【SW】ジェダイ「私を…弟子に、してください…」【オリキャラ】

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69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 11:39:32.46 ID:ROIv2Fpg0
まさかの四天王最弱ネタww
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/07/20(土) 19:47:15.54 ID:+26XygKj0
/多忙につき次回の更新は27日以降となります
/不規則になってしまい申し訳ありません
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/28(日) 19:32:56.92 ID:klFZwLqf0

管制ドロイドA『34区画、トランスポートステーション南方に敵部隊の進入を確認。第5、6中隊迎撃せよ』

管制ドロイドB『東方の荒野地帯に敵ウォーカー部隊の降下を確認。イオンカノン砲台、制圧射撃開始』

管制ドロイドC『北北東から敵戦爆連合、およそ50機が接近しつつあり。各対空砲弾幕展張!』


 一方キャッスル・クマモッテ内のドロイド軍司令室は、帝国軍の攻撃への対応に忙しかった。
壁面の大型モニターにはヒュガーの地図が大写しになり、自他の部隊の動向が表示されている。
管制ドロイドたちは各々のコンソールでその情報を確認しつつ、各部隊に指示を飛ばしていた。


アガメムノン『せれのーらんと公、コノ分デハ半日ガ限界デス』

マクシャリス「ふん、やはりな……こんな旧態然とした城に籠って戦えるほど、奴らは甘くないということだ」


 その中央でスーパータクティカルドロイドのアガメムノンとマクシャリスが言葉を交わす。
マクシャリスはこの危機的状況にあっても動揺を露わにしないばかりか、微笑さえ浮かべている。
手元のコンソールを操作し、スターバル将軍への通信回線を開く。


マクシャリス「スターバル。応答せよスターバル、こちらはマクシャリス・セレノーラント・ドゥークー」

スターバル『ザザッ、ガリガリ……公、セレノーラント公!申し訳ありません、帝国軍の通信妨害が城内にも……ガリガリガリ』

マクシャリス「構わん。ミコア姫の捜索状況はどうだ?」

スターバル『はっ、目下全力で捜索中ですが……ザザザ……いまだ発見できておらず……ガリガリガリ』

マクシャリス「ほどほどにして引き上げろ、時間は有限だ。ミコア姫はあくまで帝国軍を引き付けるエサでしかないんだからな」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/28(日) 19:33:54.64 ID:klFZwLqf0

 それだけ伝えて通信を切り、椅子を立つ。


マクシャリス「私はそろそろヴェンジェンスに移る。後のことは任せたぞ……アーチ公とガスター殿のこともな」

アガメムノン『承知シマシタ』


 そしていつもの白マントを羽織り、颯爽と司令室を後にした。
ドロイドたちが忙しく行き交う廊下を、マグナガードを引き連れて悠々と進む。


マクシャリス(計画通り。すべて俺の計画通りだ)


 懐から手のひら大のスパイダー・ドロイドを出して弄ぶ。
ドロイドは赤いランプをチカチカさせながらマクシャリスの腕を登り、肩に乗った。


マクシャリス(もはや「スター・サクリファイス作戦」は誰にも止められん……!)


 心中でそう独り言ちて、マントを翻しつつ発着場へ向かう。
彼にとってクマモッテ四天王は忌むべき旧体制の一部であり、捨て駒でしかなかった。
そのため彼らの戦闘に特別の関心を払うことはなく、その相手がジェダイであることばかりか、その戦場に一人の少女が迷い込んだことにも気づくことはできなかったのである。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/28(日) 19:35:02.64 ID:klFZwLqf0

シュバルゴン「ゼヤアッ!」ブンッ

ネーア「くうっ……!」バチバチッ


 シュバルゴンのエレクトロ・ハルバード攻撃!
ネーアはかろうじてライトセーバーで受け止めるも、その重さに体勢を崩す!


シュバルゴン「隙ありァ!」ブウンッ

ネーア「おごっ!?」ドガッ


 そこを狙って尻尾の打撃が叩きこまれた!
地面をバウンドしながら吹き飛ぶシス卿!


シュバルゴン「トドメだ!」ジャキッ

リズマ「ネーアさん!危ない!」ブウンッ

シュバルゴン「ぬおおっ!?」シュゴーッ


 シュバルゴンは前腕部に仕込んだブラスターで追撃を図るが、背後からリズマに斬りかかられて中断!
背中に浅い傷を残しながらもジェットパックで空中へ退避!
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/28(日) 19:35:48.86 ID:klFZwLqf0

リズマ「くっ、また空中に……!」

シュバルゴン「フハハハハ!貴様らのサイコキネシスもこの高さまでは届くまいて!」シュゴーッ


 シュバルゴンが高笑いしつつ地上のリズマに反撃を加えようとした、その時!


「おおおおおお……!」ダダダ

シュバルゴン「ハハハ、ハ?」クルッ


 背後から聞こえてきたのは、気合の声と連なった足音。
振り返る。


シンノ「うおおおおおおーっ!」ダダダ


 ジェダイマスターが壁を斜めに駆け上ってくる!


シュバルゴン「何ーっ!?貴様、バカな!そんなことが!」

シンノ「落ちろ!鉄トカゲーっ!」ブンッ

シュバルゴン「ぐおああーっ!?」ドガッ


 シンノの飛び蹴りがガードに先んじて敵の鳩尾に突き刺さる!
シュバルゴンは青い血液と金属片を撒き散らしながら吹き飛び、背中から壁の大窓に激突!
破砕音とともに大窓に蜘蛛の巣状の亀裂が生じる!
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/28(日) 19:37:07.68 ID:klFZwLqf0

シュバルゴン「ぐっは、貴様ら……こんなことで、俺を……!」モガモガ

ネーア「ハアーッ……無限のパワーを!食らえーっ!」ズババーッ

シュバルゴン「ぐわあああああ!?」バリバリバリ


 そこへネーアが追い打ちとばかりにフォース・ライトニングを浴びせる!
窓全体が粉砕!
シュバルゴンも空中へ放り出されるが、かろうじて窓の縁にしがみつく。


シュバルゴン「ゴボッ、貴様、その技……まさか、シス、の……」

ネーア「しつこい!」ゲシッ


 ネーアはその手を蹴り飛ばし、二人目の四天王をフロアから放逐した。


ネーア「ハアーッ、ハアーッ……前座のくせに生意気なんじゃ……」

シンノ「ネーア!大丈夫か、さっきのダメージは!」タタタ

ネーア「なに、大事な――ゲフッ!ゴホッ!――大事ない、ぞよ」

リズマ「絶対大丈夫じゃないじゃないですかあ!」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/28(日) 19:38:16.98 ID:klFZwLqf0

シンノ「ミコア姫のことは気になるが、少し休んでいくか?俺もちょっとキツくなってきたところだ」


 ジェダイマスターの顔にも疲労の色が現れ始めている。
衛星軌道上におけるテイティスとのドッグファイト。
地上での帝国軍・ドロイド軍との戦闘。
そしてクマモッテ四天王……メク・マーケンはともかく、シュバルゴンは並みのジェダイナイトよりよっぽど強い難敵だった。
クローン戦争中でもこれほどの過酷な連戦はなかっただろう。


ネーア「そりゃありがたいのう、妾はそろそろチョコ切れで……」

リズマ「あっ、こっちに冷蔵庫がありますよ。シュバルゴンのものでしょうか」ガチャッ

シンノ「飲み物はないか?火事場泥棒みたいで気が引けるが、いただいていこう」


 しかしその小休止はすぐに遮られることとなる。
足元から重い振動が伝わってきたのだ。
それは爆撃のものと違って体の芯を揺すぶるような響きを伴い、十秒近く持続した。


リズマ「……今のは……地震?」

ネーア「モグモグ、このタイミングでか?なんじゃろな……なんか怪しいぞよ」

シンノ「……何かあるな。二人とも、悪いが休憩は終わりだ。先を急ごう」


 シンノとリズマはスポーツドリンクを飲み干し、ネーアはチョコレート・バーの残りを口を放り込んで、シュバルゴンのフロアを出る。
三人目の部屋へ通じるエレーベーターの中、シンノは呼吸を整えつつ思考を巡らせた。


シンノ(大がかりな仕掛けができるとしたら、ホームグラウンドである分離主義者だが……ドゥークーの亡霊どもめ、いったい何を企んでいる?)
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/28(日) 19:44:12.69 ID:klFZwLqf0
/>>68ネーアはハクカ以来シンノの妹を詐称していたので、それを引き合いに出した形です
/次回の更新は2日以降になります
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/29(月) 09:28:51.57 ID:3lqT0lJpo
>>77
そう言えばシンノが自分の妹と紹介していましたね
すっかり忘れてました
申し訳ない

次回の更新までにもう一度1作目から読み返して来よう
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:16:58.65 ID:XW/qdEbd0

 同時刻、惑星タンガシムは昼時だった。
反乱軍基地は相変わらず曇り空の下で寒風に晒されている。


バヤット(今回の補給はかなり充実していたな。これでひとまず艦隊行動がとれるようになった)ガチャッ


 その司令官であるバヤットは補給物資の確認を終え、施設内に戻った。
コートを脱いで従兵に任せ、一人廊下を進みつつ思考を巡らせる。


バヤット(しかし本隊も余裕はないだろうに、これだけQC方面軍にリソースを割いてくれるというのは……)スタスタ


 QC宙域の反乱軍には、惑星ハクカで帝国軍の衛星砲台ラグナロクを破壊した実績がある。
他の宙域での戦績が鳴かず飛ばずな現状、反帝国勢力全体から期待を集めるのは自然な成り行きだ。
しかしそれは今は亡きシカーグ将軍とジェダイたちに支えられたものであり、バヤットからすれば諸手を上げて受け入れることは難しい。


C7-BDB『ナアゆすか、モウワカッタカラ機嫌ナオセヨオ……』


 廊下に面した半開きの扉から、ドロイドの呆れたような声が漏れ聞こえる。
バヤットは何気なく立ち止まり、中の様子を窺った。
C7-BDBとユスカがこちらに背を向ける形でソファに腰かけている。
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:17:37.15 ID:XW/qdEbd0

ユスカ「簡単に言わないでよ……ああ、私、本当バカみたい。今まで散々馴れ馴れしく理解者面してさ……まるっきりピエロよね……」ズーン

C7-BDB『チョットバカシ鈍感ダッタッテダケデ落チ込ミスギダロオ……テイウカ悪カッタト思ウナラ、しんのタチニツイテ行ケバヨカッタジャネエカ。腕ップシデ挽回シロヨ』

ユスカ「そんなことできるわけないじゃない、どんなツラして会えっていうのよ!」ガーッ

C7-BDB『イキナリキレンナヨ、情緒不安定カ!テイウカオ前、しんのノコトニ限ッテ動揺シスギダロ。恋シテンノカ?エ?』

ユスカ「ああ、恋……そうだったのかもしれないわね……」

C7-BDB『ウッソダロオ前』

ユスカ「でももう何もかも手遅れよ。そもそもジェダイでもないくせに一丁前に仲間になった気になってたのが間違いなのよ……リズマの一人勝ちよね……ふふふ……」スック

C7-BDB『オ、オイ……ドコ行クンダ』

ユスカ「ちょっと手首でも切ろうかなって」

C7-BDB『落チ着ケェ!』

バヤット「……」


 ……盗み聞きのような真似をしてしまった。
取っ組み合う二人の背中を後目に、扉の前を離れる。


バヤット(……俺はあんな風に仲間を想ったことがあっただろうか)


 「仲間を信じられないのか?」――女賞金稼ぎの言葉が脳内で反響する。
部下は信用できるが、仲間は信用できない。
兵士は信用できるが、ジェダイは信用できない。
不確かだからだ。
それがバヤットという男だった。


バヤット(……いや、今更こんなことを考えても仕方がない。シンノたちを身一つで送り出してしまった以上、俺が彼らにしてやれることはもう何もない)

バヤット(そう、何もかも手遅れなんだ)
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:18:23.11 ID:XW/qdEbd0

シンノ「はあっ!」ブウンッ

スサンノ「ぬああっ!」ボウッ


 バチッ!バチチ!
シンノのライトセーバーと敵の炎の剣が衝突し、鍔迫り合いとともに火花を散らす!


リズマ「せいやあっ!」ブウンッ

スサンノ「なんの!」バチッ


 敵は二刀流!
横合いからのリズマの攻撃はもう一方の炎剣に弾かれる!
さらに敵はその勢いのままに体をひねり、シンノめがけ回し蹴りを繰り出す!


スサンノ「喰らえい!」ブンッ

シンノ「ぐはあっ!?」ドガッ


 シンノはこの巧みな攻撃を受け損ね、吹き飛ばされる!
背中から壁に叩きつけられ、その手からライトセーバーが弾け飛ぶ!
シンノは泡を食ってセーバーに手を伸ばすが、敵はその隙を見逃さない!


スサンノ「もらった!」ビュビュンッ


 両手の炎剣をシンノめがけ投擲!
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:19:10.22 ID:XW/qdEbd0

ネーア「させぬぞ!はあっ!」シュバッ ブウンッ


 しかしその軌道にネーアが割り込み、ライトセーバーで炎剣を撃墜!


