【SW】ジェダイ「私を…弟子に、してください…」【オリキャラ】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:22:53.80 ID:WeM7ymwC0
前々作https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522253821/
前作https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527083164/
2〜3日に1回更新します

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1559643773
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:24:05.46 ID:WeM7ymwC0


 遠い昔、遥か彼方の銀河系で……

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:25:23.22 ID:WeM7ymwC0


 STARWARS
エピソード3.6 運命の向こうに


オーダー66を生き延びたジェダイの騎士、シンノ・カノス。

500年の時を経て復活したシスの暗黒卿、ダース・ネーア。

二人は対極の存在でありながら意気投合し、反乱同盟軍に加わり銀河帝国への逆襲を開始した。

ある時彼らは、帝国の傀儡政権であるヤマタイト王国の君主ミコア姫の遭難を察知する。

現地豪族ザイン・ザ・ハットとの戦闘の末に彼女を保護し、外交カード扱いを超えて仲間意識を育むシンノたち。

しかし彼の判断でミコア姫とともに保護した闇商人イシュメールが反乱軍基地の位置を漏らし、帝国軍の攻撃を招いてしまう。

司令官テダッフ・シカーグを含む多大な犠牲を出しながらも脱出に成功するが、今度は謎のシス卿ダース・テイティスが襲撃を仕掛けてミコア姫を誘拐してしまった。

失意の底のシンノはフォースと一体化した先達クワイ・ガン=ジンの導きを得て、惑星ダゴバへ向かう……
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:26:21.80 ID:WeM7ymwC0

「お前に出来るのか?」


 暗闇の中から鏡像が浮かび上がり、問いかける。


鏡像「散々仇敵と慣れ合っておきながら今更騎士の道にすがって、それで彼女を救えると……本当にそう思うのか?」

シンノ「……思うとも。そう信じる」


 シンノ・カノスは胸の内に痛みを感じつつも、努めて堂々と応える。


シンノ「形になった力が、結果が、証明が必要なんだ。俺の間違いを清算し、二度と間違わないために!」

鏡像「それがジェダイ・マスターとして正しい在り方だと思うか?」

シンノ「より多くのものを守ることは、人としてもジェダイとしても正しいことだ!」

鏡像「……フン、いいだろう……しかし、お前が本当に純粋なジェダイならそう焦ることもないだろうにな」


 鏡像は思いがけず簡単に引き下がったが、今度は皮肉るような口調で謎めいたことを言う。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:27:27.31 ID:WeM7ymwC0

シンノ「……どういう意味だ?」

鏡像「お前は知っているんだ。絶望が、諦観が、後悔が、自分の中にあることを。だからこそそれを否定しようとやっきになっている」

シンノ「否定するのは間違いだとでも?」

鏡像「いいや。最強のジェダイマスターとしての自負をもって臨めば、この状況を打破するチャンスがあるのは事実だ」


 鏡像が、自分そのものが、自分の顔を覗き込む。


鏡像「しかしもし失敗すれば、お前は暗黒面に沈む。体と心を蝕むヘドロの中で永遠に苦しみ続けることになる」

鏡像「その時手を差し伸べてくれる者はいない。がむしゃらな戦いの中で、人間性とともに振り捨ててしまっているからだ」


 その言葉は呪いの釘のごとく胸に突き刺さった。
シンノは僅かに気圧されつつも、応える。


シンノ「……上等だ、俺はやり遂げてみせる。ジェダイとして」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:28:15.66 ID:WeM7ymwC0

 一方、遠く離れたQC宙域の惑星クマモッテ……その首都、ヒュガー。
しとしとと降り続く雨の向こうから、その街並みを見下すものがある。
QC宙域における分離主義者残党の本拠地、キャッスル・クマモッテ。
その黒々とした建造物のサイズ感は城というより山に近く、うずくまった怪獣のような威圧感をもって城下を睥睨していた。


