一休「夜な夜な悪さをしているのは屏風の虎ではありません」 将軍「何?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/17(金) 21:05:05.99 ID:zFRZIkJt0
一休「そもそもどうして悪さをしているのが屏風の中の虎だと思ったのでしょうか」

一休「目撃者でもいましたか?」

将軍「余が嘘を申しておると言うのか?」

一休「嘘ではなくとも、勘違いしている可能性はありましょう」

将軍「下郎が、そこまで言うのであれば何か確証があるのであろうな?」

一休「はい、この服をご覧ください」

将軍「なんだ、その血まみれの服は」

一休「この服は、昨晩犯人に襲われた武官の服です」

将軍「ふむ」

一休「鋭い爪のような跡が残っているでしょう」

将軍「まさに屏風の中の虎が残したかのような爪痕だな」

一休「……違うのです、将軍」

将軍「何が違うと申すか」

一休「良く見てください、屏風の中の虎には爪が五本あります」

一休「ですが、この服に残された爪痕は四本なのです」

将軍「……確かに、な」

一休「つまり、犯人は屏風の中の虎ではないのです」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/17(金) 21:06:18.37 ID:zFRZIkJt0

新右衛門「一休殿、屏風の虎が犯人では無いのだとしたら、いったい誰が犯人なのでござる?」

新右衛門「城内では既に女中が何人も行方不明になっており、それを阻止しようとした武官たちが何人も殺されている状況でござる」

新右衛門「これ以上の被害が出るのを防ぐため、何とか知恵を貸してほしいでござるよ」

一休「誰が犯人か……ですか」

将軍「一休よ、そなたであれば犯人の目星がついているのではないか」

一休「ええ、確かに目星はついています」

新右衛門「な、なんと!流石は一休殿!」

将軍「……ほう」

一休「犯人は……」

新右衛門「犯人は!?」

一休「……」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/17(金) 21:07:11.26 ID:zFRZIkJt0
 






一休「犯人は、俺様だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」





 
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/17(金) 21:08:20.58 ID:zFRZIkJt0
謁見の間には将軍足利義満や蜷川新右衛門以外にも多くの家臣たちが居た。

将軍家を古くから守ってきた精鋭達。

その精鋭達は、全て一休によって食い殺された。

一瞬のうちに謁見の間は血に染まる。


「正体を現したな!化生が!」


間合いを詰めた新右衛門が一刀を振るう。

その刃は狙い違わず、一休の身体を一刀両断にした。

だが、一休は真っ二つになったままニタリと笑った。


「ぎゃはははは!もう少し小坊主のフリをしておいてやるつもりだったんだがなぁ!」

「てめえらがあまりにマヌケだから、ついつい正体を現しちったぜ!」


一休の身体はぐにゃりと崩れ、別の姿が現れる。

金色の毛を纏い、鋭い牙と爪を持つその姿は、正しく「化生」の名に相応しい存在だった。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/17(金) 21:25:52.61 ID:5xTfmvRtO
ってそっちの「とら」かいw
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/17(金) 22:26:16.25 ID:zymks0cEO
外伝の頃のとらだ
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 05:23:52.34 ID:zsBUDDJn0
推理ものかと思ったらうしおととらでわろた
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 21:25:39.24 ID:HkBHQOdE0
まさかといえばまさかすぎる展開でワロタ
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/19(日) 00:03:12.26 ID:V3yOkWnx0
「将軍家がどんな物か見に来てやったが、阿呆しか居ねえようだ!」

「まさか女中どもを食ったのがワシだと気づかず、屏風の虎を犯人だと思い込むとはなぁ!」


化生の言葉に足利義満は臆さずこう返した。


「阿呆は貴様だ、物の怪よ」

「なにい!?」

「この屏風は先祖代々足利家に伝わる家宝、ここに記されているのは我が将軍家の守り神なのだ」

「その虎が足利家に仇を為すなどありえぬ事よ」

「城下の者たちなら全員がそれを知っておるわ、当然、本物の一休もな」

「つまり、此度の謁見は貴様を炙り出す為の芝居という事だ」

「それに気づかず、のこのこと正体を現した貴様が一番の阿呆であるわ」

「てめぇ……ニンゲンの分際でワシをハメやがったのか!」


義満がパンと手を叩くと、謁見の間の扉が開き武装した武官達が姿を現し、刀を構えた新右衛門と共に化生と対峙する。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/19(日) 00:03:38.96 ID:V3yOkWnx0
「物の怪!本物の一休殿をどうした!?」