シンノ「ネーア!助かった!」パッ


 シンノはその隙に体勢を回復し、ライトセーバーを拾って構えなおす。


スサンノ「ふむ、その動き……そこの小娘、やはりシスか」


 敵は落ち着き払って分析する。
その風貌は、緑色の甲冑に身を包んだ鎧武者。
スサンノ・リ・ヤマタイト……「三人目」であるこの男はそう名乗った。


ネーア「ハア、ハア……そうとも。よくわかったのう?」

スサンノ「ヤマタイト王族は元来シスの血よ。ゆえにこのような技が伝わっておるのだ」ヒュパパ


 スサンノが両手で印を組むと、空中に二振りの青白い炎の剣が生じた。
それを掴み取り、再び二刀流となる。


シンノ(あの炎、フォース・ファイアーの……!)ゴクリ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:19:46.08 ID:XW/qdEbd0

ネーア「カカカカカ!そんな大層な印まで組んで、剣の一本二本を作るだけとはな……そこまで劣化した技を使える程度でシスの末裔を気取るとは片腹痛いわ!」

シンノ「……俺たちは何も分離主義者を潰しに来たわけじゃない、お前の同族……ミコア・ルマ・ヤマタイトを助けに来ただけだ。それでもあくまで立ちふさがるのか?」

スサンノ「応。リ家とルマ家は三代前より王位を争い、先の大戦においても独立星系連合と共和国に分かれて相対した間柄ゆえ……ハアッ!」シュバ ブウンッ


 スサンノは鎧の重量を感じさせない俊敏な動きで踏み込み、斬りつける!


シンノ「くうっ!」バチバチッ


 シンノはかろうじて受け止め、再度鍔迫り合いに入った。
敵が兜の下から鋭い眼光を覗かせる。


スサンノ「奇異なのは我輩より貴様らよな。なぜジェダイがヤマタイトの姫君を求める?」バチバチ

シンノ「ミコアは俺たちの仲間だ。それがお前たち危険なテロリストに囚われている……助けに行くのは奇異でもなんでも、ないだろう!」ブウンッ


 シンノはセーバーを強引に振り抜く!
スサンノの右手の炎剣が切り裂かれ、爆散!


スサンノ「仲間だと!ヤマタイト王国の傀儡君主が、帝国の手先が、仲間だと言うか!」ブンッ シュバッ


 スサンノは残る左の剣でシンノを牽制しつつ飛び下がる。
そこへ横合いからリズマが斬りかかった!
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:20:30.94 ID:XW/qdEbd0

リズマ「やああっ!」ブウンッ

スサンノ「くっ、貴様もジェダイか……!」

リズマ「ミコアさんの仲間でもあります……!道を!開けなさい!」ブウンッ

スサンノ「ええい、鬱陶しい!ヤマタイトの教え、曰く!」バチバチ ヒュパパ


 スサンノはリズマの攻撃をあしらいつつ、空いた手で印を組む。
手の前に火球が生じる!


ネーア「リズマ!それは防げん、避けろ!」

リズマ「っく――!」サッ

スサンノ「カアッ!」ボウッ


 火球はたちまち一抱えもあるサイズに膨れ上がって射出される!
リズマは地面スレスレまで体を沈めて回避し、バク転で距離を取った。
火球は彼女の背後の壁を焼くに留まり、三人と一人は再び一定の距離を置いて対峙する。


リズマ(くっ、攻めきれない……!)

シンノ(また仕切り直しか!時間がないってのに!)

ネーア(ハアハア、いい加減体がキツくなってきたぞよ……!)
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:21:55.59 ID:XW/qdEbd0

スサンノ「ハアーッ……ヤマタイトの教え曰く、大いなるフォースの意思はあらゆる運命を決定づける。人の生死も然り」


 スサンノは左手の炎剣の腹を手でなぞった。
青白い炎は粘土細工のように引き延ばされ、剣から槍へと形を変える。


スサンノ「ミコアの運命にしても然りだ。死ぬべき運命ならば誰にも生かすことはできないし、生きるべき運命ならば誰にも殺すことはできまい」

シンノ「だから放っておけと?ゴメンだね。大切な仲間が、それも小さな女の子が死ぬ運命なんて、意地でも変えてやるさ」

スサンノ「運命は変えるものではない。フォースを知り、その因果を知ることによって、納得し、受け入れるものだ」

シンノ「じゃあお前はその暗黒面の力をなんのために使うんだ?」

スサンノ「運命をあるがままに執行するためだ。執着が過ぎるな、ジェダイ!」シュザッ


 スサンノが槍を抱えて踏み込む!


シンノ「言ってろ!」ブウンッ

スサンノ「ぬるいな!ハアッ!」バチッ ブウンッ

シンノ「くがっ……!」ガッ ズザザ


 シンノは先制攻撃を捌かれ、逆に遠心力を乗せた長柄の打撃に押しやられる!
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:23:16.68 ID:XW/qdEbd0

リズマ「マスター!」ブウンッ

ネーア「おのれ!前座三号ーッ!」ブウンッ


 リズマとネーアが左右から斬りつける!


スサンノ「甘い!」パッ


 スサンノ、槍を床について棒高跳びのごとく跳躍!
リズマとネーアの刃は虚しく柄を打つ!


リズマ「な!?」
ネーア「に!?」


スサンノ「喰らえい!」ギュルンッ


 そのまま荒っぽいポールダンスのごとく体を回転させ、二者に蹴りを見舞う!


リズマ「きゃあっ!」ドガッ
ネーア「ぎゃああ!?」ドガッ
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/04(日) 01:24:21.34 ID:XW/qdEbd0

シンノ「くそっ……!だが!」ズザザッ


 シンノは姿勢を立て直し、スサンノの着地を狙ってフォース・プッシュを浴びせる!


シンノ「そこだああーっ!」ドウンッ

スサンノ「浅はかだな!」キュインッ


 しかしスサンノの鎧はこの攻撃を無効化した!
おそるべきはヤマタイト王朝のロストテクノロジー!


シンノ「何!?バカな、その鎧!」

スサンノ「運命をはき違え、自分の力を過信する。だから墓穴を掘る!」ヒュパパ

ネーア「がはっ……いかん!シンノ!」

スサンノ「カアーッ!」ボウッ


 先ほどより一回り大きい特大の火球が放たれる。
シンノは渾身の攻撃を空振りした直後、隙だらけの姿勢のまま、死の輝きが迫ってくるのを見た。


シンノ(……俺、死ぬのか?こんなところで……?)

リズマ「――マスターッ!」


 ドオンッ!
……火球が炸裂し、ジェダイマスターの影を呑み込んだ。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/08/05(月) 14:29:19.28 ID:KD1C1Q1ko
マスターッ!
火球が炸裂し、ジェダイマスターの影を呑み込んだ。

シンノ「あっぶねー、俺の影死んだわ」

んなわけあるか!
と言う所で乙でした
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:05:43.91 ID:uBfqx30h0

トルーパーA「オラオラ!道を開けやがれ!」バシュバシュ

バトルドロイドA『ギャー!』ガシャンッ

トルーパーB「ガラクタどもがーっ!」バシュバシュ

スーパーバトルドロイドA『!?』ガシャンッ


 一方クマモッテ・キャッスルに隣接したドロイド工場では、帝国軍が防衛部隊と交戦中だった。
ストームトルーパーたちは製造設備の陰から次々に出現するドロイドたちを排除しつつ、城内に通じる地下通路を目指す。


トクティカルドロイド『全力ニテ阻止セヨ!ココガ最終防衛線ナリ!』

バトルドロイドB『ウワー!来ルナ、ばけつ頭ドモー!』バシュバシュ

バトルドロイドC『来タラ撃ツゾ!撃ツゾーッ!』バシュバシュ

トルーパーA「畜生め!もう撃ってるじゃねえか!」サッ

トルーパーB「ええい、なんだって工場なんかにこんな大部隊がいやがる!?」サッ

トルーパーA「ほんとだぜ、まさかこっちの動きを――」

『キュイイイイイイイイ』ガシンガシン


 掩体に隠れるトルーパーたちに、横合いから接近する影あり!
四本の脚で爬行する異形のスパイダー・ドロイドである!
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:06:35.76 ID:uBfqx30h0

トルーパーA「!危ねえ、どけっ!」ドンッ

トルーパーB「何!?」

スパイダードロイド『キュイイイイ』バシュバシュバシュ

トルーパーA「ぐわあああーっ!」ドバ

トルーパーB「バカな!オスカーッ!」

スパイダードロイド『キュイイイイイ……』チキキ


 スパイダードロイドが一人目を仕留め、二人目に照準を合わせたその時。


ナインス「ハアアーッ!」ブウンッ


 隣のプレス機の上に尋問官が姿を現し、飛び降りざまライトセーバーを振り下ろした!


スパイダードロイド『キュガガガーッ!?』ズバ ガシャンッ


 スパイダードロイドは真っ二つに切り裂かれ、擱座する。
ついでナインス・ブラザーは地下フロアへの入口に陣取るドロイド集団を睨み、左手でライトセーバーを投擲!


ナインス「邪魔だーッ!」ビュウンッ

トクティカルドロイド『グワーッ!?』ズバッ

バトルドロイドB『ギャアーッ!』ズバッ

バトルドロイドC『ウワーッ!』ズバッ


 密集していたドロイドたちはまとめて胴体を両断され、大破!
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:07:12.70 ID:uBfqx30h0

トルーパーB「じ、尋問官殿……!」

ナインス「貴様らは弾避けなど考えず突っ立ってブラスターを撃っていればいいんだ。できないならトルーパーなどやめてしまえ」


 ナインス・ブラザーはトルーパーにそう言い捨て、走った。
フォースでセーバーを引き寄せ、掴み取る。
地下フロアへ通じる扉を四角形に切り抜き、蹴破って、突入。
それだけの動作の中でも、尋問官は焦燥を覚えずにはいられなかった。


ナインス(まさか敵がこちらの動きを読んで待ち構えているとは……想定外のタイムロスだ。本来ならとうに城内へ突入し、ミコア姫の身柄を確保できていたものを!)タタタ


 数階層分が吹き抜けになったコンベアー・フロアに出るとすぐ、ジェットパックを背負った味方が合流する。
別ルートで侵入したマンダロア兵たちである。


ジルコ「ナインス・ブラザー殿!」シュゴー スタッ

セラ「遅れて申し訳ありません。敵の待伏せを受けまして」シュゴー スタッ

ナインス「どこも同じだ。総督の隊はどうした!」タタタ

セラ「向こうも事情は同じのようですが、間もなく発着場に突入できるとのことです」タタタ

ナインス(いよいよ急がねば……タクージン総督にも、シンノ・カノスにも、遅れるわけにはいかん!)


 そう考えてから、ハッとする。


ナインス(――今のは、フォースの予感か?シンノ・カノスが、ここに!?)
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:07:45.48 ID:uBfqx30h0

スサンノ「――な」

シンノ「はあああああーーーっ!」ブウンッ


 ザンッ!


スサンノ「に」


 スサンノの右腕が槍ごと断ち切られ、宙を舞った。
シンノ・カノスは装束の端が少し焦げてはいたが、無傷だった。
それが今、スサンノの正面、足元の床に「着地」する。


スサンノ(どうやって――どうやってあの一撃をかわした)


 スサンノの思考は混乱の極みにあった。
それでも左手では反撃の印を結ぶ。
しかしその作業は、この状況にあってあまりにも「遅すぎた」。


リズマ「やあああーっ!」ブウンッ


 背後からリズマが踏み込み、追い抜きざま、敵の背中めがけ横一閃。
火花が散る。
スサンノはのけぞり、一歩、二歩後ずさって――そのまま、仰向けに倒れ込んだ。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:08:33.69 ID:uBfqx30h0

シンノ「ハアーッ、ハアーッ……やった、のか」ガクリ


 シンノは立ち上がろうとしたが果たせず、膝をついた。


リズマ「はあ、はあ……最後のは少し、危なかったですね」ガクリ


 リズマも座り込んで肩で息をする。


シンノ「ああ、ありがとうリズマ。お前の助けがなければ――」

スサンノ「ゴボッ、なるほど……そうか」


 スサンノが口を利いた。
シンノとリズマは緊張の面持ちで視線を向ける。
すわ復活かつ思われたが、敵は立ち上がることもできず、一言喋るたび血を吐いている有様だ。


スサンノ「女、貴様が……貴様があの瞬間、サイコキネシスで空中へ跳ね上げて……避けたのだな」

リズマ「……ええ、そうです。私がいる限り、マスターを殺すなんて絶対にさせませんから」

シンノ「リズマ……」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:09:32.58 ID:uBfqx30h0

ネーア「あたた……しかし、解せんのう。スサンノとやら」


 ネーアが打撲傷をさすりながら進み出て、末期の鎧武者を見下ろす。


ネーア「いやしくもヤマタイトの王族とあろうものが、門番なんぞに甘んじるとは」

スサンノ「カッ、ハハハ……我輩は、クマモッテ四天王にあらず。この部屋は本来、スターバルが守護すべき空間……」

シンノ(スターバルが、三人目の四天王……)

ネーア「ならばなぜ妾たちの前に立ちふさがった」

スサンノ「死地を、得んがためよ……帝国の僕に成り下がったヤマタイトにも、勝ち馬に乗ること一つできなんだ我輩にも、未来はない」

スサンノ「だが我がリ家の歴史はすなわち、臣下たち、政敵たちの歴史。マクシャリスのような愚物に、骸まで、利用は……ならばいっそ、それこそ、この城を上り詰めるような勇士に……カハッ!ヒューッ、ヒューッ」