マクシャリス「失礼します、マクシャリスです」スタスタ

スターバル「スターバルもおりますぞ。姫殿下はいらっしゃるかな?」ズカズカ


 その一室に、白い軍服を着た青年とカリーシュの男が入室する。
窓の傍で椅子に座っていた少女は眉を顰め、嫌味に返す。


ミコア「いらっしゃるに決まっているでしょう、閉じ込められているのですから。愚鈍をアピールしないでくださる?」


 その胸元で緑色のホロクロンがきらりと光った。
ミコア・ロト・ヤマタイト――銀河帝国の庇護を得てQC宙域を支配するヤマタイト王国の最高指導者、執政官である。
惑星クイナワ上空での遭難以来公には行方不明となっていた彼女は、心通わせた反乱同盟軍の面々と引き離され護送される途上で分離主義者に捕らわれ、軟禁の憂き目に遭っていた。
スターバルは露骨に機嫌を損ねる。


スターバル「チッ……お元気か、かともお聞きしようとしたが不要らしいですな。憎たらしいほど元気でいらっしゃる!いや、呑気かな。敵中でよくもまあ――」

マクシャリス「スターバル、お前の本分は接待ではないだろう。無理に喋らずともよい……不自由を強いていることは心から申し訳なく思います、ミコア姫」


 マクシャリスは部下を黙らせたあとミコアに謝罪し、テーブルを挟んだ向かいの椅子に腰かけた。
慇懃で物腰柔らかな態度を取っているが、この青年こそが彼女を捕えている悪の親玉。
ドゥークー伯爵の甥にして残党の取りまとめ役、マクシャリス・セレノーラント・ドゥークーである。


ミコア「ふん、本当に申し訳なく思うなら私を解放するがよい」

マクシャリス「それが、そういうわけにはいかないのです。こちらにも事情がありまして。本当に申し訳ない」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:30:00.48 ID:WeM7ymwC0

 マクシャリスは薄っぺらな謝罪を重ね、手で窓を示す。

 
マクシャリス「今の私に出来ることと言えば、この眺望のあるスイートルームを提供することくらいです」

ミコア「眺望?よくおっしゃること、雨やら何やらでほとんど見えませんよ」


 王女は相手の言葉を鼻で笑う。
実際窓の外は酸性雨とスモッグで霞み、ほとんど真っ白だった。


マクシャリス「いえ、これがこの星で最高の眺めですよ。年に何度か晴れますが、見えるのはスラムばかりですからね」

ミコア「見えないほうがマシだとでも?」

マクシャリス「ええ。鉄屑をぶちまけたような風景が雑然と、漠然と、地平線まで続く――すでにお察しかもしれませんが、この星はすでに『死んで』います」

マクシャリス「風は毒、雨も毒。そんな中に住む人はと言えば、狂った流れ者と、ねじ曲がった原住民だけ」

ミコア「だがそんな汚れた場所だからこそ、お前たちも帝国から隠れることができるのだろう?猫から逃げ回るネズミのように」

スターバル「!?貴様ッ!我々をネズミなどと――」

マクシャリス「これは痛いところを突かれましたな。その通りです」


 マクシャリスはミコアの言葉をあっさりと肯定した。
鼻白むスターバルをよそに、ですが、と話を続ける。


マクシャリス「このような死んだ星に長く留まっては、分離主義運動そのものが遅滞する。ましてやその支配の利権に胡坐をかいて進歩を拒絶するような輩は――」


 その時コムリンクがコール音を鳴らし、彼の話を遮った。
マクシャリスは発信者名を確認して笑みを漏らす。


マクシャリス「おや、噂をすればなんとやら……」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:31:04.26 ID:WeM7ymwC0

「『乗り越えた』ようじゃのう」


 緑色の肌をした小柄なエイリアンの老人がシンノを迎えた。
彼こそ、かつてのジェダイ評議会唯一のグランドマスター。
オーダー66に始まる虐殺を生き延びた唯一のジェダイマスターでもある。


