冬優子「あいつの部屋と、二人の場所」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:02:30.13 ID:npx55dB+0
アイドルマスターシャイニーカラーズのSSです。
いわゆるPドルですので、ご注意ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1558962149
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:05:17.42 ID:npx55dB+0
「あー、仕事中なのにスマホでやらしーの見てる。いけないんだー」

「あっ、こら、覗くなよ」

「ショックですぅ……ふゆのプロデューサーさんが、そんなえっちな人だったなんて……」

「これは別にそういうのじゃなくてだな」

「あ、言い訳するんだ。かっこわる」

「っていうか、別にいいだろ。今は休憩中なんだよ」

「サボってるように見えるけど?」

「こうやって適度に手を抜くのも、大人の処世術だ」

「大人ってずるいわね」

「何とでも言え」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:11:04.12 ID:npx55dB+0
最初は、そんな会話。

何でもない、いつもの軽口。

ただ、いつも生真面目に仕事しているあいつが、やけに熱中しているのが気になって。

おまけに画面には、かわいい女の子のキャラ。

失礼しちゃう。

目の前に、こんなにかわいいアイドルがいるのに。

……あいつも、あーいう子の方が好きなのかな。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:16:34.78 ID:npx55dB+0
「で?何をそんなに真剣に読んでんのよ」

「これか?俺が学生の頃にやってた漫画でな。作者が無料公開始めたみたいなんだよ」

「最近流行ってるもんね、一話だけ公開して、続きはこちらから、みたいなやつ」

「家にも単行本あるんだけど、最近読んでなくてな。たまたま見かけたから久しぶりに読んでみたら止まらなくて」

「へー……そんなに面白いの?」

「おう。……まぁ、周りじゃあんまり読んでたやついなかったんだけどな」

「ふ〜ん……」

少し寂しそうだったその顔は、普段あまり見ないあいつの顔で。

知らなかったあいつの表情を見られたのが、なんだか嬉しくて。

少し、踏み込んでみようかな、って思った。

これが、多分最初。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:22:39.83 ID:npx55dB+0

「ちょっと読んでみようかな。なんていうタイトル?」

「えっ?」

「あんたがいうなら、面白いんでしょ。ちょっと、興味出てきた」

「本当か!?」

ぱぁっと明るくなった表情は、まるで仲間を見つけた子どもみたいな笑顔。

「待て、だったら明日単行本持ってきてやる!」

「は?いや、別にそこまで……」

「いいから!紙で読んだ方が絶対いい!」

「わかった!わかったから!……もう」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:29:49.23 ID:npx55dB+0
あまりのテンションの変わり様に、すっかり気圧されてしまった。

あんな真っすぐな目で見られたら、断るに断れない。

まぁもう少しだけなら、付き合ってあげてもいいかな。

それにしても、あんな真剣な表情、滅多に見たことない。

……ひょっとすると、ふゆをスカウトした時よりも真剣だったんじゃ。

あれ?なんかだんだん腹立ってきたかも。

これで面白くなかったら、文句のひとつでもいってやろうか。

なんて、思ってた。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:39:57.66 ID:npx55dB+0


「ねぇ、続きの巻ちょーだい」

「え、もう読んだの?はやくない?」

「いーいーかーらー!今いいとこなのよ」

「お、おぉ……ほら」

次の日、あいつが持ってきた漫画に、ふゆはドハマりしてしまって。

次の巻、次の巻と読み進める手が止まらなかった。

絵もそれなりに可愛かったんだけど、何よりストーリーに引き込まれた。

結局、持ってきてもらった分を、その日のうちに読み切ってしまった。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:48:16.88 ID:npx55dB+0
「は〜…………よかった」

「なっ?面白かったろ?」

「……なんであんたがどや顔してんのよ」

「そりゃ、好きだったもんを褒められたら嬉しいからな」

「……ま、いい作品を知れたのは感謝はしてるけどね」

「だろ?」

「でもよかったわ。あのヒロインの子、ちゃんと主人公の隣に立てるようになったのね」

「そうなんだよ、地道な努力が実を結んだんだよ……」

「守られてばかりじゃなくて、守れるように成長して……」

「最後はちゃんと結ばれたしな」

「あのラスト、ズルいわよ。泣くかと思ったじゃない」

「ちなみにだけど、俺は初めて読んだ時めっちゃ泣いたぞ」

「……最初の方、ぶっちゃけいつ死んじゃうのかなってハラハラしてたのに」

「それな……前例があっただけに怖かったわ」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:54:35.59 ID:npx55dB+0

無邪気に語る笑顔は、本当に子どもみたいで。

またあいつの知らなかった一面を見られたみたい。

些細なことだけど、あいつのことだと思うと、嬉しくなる。

こうして、少しでも知っていけるなら、ちょっと頑張ってよかったかなって思った。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:55:55.32 ID:npx55dB+0