新右衛門がそう問い詰めると、化生は楽しそうにこう答えた。


「あのガキか?ケケケ、随分な知恵者と聞いていたんだが、拍子抜けしたぜぇ?」

「同じ寺に住む小坊主たちがワシに殺される中、あのガキはどうしてたと思う?」

「自分一人だけ、和尚の部屋に隠れてたのさぁ」

「ガタガタ震えて、ビービー泣いて」

「ワシに見つかった後も、ケケケ、馬鹿みたいに必死に乞いしてたっけなぁぁ!」

「最後にあのガキはなんて言ったと思う?」


 『お願いします、殺すならどうかその牙で一息に噛み殺してください』

 『生きたまま飲み込まれて長く苦しむのなんて嫌です』


「ぎゃはははは!惨めだったなぁぁぁぁ!」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/19(日) 00:04:05.80 ID:V3yOkWnx0
「それで、お前はどうした」

「どうしたって、そりゃあ、食っちまったに決まってるだろ、生きたままな」

「この腹具合だと……そうさなあ」


化生は腹をさすりながら、こう言った。


「今頃は手足も頭も溶けてなくなって、胴体だけになってる頃合いだろうよ」


この言葉を前に新右衛門は激昂。

足利義満を隠し通路へ避難させると武官達を率い、化生に打ち掛かる。

だが如何に陣を組み槍で突き矢を放とうとも化生を止めることは出来なかった。

高笑いしながら炎と雷撃を放つ化生を前に、武官達は一人また一人と倒れていく。

それでも、新右衛門は決して諦めなかった。

彼自身、身体は大火傷を負い右目が既に無い状態であったが、化生を追い続けた。

雷で破壊された廊下を通り、炎によって焼け落ちた城門をくぐり、城下町に差し掛かった頃には、既に新右衛門は一人きりだった。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/19(日) 00:04:55.94 ID:V3yOkWnx0
「サムライよぉ、てめぇしつけぇなぁ」

「ワシはこれから城下町へ行ってニンゲンをしこたま食ってやるんだからよ、邪魔すんじゃねえ」


出血により新右衛門の意識は薄れ、視界も定まらない。

だが、問題はなかった。

移動経路が限られるこの場所であれば、敵を見落とすことはないであろう。

新右衛門の脳裏に「この場所」に関連する記憶が過る。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/19(日) 00:05:24.04 ID:V3yOkWnx0
『この場所はですね、元々はあの世とこの世の境界だったんですよ』

『行くことは出来ても、帰ることは出来ない不可逆の境界』

『昔はそうだったんですよ、新右衛門さん』

『けど、けどね、人間達は知恵と工夫でそれを覆したんです』

『その結果、この場所は人間が行き来できる場所になったんです』

『それって、凄く素敵な事ですよね』

『え?ああ、はい、すみません話がずれました、この立札の事ですよね』

『確かにこの立札は厄介ですねえ……』

『うーん、だったら、こうすればどうですか』
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/19(日) 00:06:17.10 ID:V3yOkWnx0
そう、この場所は境界だ。

ここを超えられたら、人々が住まう城下町なのだ。

決して、決して通すわけには行かない。

新右衛門は刀を構え、化生に対してこう言い渡す。


「この橋、渡るべからず」


それに対して化生はこう応えた。


「ああ、その話なら知ってるぜ、真ん中を通ればいいんだろう?」

「ケケケ、死にかけのテメェなんざ吹き飛ばして通ってやるさ!」



化生は凄まじい速度で新右衛門へ突進してきた。
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