わかってる、けど……」

渋った反応しかできない俺に言い聞かせるように、だんだんと袖を掴む力が強くなっていく。
困り果てていると、不意に社長室の扉の裏側からノック音が響いた。

「プロデューサー、いる?」

水瀬伊織の声だった。
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