シンノ「マスター・ヨーダ……」


 シンノは師の言葉に違和感か疑念のような感覚を覚えたが、口に出すのは止めた。
一つ間違えれば弱音になってしまいそうだった。


ヨーダ「……では約束通り、お前を『ジェダイマスター』と認めよう」


 シンノはその言葉に途方もなく長い歴史の重みを感じ、息を呑んだ。
ヨーダは懐を探り、筒状のものを取り出してシンノのほうへ差し出す。


シンノ「これは……ライトセーバー?マスター・ヨーダの……」

ヨーダ「お前にやろう」

シンノ「えっ!?とんでもない、いただけません!畏れ多い!」

ヨーダ「畏れる必要などない。ここにいる爺は政治家一人満足に見透かせず、さりとてねじ伏せることもできなかった、どうしようもない軟弱者よ」

ヨーダ「そのライトセーバーも、オーガナ議員が気を利かせて取り戻してくれたはいいが……もはや儂には、それを満足に振るう力など残ってはおらん」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/04(火) 19:32:21.72 ID:WeM7ymwC0

 ヨーダは陰のある笑みを零す。
……長寿種族である彼は、どれほどの同胞の死を看取ってきたのだろうか。
彼らにジェダイの誇りを託されながら、皇帝の所業を黙って見ているしかない現状はどれほど辛いだろう。


ヨーダ「ゆえに、もしも……もしも誰かが今度こそ暗闇を切り開いてくれるのなら、儂は喜んでこの刃を譲り渡そう」

シンノ「……!……」


 シンノは差し出されたライトセーバーの中に、幾重にも重なり合う無数のジェダイの顔を幻視した。
自分に背負えるのか……背負うしかない。
そう決めたから。


シンノ「……おっ……お、お預かり、します……!」


 シンノは震える手で金属筒を受け取り、爆発寸前の爆弾か何かのように恐々と懐に収める。


『ポポピーポ』

シンノ「ヒイッ!?」ビクッ


 その時背後から唐突に電子音が響き、シンノは飛び上がった。
泡を食って振り返ると、そこには見慣れた赤い頭のアストロメク・ドロイドがいる。


シンノ「なんだ、驚かさないでくれよR3……」

R3-C3『ポポピーポ プウウー』

シンノ「基地からWウィングに通信?何て言ってきてるんだ」

R3-C3『ピポポ ピポポ』

シンノ「――何!?あの賞金稼ぎが基地に!?」


 事態の急転に仰天するシンノを見て、ヨーダは厳かに目を細める。


ヨーダ(……来おったか。こやつがこの星を出発すべき時が)
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/06(木) 00:28:38.95 ID:b/SgyFCtO
続き来てるやん!
期待
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/08(土) 09:11:40.15 ID:MaKX1Jdm0
ようやく続きが来たか・・・!
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/09(日) 13:41:57.73 ID:B33tz3oz0

ナインス「ぐあっ!」ドタッ


 尋問官ナインス・ブラザーは非殺傷出力のライトセーバーで強かに打ちのめされ、無様に転倒した。
右手の義手からライトセーバーが零れ落ち、ただの金属筒になってトレーニング・フロアに転がる。


マーズ「……尋問官殿、やはりまだ義手が馴染んでおられないのでは」


 対するジヒス・マーズはさして疲れた様子もなく、粛々とジット・セーバーを収める。
相変わらず無感動な口調がナインスの癪に障った。
セーバーを拾いつつ立ち上がり、膝を払う。


ナインス「……黙れ。余計なお世話だ」

マーズ「……私は両手ともに義手ですので、少しでしたらアドバイスを――」

ナインス「黙れと言ったのが聞こえなかったか?ワイマッグの妾ごときが生意気な口を利くな!」

「おやおや、尋問官殿オ!そう聞き苦しいことをおっしゃるものじゃありませんよオ!」


 入口の自動扉が開き、慇懃無礼な文句とともに新たな人影が現れた。
ひょろりとした長身の体を帝国保安局の黒い制服に包んだ男だ。


ナインス「チッ……エージェント・サギ……」

サギ「申し上げたくはありませんが、クイナワでの失敗でお立場が芳しくないのでしょう?敵を作るような発言はお控えにならないとオ……」ニヤニヤ
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/09(日) 13:43:14.60 ID:B33tz3oz0

 サギは人格的にも能力的にも最低の男だが、ナインスに比べれば皇帝にかなり近い立場にいた。
ナインスは歯を食いしばって罵倒したい衝動をこらえたが、思わぬところから援護射撃が飛んでくる。