 スサンノはいよいよ今際の時を迎えながらも、絞り出すように言葉を続ける。


スサンノ「行け、勇士たちよ、ゴボッ!四人目は、ドゥークーの、秘密の、アプレンティス……奴は、我輩よりも、なお……ゲホ、ゴボッ」

スサンノ「……我輩、は……貴様らを、見て……いる……」

スサンノ「……」


 やがてその言葉も止まり、緑の鎧武者は動かなくなった。
フロアを静寂が支配し、城外の戦闘音が遠く響く。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:10:25.85 ID:uBfqx30h0

シンノ「……ドゥークーの弟子だと……」

リズマ「またシスですか……まさか、テイティスみたいな……」

ネーア「あー、冗談じゃない……あんなのが何人もいたらたまんないぞよ」

シンノ「ハアーッ、とにかく行こう……下手に休むと疲れが一気に来そうだ」


 三人は気丈に歩を進め、次の部屋へ続くエレベーターへ乗り込んだ。
すでに全員が疲労の極致にあり、会話はない。
モーターの微振動、外の戦闘の低い響きが、シンノの眠気を誘う。


シンノ(クッ……いかん、いかん)ブンブン


 彼がかぶりを振ったところで、さらなる振動が襲った。
上下左右に揺すぶるような強烈な振動である。


ネーア「わたた!?」フラフラ

リズマ「マ、マスター!これは!」

シンノ「また地震か……!」


 一体この城に……惑星クマモッテに、何が起こっているのか。
エレベーターは停止せずに上昇を続け、目的のフロアへ到着した。
三人はもはや決まりきった作業とばかりに廊下を進み、「KUMAMOTTE-BIG4」と刻まれた扉を押し開く。


ネーア「オラオラーッ!次はどいつじゃあ!ボロボロのクタクタじゃが相手になったるぞよーっ!」バアンッ

「あっ、ネーア様!?」


 三人は目を剥いた。
そこにいたのはまさしく、彼らが求めるミコア姫だった!
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:11:01.08 ID:uBfqx30h0

シンノ「ミコア姫!?」
リズマ「ミコア姫!」
ネーア「ミコア!?」キョロキョロ

ミコア「リズマ様も――ああっ、シンノ様!」タタタ


 ミコアはシンノの顔を見るといよいよ喜色満面になり、ぱっと彼に駆け寄って抱き着いた。


ミコア「私を、助けに来てくださったのですね……!嬉しいです、なんとお礼していいか……!」ギュー

シンノ「ははっ、ははは!礼なんていいんだ、姫が無事なら……!」

ネーア「……なんか怪しいのう、幻術とかじゃないじゃろうか……そもそも、なんでこんなところにいるんじゃ?リズマも変じゃと思わんか」クルッ

リズマ「……ミコア姫とはいえ、マスターに抱き着くなんて……ジェダイの戒律が……」ブツブツ

ネーア「うわあそなたそんなキャラじゃったか」

シンノ「怪しいったって……ああ、そういえば、この部屋の四天王はどこにいるんだろう?」

ミコア「四天王……?もしかして、あの方でしょうか」


 ミコアは片手でシンノの足にしがみついたまま、部屋の奥の方を指し示した。
そこは床が広範囲に渡って焦げていて――その中央に、黒焦げの焼死体が一体あった。


シンノ「な、何だあれは!?誰だあれは!」

ミコア「わかりません、何か黒い服を着た、怖い顔の方でしたが……」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/11(日) 23:12:39.73 ID:uBfqx30h0

 ミコアは死体から顔を反らし、胸元のホロクロンの鎖をぎゅっと握りしめる。


ミコア「私、閉じ込められていた部屋から抜け出してこの部屋に逃げ込んだのですが、あの方に捕まりそうになって……でも、そうしたらテイティスがやってきて、このように……」

シンノ「テイティスがここに!?」

リズマ「奴が、こちらの先回りを……?抜け道か何かが……」

ネーア「あんな四天王なんてふざけたシステムを作っておいて抜け道がありますなんて、そりゃないじゃろ……!」

シンノ「しかしスサンノより強かったらしい四人目を殺すなんて、奴以外にはそうそうできるものじゃないのはたしかだが……」


 四人が休憩がてら状況を分析していた、その時。
奥の扉が二本のライトセーバーに貫かれ、切り抜かれて、破壊された!


スターバル「――グハ!グッハハハ!ついに見つけましたぞミコア姫ェ〜!」ブウンッ

マグナガードA『!』ジャキッ
マグナガードB『!』ジャキッ
マグナガードC『!』ジャキッ
マグナガードD『!』ジャキッ


 踏み込んできたのはスターバル将軍と四体のマグナガード!
一人一人の技量はともかく、総合的な戦力はさっきのスサンノより数段上だ!


シンノ「に……逃げろォ――ッ!」ダッ

ネーア「賛成ーッ!」ダッ

ミコア「ええっ、た、戦わないのですか!?」

リズマ「ミコアさんも早く!」ダッ

スターバル「侵入者とはジェダイだったか!構わん、全員なます切りにしてくれるわーッ!」ダッ
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:03:46.56 ID:6YDoCLh60

 管制施設を出たとたん、頬に熱風が吹き付けた。
マクシャリスは宇宙船格納庫の屋根越しににヒュガー市街を見やる。
砲声と爆音が連なり、燃える街並みを繰り返し紅蓮に染め上げた。


マクシャリス(よく燃えるものだ。油汚れに塗れていればそれも道理か)


 マクシャリスは純白のマントに付着した煤を煩わし気に払う。
帝国軍はとうに少数精鋭での電撃作戦に失敗し、力押しに切り替えてストームトルーパーの大部隊を送り込んできている。
しかしその手はいまだこの発着場には及んでおらず、むしろスターデストロイヤーからの艦砲射撃に対する人質となっている。
分離主義の首魁はそれを織り込み済みで、悠々と戦艦ヴェンジェンスへ向かう。
そこへ横合いからロケット弾が飛来し、彼を警護していたマグナガードの一体を吹き飛ばした。


マクシャリス「……これは」


 飛散した破片が頬を掠め、血が一筋流れる。
残るドロイドたちが銃を向ける先に、視線を寄越す。


「よう若造、いかしたマントじゃねえか。よっぽど偉いんだろうな」シュゴー スタッ


 金属製のコンテナの上に、ジェットパックを背負った男が降り立つ。
ブラスターピストルを手の中で回しつつ、T字のスリットが入ったヘルメット越しにマクシャリスを睥睨する。


マクシャリス「……マンダロリアン・アーマーとは……もしや、タクージン・シカーグ総督ですか」

タクージン「おうよ。そういうお前はマクシャリス・セレノーラント・ドゥークー」

マクシャリス「ほう、私をご存知でしたか。しかし総督御自ら敵陣の只中に突入するとは、リスクマネジメントの観点から言えばいささか問題があるのでは?」

タクージン「俺は現場主義なんだよ、文句を言う奴は全員ブラスターで黙らせてきた。だから俺は誰かに撃ち殺されずに今ここにいる」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:04:19.83 ID:6YDoCLh60

マクシャリス「なるほど、戦争屋民族らしい合理的思考ですな」

タクージン「そうとも。どうだ、アナクロニストの非合理的思考で破れそうか?」

マクシャリス「それだけでは、なんとも。しかしもう一つ」


 マクシャリスがマントの内から手を差し伸べる。
タクージンはその掌中に金属製らしき円柱型の武器を見とめた。


タクージン「貴様、それは……」

マクシャリス「フォースの教えも加えれば、あるいは打ち破れるかもしれませんな」


 円柱の先端から白い光の刃が生じて、ライトセーバーとなる。


タクージン「……ククッ、ククク……面白い」


 タクージンはヘルメットの内から笑みを漏らし、自らも左手でセイント・セーバーを抜いた。
金色の刃が鞘走り、マクシャリスに突きつけられる。


タクージン「採点してやろう。伯父上の猿真似がどの程度のものか!」


 ――ズズ、ズズン!
何度目かの地震が戦闘の口火を切った。
管制施設と宇宙船の陰から二人のマンダロア兵が飛び出し、ドロイド部隊に銃撃する。
マクシャリスとタクージンは互いに踏み込み、白と金が交錯する!
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:04:57.43 ID:6YDoCLh60

 ジェダイとシスと姫君はクマモッテ城内を下へ下へと逃げ続け、その果ての扉を押し開いた。
あたりは薄暗く広い空間で、彼らは作業用と思しき空中回廊の只中に出たらしい。
天井からはいくつもクレーンが下がり、遥かな眼下の下層フロアには無数のコンテナが山を成している。
シンノは回廊の先にある輸送用レールウェイに目をつけた。


シンノ「ハアハア、これに乗るぞ!」

リズマ「ど、どこに通じてるんですかこれ!?」

ネーア「そんなこと気にしてる場合じゃないぞよ、ゲホゲホッ!」ドタドタ

ミコア「このレバーでスタートするんでしょうか!?」グイッ


 ガコン!
レールウェイが急発進し、四人は暗闇の中に飛び込む。
一瞬遅れて先ほどの扉からスターバルらが踏み込み、彼らの背中が遠ざかっていくのを目にする。


スターバル「カアーッ!ジェ、ジェダイどもーッ!」ダンダン

マグナガードA『将軍、逃ゲラレマシタ』

スターバル「見ればわかるわ、間抜けが!あれに合流するレールウェイを探せーッ!」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:05:34.93 ID:6YDoCLh60

ネーア「ハッハー!おさらばじゃ!ぜえぜえ、ゲホッゲホッ!」ガクリ

ミコア「ネ、ネーアさん!?お体が……!」


 風を切って暗闇の中を進むリフトの上で、ミコアは狼狽した表情で他の三人を見回す。
彼らは揃って床に座り込み、肩で息をしていた。


シンノ「ハアハア、いい加減ヤバいかもな……!」

リズマ「私は、まだ――ゲホッゲホ!まだやれます……!」

ネーア「妾はもう嫌じゃ、限界ぞよ!囚われのお姫様助けたんだからもう終わりでいいじゃろお……!」

ミコア「み、皆さん……私のために、これほど――」


 ミコアはその責任を感じてか深刻そうな面持ちだったが、ふと顔を上げた。


ミコア「今の音は……?」

シンノ「音?」


 やがてその響きは残る三人の耳にも入った。
地下の大空間に轟くいくつもの銃声と爆音!
遅れて眼下に見えてくる、ストームトルーパーたちとドロイドたちの戦闘の光景!
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:06:13.45 ID:6YDoCLh60

リズマ「何てこと、これは……!」

ネーア「こんなことにまで帝国軍が来て――な!シンノッ!」

シンノ「!?」


 シンノはネーアの警告に反応し、転がるようにして退避する。
次の瞬間、一つの影が頭上の空中から飛び込んできた!
直前までシンノが居た場所を赤い刃が掠める!


シンノ「貴様はッ!?」

「シンノ・カノスゥ……!」


 膝をついてリフト上に着地した影が体を起こす。
黒い装甲服、マンダロア風のジェットパック、赤いライトセーバー、薄暗闇の中で憎悪にぎらつく双眸!


リズマ「ナ……ナインス・ブラザー!?」

ミコア「帝国の尋問官ですか!?」

ナインス「戻ってきたぞ……戻ってきたぞ、シンノ・カノス。取り戻すために。奪い返すために!」

シンノ「俺が貴様の何を奪ったというんだ!?」ビシューンッ

ナインス「何もかもだッ!」ブウンッ
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:07:23.80 ID:6YDoCLh60

 ナインスは狂気の刃を振るい、憎悪に塗れた斬撃を浴びせかける。
シンノもライトセーバーを振るって応戦するが、たちまち守勢に追い込まれた。
敵の脅威はクイナワ戦のときに比べれば数段増している。
しかし本来は、ヨーダから教えを受けた正統なジェダイマスターであるシンノをこれほど圧倒できるものではない。


シンノ(問題は……!)


 問題は、疲労!
今やシンノの肉体は常人であれば即座に昏倒するほどの負荷を溜め込んでいる。
痛む肉と軋む骨を精神力とフォースで無理矢理に動かして、どこまで戦える!?


リズマ「マスターッ!」ビシューンッ

ネーア「おのれ、逆切れヤンホモストーカー男が……!」ビシューンッ


 リズマとネーアも同様の苦境にありながら果敢にもライトセーバーを抜いて加勢を図る。
しかし彼らの前に二人のマンダロア兵が降り立ち、行く手を塞ぐ!