「―――ねぇ、他にはないの?」

「他?」

「結構色々知ってそうだし。他のも読んでみたい」

「ん〜……って言っても、本当に色々あるしなぁ」

「別にあんたのチョイスでいいわよ。あんたのセンスなら間違いなさそうだし」

「いや、出来るなら全部読んでもらいたい」

「無茶言うわね……」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:57:00.42 ID:npx55dB+0

「そうだ。俺の家、来るか?」

「えっ?」

我ながら、なかなか抜けた声が出たと思う。

それくらい、あいつの言い出したことは予想外で。

そりゃチャンスだとは思ったけど、ふゆにも準備ってものがあるのに。

「い、いいの?」

「本当に結構種類あるからさ。どうせだったら自分で選んだ方がいいんじゃないかって」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 22:59:01.09 ID:npx55dB+0

「そ、それは……そう、だけど。その、色々と、大丈夫?」

「何がだ?」

キョトンとした表情。

あぁだめだ。

普段よく気がきくクセに、どうしてこういうのはニブいのか。

「まぁ確かに、最近忙しくて片付けられてないけど、足の踏み場もないってほどじゃないぞ」

「ふゆが言いたいのはそうことじゃないんだけど……」

「大丈夫だよ。きっと気に入るのがあると思う」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 23:01:15.06 ID:npx55dB+0

本当にわかってないみたいで。

もう、どの漫画を勧めるかしか頭にないみたいだった。

ほんと、周りが見えていない。

こう、と決めたらそこにまっすぐ突っ走る。

まぁ、その真っすぐさに救われたこともあるんだけど。

……ほんと、苦労しそう。

どうしてこいつなんだろう。

「はぁ……わかったわよ。今日の帰り、寄らせてもらうわ」

「おう!」

それでも、あいつが喜ぶ顔が見られるならいいかな、って思っちゃうふゆも、きっと大概なんだろう。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 23:03:32.68 ID:npx55dB+0

「さ、上がってくれ」

「お邪魔しま〜す……ふぅん」

「あんまりきょろきょろしないでくれ」

「なによ、見られて困るものでもあるの?」

「そういうわけじゃないけど、散らかってるだろ」

そうはいうものの、初めて上がるあいつの部屋。

思わず、見回してしまう。

男の一人暮らしにしては随分片付いていて。

しっかりしてんるんだなぁ、とか。

几帳面なあいつらしいなぁ、とか。

勝手にそんなことを思っていた。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 23:05:49.40 ID:npx55dB+0

「ほら、ここから選んでくれ」

と言われて見せられたのが、天井に迫りそうな本棚。

それが全部、漫画の本で埋まっていた。

「……うわー、本当に結構な量ね」

「実家にもだいぶ置いてきたんだけどな。気づいたらまた集めちゃってて」

「あんたにもこういう趣味があったのね……意外かも」

「そうか?」

「てっきり、仕事が恋人、ってくらいかと思ってたのに。……あ、これ、絵が可愛い」

「失礼な。俺だって趣味のひとつやふたつはある。ちなみにそれ、30巻くらい出てるぞ」

「多いわね」

「人気作だったんだよ、それ」

「ふぅん」

パラパラとページをめくりつつ、相槌を打つ。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 23:07:42.50 ID:npx55dB+0

ほんと、意外。

というより、全然知らないことばっかりだったんだなって、ちょっと凹んでた。

まぁ、今まで踏み込まないように、踏み込ませないようにしていたのはふゆの方だから仕方ないんだけど。

「……まぁいいわ。これにする」

「おう、待ってろ、紙袋持ってきてやるから」

「でもさすがに一度に全部は持って帰れないわよ」

「んなの、また借りに来ればいい」

「……いいの?」

「もちろん。何だったら暇な時に読みに来てもいい」

「ほんと?」

「あぁ。ま、ネカフェと違って」

「ふふっ。じゃあ、お言葉に甘えて。しばらく通わせてもらうわ」

「おう」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 23:09:04.87 ID:npx55dB+0

ほんと、意外。

というより、全然知らないことばっかりだったんだなって、ちょっと凹んでた。

まぁ、今まで踏み込まないように、踏み込ませないようにしていたのはふゆの方だから仕方ないんだけど。

「……まぁいいわ。これにする」

「おう、待ってろ、紙袋持ってきてやるから」

「でもさすがに一度に全部は持って帰れないわよ」

「んなの、また借りに来ればいい」

「……いいの?」

「もちろん。何だったら暇な時に読みに来てもいい」

「ほんと?」

「あぁ。ま、ネカフェと違って大したものは出せないけどな」

「ふふっ。じゃあ、お言葉に甘えて。しばらく通わせてもらうわ」

「おう」
21.11 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)