マーズ「エージェント・サギ。言いたくはないが、私の上司はターキン総督にコネがあってな」

サギ「!?マーズ管理官……」

マーズ「今は艦隊司令官付補佐官だ。QC宙域方面第二艦隊司令官付補佐官」

サギ「マーズQC宙域方面第二艦隊司令官付補佐官……」

マーズ「クイナワではお前も失敗しただろう、それもウォーカー一個大隊全損ときている。あらためて総督に報告すべき事項かもしれんな」

サギ「そ、それはア……ど……どうか、ご容赦を」

マーズ「お前の態度次第だな。それで、何をしにきた?嫌味を言いに来たのか」

サギ「えっとオ……シカーグ総督が、ナインス・ブラザー殿をお呼びで……」

ナインス「初めから言え、無能が!」


 ナインスはそう吐き捨てて、憤然とトレーニング・ルームを後にする。
サギの慇懃無礼も、マーズにかばわれたことも、あらゆることが気に入らなかった。


ナインス(シンノ・カノス……何もかも、シンノ・カノスに敗れてからだ。全て奴のせいだ!)


 右手の機械義手がその情動を馬鹿正直に反映し、ライトセーバーを軋むほど強く握りしめた。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/09(日) 13:44:29.22 ID:B33tz3oz0

ヨーダ(……すまんのう、シンノ)


 Wウィングは林冠の隙間をすり抜け、徐々に高度を上げていく。
ヨーダは小さな隠れ家の窓からそれを見上げ、密かに詫びた。


ヨーダ(儂はお前に押し付けすぎたかもしれん。オーダー66を少年の時分に迎え、特別な運命の下にあるわけでもないお前に……)

ヨーダ(しかしもしお前が皇帝を倒し、いずれ来るべき「選ばれし者」が平穏で純粋な環境でフォースのバランスを築いたならば、その時こそ数多のジェダイの犠牲が完全な形で報われるのだ)


 いかにもジェダイらしい善性絶対主義思想。
後進を茨の道に追いやることになるとしても、そのメソッドを選ぶことに迷いはない。
しかしヨーダは同時に、胸の内に侘しい風を感じてもいた。
遺跡の中を吹き抜けるような、すえた臭いのする風を。


ヨーダ(……儂は……古きジェダイは、世界を新しい世代に譲り渡すべき時を迎えておったのかもしれん……それも、とうの昔に)


 机上の小さな引き出しを開ける。
こまごましたガラクタを退けて、奥底から色褪せた写真を取り出す。
顔いっぱいに笑みを浮かべたヒューマノイドの少女がピースを決め、ヨーダ自身と並んで映っている。


ヨーダ(……ベルネアよ。儂はまた、導き方を間違ってしまったのか?)


 目を上げるが、銀翼はもう見えない。
今頃は大気圏を脱し、ハイパースペース・ジャンプに突入している頃だろうか。
老人は淡い望みとともに託した言伝が達成されることを祈り、フォースの加護を祈った。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/09(日) 13:45:55.95 ID:B33tz3oz0

アジアス『参上シマシタゾ、がすたー殿』

バスタ「ああ、アーチ公!」


 ジオノージアンのアジアス・ジ・アーチと、ニモーディアンのバスタ・ガスター……
独立星系連合残党の指導者のうち二名が、キャッスル・クマモッテの一室にて、ごく少数の側近とともに密会していた。


バスタ「念のためお聞きしますが、マクシャリスの手の者につけられてはいませんか?」

アジアス『私ヲ誰ダトオ思イカ。尾行者ハイナイ、安心メサレヨ』


 アジアスは昆虫種族特有の耳障りな声を電子翻訳機で同時翻訳して答える。
バスタは心中で胸をなでおろした。


バスタ「そうですか、それはよかった……何せ奴の耳に入ったら大変なことですから」

アジアス『……マサカ、反乱計画カ?まくしゃりすトすたーばるハ、今ヤ残存勢力ノ九割ヲ掌握シテイル。無謀ダ』

バスタ「奴への攻撃ではありますが、武力によるものではありません。情報によるものです……アーチ公は、西塔の最上階に留置されている捕虜についてご存知ですか?」

アジアス『……みこあ・るま・やまたいと。惑星くいなわデ遭難シテ帝国ノ手ヲ離レタ、やまたいと公国ノ執政官……』

バスタ「さすが、お耳が早い。では帝国軍が奴を血眼になって探している、というのは?」

アジアス『血眼……ソレホドマデニカ?』

バスタ「姫個人の利用価値はともかく、誘拐されたことで帝国軍はメンツが丸潰れなんですよ……つまり、つまりですよ」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/06/09(日) 13:47:19.85 ID:B33tz3oz0