ジルコ「おっと、お嬢さん方の相手は俺たちさ!」ジャキッ

セラ「手短に済ませましょう」ジャキッ


 二丁のブラスターピストルが火を噴き、リフト上の暗闇を蛍光グリーンに照らす!
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/27(火) 01:11:10.55 ID:6YDoCLh60
/原作のコミックにナインス・シスターが登場したらしいです
/そうなるとこのナインスを名乗るヤンホモは誰なんでしょう
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:20:48.96 ID:jD3qkA0J0

タクージン「フンッ!」ブウンッ

マクシャリス「フッ……!」バチュンッ

タクージン「ハアッ!」ブオンッ

マクシャリス「シッ……!」バチュンッ


 一方発着場ではタクージンとマクシャリスの戦いが続いていた。
金色の刃が煌めき、閃くのを、白い刃が抑え捌いていく。
タクージンがジェットパックを噴射して斜め後方に飛び上がり、空中からブラスターの連射を浴びせた。
マクシャリスはマントをはためかせてライトセーバーを横に一閃させ、ひといきに弾き飛ばす。
給油車両が流れ弾を受けて爆発炎上するのを背景に、マンダロリアンが降り立ってセーバーとブラスターを構え直す。


タクージン「フウーッ……守ってばかりじゃ勝てねえぜ、公爵さんよ?」

マクシャリス「いやはやお手厳しい、防戦が精一杯なのですよ。よもや総督閣下がこれほどの剣客であったとは、この青二才には露とも……」

タクージン「ほざけ。時間稼ぎだろう……!」クルッ


 タクージンは素早く転回し、背後から襲いかかってきたマグナガードにブラスターの連射を浴びせて破壊する。
マクシャリスが踏み込み斬りつける。
マンダロリアンの総督は振り返りざまセイントセーバーを繰り出し、弾き飛ばす。
切り返しての二の太刀が、交差。
二者は鍔迫り合いの中で睨み合った。


マクシャリス「見抜いておられましたか。食えないお方だ」バチバチ

タクージン「しかし解せねえな。それで今のお前らに何の得がある?」バチバチ


 地鳴りと共に二者の足元が激しく振動する。
何度目かも知れぬ地震は、繰り返す度規模を増しつつあった。
タクージンはヘルメットの下で眉を顰める。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:22:33.66 ID:jD3qkA0J0

タクージン「まさか、貴様……!」

マクシャリス「おや……我が『作戦』に、お気づきか」ブウンッ

タクージン「くっ!?」タッ


 マクシャリスが力任せに剣を払った。
タクージンはバックステップで間合いを離し、右手のブラスターを向ける。
白い刃が閃き、その手首を断ち切った。


タクージン「何……!」


 一瞬遅れて発射された光弾は狙いを外し、敵の白マントに穴を穿つ。


マクシャリス「ならば、ギリギリの時間を待つわけにもいきませんな……!」ブウンッ

タクージン「くっ、貴様の――」シュゴオッ


 ジェットパックを噴射し、追い打ちの斬撃を回避する。
マクシャリスはそれを見上げ、徒手の左手を突き出す。


タクージン「貴様の目的は、この星を――!」

マクシャリス「『フォース・フラッシュ』……!」


 その掌から空中のタクージンへと一直線に閃光が迸る。
次の瞬間、彼の体は爆発に呑まれた。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:23:11.69 ID:jD3qkA0J0

ナインス「カアッ!」ブウンッ

シンノ「くっ……!」バチバチ


 シンノはナインス・ブラザーの渾身の一撃を受け止め、力を溜めると、一気に押し返す。


シンノ「はあーっ!」ブウンッ

ナインス「ぐおっ!?」バチインッ


 その一太刀は尋問官の円環状ライトセーバーを弾き飛ばし、その手から叩き落す。
シンノは追撃を加えるべく再度セーバーを振りかぶるが、疲労がその動作を遅らせた。
尋問官の目がぎらりと光る。


ナインス「シャアッ!」ブンッ

シンノ「ぐあっ!?」ドガッ


 シンノは右手を強かに蹴りつけられ、セーバーを取り落とした。
ナインス・ブラザーは続けざまに右手でシンノの首を掴んだ。
機械の義手がジェダイマスターの喉を容赦なく締め上げる。


シンノ「ぐぐっ……く……!」メキメキ

ナインス「ヒヒヒッ……!死ね……死ね、シンノ・カノス……!」ウィーンッ


 シンノは両手でそれを押しのけようとしていたが、やがて左手を敵の腰に伸ばした。
尋問官のブラスターピストルがひとりでにホルスターからまろび出て、その手に収まる。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:23:54.92 ID:jD3qkA0J0

ナインス「!?貴様!」パッ

シンノ「死ねるかよ……こんな、ところで!」バシュバシュバシュ


 ナインス・ブラザーはとっさに飛び退いたが、シンノは狙いを違えなかった。
連なって飛んだ光弾が尋問官の体を捉え、いくつも風穴を空ける。


ナインス「ぐがっ……シンノ!シンノ・カノスゥーッ!」バッ


 しかし暗黒の騎士は倒れるどころか、一層憎悪を昂らせて飛びかかってきた。
シンノは霞む目で最大限狙いを澄まし、その眉間に銃口を定める。
ナインス・ブラザーが肉薄し、シンノが引き金を引く直前。
斜め後方から無数の光弾が飛来し、尋問官の体をハチの巣にした。


ナインス「ゲフッ……!?」

シンノ「何……!?」


 ナインス・ブラザーは血を吐き、もんどりうって倒れ込む。
シンノはさっとレールウェイ操作盤の陰に隠れ、攻撃が飛んできた方を覗き込んだ。


マグナガードA『申シ訳アリマセン、外レマシタ』

スターバル「ええい、帝国の犬めが!射線を塞ぎおって……!」


 いつの間にか新たなリフトが並行して走っており、そこにはスターバルとマグナガードたちの姿があった。
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/30(金) 20:25:17.81 ID:jD3qkA0J0

シンノ「バカな、あいつら……!」

スターバル「グハハ、我々のホームで逃げ切れるとでも思ったのか!?もはや時間に一刻の猶予もない、こうなれば帝国軍もジェダイもミコア姫も全員皆殺しだ!」ビシューンッ

マグナガードA『!』ジャキッ
マグナガードB『!』ジャキッ
マグナガードC『!』ジャキッ
マグナガードD『!』ジャキッ


 スターバルは赤と青のライトセーバーを抜き、ドロイドたちは銃をエレクトロ・スタッフに持ち替える。
飛び移ってくる気だ。


シンノ「リズマ!ネーア!分離主義者だ、ドロイドどもが乗り移ってくる!」ビシューンッ


 シンノはライトセーバーを拾い上げてスターバルを引きつけつつ、叫ぶ。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/31(土) 12:54:12.52 ID:oZfSij0pO
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/27(日) 13:17:36.04 ID:kOo3csK+o
もう2ヶ月か
パッタリ途絶えたな
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:27:16.58 ID:csitiARN0

ジルコ「何!?分離主義者だと!?」

ネーア「悪いのはこの手かあ!」ガブッ

ジルコ「ぐわああ!?」


 ネーアはマンダロア兵に拘束されていたが、シンノの叫びで注意が逸れた隙をついて反撃!
装甲のない指先に噛みつき、敵の手から逃れる!


セラ「ジルコ!」ジャキッ

マグナガードA『新たなエネミーを発見。排除』ブウンッ

セラ「くっ、鉄屑が!」バシュバシュ


 もう一人のマンダロア兵がフォローに入ろうとするが、マグナガードの乱入により果たせない!


ジルコ「メスガキ!そんなに躾が欲しいか!」ジャキッ

リズマ「ネーアさんから離れろッ!」ブンッ

ジルコ「ぐおお!?」ドガッ


 立て続けにリズマの飛び蹴りを受け、後方に吹っ飛ぶマンダロア兵!


マグナガードB『障害を排除』ブンッ

ジルコ「ぐわあああああああ!」バチバチバチバチ


 マグナガードがその背中にエレクトロ・スタッフを食らわせる!
マンダロリアン・アーマーも電流攻撃までは防御できず、ジルコはあえなく感電死!
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:27:56.55 ID:csitiARN0

セラ「地獄に落ちろ!」バシュバシュ

マグナガードA『ピガーッ!?』ガシャンッ

セラ「フーッ、手こずらせて……!ナインス・ブラザー!?ジルコ!?」


 残るマンダロア兵はマグナガードを始末するも、戦況の不利を悟り、舌打ちとともに撤退を決意した。
ジェットパックを噴射し、テイクオフ!


ナインス「ゴボッ……!」


 ナインス・ブラザーが突っ伏したまま右手を掲げた。
セラはウィップコードを投げてそれを絡め取り、もろともに上昇!
尋問官は暗闇の中に飛び去りつつ、憎悪の叫びを上げる!


ナインス「シンノ!何もかも!何もかも貴様のせいだ!俺は戻ってくるぞ、必ずーッ!」

スターバル「グハハハハ!」ブンッ

シンノ「ぐわあっ!」ガシャーンッ


 その一方でシンノはスターバルの強烈な蹴りを受け、背中から手すりに激突!


シンノ(カハッ……今のは、まずい……!立ち上がれない……!)

スターバル「満身創痍のようだな?苦しかろう!今楽にしてやる!」


 スターバルが二本のライトセーバーを振りかぶる!
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:29:13.84 ID:csitiARN0

リズマ「はあああーっ!」ドウンッ

マグナガードB『ピガーッ!?』ビュンッ


 その時、リズマ渾身のフォース攻撃が炸裂!
吹き飛ばされたマグナガードはシンノを囲んでいた同族に激突する!


マグナガードC『ピガーッ!?』ガシャーンッ


 二機は手すりを越え、まとめてリングアウト!


スターバル「何!?」

ミコア「私だって黙っていません!ええーいっ!」バシュッ

マグナガードD『ピガーッ!?』ボカーンッ


 ミコアがジルコの死体から拝借したロケットランチャーで最後の一体を破壊!


スターバル「ええい、こいつら、この男の金魚の糞かと思えば――」クルッ

ネーア「そなたも一緒に行けい!」ブウンッ

スターバル「ぬうう!?」バチュン ズザザッ


 ネーアの飛びかかりざまの一撃を受け止めるも、勢いで押しやられるスターバル!
しかし手すりを背にして踏みとどまる!
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:30:52.07 ID:csitiARN0

ネーア「ああもう、しつっこいのじゃあ!」グイグイ

スターバル「グハハ!なんの、土俵際!」


 一度静止してしまえば体格差は歴然。
ネーアの企みは失敗したかに思われたが、その時!
ズズン、ズ、ズズズズ!
またも地震!
激しく揺れるリフト!


スターバル「ぐわーーーっ!?」ヒューッ
ネーア「のじゃあーーー!?」ヒューッ


 土俵際の二人は当然バランスを崩し、落下!


シンノ「ネ、ネーア……!」ヨロヨロ

ミコア「なんてこと!」


 残る三人は手すり越しに下を覗き込むが、ネーアとスターバルはとうに遥か彼方。
まして地上はストームトルーパーとドロイドたちが入り乱れる戦場だ。


リズマ「なんとか、フォースで軟着陸できているといいのですが……」

シンノ「しかし、後で探しに行かなけりゃあ――ゲホッ!ゴホッ!」

ミコア「シンノ!怪我をなさったんですか!?」

シンノ「大丈夫だ、刀傷はもらってない……ああそういえば、またお前に助けられたな。リズマ」

リズマ「えへへ……私がみんな、無事に連れて帰りますからね」


 リズマはそう言って気丈に笑う。
シンノは弟子を心強く、愛おしく思ったが、同時に別種の予感を覚えていた。


シンノ(――もう二度と、ネーアに会えないのではないか?)


 地震は今も微かに続き、世界を不穏に揺すぶっていた。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:31:37.29 ID:csitiARN0

 その頃、惑星クマモッテ衛星軌道上の宇宙空間でも戦闘が展開していた。
分離主義者が迎撃の艦隊を繰り出し、帝国軍のスター・デストロイヤー艦隊に攻撃を仕掛けていたのである。


ホイゼル「総督!タクージン総督!どうか応答してください!」


 その戦火の只中、帝国軍艦隊旗艦「インフェルノ」の艦橋。
艦隊司令官のホイゼルは、必死にタクージン総督への通信を続けていた。
しかしもはや二度と応答が戻らないと悟ると、真っ青な顔で椅子に座りこむ。


ホイゼル「くそっ!なんということだ……指揮官以上に兵士、この世で最高の戦士であるあのお方が敗れるなどと!」

艦長「ホイゼル司令官、敵の大型艦が大気圏を離脱します!」


 ホイゼルは部下の呼びかけにハッとして顔を上げた。
モニターに敵艦の拡大映像が表示される。


ホイゼル「あれは……サブジュゲーター級か!?まだあんなものが残っていたとは……!」

艦長「あんな大物を逃してはならん、攻撃しろ!」

士官A「ダメです、前方の敵邀撃艦隊がターボレーザー・ジャマーを展開中!砲撃が通りません!」

ホイゼル「バ、バカな……!」


 ホイゼルは心臓を鷲掴みにされたような猛烈な不安にうめいた。
敵は完全にこちらの手を読み、一つ一つ潰してきている。


ホイゼル(もしや我々が……スター・デストロイヤー四隻がここに足止めされていることも、分離主義者の予定通りなのでは……?)
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:32:31.56 ID:csitiARN0