 バスタは興奮を抑えきれないといった様子で顔を近づけ、言う。


バスタ「姫の身柄か……それが無理ならば居場所だけでも、帝国に渡すことができれば……」

アジアス『馬鹿ナ!ソレハ裏切リダゾ、がすたー殿!正気カ――ゲホゲホッ!』ザザッガリガリ


 アジアスは激昂のあまりむせ返り、翻訳機にノイズを混じらせた。
バスタは泡を食って弁解する。


バスタ「裏切りなどではありません!現実的な妥協です……いいですか、姫との交換条件ならば、この惑星クマモッテの支配権は安堵させることができるはずです」

アジアス『ヒューッ、ヒューッ……コンナ錆ビツイタ星一ツ、確保シタトコロデ何ニナル?』

バスタ「少なくとも我々の指導の下、ドゥークー伯爵が志した分離主義の精神の命脈を保つことができます」

アジアス『まくしゃりすノ下デハ、ソレガ出来テイナイト?』

バスタ「奴の専横ぶりは度が過ぎます!あの闇雲な権利集約で、我々がこの星に確保していた利権をどれだけ削り取られたか……!」

アジアス『ソレハソウダガ……シカシ、話ガズレテイルヨウナ……』

バスタ「よくお考え下さい。姫の保護に貢献したという実績があれば、帝国は我々を受け入れざるを得ない。我々の種族もクローン戦争以来の冷遇をはねのけることができるのですよ!」

アジアス『……ソウカ、種族……』


 アジアスは腕を組んで考え込んだ。
この話を密告されれば処刑を免れないバスタはハラハラした表情でそれを見守る。
やがてジオノージアンの老人は、厳かに口を開く。


アジアス『……いんたーぎゃらくてぃっく銀行ニ知リ合イガ居ル。彼ヲ通シテ帝国ト交渉シテミヨウ』

バスタ「……!はい!私も少し情報収集をしてみます、くれぐれもマクシャリスには露見しないようにお気をつけて……!」

アジアス『当然ダ』


 話は決まった。
反乱者たちは側近たちを引き連れ部屋を出て、いまだ残るコネクションを通じて陰謀を練り始める。
……空っぽになった部屋では、天井の隅にある通気口の蓋の奥で、小さく赤いランプが瞬いていた。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/23(日) 17:00:29.89 ID:YYi/2Prio
あらー
更新完全に止まっちゃったかー
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/01(月) 00:18:51.68 ID:MZ1MujXE0

 一方その頃、シンノとR3C3はとうにQC宙域に到着していた。
二人を乗せたWウィングはカグマシャ星系にある惑星タンガシムへと降下する。
この辺境の惑星は寒冷かつ乾燥した厳しい気候をもち、その分帝国の監視も甘いことから反乱軍のアジトとなっていた。


ユスカ「おかえりシンノ!」

リズマ「マスター!お疲れ様です!」

シンノ「ああ、わざわざ出迎えありがとう二人とも……」


 反乱軍基地入口にて、シンノは姉妹の歓迎に疲れ切ったような笑顔で応じた。
ユスカとリズマがそれを察して顔を見合わせたとき、シンノに横合いから黒い何かが飛びかかった。


ネーア「シンノーーっ!」ピョーンッ

シンノ「ぐわっ!?」ガシッ


 ダース・ネーアだ!
シス卿はシンノの肩に飛びつき、無遠慮に頬擦りする。


ネーア「妾が居ないんで寂しかったじゃろう?え?よいよい!言わずともわかっておるぞよ〜」グリグリ

シンノ「ちょ……離……」モゴモゴ

ネーア「おっこの紀章!ジェダイ・マスターになったんじゃな!妾からもおめでとうと言っておこうかの、皮肉込みで!」グリグリ

シンノ「待……やめ……」モゴモゴ

ネーア「まったくそこまでいくのにどれだけの苦行を課されたことやら!だからシスの修行にしておけと言ったろうに……」グリグリ

シンノ「――ふざけるな、離せ!」ブンッ

ネーア「ぎゃあ!?」ドタッ
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/01(月) 00:20:25.15 ID:MZ1MujXE0

シンノ「――!だ……」


 シンノはそれを力任せに振り払ってから、ハッとした。
ネーアは尻餅をついた姿勢のままぽかんとしている。


シンノ「……リズマ、例の捕虜のところに案内してくれ」

リズマ「えっ?あ……はい」


 結局、シンノはネーアにそれ以上触れないままその場を後にした。


ユスカ「え?何あれ、感じ悪っ……ネーアちゃん大丈夫?」

ネーア「あ、ああ、大丈夫じゃ……厳しい修行で気が立っとったんじゃろ。妾もちょっと調子に乗ってしまったぞよ」

ユスカ「そう?それにしてもシンノらしくないな……修行先で何があったのやら……」


 ユスカは首をかしげながら二人のあとを追う。
ネーアが黒ローブを払っていると、赤いアストロメク・ドロイドが姿を現した。


R3C3『ポポピーポ』

ネーア「おうR3、そなたも久しぶりじゃの」

R3C3『ポポピーポ プウウー』

ネーア「……ははあ、ダゴバでそんなことが」


 シスは苦笑し、複雑な感情を言葉の裏に滲ませた。


ネーア「変わらんのう、マスター・ヨーダは……」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/01(月) 00:21:18.56 ID:MZ1MujXE0

クネー「だから、ジェダイを呼べばすぐにでも喋ってやると言っているだろうが」


 QC反乱軍基地の捕虜取調室にて、女賞金稼ぎクネーはつねに横柄な態度だった。


バヤット「なぜ俺が相手では喋らんのだ!」


 それがQC反乱軍司令官バヤットの癪に障った。
モン・カラマリの魚面のこめかみに青筋が浮かんでいる。


クネー「あたしの持つ情報を有効活用できるのはジェダイだけだからだ。そこに確実に伝えられる保証なしに喋ってアドバンテージを失うのは下策とみた」

バヤット「ケッ、何がアドバンテージだ……いいか、お前はジェダイを過大評価している」

クネー「何かやらかしたことでもあるのか?」

バヤット「ああ。あいつが連れ込んだイシュメールとかいう闇商人が基地の位置を帝国にバラしてくれてな。我々はあやうく全滅のところだった」

クネー「イシュメールが?バカな、それはあり得ない」

バヤット「ッ……何故貴様にわかる?」

クネー「奴は悪人ではあるが下衆ではない。恩のある相手を、それもよりによって奴の仇である帝国に売るなど……」

バヤット「状況からしてそうとしか考えられんのだ!」

クネー「そもそもジェダイなら人柄くらいある程度見抜けるだろう、本当に危険人物なら連れてこないはずだ。仲間を信じられないのか?」

バヤット「……」

クネー「……QC宙域の反乱軍は優秀な指揮官に率いられると聞いていたが、代替わりでもしたか?」

バヤット「……今は……今は俺が、指揮官だ」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/01(月) 00:22:41.87 ID:MZ1MujXE0