士官B「!?何だこれは……!?司令官!惑星内部に高エネルギー反応!」

ホイゼル「内部だと!?」


 ホイゼルは泡を食って立ち上がり、展望窓越しに眼下の惑星クマモッテを睨んだ。


ホイゼル「――」


 星が、震えて、割れる。
雲の奥に覗く地表に、光の亀裂が生じる。
巨大な地割れから惑星内部のエネルギーが噴出しているのだ。


士官B「エネルギーが惑星外部に……惑星全体に、拡散していきます……!」

艦長「こんなことは初めてだ……一体何が起こっている!?」


 ホイゼルは大柄な体をわなわなと震えさせたかと思うと、叫んだ。


ホイゼル「退避!退避だっ!ハイパースペース・ジャンプでヤマタイティア宙域まで離脱!」

艦長「バカな!地上部隊を見捨てる気ですか!?」

ホイゼル「敵はそれも狙いなんだ、我々をここにくぎ付けにして一気に葬るための!」

艦長「そんな大がかりな攻撃、トルーパーたちだけでは対応できません!援護が必要です、留まるべきだ!」

ホイゼル「黙れ!早く計算を始めるんだ!敵は我々の想像よりもはるかに、はるかに――」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/14(木) 21:38:11.66 ID:csitiARN0
/度々更新が途切れて大変申し訳ありません
/当初予定していたペースよりかなり遅くなってしまっていますが、完結までもっていきます
/クマモッテ編は次の戦いが最後です
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/15(金) 00:04:36.61 ID:aY1GAe5/O
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:13:36.07 ID:zELFYoA60

 キャッスル・クマモッテ外縁部、ドロイド工場に隣接する倉庫街。
遠く銃声と爆音が響き、トルーパーの死体とドロイドの残骸が散乱する中を、コソコソと移動する小集団があった。
バスタ・ガスターとアジアス・ジ・アーチ、およびその側近たちである。


バスタ「なんてことだ、帝国の外道どもが……!情報を提供した私たちごと殺しにかかるとは!商売の常識も知らん奴らだ!」

アジアス『何ガ商売ダ、コノ事態ハオ前ノ楽観主義ノセイダゾ!ドウ責任ヲ取ルツモリダ!?』

バスタ「何をいまさら!貴方だって乗り気だったではありませんか!」


 内輪揉めが始まったその時、バスタとアジアスの眼前に唐突に三つの人影が出現した。


バスタ「うおっ!?」

アジアス『何ダ、何者ダ貴様!』

『バスタ・ガスター殿ト、アジアス・ジ・アーチ殿デスネ?』


 それはよく見れば、分離主義勢力のコマンドー・ドロイド――
ニンジャ・コマンドーと呼ばれる、光学迷彩装備を備えたタイプである。


ニンジャコマンドーA『あがめむのん司令ヨリ、特命ヲ仰セツカッテ参リマシタ』

バスタ「何だ、味方じゃないか……驚かせるんじゃない!」

アジアス『我々ノ護衛ヲシニキタンダナ、ヨロシイ!ツイテコイ!』

ニンジャコマンドーA『……』ジャキッ バシュバシュバシュ
ニンジャコマンドーB『……』ジャキッ バシュバシュバシュ
ニンジャコマンドーC『……』ジャキッ バシュバシュバシュ
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:15:13.95 ID:zELFYoA60

側近A「ぐわっ!?」バスッ

側近B「ぎゃあっ!」バスッ

バスタ「ひいい!?」
アジアス『何イ!?』


 なんたることか!
ニンジャコマンドーたちは味方であるはずのバスタたちに銃を向け、その側近を一人残らず射殺!


アジアス『貴様ラ、コレハドウイウ――ソウカ、まくしゃりすノ差シ金ダナ!?アノ若造メガ、口封ジノツモリカ!』

バスタ「やめろ、やめてくれ!金なら払う!なんでもするから命だけは!」

ニンジャコマンドーA『我々ノ精強ハ、無駄ナ情ケヲモタヌガユエ』ジャキッ

バスタ「うわあああ死にたくないいい!」

「――はあああっ!」ドウンッ

ニンジャコマンドーA『ピガーッ!?』ガシャンッ


 しかし引き金が引かれる直前、シャウトとともに飛来した衝撃波がニンジャコマンドーを吹き飛ばした。
一同の視線が飛来した方向、攻撃の主に集まる。


シンノ「チッ、我ながらいらん手出しをした……!」

ミコア「いいのですよシンノ様!放っておけません」

リズマ「戦いましょう!」ブオンッ
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:15:50.88 ID:zELFYoA60

アジアス『ばかナ、アレハ……じぇだい!?』

バスタ「何でもいいから助けてくれえええっ!」


 バスタが情けない叫びを上げる!
残る二体のニンジャコマンドーがバイブロ・ブレードを構え、ジェダイたちに迫る!


ニンジャコマンドーB『シイッ!』ブンッ

シンノ「くっ!」チュインッ

ニンジャコマンドーB『シャアッ!』ブンッ

シンノ「ふっ!さすがに普通のドロイドよりはやるな……だが!」チュインッ


 シンノは敵の剣を弾くと同時に体を一回転させ、流麗に反撃!


シンノ「はあっ!」ブウンッ

ニンジャコマンドーB『ピガーッ!?』ズバッ


 ニンジャコマンドーの右腕が飛ぶ!
敵は残る左腕でブラスターを抜こうとするが、さらにもう一回転!


シンノ「せいやあっ!」ブオンッ!

ニンジャコマンドーB『ピガガーッ!』ズバッ


 ニンジャコマンドーの首が飛ぶ!
金属のボディは傾いで倒れ伏し、執念のブラスター攻撃は頭上の虚空を撃った。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:16:57.60 ID:zELFYoA60

ニンジャコマンドーC『シイイッ……!』グググ

リズマ「くうっ……!」ジリジリ

ミコア「そこまでです!」バシュッ

ニンジャコマンドーC『ピガーッ!?』バスッ

リズマ「今だ!ええいっ!」グイッ ブウンッ!

ニンジャコマンドーC『ピガガーッ!』ガシャンッ


 もう一体の敵はミコアに背中を撃たれ、リズマに一刀両断されて大破!


ニンジャコマンドーA『グググ……』スック

シンノ「まだ動くか……!」クルッ

ニンジャコマンドーA『……』


 一体目のニンジャコマンドーは体勢を立て直したが、戦況を不利と判断。
光学迷彩で透明化し、姿を消した。


シンノ「……逃げたか……しかし、あんなタイプのドロイドは見たことがない」

リズマ「戦後に開発されたものでしょうか?」


 シンノとリズマはスターバルを撃退したあと、少しの休憩時間を得ていた。
彼らはいくらか余裕を取り戻した表情でバスタらを見やる。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:17:47.07 ID:zELFYoA60

バスタ「ああ……ジェダイ、何だか知らないが助かっ――って、そこにいるのはまさか、ミコア姫!?」

ミコア「いかにも!そなたら、分離主義勢力の要人と見ました。ヤマタイトの旗の下に投降なさい!」ビシッ

アジアス『やまたいと?トスルト貴様ラ、帝国ノ尋問官カ?』

バスタ「帝国軍!?」ビクッ

シンノ「……あんなのと一緒にするな、俺は同盟軍だ。共和国再建のための同盟軍」

アジアス『反乱軍カ……ナゼ我々ヲ助ケタ?捕虜ニデモスルツモリカ?』

シンノ「別に、目的があってやったわけじゃ……いや、待てよ。貴様ら、シャトルを持っているか?この惑星から脱出するためのシャトルだ」

バスタ「シャトルだと!?……も、持ってな」

アジアス『持ッテイル。近クノ倉庫ノ中ニ隠シテアルンダ。まくしゃりすガ造反シタトキノタメニナ』

バスタ「アジアス公!」

リズマ「で、では!」

アジアス『アア、貴様ラヲ乗セテヤッテモイイ。ダガ倉庫マデハ私タチヲ護衛シロ……ソシテ脱出ノ後ハ、私タチヲ安全地帯マデ送リ届ケルノダ。捕虜ニハナラン』

ミコア「取引……ですわね」

シンノ「……チッ、いいだろう。だが惑星を脱出する前にドロイド工場に寄って、仲間を探させてもらうぞ」

バスタ「何だと!?ふざけるな、その間に帝国軍の攻撃を受けたらどうする!」

アジアス『ヨカロウ』

バスタ「アジアス公!あんたなあ!」

アジアス『ゴネテイラレル場合デハナイ、黙ッテオレ!』

リズマ「じゃあ取引成立です!」

シンノ「そうと決まれば早く行くぞ、案内しろ……!」


 シンノはそう急かしつつ、倉庫の屋根越しに空を睨む。
燃える街の炎の向こうに、何か別種の光が立ち昇っている。
その明滅の波長は、いまだに続く地震と同調しているように感じられた。


シンノ(星が……軋んでいる……?)
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:18:47.06 ID:zELFYoA60

スターバル「ハア、ハア……失礼します!スターバル、参上いたしました!」ポタポタ


 スターバル将軍は全身濡れネズミのまま、戦艦ヴェンジェンスの艦橋に足を踏み入れた。
そこはちょっとした体育館ほどもある広大な空間。
薄暗闇の中で数十体の管制ドロイドたちがコンソールに向かって作業にいそしんでいる。
その中央にそびえたつ指揮台の上で椅子が回転し、深く腰掛けたマクシャリスが姿を現す。


マクシャリス「ずいぶん遅かったな。ほどほどにしておけと言っておいたはずだが」

スターバル「ハアハア、申し訳ありません……」ポタポタ

マクシャリス「……何故濡れているんだ?」

スターバル「ドロイド工場の冷却水タンクの中に落ちまして……」ポタポタ

マクシャリス「一体何があった」

スターバル「はっ、ジェダイがミコア姫を連れまわしていたので、それを追跡しました。結局息の根を止めることはできませんでしたが……」

マクシャリス「ジェダイだと?帝国の尋問官ではないのか」

スターバル「いえ、あれは真っ当なジェダイです。そこそこのやり手が、二人……マスターとアプレンティスですかな、あれは」

マクシャリス「……帝国ではなく、分離主義に盾突く存在で、組織立った……反乱軍か?ミコア姫の身柄を狙ってきたか」

スターバル「ああ、それと赤いライトセーバーを振り回すガキがおりました。手から電気を出したりして……」

マクシャリス「何?」


 分離主義の大ボスは微かに表情を硬くする。


マクシャリス「シスだぞ、それは」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/17(日) 19:20:12.17 ID:zELFYoA60

スターバル「あれがテイティスのマスターなのですか!?とてもそうは思えません、奴は私と同等かそれ以下の使い手でした!」

マクシャリス「そうだろうな。お前が無事に帰ってきているところからして……ヴェイダーの秘密の弟子か何かか?あるいはまったく別の……」

管制ドロイド『せれのーらんと公、あがめむのん司令官カラ通信デス』

マクシャリス「地上からか。モニターに出せ」


 マクシャリスは一旦思考を中断し、指揮台正面の巨大なモニターに向き直った。
やがてそこにはハイパータクティカル・ドロイドの無機質な顔が大写しになる。


アガメムノン『せれのーらんと公。くまもって・きゃっする防衛部隊司令官、あがめむのんデス』

マクシャリス「こちらは戦艦ヴェンジェンス、マクシャリス・セレノーラント・ドゥークーだ。状況を報告せよ」

アガメムノン『ハッ。防衛施設ハ帝国軍ノ攻撃ニヨリ、戦闘能力の9割を喪失。全戦線ガ崩壊、敵地上部隊ノ侵攻ハ司令部ニモ及ンデイマス』

マクシャリス「限界か、まあいい。最後の一兵まで抵抗し、敵を引きつけろ」

アガメムノン『ハッ……ソレト、ばすた・がすたーオヨビ、あじあす・じ・あーちノ件デスガ……』

マクシャリス「取り逃がしたのか?」

アガメムノン『にんじゃ・こまんどー部隊ヲ送リ込ンダノデスガ、じぇだいニ撃退サレマシタ。最後ノ一体ガ触接中デスガ、任務完遂ハ困難カト……』

マクシャリス「またしてもジェダイか。よくよく私の計画を荒らしてくれるものだ……しかしまあ、私の手の平から出るものではない」


 マクシャリスは無感動にそう言って、金属の円筒を手で弄ぶ。
タクージン・シカーグから奪ったセイント・セーバーだ。


マクシャリス「星ごと吹き飛ばして、全てに片を付けることにしよう」


 その後、戦艦ヴェンジェンスは事前に計算した軌道でのハイパースペース・ジャンプによって宙域を離脱した。
特殊な工作によって惑星核のエネルギーを暴走させることで、急激に超新星化を進める――
それが『星の生贄(スター・サクリファイス)』作戦の真相。
惑星クマモッテは今や、直径1万キロ超の超巨大時限爆弾と化していた!
惑星爆発まで、あと二十分!
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/17(日) 23:56:58.22 ID:r3NH36Rm0
はたしてまた地球滅亡シリーズと化してしまうのか
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/18(月) 19:44:30.68 ID:IayH1z8HO
> なんたることか!
>ニンジャコマンドーたちは味方であるはずのバスタたちに銃を向け、その側近を一人残らず射殺!
なんか忍殺感ある
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:51:11.18 ID:E/nMGKEr0

 ――キャッスル・クマモッテ城下、倉庫街。


シンノ「フンッ!」ブンッ

ストームトルーパーA「ぐわあっ!?」ズバッ

リズマ「やあっ!」ブウンッ

ストームトルーパーB「ぎゃあ!?」ズバッ


 シンノの振るう青い刃が輝き、リズマの持つ緑色の刃が閃く。
立ち塞がった帝国軍のトルーパーたちは次々と斬り伏せられ、残る者は怖気を成して逃げていく。


ミコア「バスタ!結局シャトルはどこにあるのです!?」

バスタ「はいミコア様!あそこに見えるマスドライバーの下の倉庫でございます!」

アジアス『コノ短イ時間デ飼イ慣ラサレオッテ……』

シンノ「マスドライバーの下だな、急ぐぞ!」


 一行は慌ただしく倉庫街を駆け抜ける。
地震は一層強まり、彼らの足元を揺さぶり続けた。
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:52:12.35 ID:E/nMGKEr0

シンノ(大丈夫だ、まだ大丈夫……)ダダダ


 シンノは焦燥に駆られつつも、心中で自分に言い聞かせる。


シンノ(シャトルを発進させてドロイド工場に戻る。ドロイド工場でネーアを探す……)


 目当ての倉庫に到着する。
大きな金属の引き戸が入口を塞いでいる。


シンノ(いや、ネーアなら向こうからこちらの居場所を探知できるはずだ。あいつを拾って、すぐにこの星を出る)


 ミコアが指図する。
バスタが脇のコンソールに走り寄り、電子ロックを解錠する。


シンノ(残る難関は帝国軍の包囲網くらいのものだ。尋問官が戦線離脱した今、そのくらいならなんとでも……!)


 金属扉が振動し、酸性雨で錆びついた巨体を振るわせつつ、ゆっくりとスライドする。
その奥、倉庫内に広がる暗闇に、光が差し込む。


シンノ(――)


 息が止まる。
倉庫の中に、見知った人影があった。
黒いローブ。
銀色の仮面。
その奥に覗く、四つの黄色の瞳。


テイティス「……」


 ダース・テイティス。
ねめつける視線に、殺意が滲む。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:52:44.26 ID:E/nMGKEr0

 ミコアが何か指示した。
バスタとアジアスが退き、二人のジェダイが残される。
シンノは敵から視線を逸らせぬまま、呻くように言う。


シンノ「……バカな……なぜ、ここで……今になって、奴が!」


 心の中で組み立てた都合のいいスケジュールが、ガラガラと音を立てて崩れていく。


リズマ「――戦いましょう、マスター」


 暗闇に吸い込まれそうなシンノの心を、リズマの言葉が辛うじて繋ぎとめる。
鞘走るは緑の光刃、堅牢なる第三の構えも勇ましく!


リズマ「もとより、いずれは決着を付けなければいけない相手!」

シンノ「……畜生……畜生!そうだ!諦めやしないぞ、畜生!」


 道標を得て、ジェダイ・マスターの意地が燃焼!
ライトセーバーが蒼の輝きを取り戻す!


シンノ「全部救ってやるぞ、俺たちが!全部だ!」

テイティス「……もはや策謀は無用。よって手心も無用」


 シス卿は冷然とそう言い放ち、懐から金属筒を取り出す。
その一端から赤い刃が発し……残る一端からも、同じ光が生じた。
ダブルブレード・ライトセーバー。
これまでの戦いでは温存されていた真の武器!


テイティス「貴様らジェダイが全てを救うなら、シスたる私は全てを闇に堕とそう」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:53:32.26 ID:E/nMGKEr0

 自動扉が開き切って停止すると同時に、倉庫内の照明が点灯。
タングステン灯の青白い光が空間を支配する。
青と緑、赤の光はその中で霞み……赤が、閃く!


テイティス「――シイッ!」ブウンッ

シンノ「くおっ……!?」チュインッ


 次の瞬間、テイティスはすでにシンノの眼前にいて、ライトセーバーを振り抜いていた。
遅れて火花が散る。


シンノ(ガードが一瞬遅れたら死んでいた……!)

リズマ「ヤアッ!」ブウンッ

テイティス「フンッ!」チュインッ


 横合いからのリズマの斜め太刀!
テイティスは最小限の動きで防御し、セーバーを回転させてもう一方の刃で斬りに行く!


テイティス「ハアッ!」ブオンッ

リズマ「くうっ!」チュインッ


 リズマはかろうじて自分の武器を合わせる!


シンノ「タアッ!」ブウンッ

テイティス「!」ザッ チュインッ


 シンノが素早く姿勢を回復し、致命的な軌道の反撃を繰り出す!
テイティスは一歩下がり、逆手側の刃で防御!
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:54:18.43 ID:E/nMGKEr0

シンノ「逃がさんッ!」ブウンッ


 剣を斬り返し、追撃!
神速の水平斬撃!


リズマ「セイヤアッ!」


 同時にリズマが鋭い斬り上げで逃げ道を塞ぎに行く!


テイティス「ッ!」ダンッ


 テイティスは地を蹴り、後方へジャンプして回避!
ジェダイたちから五メートル離れたところで、靴の裏を床に擦り、煙を上げつつ静止する。
彼の黒ローブの裾は切り裂かれ、ブスブスと煙を上げていた。


シンノ(退かせた……刃が届いた。戦える。俺たちは、成長している)


 シンノの脳裏に惑星ヤクシムでの敗北の記憶が浮かび、消えていく。


リズマ「勝てますよ、マスター」


 リズマが敵から目を離さぬまま言う。


シンノ「ああ。一人では無理でも、二人なら!」


 シンノもまた、たしかに前を見据えたまま答える。


テイティス「ほざくがいい!」


 テイティスが右手を前に突き出す!
シンノとリズマは跳躍して空中へ退避!
コンマ一秒後、シスの手の平から噴出した火炎がフロアを薙ぎ払う!
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:55:05.22 ID:E/nMGKEr0

医務トルーパーA「どけどけ!救急だ救急だ救急だ!」ガラガラガラ


 惑星クマモッテ上空、帝国軍旗艦インフェルノ艦内。
大勢の医務トルーパーたちが一つのストレッチャーを囲み、通路を慌ただしく移動する。
ストレッチャーの上に寝かされているのは――尋問官、ナインス・ブラザーである!


ナインス「シンノ……シンノ……シンノ・カノス……!」


 凶悪な尋問官も今は満身創痍。
血みどろの装甲服も痛々しく、酸素マスク越しにうわ言を繰り返す。


医務トルーパーB「尋問官殿!ここがどこかわかりますか?」ガラガラガラ

医務トルーパーC「この指は何本かわかりますか?」ガラガラガラ

ナインス「黙れ……!俺は、殺す……!殺さねば……セラ!セラはどこだ!」

医務トルーパーC「セラ?」

セラ「チッ……」


 彼らに大きく遅れて通路を歩いていたマンダロア兵が、しぶしぶ駆け足になって彼のもとに近寄る。


セラ「何ですか、尋問官殿」

ナインス「シンノは……シンノ・カノスはどうした!死んだか!?いや死んじゃいない、まだ俺が殺していないから……」

セラ「今は治療に専念なさることですな。内臓がズタボロですから、大がかりな機械化手術も考慮すべきかと。さもないと、死にますよ」

ナインス「死ぬ!?シンノがか!?俺がか!?俺が死ぬのは……ゴホッ!ゲホッ!俺は、死ねない!殺せないじゃないかっ!ゲホーッ!」

医務トルーパーA「セラ殿、申し訳ないがこれ以上患者に喋らせるのは危険だ!」

セラ「こちらももううんざりだ」
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:55:43.54 ID:E/nMGKEr0

 ストレッチャーはセラを残して走り去る。
おそらくバイタル区画にある集中治療室に搬送されるのだろう。
一介の兵士では受けられないとうてい受けられない手厚い処置だ。


セラ(ヴェイダーの使い走りとはいえ、元ジェダイのフォース感応者……特殊技能者というわけか)

「彼はもう死なせた方が帝国のためかと思うのですがねェ……精神異常が度を越していらっしゃるゥ」


 セラは横からヌルリと現れた人物を見やる。
ひょろ長い体躯を帝国保安局の黒い制服に包んだ男。


セラ「……今のは問題発言ではありませんか、エージェント・サギ」

サギ「おや、録音していらっしゃったんですかァ?」

セラ「そういうわけではありませんが」

サギ「そうでしょうねェ。まあ録音していたところで、貴方の報告が皇帝陛下のお耳に入るとも思えませんが。ついさっき後ろ盾も失ったようですしねェ?」

セラ「貴様ァ!」グイッ

サギ「ヒヒィ!?」


 セラは激昂し、サギの胸倉を掴み上げる!


セラ「シカーグ総督を!シカーグ総督の死を、愚弄するか!」

サギ「ヒィィ、よっぽど問題行動ですよこれは!早く離しなさい!」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 00:56:23.90 ID:E/nMGKEr0

 ガゴオン!ゴゴオン!


セラ「きゃあ!?」
サギ「ヒィ!?」


 突如、艦全体を揺さぶる振動!
巨大にして堅牢を誇るスター・デストロイヤーは、ミサイルの直撃を受けてもこれほど揺れはしないはずだった。
セラは冷静を取り戻し、近くの窓から外を見やる。
眼下に広がる惑星クマモッテ。
その表面を覆う灰色の雲の向こうからごく小さな影が飛び出したかと思うと、たちまち接近し、大きくなる!
激突!
再びの激震!


サギ「ヒィィ!?分離主義者の秘密兵器ですかァー!?」ブルブル

セラ「いや、あれはミサイルじゃないし……ましてや砲弾でもない」


 セラは豊富な実戦経験、その中で得た様々な惑星の自然環境の知識から、飛来物に関して一つの推論を得る。


セラ(……まさか、火山弾か?)


 あれほど巨大な火山弾が、相次いでこの高度まで飛来する……


セラ(惑星クマモッテの地下に、何が起こっている?)

サギ「わ、私はバイタル区画に避難します!帝国保安局の権限です!」ダダッ

セラ「ま、待て貴様!一人だけ逃げる気か!?」タタッ


 惑星爆発まで、あと十五分!
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/21(木) 01:03:03.00 ID:E/nMGKEr0
>>128
/ご明察、>>1がヘッズなので時々忍殺が顔を出してしまっています
/できるだけ平易な文章を心がけておりますので、苦手な方はご容赦下さい
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:36:44.93 ID:g8ip+YsT0

テイティス「ぐおお……!」ガラガラガシャンッ


 テイティスはフォース・プッシュに吹き飛ばされ、倉庫の床をゴロゴロと転がった。
近くにあった金属缶の山が滅茶苦茶に崩れ、粉塵が舞う。
幽鬼はその中からゆらりと身を起こし、土埃に塗れた自らの服を見やる。


テイティス「この私に……土を、付けるとは……」

シンノ「ハーッ……悪いが、一敗地に塗れるだけじゃ済まさないぜ」


 シンノは光剣を油断なく構えつつ、ジリジリと間合いを詰める。


シンノ「あのホロクロンは、真性のシスが持つには危険すぎる……貴様の探索の旅は、ここで終わりだ……」

リズマ「惑星ヤクシムでの蛮行も、償ってもらいます……!」

テイティス「ホロクロン……ああ。そういえば、そういう話になっていたな……もはやどうでもいい口実だが」

シンノ「何?」

テイティス「フンッ!」ブウンッ


 テイティスが手を振るう。
その掌中に炎が生じて撚り合わさり、長大な炎の鎖を形成!
鎖はシンノの横を掠めて飛び、リズマの全身を絡め取る!


リズマ「ぐうっ!?」ビシイッ
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:37:14.46 ID:g8ip+YsT0

シンノ「リズマ!?」

テイティス「カアッ!」ジャラランッ


 テイティスは鎖を引き絞り、リズマの体を振り回して投げ放つ!
行く先は、床に空いた大きな廃棄孔!


リズマ「うわあああっ、あ!」ガシッ


 リズマはかろうじて縁にしがみつき、ぶら下がる。
しかしその手からライトセーバーが零れ落ち、眼下の暗闇の中に消えていく。


リズマ「し、しまった……!」

シンノ「ハアッ!」ブンッ

テイティス「フッ……!」バチュンッ


 一方シンノはテイティスに攻撃を仕掛けていた。
さらなる時間を稼ぐべく、鍔迫り合いの姿勢で口を利く。


シンノ「ホロクロンが、どうでもいいだと?わざわざキャッスル・クマモッテに来て、四天王を焼き殺したくせにか?」

テイティス「妄言も大概にするがいい。私は貴様らがここに来ることを初めから予知していた……なぜあのガラクタの山に出向く必要がある?」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:37:50.49 ID:g8ip+YsT0

リズマ「やああああっ!」


 直後、リズマがフォースの力で高く跳躍してテイティスに襲いかかった!
その手には、マスター・ヨーダのライトセーバー!


テイティス「何!?」


 テイティスは泡を食ってシンノを押しのけ、ガード姿勢!
しかし軌道を見切り損ね、ダブル・ライトセーバーを真っ二つに切断される!


シンノ「はあっ!」ブンッ

テイティス「ぐおおっ!?」ドガッ


 立て続けに、シンノの前蹴りがクリーンヒット!
テイティスは吹き飛ばされ、廃棄孔の横に駐機されていたシャトルに背中から激突!


テイティス「ハアーッ……!」


 しかしシス卿、さしたる隙を見せず!
左手をジェダイたちのほうへかざす!
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:38:36.54 ID:g8ip+YsT0

シンノ「!リズマ!」

リズマ「マスター!」

テイティス「消えろ……!」ボボボウッ!


 フォース・ファイアー、最大出力!
超常の炎の奔流、破壊エネルギーの青白い輝きが倉庫を満たし、天井を破壊して空へ立ち昇る!