シンノ「失礼する」

リズマ「失礼します……司令官、マスターをお連れしました」


 そのとき、取り調べ室にジェダイたちが入ってきた。


クネー「おう、やっと来たか」

バヤット「……ふん、俺は邪魔者のようだな」


 バヤットは不貞腐れたように言い捨てて部屋を出る。
リズマがその背中を心配そうに見送る一方、シンノは彼に代わって着席する。


シンノ「クネー、といったか……何の真似だ。自分で襲った場所にぬけぬけと戻ってくるとは」

クネー「そのセリフは聞き飽きたぞ、シンノ・カノス。ぬけぬけと戻れるような手土産のほうが重要だと思わないのか?」

シンノ「手土産だと?」

クネー「ミコア姫の居場所だ」


 賞金稼ぎはそう言って、相手を見透かしたようにニヤリと笑った。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/01(月) 00:26:13.33 ID:MZ1MujXE0
/間が空いてしまい大変申し訳ないです。改善します
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/01(月) 00:41:36.51 ID:gnUDyO4Lo
やったー
更新きたー(歓喜
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/01(月) 01:16:41.18 ID:2K3VYOIHO
乙やで
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/01(月) 22:40:14.82 ID:Qsoj1bKf0
>ぬけぬけと戻れるような手土産のほうが重要だと思わないのか?

いい台詞、好きだ。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/03(水) 00:13:09.76 ID:qnV25u8w0

ナインス「『惑星クマモッテ』……」


 惑星ハクカ上空に浮かぶ帝国軍衛星基地「ダン・ザ・フロー」……その作戦室。
ナインス・ブラザーは怪訝そうな顔で惑星の立体映像を眺め、コメントする。


ナインス「典型的な辺境の星ですね。地上の模様を見る限り文明はあるようですが、インナーリムのように繁栄しているわけでもなさそうですし」

タクージン「だからこそ、アナクロニストどもには絶好の隠れ家なわけだ」


 QC宙域総督であるタクージン・シカーグは戦略テーブルにつき、顔の前で手を組んでいる。
分離主義者残党のアジトの位置が密告されてから一日。
ハイパースペース越しに送り込んだ探査ドロイドによって裏は取れた。
そしてこの件に関するパルパティーン皇帝からの指示は、たった一つだった――「反乱分子は完全に殲滅せよ」。


タクージン「まあ何にせよ、我々は奴らを『完全に殲滅』するだけだ」

ナインス「この情報を寄越した密告者の処遇は?」

タクージン「何か交換条件を出していたようだが知ったことではない、『完全に殲滅』する……シンプルでいいことじゃないか、戦争に集中できるものな!」


 タクージンはそう言ってくつくつ笑う。
マンダロリアン・アーマーを着込んでいるあたり、今回も自ら戦場に出るつもりでいるらしい。


ナインス(そうだ、俺も今度の働きで証明してみせる……シンノ・カノスやジヒス・マーズよりも優秀であることを!)
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/03(水) 00:13:41.55 ID:qnV25u8w0

シンノ(『惑星クマモッテ』……)


 夜の帳の下りた反乱軍秘密基地。
シンノは停泊する宇宙船の上部に寝転んで空を見上げていた。
この惑星タンガシムは寒冷だが、それだけに空気が澄んでいるので星がよく見える。
頭上の無数のきらめきの中には、クネーがミコア姫の居場所として挙げた惑星もあるはずだった。


シンノ(クネーは丸ごと分離主義者の勢力圏になっていると言っていたが……奴らにまだそんな余力があったとは信じがたいな)


 吐き出した白い息が夜空に消えていく。
クネーは惑星ヤクシムでミコア姫を捕縛した帰途、分離主義者のインターディクター・クルーザーに拿捕された。
それ以来昨日まで惑星クマモッテにある彼らの基地に囚われていたが、ダース・テイティスに救出され、この反乱軍基地に逃げ込むよう指示されたというのだ。
またもあの謎のシスにこちらの居場所が露見している。


シンノ(それにしても、テイティスはどうやってこちらの位置を特定しているんだ?考えられるのは発信機だが、ヤクシムでの奴はそんなものを取り付ける時間はなかったはず……しかし……)


 一番気がかりなのは、テイティスの意図が丸っきり読めないことだ。
クイナワではわざと手加減してシンノにミコアを引き渡し、一転してヤクシムでは全力で奪いに来て、今度はまたシンノをミコアのところに誘導している。


シンノ(あのシスは一体何の目的でこんなことを……なんにせよ奴がシスである以上、今の俺には排除する以外の選択肢など存在しないわけだが)

「マスター?」

シンノ「うおっ!?」ビクッ


 シンノは背後から声をかけられ、慌てて身を起こし振り返る。
ジェダイの衣装の上からコートを着込んだリズマ・ショーニンが立っていた。
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