テイティス「ッハ、ハハハ……!少しは鍛えたようだが、結果は変わらない……!」


 シス卿は自らも熱風を浴びつつも、仮面の裏で笑う。


テイティス「私は貴様よりも優れている。私だけがあのお方の、後継者に――」


 炎が上方へ抜け、煙が晴れる。
ジェダイたちが居たところに、畳大のコンクリートの壁が出現していた。


テイティス「――これは」


 その裏から今、人影が跳び出す。


シンノ「はあああーッ!」ブウンッ


 ジェダイの刃が、シスの刃を潜り抜け――その向こうに、届く!


テイティス「――!」ズバッ


 テイティスの左腕が肩口で切断され、ライトセーバーごと宙を舞った!
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:39:24.45 ID:g8ip+YsT0

シンノ(今だ)


 シンノの時間感覚が鈍化し、視界がスローモーションに変化する。
テイティスがフードの陰、仮面の奥で四つの目を驚愕に見開いている。
しかし同時に地を蹴り、側方への退避を始めている。
対応が早い。
片腕を削いだことは、決定打になっていない。


シンノ(奴を倒すのは、今)


 シンノは一歩、踏み込む。
ジェダイたちは、フォースで床材を剥がして防御壁を作ることでフォース・ファイアーを攻略した。
二度通じる手ではない。
テイティスがリズマの奇襲で苛立ち、大ぶりな一撃を選択したからこそ間に合った対応策だ。


シンノ(この機を逃がさず)


 二歩、踏み込む。
すでに片腕とはいえ、敵は無類の戦闘巧者。
次に隙を突けるのはいつかわからない。
それまでに分離主義者の何らかの企みがが発動してしまえば、自分たちはおそらく無事ではいられない。
ネーアを救い出し、ミコアとともに無事でこの星を去るためには――


シンノ(奴の息の根を、完全に――!)


 三歩。
見開かれていたテイティスの目が、細まった。
敵の右手が何かを手繰る。
シンノは自分の右手に――ついで他の四肢に、高熱を帯びた何かが絡みつくのを感じた。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:39:57.37 ID:g8ip+YsT0

テイティス「――その焦りが!」ジャラランッ


 テイティスは右手で炎の鎖を四本まとめて手繰る!


テイティス「命取り!」ブウンッ

シンノ「ぐわあああ!?」バアンッ


 シンノの体は大きく振り回され、背中から壁に叩きつけられる!
鎖はテイティスの手を離れて壁に食い込み、ジェダイを磔の形で拘束する!


リズマ「マスターッ!」

テイティス「ハハ、ハハハ……!」


 テイティスはフォースでライトセーバーをキャッチし、残るリズマに斬りかかる!
腕を一本失っていながら、その攻撃はなおも苛烈!


シンノ「くそっ、くそ……!」ガチャガチャ


 シンノは全力でもがくが、凝縮した炎の鎖は彼を強固に固定して放そうとしない。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:41:34.22 ID:g8ip+YsT0

テイティス「ハハハ……これは、避けられるか!」ブウンッ


 テイティスがライトセーバーを投擲した。
その狙いはリズマではなく、背後のシャトル。
シンノたちの持つ唯一の脱出手段。


リズマ「ッ!」ダッ


 リズマは渾身の力で跳躍。
ギリギリのところでライトセーバーとシャトルのあいだに割り込み、上へ弾き飛ばす。
しかし着地に伴い、姿勢が大きく乱れた。


シンノ「――や」


 テイティスが踏み込む。
徒手、マーシャルアーツ。
リズマは顎を殴りつけられ、後頭部を背後のシャトルの装甲に打ちつけた。
四肢が一瞬、脱力する。
その一瞬に、テイティスのライトセーバーが落ちてくる。


シンノ「やめろ」


 シスはそれを右手でキャッチし、起動。
リズマが目を見開く。
その瞳に、赤い閃光が反射した。


シンノ「――やめろおおおおおおおおおおーッ!」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/23(土) 02:42:33.23 ID:g8ip+YsT0

「……」


 ぴくりと眉を動かし、振り返る。
顧みるは、シャトルが隠匿された倉庫。
その中でライトサイドのフォースの気配が一つ、消滅した。


(……そろそろ見物しに行くとするか)


 ライトセーバーを懐に収め、歩き出す。
後にはニモーディアンとジオノージアンの斬殺死体が残される。


(まったく、マクシャリスの小僧のせいで散々だ……期待通りの結果に終わるといいんだが)


 その背後で地割れから光芒が溢れ、宇宙へ立ち昇る。
倉庫街が、ヒュガーが、否、惑星全体が綻び、崩れていく。
惑星爆発まで、あと十分。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/23(土) 11:27:19.12 ID:6WH6qbJhO
【決講】可奈「飛べ飛べ神鳥〜♪る〜ぐ〜ちゃん〜♪」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1574466531/
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/23(土) 16:02:40.54 ID:8+r9y8ND0
リズマ逝ったああ
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:21:55.60 ID:G7vf32xb0

シンノ「あああああッ!」ブウンッ

テイティス「ぬうん!」バチバチバチ


 シンノは光刃を振るい、猛然と逆襲を仕掛ける。
彼を拘束していた鎖は、直前にリズマが投擲したライトセーバーによって断ち切られていた。
しかし今は、彼女は地に伏して動かない。


シンノ「貴様は……貴様は、何だ!?何がしたくて俺たちを!リズマを!」バチバチバチ

テイティス「ジェダイが義憤に駆られて女の敵討ちか。ドラマチックだな。だがナンセンスだ」バチバチバチ


 テイティスは仮面の奥で四つの目をギョロリと動かし、競り合う光刃越しにシンノをねめつける。


テイティス「シディアスの流派ならいざ知らず、我らがヤマタイト・シスの教えは少し腹を立てたくらいでは到底破れん。腕一本のハンデなど問題にならんぞッ!」ブウンッ

シンノ「ぐうっ!?」バチュンッ


 テイティスは右手一本でおそるべき怪力を発揮し、シンノを弾き飛ばした。
ライトセーバーを握る手を上向け、そこに浮かんだ拳大の火の玉に息を吹きかける。


テイティス「フウッ!」ボボボボボ


 火の玉は震えて、無数に分裂。
青白い火炎弾の弾幕と化してシンノに襲いかかった。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:22:40.43 ID:G7vf32xb0

シンノ「くうっ!」ダッ


 シンノは逸る殺意を抑えて回避に転じた。
彼が跳躍し、三角跳びする軌跡を、一瞬遅れて炎が焼き尽くしていく。
床を転がって着地、パッと身を起こしたところに、かわし損ねた最後の火炎弾が脇腹を捉える。


シンノ「ぐあっ!?」ボンッ

テイティス「のろい!」ブンッ


 テイティスが躍りかかり、空中回し蹴りを仕掛ける。
シンノはカッと目を見開き、姿勢を転回。
蹴り足を脇腹と腕で捉える。


テイティス「何!?」ガシッ

シンノ「なめるなあッ!」ブウンッ


 シンノはそのまま敵の体を振り回し、投げ飛ばす。
シスはまたしても金属缶の山に頭から突っ込み、派手に金属音と粉塵をまき散らした。
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:23:31.36 ID:G7vf32xb0

シンノ「リズマ、リズマ……!」ガシッ


 シンノはリズマのもとに屈み込み、地面から抱き起こした。
まだかろうじて息はある。
しかしその表情と呼吸は弱弱しく、いつもの気丈さは見る影もない。


リズマ「……マス、ター……申し訳、ありません……不覚を……」

シンノ「ああ、いいんだ、いいんだ、そんなこと……ああ……」


 ジェダイマスターは弟子を抱えたまま無様に狼狽した。
彼の戦士としての経験は、テイティスの一撃がどうしようもなく致命傷だと宣告していた。


シンノ「何でだ、どうして……嫌だ、ダメだリズマ。俺を置いていかないでくれ……」


 視界がぼやける。
情けない言葉が勝手に口から流れ出す。
思考は一向にまとまらず、リズマとともに過ごした記憶が走馬灯のように流れていく。
惑星ハクカ、衛星砲台ラグナロク、惑星ハンカッタ、惑星デジム、スノークの暗礁宙域。
惑星ヤクシム、惑星タンガシム、そして惑星クマモッテ。


シンノ「俺の荷物を背負ってくれると……守ってくれると、言ったじゃないか……」


 シンノ・カノスは、物心ついたときにはすでにジェダイだった。
その人生は、プライドは、オーダー66とクイナワ戦によって二度にわたり粉微塵に打ち砕かれていた。
たった一つの支えは今、死の闇の中に永遠に失われようとしている。


シンノ「俺を、俺を……一人にしないでくれ……」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:24:31.75 ID:G7vf32xb0

リズマ「……一人には、しません……私は、フォースと……一体になります」

シンノ「何だよ、それ……分からないぞ……行かないでくれ、頼む、頼むから……!」

リズマ「……わからなくっても……見えなくっても、いつも……一緒です」


 リズマが震える手を伸ばし、師の頬を撫でる。


リズマ「だから……泣か、な、いで……」


 言葉が途切れる。
項垂れる面影。
指先は思い人を離れ、地に落ちた。


シンノ「……」


 シンノは底の見えない暗闇に突き落とされたかのような感覚を味わった。
体の内側から急速に温度が抜けていく感覚。
なぜ彼女は目を覚まさないのか?
なぜ彼女は話さないのか?
その目元に、口元に、生の痕跡を見出そうとするが、叶わない。


テイティス「死んだか。見たところ、ただのアプレンティスではなかったらしいな」


 その言葉は鮮明に聞き取れた。
一本きりの腕にライトセーバーをぶら下げ、悠然と歩いてくるテイティスの声。
リズマの仇。
こいつさえいなければ。
胸の内の闇に蝋燭のような小さな火が灯り、たちまち溶鉱炉のごとく燃え上がった。
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:25:16.28 ID:G7vf32xb0

テイティス「自分たちの定めたルールすら守れないとは。破戒僧は地獄行きだぞ」

シンノ「――れ」

テイティス「何?」

シンノ「黙れ」


 地震が轟音と共に倉庫を揺さぶる。
シンノはリズマの遺体を静かに横たえ、立ち上がった。
天井の照明ユニットの一つが傾ぎ、火花を散らしながら彼の背後に落下。
男の輪郭が逆光の中で影絵となって映し出される。


シンノ「貴様は殺す。今ここで」


 光と闇のコントラストの中で、ライトセーバーの青い刃が冷たい輝きを放つ。


テイティス「……」


 テイティスは仮面の奥で不快そうに眉をしかめた。
敵はジェダイとしては手練れだが、ダークサイドの技術は素人。
感情をぶつけ合う土俵の下でなら、自分が一歩先を行く。
先を行くはずだ。
ならばこのプレッシャーは何だ?
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:26:25.39 ID:G7vf32xb0

テイティス「……無理だな、手負いの貴様一人では……だが安心するがいい、その女にはすぐに会える」


 テイティスは微かな疑念を振り払い、隻腕でライトセーバーを構えた。


テイティス「同じ者に同じ武器で殺されれば、同じ地獄に落ちようからなッ!」ブウンッ

シンノ「ダアッ!」ブウンッ


 チュインッ!
赤と青の光が火花と共に交錯し、飛び離れる。


テイティス「ぬうんっ!」ジャララランッ

シンノ「ハアーッ……!」ダダダッ


 テイティスが振り返りざま放った幾筋もの炎の鎖。
シンノは床を走り、壁を走ってその追跡を免れる。
ムーンサルトで廃棄孔を飛び越え、空中から敵に襲いかかる。


シンノ「ガアアッ!」ブウンッ

テイティス「フンッ!」ブウンッ


 シスはこのアクロバット攻撃に反応し、自らのライトセーバーで受け止めた。
シンノは着地と同時に、左手で腰のブラスター・ピストルを抜く。
ナインス・ブラザーから奪ったものだ。
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:27:15.40 ID:G7vf32xb0

テイティス「小賢しいわ!」ブンッ

シンノ「ぐうっ!?」ドガッ


 テイティスは射撃に先んじてブラスターを持つ手に蹴りを浴びせた。
銃は持ち主の手を逃れて床を滑り、廃棄孔の中に落下。
交錯するライトセーバー越しに両者の視線が交錯する。
テイティスの目はサディスティックな優越感に満ちる。
シンノの目は、一層殺意を燃え上がらせていた。
テイティスは一瞬、怯んだ。


シンノ「ダアッ!」ブンッ

テイティス「がッ!?」ドガッ


 その刹那、シンノの頭突きが命中した。
姿勢が崩れた隙に左手で敵の襟首をつかみ、引き寄せる。


シンノ「ヌウアッ!」ブンッ

テイティス「ごッ!?」ドガッ


 再び命中。
テイティスの顔面へ、金属の仮面越しに衝撃が通る。
シンノはライトセーバーを切り返し、振り上げる。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:28:20.76 ID:G7vf32xb0

シンノ「ゼアッ!」ブウンッ

テイティス「ぐわあッ!?」バチュンッ


 斬り上げがシス卿の顔面を捉えた。
苦悶の声、火花が散る。


テイティス「貴様ああッ!」ボウッ

シンノ「チッ……!」ダッ


 テイティスは怒りに震え、フォース・ファイアーを滅茶苦茶にまき散らした。
シンノは舌打ちしつつ火炎放射の射程外に飛び退く。
やがてガス欠のように炎が途切れ、仇が再び姿を現した。


テイティス「ハアーッ……ハアーッ……!」


 真っ二つに斬れた仮面がその顔からずれて、落下する。
その奥にあったのは、醜いエイリアンの顔。
目は四つあったようだが、左の二つは仮面もろとも焼き切られて潰れていた。


テイティス「おのれ……おのれ、貴様……貴様ァーッ!」ダッ

シンノ「ガアアアアーッ!」ダッ
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/01(日) 02:28:59.49 ID:G7vf32xb0

 シンノとテイティスは再び交錯する。
赤い光が輝き、青い光が閃く。


テイティス「……」

シンノ「……」


 両者はライトセーバーを振り抜いた姿勢で着地した。
一瞬の静寂。
テイティスが身を起こし、振り返る。


テイティス「……ありえん……こんな、ことは」


 その上半身がずるり、と横にずれる。
シス卿の肢体は腰のところで水平に両断されていた。


テイティス「ありえん。私だけが、あのお方の……ダース・グレイヴスの……」


 下半身がふらつき、膝からくずおれて、横合いに倒れ込む。
上半身は廃棄孔の縁に落下し、傾いで、そのまま闇の中へ落下していった。
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/01(日) 14:29:13.70 ID:jwUfhlYnO
闇堕ちクルー?
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:16:45.89 ID:35EuomrY0

 地震の揺れは極限に達しつつあった。
倉庫内に積み上げられた資材の山が次々に崩れ、衝撃が走るたび壁の亀裂が大きくなっていく。
しかしたった一人残ったジェダイは、もはや脱出する精神力すら失っていた。
リズマのもとに座り込み、その亡骸をかき抱く。


シンノ「頼む、頼むよ、目を開けてくれ……もう嫌なんだ、こんなのは……もう二度と!」


 彼の意識にいくつもの記憶がフラッシュバックする。
シカーグ将軍の遺体を抱くユスカ。
自らのマスターとの永遠の別れ。
それに、ずっと昔、遠ざかる誰かの背中。
彼の繊細な精神は、あらゆる別離の記憶を鮮明に刻みつけていた。


シンノ「意味ないんだよ、こんなんじゃ……いくら殺せたって、守れないんじゃ……!」


 最後の照明ユニットが落下し、タングステン灯の光が完全に途絶える。
残ったのは、フォース・ファイヤーが穿った穴から落ちる、スポットライトのような一筋の光。
今、そこに小柄な人影が姿を現す。


「――そうだ、その感情だ。私はこの時を待っていた」


 その声は幼いが、口調には老獪なものが覗く。
胸元のホロクロンが、緑色にきらめく。


ミコア「否、全てを仕組み、招き寄せた。私が。このダース・グレイヴスが!」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:17:39.55 ID:35EuomrY0

シンノ「ミコア……姫……」


 シンノは彼女にうつろな目を向け、静かに絶望した。
あれが自分を苛んでいる全ての元凶だ。
本人の言葉だけでなく、フォースの波動からも明らかなことだった。
それを必死になって守り、あまつさえ敵の手から救い出そうとしていたとは。
俺はなんて愚かだったのか。
これは俺の愚かさへの罰なのか。


グレイヴス「リズマに会いたいだろう。もう一度手を触れたいだろう、言葉を交わしたいだろう?」


 これまで、ミコアの言動には幼くも厳格な王族の気風があった。
しかしそれは全て偽物に過ぎなかった。
今、シスの暗黒卿ダース・グレイヴスは鳥の雛を前にした蛇のようにサディスティックな笑みを浮かべ、狡猾な言葉を投げかける。


シンノ「……どういう意味だ、それは……」

グレイヴス「言ったはずだぞ。ヤマタイトの教えには、死者を蘇らせるものもあると」

シンノ「……リズマを、蘇らせることができるというのか」

グレイヴス「お前が私を受け入れれてくれるならば、な」


 降り注ぐのはきっと、遠くで燃える戦火の光。
シス卿はその中から、暗闇の中にいるシンノのほうへ手を差し伸べる。


グレイヴス「シンノ・カノス、私の弟子になれ。リズマも加えて三人で、暗黒面の道を往こうじゃないか」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:18:46.90 ID:35EuomrY0

シンノ「……ふざけたことを、ほざくな!」


 シンノの胸の中に残る最後の感情のひとかけらが爆発した。
亡骸を抱えたままライトセーバーを振りかざし、伸ばされた手を拒絶する。


シンノ「お前のせいじゃないか。全部全部、お前の嘘のせいじゃないか!この上また俺を騙すつもりか!」


 シンノは反駁しながらも、目から涙が溢れだすのを止められなかった。
こうして意地を張ったところで、シカーグ将軍も、リズマも帰ってきはしない。
今の彼にとって道理と正義はあまりにも虚しかった。


シンノ「これ以上そのくそったれの口が誰かを傷つける前に、俺がお前を、この手で……!」

グレイヴス「……シンノ、それ以上自分を傷つけるのはやめろ。見ていられん」


 グレイヴスは呆れたような、哀れむような微笑を浮かべ、悠然と歩み寄った。
シンノの震える手からライトセーバーをもぎとり、刃を収める。


グレイヴス「嘘はもう打ち止めだ、今の私は丸裸だよ……それに、今までもすべて嘘というわけでもない」


 シスは白魚のような手でシンノの頬に触れる。
その肌は柔く、ひんやりと冷えて心地良かった。


グレイヴス「クイナワで、そしてこのクマモッテで、私はお前の精神と才能を信じた。必ず助けに来ると。そしてお前はそれに応えてみせた」


 グレイヴスが目を細め、表情を優しげに綻ばせる。


ミコア「――だから、シンノ様。私は、あなたの仲間になれてよかった。あなたはとってもすごいお方です」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:20:46.20 ID:35EuomrY0

 シンノは自分の中で何かが砕け散る音を聞いた。
理解者を自ら遠ざけ、あるいは死によって別れ、報われない疲労を極限まで積み重ねた今の彼にとって、グレイヴスの言葉はまさに麻薬だった。


「――だから、他の誰でも」

「自分自身さえお前を信じられなくとも」

「私だけは信じよう」

「私だけは、お前を愛そう」


 ジェダイは、屈した。
抱いた亡骸を地面に横たえ、伏してこいねがったのだ。


シンノ「ダース・グレイヴス……グレイヴス卿」

シンノ「私を……弟子に、してください……」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/14(土) 02:23:05.22 ID:35EuomrY0
/エピソード9公開まであと2週間です!
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/14(土) 03:28:43.40 ID:ckQU8EUuO
堕ちたか…
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:49:48.41 ID:ur4JsFWG0

ネーア「ぶっはあああ!死ぬかと思ったのじゃ……!」


 ネーアはマンホールから暗い部屋の中へ這い出し、そのまま床に突っ伏した。


ネーア(いやしくもシスの暗黒卿である妾が……水の中に落ち、かませ四号に追い回され、ドロイドに襲われ、こんな無様な……おのれ分離主義者どもめ、奴らも妾の敵じゃ!)


 憎しみをエネルギーにしてどうにか動き出し、壁に手をついて立ち上がる。
手さぐりでスイッチを入れると、青白い金属灯が室内を照らした。
眩む目であたりを見回す。
今は使われていない倉庫のようで、だだっ広い空間にゴミやガラクタが散らばっている。


ネーア「……ん?あれは……」


 そんな中、壁面のシャッターのそばにあるものがシス卿の注意を引いた。
黒く塗り上げられたXウィング。
テイティスが乗っていたものだ。


ネーア「……」


 テイティスがここに降りたならば、キャッスル・クマモッテに来れたはずはない。
ならばなぜ、ミコアは彼が四人目の四天王を殺したと言ったのか。
本当にやったのは誰か。


ネーア「……ミコア……ミコアか!おのれ!あのメスガキめ!一杯食わせよった!」ガンガン
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:50:34.88 ID:ur4JsFWG0

 シス卿は憤懣やるかたなく、Xウィングの装甲を繰り返し蹴りつけた。
しかし地震に急かされ、方向指示器をへし折って怒りを収める。


ネーア(シンノはどこじゃ?一刻も早くこのことを……待て、近い!)


 ネーアはフォースを通じてシンノの居場所を探り、倉庫を出て廊下を移動した。
息を殺し、開け放しの扉から別の部屋を覗く。


グレイヴス「ついでに言えば、クイナワの反乱軍基地の場所を帝国軍に通報したのも私だ」

シンノ「……一体、何のため……ですか」


 そこには新たなシスの師弟の姿があった。
弟子の腕の中ではリズマが力なく抱かれ、二度と目を開けそうにない。
ネーアは自分の帰還が遅すぎたことを直感した。


グレイヴス「当然、お前に試練を課すためだ。本来あそこで帝国軍に攫われてやる予定だったが、もう一押しが足りないと思って残ったんだ。そのせいで後でテイティスに出張ってこさせる羽目になったが」

シンノ「……全部マスター・グレイヴスの手の内、か……」

ネーア(グレイヴス?ダース・グレイヴスか!)

シンノ「この星にいるのも……」

グレイヴス「……いや、これは分離主義者のせいだ。マクシャリスの仕業よ」


 グレイヴスは壁面のスイッチを操作し、シャッターを解放する。
外から熱風が吹き込み、ネーアの頬にまで届いた。
二人はそばに駐機されていたシャトルの中に乗り込む。
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:51:45.90 ID:ur4JsFWG0

グレイヴス「奴には思い知らせねばならん。シスを裏切り、あまつさえ帝国軍を釣る餌にした報いをな……」


 グレイヴスは操縦席につき、慣れた手つきでコンソールを操作した。
機体後部のタラップが格納され、ジェネレーターが唸りを上げる。
シンノは浮遊感を覚え、窓越しに遠ざかる景色を見て、不意に目を剥いた。


シンノ「降りろ……降りろ!船を降ろせ!」ダッ

グレイヴス「うっ、何をする?放せ!」バッ

シンノ「ぐわっ!」ドタッ


 疲れ果てた体を強いてグレイヴスに組み付くが、容易く振り払われて尻餅をつく。
恐るべき黒幕はパイロットシートの上に立ち上がり、威厳に満ちた仕草でシンノを睥睨した。


グレイヴス「少し甘くしすぎたか?反抗は許さんぞ。マスターである私と、後ろに転がっているあれがこれからのお前の全てだ。よく覚えておくがいい」

シンノ「ネーアが……ネーアがまだ、あの星に……」

グレイヴス「ネーア?……ああ、なんだ、あのガキのことか。今更迎えに戻ることなどできんぞ。後ろで見てみろ」


 グレイヴスは席に戻り、キャビンの後方を指し示す。
シンノは底知れない悪寒を覚えてそれに従い、機体後部の窓に取り付いた。
シャトルは急速に高度を上げており、彼はそこから惑星クマモッテの全貌を見ることができた。


グレイヴス「古代シスの兵器と同じだ、何が起こるか察しはつく」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:52:20.51 ID:ur4JsFWG0

 薄汚れた星は急速にひび割れ、空気の抜けたボールのように歪んでいく。
そしてぶるぶると震え、その周波が極限まで高まったとき――
惑星クマモッテは内側から火を噴き、木っ端みじんに爆発した。


シンノ「……あ……ああ」


 シンノは膝から崩れ落ちた。
微かに蘇った感情を絶望が打ち砕く。
飛び散る星のほうから何か、形のないものが押し寄せてくる。
シンノはその冷たさに怯み、恐れて、嘔吐した。


グレイヴス「断末魔だな。星の爆発で死んだ奴らの」


 頭に冷たい手が触れるのを感じる。
撫でてくれている。
シンノは震えながらも少し冷静さを取り戻して、速度の感覚が消えたのに気づいた。
ハイパースペースに突入したのだ。

 
グレイヴス「ネーアとかいうのも死んだだろうが……まあ、すぐに気にならなくなるとも」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/12/31(火) 17:53:03.39 ID:ur4JsFWG0

ネーア(妾が星の爆発くらいで死ぬと思っているのか。お生憎様ぞよ!)


 ネーアはその床下で邪悪にほくそ笑んだ。
彼女はシャトルが離陸する直前、その着陸脚にしがみつき、キャビンのすぐ下の領域に潜り込んでいたのだった。


ネーア(シンノの奴は妾と何年も付き合っててどうしてああも鈍いのじゃ。鈍いと言えばミコア、もといグレイヴスの奴も――)

グレイヴス「ふむ、ネズミが潜り込んだようだな」

ネーア「……」


 頭上でライトセーバーが鞘走る音がした。
永遠にも思える数秒。
着陸脚にしがみつくネーアのすぐ横に、赤い光が降ってくる。
赤い光が虚空で火花を散らした。


ニンジャコマンドーA『ピガーッ!』ガシャンッ


 そこの壁面にしがみついていたニンジャ・コマンドーが、急所を貫かれた状態で出現した。
たちまち機能を失い、着陸脚格納ハッチの上に落下する。
ネーアは思わぬ同居人がスクラップと化して足元に転がるのを恐々と見下ろした。


ネーア(……セ、セーフぞよ)


 そして気が抜けると、手が着陸脚に張り付いたまま動かせないのに気づいた。
凍りついている。
ここは極寒の宇宙と金属板一枚を隔てただけで、暖房もない極限の空間なのだ。


ネーア(セーフじゃないのじゃ……!まずい、寝たらダメじゃ、寝た……ら……)


 冷気はシス卿の全身を包み、疲労と合わさって、その意識を闇の中へ引きずり込む。
シャトルは白く輝くハイパースペースを抜け、暗黒の宇宙へと消えていった。
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